説明

ハードディスク用基板用の洗浄剤組成物

【課題】本発明は、優れた洗浄性、および耐泡立ち性を呈し、さらにCODの少ないHD用基板用の洗浄剤組成物、およびそれを用いたHD用基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のNi−P含有層を有するHD用基板用の洗浄剤組成物は、重量平均分子量が1,000〜10,000であるポリアクリル酸アルカリ金属塩(成分(a))と、p−トルエンスルホン酸アルカリ金属塩(成分(b))と、水溶性アミン化合物(成分(c))と、キレート剤(成分(d))と、水(成分(e))とを含有し、実質的に非イオン性界面活性剤は含まず、成分(a)、成分(b)、成分(c)、および成分(d)の総量中、成分(a)を5〜35重量%、成分(b)を15〜50重量%、成分(c)を15〜50重量%、成分(d)を5〜25重量%含有し、かつ成分(c)と成分(d)の重量比{成分(c)/成分(d)}が0.8〜5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク用基板用の洗浄剤組成物、このハードディスク用基板用の洗浄剤組成物を用いたハードディスク用基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HD(ハードディスク)用基板の製造過程では、被研磨基板に対して行われる最後の研磨の際、通常、シリカ微粒子等の無機微粒子を研磨材として含む研磨液組成物が用いられる。また、HD用基板の製造過程では、被研磨基板の研磨後に洗浄効率を上げるため、研磨後基板を水で濯ぐ工程がある。この水との接触により研磨後基板に残留している無機微粒子、特に、シリカ微粒子が凝集し、その後の洗浄工程での無機微粒子の除去を困難にしている。
【0003】
ところで、特許文献1には、半導体基板の製造過程において、研磨後基板を純水で洗浄すると無機微粒子が凝集するため、研磨直後の研磨後基板には純水を接触させず、特定のアミン系洗浄剤で洗浄する洗浄方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、非イオン性界面活性剤を含有し、パーティクルの再付着防止性に優れるエレクトロニクス材料用洗浄剤が開示されている。
【特許文献1】特開平11−191544号公報
【特許文献2】特開2008−135576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、HDの急速な高密度化の流れにより、HD用基板に対する要求も厳しくなっており、わずかな無機微粒子の残留でもHD用基板の品質や歩留まりを下げる原因となっている。このような背景下、研磨直後の研磨後基板が水で濯がれてから洗浄剤組成物を用いた洗浄がされる場合に、当該洗浄において優れた洗浄性を呈する洗浄剤組成物はいまだ得られていない。
【0006】
また、優れた洗浄性を呈することのみならず、洗浄設備等への汚染の少ない、即ち、泡立ちの少ない(即ち、優れた耐泡立ち性を呈する)洗浄剤組成物が望まれている。しかし、従来の技術では、洗浄性、および耐泡立ち性のいずれもが優れた洗浄剤組成物は得られていない。
【0007】
さらに近年、環境に対する負荷が少ない、すなわち、化学的酸素消費量(COD)の少ない洗浄剤組成物が求められている。
【0008】
本発明は、被研磨基板を、無機微粒子を含有する研磨液組成物で研磨した後、水で濯いで得られる被洗浄基板に対して好適に用いられ、優れた洗浄性、および耐泡立ち性を呈し、かつ、CODの少ない、HD用基板用の洗浄剤組成物、およびそれを用いた清浄度の高いHD用基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のNi−P含有層を有するHD用基板用洗浄剤組成物は、
重量平均分子量が1,000〜10,000であるポリアクリル酸アルカリ金属塩(成分(a))と、
p−トルエンスルホン酸アルカリ金属塩(成分(b))と、
水溶性アミン化合物(成分(c))と、
キレート剤(成分(d))と、
水(成分(e))とを含有し、
実質的に非イオン性界面活性剤は含まず、
前記成分(a)、成分(b)、成分(c)、および成分(d)の総量中、前記成分(a)を5〜35重量%、前記成分(b)を15〜50重量%、前記成分(c)を15〜50重量%、前記成分(d)を5〜25重量%含有し、かつ
前記成分(c)と前記成分(d)の重量比{成分(c)/成分(d)}が0.8〜5である。
【0010】
本発明のNi−P含有層を有するHD用基板の製造方法は、
被研磨基板を、無機微粒子を含有する研磨液組成物で研磨した後、水で濯いで、被洗浄基板を得る工程と、前記被洗浄基板を本発明のHD用基板用の洗浄剤組成物を用いて洗浄する工程とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被研磨基板を、無機微粒子を含有する研磨液組成物で研磨した後、水で濯いで得られる被洗浄基板に対して好適に用いられ、優れた洗浄性、および耐泡立ち性を呈し、かつ、CODの少ない、HD用基板用の洗浄剤組成物、およびそれを用いた清浄度の高いHD用基板の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者らは、HD用基板用洗浄剤組成物に含まれる、ポリアクリル酸アルカリ金属塩(成分(a))、p−トルエンスルホン酸アルカリ金属塩(成分(b))、水溶性アミン化合物(成分(c))、およびキレート剤(成分(d))の総量中の各成分の含有量を所定の範囲内の値とし、さらに水溶性アミン化合物(成分(c))とキレート剤(成分(d))との重量比を所定の範囲内の値とすることにより、被洗浄基板表面の汚れを効果的に除去できることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明者らは、水溶性アミン化合物(成分(c))とキレート剤(成分(d))とを特定の重量比で含む洗浄剤組成物を用いて、被洗浄基板表面に含まれるNiを積極的に腐食(ソフトエッチング)させることにより、被洗浄基板表面に付着した汚れ(主として、研磨屑や研磨剤組成物中の無機微粒子等を含む。)