説明

電気自動車の前部構造

【課題】電気自動車の前部構造において、エンジンルーム内のレイアウト自由度を向上させる。
【解決手段】エンジン10、ジェネレータ14及びギヤ装置34を一体として発電ユニットUを構成する。この発電ユニットUを左右の前輪26,28の車輪軸よりも車両前方に位置するようにエンジンルーム44内に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと該エンジンによって駆動可能な発電機と少なくとも該発電機からの発電電力が供給されて充電されるバッテリと該バッテリから電力が供給されて駆動輪を駆動させるモータとを備えている電気自動車の前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンと、このエンジンによって駆動可能な発電機と、少なくとも発電機からの発電電力が供給されて充電されるバッテリと、このバッテリから電力が供給されて駆動輪を駆動させるモータとを備えている電気自動車が従来技術として知られている。
【0003】
特許文献1のものでは、エンジンルームにおいて、エンジンの近傍に電気モータを配置するとともに、後席の下に電気モータの電力供給源としてのバッテリを配置し、運転席と助手席との下方で且つ床下に燃料タンクを配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−51943号公報(図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電気自動車として、近距離走行時に、外部電力が供給されて充電されたバッテリの電力を、モータに供給して駆動輪を駆動させる一方、遠距離走行時に、エンジンによって発電機を駆動してその発電電力をバッテリに供給して充電して、その充電されたバッテリの電力をモータに供給して駆動輪を駆動させるプラグインハイブリッド車が知られている。このプラグインハイブリッド車では、上述の如く、エンジンを駆動するのは、基本的に、遠距離走行時のみであるため、エンジンを小型化することが可能である。
【0006】
ここで、電気自動車、特に、エンジンが小型化したプラグインハイブリッド車において、エンジンや発電機をエンジンルーム内に配置する場合、エンジンルーム内のレイアウト自由度を向上させたい。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンと該エンジンによって駆動可能な発電機と少なくとも該発電機からの発電電力が供給されて充電されるバッテリと該バッテリから電力が供給されて駆動輪を駆動させるモータとを備えている電気自動車の前部構造において、エンジンルーム内のレイアウト自由度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、エンジンと該エンジンによって駆動可能な発電機と少なくとも該発電機からの発電電力が供給されて充電されるバッテリと該バッテリから電力が供給されて駆動輪を駆動させるモータとを備えている電気自動車の前部構造であって、上記エンジンと上記発電機と該エンジンの動力を該発電機に伝達する動力伝達装置とが一体となって発電ユニットを構成しており、上記発電ユニットは、左右の前輪の車輪軸よりも車両前方に位置するようにエンジンルーム内に配置されていることを特徴とするものである。
【0009】
これによれば、エンジンを小型化した場合、エンジン及び発電機を上下方向や車両前後方向、車幅方向などに並べて配置することができ、エンジン、発電機及び動力伝達装置が一体となって構成された発電ユニットをコンパクトにすることができ、エンジンルーム内のレイアウト自由度を向上させることができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記動力伝達装置は、プラネタリギヤ装置であり、上記エンジン、上記発電機及び上記プラネタリギヤ装置は、該エンジンの駆動軸と該発電機の回転軸とが車幅方向に延び且つ同軸上に位置するように、上記エンジン、上記プラネタリギヤ装置、上記発電機の順に車幅方向に並んで配置されていることを特徴とするものである。
【0011】
エンジンを小型化した場合、本発明のように、エンジン、発電機及びプラネタリギヤ装置を車幅方向に並べて配置することができ、発電ユニットをコンパクトにすることができ、エンジンルーム内のレイアウト自由度を向上させることができる。
【0012】
また、動力伝達装置をプラネタリギヤ装置で構成しているので、エンジンの動力を適切な回転数で発電機に伝達することができる。
【0013】
第3の発明は、上記第1の発明において、上記エンジン及び上記発電機は、上下方向に並んで配置されていることを特徴とするものである。
【0014】
これによれば、エンジン及び発電機を上下方向に並べて配置しているので、発電ユニットの車両側方にスペースを空けることができ、このスペースを有効利用することが可能になる。
【0015】
第4の発明は、上記第1又は3の発明において、上記動力伝達装置は、チェーン装置又はギヤ装置であることを特徴とするものである。
【0016】
これによれば、動力伝達装置をチェーン装置又はギヤ装置で構成しているので、エンジンの動力を適切な回転数で発電機に伝達することができる。
【0017】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか1つの発明において、上記エンジンの排気系が、略筒状のマフラーを有しており、上記マフラーは、その軸方向が車幅方向に延びるように上記前輪の車輪軸よりも車両後方で且つダッシュパネルの下方に配置されており、上記エンジンの排気系における上記マフラーよりも下流側の部分が、車両の車幅方向外方側において上記マフラーからフロアパネルの下方を通って車両後方に延びていることを特徴とするものである。
【0018】
これによれば、略筒状のマフラーを、その軸方向が車幅方向に延びるように前輪の車輪軸よりも車両後方で且つダッシュパネルの下方に配置しているとともに、エンジンの排気系におけるマフラーよりも下流側の部分が、車両の車幅方向外方側においてマフラーからフロアパネルの下方を通って車両後方に延びているので、フロアパネルにフロアトンネルが不必要になるなど、車両の前部構造のデザイン自由度を向上させることができる。
【0019】
第6の発明は、上記第1〜5のいずれか1つの発明において、上記駆動輪は、左右の前輪を有しており、上記モータは、上記エンジンルーム内における上記発電ユニットよりも車両後方に車幅方向に間隔を開けて並んで配置された、上記左前輪用のモータ及び上記右前輪用のモータを有しており、上記エンジンの排気系が、該エンジンから上記左前輪用モータ及び上記右前輪用モータの間を通って車両後方に延びていることを特徴とするものである。
