説明

駆動装置

【課題】 移動体の位置検出ポイントが広い間隔をあけて複数存在する場合でも、移動体を高い精度で位置決めすることができる駆動装置を提供する。
【解決手段】 磁界を発生させる磁界発生部材7と、磁界を検出する第1,第2,第3の磁界検出素子6A,6B,6Cから成る磁界検出手段6と、磁界発生部材7を移動させる圧電アクチュエータPとを備える。磁界検出手段6での検出結果に基づいて磁界発生部材7と磁界検出手段6との相対的な位置決めを行う際、磁界発生部材7が移動する可動範囲において、所定領域では第1,第2の磁界検出素子6A,6Bの検出結果に基づいて第1の位置決めを行い、所定領域から離れた所定ポイントでは第3の磁界検出素子6Cの検出結果に基づいて第2の位置決めを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駆動装置に関するものであり、例えば、撮像装置(デジタルカメラ,ビデオカメラ等),光ピックアップ装置,光学測定装置等の光学機器におけるレンズ駆動機構等に好適な駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮像装置や光ピックアップ装置等におけるレンズ駆動機構に適用される駆動装置として、従来より様々なタイプのものが提案されているが、その駆動源に着目して大別すると、電磁モータ等を駆動源として用いる磁力源タイプと、圧電アクチュエータ等を駆動源とする非磁力源タイプとがある。前者の例として、例えば特許文献1には、可動部材に対して相対的に静止固定された推進用界磁マグネットを設けてなる駆動装置が開示されている。この駆動装置において可動部材の位置検出は、可動部材と一体に設けられた磁気センサが検出する変位量に基づいて行われる構成であるが、可動部材を変位させる駆動源が電磁モータであるため、界磁マグネットから発生する漏れ磁束によって磁気センサ出力にオフセットが重畳されないよう、可動部材の駆動速度に応じてハイパスフィルタ処理を施しオフセットを除去するという工夫が施されている。
【0003】
一方、後者の例として特許文献2〜4記載の駆動装置が挙げられる。例えば特許文献2には、圧電アクチエータを駆動源とする駆動装置が開示されている。その駆動装置においては、圧電素子の一端に固定された駆動部材の電気抵抗を利用して、前記駆動部材に摩擦係合された可動部材の位置を検出するという、可動部材の位置検出手法が採用されている。特許文献3にも圧電アクチエータを駆動源とする駆動装置が開示されており、その可動部材の位置検出を、可動部材に設けられた可動電極と、固定部に設けられた固定電極との間の静電容量変化によって行う手法が開示されている。また特許文献4には、光ディスクのカバー層の厚さムラに起因する球面収差を補正するため、圧電アクチエータを駆動源としてレンズを移動させる駆動装置が開示されているが、レンズの位置検出に関する構成は示されていない。
【特許文献1】特開平8−275496号公報
【特許文献2】特開2000−205809号公報
【特許文献3】特開2003−185406号公報
【特許文献4】特開2004−39068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の駆動装置では、駆動源(電磁モータ)から発生する漏れ磁束によって磁気センサ出力にオフセットが重畳するという問題に対して、ハイパスフィルタ処理を施さなければならない。したがって、検出回路が複雑になりコスト面で、また信頼性の面で不利になる。また、N極とS極とを交互に配置した界磁マグネットを高い分解能で精度良く製造することが難しいという問題もある。
【0005】
一方、非磁力源タイプである特許文献2,3記載の駆動装置にあっては上記のような問題は生じないが、可動部材の位置検出の点において次のような不都合がある。つまり、特許文献2記載の駆動装置においては、駆動部材の電気抵抗を利用して可動部材の位置検出を行うという接触式のセンシング方式を採用しているため、可動部材と駆動部材の接触抵抗が変動してしまい、高い分解能を得ることが困難である。アクチュエータ性能向上のためには軽量・高剛性の駆動部材が望まれるが、センシングのための電気抵抗値と高剛性を両立するための駆動部材の材料選択が難しいという問題もある。特許文献3記載の駆動装置では非接触式のセンシング手段を採用しているが、交流電圧を可動電極又は固定電極に印加する必要があるため、検出回路が複雑になりコスト面及び信頼性の面で不利になる。さらに、高い分解能を得るためには固定電極と可動電極との空隙を極めて小さくしなければならないという問題もある。
【0006】
さらに別観点からの問題点として、駆動装置の動作環境の変動に起因する位置検出精度低下が挙げられる。例えば、特許文献1の手法では可動部材の位置検出に磁気センサを用いているが、そのセンシング特性は環境温度等により変移することから、結果として環境温度等の変化により可動部材の位置検出精度が低下することになる。また、可動部材の位置検出ポイントが広い間隔をあけて複数存在する場合には、必要な位置精度が得られなくなったり、可動部材の移動量の増大に伴って各部材やスペースが大きくなったりする。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、移動体の位置検出ポイントが広い間隔をあけて複数存在する場合でも、移動体を高い精度で位置決めすることができる駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明の駆動装置は、磁界を発生させる磁界発生部材と、前記磁界を検出する第1,第2,第3の磁界検出素子から成る磁界検出手段と、前記磁界発生部材又は前記磁界検出手段を移動させる駆動手段とを備え、前記磁界検出手段での検出結果に基づいて前記磁界発生部材と前記磁界検出手段との相対的な位置決めを行う駆動装置であって、前記磁界発生部材又は前記磁界検出手段が移動する可動範囲において、所定領域では前記第1,第2の磁界検出素子の検出結果に基づいて第1の位置決めを行い、前記所定領域から離れた所定ポイントでは前記第3の磁界検出素子の検出結果に基づいて第2の位置決めを行うことを特徴とする。
【0009】
第2の発明の駆動装置は、上記第1の発明において、前記磁界発生部材の中央が前記第3の磁界検出素子に最近接したときの相対位置で前記第2の位置決めを行うことを特徴とする。
