説明

シフトレジスタ型記憶装置及びデータ記憶方法

【課題】信頼性が高いシフトレジスタ型記憶装置及びデータ記憶方法を提供する。
【解決手段】一態様によれば、一方向に沿って連なり、その特徴方向が前記一方向に延びる回転軸についてそれぞれ回転可能な複数の回転子を備えたシフトレジスタが提供される。前記複数の回転子には一軸異方性が付与され、前記複数の回転子は、隣り合う2つの前記回転子毎に複数の対に組分けされており、同一の前記対に属する2つの前記回転子には、前記特徴方向を反平行とするような第1の力が作用し、隣り合う前記対に属する隣り合う2つの前記回転子には、前記第1の力よりも弱く、前記特徴方向を反平行とするような第2の力が作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、シフトレジスタ型記憶装置及びデータ記憶方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでメモリの高集積化は、微細化によりメモリセルを縮小することにより進められてきた。従来の記憶装置においては、各メモリセルにおいて、データを記憶する記憶素子、この記憶素子を選択してデータの書き込み及び読み出しを行う書込読出手段、並びに記憶素子に対してデータを伝達する配線が作り込まれていた。このため、メモリセルの高集積化を進めるには、上記メモリセルの全ての要素を含め微細化を進める必要があり、高集積化に限界があった。一方、記憶素子のみを高密度に配置し、記憶素子列内においてデータを順送りし、別の場所に設けられた書込読出手段まで転送するシフトレジスタ型の記憶装置も提案されている。しかしながら、この場合、実用的には1本の記憶素子列に百桁以上のデータを記憶させる必要があるが、百桁以上のデータを正確に同期して移動させることは極めて困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6898132号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の目的は、信頼性が高いシフトレジスタ型記憶装置及びデータ記憶方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、シフトレジスタと、書込読出部と、回転力印加部と、を備えたシフトレジスタ型記憶装置が提供される。シフトレジスタは、一方向に沿って連なり、一軸異方性が付与され、その特徴方向が前記一方向に延びる回転軸についてそれぞれ回転可能な複数の回転子を有する。書込読出部は、前記シフトレジスタの一端部に位置する前記回転子の前記特徴方向を前記一軸異方性に適合する2つの方向のうちの1つに一致させることによって前記シフトレジスタにデータを書き込むと共に、前記特徴方向を検出することによって前記データを読み出す。回転力印加部は、前記シフトレジスタに対して、前記特徴方向を回転させるような回転力を印加する。そして、前記複数の回転子は、隣り合う2つの前記回転子毎に複数の対に組分けされており、同一の前記対に属する2つの前記回転子には、前記特徴方向を反平行とするような第1の力が作用し、隣り合う前記対に属する隣り合う2つの前記回転子には、前記第1の力よりも弱く、前記特徴方向を反平行とするような第2の力が作用する。
【0006】
本発明の他の一態様によれば、一方向に沿って連なり、その特徴方向が前記一方向に延びる回転軸についてそれぞれ回転可能な複数の回転子を含み、前記複数の回転子には一軸異方性が付与されており、前記複数の回転子は、隣り合う2つの前記回転子毎に複数の対に組分けされており、同一の前記対に属する2つの前記回転子には、前記特徴方向を反平行とするような第1の力が作用し、隣り合う前記対に属する隣り合う2つの前記回転子には、前記第1の力よりも弱く、前記特徴方向を反平行とするような第2の力が作用するシフトレジスタを用いたデータ記憶方法が提供される。このデータ記憶方法は、前記シフトレジスタの一端部に位置する前記回転子の前記特徴方向を、一回転方向に回転させて前記一軸異方性に適合する2つの方向のうちの1つに一致させることにより、前記一端部に位置する前記対にデータを書き込む工程と、前記シフトレジスタに対して、前記特徴方向を前記一回転方向に回転させるような回転力を印加することにより、データを前記一端部から遠ざかる方向に桁送りする工程と、前記シフトレジスタに対して、前記特徴方向を前記一回転方向の逆方向に回転させるような回転力を印加することにより、データを前記一端部に近づく方向に桁送りする工程と、前記一端に位置する前記回転子の前記特徴方向を検出することにより、前記一端部に位置する前記対に書き込まれたデータを読み出す工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係るシフトレジスタを例示する図である。
【図2】第1の実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置を例示する斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置の書込読出部を例示する断面図である。
【図4】(a)及び(b)は、第1の実施形態において1つの回転子対がとり得る状態を例示する図である。
【図5】(a)は、隣り合う回転子対に相互に同じデータが記憶された場合を例示する図であり、(b)は、隣り合う回転子対に相互に異なるデータが記憶された場合を例示する図である。
【図6】第1の実施形態におけるデータの桁送り方法を例示する図である。
【図7】(a)及び(b)は、横軸に時刻をとり、縦軸に配線を流れる電流をとって、回転力印加部の動作を例示するグラフ図であり、(c)はシフトレジスタに印加される磁場の方向を例示する図である。
【図8】第1の実施形態の第1の変形例に係るシフトレジスタ型記憶装置を例示する断面図である。
【図9】第1の実施形態の第2の変形例に係るシフトレジスタ型記憶装置を例示する断面図である。
【図10】第1の実施形態の第3の変形例に係るシフトレジスタ型記憶装置を例示する断面図である。
【図11】第2に実施形態に係るシフトレジスタを例示する図である。
【図12】第2の実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置を例示する斜視図である。
【図13】第3の実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置の書込読出部を例示する斜視図である。
【図14】第2の実施形態におけるデータの桁送り方法を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るシフトレジスタを例示する図である。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係るシフトレジスタ1においては、強磁性体層11、薄いルテニウム層12、強磁性体層13及び厚いルテニウム層14がこの順に繰り返し積層されている。強磁性体層11及び13は、例えば、強磁性体材料、例えば、ニッケル鉄合金(NiFe合金)からなり、その厚さは例えばそれぞれ4nmである。ルテニウム層12及び14はルテニウム(Ru)からなり、厚いルテニウム層14の厚さは薄いルテニウム層12の厚さよりも厚い。薄いルテニウム層12の厚さは例えば0.8nmであり、厚いルテニウム層14の厚さは2.1nmである。
【0010】
各層の積層方向から見て、シフトレジスタ1の形状は一軸に沿って伸びた形状であり、例えば、楕円、長円、菱形又は長方形等である。従って、シフトレジスタ1の形状は、例えば積層方向に延びる楕円柱形、長円柱形、菱形柱状又は長方柱形等である。以下、シフトレジスタ1を積層方向から見たときの長径方向を「長軸方向」といい、短径方向を「短軸方向」という。積層方向、長軸方向及び短軸方向は、相互に直交している。
【0011】
本実施形態においては、各強磁性体層11及び13を「回転子」とし、その磁化方向Vを「特徴方向」とする。すなわち、シフトレジスタ1においては、複数の回転子が各層の積層方向に沿って一列に連なっている。各強磁性体層11及び13の磁化方向(特徴方向)は、その面内、すなわち、積層方向に対して垂直な平面内において、任意の方向をとることができる。すなわち、各強磁性体層の磁化方向Vは、積層方向に延びる回転軸についてそれぞれ回転可能である。
【0012】
但し、各強磁性体層の磁化方向Vに対しては、いくつかの力が作用する。
先ず、一軸異方性に起因する力がある。「一軸異方性」とは、あるベクトルが回転軸周りのある特定の方向(向きでなない)を向いたときにエネルギーが最小となるような性質をいう。積層方向から見て、シフトレジスタ1は長径方向に沿って伸びた形状とされているため、強磁性体層11及び13の形状も長軸方向に伸びた形状である。これにより、強磁性体層11及び13の磁化方向Vには形状に起因した一軸異方性(形状磁気異方性)が付与され、長軸方向のいずれかに向きやすくなる。すなわち、長軸方向が磁化容易方向となる。
【0013】
また、強い反結合作用による力がある。薄いルテニウム層12の作用により、薄いルテニウム層12を挟んで隣り合う強磁性体層11及び13の間には反強磁性的結合状態が生じるため、強磁性体層11の磁化方向Vと強磁性体層13の磁化方向Vとは、相互に反対の方向を向こうとする。以下、この作用を、本明細書では便宜的に「強い反結合作用」という。これにより、薄いルテニウム層12を挟んで隣り合う強磁性体層11及び13の間には、磁化方向Vを反平行とするような力(第1の力)が作用する。以下、この力を「強い力」という。薄いルテニウム層12を挟んで隣り合う一対の強磁性体層11及び13は、強い反結合作用を介して結合(カップリング)して回転子対を構成する。これにより、シフトレジスタ1に属するそれぞれ複数の強磁性体層11及び13は、薄いルテニウム層12を挟んで隣り合う強磁性体層11及び13毎に複数の回転子対に組分けされる。
【0014】
