説明

金属塩を含有する剥離液を用いる金属エッチレートの低減

半導体集積回路用の半導体デバイス上に回路を製作及び/又は電極を形成するのに有用な、低減された金属エッチレート、特に低減された銅エッチレートを有するレジスト剥離剤を、それらの使用法とともに提供する。好適な剥離剤は、低濃度の銅塩又はコバルト塩を、銅塩又はコバルト塩の溶解度を改良するためのアミンと共に又はアミンなしで含有する。さらに、これらの方法に従って製造された集積回路デバイス及び電子相互接続構造も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2007年8月3日出願の米国仮出願第60/953,804号の利益、及び2007年10月30日出願の米国出願第11/928,754号に基づく優先権を主張し、両出願は参照によって本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、半導体集積回路用、又は液晶ディスプレイ用の半導体デバイス上に回路を製作し、又は電極を形成するのに使用するための、金属塩を含有するレジスト剥離剤、さらに該レジスト剥離剤を使用する半導体デバイスの製造方法(該剥離剤は剥離工程中の金属エッチングの低減を提供する)、そしてさらに該レジスト剥離剤を使用して金属コンポーネントから実質的な量の金属を喪失することなく半導体デバイスを製造する半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体集積回路の製作技術は、単一の集積回路チップ上に製作できるトランジスタ、キャパシタ及びその他の電子デバイスの数に関して進歩を遂げてきた。この集積レベルの向上は、主に、集積回路の最小加工寸法の縮小及び集積回路を作り上げている層の数の増加の結果である。今日の設計特性は、一般に“サブミクロン”と呼ばれ、0.25ミクロンを割り込んでいる。このように縮小した寸法を有する集積回路コンポーネントの製造は、化学剥離液を用いるレジストの除去を含め、製造のあらゆる側面に対して新たな要求を突き付けている。
【0004】
半導体集積回路用、又は液晶ディスプレイ用の半導体デバイスは、通常、基板をポリマー性レジスト組成物でコーティングする工程;レジスト膜を露光によってパターン化し、その後現像する工程;パターン化されたレジスト膜をマスクとして使用して基板の露光部分をエッチングして、微細回路を形成する工程;及び、レジスト膜を無機基板から除去する工程を含むプロセスによって製造される。あるいは、微細回路の形成後、レジスト膜を灰化し、残ったレジスト残渣を基板から除去してもよい。優れた剥離液は、レジスト残渣及びレジスト材料を中〜低温で迅速に除去すべきであり、暴露されたすべてのコンポーネントに対して許容可能な効果を有するべきであり、固体の沈殿及び剥離液の早期の廃棄を防ぐために、溶解レジスト及び/又はエッチ後残渣に対する相当な能力(capacity)を有するべきである。また、優れた剥離液は、再加工プロセスでも基板を損傷せずに迅速にレジスト残渣を除去すべきである。最後に、優れた剥離液は、最小の毒性を示すべきである。
【0005】
様々な剥離液が開発され、これらは初期の半導体デバイスの製造においては満足のいく成果を収めてきた。初期の剥離液の相当数は強アルカリ性溶液であった。アルカリ性剥離液を金属、特にタングステン又は銅及びそれらとアルミニウムとの合金を含有する超小型回路の製造に使用すると、金属喪失をもたらす可能性がある。これらのアルカリ性剥離液の使用中に様々な形態の金属喪失、例えば金属線の腐食ウィスカー(corrosion whiskers)、孔食(pitting)及び切欠き(notching)が観察されている。タングステン及び銅の場合、腐食は、加熱された乾燥有機剥離組成物の混合物中で溶存酸素が陰極反応を提供して発生しうる。そのような金属喪失は初期の半導体デバイスの製造においては許容可能であったが、サブミクロンコンポーネントを有するデバイスではそのような金属喪失は容認できない。
【0006】
