説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】 過給機を保護するとともにエンジンの再始動性を良好に保ち、更にはエンジン動力を有効に利用してエネルギ効率の向上を図る。
【解決手段】 過給機が組み付けられるエンジンと、これに駆動されるジェネレータとを備えるハイブリッド車両の制御装置において、エンジンを停止させる際には、過給機のタービン温度Ttに基づいてエンジン停止前の冷却時間Tcが設定され(ステップS4)、バッテリの充電状態SOCに基づいてエンジン停止前の発電時間Tgが設定される(ステップS7)。冷却時間Tcの方が長い場合にはアイドル時間TiとしてTcが設定され(ステップS11)、発電時間Tgの方が長い場合にはアイドル時間TiとしてTgが設定される(ステップS12)。そして、アイドル時間Tiが経過するまで、エンジンはアイドリング状態に保たれ、エンジンの余剰動力を用いてジェネレータは発電駆動される(ステップS14)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機が組み付けられるエンジンと、これに駆動されるジェネレータとを備えるハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンおよび電動モータを駆動源とするハイブリッド車両の駆動方式としては、発電用の動力源としてエンジンを備え、走行用の動力源として電動モータを備えるようにしたシリーズ方式や、走行用の駆動源としてエンジンと電動モータとを備えるようにしたパラレル方式がある。また、シリーズ方式とパラレル方式とを組み合わせるようにしたシリーズ・パラレル方式のハイブリッド車両も開発されている。
【0003】
このようなハイブリッド車両にあっては、エネルギ効率を高めて燃料消費量を抑制することが重要となっている。そこで、走行用の動力源として搭載される電動モータにあっては、車両の減速エネルギを用いて発電することができるモータジェネレータとなっており、車両の減速エネルギを電気エネルギに変換してバッテリに回収するようにしている。また、停止時などエンジン動力が不要となる場合には、エンジンを自動的に停止させて燃料消費量を抑制するようにしたアイドルストップ機構も提案されている。
【0004】
ところで、駆動源として搭載されるエンジンには、排気容量当たりの出力向上やエンジン出力当たりの重量軽減を図るため、過給機であるターボチャージャが組み付けられることも多い。このターボチャージャを備えるエンジンにあっては、高速回転するタービン軸の温度が数百度に達するため、潤滑油を循環させながらタービン軸に供給することにより、タービン軸を冷却するとともにその潤滑状態を保つようにしている。しかしながら、潤滑油を吐出するオイルポンプはエンジンによって駆動されるため、タービン温度が上昇した状態のもとでエンジンを停止させた場合には、潤滑油の供給停止に伴ってタービン軸に焼き付き等を生じさせてしまうおそれがある。そこで、タービン温度が所定温度を上回っている場合には、イグニッションスイッチがオフ操作された場合であっても、エンジンの駆動状態を維持するようにしたエンジン制御装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭62−114152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるようなエンジン制御装置は、単にエンジンの運転時間を延長させるものであるため、このようなエンジン制御装置をそのままハイブリッド車両に適用すると、潤滑油を吐出させるためだけにエンジンを駆動させることになり、燃料を無駄に消費してしまうとともにエネルギ効率を低下させることになっていた。一方、燃料消費量を削減してエネルギ効率を向上させるため、イグニッションスイッチのオフ操作とともにエンジンを停止させようとすると、タービン温度によってはターボチャージャに焼き付き等を生じさせてしまうおそれがある。また、イグニッションスイッチのオフ操作によって、エンジンを直ちに停止させようとすると、バッテリの充電状態によってはエンジンの再始動が困難になるおそれもある。
【0006】
