説明

ハイブリッド車両

【課題】モータ走行中に内燃機関を始動して駆動力抜けが生じることを抑制可能なハイブリッド車両の制御技術を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両1は、原動機として内燃機関と電気モータとを有し、第2入力軸28が電気モータ50のロータ52に係合するデュアルクラッチ式変速機10を備える。ECU100は、前方車を含む先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であるか否かを車両停止中に判定する。前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流であると判定した場合には、車両停止中において第2変速機構40の変速段のうち最も減速比の大きい変速段42を係合状態にし、一方、前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流ではないと判定した場合には、車両停止中において第2変速機構40の変速段42,44,46をいずれも解放状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルクラッチ式変速機を備えたハイブリッド車両の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用変速機には、内燃機関の出力軸(以下、機関出力軸と記す)と、複数の変速段(例えば、奇数段)を有する第1変速機構の入力軸(以下、第1入力軸と記す)とを係合させること可能な第1クラッチと、当該機関出力軸と、複数の変速段(例えば、偶数段)を有する第2変速機構の入力軸(以下、第2入力軸と記す)とを係合させることが可能な第2クラッチとを有する、いわゆるデュアルクラッチ式変速機(Dual Clutch Transmission)が知られている。デュアルクラッチ式変速機は、第1クラッチと第2クラッチを交互に係合状態にすることで、内燃機関の機関出力軸からの機械的動力を変速する変速段を、第1変速機構と第2変速機構との間で切替えるときに、機関出力軸から駆動輪への動力伝達に途切れが生じることを抑制している。
【0003】
下記の特許文献1には、原動機としての内燃機関(エンジン)と電気モータ(モータジェネレータ)を有するハイブリッド車両であって、デュアルクラッチ式変速機の第1入力軸及び第2入力軸のうち一方に、モータジェネレータのロータ(回転子)が結合されたハイブリッド車両が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−118590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなデュアルクラッチ式変速機を備えたハイブリッド車両においては、電気モータ(モータジェネレータ)から出力された機械的動力のみを駆動輪に伝達する車両走行、いわゆるモータ走行を行っている間(以下、モータ走行中と記す)において、要求駆動力が増大した場合や、電気モータに供給する電力を貯蔵する二次電池の蓄電状態(SOC)が低下した場合等には、内燃機関を始動させる必要がある。
【0006】
モータ走行中に内燃機関を始動させる場合、第1クラッチ及び第2クラッチのうち一方を係合状態にして、内燃機関の機関出力軸と駆動輪とを係合させると共に、電気モータが出力するトルクすなわち機械的動力を増大させて、当該機械的動力の一部を機関出力軸に伝達して機関出力軸を回転駆動する、いわゆる「押しがけクランキング」を行うことで、内燃機関を始動させることが可能である。押しがけクランキングを行うことで、モータ走行中において、駆動輪に生じる駆動力が一時的にゼロとなる、いわゆる「駆動力抜け」を生じさせることなく、内燃機関を始動させることが可能となる。
【0007】
このような「押しがけクランキング」を行う場合、機関出力軸の回転速度(以下、機関回転速度と記す)は、駆動輪の回転速度、すなわち車両の走行速度(以下、車速と記す)に比例したものとなる。このため、車速が比較的低い場合に「押しがけクランキング」を行うと、機関回転速度が、内燃機関を始動させるのに必要な回転速度(以下、必要回転速度と記す)に達することができず、内燃機関を始動できない虞がある。
【0008】
特に、電気モータに供給する電力を貯蔵する二次電池の蓄電状態が低い場合や、ハイブリッド車両が走行する路面の上り勾配が大きい場合、また、自車の前方に他の車両がある場合などにおいては、モータ走行により車両を発進させた後に、第1又は第2クラッチを係合状態としても、機関回転速度が必要回転速度以上となるような車速に達することができず、「押しがけクランキング」を行っても、内燃機関を始動することができないという問題が生じる。
【0009】
なお、デュアルクラッチ式変速機の2つの変速機構のうち、入力軸が電気モータのロータに係合する側の変速機構の変速段を全て解放状態にして、当該ロータと駆動輪との間における動力伝達を遮断し、その後、当該入力軸に対応するクラッチを係合状態にすると共に電気モータを力行させることで、車速に関係なく、所望の回転速度で機関出力軸を回転駆動する、いわゆる「通常のクランキング」を行うことで、モータ走行中に内燃機関を始動させることも可能である。しかし、モータ走行中において「通常のクランキング」を行うと、その間、電気モータのロータと駆動輪との間における動力伝達が遮断されるため、「駆動力抜け」が生じてしまう。
【0010】
したがって、デュアルクラッチ式変速機を備えたハイブリッド車両においては、駆動力抜けが生じることを抑制するために、車両走行中(モータ走行中)に押しがけクランキングを行って内燃機関を始動させることが可能か否かを、予め車両停止中に判断して、ハイブリッド車両の発進に備えて、当該車両を発進させる制御技術が求められている。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、モータ走行中に内燃機関を始動して駆動力抜けが生じることを抑制可能な、デュアルクラッチ式変速機を備えたハイブリッド車両の制御技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明に係るハイブリッド車両は、原動機として内燃機関と電気モータとを有し、複数の変速段のうちいずれか1つを係合状態にして、第1入力軸と駆動輪とを係合させることが可能な第1変速機構と、複数の変速段のうちいずれか1つを係合状態にして、第2入力軸と駆動輪とを係合させることが可能な第2変速機構と、内燃機関の機関出力軸と第1入力軸とを係合させることが可能な第1クラッチと、当該機関出力軸と第2入力軸とを係合させることが可能な第2クラッチとを有し、第2入力軸が電気モータのロータに係合するデュアルクラッチ式変速機と、第1及び第2変速機構の各変速段の係合/解放状態を制御可能な制御手段と、を備えたハイブリッド車両であって、制御手段は、前方車を含む先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であるか否かを判定する交通流状況判定手段を含み、前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流であると判定した場合には、車両停止中において第2変速機構の変速段のうち最も減速比の大きい変速段を係合状態にし、前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流ではないと判定した場合には、車両停止中において第2変速機構の変速段をいずれも解放状態にすることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るハイブリッド車両は、原動機として内燃機関と電気モータとを有し、複数の変速段のうちいずれか1つを係合状態にして、第1入力軸と駆動輪とを係合させることが可能な第1変速機構と、複数の変速段のうちいずれか1つを係合状態にして、第2入力軸と駆動輪とを係合させることが可能な第2変速機構と、内燃機関の機関出力軸と第1入力軸とを係合させることが可能な第1クラッチと、当該機関出力軸と第2入力軸とを係合させることが可能な第2クラッチとを有し、第2入力軸が電気モータのロータに係合するデュアルクラッチ式変速機と、第1及び第2変速機構の各変速段の係合/解放状態を制御可能な制御手段と、を備えたハイブリッド車両であって、制御手段は、前方車を含む先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であるか否かを判定する交通流状況判定手段を含み、前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流であると判定した場合には、モータ走行により車両を発進させ、前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流ではないと判定した場合には、内燃機関を始動させた後に、内燃機関から出力される機械的動力を駆動輪に伝達する車両走行により車両を発進させることを特徴とする。
【0014】
上記のハイブリッド車両において、内燃機関は、機関出力軸の回転速度が、予め設定された必要回転速度以上となった場合に、始動することが可能であり、前記所定の車速は、第1及び第2変速機構の変速段のうち最も減速比の大きい前進用の変速段である第1速ギア段と、第1及び第2クラッチのうち当該第1速ギア段に対応するクラッチを係合状態にしたときに、機関出力軸の回転速度が必要回転速度以上となる車速に設定されているものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流であると判定した場合には、車両停止中に第2変速機構において最も減速比の大きい変速段を係合状態にしておくことで、モータ走行による発進に備えることができる。モータ走行により発進するときに、電気モータからの機械的動力を、極力減速してトルクを増大させて駆動輪に伝達することができる。モータ走行により発進した後は、押しがけ可能車速以上に加速し、押しがけによるクランキングを行って駆動力抜けを生じさせることなく内燃機関5を始動させることが可能となる。一方、前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流ではないと判定した場合には、車両停止中に第2変速機構の変速段をいずれも解放状態にしておくことで、車両停止中に通常のクランキングを行っての内燃機関の始動に備えることができる。ハイブリッド車両を発進させて、内燃機関を始動させるときに、駆動力抜けが生じることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
まず、本実施形態に係るハイブリッド車両の構成について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、ハイブリッド車両の概略構成を示す模式図である。図2は、デュアルクラッチ式変速機が有するデュアルクラッチ機構の構造を示す模式図である。図3は、変形例のデュアルクラッチ機構の構造を示す模式図である。
【0018】
ハイブリッド車両1は、駆動輪88を回転駆動するための原動機(動力源)として、内燃機関5と、発電可能な電動機であるモータジェネレータ50(以下、単に「電気モータ」と記す)とを備えている。電気モータ50は、デュアルクラッチ式変速機10と共に駆動装置(10,50)を構成している。駆動装置(10,50)は、内燃機関5と結合されて、ハイブリッド車両1に搭載される。ハイブリッド車両1には、内燃機関5、電気モータ50、及びデュアルクラッチ式変速機10を協調して制御する制御手段として、ハイブリッド車両用の電子制御装置(以下、単に「ECU」と記す)100が設けられている。ECU100には、各種制御定数を記憶する記憶手段としてROM(図示せず)が設けられている。
【0019】
内燃機関5は、燃料のエネルギを燃焼により機械的動力に変換して出力する熱機関であり、ピストン6がシリンダ内を往復運動するピストン往復動機関である。内燃機関5は、図示しない燃料噴射装置、点火装置、及びスロットル弁装置を備えている。これら装置は、ECU100により制御される。内燃機関5は、発生した機械的動力を、機関出力軸(クランク軸)8から出力する。機関出力軸8には、後述するデュアルクラッチ式変速機10のデュアルクラッチ機構20の入力側、例えば、クラッチハウジング14a(図2参照)が結合される。ECU100は、内燃機関5の機関出力軸8から出力する機械的動力を調整することが可能となっている。内燃機関5には、機関出力軸8の回転角位置(以下、クランク角と記す)を検出するクランク角センサ(図示せず)が設けられており、クランク角に係る信号をECU100に送出している。内燃機関5の作動により機関出力軸8に生じるトルク(以下、機関トルクと記す)は、ECU100により制御される。
【0020】