を除去できることを見出した。しかし、被洗浄基板表面に凝集した無機微粒子が付着した状態で、上記ソフトエッチングを行うと、エッチングムラが生じることにより、洗浄ムラが生じることがわかった。本発明者らは、検討を重ねた結果、所定の分子量のポリアクリル酸アルカリ金属塩(成分(a))およびp-トルエンスルホン酸アルカリ金属塩(成分(b))を特定の割合で洗浄剤組成物中に存在させることにより、上記凝集した無機微粒子の凝集の程度を低減すると共に無機微粒子の被洗浄基板表面への付着を抑制しながら、上記洗浄剤組成物に含まれる、所定量の水溶性アミン化合物(成分(c))とキレート剤(成分(d))とによってソフトエッチングを行うことにより、上記無機微粒子および上記無機微粒子以外の汚れをムラなく除去でき、被洗浄基板表面をムラなく清浄化できることを見出した。
【0014】
また、精密洗浄においては、洗浄剤組成物の1成分として、油汚れを落とすのに適しているとされる非イオン性界面活性剤が用いられることが多い。しかし、HD用基板の製造過程において、被洗浄基板に主として付着する汚れは無機微粒子等の無機汚れであり、被洗浄基板に付着する油汚れは多くない。本発明の洗浄剤組成物では、上記成分(a)〜(d)の総量中の各成分の含有量を所定の範囲内の値とし、かつ重量比(成分(c)/成分(d))を所定の範囲の値とすることにより、非イオン性界面活性剤を実質的に含まなくても、無機微粒子以外の汚れ(油汚れ等の有機汚れを含む。)の除去を可能としている。そして、本発明の洗浄剤組成物では、非イオン界面活性剤を実質的に含まないことにより、すすぎ性が向上することで洗浄性がさらに向上し、優れた耐泡立ち性を呈し、CODの低減を可能としている。
【0015】
このように、本発明のHD用基板用洗浄剤組成物は、優れた洗浄性、および耐泡立ち性を呈し、かつ、CODの低減が可能であるので、本発明のHD用基板用洗浄剤組成物を用いてHD用基板を製造すれば、環境への負荷の低減と洗浄設備等の汚染の低減とを可能としながら、清浄度の高いHD用基板の製造が可能となる。なお、金属配線等を有するエレクトロニクス部品の洗浄では、配線を断線させるため、金属の腐食を伴わないように行うのが通常である。
【0016】
本発明のHD用基板用洗浄剤組成物(以下本発明の洗浄剤組成物という。)は、ポリアクリル酸アルカリ金属(成分(a))と、p−トルエンスルホン酸アルカリ金属塩(成分(b))と、水溶性アミン化合物(成分(c))と、キレート剤(成分(d))と、水(成分(e))とを含有する。
【0017】
本発明の洗浄剤組成物は、実質的に非イオン性界面活性剤を含まないが、すすぎ性をより向上させ、すなわち洗浄性を向上させ、耐泡立ち性を良くし、かつ、CODを低減する観点から、非イオン性界面活性剤を全く含まないとより好ましい。なお、「実質的に非イオン性界面活性剤を含まない」とは、非イオン性界面活性剤の含有量が0.001重量%以下であることを意味するが、非イオン性界面活性剤の含有量は、0.0005重量%以下が好ましく、0.0001重量%以下がより好ましく、0重量%がさらに好ましい。
【0018】
次に、本発明の洗浄剤組成物に含まれる各成分について詳述する。
【0019】
<成分(a):ポリアクリル酸アルカリ金属塩>
本発明の洗浄剤組成物に含まれるポリアクリル酸アルカリ金属塩は、p-トルエンスルホン酸と共同して、凝集した無機微粒子の凝集の程度を低減し、被洗浄基板表面から無機微粒子を除去する働きをしているものと考えられる。ポリアクリル酸アルカリ金属塩としては、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアクリル酸カリウム塩等が挙げられるが、洗浄性を向上させる観点から、ポリアクリル酸ナトリウム塩が好ましい。
【0020】
ポリアクリル酸アルカリ金属塩の重量平均分子量は、凝集した無機微粒子の凝集の程度をより低減する(凝集低減効果)観点から、1,000〜10,000であり、1,500〜9,000が好ましく、2,000〜8,000がより好ましい。ポリアクリル酸アルカリ金属の重量平均分子量は、後述する実施例に記載のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めることができる。
【0021】
ポリアクリル酸アルカリ金属塩は、例えば、水系媒体中で、重合開始剤および連鎖移動剤の存在下で、アクリル酸及び/又はアクリル酸アルカリ金属塩を、公知の重合方法により重合させ、必要に応じて(モノマーとしてアクリル酸のみを重合させる場合)得られた重合体を水酸化アルカリ金属で中和することにより得られる。公知の重合方法としては、塊状重合又は溶液重合等が挙げられる。
