説明

バリヤ層、成膜方法及び処理システム

【課題】比誘電率の低い絶縁層の表面にMn等の第2の金属を含む第2金属含有膜を形成する際に、下地膜としてRu等の第1の金属を含む第1金属含有膜を介在させることにより上記第2金属含有膜を効率的に形成する。
【解決手段】底面に金属層3が露出する凹部2を有する絶縁層1が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す成膜方法において、第1の金属を含む第1金属含有膜を形成する第1金属含有膜形成工程と、前記第1金属含有膜形成工程の後に行われ、前記凹部に埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属を含む第2金属含有膜を形成する第2金属含有膜形成工程とを有する。これにより、下地膜としてRu等の第1の金属を含む第1金属含有膜を介在させて上記第2金属含有膜を効率的に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体の表面に形成された比誘電率の低い層間絶縁膜の凹部を銅等で埋め込んで配線する時に用いられるバリヤ層、成膜方法及び処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスを製造するには、半導体ウエハに成膜処理やパターンエッチング処理等の各種の処理を繰り返し行って所望のデバイスを製造するが、半導体デバイスの更なる高集積化及び高微細化の要請より、線幅やホール径が益々微細化されている。そして、配線材料や、トレンチ、ホールなどの凹部内への埋め込み材料としては、各種寸法の微細化により、より電気抵抗を小さくする必要から電気抵抗が非常に小さくて且つ安価である銅を用いる傾向にある(特許文献1)。そして、この配線材料や埋め込み材料として銅を用いる場合には、その下層への銅の拡散バリヤ性等を考慮して、一般的にはタンタル金属(Ta)やタンタル窒化膜(TaN)等がバリヤ層として用いられる。
【0003】
そして、上記凹部内を銅で埋め込むには、まずプラズマスパッタ装置内にて、この凹部内の壁面全体を含むウエハ表面全面に銅膜よりなる薄いシード膜を形成し、次にウエハ表面全体に銅メッキ処理を施すことにより、凹部内を完全に埋め込むようになっている。その後、ウエハ表面の余分な銅薄膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理等により研磨処理して取り除くようになっている。
【0004】
この点については図12を参照して説明する。図12は半導体ウエハの凹部の従来の埋め込み工程を示す図である。この半導体ウエハWに形成された、例えばSiO 膜よりなる層間絶縁膜などの絶縁層1の表面には、Single Damascene構造、Dual Damascene構造、三次元実装構造等により、ビアホールやスルーホールや溝(トレンチ)等に対応する凹部2が形成されており、この凹部2の底部には、例えば銅よりなる下層の配線層3が露出状態で形成されている。
【0005】
具体的には、この凹部2は、細長く形成された断面凹状の溝(トレンチ)2Aと、この溝2Aの底部の一部に形成されたホール2Bとよりなり、このホール2Bがビアホールやスルーホールとなる。そして、このホール2Bの底部に上記配線層3が露出しており、下層の配線層やトランジスタ等の素子と電気的な接続を行うようになっている。なお、下層の配線層やトランジスタ等の素子については図示を省略している。上記凹部2は設計ルールの微細化に伴ってその幅、或いは内径は例えば120nm程度と非常に小さくなっており、アスペクト比は例えば2〜4程度になっている。なお、拡散防止膜およびエッチングストップ膜等については、図示を省略し形状を単純化して記載している。
【0006】
この半導体ウエハWの表面には上記凹部2内の内面も含めて略均一に例えばTaN膜及びTa膜の積層構造よりなるバリヤ層4がプラズマスパッタ装置にて予め形成されている(図12(A)参照)。そして、プラズマスパッタ装置にて上記凹部2内の表面を含むウエハ表面全体に亘って金属膜として薄い銅膜よりなるシード膜6を形成する(図12(B)参照)。上記ウエハ表面に銅メッキ処理を施すことにより上記凹部2内を例えば銅膜よりなる金属膜8で埋め込むようになっている(図12(C)参照)。その後は、上記ウエハ表面の余分な金属膜8、シード膜6及びバリヤ層4を上記したCMP処理等を用いて研磨処理して取り除くことになる。
【0007】
そして、上記バリヤ層の更なる信頼性の向上を目標として種々の開発がなされており、中でも上記Ta膜やTaN膜に代えてMn膜やCuMn合金膜を用いた自己形成バリヤ層が注目されている(特許文献2)。このMn膜やCuMn合金膜は、スパッタリングにより成膜されて、更にこのMn膜やCuMn合金膜自体がシード膜となるので、この上方にCuメッキ層を直接形成できメッキ後にアニールを施すことで自己整合的に下層の絶縁膜であるSiO 層と反応して、このSiO 層とMn膜やCuMn合金膜との境界部分にMnSixOy(x、y:任意の正数)膜、或いはMnとSiO 層の酸素とが反応することにより生ずるマンガン酸化物MnOx(x:任意の正数)膜というバリヤ膜が形成されるため、製造工程数も削減できる、という利点を有する。なおマンガン酸化物は、Mnの価数によってMnO、Mn、Mn、MnO等の種類が存在する が、本明細書中では、これらを総称してMnOxと記述する。
またスパッタ法に比べて微細な線幅やホール径に対して良好な段差被覆性で膜を堆積することができるCVD法によりMnSixOy膜、あるいはMnOx膜の成膜をおこなうことが検討されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−107747号公報
【特許文献2】特開2005−277390号公報
【特許文献3】特開2008−013848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、最近にあっては、半導体装置の更なる高速動作の要請から層間絶縁膜の比誘電率をより低くすることが求められており、このような要請から、層間絶縁膜の材料としてTEOSにより形成したシリコン酸化膜から、より比誘電率の低い材料として例えばメチル基等の有機基を含んだSiOC、SiCOHなどからなるLow−k膜を用いることが検討されている。ここで上記TEOSを用いて形成したシリコン酸化膜の比誘電率は4.1程度であり、SiOCの比誘電率は3.0程度である。しかしながら、層間絶縁膜として上記Low−k膜(SiOC)等の比誘電率の低い材料を用いた場合には、この凹部内の露出面を含めて比誘電率の低い層間絶縁膜の表面にCVD法によりMn含有膜の成膜処理を施してもMnOx膜がほとんど堆積しないので、バリヤ層を形成することができない、といった問題があった。
【0010】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の第1の目的は、比誘電率の低い絶縁層の表面にMn等の第2の金属を含む第2金属含有膜を形成する際に、下地膜としてRu等の第1の金属を含む第1金属含有膜を介在させることにより上記第2金属含有膜を効率的に形成することが可能な成膜方法、バリヤ層及び処理システムを提供することにある。
また本発明の第2の目的は、Ru等の第1の金属とMn等の第2の金属とCu等の第3の金属とを含む合金膜よりなるバリヤ層、成膜方法及び処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、比誘電率の低い絶縁層の表面にMnやMnOx等のMn含有膜を堆積させる方法について鋭意研究した結果、Mn含有膜の成膜処理を行う前に絶縁層の表面に例えばRu等の金属膜を下地膜として施しておくことにより、Mn含有膜を効率的に堆積させることができる、という知見を得ることにより本発明に至ったものである。
【0012】
請求項1の発明は、底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す成膜方法において、第1の金属を含む第1金属含有膜を形成する第1金属含有膜形成工程と、前記第1金属含有膜形成工程の後に行われ、前記凹部に埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属を含む第2金属含有膜を形成する第2金属含有膜形成工程と、を有することを特徴とする成膜方法である。
【0013】
このように、底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す際に、第1の金属を含む第1金属含有膜を形成する第1金属含有膜形成工程と、前記第1金属含有膜形成工程の後に行われ、前記凹部に埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属を含む第2金属含有膜を形成する第2金属含有膜形成工程とを行うようにしたので、下地膜としてRu等の第1の金属を含む第1金属含有膜を介在させることになり、この結果、上記第2金属含有膜を効率的に形成することが可能となる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第1金属含有膜形成工程と前記第2金属含有膜形成工程とは交互に行われて、最後に前記第1金属含有膜形成工程が行われることを特徴とする。
請求項3の発明は、底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す成膜方法において、第1の金属と、前記凹部に埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属と、前記埋め込み金属の材料である第3の金属と、を含む合金膜を形成する合金膜形成工程を有することを特徴とする成膜方法である。