更に、弱い反結合作用による力がある。厚いルテニウム層14の作用により、厚いルテニウム層14を挟んで隣り合う強磁性体層11及び13の間には反強磁性的結合状態が生じ、強磁性体層11の磁化方向Vと強磁性体層13の磁化方向Vとは、相互に反対の方向を向こうとする。以下、この作用を「弱い反結合作用」という。これにより、ルテニウム層14を挟んで隣り合う強磁性体層11及び13の間には、磁化方向を反平行とするような力(第2の力)が作用する。ルテニウム層14はルテニウム層12よりも厚いため、第2の力は第1の力よりも弱い。以下、この第2の力を「弱い力」という。厚いルテニウム層14を挟んで隣り合う一対の強磁性体層11及び13、すなわち、隣り合う回転子対に属する隣り合う2つの回転子は、弱い反結合作用を介して結合(カップリング)している。
【0015】
これらの一軸異方性、強い反結合作用及び弱い反結合作用は、シフトレジスタ1自体の内的な構成によって生じる作用であり、それ自体には時間依存性がない静的な作用である。但し、これらの作用によって個々の強磁性体層の磁化方向Vに作用する力、すなわち、一軸異方性に起因する力、強い力及び弱い力は、各強磁性体層の磁化方向V及び隣り合う強磁性体層の磁化方向V間の関係に応じて変化する。一軸異方性、強い反結合作用及び弱い反結合作用以外の作用が働かない場合は、各強磁性体層の磁化方向Vが長軸方向に沿っており、且つ、隣り合う強磁性体層の磁化方向Vが相互に逆方向である状態、すなわち、全ての強磁性体層11の磁化方向Vが相互に同一であり、全ての強磁性体層13の磁化方向Vが強磁性体層11の磁化方向Vに対して逆方向となるような状態が、エネルギーが最も低く最も安定した状態である。
【0016】
これらの内的な力に加えて、各強磁性体層の磁化方向には、シフトレジスタ1の外部から外的な力が印加される。外的な力には、磁場を回転させることによって生じる回転力、及び、データを書き込むために磁化方向を長軸方向のいずれか一方にセットする書き込みのための力がある。これらの力は、シフトレジスタ1の動作に伴って変化する動的な力である。これらについては後述する。
【0017】
次に、本実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置について説明する。
図2は、本実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置を例示する斜視図であり、
図3は、本実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置の書込読出部を例示する断面図である。
図2に示すように、本実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置21においては、下側から順に、書込読出部22、記憶部23、回転力印加部24が設けられている。
【0018】
記憶部23においては、上述のシフトレジスタ1が複数本設けられており、マトリクス状に配列されている。各シフトレジスタ1は上下方向に延びている。すなわち、シフトレジスタ1の積層方向はシフトレジスタ型記憶装置21の上下方向と一致している。また、シフトレジスタ1の長軸方向は相互に一致している。すなわち、各シフトレジスタ1に付与された一軸異方性の方向は相互に同一である。更に、シフトレジスタ1同士は相互に離隔している。各シフトレジスタ1の下端は、書込読出部22に接続されている。
【0019】
回転力印加部24には、相互に直交する方向に延びる配線25a及び25bが設けられている。配線25aはシフトレジスタ1の長軸方向に延びており、配線25bはシフトレジスタ1の短軸方向に延びている。後述するように、配線25a及び25bに電流を流すことにより、記憶部23のシフトレジスタ1に対して磁場を印加し、シフトレジスタ1の各回転子の磁化方向に対して回転力を印加する。例えば、配線25aは配線25bよりも下方に設けられており、シフトレジスタ1には接続されておらず、配線25bにも接続されていない。回転力印加部24は、記憶部23に属する複数本のシフトレジスタ1について共通に設けられている。
【0020】
図3に示すように、書込読出部22においては、書込ワード線31が設けられており、その上にはビット線32が設けられている。書込ワード線31とビット線32とは相互に直交しており、例えば、書込ワード線31はシフトレジスタ1の長軸方向に延びており、ビット線32は短軸方向に延びている。書込ワード線31及びビット線32は、それぞれ、銅(Cu)又はタングステン(W)等の低抵抗材料からなる配線本体34の下面上及び側面上に、鉄ニッケル合金等の強磁性体材料からなる強磁性体層35が設けられたヨーク構造となっている。すなわち、書込ワード線31及びビット線32においては、これらの配線が延びる方向に対して垂直な断面において、強磁性体層35がコ字形状に形成されている。
【0021】
ビット線32上には、参照層36が設けられており、ビット線32に接続されている。参照層36においては、下方、すなわち、ビット線32側から順に、白金マンガン(PtMn)合金層37、鉄ニッケル(NiFe)合金層38、ルテニウム(Ru)層39及び鉄ニッケル(NiFe)合金層40が積層されており、白金マンガン合金層37の下面はビット線32の上面に接している。参照層36上には、例えば酸化マグネシウム(MgO)からなるトンネルバリア膜41が設けられており、その上には、例えば鉄ニッケル合金等の強磁性体材料からなる最下端強磁性体層42が設けられている。最下端強磁性体層42は、シフトレジスタ1の最下層である薄いルテニウム層12に接している。これにより、最下端強磁性体層42はシフトレジスタ1の最下層の強磁性体層として機能するが、その面積はシフトレジスタ1内に設けられた各強磁性体層の面積よりも大きい。また、上方から見て、参照層36及びトンネルバリア膜41は、シフトレジスタ1よりも大きく、最下端強磁性体層42よりも小さい。最下端強磁性体層42はビア43を介して選択トランジスタ44の一方の端子に接続されており、選択トランジスタ44の他方の端子はソース線45に接続されている。選択トランジスタ44のゲートには、読出ワード線46が接続されている。なお、ビア43は書込ワード線31には接続されていない。ビット線32及びソース線45は、センス回路(図示せず)に接続されている。
【0022】
上述の書込読出部22を構成する各構成要素のうち、参照層36、トンネルバリア膜41、最下端強磁性体層42、ビア43及び選択トランジスタ44を含む書込読出ユニット49は、シフトレジスタ1毎に設けられている。一方、書込ワード線31、ビット線32、ソース線45及び読出ワード線46は、それぞれ、複数のシフトレジスタ1毎に設けられている。
【0023】
次に、上述の如く構成された本実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置21の動作、すなわち、本実施形態に係るシフトレジスタ1の使用方法、すなわち、本実施形態に係るデータ記憶方法について説明する。
図4(a)及び(b)は、本実施形態において1つの回転子対がとり得る状態を例示する図であり、
図5(a)は、隣り合う回転子対に相互に同じデータが記憶された場合を例示する図であり、(b)は、隣り合う回転子対に相互に異なるデータが記憶された場合を例示する図であり、
図6は、本実施形態におけるデータの桁送り方法を例示する図であり、
図7(a)及び(b)は、横軸に時刻をとり、縦軸に配線を流れる電流をとって、回転力印加部の動作を例示するグラフ図であり、(c)はシフトレジスタに印加される磁場の方向を例示する図である。
【0024】
先ず、静的な状態について説明する。
図4(a)及び(b)に示すように、本実施形態においては、薄いルテニウム層12を挟んで隣り合う強磁性体層11及び13が一対の回転子対51を構成し、この回転子対51が積層方向に沿って一列に配列される。このとき、強い反結合作用の要請により、1つの回転子対51に属する2つの回転子の特徴方向、すなわち、強磁性体層11の磁化方向と強磁性体層13の磁化方向とは、相互に逆の方向を向く。また、一軸異方性の要請から、各強磁性体層の磁化方向は長軸方向を向こうとする。これにより、1つの回転子対51は2つの状態をとり得る。すなわち、長軸方向に沿った相互に逆方向となる2方向のうち、時計の文字盤を模して一方を「3時方向」と表記し他方を「9時方向」と表記するとき、回転子対51は、図4(a)に示すように、上側の回転子、すなわち、強磁性体層13の磁化方向Vmuが3時方向側であり、下側の回転子、すなわち、強磁性体層11の磁化方向Vmlが9時方向側である第1の状態と、図4(b)に示すように、上側の回転子(強磁性体層13)の磁化方向Vmuが9時方向側であり、下側の回転子(強磁性体層11)の磁化方向Vmlが3時方向側である第2の状態の2通りの状態をとり得る。
【0025】
従って、1つの回転子対51には、値が「0」又は「1」となるデータを記憶可能である。なお、「3時方向側」とは、12時から6時までの範囲であって、3時方向を含む範囲をいい、「9時方向側」とは、6時から12時までの範囲であって、9時方向を含む範囲をいう。図4(a)及び(b)においては、上述の第1の状態を値「0」とし、第2の状態を値「1」とする例を示している。
【0026】
図5(a)に示すように、隣り合う2つの回転子対に同じ値が記憶されている場合には、連続して配列された4つの強磁性体層の磁化方向が交互に3時方向側と9時方向側に向く。この場合、隣り合う2つの回転子対に属する隣り合う2つの回転子、すなわち、厚いルテニウム層14を挟んで隣り合う強磁性体層13及び11においては、磁化方向が相互に逆方向になるため、弱い反結合作用の要請を満たす。従って、強い反結合作用の要請、一軸異方性の要請及び弱い反結合作用の要請が相互に抵触することはなく、磁化方向はほぼ3時方向又は9時方向となる。この場合、回転子対全体としては、磁化方向がほぼ打ち消し合い、磁化方向の合成成分はほぼゼロとなる。
【0027】