【0022】
重合開始剤としては、2,2'−アゾビスイソブチルニトリル、2,2'−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二硫酸塩二水和物、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、またはNaHSO3等が、連鎖移動剤としては、イソプロピルアルコール、またはNaHSO3等が挙げられる。
【0023】
ポリアクリル酸アルカリ金属塩の重量平均分子量は、一般的には連鎖異動剤の投入量によって制御される。連鎖異動剤が多いほど重量平均分子量は小さくなり、連鎖異動剤が少ないほど重量平均分子量は大きくなる。
【0024】
ポリアクリル酸アルカリ金属塩の市販品の例として、花王社製のポイズ530(ポリアクリル酸ナトリウム塩、重量平均分子量6,000)、BASF社製のSokalan PA20(ポリアクリル酸ナトリウム塩、重量平均分子量2,500)、Sokalan PA25CL(ポリアクリル酸ナトリウム塩、重量平均分子量8,000)、Sokalan PA30(ポリアクリル酸ナトリウム塩、重量平均分子量8,000)が挙げられる。
【0025】
ポリアクリル酸の市販品の一例として、東亞合成社製のA-10SL(重量平均分子量6,000)が挙げられる。
【0026】
本発明の洗浄剤組成物に含まれるポリアクリル酸アルカリ金属塩(成分(a))の含有量は、凝集した無機微粒子の凝集の程度を低減して被洗浄基板表面から無機微粒子の除去性を高め、かつ、水による濯ぎ後のポリアクリル酸アルカリ金属塩の被洗浄基板への残留を防止する観点から、成分(a)、成分(b)、成分(c)、および成分(d)の総量中、5〜35重量%であり、6〜30重量%が好ましく、7〜25重量%がより好ましい。
【0027】
<成分(b):p−トルエンスルホン酸アルカリ金属塩>
本発明の洗浄剤組成物に含まれるp−トルエンスルホン酸アルカリ金属塩は、ポリアクリル酸アルカリ金属塩の水に対する溶解度を高め、凝集した無機微粒子に対するポリアクリル酸アルカリ金属塩(成分(a))による凝集低減効果を高めているものと考えられる。p−トルエンスルホン酸アルカリ金属塩としては、p−トルエンスルホン酸ナトリウム塩、p−トルエンスルホン酸カリウム塩等が挙げられるが、洗浄性を向上させる観点から、p−トルエンスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
【0028】
本発明の洗浄剤組成物中のp−トルエンスルホン酸アルカリ金属塩は、p−トルエンスルホン酸アルカリ金属塩が水に添加されることにより、本発明の洗浄剤組成物中に含まれていてもよいが、p−トルエンスルホン酸が水酸化アルカリ金属と共に水に添加されることより、本発明の洗浄剤組成物中に含まれていてもよい。
【0029】
本発明の洗浄剤組成物に含まれるp−トルエンスルホン酸アルカリ金属塩(成分(b))の含有量は、凝集した無機微粒子に対する成分(a)による高い凝集低減効果を確保する観点から、成分(a)、成分(b)、成分(c)、および成分(d)の総量中、15〜50重量%であり、20〜47重量%が好ましく、25〜45重量%がより好ましい。
【0030】
<成分(c):水溶性アミン化合物>
本発明の洗浄剤組成物に含まれる水溶性アミン化合物(成分(c))としては、例えば、アルカノールアミン、1級アミン、2級アミン、および3級アミンからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0031】
アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、メチルプロパノールアミン、メチルジプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等のヒドロキシアルキルアミンが挙げられる。1級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、1,3−プロパンジアミン等が挙げられる。2級アミンとしては、ピペリジン、ピペラジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられ、3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。これらの水溶性アミン化合物は単独で用いても良く、二種以上を混合して用いても良い。また、これらの水溶性アミン化合物のなかでも、被洗浄基板表面のソフトエッチングによる被洗浄基板表面に付着した無機微粒子および無機微粒子以外の汚れの除去性(洗浄性)を向上させる観点から、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、およびピペリジンからなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性アミン化合物が好ましく、モノエタノールアミン及びメチルジエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、モノエタノールアミンがさらに好ましい。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物に含まれる水溶性アミン化合物(成分(c))の含有量は、被洗浄基板表面のソフトエッチングによる、被洗浄基板表面に付着した無機微粒子および無機微粒子以外の汚れを効果的に除去可能であるという理由から、前記成分(a)、成分(b)、成分(c)、および成分(d)の総量中、15〜50重量%であり、20〜47重量%が好ましく、25〜45重量%がより好ましい。
