説明

デュアルフューエルエンジンを備えた車両の制御装置

【課題】排気エミッションの向上を図りつつ、水素消費量の増大を抑制して、触媒未活性時には確実に水素を使用することができるようにする。
【解決手段】燃料としてガソリンと水素とを使用可能なデュアルフューエルエンジンを備えた車両の制御装置は、エンジンの排気通路に備えられた排気浄化触媒が活性状態にあるか否かを検出する(S3)活性状態検出手段と、水素の残量を検出する(S8)水素残量検出手段と、前記手段で触媒が活性状態にないと検出された場合に、前記手段で検出された水素の残量が所定の残量よりも多いときは水素を使用し(S9)、少ないときはガソリンと水素との混合物を使用する(S10)燃料選択手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料として2種類の燃料を使用可能なデュアルフューエルエンジンを備えた車両の制御装置に関し、排気エミッションの向上を図る燃焼機関の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地球環境保護の観点からガソリン等の液体燃料と水素等の気体燃料とを切り替えて使用することが可能なデュアルフューエルエンジンを備えた車両が知られている。そして、従来、冷間始動時の未燃ガスの排出を抑制するため、エンジンの排気通路に備えられた排気浄化触媒が活性状態となるまでは気体燃料を使用し、活性状態となったのちは液体燃料を使用するという技術がある(例えば特許文献1参照)。また、ガソリンに水素を加えて希薄燃焼させることにより燃焼温度を低下させ、排ガス中の窒素酸化物(NOx)の低減を図るという技術もある(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−213394(段落0008,0011)
【特許文献2】特開2004−116398(段落0002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前者の技術の場合、排気浄化触媒が未活性状態の間は液体燃料を使用しないので、たとえ排気浄化触媒が未活性状態であっても、エンジンの吸気通路の内面に付着した液体燃料が未燃のまま大気に排出されるという不具合が抑制される。しかし、ガソリンを燃料として使用したときの排気ガス温度に比べて、水素を燃料として使用したときの排気ガス温度が低いため、触媒が排気ガスで昇温されて活性状態となるまでの時間が、水素を使用したときはガソリンを使用したときよりも長くなってしまう。その結果、水素の消費量が多くなりがちとなる。
【0005】
一方、水素の残量が少なくなってきたら、水素の消費はなるべく抑制することが望ましい。そうしないと、次の触媒未活性時に使用するだけの水素量が確保できなくなる可能性があるからである。特に、水素の供給設備(水素スタンド)は、ガソリンの供給設備(ガソリンスタンド)等と比べると、まだ数が少ないのが現状である。そのため、水素を補給できる機会がガソリン等と比べると多くないから、水素の残量が減ってきたときに水素消費量をなるべく抑制することの重要性はなおさら大きいものである。
【0006】
本発明は、燃料としてガソリンと水素とを使用可能なデュアルフューエルエンジンを備えた車両における前記不具合に対処するもので、排気エミッションの向上を図りつつ、水素消費量の増大を抑制して、触媒未活性時には確実に水素を使用することができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、燃料としてガソリンと水素とを使用可能なデュアルフューエルエンジンを備えた車両の制御装置であって、エンジンの排気通路に備えられた排気浄化触媒が活性状態にあるか否かを検出する活性状態検出手段と、水素の残量を検出する水素残量検出手段と、前記活性状態検出手段で排気浄化触媒が活性状態にないと検出された場合に、前記水素残量検出手段で検出された水素の残量が所定の残量よりも多いときは、燃料として水素を使用し、少ないときは、燃料としてガソリンと水素との混合物を使用する燃料選択手段とを有していることを特徴とする。
【0008】
次に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のデュアルフューエルエンジンを備えた車両の制御装置であって、前記車両は、エンジンにより駆動されて電力を発生する発電機と、この発電機で発生された電力を蓄える電池と、この電池及び/又は前記発電機から電力の供給を受けて駆動力を出力する車両の動力源としての電動機とを有していることを特徴とする。
【0009】
次に、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のデュアルフューエルエンジンを備えた車両の制御装置であって、車両から最寄の水素供給設備までの距離を検出する距離検出手段と、この距離検出手段で検出された距離が短いほど、前記所定の残量を小さくする変更手段とをさらに有していることを特徴とする。
【0010】