電気モータ50は、供給された電力を機械的動力に変換して出力する電動機としての機能と、入力された機械的動力を電力に変換して回収する発電機としての機能とを兼ね備えた回転電機、いわゆるモータジェネレータである。電気モータ50は、永久磁石型交流同期電動機で構成されており、後述するインバータ110から三相の交流電力の供給を受けて回転磁界を形成するステータ54と、回転磁界に引き付けられて回転する回転子であるロータ52とを有しており、当該ロータ52から機械的動力を入出力可能となっている。電気モータ50には、ロータ52の回転角位置を検出するレゾルバ(図示せず)が設けられており、ロータ52の回転角位置に係る信号をECU100に送出している。
【0021】
また、ハイブリッド車両1には、電気モータ50に電力を供給する電力供給装置として、インバータ110と二次電池120が設けられている。インバータ110は、二次電池120から供給される直流電力を交流電力に変換して電気モータ50に供給することが可能に構成されている。二次電池120は、インバータ110から電気モータ50に供給する電力を貯蔵する。また、インバータ110は、電気モータ50からの交流電力を直流電力に変換して二次電池120に回収することも可能に構成されている。このような二次電池120から電気モータ50への電力供給、及び電気モータ50から二次電池120への電力回収は、ECU100により制御される。
【0022】
なお、以下の説明において、電気モータ50を電動機として機能させて、電気モータ50がロータ52から機械的動力を出力することを「力行」と記す。これに対して、電気モータ50を発電機として機能させて、駆動輪88から電気モータ50のロータ52に伝達された機械的動力を電力に変換して二次電池120に回収すると共に、このときロータ52に生じる回転抵抗により、ロータ52及びこれに係合する部材(例えば、駆動輪88)の回転を制動することを「回生制動」と記す。電気モータ50の電動機/発電機としての機能の切替えと、電気モータ50においてロータ52から入力又は出力されるトルク(以下、モータトルクと記す)は、ECU100により制御される。
【0023】
また、ハイブリッド車両1は、内燃機関5及び電気モータ50からの機械的動力を駆動輪88に伝達する動力伝達装置として、機関出力軸8及び電気モータ50からの機械的動力を変速しトルクを変化させて、駆動輪88に係合する推進軸66に向けて伝達可能なデュアルクラッチ式変速機10と、推進軸66に伝達された機械的動力を、減速すると共に駆動輪88に係合する左右の駆動軸80に分配する終減速装置70とを有している。
【0024】
デュアルクラッチ式変速機10は、第1群の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つを係合状態にすることで、第1入力軸27と駆動輪88とを係合させて、第1入力軸27で受けた機械的動力を、係合状態にある変速段により変速して駆動輪88に伝達することが可能な第1変速機構30と、第2群の変速段42,44,46のうちいずれか1つを係合状態にすることで、第2入力軸28と駆動輪88とを係合させて、第2入力軸28で受けた機械的動力を、係合状態にある変速段により変速して駆動輪88に伝達可能な第2変速機構40とを有している。加えて、デュアルクラッチ式変速機10は、内燃機関5の機関出力軸8と第1入力軸27とを係合させることが可能な第1クラッチ21と、機関出力軸8と第2入力軸28とを係合させることが可能な第2クラッチ22により構成されるデュアルクラッチ機構20を有している。
【0025】
デュアルクラッチ式変速機10は、前進用に第1速ギア段31から第6速ギア段46までの6つの変速段を有しており、後進用に1つの変速段、後進ギア段39を有している。第1速〜第6速ギア段31〜46の減速比は、第1速ギア段31、第2速ギア段42、第3速ギア段33、第4速ギア段44、第5速ギア段35、第6速ギア段46の順に小さくなるよう設定されている。すなわち、前進用の変速段31〜46のうち、第1速ギア段31が最も低速側の変速段となっている。
【0026】
なお、第1変速機構30の第1群の前進用変速段31,33,35,39の減速比には、各メインギア31a,33a,35aと、それぞれ対応するカウンタギア31c,33c,35cとの間における減速比だけでなく、第1駆動ギア37cと動力統合ギア58との間における減速比が含まれている。一方、第2変速機構40の第2群の変速段42,44,46の減速比には、各メインギア42a,44a,46aと、それぞれ対応するカウンタギア42c,44c,46cとの間における減速比だけでなく、第2駆動ギア48cと、動力統合ギア58との間における減速比が含まれている。
【0027】
第1変速機構30は、複数の歯車対を備えた平行軸歯車装置として構成されており、第1群の変速段は、奇数段すなわち第1速ギア段31と、第3速ギア段33と、第5速ギア段35と、後進ギア段39により構成されている。第1変速機構30において、前進用の変速段31,33,35のうち、第1速ギア段31が最も低速側の(最も減速比の大きい)変速段となっている。なお、以下の説明において、「カップリング機構」は、ドグクラッチ等の噛み合いクラッチ機構や、これを操作する操作機構等により構成されている。
【0028】
第1速ギア段31は、第1入力軸27に結合されている第1速メインギア31aと、第1出力軸37を中心に回転可能に設けられ、第1速メインギア31aと噛み合う第1速カウンタギア31cとを有している。第1変速機構30には、第1速ギア段31に対応して、第1速カウンタギア31cと第1出力軸37とを係合させることが可能な第1速カップリング機構31eが設けられている。第1速カップリング機構31eにより第1速カウンタギア31cと第1出力軸37を係合させる、すなわち第1速ギア段31を係合状態にすることで、第1変速機構30は、第1入力軸27で受けた機械的動力を、第1速ギア段31により変速し、トルクを変化させて第1出力軸37に伝達することが可能となっている。
【0029】
同様に、第3速ギア段33は、第1入力軸27に結合されている第3速メインギア33aと、第1出力軸37を中心に回転可能に設けられ、第3速メインギア33aと噛み合う第3速カウンタギア33cとを有している。第1変速機構30には、第3速ギア段33に対応して、第3速カウンタギア33cと第1出力軸37とを係合させることが可能な第3速カップリング機構33eが設けられている。第3速カップリング機構33eにより第3速カウンタギア33cと第1出力軸37を係合させる、すなわち第3速ギア段33を係合状態にすることで、第1変速機構30は、第1入力軸27で受けた機械的動力を、第3速ギア段33により変速し、トルクを変化させて第1出力軸37に伝達することが可能となっている。
【0030】
また、第5速ギア段35は、第1入力軸27に結合されている第5速メインギア35aと、第1出力軸37を中心に回転可能に設けられ、第5速メインギア35aと噛み合う第5速カウンタギア35cとを有している。第1変速機構30には、第5速ギア段35に対応して、第5速カウンタギア35cと第1出力軸37とを係合させることが可能な第5速カップリング機構35eが設けられている。第5速カップリング機構35eにより第5速カウンタギア35cと第1出力軸37を係合させる、すなわち第5速ギア段35を係合状態にすることで、第1変速機構30は、第1入力軸27で受けた機械的動力を、第5速ギア段35により変速し、トルクを変化させて、第1出力軸37に伝達することが可能となっている。
【0031】
また、後進ギア段39は、第1入力軸27に結合されている後進メインギア39aと、後進メインギア39aと噛み合う後進中間ギア39bと、後進中間ギア39bと噛み合い、第1出力軸37を中心に回転可能に設けられた後進出力ギア39cとを有している。第1変速機構30には、後進ギア段39に対応して、後進出力ギア39cと第1出力軸37とを係合させることが可能な後進カップリング機構39eが設けられている。後進カップリング機構39eにより後進出力ギア39cと第1出力軸37とを係合させる、すなわち後進ギア段39を係合状態にすることで、第1変速機構30は、第1入力軸27から受けた機械的動力を、後進ギア段39により、回転方向を逆方向に変えると共に変速し、トルクを変化させて第1出力軸37に伝達することが可能となっている。
【0032】
第1変速機構30の第1出力軸37には、第1駆動ギア37cが結合されており、当該第1駆動ギア37cは、動力統合ギア58と噛み合っている。動力統合ギア58には、推進軸66が結合されている。推進軸66は、後述する終減速装置70を介して、駆動輪88が結合された駆動軸80と係合している。つまり、第1変速機構30の第1群の変速段31,33,35,39の出力側にある第1出力軸37と、駆動輪88は係合している。
【0033】
第1変速機構30における各変速段31,33,35,39の係合状態と解放状態(非係合状態)との切替えは、図示しないアクチュエータを介してECU100により制御される。ECU100は、第1変速機構30の第1群の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つを選択して係合状態にすることで、第1変速機構30が第1入力軸27で受けた機械的動力を、選択されて係合状態にある変速段により変速し、第1出力軸37から駆動輪88に向けて伝達することが可能となっている。
【0034】
一方、第2変速機構40は、第1変速機構30と同様に、複数の歯車対を備えた平行軸歯車装置として構成されており、第2群の変速段は、偶数段、すなわち第2速ギア段42、第4速ギア段44、第6速ギア段46から構成されている。第2変速機構40の入力軸である第2入力軸28には、電気モータ50のロータ52が結合されている。第2変速機構40の変速段42,44,46のうち、第2速ギア段42が、最も低速側の(最も減速比の大きい)変速段となっている。
【0035】
第2速ギア段42は、第2入力軸28に結合されている第2速メインギア42aと、第2出力軸48を中心に回転可能に設けられ、第2速メインギア42aと噛み合う第2速カウンタギア42cとを有している。第2変速機構40には、第2速ギア段42に対応して、第2速カウンタギア42cと第2出力軸48とを係合させることが可能な第2速カップリング機構42eが設けられている。第2速カップリング機構42eにより第2速カウンタギア42cと第2出力軸48とを係合させる、すなわち第2速ギア段42を係合状態にすることで、第2変速機構40は、第2入力軸28で受けた機械的動力を、第2速ギア段42により変速し、トルクを変化させて、第2出力軸48に伝達することが可能となっている。
【0036】
同様に、第4速ギア段44は、第2入力軸28に結合されている第4速メインギア44aと、第2出力軸48を中心に回転可能に設けられ、第4速メインギア44aと噛み合う第4速カウンタギア44cとを有している。第2変速機構40には、第4速ギア段44に対応して、第4速カウンタギア44cと第2出力軸48とを係合させることが可能な第4速カップリング機構44eが設けられている。第4速カップリング機構44eにより第4速カウンタギア44cと第2出力軸48とを係合させる、すなわち第4速ギア段44を係合状態にすることで、第2変速機構40は、第2入力軸28で受けた機械的動力を、第4速ギア段44により変速し、トルクを変化させて、第2出力軸48に伝達することが可能となっている。
【0037】
同様に、第6速ギア段46は、第2入力軸28に結合されている第6速メインギア46aと、第2出力軸48を中心に回転可能に設けられ、第6速メインギア46aと噛み合う第6速カウンタギア46cとを有している。第2変速機構40には、第6速ギア段46に対応して、第6速カウンタギア46cと第2出力軸48とを係合させることが可能な第6速カップリング機構46eが設けられている。第6速カップリング機構46eにより第6速カウンタギア46cと第2出力軸48とを係合させる、すなわち第6速ギア段46を係合状態にすることで、第2変速機構40は、第2入力軸28で受けた機械的動力を、第6速ギア段46により変速し、トルクを変化させて、第2出力軸48に伝達することが可能となっている。
【0038】
第2変速機構40の第2出力軸48には、第2駆動ギア48cが結合されており、当該第2駆動ギア48cは、動力統合ギア58と噛み合っている。動力統合ギア58には、推進軸66が結合されており、推進軸66は、後述する終減速装置70を介して、駆動輪88に結合された駆動軸80と係合している。つまり、第2変速機構40の第2群の変速段42,44,46の出力側を構成する第2出力軸48と、駆動輪88は係合している。
【0039】
電気モータ50のロータ52は、第2変速機構40の第2入力軸28に結合されており、ロータ52から入出力する機械的動力すなわちトルクは、第2変速機構40の第2入力軸28にそのまま伝達される。つまり、デュアルクラッチ式変速機10を構成する第1変速機構30及び第2変速機構40にそれぞれ対応して設けられた第1入力軸27及び第2入力軸28のうち、第2入力軸28には、電気モータ50のロータ52が係合している。
