説明

シフトチェック機構及びシフト機構

【課題】シフトチェック機構において、ボールとホルダ間に発生する摩擦力を低減する。
【解決手段】シフトチェック機構(10)は、スプリング(12)と、前記スプリングにより前記複数のディテント溝の一つに対して押しつけられるボール(14)と、前記ボールと前記スプリングとを収容する筒状のホルダ(16)と、前記ホルダ内で前記ホルダに対して摺動可能に収容され、前記スプリングと前記ボールの間に介挿されるスプリングシート(13)と、を備え、前記スプリングシートは、前記ボールに接して前記ボールを位置決めする凹部(22)を備え、前記スプリングシートは、前記スプリングシートの内部を通り抜ける通路(28)を有し、前記通路は、前記スプリングシートの前記ホルダに対向する側面(30)において開口することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトチェック機構及びシフト機構に関する。
【背景技術】
【0002】
手動変速機のシフト機構において、シフトチェック機構が使用される。シフトチェック機構は、シフト位置の保持機能を有し、操作者に節度感を与える。従来のシフトチェック機構として、スプリングと、スプリングによりディテント溝に押しつけられるボールと、ボールとスプリングとを収容する筒状のホルダ(筒部)とを有するものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭61−13808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシフトチェック機構において、筒状のホルダとボールとが直接的に接触して、ボールの転動中にボールとホルダ間に発生する摩擦力が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて為されたものであり、ボールとホルダ間に発生する摩擦力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
シフトレバーと、前記シフトレバーの操作により移動する複数のディテント溝とを有するシフト機構に用いられるシフトチェック機構は、スプリングと、前記スプリングにより前記複数のディテント溝の一つに対して押しつけられるボールと、前記ボールと前記スプリングとを収容する筒状のホルダと、前記ホルダ内で前記ホルダに対して摺動可能に収容され、前記スプリングと前記ボールの間に介挿されるスプリングシートと、を備え、前記スプリングシートは、前記ボールに接して前記ボールを位置決めする凹部を備え、前記スプリングシートは、前記スプリングシートの内部を通り抜ける通路を有し、前記通路は、前記スプリングシートの前記ホルダに対向する側面において開口することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
スプリングシートが、ボールに接してボールを位置決めする凹部を有するので、ボールがホルダの内周面に接触しなくなる。このため、ホルダがボールを直接的に支持する構成に比較して、ボールとホルダ間に発生する摩擦力が減少する。また、上記のスプリングシートの通路を通して油や空気等の流体が流出し、スプリングシートとボールがホルダ内で移動することが妨げられない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係るシフト機構の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るシフトチェック機構の断面側面図であり、ボールが最下位置にある状態を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るシフトチェック機構の断面側面図であり、ボールが最上位置にある状態を示す図である。
【図4】シフト操作によりボールがホルダ内で軸方向に移動する様子を示す図である。
【図5】(a)スプリングシートの斜視図である。(b)スプリングシートの端面図である。(c)スプリングシートの軸方向に沿った断面側面図である。
【図6】(a)貫通孔がない場合において、凹部の軸を通る平面内での凹部の表面断面形状を関数として示すグラフである。(b)貫通孔がある場合において、凹部の軸を通る平面内での凹部の表面断面形状を関数として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係るシフト機構の概略構成図である。シフト機構は、手動変速機のシフト位置の切換えに用いられるものとして、本実施形態を説明する。