【0020】
これによれば、モータとして左前輪用のモータ及び右前輪用のモータを設けているので、左右の前輪を連結する車軸が不必要となる。そして、本発明によれば、左前輪用モータと右前輪用モータとをエンジンルーム内における発電ユニットよりも車両後方に車幅方向に間隔を開けて並べて配置しているとともに、エンジンの排気系が、該エンジンから左前輪用モータ及び右前輪用モータの間を通って車両後方に延びている。つまり、左右の前輪を連結する車軸がある場合、エンジンの排気系をその車軸の上方を通す必要があるが、上述の如く、左右の前輪を連結する車軸がないので、その必要がない。したがって、特に、第2の発明において、フードの高さを低くすることが可能になる。
【0021】
第7の発明は、上記第1〜6のいずれか1つの発明において、上記エンジンルーム内に配置された上記エンジン用の燃料タンクと、上記エンジンルーム内に配置され、吸気口がフロントバンパフェース近傍に形成され、上記エンジンの排気系及び上記燃料タンクを冷却するように上記吸気口から吸入した空気を上記エンジンルーム内において流通させる冷却手段とをさらに備えていることを特徴とするものである。
【0022】
これによれば、エンジンルーム内に配置され、吸気口がフロントバンパフェース近傍に形成され、エンジンの排気系及び燃料タンクを冷却するように吸気口から吸入した空気をエンジンルーム内において流通させる冷却手段を設けているので、エンジンの排気系及び燃料タンクを冷却することができる。
【0023】
第8の発明は、上記第1〜7のいずれか1つの発明において、上記エンジンは、1ローターのロータリーエンジンであることを特徴とするものである。
【0024】
これによれば、エンジンを1ローターのロータリーエンジンで構成しているので、エンジンの上下方向長さを短くすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、エンジンを小型化した場合、エンジン及び発電機を並べて配置することができ、エンジン、発電機及び動力伝達装置が一体となって構成された発電ユニットをコンパクトにすることができ、エンジンルーム内のレイアウト自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態1〜3に係る電気自動車の駆動系を模式的に示すブロック図である。
【図2】実施形態1に係る電気自動車の全体構造を示す概略側面図である。
【図3】実施形態1に係る電気自動車の全体構造を示す概略平面図である。
【図4】実施形態1に係る発電ユニットやモータ等のペリメータフレームへの取付を示す概略正面図である。
【図5】実施形態1に係る発電ユニットやモータ等のペリメータフレームへの取付を示す概略平面図である。
【図6】実施形態1に係る発電ユニットやモータ等のペリメータフレームへの取付を示す概略側面図である。
【図7】実施形態2に係る発電ユニットやモータ等のペリメータフレームへの取付を示す概略正面図である。
【図8】実施形態2に係る発電ユニットやモータ等のペリメータフレームへの取付を示す概略平面図である。
【図9】実施形態2に係る発電ユニットやモータ等のペリメータフレームへの取付を示す概略側面図である。
【図10】実施形態3に係る電気自動車の全体構造を示す概略側面図である。
【図11】実施形態3に係る電気自動車の全体構造を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
(実施形態1)
−電気自動車の駆動系の構成−
図1は、エンジン搭載の電気自動車の駆動系を模式的に示すブロック図であり、この電気自動車(以下、車両とも言う)1は、近距離走行時(例えば50km以下の走行時)には、家庭用電源など外部電源からの外部電力が供給されて充電されたバッテリ12の電力を、モータ16に供給して駆動輪を駆動させる一方、遠距離走行時には、エンジン10によってジェネレータ(発電機)14を駆動してその発電電力をバッテリ12に供給して充電して、その充電されたバッテリ12の電力をモータ16に供給して駆動輪を駆動させるプラグインハイブリッド車である。このプラグインハイブリッド車は、上述の如く、エンジン10及びモータ16を動力源として備え、このエンジン10は発電にのみ使用して、車両1が動くための動力は全てモータ16に頼っているシリーズ式ハイブリッド車である。
【0029】
上記エンジン10はロータリーエンジンであり、トロコイド内周面を有する繭状のローターハウジング10a(図4等に図示)とサイドハウジング10b(図4等に図示)とに囲まれたローター収容室(気筒)には略三角形状のローターが収容されていて、その外周側に3つの作動室が区画されている。このエンジン10はまた、1つのローターハウジング10aを2つのサイドハウジング10b,10bの間に挟み込むようにして一体化し、その間に形成される1つの気筒にそれぞれローターを収容した1ローターの小型タイプのものである。
【0030】
ローターは、サイドハウジング10bを貫通するエキセントリックシャフト10c(駆動軸。図4等に図示)に対して、遊星回転運動をするように支持されており、ローターは、外周の3つの頂部にそれぞれ配設されたシール部が各々ローターハウジング10aのトロコイド内周面に当接した状態でエキセントリックシャフト10cの偏心輪の周りを自転しながら、該エキセントリックシャフト10cの軸心の周りに公転する。そして、ローターが1回転する間に、該ローターの各頂部間にそれぞれ形成された作動室が周方向に移動しながら、吸気、圧縮、膨張(燃焼)及び排気の各行程を行い、これにより発生する回転力がローターを介してエキセントリックシャフト10cから出力されるようになっている。
【0031】
上記ローターハウジング10aには、その短軸近傍に2つの点火プラグが取り付けられているとともに、その長軸近傍には、筒内に燃料を直接噴射する、電子制御式の燃料噴射弁(インジェクタ)が2つ取り付けられている。このインジェクタは、エンジン10用の燃料タンク18に接続されている。そうして、この燃料タンク18から供給された燃料(例えばガソリン)がインジェクタによって各気筒内に噴射される。
【0032】
