説明

銅配線半導体用洗浄剤

【課題】 研磨工程由来の有機残渣除去性能及び金属残渣除去性能が高く、かつ銅配線の腐食抑制性能に優れた銅配線半導体用洗浄剤を提供する。
【解決手段】 特定の環状アミン(A)、水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)、4級アンモニウム化合物(C)、アスコルビン酸および水を必須成分とする銅配線半導体用洗浄剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅配線半導体用の洗浄剤に関する。さらに詳しくは、半導体製造工程における研磨後の洗浄工程に用いる洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの銅配線形成は、絶縁膜に配線溝を形成後、銅を成膜とすることで溝内に銅を埋め込み、これに続く研磨工程によって溝以外の銅膜を研磨除去する方法でおこなわれている。
この研磨工程後における銅配線ならびに絶縁膜上には、研磨工程で使用される薬剤や研磨装置に由来する有機残渣ならびに金属残渣が多数付着しているため、表面を洗浄する必要がある。
この洗浄剤(銅配線半導体用洗浄剤)として、鎖状アミンを含有する洗浄剤(特許文献1)や、アルカノールアミンを含有する洗浄剤(特許文献2)が知られている。
【0003】
しかし、これらの鎖状アミンやアルカノールアミンを含有する洗浄剤は、有機残渣の除去性には優れているものの、絶縁膜上の金属残渣の除去性が不十分であるという問題がある。
【0004】
また、絶縁膜上の金属残渣除去性を改善する方法として、鎖状アミンやアルカノールアミンに有機酸(例えばクエン酸)を添加した洗浄剤(特許文献3)が知られているが、銅配線の腐食するという問題がある。
【0005】
半導体の製造において絶縁膜上の金属残渣、例えば亜鉛、鉄、マグネシウムなどが残留することは絶縁膜を介した銅配線間で短絡を生じる原因となる。また、銅配線の腐食は配線の電気抵抗を増大させるため、半導体の性能に悪影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−60377号公報
【特許文献2】特開平9−296200号公報
【特許文献3】特開2005−194294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、研磨工程後において銅配線ならびに絶縁膜上に残存する、有機残渣と金属残渣の除去性に優れ、かつ銅配線の腐食抑制性効果に優れた銅配線半導体用洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される環状アミン(A)、水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)、4級アンモニウム化合物(C)、アスコルビン酸および水を必須成分とすることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤である。
【0009】
【化1】

[式(1)中のR〜Rは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基またはアミノアルキル基を表す。但し、R〜Rの少なくともいずれか1つは、アミノアルキル基である。]
【発明の効果】
【0010】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、研磨工程後の銅配線と絶縁膜の上に残留する有機残渣除去性や金属残渣の除去性に優れ、かつ、銅配線の銅腐食抑制性能に優れている。
また、本発明の半導体基板又は半導体素子の製造方法によると、接触抵抗に優れ、かつ配線の短絡がない半導体基板又は半導体素子が容易に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、特定の化学構造の環状アミン(A)、水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)、4級アンモニウム化合物(C)、アスコルビン酸および水からなる合計5つの成分を必須とする。
【0012】
本発明の環状アミン(A)は、下記一般式(1)で表される。
【0013】
【化2】

【0014】
[式(1)中のR〜Rは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基またはアミノアルキル基を表す。但し、R〜Rの少なくともいずれか1つは、アミノアルキル基である。]
【0015】
〜Rは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基またはアミノアルキル基を表し、R〜Rのいずれかの1つ、あるいは2つ以上は、必ずアミノアルキル基である。残りは水素原子かアルキル基である。
【0016】