これにより、Ru等の第1の金属とMn等の第2の金属とCu等の第3の金属とを含む合金膜よりなるバリヤ層を提供することができる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記第1金属含有膜形成工程と前記第2金属含有膜形成工程とは同一の処理容器内で連続的に行われることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発明において、前記凹部内を前記埋め込み金属で埋め込む埋め込み工程を有することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発明において、前記絶縁層は、SiOC膜とSiCOH膜とSiCN膜とポーラスシリカ膜とポーラスメチルシルセスキオキサン膜とポリアリレン膜とSiLK(登録商標)膜とフロロカーボン膜とよりなる群から選択される1つ以上の膜よりなることを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発明において、前記第1の金属は、Ru、Fe、Co、Ni、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ti、Ta、Zr、W、Al、V、Crよりなる群から選択される1以上の元素であることを特徴とする。
【0017】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発明において、前記第2の金属は、マンガン(Mn)よりなり、該マンガンを含む有機金属材料は、Cp Mn[=Mn(C ]、(MeCp) Mn[=Mn(CH ]、(EtCp) Mn[=Mn(C ]、(i−PrCp) Mn[=Mn(C ]、MeCpMn(CO) [=(CH)Mn(CO) ]、(t−BuCp) Mn[=Mn(C ]、CH Mn(CO) 、Mn(DPM) [= Mn(C1119 ]、Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11 )]、Mn(acac) [=Mn(C ]、Mn(DPM)[=Mn(C1119]、Mn(acac)[=Mn(C]、Mn(hfac)[=Mn(CHF]、( (C HCp)Mn[=Mn((CH]、[Mn( iPr−AMD)][=Mn(CNC(CH)NC]、[ Mn(tBu−AMD)][=Mn(CNC(CH)NC ]よりなる群から選 択される1以上の材料であることを特徴とする。
【0018】
請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発明において、前記埋め込み金属は、銅であることを特徴とする。
請求項10の発明は、底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体の前記凹部内を埋め込み金属で埋め込む際に前記埋め込み金属の下層に介在されるバリヤ層において、第1の金属を含む第1金属含有膜と、前記第1金属含有膜上に形成されて前記埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属を含む第2金属含有膜とよりなることを特徴とするバリヤ層である。
【0019】
請求項11の発明は、請求項10の発明において、前記第1金属含有膜と前記第2金属含有膜とは交互に積層されており、最上層は前記第1金属含有膜になされていることを特徴とする。
請求項12の発明は、底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体の前記凹部内を埋め込み金属で埋め込む際に前記埋め込み金属の下層に介在されるバリヤ層において、第1の金属と、前記埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属と、前記埋め込み金属の材料である第3の金属と、を含む合金膜よりなることを特徴とするバリヤ層である。
【0020】
請求項13の発明は、底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す処理システムにおいて、前記被処理体の表面に第1の金属を含む第1金属含有膜を形成する処理装置と、前記被処理体の表面に前記凹部に埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属を含む第2金属含有膜を形成する処理装置と、前記被処理体の表面に前記埋め込み金属の材料である第3の金属の薄膜を形成する処理装置と、前記各処理装置が連結された共通搬送室と、前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、請求項1、2、4乃至9のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、を備えたことを特徴とする処理システムである。
【0021】
請求項14の発明は、底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す処理システムにおいて、前記被処理体の表面に第1の金属を含む第1金属含有膜を形成する成膜処理と前記凹部に埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属を含む第2金属含有膜を形成する成膜処理とを行う処理装置と、前記被処理体の表面に前記埋め込み金属の材料である第3の金属の薄膜を形成する処理装置と、前記各処理装置が連結された共通搬送室と、前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、請求項1、2、4乃至9のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、を備えたことを特徴とする処理システムである。
【0022】
請求項15の発明は、底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す処理システムにおいて、前記被処理体の表面に第1の金属と、前記凹部に埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属と、前記埋め込み金属の材料である第3の金属と、を含む合金膜を形成する処理装置と、前記処理装置が連結された共通搬送室と、前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、請求項3記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、を備えたことを特徴とする処理システムである。
【発明の効果】
【0023】
本発明のバリヤ層、成膜方法及び処理システムによれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
請求項1及びこれを引用する請求項の発明によれば、底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す際に、第1の金属を含む第1金属含有膜を形成する第1金属含有膜形成工程と、前記第1金属含有膜形成工程の後に行われ、前記凹部に埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属を含む第2金属含有膜を形成する第2金属含有膜形成工程とを行うようにしたので、下地膜としてRu等の第1の金属を含む第1金属含有膜を介在させることになり、この結果、上記第2金属含有膜を効率的に形成することができる。
請求項3及びこれを引用する請求項の発明によれば、Ru等の第1の金属とMn等の第2の金属とCu等の第3の金属とを含む合金膜よりなるバリヤ層を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の処理システムの第1実施例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の処理システムの第2実施例を示す概略構成図である。
【図3】第2の処理装置の一例を示す構成図である。
【図4】第3の処理装置の一例を示す構成図である。
【図5】第5の処理装置の一例を示す構成図である。
【図6】本発明方法の第1実施例の各工程における薄膜の堆積状況の一例を示す図である。
【図7】本発明方法の基本的な各工程を示すフローチャートである。
【図8】埋め込み工程を実施するための各種態様を示す図である。
【図9】第1金属含有膜形成工程を実施する時の各ガスの供給状態を示すタイミングチャートである。
【図10】本発明方法の第2実施例を説明する説明図である。
【図11】本発明の成膜方法の第3実施例を説明するための説明図である。
【図12】半導体ウエハの凹部の従来の埋め込み工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係るバリヤ層、成膜方法及び処理システムの一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
<処理システム>
まず、本発明の成膜方法を実施するための処理システムについて説明する。図1は本発明の処理システムの第1実施例を示す概略構成図、図2は本発明の処理システムの第2実施例を示す概略構成図である。
【0026】
まず第1実施例について説明すると、図1に示すように、この処理システム10は、複数、例えば4つの処理装置12A、12B、12C、12Dと、略六角形状の共通搬送室14と、ロードロック機能を有する第1及び第2ロードロック室16A、16Bと、細長い導入側搬送室18とを主に有している。
【0027】