様々な腐食防止剤を含有する剥離液を利用することによって、半導体デバイスの製作時の金属喪失を削減しようとする努力がなされてきた。米国特許第6,276,372号;6,221,818号;及び6,187,730号は、剥離液中で腐食防止剤として機能する様々な没食子酸化合物の使用を教示している。米国特許第6,156,661号及び5,981,454号は、剥離液中の腐食防止剤として有機酸の使用を教示している。米国特許第6,140,287号;6,000,411号;及び6,110,881号は、剥離液中の腐食防止剤としてキレート剤の使用を教示している。米国特許第5,902,780号;5,672,577号;及び5,482,566号は、剥離液中の腐食防止剤としてジヒドロキシベンゼンキレート剤の使用を教示している。米国特許第5,997,658号は、剥離液中の腐食防止剤としてベンゾトリアゾールの使用を教示している。米国特許第5,928,430号は、剥離液中の腐食防止剤として没食子酸の使用を教示している。米国特許第5,419,779号は、剥離液中の腐食防止剤としてカテコール、ピロガロール、アントラニル酸、没食子酸、及び没食子酸エステルの使用を教示している。
【0007】
これまで使用されてきた腐食防止剤は一般的にいくつかの欠点を有している。例えば、(a)それらは水すすぎで簡単に除去されない有機化合物である;(b)相当量の防止剤が必要とされるので、溶液の剥離能力に影響を及ぼしうる;(c)キレート特性を有する防止剤は金属及びその他のコンポーネント表面に接着するので性能を妨害しうる;及び(d)成分の毒性及び生分解性の欠如のために、溶液への暴露を望ましくないものにし、使用済み剥離液の処分をより困難にしている、などの欠点である。
【0008】
求められているのは、(a)非常に低濃度で、半導体デバイスの製作に使用される銅及びその他の金属を含む金属及びそれらの合金の溶解を防止できる;(b)剥離液と適合性があり、その働きを妨害しない;(c)半導体デバイスから水及び/又は水溶性アルコールで容易にすすぎ落とすことができ、残渣を残さない;及び(d)低毒性であり、使用済み剥離液の生分解性に悪影響を及ぼさない、といった成分を含有する剥離液である。本開示は、これらの要求に取り組み、それを解決する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,276,372号
【特許文献2】米国特許第6,221,818号
【特許文献3】米国特許第6,187,730号
【特許文献4】米国特許第6,156,661号
【特許文献5】米国特許第5,981,454号
【特許文献6】米国特許第6,140,287号
【特許文献7】米国特許第6,000,411号
【特許文献8】米国特許第6,110,881号
【特許文献9】米国特許第5,902,780号
【特許文献10】米国特許第5,672,577号
【特許文献11】米国特許第5,482,566号
【特許文献12】米国特許第5,997,658号
【特許文献13】米国特許第5,928,430号
【特許文献14】米国特許第5,419,779号
【発明の概要】
【0010】
本発明の一般的な目的は、銅などの金属コンポーネントを含有する基板からフォトレジストを除去するための組成物を提供することである。本明細書中では、レジストという用語は、フォトレジストもしくはレジスト材料、エッチ後残渣、又はそれらの組合せを指す。該組成物は剥離液と銅塩とを含み、該組成物は>0及び≦1の値を有する金属保存係数(MCF,metal conservation factor)を有する。MCFは、
MCF = (a−b)/a
と定義され、式中、“a”は銅塩を含有していない剥離液で決定されたエッチレートであり、“b”は銅塩を含有する実質的に同じ剥離液で決定されたエッチレートである。例えばコバルト塩のようなその他の金属塩も、同様に銅エッチレートを低減するために剥離液に加えてもよい。銅又は別の金属のエッチレートを低減するためには、単一の金属塩又は金属塩の組合せが同様に利用できる。
【0011】
好適な銅塩は、選択された剥離液に可溶である。銅塩の溶解度が極わずかであるか、又は不十分である場合、剥離液中の塩の溶解度はモノマーアミン又はポリマーアミンの添加によって高めることができる。アミンで可溶化されたそのような銅塩も、同様に銅エッチレベルを低減する。+1及び+2の価数を有する銅塩が使用できる。そのような価数を有する銅塩の例は、CuCl及びCu(NOなどである。それぞれ100gの溶液に対して約0.001gの銅塩〜それぞれ100gの溶液に対して約0.1gの銅塩の範囲の銅塩のレベルが一般的に好適である。100gの溶液に対して約0.005gの銅塩〜100gの溶液に対して約0.075gの銅塩の範囲の銅塩のレベルがさらに好適である。100gの溶液に対して約0.025gの銅塩のレベルが最も好適である。
【0012】