本発明の目的は、過給機を保護するとともにエンジンの再始動性を良好に保ち、更にはエンジン動力を有効に利用してエネルギ効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のハイブリッド車両の制御装置は、過給機が組み付けられるエンジンと、前記エンジンに駆動されるジェネレータとを備えるハイブリッド車両の制御装置であって、前記過給機の温度に基づいて、エンジン停止信号出力時からエンジン停止までの冷却時間を設定する冷却時間設定手段と、バッテリの充電状態に基づいて、エンジン停止信号出力時からエンジン停止までの発電時間を設定する発電時間設定手段と、前記冷却時間と前記発電時間とに基づいて、エンジン停止信号が出力された後のエンジン運転時間を設定する運転時間設定手段と、前記エンジン運転時間の経過中に前記ジェネレータを発電制御する発電制御手段とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明のハイブリッド車両の制御装置は、前記エンジンに駆動されるオイルポンプから前記過給機に潤滑油が供給されることを特徴とする。
【0009】
本発明のハイブリッド車両の制御装置は、前記エンジンを駆動制御するエンジン制御手段を備え、前記エンジン制御手段は前記エンジン運転時間の経過中に前記エンジンをアイドリング状態に制御することを特徴とする。
【0010】
本発明のハイブリッド車両の制御装置は、前記運転時間設定手段は前記冷却時間と前記発電時間とを比較判定し、いずれか長い方の時間に合わせて前記エンジン運転時間を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、過給機の温度に基づいてエンジン停止前の冷却時間を設定し、バッテリの充電状態に基づいてエンジン停止前の発電時間を設定し、冷却時間と発電時間とに基づいてエンジン停止信号が出力された後のエンジン運転時間を設定するようにしたので、過給機を保護することができるとともに、再始動用の電力を確保することができる。しかも、発電だけでなく冷却のためにエンジンが駆動されるエンジン運転時間の経過中に、エンジンの余剰動力を用いてジェネレータを発電駆動させるようにしたので、エンジン動力の有効利用を図ることができ、ハイブリッド車両のエネルギ効率を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1はハイブリッド車両10を示す概略図であり、このハイブリッド車両10に搭載される駆動ユニット11は、本発明の一実施の形態である制御装置によって駆動制御されるようになっている。また、図2は駆動ユニット11とその制御系とを示す概略図である。
【0013】
図1に示すように、ハイブリッド車両10には複数の動力源を備える駆動ユニット11が縦置きに搭載されており、駆動ユニット11に組み込まれるフロントデファレンシャル機構12から前輪13に動力が伝達される一方、駆動ユニット11の後端部に接続されるプロペラシャフト14から、これに連結されるリヤデファレンシャル機構15を介して後輪16に動力が伝達される。この駆動ユニット11は、動力源としてエンジン17とモータジェネレータ(ジェネレータ)18とを備えており、走行用の主要な動力源としてエンジン17が駆動される一方、発進時や加速時にはモータジェネレータ18が補助的に駆動される。また、減速時や定常走行時にはモータジェネレータ18を発電駆動することにより、減速エネルギや余剰動力を電気エネルギに変換して回収するようにしている。つまり、図示する駆動ユニット11は、パラレル方式のハイブリッド車両10に搭載される駆動ユニットとなっている。
【0014】
図2に示すように、エンジン17には過給機としてのターボチャージャ20が組み付けられており、エンジン17に供給される吸入空気はターボチャージャ20を介して圧縮される。ターボチャージャ20は、吸気マニホールド21上流側の吸気通路22に回転自在に設けられるインペラ23と、排気マニホールド24下流側の排気通路25に回転自在に設けられるタービン26とを備えており、インペラ23とタービン26とはタービン軸27を介して連結されている。つまり、インペラ23とタービン26とは一体に回転するようになっており、排気マニホールド24から排出される燃焼ガスによってタービン26を回転駆動させると、タービン26と共に回転駆動するインペラ23によって吸入空気を圧縮することが可能となるため、大気圧力よりも高い過給圧力によって吸入空気をエンジン17に供給することができ、エンジン出力を増大させることが可能となる。
【0015】
