説明

電源システムおよびその制御方法

【課題】負荷状態に応じて損失を適切に抑制することを可能にする電源システムおよびその制御方法を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両100は、主負荷装置(インバータ20,22およびモータジェネレータMG1,MG2)と、副負荷装置である補機装置16とを備える。電源システムは、主蓄電装置(B1)と、主蓄電装置と主負荷装置との間で電力を伝達するための電力線(PL1,PL3)と、主蓄電装置と並列に電力線に接続されて、電力線の電圧を、補機装置16を動作させるための電圧に変換して出力するコンバータ14と、コンバータ14の出力側に補機装置16と並列に接続される副蓄電装置(B3)と、ECU30とを備える。ECU30は、要求パワーPRに応じてコンバータ14を制御することにより、コンバータ14の出力電圧(VB3)を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源システムおよびその制御方法に関し、より特定的には、車両に搭載される電源システムの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行駆動力源として電動機を搭載するハイブリッド自動車や電気自動車などの電動車両において、加速性能や走行持続距離などの走行性能を高めるために、蓄電機構の大容量化が進んでいる。そして、蓄電機構を大容量化するための一手法として、複数個の蓄電装置を並列に配置する構成が提案されている。
【0003】
たとえば、特開2008−17661号公報(特許文献1)には、蓄電装置およびコンバータの2つの組が並列接続された構成において、要求パワーが基準値よりも小さいときにはコンバータのいずれか一方が動作し、かつ他方が停止するように制御することが記載されている。上記文献によれば、このような制御により、要求パワーが小さい動作時においてコンバータでの電力損失を抑制することが可能になると説明されている。
【特許文献1】特開2008−17661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、車両には照明等の補機装置および補機を駆動するための補機バッテリが搭載されている。上記構成を有する車両に搭載された電源システムの効率を考慮する上では、このような補機系の動作効率も考慮する必要があると考えられる。しかしながら特開2008−17661号公報には、車両の補機装置は具体的に示されておらず、したがって、車両を駆動させる主負荷装置のみならず補機系(副負荷装置)も考慮した電源システムの効率については示されていない。
【0005】
本発明の目的は、負荷状態に応じて損失を適切に抑制することを可能にする電源システムおよびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は要約すれば、車両に搭載される電源システムである。車両は、電源システムとの間で電力を授受する主負荷装置と、電源システムから供給される電力により動作する副負荷装置とを備える。電源システムは、主蓄電装置と、主蓄電装置と主負荷装置との間で電力を伝達するための電力線と、主蓄電装置と並列に電力線に接続されて、電力線の電圧を、副負荷装置を動作させるための電圧に変換して出力する電圧変換装置と、電圧変換装置の出力側に副負荷装置と並列に接続される副蓄電装置と、主負荷装置の動作に伴う主蓄電装置への要求パワーに応じて電圧変換装置を制御することにより、電圧変換装置の出力側から出力される出力電圧を変化させる制御装置とを備える。
【0007】
好ましくは、制御装置は、要求パワーが主蓄電装置から主負荷装置への出力電力に対応する場合には、電圧変換装置の出力電圧を低下させる一方で、要求パワーが主負荷装置から主蓄電装置への入力電力に対応する場合には、電圧変換装置の出力電圧を上昇させる。
【0008】
好ましくは、制御装置は、要求パワーが出力電力に対応する場合には、電圧変換装置を停止させることにより、電圧変換装置の出力電圧を低下させる。
【0009】
好ましくは、主負荷装置は、力行時に車両の駆動力を発生させるとともに回生時に電力を発生させる交流回転電機と、交流回転電機が指令値に従って動作するように、交流回転電機と電力線との間で双方向の電力変換を行なうように構成されたインバータとを含む。車両は、交流回転電機と並列的に駆動力を発生させることが可能な内燃機関をさらに備える。制御装置は、内燃機関が停止しかつ交流回転電機が動作することによって車両が走行している場合において、要求パワーに応じて出力電圧を変化させる。
【0010】
好ましくは、副負荷装置は、補機装置である。
本発明の他の局面に従うと、車両に搭載される電源システムの制御方法である。車両は、電源システムとの間で電力を授受する主負荷装置と、電源システムから供給される電力により動作する副負荷装置とを備える。電源システムは、主蓄電装置と、主蓄電装置と主負荷装置との間で電力を伝達するための電力線と、主蓄電装置と並列に電力線に接続されて、電力線の電圧を副負荷装置を動作させるための電圧に変換する電圧変換装置と、電圧変換装置の出力側に副負荷装置と並列に接続される副蓄電装置とを備える。制御方法は、主負荷装置の動作に伴う主蓄電装置への要求パワーを取得するステップと、要求パワーに応じて電圧変換装置を制御することにより、電圧変換装置の出力側から出力される出力電圧を変化させるステップとを備える。出力電圧を変化させるステップは、要求パワーが主蓄電装置から主負荷装置への出力電力に対応する場合には、出力電圧を低下させる一方で、要求パワーが主負荷装置から主蓄電装置への入力電力に対応する場合には、出力電圧を上昇させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、負荷状態に応じて損失を適切に抑制可能な電源システムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下図中における同一または相当部分には同一の符号を付してその説明は繰返さない。
【0013】
図1は、本発明による電源システムを搭載した車両の一例として示されるハイブリッド車両の全体ブロック図である。図1を参照して、このハイブリッド車両100は、エンジン2と、モータジェネレータMG1,MG2と、動力分割機構4と、車輪6とを備える。また、ハイブリッド車両100は、蓄電装置B1,B2と、コンバータ10,12と、コンデンサCと、インバータ20,22と、ECU(Electronic Control Unit)30と、電圧センサ42,44,46,48と、電流センサ52,54と、温度センサ62,64とをさらに備える。また、ハイブリッド車両100は、コンバータ14と、蓄電装置B3と、補機装置16とをさらに備える。