銅塩を市販の剥離液を含む様々な剥離液に加えたところ、0より大きく1以下の範囲の金属保存係数(MCF)からも明らかなように、エッチレートの低減が観察された。銅塩添加の利益を得る好適な剥離液は、ジメチルスルホキシド、第四級水酸化アンモニウム、アルカノールアミンを、例えばグリコールエーテルのような二次溶媒と共に又は二次溶媒なしで含むものである。
【0013】
銅塩と組み合わせた剥離液を含むさらに好適な組成物は、ジメチルスルホキシド、第四級水酸化アンモニウム(塩基)、アルカノールアミンを、例えばグリコールエーテルのような二次溶媒と共に又は二次溶媒なしで含み、少なくとも約1及びさらに好ましくは少なくとも約1.8の乾燥係数(DC,dryness coefficient)を有するものである。乾燥係数は、等式:
DC =(塩基の質量/試験溶液の質量)/(水の質量/試験溶液の質量)
によって定義される。
【0014】
本開示の別の目的は、金属銅を含有する基板からフォトレジストを除去するための組成物を提供することで、前記組成物は、剥離液、銅塩、及びアミンを含み、前記組成物は、銅塩を含有しない前記剥離液よりも低いエッチレートを提供する。剥離液に配合するのに適切なアミンは、モノマーアミン及び/又はポリマーアミンである。添加された銅塩/アミンの組合せを有する試験された剥離液はすべて、銅エッチレートの低減を示した。銅塩/アミンの組合せは、銅塩が剥離液中で十分な溶解度を有する状態で提供できない場合に特に適切である。
【0015】
本開示の別の目的は、金属銅を含有する基板からフォトレジストを除去するための方法を提供することである。該方法は、フォトレジスト及び金属銅をその上に有する基板を提供する工程と、該基板を剥離液及び銅塩を含む組成物(この剥離液/塩の組合せは0より大で1以下のMCF値を有する)と接触させてレジストの除去を実行する工程とを含む。基板と組成物との接触は、上記の種類の銅塩を上記の量で含み、アミンを添加したか又はしない組成物が使用される。モノマーアミン又はポリマーアミンが使用できる。接触工程で使用される好適な剥離液は、上記のものなどである。その他の市販剥離液も銅塩と有益に組み合わせることができ、下記のように金属エッチレートの低減を提供する。
【0016】
接触工程は、基板の剥離液への浸漬又はスプレー用具を使用して剥離液を基板にスプレーすることを伴うことができる。接触後の更なる工程は、剥離液との接触からの基板の取出し及び/又は適当な溶媒による基板のすすぎという追加の工程を伴うことができる。接触工程中、剥離液は好ましくは少なくとも約50℃の温度、さらに好ましくは約50℃〜約85℃の範囲の温度に維持される。
【0017】
本開示の別の目的は、高いレベルの無傷な金属を有する相互接続構造を製造するために、上記の方法に従って金属コンポーネントを有する基板からレジスト残渣を除去することによってその一部が製造される電子相互接続構造を提供することである。図2は、バリア層4によって分離された二つの絶縁層5及び6内のビア3を通じて相互接続されたトレンチ1及び2を有する典型的な電子相互接続構造を示す。トレンチ1及び2並びにビア3は、通常、銅などの金属で充填される。
【0018】
本開示の別の目的は、上記の方法に従って金属コンポーネントを含有するウェハをレジスト残渣を除去するように処理することによって一部得られる、低減された金属エッチングを有する集積回路デバイスを提供することである。図3は、2で示されたチップルーターを通じて相互接続された、1で示された複数のコンピュータチップを有する、典型的な集積回路デバイスを示す。
【0019】
本開示のなお更なる目的は、低減された金属エッチレートを提供する剥離液の製造方法を提供することであって、容器を提供し;剥離液の成分を提供し;銅塩又はコバルト塩を提供し;そして成分及び金属塩を容器に加えて容器内に内容物を提供することによる方法である。成分を提供することは、個別の成分、各種成分を含有する組成物、又はそれらの組合せを提供することを含むことができる。さらに、剥離液の成分を加えることは、個別の成分、予備混合された成分、及び/又は提供された成分を実質的に任意の順序で含有する予備形成された剥離液を加えることを伴うことができる。容器は、剥離液を保持できる実質的に任意の容器を含むことができる。例えば、液体製品を運搬又は輸送するのに使用される典型的な容器、フォトレジスト及び/又はエッチ残渣を除去するために基板を処理するのに使用される剥離液を入れるのに使用される設備などである。本明細書中では、容器は、基板の処理中に剥離液を保持及び/又は移送するのに使用される設備を含み、例えば剥離液を輸送するのに使用される何らかのパイプシステムを含む保持及び移送容器などであるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、剥離液の銅塩含有量と、該溶液を露出された銅金属を有する基板に暴露した場合に発生する銅エッチレートとの間の関係をグラフ表示したものである。
