説明

ガスセンサ、及びガスセンサの作製方法

【課題】作製工程が簡便であるガスセンサを提供することを課題の一とする。また、作製コストが抑制されたガスセンサを提供することを課題の一とする。
【解決手段】ガスセンサの検知素子として機能する、酸化物半導体層がガスと接するトランジスタと、検出回路を構成する、酸化物半導体層がガスバリア性を有する膜に接するトランジスタとを、同一表面上に単一工程で作製し、これらのトランジスタを用いたガスセンサを作製すればよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスを検知するガスセンサに関する。本発明はガスを検知するガスセンサの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雰囲気中に含まれるガスを検知するガスセンサは、ガス漏れ警報機や空気清浄機などの空気の汚染モニター用途や、自動車の自動換気制御機能、飲酒チェック用のアルコール検知器など、家庭用途から産業用途まで幅広い分野で用いられる。
【0003】
ガスセンサとしては、金属酸化物導電体のガスの吸着反応などによる抵抗変化を用いた抵抗式ガスセンサが一般的に知られている。
【0004】
また、ガスセンサのひとつである湿度センサは雰囲気中の水分(水蒸気)を検知することができ、冷暖房や加湿、除湿などに用いられる空調機器、冷蔵機器、衣料向けの乾燥機器を始め、気象観測機器、医療機器などの幅広い用途で用いられる。
【0005】
湿度センサとしては、湿度の違いによる金属や金属酸化物導電体の抵抗変化を用いた抵抗式湿度センサ(特許文献1)や、電極間に挟まれた絶縁膜の誘電率の変化を用いた容量式湿度センサ(特許文献2)などが知られている。
【0006】
また、ガスセンサの構成としては、ガスの吸着などの作用により電気的特性(例えば電気抵抗や誘電率など)が変化する検知部と、その電気的特性の変化を電気信号(例えば電圧の変化など)に変換し、出力する回路部とを組み合わせた構成とするのが一般的である。
【0007】
一方、基板上に形成した半導体膜を用いて半導体装置を構成する技術が知られている。例えば、シリコン系半導体材料を含む薄膜を用いてガラス基板上にトランジスタを作製する技術が知られている。
【0008】
半導体材料としては、アモルファスシリコン、多結晶シリコンなどが知られている。アモルファスシリコンを用いたトランジスタは、電界効果移動度が低いものの基板の大面積化に対応することができる。一方、多結晶シリコンを用いたトランジスタは、電界効果移動度が高いもののレーザーアニールなどの結晶化工程が必要であり、基板の大面積化には必ずしも適応しないなどといった特性を有している。
【0009】
その他の材料としては、酸化物半導体が最近注目されている。例えば、トランジスタの活性層として、電子キャリア濃度が1018/cm未満であるインジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物を用いたトランジスタが開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭59−147401号公報
【特許文献2】特開昭57−100714号公報
【特許文献3】特開2006−165528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、従来のガスセンサでは、検知部と回路部とは異なる材料で構成されているため、それぞれ別の作製工程により作製する必要があった。そのため、作製工程が煩雑になるとともに、作製コストが高くなってしまう問題があった。
【0012】
したがって、本発明の目的は、作製工程が簡便であるガスセンサを提供することを課題とする。また、作製コストが抑制されたガスセンサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、酸化物半導体を半導体層とした薄膜トランジスタをガスセンサの検知素子として用いることを考えた。
【0014】
雰囲気中のガスと接する酸化物半導体層を有するトランジスタの電気的特性が雰囲気中のガス濃度によって変化すること、加えて、ガスバリア性を有する膜に接する酸化物半導体層を有するトランジスタが雰囲気中のガス濃度によらず信頼性に優れた電気特性を備えることを見出した。そして、雰囲気中のガスと接する酸化物半導体層を有するトランジスタを検知素子として用い、ガスバリア性を有する膜に接する酸化物半導体層を有するトランジスタを用いて検出回路を構成し、本発明の一態様の同一基板上に検知素子と検出回路とを備えたガスセンサとすることにより、課題の解決に至った。
【0015】
本発明において、検知素子となるトランジスタは、酸化物半導体層が雰囲気中のガスと接する。従って、雰囲気中のガスによりトランジスタの電気的特性が変化することを利用してガスを検知できる。
【0016】
また、検出回路を構成するトランジスタは、その酸化物半導体層がガスバリア性を有する膜に接する。従って雰囲気中のガスの影響を受けることなく、信頼性に優れた検出回路を構成することができる。
【0017】
さらに、検知素子及び検出回路を構成する二種類のトランジスタを同一基板上に同一工程で作製することにより、作製工程を煩雑にすることなく、また低コストでガスセンサを作製することができる。
【0018】
したがって上記の課題を解決するためには、ガスセンサの検知素子として機能する、酸化物半導体層がガスと接するトランジスタと、検出回路を構成する、酸化物半導体層がガスバリア性を有する膜に接するトランジスタとを同一表面上に単一工程で作製し、これらのトランジスタを用いたガスセンサを作製すればよい。
【0019】
すなわち、本発明の一態様は、第1のトランジスタを含む検知部と、第2のトランジスタを含む回路部とを同一の絶縁表面上に有するガスセンサである。さらに第1のトランジスタは絶縁表面上に第1のゲート電極層と、第1のゲート電極層上にゲート絶縁層と、第1のゲート電極層と重なり、一方の面をゲート絶縁層に接し、他方の面を雰囲気と接する第1の酸化物半導体層とを有する。また第1のトランジスタは第1の酸化物半導体層と接し、第1のゲート電極層と重なる間隙を備える第1のソース電極層、及び第1のドレイン電極層とを有する。また、第2のトランジスタは絶縁表面上に第2のゲート電極層と、第2のゲート電極層上にゲート絶縁層と、第2のゲート電極層と重なり、一方の面をゲート絶縁層に接し、他方の面を保護絶縁層に接する第2の酸化物半導体層と、第2の酸化物半導体層と接し、第2のゲート電極層と重なる間隙を備える第2のソース電極層、及び第2のドレイン電極層とを有する。
【0020】
上記本発明の一態様のガスセンサは、同一表面上に検知素子であるトランジスタと、検出回路を構成するトランジスタを有する。同一表面上に2種類のトランジスタを作りこむことで低いコストでガスセンサを実現できる。また、検知素子の酸化物半導体層は被測定雰囲気に曝されているため、検出感度の高いガスセンサを実現できる。
