説明

パターン形成方法

【課題】良好な形状を有する微細なパターンを得ることのできるダブルパターニングを用いたパターン形成方法を提供することにある。
【解決手段】基板101上に下層膜102、中間層膜103を形成した後、第1のレジスト膜104を用いた1回目のパターン露光、及び第2のレジスト膜107を用いた2回目のパターン露光で形成されたレジストパターンを中間層膜103に転写し、さらに中間層パターン103bをマスクに下層膜102をエッチングして下層膜パターン102bを形成する。ここで、下層膜102は、フッ素系の界面活性剤又は無機のナノパーティクルを添加物として含み、酸素系プラズマに対する耐性が付与されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体製造等におけるパターン形成方法に関し、特に、ダブルパターニングを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の大集積化・ダウンサイジングに伴い、リソグラフィ技術の開発の加速が望まれている。現在は、水銀ランプ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ等を光源とする光リソグラフィによりパターン形成が行われている。さらに短波長化したF2レーザの使用も検討されたが、露光装置やレジストの課題のために現在では開発が中止されている。
【0003】
このような状況から、最近、従来の露光波長を用いてより微細化を進めるために、ダブルパターニングと呼ばれる方法が提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。この方法は、所望のマスクパターンを2枚のフォトマスクに分割して露光することにより、パターンコントラストを向上させるというものである。
【0004】
リソグラフィの解像度は、k1・λ/NA(k1:プロセス定数、λ:露光波長、NA:露光装置の開口数)で定義されるが、ダブルパターニングによれば、パターンコントラストの向上がk1値を大きく低減する効果となることから、同じ露光波長を用いても解像度を大きく向上させることができる。
【0005】
以下、従来のダブルパターニングを用いたパターン形成方法について、図8(a)〜(d)、図9(a)〜(d)、図10(a)〜(b)を参照しながら説明する。
【0006】
まず、図8(a)に示すように、半導体基板201上に、膜厚が0.12μm程度のハードマスク(例えば、シリコン窒化膜)202を形成する。
【0007】
次に、図8(b)に示すように、ハードマスク202上に、膜厚が0.15μm程度の第1のArFレジスト膜203を形成する。その後、第1のフォトマスク204を介して、NAが0.85であるArFエキシマレーザ光205を用いて1回目の露光を行う。露光後、第1のArFレジスト膜203は、ホットプレートにより約105℃の温度下で、約60秒間加熱される。
【0008】
次に、図8(c)に示すように、第1のArFレジスト膜203を、2.38wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド現像液を用いて現像を行い、第1のレジストパターン203aを形成する。
【0009】
次に、図8(d)に示すように、第1のレジストパターン203aをマスクに、ハードマスク202を、フッ素系ガス等を用いてエッチングを行い、第1のハードマスクパターン202aを形成する。
【0010】
次に、図9(a)に示すように、第1のレジストパターン203aを、酸素プラズマによるアッシングで除去した後、図9(b)に示すように、第1のハードマスクパターン202a上に、膜厚が0.15μm程度の第2のArFレジスト膜206を形成する。
【0011】
次に、図9(c)に示すように、第2のフォトマスク207を介して、NAが0.85のArFエキシマレーザ光205を用いて2回目の露光を行う。露光後、第1のArFレジスト膜203は、ホットプレートにより約105℃の温度下で、約60秒間加熱される。
【0012】
次に、図9(d)に示すように、第2のArFレジスト膜206を、2.38wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド現像液を用いて現像を行い、第2のレジストパターン206aを形成する。
【0013】
次に、図10(a)に示すように、第2のレジストパターン206aをマスクに、ハードマスク202を、フッ素系ガス等を用いてエッチングを行う。その後、図10(b)に示すように、第2のレジストパターン206aを、酸素プラズマによるアッシングで除去し、第2のハードマスクパターン202bを得る。
【0014】
このように、2回に分けたパターン露光、及びハードマスクのエッチングにより、微細な第2のハードマスクパターン202bが得られ、例えば、図11に示すように、ダブルパターニングにより形成された第2のハードマスクパターン202bを用いて、半導体基板201(または、半導体基板201上に形成された被エッチング膜(不図示))をドライエッチングすることにより、半導体基板201(または被エッチング膜)を微細加工することができる。
