説明

ジエポキシ化合物、該化合物を含む組成物及び該組成物を硬化して得られる硬化物

【課題】メチルイソブチルケトンに対する溶解性に優れる、ジエポキシ化合物を提供する。
【解決手段】式(1)


(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わし、Rは炭素数2〜10のアルキル基を表わす。)
で表わされるジエポキシ化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエポキシ化合物、該化合物を含む組成物及び該組成物を硬化して得られる硬化物等に関する。
【背景技術】
【0002】
ジエポキシ化合物を硬化させて得られるエポキシ硬化物は、良好な耐熱性及び耐湿性に加えて、機械的及び電気的に優れた特性を示すことから、例えば、電子回路や電子部品等に用いられる積層板を製造するための材料等として、工業的に広く利用されている。このような積層板の製造において、エポキシ硬化物を得る際には、前記ジエポキシ化合物と硬化剤とを効率良く、混合する必要がある。このために、前記エポキシ化合物の一部をメチルイソブチルケトンに、予め、溶解させてから、これを用いる場合がある。
一方、エステル結合が含まれるメソゲン骨格を有するジエポキシ化合物は、得られる硬化物が高い強靭性及び高い熱伝導性を示すことが報告されており、例えば、式(A)

で表わされるジエポキシ化合物と硬化剤とを硬化させて得られる硬化物が、非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Macromol.Chem.Phys.1998,199,853.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ジエポキシ化合物の一部をメチルイソブチルケトンに予め溶解させてから、これを硬化剤と混合した後、硬化させる場合、ジエポキシ化合物のメチルイソブチルケトンに対する溶解性が問題になることがあった。
本発明の目的は、メチルイソブチルケトンに対する溶解性に優れる、ジエポキシ化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構造からなり、エステル結合が含まれるメソゲン骨格を有するジエポキシ化合物が、メチルイソブチルケトンに対する溶解性を有することを見出し、以下の本発明に至った。
<1> 式(1)

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わし、Rは炭素数2〜10のアルキル基を表わす。)
で表わされるジエポキシ化合物。
【0006】
<2> アンモニウム塩及び無機塩基の存在下、式(2)

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わし、Rは炭素数2〜10のアルキル基を表わす。)
で表わされるジヒドロキシ化合物と式(3)

(式中、Xはハロゲン原子を表わす。)
で表わされるエピハロヒドリンとを反応させる工程を含むことを特徴とする式(1)

(式中、R〜Rは前記と同じ意味を表わす。)
で表わされるジエポキシ化合物の製造方法。
【0007】
<3> 前記工程が、アルコール溶媒の存在下で反応させる工程であることを特徴とする<2>記載の製造方法。
<4> 前記アルコール溶媒が、2級アルコール溶媒及び3級アルコール溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする<3>記載の製造方法。
<5> 前記工程が、下記工程ア及び工程イを含むことを特徴とする<2>〜<4>のいずれか記載のジエポキシ化合物の製造方法。
工程ア:前記式(2)で表わされるジヒドロキシ化合物、前記式(3)で表わされるエピハロヒドリン、及びアンモニウム塩を混合する工程。
工程イ:工程アで得られた混合物に無機塩基を混合する工程。
<6> 前記無機塩基が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであることを特徴とする<2>〜<5>のいずれか記載のジエポキシ化合物の製造方法。
【0008】
<7> 式(2)

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わし、Rは炭素数2〜10のアルキル基を表わす。)
で表わされることを特徴とするジヒドロキシ化合物。
【0009】
<8> 酸の存在下、式(4)

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わす。)
で表わされるヒドロキシ安息香酸と式(5)

(式中、Rは炭素数2〜10のアルキル基を表わす。)
で表わされるヒドロキノンとを反応させる工程を含むことを特徴とする式(2)

(式中、R〜Rは前記と同じ意味を表わす。)
で表わされるジヒドロキシ化合物の製造方法。
【0010】
<9> 式(1)

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わし、Rは炭素数2〜10のアルキル基を表わす。)
で表わされるジエポキシ化合物及び硬化剤を含むことを特徴とする組成物。
<10> 硬化剤が、アミン硬化剤、フェノール硬化剤及び酸無水物硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤であることを特徴とする<9>記載の組成物。
<11> アミン硬化剤が、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、1,5−ジアミノナフタレン及びp−フェニレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン硬化剤であることを特徴とする<10>記載の組成物。
【0011】
<12> <9>〜<11>のいずれか記載のエポキシ組成物を硬化して得られる硬化物。
<13> <9>〜<11>のいずれか記載の組成物を基材に塗布もしくは含浸した後、半硬化して得られるプリプレグ。
【0012】
<14> 式(1)

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わし、Rは炭素数2〜10のアルキル基を表わす。)
で表わされるジエポキシ化合物、硬化剤及びアルミナを含むことを特徴とするアルミナ含有組成物。
<15> 前記式(1)で表されるジエポキシ化合物及び硬化剤の合計100重量部に対して、アルミナを75重量部〜95重量部含むことを特徴とする<14>記載のアルミナ含有組成物。
<16> アルミナが、2μm以上100μm以下のD50(累積体積50%の粒子径)を有するアルミナ粒子A、1μm以上10μm以下のD50を有するアルミナ粒子B、及び、0.01μm以上5μm以下のD50を有するアルミナ粒子Cの混合物であり、かつ、アルミナ粒子Aとアルミナ粒子Bとアルミナ粒子Cの合計100体積%に対し、アルミナ粒子Aが50〜90体積%、アルミナ粒子Bが5〜40体積%、及び、アルミナ粒子Cが1〜30体積%の混合物であることを特徴とする<14>又は<15>記載のアルミナ含有組成物。
【0013】
<17> <14>〜<16>のいずれか記載のアルミナ含有組成物を硬化して得られるアルミナ含有硬化物。
<18> アルミナ含有硬化物に含まれるアルミナの含有割合が、該アルミナ含有硬化物100体積%に対し、50〜80体積%であることを特徴とする<17>記載のアルミナ含有硬化物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、メチルイソブチルケトンに対する溶解性に優れる、ジエポキシ化合物が提供可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、式(1)

で表わされるジエポキシ化合物(以下、ジエポキシ化合物(1)と記すことがある)である。
、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子またはメチル基であることが好ましく、R、R、RおよびRは水素原子であることがより好ましい。
式(1)で表わされる化合物の1分子中に2つあるRは、互いに同じ基であることを意味する。
【0016】
式(1)中のRは炭素数2〜10のアルキル基を表わす。Rとしては、例えば、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等を挙げることができ、好ましくは、例えば、エチル基、n−プロピル基等が挙げられ、より好ましくは、エチル基である。
【0017】
ジエポキシ化合物(1)としては、例えば、
2−エチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート}、
2−プロピル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート}、
2−イソプロピル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート}、
2−ブチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート}、
2−ヘキシル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート}、
2−エチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−メチルベンゾエート}、
2−エチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−エチルベンゾエート}、
2−プロピル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−メチルベンゾエート}、
2−プロピル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−エチルベンゾエート}、
2−ブチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンゾエート}、および、
2−ヘキシル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−プロピルベンゾエート}等が挙げられる。
好ましくは、例えば、2−エチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート}および2−プロピル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート}等が挙げられる。
【0018】
ジエポキシ化合物(1)の製造方法としては、例えば、アンモニウム塩及び無機塩基の存在下、式(2)