【0033】
<成分(d):キレート剤>
本発明の洗浄剤組成物に含まれるキレート剤(成分(d))は、非洗浄基板表面をソフトエッチングすると共に、ソフトエッチングにより溶出したNiイオンを捕らえて、被洗浄基板へのNiの再析出化を抑制しているものと考えられる。本発明の洗浄剤組成物に含まれるキレート剤としては、グルコン酸、グルコヘプトン酸などのアルドン酸類;エチレンジアミン四酢酸などのアミノカルボン酸類;クエン酸、リンゴ酸などのヒドロキシカルボン酸類;アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸などのホスホン酸類;およびこれらのアルカリ金属塩、低級アミン塩、アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でもソフトエッチングし、かつ被洗浄基板へのNiの再析出化を効果的に抑制する観点から、グルコン酸ナトリウム、グルコヘプトン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、または1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸が好ましく、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸がより好ましい。これらのキレート剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
本発明の洗浄剤組成物に含まれるキレート剤(成分(d))の含有量は、被洗浄基板表面のNiのソフトエッチングにより、被洗浄基板表面に付着した無機微粒子および無機微粒子以外の汚れを効果的に除去可能であるという理由と、被洗浄基板へのNiの再析出化を抑制する観点から、成分(a)、成分(b)、成分(c)、および成分(d)の総量中、5〜25重量%であり、7〜23重量%が好ましく、10〜20重量%がより好ましい。
【0035】
<成分(e):水>
本発明の洗浄剤組成物に含まれる水は、溶媒としての役割を果たすことができるものであれば特に制限はない。例えば、超純水、純水、イオン交換水、または蒸留水等を挙げることができるが、超純水、純水、またはイオン交換水が好ましく、超純水がより好ましい。なお、純水及び超純水は、例えば、水道水を活性炭に通し、イオン交換処理し、さらに蒸留したものを、必要に応じて所定の紫外線殺菌灯を照射、又はフィルターに通すことにより得ることができる。本発明では、25℃での電気伝導率は、純水で1μS/cm以下であり、超純水で0.1μS/cm以下を示すものである。
【0036】
本発明の洗浄剤組成物を用いて洗浄するに際して、無機微粒子および無機微粒子以外の汚れの除去性(汚れに対する洗浄性)、凝集した無機微粒子に対する凝集低減効果、および耐泡立ち性を向上させる観点から、前記成分(a)、成分(b)、成分(c)、および成分(d)の総量中、前記成分(a)を5〜35重量%、前記成分(b)を15〜50重量%、前記成分(c)を15〜50重量%、前記成分(d)を5〜25重量%含有するが、前記成分(a)を6〜30重量%、前記成分(b)を20〜47重量%、前記成分(c)を20〜47重量%、前記成分(d)を7〜23重量%含有することが好ましく、前記成分(a)を7〜25重量%、前記成分(b)を25〜45重量%、前記成分(c)を25〜45重量%、前記成分(d)を10〜20重量%含有することがより好ましい。
【0037】
成分(c)と成分(d)の重量比{成分(c)/成分(d)}は、被洗浄基板表面のソフトエッチングによる被洗浄基板表面に付着した無機微粒子および無機微粒子以外の汚れの除去性(汚れに対する洗浄性)を向上させる観点から、0.8〜5であり、1〜4が好ましく、1.7〜3.3がより好ましい。
【0038】
成分(a)と成分(b)の重量の合計[成分(a)+成分(b)]と、成分(c)と成分(d)の重量の合計[成分(c)+成分(d)]との比[成分(a)+成分(b)]/[成分(c)+成分(d)]は、被洗浄基板表面のソフトエッチングによる被洗浄基板表面に付着した無機微粒子および無機微粒子以外の汚れの除去性(汚れに対する洗浄性)と凝集した無機微粒子に対する成分(a)による凝集低減効果を高める観点から、0.1〜15が好ましく、0.2〜10がより好ましく、0.4〜5がさらに好ましく、0.7〜1.05がさらにより好ましい。
【0039】
本発明の洗浄剤組成物の態様には、水の含有量が50重量%以上95重量%未満である態様1と、水の含有量が95重量%以上である態様2とが含まれる。態様1では、洗浄剤組成物中の水の含有量(含有率)が比較的少ないので、運搬時、保管時の態様として好適である。態様2の洗浄剤組成物は、例えば、態様1の洗浄剤組成物を希釈することによって得られるが、態様1の状態を経ることなく、水(成分(e))の含有量が95重量%以上となるように、水(成分(e))と残余の成分とを混合して得ることもできるし、洗浄剤組成物の各成分の水溶液を混合して得ることもできる。