一方、図5(b)に示すように、隣り合う2つの回転子対に相互に異なる値が記憶されている場合には、連続して配列された4つの強磁性体層の磁化方向は、例えば、3時方向側、9時方向側、9時方向側、3時方向側となる。このとき、隣り合う2つの回転子対に属する隣り合う2つの回転子(強磁性体層)の磁化方向は相互に同じ側となるため、弱い反結合作用の要請は満たされなくなる。この場合、磁化方向は、強い反結合作用に起因する強い力、弱い反結合作用に起因する弱い力、及び一軸異方性に起因する力がつり合い、エネルギーが極小となるような方向となる。換言すれば、隣り合う2つの回転子対に属する隣り合う2つの回転子の磁化方向が完全に反平行となるような状態は、エネルギー的に安定ではなくなる。この結果、隣り合う2つの回転子対に属する隣り合う2つの回転子、すなわち、厚いルテニウム層14を挟んで隣り合う強磁性体層13及び11の磁化方向は、同じ側ではあるが、互いに遠ざかるように少しねじれた方向を向く。この場合、回転子対全体としては、磁化方向が完全には相殺されず、磁化方向の合成成分が発生する。
【0028】
次に、データの書込方法について説明する。
図3に示すように、書込ワード線31に電流を流すことにより、書込ワード線31を中心とした環状の磁力線が発生する。この磁力線は、最下端強磁性体層42の位置においては、紙面に対して垂直な方向、例えば、短軸方向に向かう。一方、ビット線32に電流を流すことにより、ビット線32を中心とした環状の磁力線が発生する。この磁力線は、最下端強磁性体層42の位置においては、紙面の横方向、例えば、長軸方向に向かう。これにより、書込ワード線31及びビット線32のそれぞれについて、所定の方向に所定の大きさの電流を流すことにより、最下端強磁性体層42に対して、短軸方向及び長軸方向を含む平面内における任意の方向の磁場を印加することができる。このようにして、最下端強磁性体層42の磁化方向を、長軸方向のうちの1つに一致させて、セットする。
【0029】
最下端強磁性体層42の磁化方向がセットされると、その1段上の強磁性体層、すなわち、シフトレジスタ1の最下段の強磁性体層13の磁化方向は、薄いルテニウム層12を介した強い反結合作用により、最下端強磁性体層42の磁化方向に対して逆方向にセットされる。これにより、最下端強磁性体層42及びシフトレジスタ1の最下段の強磁性体層13からなる最下段の回転子対51にデータが書き込まれる。すなわち、書込ワード線31は下側書込配線として機能し、ビット線32は上側書込配線として機能する。このとき、書込ワード線31及びビット線32の構造はヨーク構造となっているため、コ字形状の強磁性体層35及び最下端強磁性体層42によって疑似ループが構成され、最下端強磁性体層42に対して効率的に磁場を印加することができる。
【0030】
最下段の回転子対51にデータを書き込んだ後、シフトレジスタ1全体についてデータを上方に1桁分桁送りして、最下段の回転子対51に書き込まれたデータを1段上の回転子対51に移動させる。なお、「桁送り」とは、シフトレジスタ1の全ての回転子対51に記憶されたデータを、同じ方向に同期して移動させることをいう。この桁送りの方法については後述する。そして、再び、最下端強磁性体層42の磁化方向をセットすることにより、最下段の回転子対51にデータを書き込む。これを繰り返すことにより、シフトレジスタ1にデータ列を書き込んでいく。
【0031】
このとき、データを書き込むために最下端強磁性体層42に印加する磁場の方向は、一定の回転方向、例えば、上方から見て時計回りとなる回転方向に回転させて、所定の方向とする。これにより、隣り合う回転子対51に属する隣り合う2つの回転子においては、先に磁化方向がセットされた回転子、すなわち、上側の回転子対51の下側の回転子の磁化方向が、後に磁化方向がセットされた回転子、すなわち、下側の回転子対の上側の回転子の磁化方向により、弱い力によって上方から見て時計回りに押しやられ、時計回りにねじれる。この結果、長軸方向を基準として、上側の回転子対51の下側の回転子の磁化方向は時計回りにねじれ、下側の回転子対51の上側の回転子の磁化方向は反時計回りにねじれる。このため、「ねじれ」の方向は1本のシフトレジスタを通じて一定となり、例えば、下から上に向けて左ねじの方向となる。
【0032】
また、このとき、連続して配列された少なくとも3つの回転子対に対して、同じ値を書き込むことが望ましい。これにより、連続して配列された少なくとも3つの回転子対を使って、1ビットのデータを記憶する。
【0033】
次に、データの読出方法について説明する。
図3に示すように、参照層36においては、鉄ニッケル合金層38及び40の磁化方向が、ルテニウム層39によって反平行となる状態で固定されている。そして、鉄ニッケル合金層40の磁化方向と最下端強磁性体層42の磁化方向とが同じであると、トンネルバリア膜41を流れるトンネル電流の抵抗が、所謂トンネル磁気抵抗効果により相対的に低くなり、鉄ニッケル合金層40の磁化方向と最下端強磁性体層42の磁化方向とが逆であると、トンネルバリア膜41を流れるトンネル磁気抵抗が相対的に高くなる。このため、トンネルバリア膜41の抵抗値を評価することにより、最下端強磁性体層42の磁化方向を検出することができ、最下段の回転子対51のデータを読み出すことができる。具体的には、最下端強磁性体層42はビア43及び選択トランジスタ44を介してソース線45に接続されているため、所望の読出ワード線46を選択し、選択トランジスタ44をオン状態とした上で、ビット線32とソース線45との間に電圧を印加することにより、参照層36と最下端強磁性体層42との間に電圧を印加する。そして、ビット線32に流れる電流値を測定することにより、トンネルバリア膜41のトンネル磁気抵抗の大きさを評価することができる。
【0034】
最下段の回転子対51のデータを読み出した後、シフトレジスタ1に記憶されているデータを、1段ずつ下段に桁送りする。この桁送りの方法については後述する。そして、再び、最下端強磁性体層42の磁化方向を検出することにより、最下段の回転子対51のデータを読み出す。これを繰り返すことにより、シフトレジスタ1に記憶されたデータ列を読み出していく。
【0035】
次に、データの桁送り方法について説明する。
図6は、1つのシフトレジスタの経時変化のシミュレーション結果を示している。図6においては、1つの回転子対51を1つの楕円で表しており、1つの回転子対51に属する上側の回転子、すなわち、強磁性体層13の磁化方向Vmuを白い矢印で表し、下側の回転子、すなわち、強磁性体層11の磁化方向Vmlを黒い矢印で表している。
【0036】
図6に示すように、時刻t=0においては、回転力印加部24の配線25a及び25b(図2参照)には電流が流れておらず、シフトレジスタ1には磁場が印加されていない。従って、各磁化方向には回転力が印加されていない。このとき、回転子対51a及び51bを含む連続して配列された複数の回転子対には値「0」が書き込まれており、回転子対51c、51d及び51eを含む連続して配列された複数の回転子対には値「1」が書き込まれており、回転子対51f及び51gを含む連続して配列された複数の回転子対には値「0」が書き込まれており、回転子対51hを含む連続して配列された複数の回転子対には値「1」が書き込まれているものとする。また、回転子対51bと回転子対51cとは隣り合っており、回転子対51eと回転子対51fとは隣り合っており、回転子対51gと回転子対51hとは隣り合っている。
【0037】
この状態で、図7(a)及び(b)に示すように、配線25a及び25bに電流を流す。これにより、磁場が発生し、この磁場が記憶部23に設けられた複数のシフトレジスタ1に対して均一に印加される。そして、図7(c)に示すように、この磁場の方向Fは、上方から見て反時計回りに回転する。この磁場の回転により、各回転子対の磁化方向Vに回転力が印加される。回転力とは、回転子(強磁性体層)の磁化方向Vを回転力印加部24によって生成された磁場の方向Fに向けようとする力である。従って、各磁化方向に働く回転力の方向及び大きさは、磁場の方向Fと磁化方向Vとの相対的な関係によって異なり、磁場の方向Fが磁化方向Vを追い抜くときには、回転力の方向が反転する。
【0038】
回転子対の挙動を概略的に表現すると、以下のようになる。
(a)磁化方向の合成成分が小さい回転子対については、合成成分が磁場に対して鈍感であるため、磁場の方向が回転しても磁化方向はほとんど影響を受けない。このため、磁化方向が短軸方向を越えて回転することはなく、回転子対の値は変化しない。上述の如く、合成成分が小さい回転子対とは、上下隣の回転子対と同じ値が書き込まれた回転子対であり、例えば、回転子対51a及び51dである。
【0039】
(b)磁化方向の合成成分が大きい回転子対については、合成成分が磁場に対して敏感であるため、合成成分が回転する。これにより、磁場方向が短軸方向を越えて回転し、値が変化する場合がある。上述の如く、合成成分が大きい回転子対とは、隣の回転子対と異なる値が書き込まれた回転子対である。そして、合成成分が大きい回転子対の挙動については、概略以下のように2つに分類できる。
【0040】
(b−1)相互に異なる値が書き込まれた回転子対同士が隣り合う境界の下側に位置する回転子対、例えば、回転子対51c、51f及び51hについては、上側の回転子の磁化方向Vmuが大きくねじれている。上述の如く、データの書き込みは時計回りに回転する磁場によって行われるため、上側の回転子の磁化方向Vmuには反時計回りに弱い力が働き、上側の回転子の磁化方向Vmuは長軸方向に対して反時計回りにねじれている。従って、磁場の方向Fが反時計回りに回転して合成成分を追い抜くときには、上側の磁化方向Vmuが先に追い抜かれ、その後、下側の磁化方向Vmlが追い抜かれる。また、反時計回りに回転する磁場の方向Fが上側の磁化方向Vmuを追い抜くと、この磁化方向Vmuに働く回転力は時計回りから反時計回りに反転する。
【0041】
