説明

カーナビゲーションシステム

【課題】 経路探索の機能を備えるものにあって、有料道路の出入口におけるETC専用レーンの設置状況を、経路探索に反映させる。
【解決手段】 制御回路は、ETC車載機からの信号に基づいて、自車両がETCシステムの利用が可能かどうかを判断し(S1)、ETCシステムが利用可能なことを条件に、経路探索にETC専用レーンの有無を加味するようになっている。このとき、有料道路の各出入口料金所に関し、各出入口を通過する際の通過コストが予め付与され、道路データ中に含まれるようになっており、経路探索のコスト計算にこの通過コストを用いる(加味する)ことによって、ETC専用レーンの有無を考慮した経路探索を行う(S2〜S4)。通過コストは、ETC専用レーンが存在する出入口に対し、ETC専用レーンが存在しない出入口よりも小さくなるように付与(設定)され、出入口におけるETC専用レーンの数が多いほどコストがより小さく付与(設定)される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指定された目的地までの推奨する経路を探索する経路探索手段を備えるカーナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車に搭載されるカーナビゲーションシステムは、自己の現在位置を検出し表示装置に道路地図に重ね合わせて表示するロケーション機能や、ユーザが指定した目的地までの推奨する経路を計算により探索し、案内する経路探索、案内機能を備えている。そのうち経路探索機能による経路の計算には、ダイクストラ法が一般に用いられている。この経路計算は、簡単にいうと、指定された優先条件などに応じて、出発地(現在地)から目的地へ向けて、次に到達できる交差点までの道路のコストの計算(積算)を順次行なっていき、目的地までが最小コストとなる経路を選ぶものである。前記コストは、道路長や道路種別、道路幅、有料無料の別、渋滞度、右左折等から、所定の重み付けがなされて計算されるようになっている。
【0003】
ところで、近年、高速道路等の有料道路の出口(或いは入口)料金所における渋滞の緩和やキャッシュレス決済による利便性の向上等を目的として、料金所ゲートに設置されたETC路側機とETC車載機との間での路車間通信によって自動的に通行料金を決済するETC(Electronic Toll Collection)システムが実用化されてきている。カーナビゲーションシステムにあっては、最適経路を探索した際に、その経路に含まれる有料道路の料金所において、ETCシステムが利用可能かどうかをユーザに表示あるいは音声で知らせるようにすることが考えられている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−174282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したETCシステムは、現状では普及途中であって、車両側においても、ETC車載機を搭載した(ETCシステムが利用可能な)車両は、全体の一部であり、また、必ずしも、有料道路の全ての料金所(出入口)においてETC専用レーンが設けられているとは限らない。例えばレーン数の少ない料金所では、ETCシステムが利用可能であるというものの、ETC専用レーンは存在せず、ETC車と一般車との兼用のレーンが設けられている場合も多い。
【0005】
ここで、有料道路の出入口におけるETC専用レーンの有無が、車両がその出入口を通過するに要する時間に大きな影響を与えるケースがある。例えば交通量が比較的多くなる出入口にあっては、ETC専用レーンについては車両がスムーズに通過できるものの、一般レーンや、兼用レーンでは、混雑(渋滞)が発生して通過に時間がかかる場合が生ずる。ETCシステムを利用可能な(ETC車載機を備えた車両の)ユーザにとっては、ETC専用レーンが存在しないためにそのような混雑が生ずることは避けたい要望がある。
【0006】
しかしながら、従来のカーナビゲーションシステムにおける経路探索の機能にあっては、コストの計算に、有料道路の出入口におけるETC専用レーンの有無が考慮されていなかった。このため、例えば、ETC車と一般車との兼用レーンしか存在しない出入口を選んで案内してしまう等、必ずしもETCシステムを利用可能なユーザにとって好ましい経路が探索されるとは限らなかった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、経路探索の機能を備えるものにあって、有料道路の出入口におけるETC専用レーンの設置状況を、経路探索に反映させることができるカーナビゲーションシステムを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のカーナビゲーションシステムは、指定された目的地までの推奨する経路を探索する経路探索手段を、有料道路の出入口におけるETC専用レーンの有無を考慮して経路を探索することが可能に構成したところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0009】