ここでは、上記4つの処理装置12A〜12Dの内、1つ目の処理装置、例えば処理装置12Aは被処理体である半導体ウエハに対して前処理を行う第1の処理装置12Aとして構成され、2つ目の処理装置、例えば処理装置12Bは半導体ウエハWに対してRu等の第1の金属を含む第1金属含有膜を形成する第2の処理装置12Bとして構成され、3つ目の処理装置、例えば処理装置12Cは半導体ウエハWに対して後述するウエハの凹部に埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する例えばMn等の第2の金属を含む第2金属含有膜を形成する第3の処理装置12Cとして構成され、4つ目の処理装置、例えば処理装置12Dは半導体ウエハWに対して埋め込み金属の材料である第3の金属として例えば銅膜を堆積させる第4の処理装置12Dとして構成されている。
【0028】
ここで、上記第1及び第4の処理装置12A、12Dは、ここに設けなくてもよく、この処理システム10以外に設けた別の処理装置において上記第1及び第4の処理装置における各処理を行うようにしてもよい。また上記第1の処理装置12Aとしては、一般的な清浄処理装置が用いられ、第4の処理装置12Dとしては熱CVD等の熱成膜処理装置が用いられる。
【0029】
具体的には、略六角形状の上記共通搬送室14の4辺に上記各処理装置12A〜12Dが接合され、他側の2つの辺に、上記第1及び第2ロードロック室16A、16Bがそれぞれ接合される。そして、この第1及び第2ロードロック室16A、16Bに、上記導入側搬送室18が共通に接続される。
【0030】
上記共通搬送室14と上記4つの各処理装置12A〜12Dとの間及び上記共通搬送室14と上記第1及び第2ロードロック室16A、16Bとの間は、それぞれ気密に開閉可能になされたゲートバルブGが介在して接合されて、クラスタツール化されており、必要に応じて共通搬送室14内と連通可能になされている。ここで、この共通搬送室14内は真空引きされている。また、上記第1及び第2各ロードロック室16A、16Bと上記導入側搬送室18との間にも、それぞれ気密に開閉可能になされたゲートバルブGが介在されている。この第1及び第2のロードロック室16A、16Bは真空引き、及び大気圧復帰がウエハの搬出入に伴って繰り返される。
【0031】
そして、この共通搬送室14内においては、上記2つの各ロードロック室16A、16B及び4つの各処理装置12A〜12Dにアクセスできる位置に、屈伸及び旋回可能になされた多関節アームよりなる搬送機構20が設けられており、これは、互いに反対方向へ独立して屈伸できる2つのピック20A、20Bを有しており、一度に2枚のウエハを取り扱うことができるようになっている。尚、上記搬送機構20として1つのみのピックを有しているものも用いることができる。
【0032】
上記導入側搬送室18は、横長の箱体により形成されており、この横長の一側には、被処理体である半導体ウエハを導入するための1つ乃至複数の、図示例では3つの搬入口が設けられ、各搬入口には、開閉可能になされた開閉ドア22が設けられる。そして、この各搬入口に対応させて、導入ポート24がそれぞれ設けられ、ここにそれぞれ1つずつカセット容器26を載置できるようになっている。各カセット容器26には、複数枚、例えば25枚のウエハWを等ピッチで多段に載置して収容できるようになっている。このカセット容器26内は、例えば密閉状態になされており、内部にはN ガス等の不活性ガスの雰囲気に満たされている。
【0033】
この導入側搬送室18内には、ウエハWをその長手方向に沿って搬送するための導入側搬送機構28が設けられる。この導入側搬送機構28は、屈伸及び旋回可能になされた2つのピック28A、28Bを有しており、一度に2枚のウエハWを取り扱い得るようになっている。この導入側搬送機構28は、導入側搬送室18内に、その長さ方向に沿って延びるように設けた案内レール30上にスライド移動可能に支持されている。
【0034】
また、導入側搬送室18の一方の端部には、ウエハの位置合わせを行なうオリエンタ32が設けられる。上記オリエンタ32は、駆動モータによって回転される回転台32Aを有しており、この上にウエハWを載置した状態で回転するようになっている。この回転台32Aの外周には、ウエハWの周縁部を検出するための光学センサ32Bが設けられ、これによりウエハWの位置決め切り欠き、例えばノッチやオリエンテーションフラットの位置方向やウエハWの中心の位置ずれ量を検出できるようになっている。
【0035】
この処理システム10はシステム全体の動作を制御するために、例えばコンピュータ等よりなるシステム制御部34を有している。そして、この処理システム全体の動作制御に必要なプログラムはフレキシブルディスクやCD(Compact Disc)やハードディスクやフラッシュメモリ等の記憶媒体36に記憶されている。具体的には、このシステム制御部34からの指令により、各ガスの供給の開始、停止や流量制御、プロセス温度(ウエハ温度)、プロセス圧力(各処理装置の処理容器内の圧力)の制御、ウエハの搬送作業等が行われる。
【0036】
このように、構成された処理システム10における概略的な動作について説明する。まず、導入ポート24に設置されたカセット容器26からは、未処理の半導体ウエハWが導入側搬送機構28により導入側搬送室18内に取り込まれ、この取り込まれたウエハWは導入側搬送室18の一端に設けたオリエンタ32へ搬送されて、ここで位置決めがなされる。上記ウエハWは例えばシリコン基板よりなり、この表面には凹部2(図12参照)が予め形成されている。
【0037】
位置決めがなされたウエハWは、上記導入側搬送機構28により再度搬送され、第1或いは第2のロードロック室16A、16Bの内のいずれか一方のロードロック室内へ搬入される。このロードロック室内が真空引きされた後に、予め真空引きされた共通搬送室14内の搬送機構20を用いて、上記ロードロック室内のウエハWが共通搬送室14内に取り込まれる。
【0038】
そして、この共通搬送室14内へ取り込まれた未処理のウエハは、まず第1の処理装置12A内に搬入され、ここでウエハWに対して前処理が行われる。この前処理としては、一般的なデガス(degas)処理やウエハ表面の凹部2内の洗浄処理が行われる。この洗浄処理としては、H プラズマ処理、Arプラズマ処理、有機酸を用いたドライクリーニング処理、或いはHot−Wire原子状水素を用いたクリーニング処理等が行われる。
【0039】
この前処理が完了したウエハWは、次に第2の処理装置12B内へ搬入され、ここでウエハWの表面に上述したようにRu等の第1の金属を含む第1金属含有膜を形成する第1金属含有膜形成工程が行われる。この第1金属含有膜形成工程では、後述するように、第1の金属を含む第1金属含有原料ガスを用いて熱CVD等の熱処理を行うことにより成膜が行われる。この成膜としては例えばRu(ルテニウム)膜が形成される。
【0040】
この第1金属含有膜形成工程が完了したウエハWは、次に第3の処理装置12C内へ搬入され、ここでウエハWの表面に凹部の埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属を含む第2金属含有膜を形成する第2金属含有膜形成工程が行われる。この第2金属含有膜としては、例えばMnOx膜やMn膜等が形成される。このように、上記Ru膜とMnOx膜やMn膜との層構造でCu膜に対するバリヤ層が形成されることになる。
【0041】
この第2金属含有膜形成工程が完了したウエハWは、次に第4の処理装置12D内へ搬入され、ここでウエハWの表面に埋め込み金属である第3の金属として、例えば銅膜を堆積して上記凹部2内を埋め込む埋め込み工程が行われる。尚、成膜方法の実施例によっては、第1金属含有膜形成工程や第2金属含有膜形成工程を繰り返す場合もある。そして、上記埋め込み工程が完了したならば、この処理システム10での処理は完了することになる。この処理済みのウエハWは、いずれか一方のロードロック室16A又は16B、導入側搬送室18を経由して導入ポート24の処理済みウエハ用のカセット容器26内へ収容されることになる。尚、共通搬送室14内は、ArやHe等の希ガスやドライN 等の不活性ガスの雰囲気で減圧状態になされている。
【0042】
上記処理システムの第1実施例の場合には、第2の処理装置12Bと第3の処理装置12Cとを別々に設けて、第1金属含有膜形成工程と第2金属含有膜形成工程とをそれぞれ別の処理装置で行うようにしたが、これらの両工程を同一の処理装置内で行うようにしてもよい。このような処理システムが図2に示す第2実施例である。尚、図2においては、図1に示した構成部分と同一構成部分については同一参照符号を付してその説明を省略する。
【0043】
図2に示すように、ここでは図1中の第2の処理装置12Bに替えて5つ目の処理装置として第5の処理装置12Eを設けており、第3の処理装置12C(図1参照)は設置していない。この第5の処理装置12Eにおいて、後述するように第1金属含有膜である、例えばRu膜と第2金属含有膜である例えばMnOx膜等とが連続的に成膜されることになる。この場合には、処理装置の設置台数が一台減少した分だけ、設備コストを削減することができる。また第3の処理装置12Cがあった位置に、スループット向上のため第4の処理装置12Dをもう一台設けてもよい。
【0044】
<第2の処理装置12Bの説明>
前述したように、第1の処理装置12Aは一般的な洗浄処理装置なので、その説明は省略し、上記第2の処理装置12Bについて説明する。図3は第2の処理装置の一例を示す構成図である。この第2の処理装置12Bは、前述したように第1の金属を含む第1金属含有原料ガスを用いて熱処理によりウエハ表面に第1金属含有膜を形成する装置であり、ここでは第1金属含有膜としてRu膜よりなる金属膜を熱CVD法により形成する場合を例にとって説明する。
【0045】
この第2の処理装置12Bは、例えば断面の内部が略円形状になされたアルミニウム製の処理容器132を有している。この処理容器123内の天井部には必要な処理ガス、例えば成膜ガス等を導入するためにガス導入手段であるシャワーヘッド部134が設けられており、この下面のガス噴射面に設けた多数のガス噴射孔136から処理空間Sに向けて処理ガスを噴射するようになっている。
