説明

プラズマ処理装置及び光起電力素子の製造方法

【課題】均一な膜厚、膜質の膜を形成できるプラズマ処理装置、及び均一な膜厚、膜質を有する光起電力素子を提供する。
【解決手段】基板を保持することが可能な第1電極3と、第1電極と対向するように設置され、第1電極と対向する部分に複数のガス供給口4aが形成されるとともに高周波電力が印加される第2電極4とを備え、第2電極は、複数のガス供給口が同心円に沿って設けられると共に、隣接する同心円間の距離が内周側と外周側とで異なるプラズマ処理装置1を用いて、透明導電膜上に非晶質シリコン半導体または微結晶シリコン半導体を含む光電変換層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電力素子の製造方法及びプラズマ処理装置に関し、特に、互いに対向するように配置された第1電極および第2電極を備えたプラズマ処理装置及びそれを用いた光起電力素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板を保持することが可能な第1電極と、その第1電極と対向するように配置された第2電極とを備えた平行平板型のプラズマ処理装置およびプラズマ処理装置を用いた膜の製造方法が知られている。
【0003】
図7は、従来の平行平板型のプラズマ処理装置を示した概略図である。図8は、図7に示したプラズマ処理装置の第2電極104の平面図である。プラズマ処理装置101は、図7に示すように、真空チャンバ2内に、互いに対向するように設置された第1電極3と第2電極104とを備える。第1電極3には、第2電極104と対向する側に基板311を保持するための基板保持部3aが設けられる。また、第2電極104の第1電極3と対向する表面には、図8に示すように、原料ガスを供給するための複数のガス供給口104aが設けられる。ガス供給口104aは、第2電極104の第1電極3に対向する面内において、マトリックス状に設けられる。真空チャンバ2の一方の側面には、排気口2aが設けられるとともに、その排気口2aは、排気流量調整バルブ5を介して真空排気設備6に接続される。この真空排気設備6は、ターボ分子ポンプ(TMP)6aおよび油回転ポンプ(RP)6bによって構成される。また、第2電極104のガス供給口104aは、原料ガス供給源7に接続される。
【0004】
上記したプラズマ処理装置101では、第2電極104の上面全体でプラズマが発生するとともに、そのプラズマにより原料ガスが分解される。第2電極104は、図8に示すように、第1電極3と対向する側に複数のガス供給口104aがマトリックス状に設けられ、隣接するガス供給口104aの距離は均等な間隔d’である。
【0005】
上記したプラズマ処理装置101の構成において、分解されなかった未反応ガス(原料ガス)や、原料ガスが分解されることにより生成される負イオン、悪性ラジカルおよびフレーク(負イオンの重合反応により生成される微粒子)などの副生成物は、第2電極104の側方に設けられた排気口2aにより排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−38200号公報
【特許文献2】特開2006−237490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のプラズマ処理装置101では、成膜種を生成するために用いられる原料ガスが、第2電極104に設けられた複数のガス供給口104aから第1電極3に保持された基板311へ向けて供給される。複数のガス供給口104aはマトリックス状に設けられるため、第1電極3に保持された基板311に対して均一な割合で原料ガスを供給することができる。この理由は、基板311の面内で均一な膜厚及び膜質を有する膜を生成するためである。しかしながら、従来のプラズマ処理装置101を用いて得られた膜の膜厚及び膜質は基板311の面内で均一とはならない場合がある。
【0008】
従来のプラズマ処理装置101を用いて製造されるものの例として、太陽電池などの光起電力素子が挙げられる。プラズマ処理装置101は、光起電力素子に含まれる微結晶シリコン半導体膜の生成に用いられる。プラズマ処理装置101を用いたこれまでの実験によれば、基板311の面内において中心から半径方向に沿って微結晶シリコン半導体膜の膜厚及び膜質が変化する傾向があることが確認された。つまり、基板311が方状の場合、中央付近では膜厚及び膜質が均一に形成されるが、外周付近、特に角部付近では膜厚及び膜質が不均一に形成される場合がある。このとき、外周付近に形成された微結晶Si膜と中央付近のものとで光電変換効率に差が生じるため、基板311上に形成された光起電力素子全体の光電変換効率が、光電変換効率の低い微結晶Si膜に律速されてしまうという問題があった。この現象は、1m×1mを超えるような大型の基板311を用いた場合により顕著となる。