【0021】
本発明の一態様は、上記ガスセンサにおいて、第1の酸化物半導体層と雰囲気との間に、雰囲気と接しガス透過性を有する絶縁層を有するガスセンサである。
【0022】
検知素子であるトランジスタの酸化物半導体層と被測定雰囲気との間に絶縁層を設けることにより、被測定雰囲気からの意図しない汚染を抑制することができ、信頼性の高いガスセンサとすることができる。
【0023】
本発明の一態様は、絶縁表面上に第1のゲート電極層及び第2のゲート電極層を形成し、第1のゲート電極層と第2のゲート電極層上にゲート絶縁層を形成する。さらにゲート絶縁層上に、第1のゲート電極層と重なる第1の酸化物半導体層と、第2のゲート電極層と重なる第2の酸化物半導体層と、第1の酸化物半導体層と接し、第1のゲート電極層と重なる間隙を備える第1のソース電極層及び第1のドレイン電極層と、第2の酸化物半導体層と接し、第2のゲート電極層と重なる間隙を備える第2のソース電極層及び第2のドレイン電極層とを形成する。その後、第2の酸化物半導体層の露出した部分と接する保護絶縁層を形成するガスセンサの作製方法である。
【0024】
上記の方法によりガスセンサを作製することにより、同じ作製工程を経て検知部を構成するトランジスタと、回路部を構成するトランジスタを同時に作製することができる。従って作製工程を簡便にすることができ、低コストで作製できるガスセンサを実現できる。また、検知素子の酸化物半導体層は被測定雰囲気に曝されているため、検出感度の良いガスセンサを作製することができる。
【0025】
本発明の一態様は、上記ガスセンサの作製方法において、保護絶縁層を形成した後に、第1の酸化物半導体層上に、雰囲気と接し、ガス透過性を有する絶縁層を形成するガスセンサの作製方法である。
【0026】
上記方法によりガスセンサを作製することにより、検知素子であるトランジスタの酸化物半導体層を絶縁層により保護することができ、被測定雰囲気からの意図しない汚染を抑制することができ、信頼性の高いガスセンサを作製することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、作製工程が簡便であるガスセンサを提供できる。また、作製コストが抑制されたガスセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一態様のガスセンサを説明する図。
【図2】本発明の一態様のガスセンサの作製方法を説明する図。
【図3】本発明の一態様のガスセンサを説明する図。
【図4】本発明の一態様のRFタグを説明する図。
【図5】本発明の一実施例のID−VG特性。
【図6】本発明の一実施例の入出力特性。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0030】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0031】
(実施の形態1)
本実施の形態では、ガスセンサのひとつである湿度センサの一例について説明する。酸化物半導体を半導体層とした薄膜トランジスタを用いた湿度センサの構成、及びこの湿度センサの作製方法の一形態を図1及び図2を用いて説明する。
【0032】
図1(A)は同一基板上に形成された、湿度センサの検知素子となる薄膜トランジスタ101と、検出回路を構成する薄膜トランジスタ201の断面概略図である。
【0033】
薄膜トランジスタ101及び薄膜トランジスタ201は共に、トップコンタクト型(逆スタガ型とも呼ぶ)と呼ばれるボトムゲート構造の一つである。また、薄膜トランジスタ101、及び薄膜トランジスタ201は共に、nチャネル型のトランジスタである。
【0034】
薄膜トランジスタ101は、基板100上にゲート電極層103、ゲート絶縁層105、酸化物半導体層107、ソース電極層109a、及びドレイン電極層109bを有する。さらに、酸化物半導体層107のバックチャネルは、絶縁層111と接する。
【0035】
ここで、ボトムゲート構造のトランジスタにおいて、ゲート電極層に重畳し、且つ互いに向かい合う一対のソース電極層とドレイン電極層の端部に挟まれた、酸化物半導体層の領域をチャネル形成領域と呼ぶこととする。また、チャネル形成領域において、ゲート電極層とは反対側の表面をバックチャネルと呼ぶこととする。
【0036】
薄膜トランジスタ201は、酸化物半導体層207のバックチャネル、並びにソース電極層209a及びドレイン電極層209bが保護絶縁層213と接しているほかは、薄膜トランジスタ101と同じ構成である。したがって、ゲート電極層203、ゲート絶縁層105、酸化物半導体層207、ソース電極層209a、及びドレイン電極層209bは、それぞれ薄膜トランジスタ101のものと同じ材料で構成され、同一工程で形成される。
【0037】
検知素子となる薄膜トランジスタ101のバックチャネルと接する絶縁層111には、吸水性を有する材料を用いる。したがって、絶縁層111は被測定雰囲気の湿度に依存した量の水蒸気を吸収する。絶縁層111は薄膜トランジスタ101のバックチャネルと接しているため、絶縁層111が吸収した水蒸気は酸化物半導体層107のチャネル形成領域と接触し、電気的特性を変化させる。具体的には、水分が酸化物半導体層107中に接触、又は浸入すると、半導体層中のキャリアが増大する。薄膜トランジスタ101はnチャネル型のトランジスタであるため、半導体層中のキャリアの増大は薄膜トランジスタ101のしきい値電圧の低下として観測される。つまり、被測定雰囲気の湿度によって、薄膜トランジスタ101のしきい値電圧の値が既定されるため、そのしきい値電圧の値から、被測定雰囲気の湿度を知ることができる。
【0038】
また、検知素子となる薄膜トランジスタ101のバックチャネルを、吸水性を有する絶縁層111で覆うことにより、当該バックチャネルへの意図しない汚染などの影響を抑制することができるため、繰り返し使用における特性変動の少ない、信頼性の高い湿度センサを作製することができる。
【0039】
一方、検出回路を構成する薄膜トランジスタ201のバックチャネルと接する保護絶縁層213には、吸水性を有さない無機絶縁膜を用いる。したがって、絶縁層111が湿度を吸収したとしても、薄膜トランジスタ201のバックチャネルは保護絶縁層213によって保護されるため、これと接する酸化物半導体層207のチャネル形成領域の電気的特性は変化しない。したがって、保護絶縁層213を設けることにより、湿度に対して電気的特性変動のない、信頼性の高い薄膜トランジスタ201とすることができる。
【0040】
以上のような構成とすることにより、湿度の検知素子となる薄膜トランジスタ101と、検出回路を構成する薄膜トランジスタ201を同一基板上に形成することができる。
【0041】