【0040】
<任意成分>
本発明の洗浄剤組成物には、成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)以外に、水溶性アミン化合物以外のアルカリ剤、シリコン系の消泡剤、アルコール、防腐剤、酸化防止剤等が含まれていてもよい。
【0041】
水溶性アミン化合物以外のアルカリ剤としては、例えば、アンモニア、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムからなる群より選ばれる一種以上が挙げられるが、汚れに対する洗浄性を高める観点から、水酸化カリウムが好ましい。
【0042】
本発明の洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、凝集した無機微粒子に対する成分(a)による凝集低減効果を高める観点から、9以上であると好ましく、9〜14であると好ましく、9〜12であるとより好ましい。なお、pHは、pHメータ(東亜電波工業社製、HM−30G)を用いて測定できる。
【0043】
(洗浄剤組成物の調製方法)
本発明の洗浄剤組成物の調製方法は、何ら制限されないが、例えば、成分(a)、成分(b)、成分(c)、成分(d)、および必要に応じて任意成分を、水(成分(e))に添加して混合する方法が挙げられる。各成分を水に添加する順序等については特に制限はない。混合方法も公知の方法を採用すればよいが、攪拌中の水に各成分が添加されることが好ましい。各成分を水に添加する時の、水の温度は20〜50℃が好ましい。攪拌モーターの回転数は、通常、周速0.1m/s〜0.65m/sが好ましい。水以外の全成分を水に添加した後の攪拌時間は、通常、0,5〜2時間が好ましい。
【0044】
(HD用基板の製造方法)
本発明のHD用基板の製造方法は、被研磨基板を、無機微粒子を研磨材として含有する研磨液組成物を用いて研磨した後、水で濯いで、被洗浄基板を得る工程と、この工程後に被洗浄基板を本発明の洗浄剤組成物を用いて洗浄する工程とを含む。
【0045】
HD用基板としては、例えば、アルミニウム基板等の金属基板上にNi−P層が形成された円形基板が挙げられる。このHD用基板上に、スパッタ等の方法により、例えば、磁気記録領域を有し、金属薄膜を含む磁性層等を形成することによって、HDが得られる。前記金属薄膜を構成する金属材料としては、例えば、クロム、タンタル、または白金等とコバルトとの合金である、コバルト合金等が挙げられる。
【0046】
HD用基板の製造過程には、HD用基板の表面平滑性を向上させるために、例えば、アルミナ微粒子やシリカ微粒子等の無機微粒子と、この無機微粒子の分散溶媒(例えば水)とを含む研磨液組成物を用いて被研磨基板の少なくとも一方の主面を研磨する研磨工程が含まれる。この研磨工程を経た被研磨基板(研磨後基板)の少なくとも一方の主面には、研磨液組成物由来の汚れ(無機微粒子、有機物など)や装置や研磨パッドなどの設備由来の金属イオンや有機物等が付着している。本発明の洗浄剤組成物は、これらの汚れに対して優れた洗浄性を呈するので、本発明のHD用基板の製造方法によれば、清浄度の高いHD用基板を製造できる。
【0047】
被研磨基板の研磨は、例えば、研磨対象物と研磨パッドとの間に、研磨液組成物を供給し、被研磨基板と研磨パッドとが接した状態で、被研磨基板に所定の圧力(荷重)をかけながら、研磨パッドを被研磨基板に対して相対運動させることにより行える。なお、研磨は、従来公知の研磨装置により行うことができる。
【0048】
研磨後基板に対する水を用いた濯ぎの方法は、例えば、研磨装置を用い研磨液組成物に代えて水を供給する方法、超音波洗浄装置の水浴槽内で接触させる方法、水をスプレー状に射出して接触させる方法(シャワー方式)等が挙げられる。なかでも、pHが低い研磨液組成物と研磨後基板とが長時間接触することにより生じる研磨後基板の過剰エッチングを防ぐ観点から、研磨装置を用い研磨液組成物に代えて水を供給する方法が好ましい。
【0049】
濯ぎに用いられる水は、不要な不純物を研磨後基板に付着させないという理由から、超純水または純水が好ましい。
【0050】
水を用いた濯ぎ方法が、例えば、研磨装置を用い研磨液組成物に代えて水を供給する方法である場合、研磨パッドにより研磨後基板に所定の圧力(荷重)をかけ、かつ、研磨パッドを研磨後基板に対して相対運動させながら、水を供給すると、余分な研磨液組成物を効率的に除去でき、好ましい。
【0051】
濯ぎに用いられる水の量は、研磨液組成物由来の酸をできるだけ除去し、かつ、研磨後基板の過度の腐食を抑制するという理由から、研磨後基板の単位面積当たり、好ましくは20〜80mL/cm2、より好ましくは25〜80mL/cm2、さらに好ましくは30〜80mL/cm2である。
【0052】
研磨液組成物による研磨後、水で濯がれることにより得られた被洗浄基板を本発明の洗浄剤組成物で洗浄する工程では、例えば、(i)被洗浄基板(洗浄対象)を洗浄剤組成物
に浸漬するか、および/または、(ii)洗浄剤組成物を射出して、被洗浄基板の洗浄対象表面上に洗浄剤組成物を供給する。
【0053】
前記方法(i)において、被洗浄基板の洗浄剤組成物への浸漬条件は、特に制限はない