【0014】
蓄電装置B1は、本発明における「主蓄電装置」に対応し、蓄電装置B3は本発明における「副蓄電装置」に対応する。また、インバータ20,22およびモータジェネレータMG1,MG2は、本発明における「主負荷装置」を構成する。また、補機装置16は、本発明における「副負荷装置」に対応する。また、コンバータ14は、本発明における「電圧変換装置」に対応する。また、ECU30は、本発明における「制御装置」に対応する。
【0015】
ハイブリッド車両100は、エンジン2およびモータジェネレータMG2を動力源として走行する。動力分割機構4は、エンジン2とモータジェネレータMG1,MG2とに結合されてこれらの間で動力を分配する。動力分割機構4は、たとえば、サンギヤ、プラネタリキャリヤおよびリングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車機構から成り、この3つの回転軸がエンジン2およびモータジェネレータMG1,MG2の回転軸にそれぞれ接続される。なお、モータジェネレータMG1のロータを中空にしてその中心にエンジン2のクランク軸を通すことにより、エンジン2およびモータジェネレータMG1,MG2を動力分割機構4に機械的に接続することができる。また、モータジェネレータMG2の回転軸は、図示されない減速ギヤや作動ギヤによって車輪6に結合される。
【0016】
そして、モータジェネレータMG1は、エンジン2によって駆動される発電機として動作し、かつ、エンジン2の始動を行ない得る電動機として動作するものとしてハイブリッド車両100に組込まれる。モータジェネレータMG2は、車輪6を駆動する電動機としてハイブリッド車両100に組込まれる。
【0017】
エンジン2は、ガソリン等の燃料を燃焼させることにより、モータジェネレータMG2と並列的に、あるいはそれのみでハイブリッド車両100を走行させることができる。また、本実施の形態に係るハイブリッド車両100はモータジェネレータMG2のみで走行することもできる。
【0018】
蓄電装置B1,B2は、充放電可能な直流電源であり、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池から成る。蓄電装置B1は、コンバータ10へ電力を供給し、また、電力回生時には、コンバータ10によって充電される。蓄電装置B2は、コンバータ12へ電力を供給し、また、電力回生時には、コンバータ12によって充電される。
【0019】
本実施の形態では蓄電装置B1は蓄電装置B2よりも蓄電容量が大きい二次電池が用いられる。ただし2つの蓄電装置B1,B2の蓄電容量が略同じであってもよい。また蓄電装置B1,B2の少なくとも一方に大容量のキャパシタを用いてもよい。
【0020】
コンバータ10は、ECU30からの信号PWC1に基づいて蓄電装置B1からの電圧を昇圧し、その昇圧した電圧を正極ラインPL3へ出力する。また、コンバータ10は、インバータ20,22から正極ラインPL3を介して供給される回生電力を信号PWC1に基づいて蓄電装置B1の電圧レベルに降圧し、蓄電装置B1を充電する。さらに、コンバータ10は、ECU30からシャットダウン信号SD1を受けるとスイッチング動作を停止する。
【0021】
コンバータ12は、コンバータ10に並列して正極ラインPL2および負極ラインNLに接続される。そして、コンバータ12は、ECU30からの信号PWC2に基づいて蓄電装置B2からの電圧を昇圧し、その昇圧した電圧を正極ラインPL3へ出力する。また、コンバータ12は、インバータ20,22から正極ラインPL3を介して供給される回生電力を信号PWC2に基づいて蓄電装置B2の電圧レベルに降圧し、蓄電装置B2を充電する。さらに、コンバータ12は、ECU30からシャットダウン信号SD2を受けるとスイッチング動作を停止する。
【0022】
コンデンサCは、正極ラインPL3と負極ラインNLとの間に接続され、正極ラインPL3と負極ラインNLとの間の電圧変動を平滑化する。正極ラインPL3および負極ラインNLの間の直流電圧VHは、電源システムから、インバータ20,22およびモータジェネレータMG1,MG2により構成される主負荷装置への出力電圧に相当する。この直流電圧VHについて、以下では、システム電圧VHとも称する。また、正極ラインPL1,PL3は、本発明での「電力線」に対応する。
【0023】
インバータ20は、ECU30からの信号PWI1に基づいて正極ラインPL3からの直流電圧を三相交流電圧に変換し、その変換した三相交流電圧をモータジェネレータMG1へ出力する。また、インバータ20は、エンジン2の動力を用いてモータジェネレータMG1が発電した三相交流電圧を信号PWI1に基づいて直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を正極ラインPL3へ出力する。
【0024】
インバータ22は、ECU30からの信号PWI2に基づいて正極ラインPL3からの直流電圧を三相交流電圧に変換し、その変換した三相交流電圧をモータジェネレータMG2へ出力する。また、インバータ22は、車両の回生制動時、車輪6からの回転力を受けてモータジェネレータMG2が発電した三相交流電圧を信号PWI2に基づいて直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を正極ラインPL3へ出力する。
【0025】
モータジェネレータMG1,MG2の各々は、三相交流回転電機であり、たとえば三相交流同期電動発電機から成る。モータジェネレータMG1は、インバータ20によって回生駆動され、エンジン2の動力を用いて発電した三相交流電圧をインバータ20へ出力する。また、モータジェネレータMG1は、エンジン2の始動時、インバータ20によって力行駆動され、エンジン2をクランキングする。モータジェネレータMG2は、インバータ22によって力行駆動され、車輪6を駆動するための駆動力を発生する。また、モータジェネレータMG2は、車両の回生制動時、インバータ22によって回生駆動され、車輪6から受ける回転力を用いて発電した三相交流電圧をインバータ22へ出力する。
【0026】
