説明

ウェハスクライブのためのオートフォーカス方法及び装置

方法及び装置は、ウェハスクライブシステムのためのリアルタイムのオートフォーカスを実行する。方法及び装置は、スクライブレーザビームのための対物レンズ(26)の真下のウェハ(10)の表面(50)に、グレージング角で方向付けられた偏光光(42)を用いる。ウェハから反射した光は、フィルタリング(56)され、スクライブレーザビームからの光が除外され、位置敏感型検出器(58)に集光され、対物レンズからウェハ表面までの距離が測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ウェハのスクライブ(溝加工)のための方法及び装置に関する。詳しくは、本発明は、単一化(singulation)を補助するためにLEDウェハをスクライブするために用いられるレーザビームのリアルタイムのフォーカシングを実行する方法及び装置に関する。より詳しくは、本発明は、システムがウェハをスクライブしながら、透明又は半透明のLEDウェハの表面の位置を正確に効率的に検出して、レーザビームの焦点とウェハの表面との間の正しい関係をリアルタイムで維持する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスは、一般的に、容易に製造するために、デバイスの複数のコピーを含む基板又はウェハ上に構築される。これらのデバイスは、パッケージ化及び販売の前に分離又は単一化する必要がある。電子デバイスを単一化する1つの典型的な方法は、レーザスクライブシステムを用いて、ウェハをスクライブし、これによって、スクライブに沿った機械的な切断を準備することである。図1は、電子デバイスを保持するウェハ10を示しており、電子デバイスの1つに、符号12を付している。また、後にデバイスを互いに機械的に分離するためにスクライブが行われる電子デバイスの間の領域である「ストリート」14の一例も示している。このようにして製造される例示的な電子デバイスには、発光ダイオード(light emitting diode:LED)が含まれる。LEDは、典型的には、結晶サファイア又は金属から形成されたウェハ上に製造されるが、他の材料を用いることもできる。製造に続いて、これらのウェハは、機械的鋸又はレーザを用いたスクライビングによって単一化され、次に機械的に切断されてデバイスに分離される。
【0003】
レーザスクライブシステムは、レーザを用いて、一方の表面に半導体ダイが形成されたウェハをスクライブする。ウェハは、水平ステージに載置される。ステージが高速(通常、10mm/s〜100mm/sの間)で平行移動されると、レーザビームは、ウェハの上面又は底面の何れかにおいて画定されている個々の半導体ダイを分離するストリートに沿って上面に衝突する。強く集光されたレーザビームとウェハとの間の相互作用によって、表面に切り溝(kerf)又は溝(groove)が形成され、これらによって、ウェハは、ストリートに沿って機械的に正確に割れるようになる。そして、ウェハ上のダイを分離し、各ダイは、1つのデバイスを形成するために使用することができる。このウェハスクライブ機能を実行する例示的なシステムとしては、本発明の譲受人が製造するAccuScribe AS2000FXがある。このシステムは、UV波長に高調波的に周波数シフトされたダイオード励起固体レーザを用いて発光ダイオード(LED)ウェハをスクライブする。
【0004】
図2は、ウェハスクライブシステムの概略図を示している。レーザ20は、加工用レーザビーム(working laser beam)22を生成し、加工用レーザビーム22は、整形され、レーザビーム光学素子24によって、対物レンズ26に方向付けされ、対物レンズ26は、加工用レーザビーム22をレーザ焦点30に集光し、レーザ焦点30は、この具体例ではウェハである被加工物32に方向付けられる。対物レンズ26は、ガントリ28に取り付けられており、ガントリ28は、システムベース36に取り付けられており、システムベースは、通常、花崗岩又は他の高密度材料から形成された大きなベースプレートを含む。システムベース36は、XYチャック34を保持し、XYチャック34は、被加工物32を固定的に保持する。XYチャック34は、加工用レーザの下でプログラミング可能にウェハを動かし、レーザ焦点30が被加工物32から材料を切削して、表面にスクライブを形成する。ガントリ28、システムベース36及びXYチャック34は、協働して、XYチャック34によって被加工物32を移動しながら、レーザ焦点30と被加工物32とを正確な垂直関係に保ち、切り溝の正しいサイズ、形状及び品質を維持する。
