説明

ロードロック装置および基板冷却方法

【課題】基板の変形を極力抑制しつつ実用的な速度で基板を冷却することができるロードロック装置を提供すること。
【解決手段】ロードロック装置6,7は、真空の搬送室5に対応する圧力と大気圧との間で圧力を変動可能に設けられた容器31と、容器31内の圧力を搬送室5に対応する真空と大気圧に調整する圧力調整機構48と、容器31内に設けられウエハWが載置または近接されて冷却されるクーリングプレート32と、容器31内においてウエハWの変形を検出する変位センサー61,62と、搬送室5から高温のウエハWが容器31内に搬入された後のウエハ冷却期間に、変位センサー61,62が所定値以上のウエハWの変形を検出した際にウエハWの冷却を緩和する制御機構20とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウエハ等の被処理体に真空処理を施す真空処理装置に用いられるロードロック装置およびそのようなロードロック装置における基板冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、被処理基板である半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)に対し、成膜処理やエッチング処理等の真空雰囲気で行われる真空処理が多用されている。最近では、このような真空処理の効率化の観点、および酸化やコンタミネーション等の汚染を抑制する観点から、複数の真空処理ユニットを真空に保持される搬送室に連結し、この搬送室に設けられた搬送装置により各真空処理ユニットにウエハを搬送可能としたクラスターツール型のマルチチャンバタイプの真空処理システムが注目されている(例えば特許文献1)。
【0003】
このようなマルチチャンバ処理システムにおいては、大気中に置かれているウエハカセットから真空に保持された搬送室へウエハを搬送するために、搬送室とウエハカセットとの間にロードロック室を設け、このロードロック室を介してウエハが搬送される。
【0004】
ところで、このようなマルチチャンバ処理システムを成膜処理のような高温処理に適用する場合には、真空処理ユニットから例えば500℃程度の高温のまま真空処理ユニットから取り出され、ロードロック室に搬送されるが、このような高温状態でウエハを大気に曝露するとウエハが酸化してしまう。また、このような高温のままウエハを収納容器に収納させると、通常樹脂製である収納容器が溶ける等の不都合が生じる。
【0005】
このような不都合を回避するためには、このような不都合が生じない温度になるまで待ってからウエハの大気曝露を行えばよいが、これではスループットが低下してしまうため、ロードロック室にウエハを冷却する冷却機構を備えたクーリングプレートを配置するとともにロードロック室内をパージして、ウエハをクーリングプレートに載置または近接した状態でロードロック室内を真空から大気圧に戻す間にウエハを冷却することが行われている。
【0006】
この際に、ウエハが急激に冷却されるとウエハの表裏の熱膨張差に起因してウエハが変形し、ウエハの中心部エッジ部がクーリングプレートから離隔してしまい、あるいはウエハの中心部とエッジ部とでクーリングプレートまでの距離が異なってしまい、冷却効率が低下して結果的に冷却時間が長くなってしまうか、高温のまま大気に曝露されることになる。
【0007】
このようなウエハの変形が生じないようにするために、ロードロック室を大気圧に戻す際の圧力の上昇速度や、ウエハをクーリングプレートに近接する場合にはウエハの高さ位置とを管理しており、これらの適切な組み合わせを規定したパージレシピをウエハの温度毎に作成している。しかしながら、ウエハの変形の度合いは、ウエハに形成されている膜種によっても異なっており、このような膜種はユーザー毎に膨大な数であり、膜種毎に最適なパージレシピを作成することは極めて困難である。このため、ウエハに形成されている膜種によっては、ウエハ温度毎のパージレシピを用いても上記のようなウエハの変形が生じて上記不都合が生じる可能性がある。
【特許文献1】特開2000−208589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、基板の変形を極力抑制しつつ実用的な速度で基板を冷却することができるロードロック装置を提供することを目的とする。