【0010】
第3の発明の駆動装置は、上記第1又は第2の発明において、前記磁界発生部材と前記磁界検出手段との相対的移動方向に対して垂直であり、かつ、前記磁界発生部材の中央を通る平面に関して、前記磁界発生部材で生じる磁力線が対称であることを特徴とする。
【0011】
第4の発明の駆動装置は、上記第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記磁界発生部材又は前記磁界検出手段の移動をガイドする案内軸を前記駆動手段が備え、前記第1,第2,第3の磁界検出素子が前記案内軸のガイド方向に対して平行に配列されていることを特徴とする。
【0012】
第5の発明の駆動装置は、上記第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記第1,第2の磁界検出素子がいずれも検出した磁界に応じて電気信号を出力するものであって、以下の式(f1)に基づく演算の結果に基づいて前記第1の位置決めを行うことを特徴とする。
K・(A−B)/(A+B) …(f1)
ただし、
A:第1の磁界検出素子からの電気信号の出力、
B:第2の磁界検出素子からの電気信号の出力、
K:比例定数、
である。
【0013】
第6の発明の駆動装置は、隣り合うように配置された第1,第2の磁界検出素子と、前記第1,第2の磁界検出素子から離れた位置に配置された第3の磁界検出素子と、前記第1,第2の磁界検出素子の並び方向に対して平行な相対的移動が可能な移動体と、を備えた駆動装置であって、前記第1,第2,第3の磁界検出素子に対して近接可能に位置する磁界発生部材を前記移動体が有し、前記磁界発生部材が前記第1,第2の磁界検出素子に接近したときは、前記第1,第2の磁界検出素子からの出力を用いた演算の結果に基づいて第1の位置決めを行い、前記磁界発生部材が前記第3の磁界検出素子に接近したときは、前記第3の磁界検出素子からの出力のみに基づいて第2の位置決めを行うことを特徴とする。
【0014】
第7の発明の駆動装置は、磁界を対称に発生させる1個の磁界発生部材と、前記磁界を検出してそれに応じた電気信号を出力する複数の磁界検出素子とを備え、前記磁界検出素子からの出力に基づいて前記磁界発生部材と前記磁界検出素子との相対的な位置決めを行う駆動装置であって、前記複数の磁界検出素子のうちの隣り合う2個の磁界検出素子からの出力を用いた演算の結果に基づいて第1の位置決めを行い、前記複数の磁界検出素子のうちの1個の磁界検出素子からの出力が略ゼロになるポイントの検出結果に基づいて第2の位置決めを行うことを特徴とする。
【0015】
第8の発明の駆動装置は、上記第7の発明において、前記第2の位置決めに用いる1個の磁界検出素子が、前記第1の位置決めに用いる2個の磁界検出素子以外の磁界検出素子であることを特徴とする。
【0016】
第9の発明の駆動装置は、上記第7又は第8の発明において、前記第1の位置決めに用いる2個の磁界検出素子がいずれも検出した磁界に応じて電気信号を出力する第1,第2の磁界検出素子であって、以下の式(f1)に基づく演算の結果に基づいて前記第1の位置決めを行うことを特徴とする。
K・(A−B)/(A+B) …(f1)
ただし、
A:第1の磁界検出素子からの電気信号の出力、
B:第2の磁界検出素子からの電気信号の出力、
K:比例定数、
である。
【0017】
第10の発明の駆動装置は、上記第9の発明において、前記第1の磁界検出素子からの電気信号の出力Aの値、前記第2の磁界検出素子からの電気信号の出力Bの値、又は前記第1,第2の磁界検出素子からの電気信号の出力AとBとの合算値に基づいて、前記第1,第2の磁界検出素子の設置部分における温度を検出し、その検出結果に基づいて前記第2の位置決めに用いる1個の磁界検出素子の温度補償を行うことを特徴とする。
【0018】
第11の発明の駆動装置は、上記第1〜第10のいずれか1つの発明において、前記第1,第2,第3の磁界検出素子のうちの少なくとも1つがホール素子であることを特徴とする。
【0019】
第12の発明の駆動装置は、位置情報を発生させる位置情報発生手段と、前記位置情報を検出する第1,第2,第3の位置情報検出素子から成る位置情報検出手段と、前記位置情報発生手段又は前記位置情報検出手段を移動させる駆動手段とを備え、前記位置情報検出手段での検出結果に基づいて前記位置情報発生手段と前記位置情報検出手段との相対的な位置決めを行う駆動装置であって、前記位置情報発生手段又は前記位置情報検出手段が移動する可動範囲において、所定領域では前記第1,第2の位置情報検出素子の検出結果に基づいて第1の位置決めを行い、前記所定領域から離れた所定ポイントでは前記第3の位置情報検出素子の検出結果に基づいて第2の位置決めを行うことを特徴とする。
【0020】
第13の発明の駆動装置は、上記第12の発明において、前記第1の位置決めを、前記第1の位置情報検出素子と前記第2の位置情報検出素子の各出力が最小値又は最大値に達しない範囲で行い、前記第2の位置決めを、前記第3の位置情報検出素子の出力が最小値又は最大値となる位置で行うことを特徴とする。
【0021】
第14の発明の駆動装置は、上記第12又は第13の発明において、前記位置情報発生手段が、その位置情報発生部分の中央を基準として、前記位置情報発生手段又は前記位置情報検出手段の移動方向に沿って反対符号かつ対称な物理量分布を有することを特徴とする。
【0022】
第15の発明の駆動装置は、上記第12〜第14のいずれか1つの発明において、前記第1,第2,第3の位置情報検出素子が、発光部と受光部とから成る光学素子であり、前記位置情報発生手段が、前記発光部から発せられる光を受けて、前記受光部に入射する光量を可変にする機能を備えることを特徴とする。
【0023】