【0046】
このシャワーヘッド部134内には、中空状のガス拡散室138が形成されており、ここに導入された処理ガスを平面方向へ拡散した後、ガス拡散室138に連通されたガス噴射孔136より吹き出すようになっている。このシャワーヘッド部134の全体は、例えばニッケルやハステロイ(登録商標)等のニッケル合金、アルミニウム、或いはアルミニウム合金により形成されている。そして、このシャワーヘッド部134と処理容器132の上端開口部との接合部には、例えばOリング等よりなるシール部材140が介在されており、処理容器132内の気密性を維持するようになっている。
【0047】
また、処理容器132の側壁には、この処理容器132内に対して被処理体としての半導体ウエハWを搬入搬出するための搬出入口142が設けられると共に、この搬出入口142には気密に開閉可能になされたゲートバルブGが設けられている。
【0048】
そして、この処理容器132の底部144に排気空間146が形成されている。具体的には、この容器底部144の中央部には大きな開口148が形成されており、この開口148に、その下方へ延びる有底円筒体状の円筒区画壁150を連結してその内部に上記排気空間146を形成している。そして、この排気空間146を区画する円筒区画壁150の底部152には、これより起立させて円筒体状の支柱154が設けられ、この支柱154の上端部に半導体ウエハWを載置する載置台156が固定されている。
【0049】
また、上記載置台156は、例えばセラミック材や石英ガラスよりなり、この載置台156内には、加熱手段として通電により熱を発生する例えばカーボンワイヤヒータ等よりなる抵抗加熱ヒータ158が収容されて、この載置台156の上面に載置された半導体ウエハWを加熱し得るようになっている。
【0050】
上記載置台156には、この上下方向に貫通して複数、例えば3本のピン挿通孔160が形成されており(図3においては2つのみ示す)、上記各ピン挿通孔160に上下移動可能に遊嵌状態で挿通させた押し上げピン162を配置している。この押し上げピン162の下端には、円形リング形状に形成された例えばアルミナのようなセラミックス製の押し上げリング164が配置されており、この押し上げリング164に、上記各押し上げピン162の下端を支持させている。この押し上げリング164から延びるアーム部166は、容器底部144を貫通して設けられる出没ロッド168に連結されており、この出没ロッド168はアクチュエータ170により昇降可能になされている。
【0051】
これにより、上記各押し上げピン162をウエハWの受け渡し時に各ピン挿通孔160の上端から上方へ出没させるようになっている。また、アクチュエータ170の出没ロッド168の容器底部の貫通部には、伸縮可能なベローズ172が介設されており、上記出没ロッド168が処理容器132内の気密性を維持しつつ昇降できるようになっている。
【0052】
そして、上記排気空間146の入口側の開口148は、載置台156の直径よりも小さく設定されており、上記載置台156の周縁部の外側を流下するガスが載置台156の下方に回り込んで開口148へ流入するようになっている。そして、上記円筒区画壁150の下部側壁には、この排気空間146に臨ませて排気口174が形成されており、この排気口174には、真空排気系176が接続される。
【0053】
この真空排気系176は、上記排気口174に接続された排気通路178を有し、この排気通路178には、圧力調整弁180や真空ポンプ182や除害装置(図示せず)等が順次介設され、上記処理容器132内及び排気空間146の雰囲気を圧力制御しつつ真空引きして排気できるようになっている。
【0054】
そして、上記シャワーヘッド部134には、これに所定のガスを供給するために、第1金属含有原料ガスを供給する原料ガス供給系88が接続されている。具体的には、上記第1金属含有原料ガスを供給する原料ガス供給系88は、上記ガス拡散室138のガス入口186に接続された原料ガス流路94を有している。
【0055】
この原料ガス流路94の他端は、ここでは固体状の原料110を収容する第1の原料タンク100に接続されている。また、この原料ガス流路94の途中には、開閉弁112及びこの原料ガス流路94内の圧力を測定する圧力計114が設けられる。この圧力計114としては、例えばキャパシタンスマノメータを用いることができる。上記原料ガス流路94は、ここで用いる原料110の蒸気圧が非常に低くて気化し難いことから、気化を促進させるために比較的大口径になされ、且つ流路長もできるだけ短く設定して第1の原料タンク100内の圧力が処理容器132内の圧力に近くなるように設定している。
【0056】
そして、この第1の原料タンク100内には、その先端部が第1の原料タンク100の底部近傍に位置されたバブリングガス管116が挿入されている。そして、このバブリングガス管116にはマスフローコントローラのような流量制御器118及び開閉弁120が順次介設されており、バブリングガスを流量制御しつつ第1の原料タンク100内に導入して原料110をガス化して原料ガスとするようになっている。そして、発生したこの原料ガスはバブリングガスに随伴されて供給されることになる。
【0057】
上記バブリングガスとしては、ここでは不活性ガスであるN ガスを用いているが、これに代えてCO(一酸化酸素)、或いはHe、Ar等の希ガスを用いてもよい。また、この第1の原料タンク100には、気化を促進させるために原料110を加熱するタンク加熱部122が設けられている。ここでは上記原料110としては、第1の金属の一例としてRuを含む粒状固体のルテニウムカルボニル(Ru (CO)12)を用いている。
【0058】
そして、上記原料ガス流路94、これに介設される開閉弁122には、原料ガスが再凝縮することを防止するためにテープヒータ、アルミブロックヒータ、マントルヒータ或いはシリコンラバーヒータ等(図示せず)が巻回され、これらを加熱するようになっている。
【0059】
また図示されないが、パージ用の不活性ガス供給手段が上記シャワーヘッド部134に接続されており、必要に応じてパージガスを供給するようになっている。このパージ用ガスとしては、N ガス、Arガス、Heガス、Neガス等の不活性ガスを用いることができる。
【0060】
そして、このような装置全体の動作を制御するために、例えばコンピュータ等よりなる制御部206を有しており、上記ガスの供給の開始と停止の制御、供給量の制御、処理容器132内の圧力制御、ウエハWの温度制御等を行うようになっている。そして、上記制御部206は、上記した制御を行うためのコンピュータプログラムを記憶するための記憶媒体208を有している。
【0061】
ここで原料ガスの流量を制御するために、バブリングガスの流量と、原料ガスの流量と、その時の圧力計114の測定値との関係が予め基準データとして記憶媒体208に記憶されており、成膜時には、圧力計114の測定値に基づいてバブリングガスの流量を制御することによって原料ガスの供給量を制御するようになっている。上記記憶媒体208としては、例えばフレキシブルディスク、フラッシュメモリ、ハードディスク、CD(Compact Disc)等を用いることができる。また上記制御部206は、システム制御部34(図1参照)の支配下で動作するようになっている。
【0062】
次に、以上のように構成された第2の処理装置12Bの動作について説明する。まず、半導体ウエハWは、図示しない搬送アームに保持されて開状態となったゲートバルブG、搬出入口142を介して処理容器132内へ搬入され、このウエハWは、上昇された押し上げピン162に受け渡された後に、この押し上げピン162を降下させることにより、ウエハWを載置台156の上面に載置してこれを支持する。
【0063】
次に、原料ガス供給系88を動作させて、シャワーヘッド部134へ原料ガスを流量制御しつつ供給して、このガスをガス噴射孔136より噴射し、処理空間Sへ導入する。このガスの供給態様については後述するように種々存在する。
【0064】
そして真空排気系176に設けた真空ポンプ182の駆動を継続することにより、処理容器132内や排気空間146内の雰囲気を真空引きし、そして、圧力調整弁180の弁開度を調整して処理空間Sの雰囲気を所定のプロセス圧力に維持する。この時、ウエハWの温度は、載置台156内に設けた抵抗加熱ヒータ158により加熱されて所定のプロセス温度に維持されている。これにより、半導体ウエハWの表面に第1金属含有膜、すなわちここではRu膜が形成されることになる。
【0065】
<第3の処理装置12Cの説明>
次に、上記第3の処理装置12Cについて説明する。尚、前述したように、第4の処理装置12Dは一般的な熱成膜処理装置なので、その説明は省略する。図4は第3の処理装置の一例を示す構成図である。この第3の処理装置12Cは、ウエハ表面に埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属を含む第2金属含有膜を形成する装置であり、ここではこの第2金属含有膜としてMnOx膜(一部にMn膜を含む場合もある)を形成する場合を例にとって説明する。
【0066】
この第3の処理装置12Cは、その構成はほぼ第2の処理装置12Bと同じであり原料ガス供給系のみが異なっている。従って、原料ガス供給系を主体として説明し、図3に示す装置と同一構成部分については同一参照符号を付してその説明を省略する。
【0067】
すなわち、シャワーヘッド部134には、これに所定のガスを供給するために、第2金属含有膜の原料ガスを供給する原料ガス供給系131が接続されている。具体的には、上記原料ガス供給系131は、上記ガス拡散室138のガス入口186に接続された原料ガス流路133を有している。