電圧センサ42は、蓄電装置B1の電圧VB1を検出してECU30へ出力する。温度センサ62は、蓄電装置B1の温度T1を検出してECU30へ出力する。電流センサ52は、蓄電装置B1からコンバータ10へ入出力される電流I1を検出してECU30へ出力する。
【0027】
電圧センサ44は、蓄電装置B2の電圧VB2を検出してECU30へ出力する。温度センサ64は、蓄電装置B2の温度T2を検出してECU30へ出力する。電流センサ54は、蓄電装置B2からコンバータ12へ入出力される電流I2を検出してECU30へ出力する。
【0028】
さらに、コンデンサCの端子間電圧、すなわちシステム電圧VHを検出するための電圧センサ46が配置される。電圧センサ46による検出値は、ECU30へ出力される。
【0029】
コンバータ14は具体的にはDC/DCコンバータであり、ECU30からの信号PWC3に応じて正極ラインPL1の直流電圧を降圧する。コンバータ14の出力側には正極ラインPL4が接続され、補機装置16および蓄電装置B3は正極ラインPL4に対して並列接続される。コンバータ14からの出力電圧は補機16および蓄電装置B3に供給され、これにより補機装置16が動作するとともに蓄電装置B3が充電される。
【0030】
補機装置16は、たとえばヘッドライト、エアコン等であるが特にその種類は限定されるものではない。蓄電装置B3は充放電可能な直流電源であればよく、たとえば鉛蓄電池である。蓄電装置B3はコンバータ14からの直流電圧により充電される一方で、補機装置16を駆動させることにより放電する。電圧センサ48は、正極ラインPL4の電圧VB3を検出してECU30へ出力する。
【0031】
ECU30は、コンバータ10を制御するための信号PWC1,SD1を生成し、主負荷装置の状態に応じて選択されたいずれかの信号をコンバータ10へ出力する。また、ECU30は、コンバータ12を制御するための信号PWC2,SD2を生成し、いずれかの信号をコンバータ12へ出力する。
【0032】
また、ECU30は、主負荷装置の駆動のために電源システムに対して要求されるパワー(以下では「要求パワー」と称する。)PRを受ける。たとえば、要求パワーPRは、アクセルペダルの開度や車両速度などに基づいて、ハイブリッド車両100の全体を統合制御する車両ECU(図示せず)によって演算される。
【0033】
さらに、ECU30は、インバータ20,22をそれぞれ駆動するための信号PWI1,PWI2を生成し、その生成した信号PWI1,PWI2をそれぞれインバータ20,22へ出力する。さらに、ECU30は、要求パワーPRおよび電圧VB3に基づいてコンバータ14を駆動するための信号PWC3を生成し、その生成した信号PWC3をコンバータ14に出力する。
【0034】
本実施の形態では、少なくとも蓄電装置B1,B3、コンバータ14、正極ラインPL1,PL3,PL4およびECU30によって本発明の電源システムが実現される。
【0035】
図2は、図1に示したコンバータ14の構成を示す回路図である。図2を参照して、コンバータ14は、フィルタ回路71と、DC−AC変換器72と、電圧変換回路73と、整流回路74と、平滑回路75とを含む。
【0036】
フィルタ回路71は、正極ラインPL1および負極ラインNL間の直流電圧に含まれるノイズ成分を除去する。
【0037】
DC−AC変換器72は、フィルタ回路71によりノイズが除去された直流電圧を交流電圧に変換する。DC−AC変換器72は、半導体スイッチング素子Q1〜Q4およびダイオードD1〜D4を含む。半導体スイッチング素子Q1,Q2は正極ラインPL1および負極ラインNL間に直列に接続される。ダイオードD1,D2は、それぞれスイッチング素子Q1,Q2に逆並列に接続される。同様に、半導体スイッチング素子Q3,Q4は正極ラインPL1および負極ラインNL間に直列に接続される。ダイオードD3,D4は、それぞれスイッチング素子Q3,Q4に逆並列に接続される。
【0038】
本実施の形態において、半導体スイッチング素子としては、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が適用されるものとするが、制御信号によってオン・オフを制御可能であれば任意のスイッチング素子を適用可能である。たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やバイポーラトランジスタ等もスイッチング素子Q1〜Q4として用いることができる。
【0039】
スイッチング素子Q1(Q3)および/またはスイッチング素子Q2(Q4)のオン・オフ期間比(デューティ)はECU30からの信号PWC3により制御される。これにより、正極ラインPL1および負極ラインNL間の直流電圧が単相交流電圧に変換される。
【0040】
電圧変換回路73は、トランスにより構成され、DC−AC変換器72からの交流電圧を降圧する。整流回路74は、電圧変換回路73からの交流電圧を直流電圧に変換する。平滑回路75は、整流回路74から出力される電圧を平滑化し、その平滑化された電圧を正極ラインPL4に出力する。
【0041】
図3は、図1に示したECU30の機能ブロック図である。図3を参照して、ECU30は、コンバータ制御部32と、インバータ制御部34,36とを含む。
【0042】
コンバータ制御部32は、電圧センサ42によって検出された電圧VB1、電圧センサ46によって検出された電圧VH、および電流センサ52によって検出された電流I1に基づいて、コンバータ10に含まれるスイッチング素子をPWM(Pulse Width Modulation)制御するための信号PWC1を生成する。また、コンバータ制御部32は、コンバータ10を停止するためのシャットダウン信号SD1を生成する。
【0043】
コンバータ制御部32は、同様に、電圧センサ44によって検出された電圧VB2、電圧センサ46によって検出された電圧VH、および電流センサ54によって検出された電流I2に基づいて、コンバータ12に含まれるスイッチング素子を制御するための信号PWC2を生成する。また、コンバータ制御部32は、コンバータ12を停止するためのシャットダウン信号SD2を生成する。
【0044】
コンバータ制御部32は、さらに、電圧センサ48によって検出された電圧VB3、および要求パワーPRに基づいて、コンバータ14のスイッチング素子Q1〜Q4をオン・オフするためのPWM信号PWC3を生成する。
【0045】