次に、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載のデュアルフューエルエンジンを備えた車両の制御装置であって、前記水素残量検出手段で検出された水素の残量が少ないほど、ガソリンと水素との混合物中の水素の割合を少なくする補正手段をさらに有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
まず、請求項1に記載の発明によれば、燃料としてガソリンと水素とを使用可能なデュアルフューエルエンジンを備えた車両において、エンジンの排気通路に備えられた排気浄化触媒が活性状態にない場合に、水素の残量が所定の残量よりも多いときは、燃料として水素を使用するので、水素残量を心配することなく、排気エミッションの向上を図ることができる。一方、水素の残量が所定の残量よりも少ないときは、燃料としてガソリンと水素との混合物を使用するので、排気エミッションの向上を図りつつ、水素消費量の増大を抑制して、次の触媒未活性時に使用するだけの水素量を確保することができる。なお、このときの水素消費量の増大の抑制は、水素の一部がガソリンに置き換わること、及び、ガソリンの使用により排気ガス温度が上がって触媒が活性状態となるまでの時間が短縮化することの両方の事象に起因する。
【0012】
次に、請求項2に記載の発明によれば、電動機が電池のみから電力の供給を受けて駆動力を出力しているときはエンジンが停止するから、エンジンが冷えて排気浄化触媒が未活性状態になることが多くなり、請求項1で述べた発明の効果が顕著に得られることとなる。
【0013】
次に、請求項3に記載の発明によれば、車両から最寄の水素供給設備までの距離が短いほど、換言すれば、水素補給が可能となるまでの時間が短いほど、燃料として水素が使用され易くなるので、水素残量を心配することなく、排気エミッションの向上が確実に図られる。一方、車両から最寄の水素供給設備までの距離が長いほど、換言すれば、水素補給が可能となるまでの時間が長いほど、燃料としてガソリンと水素との混合物が使用され易くなるので、排気エミッションの向上を図りつつ、水素消費量の増大を抑制して、次の触媒未活性時に使用するだけの水素量の確保が確実に図られることとなる。
【0014】
次に、請求項4に記載の発明によれば、水素の残量が少ないほどガソリンと水素との混合物中の水素の割合を少なくするので、これによっても、排気エミッションの向上を図りつつ、水素消費量の増大を抑制して、次の触媒未活性時に使用するだけの水素量の確保が確実に図られることとなる。以下、最良の実施形態を通して本発明をさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本実施形態に係る車両1の全体構成を示すブロック図である。この車両1は、所謂シリーズタイプのハイブリッド車両であって、エンジン10により駆動されて電力を発生するジェネレータ(発電機)20と、このジェネレータ20で発生された電力を蓄える高電圧バッテリ40と、このバッテリ40及び/又は前記ジェネレータ20から電力の供給を受けて駆動力を出力する車両1の動力源としてのモータ(電動機)60とを有している[請求項2の構成に相当]。ジェネレータ20と高電圧バッテリ40との間には交流電気を直流電気に変換するためのAC/DCコンバータ30が介設され、高電圧バッテリ40とモータ60との間には直流電気を交流電気に変換するためのDC/ACコンバータ50が介設されている。モータ60の駆動力はデファレンシャル70で減速されて左右の駆動輪(図例では後輪)に伝達される。エンジン10は、ガソリン燃料タンク80に貯留されている液体燃料としてのガソリンと、水素燃料タンク90に貯留されている気体燃料としての水素とを切り替えて使用することが可能なデュアルフューエルエンジンである。
【0016】
このエンジン10において、例えば1500rpmのときの排気ガス温度は、燃料としてガソリンのみを使用したときは500℃、水素のみを使用したときは300℃、ガソリンと水素との混合物を使用したときは(その混合割合にも依存するが)およそ400℃である。これから判るように、ガソリンのみを燃料として使用したときの排気ガス温度に比べて、水素のみを燃料として使用したときの排気ガス温度は低いのである。その結果、後述する排気通路16上の排気浄化触媒17が排気ガスで昇温されて活性状態となるまでの時間が、水素のみを使用したときはガソリンのみを使用したときよりも長くなり、結果として、水素の消費量が多くなりがちとなるのである。
【0017】
この車両1においては、発進時及び低トルク走行時は、バッテリ40のみからモータ60に電力が供給されて車両1が走行する。中トルク走行時は、エンジン10が駆動し、ジェネレータ20のみからモータ60に電力が供給されて車両1が走行する。そして、高トルク走行時は、エンジン10が駆動し、ジェネレータ20からモータ60に電力が供給されると共に、バッテリ40からもモータ60に電力が供給されて車両1が走行する。なお、バッテリ40の蓄電量が少なくなったときは、モータ60の必要電力以上の発電量がジェネレータ20で得られるようにエンジン10が駆動し、その余剰分の電力がバッテリ40に供給されて充電が行われる。このように、この車両1においては、発進時及び低トルク走行時は、エンジン10が停止するから、エンジン10が冷えて排気浄化触媒17が未活性状態になることが頻繁に起こる。