【非特許文献1】M. Maenhoudt et al., "Double Patterning scheme for sub-0.25 k1 single damascene structures at NA=0.75,λ=193nm", Proc. SPIE, vol.5754, 1508 (2005)
【非特許文献2】高 明天他,「フッ素樹脂の半導体用レジスト材料への応用」,The Chemical Times,No.3, P.6 (2003)
【特許文献1】特開2006−133712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したダブルパターニングにおいて、第1のハードマスクパターン202a上に、2回目の第2のArFレジスト膜206を塗布する際、下地である第1のハードマスクパターン202aの凹凸が大きいと、塗布特性が劣化する畏れがある。その場合、2回目のパターン露光における解像度が低下することにより、ダブルパターニングを採用しても、十分な解像度が得られない結果となる。
【0016】
そこで、本発明者等は、ハードマスク(中間層膜)の下に下層膜を設け、2回のパターン露光で形成されたレジストパターンを中間層膜に転写して中間層パターンを形成した後、さらに、中間層パターンを下層膜に転写することによって、所定のパターン(下層膜パターン)を形成する方法を提案している(特願2007−248783)。この方法によれば、中間層膜を従来のハードマスクよりも薄くすることができるため、2回目のパターン露光におけるレジスト塗布特性の劣化に起因する解像度の低下を抑制することができる。
【0017】
ところで、本願発明者等は、中間層膜の下に下層膜を設けた構成によるダブルパターニングを用いたパターン形成を検討する中、以下のような課題があることを見出した。以下、図12(a)〜(d)を参照しながら説明する。
【0018】
図12(a)は図8(d)に、図12(b)は図10(a)に、図12(c)は図10(b)にそれぞれ対応するもので、ハードマスク(中間層膜)202の下に下層膜210をさらに設けた点が、従来技術と異なる。
【0019】
図12(a)は、1回目のパターン露光によって形成された第1のレジストパターン203aを、酸素プラズマ220によるアッシングで除去する工程を示した図で、下層膜210の表面230aは、酸素プラズマ220に暴露されることになる。
【0020】
図12(b)は、2回目のパターン露光によって形成された第2のレジストパターン206aをマスクに、中間層膜202をエッチングして、中間層パターン202bを形成した後、第2のレジストパターン206aを、酸素プラズマ220によるアッシングで除去する工程を示した図で、下層膜210の表面230bは、酸素プラズマ220に暴露されることになる。
【0021】
ところで、第2のレジストパターン206aをアッシング除去する際、必ずオーバアッシングが加わることから、図12(c)に示すように、下層膜210の表面230aは、第1のレジストパターン203aのアッシング除去時の酸素プラズマ220の暴露に加えて、2重に酸素プラズマ220に暴露されることになる。
【0022】
この状態で、図12(d)に示すように、中間層パターン202bを下層膜210に転写するために、中間層パターン202bをマスクに下層膜210をエッチングして、下層膜パターン210bを形成する際、以下のような不具合が生じる。
【0023】
すなわち、中間層パターン202bに覆われていない下層膜210の表面230aと230bとでは、酸素プラズマによる暴露量に差があるため、表面状態が変化している。そのため、下層膜210をエッチングする際、エッチングレートに差が生じ、その結果、図12(d)に示すように、下層膜パターン210bのスペースAとBとの間で、寸法バラツキが生じるおそれがある。また、下層膜210の表面230aと230bとでは、オーバアッシングによるサイドエッチ量にも差が生じるため、下層膜パターン210bのスペースAとBとの間で、寸法シフト量に差が生じるおそれがある。加えて、酸素プラズマによる暴露量の差とは直接は関係しないが、図12(a)に示すように、第1のレジストパターン203aを除去した後、中間層パターン202a上に第2のレジスト膜206(不図示)を塗布する際、下層膜210の表面230aの酸素プラズマ220によるダメージに起因して、第2のレジスト膜206の膜厚にバラツキが生じるおそれがある。その結果、2回目のパターン露光において、第2のレジストパターン206aに寸法のバラツキが生じるおそれがある。
【0024】
このように、下層膜210の表面230a、230bの酸素プラズマの暴露量の差(加えて、下層膜210の表面230aの酸素プラズマによるダメージ)に起因するパターン寸法のバラツキ等の発生は、中間層膜202の下に下層膜210を設けた構成によるダブルパターニングにおいて、不可避的に生じ得る固有の課題といえる。