環状アミン(A)としては、アミノアルキル基を、上記の一般式(1)のR位に有する環状アミン(A1)、R位に有する環状アミン(A2)、およびR、RまたはR、R位のいずれかに有する環状アミン(A3)が挙げられる。
【0017】
アミノアルキル基を一般式(1)のR位に有する環状アミン(A1)としては、アミノアルキル基の炭素数が1〜4であって、R〜Rのすべてが水素原子である環状アミン(A11)、R〜Rのいずれかがアルキル基である環状アミン(A12)等が挙げられる。
【0018】
環状アミン(A11)としては、N−アミノメチルピペリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノブチルピペリジン等が挙げられる。
【0019】
環状アミン(A12)としては、N−アミノメチル−4−ピペコリン、N−アミノエチル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン等が挙げられる。
【0020】
アミノアルキル基を一般式(1)のR位に有する環状アミン(A2)としては、アミノアルキル基の炭素数が1〜4であって、R〜Rのすべてが水素原子である環状アミン(A21)、R〜Rのいずれかがアルキル基である環状アミン(A22)等が挙げられる。
【0021】
環状アミン(A21)としては、4−アミノメチルピペリジン、4−アミノエチルピペリジン、4−アミノプロピルピペリジン、4−アミノブチルピペリジン等が挙げられる。
【0022】
環状アミン(A22)としては、4−アミノメチル−1−メチルピペリジン、4−アミノエチル−1−プチルピペリジン、4−アミノプロピル−2−メチルピペリジン等が挙げられる。
【0023】
アミノアルキル基を一般式(1)のR、RまたはR、R位に有する環状アミン(A3)としては、アミノアルキル基の炭素数が1〜4であって、アミノアルキル基以外のすべての置換基が水素原子である環状アミン(A31)、アミノアルキル基以外の置換基の少なくとも1つがアルキル基である環状アミン(A32)等が挙げられる。
【0024】
環状アミン(A31)としては、2−アミノメチルピペリジン、2−アミノエチルピペリジン、3−アミノプロピルピペリジン、3−アミノブチルピペリジン等が挙げられる。
【0025】
環状アミン(A32)としては、2−アミノメチル−4−メチルピペリジン、2−アミノエチル−4−プチルピペリジン、2−アミノプロピル−4−メチルピペリジン等が挙げられる。
【0026】
これらの有機アミン(A)のうち、錯化作用による金属残渣除去性の観点から好ましくはアミノアルキル基を一般式(1)のR位に有する環状アミン(A1)であり、水溶性の観点からより好ましくはアミノアルキル基の炭素数が1〜4であって、R〜Rのすべてが水素原子である環状アミン(A11)である。
さらに、有機残渣除去性の観点からアミノアルキル基の炭素数が1〜2であるN−アミノメチルピペリジン、N−アミノエチルピペリジンが特に好ましい。
【0027】
環状アミン(A)の含有量は、有機残渣除去性および銅腐食抑制性の観点から、環状アミン(A)、水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)、4級アンモニウム化合物(C)、アスコルビン酸および水の合計重量に基づいて、通常0.001〜5重量%であり、好ましくは0.005〜3重量%、さらに好ましくは0.01〜2重量%、特に好ましくは0.01〜1重量%である。
【0028】
水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)としては、フェノール骨格(ベンゼン骨格又は芳香環)に2〜5個の水酸基を含む化合物であり、カルボキシル基などの他の官能基を含んでいる場合がある。
具体的には、水酸基を2個含むポリフェノール系還元剤としては、カテコール、カフェー酸、アリザリン、エンドクロシン、ウルシオール、フラボン、レゾルシノール、ヒドロキノン等が挙げられる。
水酸基を3個含むポリフェノール系還元剤としてはエモジン、ピロガロール、没食子酸が挙げられる。
水酸基を4個または5個含むポリフェノール系還元剤としては、ケルセチン、カテキン、アントシアニン等が挙げられる。
【0029】
これらの還元剤(B)のうち、銅腐食抑制性の観点から、好ましくは水酸基を3〜5個含むポリフェノール系還元剤であり、洗浄剤中における経時化学安定性の観点からより好ましくは没食子酸、ピロガロール、カテキンが挙げられる。
さらに、金属残渣除去性の観点から、分子中にカルボキシル基を有する没食子酸が特に好ましい。
【0030】
水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)の含有量は、銅腐食抑制性と金属残渣除去性の観点から、環状アミン(A)、水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)、4級アンモニウム化合物(C)、アスコルビン酸、および水の合計重量に基づいて、通常0.001〜5重量%であり、好ましくは0.001〜2重量%、さらに好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0031】