【0068】
この原料ガス流路133は、途中に開閉弁135及びマスフローコントローラのような流量制御器137を順次介設して第2金属含有原料145を収容する第2の原料タンク149に接続されている。
【0069】
そして、この第2の原料タンク149内には、その先端部が第2の原料タンク149の底部近傍に位置されたバブリングガス管139が挿入されている。そして、このバブリングガス管139にはマスフローコントローラのような流量制御器141及び開閉弁143が順次介設されており、バブリングガスを流量制御しつつ第2の原料タンク149内に導入して原料145をガス化して原料ガスを供給するようになっている。そして、発生したこの原料ガスはバブリングガスに随伴されて供給されることになる。
【0070】
上記バブリングガスとしては、ここでは還元ガスであるH ガスを用いている。また、この第2の原料タンク149には、気化を促進させるために原料145を加熱するタンク加熱部147が設けられている。ここでは上記原料145としては、第2の金属として例えばマンガンを含む液体原料である(EtCp) Mn(プリカーサ)を用いることができる。
【0071】
尚、上記バブリング用の上記還元不活性ガスとしてHガスに代えて、Nや He、Ne、Ar等の希ガスからなる不活性ガスを用いることができる。そして、上記原料ガス流路133、これに介設される開閉弁135、流量制御器137には、原料ガスが再凝縮することを防止するためにテープヒータ、アルミブロックヒータ、マントルヒータ或いはシリコンラバーヒータ等(図示せず)が巻回され、これらを加熱するようになっている。
【0072】
また図示されないが、パージ用のガス供給手段が上記シャワーヘッド部134に接続されており、必要に応じてパージガスを供給するようになっている。このパージ用ガスとしては、N ガス、Arガス、Heガス、Neガス等の不活性ガスやH等の還元性ガスを用いることができる。
【0073】
そして、このような装置全体の動作を制御するために、例えばコンピュータ等よりなる制御部206を有しており、上記各ガスの供給の開始と停止の制御、供給量の制御、処理容器132内の圧力制御、ウエハWの温度制御等を行うようになっている。そして、上記制御部206は、上記した制御を行うためのコンピュータプログラムを記憶するための記憶媒体208を有している。上記記憶媒体208としては、例えばフレキシブルディスク、フラッシュメモリ、ハードディスク、CD(Compact Disc)等を用いることができる。また上記制御部206は、システム制御部34(図1参照)の支配下で動作するようになっている。
【0074】
次に、以上のように構成された第3の処理装置12Cの動作について説明する。まず、半導体ウエハWは、搬送機構20(図1参照)に保持されて開状態となったゲートバルブG、搬出入口142を介して処理容器132内へ搬入され、このウエハWは、上昇された押し上げピン160に受け渡された後に、この押し上げピン160を降下させることにより、ウエハWを載置台156の上面に載置してこれを支持する。
【0075】
次に、第2金属含有原料の原料ガス供給系131を動作させて、シャワーヘッド部134へ成膜ガスを流量制御しつつ供給して、このガスをガス噴射孔136より噴射し、処理空間Sへ導入する。
【0076】
そして真空排気系176に設けた真空ポンプ182の駆動を継続することにより、処理容器132内や排気空間146内の雰囲気を真空引きし、そして、圧力調整弁180の弁開度を調整して処理空間Sの雰囲気を所定のプロセス圧力に維持する。この時、ウエハWの温度は、載置台156内に設けた抵抗加熱ヒータ158により加熱されて所定のプロセス温度に維持されている。これにより、半導体ウエハWの表面に所望の第2金属含有膜、すなわちここではMnOx膜(Mn膜も一部に含まれる)が形成されることになる。
【0077】
<第5の処理装置12Eの説明>
次に、上記第5の処理装置12E(図2参照)について説明する。図5は第5の処理装置の一例を示す構成図である。尚、図3及び図4に示す構成部分と同一構成部分については同一参照符号を付してその説明を省略する。
【0078】
この第5の処理装置12Eは、1台の処理装置で第1金属含有膜の一例であるRu膜と第2金属含有膜の一例であるMnOx膜(Mn膜も含まれる)とを成膜することができるようになっている。この第5の処理装置12Eは、例えば断面の内部が略円形状になされたアルミニウム製の処理容器132を有している。この処理容器132内の天井部には必要な処理ガス、例えば成膜ガス等を導入するためにガス導入手段であるシャワーヘッド部42が設けられており、この下面のガス噴射面に設けた多数のガス噴射孔42A、42Bから処理空間Sに向けて処理ガスを噴射するようになっている。
【0079】
このシャワーヘッド部42内には、中空状の2つに区画されたガス拡散室44A、44Bが形成されており、ここに導入された処理ガスを平面方向へ拡散した後、各ガス拡散室44A、44Bにそれぞれ連通された各ガス噴射孔42A、42Bより吹き出すようになっている。すなわち、ガス噴射孔42A、42Bはマトリクス状に配置されており、各ガスの噴射孔42A、42Bより噴射された各ガスを処理空間Sで混合するようになっている。
【0080】
尚、このようなガス供給形態をポストミックスと称す。このシャワーヘッド部42の全体は、例えばニッケルやハステロイ(登録商標)等のニッケル合金、アルミニウム、或いはアルミニウム合金により形成されている。そして、このシャワーヘッド部42と処理容器132の上端開口部との接合部には、例えばOリング等よりなるシール部材140が介在されており、処理容器132内の気密性を維持するようになっている。
【0081】
そして、上記シャワーヘッド部42には、これに所定のガスを供給するために、第1金属含有原料ガスを供給する原料ガス供給系88と第2金属含有原料ガスを供給する原料ガス供給系131が接続されている。具体的には、上記第1金属含有原料ガス供給系88は、上記2つのガス拡散室の内の一方のガス拡散室44Bのガス入口102に接続された原料ガス流路94を有している。また上記第2金属含有原料ガスを供給する原料ガス供給系131は、上記ガス拡散室の内の他方のガス拡散室44Aのガス入口92に接続された原料ガス流路133を有している。
【0082】
また図示されないが、パージ用の不活性ガス供給系が上記シャワーヘッド部42に接続されており、必要に応じてパージガスを供給するようになっている。このパージ用ガスとしては、N ガス、Arガス、Heガス、Neガス等の不活性ガスを用いることができる。
【0083】
この場合、上記第1金属含有ガス供給系88のガス流路94と上記第2金属含有原料の原料ガス供給系131のガス流路133を、別々のガス入口102と92に接続している(ポストミックス)が、図3、図4に示すようなガス拡散室を1つだけもったシャワーヘッド部に、これら両ガス流路を接続(プリミックス)してもよい。この第5の処理装置12Eによれば、この1台の処理装置で上述したようにMnOx膜(Mn膜も含む)とRu膜とをそれぞれ成膜することができる。
【0084】
<本発明の成膜方法>
次に、図1乃至図5に示したような処理システムや処理装置を用いて行われる本発明の成膜方法について具体的に説明する。図6は本発明方法の第1実施例の各工程における薄膜の堆積状況の一例を示す図、図7は本発明方法の基本的な各工程を示すフローチャート、図8は埋め込み工程を実施するための各種態様を示す図、図9は第1金属含有膜形成工程を実施する時の各ガスの供給状態を示すタイミングチャート、図10は本発明方法の第2実施例を説明する説明図である。
【0085】
本発明の目的の1つは、比誘電率の低い絶縁層の表面にMn等の第2の金属を含む第2金属含有膜を形成する際に、下地膜としてRu等の第1の金属を含む第1金属含有膜を介在させることにより上記第2金属含有膜を効率的に形成することである。ここで第1金属含有膜とは、第2の処理装置12B或いは第5の処理装置12Eで成膜されるRu膜であり、第2金属含有膜とは第3の処理装置12C或いは第5の処理装置12Eで成膜されるMnOx膜やMn膜である。
【0086】
まず、図1或いは図2に示す処理システム10内へウエハWが搬入される時には、図6(A)に示すように、ウエハWに形成された、例えば層間絶縁膜などの絶縁層1の表面には、トレンチやホールのような凹部2が形成されており、この凹部2の底部に金属層として銅等よりなる下層の配線層3が露出している。
【0087】
具体的には、この凹部2は、細長く形成された断面凹状の溝(トレンチ)2Aと、この溝2Aの底部の一部に形成されたホール2Bとよりなり、このホール2Bがコンタクトホールやスルーホールとなる。そして、このホール2Bの底部に金属層として上記配線層3が露出しており、下層の配線層やトランジスタ等の素子と電気的な接続を行うようになっている。なお下層の配線層やトランジスタ等の素子については図示を省略している。下地膜となる上記絶縁層1は、比誘電率が4.1よりも低い低誘電率の材料であるLow−k膜、例えばSiOCよりなる。
【0088】
さて、本発明方法では、このような状態の半導体ウエハWの表面に、まず前処理としてデガス処理や洗浄処理を施して凹部2内の表面をクリーニングする。この洗浄処理は第1の処理装置12A(図1参照)にて行われる。この洗浄処理としては、前述したようにH プラズマ処理、Arプラズマ処理、有機酸を用いたドライクリーニング処理、或いはHot−Wire原子状水素を用いたクリーニング処理などが適用される。
【0089】
本発明の成膜方法は、ここでは第1実施例と第2実施例とがある。図7は成膜方法の第1実施例のフローチャートを示す。この成膜方法の第1実施例の場合は、図7に示すように、前処理の完了した被処理体に対して第1の金属、例えばRuを含む第1金属含有膜を形成する第1金属含有膜形成工程を行う(S1)。次に、上記凹部2に埋め込まれる埋め込み金属、例えばCuに対してバリヤ性を有する第2の金属、例えばMnを含む第2金属含有膜を形成する第2金属含有膜形成工程を行う(S2)。これにより、1層の第1金属含有膜と1層の第2金属含有膜とよりなる本発明のバリヤ層が形成されることになる。