上記ローターハウジング10aには、吸気行程にある作動室に連通するように吸気ポートが形成され、排気行程にある作動室に連通するように排気ポートが形成されている。また、吸気ポートには吸気通路(吸気管)20(図2等に図示)が、排気ポートには排気通路(排気管)22(「エンジンの排気系」に相当。図2等に図示)が連通している。吸気通路20には、吸入空気中の異物やホコリを除去するためにフィルタを用いたエアクリーナ20aが配設されている。排気通路22には、排気ガス中のHCやCO、NOなどの有害成分を浄化するために三元触媒を用いた排気浄化装置22aが設けられているとともに、この排気浄化装置22aの下流側には、排気ガスの爆発音のエネルギーの圧力変動を打ち消し、吸収させて音を静かにする略長筒状のマフラー22bが設けられている。
【0033】
そして、エンジン10は、バッテリ12の残量が少なくなったとき(例えばバッテリ12の充電率SOCが30%以下になったとき)に自動運転されるようになっている。尚、上述の如く、エンジン10を小型化したため、燃料タンク18やエアクリーナ20aなども小型化している。
【0034】
上記バッテリ12は、大容量化した大型・高性能のものであって、ジェネレータ14及びモータ16にそれぞれ、インバータ24を介して接続されていて、ジェネレータ14からの発電電力及びモータ16からの回生電力が供給されて充電される。そして、バッテリ12は、その電力をモータ16に供給して駆動させる。また、バッテリ12は、車両1の非使用時には、外部電源からの外部電力が供給・充電可能になっている。
【0035】
上記ジェネレータ14は、その回転軸(入力軸)14a(図4等に図示)がエンジン10のエキセントリックシャフト10cに連結されていて、エンジン10によって駆動可能になっている。
【0036】
上記モータ16は、その回転軸(出力軸)が上記駆動輪としての左右の前輪26,28にディファレンシャルギヤ(以下、デフと言う)30及び左右の駆動軸32,32(図2等に図示)を介して連結されていて、バッテリ12及び/又はジェネレータ14から電力が供給されて前輪26,28を駆動させる。デフ30は、車両1がカーブを曲がるときに、内輪差(内側と外側の前輪26,28の速度差)を吸収しながら、モータ16の動力を前輪26,28に振り分けて伝達する。また、デフ30は、モータ16の回転速度を最終的に減速して該モータ16の動力を前輪26,28に伝達する機能も受け持っている。
【0037】
上記インバータ24は、交流電力を直流電力に変換するAC−DCコンバータ(発電機14用のインバータ)24aと直流電力を交流電力に変換するDC−ACコンバータ(モータ16用のインバータ)24bとが一体化してなるものであって、バッテリ12、ジェネレータ14及びモータ16相互間の電力の授受及び変換を行う。具体的には、バッテリ12をジェネレータ14からの電力で充電するときには、ジェネレータ14からの交流電力をAC−DCコンバータ24aによって直流電力に変換してバッテリ12に供給する。また、バッテリ12の電力をモータ16に供給するときには、バッテリ12からの直流電力をDC−ACコンバータ24bによって交流電力に変換してモータ16に供給する。さらに、ジェネレータ14からの電力をモータ16に供給するときには、ジェネレータ14からの交流電力をAC−DCコンバータ24aによって直流電力に変換した後、その直流電力をDC−ACコンバータ24bによって交流電力に変換してモータ16に供給する。
【0038】
−電気自動車の前部構造−
以下、電気自動車1の前部構造について説明する。図2は、電気自動車の全体構造を示す概略側面図、図3は、電気自動車の全体構造を示す概略平面図、図4は、発電ユニットやモータ等のペリメータフレームへの取付を示す概略正面図、図5は、発電ユニットやモータ等のペリメータフレームへの取付を示す概略平面図、図6は、発電ユニットやモータ等のペリメータフレームへの取付を示す概略側面図である。尚、これらの図では、図を見易くするため、部材の図示省略や簡略化などを適宜行っている。
【0039】
車両1前部には、ダッシュパネル40によって車室42と仕切られた、該ダッシュパネル40の車両前方空間としてのエンジンルーム44が設けられている。ダッシュパネル40は、車室42の底面を形成するフロアパネル50の前端から上方に起立し、車幅方向に延びるダッシュロア40aと、このダッシュロア40aの上端から上方に延びるダッシュアッパ40bとを有している。このダッシュロア40aは、上下方向に延びる縦壁部40cと、この縦壁部40cの下端から斜め下後方に延びてフロアパネル50に連結する傾斜壁部40dとを有している。エンジンルーム44内の車幅方向両側には、左右のフロントサイドフレーム46,48が車両前後方向に延びるようにそれぞれ配置されている。これらのフロントサイドフレーム46,48は、ダッシュパネル40の車両前方において車両前後方向に延びる第1水平部46a,48aと、この第1水平部46a,48aの後端からダッシュロア40aの傾斜壁部40dの前面に沿うように斜め下後方に延びる傾斜部46b,48bと、この傾斜部46b,48bの後端からフロアパネル50の下面に沿うように車両後方に延びる第2水平部46c,48cとを有している。
【0040】
上記エンジン10は、そのエキセントリックシャフト10cが車幅方向に延び、吸気及び排気ポートが車両後方を向き且つ該吸気ポートが該排気ポートの上方に位置するように配置されている。
【0041】
上記ジェネレータ14は、エンジン10の下方に回転軸14aが、車幅方向に延び且つエンジン10のエキセントリックシャフト10cと上下方向に並ぶように配置されている。つまり、ジェネレータ14は、エンジン10と上下方向に並んで設けられている。ジェネレータ14の回転軸14aは、エンジン10のエキセントリックシャフト10cにギヤ装置34のギヤ34aを介して並列連結されている。このギヤ装置34は、ギヤ34aをハウジング34bによって囲んでなるものであって、エンジン10の動力をジェネレータ14に伝達する動力伝達装置を構成している。ギヤ装置34は、エンジン10及びジェネレータ14の右面側に配置されている。
【0042】
そして、エンジン10、ジェネレータ14及びギヤ装置34は、一体的に結合されて発電ユニットUを構成しており、この発電ユニットUは、前輪26,28の中心にある車輪軸Aよりも車両前方に位置するようにエンジンルーム44内の左部に配置されている。エンジン10上端の高さはフロントサイドフレーム46,48の第1水平部46a,48aの上面よりも高い一方、その下端の高さは該第1水平部46a,48aの上面よりも低く、下面よりも高い。ジェネレータ14上端の高さはフロントサイドフレーム46,48の第1水平部46a,48aの上面よりも低く、下面よりも高い一方、その下端の高さは該第1水平部46a,48aの下面よりも低い。
【0043】