【図2】図2は、電子相互接続構造を示す。
【図3】図3は、複数の電子相互接続構造を含有する電子デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本開示の理解を促進するために、例示された態様を参照し、特定の言葉を使用してそれを説明する。それでも、当然のことながら、それによって特許請求の範囲の制限を意図するつもりはなく、そこに示されたような変更及び更なる修正及び原理の更なる応用は、本開示に関連する当業者には通常思い浮かぶであろうと考えられる。
【0022】
本開示による組成物は、銅塩をアミンと共に又はアミンなしで含有する剥離液を含む。そのような組成物は、0より大きく1以下の銅保存係数を有し、組成物と接触した銅含有基板からの金属銅のエッチレートにおいて低減を示す。好適な剥離液は、ジメチルスルホキシド、第四級水酸化アンモニウム、アルカノールアミンを、例えばグリコールエーテルのような二次溶媒と共に又は二次溶媒なしで含むものなどである。好適なアルカノールアミンは、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも1個のアミノ置換基及び少なくとも1個のヒドロキシル置換基を有し、アミノ及びヒドロキシル置換基は異なる炭素原子に結合している。好適な第四級水酸化アンモニウムは水酸化テトラメチルアンモニウムである。図1は、実施例1のデータに基づくものであるが、ジメチルスルホキシド、モノエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、3−メチル−3−メトキシブタノール、及び少量の水を含有する剥離液中の様々な濃度の銅塩が金属銅のエッチレートに及ぼす効果を示している。試験は、二つの供給源から得た金属銅含有基板に対して実施された。好適な剥離液の場合、銅エッチレートは、100gの剥離液に対して約0.025gのCu(NOで最低となった。異なる量の銅塩を含有する異なる溶液の銅保存係数は0.26〜0.93の範囲であった。
【0023】
金属エッチレートの低減は、好適な剥離液の水分含有量を減らすことによって、及び銅塩を添加することによって達成できる。乾燥剥離液と銅塩添加の組合せは、実施例2に示すように追加の利益を提供できる。剥離液C及びDは水の量が異なるだけであった。表IIから分かるように、各溶液の乾燥係数に反映される水分含有量の低下は、銅エッチレートを低減した。0.025重量%のCu(NOの添加は、非常に低い銅エッチレートを維持するか又は銅エッチレートをさらに低減し、好ましい金属保存係数(MCF)を提供した。
【0024】
実施例3では、銅エッチレート及び金属保存係数(MCF)を、様々な好適剥離液及び他の市販剥離液を基にした剥離液について、0.025wt%のCu(NOを添加した場合としない場合で決定した。製剤5、6、及び7に基づく組成物の場合、銅塩が不溶であったので、その効果は決定できなかった。銅塩を溶解できたすべての剥離液は、低減された銅エッチレートを示し、0.18〜1.00の範囲のMCF値を示した。
【0025】
実施例4では、十分な量の塩を溶解できない剥離液における銅塩の溶解度の問題を克服するための方法が提供されている。銅塩を、製剤7と名付けられた剥離液にモノマー又はポリマーアミンのいずれかと共に加え、均一溶液を提供した。銅塩及びアミンを含有する剥離液について、銅エッチレートを実施例1に記載の方法を用いて決定した。結果を表IVに示す。アミン/銅塩の各組合わせは銅エッチレートを低減し、0.11〜0.99の銅保存係数を提供した。エタノールアミン及び直鎖ポリ−4−ビニルピリジンがCu(NOとの組合せにもっとも効果的なアミンであった。
【0026】
実施例5では、Cu(I)塩を添加した場合としない場合の剥離液について、銅エッチレートを上記の技術を用いて決定した。Cu(I)塩を添加しない場合、銅エッチレートは3.5Å/分であり、0.025wt%のCuClを添加した場合、銅エッチレートは0.84Å/分に降下し、0.76のMCF値を提供した。