【0009】
本願発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、生成される膜の膜厚および膜質が均一となるプラズマ処理装置を提供し、また、それを用いることによって膜の膜厚および膜質が均一となる光起電力素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
光起電力素子の製造方法に係る本願発明の特徴は、基板を保持することが可能な第1電極と、第1電極と対向するように設置され、第1電極と対向する部分に複数のガス供給口が形成されるとともに高周波電力が印加される第2電極とを備え、第2電極は、複数のガス供給口が同心円に沿って設けられると共に、隣接する同心円間の距離が内周側と外周側とで異なるプラズマ処理装置を用いた光起電力素子の製造方法であって、基板上に導電性を有する透明電極を形成するステップと、透明導電膜上にプラズマ処理装置を用いて非晶質シリコン半導体または微結晶シリコン半導体を含む光電変換層を形成するステップと、光電変換層上に導電性を有する裏面電極を形成するステップと、を備えることである。
【0011】
また、プラズマ処理装置に係る本願発明の特徴は、基板を保持することが可能な第1電極と、第1電極と対向するように設置され、第1電極と対向する部分に複数のガス供給口が形成されるとともに高周波電力が印加される第2電極とを備え、第2電極は、複数のガス供給口が同心円に沿って設けられると共に、隣接する同心円間の距離が内周側と外周側とで異なることである。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、プラズマ処理装置を用いて発生される活性化された原料ガスの密度を第2電極の平面内で変化させることが可能となる。これによって、プラズマ処理装置を用いて形成された膜の膜厚および膜質が不均一となることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理装置を示した概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理装置の第2電極の平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理装置の第2電極の断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理装置の第2電極の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理装置の第2電極の平面図である。
【図6】本発明を用いて製造された光起電力素子の断面図である。
【図7】従来のプラズマ処理装置を示した概略図である。
【図8】従来のプラズマ処理装置の第2電極の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜3を参照して、本発明の第1実施形態によるプラズマ処理装置について説明する
。プラズマ処理装置1は、真空チャンバ2と、真空チャンバ2内に設けられた第1電極3及び第2電極4と、真空チャンバ2の側方に設けられた排気口2aを介して接続された排気流量調整バルブ5及び真空排気設備6と、第2電極4に接続された原料ガス供給源7と、を含んで構成される。
【0015】
第1電極3は、プラズマ処理を施す基板311を保持する基板保持部3aを備える。基板311のうちプラズマ処理が施される表面と反対の面が第1電極3と接触する。第1電極3は、図示しない手段によって所定の電位に固定される。
【0016】
第2電極4は、複数のガス供給口4aを備える。ガス供給口4aには、後述する原料ガス供給源7から原料ガスが供給される。第2電極4には高周波電力が印加され、第1電極3に印加される電位との作用によってプラズマを発生させ、ガス供給口4aから供給される原料ガスを活性化する。活性化された原料ガスを第1電極3に保持された基板311に供給することによって、基板311の表面に原料ガスに応じた膜を生成することができる。
【0017】
排気流量調整バルブ5は、排気口2aと真空排気設備6との間に設けられ、真空チャンバ2から排気されるガスの流量を制御する。真空排気設備6は、例えばターボ分子ポンプ(TMP)6aと油回転ポンプ(RP)6bとの組み合わせによって構成することができる。真空排気設備6によって、未反応ガス、負イオン、悪性ラジカルおよびフレークなどの副生成物が、真空チャンバ2内から排出される。
【0018】
原料ガス供給源7は第2電極4に接続される。原料ガス供給源7から供給される原料ガスは、第2電極4に設けられた複数のガス供給口4aから基板311に向けて供給される。