以下、図2を用いて、同一基板上に薄膜トランジスタ101及び薄膜トランジスタ201を作製する工程を説明する。
【0042】
まず、絶縁表面を有する基板100上に、導電層を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層103及びゲート電極層203を形成する。
【0043】
なお、ゲート電極層103及びゲート電極層203を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0044】
基板100は絶縁表面を有すればよく、大きな制限はないが、後の工程で加熱処理を行う場合は、少なくともその温度に耐えうる耐熱性を有している必要がある。例えばバリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板等を用いることができる。また、ステンレスを含む金属基板又は半導体基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いても良い。プラスチックなどの可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、一般的に上記基板と比較して耐熱温度が低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐えうるのであれば用いることが可能である。なお、基板100の表面を、CMP法などの研磨により平坦化しておいてもよい。
【0045】
ゲート電極層103及びゲート電極層203を形成する導電層の材料としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料または、これらを主成分とする合金材料を用いて、単層でまたは積層して形成することができる。
【0046】
本実施の形態では、ゲート電極層103及びゲート電極層203を形成する導電層として、膜厚150nmのタングステン膜をスパッタリング法により形成する。
【0047】
なお、基板100とゲート電極層103及びゲート電極層203の間に、下地層となる絶縁膜を形成しても良い。下地層は基板100から不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化珪素膜、酸化珪素膜、窒化酸化珪素膜、又は酸化窒化珪素膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0048】
また、下地として機能する絶縁膜を、後に形成する酸化物半導体膜とは異なる材料を含む絶縁膜と、酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなる絶縁膜との積層構造とすることがより好ましい。例えば、酸化ガリウム膜と酸化シリコン膜の積層構造や、酸化ガリウム膜と窒化シリコン膜との積層構造などを適用することができる。
【0049】
続いて、ゲート電極層103及びゲート電極層203と、基板の露出した部分とを覆うように、ゲート絶縁層105を形成する。本実施の形態では、スパッタリング法を用いて膜厚30nmの酸化珪素膜を成膜する。
【0050】
本実施の形態ではゲート絶縁層105として単層の酸化珪素膜を用いたが、ゲート絶縁層はこれに限らず、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、酸化アルミニウム膜等の単層、または積層構造とすることができる。酸化物半導体層と接する層は酸化物絶縁層を用いることが好ましい。ゲート絶縁層の成膜方法としては、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いることができるが、層中に水素が多量に含まれないようにするためには、スパッタリング法で成膜することが好ましい。ゲート絶縁層の厚さは特に限定されないが、例えば10nm以上500nm以下とすることができる。
【0051】
この段階の断面概略図を図2(A)に示す。
【0052】
続いて、酸化物半導体層107及び酸化物半導体層207を形成する。
【0053】
酸化物半導体層107及び酸化物半導体層207に用いる材料としては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体、In−Ga−O系酸化物半導体や、In−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体などを用いることができる。また、上記酸化物半導体にInとGaとSn以外の元素、例えばSiOを含ませてもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、少なくともインジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物であり、その組成比は特に問わない。また、InとGaとZn以外の元素を含んでいてもよい。
【0054】
酸化物半導体膜は、非単結晶であり、且つ酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではない。酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではないため、電気特性が不安定な非晶質の形成が抑制される。また、酸化物半導体膜の少なくとも一部の領域は、結晶性を有し、非単結晶であって、ab面に垂直な方向から見て、三角形、六角形、正三角形、又は正六角形の原子配列を有し、且つ、c軸方向に金属原子が層状に配列した相、又はc軸方向に金属原子と酸素原子が層状に配列した相を有してもよい。
【0055】
また、酸化物半導体層107及び酸化物半導体層207は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される材料を用いた薄膜により形成することができる。ここで、Mは、Ga、Al、Mn及びCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えば、Mとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMnまたはGa及びCoなどを用いることができる。
【0056】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜2:1)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1〜1.5:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=15:2〜3:4)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0057】