また、そのような基板の冷却を実現することができるロードロック装置における基板冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、大気雰囲気から真空に保持された真空室へ基板を搬送し、前記真空室から高温の基板を前記大気雰囲気に搬送する際に用いられるロードロック装置であって、真空室に対応する圧力と大気圧との間で圧力を変動可能に設けられた容器と、前記容器内が前記真空室と連通する際に、前記容器内の圧力を前記真空室に対応する圧力に調整し、前記容器内が前記大気雰囲気の空間と連通する際に、前記容器内の圧力を大気圧に調整する圧力調整機構と、冷却機構を有し、前記容器内に設けられ基板が載置または近接されて冷却される冷却部材と、前記容器内において基板の変形を検出する基板変形検出手段と、前記容器内が前記真空室に対応する圧力に調整され、前記真空室から高温の基板が前記容器内に搬入されてから、前記容器内の圧力が大気圧にされるまでの間の基板冷却期間に、前記基板変形検出手段が所定値以上の基板の変形を検出した際に基板の冷却を緩和して基板の変形を戻すように制御する制御機構とを具備することを特徴とするロードロック装置を提供する。
【0010】
上記第1の観点において、前記制御機構は、前記容器内の圧力を上昇させ、その途中で前記基板変形検出手段が所定値以上の基板の変形を検出した際に、圧力の上昇を停止し、または圧力を低下させて冷却を緩和するようにすることができる。この場合に、前記制御機構が冷却を緩和した後、前記基板変形検出手段が基板の変形が所定値よりも小さくなったことを検出した際に、前記制御機構が前記容器内の圧力上昇を再開するようにすることが好ましい。
【0011】
また、前記冷却部材に対して突没可能に設けられ、前記冷却部材から突出した状態で基板を受け取り、その状態で降下することにより基板を前記冷却部材に載置または近接させる基板支持ピンをさらに具備し、前記制御機構は、前記基板変形検出手段が所定値以上の基板の変形を検出した際に、前記基板支持ピンを上昇させる、または前記基板支持ピンが基板を支持して下降している場合には下降を停止させることにより冷却を緩和するようにすることができる。この場合に、前記制御機構が冷却を緩和した後、前記基板変形検出手段が基板の変形が所定値よりも小さくなったことを検出した際に、前記制御機構が前記支持ピンの位置を元に戻す、または前記基板支持ピンの下降が停止している場合には前記基板支持ピンの下降を再開させるようにすることが好ましい。
【0012】
さらに、前記基板変形検出手段としては、基板中心部の変位を測定する第1のセンサーと、基板エッジ部の変位を測定する第2のセンサーとを有し、これら第1のセンサーの検出値および第2のセンサーの検出値の差から基板の変形を検出するものを用いることができる。この場合に、前記第1のセンサーおよび前記第2のセンサーとしては、レーザー変位計を好適に用いることができる。
【0013】
さらにまた、前記真空室は、真空処理室に基板を搬送する搬送機構を備えた搬送室であり、前記真空処理室において高温の処理がなされ、前記容器内に前記真空室を介して高温の基板が搬送される構成とすることができる。
【0014】
本発明の第2の観点によれば、真空室に対応する圧力と大気圧との間で圧力を変動可能に設けられた容器と、前記容器内が前記真空室と連通する際に、前記容器内の圧力を前記真空室に対応する圧力に調整し、前記容器内が前記大気雰囲気の空間と連通する際に、前記容器内の圧力を大気圧に調整する圧力調整機構と、冷却機構を有し、前記容器内に設けられ基板が載置または近接されて冷却される冷却部材とを具備し、大気雰囲気から真空に保持された真空室へ基板を搬送し、前記真空室から高温の基板を前記大気雰囲気に搬送する際に用いられるロードロック装置における基板冷却方法であって、前記容器内が前記真空室に対応する圧力に調整され、前記真空室から高温の基板が前記容器内に搬入されてから、前記容器内の圧力が大気圧にされるまでの間の基板冷却期間に、基板の変形が所定値以上となった際に基板の冷却を緩和して基板の変形を戻すようにすることを特徴とする冷却方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、真空室から高温の基板が容器内に搬入されてから、容器内の圧力が大気圧にされるまでの間の基板冷却期間に、基板変形検出手段が所定値以上の基板の変形を検出した際に基板の冷却を緩和して基板の変形を戻すように制御するので、基板の変形を極力抑制しつつ実用的な速度で基板を冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るロードロック装置が搭載されたマルチチャンバタイプの真空処理システムの概略構造を示す水平断面図である。
【0017】