【0040】
第2変速機構40における各変速段42,44,46の係合状態と解放状態(非係合状態)との切替えは、図示しないアクチュエータを介してECU100により制御される。ECU100は、第2変速機構40の第2群の変速段42,44,46のうちいずれか1つの変速段を選択して係合状態にすることで、第2変速機構40が第2入力軸28で受けた機械的動力を、選択されて係合状態にある変速段により変速し、第2出力軸48から駆動輪88に向けて伝達することが可能となっている。
【0041】
デュアルクラッチ機構20は、内燃機関5の機関出力軸8と第1変速機構30の第1入力軸27とを係合させることが可能な第1クラッチ21と、内燃機関5の機関出力軸8と第2変速機構40の第2入力軸28とを係合させることが可能な第2クラッチ22とを有している。第1クラッチ21及び第2クラッチ22は、湿式多板クラッチや乾式単板クラッチ等の摩擦式ディスククラッチ装置で構成される。
【0042】
第1クラッチ21が係合状態となることで、機関出力軸8と第1入力軸27が一体に回転して、機関出力軸8からの機械的動力を、第1変速機構30の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つにより変速して駆動輪88に向けて伝達することが可能となっている。つまり、第1クラッチ21は、第1変速機構30の第1群の変速段31,33,35,39に対応して設けられている。
【0043】
一方、第2クラッチ22を係合状態にすることで、機関出力軸8と第2入力軸28が一体に回転して、機関出力軸8からの機械的動力を、第2変速機構40の変速段42,44,46のうちいずれか1つにより変速して駆動輪88に向けて伝達することが可能となっている。つまり、第2クラッチ22は、第2変速機構40の第2群の変速段42,44,46に対応して設けられている。
【0044】
第1クラッチ21及び第2クラッチ22の係合状態と解放状態(非係合状態)との切替えは、図示しないアクチュエータを介してECU100により制御される。ECU100は、デュアルクラッチ機構20において、第1クラッチ21又は第2クラッチ22のうちいずれか一方を係合状態にして、他方を解放状態にすることで、内燃機関5からの機械的動力を、第1変速機構30及び第2変速機構40のうちいずれか一方に伝達させることが可能となっている。
【0045】
ここで、デュアルクラッチ機構20の詳細な構造の一例について図2を用いて説明する。図2に示すように、デュアルクラッチ機構20において、機関出力軸8には、図示しないダンパ等を介してデュアルクラッチ機構20のクラッチハウジング14aが結合されている。すなわち、クラッチハウジング14aは、機関出力軸8と一体に回転する。クラッチハウジング14aは、摩擦板(クラッチディスク)27a,28aを収容可能に構成されている。
【0046】
これに対して、第1変速機構30の第1入力軸27と、第2変速機構40の第2入力軸28は、同軸に配置されており、2重軸構造となっている。具体的には、第1入力軸27は、中空シャフトとして構成されており、第1入力軸27内には、第2入力軸28が延びている。内側の軸である第2入力軸28は、外側の軸である第1入力軸27に比べて軸方向に長く構成されている。機関出力軸8側から駆動輪88側に向かうに従って、まず、第1変速機構30の各変速段のメインギア31a,33a,35a,39aが配設されており、次に、第2変速機構40の各変速段のメインギア42a,44a,46aが配設されている。
【0047】
第1入力軸27の端には、円板状の摩擦板27aが結合されており、一方、第2入力軸28の端にも、同様の摩擦板28aが結合されている。第1クラッチ21は、摩擦板27aと対向して設けられた摩擦相手板(図示せず)と、摩擦相手板を駆動するアクチュエータ(図示せず)とを有している。摩擦相手板が摩擦板27aをクラッチハウジング14aに結合された部材に押し付けることで、第1クラッチ21は、機関出力軸8と、第1変速機構30の第1入力軸27とを係合することが可能となっている。
【0048】
これと同様に、第2クラッチ22は、摩擦板28aに対向して設けられた摩擦相手板(図示せず)が、摩擦板28aをクラッチハウジング14aに結合された部材に押し付けることで、機関出力軸8と、第2変速機構40の第2入力軸28とを係合することが可能となっている。デュアルクラッチ機構20における、第1及び第2クラッチ21,22にそれぞれ対応して設けられた摩擦相手板のアクチュエータによる駆動は、ECU100により制御される。
【0049】
なお、上述のデュアルクラッチ機構20の詳細な構造において、第1変速機構30の第1入力軸27と第2変速機構40の第2入力軸28は同軸に配置されるものとしたが、デュアルクラッチ機構20の詳細な構造は、これに限定されるものではない。例えば、図3に示すように、第1入力軸27と第2入力軸28は、所定の間隔を空けて平行に延びるよう配置されるものとしても良い。この変形例のデュアルクラッチ機構20においては、機関出力軸8の端に、駆動ギア14cが結合されている。駆動ギア14cには、第1ギア16と、第2ギア18が噛み合っており、第1ギア16は、第1クラッチ21に結合されており、第2ギア18は、第2クラッチ22に結合されている。第1クラッチ21は、第1変速機構30の第1入力軸27と、機関出力軸8に係合する第1ギア16とを係合させることが可能に構成されている。一方、第2クラッチ22は、第2変速機構40の第2入力軸28と、機関出力軸8に係合する第2ギア18とを係合させることが可能に構成されている。
【0050】
第1及び第2クラッチ21,22は、それぞれ摩擦式クラッチ等の任意のクラッチ機構で構成することができる。第1クラッチ21及び第2クラッチ22において交互に係合状態と解放状態を切替ることで、機関出力軸8から出力される内燃機関5の機械的動力は、駆動ギア14cから、第1変速機構30の第1入力軸27、又は第2変速機構40の第2入力軸28のいずれかに伝達されることとなる。
【0051】
また、ハイブリッド車両1には、図1に示すように、原動機から推進軸66に伝達された機械的動力を、減速すると共に、駆動輪88に係合する左右の駆動軸80に分配する終減速装置70が設けられている。終減速装置70は、推進軸66に結合された駆動ピニオン68と、駆動ピニオン68とリングギア72が直交して噛み合う差動機構74とを有している。終減速装置70は、原動機すなわち内燃機関5及び電気モータ50のうち少なくとも一方から推進軸66に伝達された機械的動力を、駆動ピニオン68及びリングギア72により減速し、差動機構74により左右の駆動軸80に分配して、駆動軸80に結合されている駆動輪88に伝達することで、当該駆動輪88の接地面にハイブリッド車両1を駆動する駆動力[N]を生じさせることが可能となっている。
【0052】
また、ハイブリッド車両1には、駆動輪88の回転速度を検出する車輪速センサ(図示せず)が設けられており、検出した駆動輪88の回転速度に係る信号をECU100に送出している。また、ハイブリッド車両1には、電気モータ50に供給される電力を貯蔵する二次電池120の蓄電状態(state-of-charge:SOC)を検出する電池監視ユニット(図示せず)が設けられており、検出した二次電池120の蓄電状態に係る信号を、ECU100に送出している。
【0053】
また、ハイブリッド車両1には、運転者によるアクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダルポジションセンサ(図示せず)が設けられており、アクセルペダルの操作量に係る信号を、ECU100に送出している。また、ハイブリッド車両1には、運転者によるブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルストロークセンサ(図示せず)が設けられており、ブレーキペダルの操作量に係る信号を、ECU100に送出している。
【0054】
また、ハイブリッド車両1には、走行路面の勾配を計測するために、ハイブリッド車両1に作用する加速度を検出する加速度センサ(図示せず)が設けられており、検出した加速度に係る信号をECU100に送出している。
【0055】
また、ハイブリッド車両1には、自車の進行方向すなわち前方にある他の車両(先行車)や障害物等を検知(センシング)可能な前方検知手段が設けられている。前方検知手段は、前方にある先行車と自車との間の距離(以下、単に「車間距離」と記す)を検知することが可能となっている。なお、前方検知手段は、ミリ波レーダ、超音波センサ、カメラ等の従来技術により実現される。前方検知手段は、自車の前方にある車両との車間距離に係る信号をECU100に送出している。
【0056】
ECU100は、第1変速機構30及び第2変速機構40における各変速段の係合/解放状態と、第1クラッチ21及び第2クラッチ22の係合/解放状態とを検出している。また、ECU100は、クランク角センサ(図示せず)からの機関出力軸8の回転角位置(クランク角)に係る信号と、レゾルバからの電気モータ50のロータ52の回転角位置に係る信号と、車輪速センサからの駆動輪88の回転速度に係る信号とを検出している。また、ECU100は、電池監視ユニットからの二次電池120の蓄電状態(SOC)に係る信号と、アクセルペダルポジションセンサからのアクセル操作量に係る信号と、ブレーキペダルストロークセンサからのブレーキ操作量に係る信号と、加速度センサからのハイブリッド車両1に作用する加速度に係る信号とを検出している。
【0057】
これら検出した信号に基づいて、ECU100は、各種制御変数を推定している。制御変数には、内燃機関5の機関出力軸8の回転速度(以下、機関回転速度と記す)と、内燃機関5が機関出力軸8から出力する「機関トルク」と、電気モータ50のロータ52の回転速度(以下、モータ回転速度と記す)と、電気モータ50のロータ52に生じる「モータトルク」と、第1クラッチ21及び第2クラッチ22の係合/解放状態と、第1変速機構30及び第2変速機構40において現在選択されている(係合状態にある)変速段と、ハイブリッド車両1の走行速度(以下、車速と記す)と、二次電池120のSOCと、運転者により駆動軸80に生じることが要求される駆動力(以下、要求駆動力と記す)と、ハイブリッド車両1の加速度等が含まれている。つまり、ECU100は、二次電池120の蓄電状態(SOC)を推定する機能(蓄電状態推定手段)を有している。
【0058】
これら制御変数に基づいて、ECU100は、内燃機関5及び電気モータ50の作動を把握しており、ECU100は、内燃機関5の運転状態、すなわち機関回転速度及び機関トルクと、電気モータ50の運転状態、すなわちモータ回転速度及びモータトルクと、第1クラッチ21及び第2クラッチ22の係合/解放状態と、第1変速機構30及び第2変速機構40の各変速段31〜46の係合/解放状態とを、協調して制御することが可能となっている。
【0059】
また、ECU100は、加速度センサからのハイブリッド車両1の加速度に係る信号を検出しており、当該加速度と車速に基づいて、ハイブリッド車両1が走行/停止している路面の上り勾配(以下、単に「路面勾配」と記す)を推定する機能(路面勾配推定手段)を有している。
【0060】
また、ECU100は、上述の前方検知手段からの前方にある車両との車間距離に係る信号を検出しており、当該車間距離を制御変数として推定する機能(車間距離推定手段)を有している。また、ECU100は、前方にある他の車両(以下、「前方車」と記す)との車間距離の時間変化と車速に基づいて、前方車の自車に対する相対速度(以下、相対車速と記す)を制御変数として推定している。つまり、車両停止中において、ECU100は、前方車との車間距離に加えて、前方車の車速を推定する機能(前方車両車速推定手段)を有している。
【0061】
これら制御変数に基づいて、ECU100は、車両停止中において、自車の前方に前方車があるか否かを判定する機能(前方車両有無判定手段)を有している。ECU100は、前方車と自車との車間距離と、前方車の車速に基づいて、自車の前方に前方車があるか否かを判定する。具体的には、車両停止中において、前方車との車間距離が、予め設定された判定距離以下であり、且つ前方車の車速が、予め設定された判定他車車速以下である場合に、自車の前方に前方車があると判定することができる。
【0062】
つまり、ECU100は、車間距離が比較的近距離である場合には、前方に前方車が「ある」と判定し、車間距離が比較的遠距離にある場合には、前方に前方車が「ない」と判定する。加えて、ECU100は、前方車の車速が比較的高い、すなわち車両停止中である自車から他の車両が急速に遠ざかる場合には、自車の前方に他の車両が「ない」ものと判定し、前方車の車速が比較的低い、すなわち車両停止中である自車から他の車両がさほど遠ざかることがない場合には、自車の前方に他の車両が「ある」ものと判定する。上述の判定距離、及び判定他車車速は、後述する判定車速(押しがけ可能車速)まで十分に加速できるよう、予め適合実験等により設定されており、制御定数としてECU100のROMに記憶されている。