これによれば、経路探索手段により目的地までの経路探索を行うにあたり、高速道路等の有料道路を使用する場合に、例えばETC専用レーンの設置されている出入口を、設置されていない出入口よりも優先させる等、ETC専用レーンの有無を経路探索に反映させることが可能となり、ひいては、ETCシステムを利用可能なユーザにとって好ましい経路探索を行うことが可能となる。
【0010】
より具体的には、経路探索手段が、経路に関するコストの計算に基づいて最小コストとなる目的地までの経路を探索するものであるときには、車両が有料道路の出入口を通過する際のコストを、ETC専用レーンを有する出入口に対して、ETC専用レーンが存在しない出入口よりも小さくなるように付与するように構成することができる(請求項2の発明)。これによれば、コストの計算に基づいて、最短距離あるいは最短時間の経路を求めることができ、その際の計算結果にETC専用レーンの有無を加味することができる。従って、簡単な計算で、ETC専用レーンの設置状況を経路探索に適切に反映させることができる。
【0011】
このとき、有料道路の出入口においては、ETC専用レーンが複数設置されている場合があるが、ETC専用レーンの数が多いほど、コストがより小さくなるように付与することができる(請求項3の発明)。これによれば、ETC専用レーンの設置状況を、経路探索に、より適切に反映させることができる。
【0012】
本発明はETCシステムを利用可能なユーザにとって有効であるので、自車両がETCシステムの利用が可能かどうかを判断手段により判断し、ETCシステムの利用が可能と判断された場合に、経路探索手段が、有料道路の出入口におけるETC専用レーンの有無を考慮した経路探索を実行するように構成することができる(請求項4の発明)。ETCシステムを利用可能なユーザにとってのメリットを得ることができると共に、ETCシステムを利用不能な場合においては、無駄な計算を行わずに済ませながら、適切な経路を探索することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。
まず、図1は、車両に搭載される本実施例に係るカーナビゲーションシステム1の全体の電気的構成(ハードウエア構成)を概略的に示している。
【0014】
ここで、このカーナビゲーションシステム1は、CPU,ROM,RAM,I/O等からなるマイコンを主体として構成された制御回路2に、自車位置を検出するための位置検出器3、地図データ入力器4、操作スイッチ群5、外部メモリ6、例えばフルカラー液晶ディスプレイからなる表示装置7、外部(例えばVICSシステム等のインフラ)との間で例えば無線通信によりデータの送受信を行う外部情報入出力装置8、音声出力装置9等を接続して構成されている。
【0015】
また、車両には、後述するように、ETC(Electronic Toll Collection)システムを利用するためのETC車載機10が搭載されている。このETC車載機10は、例えば車内LAN等によりカーナビゲーションシステム1の制御回路2に接続されており、通信線を介して(或いは無線にて)制御回路2に信号を送信するようになっている。
【0016】
前記位置検出器3は、絶対方位を検出するための地磁気センサ11、自車両の回転角速度を検出するジャイロスコープ12、自車両の走行距離を検出する距離センサ13、GPS用の人工衛星からの送信電波に基づいて自車両の位置を検出(測位)するGPS(Global Positioning System )のためのGPS受信機14を有している。前記制御装置2は、位置検出器3の各センサ11〜14が性質の異なる誤差を有しているため、各々補間しながら使用するように構成されており、これらセンサ11〜14からの入力に基づいて、自車両の現在位置、進行方向、速度や走行距離、現在時刻等を高精度で検出するようになっている。尚、精度によっては、上記したセンサ11〜14のうちの一部から位置検出器を構成しても良く、また上記以外に、ステアリングの回転センサや、転動輪の車輪センサ等を採用することも可能である。
【0017】