【0019】
図2及び図3を参照して、第2電極4の構造について詳しく説明する。第1実施形態による第2電極4は、方形の平板に複数のガス供給口4aが設けられる。第2電極4は、例えば1.5m×1.5mのアルミニウム板を用いることができる。また、ガス供給口4aは、例えば直径が0.5mmの円とすることができる。
【0020】
複数のガス供給口4aは、同心円に沿って設けられる。図2に記載の第2電極4では、第2電極4の中心に設けられた1つのガス供給口4aが同心円の中心となる。1つの同心円に沿って設けられる複数のガス供給口4aについて、隣接するガス供給口4aを結んだ弧の長さはほぼ等しい。図2に記載のガス供給口4aは、隣接するガス供給口4aを結んだ弧の長さがdとなるように設けられる。一方、隣接する同心円の半径方向の距離は、内周側に比べて外周側の方が狭くなるように設定される。同心円の中心から同心円C(最内周の同心円)までの距離をr、同心円Cから同心円Cまでの距離をr、同心円Cから同心円Cまでの距離をr、同心円Cから同心円Cまでの距離をrとする。このとき距離r〜rには、「r>r>r>r」の関係が成立する。図2には図示されていないが、上記の規則に基づいて、第2電極4の一面にガス供給口4aが設けられる。
【0021】
図3は、図2のy−y’に沿った第2電極4の断面図である。同心円C、C、C及びCに設けられた複数のガス供給口4aは、隣接するガス供給口間の距離の関係がr>r>rとなるように設けられる。活性化領域20は、それぞれのガス供給口4aから供給された原料ガスのうちプラズマによって活性化された原料ガスの様子を示している。同心円C近傍に比べ、同心円C近傍の方が活性化された原料ガスの密度は高くなる。
【0022】
第1実施形態による第2電極4において、隣接するガス供給口4aを結んだ弧の長さはほぼ等しく、隣接する同心円の半径方向の距離が内周側に比べて外周側の方が狭くなるようにガス供給口4aが設けられる。このため、第2電極4の中央付近に比べ外周付近の方が原料ガスの供給量を多くすることができる。これによって、第2電極4の中央付近に比べ外周付近の方が活性化された原料ガスの密度を高くすることができる。
【0023】
図4には、第1実施形態による第2電極4の変形例が示されている。図4は、図2のy−y‘に沿った変形例による第2電極4の断面図である。変形例による第2電極4は、平面図は図2に記載のものと同様であるが、断面図が図3に記載のものと異なる。図3では、方形の平板にガス供給口4aを設けるのに対して、図4では、方形の平板に複数の凸部を設け、その凸部にガス供給口4aを設ける。
【0024】
ガス供給口4aが設けられた凸部について、先端部から底面までの距離hは、約10mmである。また、凸部の先端部は、根元部から先端部に向かって幅が小さくなるように形成される。これにより、凸部の先端部に電界をより集中させることが可能となるので、より高密度なプラズマを発生させることが可能となる。また、凸部に設けられたガス供給口4aは、隣接するガス供給口4a間で、活性化領域20がオーバラップするように配置されている。
【0025】
変形例による第2電極4を用いる場合、隣接する凸部の間に形成される凹部にガス吸引口4bを設けることが好適である。ガス吸引口4bは、図示しない真空排気設備に接続され、第2電極4の近傍に存在する未反応ガス、および、原料ガスが分解されることにより生成される負イオン、悪性ラジカルおよびフレークなどの副生成物を吸引する。ガス吸引口4bを設けることによって、プラズマ発生に寄与しない不要な副生成物を吸引することができる。
【0026】
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態によるプラズマ処理装置について説明する。第1実施形態と第2実施形態とでは、第2電極4の構造が異なるが、その他の構造は同じである。以下には、第2電極4の構造について詳しく説明する。第2実施形態による第2電極4は、第1実施形態と同様に、方形の平板に複数のガス供給口4aが設けられるが、ガス供給口4aの配置が異なる。
【0027】
複数のガス供給口4aは、同心円に沿って設けられる。図5に記載の第2電極4では、第2電極4の中心に設けられた1つのガス供給口4aが同心円の中心となる。1つの同心円に沿って設けられる複数のガス供給口4aについて、隣接するガス供給口4aを結んだ弧の長さはほぼ等しい。図2に記載のガス供給口4aは、隣接するガス供給口4aを結んだ弧の長さがdとなるように設けられる。一方、隣接する同心円の半径方向の距離は、内周側に比べて外周側の方が広くなるように設定される。同心円の中心から同心円C(最内周の同心円)までの距離をr、同心円Cから同心円Cまでの距離をr、同心円Cから同心円Cまでの距離をr、同心円Cから同心円Cまでの距離をrとする。このとき距離r〜rには、「r<r<r<r」の関係が成立する。図5には図示されていないが、上記の規則に基づいて、第2電極4の一面にガス供給口4aが設けられる。