また、エンジン17にはクランク軸30に駆動されるオイルポンプ31が組み付けられており、エンジン17の各摺動部に向けてオイルポンプ31から潤滑油が吐出されるようになっている。吐出される潤滑油の一部はタービン軸27に対しても供給されるようになっており、高温状態となるタービン軸27を潤滑油によって冷却するとともにその潤滑状態を保つようにしている。なお、タービン軸27の近傍には温度センサ32が取り付けられており、温度センサ32によって検出されるタービン温度Ttは、後述するハイブリッド制御ユニット52によって監視されるようになっている。この温度センサ32としては、軸受部の温度を直接的に測定する温度センサに限られることはなく、ターボチャージャ20のハウジング温度を測定する温度センサであっても良い。
【0016】
このようなエンジン17に連結されるモータジェネレータ18は、ケース33に固定されるステータ34と、クランク軸30に固定されるロータ35とを備えている。モータジェネレータ18のロータ35はトルクコンバータ36のポンプシェル37に固定されており、クランク軸30とトルクコンバータ36とはロータ35を介して直結されている。また、トルクコンバータ36のポンプシェル37にはポンプインペラ38が固定されるとともに、ポンプインペラ38に対向してタービンランナ39が収容されており、タービンランナ39には変速入力軸40が連結されている。さらに、トルクコンバータ36にはクランク軸30と変速入力軸40とを直結するロックアップクラッチ41が設けられており、定常走行時にはロックアップクラッチ41を締結してエンジン動力やモータ動力の伝達効率を向上させることが可能となっている。
【0017】
また、エンジン動力やモータ動力が伝達される変速入力軸40には、遊星歯車列、クラッチ、ブレーキ等を備える変速機構42が連結されている。この変速機構42内のクラッチやブレーキを締結制御することにより、変速入力軸40と変速出力軸43との間の動力伝達径路を切り換えて変速することが可能となる。さらに、変速出力軸43とこれの同心上に設けられる後輪出力軸44との間には、前後輪13,16に駆動トルクを分配する複合遊星歯車式のセンタデファレンシャル機構45が装着されており、このセンタデファレンシャル機構45を介して前輪出力軸46と後輪出力軸44とには所定の分配比で駆動トルクが分配される。なお、センタデファレンシャル機構45に設けられる差動制限クラッチ47を締結することにより、ピニオンギヤ48の差動回転を抑制して前後輪13,16のトルク分配比を50:50に固定することが可能となる。
【0018】
このようなハイブリッド車両10には、モータジェネレータ18に対して電力を供給するとともに、モータジェネレータ18によって発電される電力を蓄えるためのバッテリ50が搭載されている。このバッテリ50に接続されるバッテリ制御ユニット51は、バッテリ50の電圧や電流を制御することによってバッテリ50の充電量や放電量を制御するとともに、電圧、電流、セル温度に基づいてバッテリ50の充電状態SOC(state of charge)を算出する。バッテリ制御ユニット51によって算出される充電状態SOCは、エンジン17とモータジェネレータ18とを用いた発電制御を実行するか否かの判定基準となっており、充電状態SOCはエンジン17やモータジェネレータ18等を駆動制御するハイブリッド制御ユニット52に向けて出力されるようになっている。
【0019】
また、ハイブリッド制御ユニット52には、バッテリ制御ユニット51によって算出される充電状態SOCの入力だけでなく、エンジン制御ユニット56、トランスミッション制御ユニット57、そして図示しない各種センサから、アクセル開度、スロットル開度、車速、シフトレンジ等の車両状態を示す各種検出信号が入力される。これらの検出信号に基づきハイブリッド制御ユニット52は、エンジン制御ユニット56に対してエンジントルクやエンジン回転数等の制御信号を出力し、この制御信号が入力されるエンジン制御ユニット56は、スロットルバルブ53、インジェクタ54、イグナイタ等に対して制御信号を出力することによってエンジントルクやエンジン回転数等を制御している。また、ハイブリッド制御ユニット52は、後述するインバータ55に対して制御信号を出力することにより、モータトルク、モータ回転数、発電量等を制御している。つまり、エンジン制御ユニット56はエンジン制御手段として機能し、ハイブリッド制御ユニット52は発電制御手段として機能するようになっている。さらに、ハイブリッド制御ユニット52は、エンジン動力やモータ動力を駆動輪に伝達するための変速段やトルク分配比の制御信号をトランスミッション制御ユニット57に対して出力する。これらの制御信号に基づいてトランスミッション制御ユニット57は、図示しないバルブユニット等に制御信号を出力することにより、駆動ユニット11内のクラッチやブレーキの締結状態を切り換えている。