【0005】
ウェハの効率的で均一なスクライブのために、レーザビームは、ウェハの上面に近い平面に集光する必要がある。換言すれば対物レンズとウェハ表面との間の距離には、最適値がある。これは、ウェハ表面の平坦性及びウェハの厚さの均一性に関して厳しい要求を課し、これらのウェハが効率的に処理できなければ、収量が下がり、コストが増加する。サファイアウェハの平均厚は、ウェハによって最大10ミクロンまで変化し、表面の平坦性は、真空チャックに取り付けられた場合、2インチのウェハに亘って、最大15ミクロンまで変化する。金属ウェハ表面は、真空チャックに取り付けられても歪むことがあり、表面の高さが、2インチのウェハに亘って、最大150ミクロンの差分を有することがある。また、ウェハの表面にスクライブされた所望の幅及び深さのトレンチを作成するために、ウェハの表面の近くで10〜50ミクロンの最小スポットサイズを有するように加工用レーザビームを集光することも望まれる。これほど小さいスポットサイズにレーザを集光するためには、高開口数(numerical aperture:NA)レンズが必要であり、これによって、ビームは、焦点の上及び焦点の下で急速に焦点ずれ(defocus)する。この結果、スクライブの間、レーザスポットは、ウェハの上面のから±5ミクロン以内、より好ましくは、±2ミクロン以内に維持することが望ましい。
【0006】
この問題の可能な解決法は、オートフォーカス技術を用いて、スクライビングの間、ウェハの表面を追跡し、被加工物とレーザ焦点との間の関係の変化を検出することである。オートフォーカス技術には、受動的手法と能動的手法がある。受動的手法は、画像のコントラストを用いて、焦点のずれの量を定量化する。能動的手法は、光源からのビームを必要とし、ビーム又は画像のシフトを用いて、焦点ずれの量を定量化する。能動的手法は、受動的手法より遙かに速く、ウェハ載置ステージとUVレーザビームとの間の相対速度が10mm/sより速い場合、オートフォーカスを追従させるためのリアルタイム要求を満たすことできる。一般的に使用されている1つの能動的なオートフォーカス方法は、米国特許番号第6,486,457号に開示されており、ここでは、コリメートされたレーザビームが軸外で対物レンズを通過し、ウェハ表面の近くの平面に集光される。そして、反射ビームは、再び対物レンズを通過し、位置敏感型検出器(position sensitive detector)によって検出される。ウェハ表面と対物レンズとの間の距離の変化は、反射ビームをシフトさせ、位置敏感型検出器は、このシフトに比例する信号を生成する。この信号を用いて、ウェハ表面と対物レンズとの間の距離を調整し、これが確実に一定になるようにでき、したがって、追従式オートフォーカスが実現される。但し、例えばLEDの製造に用いられるサファイアウェハ等の透明な薄いウェハについては、ウェハの上面及び底面からの反射の両方が位置敏感型検出器によって検出されるので、この方法は、捕捉範囲が限定されている。底面の反射率が領域毎に一様ではない場合、オートフォーカスの精度は劣化する。
【0007】
一般的に使用されている他の能動的なオートフォーカス方法は、米国特許番号第4,363,962号及び第5,361,122号に説明されている。ここでは、対物レンズを通過させることに代えて、オートフォーカス光源からのビームは、まず、追加的なレンズを用いてウェハ表面に投影され、次に、他の追加的なレンズを用いて、位置敏感型検出器に投影される。ビームは、ウェハに衝突し、グレージング角で反射する。この方法では、対物レンズ、光源、追加的なレンズ及び位置敏感型検出器は、固定の相対的位置を有する。他の方法は、ウェハ載置ステージ又は対物レンズ(及びこれに取り付けられた他の部品)の何れかの高さを調整し、対物レンズの焦点面上にウェハ表面があることを確実にすることを伴う。米国特許番号第5,008,705号は,干渉分光法と共にこの方法を用いる。米国特許番号第5,825,469号は,ウェハ表面上でビームを2回反射させることによって、この方法の感度を改善している。米国特許番号第5,675,140号は、この方法を、雑誌論文「Automatic focus control: the astigmatic lens approach, Donald K. Cohen, Wing Ho Gee, M. Ludeke, and Julian Lewkowicz, Applied Optics, 23, pp. 565-570, 1984」に開示されているアスティグマティックレンズ法(astigmatic lens approach)に組み合わせている。これらの文献は、ウェハの底面が位置によって異なる反射率を有していることがあるという特別な課題を解決してない。