【0025】
本発明は、かかる知見に基づきなされたもので、その主な目的は、ダブルパターニング固有の上記課題を解決し、寸法バラツキの小さい微細なパターンを得ることのできるパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するために、本発明におけるパターン形成方法は、中間層膜の下に下層膜を設けた構成によるダブルパターニングにおいて、下層膜を酸素系プラズマに対して耐性のある有機物とするものである。下層膜に酸素系プラズマ耐性を付与することによって、下層膜の表面に加わる酸素プラズマの暴露量の差等による、その後の下層膜のエッチングへの影響を低減することができ、これにより、寸法バラツキの小さい微細なパターンを形成することができる。
【0027】
有機物からなる下層膜に、酸素系プラズマ耐性を付与するには、具体的には、下層膜にフッ素系の界面活性剤を添加する方法、または、下層膜に無機のナノパ−ティクルを添加する方法を採用し得る。なお、フッ素は表面の自由エネルギーが低いため(非特許文献2を参照)、フッ素系の界面活性剤は、下層膜の表面近傍に偏在する傾向が強く、そのため、下層膜のエッチング(下層膜パターンの形成)を阻害するような問題は生じない。また、無機のナノパーティクル(直径が数nm程度)も、下層膜内に分散されていれば、下層膜のエッチング(下層膜パターンの形成)を阻害するような問題は生じない。ここで、フッ素系の界面活性剤は、10〜30wt%の割合で下層膜に添加されていることが好ましい。また、無機のナノパーティクルは、5〜20wt%の割合で下層膜に添加されていることが好ましい。
【0028】
本発明に係わるパターン形成方法は、基板上に下層膜を形成する工程(a)と、下層膜の上に中間層膜を形成する工程(b)と、中間層膜の上に第1のレジスト膜を形成した後、該第1のレジスト膜に第1のパターンを有する第1のフォトマスクを介して露光および現像を行い、第1のレジストパターンを形成する工程(c)と、第1のレジストパターンをマスクに中間層膜をエッチングして、第1の中間層パターンを形成する工程(d)と、第1のレジスト膜を除去する工程(e)と、工程(e)の後、下層膜と第1の中間層パターンとの上に第2のレジスト膜を形成した後、該第2のレジスト膜に第2のパターンを有する第2のフォトマスクを介して露光および現像を行い、第2のレジストパターンを形成する工程(f)と、第2のレジストパターンをマスクに中間層膜をエッチングして、第2の中間層パターンを形成する工程(g)と、第2のレジスト膜を除去する工程(h)と、工程(h)の後に、第2の中間層パターンをマスクに下層膜をエッチングして、第1及び第2のパターンを有する下層膜パターンを形成する工程(i)とを含むパターン形成方法において、下層膜は、酸素系プラズマに対して耐性のある有機物からなり、工程(e)において、第1のレジスト膜は、酸素プラズマによるアッシングで除去されることを特徴とする。
【0029】
ここで、上記工程(c)又は工程(f)の少なくとも一方の工程において、第1のレジスト膜又は第2のレジスト膜の上に溶液を配した状態で液浸露光を行ってもよく、さらに、液浸露光を行う前に、第1のレジスト膜又は第2のレジスト膜の上にバリア膜を形成する工程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るパターン形成方法によれば、下層膜の表面に加わる酸素プラズマの暴露量の差等に起因するダブルパターニング固有のパターン寸法のバラツキ等を効果的に防止することができ、これにより、寸法精度の高い微細なパターンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、説明の簡略化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0032】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態におけるパターン形成方法について、図1(a)〜(c)、図2(a)〜(d)、図3(a)〜(d)、及び図4(a)〜(b)を参照しながら説明する。
【0033】
まず、図1(a)に示すように、半導体基板101の上に、膜厚が0.7μm程度の下層膜102を形成する。ここで、下層膜102は、有機膜からなり、例えば、炭化水素骨格を有する物質を熱架橋等により硬化させた有機材料を用いることができる。また、下層膜102には、パーフルオロアルキル基含有スルホン酸塩(フッ素系の界面活性剤)を15wt%の割合で添加している。
【0034】
次に、図1(b)に示すように、下層膜102の上に、膜厚が0.08μm程度の中間層膜103を形成する。中間層膜103はハードマスクとして機能する。ここで、中間層膜103は、例えば、SiO骨格、SiN骨格、SiON骨格等のシリコンを含む材料を用いることができる。