上記モータ16は、デフ30と一体的に結合されていて、エンジンルーム44内の車幅方向中央部における発電ユニットUよりも車両後方に回転軸が車幅方向に延びるように配置されている。モータ16上端の高さはジェネレータ14の上端と略同じである一方、その下端の高さは該ジェネレータ14の下端と略同じである。
【0044】
上記吸気通路20は、エンジン10の上部後方から車両右方に湾曲して上方に延びてエンジンルーム44内の車幅方向中央部に達した後、車両前方に延びている。上記エアクリーナ20aは、エンジンルーム44内の右部におけるギヤ装置34上部の車両右方に配置されている。
【0045】
上記排気通路22は、エンジン10の下部後方から左前輪26の駆動軸32の上方を通って斜め下後方に延びてダッシュロア40aの傾斜壁部40dの下方位置に達した後、車両右方に延びて右前輪28の駆動軸32の車両後方位置に達し、その後、車両1の右端側においてフロアパネル50の下方を通って車両後方に延びている。上記排気浄化装置22aは、エンジンルーム44内におけるエンジン10の下部後方の車両後方に配置されている。上記マフラー22bは、その軸方向(長手方向)が車幅方向に延びるように前輪26,28の車輪軸Aよりも車両後方で且つダッシュロア40aの傾斜壁部40dの下方に横置き配置されている。そして、排気通路22におけるマフラー22bよりも下流側の部分は、上述の如く、車両1の車幅方向外方側において該マフラー22bからフロアパネル50の下方を通って車両後方に延びている。上記インバータ24は、エンジンルーム44内の右部におけるモータ16の上方に配置されている。
【0046】
また、発電ユニットUやモータ16、マフラー22bなどは、ペリメータフレーム90に取り付けられている。以下、この取付の詳細について説明する。
【0047】
ペリメータフレーム90は、エンジン10の振動が伝達されるのを抑制するとともに、車両1前突時にその衝撃荷重を分散、吸収させるものであって、車両前後方向に延びる左右の側方フレーム90a,90bと、これらの側方フレーム90a,90bの中間において該側方フレーム90a,90bと平行に延びる第1内方フレーム90cと、車幅方向に延びて側方フレーム90a,90b及び第1内方フレーム90cの各前端部に結合される前方フレーム90dと、この前方フレーム90dの車両後方において前方フレーム90dと平行に延びて側方フレーム90a,90b及び第1内方フレーム90cに結合される第2内方フレーム90eと、この第2内方フレーム90eの車両後方において該第2内方フレーム90eと平行に延びて側方フレーム90a,90b及び第1内方フレーム90cに結合される第3内方フレーム90fと、この第3内方フレーム90fの車両後方において該第3内方フレーム90fと平行に延びて側方フレーム90a,90b及び第1内方フレーム90cの各後端部に結合される後方フレーム90gとを有している。両側方フレーム90a,90bの前端部の車幅方向外方面には、左右のブラケット92,92がそれぞれ取り付けられており、これらのブラケット92は、側方フレーム90a,90bから上方に延びる鉛直部92aと、この鉛直部92aの上端から車幅方向外方に延びる水平部92bとを有している。左側方フレーム90aの後端部の上面及び後方フレーム90gの右端部の上面には、左右のハンガー94,94がそれぞれ取り付けられており、これらのハンガー94は、左側方フレーム90aの後端部の上面又は後方フレーム90gの右端部の上面に車両前後方向に延びるように取り付けられた取付部94aと、この取付部94aの前端から上方に延びる鉛直部94bと、この鉛直部94bの上端から車両前方に延びる第1水平部94cと、この第1水平部94cの前端から車幅方向外方に延びる第2水平部94dとを有している。
【0048】
そして、発電ユニットUは、エンジン10の下部前方に設けられた防振マウント96を介して前方フレーム90dの左端部の上面に、該エンジン10の下部後方に設けられた防振マウント96を介して第2内方フレーム90eの左端部の上面に弾性支持されている。モータ16は、その下部前方に設けられた防振マウント96を介して第1及び第2内方フレーム90c,90eの交差部の上面に、該モータ16の下部後方の左右にそれぞれ設けられた2つの防振マウント96,96を介して第3内方フレーム90fの車幅方向中央部(第1及び第3内方フレーム90c,90fの交差部)の上面に弾性支持されている。マフラー22bは、その左側面に設けられた突起部22c及びリング部材98を介して左ハンガー94の第2水平部94dに、該マフラー22bの右側面に設けられた突起部22c及びリング部材98を介して右ハンガー94の第2水平部94dに吊り下げ支持されている。
【0049】
また、発電ユニットUやモータ16、マフラー22bなどが取り付けられたペリメータフレーム90は、フロントサイドフレーム46,48に取り付けられている。つまり、発電ユニットUやモータ16、マフラー22bなどをペリメータフレーム90に取り付けた後、発電ユニットUやモータ16、マフラー22bなどを取り付けたペリメータフレーム90をフロントサイドフレーム46,48に取り付けている。詳細には、ペリメータフレーム90は、そのブラケット92,92の水平部92b,92bがフロントサイドフレーム46,48の第1水平部46a,48aの下面に、該ペリメータフレーム90の側方フレーム90a,90bの後端部がフロントサイドフレーム46,48の第2水平部46b,48bの下面に取り付けられている。このように、発電ユニットUやモータ16、マフラー22bなどを取り付けたペリメータフレーム90をフロントサイドフレーム46,48に取り付けることにより、発電ユニットUやモータ16、マフラー22bなどは、上述の如く、エンジンルーム44内に配置される。さらに、エンジン10は、その上部左方に設けられたトルクロッド100を介して左フロントサイドフレーム46の上面に取り付けられている。
【0050】
尚、第3内方フレーム90fの上面には、その車幅方向両側にそれぞれ設けられた左右の支持部材102,102を介してステアリングギヤボックス104が車幅方向に延びるように支持されている。つまり、このステアリングギヤボックス104は、エンジンルーム44内におけるモータ16の車両後方に配置されている。
【0051】
また、符号36は、モータ16用のラジエータ、38は、エンジン10用のラジエータ、39は、クーラーコンデンサである。
【0052】
以上のように、発電ユニットUやモータ16、マフラー22bなどは、車体に取付支持されている。
【0053】
以下、電気自動車1の後部構造について簡単に説明する。
【0054】