第16の発明の駆動装置は、上記第1〜第15のいずれか1つの発明において、前記駆動手段が、圧電素子と、前記圧電素子の一端に固定された駆動部材と、前記駆動部材に対し移動可能に保持された可動部材と、を備えた圧電アクチュエータであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、位置決めに応じて磁界検出素子又は位置情報検出素子を使い分ける構成になっているため、移動体の位置検出ポイントが広い間隔をあけて複数存在する場合でも、移動体を高い精度で位置決めすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る駆動装置の実施の形態等を、図面を参照しつつ説明する。図1に本発明を実施した駆動装置のシステム構成を示し、図2に駆動装置(図1)において位置センサを構成する部分(すなわち、磁界検出手段6,磁界発生部材7及び検出回路8から成る位置センサ部分)を詳細に示す。図1に示す駆動装置は、例えば、撮像装置(デジタルカメラ,ビデオカメラ等),光ピックアップ装置,光学測定装置等の光学機器において、光学素子を移動させるために用いられる駆動装置である。ここでは移動させる光学素子の例としてレンズ12を挙げているが、この実施の形態はレンズ以外の光学素子を移動させる場合にも適用可能である。
【0026】
図1に示す駆動装置は、圧電アクチュエータP(駆動手段)と、圧電アクチュエータPを駆動させる駆動回路4及び制御回路5と、圧電アクチュエータPが備える可動部材3に一体的に付設されその進退方向に表面磁束密度が変化されている磁界発生部材7と、磁界発生部材7により生成される磁界を検出する磁界検出手段6と、磁界検出手段6の検出信号に基づいて可動部材3のポジションを求める検出回路(演算手段)8と、を備えている。磁界検出手段6,磁界発生部材7及び検出回路8は、移動体(可動部材3,磁界発生部材7,レンズ12を含む。)の位置を検出する位置センサ部分を構成している。また、可動部材3の一部から成るレンズホルダ部3Aがレンズ12を保持する構成になっている。なお、図1中のX,Y,Zは互いに直交する方向を示しており、レンズ12の光軸AXに対して平行な方向をX方向とし、磁界検出手段6と磁界発生部材7との対向方向をZ方向としている。
【0027】
圧電アクチュエータPは、圧電素子(例えばピエゾ素子)1と、圧電素子1の一端に固定された駆動部材(案内軸)2と、駆動部材2に対し移動可能に保持された可動部材3と、で構成されている。圧電素子1の電歪方向(伸縮方向)の一端側には、駆動部材2が接着等の手法により固着されており、圧電素子1の伸縮動作により駆動部材2が往復移動(X方向)するようになっている。一方、圧電素子1の他端側は取り付け部9に固定されており、取り付け部9は筐体13に固定されている。これにより圧電素子1の伸長方向が規制される。
【0028】
可動部材3は貫通孔3Bを備えており、その貫通孔3Bに駆動部材2が挿通された状態で、所定の摩擦係合力をもって駆動部材2に取り付けられている。可動部材3の取り付けは、レンズ12の光軸AXと、可動部材3の進退方向(つまり駆動部材2の延在方向)と、が平行になる位置関係とされている。一方、可動部材3の他端側には凹形状の係合部3Cが設けられており、可動部材3はその係合部3Cで副軸10に掛けられている。副軸10は、駆動部材2の延在方向に対して平行に位置するように筐体13に固定されている。したがって、可動部材3の移動は駆動部材2と副軸10とによってガイドされる。
【0029】
圧電素子1は繰り出し方向へ伸長するとき緩やかに伸び変位し、それに伴って駆動部材2も緩やかな速度で繰り出し方向に移動する。したがって、駆動部材2に摩擦係合された可動部材3は、その摩擦係合力により同期追随して変位する。次に、圧電素子1は急速に縮み変位し、それに伴って駆動部材2も急峻な速度で戻り方向に移動する。したがって、駆動部材2と可動部材3との摩擦係合部分に滑りが生じることになる。その結果、可動部材3は駆動部材2の軸変位に追随して変位せず、戻り方向に僅かに戻るようになる。この動作を繰り返すことによって、可動部材3は駆動部材2の軸上を圧電素子1から離れる方向に移動する。なお、圧電素子1に近づく方向に可動部材3を移動させる場合には、圧電素子1に上記とは逆の伸縮動作を行わせればよい。
【0030】
この実施の形態に用いられる駆動手段としては、上記の圧電アクチュエータPのような、いわゆる「非磁力源タイプ」の駆動手段を用いることが望ましい。具体的には、駆動手段が備える可動部材3の進退に伴って生じる表面磁束密度が0.1mT以下のものである一方、磁界発生部材7が発生する表面磁束密度の最大値が1mT以上とすることが望ましい。このように、駆動手段の動作により発生される表面磁束密度を、磁界発生部材7が発生する表面磁束密度の1/10程度以下に抑制することで、漏れ磁束により磁界検出手段6の検出信号が乱されず、可動部材3の高精度な位置決めが達成できるようになる。このような「非磁力源タイプ」の駆動手段としては、圧電アクチュエータPのほかに、超音波モータを用いて可動部材3を進退動作させる超音波アクチュエータ、形状記憶部材を用いて可動部材3を進退動作させる形状記憶アクチュエータ等が挙げられる。
【0031】
制御回路5は、上位のコンピュータ(不図示)等から与えられる位置指令(可動部材3の変位指令)を受け取り、可動部材3を指令位置に移動させるための駆動制御信号を生成する。この駆動制御信号は、検出回路8から送信される可動部材3の位置信号と、前記位置指令に基づく位置信号との差に応じ、可動部材3が所定の移動量だけ移動するように生成される。このように生成された駆動制御信号は、駆動回路4に入力される。駆動回路4は、前記駆動制御信号に基づいて、可動部材3が所定の移動量だけ移動するように圧電素子1を駆動させる駆動信号を生成し、圧電素子1を実際に駆動させる。
【0032】
磁界発生部材7は、図2に示すように、N極部分7AとS極部分7Bを有する単一の棒磁石から成っている。したがって、磁界発生部材7からはN極部分7AとS極部分7Bとの境目を中心に磁界が対称に発生する。また、磁界発生部材7は可動部材3の進退方向(X方向)にN極部分7AとS極部分7Bとが横並びするように配置されており、その磁界発生部材7に対向するように磁界検出手段6が配置されている。このような磁界発生部材7によれば、可動部材3の進退方向における表面磁束密度が、N極部分7AとS極部分7Bとの直線的な境界において急峻に変化する態様となる。これにより、移動量が微少でも大きな磁界変動を発生させることが可能となるので、移動体の可動範囲を短縮することができる。また磁界発生部材7は、可動部材3に対し一体的に設けられている。したがって、可動部材3,レンズ12及び磁界発生部材7は一体的に移動することになる。なお、可動部材3と磁界発生部材7との固定は直接的でもよく間接的でもよい。
【0033】