【0035】
次に、図1(c)に示すように、中間層膜103の上に、膜厚が0.15μm程度の第1のレジスト膜104を形成する。ここで、第1のレジスト膜104は、例えば、ArFエキシマレーザ用の化学増幅型レジストを用いることができる。
【0036】
次に、図2(a)に示すように、第1のパターンを有する第1のフォトマスク105を介して、NAが0.85であるArFエキシマレーザ光106により、1回目のパターン露光を行う。露光後、第1のレジスト膜104を、ホットプレートにより105℃の温度下で60秒間加熱する(露光後ベーク)する。
【0037】
次に、図2(b)に示すように、ベークされた第1のレジスト膜104に対して、2.38wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液(アルカリ性現像液)を用いて現像を行い、第1のレジスト膜104の未露光部よりなる第1のレジストパターン104aを形成する。
【0038】
次に、図2(c)に示すように、第1のレジストパターン104aをマスクとして、中間層膜103を、例えば、フッ素系ガスによりエッチングした後、図2(d)に示すように、第1のレジストパターン104aを酸素プラズマによるアッシングで除去して、第1の中間層パターン103aを形成する。
【0039】
ここで、フッ素系の界面活性剤が添加された下層膜102は、酸素系プラズマ耐性が付与されているため、下層膜102の表面が酸素プラズマに暴露されても、ダメージ等を受けることはない。
【0040】
次に、図3(a)に示すように、第1の中間層パターン103aの上に、膜厚が0.15μm程度の第2のレジスト膜107を形成する。ここで、第2のレジスト膜107は、第1のレジスト膜104と同じ材料を用いることができる。
【0041】
次に、図3(b)に示すように、第2のパターンを有する第2のフォトマスク108を介して、NAが0.85であるArFエキシマレーザ光106により、2回目のパターン露光を行う。露光後、第2のレジスト膜107を、ホットプレートにより105℃の温度下で60秒間、露光後ベークを行う。
【0042】
次に、図3(c)に示すように、ベークされた第2のレジスト膜107に対して、2.38wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液(アルカリ性現像液)を用いて現像を行い、第2のレジスト膜107の未露光部よりなる第2のレジストパターン107aを形成する。
【0043】
次に、図3(d)に示すように、第2のレジストパターン107aをマスクとして、第1の中間層パターン103aを、例えば、フッ素系ガスによりエッチングした後、図4(a)に示すように、第2のレジストパターン107aを酸素プラズマによるアッシングで除去して、第2の中間層パターン103bを形成する。
【0044】
ここでも、下層膜102の表面は酸素プラズマに暴露されるが、下層膜102に酸素系プラズマ耐性が付与されているため、ダメージ等を受けることはない。
【0045】
最後に、図4(b)に示すように、第2の中間層パターン103bをマスクとして、下層膜102を酸素系ガスでエッチングして、第1及び第2のパターンを有する下層膜パターン102bを形成する。
【0046】
本実施形態におけるパターン形成方法において、第2の中間層パターン103bが形成されていない下層膜102の表面は、2回のパターン露光で形成された第1及び第2のレジストパターン104a、107aをアッシング除去する際に、酸素プラズマに暴露されることになる。しかしながら、下層膜102は、フッ素系の界面活性剤酸素の添加により、酸素系プラズマ耐性が付与されているため、第2の中間層パターン103bをマスクに下層膜102をエッチングしても、パターン寸法のバラツキやパターン寸法のシフト等の問題は生じない。また、フッ素系の界面活性剤は、下層膜102の表面近傍に偏在する傾向が強いため、下層膜102のエッチングを阻害するようなことはなく、良好な形状の下層膜パターン102bを形成することができる。
【0047】
ここで、下層膜102に含まれるフッ素系の界面活性剤の添加量は、10〜30wt%の範囲にあることが好ましい。10wt%より少ない場合は、十分な酸素系プラズマ耐性が得られず、30wt%より多い場合には、下層膜102のエッチングを阻害する場合がある。
【0048】
フッ素系の界面活性剤としては、例えば、アニオン系フッ素系又はノニオン系フッ素系の界面活性剤を用いることができるが、これに限定されない。また、アニオン系フッ素系の界面活性剤としては、本実施形態で用いたパーフルオロアルキル基含有スルホン酸塩の他に、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩、パーフルオロアルキル基含有リン酸エステル等を、一または二以上を組み合わせて用いることができる。また、ノニオン系フッ素系の界面活性剤としては、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等を用いることができる。