(式中、R〜Rは上記と同一の意味を表わす。)
で表わされるジヒドロキシ化合物(以下、ジヒドロキシ化合物(2)と記すことがある)と式(3)

(式中、Xはハロゲン原子を表わす。)
で表わされるエピハロヒドリン(以下、エピハロヒドリン(3)と記すことがある)とを反応させる工程を含む方法(以下、グリシジルエーテル化工程と記すことがある);
【0019】
例えば、塩基の存在下、ジヒドロキシ化合物(2)と式(6)

(式中、XはXと同じ意味を表わす。)
で表わされる化合物(以下、化合物(6)と記すことがある。)とを反応させて、下記式

(式中、R〜Rは上記と同一の意味を表わす。)
で表わされるジアリル化物(以下、ジアリル化物(7)と記すことがある)を得、次いで、ジアリル化物(7)を酸化剤で酸化する方法(以下、アリル化工程と記すことがある);
等を挙げることができる。
【0020】
グリシジルエーテル化工程及びアリル化工程のいずれにも用いられるジヒドロキシ化合物(2)としては、例えば、
2−エチル−1,4−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、2−プロピル−1,4−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、2−イソプロピル−1,4−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、2−ブチル−1,4−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、2−ヘキシル−1,4−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、2−エチル−1,4−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルベンゾエート)、2−エチル−1,4−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルベンゾエート)、2−プロピル−1,4−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルベンゾエート)、2−プロピル−1,4−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルベンゾエート)、2−ブチル−1,4−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンゾエート)および2−ヘキシル−1,4−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシ−3−プロピルベンゾエート)
等が挙げられる。
【0021】
まず、グリシジルエーテル化工程について説明する。
エピハロヒドリン(3)におけるXは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を表わし、塩素原子が好ましい。エピハロヒドリン(3)としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等を挙げることができる。グリシジルエーテル化工程において、異なる複数種のエピハロヒドリン(3)を併用してもよい。好ましいエピハロヒドリン(3)としては、例えば、エピクロロヒドリンが挙げられる。
エピハロヒドリン(3)の使用量は、ジヒドロキシ化合物(2)1モルに対して、例えば、2〜200モルの範囲等が挙げられ、好ましくは、例えば、5〜150モルの範囲等が挙げられる。
【0022】
アンモニウム塩としては、例えば、4級アンモニウムハライド等を挙げることができ、好ましくは、例えば、
テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、
テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、
テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリブチルアンモニウムヨージド、
等が挙げられ、好ましくは、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
アンモニウム塩として、異なる複数種のアンモニウム塩を併用してもよい。
アンモニウム塩の使用量は、ジヒドロキシ化合物(2)1モルに対して、例えば、0.0001〜1モルの範囲等が挙げられ、好ましくは、例えば、0.001〜0.5モルの範囲等が挙げられる。
【0023】
無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等を挙げることができる。無機塩基として、異なる複数種の無機塩基を併用してもよい。
好ましい無機塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物等が挙げられ、より好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
無機塩基の使用量は、ジヒドロキシ化合物(2)1モルに対して、例えば、0.1〜20モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、0.5〜10モルの範囲等が挙げられる。
無機塩基は、例えば、粒状などの固体として用いてもよいし、例えば、1〜60重量%程度の濃度に調製した水溶液として用いてもよい。
【0024】
グリシジルエーテル化工程は無溶媒で行ってもよいし、溶媒の存在下で行ってもよい。
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、4−デカノール、2−ドデカノール、3−メチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ペンタノール、5−メチル−2−ヘキサノール、4−メチル−3−ヘプタノール、2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、3−エチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−3−ペンタノール、3−エチル−2,2−ジメチル−3−ペンタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール等のアルコール溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール等のエーテル溶媒が挙げられる。
二種以上の溶媒を併用してもよい。
なかでも、アルコール溶媒が好ましく、2−プロパノール、2−ブタノール等の2級アルコール溶媒および2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール等の3級アルコール溶媒がより好ましく、2−メチル−2−プロパノールが特に好ましい。
【0025】
溶媒を用いる場合の使用量としては、ジヒドロキシ化合物(2)1重量部に対して、例えば、0.01〜100重量部の範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、0.1〜50重量部の範囲等が挙げられる。
【0026】
グリシジルエーテル化工程は、常圧条件下で行ってもよいし、加圧条件下で行ってもよいし、あるいは、減圧条件下で行ってもよい。また、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
グリシジルエーテル化工程は、ジヒドロキシ化合物(2)、エピハロヒドリン(3)、アンモニウム塩及び無機塩基、並びに、必要に応じて溶媒を任意の順序で混合すればよい。
グリシジルエーテル化工程の反応温度としては、例えば、−20℃〜150℃の範囲を挙げることができ、好ましくは−10℃〜120℃の範囲が挙げられる。
また、グリシジルエーテル化工程の反応時間としては、例えば、1〜150時間の範囲内を挙げることができる。
【0027】
グリシジルエーテル化工程としては、下記工程ア及び工程イを含む方法が好ましい。
工程ア:ジヒドロキシ化合物(2)、エピハロヒドリン(3)、及びアンモニウム塩、並びに、必要に応じて溶媒を混合する工程。
工程イ:工程アで得られた混合物に、さらに、無機塩基を混合する工程。
工程アは、常圧条件下でおこなってもよいし、加圧条件下でおこなってもよいし、あるいは減圧条件下でおこなってもよい。また、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下でおこなってもよい。
工程アの混合温度としては、例えば、−10℃〜150℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、0℃〜120℃の範囲等が挙げられる。
工程アの混合時間は、混合温度等によっても異なるが、例えば、0.5〜72時間の範囲等を挙げることができる。
【0028】
工程イは、常圧条件下でおこなってもよいし、加圧条件下でおこなってもよいし、あるいは減圧条件下でおこなってもよい。また、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下でおこなってもよい。
工程イの混合温度としては、例えば、−20℃〜120℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、−10℃〜80℃の範囲等が挙げられる。
工程イの混合時間は、液体クロマトグラフィーなどの測定により追跡することができ、ジエポキシ化合物(1)の増加が認められなくなるまで反応を行うことが好ましい。具体的には、混合温度等によっても異なるが、例えば、0.5〜72時間の範囲等を挙げることができる。
【0029】
工程イ終了後、例えば、反応液に、水を加えた後、必要に応じて水に不溶の溶媒を加えてジエポキシ化合物(1)を含む層を得、水洗した後、必要に応じて不溶分を濾過で除去し、該層から過剰のエピハロヒドリン及び溶媒を留去して、ジエポキシ化合物(1)を得る方法等が挙げられる。
また、ジエポキシ化合物(1)は、必要に応じて再結晶等の精製手段を施すことにより、さらに精製することもできる。
【0030】
次に、アリル化工程について説明する。
アリル化工程に用いられる化合物(6)としては、例えば、アリルクロリド、アリルブロミド等を挙げることができる。
化合物(6)の使用量としては、ジヒドロキシ化合物(2)1モルに対して、例えば、2〜200モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは2〜100モルの範囲等が挙げられる。尚、必要に応じて、2種類以上の化合物(6)を併用してもよい。
【0031】
アリル化工程に用いられる塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等の無機塩基、例えばピリジン等の有機塩基等を挙げることができる。塩基として、異なる複数種の塩基を併用してもよい。
好ましい塩基としては、例えば、アルカリ金属炭酸塩等が挙げられ、より好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが挙げられる。
塩基の使用量としては、無機塩基の場合、ジヒドロキシ化合物(2)1モルに対して、例えば、2〜10モルの範囲等を挙げることができる。有機塩基の場合、2モル以上であればよく、有機塩基を溶媒として用いるときには、該有機塩基を大過剰に用いてもよい。
【0032】
ジヒドロキシ化合物(2)と化合物(6)との反応は、好ましくは、溶媒中で行われる。溶媒としては、ジヒドロキシ化合物(2)とエピハロヒドリン(3)との反応で用いられる溶媒と同様のものが挙げられる。また、上記で述べたように、有機塩基を用いる場合は、かかる塩基を溶媒として用いてもよい。
【0033】
ジヒドロキシ化合物(2)、化合物(6)及び塩基、並びに、必要に応じて溶媒を任意の順序で混合して、ジヒドロキシ化合物(2)と化合物(6)とを反応させることにより、ジヒドロキシ化合物(2)のジアリル化物(7)を得ることができる。
この反応は、常圧条件下でおこなってもよいし、加圧条件下でおこなってもよいし、あるいは減圧条件下でおこなってもよい。また、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下でおこなってもよい。
この反応の反応温度としては、例えば、−20℃〜120℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、−10℃〜100℃の範囲等が挙げられる。
ジアリル化物(7)を得る反応の反応時間は、反応温度により異なるが、反応の進行度合いを液体クロマトグラフィーなどの測定により追跡することにより調節でき、ジアリル化物(7)の増加が認められなくなるまで反応を行うことが好ましい。
【0034】
ジアリル化物(7)を含む反応液を、例えば、そのまま酸化剤による酸化反応を行うことによりジエポキシ化合物(1)を製造してもよいし、例えば、ジアリル化物(7)を含む反応液を水洗等により、生成する塩を除去した後、酸化剤による酸化反応を行うことにより、ジエポキシ化合物(1)を製造してもよい。
酸化剤としては、炭素−炭素二重結合をエポキシ基へ酸化することが可能な酸化剤であればよく、例えば、m−クロロ過安息香酸等の過酸などが挙げられる。酸化剤の使用量は、例えば、ジアリル化物(7)1モルに対して、2〜20モルの範囲等を挙げることができる。
【0035】
酸化反応は、常圧条件下でおこなってもよいし、加圧条件下でおこなってもよいし、あるいは減圧条件下でおこなってもよい。また、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
酸化反応の反応温度としては、例えば、−20℃〜120℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、−10℃〜100℃の範囲等が挙げられる。
酸化反応は、反応の進行度合いを液体クロマトグラフィーなどで測定することができ、ジエポキシ化合物(1)の増加が認められなくなるまで反応を行うことが好ましい。具体的な反応時間は、反応温度等によっても異なるが、例えば、0.5〜72時間の範囲等を挙げることができる。
【0036】
酸化反応の終了後、例えば、必要に応じて残存する酸化剤を分解処理した後、濃縮処理して、ジエポキシ化合物(1)を製造することができる。
また、ジエポキシ化合物(1)は、必要に応じて再結晶等の精製手段を施すことにより、さらに精製することもできる。
【0037】
ここで、グリシジルエーテル化工程又はアリル化工程で用いられるジヒドロキシ化合物(2)の製造方法について説明する。
【0038】
ジヒドロキシ化合物(2)の製造方法としては、例えば、酸の存在下、式(4)