【0008】
レーザビームスポット位置と基板の表面との間の固定された関係を維持することにおける更に困難な点は、LED及び他の電子デバイスがサファイア又はガラス基板等の透明基板上に形成されることがあるという点である。これにより、これらのウェハの上面が透明であることも半透明であることもあり、及び滑らかであることも粗いこともあるために、更なる課題が生じる。サファイアウェハの底面は、パターンを有することがあり、反射率は、場所によって異なることがある。ウェハからの反射に依存して測定値を算出する従来のオートフォーカスシステムでは、これは、強度が変化する複数の信号が生じる原因となり、システムが混乱し、精度測定が低下し、又はシステムが全体的に動作することの妨げとなる。
【0009】
したがって、ウェハをスクライブしながら、透明又は半透明のウェハの上面の位置をリアルタイムで測定し、ウェハの上面及び底面の両方からの反射の変化によって混乱することなく、半透明又は透明のウェハの表面を正確に検出する方法及び装置が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の1つの目的は、加工用レーザビーム焦点と加工用レーザビーム焦点によってレーザ加工される被加工物との間の変位を測定する手段を提供することである。本発明の他の目的は、被加工物がサファイア等の透明又は半透明材料から形成されている場合に、加工用レーザビーム焦点と被加工物との間の変位を測定することである。本発明の更なる目的は、レーザビーム焦点と被加工物との間の変位をリアルタイムで測定することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
LEDスクライブシステムの性能を向上させ、顧客のためのユニット製造コストを低減するために、レーザスクライブシステムは、ウェハを水平に平行移動しながら、LEDウェハの表面に加工用レーザビームを集光する対物レンズとウェハ表面との間の距離を制御できる追従式オートフォーカスデバイス(tracking autofocus device)を採用する。本発明の一実施の形態では、追従式オートフォーカスデバイスは、ピンホール及びフォーカスレンズを介して方向付けられる、コリメートされ、偏光されたレーザダイオードビームを含む。表面を測定するために使用されるレーザビームの波長は、ウェハを正確に測定するために十分小さいスポットサイズを実現するように十分に短いが、加工用レーザビーム又は加工用レーザビームによって生成されるプラズマ雲(plasma cloud)から放出される放射との干渉を回避するように選択される。
【0012】
そして、レーザビームは、プリズムによって、垂直に対して84度〜87度のグレージング角で、ウェハの上面に方向付けられる。更に、直線偏光されたレーザビームは、偏光面がウェハの表面に平行(s偏光)になるように構成される。グレージング角及び偏光方向の組合せによって、レーザビームエネルギの大部分は、ウェハの上面から反射し、この結果、透明なウェハの底面からの反射と干渉することが回避される。また、s偏光波は、金属表面に対して高い反射性を有するので、この構成は、金属基材からの反射を最大化する。
【0013】
レーザビームは、ウェハの上面から反射した後、プリズムによって、レンズに方向付けられ、このレンズは、反射したレーザビームを帯域通過フィルタに集光し、帯域通過フィルタは、加工用レーザビーム周波数の放射をフィルタリングし、表面を測定するために用いられるレーザビームからの放射を通過させる。これにより、得られるデータの信号対雑音比が向上する。ここから、レーザビームは、位置敏感検出器(PSD)に投影され、レーザの位置が測定される。この情報は、デジタル化され、コントローラに供給され、コントローラは、PSD上のレーザビームの変位から、ウェハの高さを算出する。
【0014】
また、本発明の実施の形態は、ウェハ表面の高さをリアルタイムで算出するために動作でき、これは、加工用レーザビームがウェハ内に切り溝を加工している間に高さを測定できることを意味する。これによって、レーザ処理システムは、ウェハの高さの測定値を定期的に更新することができる。この実施の形態は、対物レンズとウェハとの間の変位をリアルタイムで変更することができるガントリに取り付けられた制御機構と組み合わせて、ウェハをスクライブしながら、変位を測定して、変位を変更することができる。このシステムによって、リアルタイムで高さを追跡及び調整しないシステムが要求する平坦性から外れているために、これまでスクライブできなかったウェハをスクライブすることができるようになり、この結果、生産収量が向上する。