【0020】
前述したように、ハイブリッド制御ユニット52によってモータジェネレータ18の駆動状態を制御するため、バッテリ50とモータジェネレータ18との間にはインバータ55が設けられている。ハイブリッド制御ユニット52から出力される制御信号によってインバータ55の作動状態を制御することにより、交流同期型モータのモータジェネレータ18を電動機として駆動させる際には、バッテリ50からの直流電流が交流電流に変換されてモータジェネレータ18に供給される一方、モータジェネレータ18を発電機として駆動させる際には、発電された交流電流が直流電流に変換されてバッテリ50に蓄えられることになる。なお、モータジェネレータ18を流れる交流電流の電流値や周波数を制御することにより、モータジェネレータ18のモータトルクやモータ回転数が制御されるようになっている。
【0021】
これらの制御ユニット51,52,56,57は、制御信号等を演算するCPUを備えるとともに、制御プログラム、演算式、マップデータ等を格納するROMや、一時的にデータを格納するRAMを備えている。また、ハイブリッド制御ユニット52、バッテリ制御ユニット51、エンジン制御ユニット56、およびトランスミッション制御ユニット57は、通信ケーブルを介して相互に接続されることによって制御信号や検出信号を共有するようになっている。
【0022】
以下、ハイブリッド制御ユニット52によって実行されるエンジン停止処理について説明する。ここで、図3はエンジン停止処理の実行手順の一例を示すフローチャートである。図3に示すように、まずステップS1では、エンジン制御ユニット56に向けてエンジン停止信号が出力されているか否かが判定される。つまり、運転者により図示しないイグニッションスイッチがオフ操作された状況や、エンジン17を自動的に停止させるアイドルストップ条件に車両状態が合致した状況などのように、エンジン制御ユニット56に向けてエンジン停止信号が出力される場合には、ステップS2に進み、エンジン停止処理が開始される一方、ハイブリッド制御ユニット52に向けてエンジン停止信号が出力されない場合には、エンジン停止処理を行うことなくそのままルーチンを抜けることになる。
【0023】
ステップS2では、温度センサ32によって検出されるタービン温度Ttが、エンジン制御ユニット56を介してハイブリッド制御ユニット52に入力されるとともに、バッテリ制御ユニット51によって算出される充電状態SOCがハイブリッド制御ユニット52に入力される。そして、ステップS3では、タービン温度Ttが所定の判定温度αを上回るか否かが判定され、タービン温度Ttが判定温度αを上回ると判定された場合には、ステップS4に進み、冷却時間設定手段として機能するハイブリッド制御ユニット52により、タービン温度Ttに基づいてエンジン停止信号出力時からエンジン停止までの冷却時間Tcが設定される一方、ステップS3においてタービン温度Ttが判定温度αを下回ると判定された場合には、ステップS5に進み、エンジン停止までの冷却時間Tcはゼロに設定されることになる。
【0024】
ここで、図4は冷却時間Tcを設定する際に参照されるマップであり、タービン温度Ttと冷却時間Tcとの関係を示している。図4に示すように、タービン温度Ttがt(たとえば100℃)とt(たとえば400℃)との間に収束している場合には冷却時間TcとしてT(たとえば60秒)が設定され、タービン温度Ttがtとt(たとえば700℃)との間に収束している場合には冷却時間TcとしてT(たとえば120秒)が設定され、タービン温度Ttがtを上回る場合には冷却時間TcとしてT(たとえば240秒)が設定されることになる。このように、タービン温度Ttが高温域に達していると判定された場合には、タービン温度Ttが判定温度αを下回るまでタービン軸27に対する潤滑油の供給を継続する必要があるため、エンジン17をアイドリング状態に保ちながらターボチャージャ20を判定温度αまで冷却するために必要な冷却時間Tcが設定されることになる。