(式中、R〜Rは上記と同一の意味を表わす。)
で表わされるヒドロキシ安息香酸(以下、ヒドロキシ安息香酸(4)と記すことがある)と式(5)

(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
で表わされるヒドロキノン(以下、ヒドロキノン(5)と記すことがある)とをエステル化反応する方法等を挙げることができる。
【0039】
ヒドロキシ安息香酸(4)としては、具体的には、
4−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−2−メチル安息香酸、4−ヒドロキシ−3−メチル安息香酸、4−ヒドロキシ−2−エチル安息香酸、4−ヒドロキシ−3−エチル安息香酸、4−ヒドロキシ−2−イソプロピル安息香酸、4−ヒドロキシ−3−プロピル安息香酸、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル安息香酸、
等が挙げられる。好ましくは、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−3−メチル安息香酸等が挙げられる。
ヒドロキシ安息香酸(4)の使用量は、ヒドロキノン(5)1モルに対して、例えば、1〜10モルの範囲等が挙げられ、好ましくは、2〜5モルの範囲等が挙げられる。
【0040】
ヒドロキノン(5)としては、例えば、エチルヒドロキノン、プロピルヒドロキノン、ブチルヒドロキノン、ペンチルヒドロキノン、オクチルヒドロキノン等が挙げられる。好ましくは、例えば、エチルヒドロキノン、プロピルヒドロキノン等が挙げられる。
ヒドロキノン(5)は市販品をそのまま使用してもよいし、例えば、1,4−シクロヘキサンジオンと、アルデヒドとを、塩化リチウム存在下に反応させる方法(Synlett,1997,365参照)などの方法等で調製してもよい。
【0041】
エステル化工程に用いる酸としては、例えば、硫酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。その使用量は、ヒドロキシ安息香酸(4)1モルに対して、例えば、0.001〜0.30モルの範囲等が挙げられる。必要に応じて、2種類以上の酸を併用してもよい。
【0042】
ヒドロキシ安息香酸(4)とヒドロキノン(5)との反応は、溶媒存在下に行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒が挙げられる。その使用量は、ヒドロキシ安息香酸(4)1重量部に対して、例えば、1〜200重量部の範囲等が挙げられ、好ましくは5〜100重量部の範囲等が挙げられる。
【0043】
ヒドロキシ安息香酸(4)とヒドロキノン(5)との反応は、常圧条件下でおこなってもよいし、加圧条件下でおこなってもよいし、あるいは減圧条件下でおこなってもよい。また、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下でおこなってもよい。
ヒドロキシ安息香酸(4)とヒドロキノン(5)との反応の反応温度としては、例えば、50〜250℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、60〜200℃の範囲等が挙げられる。
反応時間は、反応温度等によっても異なるが、例えば、0.5〜72時間の範囲等を挙げることができる。
ヒドロキシ安息香酸(4)とヒドロキノン(5)との反応の進行に伴って、水が生成するが、生成する水を反応系外へ除去しながら、反応を行うことが好ましい。生成する水を反応系外へ除去する方法としては、例えば、共沸蒸留法、モレキュラーシブス等の脱水剤を用いる方法等が挙げられる。
【0044】
ジエポキシ化合物(1)は、エステル結合が含まれるメソゲン骨格を有し、有機溶媒、特に、積層板調製用の組成物に汎用されるメチルイソブチルケトンに対する溶解性に優れる。
続いて、ジエポキシ化合物(1)と硬化剤とを含む組成物(以下、本組成物と記すことがある)について説明する。
【0045】
本組成物は、ジエポキシ化合物(1)を少なくとも1種と硬化剤を少なくとも1種とを含むものである。
本組成物の製造方法は、例えば、ジエポキシ化合物(1)と硬化剤とを溶媒中で混合する方法等を挙げることができる。該製造方法に用いられる溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、例えば酢酸ブチル等のエステル溶媒、例えばプロピレングリゴールモノメチルエーテル等のグリコール溶媒等が挙げられ、好ましくは、例えば、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。本発明のジエポキシ化合物(1)は、メチルイソブチルケトンに対する溶解性に優れる。また、ジエポキシ化合物(1)は、メチルイソブチルケトン以外の上記有機溶媒に対する溶解性にも優れる傾向がある。
【0046】
硬化剤とは、ジエポキシ化合物(1)中のエポキシ基と硬化反応し得る官能基を少なくとも1個有するもの、または、ジエポキシ化合物(1)の硬化反応において触媒作用を示す硬化触媒である。具体的には、前記官能基がアミノ基であるアミン硬化剤、前記官能基が水酸基であるフェノール硬化剤、前記官能基が酸無水物基である酸無水物硬化剤および硬化触媒が挙げられ、アミン硬化剤、フェノール硬化剤および硬化触媒が好ましい。
【0047】
アミン硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の炭素数2〜20の脂肪族多価アミン(すなわち、炭素数2〜20の脂肪族炭化水素に含まれる水素原子の複数がアミノ基に置換された化合物)、例えばp−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルメタン等の芳香族多価アミン(すなわち、芳香族炭化水素基を有する炭素数6〜20の炭化水素における芳香族炭化水素基に含まれる水素原子の複数がアミノ基に置換された化合物)、例えば4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環式多価アミン(すなわち、脂環式炭化水素基を有する炭素数5〜20の炭化水素における脂環式炭化水素基に含まれる水素原子の複数がアミノ基に置換された化合物)、例えばジシアンジアミド等が挙げられ、好ましくは、例えば、芳香族多価アミンやジシアンジアミド等が挙げられ、より好ましくは、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、1,5−ジアミノナフタレン、p−フェニレンジアミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0048】
フェノール硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ジフェニレン骨格等を有する)、ナフトールアラルキル樹脂およびポリオキシスチレン樹脂が挙げられる。フェノール樹脂としては、アニリン変性レゾール樹脂、ジメチルエーテルレゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、および、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂等の特殊フェノール樹脂が挙げられる。ポリオキシスチレン樹脂としては、ポリ(p−オキシスチレン)が挙げられる。
