説明

プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法

【課題】万が一シャワープレートが割れても、毒性ガスが装置外部に放出するのを防止することができるプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供する。
【解決手段】チャンバー1とスペーサ1bとアッパープレート1aとから構成される処理容器の上部開口を閉鎖するようにシャワープレート7を配置し、シャワープレート7の開口部9からチャンバー1内にプラズマ励起用ガスを放射する。シャワープレート7の外側に配置されたスロットアンテナ12にマイクロ波を供給してプラズマを発生し、スペーサ1bの内壁と、シャワープレート7の外周面との間の第1の隙間16、スロットアンテナ12の放射面と誘電体カバープレート6との間の第2の隙間19の大気をガス排気口18,22からガス吸引装置28により吸引し、ガス除害装置29により毒性ガスを除害することにより、シャワープレート7が割れても有毒な毒性ガスがプラズマ処理装置50の周辺に放出されることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロ波を用いて半導体基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板をプラズマ処理するマイクロ波プラズマ処理装置は、特開2002−299331号公報(特許文献1)に記載されているように、チャンバーを有し、チャンバー内には被処理基板を保持するサセプタが配置されている。チャンバー内には、サセプタ上の被処理基板に対向する位置に、シャワープレートが配置されている。シャワープレートは、アルミナなどの低損失誘電体よりなり、プラズマガスを噴出するための多数の開口部を形成した板状の誘電体窓本体と、同じく低損失誘電体よりなり、誘電体窓本体の上側に配置される誘電体カバープレートとを含む。
【0003】
シャワープレートは、外部から供給されたArやKr等のプラズマ励起用ガスを開口部からチャンバー内部の空間に、実質的に一様な濃度で放出する。チャンバーには、さらに誘電体カバープレートの上側に、ラジアルラインスロットアンテナが設けられている。ラジアルラインスロットアンテナを通して外部のマイクロ波源からのマイクロ波がチャンバー内に放射され、チャンバー内の空間に放出されたプラズマ励起用ガスを励起する。誘電体カバープレートとラジアルラインスロットアンテナの放射面との間の隙間は大気圧に保たれる。
【0004】
かかるラジアルラインスロットアンテナを用いることにより、誘電体窓本体直下の空間に均一な高密度プラズマが形成される。このようにして形成された高密度プラズマは電子温度が低く、そのため被処理基板にダメージが生じることがなく、またチャンバーの内壁のスパッタリングに起因する金属汚染が生じることもない。また、高密度であるため、成膜などの基板処理も効率的に、高速にできる。
【特許文献1】特開2002−299331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被処理基板の大型化に伴い、プラズマ処理装置も大型化しており、誘電体窓本体と誘電体カバープレートとを含むシャワープレートなども大面積化している。シャワープレートは、Al、AlN,SiOなどの誘電体で形成される。処理装置内は減圧に保たれるので大面積化のシャワープレートには、より大きな鉛直下向きの力が生じている。そこに、外部からの衝撃や、熱衝撃等が加わると割れる危険性がより高くなる。
【0006】
このようなシャワープレートが割れた際、誘電体窓本体は誘電体カバープレートによって覆われているが、誘電体カバープレートとチャンバーの内壁部との間には隙間が存在するので、その隙間を介して処理容器内のプラズマ励起用ガスおよびチャンバー内に供給される処理ガス(成膜用ガス)が誘電体カバープレートとラジアルラインスロットアンテナの放射面との間の隙間に漏れてしまう。この間の隙間は、大気に連通しており、処理容器内のガスがプラズマ処理容器外に放出されるおそれがある。
【0007】
特に、シャワープレートに供給されるプラズマ励起用ガスの圧力は数百Torrと高いので、シャワープレートが割れたときのガス漏洩量が非常に多くなる。また、成膜用のガスやクリーニングガスは、毒性が非常に高いので、シャワープレートが割れて毒性ガスが装置外に漏れると極めて危険である。
【0008】