また、酸化物半導体層107及び酸化物半導体層207に用いる酸化物半導体膜は、スパッタリング法で成膜することができる。また希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガスと酸素の混合雰囲気下において成膜することができる。その際のガスは、水素、水、水酸基または水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0058】
本実施の形態では、In−Ga−Zn−O系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により酸化物半導体層107及び酸化物半導体層207に用いる酸化物半導体膜を100nm成膜する。
【0059】
また、酸化物半導体膜の成膜前に、不活性ガス雰囲気(窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等)下において加熱処理(400℃以上であって基板の歪み点未満)を行い、ゲート絶縁層内に含まれる水素及び水などの不純物を除去してもよい。
【0060】
酸化物半導体膜を成膜後、第2のフォトリソグラフィ工程により、酸化物半導体層107及び酸化物半導体層207が形成される。なお、この段階の断面概略図を図2(B)に示す。
【0061】
なお、酸化物半導体層107及び酸化物半導体層207を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0062】
酸化物半導体層107及び酸化物半導体層207を形成した後、第1の加熱処理を行っても良い。この第1の加熱処理によって酸化物半導体層107及び酸化物半導体層207中の過剰な水(水酸基を含む)や水素などを除去することができる。第1の加熱処理の温度は350℃以上基板の歪み点未満、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とすることができる。
【0063】
第1の加熱処理の温度を350℃以上にすることにより、酸化物半導体層107及び酸化物半導体層207の脱水化または脱水素化が行え、膜中の水素濃度を低減することができる。また第1の加熱処理の温度を450℃以上とすることにより、膜中の水素濃度をさらに低減することができる。また第1の加熱処理の温度を550℃以上とすることにより、膜中の水素濃度をさらに低減することができる。
【0064】
第1の加熱処理を行う雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする不活性気体であって、水、水素などが含まれない気体を用いるのが望ましい。例えば、加熱処理装置に導入する気体の純度を6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上とすることができる。これにより、第1の加熱処理の間、酸化物半導体層107及び酸化物半導体層207は大気に触れることなく、水や水素の再混入が行われないようにすることができる。
【0065】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていても良い。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置などのRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。気体には、アルゴンなどの希ガスまたは窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0066】
本実施の形態では、第1の加熱処理として、GRTA装置を用い、窒素雰囲気下で650℃、6分の加熱処理を行った。
【0067】
次に、ソース電極層109a、ドレイン電極層109b、ソース電極層209a、及びドレイン電極層209b(以下、これらをまとめてSD電極層とも呼ぶ)を形成する。
【0068】
SD電極層に用いる材料としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wからから選ばれた元素、または上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金等を用いることができる。また、Al膜、Cu膜などの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi膜、Mo膜、W膜などの高融点金属膜を積層させた構成としても良い。また、Al膜に生ずるヒロックやウィスカーの発生を防止する元素(Si、Nd、Scなど)が添加されているAl材料を用いることで耐熱性を向上させることが可能となる。SD電極層は、導電性の金属酸化物を用いて形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In−SnO、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In−ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化珪素を含ませたものを用いることができる。
【0069】
本実施の形態では、SD電極に用いる導電層として、150nmのTi膜をスパッタリング法を用いて成膜した。
【0070】
続いて第3のフォトリソグラフィ工程により、ソース電極層109a、ドレイン電極層109b、ソース電極層209a、及びドレイン電極層209bが形成される。
【0071】
なお、ソース電極層109a、ドレイン電極層109b、ソース電極層209a、及びドレイン電極層209bを形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0072】
なお、導電層のエッチングの際に酸化物半導体層107及び酸化物半導体層207の露出する部分がエッチングされ、分断することのないようにエッチング条件を最適化することが望まれる。しかしながら、導電層のみをエッチングし、酸化物半導体層107及び酸化物半導体層207をまったくエッチングしないという条件を得ることは難しく、導電層のエッチングの際に酸化物半導体層107及び酸化物半導体層207は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層107及び酸化物半導体層207となることもある。
【0073】
この段階の断面概略図を図2(C)に示す。
【0074】
続いて、検出回路を構成する薄膜トランジスタのバックチャネルと接する保護絶縁層213を形成する。
【0075】
保護絶縁層213には、水分を透過しない膜を用いることができる。例えば窒化珪素膜などを用いることができる。スパッタリング法を用いて成膜することで、より緻密で水分を透過しにくい膜を得ることができる。
【0076】