【0027】
実施例6では、銅エッチレートに及ぼすコバルト塩の効果を2種類の剥離液で試験した。第一の溶液の場合、銅エッチレートは、0.025wt%のCo(NOで3.5Å/分から0.87Å/分に降下し、0.75のMCFを提供した。第二の溶液の場合、銅エッチレートは、0.025wt%のCo(NOで4.0Å/分から1.69Å/分に降下し、0.58のMCF値を提供した。
【0028】
実施例7では、TiW合金を含有する基板を、銅塩(硝酸銅)を添加した及び添加しない様々な剥離液に曝した。前の実施例と同様、硝酸銅を添加した場合としない場合の各剥離液について、金属エッチレートを決定した。銅塩を添加してもしなくてもエッチングの起こらなかった製剤7以外、添加された銅塩を含有するすべての剥離液は、0より大きいMCF値から明らかなように、低減された金属エッチレートを提供した。
【0029】
ここまでに実施された試験から、例えばCu(I)及び(II)、コバルトなどの金属塩は、様々な金属を含有する半導体基板に対して、実質的に低減された金属エッチレートを提供することが分かる。レジスト材料を除去するために剥離液に曝された銅及びTiWなどの合金のような金属の金属エッチングの低減は特に有益である。金属塩が十分に可溶でない金属塩/剥離液の組合せの場合、アミンの添加が塩の溶解性を提供し、金属/アミン塩の組合せは低減された金属エッチレートを提供した。金属塩は、アミンの有無にかかわらず、様々な剥離液と適合性があり、剥離液の働きを妨げず、半導体デバイス又はコンポーネントから、デバイスの動作を妨害しかねない残渣を残さずに水又はアルコールで簡単にすすぎ落とすことができる。そして最後に、非常に低濃度で使用されている金属塩は使用済み剥離液の生分解性に悪影響を及ぼさない。
【0030】
出願人の開示を上記特定の態様を参照しながら提供してきたが、当然のことながら、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から離れることなく、開示された態様において修正及び変更が可能であることは分かるであろう。そのようなすべての修正及び変更もカバーされるものとする。
【実施例】
【0031】
実施例1−銅濃度の関数としてのエッチレート
エッチレート試験のために下記の配合を有する剥離液A及びBを準備した。溶液A−81.9%のジメチルスルホキシド、3.0%のモノエタノールアミン、2.55%の水酸化テトラメチルアンモニウム、10%の3−メチル−3−メトキシブタノール、及び2.55%の水、そして溶液B−81.5%のジメチルスルホキシド、4.5%のモノエタノールアミン、2.0%の水酸化テトラメチルアンモニウム、10%の3−メチル−3−メトキシブタノール、及び2.0%の水。Cu(NOの33%水溶液を準備した。剥離液A及びBの一部を、剥離液中0.005%、0.01%、0.025%、0.05%、及び0.075%の銅濃度を提供するのに足る銅溶液と合わせた。銅塩が添加されていない対照溶液も以下のエッチレート試験で使用した。
【0032】
ブランケットプラズマ蒸着された銅薄膜を有する市販のシリコンウェハを研究のために約2cm×2cmの試験サンプルに分割した。各試験片の銅膜厚は四点プローブを用いて3回測定し、平均の膜厚を初期の銅膜厚とした。各試験溶液に対し、3個の試験サンプルを剥離液に60分間浸漬し、濯いで、各試験サンプルの銅膜厚を再度測定した。各試験サンプルの銅膜厚の平均を結果の銅膜厚とした。銅膜厚の喪失は、結果の銅膜厚を初期膜厚から引くことによって決定した。60分間で観察された銅膜厚の喪失(オングストロームで)を60で割ることによってオングストローム/分の単位のエッチレートを得た。以下の表Iに、異なる濃度の銅塩を含有する剥離液A及びBについて決定されたエッチレートをまとめた。図1はこれらの結果をグラフ的に示したものである。銅塩は剥離液A及びBに直接添加することもできたが、溶解が遅く、該塩を水溶液として添加するのに優る利点はないようであった(ただし水の量が最小限であるならば)。同様に、銅塩を剥離液の適合性ある成分に溶解してから残りの成分を加えるということもできた。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例2−異なる乾燥係数を有する剥離液製剤中での銅塩を添加した場合としない場合の異なる供給源の銅ウェハの銅エッチレート