コンバータ制御部32は、さらに、蓄電装置B1,B2のそれぞれの残存容量(SOC(State of Charge)とも呼ばれる)である残存容量SOC1,SOC2を受ける。この残存容量は、たとえば蓄電装置が満充電状態であるときに100%であると定義され、蓄電装置が完全に放電した状態であるときに0%であると定義される。残存容量SOC1(SOC2)は、電圧VB1(VB2)や電流I1(またはI2)、温度T1(またはT2)などを用いて、種々の公知の手法により算出することができる。
【0046】
インバータ制御部34は、モータジェネレータMG1のトルク指令値TR1、モータ電流MCRT1およびロータ回転角θ1、ならびに電圧VHに基づいて、インバータ20に含まれるスイッチング素子をオン/オフするためのPWM信号を生成し、その生成したPWM信号を信号PWI1としてインバータ20へ出力する。
【0047】
インバータ制御部36は、モータジェネレータMG2のトルク指令値TR2、モータ電流MCRT2およびロータ回転角θ2、ならびに電圧VHに基づいて、インバータ22に含まれるパワートランジスタをオン・オフするためのPWM信号を生成し、その生成したPWM信号を信号PWI2としてインバータ22へ出力する。
【0048】
なお、トルク指令値TR1,TR2は、たとえば、アクセル開度やブレーキ踏込量、車両速度などに基づいて、図示されない車両ECUによって算出される。また、モータ電流MCRT1,MCRT2およびロータ回転角θ1,θ2の各々は、図示されないセンサによって検出される。
【0049】
次に、コンバータ14の制御を詳細に説明する。まず、図4および図5を用いて、PWM信号を生成するコンバータ制御について説明する。
【0050】
図4は、コンバータ14を制御するための構成の例を示した機能ブロック図である。
図4を参照して、コンバータ制御部32(図3)は、目標値設定部210と、電圧制御部215とを含む。目標値設定部210は、コンバータ14の目標電圧VB*を生成する。
【0051】
電圧制御部215は、減算部222,226と、PI制御部224と、変調部228とを含む。減算部222は、目標電圧VB*から電圧VB3を減算し、その演算結果をPI制御部224へ出力する。PI制御部224は、目標電圧VB*と電圧VB3との偏差を入力として比例積分演算を行ない、その演算結果を減算部226へ出力する。
【0052】
減算部226は、電圧VB1/目標電圧VB*で示されるコンバータ14の電圧変換比(降圧比)の逆数からPI制御部224の出力を減算し、その演算結果をデューティ指令Tonとして変調部228へ出力する。変調部228は、デューティ指令Tonと図示しない発振部により生成される搬送波(キャリア波)とに基づいてPWM信号PWC3を生成する。
【0053】
図4に示した制御構成によって、スイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング(オン・オフ)動作が制御されることにより、電圧VB3を目標電圧VB*に近づけることができる。また、目標電圧VB*を要求パワーPRに応じて変化させることにより、電圧VB3を変化させることができる。
【0054】
図5は、図4に示した目標値設定部210による処理の流れを示すフローチャートである。なお、このフローチャートの処理は、一定時間毎または所定の条件が成立するごとにメインルーチンから呼び出されて実行される。
【0055】
図5および図4を参照して、処理が開始されると、目標値設定部210は要求パワーPRを取得する(ステップS1)。目標値設定部210は、取得した要求パワーPRを用いて目標電圧VB*(電圧指令値)を算出する(ステップS2)。具体的には、目標値設定部210は、以下の式に従って目標電圧VB*を算出する。
【0056】
VB*=VBo−α×PR
ここでVBoは、コンバータ14の通常の出力電圧として予め定められた値であり、たとえば13.5(V)である。αは正の係数である。なお係数αは固定値でもよいし、たとえば要求パワーPRに応じて変化する値でもよい。要求パワーPRが正である場合においては、目標電圧VB*は要求パワーPRが大きくなるほど小さくなる。これに対し、要求パワーPRが負である場合においては、目標電圧VB*は要求パワーPRの絶対値が大きくなるほど大きくなる。
【0057】
次に目標値設定部210は、ステップS2により算出した目標電圧VB*が上限値VBhよりも大きいか否かを判定する(ステップS3)。上限値VBhは、補機系(蓄電装置B3および補機装置16を含む)の上限値として予め設定された値であり、たとえば14(V)である。
【0058】
目標電圧VB*が上限値VBhよりも大きい場合(ステップS3においてYES)、目標値設定部210は、上限値VBhを目標電圧VB*に設定する(ステップS4)。そして、目標値設定部210は目標電圧VB*(この場合は上限値VBh)を出力する(ステップS5)。
【0059】
目標電圧VB*が上限値VBh以下の場合(ステップS3においてNO)、目標値設定部210は、目標電圧VB*が下限値VBlよりも小さいか否かを判定する(ステップS6)。目標電圧VB*が下限値VBlよりも小さい場合(ステップS6においてYES)、目標値設定部210は、下限値VBlを目標電圧VB*に設定する(ステップS7)。そして、目標値設定部210は目標電圧VB*(この場合は下限値VBl)を出力する(ステップS5)。
【0060】
すなわち、ステップS4,S7の処理は、目標電圧VB*が上限値VBhを上回ったり、下限値VBlを下回ったりしないように目標電圧VB*を保護するガード処理に対応する。
【0061】
目標電圧VB*が上限値VBh以下であり(ステップS3においてNO)、かつ下限値VBl以上である場合(ステップS6においてNO)、目標値設定部210はステップS2により算出した目標電圧VB*を出力する(ステップS5)。
【0062】
ステップS5の処理が終了すると、全体の処理はメインルーチンに戻される。
本実施の形態の電源システムでは、車両の動作状態、言い換えれば主負荷装置の動作状態に応じて、コンバータ14から出力される電圧VB3を変化させる。詳細には、要求パワーPRが正の場合には電圧VB3を低下させる一方で、要求パワーPRが負の場合には電圧VB3を上昇させる。
【0063】
要求パワーPRが正の場合とは、すなわちモータジェネレータMG1および/またはMG2の力行動作により少なくとも蓄電装置B1から電力が出力される場合に対応する。一方、要求パワーPRが負の場合とは、モータジェネレータMG2による車両の回生制動(あるいはモータジェネレータMG1の発電)により、少なくとも蓄電装置B1に電力が供給される場合に対応する。