4級アンモニウム化合物(C)としては、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキル−ヒドロキシアルキルアンモニウム塩、ジアルキル−ビス(ヒドロキシアルキル)アンモニウム塩及びトリス(ヒドロキシアルキル)アルキルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0032】
これらの4級アンモニウム化合物(C)のうち、洗浄性の観点から、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、(ヒドロキシアルキル)トリアルキルアンモニウムヒドロキシド、ビス(ヒドロキシアルキル)ジアルキルアンモニウムヒドロキシド及びトリス(ヒドロキシアルキル)アルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
さらに、銅腐食抑制の観点からテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド及び(ヒドロキシアルキル)トリアルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましく、より好ましくは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、(ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(コリン)が好ましく、特に好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。
【0033】
4級アンモニウム化合物(C)の含有量は、有機残渣除去性および銅腐食抑制性の観点から、環状アミン(A)、水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)、4級アンモニウム化合物(C)、アスコルビン酸、および水の合計重量に基づいて、通常0.01〜10重量%であり、好ましくは0.02〜5重量%、さらに好ましくは0.05〜2重量%である。
【0034】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、アスコルビン酸が必須成分であり、具体的には、L−(+)−アスコルビン酸が挙げられる。
アスコルビン酸は、水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)に対する酸化抑制機能および金属残渣除去性を向上させる機能を有しており、もしアスコルビン酸を含有しない場合、銅腐食抑制性と金属残渣除去性の両性能を満足することができない。
【0035】
アスコルビン酸の含有量は、銅腐食抑制性と金属残渣除去性の観点から、環状アミン(A)、水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)、4級アンモニウム化合物(C)、アスコルビン酸および水の合計重量に基づいて、通常0.01〜5重量%であり、好ましくは0.05〜3重量%、さらに好ましくは0.1〜2重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%である。
【0036】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、水が必須成分であり、具体的には、電気伝導率(μS/cm;25℃)が小さいものが挙げられる。具体的には、電気伝導率が、有機残渣および金属残渣の除去性、入手のしやすさ、及び銅配線の再汚染(水中の金属イオンの銅配線への再付着)防止の観点から、通常0.055〜0.2、好ましくは0.056〜0.1、さらに好ましくは0.057〜0.08である。このような電気伝導率が小さい水としては、超純水が好ましい。
なお、電気伝導率は、JIS K0400−13−10:1999に準拠して測定される。
【0037】
水の含有量は、有機残渣および金属残渣の除去性及び溶液粘度の観点から、環状アミン(A)、水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)、4級アンモニウム化合物(C)、アスコルビン酸および水の合計重量に基づいて、通常69.0〜99.9重量%であり、好ましくは79.0〜99.5重量%、さらに好ましくは89.0〜99.0重量%、特に好ましくは92.0〜99.0重量%である。
【0038】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、必須成分である環状アミン(A)、水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)、4級アンモニウム化合物(C)、アスコルビン酸、水以外に、必要に応じて、その他の成分(D)として界面活性剤(D1)、水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)以外の還元剤(D2)、錯化剤(D3)などを添加してもよい。