前記地図データ入力器4は、道路地図データやそれに付随する目的地データ(施設データベース)などの各種データを記憶した地図データ記録メディアからデータを読出すためのドライブ装置からなり、その地図データ記録メディアとしては、例えばDVDあるいはCD−ROM等の大容量記憶媒体が用いられる。前記道路地図データは、道路形状、道路幅、道路名、信号、踏切、建造物、各種施設、地名、地形等のデータを含むと共に、その道路地図を表示装置7の画面上に再生するためのデータを含んでいる。高速道路、専用道路等の有料道路に関しては、入口及び出口のインターチェンジ(以下「IC」と略称する)のデータや、料金のデータ等も含まれる。
【0018】
また、前記目的地データは、駅等の交通機関、レジャー施設、宿泊施設、公共施設等の施設や、小売店、デパート、レストラン等の各種の店舗、住居やマンション、地名などに関する情報からなり、このデータにはそれらの電話番号や住所、緯度及び経度等のデータが含まれると共に、施設を示すランドマーク等を、表示装置7の画面上に道路地図に重ね合せて表示するためのデータを含んで構成されている。
【0019】
前記操作スイッチ群5は、詳しく図示はしないが、表示装置7の画面の近傍に設けられたメカスイッチや、表示装置7の画面上に設けられるタッチパネルを含んでなり、ユーザ(ドライバ)は、それら操作スイッチ群5を用いて、目的地や通過点等の指定や、表示装置7に表示される道路地図の縮尺の選択等の各種のコマンドを入力することができるようになっている。前記外部メモリ6は、例えばフラッシュメモリカード等から構成され、例えば他の規格に対応するためのプログラムソフトが記憶されたり、特定のデータ例えば経路案内時に制御回路2が設定した目的地までの経路のデータ等が記憶されたりするようになっている。
【0020】
図示はしないが、前記表示装置7の画面には、通常時には、車両の現在地周辺の地図が各種縮尺で表示されると共に、その表示に重ね合せて、車両の現在位置及び進行方向を示す現在地マークが表示されるようになっている。また、表示装置7には、ユーザが目的地等の各種の入力,設定(選択)を行なうための入力用の画面や、各種のメッセージ等も表示されるようになっている。さらには、目的地までの経路案内の実行時には、表示装置7には、経路案内用の画面が表示されるようになっている。
【0021】
前記音声出力装置9は、詳しい図示及び説明は省略するが、制御回路2からの指示に基づいて合成音声をスピーカから出力するように構成されている。例えば、後述する経路案内時に、この音声出力装置9により、ユーザに対し「200m先の交差点を左です」、「まもなく右です」、「しばらく直進です」、「目的地付近です」といった合成音声による音声案内が行われるようになっている。また、後述するETCシステムの利用時(料金所通過時)に、ETC車載機10からの信号に基づいて、例えば「料金所を通過しました。支払い料金は○○円です。」といった音声報知が行われるようになっている。
【0022】
前記制御回路2は、そのソフトウエア的構成(プログラムの実行)により、車両の現在地(自車位置)を知るロケーション機能を実現すると共に、指定された目的地までの推奨する経路を探索し、案内する経路探索・案内の機能を実現するようになっている。従って、この制御回路2が、経路探索手段として機能するようになっている。
【0023】
そのうちロケーション機能は、上述のように、地図データ入力器4からの道路地図データに基づいて表示装置7の画面に現在地周辺の道路地図を表示させると共に、位置検出器3の検出に基づいて車両の現在位置及び進行方向を示す現在地マーク(ポインタ)を道路地図に重ね合わせて表示させるものである。この場合、車両の走行に伴って現在地の表示は地図上を移動すると共に、地図は車両の位置に応じてスクロール表示されるようになる。このとき、車両の現在地を道路上にのせるマップマッチングが行なわれる。また、ユーザのコマンド入力に基づいて、表示装置7に表示させる地図の種類(縮尺)の切替え等が行われるようになっている。
【0024】
そして、経路探索の機能は、車両の出発地(現在地)からユーザにより指定された目的地までの推奨する走行経路を、自動的に計算するものであり、その手法としては、周知のダイクストラ法が用いられる。このとき、ユーザは上記目的地の指定と併せて1個以上の通過点を指定することもでき、通過点の指定がある場合には、それら通過点を順に通って目的地に至るような経路の探索が行われる。この経路探索の手法については後述する。
【0025】
また、経路案内は、表示装置7の画面に、道路地図に重ね合せて、車両の現在位置(現在地マーク)と共に、求められた目的地までの経路(走行すべき経路)を目立つ色で表示して目的地まで案内するものであり、これと併せて、前記音声出力装置9により案内音声を所要のタイミングで出力させるものである。尚、目的地までの経路に、高速道路、専用道路等の有料道路が含まれる場合には、入口ICや出口ICの名称、料金なども表示装置7の画面に表示されるようになっている。