【0049】
ところで、化学増幅型レジストにフッ素系の界面活性剤を添加する技術が特許文献1に記載されているが、これは、液浸露光技術において、解像度を上げる目的で、レジストの表面を疎水化することによって、レジストと液浸液との接触角を向上させるというもので、本発明における下層膜102にフッ素系の界面活性剤を添加する技術とは、全く目的、構成及び作用効果の異なる別異の技術である。
【0050】
図5は、本実施形態により形成した下層膜パターン102bを用いて、半導体基板101(または、半導体基板101上に形成された被エッチング膜(不図示))をドライエッチングしたときの断面図である。良好な形状を有する微細な下層膜パターン102bを用いることによって、半導体基板101(または被エッチング膜)も、良好な形状で微細加工することができる。
【0051】
なお、本発明により形成した下層膜パターン102bは、ドライエッチング用のマスクだけでなく、半導体装置の製造プロセスにおける種々の工程で使用されるマスク(例えば、イオン注入用のマスク等)に適用できることは勿論である。
【0052】
(第1の実施形態の変形例)
本発明におけるパターン形成方法に、液浸露光技術を適用することによって、ダブルパターニングの解像度をより向上させることができる。
【0053】
図6(a)、(b)は、第1の実施形態で説明したダブルパターニングの工程に液浸露光技術を適用した例を示した工程断面図で、(a)は、1回目のレジスト露光に、(b)は、2回目のレジスト露光に、それぞれ液浸露光を適用した工程断面図である。
【0054】
図6(a)は、図2(a)に対応した工程断面図で、第1のレジスト膜104の上に、例えば、パドル(液盛り)法により水よりなる液浸露光用の液体(液浸溶液)150を配し、ArFエキシマレーザ光106を、第1のフォトマスク105を介して第1のレジスト膜104に照射して、1回目のパターン露光を行うものである。
【0055】
図6(b)は、図3(b)に対応した工程断面図で、第2のレジスト膜107の上に、同じく、パドル法により水よりなる液浸溶液150を配し、ArFエキシマレーザ光106を、第2のフォトマスク108を介して第2のレジスト膜107に照射して、2回目のパターン露光を行うものである。
【0056】
このように、液浸露光技術を適用することにより、露光装置内のレンズと基板上のレジスト膜との間が、屈折率nの液体(液浸溶液)で満たされることになるために、露光装置のNA(開口数)がn・NAとなり、レジストの解像度が向上する。そのため、通常の露光技術を用いた場合に比べて、より良好な形状を有する微細パターンを形成することができる。
【0057】
ここで、液浸溶液150としては、例えば、水または酸性溶液等を用いることができる。酸性溶液としては、例えば、硫酸セシウム水溶液、リン酸水溶液等が用いられ、また、液浸溶液150に、界面活性剤などの添加物を含んでいてもよい。
【0058】
ところで、液浸露光技術を適用した場合、図6(a)、(b)に示すように、レジスト膜104、107上に液浸溶液150が配された場合、レジスト膜104、107からレジストの成分が液浸溶液150に溶出(染み出し)したり、逆に、液浸溶液150がレジスト膜104、107中に浸透(染み込み)するおそれがあり、いずれの場合も、解像度を劣化させる要因となる。
【0059】
そこで、このような場合の対策として、図7(a)、(b)に示すように、レジスト膜104、107上にバリア膜160を形成しておくことが有効である。図7(a)は、図1(c)に対応した工程断面図で、第1のレジスト膜104の上に、膜厚が0.1μm程度のバリア膜160を形成したもので、その後、図6(a)に示したような液浸露光を行う。また、図7(b)は、図3(a)に対応した工程断面図で、第2のレジスト膜107の上に、膜厚が0.1μm程度のバリア膜160を形成したもので、その後、図6(b)に示したような液浸露光を行う。
【0060】
ここで、バリア膜としては、例えば、フッ素を含むアルカリ可溶性の材料を用いることができる。また、バリア膜160を形成した後、バリア膜160の緻密性を向上させるために、ホットプレートで120℃の温度下で、約90秒間加熱を行ってもよい。なお、バリア膜160の緻密性が過度に向上すると、バリア膜160の溶解除去が困難になるために、適当な温度範囲で加熱することが好ましい。例えば、バリア膜160の緻密性を向上させるために、バリア膜160を加熱する適当な温度は、100〜150℃の範囲である。
【0061】
なお、上記の液浸露光、またはバリア膜160の形成は、1回目及び2回目のパターン露光の両方に適用してもよいし、あるいは、いずれか一方のパターン露光に適用しても勿論かまわない。
【0062】