また、保護絶縁層213は酸化物半導体層207と接するため、できるだけ水素が含まれないよう、成膜方法に水素を用いないことが重要である。保護絶縁層213に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体層207への浸入、又は水素による酸化物半導体層207中の酸素の引き抜きが生じ、酸化物半導体層207のバックチャネルが低抵抗化してしまい寄生チャネルが形成されるおそれがある。
【0077】
また、保護絶縁層213の酸化物半導体層207と接する膜は、酸化物絶縁膜で形成することが好ましい。水素濃度が低減された酸化物絶縁膜で形成することで、酸化物半導体層207の欠陥に、保護絶縁層213から酸素が供給されるため、トランジスタの電気特性が良好になる。従って保護絶縁層213は酸化物絶縁膜と窒化珪素膜との積層膜を用いることが好ましい。
【0078】
本実施の形態では、保護絶縁層213に用いる絶縁膜として、膜厚20nmの酸化珪素膜と膜厚20nmの窒化珪素膜をそれぞれスパッタリング法により成膜した積層膜とした。
【0079】
その後、第4のフォトリソグラフィ工程により、保護絶縁層213が形成される。この段階の断面概略図を図2(D)に示す。
【0080】
なお、保護絶縁層213を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0081】
保護絶縁層213を形成した後、第2の加熱処理を行っても良い。第2の加熱処理の温度、時間などの条件は、SD電極層に用いた導電性材料の耐熱性などを考慮して最適な温度に適宜設定すればよい。
【0082】
続いて、酸化物半導体層107と接し、吸水性を有する絶縁層111を形成する。
【0083】
吸水性を有する絶縁層111としては、被測定雰囲気の湿度による水分を吸収する膜を用いることができる。好ましくは吸水率が3%以上の膜を用いることができる。例えば、ポリイミドや、アクリル、シロキサン系樹脂などの有機樹脂膜を用いることができる。
【0084】
本実施の形態では、絶縁層111として、スピンコートによりポリイミドを塗布し、300℃の温度で焼成して熱重合させた、膜厚1μmのポリイミド膜を用いた。
【0085】
なお、絶縁層111の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ロールコート、カーテンコート、ナイフコート等を用いることができる。
【0086】
なお、本実施の形態では吸水性を有する絶縁層111が酸化物半導体層107と接する構成としたが、これらの間に空間があっても良い。
【0087】
以上の工程により、湿度センサの検知素子となる薄膜トランジスタ101と、検出回路を構成する薄膜トランジスタ201を同一基板上に形成することができる。この段階の断面概略図を図2(E)に示す。なお、図2(E)は図1(A)と同じ図となる。
【0088】
なお、図1(B)に示すような、吸水性を有する絶縁層111のない薄膜トランジスタ121及び薄膜トランジスタ221とした構成としても良い。この場合、検知素子となる薄膜トランジスタ121のバックチャネルは被測定雰囲気に曝露された構成となる。この場合、被測定雰囲気の湿度の変化をより敏感に検知することができるため、応答速度を早くすることができると共に、より検出感度を高めることができる。
【0089】
なお、本実施の形態ではトップコンタクト型の薄膜トランジスタを作製したが、図1(C)に示すような、ボトムコンタクト型の薄膜トランジスタとしてもよい。このような薄膜トランジスタ141及び薄膜トランジスタ241を作製するには、ゲート絶縁層105を形成した後、ソース電極層109a、及びドレイン電極層109b、並びにソース電極層209a、及びドレイン電極層209bを形成し、その後酸化物半導体層107、及び酸化物半導体層207を形成すればよい。このように酸化物半導体層をソース電極層、及びドレイン電極層を形成した後に形成することにより、ソース電極層、及びドレイン電極層のエッチング時の、酸化物半導体層の膜減りをなくすことができ、より信頼性の高い薄膜トランジスタとすることができる。
【0090】
なお、図示しないが、上記のようなボトムコンタクト型の薄膜トランジスタとした場合でも、吸水性を有する絶縁層111のない構成としてもよい。この場合においても、上述のように応答速度が高く、より検知感度の高い湿度センサを作製することができる。
【0091】
なお、本実施の形態ではガスセンサのひとつである湿度センサの構成について説明したが、本発明のガスセンサは水素、一酸化炭素、アルコール、塩素、フロン、アンモニア、オゾン、硫化水素等の反応性の高いガスを検知することもできる。
【0092】
上記のようなガスを検知する場合、検知素子となる薄膜トランジスタのバックチャネルを被測定雰囲気下に曝露した構成としてもよいし、吸水性を有する絶縁層111の代わりに当該ガスに対するガス透過性を有する膜を用い、バックチャネルと接する構成としてもよい。ガス透過性を有する膜としては、例えば多孔質の無機絶縁膜などを用いることができる。
【0093】
以上のように同一基板上にガスセンサの検知素子となる薄膜トランジスタと、検出回路を構成する薄膜トランジスタの2種類の薄膜トランジスタとを、単一工程で作製することにより、作製工程を煩雑にすることなく、また低コストでガスセンサを作製することができる。
【0094】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0095】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明のガスセンサのひとつである湿度センサの回路構成の一例について説明する。
【0096】
図3は、本実施の形態における湿度センサ回路の一構成例である。
【0097】
湿度センサ300は、トランジスタ301、トランジスタ311、トランジスタ312、及びトランジスタ313を有する。これらトランジスタは全てnチャネル型のトランジスタである。
【0098】
トランジスタ311は第1端子とゲート電極が電源線320に接続され、第2端子がトランジスタ312の第1端子及びゲート電極に接続されている。トランジスタ312は第1端子とゲート電極がトランジスタ313のゲート電極に接続され、第2端子が、グランド線322に接続されている。トランジスタ301は第1端子とゲート電極が電源線320に接続され、第2端子が出力端子350、及びトランジスタ313の第1端子に接続されている。トランジスタ313の第2端子は、グランド線322に接続されている。
【0099】
湿度センサ300において、トランジスタ312及びトランジスタ313のそれぞれの第2電極はグランド線322に接続されているとともに、互いのゲート電極は接続され、これら2つのトランジスタはカレントミラー回路を構成している。
【0100】