【0049】
酸無水物硬化剤としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0050】
硬化触媒としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。
【0051】
かかる硬化剤の使用量は、用いる硬化剤の種類に応じて適宜選択すればよく、アミン硬化剤やフェノール硬化剤であれば、例えば該硬化剤中のエポキシ基と硬化反応し得る官能基の合計モル数が、ジエポキシ化合物(1)中のエポキシ基1モルに対して、0.5〜1.5モル、好ましくは0.9〜1.1モルとなる量が用いられる。
【0052】
本組成物は、ジエポキシ化合物(1)、硬化剤及び前記溶媒以外に、本組成物を硬化して得られる硬化物が、熱伝導性及び溶解度等の所望の性能の低下を招かない限り、他のエポキシ化合物を含んでいてもよい。
他のエポキシ化合物としては、例えばビスフェノールA型エポキシ化合物、オルソクレゾール型エポキシ化合物、ビフェノールジグリシジルエーテル、4,4’−ビス(3,4−エポキシブテン−1−イロキシ)フェニルベンゾエート、ナフタレンジグリシジルエーテル、α−メチルスチルベン−4,4’−ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0053】
本組成物は、さらに、各種添加剤、例えば、トリフェニルホスフィン、1,8−アザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、2−フェニルイミダゾール等の硬化促進剤、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、例えばカーボンブラック等の着色剤、例えばシリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力成分、例えば天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸またはその金属塩、パラフィン等の離型剤、酸化防止剤等、例えば、溶融破砕シリカ粉末、溶融球状シリカ粉末、結晶シリカ粉末、二次凝集シリカ粉末等のシリカ又はその粉末、例えば、α−アルミナ又は遷移アルミナ(γ−アルミナ、θ−アルミナ、δ−アルミナ)等のアルミナ又はその粉末、例えば、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレイ、マイカ、ガラス繊維等が含有されていてもよい。本組成物における各種添加剤の含有量としては、熱伝導性及び溶解度等の所望の性能の低下を招かない程度である。
【0054】
本組成物は、熱伝導性の優れた硬化物を得るために、アルミナを含有することが好ましい。すなわち、本組成物としては、ジエポキシ化合物(1)、硬化剤及びアルミナを含む組成物(以下、アルミナ含有組成物と記すことがある)が好ましい。さらに、アルミナ含有組成物が上記有機溶媒を含有する場合、アルミナ含有組成物の混合が容易になることから好ましい。
アルミナ含有組成物におけるアルミナの含有量としては、式(1)で表されるジエポキシ化合物及び硬化剤の合計100重量部に対して、例えば、75重量部〜95重量部の範囲を挙げることができる。アルミナが75重量部以上であると、得られる硬化物の熱伝導性が向上する傾向があり、95重量部以下であると、アルミナ含有組成物の成形が容易となる傾向があることから好ましい。
【0055】
アルミナとしては、粒子状であることが好ましい。粒子状のアルミナとしては、例えば、重量累積粒度分布の微粒子側からの累積体積50%の粒子径をD50(レーザー回折法による平均粒子径)としたとき、2μm以上100μm以下のD50を有するアルミナ粒子A、1μm以上10μm以下のD50を有するアルミナ粒子B及び0.01μm以上5μm以下のD50を有するアルミナ粒子Cの混合物であることが好ましい。特に、アルミナ粒子Aとアルミナ粒子Bとアルミナ粒子Cの合計100体積%に対し、アルミナ粒子Aが50〜90体積%、アルミナ粒子Bが5〜40体積%及びアルミナ粒子Cが1〜30体積%の混合物であることが好ましい。
このようなアルミナは、例えば、市販されている種々の平均粒子径を有するアルミナ粒子を、適宜混合することにより調製することができる。
また、後述する本硬化物に含まれるアルミナの含有割合は、本硬化物100体積%に対して、50〜80体積%であることが好ましい。
【0056】
本組成物を硬化して得られる硬化物(以下、本硬化物と記すことがある)の製造方法としては、例えば、本組成物をそのまま所定温度まで加熱して硬化させる方法;本組成物を加熱溶融して金型等に注ぎ、該金型をさらに加熱して成形する方法;本組成物を溶融させ、得られる溶融物を予め加熱された金型に注入し硬化する方法;本組成物を部分硬化させ、得られる部分硬化物を粉砕し、得られた粉末を金型に充填し、該充填粉末を溶融成形する方法;本組成物を必要に応じて溶媒に溶解し、攪拌しながら部分硬化させ、得られた溶液をキャストした後、溶媒を通風乾燥等で乾燥除去し、必要に応じてプレス機等で圧力をかけながら所定時間加熱する方法等が挙げられる。
【0057】
本硬化物は、熱伝導性に優れる傾向がある。中でも、アルミナ含有組成物を硬化したもの(以下、アルミナ含有硬化物と記すことがある)は、一層、熱伝導性に優れる。アルミナ含有硬化物の製造方法としては、例えば、アルミナ含有組成物をそのまま所定温度まで加熱して硬化させる方法;アルミナ含有組成物の一部(例えば、ジエポキシ化合物及び硬化剤)を加熱溶融して金型等に注ぎ、該金型をさらに加熱して成形する方法;アルミナ含有組成物を部分硬化させ、得られる部分硬化物を粉砕してなる粉末を金型に充填し、該充填粉末を溶融成形する方法等が挙げられる。
【0058】
次に、本組成物を用いたプリプレグの製造方法について説明する。まず、有機溶媒を含む本組成物をそのまま、必要に応じて、さらに有機溶媒で希釈し、基材に塗布もしくは含浸させた後、得られた基材を加熱して、該基材中のジエポキシ化合物(1)を半硬化させることによりプリプレグが得られる。この際に用いられる有機溶媒としては、メチルイソブチルケトンなどの前記本組成物の製造方法で用いられた有機溶媒である。かくして得られたプリプレグを、複数個、積層してプレスなどにより加圧及び加熱することにより積層板を調製することができる。
プリプレグに用いられる基材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維等の無機質繊維の織布もしくは不織布、例えばポリエステル等の有機質繊維の織布もしくは不織布等が挙げられる。
本組成物に含まれるジエポキシ化合物(1)は有機溶媒であるメチルイソブチルケトンに対し、溶解性に優れているので、本組成物は、プリプレグの製造に極めて有用である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0060】
[ヒドロキノン(5)の製造例1]