【0018】
図2は、この車両1の制御システム図である。エンジン10は、ツインロータ式のロータリーエンジンであって、ロータハウジング11のトロコイド面に3点で接し3つの作動室を画成するロータ12の回転(→で示す)により出力軸としてのエキセントリックシャフト13が回転駆動される。ロータハウジング11,11に接続されている吸気通路14上にスロットル弁15及びガソリン用燃料噴射弁102,102が配設され、排気通路16上に排気浄化触媒17が配設されている。ここで、排気浄化触媒17は、より具体的には、車両1のフロア下面の外部に配置されている。つまり、走行風を受けて冷却され得る部位に配置されている。水素用燃料噴射弁103及び1対の点火プラグ104,104はロータハウジング11の作動室を臨むように取り付けられている。なお、吸気通路14内及び排気通路16内に示した矢印は吸気や排気等の流体の流れを示す。
【0019】
コントロールユニット100は、バッテリ40を出入りする電流及びバッテリ40の電圧を検出するセンサ、つまりバッテリ40の蓄電量を検出するセンサ111からの信号と、車速センサ112からの信号と、乗員によるアクセルペダル(図示せず)の踏込量を検出するアクセル開度センサ113からの信号と、運転席前方のインパネ(図示せず)に備えられ、乗員が操作することにより使用燃料としてガソリン又は水素を選択するための燃料切換スイッチ114からの信号と、排気浄化触媒17の温度を検出する触媒温度センサ(特許請求の範囲における「活性状態検出手段」に相当)115からの信号と、水素燃料タンク90の圧力を検出するセンサ、つまり水素の残量を検出するセンサ(特許請求の範囲における「水素残量検出手段」に相当)116からの信号と、車両1の位置を検出するためのGPSアンテナ(特許請求の範囲における「距離検出手段」に相当)117からの信号とを入力する。そして、AC/DCコンバータ30、DC/ACコンバータ50、スロットル弁アクチュエータ101、各燃料噴射弁102,103、及び、点火プラグ104にそれぞれ制御信号を出力する。
【0020】
次に、図3のフローチャートに従って、前記コントロールユニット100が行う具体的制御動作の1例を説明する。まず、ステップS1で、各種信号を読み込んだ後、ステップS2で、エンジン10の運転要求があるか否か(例えば前述の低トルク走行から中トルク走行に移行したか否か等)を判定する。その結果、運転要求がある場合は、ステップS3で、触媒温度TMPが触媒活性温度TMPx(例えば250℃)より高いか否かを判定する。その結果、高い場合、つまり触媒17が活性状態にある場合は、ステップS4で、水素残量QHが第1燃料選択水素残量QHx(例えば満タンのときの圧力が36MPaである水素燃料タンク90の圧力として1MPa)より多いか否かを判定する。その結果、多い場合は、ステップS5で、燃料切換スイッチ114は水素を選択しているか否かを判定する。その結果、水素を選択している場合は、ステップS6で、燃料として水素を選択する。
【0021】
これに対し、ステップS5で、水素を選択していない場合、つまりガソリンを選択している場合は、ステップS7で、燃料としてガソリンを選択する。また、ステップS4で、水素残量QHが第1燃料選択水素残量QHxより多くない場合、つまり水素残量QHが減ってきている場合も、ステップS7で、燃料としてガソリンを選択する。
【0022】
さらに、ステップS3で、触媒温度TMPが触媒活性温度TMPxより高くない場合、つまり触媒17が活性状態にない場合は、ステップS8で、水素残量QHが第2燃料選択水素残量QHy(例えば満タンのときの圧力が36MPaである水素燃料タンク90の圧力として12MPa)より多いか否かを判定する。その結果、多い場合、つまり水素残量QHにまだ余裕があるときは、ステップS9で、燃料として水素を選択する(特許請求の範囲における「燃料選択手段」に相当)[請求項1の構成に相当]。これに対し、ステップS8で、水素残量QHが第2燃料選択水素残量QHyより多くない場合、つまり水素残量QHにあまり余裕がないときは、ステップS10で、燃料としてガソリンと水素との混合物を選択する(特許請求の範囲における「燃料選択手段」に相当)[請求項1の構成に相当]。
【0023】
一方、ステップS2で、エンジン10の運転要求がない場合は、ステップS11で、エンジン10が運転中か否かを判定し、運転中であれば、ステップS12で、エンジン10を停止し、運転中でなければ、そのままリターンする。
【0024】