【0063】
なお、ECU100が、自車の前方に他の車両があるか否かの判定手法は、これに限定されるものではない。例えば、車間距離が、判定距離以下である場合は一律に、自車の前方に他の車両があると判定するものとしても良い。また、車間距離に拘らず、前方車の車速が、判定他車車速以上である場合には、自車の前方に他の車両が「ない」ものと判定するものとしても良い。
【0064】
また、ECU100は、上述の制御変数に基づいて、車両停止中において、自車の前方にある他の車両(以下、「前方車」と記す)を含む先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であるか否かを判定する機能(交通流状況判定手段)を有している。具体的には、ECU100の交通流状況判定手段は、前方車が低車速で走行している場合や停止している場合など、前方車との相対車速が、所定の判定値を下回る場合や、自車と前方車との車間距離が、所定の判定値以下である場合に、前方車を含む先行車群の交通流状況が所定の車速以上の交通流ではないと判定する。つまり、ECU100は、自車および前方車が、渋滞した道路を走行しており、自車の前方の先行車群の交通流の流れが比較的劣る状況にある場合には、前方車を含む先行車群の交通流状況が所定の車速以上の交通流ではないと判定する。一方、自車と前方車との車間距離が、所定の判定値以上である場合や、前方車との相対距離が、所定の判定値以上である場合など、自車の前方の先行車群の交通流の流れが良好である場合には、前方車を含む先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であると判定する。
【0065】
交通流状況判定手段における「所定の車速」は、ハイブリッド車両1の車両諸元、すなわち内燃機関5及びデュアルクラッチ式変速機10の諸元に基づいて予め設定される。詳細には、「所定の車速」は、第1及び第2変速機構30,40の変速段31〜46のうち最も減速比の大きい前進用の変速段である第1速ギア段31と、第1及び第2クラッチ21,22のうち当該第1速ギア段31に対応する第1クラッチ21を係合状態にしたときに、機関出力軸8の回転速度が、内燃機関の始動に必要な回転速度(以下、必要回転速度と記す)以上となるような車速に設定されている。当該「所定の車速」は、制御定数としてECU100のROMに記憶されている。
【0066】
なお、前方車を含む先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であるか否かを判定する手法は、上述の手法に限定されるものではない。例えば、カーナビゲーション装置から、交通情報(渋滞情報)など、自車の前方車を含む先行車群の交通流状況に係る情報を取得して、当該交通流状況に係る情報に基づいて、先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であるか否かを判定するものとしても良い。
【0067】
以上のように構成されたハイブリッド車両1において、ECU100が第1クラッチ21を係合状態にすると共に第2クラッチ22を解放状態にすることで、機関出力軸8は、第1入力軸27、第1変速機構30において係合状態にある変速段、第1出力軸37、動力統合ギア58、推進軸66、終減速装置70を介して駆動輪88と係合する。これにより、第1変速機構30は、内燃機関5の機関出力軸8から出力された機械的動力を、第1入力軸27で受けて、変速段(奇数段)31,33,35、及び後進ギア段39のうち係合状態にある変速段により変速し、トルクを変化させて、第1出力軸37から駆動輪88に向けて伝達することが可能となっている。
【0068】
この場合、駆動輪88の回転は、動力統合ギア58を介して第2変速機構40の第2出力軸48に伝達される。第2出力軸48に伝達された機械的動力は、第2変速機構40の第2群の変速段(偶数段)42,44,46のうち係合状態にある変速段により変速され、第2入力軸28に伝達されて、電気モータ50のロータ52を空転させる。なお、ECU100が第2変速機構40の変速段42,44,46をいずれも解放状態にしている場合には、第2出力軸48と第2入力軸28との間で動力伝達が遮断されて、駆動輪88の回転は、第2入力軸28に伝達されることはない。
【0069】
一方、ECU100が第2クラッチ22を係合状態にすると共に第1クラッチ21を解放状態にすることで、機関出力軸8は、第2入力軸28、第2変速機構40において係合状態にある変速段、第2出力軸48、動力統合ギア58、推進軸66、終減速装置70を介して駆動輪88と係合する。これにより、第2変速機構40は、内燃機関5の機関出力軸8及び電気モータ50のロータ52からの機械的動力を、第2入力軸28で受けて、各変速段(偶数段)42,44,46のうち係合状態にある変速段により変速し、トルクを変化させて、第2出力軸48から駆動輪88に向けて伝達することが可能となっている。
【0070】
この場合、駆動輪88の回転は、動力統合ギア58を介して第1変速機構30の第1出力軸37に伝達される。第1出力軸37に伝達された機械的動力は、第1変速機構30の変速段(奇数段)31,33,35及び後進ギア段39のうち係合状態にある変速段により変速され、第1入力軸27に伝達されて、当該第1入力軸27を空転させる。なお、ECU100が第1変速機構30の変速段31,33,35,39をいずれも解放状態にしているときには、第1出力軸37と第1入力軸27との間で動力伝達が遮断されて、駆動輪88の回転は、第1入力軸27に伝達されることはない。
【0071】
以上のように構成されたハイブリッド車両1は、第1クラッチ21及び第2クラッチ22を交互に係合状態にすることで、内燃機関5の機関出力軸8からの機械的動力を駆動輪88に伝達する動力伝達に用いる変速段(機関出力変速段)を、第1変速機構30の変速段31,33,35と、第2変速機構40の変速段42,44,46との間で切替えるときに、機関出力軸8から駆動輪88への動力伝達に途切れが生じることを抑制することが可能となっている。
【0072】
例えば、機関出力変速段を、第1変速機構30の第1速ギア段31から、第2変速機構40の第2速ギア段42に切替えるアップシフトを行う場合、第1クラッチ21を係合状態にしており、且つ第2クラッチ22を解放状態にしているときに、第2速ギア段42を予め係合状態にしておくことで、第2入力軸28を空転させる。そして、係合状態にある第1クラッチ21を解放状態にしながら、解放状態にある第2クラッチ22を係合状態にすることで、第1クラッチ21と第2クラッチ22とをつなぎ替える動作、いわゆる「クラッチ・トゥ・クラッチ」を行わせる。これにより、機関出力軸8から推進軸66への動力伝達経路を、徐々に第1変速機構30の第1入力軸27から第2変速機構40の第2入力軸28に移していき、第1速ギア段31から第2速ギア段42へのアップシフトが完了する。このようにして、デュアルクラッチ式変速機10は、機関出力軸8から駆動輪88への動力伝達に途切れを生じさせることなく、第1変速機構30の変速段すなわち奇数段と、第2変速機構40の変速段すなわち偶数段との間において、機関出力変速段を切替える動作(シフト動作)を行うことが可能となっている。
【0073】
また、ハイブリッド車両1は、原動機として内燃機関5と電気モータ50とを併用又は選択使用することで、様々な車両走行(走行モード)を実現することができる。例えば、内燃機関5の機関出力軸8から出力される機械的動力のみを駆動輪88に伝達することで駆動輪88に駆動力を生じさせる車両走行である「エンジン走行」、内燃機関5の機関出力軸8から出力される機械的動力と、電気モータ50のロータ52から出力される機械的動力とを統合して駆動輪88に伝達することで駆動輪88に駆動力を生じさせる車両走行である「HV走行」、電気モータ50のロータ52から出力される機械的動力のみを駆動輪88に伝達することで駆動輪88に駆動力を生じさせる車両走行である「モータ走行」等がある。
【0074】
これら車両走行は、運転者により駆動輪に生じることが要求される要求駆動力や、電気モータ50に供給する電力を貯蔵する二次電池120のSOCに応じて、ECU100により、逐次、自動的に切替えられる。以下に、各走行モードにおけるECU100の制御と、内燃機関5、第1クラッチ21及び第2クラッチ22、第1変速機構30及び第2変速機構40、及び電気モータ50の動作を併せて説明する。
【0075】
ECU100が、第1クラッチ21を係合状態にすると共に第2クラッチ22を解放状態にすることで、デュアルクラッチ式変速機10は、内燃機関5の機関出力軸8からの機械的動力を、第1入力軸27で受け、第1変速機構30の変速段31,33,35,39のいずれか1つの係合状態にある変速段により変速し、第1出力軸37から駆動輪88に伝達することができる。このように、ハイブリッド車両1は、第1クラッチ21を係合状態にしている場合に、原動機として内燃機関5のみを選択使用する「エンジン走行」を実現することができる。
【0076】
この場合において、第2変速機構40の変速段42,44,46のいずれか1つを係合状態にすることで、第2入力軸28は、駆動輪88の回転速度すなわちハイブリッド車両1の車速に比例する回転速度で空転する。このとき、ECU100が電気モータ50を力行させて、ロータ52から第2入力軸28にモータトルクを出力することで、デュアルクラッチ式変速機10は、内燃機関5の機関出力軸8からの機械的動力と、電気モータ50のロータ52からの機械的動力とを、それぞれ第1変速機構30において係合状態にある変速段と、第2変速機構40において係合状態にある変速段により変速し、動力統合ギア58で統合して、駆動輪88に伝達することができる。このようにして、ハイブリッド車両1は、第1クラッチ21を係合状態にしている場合に、原動機として内燃機関5と電気モータ50とを併用する「HV走行」を実現することができる。
【0077】
一方、ECU100が第1クラッチ21を解放状態にすると共に第2クラッチ22を係合状態にすることで、デュアルクラッチ式変速機10は、内燃機関5の機関出力軸8からの機械的動力を、第2入力軸28で受け、第2変速機構40の変速段42,44,46のいずれか1つの係合状態にある変速段により変速し、第2出力軸48から駆動輪88に伝達することができる。このようにして、ハイブリッド車両1は、第2クラッチ22を係合状態にしている場合に、原動機として内燃機関5のみを選択使用する「エンジン走行」を実現することができる。
【0078】
この場合において、ECU100が電気モータ50を力行させて、ロータ52から第2入力軸28にモータトルクを出力することで、デュアルクラッチ式変速機10は、電気モータ50のロータ52からの機械的動力と、内燃機関5の機関出力軸8からの機械的動力とを、第2入力軸28で統合し、第2変速機構40において係合状態にある変速段により変速して、動力統合ギア58を介して駆動輪88に伝達することができる。このようにして、ハイブリッド車両1は、第2クラッチ22を係合状態にしている場合に、原動機として内燃機関5と電気モータ50とを併用する「HV走行」を実現することができる。
【0079】
また、電気モータ50から出力される機械的動力のみを駆動輪88に伝達するモータ走行(EV走行)を行わせる場合、上述のエンジン走行及びHV走行の制御とは異なり、ECU100は、第1クラッチ21及び第2クラッチ22を双方共に解放状態にすると共に、第2変速機構40の変速段42,44,46のいずれか1つを係合状態にして、電気モータ50を力行させる。デュアルクラッチ式変速機10は、電気モータ50のロータ52からの機械的動力を、第2入力軸28で受け、第2変速機構40において係合状態にある変速段により変速して、動力統合ギア58を介して駆動輪88に伝達する。このようにしてハイブリッド車両1は、原動機として電気モータ50のみを選択使用する「モータ走行」を実現することができる。
【0080】
なお、モータ走行又はHV走行において、電気モータ50がロータ52から出力する機械的動力(以下、モータ出力と記す)を駆動輪88に伝達することにより、当該駆動輪88の接地面に作用する駆動力を、以下に「モータ駆動力」と記す。これに対して、エンジン走行又はHV走行において、内燃機関5が機関出力軸8から出力する機械的動力(以下、機関出力と記す)を駆動輪88に伝達することにより、当該駆動輪88の接地面に作用する駆動力を、以下に「機関駆動力」と記す。また、モータ駆動力に機関駆動力を合計した値、すなわち駆動輪88の接地面に生じる合計の駆動力を以下に「合計駆動力」と記す。
【0081】