トランジスタ301は湿度センサの検知素子であり、実施の形態1に示した薄膜トランジスタ101と同じ構成のものを用いる。
【0101】
一方、トランジスタ311、トランジスタ312、及びトランジスタ313は実施の形態1に示した薄膜トランジスタ201と同じ構成のものを用いる。
【0102】
従ってこの湿度センサ300が被測定雰囲気下に置かれると、被測定雰囲気の湿度に対応して、トランジスタ301のしきい値電圧が下がる。一方、トランジスタ311、トランジスタ312、トランジスタ313のしきい値電圧は変化しない。
【0103】
なお、本実施の形態では、湿度センサ300を構成する全てのトランジスタのサイズは同じとする。
【0104】
次に回路動作について説明する。湿度センサ300の電源線320には、電源電圧Vinが印加される。トランジスタ312及びトランジスタ313はカレントミラー回路を構成しているため、電源電圧Vinが電源線320に与えられると、トランジスタ312とトランジスタ313には同じ値の電流が流れる。
【0105】
ここで、トランジスタ312を流れる電流の全てはトランジスタ311を流れる。またトランジスタ313を流れる電流の全てはトランジスタ301を流れる。このとき、トランジスタ311及びトランジスタ312を流れる電流値は、トランジスタ311とトランジスタ312の電気特性によって既定される。従って、トランジスタ301を流れる電流値は常に一定値をとる。
【0106】
さらに、トランジスタ311とトランジスタ312は等しいサイズのトランジスタであるため、トランジスタ312及びトランジスタ313のゲートに接続されているノード324は常にVin/2を満たす。つまり、トランジスタ313のゲートには常にVin/2の電圧が印加される。
【0107】
このとき、トランジスタ301に着目すると、トランジスタ301のゲートとソース(第2端子)との間にはトランジスタ311を流れる電流に応じて電圧Vgsが印加される。ここでVgsはトランジスタのゲートとソースの間の電圧である。
【0108】
ここで、被測定雰囲気の湿度に応じて、トランジスタ301のしきい値電圧がΔVだけ下がったとする。このとき、トランジスタ301を流れる電流は一定値となる必要があるため、この電流値を保つために、トランジスタ301のソース電位、つまり出力端子350の電圧がΔVだけ上昇する。
【0109】
またこのとき、トランジスタ313のソースとドレインの間の電圧はΔVだけ下がるが、ゲートには一定電圧Vin/2だけ印加されているため、トランジスタ313において、|Vgs−Vth|≦|Vds|の関係が常に成立し、飽和領域での動作が担保される(ここでVthはトランジスタのしきい値電圧、Vdsはトランジスタのソースとドレインの間の電圧である)。従って、出力端子350の電圧がΔVだけ上昇し、VdsがΔVだけ上昇したとしてもトランジスタ313に流れる電流値は変化しない。
【0110】
以上のように、検知素子となるトランジスタ301のしきい値電圧が、被測定雰囲気の湿度に応じて低電圧化した場合、出力端子350にはそのしきい値電圧の変動に対応した電圧が出力される。
【0111】
以上のような湿度センサを用いることにより、被測定雰囲気の湿度の変化を出力電圧の変化として検出することができる。
【0112】
なお、本実施の形態では検知素子となるトランジスタ301を実施の形態1で示した薄膜トランジスタ101と同じ構成としたが、これに限られず、薄膜トランジスタ121や、薄膜トランジスタ141などといった検知素子としての役割を果たすトランジスタを用いることができる。同様に、本実施の形態では検出回路を構成するトランジスタは実施の形態1で示した薄膜トランジスタ201と同じ構成としたが、薄膜トランジスタ221や薄膜トランジスタ241などといった、同様な効果を奏するトランジスタを用いることができる。
【0113】
なお、本実施の形態では湿度センサの回路構成として図3の回路を用いたが、これに限らず、nチャネル型のトランジスタのみの組み合わせで、検知素子としての役割を果たすトランジスタのしきい値電圧の変動を検出できる回路であれば、どのようなものを用いても良い。
【0114】
また、本実施の形態では、湿度センサ300を構成する全てのトランジスタのサイズが等しいとしたが、これらのサイズを適宜変えることもできる。例えば、トランジスタ301のトランジスタサイズを大きくすることにより被測定雰囲気との接触面積を大きくすることができ、検知感度を向上させることができる。
【0115】
なお、本実施の形態ではガスセンサのひとつである湿度センサの回路構成について説明したが、トランジスタ301を実施の形態1で例示した反応性の高いガスを検知可能な構成のトランジスタに置き換えることにより、当該ガスを検知するセンサとすることができる。
【0116】
以上のようなガスセンサを用いることにより、単一の作製工程で作製したnチャネル型の薄膜トランジスタのみで構成することができ、作製工程を煩雑にすることなく、低コストのガスセンサを実現できる。
【0117】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0118】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明のガスセンサのひとつである湿度センサを搭載したRFタグの、構成の一例について説明する。
【0119】
図4は、本発明のRFタグの一形態を示すブロック図である。図4において、RFタグ1000は、アンテナ回路1001、整流回路1003、復調回路1005、レギュレータ1007、変調回路1009、論理回路1011、湿度センサ300、及び変換回路1013を有している。
【0120】
次いで、RFタグ1000の動作の一例について説明する。質問器から電波が送られてくると、アンテナ回路1001において該電波が交流電圧に変換される。整流回路1003では、アンテナ回路1001からの交流電圧を整流し、電源用の電圧を生成する。整流回路1003において生成された電源用の電圧は、レギュレータ1007に与えられる。レギュレータ1007は、整流回路1003からの電源用の電圧を安定化させるか、またはその高さを調整した後、論理回路1011、湿度センサ300、変換回路1013、変調回路1009などの各種回路に供給する。
【0121】
復調回路1005は、アンテナ回路1001が受信した交流信号を復調して、後段の論理回路1011に出力する。論理回路1011は復調回路1005から入力された信号にしたがって演算処理を行い、別途信号を生成する。また論理回路1011は、復調回路1005から入力された信号を解析し、質問器から送られてきた命令の内容にしたがって、湿度センサ300及び変換回路1013に信号を送る。
【0122】
湿度センサ300は実施の形態2で示した回路を使用することができる。従って、論理回路1011から駆動電圧Vinが供給されると、被測定雰囲気の湿度に依存したアナログ信号が出力される。