【0025】
そして、続くステップS6では、充電状態SOCが所定の下限値βを下回るか否かが判定される。ステップS6において、充電状態SOCが下限値βを下回ると判定された場合には、ステップS7に進み、発電時間設定手段として機能するハイブリッド制御ユニット52により、充電状態SOCに基づいてエンジン停止信号出力時からエンジン停止までの発電時間Tgが設定される一方、充電状態SOCが下限値βを上回ると判定された場合には、ステップS8に進み、エンジン停止までの発電時間Tgはゼロに設定されることになる。
【0026】
ここで、図5は発電時間Tgを設定する際に参照されるマップであり、発電時間Tgと充電状態SOCとの関係を示している。図5に示すように、充電状態SOCがc(たとえば10%)とc(たとえば5%)との間に収束している場合には発電時間TgとしてT’(たとえば60秒)が設定され、充電状態SOCがcを下回る場合には発電時間としてT’(たとえば120秒)が設定されることになる。このように、充電状態SOCに基づいてバッテリ50の電力が枯渇していると判定された場合には、再始動時にモータジェネレータ18によってエンジン17をクランキングさせるための電力を確保する必要があるため、この電力に相当する発電量を発電するために必要な発電時間Tgが設定されることになる。
【0027】
続いて、ステップS9では、冷却時間Tcと発電時間Tgとの少なくともいずれか一方がゼロ以外に設定されているか否かが判定される。つまり、ステップS4やステップS7を経て冷却時間Tcや発電時間Tgが設定されている場合には、ステップS10に進み、冷却時間Tcと発電時間Tgとの長さが比較判定される。ステップS10において、発電時間Tgよりも冷却時間Tcが長い場合には、ステップS11に進み、運転時間設定手段として機能するハイブリッド制御ユニット52により、エンジン運転時間としてのアイドル時間TiがTcに設定される一方、冷却時間Tcよりも発電時間Tgが長い場合には、ステップS12に進み、アイドル時間TiがTgに設定されることになる。
【0028】
そして、ステップS13においてタイマリセット処理が実行された後に、ステップS14において、エンジン17をアイドリング状態に保つアイドル制御が実行されるとともに、エンジン17の余剰動力を有効に利用するためモータジェネレータ18に対する発電制御が実行される。次いで、ステップS15においてタイマカウント処理が実行され、ステップS16においてアイドル時間Tiを経過したか否かが判定される。ステップS16においてアイドル時間Tiを経過したと判定された場合には、ステップS17に進み、アイドリング状態で運転されていたエンジン17が停止される一方、ステップS16においてアイドル時間Tiが経過していないと判定された場合には、再びステップS14においてタイマカウント処理が実行され、アイドル時間Tiが経過するまでエンジン17のアイドル制御およびモータジェネレータ18の発電制御は継続されることになる。
【0029】
なお、ステップS9において、冷却時間Tcと発電時間Tgとの双方がゼロに設定されていると判定された場合には、再始動に必要な電力がバッテリ50に蓄えられた状態であり、かつターボチャージャ20の冷却が不要な状態であるため、アイドル制御や発電制御を実行することなく、ステップS17に進み、エンジン17が直ちに停止されることになる。
【0030】
これまで説明したように、ターボチャージャ20を保護するための冷却時間Tcと、再始動に必要な電力を確保するための発電時間Tgとを設定し、冷却時間Tcと発電時間Tgとのいずれか長い方の時間が経過した後に、エンジン17を停止させるようにしたので、ターボチャージャ20を確実に保護することができるとともに、エンジン17を再始動させる際に必要な電力を確保することができる。しかも、発電時間Tgの経過中は勿論のこと、ターボチャージャ20に向けて潤滑油を吐出するためにエンジン17が駆動される冷却時間Tcの経過中にあっても、エンジン17の余剰動力を用いてモータジェネレータ18を発電駆動させるようにしたので、エンジン動力の有効利用を図ることができ、ハイブリッド車両10のエネルギ効率を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0031】