【0010】
図1を参照すると、手動変速機のシフト機構は、シフトレバー1、ソケット3、ストライキングアーム6、ストライキングロッド8、シフトチェック機構10、複数のディテント溝20等を具備する。
【0011】
シフトレバー1には球面部2が形成されている。球面部2は、ソケット3により回転可能に支持されている。シフトレバー1の下端には、球状の接続部4が設けられている。接続部4は、ソケット5に回転自在に嵌め込まれ、ソケット5とともにストライキングアーム6の一端の接続孔7に上下に摺動可能に接続されている。ストライキングアーム6の他端は、ストライキングロッド8に接続されている。ストライキングロッド8には、複数のディテント溝20(止め溝)を有する溝部材9が取り付けられている。シフトレバー1の操作により、接続部4がストライキングアーム6を介してストライキングロッド8を押すことにより、ストライキングロッド8、溝部材9(即ち、複数のディテント溝20)は、直線的に移動する。シフトチェック機構10は、変速機ケース等に取り付けられ固定されている。
【0012】
なお、複数のディテント溝がシフトレバーの操作によりシフトチェック機構に対して移動する構成であれば、シフト機構は図1の構成に限られない。例えば、シフトレバーの操作により回転する回転軸に複数のディテント溝を設けて、複数のディテント溝がシフトレバーの操作により回転移動する構成としてもよい。
【0013】
図2と図3は、シフト機構に用いられるシフトチェック機構10を示す。図2は、シフトレバー1が操作されていないシフト位置の保持状態において、ディテント溝20内に球状のボール14が位置し、ストライキングロッド8の動きを止める様子を示す。図3は、シフトレバー1が操作されて、シフト位置が変更する途中において、隣接するディテント溝20間の頂部にボール14が位置する様子を示す。シフト位置の変更中に、ボール14は、ディテント溝内で転動して頂部を越えて、隣接するディテント溝内に移動する。ボール14が、ディテント溝の頂部を越えて隣接するディテント溝に移動する様子を図4(a)と(b)に示す。
【0014】
図2と図3を参照すると、シフトチェック機構10は、スプリング12と、スプリングシート13(ばね座)と、球状のボール14と、筒状のホルダ(筒部)16と、蓋部18を有する。筒状のホルダ(筒部)16は、スプリング12、スプリングシート13、ボール14を収容する。スプリング12は、コイルばねである。スプリングシート13は、スプリング12の力を受けるばね座として機能する。ボール14は、スプリング12から溝部材9に向う方向のばね力を受ける。ボール14は、スプリング12により、スプリングシート13を介して、複数のディテント溝20の一つに対して押しつけられる。ホルダ16は、軸17に関して対称で、軸方向に延びる形状を有する。筒状のホルダ16がボール14と接触しないよう、ホルダ16の最小内径は、ボール14の直径よりも大きい。本実施形態では、ホルダ16、スプリングシート13は、円筒状の形状を有する。蓋部18は、ボルトから構成されホルダ16にねじ込まれ、底部がスプリング12に接してスプリング12を支持する。従って、スプリング12は、スプリングシート13と蓋部18に接して、これらの間で保持される。
【0015】
スプリング12とボール14の間に介挿されるスプリングシート13は、ホルダ16内で、ホルダ16に対して摺動可能に収容される。又、スプリングシート13は、ボール14に接してボール14を位置決めする凹部22を有する。ホルダ16がボールを直接的に支持する構成に比較すると、凹部22によるボール14の位置決めにより、ボール14が転動しかつホルダ軸方向に上下動する間にボール14とホルダ16間に発生する摩擦力が減少する。
【0016】
図5(a)−(c)に、スプリングシート13の詳細図を示す。本実施形態では、スプリングシート13の凹部22は、軸対称な形状を有する。凹部22の底部27からスプリングシート13の外側に向かって、凹部22の軸25に垂直な断面が単調に拡大する(断面積が単調に増加する)。このような形状であれば、凹部22は、安定的にボール14を保持でき、さらに、機械加工等により簡便に形成できる。なお、凹部22の軸25は、ホルダ16の軸17にほぼ一致する。