【0039】
界面活性剤(D1)は、有機残渣除去性および金属不純物除去性向上の観点から添加することができる。
このような界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤を添加する場合、界面活性剤の含有量は、洗浄剤の表面張力を低下させるのに必要な量でよく、本発明の銅配線半導体用洗浄剤の重量に基づいて、通常0.001〜1重量%、好ましくは0.005〜0.3重量%、特に好ましくは0.01〜0.1重量%である。
【0040】
水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)以外の還元剤(D2)としては、有機還元剤及び無機還元剤が挙げられる。
有機還元剤としては、シュウ酸またはその塩、シュウ酸水素またはその塩、炭素数6〜9のアルデヒド等、水酸基を1個含む炭素数6〜30のフェノール化合物やベンズアルデヒド等が挙げられ、無機還元剤としては、亜硫酸またはその塩、チオ硫酸またはその塩等が挙げられる。
【0041】
これらの還元剤のうち、水溶性及び銅腐食抑制性効果の観点から、有機還元剤が好ましく、さらに好ましくは脂肪族有機還元剤、特に好ましくはシュウ酸またはその塩である。さらに、錯化作用の観点等から、シュウ酸塩が好ましく、さらに好ましくはシュウ酸アンモニウムである。
【0042】
これらの還元剤を添加する場合、還元剤の含有量は、銅配線の腐食抑制性効果向上の観点から、本発明の銅配線半導体用洗浄剤の重量に基づいて、通常0.001〜1.0重量%、さらに好ましくは0.01〜0.5重量%、特に好ましくは0.05〜0.1重量%である。
これらの還元剤、すなわち水酸基を2〜5個含むポリフェノール系以外の還元剤の含有量が1.0重量%より多くなると腐食抑制性効果が逆に低下してしまう。
【0043】
錯化剤(D3)としては、炭素数1〜6の芳香族又は脂肪族ヒドロキシカルボン酸(またはその塩)、炭素数9〜23のヒドロキシル基かカルボキシル基の少なくとも一方を有する複素環式化合物、炭素数6〜9のホスホン酸(またはその塩)等が挙げられる。
【0044】
これらの錯化剤のうち、銅腐食抑制性効果向上の観点から、脂肪族ヒドロキシカルボン酸(またはその塩)及びポリカルボン酸(またはその塩)が好ましく、脂肪族ヒドロキシカルボン酸(またはその塩)が特に好ましい。
【0045】
錯化剤を添加する場合、錯化剤の含有量は、銅配線の腐食抑制性効果向上の観点から、本発明の銅配線半導体用洗浄剤の重量に基づいて、通常0.001〜0.5重量%であり、好ましくは0.01〜0.3重量%、特に好ましくは0.05〜0.1重量%である。錯化剤の含有量が0.5重量%より多くなると腐食抑制効果が低下する。
【0046】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、環状アミン(A)、水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)、4級アンモニウム化合物(C)、アスコルビン酸、および、必要によりその他の成分(D)を水と混合することによって製造することができる。
混合する方法としては、特に限定されないが、容易かつ短時間で均一に混合できるという観点等から、水と水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)とアスコルビン酸を混合し、続いて環状アミン(A)と4級アンモニウム化合物(C)、必要によりその他の成分(D)を混合する方法が好ましい。
均一混合する際の温度及び時間には制限はなく、製造する規模や設備等に応じて適宜決めることができ、例えば、製造規模が数kg程度の場合、5〜40℃で0.1〜5時間程度が好ましい。
混合装置としては、撹拌機又は分散機等が使用できる。撹拌機としては、メカニカルスターラー及びマグネチックスターラー等が挙げられる。分散機としては、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル及びビーズミル等が挙げられる。
【0047】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、銅配線を有する半導体基板、半導体素子、半導体洗浄性評価用の銅メッキ基板など、また記録媒体磁気ディスク用のアルミニウム基板、ガラス状炭素基板、ガラス基板、セラミックス基板など、また液晶用ガラス基板、太陽電池用ガラス基板などを洗浄する洗浄方法に使用することができる。
【0048】
銅配線を有する半導体基板又は半導体素子などを洗浄する洗浄方法としては、枚葉方式とバッチ方式が挙げられる。枚葉方式は、一枚ずつ半導体基板又は半導体素子を回転させ、銅配線半導体用洗浄剤を注入しながら、ブラシを用いて洗浄する方法であり、バッチ方式とは複数枚の半導体基板又は半導体素子を銅配線半導体用洗浄剤に漬けて洗浄する方法である。