この発明の目的は、万が一シャワープレートが割れても、毒性ガスが装置外部に放出するのを防止することができるプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のプラズマ処理装置は、上部開口を有する処理容器と、処理容器の上部開口を密封するように、その外周面が処理容器の内壁との間に第1の隙間を有して配置される天板と、天板との間に第2の隙間を有して配置され、天板を覆うカバー部材と、天板とカバー部材との間の第2の隙間に配置され、天板に電磁エネルギーを供給して天板の下部にプラズマを発生させる電磁エネルギー供給手段と、処理容器内の天板の下部にガスを分配するガス分配手段と、第1の隙間および第2の隙間の少なくともいずれか一方に処理容器外へ向かう気流を生成する気流生成手段とを備える。
【0010】
この発明では、処理容器の内壁と天板の外周面との間の第1の隙間と、天板とカバー部材との間の第2の隙間の少なくともいずれか一方に、処理容器外に向かう気流を生成するようにしたので、天板の破損などによりガスが第1または第2の隙間に漏れても装置外部にガスが放出されるのを防止できる。
【0011】
好ましくは、処理容器は、第1の隙間に連通する第1の排気口を含み、カバー部材は、第2の隙間に連通する第2の排気口を含み、気流生成手段は、第1の排気口に向かう気流と、第2の排気口に向かう気流とが同じ流量になるように調整する流量調整手段を含む。
【0012】
第1および第2の排気口に向かう気流が同じ流量になるように調整することにより、第1および第2の隙間間に圧力差が生じることがない。
【0013】
好ましくは、気流生成手段は、第1の隙間内および第2の隙間内を弱負圧にしていずれかに漏れたガスを含む気流を吸引する吸引手段と、漏れたガスから毒性ガスを除害するガス除害手段とを含む。
【0014】
漏れた毒性ガスを除害することにより、周辺の環境を悪化させることがない。
【0015】
好ましくは、ガス分配手段は、天板内に形成され、処理容器内にガスを分配するための複数の開口と、複数の開口にガスを供給するための供給溝とを含んでいるとよい。
【0016】
ガスを供給溝から複数の開口を介して処理容器内に分配できるようになる。
【0017】
好ましくは、天板は、ガス分配溝と、複数の開口とが形成された誘電体本体と、誘電体本体を覆う誘電体カバー部材とを含んでいてもよい。
【0018】
天板にガス分配機能を持たせることができる。
【0019】
好ましくは、第1の排気口は、処理容器の側壁に形成されて第1の隙間に連通する。
【0020】
第1の隙間にガスが漏れても第1の排気口から排気できる。
【0021】
好ましくは、電磁エネルギー供給手段は、天板上方に配置され、電磁エネルギーを天板ヘ透過して処理容器内に供給し、天板の下部にプラズマを発生させる平板状アンテナを含み、第2の排気口は、平板状アンテナと天板との対向する第2の隙間に連通し、吸引手段によって吸引される。
【0022】
電磁エネルギーを平板状アンテナに供給することにより、天板の下部にプラズマを発生できる。
【0023】
好ましくは、平板状アンテナには、複数のスロットが形成されており、平板状アンテナに内側導体が接続され、第2の排気口に連通する開口が形成される外側導体とを備える同軸導波管を含む。
【0024】
同軸導波管によりマイクロ波を平板状アンテナに供給して、天板の下部にプラズマを発生できる。
【0025】
好ましくは、電磁エネルギー供給手段は、天板上方に配置され、高周波信号によって発生する変動磁場により、プラズマ内部に渦電流によってジュール熱を発生させることによって得られる高温のプラズマを天板の下部に発生させる渦巻状に巻回された平板状コイルを含み、第2の排気口は、天板とカバー部材との間に形成される第2の隙間に連通し、吸引手段によって吸引される。
【0026】
この例では、天板の下部に誘導結合プラズマを発生できる。
【0027】
好ましくは、処理容器は、電磁エネルギー供給手段と天板との対向する第1の隙間に連通して空気を吸引する第1の吸引口を含む。
【0028】
第1の吸引口から第1の隙間を介して第1の排気口に流れる気流を生成できる。
【0029】
好ましくは、カバー部材は、天板とカバー部材との間に形成される第2の隙間に連通して空気を吸引する第2の吸引口を含む。
【0030】
第2の吸引口から第2の隙間を介して第2の排気口に流れる気流を生成できる。
【0031】