以上のように構成されたハイブリッド車両1は、モータ走行を行っているときに、電気モータ50に供給する電力を貯蔵する二次電池120の蓄電状態(SOC)が低下した場合や、運転者により要求される要求駆動力を、モータ駆動力では実現できなくなった場合において、原動機として内燃機関5を用いた車両走行であるエンジン走行又はHV走行に移行させる必要があり、以下に図4を用いて説明する。図4は、電気モータからの機械的動力により生じるモータ駆動力と、内燃機関からの機械的動力により生じる機関駆動力との関係を説明する説明図である。
【0082】
図4に示すように、内燃機関5からの機械的動力により生じる最大の機関駆動力(以下、最大機関駆動力と記し、図に二点鎖線で示す)は、内燃機関5の機関出力軸8から出力される機械的動力を、第1速ギア段31により変速し、駆動輪88に伝達させて生じる駆動力である。最大機関駆動力は、車速の増減すなわち機関回転速度の増減に応じてさほど変化しない。これに対して、電気モータ50からの機械的動力により生じる最大の駆動力(以下、最大モータ駆動力と記し、図に実線で示す)は、電気モータ50のロータ52から出力される機械的動力を、第2速ギア段42により変速し、駆動輪88に伝達させて生じる駆動力である。最大モータ駆動力は、電気モータ50の出力特性上、所定の車速以上において、モータ回転速度が増大する即ち車速が増大するに従って小さくなる。加えて、車速が比較的高い場合には、最大機関駆動力に比べて小さくなる。
【0083】
したがって、ハイブリッド車両1がモータ走行を行っている場合、車速が上昇する、すなわちモータ回転速度が上昇するに従って、電気モータ50からの機械的動力では、要求駆動力を実現できなくなる可能性が高くなり、要求駆動力が最大モータ駆動力を上回った場合、内燃機関5を始動させて、原動機として内燃機関5を用いた車両走行(エンジン走行又はHV走行)に移行することが必要となる。
【0084】
このようにしてモータ走行中において、非作動状態にある内燃機関5を始動するため、電気モータ50により機関出力軸8を回転駆動する、いわゆるクランキングを行う必要がある。ハイブリッド車両1においては、原動機として内燃機関5のみを有する通常の車両に比べて内燃機関5を始動する頻度が高いため、内燃機関5にスタータモータを有するか否かに拘らず、原動機として設けられた電気モータ50からの機械的動力を機関出力軸8に伝達してクランキングを行うことが求められている。
【0085】
また、ハイブリッド車両1において、モータ走行中に機関出力軸8の回転駆動、すなわちクランキングを行って内燃機関5を始動する手法として、電気モータ50のロータ52と駆動輪88との間における動力伝達を遮断した状態でクランキングを行う方法(以下、「通常のクランキング」と記す)と、電気モータ50のロータ52と駆動輪88と機関出力軸8とを係合させた状態でクランキングを行う方法(以下、「押しがけクランキング」と記す)がある。なお、「押しがけクランキング」を用いる場合には、ハイブリッド車両1の仕様により決まる、ある特定の車速(後述する、押しがけ可能車速)以上でなければ、内燃機関5を始動することはできない。以下に、図1、図4〜図6を用いて説明する。
【0086】
図5は、通常のクランキングを行って内燃機関を始動させた場合のハイブリッド車両の動作を説明する説明図である。図6は、押しがけクランキングを行って内燃機関を始動させた場合のハイブリッド車両の動作を説明する説明図である。
【0087】
通常のクランキングは、例えば、電気モータ50からの機械的動力を、第2変速機構40の第2速ギア段42により変速し、駆動輪88に伝達してモータ走行を行っている場合、図5に示すように、まず、ECU100が、電気モータ50の力行を停止する、すなわちモータ駆動力をゼロにする(時点T1a)。これにより電気モータ50のロータ52を空転させて、当該ロータ52と駆動輪88との間にトルクが作用していない状態を作り出す。
【0088】
この時点T1aの直後、ECU100は、ロータ52が入力軸に係合する第2変速機構40の変速段42,44,46をいずれも解放状態(選択しない状態)にする、すなわち第2速ギア段42に対応するカップリング機構42eを解放状態にして、ロータ52と駆動輪88との間における動力伝達を遮断する。
【0089】
そして、時点T1cにおいて、ECU100は、第2クラッチ22を係合状態にすると共に電気モータ50の力行を開始して、機関出力軸8の回転駆動(クランキング)を開始する。ロータ52と駆動輪88との間における動力伝達は遮断されているので、駆動輪88の回転速度に関係なく、ロータ52と機関出力軸8を一体に回転させて、電気モータ50からの機械的動力により機関出力軸8を回転駆動することができる。電気モータ50からの機械的動力は、全て機関出力軸8の回転駆動に供される。
【0090】
そして、時点T2aにおいて、内燃機関5においてファイアリングが開始される。その直後の時点T2cにおいて、ECU100は、電気モータ50の力行を停止して、クランキングを終了する。この時点T2cにおいて、ECU100は、第1クラッチ21を係合状態にする。これにより、内燃機関5が機関出力軸8から出力した機械的動力は、第1クラッチ21から第1入力軸27に伝達され、第1変速機構30により変速されて、駆動輪88に伝達される。そして、時点T3aにおいて、ECU100は、駆動輪88に所望の機関駆動力を生じさせている。
【0091】
このように、通常のクランキングは、電気モータ50のロータ52と駆動輪88との間における動力伝達を遮断した後に、第2クラッチ22を係合状態にすると共に電気モータ50を力行させることで、駆動輪88の回転速度に関係なく、機関出力軸8を回転駆動する。しかし、この方法では、電気モータ50の力行を一旦停止して、電気モータ50のロータ52と駆動輪88との間にトルクが作用しない状態を作り出してから、ロータ52に第2入力軸28が係合する第2変速機構40の変速段42,44,46をいずれも解放状態にする必要がある。このため、電気モータ50の力行停止(時点T1a)からクランキングの終了(時点T2c)まで、原動機としての内燃機関5及び電気モータ50からの機械的動力を駆動輪88に伝達することはできず、ハイブリッド車両1には、クランキングを行っている間に合計駆動力が一時的にゼロとなる、いわゆる「駆動力抜け」が生じてしまうという問題が生じる。
【0092】
一方、押しがけクランキングは、図6に示すように、まず、ECU100は、時点T1において、第1変速機構30の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つを選択して係合状態にしており、且つ第1クラッチ21を係合状態にすると共に電気モータ50の出力トルクを増大させる、すなわちモータ駆動力を増大させる。第1クラッチ21を係合状態にすることで、機関出力軸8と駆動輪88が係合し、機関出力軸8は、駆動輪88の回転速度に比例した回転速度で回転駆動される。機関出力軸8の回転駆動に必要な動力は、マイナス値の機関駆動力で示されており、これをモータ駆動力の増大で補っている。
【0093】
そして、時点T2において、内燃機関5においてファイアリングが開始される。その直後、時点T2〜T3において、始動した内燃機関5が機関出力軸8から機械的動力を出力し、駆動輪88に生じる機関駆動力が上昇するに従って、ECU100は、駆動輪88に生じるモータ駆動力、すなわちモータ出力トルクを低下させる。機関駆動力が増大する分、モータ駆動力を減少させることで、合計駆動力を一定に保って、機関出力軸8の回転駆動を行うことができる。
【0094】
このように、押しがけクランキングは、電気モータ50のロータ52と駆動輪88との間における動力伝達を遮断することがないので、ハイブリッド車両1には、合計駆動力がゼロとなる「駆動力抜け」が生じることがない。しかし、押しがけクランキングにおいては、機関出力軸8と駆動輪88が係合している状態で、機関出力軸8を回転駆動するため、クランキングを行っているときの機関出力軸8の回転速度は、駆動輪88の回転速度に比例したものとなる。
【0095】
このため、ハイブリッド車両1の車速が低い場合に、押しがけクランキングを行うと、機関出力軸8の回転速度(機関回転速度)が、内燃機関5の始動に必要な回転速度(以下、必要回転速度と記す)に達しないことがある。必要回転速度は、内燃機関5のファイアリングが可能となる回転速度に設定されており、例えば、200rpmに設定されている。必要回転速度は、予め適合実験等により求められており、制御定数としてECU100のROMに記憶されている。
【0096】
したがって、押しがけクランキングを行って内燃機関5を始動する場合、第1及び第2クラッチ21,22のうち、クランキングを行う際に係合状態にするクラッチと、当該クラッチに対応して設けられた変速機構において選択されている(係合状態にある)変速段に応じて、機関出力軸8の回転速度(機関回転速度)が必要回転速度以上となって内燃機関5が始動可能となる車速が決まる。この車速を、以下に「押しがけ可能車速」と記す。つまり、ハイブリッド車両1は、モータ走行で発進した場合、押しがけ可能車速以上に加速しないと、押しがけクランキングを行っても、内燃機関5を始動することができず、原動機として内燃機関5を用いた走行(HV走行/エンジン走行)に移行することができない。
【0097】
なお、ハイブリッド車両1は、モータ走行で発進した場合、押しがけ可能車速以上に加速することができなくても、通常のクランキングを行って内燃機関5を始動することは可能であるが、上述のようにモータ走行中に通常のクランキングを行うと、その間においては、電気モータ50のロータ52と駆動輪88との間における動力伝達が遮断されて、合計駆動力がゼロとなり、駆動力抜けが生じてしまうという問題がある。
【0098】
したがって、デュアルクラッチ式変速機10の一方の入力軸(第2入力軸28)に電気モータ50のロータ52が係合しているハイブリッド車両1においては、モータ走行中に内燃機関5を始動する際に駆動力抜けが生じることを抑制するため、押しがけ可能車速以上の車速に加速し、押しがけクランキングを行って、内燃機関5を始動させることが可能か否かを、予め車両停止中に判断してハイブリッド車両1の発進に備えることが求められている。
【0099】
そこで、本発明に係るハイブリッド車両1においては、モータ走行により車両を発進させて、上述の押しがけ可能車速以上の車速に設定された判定車速以上に加速することが可能であるか否かを、前方車を含む先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であるか否かを判定することによって判断し、前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流であると判定した場合には、モータ走行による車両発進に備え、前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流ではないと判定した場合には、内燃機関を始動させた後に、内燃機関から出力される機械的動力を駆動輪に伝達する車両走行による車両発進に備えており、以下に、図1及び図7を用いて説明する。図7は、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御手段(ECU)が実行する車両制御を説明する図であり、車両停止中におけるハイブリッド車両の動作を説明する図である。
【0100】
図1及び図7に示すように、ハイブリッド車両1において、ECU100は、二次電池120の蓄電状態(SOC)と、車両が停止している路面の上り勾配である「路面勾配」と、ブレーキペダルの操作/非操作状態とを、制御変数として取得している。加えて、ECU100は、自車の前方に他の車両があるか否かを、制御変数(フラグ)として取得している。また、ECU100は、前方車を含む先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であるか否かを、制御変数(フラグ)として取得している。
【0101】
図7に示すように、運転者によりブレーキペダルが踏み込まれて、ブレーキペダルが操作状態となった場合(図にブレーキONで示す)、ECU100は、運転者がハイブリッド車両1の発進を意図していないものと判断して、二次電池120の蓄電状態(SOC)と、ハイブリッド車両1が停止している路面勾配と、自車の前方に他の車両があるか否か、又は前方車を含む先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であるか否かに応じて、電気モータ50により発電を行う「発電モード」と、エンジン走行による車両発進に備える「エンジン発進準備モード」と、モータ走行による車両発進に備える「モータ発進準備モード」のうち、いずれか1つのモードを選択して車両発進に備える。
【0102】