【0064】
本実施の形態に係る電源システムおよびその制御方法によれば、コンバータ14(DC/DCコンバータ)から出力される電圧VB3を要求パワーPRに応じて変化させることにより、電圧VB3を一定に制御する場合に比較して、蓄電装置内部の損失を低減させることが可能になる。
【0065】
蓄電装置B1に入出力される電流をIとし、蓄電装置B1の内部抵抗をRとすると、蓄電装置B1の内部ではR×Iで表わされる損失が生じる。本実施の形態では、電圧VB3を要求パワーPRに応じて変化させることで、上記式により表わされる損失を低減させる。これによって、電源システムの効率をより高めることが可能になる。この点について以下に説明する。
【0066】
図6は、主負荷装置を力行させつつコンバータ14から出力される電圧VB3を一定に保つ場合の電力の流れを示すモデル図である。図6を参照して、主負荷装置(インバータ20,22,モータジェネレータMG1,MG2)の力行時の要求パワーPR(>0)は電力量Woutに等しい。蓄電装置B1は、電力量Woutの一部を負担するために主負荷装置に対して電力量Wo_b1を出力する。さらに、蓄電装置B1は補機系に対して電力量Wo_aを出力する。一方、蓄電装置B2は、電力量Woutの残りを負担するために主負荷装置に対して電力量Wo_b2を出力する。なおこのモデルにおいてはコンバータ10,12の損失を0とする(以下説明するモデルにおいても同様)。
【0067】
電力量Woutのうち電力量Wo_mg1はインバータ20に供給され、電力量Woutのうち電力量Wo_mg2はインバータ22に供給される。
【0068】
補機系に供給される電力量Waのうち、Wa1は補機装置16の駆動に用いられ、Wa2は蓄電装置B3の充電に用いられる。
【0069】
図7は、主負荷装置を回生させつつコンバータ14から出力される電圧VB3を一定に保つ場合の電力の流れを示すモデル図である。図7を参照して、主負荷装置の回生時の要求パワーPR(<0)は電力量Winに等しい。主負荷装置の回生電力は、蓄電装置B1,B2および補機系に供給される。図7では蓄電装置B1に供給される電力量をWi_b1とし、補機系に供給される電力量をWaとし、蓄電装置B2に供給される電力量Wi_b2とする。補機系に供給される電力量Waは主負荷装置の力行時の値と同じとする。
【0070】
図8は、主負荷装置の力行時にコンバータ14から出力される電圧VB3を低下させる場合の電力の流れを示すモデル図である。図8を参照して、蓄電装置B1は、電力量Woutの一部を負担するために主負荷装置に対して電力量Wo_b1を出力する。さらに、蓄電装置B1は補機系に対して電力量Wa_aを出力する。コンバータ14の出力電圧を下げることによって、蓄電装置B1からの電力量Wa_aは、図6および図7で示す電力量Waよりも小さくなる。補機装置16の駆動に要する電力量Wa1に対して蓄電装置B1からの電力量Wa_aが小さい場合には、蓄電装置B3は充電されない。
【0071】
図9は、主負荷装置の回生時にコンバータ14から出力される電圧VB3を上昇させる場合の電力の流れを示すモデル図である。図9を参照して、主負荷装置の回生電力は、蓄電装置B1,B2および補機系に供給される。コンバータ14から出力される電圧VB3を上昇させることによって、補機系に供給される電力量はWaからWa_bに上昇する。これにより蓄電装置B1に供給される電力量Wi_b1が低下する。補機系に供給される電力量Wa_bのうち電力量Wa1は補機装置16の駆動に用いられ、電力量Wa4は蓄電装置B3の充電に用いられる。
【0072】
次に図10〜図13を用いて、本実施の形態による効果を説明する。
図10は、コンバータ14から出力される電圧VB3を一定に保つ場合に蓄電装置B1に入出力される電流を示す模式図である。図11は、コンバータ14から出力される電圧VB3を一定に保つ場合の蓄電装置B1の損失を示す模式図である。
【0073】
図10および図11を参照して、主負荷装置の力行時(PR>0)においては蓄電装置B1からの出力電流(正とする)は、走行エネルギーに対応する電流と補機電力に対応する電流との和である。なお蓄電装置B1からの出力電流は、単純には、蓄電装置B1から出力される電力量を蓄電装置の出力電圧、および時間で割ることにより算出される。この場合の蓄電装置B1の損失は、走行エネルギーの供給に伴う損失と、補機電力の供給に伴う損失との和となる。
【0074】
一方、主負荷装置の回生時(PR<0)においては、蓄電装置B1に回生電力が入力されつつ補機系にも駆動電力が供給される。すなわち走行エネルギー(回生電力)は補機電力と蓄電装置の入力電力とに分割される。この場合の蓄電装置B1の損失は、走行エネルギーのうち補機電力を差し引いた分を蓄電装置B1に入力することに伴う損失となる。
【0075】
図12は、要求パワーPRに応じてコンバータ14から出力される電圧VB3を変化させる場合に蓄電装置B1に入出力される電流を示す模式図である。図13は、要求パワーPRに応じてコンバータ14から出力される電圧VB3を変化させる場合の蓄電装置B1の損失を示す模式図である。
【0076】
図12および図13を参照して、主負荷装置の力行時において、蓄電装置B1から走行用エネルギーとして出力される電力量(Wo_b1)は図10に示した電力量と同じとする。コンバータ14から出力される電圧VB3を低下させることにより、補機系に供給される電力量はWaからWa_aに低下する。これにより蓄電装置B1からの出力電流のうち、補機電力の供給による成分が小さくなる。すなわち蓄電装置B1からの出力電流が低下する。したがって蓄電装置B1の内部損失(=RI)を低下させることができる。
【0077】
一方、主負荷装置の回生時においては、コンバータ14から出力される電圧VB3を上昇させることにより、補機系に供給される電力量をWaからWa_bに増加させる。これによって走行エネルギーのうち蓄電装置B1に入力されるエネルギー(電力)が小さくなるので蓄電装置B1の入力電流が小さくなる。したがって蓄電装置B1の内部損失を低下させることができる。
【0078】