【0026】
ここで、前記制御回路2により実行される経路探索の一般的な手法(ダイクストラ法)について簡単に述べる。上記した地図データ記録メディアに記憶された道路地図データには、経路探索用の道路データを含んでいるのであるが、この道路データは、地図上の交差点などをノードとして道路を複数の部分に分割し、各ノード間の部位分をリンクとして規定したリンクデータとして与えられる。このリンクデータは、リンクID、リンク長、リンクの始点、終点の位置データ、角度(方向)データ、道路幅、道路種別等のデータを含んで構成される。
【0027】
経路探索は、出発地(現在地)から目的地(次の通過点)へ向けて、次に到達できる交差点(ノード)までの道路(リンク)の探索及びその道路コスト(評価値)の計算を順次行っていき、複数の経路に関してコストを計算し、そのうち目的地までが最小コストとなる経路(リンク列)を求めることにより行われる。前記各リンクのコストは、道路長や道路種別、道路幅、有料無料の別、渋滞度、右左折、信号や踏切の有無などから、所定の計算式にて算出され、例えば、他の条件が同じであるならば、道路長に比例して大きな値となるようになっている。このとき、詳しくは後述するように、高速道路等の有料道路の出入口(入口IC及び出口IC)の料金所においても、所定のコストが付与されるようになっている。
【0028】
図示及び詳しい説明は省略するが、前記ETC車載機10は、ETC路側機との間でDSRCと称される狭域通信により無線通信を行う無線通信部、通信制御等を行うETC処理部、セキュリティ部、ICカード処理部等を備えて構成されている。前記ICカード処理部には、料金決済機能を有するICカード(ETCカード)が挿入接続されるようになっており、このETCカードには、ID情報,利用者情報等が記録されている。ETC車載機10は、ETCシステムが利用可能かどうか(有効なETCカードがICカード処理部にセットされているかどうか)を検出し、その信号を前記制御回路2に送信するようになっている。
【0029】
また、これも図示及び詳しい説明は省略するが、ETCシステムは、例えば高速道路のインターチェンジの料金所に設置されたETC路側機(通信機)と、前記ETC車載機10との間でのいわゆる路車間通信を行うことにより、車両が料金所(レーン)で止まることなく通過できるものであり、また自動的に通行料金が決済されるものである。このとき、料金所には、ETC専用レーンや、ETC車と一般車との兼用レーン、一般車専用レーンなどが設けられており、ETC専用レーン及び兼用レーンには、前記ETC路側機(通信機)の他に、車両感知器、ゲート、路側表示器、それら各機器を制御,管理する管理コンピュータなどが設けられている。管理コンピュータは、料金を精算するための精算処理センタに接続されるようになっている。これにて、有料道路の出入口における渋滞の緩和や利便性の向上などが図られるようになっている。
【0030】
さて、本実施例のカーナビゲーションシステム1においては、後の作用説明(フローチャート説明)でも述べるように、制御回路2が上記したような経路探索を行うにあたって、有料道路の出入口におけるETC専用レーンの有無を考慮して経路を探索することができるようになっている。この場合、本実施例では、制御回路2は、ETC車載機10のICカード処理部に有効なETCカードがセットされているかどうかの信号がETC車載機10から送信されることに基づいて、自車両がETCシステムの利用が可能かどうかを判断し、ETCシステムが利用可能なことを条件に、経路探索にETC専用レーンの有無を加味するようになっている。従って、制御回路2は判断手段としても機能するようになっている。
【0031】
このとき、有料道路の各出入口料金所に関し、各出入口を通過する際の通過コストが予め付与され、道路データ(リンクデータ)中に含まれるようになっており、経路探索のコスト計算にこの通過コストを用いる(加味する)ことによって、ETC専用レーンの有無を考慮した経路探索が行われるようになっている。この場合の通過コストは、ETC専用レーンが存在する出入口に対し、ETC専用レーンが存在しない出入口よりも小さくなるように付与(設定)される。更に、特に本実施例では、出入口におけるETC専用レーンの数が多いほど、コストがより小さく付与(設定)されるようになっている。
【0032】
具体的には、図3に示すように、ETC専用レーンが存在しない(数が0の)出入口では、コストが「1」に設定され、ETC専用レーンの数が1の場合には、コストが「0.9」に設定され、ETC専用レーンの数が2の場合には、コストが「0.8」に設定されるというように、ETC専用レーンの数が多いほど通過コストが小さく設定される(ETC専用レーンの数が少ないほど通過コストが大きく設定される)ようになっている。