真空処理システムは、例えば成膜処理のような高温処理を行う4つの真空処理ユニット1、2、3、4を備えており、これらの各真空処理ユニット1〜4は六角形をなす搬送室5の4つの辺にそれぞれ対応して設けられている。また、搬送室5の他の2つの辺にはそれぞれ本実施形態に係るロードロック装置6、7が設けられている。これらロードロック装置6、7の搬送室5と反対側には搬入出室8が設けられており、搬入出室8のロードロック装置6、7と反対側には被処理基板としての半導体ウエハWを収容可能な3つのフープ(FOUP;Front Opening Unified Pod)を取り付けるポート9、10、11が設けられている。真空処理ユニット1、2、3、4は、その中で処理プレート上に被処理体を載置した状態で所定の真空処理、例えばエッチングや成膜処理を行うようになっている。
【0018】
真空処理ユニット1〜4は、同図に示すように、搬送室5の各辺にゲートバルブGを介して接続され、これらは対応するゲートバルブGを開放することにより搬送室5と連通され、対応するゲートバルブGを閉じることにより搬送室5から遮断される。また、ロードロック装置6,7は、搬送室5の残りの辺のそれぞれに、第1のゲートバルブG1を介して接続され、また、搬入出室8に第2のゲートバルブG2を介して接続されている。そして、ロードロック室6,7は、第1のゲートバルブG1を開放することにより搬送室5に連通され、第1のゲートバルブG1を閉じることにより搬送室から遮断される。また、第2のゲートバルブG2を開放することにより搬入出室8に連通され、第2のゲートバルブG2を閉じることにより搬入出室8から遮断される。
【0019】
搬送室5内には、真空処理ユニット1〜4、ロードロック装置6,7に対して、半導体ウエハWの搬入出を行う搬送装置12が設けられている。この搬送装置12は、搬送室5の略中央に配設されており、回転および伸縮可能な回転・伸縮部13の先端に半導体ウエハWを支持する2つの支持アーム14a,14bを有しており、これら2つの支持アーム14a,14bは互いに反対方向を向くように回転・伸縮部13に取り付けられている。この搬送室5内は所定の真空度に保持されるようになっている。
【0020】
搬入出室8のウエハ収納容器であるフープF取り付け用の3つのポート9,10、11にはそれぞれ図示しないシャッターが設けられており、これらポート9,10,11にウエハWを収容した、または空のフープFが直接取り付けられ、取り付けられた際にシャッターが外れて外気の侵入を防止しつつ搬入出室8と連通するようになっている。また、搬入出室8の側面にはアライメントチャンバ15が設けられており、そこで半導体ウエハWのアライメントが行われる。
【0021】
搬入出室8内には、フープFに対する半導体ウエハWの搬入出およびロードロック装置6,7に対する半導体ウエハWの搬入出を行う搬送装置16が設けられている。この搬送装置16は、多関節アーム構造を有しており、フープFの配列方向に沿ってレール18上を走行可能となっていて、その先端のハンド17上に半導体ウエハWを載せてその搬送を行う。
【0022】
この真空処理システムは、各構成部を制御するマイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるプロセスコントローラ20を有しており、各構成部がこのプロセスコントローラ20に接続されて制御される構成となっている。また、プロセスコントローラ20には、オペレータが真空処理システムを管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース21が接続されている。
【0023】
また、プロセスコントローラ20には、真空処理システムで実行される各種処理をプロセスコントローラ20の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて真空処理システムの各構成部に処理を実行させるためのプログラム、例えば成膜処理に関わる成膜レシピ、ウエハの搬送に関わる搬送レシピ、ロードロック装置の圧力調整などに関わるパージレシピ等が格納された記憶部22が接続されている。このような各種レシピは記憶部22の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクのような固定的なものであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0024】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース21からの指示等にて任意のレシピを記憶部22から呼び出してプロセスコントローラ20に実行させることで、プロセスコントローラ20の制御下で、真空処理システムでの所望の処理が行われる。また、プロセスコントローラ20は、ロードロック室6,7において、標準的なパージレシピに基づいて処理を行っている過程で、ウエハの変形を抑制するように、圧力やウエハWの高さを制御可能となっている。