上述のように、蓄電装置の内部の損失はRIと見積られる。蓄電装置と主負荷装置との間では大きな走行エネルギーが授受されるので、走行エネルギーに対応する蓄電装置の入出力電流が大きくなる。したがって電流の変化がわずか(たとえば1A)であっても蓄電装置の損失が大きく変化する。本実施の形態によれば、主負荷装置の力行時における蓄電装置B1の出力電流のうち、補機電力の供給に起因する成分を小さくすることによって、蓄電装置の内部の損失を低減できる。また、走行エネルギーを小さくしなくてもよいので、車両の挙動への影響を回避できる。
【0079】
さらに本実施の形態では、主負荷装置の回生時には走行エネルギーのうちの補機電力の割合を増やす。これによって、蓄電装置の入力電流を小さくすることができるので、蓄電装置の損失を低減できる。また、主負荷装置の回生時に蓄電装置B3が充電されるので主負荷装置の力行時において補機装置16を駆動できる。したがって補機装置16を継続的に駆動できる。
【0080】
(変形例)
この変形例では、主負荷装置の力行時にはECU30(図3に示すコンバータ制御部32)はコンバータ14を停止させる。この場合にもコンバータ14の出力側の電圧(正極ラインPL4の電圧)の電圧が低下するが蓄電装置B3から供給される電力によって補機装置16が駆動する。なお、主負荷装置の回生時には、コンバータ14の出力電圧を上昇させることにより、補機装置16に電力が供給されるとともに蓄電装置B3が充電される。
【0081】
図14は、本実施の形態の変形例によるコンバータ14の制御を実現するための構成例を示す機能ブロック図である。図14を参照して、コンバータ制御部32(図3)は、図4に示す構成に加えて、シャットダウン指示部232および選択部234を備える。
【0082】
シャットダウン指示部232は、コンバータ14の動作を停止するためのシャットダウン信号SD3を出力する。シャットダウン信号SD3に従えば、コンバータ14において、半導体スイッチング素子Q1〜Q4(図2参照)はいずれもオフに固定される。
【0083】
選択部234は、要求パワーPRに従って、PWM信号PWC3およびシャットダウン信号SD3のうち1つを選択して出力する。選択部234により選択された信号はコンバータ14に与えられる。具体的には、選択部234は、要求パワーPRが負の場合(回生時)においてPWM信号PWC3を選択する。一方、選択部234は要求パワーPRが正の場合(力行時)においてシャットダウン信号SD3を選択する。
【0084】
主負荷装置の力行時にコンバータ14を停止させることによって蓄電装置B1から補機系への電力の供給経路が遮断される。したがって蓄電装置B1からの出力電流のうち補機電力の供給に起因する成分をなくすることができるので、蓄電装置B1の損失をより低減できる。
【0085】
また、上述のモデルでは、コンバータ14の動作中の損失は特に考慮されていないが、実際にはコンバータ14の動作に伴って損失が発生する。しかし、この変形例では主負荷装置の力行時には、コンバータ14を停止させることによりコンバータ14の動作による損失を発生させなくすることができる。これにより、電源システムの効率をより向上させることができる。
【0086】
なお、コンバータ10,12の制御方法は特に限定されるものではないが、電源システムの効率の観点からは、コンバータ10、12の損失を抑制することが好ましい。このため、たとえば以下に説明する制御を採用することができる。
【0087】
図15は、図3に示したコンバータ制御部32によるコンバータ10,12の制御処理の流れを示すフローチャートである。なお、このフローチャートの処理は、一定時間毎または所定の条件が成立するごとにメインルーチンから呼び出されて実行される。
【0088】
図15を参照して、コンバータ制御部32は、車両ECUから受ける要求パワーPRが基準値Pthよりも小さいか否かを判定する(ステップS10)。コンバータ制御部32は、要求パワーPRが基準値Pthよりも小さいと判定すると(ステップS10においてYES)、蓄電装置B1の電圧VB1が蓄電装置B2の電圧VB2よりも低いか否かを判定する(ステップS20)。
【0089】
コンバータ制御部32は、電圧VB1が電圧VB2よりも低いと判定すると(ステップS20においてYES)、コンバータ10を停止させ、コンバータ12のみを動作させる(ステップS30)。具体的には、コンバータ制御部32は、コンバータ10に対してシャットダウン信号SD1を出力するとともに、コンバータ12に対して信号PWC2を出力する。
【0090】
一方、ステップS20において電圧VB1が電圧VB2以上であると判定されると(ステップS20においてNO)、コンバータ制御部32は、コンバータ12を停止させ、コンバータ10のみを動作させる(ステップS40)。具体的には、コンバータ制御部32は、コンバータ10に対して信号PWC1を出力するとともに、コンバータ12に対してシャットダウン信号SD2を出力する。
【0091】
ステップS10において要求パワーPRが基準値Pth以上であると判定されると(ステップS10においてNO)、コンバータ制御部32は、コンバータ10,12の双方を動作させる(ステップS50)。具体的には、コンバータ制御部32は、信号PWC1,PWC2をコンバータ10,12に対してそれぞれ出力する。
【0092】
要求パワーが小さい領域では、コンバータにおける損失(主にスイッチング損失)が支配的であり、コンバータ10,12のいずれか一方を停止させる方がコンバータ10,12の双方を動作させるよりもトータル損失は小さい。そして、要求パワーが増大するに従って蓄電装置における抵抗損失が支配的になり、要求パワーがある値(Pth)を超えると、コンバータ10,12の双方を動作させる方がコンバータ10,12のいずれか一方を動作させるよりもトータル損失が小さくなる。
【0093】
この実施の形態においては、要求パワーPRが基準値Pthよりも小さいとき、電圧が低い方の蓄電装置に対応するコンバータを停止させ、要求パワーPRが基準値Pth以上のとき、コンバータ10,12の双方を動作させる。したがって、この実施の形態によれば、蓄電装置B1〜B3およびコンバータ10,12,14によって形成される電源システムの損失を抑制することができる。
【0094】
また、要求パワーPRが基準値Pthよりも低く、かつ、コンバータ10(または12)による昇圧動作が不要な場合には、蓄電装置B1,B2のうち出力電圧が高いほうの蓄電装置(以下、「最高電圧蓄電装置」と呼ぶ)に対応するコンバータの上アームおよび下アームをそれぞれオンおよびオフに固定し、他のコンバータの動作を停止させてもよい。
【0095】