フロアパネル50の車両前後方向中央部の車両後方寄りには、キックアップ部50aが上方に立ち上がるように形成されており、このキックアップ部50aの上端から車両後方に延びるようにリアフロアパネル50bが形成されている。後輪52,54には、左右のトレーリングアーム80a,80bをクロスビーム80cと呼ばれる梁で繋いだ形式のトーションビーム式サスペンション80が採用されている。クロスビーム80cは、車両側面視で後輪52,54の中心にある車輪軸よりも車両前方で且つ該後輪52,54の前端よりも車両後方に位置するように、リアフロアパネル50bの車両前後方向中央部の下方に車幅方向に延びるように配置されている。上記バッテリ12は、リアフロアパネル80bの右部の下方におけるクロスビーム80cよりも車両前方及び後方に分割配置されている。上記燃料タンク18は、リアフロアパネル50bの左部の下方におけるクロスビーム80cよりも車両前方に配置されている。
【0055】
尚、ジェネレータ14で発電した電力を車両後部のバッテリ12に送る送電線などを束ねてなるハーネスは、その図示は省略するが、排気通路22配置側とは反対側の、車両1の左端側において、フロアパネル50の下方を車両前後方向に延びている。
【0056】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、エンジン10を小型化したので、エンジン10及びジェネレータ14を上下方向に並べて配置することができ、エンジン10、ジェネレータ14及びギヤ装置34が一体となって構成された発電ユニットUをコンパクトにすることができ、エンジンルーム44内のレイアウト自由度を向上させることができる。
【0057】
また、発電ユニットUを、エンジンルーム44内における左右の前輪26,28の車輪軸Aよりも車両前方に配置しているので、本実施形態を、レシプロエンジンを備えた従来のFF車を利用して実現することができ、そのような従来のFF車との互換性を高めることができる。
【0058】
さらに、エンジン10及びジェネレータ14を上下方向に並べて配置しているので、発電ユニットUの車両側方にスペースを空けることができ、このスペースを有効利用することが可能になる。
【0059】
さらにまた、動力伝達装置をギヤ装置34で構成しているので、エンジン10の動力を適切な回転数でジェネレータ14に伝達することができる。
【0060】
また、略筒状のマフラー22bを、その軸方向が車幅方向に延びるように前輪26,28の車輪軸Aよりも車両後方で且つダッシュパネル40の下方に配置しているとともに、排気通路22におけるマフラー22bよりも下流側の部分が、車両1の車幅方向外方側においてマフラー22bからフロアパネル50の下方を通って車両後方に延びているので、フロアパネル50にフロアトンネルが不必要になるなど、車両1の前部構造のデザイン自由度を向上させることができる。
【0061】
さらに、エンジン10を1ローターのロータリーエンジンで構成しているので、エンジン10の上下方向長さを短くすることができる。
【0062】
(実施形態2)
本実施形態は、電気自動車1の前部構造が、エンジン10がジェネレータ14の下方に配置されている点などで実施形態1と相違するものである。以下、その相違点について説明する。
【0063】
図7は、本実施形態に係る発電ユニットやモータ等のペリメータフレームへの取付を示す概略正面図、図8は、本実施形態に係る発電ユニットやモータ等のペリメータフレームへの取付を示す概略平面図、図9は、本実施形態に係る発電ユニットやモータ等のペリメータフレームへの取付を示す概略側面図である。尚、これらの図では、図を見易くするため、部材の図示省略や簡略化などを適宜行っている。
【0064】
ジェネレータ14は、エンジン10の上方に配置されている。そして、エンジン10、ジェネレータ14及びギヤ装置34が一体的に結合されてなる発電ユニットUは、エンジンルーム44内における前輪26,28の車輪軸Aよりも車両前方に配置されている。詳細には、発電ユニットUは、エンジン10及びジェネレータ14がエンジンルーム44内の車幅方向中央部に、ギヤ装置34がエンジンルーム44内の右部に位置するように設けられている。
【0065】
モータ16は、左前輪用モータ16aと右前輪用モータ16bとからなる。左前輪用モータ16aは、その回転軸が左前輪26に減速ギヤ31及び駆動軸32を介して連結されていて、バッテリ12及び/又はジェネレータ14から電力が供給されて左前輪26を駆動させる。右前輪用モータ16bは、その回転軸が右前輪28に減速ギヤ31及び駆動軸32を介して連結されていて、バッテリ12及び/又はジェネレータ14から電力が供給されて右前輪28を駆動させる。減速ギヤ31は、モータ16a,16bの回転速度を最終的に減速して該モータ16a,16bの動力を前輪26,28に伝達する。左前輪用モータ16a及び右前輪用モータ16bは、減速ギヤ31と一体的に結合されていて、エンジンルーム44内における発電ユニットUよりも車両後方に車幅方向に間隔を開けて並んで配置されている。詳細には、左前輪用モータ16aは、エンジンルーム44内の左部に設けられている一方、右前輪用モータ16bは、エンジンルーム44内の右部に設けられている。
【0066】
吸気通路20は、エンジン10の上部後方から車両左方に湾曲しながら上方に延びてエンジンルーム44内の左部に達した後、車両前方に延びている。エアクリーナ20aは、エンジンルーム44内の左部における左前輪用モータ16aの上方に配置されている。
【0067】
排気通路22は、エンジン10の下部後方から左前輪用モータ16a及び右前輪用モータ16bの間を通って車両後方に延びている。排気浄化装置22aは、エンジンルーム44内におけるエンジン10の下部後方の車両後方に配置されている。マフラー22b及び排気通路22における該マフラー22bよりも下流側の部分の配置構造は、その図示は省略するが、実施形態1とほぼ同様の構造である。インバータ24は、エンジンルーム44内の右部における右前輪用モータ16bの上方に配置されている。
【0068】
また、発電ユニットUやモータ16a,16b、マフラー22bなどは、ペリメータフレーム90に取り付けられている。以下、この取付の詳細について説明する。
【0069】
ペリメータフレーム90は、実施形態1とほぼ同様の構成の、側方フレーム90a,90b、前方フレーム90d、後方フレーム90g及び第1〜第3内方フレーム90c,90e,90fに加えて、右側方フレーム90b及び第1内方フレーム90cの間において車両前後方向に延びて前方フレーム90d及び第2内方フレーム90eの各右端部に結合される第4内方フレーム90hをさらに有している。第1及び第3内方フレーム90c,90fの交差部には、その上面から上方に延びる2つの支持部材102,102が取り付けられている。