なお、図示するハイブリッド車両10にあっては、モータジェネレータ18を発電駆動する際のエンジン負荷(単位時間当たりの発電量)を一定に保つようにしているため、図5のマップに示すように、充電状態SOCから直接的に発電時間Tgが求められているが、これに限られることはなく、たとえば、充電状態SOCに基づいて必要な発電量Wを設定した後に、発電量Wとタービン温度Ttとに基づいて発電時間Tgを設定するようにしても良い。このようにタービン温度Ttに応じて発電時間Tgを増減させることにより、同じ発電量Wが要求される充電状態SOCであっても、タービン温度Ttが高い場合にはエンジン負荷を引き下げて発電時間Tgを長く設定することにより、タービン温度Ttの上昇を回避しながら発電制御を行うことが可能となる一方、タービン温度Ttが低い場合にはエンジン負荷を引き上げて発電時間Tgを短く設定することにより、エンジン停止前の発電制御を素早く完了させることが可能となる。
【0032】
続いて、冷却時間Tcを設定する際の他の手順について説明する。図3に示すフローチャートにあっては、温度センサ32から検出されるタービン温度Ttに基づいて冷却時間Tcを設定するようにしているが、これに限られることはなく、エンジン負荷からタービン温度Ttを推定することによって冷却時間Tcを設定するようにしても良い。ここで、図6はエンジン停止処理の他の実行手順を示すフローチャートであり、図7はエンジン負荷係数Seを算出する際の手順を示す説明図である。なお、図6のフローチャートにおいて、図3のフローチャートに示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0033】
図6に示すように、ステップS1において、エンジン制御ユニット56に向けてエンジン停止信号が出力されていると判定された場合には、ステップS20に進み、エンジン制御ユニット56によってエンジン負荷係数Seが算出されるとともに、バッテリ制御ユニット51によって充電状態SOCが算出される。ここで、エンジン負荷係数Seとは、直近300秒の運転状態に応じて変動する係数であり、エンジン負荷を時間で積分することによって算出される係数である。図7に一点鎖線で示すように、直近300秒のエンジン負荷が低い場合にはエンジン負荷係数Seが小さい値(たとえば50)に設定される一方、図7に破線で示すように、直近300秒のエンジン負荷が高い場合にはエンジン負荷係数Seが大きい値(たとえば200)に設定されることになる。なお、図示する場合には、直近300秒のエンジン負荷に基づいてエンジン負荷係数Seを算出するようにしているが、これに限られることはなく、たとえば直近200秒や400秒のエンジン負荷に基づいてエンジン負荷係数Seを算出するようにしても良い。
【0034】
次いで、ステップS21では、エンジン負荷係数Seが所定値γを上回るか否かが判定され、エンジン負荷係数Seが所定値γを上回ると判定された場合には、ステップS22に進み、エンジン負荷係数Seに基づいてエンジン停止前の冷却時間Tcが設定される一方、ステップS21おいてエンジン負荷係数Seが所定値γを下回ると判定された場合には、ステップS5に進み、エンジン停止前の冷却時間Tcはゼロに設定されることになる。
【0035】
ここで、図8は冷却時間Tcを設定する際に参照されるマップであり、エンジン負荷係数Seと冷却時間Tcとの関係を示している。図8に示すように、エンジン負荷係数Seがs(たとえば50)とs(たとえば200)との間に収束している場合には冷却時間TcとしてT’’(たとえば60秒)が設定され、エンジン負荷係数Seがsとs(たとえば400)との間に収束している場合には冷却時間TcとしてT’’(たとえば120秒)が設定され、エンジン負荷係数Seがsを上回る場合には冷却時間TcとしてT’’(たとえば240秒)が設定されることになる。
【0036】
このように、エンジン負荷に基づいてエンジン負荷係数Seを設定し、このエンジン負荷係数Seに基づいて冷却時間Tcを設定することにより、エンジン負荷からタービン温度Ttを推定するとともにこれに基づいて冷却時間Tcを設定することができるため、冷却時間Tcを設定するための温度センサ32を削減することができ、駆動ユニット11の低コスト化を図ることが可能となる。
【0037】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、図示する場合には、パラレル方式のハイブリッド車両10に本発明を適用しているが、これに限られることはなく、シリーズ方式やシリーズ・パラレル方式のハイブリッド車両に対して本発明を適用しても良い。