この発明の他の局面は、プラズマ処理方法であって、被処理基板が載置された、処理容器内に、電磁エネルギーを供給する工程と、処理容器内にガスを流して、電磁エネルギーにより励起されたガスを利用して被処理基板を処理する工程と、少なくとも処理する工程の間、処理容器と、処理容器に対向する天板との間の隙間に、処理容器外へ向かう気流を生じさせる工程とを含む。
【0032】
少なくとも処理中は、処理容器と、処理容器に対向する天板との間の隙間に気流を生じさせるようにしたので、天板などの破損により処理容器内のガスが漏れても装置外に放出されるのを防止できる。
【発明の効果】
【0033】
この発明によれば、処理容器の内壁と、天板の処理容器の内壁に対向する面との間の第1の隙間および天板とカバー部材との間の第2の隙間の少なくともいずれか一方に、処理容器外に向かう気流を生成するようにしたので、天板が破損してガスが隙間内に漏れても処理容器外の所定の場所に回収でき、装置外に放出されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1はこの発明の一実施形態におけるプラズマ処理装置30を示す断面図であり、図2は図1に示したスロットアンテナの平面図である。
【0035】
図1において、プラズマ処理装置50は、上部が開口された処理容器を構成する、チャンバー1と、スペーサ1bと、アッパープレート1aとを含み、チャンバー1の内壁には、処理ガス供給孔30が形成されている。処理容器としては電磁エネルギーとしてのマイクロ波が漏れることがないような金属(例えば、アルミ合金)で形成される。チャンバー1の上面と、スペーサ1bの下面は、シールリング5によって、それぞれが密に接触していて、それぞれの接触面から処理ガスが漏れないように構成されている。
【0036】
チャンバー1内には、被処理基板2を保持するためのサセプタ3が配置されている。チャンバー1内の均一なガスの排気を実現するために、サセプタ3の周囲にはリング状に空間1Aが形成されており、ガスは下方に排気される。チャンバー1上には、サセプタ3上の被処理基板2に対応する位置に、チャンバー1の外壁の一部として、低損失誘電体よりなる誘電体窓本体4がシールリング5を介してスペーサ1bに保持されるように配置されている。
【0037】
誘電体窓本体4の外側には、同じく低損失誘電体よりなる誘電体カバープレート6が配置されている。誘電体窓本体4と誘電体カバープレート6とによって、天板として作用するシャワープレート7が構成されている。シャワープレート7によりシールリング5を介してスペーサ1bの開口部が密閉されて空間1Bのガスが上方に漏れないようにされている。
【0038】
誘電体窓本体4にはその上面にガス拡散溝8が形成されており、下面側に複数の開口部9が形成されている。複数の開口部9のそれぞれはガス拡散溝8に連通するように形成されている。ガス拡散溝8には、外部に配置されたガス供給装置10からArやKr等のプラズマ励起用ガスが供給されている。複数の開口部9には、それぞれガス拡散溝8に供給されるプラズマ励起用ガスと、誘電体窓本体4直下の空間1Bとの間の圧力に差を形成するために、細孔や多孔体などが形成された差圧形成機構11が充填されてもよい。
【0039】
プラズマ励起用ガスは、ガス供給装置10からガス拡散溝8を介して開口部9に供給され、差圧形成機構11により差圧が形成され、開口部9からチャンバー1内部の誘電体窓本体4直下の空間1Bに、実質的に一様な濃度で放出される。なお、ガス拡散溝8内のプラズマ励起用ガスが漏れないように、誘電体窓本体4と誘電体カバープレート6との接触面はシールリング5によってシールされている。シャワープレート7をスペーサ1bに固定するために、スペーサ1bの上面と誘電体カバープレート6上の外縁とを覆うようにアッパープレート1aが配置されている。アッパープレート1aと誘電体カバープレート6との接触面もシールリング5によってシールされている。
【0040】
さらに、誘電体カバープレート6の外側に、第2の隙間19を介して、電磁エネルギー供給手段として作動する放射面を有するスロットアンテナ12が設けられている。スロットアンテナ12は、外部のマイクロ波源(図示せず)に同軸導波管13を介して接続されており、マイクロ波源から供給される、例えば2.45GHzのマイクロ波により、空間1Bに放出されたプラズマ励起用ガスを励起し、処理ガスをラジカル化する。
【0041】