図16は、図1に示したコンバータ10,12の構成を示す回路図である。図16を参照して、コンバータ10は、電力用半導体スイッチング素子Q5,Q6と、ダイオードD5,D6と、リアクトルL1とを含む。
【0096】
スイッチング素子Q5,Q6は、正極ラインPL3と負極ラインNLとの間に直列に接続される。ダイオードD5,D6は、それぞれスイッチング素子Q5,Q6に逆並列に接続される。リアクトルL1の一方端は、スイッチング素子Q5,Q6の接続ノードに接続され、その他方端は、正極ラインPL1に接続される。
【0097】
コンバータ12は、コンバータ10と同様の構成を有する。コンバータ10の構成において、スイッチング素子Q5,Q6をスイッチング素子Q7,Q8にそれぞれ置き換え、ダイオードD5,D6をダイオードD7,D8にそれぞれ置き換え、リアクトルL1、正極ラインPL1をリアクトルL2、正極ラインPL2にそれぞれ置き換えた構成がコンバータ12の構成に対応する。なお、スイッチング素子Q5〜Q8としてはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が適用されるものとするが、制御信号によってオン・オフを制御可能であれば任意のスイッチング素子を適用可能である。したがって、MOSFETあるいはバイポーラトランジスタ等もスイッチング素子Q5〜Q8に適用可能である。
【0098】
コンバータ10,12は、チョッパ回路から成る。そして、コンバータ10(12)は、ECU30(図1)からの信号PWC1(PWC2)に基づいて、正極ラインPL1(PL2)の電圧をリアクトルL1(L2)を用いて昇圧し、その昇圧した電圧を正極ラインPL3へ出力する。具体的には、スイッチング素子Q5(Q7)および/またはスイッチング素子Q6(Q8)のオン・オフ期間比(デューティ)を制御することによって、蓄電装置B1,B2からの出力電圧の昇圧比を制御できる。
【0099】
コンバータ10(12)は、ECU30(図1)からの信号PWC1(PWC2)に基づいて、正極ラインPL3の電圧を降圧し、その降圧した電圧を正極ラインPL1(PL2)へ出力する。具体的には、スイッチング素子Q5(Q7)および/またはスイッチング素子Q6(Q8)のオン・オフ期間比(デューティ)を制御することによって、正極ラインPL3の電圧の降圧比を制御できる。
【0100】
要求パワーPRが基準値Pthよりも低く、かつ、コンバータ10(または12)による昇圧動作が不要な場合に、最高電圧蓄電装置に対応するコンバータの上アーム(スイッチング素子Q5またはQ7)および下アーム(スイッチング素子Q6またはQ8)がそれぞれオンおよびオフに固定され、かつ他のコンバータの動作が停止されることにより、コンバータ10,12全体での損失をより抑制した上で、電源システムおよび主負荷装置間の電力授受を実行できる。さらに、最高電圧蓄電装置に対応するコンバータの上アームをオンすることにより、蓄電装置B1,B2間の短絡を防止できる。
【0101】
本実施の形態に係る電源システムの制御は、エンジン2が停止しかつモータジェネレータMG2が動作することによりハイブリッド車両100が走行している場合に実行されることがより好ましい。ハイブリッド車両100がエンジン2により走行している場合に比べ、上記のような走行時においては蓄電装置B1に対して入出力される電流が大きくなるので、電源システムの損失を抑制する効果を高めることができる。
【0102】
また、本実施の形態に係るハイブリッド車両100は、蓄電装置B1,B2が車両外部の電源(たとえば商用電源)により充電可能なよう構成されていてもよい。このようにハイブリッド車両100を構成することにより、モータジェネレータMG2のみによって走行可能な距離を長くすることができる。つまり蓄電装置B1に対して入出力される電流が大きくなる期間が長くなるので、電源システムの損失を抑制する効果を高めることができる。
【0103】
なお、蓄電装置B1,B2を車両外部の電源(たとえば商用電源)により充電するための構成は特に限定されない。たとえば商用交流電源に接続可能な充電装置をハイブリッド車両100に搭載することで蓄電装置B1,B2を外部電源により充電することができる。この充電装置は交流を直流に変換し、かつ電圧を調圧して蓄電装置B1,B2に与えるよう構成されていればよい。また、他にも、モータジェネレータMG1,MG2のステータコイルの中性点を交流電源に接続する方式、あるいはコンバータ10,12を合わせて交流直流変換装置として機能させる方式を用いても良い。
【0104】
また、本実施の形態では、蓄電装置とインバータとの間に設けられるコンバータ(10,12)を示したが、このようなコンバータが車両に設けられていなくてもよい。
【0105】
また、本実施の形態では、車両駆動用の蓄電装置を2つ備えるハイブリッド車両を示したが、車両駆動用の蓄電装置(主蓄電装置)が少なくとも1つあり、その主蓄電装置と並列に電力線に接続され、電力線の電圧を副負荷装置を駆動させるための電圧に変換して出力する電圧変換装置と、電圧変換装置の出力側に副負荷装置と並列に接続される副蓄電装置とを備えていればよい。したがって車両駆動用の蓄電装置(主蓄電装置)の個数が1個であり、その蓄電装置とインバータとの間に設けられるコンバータの個数が1個でもよい。あるいは蓄電装置の個数が3つ以上であってもよい。
【0106】
また、本実施の形態では動力分割機構によりエンジンの動力を車軸と発電機とに分割して伝達可能なシリーズ/パラレル型ハイブリッドシステムに適用した例を示した。しかし本発明は、上記構成を備えている車両に適用できる可能であり、たとえば発電機を駆動するためにのみエンジンを用い、発電機により発電された電力を使うモータでのみ車軸の駆動力を発生させるシリーズ型ハイブリッド自動車や、モータのみで走行する電気自動車にも適用できる。
【0107】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明による電源システムを搭載した車両の一例として示されるハイブリッド車両の全体ブロック図である。
【図2】図1に示したコンバータ14の構成を示す回路図である。
【図3】図1に示したECU30の機能ブロック図である。
【図4】コンバータ14を制御するための構成の例を示した機能ブロック図である。
【図5】図4に示した目標値設定部210による処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】主負荷装置を力行させつつコンバータ14から出力される電圧VB3を一定に保つ場合の電力の流れを示すモデル図である。