【0033】
これは、ETCシステムが利用可能な車両にあっては、ETC専用レーンについては車両がスムーズに通過できるものの、一般レーンや、兼用レーンでは、混雑(渋滞)が発生して通過に時間がかかる場合が生じ、さらには、ETC専用レーンの数が多いほど短時間でスムーズに通過できるという観点に基づくものであり、出入口(料金所)における通過のしやすさ(通過に要する時間)に応じた重み付けを行おうとするものである。
【0034】
次に、上記のように構成されたカーナビゲーションシステム1の作用について、図2、図4も参照して述べる。図2のフローチャートは、制御回路2が実行する経路探索の処理手順を示している。また、図4は、経路探索により探索された現在地Sから目的地Gまでの推奨する経路R1の具体例を概略的に示している。
【0035】
今、車両のユーザ(ドライバ)が、現在地Sから目的地Gまでの経路探索を実行させたい場合には、操作スイッチ群5を操作して経路探索の実行を指示すると共に、目的地Gを指定する。詳しい説明は省略するが、この目的地Gの指定は、目的地Gの名称を入力したり、住所を入力したりする方法や、施設などの各ジャンルから検索するなど、様々な方法がある。このとき、1個以上の通過点(経由地)を合せて指定することもできる。
【0036】
目的地Gの指定が行われると、制御回路2による経路探索(経路計算)が、図2のフローチャートに示す手順にて実行される。即ち、即ち、まずステップS1では、ETCシステムの利用が可能かどうかが判断される。ここで、自車両にETC車載機10が搭載され且つ有効なETCカードがセットされている場合には、ETCシステムが利用可能と判断され(Yes)、ステップS2に進む。
【0037】
次のステップS2では、目的地Gまでの経路にICが存在するか(高速道路等の有料道路を通るか)どうかが判断される。ICが存在する(有料道路を通る)場合には(Yes)、次のステップS3に進む。尚、自車両に、ETC車載機10が搭載されていない場合、或いは、搭載されていても有効なETCカードがセットされていないような場合(ステップS1にてNo)、及び、目的地Gまでの経路に有料道路を通ることがない場合(ステップS2にてNo)には、そのままステップS4に進み、通過コストを考慮しない従来と同様のコスト計算(経路探索)が行われる。
【0038】
ステップS3では、通過する可能性のあるICにおける、ETC専用レーンの数に応じた通過コストを加味した(重み付けを行った)コスト計算が、複数のルートに関して行われる。そして、次のステップS4にて、コスト計算が行われた複数のルートのうち、最もコストの小さくなる経路が、推奨する経路として決定されるのである。
【0039】
ここで、図4の例では、現在地Sから目的地Gまでの経路に有料道路(高速道路)Hが存在し、現在地Sから進むべき有料道路の入口として、IC1とIC2との2つの候補があり、有料道路を走行した後、出口IC3から一般道路へ出て、目的地Gへ向かうという2つのルートが考えられる。このとき、例えば、IC1には、1或いは複数のETC専用レーンが存在しているが、IC2には、ETC専用レーンが存在していないような場合、IC1を通過するルートR1の方が、距離的には遠回りとなるものの、IC2を通過するルートR2(破線で示す)に比べて所要時間が短くなるケースが考えられる。
【0040】
従来の経路探索では、ETC専用レーンの有無を考慮しないため、距離優先でルートR2が探索(決定)されることになるが、本実施例では、ETC専用レーンの数に応じた通過コストを加味した(重み付けを行った)コスト計算が行われるので、IC1を通過するルートR1の方がコストが小さくなると判断されれば、ルートR1が探索(決定)されることになるのである。ETC専用レーンが存在しないIC2を通過するルートR2の方がコストが小さくなると判断されれば、ルートR2が探索(決定)されることは勿論である。これにより、最短時間で目的地Gまで到達できるような、より適切な経路が探索されるようになるのである。
【0041】
このように本実施例によれば、目的地までの経路探索を行うにあたり、高速道路等の有料道路を使用する場合に、例えばETC専用レーンの設置されている出入口を、設置されていない出入口よりも優先させる等、ETC専用レーンの設置状況を経路探索に反映させることが可能となり、ひいては、ETCシステムを利用可能なユーザにとって好ましい経路探索を行うことが可能となる。
【0042】