【0017】
凹部22は、凹部22の表面26とボール14の表面が線接触して、凹部22の表面26とボール14の表面との接触線が円環状になるような形状を有する。接触線が円環状であるので、凹部22は、安定した形で、ボール14の位置決めをすることができる。接触線が円環状となるよう、凹部22の軸25に垂直な断面が円状となる。図2、図3、図5(a)−(c)においては、凹部22が、この形状として、円錐状の形状を有する場合を示す。なお、「接触線が円環状である」とは、凹部の表面26と接触するボール14の表面の部位が円環状に分布すること、或いは、ボール14の表面と接触する凹部の表面の部位が円環状に分布することを含む。
【0018】
凹部22の表面とボール14の表面の間には、空間24(第一の空間)が形成されている。空間24は、凹部22の表面とボール14の表面により画定され、筒状のホルダ16の軸方向に位置する。また、スプリングシート13、ホルダ16、及び、蓋部18に囲まれ、スプリング12が収容されるばね室29が形成されている。空間24とばね室29内には、通常、侵入した油(オイル)や空気等の流体が存在する。
【0019】
空間24とばね室29内の流体が、スプリングシート13とボール14がホルダ16内で軸方向に移動する妨げとならないように、流体が空間24とばね室29から流出するための通路(複数可)がスプリングシート13内に設けられる。スプリングシート13は、この通路として、スプリングシート13の内部を通り抜ける通路28を有する。この通路がない場合、空間24とばね室29内の流体を圧縮しながら、スプリングシート13とボール14がホルダ16内で軸方向に沿って移動することになるため、シフトフィーリングが悪くなる。
【0020】
なお、流体がばね室29から流出するための通路を、スプリングシート13内に設ける代わりに、ホルダを貫通してばね室29とホルダ外部をつなぐ通路を設けてもよい。
【0021】
スプリングシート13の通路28は、具体的には、筒状のホルダ16の軸方向に延びてスプリングシート13を貫通する第一貫通孔40と、この軸方向に対し略垂直に延びてスプリングシート13を貫通する第二貫通孔42とを有する。第一貫通孔40と第二貫通孔42は、交差して連通する。通路28を貫通孔で形成することにより、通路28の形成が機械加工等により容易にできる。
【0022】
通路28は、スプリングシート13のホルダ16に対向する側面30と、スプリングシート13の凹部22の底部27とにおいて開口する。これにより、図3のようにボール14とスプリングシート13がホルダ内に押し込まれる場合に、空間24から油や空気等の流体が排出される。また、通路28は、スプリングシート13のホルダ16に対向する側面30と、スプリングシート13のスプリング側の端面44とにおいて開口する。これにより、図3のようにボール14とスプリングシート13がホルダ内に押し込まれる場合に、ばね室29から油や空気等の流体が排出される。
【0023】
凹部22を画定する表面26とボール14との円環状の接触線の半径Cは、凹部22の底部における通路28の開口23(第一貫通孔40の開口)の半径Rより大きい。これにより、凹部22は、開口23の縁以外の場所でボール14と接触するので、ボール14を安定的に支持して位置決めできる。
【0024】
また、ホルダ16は、ホルダ16の筒状の側壁31を貫通し、スプリングシート13の通路28に連通する穴部32を備える。穴部32の内径は、ボール14がシフト操作中にホルダ16内で軸17に沿って上下運動しても、穴部32と通路28(第二貫通孔42)の連通状態が維持できるような大きさに設定されている。また、通路28は、スプリングシート13のホルダ16に対向する側面30において、内径を拡大するための拡大部33を有する。これにより、スプリングシート13の通路28とホルダ16の穴部32が連通し易くなる。
【0025】
また、シフトチェック機構10は、スプリングシート13と、ボール14と、ホルダ16とにより画定される空間34(第二の空間)を有する。空間34内にも、通常、侵入した油(オイル)や空気等の流体が存在する。空間34内の流体が、スプリングシート13とボール14がホルダ16内で軸方向へ移動する妨げとならないように、流体が空間34から流出するための通路がホルダ16内に設けられる。このため、ホルダ16は、通路としてホルダ16の内周面36に溝部38を備える。溝部38は穴部32と空間34に連通し、流体が空間34からホルダ16の外部へ流れるようになる。