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、下層膜102にフッ素系の界面活性剤を添加することによって、下層膜102の表面の酸素プラズマ暴露に起因するパターン寸法のバラツキ等の発生を防止したが、本実施形態においては、下層膜102に無機のナノパーティクルを添加することによって、第1の実施形態と同様の効果を奏するようにしたものである。
【0063】
本実施形態におけるパターン形成方法は、第1の実施形態で説明した方法と同様の方法を用いて行うことができ、以下、図1(a)〜(c)、図2(a)〜(d)、図3(a)〜(d)、及び図4(a)〜(b)を再び参照しながら説明する。なお、ここでは、第1の実施形態の説明と重複する部分については、詳細な説明は省略する。
【0064】
まず、図1(a)に示すように、半導体基板101の上に、膜厚が0.7μm程度の下層膜102を形成した後、図1(b)に示すように、下層膜102の上に、膜厚が0.08μm程度の中間層膜103を形成する。ここで、下層膜102には、無機(例えばSiO又はHfO等)のナノパーティクル(直径が約4nm)を8wt%の割合で添加している。
【0065】
次に、図1(c)に示すように、中間層膜103の上に、第1のレジスト膜の形成用材料を塗布して、膜厚が0.15μm程度の第1のレジスト膜104を形成する。
【0066】
次に、図2(a)に示すように、第1のパターンを有する第1のフォトマスク105を介して、NAが0.85であるArFエキシマレーザ光106により、1回目のパターン露光を行う。露光後、第1のレジスト膜104を、ホットプレートにより105℃の温度下で60秒間加熱する(露光後ベーク)する。
【0067】
次に、図2(b)に示すように、ベークされた第1のレジスト膜104に対して、2.38wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液(アルカリ性現像液)を用いて現像を行い、第1のレジスト膜104の未露光部よりなる第1のレジストパターン104aを形成する。
【0068】
次に、図2(c)に示すように、第1のレジストパターン104aをマスクとして、中間層膜103を、例えば、フッ素系ガスによりエッチングした後、図2(d)に示すように、第1のレジストパターン104aを酸素プラズマによるアッシングで除去して、第1の中間層パターン103aを形成する。
【0069】
次に、図3(a)に示すように、第1の中間層パターン103aの上に、第2のレジスト膜の形成用材料を塗布して、膜厚が0.15μm程度の第2のレジスト膜107を形成する。
【0070】
次に、図3(b)に示すように、第2のパターンを有する第2のフォトマスク108を介して、NAが0.85であるArFエキシマレーザ光106により、2回目のパターン露光を行う。露光後、第2のレジスト膜107を、ホットプレートにより105℃の温度下で60秒間、露光後ベークを行う。
【0071】
次に、図3(c)に示すように、ベークされた第2のレジスト膜107に対して、2.38wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液(アルカリ性現像液)を用いて現像を行い、第2のレジスト膜107の未露光部よりなる第2のレジストパターン107aを形成する。
【0072】
次に、図3(d)に示すように、第2のレジストパターン107aをマスクとして、第1の中間層パターン103aを、例えば、フッ素系ガスによりエッチングした後、図4(a)に示すように、第2のレジストパターン107aを酸素プラズマによるアッシングで除去して、第2の中間層パターン103bを形成する。
【0073】
最後に、図4(b)に示すように、第2の中間層パターン103bをマスクとして、下層膜102を酸素系ガスでエッチングして、第1及び第2のパターンを有する下層膜パターン102bを形成する。
【0074】
本実施形態におけるパターン形成方法において、第2の中間層パターン103bが形成されていない下層膜102の表面は、2回のパターン露光で形成された第1及び第2のレジストパターン104a、107aをアッシング除去する際に、酸素プラズマに暴露されることになる。しかしながら、下層膜102は、無機のナノパーティクルの添加により、酸素系プラズマ耐性が付与されているため、第2の中間層パターン103bをマスクに下層膜102をエッチングしても、パターン寸法のバラツキやパターン寸法のシフト等の問題は生じない。また、無機のナノパーティクルが下層膜102内に分散されていれば、下層膜102のエッチングを阻害するようなことはなく、良好な形状の下層膜パターン102bを形成することができる。
【0075】
ここで、下層膜102に含まれる無機のナノパーティクルの添加量は、2〜30wt%、より好ましくは、5〜20wt%の範囲である。5wt%より少ない場合は、十分な酸素系プラズマ耐性が得られず、20wt%より多い場合には、下層膜102のエッチングを阻害する場合がある。なお、本発明における「ナノパーティクル」とは、概ね10nm以下の粒子集合体をいう。