【0025】
次に、本実施形態に係るロードロック装置6,7について詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係るロードロック装置を示す断面図である。ロードロック装置6(7)は、容器31を有し、容器31内にはウエハWが載置または近接されてウエハWを冷却するクーリングプレート32が脚部33に支持された状態で設けられている。
【0026】
容器31の一方の側壁には真空に保持された搬送室5と連通可能な開口34が設けられており、これと対向する側壁には大気圧に保持された搬入出室8と連通可能な開口35が設けられている。そして、開口34は第1のゲートバルブG1により開閉可能となっており、開口35は第2のゲートバルブG2により開閉可能となっている。
【0027】
容器31の底部には、容器31内を真空排気するための排気口36と容器31内にパージガスを導入するためのパージガス導入口37が設けられている。排気口36には排気管41が接続されており、この排気管41には、開閉バルブ42、排気速度調整バルブ43および真空ポンプ44が設けられている。また、パージガス導入口37には、容器31内にパージガスを導入するパージガス導入配管45が接続されており、このパージガス導入配管45はパージガス源48から延びており、その途中には開閉バルブ46および流量調節バルブ47が設けられている。
【0028】
そして、真空側の搬送室5との間でウエハWの搬送を行う場合には、開閉バルブ46を閉じ、開閉バルブ42を開けた状態として、排気速度調整バルブ43を調節して所定速度で真空ポンプ44により排気管36を介して容器31内を排気し、容器31内の圧力を搬送室5内の圧力に対応する圧力とし、その状態で第1のゲートバルブG1を開けて容器31と搬送室5との間を連通する。また、大気側の搬入出室8との間でウエハWの搬送を行う場合には、開閉バルブ42を閉じ、開閉バルブ46を開けた状態として、流量調節バルブ47を調節して容器31内にパージガス源48からパージガス導入配管45を介してパージガスを、例えば所定流量で導入してその中の圧力を大気圧近傍にし、その状態で第2のゲートバルブG2を開けて容器31と搬入出室8との間を連通する。なおパージガスの導入の仕方は、パーティクル巻上げ防止の観点から、導入の初期においてブレークフィルタ(図示せず)を通してパージし、ある圧力になったら所定流量でパージする等、その方法は問わない。
【0029】
開閉バルブ42、排気速度調整バルブ43、流量調節バルブ47および開閉バルブ46は、圧力計63により測定された容器31内の圧力に基づいて圧力調整機構49により制御され、これらバルブを制御することにより、容器31内を大気圧と真空との間で変化させるようになっている。この圧力調整機構49もプロセスコントローラ20からの指令に基づいてこれらバルブの制御を行う。
【0030】
クーリングプレート32には、ウエハ搬送用の3本(2本のみ図示)のウエハ支持ピン50がクーリングプレート32の表面に対して突没可能に設けられ、これらウエハ支持ピン50は支持板51に固定されている。そして、ウエハ支持ピン50は、上昇位置の調節可能なモータ等の駆動機構53によりロッド52を昇降させることにより、支持板51を介して昇降される。なお、符号54はベローズである。
【0031】
クーリングプレート32には、冷却媒体流路55が形成されており、この冷却媒体流路55には冷却媒体導入配管56および冷却媒体排出配管57が接続されていて、図示しない冷却媒体供給部から冷却水等の冷却媒体が通流されて載置されたウエハWを冷却可能となっている。
【0032】
容器31の天壁31aは、透明材料、例えばガラスで構成されており、その上にウエハ中心部に対応する位置とウエハエッジ部に対応する位置にそれぞれレーザー変位計等の変位センサー61,62が設けられている。これら2つの変位センサー61,62は、ウエハの変形検出手段として、例えばウエハまでの距離を測定する機能を有する。
【0033】
プロセスコントローラ20は、ロードロック装置6(7)をも制御しており、変位センサー61、62からの距離データを受け取って、圧力調整機構49や駆動機構53を制御し、容器31内の圧力やウエハWの高さ位置を制御するようになっている。
【0034】
次に、以上のように構成されるマルチチャンバタイプの真空処理システムの動作について本実施形態のロードロック装置6、7を中心として説明する。