オートクレーブを0℃に維持しながら、1,4−シクロヘキサンジオン5.00g(44.6mmol)、アセトアルデヒド3.93g(89.2mmol)、塩化リチウム1.89g(44.6mmol)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン18.8g(165mmol)を混合した。オートクレーブを密閉し、混合物を160℃で6時間攪拌した後、室温(約25℃)まで冷却した。その後、同温度で、イオン交換水100mL、酢酸エチル100mLを加えた後、反応液を分液ロートに移し、有機層を抽出し、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液100mLで4回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濾液を濃縮して粗生成物を得た。
上記と同じ反応をさらに3回行い、それぞれ粗生成物を得た。得られた粗生成物をまとめてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにヘキサンで洗浄することにより、上記式(5−1)で表されるヒドロキノン(以下、ヒドロキノン(5−1)と記すことがある)を含む薄灰色結晶9.96gを得た。
該結晶をガスクロマトグラフィーによって分析し、得られたクロマトグラフの面積百分率を算出したところ、92.9%であり、該結晶中のヒドロキノン(5−1)の含有量を92.9重量%と仮定すると、1,4−シクロヘキサンジオンを基準とするヒドロキノン(5−1)の収率は、38%であった。
【0061】
[実施例1:ジヒドロキシ化合物(2)の製造例1]

ディーンスターク装置を取り付けた反応容器に、4−ヒドロキシ安息香酸8.00g(57.9mmol)、[ヒドロキノン(5)の製造例1]で得られたヒドロキノン(5−1)4.00g(26.9mmol)、p−トルエンスルホン酸0.55g(2.90mmol)及びキシレン約60gを室温で混合した。得られた混合物を還流下で26時間攪拌した後、室温まで冷却した。尚、反応の進行に伴って生成した水はディーンスターク装置によって反応系外へ除去した。その後、析出した固体を濾過し、メタノール400mLで洗浄した後、50℃で4時間減圧乾燥させて、上記式(2−1)で表されるジヒドロキシ化合物(以下、ジヒドロキシ化合物(2−1)と記すことがある)を含む薄灰色結晶3.90gを得た。
該結晶を液体クロマトグラフィーによって分析し、得られたクロマトグラフの面積百分率を算出したところ、96.8%であり、該結晶中のジヒドロキシ化合物(2−1)の含有量を96.8重量%と仮定すると、ヒドロキノン(5−1)を基準とするジヒドロキシ化合物(2−1)の収率は、37%であった。
【0062】
実施例1で得られたジヒドロキシ化合物(2−1)のスペクトルデータは以下の通りであった。
H−NMR(δ:ppm,DMSO−d) 10.54(br,2H),7.80−8.16(c,4H),6.77−7.32(c,7H),2.49(m,2H),1.11(m,3H)
【0063】
[実施例2:ジエポキシ化合物(1)の製造例1]

冷却装置を取り付けた反応容器内にて、実施例1で得られたジヒドロキシ化合物(2−1)1.50g(3.84mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド0.064g(0.20mmol)、エピクロロヒドリン14.7g(159mmol)、及び2−メチル−2−プロパノール9.68g(136mmol)を室温で混合し、さらに、70℃で10時間攪拌した後、18℃まで冷却した。次に、15重量%の水酸化ナトリウム水溶液を3.17g(11.9mmol)徐々に加えて、18℃で3時間攪拌した後、0℃まで冷却した。
次に、イオン交換水を40mL加え、室温で、クロロホルム80mLを加えた後、混合し、クロロホルム層と水層とを得た。クロロホルム層は、さらにイオン交換水で3回洗浄した後、水洗されたクロロホルム層に含まれる不溶分を濾過して除去し、得られた濾液を濃縮して粗生成物を得た。
冷却装置を取り付けた反応容器内にて、得られた粗生成物、トルエン8mLおよび2−プロパノール17mLを混合し、得られた混合物を70℃で1時間攪拌した。得られた混合物を室温まで冷却し、析出した固体を濾過により取り出した。取り出した固体を2−プロパノールで洗浄した後、乾燥し、上記式(1−1)で表されるジエポキシ化合物(以下、ジエポキシ化合物(1−1)と記すことがある)を含む白色結晶1.16gを得た。
該結晶を液体クロマトグラフィーによって分析し、得られたクロマトグラフの面積百分率を算出したところ、96.5%であり、該結晶中のジエポキシ化合物(1−1)の含有量を96.5重量%と仮定すると、ジヒドロキシ化合物(2−1)を基準とするジエポキシ化合物(1−1)の収率は、59%であった。
【0064】
実施例2で得られたジエポキシ化合物(1−1)のスペクトルデータは以下の通りであった。
H−NMR(δ:ppm,CDCl) 8.11−8.25(c,4H),6.95−7.25(c,7H),4.28−4.45(c,2H),3.97−4.10(c,2H),3.35−3.57(c,2H),2.95−3.00(c,2H),2.75−2.84(c,2H),2.62(q,2H),1.22(t,3H)
【0065】
[ヒドロキノン(5)の製造例2]