このため、上側の磁化方向Vmuが磁場の方向Fに追い抜かれると、上側の磁化方向Vmuに対して、反時計回りに、弱い反結合作用に起因する弱い力と回転力が重畳的に働き、この反時計回りの力が時計回りに働く強い力と一軸異方性に起因する力に打ち勝ち、上側の磁化方向Vmuが短軸方向を越える。上側の磁化方向Vmuが短軸方向を越えると、上側の磁化方向Vmuに働く一軸異方性に起因する力の方向は反時計回りに転じるため、上側の磁化方向Vmuは短軸方向から離隔した方向で安定する。この結果、先行する下側の磁化方向Vmlに対して反時計回りに働く強い力が増加する。更に、下側の磁化方向Vmlが磁場の方向Fに追い抜かれると、下側の磁化方向Vmlに働く回転力が反時計回りに転じる。これにより、下側の磁化方向Vmlが短軸方向を越える。このようにして、この回転子対の値が変化する。
【0042】
(b−2)これに対して、相互に異なる値が書き込まれた回転子対同士が隣り合う境界の上側に位置する回転子対、例えば、回転子対51b、51e及び51gについては、下側の回転子の磁化方向Vmlが時計回りに大きくねじれている。このため、磁場の方向Fが反時計回りに回転して合成成分を追い抜くときには、上側の磁化方向Vmuが先に追い抜かれ、その後、下側の磁化方向Vmlが追い抜かれる。上側の磁化方向Vmuが磁場の方向Fに追い抜かれると、上側の磁化方向Vmuに対して回転力が反時計回りに働くが、上側の磁化方向Vmuには弱い力が働いていないため、回転力と弱い力が重畳されることはない。このため、上側の磁化方向Vmuが短軸方向を越えることがなく、従って、下側の磁化方向Vmlが短軸方向を越えることもない。この結果、この回転子対の値は変化しない。
【0043】
なお、上述の(a)の場合においては、そもそも弱い力が発生していないため、回転力に弱い力が重畳されることが起こり得ず、磁化方向が短軸方向を越えることがないとも言える。
以下、各回転子対の経時変化について具体的に説明する。
【0044】
(1)回転子対51a
時刻t=0において、回転子対51aには値「0」が書き込まれており、その上下隣の回転子対にも同じ値「0」が書き込まれている。このため、回転子対51aにおいては、磁化方向のねじれが少なく、上側の回転子(強磁性体層13)の磁化方向Vmuと下側の回転子(強磁性体層11)の磁化方向Vmlとが長軸方向に沿ってほぼ反平行となっている。すなわち、上側の磁化方向Vmuがほぼ3時方向であり、下側の磁化方向Vmlがほぼ9時方向である。
【0045】
回転子対51aにおいては、磁化方向Vmuと磁化方向Vmlとがほぼ反平行となっているため、回転子対51a全体では、磁化方向の合成成分がほぼ0となる。また、強い反結合作用に起因する強い力、弱い反結合作用に起因する弱い力、及び一軸異方性に起因する力は、いずれも反平行を安定させるように働く。このため、弱い力が磁化方向に短軸方向(12時方向及び6時方向)を越えさせるように働くことがなく、磁化方向に短軸方向を越えさせるような回転力が働いても、この回転力に弱い力が重畳することはない。従って、磁化方向が短軸方向を越えることはなく、値は「0」のままである。
【0046】
(2)回転子対51d
値「1」が書き込まれた回転子対51dについても、その上下の回転子対にも同じ値「1」が書き込まれているため、磁化方向のねじれが少なく、上側の磁化方向Vmuと下側の磁化方向Vmlとが長軸方向に沿ってほぼ反平行となる。このため、弱い力が磁化方向に短軸方向を越えさせるように働くことがなく、値は「1」のままである。
【0047】
(3)回転子対51c
これに対して、上述の如く、上隣の回転子対が異なる値を持つ回転子対においては、挙動が異なる。
時刻t=0において、値「1」が書き込まれた回転子対51cにおいては、上隣の回転子対51bが値「0」を持つため、回転子対51cの上側の磁化方向Vmuは、回転子対51bの下側の磁化方向Vmlとの間に働く弱い力により、9時方向から反時計回りに大きくねじれ、約7時方向を向いている。一方、回転子対51cの下側の磁化方向Vmlには弱い力は働かないが、回転子対51cの上側の磁化方向Vmuとの間に働く強い力により、約2時方向を向く。このため、回転子対51cの上側の磁化方向Vmuと下側の磁化方向Vmlとは完全な反平行にはならず、磁化方向の合成成分が約4時方向に発生する。
【0048】
時刻t=1においては、磁化方向が6時方向を向くように磁場が印加される。これにより、回転子対51cの上側の磁化方向Vmuには反時計回りの回転力が働き、6時方向に近づく。一方、回転子対51cの下側の磁化方向Vmlについては、時計回りの回転力が作用するが、回転子対51cの上側の磁化方向Vmuの回転により、反時計回りの強い力が増加するため、これらの力が相殺され、下側の磁化方向Vmlはあまり変わらない。この結果、磁化方向の合成成分がより増大する。このとき、回転子対51cの上側の磁化方向Vmuについては、回転力及び弱い力が反時計回りに働き、強い力及び一軸異方性に起因する力が時計回りに働く。一方、回転子対51cの下側の磁化方向Vmlについては、強い力が反時計回りに働き、回転力及び一軸異方性に起因する力が時計回りに働く。
【0049】
時刻t=2においては、磁化方向が3時方向を向くように磁場が印加さる。これにより、上側の磁化方向Vmuに働く反時計回りの回転力がさらに増大し、弱い力と重畳されて、上側の磁化方向Vmuが6時方向を越える。上側の磁化方向Vmuが一旦6時方向を越えると、一軸異方性に起因する力がそれまでとは逆の方向、すなわち、反時計回りに働くため、時計回りに働く力は強い力だけになる。この結果、上側の磁化方向Vmuは約5時方向で安定する。一方、回転子対51cの下側の磁化方向Vmlについては、上側の磁化方向Vmuが回転したことにより強い力が増大し、反時計回りに少し押し戻される。この結果、下側の磁化方向Vmlは約1時方向で安定する。このとき、回転子対51cにおいては、磁化方向Vmu及びVmlの双方が3時方向側を向いているため、値は「1」ではなくなる。
【0050】
時刻t=3においては、磁化方向が12時方向を向くように磁場が印加される。磁場の方向が下側の磁化方向Vmlを追い抜くと、下側の磁化方向Vmlに働く回転力が反時計回りに転じる。また、上側の磁化方向Vmuが反時計回りに回転することにより、下側の磁化方向Vmlに反時計回りに働く強い力が増大する。この結果、下側の磁化方向Vmlが12時方向を越える。磁化方向が一旦12時方向を越えると、回転力は時計回りに転じるものの、一軸異方性に起因する力は反時計回りに転じ、上側の磁化方向Vmuは約11時方向で安定する。これにより、回転子対51cの値は「0」となる。
【0051】
時刻t=4においては、磁化方向が9時方向を向くように磁場が印加される。これにより、回転子対51cの下側の磁化方向Vmlについては、回転力が反時計回りに働くようになり、約10時方向で安定する。一方、回転子対51cの上側の磁化方向Vmuについては、磁場の方向がほぼ逆方向となるため、回転力があまり働かない。このため、上側の磁化方向Vmuはあまり変化せず、約4時方向のままである。これにより、回転子対51cについては、上側の磁化方向Vmuと下側の磁化方向Vmlとがほぼ反平行となり、合成成分が減少する。このため、以後磁場が回転しても、回転子対51cの磁化方向はあまり影響を受けなくなり、値が変わることはない。このように、磁場が1回転することにより、回転子対51cの値は「1」から「0」に切り替わる。回転子対51hの動作も同様である。
【0052】
(4)回転子対51f
時刻t=0において、回転子対51fには値「0」が書き込まれており、上隣の回転子対51eには値「1」が書き込まれている。このため、回転子対51fの上側の磁化方向Vmuは、回転子対51eの下側の磁化方向Vmlとの間に働く弱い力により、3時方向から反時計回りに大きくねじれ、約1時方向となっている。一方、回転子対51fの下側の磁化方向Vmlには弱い力は働いていないが、強い力が働き、約8時方向となっている。このため、回転子対51fの上側の磁化方向Vmuと下側の磁化方向Vmlとは完全な反平行にはならず、磁化方向の合成成分が発生する。
【0053】
時刻t=1及びt=2においては、回転力は回転子対51fの合成成分の逆側を向いているため、合成成分を減少させる方向に働き、上側の磁化方向Vmu及び下側の磁化方向Vmlはあまり変化しない。
【0054】
時刻t=3においては、磁化方向が12時方向を向くように磁場が印加される。これにより、磁場の方向が上側の磁化方向Vmuを追い抜き、上側の磁化方向Vmuに対して反時計回りの回転力が働く。また、上側の磁化方向Vmuには、反時計回りの弱い力が働く。一方、下側の磁化方向Vmlについては、時計回りの回転力が印加されるが、上側の磁化方向Vmuの回転によって反時計回りの強い力が増加するため、これらの力が相殺され、約8時方向のままである。
【0055】
時刻t=4においては、磁化方向が9時方向を向くように磁場が印加される。この結果、上側の磁化方向Vmuに対して時計回りに働く回転力が増大し、上側の磁化方向Vmuが12時方向を越える。これにより、上側の磁化方向Vmuに働く一軸異方性に起因する力の方向が反転して反時計回りになる。この結果、回転子対51fの上側の磁化方向Vmuについては、回転力及び一軸異方性に起因する力が時計回りに働き、強い力が反時計回りに働き、約11時方向で安定する。一方、回転子対51fの下側の磁化方向Vmlは、上側の磁化方向Vmuによって反時計回りに押しやられ、約7時方向となる。この結果、回転子対51fにおいては、磁化方向Vmu及びVmlの双方が9時方向側を向き、値は「0」ではなくなる。
【0056】
時刻t=5においては、磁化方向が6時方向を向くように磁場が印加される。これにより、磁場の方向が下側の磁化方向Vmlを追い抜き、下側の磁化方向Vmlに対して反時計回りの回転力が働く。また、上側の磁化方向Vmuにも反時計回りの回転力が働き、反時計回りに回転する。これにより、下側の磁化方向Vmlに働く反時計回りの強い力が増大する。この結果、下側の磁化方向Vmlが反時計回りに回転し、6時方向を越える。これにより、一軸異方性に起因する力が反時計回りに働き、下側の磁化方向Vmlは5時方向で安定する。この結果、上側の磁化方向Vmuは9時方向側となり、下側の磁化方向Vmlは3時方向側となるため、回転子対51fの値は「1」となる。