磁界発生部材7は、可動部材3の進退方向に表面磁束密度が変化するものであればよい。つまり、表面磁束密度の変化態様としては特に制限はなく、固定的に配置されている磁界検出手段6に対して、自身の進退移動による表面磁束密度変化が作用する変化態様を具備していればよい。ただし、磁界発生部材7と磁界検出手段6との相対的移動方向(X方向)に対して垂直であり、かつ、磁界発生部材7の中央を通る平面に関して、磁界発生部材7で生じる磁力線が対称であることが、高精度の位置検出を行う上で好ましい。
【0034】
図5に、磁界発生部材7の他の具体例を示す。図5(a)は、N極部分7AとS極部分7Bとの間に非着磁部分7Cを有する磁界発生部材17を示しており、図5(b)は、N極部分7AとS極部分7Bがいずれも三角形状の磁界発生部材18を示している。いずれの磁界発生部材17,18を用いた場合でも、出力変化が緩やかになるとともに、磁界検出手段6に対する相対的な傾きの影響が生じにくくなる。なお、磁界発生部材7,17,18を四角柱状,三角柱状の磁石の貼り合わせにより構成してもよく、磁石の代わりに着磁シート等を用いて構成してもよい。
【0035】
磁界発生部材7の移動経路の近傍には、磁界検出手段6が筐体13に固定されている。磁界検出手段6は、(可動部材3の進退動作に基づく)磁界発生部材7の移動に伴う磁界変化を検出するものであり、磁界を検出する第1,第2,第3の磁界検出素子6A,6B,6Cで構成されている。第1,第2,第3の磁界検出素子6A,6B,6Cとしては、検出された磁界に応じて電気信号を出力する各種の磁気センサを用いることができる。代表的なものとしては、ホール素子,MR素子,MI素子等が挙げられる。このうちホール素子は、一般に小型であってこの種の駆動装置への組込み性に優れ、また安価であることから、好適に用いることができる。したがって、第1,第2,第3の磁界検出素子6A,6B,6Cのうちの少なくとも1つはホール素子であることが好ましい。
【0036】
また、第1,第2,第3の磁界検出素子6A,6B,6Cは、磁界発生部材7の進退方向に沿って磁界発生部材7に対向するように並べられている。つまり、磁界発生部材7等の移動をガイドする駆動部材(案内軸)2のガイド方向に対して平行に配列されている。この配置により位置センサ部分を簡単な構成にすることができる。なお、ここでは3個の磁界検出素子6A,6B,6Cを用いた場合を示しているが、4個以上の磁界検出素子を並置するようにしてもよい。
【0037】
前述したように、磁界発生部材7は磁界検出手段6に対向するよう可動部材3に固定されており、磁界発生部材7の進退方向に沿って第1,第2,第3の磁界検出素子6A,6B,6Cが固定的に並置されている。つまり、可動部材3等の移動体は、第1,第2,第3の磁界検出素子6A,6B,6Cの並び方向に対して平行に移動することになる。また、磁界発生部材7の表面磁束密度は、その進退方向に対して、一方の端部近傍で正の最大値をとり、中央部分でゼロとなり、他方の端部近傍で負の最大値をとる。したがって、磁界発生部材7がX方向に移動すると、各磁界検出素子6A,6B,6C周辺の磁界が、磁界発生部材7から与えられる表面磁束密度の変化に応じてそれぞれ変化するため、各磁界検出素子6A,6B,6Cが検出する出力信号も変化することになる。
【0038】
検出回路8は、磁界検出手段6の検出信号に基づいて可動部材3のポジションを求める演算手段としての機能を有している。例えば、第1,第2の磁界検出素子6A,6Bによりそれぞれ検出された磁界検出信号は検出回路8に入力され、当該2つの磁界検出信号を検出回路8が増幅,演算することにより、可動部材3の現在位置情報である位置信号を生成する。ここで生成された位置信号は、制御回路5へ出力される(出力1)。一方、第3の磁界検出素子6Cにより検出された磁界検出信号は検出回路8に入力され、その磁界検出信号を検出回路8が増幅することにより、可動部材3の現在位置情報である位置信号を生成する。ここで生成された位置信号は、制御回路5へ出力される(出力2)。
【0039】
図1,図2に示すように、第1,第2の磁界検出素子6A,6Bは隣り合うように配置されており、第3の磁界検出素子6Cは第1,第2の磁界検出素子6A,6Bから離れた位置に配置されている。このように各磁界検出素子6A,6B,6Cを配置することにより、2種類・3ポイントの位置決めを高い精度で行うことができる。その位置決めは、磁界検出手段6での検出結果(つまり、各磁界検出素子6A,6B,6Cからの出力)に基づいて行われる、磁界発生部材7と磁界検出手段6との相対的な位置決めである。なお、隣り合うように配置された第1,第2の磁界検出素子6A,6Bは、接触状態で配置されていてもよく、所定間隔をあけた近接状態で配置されていてもよい。
【0040】
図3に、位置センサ部分(図2)において移動する磁界発生部材7とその位置を検出する磁界検出手段6との位置関係を示し、そのうちの検出ポイント及び検出領域を抽出して図4に示す。図3は、位置固定の第1,第2,第3の磁界検出素子6A,6B,6Cに対し、磁界発生部材7がX方向に(第1の磁界検出素子6A側から第3の磁界検出素子6C側へ)移動する様子を時間Tの経過に沿って示している。なお、移動体の位置は磁界発生部材7の中央を基準に表現してある。
【0041】
この実施の形態では、移動体の可動範囲ALにおいて2種類・3ポイントの位置決めが行われる。第1の位置決めは、位置検出必要領域APにおいて第1,第2の磁界検出素子6A,6Bの検出結果に基づいて行われ、第2の位置決めは、位置検出必要領域APから離れた第3ポイントP3で第3の磁界検出素子6Cの検出結果に基づいて行われる。第1の位置決めで検出される位置決めポイントは第1ポイントP1と第2ポイントP2であり(その間隔は例えば1mm)、ポイントP0は出力1がゼロとなる検出ポイントである。
【0042】
位置検出必要領域APは、その全域で高精度の位置検出(±20μm程度)が必要とされる領域である。例えば、種々の要因により変動する収差を補正するためにレンズ12の位置を微調整する必要がある場合に、レンズ12の位置を正確に検出するための領域(例えば2mm)である。一方、位置検出必要領域APから離れた第3ポイントP3は、位置検出必要領域APの範囲内ほど高精度の位置検出は必要とされないが、ある程度の検出位置精度(±100μm程度)が必要とされる位置にある(ポイントP0との間隔が例えば5.5mm)。なお、位置検出必要領域APと第3ポイントP3以外の領域は、移動方向の正逆が分かる程度であればよく、詳細な位置検出は不要である。