図4は、図3の制御動作と並行して行われる別の制御動作を示すフローチャートである。まず、ステップS21で、GPS情報を読み込んだ後、ステップS22で、そのGPS情報から(例えば図外のナビゲーションシステムの地図情報等と併せて)最寄の水素スタンドまでの距離を計算する。そして、ステップS23で、その距離に基いて、図3のステップS4,S8で用いる第1、第2燃料選択水素残量(QHx,QHy)を設定する。ここで、図5に例示するような特性を有するマップが用いられる。すなわち、車両1から最寄の水素スタンドまでの距離が短いほど、燃料選択水素残量(図例は第2燃料選択水素残量QHyを示している)が少なくされるのである(特許請求の範囲における「変更手段」に相当)[請求項3の構成に相当]。これにより、車両1から最寄の水素スタンドまでの距離が短いほど、つまり、水素補給が可能となるまでの時間が短いほど、前述の図3のステップS4,S8でYESと判定され易くなって、燃料として水素が使用され易くなる。なお、図中、Aは、例えば満タンのときの圧力が36MPaである水素燃料タンク90の圧力として12MPa、Bは、同じく5MPaである。
【0025】
(充実部分:請求項4の「補正手段」の実体を具体化しました)
図6は、図3の制御動作と並行して行われるさらに別の制御動作を示すフローチャートである。まず、ステップS31で、水素燃料タンク圧力センサ116からの信号、つまり水素残量QHを読み込んだ後、ステップS32で、その水素残量QHに基いて、水素の添加割合を設定する。ここで、図7に例示するような特性を有するマップが用いられる。すなわち、水素残量QHが少ないほど、ガソリンと水素との混合物中における水素の添加割合が少なくされるのである(特許請求の範囲における「補正手段」に相当)[請求項4の構成に相当]。図中、Cは、例えば満タンのときの圧力が36MPaである水素燃料タンク90の圧力として1MPa、QHyは、同じく12MPaである。
【0026】
以上のように、本実施形態では、燃料としてガソリンと水素とを使用可能なデュアルフューエルエンジン10を備えた車両1において、エンジン10の排気通路16に備えられた排気浄化触媒17が活性状態にない場合に(S3でNO)、水素残量QHが第2燃料選択水素残量QHyよりも多いときは(S8でYES)、燃料として水素を使用するので(S9)、水素残量を心配することなく、排気エミッションの向上を図ることができる。一方、水素残量QHが第2燃料選択水素残量QHyよりも少ないときは(S8でNO)、燃料としてガソリンと水素との混合物を使用するので(S10)、排気エミッションの向上を図りつつ、水素消費量の増大を抑制して、次の触媒未活性時に使用するだけの水素量を確保することができる。なお、このときの水素消費量の増大の抑制は、水素の一部がガソリンに置き換わること、及び、ガソリンの使用により排気ガス温度が上がって触媒17が活性状態となるまでの時間が短縮化することの両方の事象に起因する。
【0027】
例えば、図8に例示したように、触媒温度TMPが触媒活性温度TMPxより低く、触媒17が活性状態にない場合であって、水素残量QHが第2燃料選択水素残量QHyよりも多いときは、排気ガス温度が相対的に低い水素を燃料として使用するから、触媒温度TMPは、符号アで示すように、エンジン10の始動後、比較的長い時間をかけて触媒活性温度TMPxまで到達し、触媒17は活性状態になる。しかし、水素残量QHに余裕があるから水素残量QHを心配することがない。これに対し、触媒温度TMPが触媒活性温度TMPxより低く、触媒17が活性状態にない場合であって、水素残量QHが第2燃料選択水素残量QHyよりも少ないときは、排気ガス温度が相対的に高いガソリンと水素との混合物を燃料として使用するから、触媒温度TMPは、符号イで示すように、エンジン10の始動後、比較的短時間のうちに触媒活性温度TMPxまで到達し、触媒17は迅速に活性状態になる。これにより、排気エミッションの向上を図りながら、水素消費量の増大を抑制して、次の触媒未活性時に使用するだけの水素量を確保することが可能となる。
【0028】
また、モータ60がバッテリ40のみから電力の供給を受けて駆動力を出力している発進時及び低トルク走行時はエンジン10が停止するから、エンジン10が冷えて排気浄化触媒17が未活性状態になることが多くなり、前述した効果が顕著に得られることとなる。
【0029】
また、車両1から最寄の水素供給設備までの距離が短いほど、換言すれば、水素補給が可能となるまでの時間が短いほど、燃料として水素が使用され易くなるので(図4のS23、図5、及び図3のS8,S9参照)、水素残量QHを心配することなく、排気エミッションの向上が確実に図られる。一方、車両1から最寄の水素供給設備までの距離が長いほど、換言すれば、水素補給が可能となるまでの時間が長いほど、燃料としてガソリンと水素との混合物が使用され易くなるので(図4のS23、図5、及び図3のS8,S10参照)、排気エミッションの向上を図りつつ、水素消費量の増大を抑制して、次の触媒未活性時に使用するだけの水素量の確保が確実に図られることとなる。
【0030】
また、水素残量QHが少ないほどガソリンと水素との混合物中の水素の割合を少なくするので(図6のS32、図7、及び図3のS10参照)、これによっても、排気エミッションの向上を図りつつ、水素消費量の増大を抑制して、次の触媒未活性時に使用するだけの水素量の確保が確実に図られることとなる。