【0057】
時刻t=6においては、磁場が消失する。これにより、回転力が消失し、回転子対51fの下側の磁化方向Vmlが少しだけ反時計回りに回転するが、回転子対51fの値は変化しない。このように、磁場が1回転することにより、回転子対51fの値は「0」から「1」に切り替わる。
【0058】
(5)回転子対51b
時刻t=0において、回転子対51bには値「0」が書き込まれている。また、下隣の回転子対51cには値「1」が書き込まれている。このため、回転子対51bの下側の磁化方向Vmlは、回転子対51cの上側の磁化方向Vmuとの間に働く弱い力により、9時方向から時計回りに大きくねじれており、約11時方向となっている。一方、回転子対51bの上側の磁化方向Vmuには弱い力は働かないが、回転子対51bの下側の磁化方向Vmlのねじれに伴い、3時方向から少し時計回りにねじれ、約4時方向となる。このため、回転子対51bの上側の磁化方向Vmuと下側の磁化方向Vmlとは完全な反平行にはならず、磁化方向の合成成分が発生する。
【0059】
時刻t=1においては、回転子対51bの下側の磁化方向Vmlに反時計回りの回転力が働き、約10時方向となる。
時刻t=2においては、磁化方向が3時方向を向くような方向に磁場が印加され、上側の磁化方向Vmuは約3時方向となる。このとき、磁場の方向Fが上側の磁化方向Vmuを追い抜くが、上側の磁化方向Vmuには弱い力が働いていないため、回転力に弱い力が重なることはなく、上側の磁化方向Vmuは大きくは変化しない。
時刻t=3以降においては、下隣の回転子対51cの値が「0」となるため、下側の磁化方向Vmlに対しても弱い力が働かなくなり、磁化方向はほとんど変化しなくなる。
このように、磁場の方向が回転しても、回転子対51bの値は変化しない。回転子対51g及び51eについても同様である。
【0060】
以上の動作をまとめると、以下のようになる。すなわち、時計回りに回転する磁場によってデータが書き込まれたシフトレジスタ1に対して、反時計回りに回転する磁場を印加すると、上下隣の回転子対と同じ値が書き込まれた回転子対(例えば、回転子対51a及び51d)の値は変化せず、値が切り替わる境界面の下側に位置する回転子対(例えば、回転子対51c、51f、51h)の値は切り替わり、境界面の上側に位置する回転子対(例えば、回転子対51b、51e、51g)の値は変化しない。これにより、データ列は下方、すなわち、書込読出部22に向かって、1桁分シフトする。
【0061】
同様な原理により、時計回りに回転する磁場によってデータが書き込まれたシフトレジスタ1に対して、時計回りに回転する磁場を印加すると、上下隣の回転子対と同じ値が書き込まれた回転子対の値は変化せず、値が切り替わる境界面の下側に位置する回転子対の値も変化せず、境界面の上側に位置する回転子対の値は切り替わる。これにより、データ列は上方、すなわち、書込読出部22から離れる方向に、1桁分シフトする。このようにして、データ列を正逆方向に桁送りすることができる。同様に、反時計回りに回転する磁場によってデータが書き込まれたシフトレジスタに対して、時計回りに回転する磁場を印加すると、データ列は下方、すなわち、書込読出部22に向かって、桁送りされる。逆に、反時計回りに回転する磁場を印加すると、データ列は上方、すなわち、書込読出部22から離れる方向に、桁送りされる。
【0062】
また、連続して配列された3つの回転子対に同じ値を書き込むことにより、上下隣の回転子対と同じ値が書き込まれた回転子対、境界の上側に位置する回転子対、及び、境界の下側に位置する回転子対を明確に区別できるようになり、上述の桁送り動作を確実に実施することができる。
【0063】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置21においては、書込読出部22と記憶部23とを別々に設けている。これにより、記憶部23においては、記憶素子、すなわち、回転子対を高密度に集積させることができる。この結果、単位面積当たりの記憶容量を増加させ、ビット単価を低減することができる。特に、本実施形態においては、複数本のシフトレジスタ1をマトリクス状に配列させているため、記憶素子を3次元的に配列させることができ、記憶素子の集積度を向上させる効果が特に大きい。
【0064】
また、本実施形態においては、回転力印加部24の配線25a及び25bに電流を流すことにより、シフトレジスタ1の全体に対して、回転する磁場を均一に印加することができる。この結果、シフトレジスタ1に書き込まれているデータ列を、正確に同期して桁送りすることができる。このため、本実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置21は、データを桁送りする際の信頼性が高い。特に、磁場は電場と比較して透過性が高く、遮蔽されにくいため、マトリクス状に配列された複数本のシフトレジスタからなるアレイ全体に磁場を印加しても、場所による磁場のばらつきが小さく、安定した動作を実現できる。
【0065】
なお、シフトレジスタ自体にパルス電流を流してデータを押し出す方法も考えられる。しかしながら、この場合、シフトレジスタを大容量化しようとしてシフトレジスタの物理的な長さを長くすると、シフトレジスタの寄生容量及び寄生インダクタンスも大きくなる。このため、パルス電流の波形が鈍り、誤動作する可能性が増加してしまう。これに対して、本実施形態によれば、桁送り動作の原理として確率的事象を用いておらず、自由エネルギーが極小となる点を辿った遷移を用いているため、シフトレジスタを長くして桁数を例えば数キロ桁としても、桁送り間違いが少なく信頼性が高いシフトレジスタを実現することができる。
【0066】
更に、本実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置21においては、機械的に動作する部分がないため、書き込みや読み出しの繰り返し動作に対する信頼性が高い。
更にまた、本実施形態によれば、鉄ニッケル合金層とルテニウム層とを交互に積層させることにより、シフトレジスタ1を容易に作製することができる。また、2本の配線25a及び25bを設け、これらの配線に電流を流すことにより、シフトレジスタ1の回転子に対して、回転力を容易に印加することができる。
【0067】
なお、本実施形態においては、記憶部23の上方、すなわち、書込読出部22の反対側に回転力印加部24を配置する例を示したが、本発明はこれに限定されず、回転力印加部24は記憶部23の下方に配置してもよい。また、図示しないが、小さい電流でより効果的に回転力を与える方法として、配線25a及び配線25bをシフトレジスタ列の下部に設け、ソレノイドコイルのようにシフトレジスタ列の上下を螺旋状に取り囲む構造とすることも可能である。これにより、より小さい電流でデータを桁送りすることが可能となり、シフトレジスタ型記憶装置の低電力動作が可能となる。また、回転力印加部24の配線25a及び25bは、ヨーク構造としてもよい。更に、記憶部23全体に対して1つの回転力印加部24を設けるのではなく、1本のシフトレジスタ1に対して1つの回転力印加部を設けてもよい。更にまた、本実施形態においては、ルテニウム層の厚さを2水準とすることにより、反結合作用に強弱をつける例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、厚いルテニウム層14の代わりに、ルテニウム以外の材料からなる層を設けてもよい。この場合、この層の厚さは、薄いルテニウム層12と同じであってもよい。
【0068】
次に、本実施形態の第1の変形例について説明する。
図8は、本変形例に係るシフトレジスタ型記憶装置を例示する断面図である。
図8に示すように、本変形例に係るシフトレジスタ型記憶装置61においては、記憶部23に少なくとも2本のシフトレジスタ1a及び1bが設けられており、書込読出部22には少なくとも2つの書込読出ユニット49a及び49bが設けられている。そして、シフトレジスタ1aの下端は書込読出ユニット49aの最下端強磁性体層42に接続されており、シフトレジスタ1bの下端は書込読出ユニット49bの最下端強磁性体層42に接続されている。また、書込ワード線31、ビット線32、ソース線45及び読出ワード線46に接続された制御回路62が設けられている。シフトレジスタ1a及び1b並びに書込読出ユニット49a及び49bの構成は、それぞれ、前述の第1の実施形態におけるシフトレジスタ1及び書込読出ユニット49の構成と同様である。このように、本変形例においては、一対のシフトレジスタの下端同士を接続して、擬似的にU字型のシフトレジスタを実現している。
【0069】
本変形例に係るシフトレジスタ型記憶装置61においては、制御回路62が書込読出ユニット49aを駆動してシフトレジスタ1aに書き込まれているデータ列を読み出し、このデータ列を書込読出ユニット49bを駆動してシフトレジスタ1bに書き込む。また、書込読出ユニット49a及び49bは、相互に逆方向に回転する磁場を用いてシフトレジスタ1a及び1bにデータを書き込む。これにより、回転力印加部24(図2参照)によって同じ回転磁場を印加したときに、シフトレジスタ1aにおいてはデータ列が下方に向けて桁送りされ、シフトレジスタ1bにおいてはデータ列が上方に向けて桁送りされる。
【0070】
シフトレジスタ1aに書き込まれているデータ列を書込読出ユニット49aの位置まで桁送りして読み出すと、シフトレジスタ1aからはこのデータ列が消えてしまう。このため、このデータ列を一時的に記憶しておくために、外部のバッファメモリが必要となる。そこで、本変形例においては、シフトレジスタ1aから読み出したデータ列をシフトレジスタ1bに書き込んでいる。これにより、データ列を保存するためのバッファメモリが不要となるため、回路面積を低減することができると共に、シフトレジスタ型記憶装置61のコストを低減することができる。本変形例における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0071】