【0070】
そして、発電ユニットUは、エンジン10の下部前方に設けられた防振マウント96を介して前方フレーム90dの車幅方向中央部の上面に、該エンジン10の下部後方に設けられた防振マウント96を介して第1及び第2内方フレーム90c,90eの交差部の上面に、ギヤ装置34の下部左方に設けられた防振マウント96を介して第4内方フレーム90hの車両前後方向中央部の上面に弾性支持されている。左前輪用モータ16aは、その下部前方に設けられた防振マウント96を介して第2内方フレーム90eの左端部の上面に、該モータ16aの下部後方に設けられた防振マウント96を介して第3内方フレーム90fの左端部の上面に弾性支持されている。右前輪用モータ16bは、その下部前方に設けられた防振マウント96を介して第2内方フレーム90eの右端部の上面に、該モータ16bの下部後方に設けられた防振マウント96を介して第3内方フレーム90fの右端部の上面に弾性支持されている。排気浄化装置22aは、第1及び第3内方フレーム90c,90fの交差部の上面に支持部材106,106を介して支持されている。マフラー22bのペリメータフレーム90への取付構造は、その図示は省略するが、実施形態1とほぼ同様の構造である。
【0071】
また、発電ユニットUやモータ16a,16b、マフラー22bなどが取り付けられたペリメータフレーム90の、フロントサイドフレーム46,48への取付構造は、その図示は省略するが、実施形態1とほぼ同様の構造である。
【0072】
尚、ステアリングギヤボックス104は、実施形態1ではペリメータフレーム90に支持されていたが、本実施形態では、エアクリーナ20a及びインバータ24の車両後方において、その図示は省略するが、車体に支持されている。
【0073】
また、電気自動車1の後部構造は、その図示は省略するが、実施形態1とほぼ同様の構成である。
【0074】
その他の点に関しては、実施形態1とほぼ同様の構成である。
【0075】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、実施形態1とほぼ同様の効果が得られる。
【0076】
また、モータ16として左前輪用モータ16a及び右前輪用モータ16bを設けているので、左右の前輪26,28を連結する車軸が不必要となる。そして、本実施形態によれば、左前輪用モータ16aと右前輪用モータ16bとをエンジンルーム44内における発電ユニットUよりも車両後方に車幅方向に間隔を開けて並べて配置しているとともに、排気通路22が、該エンジン10から左前輪用モータ16a及び右前輪用モータ16bの間を通って車両後方に延びている。つまり、左右の前輪26,28を連結する車軸がある場合、排気通路22をその車軸の上方を通す必要があるが、上述の如く、左右の前輪26,28を連結する車軸がないので、その必要がない。したがって、フードの高さを低くすることが可能になる。
【0077】
(実施形態3)
本実施形態は、電気自動車1の前部構造が、エンジン10及びジェネレータ14が直列連結されている点やエンジンルーム44内に冷却通路108が設けられている点などで実施形態1と相違するものである。以下、その相違点について説明する。
【0078】
図10は、本実施形態に係る電気自動車の全体構造を示す概略側面図、図11は、本実施形態に係る電気自動車の全体構造を示す概略平面図である。尚、これらの図では、図を見易くするため、部材の図示省略や簡略化などを適宜行っている。
【0079】
エンジン10の動力をジェネレータ14に伝達する動力伝達装置は、プラネタリギヤ装置(遊星歯車装置)35によって構成されている。このプラネタリギヤ装置35は、サンギヤ、リングギヤ及びプラネタリキャリアを有していて、エンジン10の回転速度を減速して該エンジン10の動力をジェネレータ14に伝達する。
【0080】
エンジン10、ジェネレータ14及びプラネタリギヤ装置35は、該エンジン10のエキセントリックシャフト10cと該ジェネレータ14の回転軸14aとが車幅方向に延び且つ同軸上に位置するように、エンジン10、プラネタリギヤ装置35、ジェネレータ14の順に車幅方向左方から右方に並んで配置されている。つまり、エンジン10のエキセントリックシャフト10cとジェネレータ14の回転軸14aとは、プラネタリギヤ装置35を介して直列連結されている。具体的には、エンジン10のエキセントリックシャフト10cは、プラネタリギヤ装置35のサンギヤに接続されている一方、ジェネレータ14の回転軸14aは、プラネタリギヤ装置35のリングギヤに接続されている。
【0081】
そして、エンジン10、ジェネレータ14及びプラネタリギヤ装置35が一体的に結合されてなる発電ユニットUは、エンジンルーム44内における前輪26,28の車輪軸Aよりも車両前方に配置されている。詳細には、発電ユニットUは、エンジン10がエンジンルーム44内の車幅方向中央部に位置するように設けられている。
【0082】
モータ16は、左前輪用モータ16aと右前輪用モータ16bとからなる。左前輪用モータ16aは、その回転軸が左前輪26に減速ギヤ31及び駆動軸32を介して連結されていて、バッテリ12及び/又はジェネレータ14から電力が供給されて左前輪26を駆動させる。右前輪用モータ16bは、その回転軸が右前輪28に減速ギヤ31及び駆動軸32を介して連結されていて、バッテリ12及び/又はジェネレータ14から電力が供給されて右前輪28を駆動させる。減速ギヤ31は、モータ16a,16bの回転速度を最終的に減速して該モータ16a,16bの動力を前輪26,28に伝達する。左前輪用モータ16a及び右前輪用モータ16bは、減速ギヤ31と一体的に結合されていて、エンジンルーム44内における発電ユニットUよりも車両後方に車幅方向に間隔を開けて並んで配置されている。詳細には、左前輪用モータ16aは、エンジンルーム44内の左部に設けられている一方、右前輪用モータ16bは、エンジンルーム44内の右部におけるジェネレータ14の車両後方に設けられている。
【0083】
燃料タンク18は、エンジンルーム44内におけるモータ16a,16bの上方に配置されている。吸気通路20は、エンジン10の上部後方から車両前方に湾曲した後、エンジン10の上方を通って車両前方に延びており、その吸気口20bは、フロントバンパフェース56の外気導入口近傍に設けられている。この外気導入口は、外気(前面冷却風)をエンジンルーム44内に導入するためのものである。そして、フロントバンパフェース56の外気導入口から導入された外気が吸気通路20の吸気口20bから該吸気通路20に吸入される。エアクリーナ20aは、エンジンルーム44内におけるエンジン10の上方に配置されている。