【0035】
まず、搬送装置16により搬入出室8に接続されたフープFからウエハWを取り出し、ロードロック装置6(または7)の容器31に搬入する。このとき、ロードロック装置6の容器31内は大気雰囲気にされ、その後第2のゲートバルブG2が開放された状態でウエハWが搬入される。
【0036】
そして、容器31内を搬送室5に対応する圧力になるまで真空排気し、第1のゲートバルブを開放して搬送装置12により容器31内からウエハWを受け取って、いずれかの真空処理ユニットのゲートバルブGを開いてその中にウエハWを搬入し、ウエハWに対して成膜等の高温での真空処理を行う。
【0037】
真空処理が終了した時点で、ゲートバルブGを開放し、搬送装置12が対応する真空処理ユニットからウエハWを搬出し、第1のゲートバルブG1を開放してウエハWをロードロック装置6および7のいずれかの容器31内に搬入し、クーリングプレート32の冷却媒体流路55を通流する冷却媒体によりウエハWを冷却しつつ、容器31内にパージガスを導入し、その中を大気圧とする(ウエハ冷却期間)。そして、第2のゲートバルブを開け、搬送装置16により、フープFに処理後のウエハWを収納する。
【0038】
なお、2つのロードロック装置6、7について、ロードロック装置6を搬入専用にし、ロードロック装置7を搬出専用にしてもよい。
【0039】
上述のようにウエハWの真空処理が終了して搬送装置12が対応する真空処理ユニットからウエハWを搬出した後のウエハ冷却期間の操作を詳細に説明する。
ロードロック装置6および7のいずれかの容器31内を真空引きし、第1のゲートバルブG1を開放してウエハWをその容器31内に搬入し、図3に示すように、ウエハ支持ピン50を突出させた状態でウエハWをウエハ支持ピン50上に受け取り、第1のゲートバルブG1を閉じる。そして、クーリングプレート32の冷却媒体流路55に冷却媒体を通流させながら、ウエハ支持ピン50を降下させてウエハWをクーリングプレート32に載置または近接させ、容器31内に所定流量でパージガスを導入してその中の圧力上昇速度を一定に保ちつつ大気圧とする。
【0040】
この際に、真空処理ユニット1〜4では成膜処理等の高温処理が行われる関係上、容器31に搬入された時点でのウエハWの温度は例えば500℃以上と高温である。したがって、ウエハWの冷却速度が大きすぎると、冷却過程でのウエハW表裏の熱膨張差によりウエハが図4の(a)、(b)のように変形してしまう。
【0041】
そこで、まず、標準のパージレシピに従って、所定流量で容器31内にパージガスを導入するとともにウエハ支持ピンを降下させてウエハWを冷却させ、その際に2つの変位センサー61,62によりウエハWの変位を測定し、ウエハWに所定値以上の微小変形が生じたことを把握した時点で、冷却を緩和するように制御を行う。具体的には、変位センサー61で計測されたウエハまでの距離と、変位センサー62で計測されたウエハまでの距離とを比較してこれらの差が所定値以上となった時点でこのような冷却を緩和する制御を行う。この際に、ウエハWの変形はウエハWの降下中でも生じるため、駆動機構53と変位センサー61,62とを同期させて、変位センサー61、62からウエハまでの距離の絶対値を把握できるようにする必要がある。
【0042】
ウエハWの冷却速度(降温速度)はチャンバ容器31内の圧力が上昇するほど、またウエハWがクーリングプレート32に近いほど大きくなるから、開閉バルブ46を閉じて容器31内の圧力の上昇を停止する、またはウエハ支持ピン50を上昇させるもしくはウエハ支持ピン50の降下途中であればウエハ支持ピン50の降下を停止する等によりウエハWの冷却を緩和する(降温速度を下げる)ことができる。そして、これらの制御を行って冷却が緩和されることにより、ウエハWの微小変形を解消することができる。
【0043】
また上記に加え、操作が多少複雑になるが、真空引きを行ってチャンバ容器31内の圧力を低下させることによっても冷却を緩和することができる。
【0044】
上述のようにして冷却が緩和されて変位センサー61,62により微小変形が所定値よりも小さくなったことが把握された時点で、プロセスコントローラ20は、開閉バルブ46を閉じた場合には開閉バルブ46を開く、またはウエハ支持ピン50を上昇させた場合には駆動機構53によりウエハWを元の位置に戻す、もしくはウエハ支持ピン50の降下途中でウエハ支持ピン50の降下を停止した場合にはウエハWの降下を再開する等により、ウエハWの冷却速度を上昇させる。なお開閉バルブ46を開いてパージガスの導入を再開する際には、パージガスの流量は以前における所定流量であってもよいし、これと異なる流量であってもよい。