次に、本実施形態の第2の変形例について説明する。
図9は、本変形例に係るシフトレジスタ型記憶装置を例示する断面図である。
図9に示すように、本変形例に係るシフトレジスタ型記憶装置63においては、前述の第1の変形例に係るシフトレジスタ型記憶装置61(図8参照)の構成に加えて、シフトレジスタ1aの最上層を構成する薄いルテニウム層12及びシフトレジスタ1bの最上層を構成する薄いルテニウム層12の双方に接続された強磁性体層64が設けられている。
【0072】
本変形例によれば、シフトレジスタ1a及び1bが最上層の回転子として強磁性体層64を共有することにより、シフトレジスタ1a及び1bの最上層の回転子対を連動させることができる。これにより、シフトレジスタ1b内を上方に向けて桁送りされ、最上部の回転子対に到達したデータが、シフトレジスタ1aの最上部の回転子対に複製され、シフトレジスタ1a内を下方に向けて桁送りされる。これにより、2本のシフトレジスタ1a及び1bを、擬似的にループ状に接続して使用することができる。
【0073】
前述の第1の変形例においては、データ列を移動させるためのスペースを確保するために、2本のシフトレジスタに1本分のデータしか書き込むことができない。これに対して、本変形例によれば、シフトレジスタ1bの上端に到達したデータを、シフトレジスタ1aの上部に発生した空きスペースに移動させることができるため、2本のシフトレジスタに2本分のデータを書き込むことができる。この結果、実効的な記憶容量を増加させることができる。また、所望のデータにアクセスする際に、正逆方向のうちより近い方向にデータ列を桁送りすることができるため、データにアクセスするための時間を短縮することができ、より一層の高速動作が可能となる。本変形例における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の変形例と同様である。
【0074】
次に、本実施形態の第3の変形例について説明する。
図10は、本変形例に係るシフトレジスタ型記憶装置を例示する断面図である。
図10に示すように、本変形例に係るシフトレジスタ型記憶装置65は、前述の第1の変形例に係るシフトレジスタ型記憶装置61(図8参照)と比較して、シフトレジスタ1a及び1b(図8参照)の代わりに、U字形状のシフトレジスタ1cが設けられている点が異なっている。また、配線25a(図8参照)の代わりに、シフトレジスタ1cに沿ったU字形状の配線25cが設けられている。シフトレジスタ1cの両端部は、それぞれ、書込読出ユニット49a及び49bに接続されている。本変形例によっても、前述の第2の変形例と同様に、シフトレジスタを擬似的にループ状に接続して、実効的な記憶容量を増加させることができる。本変形例における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の変形例と同様である。
【0075】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図11は、本実施形態に係るシフトレジスタを例示する図である。
本実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、シフトレジスタが強磁性体層の積層体ではなく極性分子が直鎖状に重合した重合体によって構成されていること、回転子が強磁性体層ではなく極性分子であること、回転可能な特徴方向が強磁性体層の磁化方向ではなく極性分子の極性方向であること、反結合作用が磁力ではなく電気力(クーロン力)によって生じること、回転力が磁場ではなく電場を回転させることによって生じること、が異なっている。
【0076】
以下、具体例を挙げて説明する。
図11に示すように、本実施形態に係るシフトレジスタ2は、ニトロベンゼン重合体により構成されている。このニトロベンゼン重合体においては、多数のニトロベンゼン分子71が一方向(以下、「重合方向」という)に沿って直鎖状に重合されている。各ニトロベンゼン分子においては、1つのベンゼン環72に1つのニトロ基(−NO基)73が結合されている。ニトロベンゼン重合体においては、ニトロ基73が重合方向の一方側(便宜上、「下側」という)に結合したニトロベンゼン分子71と、ニトロ基73が重合方向の他方側(便宜上、「上側」という)に結合したニトロベンゼン分子71とが、交互に配列されている。ベンゼン環72同士は、π結合によって回転自在に結合されている。従って、各ニトロベンゼン分子71は、その上下のニトロベンゼン分子71に対して、重合方向に延びる軸を回転軸として回転可能である。
【0077】
また、ベンゼン環72は電子供与性基であり、ニトロ基73は電子求引性基であるため、ニトロベンゼン分子71は極性分子であり、双極子モーメントを持った単量体である。シフトレジスタ2においては、極性分子であるニトロベンゼン分子71を回転子とし、ニトロベンゼン分子71における正極、すなわちベンゼン環72から、負極、すなわちニトロ基73に向かう極性方向Vを、各回転子(ニトロベンゼン分子)の特徴方向とする。すなわち、回転子であるニトロベンゼン分子71は、重合方向に沿って連なっており、ニトロベンゼン分子71が回転することにより、その特徴方向(極性方向V)が回転する。
【0078】
シフトレジスタ2を構成するニトロベンゼン重合体は、その結晶構造が配向しており、これにより、各回転子を構成するニトロベンゼン分子71には、一軸異方性が付与されている。ニトロベンゼン重合体の結晶構造は、例えば、シフトレジスタの製造時に複数本のニトロベンゼン重合体を束ねて電場下でアニールすることにより、配向させることができる。この結果、ニトロベンゼン分子71の極性方向Vは、重合方向に対して直交し相互に反対の2方向のうちのいずれかを向きやすくなる。以下、この2方向を便宜上、「長軸方向」という。また、重合方向及び長軸方向の双方に対して直交する方向を「短軸方向」という。このように、各ニトロベンゼン分子には、極性方向を長軸方向のいずれかに向けようとする一軸異方性が作用し、この一軸異方性に起因する力が働く。
【0079】
また、ニトロ基73は負に帯電しているため、隣り合うニトロベンゼン分子71間には、ニトロ基73を互いに遠ざけようとするクーロン力(反発力)が働く。シフトレジスタ2を構成するニトロベンゼン重合体においては、ニトロ基73がベンゼン環72の下側に結合したニトロベンゼン分子71と、ニトロ基73がベンゼン環72の上側に結合したニトロベンゼン分子71とが交互に配列されているため、ニトロ基73間の距離が一定ではない。この結果、この反発力は2種類に分類される。
【0080】
ニトロ基73同士が近いニトロベンゼン分子71間、すなわち、隣り合う2つのニトロベンゼン分子71からなる対であって、ベンゼン環72の下側にニトロ基73が結合した分子が上方に配置され、ベンゼン環72の上側にニトロ基73が結合した分子が下方に配置された対においては、この2つのニトロベンゼン分子71間に、極性方向を反平行とするような強い反結合作用が生じる。この結果、これらのニトロベンゼン分子71間には、極性方向を反平行とするような強い力(第1の力)が働く。これにより、シフトレジスタ2に属する複数のニトロベンゼン分子は、隣り合い、ニトロ基同士が近い2つのニトロベンゼン分子毎に、複数の回転子対74に組分けされる。
【0081】
一方、ニトロ基73同士が遠いニトロベンゼン分子71間、すなわち、隣り合う2つのニトロベンゼン分子71からなる対であって、ベンゼン環72の下側にニトロ基73が結合した分子が下方に配置され、ベンゼン環72の上側にニトロ基73が結合した分子が上方に配置された対においては、この2つのニトロベンゼン分子71間に、極性方向を反平行とするよう弱い反結合作用が生じる。この結果、隣り合う回転子対74に属する隣り合う2つのニトロベンゼン分子71(回転子)には、極性方向を反平行とするような弱い力(第2の力)が働く。隣り合う回転子対74に属する隣り合う2つのニトロベンゼン分子71の重心間の距離は、同一の回転子対74に属する2つのニトロベンゼン分子71の重心間の距離よりも大きく、前者の場合のニトロ基73間の距離は、後者の場合のニトロ基73間の距離よりも小さい。このため、上述の強い力(第1の力)は、弱い力(第2の力)よりも強い。
【0082】
このように、本実施形態においても、前述の第1の実施形態と同様に、各回転子(ニトロベンゼン分子)は一軸異方性、強い反結合作用及び弱い反結合作用の影響を受け、各回転子には、一軸異方性に起因する力、強い力及び弱い力が働く。また、これらの内的な力に加えて、各回転子には、シフトレジスタ2の外部から外的な力が印加される。前述の第1の実施形態と同様に、外的な力には、特徴方向(極性方向)を回転させるような回転力、及びデータを書き込むための力がある。但し、本実施形態においては、第1の実施形態とは異なり、これらの外的な力は、磁場ではなく電場を回転させることによって印加される。これらについては後述する。
【0083】
次に、本実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置について説明する。
図12は、本実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置を例示する斜視図であり、
図13は、本実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置の書込読出部を例示する斜視図である。
なお、図13においては、図を簡略化するために、分極を持つニトロベンゼンの単量体を、正負の電荷を持つ白玉・黒玉が結びついた電気双極子として模式的に表している。後述する図14についても同様である。
【0084】