【0049】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、銅配線を有する半導体基板又は半導体素子を製造する過程において、レジスト現像後、ドライエッチング後、ウェットエッチング後、ドライアッシング後、レジスト剥離後、CMP処理前後及びCVD処理前後等の洗浄工程に使用できる。特に、有機残渣除去性と金属不純物除去性の観点から、CMP処理後の洗浄工程に用いることが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0051】
以下に、実施例1〜4と比較例1〜67の銅配線半導体用洗浄剤の調製について説明をする。
<実施例1>
ポリエチレン製300ml容器に、環状アミンとしてN−アミノエチルピペリジン(A−1)(商品名:1−(2−アミノエチル)ピペリジン、純度98%、アルドリッチ製)0.10部、没食子酸(B−1)(商品名:没食子酸一水和物、純度99.5%、和光純薬工業製)0.06部を加えた。次に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(C−1)(商品名:25%TMAH、純度25%水溶液、多摩化学社製)0.400.10部、アスコルビン酸(商品名:L−(+)−アスコルビン酸、純度99.5%、和光純薬工業製)0.20部を加えた後、合計重量が100.00部になるように水を99.2499.54部加えた。マグネチックスターラーで撹拌し、本発明の銅配線半導体用洗浄剤(E−1)を得た。
【0052】
<実施例2>
実施例1において、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(C−1)の代わりに、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(C−2)(商品名:25%TEAH、純度25%水溶液、多摩化学社製)0.400.10部とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の銅配線半導体用洗浄剤(E−2)を得た。
【0053】
<実施例3>
実施例1において、N−アミノエチルピペリジン(A−1)の代わりに、4−アミノメチルピペリジン(A−2)(商品名:4−(アミノメチル)ピペリジン、純度96%、アルドリッチ製)0.10部とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の銅配線半導体用洗浄剤(E−3)を得た。
【0054】
<実施例4>
実施例2において、N−アミノエチルピペリジン(A−1)の代わりに、4−アミノメチルピペリジン(A−2)0.10部とした以外は、実施例2と同様な操作を行い、本発明の銅配線半導体用洗浄剤(E−4)を得た。
【0055】
<比較例1>
実施例1において、没食子酸(B−1)を加えない以外は、実施例1と同様な操作を行い、比較のための銅配線半導体用洗浄剤(E’−1)を得た。
【0056】
<比較例2>
実施例1において、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(C−1)を加えない以外は、実施例1と同様な操作を行い、比較のための銅配線半導体用洗浄剤(E’−2)を得た。
【0057】
<比較例3>
実施例1において、アスコルビン酸を加えない以外は、実施例1と同様な操作を行い、比較のための銅配線半導体用洗浄剤(E’−3)を得た。
【0058】
<比較例4>
実施例1において、N−アミノエチルピペリジン(A−1)の代わりに、モノエタノールアミン(A’−1)(商品名:2−アミノエタノール、純度97%、和光純薬製)0.10部を加えた以外は、実施例1と同様な操作を行い、比較のための銅配線半導体用洗浄剤(E’−4)を得た。
【0059】
<比較例5>
実施例1において、N−アミノエチルピペリジン(A−1)の代わりに、トリエタノールアミン(A’−2)(商品名:トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン、純度98%、アルドリッチ製)0.10部を加えた以外は、実施例1と同様な操作を行い、比較のための銅配線半導体用洗浄剤(E’−5)を得た。
【0060】
<比較例6>
実施例1において、アスコルビン酸の代わりに、クエン酸(商品名:クエン酸、純度99.5%、和光純薬製)0.20部を加えた以外は、実施例1と同様な操作を行い、比較のための銅配線半導体用洗浄剤(E’−6)を得た。
【0061】
実施例1〜4で作成した本発明の銅配線用半導体用洗浄剤(E−1)〜(E−4)、および比較例1〜6で作成した比較のための銅配線用半導体用洗浄剤(E’−1)〜(E’−6)について、ベンゾトリアゾール有機残渣の除去性、金属残渣除去性、ならびに銅腐食抑制性(銅の溶出量)を、以下の方法で測定し、評価した。