【0090】
次に、上記ウエハW上の凹部2を埋め込み金属、例えばCuにより埋め込むことになる(S3)。以下、この成膜方法の第1実施例について詳しく説明する。まず、最初に上記前処理後のウエハWの表面に、図6(B)に示すように第1金属含有膜210を形成する第1金属含有膜形成工程を施す(図7中のS1)。この工程は第2の処理装置12B、或いは第5の処理装置12E(図2参照)で行う。これにより、上記凹部2内の表面を含むウエハ表面全体に第1金属含有膜210が形成される。この第1金属含有膜210は、ここではRu膜よりなる。
【0091】
また、上記第1金属含有膜210の形成は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法が望ましいが、ALD法(Atomic Layered Deposition)法でもよい。ここで、上記ALD法とは、異なる成膜用ガスを交互に供給して原子レベル、或いは分子レベルの薄膜を1層ずつ繰り返し形成して積層させる成膜方法をいう。この第1金属含有膜210であるRu膜は、濡れ性に非常に優れており、この後工程で行われるMn含有膜の形成を効率的に行って、このMn含有膜を効率的に堆積させることが可能となる。第1金属含有膜210の形成は、CVD法、ALD法、スパッタ法のいずれを用いてもよい。尚、スパッタ法を行う場合には、第2の処理装置12Bとしては、Ru金属をターゲットとしてスパッタリングを行うスパッタ成膜装置を用いる。
【0092】
上記第1金属含有膜形成工程が完了したならば、次に、図6(C)に示すように、第2金属含有膜形成工程(図7中のS2)を行ってウエハWの表面に埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2金属含有膜212を形成する。この工程は、第3の処理装置12C、或いは第5の処理装置12Eで行う。これにより、上記凹部2内の表面を含むウエハ表面全体に第2金属含有膜212が形成されることになる。
【0093】
この第2金属含有膜212は、MnOx膜(一部にMn膜が含まれる)よりなる。具体的には、凹部2内の側壁やウエハ上面に堆積したMn膜は、下地である第1金属含有膜(Ru膜)を浸透してくる絶縁層1中の酸素成分と反応してMnOx膜として存在することになり、凹部2内の底面に露出している配線層(Cu)3上に堆積したRu膜は、そのまま金属膜として存在することになる。そして、この第1金属含有膜(Ru膜)と第2金属含有膜(MnOx膜、Mn膜)とでバリヤ層214が形成されることになる。この第2金属含有膜の形成は、CVD法、ALD法等を用いることができる。
【0094】
上記第2金属含有膜形成工程が完了したならば、次に、図6(D)に示すように埋め込み工程を行って凹部2内を埋め込み金属216により埋め込む(図7中のS3)。この埋め込み工程は、第4の処理装置12Dで行う。これにより、上記凹部2内を完全に埋め込むと同時にウエハ表面全体に埋め込み金属216が形成されることになる。この埋め込み金属216としては、ここではCu(Cu膜)が用いられる。
【0095】
上記埋め込み金属216の形成は、CVD法、ALD法、PVD(スパッタ)法、超臨界CO 法、メッキ法のいずれを用いてもよい。尚、メッキ法や超臨界CO 法による埋め込み処理を行う場合には、第4の処理装置12DにてCuシード膜を堆積し、この処理システム10の外に設けた処理装置にてこの埋め込み処理を行ってもよい。
【0096】
以上のようにして、成膜処理は終了することになり、以後は、ウエハ表面上の余分な埋め込み金属216等をCMP処理により削り取ることになる。このように、底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す際に、第1の金属を含む第1金属含有膜210を形成する第1金属含有膜形成工程と、前記第1金属含有膜形成工程の後に行われ、前記凹部に埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属を含む第2金属含有膜212を形成する第2金属含有膜形成工程とを行うようにしたので、下地膜としてRu等の第1の金属を含む第1金属含有膜を介在させることになり、この結果、上記第2金属含有膜を効率的に形成することができる。従って、形成されるバリヤ層214のバリヤ性を高くすることができる。
【0097】
ここで上記各工程について、詳しく説明する。まず、第1金属含有膜210(Ru膜)を形成する第1金属含有膜形成工程(S1)の場合には、図7のS1において説明したように、CVD法とALD法とスパッタ法の3種類がある。第1の方法であるCVD法は、図9(A)又は図9(B)に示すような方法で行われる。すなわち、図9(A)に示す成膜方法は図3に示す第2の成膜装置12B、或いは図5に示す第5の成膜装置12Eを用いて行われる。
【0098】
図9(A)に示す成膜方法では、ルテニウムカルボニルよりなる原料110を気化して作ったRu含有原料ガスを、バブリングガスと共に流し、CVD法により熱分解させてRu膜よりなる第1金属含有膜210を形成する。この時のプロセス条件は、プロセス圧力が0.1mTorr〜200mTorrの範囲内、より好ましくは2mTorr〜50mTorrの範囲内、プロセス温度が50〜500℃の範囲内、より好ましくは150℃〜350℃である。
【0099】
またガス流量の制御は、前述したように圧力計114の測定値に基づいてバブリングガスの流量を制御することによって行う。例えばバブリングガスの流量は0.1〜1000sccmの範囲内である。
【0100】
また、図9(B)に示すCVD法では還元ガスとしてH を用いている。尚、このH を用いたCVD法は、図3に示す第2の処理装置12Bにおいて、更にH ガス供給系をシャワーヘッド部134に追加して接続した処理装置を用いる。この場合には、Ruを含む原料ガスとH ガスとを同時に流し、H ガスによりRuを含む原料ガスの分解乃至還元を促進させるようにしてRu膜よりなる第1金属含有膜210を形成する。この場合には、還元ガスを供給した分だけRu膜の材料特性を改善させる効果、例えばRu膜の電気抵抗の低減等がある。この時のプロセス圧力やプロセス温度等のプロセス条件は、図9(A)において説明した内容と同じである。
【0101】
また図9(C)に示す第2の方法であるALD法では、図9(B)にて説明した処理装置を用い、Ruを含む原料ガスと還元ガスであるH ガスとを交互に間欠的に流し、原子レベル、或いは分子レベルの薄膜を積層させてRu膜よりなる第1金属含有膜210を形成する。
【0102】
この時のプロセス圧力やプロセス温度等のプロセス条件は、図9(A)において説明した内容と同じである。尚、ここで上記還元ガスはH に限定されず、COやシリコン含有ガス、ボロン含有ガス、窒素含有ガス等を用いることができる。シリコン含有ガスとしては例えばSiH 、Si 、SiCl 等であり、ボロン含有ガスとしては例えばBH 、B 、B 等であり、窒素含有ガスとしては例えばNH である。
【0103】
また第3の方法であるスパッタ法の場合には、前述したように第2の処理装置12Bとしてスパッタ成膜装置を用い、Ru金属をターゲットとしてスパッタリング処理によりウエハWの表面にRu膜よりなる第1金属含有膜210を形成する。
【0104】
次に、第3の処理装置12Cを用いて第2金属含有膜212(MnOx膜、Mn膜を含むMn含有膜)を形成する第2金属含有膜形成工程(S2)の場合には、CVD法で行うのが好ましい。具体的には、Mnを含有する原料145を還元ガスである水素でバブリングして供給し、熱CVD法によりMnを含む第2金属含有膜212を形成する。この場合には、Mn膜は下地のRu膜を浸透してくる絶縁層1の酸素成分と反応して、最終的にMnOx膜が形成されることになる。
【0105】
ただし、凹部2のホール2Bの底面におけるRu膜の下層はCuよりなる配線層3となっているので酸化されないでMn膜として存在することになる。従って、凹部2のホール2Bの底部では、配線層3とRu膜とMn膜とが直接的に接続されて電気抵抗が小さくなって良好な状態となっている。また、この時のプロセス条件は、プロセス温度(ウエハ温度「以下同じ」)が70〜450℃、プロセス圧力が1Pa〜13kPa程度である。またMnを含む原料ガスの流量は特に制限はないが、成膜速度等を考慮すると0.1〜10sccm程度である。
【0106】
次に、凹部2の埋め込みを行う埋め込み工程(S3)の場合には、図8に示すようにCVD法とALD法とPVD(スパッタ)法とメッキ法と超臨界CO 法の5種類がある。また、メッキ法や超臨界CO 法を用いる場合には、埋め込み処理を行う前にCu等の導電性金属からなるシード膜を形成するようにしてもよい。また、埋め込み処理を行った後に、アニール処理を行うのが好ましい。
【0107】
第1の方法であるCVD法の場合には、Cu含有原料ガスと還元ガスとしてのH ガスとを同時に流し、CVD法によりCu膜を形成して凹部2の埋め込みを行う。第2の方法であるALD法の場合には、Cu含有原料ガスとH ガスとを、例えば図9(C)にて説明したと同様に交互に繰り返し流すようにする。あるいはH ガスは流さずに、Cu含有原料ガスを間欠的に流し、単なる熱分解反応によりCu膜よりなるCu膜を形成してもよい。
【0108】
この時のプロセス条件は(CVD処理の場合も含む)、プロセス温度が70〜350℃程度、プロセス圧力が1Pa〜13kPa程度である。またCu含有原料ガスの流量は1〜100sccm程度、H ガスの流量は5〜500sccm程度である。特に、上記CVD法やALD法の場合には、メッキ法よりも微細な凹部の内壁に薄膜が堆積し易くなるので、凹部が更に微細化しても、内部にボイド等を生ぜしめることなく凹部の埋め込みを行うことができる。