【0038】
また、図3に示すフローチャートにあっては、ステップS11,S12において、アイドル時間Tiが設定された後に、アイドル制御や発電制御が実行されているが、これに限られることはなく、ステップS1において、エンジン停止信号が出力されたと判定された後に、直ちにアイドル制御や発電制御を実行するようにしても良い。さらに、ステップS7において、充電状態SOCに基づき発電時間Tgを設定することによって、エンジン17を再始動する際に必要な電力を確保しているが、発電時間Tgを更に延ばして設定することにより、アイドルストップ中における電動機器の駆動に必要な電力を確保しても良いことは言うまでもない。
【0039】
さらに、図4,図5および図8に示す各マップにあっては、冷却時間Tcや発電時間Tgが段階的に設定されているが、これに限られることはなく、タービン温度Ttや充電状態SOCに応じて、冷却時間Tcや発電時間Tgを連続的に設定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ハイブリッド車両を示す概略図である。
【図2】駆動ユニットとその制御系とを示す概略図である。
【図3】エンジン停止処理の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】冷却時間を設定する際に参照されるマップである。
【図5】発電時間を設定する際に参照されるマップである。
【図6】エンジン停止処理の他の実行手順を示すフローチャートである。
【図7】エンジン負荷係数を算出する際の手順を示す説明図である。
【図8】冷却時間を設定する際に参照されるマップである。
【符号の説明】
【0041】
10 ハイブリッド車両
17 エンジン
18 モータジェネレータ(ジェネレータ)
20 ターボチャージャ(過給機)
31 オイルポンプ
50 バッテリ
52 ハイブリッド制御ユニット(冷却時間設定手段,発電時間設定手段,運転時間設定手段,発電制御手段)
56 エンジン制御ユニット(エンジン制御手段)
Tc 冷却時間
Tg 発電時間
Ti アイドル時間(エンジン運転時間)
Tt タービン温度(温度)
SOC 充電状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機が組み付けられるエンジンと、前記エンジンに駆動されるジェネレータとを備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記過給機の温度に基づいて、エンジン停止信号出力時からエンジン停止までの冷却時間を設定する冷却時間設定手段と、
バッテリの充電状態に基づいて、エンジン停止信号出力時からエンジン停止までの発電時間を設定する発電時間設定手段と、
前記冷却時間と前記発電時間とに基づいて、エンジン停止信号が出力された後のエンジン運転時間を設定する運転時間設定手段と、
前記エンジン運転時間の経過中に前記ジェネレータを発電制御する発電制御手段とを有することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置において、前記エンジンに駆動されるオイルポンプから前記過給機に潤滑油が供給されることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のハイブリッド車両の制御装置において、前記エンジンを駆動制御するエンジン制御手段を備え、前記エンジン制御手段は前記エンジン運転時間の経過中に前記エンジンをアイドリング状態に制御することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置において、前記運転時間設定手段は前記冷却時間と前記発電時間とを比較判定し、いずれか長い方の時間に合わせて前記エンジン運転時間を設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−275011(P2006−275011A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98944(P2005−98944)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】