が、例えば、洗浄剤組成物の温度については、安全性および操業性を向上させる観点から20〜100℃であると好ましく、浸漬時間については、洗浄性と生産効率を向上させる観点から10秒〜30分間であると好ましい。また、凝集した無機微粒子に対する成分(a)による凝集低減効果を高める観点から、洗浄剤組成物には超音波振動が付与されていると好ましい。超音波の周波数としては、好ましくは20〜2,000kHzであり、より好ましくは100〜2,000kHzであり、さらに好ましくは1,000〜2,000kHzである。凝集した無機微粒子に対する成分(a)による凝集低減効果を高める観点から、洗浄対象表面を浸漬した状態で洗浄用ブラシでこすることにより洗浄すると好ましい。
【0054】
前記方法(ii)では、無機微粒子に対する洗浄性を高め、かつ、無機微粒子以外の汚れに対する洗浄性を高める観点から、超音波振動が与えられている洗浄剤組成物を射出して、洗浄対象表面に洗浄剤組成物を接触させて洗浄するか、又は、洗浄剤組成物を洗浄対象表面上に射出により供給し、洗浄剤組成物が供給された表面を洗浄用ブラシでこすることにより洗浄すると好ましい。さらには、超音波振動が与えられている洗浄剤組成物を射出により洗浄対象表面に供給し、かつ、洗浄剤組成物が供給された表面を洗浄用ブラシでこすることにより洗浄すると好ましい。
【0055】
洗浄剤組成物を洗浄対象表面に供給する手段としては、スプレーノズル等の公知の手段を用いることができる。また、洗浄用ブラシとしては、特に制限はなく、例えば、洗浄対象表面と接する面がナイロンやPVAスポンジからなるロールブラシ等の公知のものを使用できる。超音波の周波数としては、前記方法(i)において採用される周波数と同様で
よい。
【0056】
洗浄対象表面の洗浄は、前記方法(i)及び/又は方法(ii)に加えて、揺動洗浄、スピンナー等の回転を利用した洗浄、およびパドル洗浄等の、公知の洗浄方法のうちの少なくとも1つの方法で行ってもよい。
【0057】
被洗浄基板の洗浄工程では、洗浄対象である被洗浄基板を一枚ずつ洗浄してもよいが、複数枚の被洗浄基板を一度にまとめて洗浄してもよい。また、洗浄の際に用いる洗浄槽の数は1つでも複数でも良い。
【実施例】
【0058】
1.洗浄剤組成物の調製
表1に記載の組成となるように各成分を混合することにより、実施例1〜5及び比較例1〜12の洗浄剤組成物(態様1)を得た。混合条件は後述のとおりとした。
【0059】
(混合条件)
温度:25℃
撹拌機:マグネチックスターラー
撹拌子:40mm
回転数:100rpm
撹拌時間:1時間
【0060】
ポリアクリル酸ナトリウム塩の重量分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めた。測定条件は後述のとおりとした。測定結果は表1に示している。
【0061】
(GPC条件)
カラム:GMPWXLを2本(東ソ−社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファ−/CH3CN=9/1(容量比)
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量:1,250、4,100、28,000、 115,000)創和科学社製
【0062】
実施例1〜5及び比較例1〜12の洗浄剤組成物(態様1)を、水(25℃での電気伝導率:0.1μS/cm)を用いて各々表1に示した希釈倍率で希釈した。得られた希釈液(態様2の洗浄剤組成物)について、洗浄性、耐泡立ち性、化学的酸素消費量(COD)、およびNiエッチング性を、後述する方法で評価した。また、前記希釈液の25℃におけるpHを、pHメータ(東亜電波工業社製、HM−30G)を用いて測定した。その結果は表1に示している。
【0063】
《洗浄性》
1.1.被洗浄基板の調製
Ni−Pメッキされたアルミニウム合金からなる基板(外径:95mmφ、内径:25mmφ、厚さ:1.27mm、表面粗さ(算術平均粗さ、Ra):1nm,10枚)の両主面を後述する研磨液組成物を供給しながら両面加工機により研磨した。研磨条件は後述のとおりとした。次いで、研磨液組成物に代えて純水を供給し、研磨後基板を純水により後述の条件で濯いで、被洗浄基板(洗浄対象)を得た。
【0064】
1.2.研磨条件
研磨機:両面9B研磨機(スピ−ドファム社製)
研磨パッド:スエードタイプ(厚さ:0.9mm、平均開孔径:30μm、フジボウ社製)
研磨液組成物:コロイダルシリカスラリー(品番:メモリード2P-2000、花王社製)
本研磨:荷重 100g/cm2、時間 300秒、研磨液組成物流量 100mL/min
【0065】
1.3.濯ぎ条件
純水の電気伝導度:0.71μS/cm
荷重 :30g/cm2
時間 :20秒
純水供給量: 約2L/min
【0066】
希釈液(態様2の洗浄剤組成物)を用いて、後述の洗浄方法により前記被洗浄基板を洗浄し、希釈液(態様2の洗浄剤組成物)のシリカ微粒子に対する洗浄性を評価した。
【0067】
1.4.洗浄剤組成物による洗浄方法
被洗浄基板を洗浄装置(3段式:1段目ロールブラシ−2段目ロールブラシ−3段目超音波シャワー)にて以下の条件で洗浄した。
(1)洗浄:洗浄装置にセットされた被洗浄基板を搬送待機箇所へセットし、次いで、1枚の被洗浄基板を洗浄装置の1段目のロールブラシが在る箇所へ搬送し、被洗浄基板の両主面の各々に、回転しているロールブラシを押し当て、前記希釈液を被洗浄基板の両主面の各々に射出しながら10秒間洗浄した。希釈液の供給量は35g/10秒とした。