【0026】
次に、図6(a)と(b)を参照して、凹部22の取り得る形状について説明する。図2、図3及び図5(a)−(c)において、スプリングシート13の凹部22の表面形状は、円錐状の形状が示されているが、他の形状も取ることができる。
【0027】
図6(a)は、通路28(第一貫通孔40)がない場合において、凹部22の軸25を通る平面内での凹部22の断面を示す。凹部22の表面の断面形状(凹部の輪郭)は、x−y平面内の関数y=f(x)として表す。ここで、y軸は、凹部22の軸25に対応し、x軸はy軸に垂直な軸を示す。y軸座標の増加する方向を凹部22の底部からスプリングシート13の外側に向う方向とする。y=f(x)が原点を通るよう、即ちf(0)=0になるようy軸座標を定める。ここでは、凹部22がボール14を安定的に保持でき、凹部22が簡易に形成できる形状を有するよう、断面形状の関数y=f(x)はx>0で単調増加し、x<0で単調減少する関数で、y軸に関して対称な関数としている。即ち、凹部22は、その底部27からスプリングシート13の外側に向かって、軸25(y軸)に垂直な円形の断面が単調に拡大する形状を有する。
【0028】
ここで、ボール14がy軸のマイナス方向に向かって外部から凹部22へ入ってくる状況を考えれば、凹部の表面断面形状の関数y=f(x)が、図6(a)の斜線の領域を通過する(通り抜ける)場合に、ボール14が凹部22の底部(x=y=0)に達することがないことがないことがわかる。即ち、関数y=f(x)が、A1−A3のように図6(a)の斜線の領域を通過する場合に、ボール14が、凹部22と円環状の接触線を有して接触できることがわかる。なお、斜線の領域は、x=r、x=-r、y=r-(r2-x2)1/2で囲まれる領域であり、-r<x<rかつy>r-(r2-x2)1/2を満たす領域である。ここで、rは、ボール14の半径である。
【0029】
図6(a)において、斜線の領域を通過する2次関数A1、鐘状形状の関数A2、V字型の折線関数A3の断面形状などでは、ボール14と凹部22が、円環状の接触線上で接触できる。なお、2次関数A1の断面形状は、凹部22の表面形状が放物面の場合(凹部22が放物面体状の場合)に、A2の断面形状は、凹部22の表面形状が鐘状面の場合(凹部22が釣鐘状の場合)に、A3の断面形状は、凹部22の表面形状が円錐面の場合(凹部22が円錐状の場合)に相当する。なお、斜線の領域を通過しない関数A4のような断面形状では、凹部22の底部で、ボール14と凹部22が点触線してしまう。
【0030】
図6(b)は、通路28(第一貫通孔40)がある場合において、凹部22の軸25を通る平面内での凹部22の断面を示す。凹部22の表面の断面形状(凹部の輪郭)は、x−y平面内の関数y=f(x)として表す。図6(a)と同様にx軸、y軸を定める。ただし、y=f(x)が点(R,0)を通るよう、即ちf(R)=0になるようy軸座標を定める。なお、Rは、通路28(第一貫通孔40)の開口半径で、y=f(x)は、|x|≧Rで定義される。ここでは、凹部22がボール14を安定的に保持でき、凹部22が簡易に形成できる形状を有するよう、y=f(x)はx>Rで単調増加し、x<−Rで単調減少する関数で、y軸に関して対称な関数としている。即ち、凹部22は、その底部27からスプリングシート13の外側に向かって、軸25(y軸)に垂直な円形の断面が単調に拡大する形状を有する。
【0031】
ボール14を安定的に保持するため、又、通路28(第一貫通孔40)の開口23の縁における機械加工等によるばりを避けるため、好適には、ボール14と凹部22が、通路28の開口の縁以外の位置で、円環状の接触線を有して接触する。即ち、凹部22とボール14との円環状の接触線の半径Cが、凹部の底部における通路の開口の半径Rより大きくなるようにする。通路28の開口の縁(点(R,0))以外の場所でボール14と凹部22が接触するため、凹部の表面断面形状の関数y=f(x)は、図6(b)の斜線の領域を通過する(通り抜ける)ものとなっている。この場合、ボール14がy軸のマイナス方向に向かって外部から凹部22へ入ってくる状況を考えれば、ボール14が、通路28の開口の縁に達する前に、円環状の接触線を有して凹部22の表面に接触することがわかる。なお、斜線の領域は、x=r、x=-r、y=(r2-R2)1/2-(r2-x2)1/2で囲まれる領域で、-r<x<rかつy>(r2-R2)1/2-(r2-x2)1/2を満たす領域である。