【0084】
排気通路22は、エンジン10の下部後方から左前輪用モータ16a及び右前輪用モータ16bの間並びにステアリングギヤボックス104の上方を通って車両後方に延びてダッシュロア40aの傾斜壁部40dの下方位置に達した後、フロアパネル50の車幅方向中央部の下方を通って車両後方に延びてバッテリ12の車両前方近傍位置に達し、その後、車両右方に延びて車両1の右端側に達し、バッテリ12の車両右方を通って車両後方に延びている。排気浄化装置22aは、エンジンルーム44内におけるエンジン10の下部後方の車両後方に配置されている。マフラー22bは、フロアパネル50における前部の車幅方向中央部の下方に配置されている。詳細には、マフラー22bは、フロアパネル50の車幅方向中央部に車両前後方向に延び且つ上方に膨出するように形成されたフロアトンネル50c内に設けられている。インバータ24は、エンジンルーム44内の左部におけるエンジン10の車両左方に配置されている。
【0085】
また、エンジンルーム44内には、エンジン10、モータ16a,16b及び排気通路22の上方において、吸気通路20におけるエアクリーナ20aよりも上流側の部分、エアクリーナ20a及び燃料タンク18を覆う箱状の冷却通路108が配置されている。この冷却通路108は、車両前後方向に延び且つ車両後方に行くに従って車幅方向に拡がるように形成されている。冷却通路108の前端には、吸気口108aが形成されており、この吸気口108aは、吸気通路20の吸気口20bと同様、フロントバンパフェース56の外気導入口近傍に設けられている。冷却通路108内には、上述の如く、吸気通路20におけるエアクリーナ20aよりも上流側の部分、エアクリーナ20a及び燃料タンク18がこの順に車両前方から後方に並んで収容されている。つまり、吸気通路20及び冷却通路108は、該吸気通路20を該冷却通路108によって囲んだ二重構造となっている。冷却通路108の底壁部108bには、排気浄化装置22aに対応する部分に第1吹出口部108cが該底壁部108bから該排気浄化装置22aに向かって下方に延びるように形成されているとともに、排気通路22における排気浄化装置22aの下流近傍部分に対応する部分に第2吹出口部108dが該底壁部108bから該排気通路22における排気浄化装置22aの下流近傍部分に向かって下方に延びるように形成されている。また、冷却通路108の底壁部108bには、吸気通路20におけるエアクリーナ20aよりも下流側の部分が貫通している。
【0086】
以下、冷却通路108の吸気口108aから吸入した空気の流れについて説明する。
【0087】
フロントバンパフェース56の外気導入口から導入された外気が冷却通路108の吸気口108aから該冷却通路108に吸入されると、この吸入空気が冷却通路108を、吸気通路20におけるエアクリーナ20aよりも上流側の部分、エアクリーナ20a及び燃料タンク18の周りを通って、車両前方から後方に流れる。そして、燃料タンク18の周りを通った空気によって燃料タンク18が冷却される。その後、冷却通路108を流通した空気が第1及び第2吹出口部108c,108dから吹き出される。そして、第1吹出口部108cから吹き出された空気が排気浄化装置22aに向かって流れ、その空気によって該排気浄化装置22aが冷却される。また、第2吹出口部108dから吹き出された空気が排気通路22における排気浄化装置22aの下流近傍部分に向かって流れ、その空気によって排気通路22における排気浄化装置22aの下流近傍部分が冷却される。このように、冷却通路108が、燃料タンク18及び排気通路22を冷却するように吸気口108aから吸入した空気をエンジンルーム44内において流通させる冷却手段を構成している。
【0088】
また、発電ユニットUやモータ16a,16bは、ペリメータフレーム90に取り付けられている。以下、この取付の詳細について説明する。
【0089】
ペリメータフレーム90は、第1内方フレーム90aやハンガー94,94がないのを除くと、実施形態1とほぼ同様の構成である。そして、発電ユニットUは、エンジン10の下部前方に設けられた防振マウント96を介して前方フレーム90dの車幅方向中央部の上面に、ジェネレータ14の下部前方に設けられた防振マウント96を介して前方フレーム90dの右端部の上面に、該ジェネレータ14の下部後方に設けられた防振マウント96を介して第2内方フレーム90eの右端部の上面に弾性支持されている。左前輪用モータ16aは、その下部前方に設けられた防振マウント96を介して第2内方フレーム90eの左端部の上面に、該モータ16aの下部後方に設けられた防振マウント96を介して第3内方フレーム90fの左端部の上面に弾性支持されている。右前輪用モータ16bは、その下部前方に設けられた防振マウントを介して第2内方フレーム90eの右端部の上面に、該モータ16bの下部後方に設けられた防振マウント96を介して第3内方フレーム90fの右端部の上面に弾性支持されている。
【0090】
また、発電ユニットUやモータ16a,16bが取り付けられたペリメータフレーム90の、フロントサイドフレーム46,48への取付構造は、その図示は省略するが、実施形態1とほぼ同様の構造である。
【0091】
尚、ステアリングギヤボックス104は、エンジンルーム44内におけるモータ16a,16bの車両後方近傍に配置されている。
【0092】
また、バッテリ12は、リアフロアパネル90bの下方におけるクロスビーム90cよりも車両前方に配置されている。
【0093】
その他の点に関しては、実施形態1とほぼ同様の構成である。
【0094】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、実施形態1とほぼ同様の効果が得られる。
【0095】
また、エンジン10を小型化したので、本実施形態のように、エンジン10、ジェネレータ14及びプラネタリギヤ装置35を車幅方向に並べて配置することができ、発電ユニットUをコンパクトにすることができ、エンジンルーム44内のレイアウト自由度を向上させることができる。
【0096】
さらに、モータ16として左前輪用モータ16a及び右前輪用モータ16bを設けているので、左右の前輪26,28を連結する車軸が不必要となる。そして、本実施形態によれば、左前輪用モータ16aと右前輪用モータ16bとをエンジンルーム44内における発電ユニットUよりも車両後方に車幅方向に間隔を開けて並べて配置しているとともに、排気通路22が、該エンジン10から左前輪用モータ16a及び右前輪用モータ16bの間を通って車両後方に延びている。つまり、左右の前輪26,28を連結する車軸がある場合、排気通路22をその車軸の上方を通す必要があるが、上述の如く、左右の前輪26,28を連結する車軸がないので、その必要がない。したがって、フードの高さを低くすることができる。