【0043】
上記のように、位置決めのための検出位置が2つに離れている場合、位置検出必要領域APのみで磁界検出手段6に対する磁界発生部材7の位置を検出しようとすると、出力ゼロの検出ポイントP0から離れた位置での検出を行うことになるため、必要な位置精度が得られなくなる。つまり、第1の位置決めに用いる第1,第2の磁界検出素子6A,6Bでは、第2の位置決めのために必要な精度で位置検出を行うことができない。位置精度を上げるために磁界発生部材7を長くすると駆動装置の大型化を招くことになり、また、磁界発生部材7を長くしても必要な位置精度を得ることは困難である。
【0044】
この実施の形態では、第3の磁界検出素子6Cを用いることにより、位置検出必要領域APから離れた第3ポイントP3での位置検出を行う構成になっている。つまり、磁界発生部材7が第3の磁界検出素子6Cに接近したときは、第3の磁界検出素子6Cからの出力のみ(出力2)に基づいて第2の位置決めを行う構成になっている。したがって、必要な位置精度を得ることが可能である。2つ以上の磁界検出素子で第3ポイントP3の位置を検出する構成にしてもよいが、第3の磁界検出素子6Cからの出力がゼロになるポイントの検出結果に基づいて第2の位置決めを行う構成にすれば、磁界検出素子6Cのみでもある程度高い検出位置精度を確保することが可能である。また、出力ゼロポイントを検出する構成であれば、磁界発生部材7と磁界検出手段6とのZ方向の相対的な位置変動(取付誤差等)の影響、磁界発生部材7や磁界検出手段6の温度特性の影響等を受けにくいというメリットもある。したがって、磁界発生部材7の中央が第3の磁界検出素子6Cに最近接したときの相対位置で第2の位置決めを行うことが好ましい。
【0045】
この実施の形態では、第1,第2の磁界検出素子6A,6Bを用いることにより、第1,第2ポイントP1,P2での位置検出を行う構成になっている。つまり、磁界発生部材7が第1,第2の磁界検出素子6A,6Bに接近したときは、第1,第2の磁界検出素子6A,6Bからの出力を用いた演算の結果(出力1)に基づいて第1の位置決めを行う構成になっている。隣り合うように配置された第1,第2の磁界検出素子6A,6Bで位置検出必要領域AP内の位置検出を行う構成によると、磁界発生部材7や磁界検出手段6の温度特性の影響を受けにくくなり、それによって高精度の位置検出が可能となる。その詳細を以下に説明する。
【0046】
検出回路8(図2)は、演算増幅器から成る第1,第2,第3の加算器8A,8B,8Cと、第1の加算器8A及び第2の加算器8Bの出力値に基づいて演算処理を行う演算器8Dと、を備えている。第1の加算器8Aは、第1の磁界検出素子6Aが磁界を検出して出力する出力電気信号を増幅するもので、第1の磁界検出素子6Aのプラス側端子が第1の加算器8Aの非反転入力端子に接続されている。また第1の磁界検出素子6Aのマイナス側端子は、第1の加算器8Aの反転入力端子に接続されている。一方、第2の加算器8Bは、第2の磁界検出素子6Bが磁界を検出して出力する出力電気信号を増幅するものであり、第2の磁界検出素子6Bのプラス側端子が第2の加算器8Bの反転入力端子に接続されている。また第2の磁界検出素子6Bのマイナス側端子は、第2の加算器8Bの非反転入力端子に接続されている。このように、第1の磁界検出素子6Aと第2の磁界検出素子6Bとで、それぞれ第1の加算器8A及び第2の加算器8Bへ接続する極性を変えているのは、第1の磁界検出素子6Aが磁界発生部材7のN極磁束を支配的に検知し、第2の磁界検出素子6Bが磁界発生部材7のS極磁束を支配的に検知することから、極性を反転させることで後段の演算器8Dにおいて、演算処理を容易に行うためである。
【0047】
演算器8Dは、以下の式(f1)に基づいて演算を行い、その演算結果を可動部材3のポジション情報(つまり、レンズ12の現在位置情報)として制御回路5に送信する。
K・(A−B)/(A+B) …(f1)
ただし、
A:第1の磁界検出素子からの電気信号の出力、
B:第2の磁界検出素子からの電気信号の出力、
K:比例定数、
である。
【0048】
上記のような(A−B)/(A+B)の演算処理を演算器8Dにおいて実行させる目的は、検出回路8が検出する可動部材3の位置信号の動作環境温度特性を改善することにある。例えば、磁石は環境温度が変化すると、その温度特性により磁束密度が変化する。環境温度が上昇した場合、磁界発生部材7の温度特性によってその表面磁束密度が低下することになる。これに伴い、第1,第2の磁界検出素子6A,6Bの出力値も、環境温度の上昇に伴い低下する傾向がある。演算器8Dは、このような動作環境温度の変化による第1,第2の磁界検出素子6A,6Bの出力値低下の影響を受けずに可動部材3の位置検知を行うことができるよう、演算処理を行うものである。つまり、第1の磁界検出素子6Aと第2の磁界検出素子6Bから出力される2つの出力信号に基づいて可動部材3の位置検出を行うので、実質的に当該光学機器の動作環境温度変化の影響を受けることなく、正確に位置検出を行うことが可能である。
【0049】
演算器8Dによる(A−B)/(A+B)の演算結果を可動部材3の位置信号として使用するだけでなく、第1の磁界検出素子6A及び第2の磁界検出素子6Bの出力値が動作環境温度に応じて増減することを活用して、演算器8Dを温度センサ(温度検出手段)として機能させるようにしてもよい。つまり、第1の磁界検出素子6Aからの電気信号の出力Aの値、第2の磁界検出素子6Bからの電気信号の出力Bの値、又は第1,第2の磁界検出素子6A,6Bからの電気信号の出力AとBとの合算値に基づいて、第1,第2の磁界検出素子6A,6Bの設置部分における温度を検出し、その検出結果に基づいて前記第2の位置決めに用いる第3の磁界検出素子6Cの温度補償を行うようにしてもよい。この温度補償により、磁界検出手段6の温度特性の影響を更に小さくすることが可能となる。
【0050】
この実施の形態では、磁界検出手段6が位置固定であり、磁界発生部材7が移動する構成になっているが、磁界検出手段6と磁界発生部材7との配置関係を入れ替えた構成にしてもよい。つまり、筐体13に磁界発生部材7を取り付けることにより、磁界発生部材7の位置を固定とし、磁界検出手段6を可動部材3又はそれと一体の部分に取り付けることにより、可動部材3,レンズ12及び磁界検出手段6を一体的に移動させる構成としてもよい。この場合においても、上記と実質的に同様な動作を行わせることが可能である。各磁界検出素子6A,6B,6Cに接続される配線部材(FPC,リード線等)が屈曲するおそれがある反面、磁界発生部材7の移動スペースを確保しなくてよいという利点があり、全体として省スペース化を図ることができる。