図12に示すように、本実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置81においては、書込読出部82が設けられており、その上に、記憶部83及び回転力印加部84が設けられている。
記憶部83においては、上述のシフトレジスタ2が複数本設けられており、マトリクス状に配列されている。各シフトレジスタ2は上下方向に延びている。すなわち、シフトレジスタ2の重合方向はシフトレジスタ型記憶装置81の上下方向と一致している。また、シフトレジスタ2の長軸方向は相互に一致している。シフトレジスタ2同士は相互に離隔しているが、各シフトレジスタ2の下端は書込読出部82に接続されている。
【0085】
回転力印加部84においては、記憶部83の側方に配置された2対の電極板85a及び85bが設けられている。なお、図12においては、電極板85bの一方は図示を省略されている。一対の電極板85aは、記憶部83から見て長軸方向の両側に配置されており、記憶部83を挟んで相互に対向している。また、一対の電極板85bは、記憶部83から見て短軸方向の両側に配置されており、記憶部83を挟んで相互に対向している。回転力印加部84は、記憶部83に属する複数本のシフトレジスタ2について共通に設けられている。
【0086】
図13に示すように、書込読出部82においては、シフトレジスタ2毎に、2対の制御電極86a及び86bが設けられている。一対の制御電極86aは、シフトレジスタ2から見て長軸方向の両側に配置されている。また、他の一対の制御電極86bは、シフトレジスタ2から見て短軸方向の両側に配置されている。更に、シフトレジスタ2の下端には回転双極子87が結合されている。回転双極子87は、例えば、分子半径がニトロベンゼン分子71の分子半径よりも大きい極性分子である。回転双極子87の極性方向はシフトレジスタ2の最下部を構成するニトロベンゼン分子71の極性方向に対して固定されている。
【0087】
次に、上述の如く構成された本実施形態に係るシフトレジスタ型記憶装置81の動作、すなわち、本実施形態に係るシフトレジスタ2の使用方法、すなわち、本実施形態に係るデータ記憶方法について説明する。
図14は、本実施形態におけるデータの桁送り方法を例示する図である。
【0088】
上述の如く、シフトレジスタ2を構成するニトロベンゼン重合体においては、回転子としてのニトロベンゼン分子71が重合方向に沿って一列に配列されており、各ニトロベンゼン分子71は重合方向に延びる軸を回転軸として回転可能である。そして、前述の第1の実施形態と同様に、各回転子には、一軸異方性に起因する力、強い力及び弱い力が働く。このため、前述の第1の実施形態(図4(a)及び(b)参照)と同様に、外力が印加されない静的な状態では、各回転子対74は2通りの状態をとり得る。つまり、各回転子対74は、上側の回転子、すなわち、ニトロ基がベンゼン環の下側に結合されたニトロベンゼン分子の極性方向が3時方向側であり、下側の回転子、すなわち、ニトロ基がベンゼン環の上側に結合されたニトロベンゼン分子の極性方向が9時方向側である第1の状態と、上側の回転子の極性方向が9時方向側であり、下側の回転子の極性方向が3時方向側である第2の状態と、をとり得る。これにより、各回転子対74は「0」及び「1」の2つの値を記憶可能である。
【0089】
そして、前述の第1の実施形態と同様に、隣り合う回転子対に異なる値が書き込まれた場合には、この隣り合う回転子対にそれぞれ属し隣り合う2つの回転子の極性方向には「ねじれ」が発生する。すなわち、図5(a)に示すように、隣り合う2つの回転子対に同じ値が記憶されている場合には、各回転子の極性方向は、一軸異方性、強い反結合作用及び弱い反結合作用の各要請を全て満たすため、極性方向はほぼ3時方向又はほぼ9時方向となり、その合成成分はほぼゼロとなる。一方、図5(b)に示すように、隣り合う2つの回転子対に異なる値が記憶されている場合には、隣り合う2つの回転子対に属する隣り合う2つの回転子の極性方向が相互に同じ側となるため、弱い反結合作用の要請は満たされなくなる。この場合、極性方向は、各力がつり合いエネルギーが極小となるような方向で安定する。すなわち、隣り合う2つの回転子対に属する隣り合う2つの回転子の極性方向は、同じ側ではあるが、互いに遠ざかるように少しねじれた方向を向く。これにより、回転子対全体としては、極性方向の合成成分が発生する。
【0090】
次に、データの書込方法について説明する。
図13に示すように、書込読出部82の制御電極86a間及び制御電極86b間に電圧を印加することにより、回転双極子87に対してクーロン力を作用させ、回転双極子87の極性方向を3時方向又は9時方向にセットする。これにより、シフトレジスタ2の最下段のニトロベンゼン分子71の極性方向が、回転双極子87と同じ方向にセットされる。最下段のニトロベンゼン分子71の極性方向がセットされると、その1段上のニトロベンゼン分子71の極性方向は、最下端のニトロベンゼン分子71の極性方向に対して逆方向にセットされる。これにより、最下段の回転子対74にデータが書き込まれる。
【0091】
そして、最下段の回転子対74に対するデータの書き込みと、データの上方への桁送りとを交互に繰り返すことにより、シフトレジスタ2にデータ列を書き込んでいく。このとき、データを書き込むために回転双極子87に印加する電場の方向は、一定の回転方向、例えば、上方から見て時計回りとなる回転方向に回転させて所定の方向とする。これにより、隣り合う回転子対74に属する隣り合う2つの回転子においては、先にセットされた回転子の極性方向が、後にセットされた回転子によって時計回りに押しやられる。この結果、長軸方向を基準として、上側の回転子対74の下側の回転子の極性方向は時計回りにねじれ、下側の回転子対74の上側の回転子の極性方向は反時計回りにねじれる。また、このとき、連続して配列された少なくとも3つの回転子対に対して、同じ値を書き込む。例えば、連続して配列された3つの回転子対を使って、1ビットのデータを記憶する。
【0092】
次に、データの読出方法について説明する。
シフトレジスタ2の最下段のニトロベンゼン分子71の極性方向がある方向に向いていると、回転双極子87の極性方向も同じ方向を向き、これにより、制御電極87a及び87bに所定の電荷が誘起される。このため、制御電極87a及び87bの電位又は電荷量を測定することにより、最下段のニトロベンゼン分子71の極性方向を検出し、最下段の回転子対74に書き込まれたデータを読み出すことができる。そして、最下段の回転子対74に対するデータの読み出しと、データの下方への桁送りとを交互に繰り返すことにより、シフトレジスタ2からデータ列を読み出していく。
【0093】
次に、データの桁送り方法について説明する。
図14は、1つのシフトレジスタの経時変化のシミュレーション結果を示している。図14においては、1つの回転子(ニトロベンゼン分子71)を1つの楕円で表しており、1つの回転子対74を相互に接した2つの楕円で表している。また、図13と同様に、分極を持つニトロベンゼンの単量体を、正負の電荷を持つ白玉・黒玉が結びついた電気双極子として模式的に表している。
【0094】
本実施形態においては、書込読出部82の制御電極86a間及び制御電極86b間に経時的に変化する電圧を印加することにより、記憶部83に対して回転する電場を印加する。この回転電場が各シフトレジスタ2の各回転子(極性分子)に対して作用することにより、各回転子に対して回転力が印加される。この結果、前述の第1の実施形態と同様な原理により、データ列を上方及び下方に向けて桁送りすることができる。
【0095】
すなわち、図14に示すように、電場の方向Fを時計回りに一回転させることにより、データ列を1桁分下方に移動させることができる。また、電場の方向Fを反時計回りに一回転させることにより、データ列を1桁分上方に移動させることができる。これは、上述の「ねじれ」が存在し、2つの回転子の双極子モーメントが打ち消し合っていない回転子対が特に電場に敏感に反応することを利用したものである。
【0096】
本実施形態によれば、ニトロベンゼン分子のような分極した単量体による回転双極子によって回転子を構成することにより、前述の第1の実施形態と同様な原理で動作するシフトレジスタを実現することができる。そして、本実施形態においては、回転子として高分子の構造を利用しているため、より少ない工程数でより多くの桁数のシフトレジスタ型メモリを実現することができる。また、実際に質量を持った分子(単量体)が回転することで情報を保持するため、熱擾乱等の量子力学的揺らぎに対して安定なデータ保持特性を実現できる。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0097】
なお、本実施形態においては、シフトレジスタとして、電子供与性基としてのベンゼン環に電子求引性基としてのニトロ基が結合されたニトロベンゼン重合体を用いる例を示したが、本発明はこれに限定されない。電子求引性基としては、ニトロ基以外にも、例えば、シアノ基、トシル基、メシル基、フェニル基、アシル基又はハロゲン等を用いることができる。また、シフトレジスタは、電子供与性基を含む直鎖状の重合体によって構成してもよく、電子供与性基及び電子求引性基の双方を含む直鎖状の重合体によって構成してもよい。更に、電子供与性基としては、例えば、メトキシ基、アミノ基、メチルアミノ基又はメチル基等を用いることができる。更にまた、重合体には必ずしもベンゼン環が含まれている必要はない。
【0098】
また、本実施形態に係るシフトレジスタにおいては、ニトロ基がベンゼン環の下側に結合されたニトロベンゼン分子と、ニトロ基がベンゼン環の上側に結合されたニトロベンゼン分子とが交互に配列されているために、ニトロ基間の距離が2水準となり、2水準の強さの反結合作用、すなわち、強い反結合作用及び弱い反結合作用が発生する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電子求引性基又は電子供与性基が回転子の中央に位置していても、回転子間の距離が非対称となるように直鎖が形成されていれば、反結合作用に強弱をつけることができる。