(2)濯ぎ:希釈液による洗浄後の被洗浄基板を、洗浄装置の2段目のロールブラシが在る箇所へ搬送し、次いで、前記(1)の洗浄の際と同様に、被洗浄基板の両主面の各々に、回転しているロールブラシを押し当て、25℃の超純水を被洗浄基板の両主面の各々に射出しながら10秒間すすぎを行った。その後、被洗浄基板を3段目の超音波シャワーへ搬送し、950kHzの超音波が付与された25℃の超純水を被洗浄基板の両主面の各々に射出しながら10秒間すすぎを行った。950kHzの超音波が付与された25℃の超純水の供給量は150g/10秒とした。
(3)乾燥:スピンチャックに保持された濯ぎ後の洗浄後基板を、高速回転(3000rpmで)させて液切り乾燥を1分間行った。
【0068】
<シリカ微粒子の洗浄性評価>
前記(1)〜(3)を経た洗浄後基板の表面におけるシリカ微粒子の残存数を後述する方法で調べることにより、各希釈液の洗浄性を評価した。結果を表1に示している。
【0069】
走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S-4800)を用いて1,000倍(視野範囲:100μm角)の倍率下で、乾燥後の基板を観察し、観察視野内で観察される基板表面に残存するシリカ微粒子の数を数えた。この観察を5枚の基板について、基板の両主面でランダムにそれぞれ10点、合計100点(10点×2×5枚=100点)実施した。観察された100点における全シリカ微粒子個数及び後述する評価基準に基づき、微粒子の洗浄性を6段階で評価した。全微粒子個数が少ないほど、洗浄性は優れている。
【0070】
<シリカ微粒子の洗浄性評価基準>
レベルA:全微粒子個数が0個である。
レベルB:全微粒子個数が1〜2個である。
レベルC:全微粒子個数が3〜4個である。
レベルD:全微粒子個数が5〜7個である。
レベルE:全微粒子個数が8〜10個である。
レベルF:全微粒子個数が11個以上である。
【0071】
《耐泡立ち性》
各希釈液(態様2の洗浄剤組成物)60mlを200mlのシリンダーに入れ、ふたをした。次いで、シリンダーを20回手振りで強振動させ、30秒間静置させた後の泡高さ(液面から泡の一番高い所までの高さ)を測定し、後述の評価基準に従って、耐泡立ち性を評価した。泡高さが低いほど、耐泡立ち性が良好なことを示す。なお、シリンダーを強振動させる際の、ストローク長は30cmとし、手振り速度は2回/秒とした。
【0072】
<耐泡立ち性の評価基準>
A(合格):泡高さが20ml未満
B(不合格):泡高さが20ml以上
【0073】
《化学的酸素消費量(COD)》
JIS K 0400−20−10に規定の方法に基づいてCOD(mg/L)を測定し、後述の評価基準に基づき、各洗浄剤組成物の低環境負荷性を評価した。なお、測定には過マンガン酸カリウムを用いた。
【0074】
<CODの評価基準>
レベルA:29,000(mg/L)未満
レベルB:29,000以上33,000(mg/L)未満
レベルC:33,000(mg/L)以上
【0075】
《Niエッチング性》
後述のようにして、各希釈液(態様2の洗浄剤組成物)によるNiエッチング性を後述の判定基準に基づき評価した。その結果は表1に示している。
(1)容積が2Lのポリエチレン容器(底面の直径125mm×高さ185mm)に各希釈液70gを入れ、25℃の恒温槽中で3時間保管された前記希釈液を試験液とする。
(2)Ni−Pメッキされたアルミニウム合金からなる基板(外径:95mmφ、内径:25mmφ、厚さ:1.27mm)を試験液に10分間浸漬する。
(3)前記基板を試験液から取り出した後、試験液についてICP発光分析装置(パーキンエルマー社製、Optima5300)にてニッケルの発光強度を測定して、Niエッチング量を定量する。
【0076】
<Niエッチング性の評価基準>
A: Niエッチング量が0.6ppm以上
B: Niエッチング量が0.3ppm以上0.6ppm未満
C: Niエッチング量が0.3ppm未満
【0077】
表1に記載の結果によると、実施例1〜5の洗浄剤組成物の希釈液は、比較例1〜12の洗浄剤組成物の希釈液よりも、シリカ微粒子に対する洗浄性が優れている。また、実施例1〜5の洗浄剤組成物の希釈液は、非イオン性界面活性剤を含む比較例2,6,7、9の洗浄剤組成物の希釈液よりも、泡立ちが少なく、即ち、優れた耐泡立ち性を呈する。また、実施例1〜5の洗浄剤組成物の希釈液は、非イオン性界面活性剤を含む比較例2,7の洗浄剤組成物の希釈液、非イオン性界面活性剤とポリアクリル酸とを含む比較例6の洗浄剤組成物の希釈液、成分(a)〜成分(d)の総量中の各成分の含有量(成分(a):5〜35重量%、成分(b):15〜50重量%、成分(c):15〜50重量%、成分(d):5〜25重量%)を満たさない比較例4,12の洗浄剤組成物の希釈液よりも、CODが少ない。
【0078】
また、実施例1〜5の洗浄剤組成物の希釈液は、所定の重量比成分(c)/成分(d)(=0.8〜5)を満たさない比較例11の洗浄剤組成物の希釈液よりも洗浄性が良い。さらに、成分(a)、成分(b)、成分(c)、成分(d)のうちいずれか1つの成分を含有しない比較例1、5、8,10は、実施例1〜5の洗浄剤組成物の希釈液よりも洗浄性が悪い。
【0079】