【0123】
変換回路1013は湿度センサ300から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。変換回路1013によってデジタル信号に変換された出力信号は、論理回路1011に出力される。
【0124】
論理回路1011は変換回路1013から入力された信号を解析し、その結果を変調回路1009に出力する。論理回路1011から出力される信号は符号化され、変調回路1009に送られる。変調回路1009は該信号に従ってアンテナ回路1001が受信している電波を変調する。アンテナ回路1001において変調された電波は質問器で受け取られる。
【0125】
このようにRFタグ1000と質問器との通信は、キャリア(搬送波)として用いる電波を変調することで行われる。キャリアは125kHz、13.56MHz、950MHzなど規格により様々である。また変調の方式も規格により振幅変調、周波数変調、位相変調など様々な方式があるが、規格に即した変調方式であればどの変調方式を用いても良い。
【0126】
信号の伝送方式は、キャリアの波長によって電磁結合方式、電磁誘導方式、マイクロ波方式など様々な種類に分類することができる。
【0127】
本実施の形態では、湿度センサ300が上記実施の形態に示した構成を有しており、低コストで作製された湿度センサを用いて、RFタグ1000を配置した環境の湿度を、接続配線を引き回すことなく無線で測定できることを特徴としている。
【0128】
また、RFタグ1000を構成している回路の一部を、実施の形態1で示した薄膜トランジスタ201を用いて形成しても良い。薄膜トランジスタ201は酸化物半導体を半導体層とした薄膜トランジスタであるため、そのオフ電流が極めて小さいことを特徴としている。従って、RFタグ1000を構成している回路の一部に適用することにより、作製工程を増やすことなく回路の消費電流を抑えることができ、その結果RFタグ1000の消費電力を低減することができる。
【0129】
なお、本実施の形態ではアンテナ回路1001を有するRFタグ1000の構成について説明しているが、本発明の一態様にかかるRFタグは、必ずしもアンテナ回路をその構成要素に含む必要はない。また図4に示したRFタグに、発振回路または二次電池を設けても良い。
【0130】
なお、本実施の形態ではRFタグに搭載するセンサに湿度センサを用いる構成について説明したが、実施の形態1で示したような反応性の高いガスを検知するセンサを搭載することもできる。
【0131】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0132】
本実施例では、本発明の一形態のガスセンサのひとつである湿度センサの、検知素子となる薄膜トランジスタを作製し、その電気的特性を評価した結果を示す。
【0133】
ガラス基板上に下地膜として、プラズマCVD法により厚さ100nmの窒化珪素膜を形成し、連続して厚さ150nmの酸化窒化珪素膜を形成し、酸化窒化珪素膜上にゲート電極層としてスパッタリング法により厚さ100nmのタングステン膜を形成した。ここで、タングステン膜を選択的にエッチングすることにより、ゲート電極層を形成した。
【0134】
次に、ゲート電極層上にゲート絶縁膜としてプラズマCVD法により厚さ100nmの酸化窒化珪素膜を形成した。
【0135】
次に、ゲート絶縁膜上に、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体ターゲット(In:Ga:ZnO=1:1:1)を用いて、基板とターゲットの間との距離を80mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源5kW、アルゴン及び酸素(アルゴン:酸素=50sccm:50sccm)雰囲気下、200℃でスパッタリング法による成膜を行い、厚さ30nmの酸化物半導体膜を形成した。ここで、酸化物半導体膜を選択的にエッチングし、島状の酸化物半導体層を形成した。
【0136】
次に、大気雰囲気下、350℃で1時間、熱処理を行った。
【0137】
次に、酸化物半導体層上にソース電極層及びドレイン電極層としてチタン膜(厚さ100nm)、アルミニウム膜(厚さ400nm)、及びチタン膜(厚さ100nm)の積層を、スパッタリング法により100℃で形成した。ここで、ソース電極層及びドレイン電極層を選択的にエッチングし、トランジスタのチャネル長Lが20μm、チャネル幅Wが20μmとなるようにした。
【0138】
次に、吸水性を有する絶縁層として、ポリイミド膜を成膜した。ポリイミド膜はスピンコート法により厚さ1.5μmの感光性ポリイミド樹脂を形成し、感光性ポリイミド樹脂を選択的に露光、及び現像を行い、ゲート電極層、ソース電極層及びドレイン電極層上に開口部を形成し、感光性ポリイミド樹脂を硬化させるため、大気雰囲気下、350℃で1時間、熱処理を行った。
【0139】
以上の工程により、チャネル長Lの長さを20μm、チャネル幅Wの長さを20μmとするトランジスタをガラス基板上に作製した。
【0140】
次に本実施例のトランジスタについて、湿度環境を変化させ、電気特性を測定した結果を説明する。
【0141】
まず、作製したトランジスタの初期特性を測定するため、常温常湿下において、ソース−ドレイン間電圧(以下、ドレイン電圧)を1V、10Vとし、ソース−ゲート間電圧(以下、ゲート電圧という)を−20V〜+20Vまで変化させたときの、ソース−ドレイン間電流(以下、ドレイン電流という)の変化特性、すなわちID−VG特性を測定した。
【0142】
次に、恒温槽を用いて温度85℃、湿度85%の環境で、上記トランジスタが形成された基板を60時間保存した。
【0143】
恒温槽から基板を取り出した後、基板を常温まで冷却し、常温常湿下において初期特性と同様の条件でID−VG特性を測定した。
【0144】
その後、基板を乾燥させるため、ホットプレートを用いて150℃、1時間のベーク処理を行った。
【0145】
その後、ホットプレートから取り出し、基板を常温まで冷却し、常温常湿下において初期特性と同様の条件でID−VG特性を測定した。
【0146】
図5に、測定したID−VG特性を示す。図5において、横軸はゲート電圧(VG)であり、縦軸はゲート電圧に対するドレイン電流(ID)を対数目盛で示している。
【0147】
図5の実線501は、トランジスタのID−VG特性の初期特性であり、一点鎖線502は温度85℃、湿度85%で保存した後のID−VG特性である。また点線503はその後乾燥させたときのID−VG特性である。
【0148】
なお、これらID−VG特性の測定において、本実施例のトランジスタはオフ領域(nチャネル型のトランジスタの場合は、多くはVgが0V近傍からマイナスの領域)で、Idが測定器の検出下限値以下となってしまった。このため、図5では、Idが測定器の検出下限値以下となった部分については表記していない。