なお、運転者がハイブリッド車両1の発進を意図しているか否かの判断は、ブレーキペダルの操作/非操作状態に限定されるものではない。例えば、車速がゼロの状態が所定時間継続された場合や、ブレーキペダルが非操作状態であり且つ車速がゼロの状態が所定時間継続された場合に、運転者が発進を意図していないものと判断するものとしても良い。
【0103】
二次電池120の蓄電状態が、予め設定された判定値Aを下回る場合、ECU100は、車両停止中において電気モータ50により発電を行って二次電池120を充電する必要があるものと判断して、発電モードを選択して、二次電池120の充電を行う。
【0104】
なお、二次電池120を充電する必要があるか否かを判定する判定値Aは、予め適合実験等により求められており、制御定数としてECU100のROM(図示せず)に記憶されている。判定値Aは、例えば、40%の蓄電状態に設定されている。
【0105】
発電モードを選択した場合、ECU100は、まず、第1変速機構30において最も低速側Aの(最も減速比が大きい)変速段である第1速ギア段31を選択して係合状態にすると共に、第2変速機構40の変速段42,44,46をいずれも解放状態にする。電気モータ50とロータ52と駆動輪88との間における動力伝達を第2変速機構40において遮断している。この状態から、ECU100は、第2クラッチ22を係合状態にすると共に電気モータ50を力行させて通常のクランキングを行い、内燃機関5を始動する。内燃機関5の始動が完了すると、ECU100は、電気モータ50を発電機として機能させて、内燃機関5の機関出力軸8から第2クラッチ22を介してロータ52に伝達された機械的動力を、電力に変換して二次電池120に回収する。このようにして、ECU100は、内燃機関5からの機械的動力を電気モータ50により電力に変換して二次電池120の充電を行うことで蓄電状態(SOC)を上昇させる。
【0106】
そして、二次電池120の蓄電状態が、予め設定された判定値A+aを超えた場合、ECU100は、二次電池120の蓄電状態と、ハイブリッド車両1が停止している路面勾配と、自車の前方に他の車両があるか否か、又は前方車を含む先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であるか否かの判定に応じて、エンジン走行による発進に備える「エンジン発進準備モード」と、モータ走行による発進に備える「モータ発進準備モード」のうちいずれか一方を選択する。
【0107】
なお、判定値A+aにおける「a」は、二次電池120の蓄電状態が判定値A付近で変動した場合に、エンジン発進準備モードと発電モードが頻繁に切替わることを防止するために設定された値である。
【0108】
二次電池120の蓄電状態が予め設定された判定値Bを下回る場合には、ECU100は、蓄電状態が低いため、モータ駆動力を良好に発生することができず、モータ走行により車両を発進させても、予め設定された判定車速以上に車両を加速することができないものと判断して、エンジン発進準備モードを選択する。
【0109】
なお、モータ駆動力を良好に発生することができるか否かを判定する判定値Bは、上述の判定値Aより高い値に設定されている。判定値Bは、予め適合実験等により求められており、制御定数としてECU100のROMに記憶されている。なお、判定値Bは、ハイブリッド車両1が停止している路面の上り勾配(路面勾配)に応じて制御変数として設定されるものとしても良い。路面勾配と二次電池120の蓄電状態との関係を示すマップを、制御定数としてECU100のROMに記憶しておくことで、路面勾配に応じて判定値Bを設定することができる。
【0110】
また、ハイブリッド車両1が停止している路面勾配が、予め設定された判定勾配Cを上回る場合においても、ECU100は、モータ駆動力では、予め設定された判定車速、すなわち押しがけ可能車速以上に車両を加速することができないものと判断して、エンジン発進準備モードを選択する。
【0111】
なお、判定勾配Cは、予め適合実行等に求められており、例えば、8〜10%の上り勾配に設定されている。判定勾配Cは、制御定数としてECU100のROM(図示せず)に記憶されている。
【0112】
また、ハイブリッド車両1の走行路の前方に渋滞があり、前方車が低速で走行している場合や停止している場合など、ハイブリッド車両1の前方に他の車両があると判定した場合や、前方車を含む先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流ではない(すなわち先行車群の交通流状況が、所定の車速未満の交通流である)場合には、ECU100は、モータ走行により車両を発進させても、他の車両が前方にあるため、予め設定された判定車速以上に車両を加速することができないものと判断して、エンジン発進準備モードを選択する。
【0113】
エンジン発進準備モードを選択した場合、ECU100は、まず、非作動状態にある内燃機関5の始動に備える。具体的には、第1変速機構30において最も低速側の変速段である第1速ギア段31を選択して係合状態にすると共に、第2変速機構40の変速段42,44,46をいずれも解放状態にする。この状態から、第2クラッチ22を係合状態にすると共に電気モータ50を力行させることで、駆動輪88を静止させたまま、機関出力軸8を回転駆動してクランキングを行うことができる。これにより、内燃機関5を始動させて、エンジン走行による車両発進に備えることができる。
【0114】
一方、二次電池120の蓄電状態が、予め設定された判定値B+bを超えており、且つハイブリッド車両1が停止している路面勾配が、予め設定された判定勾配C+cを下回り、且つ前方に他の車両がない、又は先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であると判定した場合には、ECU100は、モータ走行により車両を発進させて、予め設定された判定車速以上に加速することが可能であるものと判断して、モータ発進準備モードを選択する。
【0115】
なお、判定値B+bにおける「b」は、二次電池120の蓄電状態が判定値B付近で変動した場合に、エンジン発進準備モードとモータ発進準備モードが頻繁に切替わることを防止するために設定された値である。
【0116】
モータ発進準備モードを選択した場合、ECU100は、第1変速機構30において、最も低速側の(減速比の大きい)変速段である第1速ギア段31を選択して係合状態にすると共に、第2変速機構40において、最も低速側の(減速比の大きい)変速段である第2速ギア段42を選択して係合状態にする。この状態から、電気モータ50を力行させることで、電気モータ50からの機械的動力を、第2変速機構40において最大限減速し、トルクを増大させて駆動輪88に伝達することができる。このようにして、モータ走行による発進に備えている。
【0117】
以上に説明した、発電モード、エンジン発進準備モード、モータ発進準備モードにおいて、運転者がブレーキペダルから足を離して、ブレーキペダルが非操作状態(図にブレーキOFFと示す)となった場合、ECU100は、運転者がハイブリッド車両1を発進させる意図があるものと判断して、発電モード又はエンジン発進準備モードが選択されていた場合は、エンジン走行により発進する「エンジン発進モード」に移行し、モータ発進準備モードが選択されていた場合には、モータ走行により発進する「モータ発進モード」に移行する。
【0118】
エンジン発進モードに移行すると、ECU100は、まず、車両停止中において通常のクランキングを行って内燃機関5を始動させる。第2クラッチ22を係合状態にすると共に電気モータ50を力行させて、電気モータ50がロータ52から出力する機械的動力を、第2クラッチ22を介して機関出力軸8に伝達して、機関出力軸8を回転駆動する。その後、ECU100は、クランキング中においてファイアリングを行わせて内燃機関5を始動する。
【0119】
内燃機関5の始動が完了した後に、運転者によるアクセルペダルの操作に応じて第1クラッチ21を係合状態にすることで、内燃機関5からの機械的動力は、第1クラッチ21から第1入力軸27に伝達され、第1変速機構30の第1速ギア段31により変速されて、駆動輪88を伝達する。これにより、内燃機関5からの機械的動力を、減速してトルクを増大させて駆動輪88を回転駆動することができ、極力高い機関駆動力を生じさせてハイブリッド車両1をエンジン走行により発進させることができる。なお、内燃機関5の始動が完了した後に、第2クラッチ22を解放状態にしても良いし、そのまま、第2クラッチ22を係合状態にしたまま発進することもできる。
【0120】
一方、モータ発進モードに移行すると、ECU100は、運転者によるアクセルペダルの操作に応じて電気モータ50を力行させる。駆動装置(10,50)は、電気モータ50がロータ52から出力する機械的動力を、第2変速機構40の第2速ギア段42により変速して、駆動輪88に伝達する。これにより、電気モータ50からの機械的動力を、減速してトルクを増大させて駆動輪88を回転駆動することができ、極力高いモータ駆動力を生じさせてハイブリッド車両1をモータ走行により発進させることができる。つまり、ECU100は、二次電池120の蓄電状態(SOC)と路面勾配に基づいて、モータ走行による発進と、原動機として内燃機関5を用いた走行(エンジン走行/HV走行)による発進とを切替えている。
【0121】
このようなモータ走行による発進が行われるのは、車両停止中においてモータ発進準備モードが選択されていた場合である、すなわち車両停止中における二次電池120の蓄電状態が判定値B+bを上回り、且つ車両が停止している路面勾配が判定勾配C+cを下回り、且つ自車の前方に他の車両がない、又は前方車を含む先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であると判定した場合である。路面勾配が判定値C+cを下回っているため、判定車速以上に加速するにあたって駆動力がさほど必要とされず、加えて、蓄電状態が判定値B+bを上回っているため、電気モータ50は、予測どおりのモータ駆動力を発生させることができ、前方に他の車両がない、又は先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であると判定しているため、判定車速以上に加速するにあたって他の車両により進路が塞がれることを抑制することができる。このようにして、ハイブリッド車両1は、モータ走行により発進した場合、押しがけ可能車速以上に加速することが可能となっている。
【0122】
そして、ハイブリッド車両1がモータ走行により発進して、車速が判定車速すなわち押しがけ可能車速以上となった場合、ECU100は、押しがけクランキングと内燃機関5の始動を許可する。判定車速以上であれば、第1クラッチ21又は第2クラッチ22を係合状態にして、機関出力軸8を、必要回転速度以上の回転速度で回転駆動することができ、ファイアリングを行って内燃機関5を始動することが可能となる。
【0123】
そして、ハイブリッド車両1は、車速が予め設定された判定車速以上となり、且つ運転者により要求される要求駆動力が、予め設定された判定駆動力Eを上回る場合に、上述の押しがけクランキングを行って内燃機関を始動させることで、モータ走行から原動機として内燃機関5を用いた走行、例えば、原動機として内燃機関5のみを選択使用するエンジン走行に移行する。
【0124】
この判定駆動力Eは、第2変速機構40において第2速ギア段42が係合状態にあり、且つ第1変速機構30において第1速ギア段31が係合状態にあって押しがけクランキングを行う場合、電気モータ50がロータ52から出力可能な最大のトルク(以下、最大モータトルクと記す)と、内燃機関5のクランキングに必要なトルク(以下、クランキングトルクと記す)と、第1速ギア段31の減速比、第2速ギア段42の減速比、及び終減速装置70の終減速比と、駆動輪88の半径に基づいて、下記の式(1)より算出することができる。
判定駆動力E=[(最大モータトルク)×(第2速ギア段の減速比)−(クランキングトルク)×(第1速ギア段の減速比)]×(終減速比)/(駆動輪の半径)・・・(1)
【0125】
ECU100は、モータ走行中において解放状態にある第1及び第2クラッチ21,22のうち、第1クラッチ21を係合状態にして、駆動輪88と機関出力軸8を係合させることで、電気モータ50が駆動輪88に向けて出力する機械的動力の一部を、第1速ギア段31により変速して機関出力軸8に伝達して、機関出力軸8の回転駆動に供する。
【0126】
機関出力軸8の回転速度は、車速に比例する駆動輪88の回転速度を、係合状態にしたクラッチに対応する変速機構において係合状態にある変速段の減速比と終減速比で除した値となる。このため、判定車速は、回転駆動される機関出力軸8の回転速度が、必要回転速度(例えば、200rpm)となる押しがけ可能車速以上に設定されている。ハイブリッド車両1は、判定車速以上に加速し、押しがけクランキングを行って機関出力軸8を必要回転速度以上にして、さらにファイアリングを行うことで、内燃機関5を始動することができる。