【0076】
なお、本実施形態においても、1回目及び/または2回目のパターン露光において、第1の実施形態の変形例で説明した液浸露光及び/またはバリア膜の形成を適用することは勿論可能である。
【0077】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態においては、レジスト露光をArFエキシマレーザ光で行ったが、それに限定されず、例えば、KrFエキシマレーザ光、Xe2レーザ光、F2レーザ光、KrArレーザ光、又はAr2レーザ光等を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係るダブルパターニングを用いたパターン形成方法によると、良好な形状を有する微細パターンを得ることができ、半導体装置の製造プロセス等において用いられる微細パターンの形成方法に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態におけるパターン形成方法を示した工程断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態におけるパターン形成方法を示した工程断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態におけるパターン形成方法を示した工程断面図である。
【図4】(a)〜(b)は、本発明の第1の実施形態におけるパターン形成方法を示した工程断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態におけるパターン形成方法で形成したパターンを用いて、半導体基板をエッチングする工程を示した工程断面図である。
【図6】(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態の変形例を示した図で、(a)は、1回目のパターン露光における液浸露光の工程を示した工程断面図、(b)は、2回目のパターン露光における液浸露光の工程を示した工程断面図である。
【図7】(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態の変形例を示した図で、(a)は、1回目のパターン露光前におけるバリア膜を形成する工程を示した工程断面図、(b)は、2回目のパターン露光前におけるバリア膜を形成する工程を示した工程断面図である。
【図8】(a)〜(d)は、従来のダブルパターニングを用いたパターン形成方法を示した工程断面図である。
【図9】(a)〜(d)は、従来のダブルパターニングを用いたパターン形成方法を示した工程断面図である。
【図10】(a)〜(b)は、従来のダブルパターニングを用いたパターン形成方法を示した工程断面図である。
【図11】従来のダブルパターニングを用いたパターン形成方法で形成したパターンを用いて、半導体基板をエッチングする工程を示した工程断面図である。
【図12】(a)〜(d)は、ダブルパターニングにおける課題を説明する工程断面図である。
【符号の説明】
【0080】
101 半導体基板
102 下層膜
102b 下層膜パターン
103 中間層膜
103a 第1の中間層パターン
103b 第2の中間層パターン
104 第1のレジスト膜
104a 第1のレジストパターン
105 第1のフォトマスク
106 ArFエキシマレーザ光
107 第2のレジスト膜
107a 第2のレジストパターン
108 第2のフォトマスク
150 液浸溶液
160 バリア膜
201 半導体基板
202 ハードマスク
202 中間層膜
202a 第1のハードマスクパターン
202a 中間層パターン
202b 第2のハードマスクパターン
202b 中間層パターン
203 第1のArFレジスト膜
203a 第1のレジストパターン
204 第1のフォトマスク
205 ArFエキシマレーザ光
206 第2のArFレジスト膜
206a 第2のレジストパターン
207 第2のフォトマスク
210 下層膜
210b 下層膜パターン
220 酸素プラズマ
230a、230b 下層膜の表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に下層膜を形成する工程(a)と、
前記下層膜の上に中間層膜を形成する工程(b)と、
前記中間層膜の上に第1のレジスト膜を形成した後、該第1のレジスト膜に第1のパターンを有する第1のフォトマスクを介して露光および現像を行い、第1のレジストパターンを形成する工程(c)と、
前記第1のレジストパターンをマスクに、前記中間層膜をエッチングして、第1の中間層パターンを形成する工程(d)と、
前記第1のレジスト膜を除去する工程(e)と、
前記工程(e)の後、前記下層膜と前記第1の中間層パターンとの上に第2のレジスト膜を形成した後、該第2のレジスト膜に第2のパターンを有する第2のフォトマスクを介して露光および現像を行い、第2のレジストパターンを形成する工程(f)と、