【0099】
更に、本実施形態においては、記憶部83に属する複数本のシフトレジスタ2の全体に対して、2対の電極板85a及び85bによって一括で電場を印加する例を示したが、本発明はこれに限定されず、1本のシフトレジスタ又は束ねて結晶化させた複数本のシフトレジスタのブロック毎に電極板を設け、各ブロックが鞘によって囲まれたような構造にしてもよい。これにより、各シフトレジスタに確実に電場を印加することができる。
更にまた、本実施形態についても、前述の第1の実施形態の第1〜第3の変形例と同様な変形例を実現することができる。
【0100】
以上説明した第1及び第2の実施形態を上位概念化すると、以下のように記述できる。
シフトレジスタは、一方向に沿って連なった複数の回転子によって構成されている。各回転子は、その特徴方向が一方向に延びる回転軸について回転可能である。そして、これらの回転子には一軸異方性が付与されており、一方向に対して直交する一つの方向(長軸方向)のいずれかを向く傾向がある。また、これらの回転子は、隣り合う2つの回転子毎に複数の回転子対に組分けされており、同一の回転子対に属する2つの回転子には、特徴方向を反平行とするような強い力(第1の力)が作用し、隣り合う回転子対に属する隣り合う2つの回転子には、特徴方向を反平行とするような弱い力(第2の力)が作用する。
【0101】
また、シフトレジスタ型記憶装置は、上述のシフトレジスタに加えて、書込読出部及び回転力印加部が設けられている。書込読出部は、シフトレジスタの一端部に配置された回転子の特徴方向を例えば時計回りに回転させて、一軸異方性に適合する2つの方向のうちの1つに一致させることによって、シフトレジスタにデータを書き込む。また、書込読出部は、一端部に配置された回転子の特徴方向を検出することによってデータを読み出す。更に、回転力印加部は、シフトレジスタに対して、特徴方向を時計回りに回転させるような回転力を印加することによって、データ列を一端部から遠ざかる方向に桁送り(シフト)する。また、シフトレジスタに対して、特徴方向を反時計回りに回転させるような回転力を印加することによって、データ列を一端部に近づく方向に桁送り(シフト)する。
【0102】
前述の第1の実施形態においては、回転子を強磁性体層とし、特徴方向を強磁性体層の磁化方向とし、回転力は磁場を回転させることによって生じさせる例を示し、前述の第2の実施形態においては、回転子を極性分子とし、特徴方向を極性分子の正極から負極に向かう方向とし、回転力は電場を回転させることにより生じさせる例を示した。しかし、本発明はこれらには限定されない。例えば、回転子はそれ自体が機械的に回転する微小な物体であってもよく、特徴方向はその微小な物体の長手方向であってもよい。又は、回転子は機械的には固定されており、その性質の異方性が回転できるものでもよい。
【0103】
また、前述の第1及び第2の実施形態においては、各シフトレジスタが単一で所定のデータ列を記憶する例を示したが、本発明はこれに限定されず、複数本、望ましくは3本以上のシフトレジスタを束ねて使用し、これらの複数本のシフトレジスタが同一のデータ列を記憶してもよい。これにより、シフトレジスタ型記憶装置に冗長性を持たせ、信頼性を高めることができる。
【0104】
更に、前述の第1及び第2の実施形態においては、3桁を1ビットとして使用する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、同じ値の連続する桁数を情報として用いることも可能である。例えば、3桁連続して同じ値である場合を値「00」とし、4桁連続して同じ値である場合を「01」とし、5桁連続して同じ値である場合を「10」とし、6桁連続して同じ値である場合を「11」とすることができる。
【0105】
更にまた、前述の第1及び第2の実施形態においては、2つの回転子からなる回転子対を基本単位として動作させる例を示したが、3つ以上の回転子を基本単位として動作させてもよい。
【0106】
以上説明した本発明の実施形態によれば、信頼性が高いシフトレジスタ、シフトレジスタ型記憶装置及びデータ記憶方法を実現することができる。
【0107】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【符号の説明】
【0108】
1、1a、1b、1c、2 シフトレジスタ、11 強磁性体層、12 ルテニウム層、13 強磁性体層、14 ルテニウム層、21 シフトレジスタ型記憶装置、22 書込読出部、23 記憶部、24 回転力印加部、25a、25b、25c 配線、31 書込ワード線、32 ビット線、34 配線本体、35 強磁性体層、36 参照層、37 白金マンガン合金層、38 鉄ニッケル合金層、39 ルテニウム層、40 鉄ニッケル合金層、41 トンネルバリア膜、42 最下端強磁性体層、43 ビア、44 選択トランジスタ、45 ソース線、46 読出ワード線、49、49a、49b 書込読出ユニット、51、51a、51b、51c、51d、51e、51f、51g、51h 回転子対、61 シフトレジスタ型記憶装置、62 制御回路、63 シフトレジスタ型記憶装置、64 強磁性体層、65 シフトレジスタ型記憶装置、71 ニトロベンゼン分子、72 ベンゼン環、73 ニトロ基、74 回転子対、81 シフトレジスタ型記憶装置、82 書込読出部、83 記憶部、84 回転力印加部、85a、85b 電極板、86a、86b 制御電極、87 回転双極子、F 電場の方向、F 磁場の方向、V、Vml、Vmu 磁化方向、V 極性方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に沿って連なり、一軸異方性が付与され、その特徴方向が前記一方向に延びる回転軸についてそれぞれ回転可能な複数の回転子を有するシフトレジスタと、
前記シフトレジスタの一端部に位置する前記回転子の前記特徴方向を前記一軸異方性に適合する2つの方向のうちの1つに一致させることによって前記シフトレジスタにデータを書き込むと共に、前記特徴方向を検出することによって前記データを読み出す書込読出部と、
前記シフトレジスタに対して、前記特徴方向を回転させるような回転力を印加する回転力印加部と、
を備え、
前記複数の回転子は、隣り合う2つの前記回転子毎に複数の対に組分けされており、
同一の前記対に属する2つの前記回転子には、前記特徴方向を反平行とするような第1の力が作用し、
隣り合う前記対に属する隣り合う2つの前記回転子には、前記第1の力よりも弱く、前記特徴方向を反平行とするような第2の力が作用することを特徴とするシフトレジスタ型記憶装置。
【請求項2】
前記書込読出部は、前記一端部に配置された前記回転子の前記特徴方向を一回転方向に回転させて前記一軸異方性に適合する2つの方向のうちの1つに一致させ、
前記回転力印加部は、前記複数の回転子に対して、前記特徴方向を前記一回転方向に回転させるような回転力を印加することによって、前記データを前記一端部から遠ざかる方向に桁送りし、前記特徴方向を前記一回転方向の逆方向に回転させるような回転力を印加することによって、前記データを前記一端部に近づく方向に桁送りすることを特徴とする請求項1記載のシフトレジスタ型記憶装置。
【請求項3】
前記回転子は強磁性体からなり、
前記特徴方向は前記強磁性体の磁化方向であり、
前記回転力印加部は磁場を回転させることを特徴とする請求項1または2に記載のシフトレジスタ型記憶装置。
【請求項4】
前記回転子は極性分子であり、
前記特徴方向は前記極性分子の一方の極から他方の極に向かう方向であり、
前記回転力印加部は電場を回転させることを特徴とする請求項1または2に記載のシフトレジスタ型記憶装置。
【請求項5】
前記シフトレジスタは複数本設けられており、
前記複数本のシフトレジスタは相互に平行にマトリクス状に配列されており、
各シフトレジスタに付与された前記一軸異方性の方向は相互に同一であり、
前記回転力印加部は、前記複数本のシフトレジスタについて共通に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のシフトレジスタ型記憶装置。
【請求項6】
一方向に沿って連なり、その特徴方向が前記一方向に延びる回転軸についてそれぞれ回転可能な複数の回転子を含み、前記複数の回転子には一軸異方性が付与されており、前記複数の回転子は、隣り合う2つの前記回転子毎に複数の対に組分けされており、同一の前記対に属する2つの前記回転子には、前記特徴方向を反平行とするような第1の力が作用し、隣り合う前記対に属する隣り合う2つの前記回転子には、前記第1の力よりも弱く、前記特徴方向を反平行とするような第2の力が作用するシフトレジスタの一端部に位置する前記回転子の前記特徴方向を、一回転方向に回転させて前記一軸異方性に適合する2つの方向のうちの1つに一致させることにより、前記一端部に位置する前記対にデータを書き込む工程と、
前記シフトレジスタに対して、前記特徴方向を前記一回転方向に回転させるような回転力を印加することにより、データを前記一端部から遠ざかる方向に桁送りする工程と、
前記シフトレジスタに対して、前記特徴方向を前記一回転方向の逆方向に回転させるような回転力を印加することにより、データを前記一端部に近づく方向に桁送りする工程と、
前記一端に位置する前記回転子の前記特徴方向を検出することにより、前記一端部に位置する前記対に書き込まれたデータを読み出す工程と、
を備えたことを特徴とするデータ記憶方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−233206(P2011−233206A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103604(P2010−103604)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】