以上のことから、成分(a)〜成分(d)の総量中の各成分の含有量(成分(a):5〜35重量%、成分(b):15〜50重量%、成分(c):15〜50重量%、成分(d):5〜25重量%)、および所定の重量比成分(c)/成分(d)(=0.8〜5)を満たし、非イオン性界面活性剤を実質的に含まないことで、洗浄剤組成物が、優れた洗浄性および耐泡立ち性を呈し、さらにCODを低減できることがわかる。
【0080】
【表1】

【0081】
なお、前記表1中の成分(a)〜(d)、その他成分の詳細は後述のとおりである。
[成分(a)]
ポリアクリル酸ナトリウム塩A:ポイズ530(花王社製、重量平均分子量=6,000、40重量%水溶液)
ポリアクリル酸ナトリウム塩B:Sokalan PA20(BASF社製、重量平均分子量=2,500、45重量%水溶液)
[成分(b)]
P-トルエンスルホン酸ナトリウム塩:トルエンスルホン酸ソーダ(明友産業社製、90重量%)
[成分(c)]
モノエタノールアミン:モノエタノールアミン(和光純薬社製、和光1級)
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド:テトラメチルアンモニウムヒトロキシド(和光純薬社製、25重量%水溶液)
[成分(d)]
1-ヒト゛ロキシエチリテ゛ン-1,1-シ゛ホスホン酸:デイクエスト2010R(ソルーシア社製、60重量%水溶液)
[成分(e)]
(e)水(25℃での電気伝導率 0.1μS/cm)
[その他の成分]
ポリアクリル酸ナトリウム塩 C:Sokalan PA70PN(BASF社製、重量平均分子量=70,000、30重量%水溶液)
ポリアクリル酸:A-10SL(東亞合成社製、重量平均分子量=6,000、40重量%水溶液)
非イオン界面活性剤A:ポリオキシエチレンドデシルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数は9:エマルゲン109P(花王社製)
非イオン界面活性剤B:ポリオキシエチレンラウリルアミン、オキシエチレン基の平均付加モル数は7:アミート110(花王社製)
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の洗浄剤組成物をそのまま、または、必要に応じて希釈して、被洗浄基板の表面の洗浄に用いることにより、清浄度の高いHD用基板を得ることができる。よって、本発明は、製品の歩留まり向上に寄与し得る。本発明の洗浄剤組成物は、有機物汚れが少ない被洗浄基板の洗浄に特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が1,000〜10,000であるポリアクリル酸アルカリ金属塩(成分(a))と、
p−トルエンスルホン酸アルカリ金属塩(成分(b))と、
水溶性アミン化合物(成分(c))と、
キレート剤(成分(d))と、
水(成分(e))とを含有し、
実質的に非イオン性界面活性剤は含まず、
前記成分(a)、前記成分(b)、前記成分(c)、および前記成分(d)の総量中、前記成分(a)を5〜35重量%、前記成分(b)を15〜50重量%、前記成分(c)を15〜50重量%、前記成分(d)を5〜25重量%含有し、かつ
前記成分(c)と前記成分(d)の重量比{成分(c)/成分(d)}が0.8〜5である、
Ni−P含有層を有するハードディスク用基板用洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記水溶性アミン化合物が、アルカノールアミン、1級アミン、2級アミン、および3級アミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のNi−P含有層を有するハードディスク用基板用洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記キレート剤が、アルドン酸類、アミノカルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸類、ホスホン酸類、およびこれらのアルカリ金属塩、低級アミン塩、アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のNi−P含有層を有するハードディスク用基板用洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記成分(a)と前記成分(b)の重量の合計[成分(a)+成分(b)]と、前記成分(c)と前記成分(d)の重量の合計[成分(c)+成分(d)]との比〔[成分(a)+ 成分(b)]/[成分(c)+成分(d)]〕が0.1〜14である請求項1〜3のいずれかの項に記載のNi−P含有層を有するハードディスク用基板用洗浄剤組成物。
【請求項5】
被研磨基板を、無機微粒子を含有する研磨液組成物で研磨した後、水で濯いで、被洗浄基板を得る工程と、前記被洗浄基板を請求項1〜4のいずれかの項に記載のハードディスク用基板用洗浄剤組成物を用いて洗浄する工程とを含むNi−P含有層を有するハードディスク用基板の製造方法。

【公開番号】特開2010−170615(P2010−170615A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12222(P2009−12222)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】