【0109】
上記アニール処理は、上記Mnバリヤ膜を確実に形成することを目的としており、従って、前工程でMnバリヤ膜の自己形成にとって十分に高い温度、例えば100〜150℃以上の高温のプロセス温度で行われていれば、上記Mnバリヤ膜はすでに十分な厚さで形成された状態となっているので、上記アニール処理を不要とすることができる。ここで上記Cu含有原料ガスとしては、特開2001−053030号公報に示されているようなCu(I)hfac TMVS(銅錯体)、Cu(hfac) 、Cu(dibm) 等を用いることができる。
【0110】
以上のように、本発明では、底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す際に、第1の金属を含む第1金属含有膜を形成する第1金属含有膜形成工程と、第1金属含有膜形成工程の後に行われ、凹部に埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属を含む第2金属含有膜を形成する第2金属含有膜形成工程とを行うようにしたので、下地膜としてRu等の第1の金属を含む第1金属含有膜を介在させることになり、この結果、上記第2金属含有膜を効率的に形成することができる。
【0111】
また、上述した大部分の一連の処理を同一の処理システム内で、すなわちin−situで大気曝露することなく連続処理を行うことができるので、スループットを向上させることができるとともに膜質や密着性の向上を図ることができる。
【0112】
<本発明方法の第2実施例>
次に、本発明方法の第2実施例について説明する。上記本発明方法の第1実施例では、Ru膜よりなる第1金属含有膜210とMnOx膜等よりなる第2金属含有膜212とを1層ずつ積層してバリヤ層214を形成した場合を例にとって説明したが、これに限定されず、上記第1金属含有膜210と第2金属含有膜212とを交互に積層させて、且つ最上層は第1金属含有膜210として全体でバリヤ層214を形成するようにしてもよい。すなわち、第1金属含有膜210が一層多く形成されている。図10はこのような本発明の成膜方法の第2実施例を説明するための説明図であり、図10(A)はフローチャートを示し、図10(B)はバリヤ層の積層構造の一例を示す断面図である。尚、図6及び図7に示す構成と同一部分については同一参照符号を付してその説明を省略する。
【0113】
図10(A)に示すように、ここでは第1金属含有膜形成工程S1と第2金属含有膜形成工程S2とを、交互に繰り返すように行い、第1金属含有膜形成工程S1が予め定められていた所定の回数だけ行ったならば(S1−1のYES)、第2金属含有膜形成工程S2を行わず、凹部の埋め込み工程(S3)を行うようにしている。ここで上記”n”は2、3、4、5…等の2以上の正の整数である。図10(B)は所定の回数nが”2”の場合を示し、バリヤ層214は、2つの第1金属含有膜(Ru膜)210の間に1つの第2金属含有膜(MnOx膜等)212を介在させた3層構造となっている。この場合、最上層の第1金属含有膜210のRu膜は、凹部2の埋め込み金属であるCuに対してシード機能を有している。
【0114】
従って、凹部2をCuメッキ処理で埋め込む場合には、それに先立ってCuシード膜をスパッタリング等によって形成する必要がなくなり、上記最上層のRu膜をシード膜として直接的にCuメッキ処理を行うことができる。尚、この第2実施例において、第1金属含有膜210と第2金属含有膜212とを更に交互に複数回繰り返し積層してもよく、この場合にも最上層は第1金属含有膜210になるようにしてバリヤ層214を形成するのは、上述した通りである。
【0115】
<本発明方法の第3実施例>
次に、本発明方法の第3実施例について説明する。先に説明した本発明方法の第1実施例及び第2実施例では、第1金属含有膜210と第2金属含有膜212とを積層してバリヤ層214を形成したが、これに限定されず、上記第1の金属と第2の金属と埋め込み金属の材料である第3の金属とを含む合金膜を形成してこれをバリヤ層としてもよい。
【0116】
図11はこのような本発明の成膜方法の第3実施例を説明するための説明図であり、図11(A)はフローチャートを示し、図11(B)はバリヤ層の構造の一例を示す断面図である。尚、図6及び図7に示す構成と同一部分については同一参照符号を付してその説明を省略する。図11(A)及び図11(B)に示すように、ここでは第1実施例における第1金属含有膜形成工程S1と第2金属含有膜形成工程S2とに変えて、上記したように第1の金属、例えばRuと凹部へ埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属、例えばMnと上記埋め込み金属の材料である第3の金属、例えばCuとを含む合金膜を形成する合金膜形成工程S1−2を行う。このように形成された合金膜220がバリヤ層214となる。このバリヤ層214は、構成材料にMn材料が含有されているのでCuに対するバリヤ性を有すると同時に、Cu元素も含まれていることからCuに対するシード性を有しており、後工程でCuメッキ処理を行う時には、Cuシード膜の形成を省略することができる。
【0117】
また、この合金膜220を形成するための処理装置としては、例えば図5に示す第5の処理装置12Eのシャワーヘッド部42に、Cuを含む原料ガスの供給系を追加して接続するようにすればよい。これによれば、Ru等の第1の金属とMn等の第2の金属とCu等の第3の金属とを含む合金膜よりなるバリヤ層を形成することができる。尚、上記各実施形態では、第1の金属としてRuを用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、他の金属例えばFe、Co、Ni、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ti、Ta、Zr、W、Al、V、Crとよりなる群から選択される1つ或いはこれらの合金も用いることができる。
【0118】
また上記各実施例では、熱CVD及び熱ALDによる成膜方法を例にとって説明したが、これに限定されず、プラズマCVD、プラズマALD、紫外線やレーザ光を用いた光CVD、光ALD等による成膜方法を用いてもよい。
【0119】
また、上記Mn含有原料を用いた有機金属材料としては、Cp Mn[=Mn(C ]、(MeCp) Mn[=Mn(CH ]、(EtCp) Mn[=Mn(C ]、(i−PrCp) Mn[=Mn(C ]、MeCpMn(CO) [=(CH )Mn(CO) ]、(t−BuCp) Mn[=Mn(C]、CH Mn(CO) 、Mn(DPM) [=Mn(C1119]、Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11 )]、Mn(acac) [=Mn(C ]、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(acac) [=Mn(C ]、Mn(hfac) [=Mn(C HF ]、((CH Cp Mn[ =Mn((CH ]、[Mn(iPr−AMD)][=M n(CNC(CH)NC]、[Mn(tBu−AMD)][=Mn(CNC(CH)NC]よりなる群から選択される1以上の材料を用いることができる。また有機金属材料の他にも、金属錯体材料を用いることができる。
【0120】
また、ここでは下地膜である絶縁層1としてSiOC膜を用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、膜中にO(酸素)またはC(炭素)を含む層間絶縁層として用いられるLow−k(低比誘電率)材料であるSiOC膜とSiCOH膜とSiCN膜とポーラスシリカ膜とポーラスメチルシルセスキオキサン膜とポリアリレン膜とSiLK(登録商標)膜とフロロカーボン膜とよりなる群から選択される1つ以上の膜により形成する場合もある。
【0121】
また、ここで説明した各処理装置は単に一例を示したに過ぎず、例えば加熱手段として抵抗加熱ヒータに代えてハロゲンランプ等の加熱ランプを用いるようにしてもよいし、熱処理装置は枚葉式のみならずバッチ式のものであってもよい。
【0122】
更には、熱処理による成膜に限定されず、例えばシャワーヘッド部42、134を上部電極とし、載置台156を下部電極として両電極間に高周波電力を必要に応じて印加してプラズマを立てるようにし、成膜時にプラズマによるアシストを加えるようにしてもよい。更に、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、これに限定されず、ガラス基板、LCD基板、セラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【0123】
また本願発明の成膜方法によれば、半導体ウエハ上に大小さまざまのトレンチ、ホールが混在していても、全ての凹部に対して十分に薄くて均一なバリヤ層が形成できる。このためCu多層配線において、下層のローカル配線から上層のグローバル配線に亘り本発明の技術を適用することができ、Cu多層配線の微細化が可能となる。これにより得られる効果として、半導体装置(デバイス)の高速化、微細化などにより、小型でありながら高速で信頼性のある電子機器を作ることが可能となる。
【符号の説明】
【0124】
1 絶縁層
2 凹部
3 配線層(金属層)
10 処理システム
12A〜12D 処理装置
14 共通搬送室
20 搬送機構
34 システム制御部
36 記憶媒体
42 シャワーヘッド部(ガス導入手段)
88 原料ガス供給系(第1金属:Ru)
100 原料(Ru:第1金属含有原料)