【0015】
更に、本発明の実施の形態は、レーザスポットサイズより遙かに大きい楕円形を投影するように測定用レーザビームを被加工物に投影する。円形のピンホールを介して、レーザビームを投影し、次に、このレーザビームを、84度〜87度のグレージング角で被加工物に投影することによって、レーザビームは、被加工物上で楕円の形状を形成する。これによって元のスポットサイズより広い領域に亘って反射が平均化され、この結果、被加工物上の汚染又は予期されない特徴形状によって生じる擬似反射が平均化され、この結果、測定がより強健になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電子デバイスを含む典型的な従来のウェハの概略図である。
【図2】従来のウェハスクライブシステムの概略図である。
【図3】オートフォーカスシステムの概略図である。
【図4】オートフォーカスシステムを有するウェハスクライブシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここに説明するように、本発明は、加工用レーザビーム又はプラズマプルームからの干渉を回避するように選択された波長の偏光されたグレージング角レーザビームを用いて、加工用レーザビーム焦点と被加工物との間の変位(displacement)をリアルタイムで測定することによって、従来の技術の問題を解決する。図3は、本発明の実施の形態を示している。レーザダイオード40から出射されたコリメートされたビーム42は、小さい円形の開口又はピンホール44、照射レンズ46及びプリズムミラー48を通過する。この目的で使用される例示的なレーザダイオードは、米国カリフォルニア州サンタクララのCoherent, Inc.社によって製造されている0222−002−01があり、これは、約1.6のミリワットのパワーで650nmの波長で動作する。開口44とレンズ46との間の距離、及びレンズ46とウェハ上面50との間の距離は、レンズ46の焦点長の約2倍である。したがって、開口は、ウェハ上面50の近くの平面に結像される。ビームは、グレージング角、すなわち84度〜87度の入射角でウェハ上面50に衝突する。ビームの大部分は、上面から反射し、続いて、プリズムミラー52、集光レンズ54及び帯域通過フィルタ56を通過し、そして、点74において、位置敏感型検出器(position sensitive detector:PSD)58に到達する。帯域通過フィルタ56は、ウェハスクライブの間のプラズマ発光を含む周囲光を遮り、この結果、信号対雑音比(SN比)を向上させる。レーザダイオード40は、ビームが確実にs偏光としてウェハ表面に衝突するように整列されている。s偏光のビームを使用することによって、ウェハが薄く、透明である場合、ウェハの底面から反射する光が少なくなり、この結果、PSD58に達する光の大部分が上面の反射に由来するため、SN比が向上する。このような大きい入射角によって、ウェハ表面には、長楕円ビームが形成され、この結果、広範囲に亘って反射率が平均化される。また、ウェハ表面上の長楕円スポットは、上面又は底面上の微細なパターン又は微粒子汚染によって生じる測定における誤差を最小化する傾向がある。ウェハ上面50とレンズ54との間の距離、及びレンズ54とPSD58との間の距離は、レンズ54の焦点長の約2倍である。この結果、開口44は、最終的にPSD58上に結像される。ウェハは、xyステージ(図示せず)に取り付けられ、出力セクション38を構成する部品40、42、44、46、48、及び入力セクション51を構成する部品52、54、56、58、60は、zステージに取り付けられる。PSDの出力は、位置敏感型増幅器(position sensing amplifier)60に接続されており、コントローラ(図示せず)と連携して、zステージのサーボループを形成するために使用される。ウェハ又は光学システムの一方又は両方をzステージに取り付けてもよい。
【0018】