【0127】
なお、本実施形態において、第1変速機構30において第1速ギア段31を選択して係合状態にしておき、第1クラッチ21を係合状態にして、押しがけクランキングを行う場合について説明したが、押しがけクランキングを行う場合に、機関出力軸8と駆動輪88とを係合させる変速段は、これに限定されるものではない。第1変速機構30において第3速ギア段33や第5速ギア段35を選択して、押しがけクランキングを行うものとしても良い。
【0128】
また、本実施形態において、第1クラッチ21を係合状態にすることで機関出力軸8と駆動輪88とを係合させて、押しがけクランキングを行うものとしたが、係合状態にするクラッチは、これに限定されるものではない。第2変速機構40の変速段42,44,46のうちいずれか1つ、例えば、第2速ギア段42を選択して係合状態にしておき、第2クラッチ22を係合状態にして、機関出力軸8と駆動輪88を係合させるものとしても良い。第1速ギア段31より減速比の小さい第2速ギア段42を介して、機関出力軸8と駆動輪88を係合することで、クランキング時の機関回転速度が必要以上に高くなりすぎることを抑制することができる。
【0129】
このように、押しがけクランキングを行っている間は、電気モータ50から出力する機械的動力を増大させることで、電気モータ50からの機械的動力の一部が、クランキングにより消費されても、駆動輪88に生じる合計駆動力に変動が生じることを抑制することができる。クランキングの開始から内燃機関5の始動が完了するまでの間、電気モータ50のロータ52と駆動輪88が係合しており、且つ電気モータ50の力行が継続されるため、上述の通常のクランキングを行った場合のように、合計駆動力が一時的にゼロとなる、いわゆる駆動力抜けが生じてしまうことがない。
【0130】
なお、ハイブリッド車両1がモータ走行により発進して、車速が押しがけ可能車速(判定車速)以上にならない場合もある。例えば、上述の制御の結果、モータ走行により発進した後、極低速(例えば、10km/h以下)の車速でモータ走行を長時間継続した場合等がある。このようにして判定車速(押しがけ可能車速)以上に加速できない場合でも、モータ走行の継続により二次電池の蓄電状態が低下した場合においては、原動機として内燃機関5を用いた走行(エンジン走行/HV走行)に移行する必要があり、内燃機関5を始動させる必要がある。
【0131】
このように、ハイブリッド車両1が判定車速以上に加速できない場合には、ECU100は、通常のクランキングを行って内燃機関5を始動する。モータ走行中に通常のクランキングを行うと、当該クランキングを行っている間に、上述のように、駆動輪88に生じる合計駆動力がゼロとなって駆動力抜けが生じる。しかし、この場合、ハイブリッド車両1が走行している路面勾配が比較的小さく、且つ判定車速以上に加速していないことから、合計駆動力は、極めて小さいものであるため、クランキングのために合計駆動力が一時的にゼロとなっても、ハイブリッド車両1の乗員に不快感を与えてしまうことがない。
【0132】
以上に説明したように本実施形態に係るハイブリッド車両1は、原動機として内燃機関と電気モータとを有し、複数の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つを係合状態にして、第1入力軸27と駆動輪88とを係合させることが可能な第1変速機構30と、複数の変速段42,44,46のうちいずれか1つを係合状態にして、第2入力軸28と駆動輪88とを係合させることが可能な第2変速機構30と、内燃機関5の機関出力軸8と第1入力軸27とを係合させることが可能な第1クラッチ21と、当該機関出力軸8と第2入力軸28とを係合させることが可能な第2クラッチ22とを有し、第2入力軸28が電気モータ50のロータ52に係合するデュアルクラッチ式変速機10と、第1及び第2変速機構30,40の各変速段31〜46の係合/解放状態を制御可能な制御手段としてのECU100とを備えている。制御手段としてのECU100は、前方車を含む先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であるか否かを判定する機能である交通流状況判定手段を含み、前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流であると判定した場合には、車両停止中において第2変速機構40の変速段42,44,46のうち最も減速比の大きい変速段42を係合状態にし、前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流ではないと判定した場合には、車両停止中において第2変速機構40の変速段42,44,46をいずれも解放状態にするものとした。
【0133】
前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流であると判定した場合には、車両停止中に第2変速機構40において最も減速比の大きい変速段(第2速ギヤ段)42を係合状態にしておくことで、モータ走行による発進に備えることができる。モータ走行により発進するときに、電気モータ50からの機械的動力を、極力減速してトルクを増大させて駆動輪88に伝達することができる。モータ走行により発進した後は、押しがけ可能車速以上に加速し、押しがけによるクランキングを行って駆動力抜けを生じさせることなく内燃機関5を始動させることが可能となる。一方、前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流ではないと判定した場合には、車両停止中に第2変速機構40の変速段42,44,46をいずれも解放状態にしておくことで、車両停止中に通常のクランキングを行っての内燃機関5の始動に備えることができる。モータ50を力行させると共に第2クラッチ22を係合状態にするだけで、車両発進前に内燃機関5を始動させることができ、その後の、エンジン走行やHV走行等の、内燃機関5から出力された機械的動力を駆動輪に伝達する車両走行による発進に備えることができる。その後、ハイブリッド車両1を発進させて、内燃機関を始動させるときに、駆動力抜けが生じることを抑制することができる。
【0134】
なお、本実施形態に係るハイブリッド車両1において、ECU100は、前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流であると判定した場合には、モータ走行により車両を発進させ、前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流ではないと判定した場合には、内燃機関を始動させた後に、内燃機関から出力される機械的動力を駆動輪に伝達する車両走行(エンジン走行/HV走行)により車両を発進させるものとしても良い。これにより、モータ走行により発進して、押しがけ可能車速以上に加速できない状態が生じることを極力抑制することができ、モータ走行中において通常のクランキングを行って駆動力抜けが生じてしまうことを極力抑制することができる。
【0135】
また、本実施形態に係るハイブリッド車両1において、内燃機関5は、機関出力軸8の回転速度が、予め設定された必要回転速度以上となった場合に、始動することが可能であり、前記「所定の車速」は、第1及び第2変速機構30,40の変速段31〜46のうち最も減速比の大きい前進用の変速段である第1速ギア段31と、第1及び第2クラッチ21,22のうち当該第1速ギア段31に対応するクラッチ21を係合状態にしたときに、機関出力軸8の回転速度が必要回転速度以上となるよう設定されている。車速が押しがけ可能車速以上であるときに、クラッチ21を係合状態にすることで、機関出力軸8を必要回転速度以上にして押しがけクランキングを行うことができ、内燃機関5を確実に始動させることができる。
【0136】
なお、ECU100は、電気モータ50から出力される機械的動力のみを駆動輪88に伝達する車両走行であるモータ走行により車両を発進させて、予め設定された判定車速以上に加速可能であるか否かを車両停止中に判定する機能(モータ発進可否判定手段)を含み、判定車速以上に加速可能であると判定した場合には、車両停止中において第2変速機構40の変速段42,44,46のうち最も減速比の大きい変速段である第2速ギア段42を係合状態にし、一方、判定車速以上に加速できないと判定した場合には、車両停止中において第2変速機構40の変速段をいずれも解放状態にするものとした。
【0137】
これにより、判定車速以上に加速可能であると判定された場合には、車両停止中に第2変速機構40において最も減速比の大きい変速段(第2速ギヤ段)42を係合状態にしておくことで、モータ走行による発進に備えることができる。モータ走行により発進するときに、電気モータ50からの機械的動力を、極力減速してトルクを増大させて駆動輪88に伝達することができる。モータ走行により発進した後は、判定車速以上に加速し、押しがけによるクランキングを行って駆動力抜けを生じさせることなく内燃機関5を始動させることが可能となる。一方、判定車速以上に加速可能ではないと判定された場合には、車両停止中に第2変速機構40の変速段42,44,46をいずれも解放状態にしておくことで、車両停止中に通常のクランキングを行っての内燃機関5の始動に備えることができる。モータ50を力行させると共に第2クラッチ22を係合状態にするだけで、車両発進前に内燃機関5を始動させることができ、その後の、エンジン走行やHV走行等の、内燃機関5から出力された機械的動力を駆動輪に伝達する車両走行による発進に備えることができる。その後、ハイブリッド車両1を発進させて、内燃機関を始動させるときに、駆動力抜けが生じることを抑制することができる。
【0138】
なお、ハイブリッド車両1において、ECU100は、判定車速以上に加速可能であると判定した場合には、モータ走行により車両を発進させ、判定車速以上に加速できないと判定した場合には、内燃機関5を始動させた後に、内燃機関5から出力される機械的動力を駆動輪88に伝達する車両走行(エンジン走行/HV走行)により車両を発進させるものとした。これにより、モータ走行により発進して、判定車速以上に加速できない状態が生じることを極力抑制することができ、モータ走行中において通常のクランキングを行って駆動力抜けが生じてしまうことを極力抑制することができる。
【0139】
なお、ハイブリッド車両1において、ECU100のモータ発進可否判定手段は、車両が停止している路面の上り勾配である路面勾配を推定する機能(路面勾配推定手段)を含み、前記路面勾配が、予め設定された判定勾配Cを上回る場合に、判定車速以上に加速できないと判定するものとした。これにより、ハイブリッド車両1が停止している路面の上り勾配が大きく、電気モータ50から出力される機械的動力だけでは、十分に加速できない場合に対応して、モータ走行により判定車速以上に加速可能であるか否かを判定することができる。
【0140】
なお、ハイブリッド車両1において、ECU100のモータ発進可否判定手段は、電気モータ50に供給する電力を貯蔵する二次電池120の蓄電状態(SOC)を推定する機能(蓄電状態推定手段)を含み、蓄電状態(SOC)が、予め設定された判定値Bを下回る場合に、判定車速以上に加速できないと判定するものとした。これにより、蓄電状態(SOC)が比較的低く、電気モータ50がロータ52から機械的動力を十分に出力できない場合に対応して、モータ走行により判定車速以上に加速可能であるか否かを判定することができる。
【0141】
なお、ハイブリッド車両1において、ECU100のモータ発進可否判定手段は、自車(ハイブリッド車両1)の前方に他の車両があるか否かを判定する機能(前方車両有無判定手段)を含み、自車の前方に他の車両があると判定した場合に、判定車速以上に加速できないと判定するものとした。これにより、車両発進後に、他の車両により自車の進路が塞がれてしまい十分に加速できない場合に対応して、モータ走行により判定車速以上に加速可能であるか否かを判定することができる。
【0142】
なお、ハイブリッド車両1において、ECU100の前方車両有無判定手段は、前方車と自車との間の距離である車間距離を推定する機能(車間距離推定手段)を含み、前記車間距離が、予め設定された判定距離以下である場合に、自車の前方に他の車両があると判定するものとした。これにより、車間距離が比較的遠距離にある場合には、前方に他の車両が「ない」と判定することができ、必要以上に「前方に他の車両がある」と判定されることを抑制して、前方に他の車両があるか否かの判定を行うことができる。
【0143】
なお、ハイブリッド車両1において、ECU100の前方車両有無判定手段は、前方車の車速を推定する機能(前方車両車速推定手段)を含み、他の車両の車速が、予め設定された判定他車車速以下である場合に、自車の前方に他の車両があると判定するものとしても良い。これにより、前方車の車速が比較的高く、自車から急速に遠ざかる場合には、自車の前方に他の車両が「ない」と判定することができ、必要以上に「前方に他の車両がある」と判定されることを抑制して、前方に他の車両があるか否かの判定を行うことができる。