スロットアンテナ12は、ラジアルラインスロットアンテナであり、図2に示すように、同軸導波管13の内側導波管132に接続された平坦なディスク状のアンテナ本体12aを含み、アンテナ本体12aには、多数のスロット12bおよびこれに直交する多数のスロット12cが形成されている。アンテナ本体12aの上側には、厚さが一定の誘電体膜よりなる遅波板14が挿入されている。スロットアンテナ12と遅波板14は、カバー部材として作用するプレートカバー15に固定されて、アッパープレート1aの上部開口を塞ぐように固定される。アッパープレート15は、誘電体カバープレート6との間に所定の高さの隙間を構成する。プレートカバー15は、遅波板14とスロットアンテナ12とを覆ってスロットアンテナ12を冷却するものであり、内部に冷媒が供給されている。
【0042】
スペーサ1bの内壁と、この内壁に対向する誘電体窓本体4の外周面および誘電体カバープレート6の外周面との間には第1の隙間16が存在し、この第1の隙間16は、スペーサ1bに形成された第1の吸引口としての大気吸引口17と、第1の排気口としてのガス排気口18とに連通している。スロットアンテナ12の放射面と、この放射面に対向する誘電体カバープレート6の上面との間およびアッパープレート1aの内壁と、この内壁に対向するスロットアンテナ12の外周面および遅波板14の外周面との間には微小な第2の隙間19が存在している。第2の隙間19は、プレートカバー15の上部に形成された第2の吸引口としての大気吸引口20に連通している。
【0043】
さらに、プレートカバー15の下面と、この下面に対向する遅波板14の上面との間には隙間21があり、この隙間21は同軸導波管13の外側導波管131と内側導波管132との間の隙間から外側導波管131に形成されたガス排気口22に連通している。プレートカバー15には、同軸導波管13の内側導波管132が貫通する孔が形成されており、この孔は第2の排気口として作用する。なお、第2の隙間19は、スロットアンテナ12のスロット12b,12c、スロットアンテナ12と遅波板14との接触面のわずかな隙間から遅波板14と同軸導波管13の内側導波管132とのわずかな隙間14aを介して隙間21と連通している。
【0044】
スペーサ1bに形成されたガス排気口18は排気管23を介してガス流量調整装置24に連結されており、導波管13の外側導波管131に形成されたガス排気口22は、排気管25を介してガス流量調整装置26に連結されている。ガス流量調整装置24,25は、流量調整手段として作動する。なお、ガス排気口22は導波管13の外側導波管131に形成することなく、第2の排気口としてプレートカバー15に直接形成してもよい。
【0045】
ガス流量調整装置24,26は、ガス排気口18,22から同じ流量で気流を生成できるように隙間16,19,21内を吸引するように吸引量を調整するために設けられている。ガス流量調整装置24,26で大気あるいはガスなどの気流の流量が調整された後、ガス吸引装置28により大気あるいはガスが吸引され、ガス除害手段として作動するガス除害装置29により有毒なガス成分が除害される。吸引手段として作動するガス吸引装置28は、各第1の隙間16内と、第2の隙間19,21内が弱負圧になるような吸引力で大気あるいはガスを吸引する。ガス吸引装置28と、ガス流量調整装置24,26とにより気流生成手段が構成される。
【0046】
なお、ガス流量調整装置24,26を設けることなく、大気吸引口17,20の開口サイズを調整するなどして流量が同じになるように構成してもよい。
【0047】
かかる構成のプラズマ処理装置50において、同軸導波管13を介して給電されたマイクロ波は、遅波板14内をスロットアンテナ12の半径方向に沿って進行するが、その際に遅波板14の作用により波長が圧縮される。半径方向に進行するマイクロ波の波長に対応してスロット12bおよび12cを同心円状に、かつ相互に直交するように形成しておくことにより、円偏波を有する平面波をアンテナ本体12aに実質的に垂直な方向に放射することができる。スロットアンテナ12から処理室内に放射されたマイクロ波により、ガス供給装置10からガス拡散溝8を介して複数の開口部9から空間1Bに供給されたプラズマ励起用ガスを励起する。このようにして形成された高密度プラズマは電子温度が低く、そのため被処理基板2にダメージが生じることがなく、またチャンバー1、スペーサ1bの内壁のスパッタリングに起因する金属汚染が生じることもない。
【0048】