【0028】
第2実施形態による第2電極4は、隣接するガス供給口4aを結んだ弧の長さはほぼ等しく、隣接する同心円の半径方向の距離が内周側に比べて外周側の方が広くなるようにガス供給口4aが設けられる。このため、第2電極4の外周付近に比べ中央付近の方が原料ガスの供給量を多くすることができる。これによって、第2電極4の中央付近に比べ外周付近の方が活性化された原料ガスの密度を高くすることができる。
【0029】
本発明の第1実施形態または第2実施形態によるプラズマ処理装置は、太陽電池に用いられる光起電力素子の製造に用いることが好適である。以下には、図6を参照して、本発明によって製造された太陽電池について説明する。
【0030】
光起電力素子310は、基板311上に、透明電極312と第1の光電変換層313と第2の光電変換層314と裏面電極315と充填材層316と裏面フィルム317とが順に形成されたものから成る。
【0031】
基板311は、太陽電池の単一基板であり、例えば、ガラス等の光透過性の部材により構成される。
【0032】
透明電極312は、ZnO,SnOなどの金属酸化物より選択された一種類あるいは複数種類の積層体により構成される。なお、ZnOは、高い光透過性、低抵抗性、可塑性を有し、低価格であるため透明電極材料として好適である。
【0033】
第1及び第2の光電変換層313及び314は、それぞれ非晶質シリコン半導体及び微結晶シリコン半導体により構成される。尚、本明細書において、「微結晶」の用語は、完全な結晶状態のみならず、部分的に非結晶状態を含む状態をも意味するものとする。
【0034】
ここで、第1の光電変換層313は、p-i-n型の非晶質シリコン半導体を順次積層して形成され、第2の光電変換層314は、p-i-n型の微結晶シリコン半導体を順次積層して形成される。このような非晶質シリコン半導体と微結晶シリコン半導体を用いたタンデム型太陽電池は、光吸収波長が異なる二種類の半導体を積層した構造を有し、太陽光スペクトルを有効に利用することができる。
【0035】
なお、第1の光電変換層313と第2の光電変換層314との間には、図示しない透明導電膜を形成することが好適である。このとき、透明導電膜はZnOなどの光透過性及び電気伝導性を有する金属酸化物を用いて形成する。
【0036】
裏面電極315は、光反射性の高い材料で形成することが好適であり、Ag等の光反射性が高く、かつ導電性を有する部材により構成される。このように、基板311上に、透明電極312と第1及び第2の光電変換層313及び314と裏面電極315とを順次積層することにより、光起電力素子が形成される。
【0037】
裏面フィルム317は、充填材層316を介して光起電力素子の上に配置される。裏面フィルム317は、PET等の樹脂フィルムにより構成される。その他、裏面フィルム317は、樹脂フィルムなどが金属箔を挟んだ構造及び単体やSUS、ガルバリウムなどの金属(鋼板)でもよい。裏面フィルム317は、外部からの水分の浸入を防止する機能を有している。充填材層316は、EVA等の樹脂により構成される。充填材層316は、裏面フィルム317と光起電力素子との接着剤及び緩衝剤としての機能を有する。
【0038】
上記の光起電力素子310は、基板311側から入射された光によって電力を発生する。入射した光によって、第1及び第2の光電変換層313及び314のそれぞれで電力が発生する。第1及び第2の光電変換層313及び314は直列に接続されているため、透明電極312と裏面電極315との間に光起電力が発生する。基板311上に複数の光起電力素子を形成し、隣接する2つの光起電力素子のうち一方の透明電極312と他方の裏面電極315とを順次接続することによって、高電力の光起電力を発生させる太陽電池を製造することができる。
【0039】
次に、図6に示す光起電力素子310の製造方法について説明する。約4mm厚のガラ
スを用いた基板311上に、スパッタリングにより600nm厚のZnOからなる透明電極312を形成する。この後、基板311の透明電極312側からYAGレーザを照射して、透明電極312を短冊状にパターニングする。当該レーザ分離加工には、波長約1.06μm、エネルギー密度13J/cm、パルス周波数3kHzのNd:YAGレーザを用いる。
【0040】
次に、プラズマCVD法により、非晶質シリコン半導体からなる第1の光電変換層313を形成する。具体的に、第1の光電変換層313は、プラズマCVD法により、SiHとCHとHとBとの混合ガスから膜厚10nmのp型非晶質シリコン半導体層を、SiH4とH2との混合ガスから膜厚300nmのi型非晶質シリコン半導体層を、SiHとHとPHとの混合ガスから膜厚20nmのn型非晶質シリコン半導体層を形成し順次積層する。