【0149】
図5から、湿度85%の環境下で保存した特性である502は、初期特性である501に比べてしきい値電圧がマイナス方向に2.00V変化している。さらにその後乾燥させた後の特性である503は、502に比べてプラス方向に1.72Vプラス方向に変化しており、初期特性に近い値となっている。
【0150】
以上のことから、本実施例のトランジスタは湿度に対しそのしきい値電圧がマイナスシフトすること、またこの電圧変化が可逆的な変化であることが確認でき、湿度センサの検知素子として用いることができることが確認できた。
【実施例2】
【0151】
本実施例では、実施の形態2で示した回路を用いて、入出力特性について計算した結果について示す。
【0152】
入出力特性は、図3に示す構成の回路について計算を行った。
【0153】
本実施例では、図3に示すセンサ回路を構成するトランジスタ301、トランジスタ311、トランジスタ312及びトランジスタ313のチャネル長L、及びチャネル幅Wなどのサイズは全て等しいとして計算を行った。また計算に際し、これら全てのトランジスタのサブスレッショルド係数(S値)を100mV/decadeとした。さらに、本実施例ではトランジスタ311、トランジスタ312、及びトランジスタ313のしきい値電圧(以下Vth)を1.6Vとして計算を行った。また、検知素子となるトランジスタ301のVthを1.6Vから低電圧側に変化させた。
【0154】
入出力特性は、電圧電源線320の電圧を0V〜10Vまで変化させたときの、出力端子350に出力される電圧を計算した。またその際、トランジスタ301のVthを、1.6V〜−0.4Vまで変化させた。
【0155】
図6(A)に計算結果を示す。図6(A)の横軸は電源線の電圧Vinであり、縦軸はVinに対する出力端子350の電圧Voutを示している。
【0156】
図6(A)において、601〜606は、それぞれトランジスタ301のVthを1.6V〜−0.4Vまで−0.4Vごとに変化させた際の電源電圧Vinに対する出力電圧Voutである。トランジスタ301のVthが低電圧化するに従って、Voutは上昇する。
【0157】
図6(B)は、図6(A)におけるVin=5VのときのVoutを、トランジスタ301のVthに対してプロットしたグラフである。横軸はトランジスタ301のVthであり、縦軸はトランジスタ301のVthに対する出力電圧Voutである。
【0158】
図6(B)から、Vinを5Vとしたとき、出力電圧VoutはVthに対してほぼ線形に推移することが確認できた。
【0159】
以上のように本実施例のセンサ回路は、検知素子として機能するトランジスタのしきい値電圧の変化を出力電圧の変化として検出することができることが確認でき、実施例1に示したようなトランジスタと組み合わせることにより、ガスセンサとして機能することが確認できた。
【符号の説明】
【0160】
100 基板
101 薄膜トランジスタ
103 ゲート電極層
105 ゲート絶縁層
107 酸化物半導体層
109a ソース電極層
109b ドレイン電極層
111 絶縁層
121 薄膜トランジスタ
141 薄膜トランジスタ
201 薄膜トランジスタ
203 ゲート電極層
207 酸化物半導体層
209a ソース電極層
209b ドレイン電極層
213 保護絶縁層
221 薄膜トランジスタ
241 薄膜トランジスタ
300 湿度センサ
301 トランジスタ
311 トランジスタ
312 トランジスタ
313 トランジスタ
320 電源線
322 グランド線
324 ノード
350 出力端子
501 ID−VG特性
502 ID−VG特性
503 ID−VG特性
601 出力電圧
602 出力電圧
603 出力電圧
604 出力電圧
605 出力電圧
606 出力電圧
1000 RFタグ
1001 アンテナ回路
1003 整流回路
1005 復調回路
1007 レギュレータ
1009 変調回路
1011 論理回路
1013 変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトランジスタを含む検知部と、
第2のトランジスタを含む回路部と、を同一の絶縁表面上に有し、
前記第1のトランジスタは前記絶縁表面上に第1のゲート電極層と、
前記第1のゲート電極層上にゲート絶縁層と、
前記第1のゲート電極層と重なり、一方の面を前記ゲート絶縁層に接し、他方の面を雰囲気と接する第1の酸化物半導体層と、
前記第1の酸化物半導体層と接し、前記第1のゲート電極層と重なる間隙を備える第1のソース電極層、及び第1のドレイン電極層と、を有し、
前記第2のトランジスタは前記絶縁表面上に第2のゲート電極層と、
前記第2のゲート電極層上に前記ゲート絶縁層と、
前記第2のゲート電極層と重なり、一方の面を前記ゲート絶縁層に接し、他方の面を保護絶縁層に接する第2の酸化物半導体層と、
前記第2の酸化物半導体層と接し、前記第2のゲート電極層と重なる間隙を備える第2のソース電極層、及び第2のドレイン電極層と、を有する、ガスセンサ。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の酸化物半導体層と前記雰囲気との間に、前記雰囲気と接し、ガス透過性を有する絶縁層を有する、ガスセンサ。
【請求項3】
絶縁表面上に第1のゲート電極層及び第2のゲート電極層を形成し、
前記第1のゲート電極層と前記第2のゲート電極層上にゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層上に、
前記第1のゲート電極層と重なる第1の酸化物半導体層と、
前記第2のゲート電極層と重なる第2の酸化物半導体層と、
前記第1の酸化物半導体層と接し、前記第1のゲート電極層と重なる間隙を備える第1のソース電極層及び第1のドレイン電極層と、
前記第2の酸化物半導体層と接し、前記第2のゲート電極層と重なる間隙を備える第2のソース電極層及び第2のドレイン電極層と、を形成し、
前記第2の酸化物半導体層の露出した部分と接する保護絶縁層を形成する、ガスセンサの作製方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記保護絶縁層を形成した後に、
前記第1の酸化物半導体層上に、前記雰囲気と接し、ガス透過性を有する絶縁層を形成する、ガスセンサの作製方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−18161(P2012−18161A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129064(P2011−129064)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】