下記の成分を有する2種類の剥離液を準備した。溶液C−85.5gのジメチルスルホキシド、6.0gのジエチレングリコールモノメチルエーテル、2.7gのアミノエチルエタノールアミン、2.75gの水酸化テトラメチルアンモニウム、及び2.75gの水;溶液D−85.5gのジメチルスルホキシド、6.0gのジエチレングリコールモノメチルエーテル、2.7gのアミノエチルエタノールアミン、2.75gの水酸化テトラメチルアンモニウム、及び0.45gの水。溶液Cは乾燥係数1を有し、溶液Dは乾燥係数11.9を有していた。実施例1に記載された試験法を利用して、これらの各溶液についてエッチレートを0.025%の銅塩を添加した場合及び該塩を添加しない場合(対照)で決定した。二つの異なる供給源から入手した、物理蒸着法によって成膜された銅膜を有するウェハから得られた試験サンプルに対して並行試験を実施した。表IIに得られたエッチレートをまとめた。異なる供給源から入手したウェハ間で何らかのわずかな変動はあったが、ウェハの供給源に関わらず、高い乾燥係数を有する溶液及び0.025%の硝酸銅を含有する溶液で、エッチレートの低減が観察された。
【0035】
【表2】

【0036】
実施例3−様々な剥離液製剤中での銅塩を添加した場合としない場合の銅ウェハの銅エッチレート
以下の表IIIに示されている様々な剥離液製剤を、実施例1に記載のタイプの試験片と実施例1に記載のように接触させた。各製剤を銅塩を添加した場合としない場合で試験し、銅エッチレートを決定した。銅塩を添加された製剤は0.025%のCu(NOを含有していた。表IIIから分かるように、銅塩は一部の製剤において不溶であった。
【0037】
【表3−1】

【0038】
【表3−2】

【0039】
一部の剥離液では、剥離液が第四級水酸化アンモニウムを含有していなかったため、乾燥係数は適用されなかった。
実施例4−モノマー又はポリマーアミンによる銅塩溶解度の増強及びその結果としての銅エッチレートの低減
実施例3からも分かるように、硝酸銅は試験されたいくつかの剥離液製剤に不溶であった。剥離液製剤中の銅塩の溶解度は、銅塩と共にモノマー又はポリマーアミンを配合することによって高めることができる。いくつかのアミン/銅塩の組合せについて、実施例3の製剤7中での溶解度、及び該組合せの銅エッチレートに及ぼす効果を調べた。エッチ試験は実施例1に記載のようにして実施した。アミン/銅塩の組合せを剥離液に配合するのに二つの方法を使用した。第一の方法は、33.3wt%のCu(NO水溶液を準備し、その適量の溶液を、アミンを含有する剥離液に撹拌しながら加えるというものであった。第二の方法は、50wt%のCu(NO水溶液を準備し、適量の該溶液を適量のアミンに加え、そして該アミン/硝酸塩水溶液を剥離液に撹拌しながら加えるというものであった。当業者であればその他の可能な添加法も想像できるので、本開示はここに提供された特別の方法によって制限されることを意図したものではない。
【0040】
表IVに提供された結果から分かるように、モノマー又はポリマーアミンの添加は、剥離液中の銅塩の溶解度を高めることができ、アミン/銅塩を含有する剥離液で観察される銅エッチレートを低減できる。実施例では、製剤中のDMSOの量は添加されるアミンの量によって削減された。
【0041】
【表4】

【0042】
実施例5−Cu(I)塩によるエッチレートの低減
本実施例では、81.9%のジメチルスルホキシド、3.0%のモノエタノールアミン、2.55%の水酸化テトラメチルアンモニウム、10.0%の3−メチル−3−メトキシブタノール、及び2.55%の水を含む剥離液を使用した。該製剤の乾燥係数は1.2であった。この製剤の銅エッチレートを上記のようにして決定したところ、3.5Å/分であることが分かった。CuCl(0.025部)を100部の剥離液に溶解し、銅エッチレートを記載のように決定した。CuClを含有する溶液について決定された銅エッチレートは0.84Å/分であり、MCFは0.76と決定された。
実施例6−コバルト塩によるエッチレートの低減