【0144】
また、本実施形態に係るハイブリッド車両1において、内燃機関5は、機関出力軸8の回転速度が、予め設定された必要回転速度以上となった場合に、始動することが可能であり、前記判定車速は、第1及び第2変速機構30,40の変速段31〜46のうち最も減速比の大きい前進用の変速段である第1速ギア段31と、第1及び第2クラッチ21,22のうち当該第1速ギア段31に対応するクラッチ21を係合状態にしたときに、機関出力軸8の回転速度が必要回転速度以上となるよう設定されているものとした。これにより、車速が判定車速以上であるときに、クラッチ21を係合状態にすることで、機関出力軸8を必要回転速度以上にして押しがけクランキングを行うことができ、内燃機関5を確実に始動させることができる。
【0145】
また、本実施形態に係るハイブリッド車両1において、制御手段としてのECU100は、車両が停止している路面の上り勾配である路面勾配を推定する機能(路面勾配推定手段)と、電気モータ50に供給する電力を貯蔵する二次電池120の蓄電状態(SOC)を推定する機能(蓄電状態推定手段)と、自車の前方に他の車両があるか否かを判定する機能(前方車両有無判定手段)と、を含み、車両停止中において、前記路面勾配が、予め設定された判定勾配Cを上回る、又は前記蓄電状態が、予め設定された判定値Bを下回る、又は自車の前方に他の車両があると判定した場合には、電気モータ50から出力される機械的動力のみを駆動輪88に伝達する車両走行であるモータ走行による発進から、内燃機関5から出力される機械的動力を駆動輪88に伝達する車両走行(エンジン走行/HV走行)による発進に切替えるものとした。これにより、蓄電状態(SOC)が低くモータ50が機械的動力を十分に発生できない場合や、路面の上り勾配が大きくモータ50から出力される機械的動力だけでは十分に加速できない場合、さらに、車両発進後に、他の車両により自車の進路が塞がれてしまい十分に加速できない場合に対応して、モータ走行により判定車速以上に加速可能であるか否かを判定して、モータ走行による発進と、原動機として内燃機関5を用いた車両走行(エンジン走行/HV走行)による発進を使いわけることができる。モータ走行により発進した場合には、判定車速以上に加速できない状態が生じることを極力抑制して、モータ走行中において通常のクランキングを行って駆動力抜けが生じてしまうことを極力抑制することができる。
【0146】
なお、本実施形態において、電気モータ50のロータ52が入力軸(第2入力軸28)に係合する変速機構である第2変速機構40の変速段42,44,46は、偶数段(第2速ギア段、第4速ギア段、第6速ギア段)で構成されているものとしたが、本発明が適用可能なデュアルクラッチ式変速機10の態様は、これに限定されるものではない。第2変速機構40の変速段が、奇数段で構成されており、一方、第1変速機構30の変速段が、偶数段で構成されているものとしても良い。
【0147】
また、本実施形態において、電気モータ50は、供給された電力を機械的動力に変換して出力する電動機としての機能と、入力された機械的動力を電力に変換する発電機としての機能とを兼ね備えたモータジェネレータであるものとしたが、本発明に係る電気モータは、これに限定されるものではない。電気モータ50は、二次電池120から供給された電力を、機械的動力に変換してロータ52から出力する機能のみを有する電動機で構成するものとしても良い。
【0148】
また、本実施形態に係る第1及び第2変速機構30,40の各変速段31〜46において、メインギア31a〜46aは、それぞれ第1入力軸27又は第2入力軸28に結合されており、メインギア31a〜46aとそれぞれ噛み合うカウンタギア31c〜46cは、第1出力軸37又は第2出力軸48を中心に回転可能に設けられており、カップリング機構31e〜46eは、カウンタギア31c〜46cと、これに対応する出力軸37,48とを係合させるものとしたが、カップリング機構(噛み合いクラッチ機構)の態様は、これに限定されるものではない。第1及び第2変速機構30,40の各変速段31〜46のうち少なくとも一部の変速段において、メインギアが、これに対応する入力軸を中心に回転可能に設けられ、カウンタギアが、これに対応する出力軸に結合されており、カップリング機構がメインギアと入力軸とを係合させるものとしても良い。
【0149】
また、本実施形態において、第2変速機構40の第2入力軸28には、電気モータ50のロータ52が結合されているものとしたが、本発明が適用可能なデュアルクラッチ式変速機10の態様は、これに限定されるものではない。第2入力軸28は、電気モータ50のロータ52と係合していれば良く、例えば、第2入力軸28とロータ52との間に、ロータ52の回転速度を減速して第2入力軸28に伝達する減速機構や、ロータ52の回転速度を変速して第2入力軸28に伝達する変速機構を設けるものとしても良い。
【0150】
また、本実施形態において、第1変速機構30は、第1入力軸27で受けた機械的動力を、第1出力軸37から駆動輪88と係合する動力統合ギア58に伝達し、第2変速機構40は、第2入力軸28で受けた機械的動力を、第2出力軸48から動力統合ギア58に伝達するものとしたが、第1変速機構30及び第2変速機構40の態様は、これに限定されるものではない。第1変速機構30及び第2変速機構40は、それぞれ入力軸27,28で受けた機械的動力を、駆動輪88に向けて伝達可能であれば良く、例えば、第1変速機構30と第2変速機構40は、それぞれ第1入力軸27、第2入力軸28で受けた機械的動力を、駆動輪88と係合する共通の出力軸に伝達するものとしても良い。
【0151】
また、本実施形態において、デュアルクラッチ式変速機10は、内燃機関5の機関出力軸8及び電気モータ50のロータ52からの機械的動力を、第1変速機構30及び第2変速機構40のうち少なくとも一方により変速して、動力統合ギア58から、推進軸66、終減速装置70の差動機構74を介して駆動輪88に伝達するものとしたが、第1変速機構30及び第2変速機構40から駆動輪88に向けての動力伝達の態様は、これに限定されるものではない。デュアルクラッチ式変速機10において、第1変速機構30及び第2変速機構40は、それぞれ第1入力軸27及び第2入力軸28で受けた機械的動力を、駆動輪88に向けて伝達可能であれば良く、例えば、動力統合ギア58、又は当該動力統合ギア58と噛み合う第1及び第2駆動ギア37c,48cが、直接に差動機構74のリングギア72を駆動するものとしても良い。
【0152】
なお、本実施形態において、モータ走行により車両を発進させて、判定車速以上に加速できないと判定した場合、ECU100は、エンジン走行により車両を発進させるものとしたが、車両発進の態様は、これに限定されるものではない。内燃機関5から出力された機械的動力を駆動輪88に伝達する車両走行により車両を発進させるものとすれば良く、例えば、内燃機関5から出力される機械的動力とモータ50から出力される機械的動力とを統合して駆動輪88に伝達するHV走行により車両を発進させるものとしても良い。これにより、極力高い駆動力を駆動輪88に生じさせてハイブリッド車両1を発進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係るデュアルクラッチ機構の構造を説明する模式図である。
【図3】本実施形態に係る変形例のデュアルクラッチ機構の構造を説明する模式図である。
【図4】電気モータからの機械的動力により生じるモータ駆動力と、内燃機関からの機械的動力により生じる機関駆動力との関係を説明する説明図である。
【図5】通常のクランキングを行って内燃機関を始動させた場合のハイブリッド車両の動作を説明する説明図である。
【図6】押しがけクランキングを行って内燃機関を始動させた場合のハイブリッド車両の動作を説明する説明図である。
【図7】本実施形態に係るハイブリッド車両の制御手段(ECU)が実行する車両制御を説明する図であり、車両停止中におけるハイブリッド車両の動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0154】
1 ハイブリッド車両
5 内燃機関
8 機関出力軸
10 デュアルクラッチ式変速機
20 デュアルクラッチ機構
21 第1クラッチ
22 第2クラッチ
27 第1入力軸
28 第2入力軸
30 第1変速機構
31,33,35,39 ギア段(変速段、歯車対)
37 第1出力軸
40 第2変速機構
42,44,46 ギア段(変速段、歯車対)
48 第2出力軸
50 電気モータ(モータジェネレータ)
52 電気モータのロータ
66 推進軸
70 終減速装置
74 差動機構
80 駆動軸
88 駆動輪
100 ハイブリッド車両用の電子制御装置(ECU、制御手段、記憶手段、モータ発進可否判定手段、路面勾配推定手段、蓄電状態推定手段、前方検知手段、前方車両有無判定手段、車間距離推定手段、前方車両車速推定手段、交通流状況判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機として内燃機関と電気モータとを有し、
複数の変速段のうちいずれか1つを係合状態にして、第1入力軸と駆動輪とを係合させることが可能な第1変速機構と、複数の変速段のうちいずれか1つを係合状態にして、第2入力軸と駆動輪とを係合させることが可能な第2変速機構と、内燃機関の機関出力軸と第1入力軸とを係合させることが可能な第1クラッチと、当該機関出力軸と第2入力軸とを係合させることが可能な第2クラッチとを有し、第2入力軸が電気モータのロータに係合するデュアルクラッチ式変速機と、
第1及び第2変速機構の各変速段の係合/解放状態を制御可能な制御手段と、
を備えたハイブリッド車両であって、
制御手段は、
前方車を含む先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であるか否かを判定する交通流状況判定手段を含み、
前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流であると判定した場合には、車両停止中において第2変速機構の変速段のうち最も減速比の大きい変速段を係合状態にし、
前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流ではないと判定した場合には、車両停止中において第2変速機構の変速段をいずれも解放状態にする
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
原動機として内燃機関と電気モータとを有し、
複数の変速段のうちいずれか1つを係合状態にして、第1入力軸と駆動輪とを係合させることが可能な第1変速機構と、複数の変速段のうちいずれか1つを係合状態にして、第2入力軸と駆動輪とを係合させることが可能な第2変速機構と、内燃機関の機関出力軸と第1入力軸とを係合させることが可能な第1クラッチと、当該機関出力軸と第2入力軸とを係合させることが可能な第2クラッチとを有し、第2入力軸が電気モータのロータに係合するデュアルクラッチ式変速機と、
第1及び第2変速機構の各変速段の係合/解放状態を制御可能な制御手段と、
を備えたハイブリッド車両であって、
制御手段は、
前方車を含む先行車群の交通流状況が、所定の車速以上の交通流であるか否かを判定する交通流状況判定手段を含み、
前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流であると判定した場合には、モータ走行により車両を発進させ、
前方車を含む交通流状況が、所定の車速以上の交通流ではないと判定した場合には、内燃機関を始動させた後に、内燃機関から出力される機械的動力を駆動輪に伝達する車両走行により車両を発進させる
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハイブリッド車両において、
内燃機関は、機関出力軸の回転速度が、予め設定された必要回転速度以上となった場合に、始動することが可能であり、
前記所定の車速は、第1及び第2変速機構の変速段のうち最も減速比の大きい前進用の変速段である第1速ギア段と、第1及び第2クラッチのうち当該第1速ギア段に対応するクラッチを係合状態にしたときに、機関出力軸の回転速度が必要回転速度以上となる車速に設定されている
ことを特徴とするハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−184613(P2010−184613A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30356(P2009−30356)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】