冷却装置を取り付けた反応容器内にて、1,4−シクロヘキサンジオン17.0g(151.6mmol)、プロピオンアルデヒド13.2g(227mmol)、塩化リチウム6.43g(152mmol)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン64.0g(561mmol)を室温で混合し、さらに、160℃で8時間攪拌した後、室温まで冷却した。その後、室温で、イオン交換水300mL、酢酸エチル300mLを加えた後、反応液を分液ロートに移し、有機層を抽出し、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液300mLで4回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにヘキサンで洗浄することにより、上記式(5−2)で表されるヒドロキノン(以下、ヒドロキノン(5−2)と記すことがある)を含む薄灰色結晶11.5gを得た。
該結晶をガスクロマトグラフィーによって分析し、得られたクロマトグラフの面積百分率を算出したところ、97.1%であり、該結晶中のヒドロキノン(5−2)の含有量を97.1重量%と仮定すると、1,4−シクロヘキサンジオンを基準とするヒドロキノン(5−2)の収率は、48%であった。
【0066】
[実施例3:ジヒドロキシ化合物(2)の製造例2]

ディーンスターク装置を取り付けた反応容器に、4−ヒドロキシ安息香酸4.54g(32.9mmol)、[ヒドロキノン(5)の製造例2]で得られたヒドロキノン(5−2)2.50g(16.0mmol)、p−トルエンスルホン酸0.31g(1.64mmol)及びキシレン約40gを約25℃の室温で混合した。得られた混合物を還流下で19時間攪拌した後、室温まで冷却した。尚、反応の進行に伴って生成した水はディーンスターク装置によって反応系外へ除去した。その後、析出した固体を濾過し、5℃で保管しておいた2−プロパノール300mLで洗浄した後、50℃で4時間減圧乾燥させて、上記式(2−2)で表されるジヒドロキシ化合物(以下、ジヒドロキシ化合物(2−2)と記すことがある)を含む薄灰色結晶3.51gを得た。
該結晶を液体クロマトグラフィーによって分析し、得られたクロマトグラフの面積百分率を算出したところ、97.5%であり、該結晶中のジヒドロキシ化合物(2−2)の含有量を97.5重量%と仮定すると、ヒドロキノン(5−2)を基準とするジヒドロキシ化合物(2−2)の収率は、55%であった。
【0067】
実施例3で得られたジヒドロキシ化合物(2−2)のスペクトルデータは以下の通りであった。
H−NMR(δ:ppm,DMSO−d) 10.54(br,2H),7.90−8.10(c,4H),6.85−7.32(c,7H),2.37−2.60(m,2H),1.54(m,2H),0.82(t,3H)
【0068】
[実施例4:ジエポキシ化合物(1)の製造例2]

冷却装置を取り付けた反応容器内にて、実施例3で得られたジヒドロキシ化合物(2−2)1.50g(3.72mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド0.062g(0.20mmol)、エピクロロヒドリン14.2g(153mmol)、及び2−メチル−2−プロパノール9.32g(131mmol)を室温で混合し、さらに、70℃で9時間攪拌した後、18℃まで冷却した。次に、15重量%の水酸化ナトリウム水溶液を3.07g(11.5mmol)徐々に加えて、18℃で3時間攪拌した後、0℃まで冷却した。
次に、10重量%の塩化アンモニウム水溶液を23mL加え、室温で、イオン交換水40mLとクロロホルム80mLを加えた後、混合し、クロロホルム層と水層とを得た。クロロホルム層は、さらにイオン交換水で3回洗浄した後、水洗されたクロロホルム層に含まれる不溶分を濾過して除去し、得られた濾液を濃縮して粗生成物を得た。
冷却装置を取り付けた反応容器内にて、得られた粗生成物、トルエン4mLおよび2−プロパノール18mLを混合し、得られた混合物を70℃で1時間攪拌した。得られた混合物を室温まで冷却し、さらに−10℃で終夜保持した。その後、析出した固体を濾過により取り出した。取り出した固体を5℃で保管しておいた2−プロパノールで洗浄した後、乾燥し、上記式(1−2)で表されるジエポキシ化合物(以下、ジエポキシ化合物(1−2)と記すことがある)を含む白色結晶1.56gを得た。
該結晶を液体クロマトグラフィーによって分析し、得られたクロマトグラフの面積百分率を算出したところ、91.1%であり、該結晶中のジエポキシ化合物(1−2)の含有量を91.1重量%と仮定すると、ジヒドロキシ化合物(2−2)を基準とするジエポキシ化合物(1−2)の収率は、76%であった。
【0069】
実施例4で得られたジエポキシ化合物(1−2)のスペクトルデータは以下の通りであった。
H−NMR(δ:ppm,CDCl) 8.08−8.26(c,4H),6.96−7.28(c,7H),4.28−4.48(c,2H),3.93−4.12(c,2H),3.38−3.49(c,2H),2.88−3.00(c,2H),2.74−2.86(c,2H),2.56(m,2H),1.65(m,2H),0.92(t,3H)
【0070】
<溶解度の測定>
実施例2で得られたジエポキシ化合物(1−1)、及び、比較例1として非特許文献1に記載された式(A)で表わされるジエポキシ化合物(ジエポキシ化合物(A))のそれぞれについて、40℃及び65℃におけるメチルイソブチルケトンへの溶解度(ジエポキシ化合物(g)×100/[ジエポキシ化合物(g)+メチルイソブチルケトン(g)]、重量%)を求めた。結果を表1に示した。本発明のジエポキシ化合物の溶解度は、ジエポキシ化合物(A)の溶解度よりも3倍以上高いことがわかる。
【0071】
【表1】

【0072】
[ジアリル化合物(7)の製造例]