【0031】
なお、前記実施形態は、本発明の最良の実施形態ではあるが、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の修正や変更を施してよいことはいうまでもない。例えば、前記実施形態では、触媒17の活性状態を触媒温度TMPで検出したが、これに代えて、排気ガス温度で検出することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、燃料としてガソリンと水素とを使用可能なデュアルフューエルエンジンを備えた車両において、排気エミッションの向上を図りつつ、水素消費量の増大を抑制して、触媒未活性時には確実に水素を使用することができる技術であるから、排気エミッションの向上を図る燃焼機関の技術分野において広範な産業上の利用可能性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の最良の実施の形態に係る車両の全体構成を示すブロック図である。
【図2】前記車両の制御システム図である。
【図3】前記車両のコントロールユニットが行う具体的制御動作の1例を示すフローチャートである。
【図4】図3の制御動作と並行して行われる別の制御動作を示すフローチャートである。
【図5】図4のステップS23で用いられるマップの特性図である。
【図6】図3の制御動作と並行して行われるさらに別の制御動作を示すフローチャートである。
【図7】図6のステップS32で用いられるマップの特性図である。
【図8】図3のステップS9で得られる作用及びステップS10で得られる作用を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0034】
1 ハイブリッド車両
10 ロータリーエンジン
14 吸気通路
16 排気通路
17 排気浄化触媒
20 ジェネレータ(発電機)
30 AC/DCコンバータ
40 高電圧バッテリ(電池)
50 DC/ACコンバータ
60 モータ(電動機)
80 ガソリン燃料タンク
90 水素燃料タンク
100 コントロールユニット(燃料選択手段、変更手段、補正手段)
102 ガソリン用燃料噴射弁
103 水素用燃料噴射弁
112 車速センサ
114 燃料切換スイッチ
115 触媒温度センサ(活性状態検出手段)
116 水素燃料タンク圧力センサ(水素残量検出手段)
117 GPSアンテナ(距離検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料としてガソリンと水素とを使用可能なデュアルフューエルエンジンを備えた車両の制御装置であって、
エンジンの排気通路に備えられた排気浄化触媒が活性状態にあるか否かを検出する活性状態検出手段と、
水素の残量を検出する水素残量検出手段と、
前記活性状態検出手段で排気浄化触媒が活性状態にないと検出された場合に、前記水素残量検出手段で検出された水素の残量が所定の残量よりも多いときは、燃料として水素を使用し、少ないときは、燃料としてガソリンと水素との混合物を使用する燃料選択手段とを有していることを特徴とするデュアルフューエルエンジンを備えた車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデュアルフューエルエンジンを備えた車両の制御装置であって、
前記車両は、エンジンにより駆動されて電力を発生する発電機と、この発電機で発生された電力を蓄える電池と、この電池及び/又は前記発電機から電力の供給を受けて駆動力を出力する車両の動力源としての電動機とを有していることを特徴とするデュアルフューエルエンジンを備えた車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のデュアルフューエルエンジンを備えた車両の制御装置であって、
車両から最寄の水素供給設備までの距離を検出する距離検出手段と、
この距離検出手段で検出された距離が短いほど、前記所定の残量を小さくする変更手段とをさらに有していることを特徴とするデュアルフューエルエンジンを備えた車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のデュアルフューエルエンジンを備えた車両の制御装置であって、
前記水素残量検出手段で検出された水素の残量が少ないほど、ガソリンと水素との混合物中の水素の割合を少なくする補正手段をさらに有していることを特徴とするデュアルフューエルエンジンを備えた車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−128032(P2008−128032A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311320(P2006−311320)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】