チャンバー1、スペーサ1b内において、シャワープレート7と被処理基板2との間の空間1Bに、図示しない処理ガス供給源から処理ガス供給孔30に供給された処理ガスを供給する。このように処理ガスを空間1Bに放出することにより、放出された処理ガスは、空間1Bにおいて形成された高密度プラズマによりラジカル化され、被処理基板2上に、一様なプラズマ処理が、効率的かつ高速に、しかも被処理基板2および被処理基板2上の素子を損傷させることなく、エッチング処理や成膜処理などを行うことができる。
【0049】
一方、ガス吸引装置28は、ガス流量調整装置24,26と排気管23,25を介してガス排気口18,22から第1の隙間16内と、第2の隙間19,21内を吸引しているので、大気吸引口17,20から大気が吸引され、第1の隙間16内と、第2の隙間19,21内は大気に通じている。
【0050】
もし、誘電体窓本体4が割れると空間1Bに放出しているプラズマ励起用ガスや処理ガスがスペーサ1bの内壁と誘電体窓本体4の外周面および誘電体カバープレート6の外周面との間の第1の隙間16に流れ込む。また、誘電体窓本体4のみならず誘電体カバープレート6が割れると、プラズマ励起用ガスや処理ガスが誘電体カバープレート6とスロットアンテナ12との間の第2の隙間19に流れ込み、さらにスロットアンテナ12のスロット12b,12c、スロットアンテナ12と遅波板14との間のわずかな隙間から遅波板14と同軸導波管13の内側導波管132との間の隙間14aを介して隙間21に流れ込む。
【0051】
しかし、各第1の隙間16内と、第2の隙間19,21内の大気は、ガス吸引装置28によりガス流量調整装置24,26を介してガス排気口18,22から吸引されているので、たとえ各第1の隙間16内と、第2の隙間19,21内にプラズマ励起用ガスや処理ガスが流れ込んだとしても、そのプラズマ励起用ガスや処理ガスはガス吸引装置28により吸引され、ガス除害装置29により毒性ガスが除害される。したがって、誘電体窓本体4や誘電体カバープレート6が割れても毒性の強いガスが装置外へ放出されず、処理容器外の所定の場所に回収できるので、危険性をなくすことができるばかりでなく周囲の環境を汚染することもない。
【0052】
なお、ガス供給装置10によりプラズマ励起用ガスを流している間、ガス吸引装置28により第2の隙間19,21内の大気および漏れたガスを吸引して気流を生じさせるのがより好ましい。
【0053】
図3はこの発明の他の実施形態におけるプラズマ処理装置を示す断面図である。図1に示したプラズマ処理装置50は、マイクロ波をスロットアンテナ12を通してプラズマを発生させたのに対して、図3に示したプラズマ処理装置60は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、以下、ICPと称する。)を発生させる。ICPは、気体に高電圧をかけることによってプラズマ化させ、例えば、13.56MHzの高周波信号に基づく変動磁場により、そのプラズマ内部に渦電流によるジュール熱を発生させることによって高温のプラズマを発生させる。
【0054】
図3において、図1に示したスロットアンテナ12と、同軸導波管13と、遅波板14と、プレートカバー15とに代えて、電磁エネルギー供給手段として作動する電磁エネルギー放射アンテナ41と、プレートカバー42とが配置されている。それ以外の構成は図1と同じである。
【0055】
誘電体カバープレート6とプレートカバー42との間には隙間43が形成されており、その隙間43内であって、誘電体カバープレート6上に電磁エネルギー放射アンテナ41が配置されている。電磁エネルギー放射アンテナ41は、平板状コイルを渦巻き状に巻回したものである。平板状コイルに高周波信号を大電流で流すことによって、高電圧と高周波数の変動磁場を同時に得ることができ、シャワープレート7の下部の空間1Bに誘導結合プラズマを発生させることができる。
【0056】
プレートカバー42には、大気吸引口44と、ガス排気口45とが形成されており、ガス排気口45は排気管25を介してガス流量調整装置26に結合されている。大気吸引口44は第2の吸引口を構成し、ガス排気口45は第2の吸引口を構成している。また、この例においても、スペーサ1bの内壁と、この内壁に対向する誘電体窓本体4の外周面と、誘電体カバープレート6の外周面との間には第1の隙間16が形成されており、この第1の隙間16は大気吸引口17と、ガス排気口18とに連通している。
【0057】
もし、誘電体窓本体4が割れると空間1Bに放出されているプラズマ励起用ガスがスペーサ1bの内壁と誘電体窓本体4の外周面および誘電体カバープレート6の外周面との間の第1の隙間16に流れ込む。また、誘電体窓本体4のみならず誘電体カバープレート6が割れると、プラズマ励起用ガスが誘電体カバープレート6とプレートカバー42との間の隙間43に流れ込む。