温度計、冷却管及び撹拌装置を備えた四つ口フラスコ内に、実施例1で得られたジヒドロキシ化合物(2−1)11.0g(29.1mmol)、炭酸カリウム20.1g(145mmol)、アリルブロミド10.6g(87.6mmol)及びアセトンを混合し、50℃で5時間反応させる。反応終了後の反応液に、イオン交換水とクロロホルムとを加え、クロロホルム層と水層とを得る。クロロホルム層は、さらにイオン交換水で洗浄後、クロロホルムを留去する。得られる残渣をメタノールに懸濁、撹拌し、固体を濾別する。得られる固体を乾燥して、前記式(7−1)で表されるジアリル化合物を得ることができる。
【0073】
[実施例5]
温度計、冷却管及び撹拌装置を備えた四つ口フラスコ内に、前項で得られるジアリル化物(7−1)3.56g(7.8mmol)、m−クロロ過安息香酸(含量:70重量%,23.7mmol)5.84g及びクロロホルムを混合し、室温にて72時間反応させる。反応終了後の反応液にチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、未反応の過酸を分解し、炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄する。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、クロロホルムを留去する。得られる残渣をエタノールに懸濁、撹拌し、固体を濾別する。得られる固体を乾燥してジエポキシ化合物(1−1)を得ることができる。
【0074】
[実施例6:本組成物及びその硬化物の製造例1]
ジエポキシ化合物(1−1)100重量部と、硬化剤として4,4’−ジアミノジフェニルメタン(和光純薬製)20重量部と、溶剤としてN,N−ジメチルホルムアミドとを混合し、溶液状の本組成物を得た。
得られた組成物を遠心濃縮装置で濃縮し、粉末状の本組成物を得た。得られた粉末状の本組成物をアルミナパンに充填した。本組成物を充填したアルミナパンを、示差走査熱量測定装置(TAインスツルメンツ社製DSC Q2000)を用いて加熱し、硬化物を得た(硬化条件:窒素雰囲気下で、140℃で20分間加熱した後、140℃〜180℃まで、1℃/分で加熱した後、さらに、200℃で30分間加熱)。得られた硬化物を20℃まで冷却した。示差走査熱量測定装置(昇温速度:20℃/分)で、硬化物のガラス転移点を測定したところ、144℃であった。
【0075】
[実施例7:本組成物及びその硬化物の製造例2]
実施例6において、4,4’−ジアミノジフェニルメタン20重量部に代えて、1,5−ジアミノナフタレン(和光純薬工業株式会社製)16重量部を用いた以外は実施例6と同様に行い、溶液状の本組成物を得た。得られた溶液状の組成物を遠心濃縮装置で濃縮し、粉末状の本組成物を得た。得られた粉末状の組成物を実施例6と同様に加熱し、硬化物を得た。硬化物のガラス転移点は、151℃であった。
【0076】
[実施例8:本組成物及びその硬化物の製造例3]
実施例6において、4,4’−ジアミノジフェニルメタン20重量部に代えて、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物(東京化成工業株式会社製)31重量部を用い、硬化促進剤として2−フェニルイミダゾール2.6重量部をさらに加えた以外は実施例6と同様に行い、溶液状の組成物を得た。得られた溶液状の組成物を遠心濃縮装置で濃縮し、粉末状の組成物を得た。得られた粉末状の組成物を実施例6と同様に加熱し、硬化物を得た。硬化物のガラス転移点は、105℃であった。
【0077】
[実施例9:本組成物及びその硬化物の製造例4]
実施例6において、4,4’−ジアミノジフェニルメタン20重量部に代えて、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物(東京化成工業株式会社製)27重量部を用い、硬化促進剤として2−フェニルイミダゾール2.5重量部をさらに加えた以外は実施例6と同様に行い、溶液状の組成物を得た。得られた溶液状の組成物を遠心濃縮装置で濃縮し、粉末状の組成物を得た。得られた粉末状の組成物を実施例6と同様に加熱し、硬化物を得た。硬化物のガラス転移点は、127℃であった。
【0078】
[実施例10:本組成物及びその硬化物の製造例5]
実施例6において、4,4’−ジアミノジフェニルメタン20重量部に代えて、フェノールノボラック硬化剤「MEH−7851H」(明和化成株式会社製)84重量部を用い、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン3.7重量部をさらに加えた以外は実施例6と同様に行い、溶液状の組成物を得た。得られた溶液状の組成物を遠心濃縮装置で濃縮し、粉末状の組成物を得た。得られた粉末状の組成物を実施例6と同様に加熱し、硬化物を得た。硬化物のガラス転移点は、103℃であった。
【0079】
[実施例11:本組成物及びその硬化物の製造例6]
実施例6において、4,4’−ジアミノジフェニルメタン20重量部に代えて、ジシアンジアミド(和光純薬工業株式会社製)10重量部を用い、硬化促進剤として2−フェニルイミダゾール2.2重量部をさらに加えた以外は実施例6と同様に行い、溶液状の組成物を得た。得られた溶液状の組成物を遠心濃縮装置で濃縮し、粉末状の組成物を得た。得られた粉末状の組成物を実施例6と同様に加熱し、硬化物を得た。硬化物のガラス転移点は、146℃であった。
【0080】
[実施例12:アルミナ含有組成物及びその硬化物の製造例1]
ジエポキシ化合物(1−1)100重量部と、硬化剤として1,5−ジアミノナフタレン(和光純薬工業株式会社製)16重量部と、アルミナ粉末1071重量部(住友化学株式会社製α−アルミナ粉末;レーザー回折法によって測定された平均粒子径(D50)が18μmであるアルミナ粉末A1と、平均粒子径(D50)が3μmであるアルミナ粉末B1と、平均粒子径(D50)が0.4μmであるアルミナ粉末C1とを、重量比(アルミナ粉末A1/アルミナ粉末B1/アルミナ粉末C1)=793/150/129、体積比(アルミナ粉末A1/アルミナ粉末B1/アルミナ粉末C1)=74/14/12で混合することにより調製)と、溶剤としてメチルイソブチルケトン370重量部とN,N−ジメチルホルムアミド60重量部とを混合し、溶液状のアルミナ含有組成物を調製した。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、アプリケータで、調製したアルミナ含有組成物を350μmの厚みになるよう塗布した。アルミナ含有組成物が塗布されたPETフィルムを1時間室温で乾燥し、さらに120℃で5分間乾燥した後、PETフィルムを剥がし、シートを得た。得られたシートを厚さ40μmのアルミ箔で挟み、真空プレス成形(プレス温度を115℃から180℃まで60分かけて昇温、真空度:1kPa、プレス圧:6MPa)を行った。アルミ箔を剥がし、372μmの厚みを有するシート状の硬化物を得た。NETZSCH製キセノンフラッシュアナライザー nanoflash LFA447型により、該硬化物の熱伝導率を測定したところ、9.1W/(m・K)であった。
化合物(1−1)と1,5−ジアミノナフタレンとを含み、アルミナ粉末を含まない組成物を硬化させることにより得られる硬化物の密度を1.2g/cm、アルミナ粉末の密度を3.97g/cmとして、得られた硬化物中のアルミナ粉末の含有割合を算出したところ、該硬化物中のアルミナ粉末の含有割合は、74体積%であった。
【0081】
[実施例13:本組成物及びそのプリプレグの製造例]
ジエポキシ化合物(1−1)100重量部と、硬化剤として1,5−ジアミノナフタレン(和光純薬工業株式会社製)16重量部と、溶剤としてメチルイソブチルケトン370重量部と、N,N−ジメチルホルムアミド60重量部とを混合することにより、溶液状の組成物を得ることができる。得られる組成物を、厚さ0.2mmのガラス繊維織布に含浸した後、加熱乾燥することにより、プリプレグを得ることができる。得られるプリプレグ4枚を重ね、温度175℃、圧力4MPaの条件で90分間プレス成形することにより、積層板を得ることができる。
【0082】
[実施例14:アルミナ含有組成物及びその硬化物の製造例2]
ジエポキシ化合物(1−1)100重量部と、硬化剤として1,5−ジアミノナフタレン(和光純薬工業株式会社製)16重量部と、アルミナ粉末567重量部(住友化学株式会社製α−アルミナ粉末;平均粒子径(D50)が18μmであるアルミナ粉末)と、溶剤としてメチルイソブチルケトン160重量部とN,N−ジメチルホルムアミド60重量部とを混合し、溶液状のアルミナ含有組成物を調製した。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、アプリケータで調製した組成物を350μmの厚みになるよう塗布した。アルミナ含有組成物が塗布されたPETフィルムを1時間室温で乾燥し、さらに120℃で10分間乾燥した後、PETフィルムを剥がし、シートを得た。得られたシートを厚さ40μmのアルミ箔で挟み、真空プレス成形(プレス温度:140℃、真空度:1kPa、プレス圧:6MPa、処理時間:20分)を行った。その後、プレス温度を180℃まで40分かけて昇温した。アルミ箔を剥がし、335μmの厚みを有するシート状の硬化物を得た。NETZSCH製キセノンフラッシュアナライザー nanoflash LFA447型により、該硬化物の熱伝導率を測定したところ、5.1W/(m・K)であった。
ジエポキシ化合物(1−1)と1,5−ジアミノナフタレンとを含み、アルミナ粉末を含まない組成物を硬化させることにより得られる硬化物の密度を1.2g/cm、アルミナ粉末の密度を3.97g/cmとして、得られた硬化物中のアルミナ粉末の含有割合を算出したところ、該硬化物中のアルミナ粉末の含有割合は、60体積%であった。
【0083】
[実施例15〜20]
実施例6〜11において、式(1−1)で示される化合物に代えて、式(1−2)で示される化合物を用いる以外は、実施例6〜11と同様に行うことにより、溶液状の本組成物、粉末状の本組成物およびそれらの硬化物を得ることができる。
【0084】
[実施例21〜22]
実施例12及び14において、式(1−1)で示される化合物に代えて、式(1−2)で示される化合物を用いる以外は、実施例12及び14と同様に行うことにより、アルミナ含有組成物およびその硬化物を得ることができる。
【0085】
[実施例23]
実施例13において、式(1−1)で示される化合物に代えて、式(1−2)で示される化合物を用いる以外は、実施例13と同様に行うことにより、本組成物およびそのプリプレグを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、メチルイソブチルケトンに対する溶解性に優れる、ジエポキシ化合物が提供可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わし、Rは炭素数2〜10のアルキル基を表わす。)
で表わされるジエポキシ化合物。
【請求項2】
アンモニウム塩及び無機塩基の存在下、式(2)