【0032】
なお、通路28の開口半径Rがボール14の半径rより小さい場合(R<rの場合)には、少なくとも通路28の開口の縁(点(R,0))で、ボール14が、凹部22と円環状の接触線を有して接触できる(B4参照)。即ち、R<rの場合には、いずれかの位置でボール14が、凹部22と円環状の接触線を有して接触できる。これは、通路28の開口23により、凹部22の底が抜けているためである。
【0033】
図6(b)において、B1、B2、B3の断面形状では、凹部の表面断面形状の関数y=f(x)が、通路28の開口の縁以外の場所で、図6(b)の斜線の領域を通過する。このため、B1、B2、B3の断面形状では、通路28の開口の縁以外の場所で、ボール14と凹部22が、円環状の接触線上で接触する。通路28の開口の縁における機械加工等によるばりに接触しないよう十分開口23から離れて、ボール14が凹部22と接触することが好ましい。なお、B4のような断面形状では、ボール14と凹部22が、開口の縁(x=R)でのみ線接触する。
【0034】
ここで、2次関数B1の断面形状は、凹部22の表面形状が放物面の場合(凹部22が放物面体状の場合)に、B2の断面形状は、凹部22の表面形状が鐘状面の場合(凹部22が釣鐘状の場合)に、B3の断面形状は、凹部22の表面形状が円錐面の場合(凹部22が円錐状の場合)に相当する。
【0035】
<作用効果>
本実施形態では、ボールが、スプリングシートの凹部により安定的に位置決めされ保持できる。凹部とボールとの接触線が円環状であるように凹部の表面とボール表面が線接触する構成としたので、凹部によりボールが安定的に保持される。凹部は、軸対称な形状を有し、スプリングシートの外側に向かって、軸に垂直な凹部の円形の断面が拡大する形状を有するので、ボールが安定的に保持され、凹部が機械加工等により簡便に作製できるものとなる。凹部の表面とボールの表面により画定され、ホルダの軸方向に位置する第一の空間が形成されているため、凹部の底部にボールが接触せず、ボールが安定的に保持される。
【0036】
スプリングシートは、スプリングシートの内部を通り抜けて凹部の底部において開口する通路(貫通孔)を有するので、凹部の表面とボールの表面により画定される第一の空間内の油や空気等を通路へ流通させて、ボールのホルダ内での移動をスムーズにできる。凹部とボールとの円環状の接触線の半径が、凹部の底部における通路の開口半径より大きいため、ボールが、開口の縁以外の位置で凹部に接して安定的に保持される。ホルダは、ホルダの筒状の側壁を貫通し、スプリングシートの通路に連通する穴部を備えるので、第一の空間内の油や空気等をホルダ外部に抜くことができる。ホルダは、ホルダの内周面に溝部を備え、溝部は、ボールとスプリングシートとホルダとにより画定される第二の空間と前記穴部に連通するため、この第二の空間内の油や空気等をホルダ外部に抜くことができ、ボールのホルダ内での移動をスムーズにできる。スプリングシートは、スプリングシートの内部を通り抜けて、スプリング側のスプリングシート端面において開口する通路(貫通孔)を有するので、ばね室内の油や空気等を通路へ流通させて、ボールのホルダ内での移動をスムーズにできる。
【0037】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0038】
1 シフトレバー
10 シフトチェック機構
12 スプリング
13 スプリングシート
14 ボール
16 ホルダ
20 ディテント溝
22 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトレバーと、前記シフトレバーの操作により移動する複数のディテント溝とを有するシフト機構に用いられるシフトチェック機構であって、
スプリングと、
前記スプリングにより前記複数のディテント溝の一つに対して押しつけられるボールと、
前記ボールと前記スプリングとを収容する筒状のホルダと、
前記ホルダ内で前記ホルダに対して摺動可能に収容され、前記スプリングと前記ボールの間に介挿されるスプリングシートと、を備え、