131 原料ガス供給系(第2金属:Mn)
132 処理容器
134 シャワーヘッド部(ガス導入手段)
145 原料(Mn:第2金属含有原料)
156 載置台
210 第1金属含有膜(Ru膜)
212 第2金属含有膜(MnOx膜、Mn膜)
214 バリヤ層
216 埋め込み金属(Cu)
220 合金膜
W 半導体ウエハ(被処理体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す成膜方法において、
第1の金属を含む第1金属含有膜を形成する第1金属含有膜形成工程と、
前記第1金属含有膜形成工程の後に行われ、前記凹部に埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属を含む第2金属含有膜を形成する第2金属含有膜形成工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記第1金属含有膜形成工程と前記第2金属含有膜形成工程とは交互に行われて、最後に前記第1金属含有膜形成工程が行われることを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項3】
底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す成膜方法において、
第1の金属と、前記凹部に埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属と、前記埋め込み金属の材料である第3の金属と、を含む合金膜を形成する合金膜形成工程を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項4】
前記第1金属含有膜形成工程と前記第2金属含有膜形成工程とは同一の処理容器内で連続的に行われることを特徴とする請求項1又は2記載の成膜方法。
【請求項5】
前記凹部内を前記埋め込み金属で埋め込む埋め込み工程を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記絶縁層は、SiOC膜とSiCOH膜とSiCN膜とポーラスシリカ膜とポーラスメチルシルセスキオキサン膜とポリアリレン膜とSiLK(登録商標)膜とフロロカーボン膜とよりなる群から選択される1つ以上の膜よりなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記第1の金属は、Ru、Fe、Co、Ni、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ti、Ta、Zr、W、Al、V、Crよりなる群から選択される1以上の元素であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記第2の金属は、マンガン(Mn)よりなり、該マンガンを含む有機金属材料は、Cp Mn[=Mn(C ]、(MeCp) Mn[=Mn(CH ]、(EtCp) Mn[=Mn(C ]、(i−PrCp) Mn[=Mn(C ]、MeCpMn(CO) [=(CH)Mn(CO) ]、(t−BuCp ) Mn[=Mn(C ]、CH Mn(CO) 、Mn (DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11 )]、Mn(acac) [=Mn(C ]、Mn(DPM)[=Mn(C1119]、Mn(aca c)[=Mn(C]、Mn(hfac)[=Mn(CHF ]、((CHCp)Mn[=Mn((CH]、[Mn(iPr−AMD)][=Mn(CNC(CH)NC]、[Mn(tBu−AMD)][=Mn(CNC(CH) NC]よりなる群から選択される1以上の材料であることを特徴とす る請求項1乃至7のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記埋め込み金属は、銅であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項10】
底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体の前記凹部内を埋め込み金属で埋め込む際に前記埋め込み金属の下層に介在されるバリヤ層において、
第1の金属を含む第1金属含有膜と、
前記第1金属含有膜上に形成されて前記埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属を含む第2金属含有膜とよりなることを特徴とするバリヤ層。
【請求項11】
前記第1金属含有膜と前記第2金属含有膜とは交互に積層されており、最上層は前記第1金属含有膜になされていることを特徴とする請求項10記載のバリヤ層。
【請求項12】
底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体の前記凹部内を埋め込み金属で埋め込む際に前記埋め込み金属の下層に介在されるバリヤ層において、
第1の金属と、前記埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属と、前記埋め込み金属の材料である第3の金属と、を含む合金膜よりなることを特徴とするバリヤ層。
【請求項13】
底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す処理システムにおいて、
前記被処理体の表面に第1の金属を含む第1金属含有膜を形成する処理装置と、
前記被処理体の表面に前記凹部に埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属を含む第2金属含有膜を形成する処理装置と、
前記被処理体の表面に前記埋め込み金属の材料である第3の金属の薄膜を形成する処理装置と、
前記各処理装置が連結された共通搬送室と、
前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、
請求項1、2、4乃至9のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、
を備えたことを特徴とする処理システム。
【請求項14】
底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す処理システムにおいて、
前記被処理体の表面に第1の金属を含む第1金属含有膜を形成する成膜処理と前記凹部に埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属を含む第2金属含有膜を形成する成膜処理とを行う処理装置と、
前記被処理体の表面に前記埋め込み金属の材料である第3の金属の薄膜を形成する処理装置と、
前記各処理装置が連結された共通搬送室と、
前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、
請求項1、2、4乃至9のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、
を備えたことを特徴とする処理システム。
【請求項15】
底面に金属層が露出する凹部を有する絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す処理システムにおいて、
前記被処理体の表面に第1の金属と、前記凹部に埋め込まれる埋め込み金属に対してバリヤ性を有する第2の金属と、前記埋め込み金属の材料である第3の金属と、を含む合金膜を形成する処理装置と、
前記処理装置が連結された共通搬送室と、
前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、
請求項3記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、
を備えたことを特徴とする処理システム。
【請求項16】
請求項13記載の処理システムを用いて請求項1、2、4乃至9のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように制御するコンピュータに読み取り可能なプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体。
【請求項17】
請求項14記載の処理システムを用いて請求項1、2、4乃至9のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように制御するコンピュータに読み取り可能なプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体。
【請求項18】
請求項15記載の処理システムを用いて請求項3項に記載の成膜方法を実施するように制御するコンピュータに読み取り可能なプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体。
【請求項19】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の成膜方法によって形成された膜構造を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項20】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の成膜方法によって形成された膜構造を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−1568(P2011−1568A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142964(P2009−142964)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】