【0051】
上記のように磁界検出手段6と磁界発生部材7との配置関係の自由度を考慮すると、駆動手段である圧電アクチュエータPにより駆動する移動体の位置検出に関して、この実施の形態は以下の特徴的構成(i),(ii),(iii)等を含んでいることは明らかである。そして、この特徴的構成(i),(ii)又は(iii)によれば、移動体の位置検出ポイントが広い間隔をあけて複数存在する場合でも、移動体を高い精度で位置決めすることが可能である。そして、このような構成の駆動装置を高い位置決め精度が要求される光学機器に用いれば、当該光学機器の高性能化,高機能化とともに軽量・コンパクト化,低コスト化等にも寄与することができる。
【0052】
(i) 磁界を発生させる磁界発生部材と、前記磁界を検出する第1,第2,第3の磁界検出素子から成る磁界検出手段と、前記磁界発生部材又は前記磁界検出手段を移動させる駆動手段とを備え、前記磁界検出手段での検出結果に基づいて前記磁界発生部材と前記磁界検出手段との相対的な位置決めを行う駆動装置であって、前記磁界発生部材又は前記磁界検出手段が移動する可動範囲において、所定領域では前記第1,第2の磁界検出素子の検出結果に基づいて第1の位置決めを行い、前記所定領域から離れた所定ポイントでは前記第3の磁界検出素子の検出結果に基づいて第2の位置決めを行うことを特徴とする駆動装置。
【0053】
(ii) 隣り合うように配置された第1,第2の磁界検出素子と、前記第1,第2の磁界検出素子から離れた位置に配置された第3の磁界検出素子と、前記第1,第2の磁界検出素子の並び方向に対して平行な相対的移動が可能な移動体と、を備えた駆動装置であって、前記第1,第2,第3の磁界検出素子に対して近接可能に位置する磁界発生部材を前記移動体が有し、前記磁界発生部材が前記第1,第2の磁界検出素子に接近したときは、前記第1,第2の磁界検出素子からの出力を用いた演算の結果に基づいて第1の位置決めを行い、前記磁界発生部材が前記第3の磁界検出素子に接近したときは、前記第3の磁界検出素子からの出力のみに基づいて第2の位置決めを行うことを特徴とする駆動装置。
【0054】
(iii) 磁界を対称に発生させる1個の磁界発生部材と、前記磁界を検出してそれに応じた電気信号を出力する複数の磁界検出素子とを備え、前記磁界検出素子からの出力に基づいて前記磁界発生部材と前記磁界検出素子との相対的な位置決めを行う駆動装置であって、前記複数の磁界検出素子のうちの隣り合う2個の磁界検出素子からの出力を用いた演算の結果に基づいて第1の位置決めを行い、前記複数の磁界検出素子のうちの1個の磁界検出素子からの出力がゼロになるポイントの検出結果に基づいて第2の位置決めを行うことを特徴とする駆動装置。
【0055】
上述した実施の形態では、移動体の位置検出に磁界の発生及び検出を利用する構成になっているが、移動体の位置情報の発生及び検出を行う構成であればこれに限らない。例えば、磁界発生部材(磁石等)7の代わりに光量変換部材(遮光板,反射板,白黒チャート等)を用い、磁界検出素子(ホール素子等)6A,6B,6Cから成る磁界検出手段6の代わりに発光部・受光部から成る光検出手段(光透過型フォトインタラプタ,光反射型フォトインタラプタ等)を用いてもよい。この場合においても、上記と実質的に同様な動作を行わせることが可能である。
【0056】
以下に、フォトインタラプタを用いて光学式の位置センサ部分が構成された実施の形態を説明する。ただし、位置センサ部分以外は前述の実施の形態(図1等)と同様の構成になっているので、詳しい説明を省略する。図6に、位置センサ部分を構成する遮光板71及び光検出手段61を示し、図7に位置センサ部分の回路構成を示す。遮光板71は直角三角形の薄板から成り、光検出手段61は移動する遮光板71の位置を検出する第1,第2,第3のフォトインタラプタ61A,61B,61Cで構成されている。第1,第2,第3のフォトインタラプタ61A,61B,61Cは、前記第1,第2,第3の磁界検出素子6A,6B,6Cに相当する光検出素子であり、いずれも一般的な透過型フォトインタラプタである。フォトインタラプタ61A,61Bは、図7に示すように、オープンコレクタ出力をプルアップ後、増幅する。これら2つの出力A,Bから、(A+B)/(A−B)の演算を行い、その結果を出力1とする。フォトインタラプタ61Cは、コンパレータ(比較器)を通るため、出力はほぼ0、又はほぼVcc(5V)のいずれかに選択的に切り換わる。
【0057】
図8に、フォトインタラプタ61A〜61Cと遮光板71との位置及び出力の関係を示す。図8から分かるように、遮光板71の形状を適切にすれば、フォトインタラプタ61A,61B各々より、所定領域内(基準位置から±1mmの範囲)で遮光板71の位置にほぼ比例した出力を得ることが可能である。したがって、(A+B)/(A−B)は遮光板71の位置に比例した値となり、また、ホール素子と同様、温度変動があっても上記計算でキャンセルされる。一方、フォトインタラプタ61Cについては、遮光板71のエッジ部分を検出するようにすれば、フォトインタラプタ61Cの出力は回路により急激に立ち上がるようになっているため、精度良くピンポイントで位置検出することが可能である。ホール素子と磁石とを組み合わせた場合と同様、Z方向(図1)の変動やフォトインタラプタの温度特性の影響もほとんど受けず、また、磁石と違って遮光板には温度特性がないので、その影響もない。
【0058】
図9に、位置検出のための光検出素子として反射型フォトインタラプタ(すなわちフォトリフレクタ)を用いる場合に使用される反射板(例えば白黒チャート)72を示す。反射板72の白い部分で光が反射され黒い部分で光が吸収されるので、第3ポイントP3(図3,図4)の位置検出を行う第3のフォトリフレクタで白/黒の切り換わる部分を検出するようにすれば、図6〜図8に示す実施の形態と同様の効果を得ることができる。反射/吸収を行う白/黒の並びは逆でもよい。また、白い部分が透過部から成り、黒い部分が遮光部から成る透過型のフィルムを用いれば、透過型,反射型のいずれのフォトインタラプタにも対応することができる。