本実施例では、81.9%のジメチルスルホキシド、3.0%のモノエタノールアミン、2.55%の水酸化テトラメチルアンモニウム、10.0%の3−メチル−3−メトキシブタノール、及び2.55%の水を含む実施例5の剥離液を使用して、コバルト塩を添加した場合としない場合の剥離液における銅エッチレートを試験した。塩の添加が何らない場合、剥離液は乾燥係数1.2を有し、上記の方法に従って決定された銅エッチレートは3.5Å/分であった。Co(NO(0.025部)をこの剥離液に25wt%水溶液として剥離液(100部)に加え、銅エッチレートを再度決定したところ0.87Å/分であった。コバルト塩を含有する剥離液は0.75のMCFを有していた。
【0043】
81.5%のジメチルスルホキシド、4.5%のモノエタノールアミン、2.0%の水酸化テトラメチルアンモニウム、10.0%の3−メチル−3−メトキシブタノール、及び2.0%の水を含み、乾燥係数が1.0である第二の剥離液の銅エッチレートは4.0Å/分と決定された。Co(NO(0.025部)をこの剥離液に25wt%水溶液として剥離液(100部)に加え、銅エッチレートを再度決定したところ1.69Å/分であった。コバルト塩を含有する第二の剥離液は0.58のMCFを有していた。
実施例7−様々な剥離液製剤中での銅塩を添加した場合としない場合のTiWウェハのチタンタングステン(TiW)エッチレート
以下の表Vに示した様々な剥離液製剤を試験片と接触させた。試験片は、ブランケットプラズマ蒸着されたTiW薄膜を有する市販のシリコンウェハから切断したもので、サイズは約2cm×2cmであった。各試験片のTiW膜厚は四点プローブを用いて3回測定し、平均の膜厚を算出して初期のTiW膜厚とした。各試験溶液に対し、3個の試験サンプルを剥離液に30分間浸漬し、濯いで、各試験サンプルのTiW膜厚を再度測定した。各試験サンプルのTiW膜厚の平均を結果のTiW膜厚とした。TiW膜厚の喪失は、結果のTiW膜厚を初期膜厚から引くことによって決定した。30分間で観察されたTiW膜厚の喪失(オングストロームで)を30で割ることによってオングストローム/分の単位のエッチレートを得た。各製剤を銅塩を加えた場合と加えない場合で試験し、TiWエッチレートを決定した。銅塩を添加された製剤は0.025%のCu(NOを含有していた。
【0044】
【表5−1】

【0045】
【表5−2】

【0046】
出願人の発明を特定の態様を参照しながら上で詳細に説明してきたが、当然のことながら、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から離れることなく、開示された態様において修正及び変更が可能であることは分かるであろう。そのようなすべての修正及び変更もカバーされるものとする。さらに、本明細書において引用されたすべての出版物は当該技術分野の技能のレベルを示すものであり、引用によってそれらの全体を、それぞれを個別に引用によって取込み、完全に説明したかのように、本明細書に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板からレジストを除去するための方法であって、
(a)レジスト及び金属をその上に有する基板を提供し;そして
(b)前記基板を、銅塩及びコバルト塩からなる群から選ばれる金属塩を含有するように調合された剥離液を含む組成物に接触させる
作用を含む方法。
【請求項2】
前記接触が、前記基板を、銅塩を用いて調合された組成物と接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触が、前記基板を、コバルト塩を用いて調合された組成物と接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接触が、前記基板を、>0及び≦1の値を有する金属保存係数(MCF)を有する組成物と接触させることを含み、前記MCFは、
MCF=(a−b)/a
と定義され、式中、‘a’は前記金属塩を含有していない前記剥離液で決定されたエッチレートであり、‘b’は前記金属塩を含有する前記剥離液で決定されたエッチレートである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接触が、前記基板を、約0.001wt%〜約0.10wt%の銅塩を含む組成物と接触させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記接触が、前記基板を、ジメチルスルホキシド(DMSO)、第四級水酸化アンモニウム、及びアルカノールアミンを含む組成物と接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記接触が、前記基板を、二次溶媒をさらに含む組成物と接触させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記基板の提供が、前記レジストがフォトレジストである基板を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記基板の提供が、前記レジストがエッチ残渣である基板を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