特に本実施例では、車両が有料道路の出入口を通過する際の通過コストを用いるようにし、しかもETC専用レーンの数が多いほど、通過コストをより小さく付与するようにしたので、コストの計算に基づいて、最短距離あるいは最短時間の経路を求めることができ、その際の計算結果にETC専用レーンの有無を加味することができ、簡単な計算で、ETC専用レーンの設置状況を経路探索に適切に反映させることができる。また、本実施例では、自車両がETCシステムの利用が可能かどうかを判断した上で、ETC専用レーンの有無を考慮した経路探索を実行するように構成したので、ETCシステムを利用可能なユーザにとってのメリットを得ながら、ETCシステムを利用不能な場合においては、無駄な計算を行わずに済ませることができる。
【0043】
尚、上記実施例では、カーナビゲーションシステム1の制御回路2が、ETC車載機10からの信号に基づいて、ETCシステムが利用可能かどうかを自動で判断するようにしたが、例えば、ユーザが操作スイッチ群5の操作により、ETCシステム(ETC車載機10)を利用する旨を入力するようにしたり、経路探索にETC専用レーンの設置状況を考慮させるかどうかを設定するようにしたりしても良い。同時に複数の経路を優先条件に従って探索し、そのうちいずれかをユーザに選択させるものであっても良く、その中の一つの優先条件として、ETC専用レーンの設置状況を考慮するといった条件を設ける構成とすることもできる。
【0044】
また、上記実施例では、ETC専用レーンの設置数に応じて通過コストを変化させるようにしたが、ETC専用レーンの有無のみで通過コストを変えてもよい。また、コスト計算を行う場合に、出入口の渋滞(混雑)度合いを更に加味するようにしても良く、例えば、ETC専用レーンがない出入口でも、混雑がなければ、兼用レーンを比較的速く通過できると考えられるし、ETC専用レーンがあっても、出入口全体として渋滞しているため、出入口を短時間で通過できる効果がさほど得られないといったケースも考えられる。その他、カーナビゲーションシステム全体のハードウエア構成やソフトウエア構成についても、様々な変形例が考えられるなど、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、カーナビゲーションシステムの電気的構成を概略的に示すブロック図
【図2】制御回路が実行する経路探索の処理手順を示すフローチャート
【図3】ETC専用レーンの設置数と通過コストとの関係を示す図
【図4】現在地から目的地までの経路の具体例を示す図
【符号の説明】
【0046】
図面中、1はカーナビゲーションシステム、2は制御回路(経路探索手段、判断手段)、4は地図データ入力器、5は操作スイッチ群、7は表示装置、10はETC車載機を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定された目的地までの推奨する経路を探索する経路探索手段を備えるカーナビゲーションシステムであって、
前記経路探索手段は、有料道路の出入口におけるETC専用レーンの有無を考慮して経路を探索することが可能に構成されていることを特徴とするカーナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記経路探索手段は、経路に関するコストの計算に基づいて最小コストとなる目的地までの経路を探索するように構成されていると共に、
車両が有料道路の出入口を通過する際のコストが、ETC専用レーンを有する出入口に対して、ETC専用レーンが存在しない出入口よりも小さくなるように付与されることを特徴とする請求項1記載のカーナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記有料道路の出入口におけるETC専用レーンの数が多いほど、コストがより小さくなるように付与されることを特徴とする請求項2記載のカーナビゲーションシステム。
【請求項4】
自車両がETCシステムの利用が可能かどうかを判断する判断手段を備え、
前記経路探索手段は、前記判断手段によりETCシステムの利用が可能と判断された場合に、有料道路の出入口におけるETC専用レーンの有無を考慮した経路探索を実行することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のカーナビゲーションシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−337248(P2006−337248A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164031(P2005−164031)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】