前記第2のレジストパターンをマスクに、前記中間層膜をエッチングして、第2の中間層パターンを形成する工程(g)と、
前記第2のレジスト膜を除去する工程(h)と、
前記工程(h)の後に、前記第2の中間層パターンをマスクに、前記下層膜をエッチングして、前記第1及び第2のパターンを有する下層膜パターンを形成する工程(i)と
を含むパターン形成方法において、
前記下層膜は、酸素系プラズマに対して耐性のある有機物からなり、
前記工程(e)において、前記第1のレジスト膜は、酸素プラズマによるアッシングで除去される、パターン形成方法。
【請求項2】
前記下層膜は、フッ素系の界面活性剤が添加された有機物からなる、請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記下層膜は、無機のナノパ−ティクルが添加された有機物からなる、請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記フッ素系の界面活性剤は、前記下層膜の表面近傍に偏在している、請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記フッ素系の界面活性剤は、10〜30wt%の割合で前記下層膜に添加されている、請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記フッ素系の界面活性剤は、アニオン系フッ素系又はノニオン系フッ素系の界面活性剤である、請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記アニオン系フッ素系の界面活性剤は、パーフルオロアルキル基含有スルホン酸塩、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩、及びパーフルオロアルキル基含有リン酸エステルからなる群から選択された1種以上の材料からなる、請求項6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記ノニオン系フッ素系の界面活性剤は、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物からなる、請求項6に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記無機のナノパーティクルは、5〜20wt%の割合で前記下層膜に添加されている、請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記無機のナノパーティクルは、SiO又はHfOのナノパーティクルである、請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記工程(c)又は前記工程(f)の少なくとも一方の工程において、前記第1のレジスト膜又は第2のレジスト膜の上に溶液を配した状態で液浸露光を行う、請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記液浸露光を行う前に、前記第1のレジスト膜又は第2のレジスト膜の上にバリア膜を形成する工程をさらに含む、請求項11に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記バリア膜を形成した後、該バリア膜を加熱する工程をさらに含む、請求項12に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
前記溶液は、水又は酸性溶液である、請求項11に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記酸性溶液は、硫酸セシウム水溶液又はリン酸水溶液である、請求項14に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記バリア膜を構成するポリマーは、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸、又はポリビニールヘキサフルオロイソプロピルアルコールである、請求項12に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
前記工程(c)又は前記工程(f)において行う露光は、KrFエキシマレーザ光、Xeレーザ光、ArFエキシマレーザ光、Fレーザ光、KrArレーザ光、又はArレーザ光を用いて行われる、請求項1又は11に記載のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−94146(P2009−94146A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261036(P2007−261036)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】