図3は、本発明の実施の形態を示している。コリメートされたビーム42はレーザダイオード40から出射され、小さい円形の開口又はピンホール44、照射レンズ46及びプリズムミラー48を通過する。この目的で使用される例示的なレーザダイオードは、米国カリフォルニア州サンタクララのCoherent, Inc.社によって製造されている0222−002−01があり、これは、約1.6のミリワットのパワーで650nmの波長で動作する。開口44とレンズ46との間の距離、及びレンズ46とウェハ上面50との間の距離は、レンズ46の焦点長の約2倍である。したがって、開口は、ウェハ上面50の近くの平面に結像される。ビームは、グレージング角、すなわち84度〜87度の入射角でウェハ上面50に衝突する。ビームの大部分は、上面から反射し、続いて、プリズムミラー52、集光レンズ54及び帯域通過フィルタ56を通過し、そして、点74において、位置敏感型検出器(position sensitive detector:PSD)58に到達する。帯域通過フィルタ56は、ウェハスクライブの間のプラズマ発光を含む周囲光を遮り、この結果、信号対雑音比(SN比)を向上させる。レーザダイオード40は、ビームがs偏光としてウェハ表面に衝突するように整列されている。s偏光のビームを使用することによって、ウェハが薄く、透明である場合、ウェハの底面から反射する光が少なくなり、この結果、PSD58に達する光の大部分が上面の反射に由来するため、SN比が向上する。このような大きい入射角によって、ウェハ表面には、長楕円ビームが形成され、この結果、広範囲に亘って反射率が平均化される。また、ウェハ表面上の長楕円スポットは、上面又は底面上の微細なパターン又は微粒子汚染によって生じる測定における誤差を最小化する傾向がある。ウェハ上面50とレンズ54との間の距離、及びレンズ54とPSD58との間の距離は、レンズ54の焦点長の約2倍である。この結果、開口44は、最終的にPSD58上に結像される。ウェハは、xyステージ(図示せず)に取り付けられ、出力セクション38を構成する部品40、42、44、46、48、及び入力セクション51を構成する部品52、54、56、58、60は、zステージに取り付けられる。PSDの出力は、位置敏感型増幅器(position sensing amplifier)60に接続されており、コントローラ(図示せず)と連携して、zステージのサーボループを形成するために使用される。ウェハ又は光学システムの一方又は両方をzステージに取り付けてもよい。
【0019】
最良のスクライブ結果のために、UV対物レンズの焦点面とウェハ表面との間に有限オフセット(finite offset)を用いてもよい。スクライブ結果を確認し、対物レンズとウェハ表面との間の距離を初期化する。そして、図3のオートフォーカス部品は、開口の画像が対物レンズの真下に位置することが確実となるように調整される。そして、この画像は、PSD58の点74に投影される。理想的な条件下では、ビーム経路は、図3の実線を辿る。スクライブされているウェハの上面が平坦でない場合、xyステージが平行移動するとビーム経路が変化する。例えば、図3の点線72は、被加工物50の上面が新たな位置70に動いた際の、ウェハの平坦さ又は厚さのばらつきの結果としてのビーム経路である。この場合、対物レンズとウェハの間との距離は、最適な距離より長くなる。このとき、レーザビームは、PSD58の点74から離れて新たな位置76に移動し、PSD58は、レーザビームの横方向のシフトに比例する信号を生成する。この信号は、増幅され、デジタル化され、zステージコントローラに供給され、zステージを下げて、対物レンズとウェハ表面との間の最適な距離が回復される。したがって、PSD信号フィードバック及び垂直ステージコントローラによって構成されるサーボループは、ステージの平行移動の間、対物レンズとウェハ表面との間の距離が常に最適となることを確実にする。これによって、ウェハの全体に亘って、最良のスクライブ結果が確実に得られるようになる。
【0020】
追従式オートフォーカスシステムを用いてLED製造のためのサファイア又は金属ウェハのスクライブを補助することは新規である。このシステムは、上述した従来のシステムに比べてより単純であり、適切なビーム偏光を使用し、PSDの前に帯域通過フィルタを追加し、安定した出力モードのレーザダイオードを使用し、適切な開口サイズを使用し、及び高分解能の横型PSD(lateral-type PSD)を使用することによって、より強健になる。システムの記述で説明したように、適切なビーム偏光を使用し、PSDの前に帯域通過フィルタを追加することによって、SN比が向上する。レーザダイオードは、安定したビーム形状を有する。レーザダイオードビームをPSDに直接入射させるのではなく、開口を結像することによって、参照アームが不要になる。