一部は請求項1に記載の方法に従って得ることが可能な集積回路デバイス。
【請求項11】
一部は請求項1に記載の方法に従って得ることが可能な電子相互接続構造。
【請求項12】
金属を含有する基板からレジストを除去するための組成物であって、前記組成物は、剥離液と、銅塩、コバルト塩及びそれらの組合せからなる群から選ばれる金属塩とを含む組成物。
【請求項13】
銅塩を含有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
コバルト塩を含有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記銅塩がアミンの添加によって可溶化される、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が約0.001wt%〜約0.10wt%の銅塩を含有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
>0及び≦1の範囲の金属保存係数(MCF)を有し、前記MCFは、
MCF=(a−b)/a
と定義され、式中、‘a’は前記金属塩を含有していない前記剥離液で決定されたエッチレートであり、‘b’は前記金属塩を含有する前記剥離液で決定されたエッチレートである、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、第四級水酸化アンモニウム、及びアルカノールアミンを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が二次溶媒をさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
低減された金属エッチレートを提供する剥離液の製造法であって、
(a)容器を提供し;
(b)剥離液製剤の成分を提供し;
(c)銅塩及びコバルト塩からなる群から選ばれる金属塩を提供し;そして
(d)前記剥離液の前記成分及び前記金属塩を前記容器に加えて内容物を提供する
作用を含む方法。
【請求項21】
前記提供及び添加が、銅塩を提供及び添加することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項22】
前記銅塩の提供及び添加が、硝酸銅を提供及び添加することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記硝酸銅の提供及び添加が、約0.001wt%〜約0.10wt%の前記硝酸銅を提供することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記剥離液の前記成分の前記提供が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、第四級水酸化アンモニウム、及びアルカノールアミンを提供することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記剥離液の前記成分の前記提供が、二次溶媒をさらに提供することを含む、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−536065(P2010−536065A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520131(P2010−520131)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/071485
【国際公開番号】WO2009/020799
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(508129137)ダイナロイ・エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】