【0058】
しかし、第1の隙間16内は、ガス吸引装置28によりガス流量調整装置24を介してガス排気口18から吸引されているので、たとえ第1の隙間16にプラズマ励起用ガスが流れ込んだとしても、ガス吸引装置2により吸引され、ガス除害装置29により毒性ガスが除害され、大気のみが放出される。また、隙間43内に流れ込んだプラズマ励起用ガスは、ガス排気口45からガス流量調整装置26を介してガス吸引装置28により吸引され、ガス除害装置29により毒性ガスが除害される。したがって、誘電体窓本体4や誘電体カバープレート6が割れても毒性の強いガスが処理容器外の所定の場所に回収されるので、プラズマ処理装置60の周辺に漏れることがなく、危険性をなくすことができる。
【0059】
なお、図1および図3に示した実施例では、誘電体窓本体4と、誘電体カバープレート6が分離された例について説明したが、誘電体窓本体4と、誘電体カバープレート6とが一体になったものであってもよい。
【0060】
また、誘電体窓本体4と、誘電体カバープレート6とに代えて、従来の円板状の誘電体からなる天板を用い、天板の下部にプラズマ励起用ガスを噴出するガス分配手段を別個に設けたプラズマ処理装置において、天板が割れた場合にプラズマ励起用ガスが周辺に漏れるのを防止するようにしてもよい。
【0061】
さらに、図1および図3に示した実施例おいて、チャンバー1に第1の大気吸引口17を形成したが、特に大気吸引口17を形成しなくとも、アッパープレート1aとスペーサ1b外周側の接触面はシールリング5によりシールされていないので、この接触面から大気を吸引することは可能である。同様にして、図1に示したプレートカバー15の大気吸引口20を形成しなくともプレートカバー15と、アッパープレート1aとの接触面から大気を吸引することが可能である。さらに図3に示したプレートカバー42と、アッパープレート1aとの接触面から大気を吸引することも可能であるので、大気吸引口44を省略することは可能である。
【0062】
また、処理容器内を減圧に保つための図示しない排気装置がガス吸引装置28を兼ねていてもよい。
【0063】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
この発明のプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法は、発生するプラズマを用いて被処理基板をエッチング処理したり、皮膜処理したりするのに利用される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の一実施形態におけるプラズマ処理装置50を示す断面図である。
【図2】図1に示したスロットアンテナの平面図である。
【図3】この発明の他の実施形態におけるプラズマ処理装置60を示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 チャンバー、1a アッパープレート、1b スペーサ、2 被処理基板、3 サセプタ、4 誘電体窓本体、5 シールリング、6 誘電体カバープレート、7 シャワープレート、8 プラズマガス拡散溝、9 開口部、10 ガス供給装置、11 差圧形成機構、12 スロットアンテナ、12a アンテナ本体、12b,12c スロット、13 同軸導波管、14 遅波板、14a,16 第1の隙間、19,21 第2の隙間、15,42 カバープレート、17,20,44 大気吸気口、18,22,45 ガス排気口、23,25,27 排気管、24,26 ガス流量調整装置、28 ガス吸引装置、29 ガス除害装置、50,60 プラズマ処理装置、41 電磁エネルギー放射アンテナ、43 隙間、131 外側導波管、132 内側導波管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口を有する処理容器と、
前記処理容器の上部開口を密封するように、その外周面が前記処理容器の内壁との間に第1の隙間を有して配置される天板と、
前記天板との間に第2の隙間を有して配置され、前記天板を覆うカバー部材と、
前記天板と前記カバー部材との間の第2の隙間に配置され、前記天板に電磁エネルギーを供給して前記天板の下部にプラズマを発生させる電磁エネルギー供給手段と、
前記処理容器内の前記天板の下部にガスを分配するガス分配手段と、