レーザダイオードパワー及び開口サイズは、レーザLEDスクライブの間、十分なレーザパワーがPSDに到達し、PSD及び増幅器が最適な条件下で動作することが確実になるように選択される。また、ピンホールサイズも、ウェハ表面に十分長い楕円のスポットを投影するように十分大きく、これにより、PSD信号は、ウェハ上の領域に亘って平均化され、ウェハ上面上の汚れからの誤った応答が回避される。高分解能のPSD58は、オートフォーカス感度を向上させ、ウェハ上の二重反射は、不要である。セグメント化フォトダイオードPSD(segmented-photodiode PSD)の代わりに、2方向(Duo-lateral)又は4方向(Tetra-lateral)PSD(On−Trak Photonics, Inc.社のパーツ番号1L5SP)を用いることによって、システム整列が簡単になり、オートフォーカス捕捉範囲が、PSD上で数百ミクロンから数ミリメートルにまで拡大する。レンズ46とレンズ54の焦点長は、異なっていてもよい。開口44とレンズ46との間の距離、レンズ46とウェハ表面50との間の距離、ウェハ表面50とレンズ54との間の距離、及びレンズ54とPSD58との間の距離は、正確にレンズの焦点長の2倍である必要はない。数ミリメートルのずれは、追従式オートフォーカスの性能及びシステムの整列に影響せず、したがって、重要ではない。
【0021】
図4は、全てがZ軸サーボ78に取り付けられたオートフォーカス出力セクション38、入力セクション51及び対物レンズ26を有するレーザ処理システム80を示している。上述したように、レーザビーム42が、被加工物32と対物レンズ26との間の変位に変化を検出すると、出力セクション51は、コントローラ(図示せず)に信号を供給し、これによって、Z軸サーボ78は、変位の変化を補償して、正常値に回復させるように、対物レンズ26、出力セクション38及び入力セクション51を移動させ、この結果、加工用レーザ焦点30と被加工物32との間で望ましい関係が維持される。
【0022】
zステージ及びPSD信号によって構成されるサーボループの利得及び帯域幅を適切に設定することによって、オートフォーカス応答は、2インチのウェハに亘って、70mm/sのXYステージ速度で、ウェハ表面の150μmの高さの変動に追従することができる。この用途では、サーボループの帯域幅は50Hz以下である。追従式オートフォーカスデバイスでは、LEDスクライブシステムは、底面にパターンがある2インチの透明サファイアウェハについて、ウェハ厚さにおける5〜10ミクロンの変動に追従することができる。この用途のためのサーボループの帯域幅は、5Hz以下である。この帯域幅では、局部的な高さの速い変化は無視され、システムがより強健になる。より速いx/yステージ速度及び異なる表面高さの変動については、これらに応じてサーボループを最適化して、最適の結果を得ることができる。
【0023】
本発明の基底にある原理から逸脱することなく、本発明の上述の実施の形態の詳細に多くの変更を加えてもよいことは当業者にとって明らかである。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲のみによって確定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ処理システムにおけるレーザ焦点と被加工物との間の相対的な変位を定量化する改善された方法であって、前記レーザ処理システムは、焦点を有する加工用レーザと、測定用レーザビームを生成する測定用レーザと、レーザビーム検出器とを備え、前記測定用レーザビーム及び前記レーザビーム検出器は、前記レーザ焦点と前記被加工物との間の前記変位を定量化するように動作し、前記被加工物は、上面及び底面を有する方法において、
前記測定用レーザビームの偏光を特定のタイプの偏光に設定し、かつ、前記被加工物の前記上面に対して特定の向きに設定するステップと、
前記被加工物の前記上面から反射する測定用レーザビームエネルギの、前記被加工物の前記底面から反射して、後に前記レーザビーム検出器によって検出される測定用レーザビームエネルギの量に対する比を最大にするように選択されたグレージング角で、前記測定用レーザビームを前記被加工物に方向付けるステップとを有し、
前記加工用レーザ及び前記測定用レーザは、異なる波長で動作し、
前記測定用レーザビーム及び前記レーザビーム検出器は、前記被加工物が前記レーザ焦点に対して高速に動いている間に、前記レーザ焦点と前記被加工物との間の前記相対的な変位を定量化する方法。