【0097】
さらにまた、エンジンルーム44内に配置され、吸気口108aがフロントバンパフェース56近傍に形成され、排気通路22及び燃料タンク18を冷却するように吸気口108aから吸入した空気をエンジンルーム44内において流通させる冷却通路108を設けているので、排気通路22及び燃料タンク18を冷却することができる。
【0098】
尚、本実施形態では、燃料タンク18及び排気通路22の両方を冷却する冷却通路108を設けているが、これに限らず、例えば、燃料タンク18冷却用の冷却通路と排気通路22冷却用の冷却通路とを別々に設けてもよい。
【0099】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、エンジン10のエキセントリックシャフト10cとジェネレータ14の回転軸14aとをギヤ装置34(又は35)を介して連結しているが、これに限らず、例えば、チェーン装置を介して連結してもよい。このように、チェーン装置を介して連結した場合、エンジン10の動力を適切な回転数でジェネレータ14に伝達することができる。
【0100】
さらに、上記各実施形態では、エンジン10は、1ローターのロータリーエンジンであるが、これに限らず、例えば、1又は2気筒の小型レシプロエンジンであってもよい。
【0101】
また、本発明の趣旨を逸脱しない限り、上記各実施形態の構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0102】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0103】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上説明したように、本発明にかかる電気自動車の前部構造は、エンジンルーム内のレイアウト自由度を向上させることが必要な用途等に適用できる。
【符号の説明】
【0105】
1 電気自動車
10 エンジン
10a エキセントリックシャフト(駆動軸)
14 ジェネレータ(発電機)
14a 回転軸
16 モータ
16a 左前輪用モータ
16b 右前輪用モータ
18 燃料タンク
22 排気通路(エンジンの排気系)
22b マフラー
26,28 前輪(駆動輪)
34 ギヤ装置(動力伝達装置)
35 プラネタリギヤ装置(動力伝達装置)
40 ダッシュパネル
44 エンジンルーム
56 フロントバンパフェース
108 冷却通路(冷却手段)
108a 吸気口
A 前輪の車輪軸
U 発電ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと該エンジンによって駆動可能な発電機と少なくとも該発電機からの発電電力が供給されて充電されるバッテリと該バッテリから電力が供給されて駆動輪を駆動させるモータとを備えている電気自動車の前部構造であって、
上記エンジンと上記発電機と該エンジンの動力を該発電機に伝達する動力伝達装置とが一体となって発電ユニットを構成しており、
上記発電ユニットは、左右の前輪の車輪軸よりも車両前方に位置するようにエンジンルーム内に配置されていることを特徴とする電気自動車の前部構造。
【請求項2】
請求項1記載の電気自動車の前部構造において、
上記動力伝達装置は、プラネタリギヤ装置であり、
上記エンジン、上記発電機及び上記プラネタリギヤ装置は、該エンジンの駆動軸と該発電機の回転軸とが車幅方向に延び且つ同軸上に位置するように、上記エンジン、上記プラネタリギヤ装置、上記発電機の順に車幅方向に並んで配置されていることを特徴とする電気自動車の前部構造。
【請求項3】
請求項1記載の電気自動車の前部構造において、
上記エンジン及び上記発電機は、上下方向に並んで配置されていることを特徴とする電気自動車の前部構造。
【請求項4】
請求項1又は3記載の電気自動車の前部構造において、
上記動力伝達装置は、チェーン装置又はギヤ装置であることを特徴とする電気自動車の前部構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の電気自動車の前部構造において、
上記エンジンの排気系が、略筒状のマフラーを有しており、
上記マフラーは、その軸方向が車幅方向に延びるように上記前輪の車輪軸よりも車両後方で且つダッシュパネルの下方に配置されており、
上記エンジンの排気系における上記マフラーよりも下流側の部分が、車両の車幅方向外方側において上記マフラーからフロアパネルの下方を通って車両後方に延びていることを特徴とする電気自動車の前部構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の電気自動車の前部構造において、
上記駆動輪は、左右の前輪を有しており、
上記モータは、上記エンジンルーム内における上記発電ユニットよりも車両後方に車幅方向に間隔を開けて並んで配置された、上記左前輪用のモータ及び上記右前輪用のモータを有しており、
上記エンジンの排気系が、該エンジンから上記左前輪用モータ及び上記右前輪用モータの間を通って車両後方に延びていることを特徴とする電気自動車の前部構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の電気自動車の前部構造において、
上記エンジンルーム内に配置された上記エンジン用の燃料タンクと、
上記エンジンルーム内に配置され、吸気口がフロントバンパフェース近傍に形成され、上記エンジンの排気系及び上記燃料タンクを冷却するように上記吸気口から吸入した空気を上記エンジンルーム内において流通させる冷却手段とをさらに備えていることを特徴とする電気自動車の前部構造。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の電気自動車の前部構造において、
上記エンジンは、1ローターのロータリーエンジンであることを特徴とする電気自動車の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−148444(P2011−148444A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12382(P2010−12382)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】