前記第1の隙間および前記第2の隙間の少なくともいずれか一方に前記処理容器外へ向かう気流を生成する気流生成手段とを備える、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記処理容器は、前記第1の隙間に連通する第1の排気口を含み、
前記カバー部材は、前記第2の隙間に連通する第2の排気口を含み、
前記気流生成手段は、前記第1の排気口に向かう気流と、前記第2の排気口に向かう気流とが同じ流量になるように調整する流量調整手段を含む、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記気流生成手段は、
前記第1の隙間内および前記第2の隙間内を弱負圧にしていずれかに漏れたガスを含む気流を吸引する吸引手段と、
前記漏れたガスから毒性ガスを除害するガス除害手段とを含む、請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記ガス分配手段は、
前記天板内に形成され、前記処理容器内にガスを分配するための複数の開口と、
前記天板内に形成され、前記複数の開口に前記ガスを供給するための供給溝とを含む、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記天板は、
前記ガス分配溝と、前記複数の開口とが形成された誘電体本体と、
前記誘電体本体を覆う誘電体カバー部材とを含む、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第1の排気口は、前記処理容器の側壁に形成されて前記第1の隙間に連通する、請求項2ないし5のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記電磁エネルギー供給手段は、前記天板上方に配置され、電磁エネルギーを前記天板へ透過して前記処理容器内に供給し、前記天板の下部にプラズマを発生させる平板状アンテナを含み、
前記第2の排気口は、前記平板状アンテナと前記天板との対向する第2の隙間に連通し、前記吸引手段によって吸引される、請求項3ないし6のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記平板状アンテナには、複数のスロットが形成されており、
前記平板状アンテナに内側導体が接続され、前記第2の排気口に連通する開口が形成される外側導体とを備える同軸導波管を含む、請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記電磁エネルギー供給手段は、前記天板上に配置され、高周波信号によって発生する変動磁場により、プラズマ内部に渦電流によってジュール熱を発生させることによって得られる高温のプラズマを前記天板の下部に発生させる渦巻状に巻回された平板状コイルを含み、
前記第2の排気口は、前記天板と前記カバー部材との間に形成される第2の隙間に連通し、前記吸引手段によって吸引される、請求項3ないし6のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記処理容器は、前記電磁エネルギー供給手段と前記天板との対向する第1の隙間に連通して空気を吸引する第1の吸引口を含む、請求項1ないし9のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記カバー部材は、前記天板と前記カバー部材との間に形成される第2の隙間に連通して空気を吸引する第2の吸引口を含む、請求項1ないし10のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
被処理基板が載置された、処理容器内に、電磁エネルギーを供給する工程と、
前記処理容器内にガスを流して、前記電磁エネルギーにより励起された前記ガスを利用して前記被処理基板を処理する工程と、
少なくとも前記処理する工程の間、前記処理容器と、前記処理容器に対向する前記天板との間の隙間に、前記処理容器外へ向かう気流を生じさせる工程とを含む、プラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−283765(P2009−283765A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135553(P2008−135553)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】