【図7】主負荷装置を回生させつつコンバータ14から出力される電圧VB3を一定に保つ場合の電力の流れを示すモデル図である。
【図8】主負荷装置の力行時にコンバータ14から出力される電圧VB3を低下させる場合の電力の流れを示すモデル図である。
【図9】主負荷装置の回生時にコンバータ14から出力される電圧VB3を上昇させる場合の電力の流れを示すモデル図である。
【図10】コンバータ14から出力される電圧VB3を一定に保つ場合に蓄電装置B1に入出力される電流を示す模式図である。
【図11】コンバータ14から出力される電圧VB3を一定に保つ場合の蓄電装置B1の損失を示す模式図である。
【図12】要求パワーPRに応じてコンバータ14から出力される電圧VB3を変化させる場合に蓄電装置B1に入出力される電流を示す模式図である。
【図13】要求パワーPRに応じてコンバータ14から出力される電圧VB3を変化させる場合の蓄電装置B1の損失を示す模式図である。
【図14】本実施の形態の変形例によるコンバータ14の制御を実現するための構成例を示す機能ブロック図である。
【図15】図3に示したコンバータ制御部32によるコンバータ10,12の制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】図1に示したコンバータ10,12の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0109】
2 エンジン、4 動力分割機構、6 車輪、10,12,14 コンバータ、16 補機装置、20,22, インバータ、30 ECU、32 コンバータ制御部、34,36 インバータ制御部、42,44,46,48 電圧センサ、52,54 電流センサ、62,64 温度センサ、71 フィルタ回路、72 DC−AC変換器、73 電圧変換回路、74 整流回路、75 平滑回路、100 ハイブリッド車両、210 目標値設定部、215 電圧制御部、222,226 減算部、224 PI制御部、228 変調部、232 シャットダウン指示部、234 選択部、B1〜B3 蓄電装置、C コンデンサ、D1〜D8 ダイオード、MG1,MG2 モータジェネレータ、NL 負極ライン、PL1〜PL4 正極ライン、Q1〜Q8 半導体スイッチング素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電源システムであって、前記車両は、前記電源システムとの間で電力を授受する主負荷装置と、前記電源システムから供給される電力により動作する副負荷装置とを備え、前記電源システムは、
主蓄電装置と、
前記主蓄電装置と前記主負荷装置との間で電力を伝達するための電力線と、
前記主蓄電装置と並列に前記電力線に接続されて、前記電力線の電圧を、前記副負荷装置を動作させるための電圧に変換して出力する電圧変換装置と、
前記電圧変換装置の出力側に前記副負荷装置と並列に接続される副蓄電装置と、
前記主負荷装置の動作に伴う前記主蓄電装置への要求パワーに応じて前記電圧変換装置を制御することにより、前記電圧変換装置の前記出力側から出力される出力電圧を変化させる制御装置とを備える、電源システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記要求パワーが前記主蓄電装置から前記主負荷装置への出力電力に対応する場合には、前記電圧変換装置の前記出力電圧を低下させる一方で、前記要求パワーが前記主負荷装置から前記主蓄電装置への入力電力に対応する場合には、前記電圧変換装置の前記出力電圧を上昇させる、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記要求パワーが前記出力電力に対応する場合には、前記電圧変換装置を停止させることにより、前記電圧変換装置の前記出力電圧を低下させる、請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記主負荷装置は、
力行時に前記車両の駆動力を発生させるとともに回生時に電力を発生させる交流回転電機と、
前記交流回転電機が指令値に従って動作するように、前記交流回転電機と前記電力線との間で双方向の電力変換を行なうように構成されたインバータとを含み、
前記車両は、
前記交流回転電機と並列的に前記駆動力を発生させることが可能な内燃機関をさらに備え、
前記制御装置は、前記内燃機関が停止しかつ前記交流回転電機が動作することによって前記車両が走行している場合において、前記要求パワーに応じて前記出力電圧を変化させる、請求項1から3のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項5】
前記副負荷装置は、補機装置である、請求項1から4のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項6】
車両に搭載される電源システムの制御方法であって、
前記車両は、前記電源システムとの間で電力を授受する主負荷装置と、前記電源システムから供給される電力により動作する副負荷装置とを備え、
前記電源システムは、主蓄電装置と、前記主蓄電装置と前記主負荷装置との間で電力を伝達するための電力線と、前記主蓄電装置と並列に前記電力線に接続されて、前記電力線の電圧を前記副負荷装置を動作させるための電圧に変換する電圧変換装置と、前記電圧変換装置の出力側に前記副負荷装置と並列に接続される副蓄電装置とを備え、
前記制御方法は、
前記主負荷装置の動作に伴う前記主蓄電装置への要求パワーを取得するステップと、
前記要求パワーに応じて前記電圧変換装置を制御することにより、前記電圧変換装置の前記出力側から出力される出力電圧を変化させるステップとを備え、
前記出力電圧を変化させるステップは、前記要求パワーが前記主蓄電装置から前記主負荷装置への出力電力に対応する場合には、前記出力電圧を低下させる一方で、前記要求パワーが前記主負荷装置から前記主蓄電装置への入力電力に対応する場合には、前記出力電圧を上昇させる、電源システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−98888(P2010−98888A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268920(P2008−268920)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】