【0041】
次に、プラズマCVD法により、微結晶シリコン半導体からなる第2の光電変換層314を形成する。具体的には、本発明の第1実施形態によるプラズマ処理装置を用いて、第2の光電変換層314は、SiHとHとBとの混合ガスから膜厚10nmのp型微結晶シリコン半導体層を、SiHとHとの混合ガスから膜厚2000nmのi型微結晶シリコン半導体層を、SiHとHとPHとの混合ガスから膜厚20nmのn型微結晶シリコン半導体層を形成し順次積層する。第1及び第2の光電変換層313及び314を形成する際のプラズマCVD法の諸条件の詳細を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
第1及び第2の光電変換層313及び314を、透明電極312側からYAGレーザを照射することにより短冊状にパターニングする。このとき、透明電極312のパターニング位置とYAGレーザの照射位置との間は約50μmである。当該レーザ分離加工には、エネルギー密度0.7J/cm、パルス周波数3kHzのNd:YAGレーザを使用す
る。
【0044】
次に、200nm厚のAgを含む裏面電極315を、第2の光電変換層314上にスパッタリングにより形成する。裏面電極315は、第1及び第2の光電変換層313及び314がパターニングにより除去された領域にも形成する。
【0045】
裏面電極315及び第2の光電変換層314の一部を、裏面電極315側からYAGレーザを照射することにより短冊状にパターニングする。このとき、第1及び第2の光電変換層313及び314のパターニング位置とYAGレーザの照射位置との間は約50μmである。当該レーザ分離加工には、エネルギー密度0.7J/cm、パルス周波数4kHzのNd:YAGレーザを使用する。
【0046】
次に、裏面電極315上に充填材層316と裏面フィルム317とを順次配置する。充填材層316としてEVAを用い、裏面フィルム317としてPETフィルムを用いることが好適である。充填材層316と裏面フィルム317とを配置した後、ラミネート装置を用いて、150℃で30分加熱処理することで、EVAからなる充填材層316を架橋、安定化して真空圧着する。裏面フィルム317が配置された後、基板311上に形成された太陽電池は、アルミニウム等の金属で形成された図示しないフレームに取り付けられる。
【0047】
本発明によって製造された太陽電池では、微結晶シリコン半導体からなる第2の光電変換層314を、本発明の第1実施形態によるプラズマ処理装置によって形成することにより、微結晶シリコン半導体膜の膜厚および膜質が不均一となることを抑制できる。従来のプラズマ処理装置を用いた場合、基板311の面内において中心から半径方向に沿って微結晶シリコン半導体膜の膜厚及び膜質が変化する傾向があることが確認されている。本発明の第1実施形態による第2電極4を用いることによって、基板311の面内において中央付近に比べ外周付近の方が活性化された原料ガスの密度を高くすることができる。これを利用することによって、基板311の面内おける微結晶シリコン半導体からなる第2の光電変換層314の膜厚及び膜質の不均一となることを抑制することができる。
【0048】
微結晶シリコン半導体膜を形成する際、基板311付近には、成膜に寄与しない不要な副生成物が少ない方が良いと考えられている。不要な副生成物は、基板311の中央付近に比べ外周付近の方が多くなる。これは、基板311の外周付近には中央付近でプラズマを発生させたことにより生じた不要な副生成物が流入してくるためである。よって、不要な副生成物の割合が多くなる基板311の外周付近には、原料ガスの供給割合を大きくし、活性化された原料ガスの密度を高くすることが好適である。
【0049】
更に、本発明の第1実施形態の変形例によるプラズマ処理装置によって第2の光電変換層314を形成することが好適である。第2電極4に凸部を設けたため、凸部の先端に電界が集中しプラズマ密度が高くなる。この結果、基板311に供給される活性化された原料ガスを多くすることができ、第2の光電変換層314の成膜速度を大きくすることができる。第2の光電変換層314は微結晶シリコン半導体で形成されるが、微結晶シリコン半導体は成膜速度を大きくすることが難しい。しかし、本発明の第1実施形態の変形例を用いることによって、第2の光電変換層314を高速に成膜し太陽電池の製造コストを低減することが可能となる。
【0050】
一方、本発明の第2実施形態によるプラズマ処理装置は、非晶質シリコン半導体からなる第1の光電変換層313の形成に用いられることが好適である。非晶質シリコン半導体膜を形成する際、ガス供給口4aから供給される原料ガスだけでなく、プラズマ発生後の副生成物も成膜に寄与すると考えられている。よって、基板311の中央部分への原料ガ