【0059】
磁石,反射板等を位置情報発生手段とし、ホール素子,フォトインタラプタ等を位置情報検出手段とすると、位置情報発生手段と位置情報検出手段とが相互に作用して2者の相対変位に基づく信号を位置情報検出手段から出力し、位置情報発生手段が位置情報の知りたい方向に沿って所定の大きさを持つことによりその方向に物理量の分布が存在し、その物理量を位置情報検出手段で検出する構成にすれば、移動体の位置を検出して位置決めを行うことが可能となる。このように位置情報の発生及び検出の多様性を考慮すると、駆動手段である圧電アクチュエータPにより駆動する移動体の位置検出に関して、上記各実施の形態は以下の特徴的構成(iv)〜(viii)等を含んでいることは明らかである。そして、この特徴的構成(iv)〜(viii)のいずれかによれば、移動体の位置検出ポイントが広い間隔をあけて複数存在する場合でも、移動体を高い精度で位置決めすることが可能である。そして、このような構成の駆動装置を高い位置決め精度が要求される光学機器に用いれば、当該光学機器の高性能化,高機能化とともに軽量・コンパクト化,低コスト化等にも寄与することができる。
【0060】
(iv) 位置情報を発生させる位置情報発生手段と、前記位置情報を検出する第1,第2,第3の位置情報検出素子から成る位置情報検出手段と、前記位置情報発生手段又は前記位置情報検出手段を移動させる駆動手段とを備え、前記位置情報検出手段での検出結果に基づいて前記位置情報発生手段と前記位置情報検出手段との相対的な位置決めを行う駆動装置であって、前記位置情報発生手段又は前記位置情報検出手段が移動する可動範囲において、所定領域では前記第1,第2の位置情報検出素子の検出結果に基づいて第1の位置決めを行い、前記所定領域から離れた所定ポイントでは前記第3の位置情報検出素子の検出結果に基づいて第2の位置決めを行うことを特徴とする駆動装置。
【0061】
(v) 隣り合うように配置された第1,第2の位置情報検出素子と、前記第1,第2の位置情報検出素子から離れた位置に配置された第3の位置情報検出素子と、前記第1,第2の位置情報検出素子の並び方向に対して平行な相対的移動が可能な移動体と、を備えた駆動装置であって、前記第1,第2,第3の位置情報検出素子に対して近接可能に位置する位置情報発生手段を前記移動体が有し、前記位置情報発生手段が前記第1,第2の位置情報検出素子に接近したときは、前記第1,第2の位置情報検出素子からの出力を用いた演算の結果に基づいて第1の位置決めを行い、前記位置情報発生手段が前記第3の位置情報検出素子に接近したときは、前記第3の位置情報検出素子からの出力のみに基づいて第2の位置決めを行うことを特徴とする駆動装置。
【0062】
(vi) 位置情報を発生させる1個の位置情報発生手段と、前記位置情報を検出してそれに応じた電気信号を出力する複数の位置情報検出素子とを備え、前記位置情報検出素子からの出力に基づいて前記位置情報発生手段と前記位置情報検出素子との相対的な位置決めを行う駆動装置であって、前記複数の位置情報検出素子のうちの隣り合う2個の位置情報検出素子からの出力を用いた演算の結果に基づいて第1の位置決めを行い、前記複数の位置情報検出素子のうちの1個の位置情報検出素子からの出力がゼロになるポイントの検出結果に基づいて第2の位置決めを行うことを特徴とする駆動装置。
【0063】
(vii) 前記位置情報発生手段の中央が前記第3の位置情報検出素子に最近接したときの相対位置で前記第2の位置決めを行うことを特徴とする上記(iv)又は(v)記載の駆動装置。
【0064】
(viii) 前記位置情報発生手段が、その位置情報発生部分の中央を基準として、前記位置情報発生手段又は前記位置情報検出手段の移動方向に沿って反対符号かつ対称な物理量分布を有することを特徴とする上記(iv)〜(vii)のいずれか1項に記載の駆動装置。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】駆動装置の実施の形態を示すシステム構成図。
【図2】図1の実施の形態における位置センサ部分を示すシステム構成図。
【図3】図2の位置センサ部分において移動する磁界発生部材とその位置を検出する磁界検出手段との位置関係を説明するための模式図。
【図4】図3中の検出ポイント及び検出領域を抽出して示す模式図。
【図5】図1の実施の形態において使用可能な他の磁界発生部材の具体例を示す正面図。
【図6】駆動装置の他の実施の形態を構成する位置センサ部分を示す斜視図。
【図7】図6の位置センサ部分を示す回路構成図。
【図8】図6の位置センサ部分におけるフォトインタラプタと遮光板との位置及び出力の関係を示す模式図。
【図9】駆動装置の他の実施の形態に用いる反射板の外観を示す平面図。
【符号の説明】
【0066】
P 圧電アクチュエータ(駆動手段)
1 圧電素子
2 駆動部材(案内軸)
3 可動部材
3A レンズホルダ部
4 駆動回路
5 制御回路
6 磁界検出手段(位置情報検出手段)
6A 第1の磁界検出素子(第1の位置情報検出素子)
6B 第2の磁界検出素子(第2の位置情報検出素子)
6C 第3の磁界検出素子(第3の位置情報検出素子)
7 磁界発生部材(位置情報発生手段)
7A N極部分
7B S極部分
7C 非着磁部分
8 検出回路(演算手段)
8A 第1の加算器
8B 第2の加算器
8C 第3の加算器
8D 演算器(演算手段)
12 レンズ
AX 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界を発生させる磁界発生部材と、前記磁界を検出する第1,第2,第3の磁界検出素子から成る磁界検出手段と、前記磁界発生部材又は前記磁界検出手段を移動させる駆動手段とを備え、前記磁界検出手段での検出結果に基づいて前記磁界発生部材と前記磁界検出手段との相対的な位置決めを行う駆動装置であって、