【請求項2】
前記レーザビームの偏光の前記特定のタイプは、実質的に直線偏光である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記レーザビームの前記特定の向きは、実質的に前記被加工物の前記上面に対してs偏光である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記グレージング角は、前記被加工物の前記上面に対する垂直に対して、約84度から約87度までの間である請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記高速な動きは、約10mm/sより大きく、約1000mm/sより小さい請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記測定用レーザは、約700nmより小さい波長で動作する請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記測定用レーザビームは、ピンホール開口を用いてコリメートされる請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記測定用レーザビームは、帯域通過フィルタによってフィルタリングされる請求項1記載の方法。
【請求項9】
レーザ処理システムにおけるレーザ焦点と被加工物との間の相対的な変位を定量化する改善された装置であって、前記レーザ処理システムは、レーザ焦点を有する加工用レーザと、測定用レーザビームを生成する測定用レーザと、測定用レーザ光学素子と、レーザビーム検出器とを備え、前記測定用レーザビーム、前記測定用レーザ光学素子及び前記レーザビーム検出器は、前記レーザ焦点と前記被加工物との間の前記変位を定量化するように動作し、前記被加工物は上面及び底面を有する、装置において、
前記測定用レーザ及び前記測定用レーザ光学素子は、前記測定用レーザビームを、前記被加工物から反射し、前記レーザビーム検出器によって検出されるように方向付け、これによって、前記レーザ焦点と前記被加工物との間の相対的な変位を定量化し、前記レーザビームは、特定の偏光を有し、前記被加工物の前記上面に対して特定の向きで、前記被加工物の前記上面に入射するように方向付けられ、
前記測定用レーザビームは、更に、前記被加工物の前記上面から反射するレーザビームエネルギの、前記被加工物の前記底面から反射して、後に前記レーザビーム検出器によって検出されるレーザビームエネルギの量に対する比を最大にするように選択されたグレージング角で前記被加工物に方向付けられ、
前記加工用レーザ及び前記測定用レーザは、異なる波長で動作し、
前記レーザビームは、前記被加工物から反射するように方向付けられ、これによって、前記被加工物が前記レーザ焦点に対して高速に動いている間に、前記レーザ焦点と前記被加工物との間の前記相対的な変位を定量化する装置。
【請求項10】
前記レーザビームの偏光の前記特定のタイプは、実質的に直線偏光である請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記特定の向きは、実質的に前記被加工物の前記上面に対してs偏光である請求項9記載の装置。
【請求項12】
前記グレージング角は、前記被加工物の前記上面に対する垂直に対して、約84度から約87度までの間である請求項9記載の装置。
【請求項13】
前記動きは、約10mm/sから約1000mm/sまでの間である請求項9記載の装置。
【請求項14】
前記加工用レーザ及び前記測定用レーザは、異なる波長で動作する請求項9記載の装置。
【請求項15】
前記測定用レーザは、約700nmより小さい波長で動作する請求項9記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−517428(P2011−517428A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501985(P2011−501985)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/038122
【国際公開番号】WO2009/120706
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(593141632)エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド (161)
【Fターム(参考)】