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わし、Rは炭素数2〜10のアルキル基を表わす。)
で表わされるジヒドロキシ化合物と式(3)

(式中、Xはハロゲン原子を表わす。)
で表わされるエピハロヒドリンとを反応させる工程を含むことを特徴とする式(1)

(式中、R〜Rは前記と同じ意味を表わす。)
で表わされるジエポキシ化合物の製造方法。
【請求項3】
前記工程が、アルコール溶媒の存在下で反応させる工程であることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記アルコール溶媒が、2級アルコール溶媒及び3級アルコール溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程が、下記工程ア及び工程イを含むことを特徴とする請求項2〜4のいずれか記載のジエポキシ化合物の製造方法。
工程ア:前記式(2)で表わされるジヒドロキシ化合物、前記式(3)で表わされるエピハロヒドリン、及びアンモニウム塩を混合する工程。
工程イ:工程アで得られた混合物に無機塩基を混合する工程。
【請求項6】
前記無機塩基が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであることを特徴とする請求項2〜5のいずれか記載のジエポキシ化合物の製造方法。
【請求項7】
式(2)

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わし、Rは炭素数2〜10のアルキル基を表わす。)
で表わされることを特徴とするジヒドロキシ化合物。
【請求項8】
酸の存在下、式(4)

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わす。)
で表わされるヒドロキシ安息香酸と式(5)

(式中、Rは炭素数2〜10のアルキル基を表わす。)
で表わされるヒドロキノンとを反応させる工程を含むことを特徴とする式(2)

(式中、R〜Rは前記と同じ意味を表わす。)
で表わされるジヒドロキシ化合物の製造方法。
【請求項9】
式(1)

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わし、Rは炭素数2〜10のアルキル基を表わす。)
で表わされるジエポキシ化合物及び硬化剤を含むことを特徴とする組成物。
【請求項10】
硬化剤が、アミン硬化剤、フェノール硬化剤及び酸無水物硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤であることを特徴とする請求項9記載の組成物。
【請求項11】
アミン硬化剤が、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、1,5−ジアミノナフタレン及びp−フェニレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン硬化剤であることを特徴とする請求項10記載の組成物。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか記載のエポキシ組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項13】
請求項9〜11のいずれか記載の組成物を基材に塗布もしくは含浸した後、半硬化して得られるプリプレグ。
【請求項14】
式(1)

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わし、Rは炭素数2〜10のアルキル基を表わす。)
で表わされるジエポキシ化合物、硬化剤及びアルミナを含むことを特徴とするアルミナ含有組成物。
【請求項15】
前記式(1)で表されるジエポキシ化合物及び硬化剤の合計100重量部に対して、アルミナを75重量部〜95重量部含むことを特徴とする請求項14記載のアルミナ含有組成物。
【請求項16】
アルミナが、2μm以上100μm以下のD50(累積体積50%の粒子径)を有するアルミナ粒子A、1μm以上10μm以下のD50を有するアルミナ粒子B、及び、0.01μm以上5μm以下のD50を有するアルミナ粒子Cの混合物であり、かつ、アルミナ粒子Aとアルミナ粒子Bとアルミナ粒子Cの合計100体積%に対し、アルミナ粒子Aが50〜90体積%、アルミナ粒子Bが5〜40体積%、及び、アルミナ粒子Cが1〜30体積%の混合物であることを特徴とする請求項14又は15記載のアルミナ含有組成物。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか記載のアルミナ含有組成物を硬化して得られるアルミナ含有硬化物。
【請求項18】
アルミナ含有硬化物に含まれるアルミナの含有割合が、該アルミナ含有硬化物100体積%に対し、50〜80体積%であることを特徴とする請求項17記載のアルミナ含有硬化物。

【公開番号】特開2011−84557(P2011−84557A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205217(P2010−205217)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】