実施例および比較例の各成分について表1に、評価結果を表2にそれぞれ示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1中の化合物名の略称は以下の化合物を示す。
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%水溶液
TEAH:テトラエチルアンモニウムヒドロキシド25%水溶液
【0064】
【表2】

【0065】
<ベンゾトリアゾール有機残渣の除去性の評価方法>
ベンゾトリアゾール有機残渣の除去性は、以下の手順にしたがって、評価した。
(1)銅メッキされたシリコンウエハの洗浄
シリコンウエハに銅メッキが施されたウエハ(アドバンスマテリアルテクノロジー社製、「Cuメッキ10000A Wafer」、銅メッキの膜厚=1.0μm)を、縦1.5cm×横1.5cmに切断し、10%酢酸水溶液中に1分間浸漬した後、水で洗浄した。
【0066】
(2)ベンゾトリアゾール有機残渣液の調製
ベンゾトリアゾール0.4g、濃度30%の過酸化水素水0.6g、水200gを混合し、塩酸でpHが3.0になるように調整し、有機残渣液1を作成した。
【0067】
(3)ベンゾトリアゾール有機残渣を付着させた銅メッキウエハの作成
銅メッキウエハを有機残渣液1に60秒間浸漬した後、水に60秒間浸漬し、ベンゾトリアゾール有機残渣を付着させた銅メッキウエハを作成した。
【0068】
(4)銅メッキウエハに付着させたベンゾトリアゾール有機残渣量の確認
銅メッキウエハに付着したベンゾトリアゾール有機残渣量は、ベンゾトリアゾールに由来する窒素の量を、X線光電子分光装置(アルバックファイ社製、ESCA−5400型)を用いて測定することによって確認した。
具体的には、XPSを用いて、結合エネルギー397eV〜399eVの範囲で光電子数の測定を行い、窒素に由来する397.5〜398.4eVの範囲におけるピーク面積値を求めた。軟X線は、MgKα線(1253.6eV)を使用した。
【0069】
(5)ベンゾトリアゾール有機残渣の除去
本発明及び比較用の銅配線半導体用洗浄剤各50gに、(3)で作成したベンゾトリアゾールを含む有機残渣を付着させた銅メッキウエハを3分間浸漬し、銅メッキウエハからベンゾトリアゾール有機残渣を除去した。その後、水1Lに60秒間浸漬し、窒素気流でウエハ表面を乾燥させた。
【0070】
(6)銅メッキウエハに残留したベンゾトリアゾール有機残渣量の確認
銅メッキウエハに残留したベンゾトリアゾール量は、ベンゾトリアゾールに由来する窒素の量を、(4)と同様に、XPSを用いて測定することによって確認した。
【0071】
(7)ベンゾトリアゾール有機残渣除去性の評価
(4)と(6)で測定した、2つのピーク面積値を下記式(1)に代入し、ベンゾトリアゾール有機残渣除去率を算出した。除去率が90%以上のものを○、85%以上90%未満のものを△、85%未満のものを×と判定した。
【0072】
【数1】

【0073】
Xa:有機残渣除去前のベンゾトリアゾール由来の窒素のピーク面積値。
Xb:有機残渣除去後のベンゾトリアゾール由来の窒素のピーク面積値。
【0074】
<金属残渣除去性の評価>
金属残渣除去性の評価は、ウエハの絶縁膜上に硝酸亜鉛を付着させ、銅配線半導体用洗浄剤中に浸漬させた後、ウエハから溶出した亜鉛の溶出量を測定することによって行った。単位面積あたりの亜鉛の溶出量が多いほど、金属残渣除去性に優れると判定した。亜鉛の溶出量の測定はICP−MS分析装置(アジレントテクノロジー社製 Agilent7500cs型)で行なった。
【0075】
(1)テトラエトキシシランを被覆させたシリコンウエハの洗浄
テトラエトキシシラン(TEOS)を被覆させたシリコンウエハ(アドバンテック社製、「P−TEOS1.5μ」、テトラエトキシシランの膜厚=1.5μm。以降、「TEOSウエハ」と略記)を、縦1.0cm×横2.0cmに切断し、イソプロピルアルコールで洗浄した後、さらに1%クエン酸水溶液に1分間浸漬し、水で洗浄した。
【0076】
(2)TEOSウエハへの硝酸亜鉛の付着
洗浄したTEOSウエハを0.1%硝酸亜鉛水溶液20gに1分間浸漬後、窒素気流で表面を乾燥し、硝酸亜鉛を付着させたTEOSウエハの試験片を得た。
【0077】
(3)試験片からの硝酸亜鉛の除去
試験片を、本発明と比較用の銅配線半導体用洗浄剤各10gに1分間浸漬させた後、銅配線半導体用洗浄剤から試験片を取り出した。
【0078】
(4)銅配線半導体用洗浄剤中の亜鉛含量の定量
(3)で試験片を取り出した後の銅配線半導体用洗浄剤を5g取り出し、硝酸水溶液でpHを3.0に調整した。その後、全量が10gになるまで水を加えて、測定液とした。ICP−MS分析装置で亜鉛を定量した。
【0079】
(5)金属残渣除去性の評価
以下の式(2)を用いて金属残渣の除去量を算出した。金属残渣の除去量が15ng/cm以上のものを◎、10ng/cm以上〜15ng/cm未満のものを○、10ng/cm未満のものを×と判定した。
【0080】