スの供給量を多くすることによって、そこで生成される副生成物を基板311の中央付近から外周付近へ拡散させることができる。これによって、基板311の表面全体に副生成物を供給することができ、非晶質シリコン半導体からなる第1の光電変換層313の膜厚及び膜質の不均一となることを抑制することができる。
【0051】
なお、本発明の第1実施形態は微結晶シリコン半導体の成膜に限られるものではなく、また、本発明の第2実施形態は非晶質シリコン半導体の成膜に限られるものではない。プラズマ処理装置を用いた成膜であって、第2電極の外周付近に原料ガスの供給量を多くしたい場合には、本発明の第1実施形態を適用することが好適である。また、第2電極の中央付近に原料ガスの供給量を多くしたい場合には、本発明の第2実施形態を適用することが好適である。
【符号の説明】
【0052】
1,101 プラズマ処理装置、2 真空チャンバ、3 第1電極、3a 基板保持部、4,104 第2電極、4a,104a ガス供給口、4b ガス吸引口、5 排気流量調整バルブ、6 真空排気設備、6a ターボ分子ポンプ、6b 油回転ポンプ、7 原料ガス供給源、310 光起電力素子、311 基板、312 透明電極、313 第1の光電変換層、314 第2の光電変換層、315 裏面電極、316 充填材層、317 裏面フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持することが可能な第1電極と、前記第1電極と対向するように設置され、前記第1電極と対向する部分に複数のガス供給口が形成されるとともに高周波電力が印加される第2電極とを備え、前記第2電極は、前記複数のガス供給口が同心円に沿って設けられると共に、隣接する同心円間の距離が内周側と外周側とで異なるプラズマ処理装置を用いた光起電力素子の製造方法であって、
基板上に導電性を有する透明電極を形成するステップと、
前記透明導電膜上に前記プラズマ処理装置を用いて非晶質シリコン半導体または微結晶シリコン半導体を含む光電変換層を形成するステップと、
前記光電変換層上に導電性を有する裏面電極を形成するステップと、
を備えることを特徴とする光起電力素子の製造方法。
【請求項2】
前記光電変換層を形成するステップは、
非晶質シリコン半導体を含む第1の光電変換層を形成するステップと、
前記プラズマ処理装置を用いて微結晶シリコン半導体を含む第2の光電変換層を形成するステップと、
を含むことを特徴とする光起電力素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2の光電変換層を形成するステップは、隣接する同心円間の距離が内周側に比べて外周側の方が狭くなるように設けられた複数の前記ガス供給口を有する前記第2電極を用いることを特徴とする、請求項2に記載の光起電力素子の製造方法。
【請求項4】
前記第2の光電変換層を形成するステップは、前記第1電極と対向する部分に同心円に沿って複数の凸部が設けられ、前記凸部には少なくとも1つの前記ガス供給口が設けられた前記第2電極を用いることを特徴とする、請求項2に記載の光起電力素子の製造方法。
【請求項5】
基板を保持することが可能な第1電極と、
前記第1電極と対向するように設置され、前記第1電極と対向する部分に複数のガス供給口が形成されるとともに高周波電力が印加される第2電極とを備え、
前記第2電極は、前記複数のガス供給口が同心円に沿って設けられると共に、隣接する同心円間の距離が内周側と外周側とで異なることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記複数のガス供給口は、同心円に沿って等しい間隔で設けられることを特徴とする、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記同心円は、隣接する同心円間の距離が内周側に比べて外周側の方が狭いことを特徴とする、請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記第2電極は、前記第1電極と対向する部分に同心円に沿って複数の凸部が設けられ、前記凸部には少なくとも1つの前記ガス供給口が設けられることを特徴とする、請求項5に記載のプラズマ処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−119341(P2012−119341A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76760(P2009−76760)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】