前記磁界発生部材又は前記磁界検出手段が移動する可動範囲において、所定領域では前記第1,第2の磁界検出素子の検出結果に基づいて第1の位置決めを行い、前記所定領域から離れた所定ポイントでは前記第3の磁界検出素子の検出結果に基づいて第2の位置決めを行うことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記磁界発生部材の中央が前記第3の磁界検出素子に最近接したときの相対位置で前記第2の位置決めを行うことを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記磁界発生部材と前記磁界検出手段との相対的移動方向に対して垂直であり、かつ、前記磁界発生部材の中央を通る平面に関して、前記磁界発生部材で生じる磁力線が対称であることを特徴とする請求項1又は2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記磁界発生部材又は前記磁界検出手段の移動をガイドする案内軸を前記駆動手段が備え、前記第1,第2,第3の磁界検出素子が前記案内軸のガイド方向に対して平行に配列されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第1,第2の磁界検出素子がいずれも検出した磁界に応じて電気信号を出力するものであって、以下の式(f1)に基づく演算の結果に基づいて前記第1の位置決めを行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の駆動装置;
K・(A−B)/(A+B) …(f1)
ただし、
A:第1の磁界検出素子からの電気信号の出力、
B:第2の磁界検出素子からの電気信号の出力、
K:比例定数、
である。
【請求項6】
隣り合うように配置された第1,第2の磁界検出素子と、前記第1,第2の磁界検出素子から離れた位置に配置された第3の磁界検出素子と、前記第1,第2の磁界検出素子の並び方向に対して平行な相対的移動が可能な移動体と、を備えた駆動装置であって、
前記第1,第2,第3の磁界検出素子に対して近接可能に位置する磁界発生部材を前記移動体が有し、前記磁界発生部材が前記第1,第2の磁界検出素子に接近したときは、前記第1,第2の磁界検出素子からの出力を用いた演算の結果に基づいて第1の位置決めを行い、前記磁界発生部材が前記第3の磁界検出素子に接近したときは、前記第3の磁界検出素子からの出力のみに基づいて第2の位置決めを行うことを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
磁界を対称に発生させる1個の磁界発生部材と、前記磁界を検出してそれに応じた電気信号を出力する複数の磁界検出素子とを備え、前記磁界検出素子からの出力に基づいて前記磁界発生部材と前記磁界検出素子との相対的な位置決めを行う駆動装置であって、
前記複数の磁界検出素子のうちの隣り合う2個の磁界検出素子からの出力を用いた演算の結果に基づいて第1の位置決めを行い、前記複数の磁界検出素子のうちの1個の磁界検出素子からの出力が略ゼロになるポイントの検出結果に基づいて第2の位置決めを行うことを特徴とする駆動装置。
【請求項8】
前記第2の位置決めに用いる1個の磁界検出素子が、前記第1の位置決めに用いる2個の磁界検出素子以外の磁界検出素子であることを特徴とする請求項7記載の駆動装置。
【請求項9】
前記第1の位置決めに用いる2個の磁界検出素子がいずれも検出した磁界に応じて電気信号を出力する第1,第2の磁界検出素子であって、以下の式(f1)に基づく演算の結果に基づいて前記第1の位置決めを行うことを特徴とする請求項7又は8記載の駆動装置;
K・(A−B)/(A+B) …(f1)
ただし、
A:第1の磁界検出素子からの電気信号の出力、
B:第2の磁界検出素子からの電気信号の出力、
K:比例定数、
である。
【請求項10】
前記第1の磁界検出素子からの電気信号の出力Aの値、前記第2の磁界検出素子からの電気信号の出力Bの値、又は前記第1,第2の磁界検出素子からの電気信号の出力AとBとの合算値に基づいて、前記第1,第2の磁界検出素子の設置部分における温度を検出し、その検出結果に基づいて前記第2の位置決めに用いる1個の磁界検出素子の温度補償を行うことを特徴とする請求項9記載の駆動装置。
【請求項11】
前記第1,第2,第3の磁界検出素子のうちの少なくとも1つがホール素子であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項12】
位置情報を発生させる位置情報発生手段と、前記位置情報を検出する第1,第2,第3の位置情報検出素子から成る位置情報検出手段と、前記位置情報発生手段又は前記位置情報検出手段を移動させる駆動手段とを備え、前記位置情報検出手段での検出結果に基づいて前記位置情報発生手段と前記位置情報検出手段との相対的な位置決めを行う駆動装置であって、
前記位置情報発生手段又は前記位置情報検出手段が移動する可動範囲において、所定領域では前記第1,第2の位置情報検出素子の検出結果に基づいて第1の位置決めを行い、前記所定領域から離れた所定ポイントでは前記第3の位置情報検出素子の検出結果に基づいて第2の位置決めを行うことを特徴とする駆動装置。
【請求項13】
前記第1の位置決めを、前記第1の位置情報検出素子と前記第2の位置情報検出素子の各出力が最小値又は最大値に達しない範囲で行い、前記第2の位置決めを、前記第3の位置情報検出素子の出力が最小値又は最大値となる位置で行うことを特徴とする請求項12記載の駆動装置。
【請求項14】
前記位置情報発生手段が、その位置情報発生部分の中央を基準として、前記位置情報発生手段又は前記位置情報検出手段の移動方向に沿って反対符号かつ対称な物理量分布を有することを特徴とする請求項12又は13記載の駆動装置。
【請求項15】
前記第1,第2,第3の位置情報検出素子が、発光部と受光部とから成る光学素子であり、前記位置情報発生手段が、前記発光部から発せられる光を受けて、前記受光部に入射する光量を可変にする機能を備えることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項16】
前記駆動手段が、圧電素子と、前記圧電素子の一端に固定された駆動部材と、前記駆動部材に対し移動可能に保持された可動部材と、を備えた圧電アクチュエータであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−214736(P2006−214736A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24837(P2005−24837)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】