前記スプリングシートは、前記ボールに接して前記ボールを位置決めする凹部を備え、
前記スプリングシートは、前記スプリングシートの内部を通り抜ける通路を有し、
前記通路は、前記スプリングシートの前記ホルダに対向する側面において開口することを特徴とするシフトチェック機構。
【請求項2】
前記凹部の表面と前記ボールとの接触線が円環状になるように、前記凹部の表面と前記ボールが線接触することを特徴とする請求項1に記載のシフトチェック機構。
【請求項3】
前記凹部は、軸対称な形状を有し、前記スプリングシートの外側に向かって、軸に垂直な前記凹部の円形の断面が拡大する形状を有することを特徴とする請求項2に記載のシフトチェック機構。
【請求項4】
y軸を前記凹部の軸とし、x軸をy軸に垂直な軸とし、y軸座標の増加する方向を前記凹部の底部から前記スプリングシートの外側に向う方向とし、rを前記ボールの半径とする場合に、前記y軸を通る平面内での前記凹部の表面断面形状を表す関数y=f(x)(ただしf(0)=0)が、-r<x<rかつy>r-(r2-x2)1/2を満たす領域を通過することを特徴とする請求項3に記載のシフトチェック機構。
【請求項5】
前記凹部の表面と前記ボールの表面により画定され、前記ホルダの軸方向に位置する第一の空間が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のシフトチェック機構。
【請求項6】
前記通路は、前記スプリングシートの前記凹部の底部において開口することを特徴とする請求項3に記載のシフトチェック機構。
【請求項7】
前記円環状の接触線の半径が、前記凹部の底部における前記通路の開口の半径より大きいことを特徴とする請求項6に記載のシフトチェック機構。
【請求項8】
前記ホルダは、前記ホルダの筒状の側壁を貫通し、前記スプリングシートの前記通路に連通する穴部を備えることを特徴とする請求項6又は7に記載のシフトチェック機構。
【請求項9】
前記シフトチェック機構は、前記ボールと、前記スプリングシートと、前記ホルダとにより画定される第二の空間を有し、
前記ホルダは、前記ホルダの内周面に溝部を備え、前記溝部は、前記穴部と前記第二の空間に連通することを特徴とする請求項8に記載のシフトチェック機構。
【請求項10】
y軸を前記凹部の軸とし、x軸をy軸に垂直な軸とし、y軸座標の増加する方向を前記凹部の底部から前記スプリングシートの外側に向う方向とし、rを前記ボールの半径とし、Rを前記通路の開口の半径とする場合に、前記y軸を通る平面内での前記凹部の表面断面形状を表す関数y=f(x)(ただし、|x|≧R 、f(R)=0 )が、-r<x<rかつy>(r2-R2)1/2-(r2-x2)1/2を満たす領域を通過することを特徴とする請求項7に記載のシフトチェック機構。
【請求項11】
前記通路は、前記スプリングシートのスプリング側の端面において開口することを特徴とする請求項3に記載のシフトチェック機構。
【請求項12】
シフトレバーと、前記シフトレバーの操作により移動する複数のディテント溝と、シフトチェック機構とを有するシフト機構であって、
前記シフトチェック機構は、
スプリングと、
前記スプリングにより前記複数のディテント溝の一つに対して押しつけられるボールと、
前記ボールと前記スプリングとを収容する筒状のホルダと、
前記ホルダ内で前記ホルダに対して摺動可能に収容され、前記スプリングと前記ボールの間に介挿されるスプリングシートと、を備え、
前記スプリングシートは、前記ボールに接して前記ボールを位置決めする凹部を備え、
前記スプリングシートは、前記スプリングシートの内部を通り抜ける通路を有し、
前記通路は、前記スプリングシートの前記ホルダに対向する側面において開口することを特徴とするシフト機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−29207(P2013−29207A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−244094(P2012−244094)
【出願日】平成24年11月6日(2012.11.6)
【分割の表示】特願2008−257316(P2008−257316)の分割
【原出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】