【数2】

【0081】
Zncon:ICP−MS分析で定量した測定液中の亜鉛濃度(ppb(ng/g))
D1:試験片を浸漬させた銅配線半導体用洗浄剤の液量(g)
D2:pH調整前に取り出した銅配線半導体用洗浄剤の液量(g)
D3:測定液の液量(g)
TEOS:TEOSウエハにおけるTEOS被覆面の面積(cm
【0082】
<銅腐食抑制性の測定方法>
銅腐食抑制性の評価は、銅メッキウエハを銅配線半導体用洗浄剤中に浸漬させた後、銅メッキウエハから溶出した銅の濃度を定量することによって行った。単位面積あたりの銅の溶出量が少ないほど、銅腐食抑制性能に優れると判定した。銅の濃度はICP−MS分析装置(誘導結合プラズマ質量分析装置)(アジレントテクノロジー社製、Agilent7500cs型)で測定した。
【0083】
(1)銅メッキウエハの洗浄
銅メッキウエハを、縦1.0cm×横2.0cmに切断し、10%酢酸水溶液中に1分間浸漬した後、水で洗浄した。
【0084】
(2)銅の溶出
(1)で洗浄した銅メッキウエハを、本発明と比較用の銅配線半導体用洗浄剤各10gに浸漬し、25℃で3分間静置した後、銅メッキウエハを銅配線半導体用洗浄剤から取り出した。
【0085】
(3)銅メッキウエハから溶出した銅の溶出量の測定
銅メッキウエハを浸漬させた後の銅配線半導体用洗浄剤を5g取り出し、硝酸水溶液でpHを3.0に調整した。その後、全量が10gになるまで水を加えて測定液とした。測定液中の銅の濃度を、ICP−MS分析装置を用いて測定した。
【0086】
(4)銅腐食抑制性の評価
(3)で測定して銅の濃度を下記式(3)に代入し、銅の溶出量を算出した。
銅の溶出量が0.1μg/cm未満のものを◎、0.1μg/cm以上〜0.2μg/cm未満のものを○、0.2μg/cm以上のものを×と判定した。
【0087】
【数3】

【0088】
Cucon:ICP−MS分析で測定した測定液中の銅濃度(ppm(μg/g))
C1:銅メッキウエハを浸漬した銅配線半導体用洗浄剤の液量(g)
C2:pH調整前に取り出した銅配線半導体用洗浄剤の液量(g)
C3:測定液の液量(g)
Scu:銅メッキウエハにおける銅メッキ面の面積(cm
【0089】
表2に示すように、実施例1〜4の本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、性能評価した3つの項目すべてで良好な結果が得られた。
一方、成分(B)、成分(C)またはアスコルビン酸のいずれか1つが欠けている比較例1〜3の洗浄剤は、評価した3つの項目の少なくとも1項目で不良となった。
また、鎖状のアルカノールアミンを用いた比較例4と比較例5、およびアスコルビン酸の代わりにクエン酸を用いた比較例6は、銅腐食抑制性が劣る結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、ベンゾトリアゾール有機残渣の除去性、銅配線の腐食抑制性能、及び研磨剤や研磨装置由来の金属残渣除去性が優れているため、銅配線用半導体用洗浄剤として好適に使用できる。
また、本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、銅配線上だけでなく、絶縁膜上の有機残渣除去性と金属不純物除去性にも優れているため、再生ウエハの洗浄剤、銅配線以外のウェットエッチング後の洗浄剤としても使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される環状アミン(A)、水酸基を2〜5個含むポリフェノール系還元剤(B)、4級アンモニウム化合物(C)、アスコルビン酸、および水を必須成分とすることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤。
【化1】

[式(1)中のR〜Rは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基またはアミノアルキル基を表す。但し、R〜Rの少なくともいずれか1つは、アミノアルキル基である。]
【請求項2】
該ポリフェノール系還元剤(B)が没食子酸である請求項1記載の銅配線半導体用洗浄剤。
【請求項3】
該4級アンモニウム化合物(C)が、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドである請求項1または2記載の銅配線半導体用洗浄剤。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の銅配線半導体用洗浄剤を用いて洗浄する工程を含む半導体基板又は半導体素子およびその製造方法。

【公開番号】特開2010−235725(P2010−235725A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84086(P2009−84086)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】