【0045】
そして、ウエハWに所定値以上の微小変形が生じるたびごとにこれらの操作を行うことにより、ウエハWの冷却効率に影響を与える変形を生じさせることなく実用的な速度でウエハWを冷却しつつ容器31内を大気雰囲気にすることができる。
【0046】
このように、実操業においてロードロック装置における冷却操作の最適化を行うことができ、この際の操作手順に基づいて、対象ウエハにおける許容値を超える変形が生じない最適なパージレシピを作成することができる。その後真空処理ユニットにおいて、この対象ウエハと同じ処理が施されたウエハの冷却を行う場合には、作成したパージレシピに基づいて行うことができる。そして、このような操作を形成されている膜種が異なるウエハ毎に行うことにより、種々の膜種のウエハに対する最適なパージレシピを作成することができる。
【0047】
また、変位センサー61,62により、冷却操作時のエラー監視を行うこともできる。
【0048】
なお、ウエハを冷却する際の変形防止技術としては、従来から実際にウエハの温度を測定するものが提案されており、温度測定技術としては処理容器の天壁の上方に放射温度計を設けるのが一般的であり、その場合には天壁として放射温度計に適用可能な極めて高価な特殊なガラスを用いる必要があったが、本発明では、ウエハの温度を直接測定する必要はなく、天壁の材料もレーザー変位計等の変位センサーでの検出を行えればよく、パイレックス(登録商標)ガラス等の安価なもので十分である。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、真空処理ユニットを4つ、ロードロック装置を2つ設けたマルチチャンバタイプの真空処理システムを例にとって説明したが、これらの数に限定されるものではない。また、本発明のロードロック装置は、このようなマルチチャンバタイプの真空処理装置に限らず、真空処理ユニットが1個のシステムであっても適用可能である。さらに、上記実施形態では、ウエハの変形を2つの変位センサーを用いて把握したが、これに限らず、CCDカメラ等の他の手段を用いて把握してもよい。また、所定値以上の基板の変形を検出する際に、変位センサーの出力の差からこれを検出したが、これに変えて変位センサーの出力の比をもって検出してもよい。さらにまた、冷却を緩和する手段としては、上記実施形態で示した手段以外にも適用することができる。さらにまた、被処理体についても、半導体ウエハに限らず、FPD用ガラス基板などの他のものを対象にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係るロードロック装置が搭載されたマルチチャンバタイプの真空処理システムを模式的に示す平面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るロードロック装置を示す断面図。
【図3】図2のロードロック装置において、ウエハ支持ピンがウエハを受け取った状態を示す模式図。
【図4】ウエハの変形態様を説明するための模式図。
【符号の説明】
【0051】
1〜4;真空処理ユニット
5;搬送室
6,7;ロードロック装置
8;搬入出室
12,16;搬送装置
20;プロセスコントローラ
31;容器
31a;天壁
32;クーリングプレート
36;排気口
37;パージガス導入口
41;排気管
42;開閉バルブ
43;排気速度調整バルブ
44;真空ポンプ
45;パージガス導入配管
46;開閉バルブ
47;流量調節バルブ
48;パージガス源
49;圧力調整機構
53;駆動機構
55;冷却媒体流路
61,62;変位センサー
63;圧力計
G,G1,G2;ゲートバルブ
W;ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気雰囲気から真空に保持された真空室へ基板を搬送し、前記真空室から高温の基板を前記大気雰囲気に搬送する際に用いられるロードロック装置であって、
真空室に対応する圧力と大気圧との間で圧力を変動可能に設けられた容器と、
前記容器内が前記真空室と連通する際に、前記容器内の圧力を前記真空室に対応する圧力に調整し、前記容器内が前記大気雰囲気の空間と連通する際に、前記容器内の圧力を大気圧に調整する圧力調整機構と、
冷却機構を有し、前記容器内に設けられ基板が載置または近接されて冷却される冷却部材と、
前記容器内において基板の変形を検出する基板変形検出手段と、
前記容器内が前記真空室に対応する圧力に調整され、前記真空室から高温の基板が前記容器内に搬入されてから、前記容器内の圧力が大気圧にされるまでの間の基板冷却期間に、前記基板変形検出手段が所定値以上の基板の変形を検出した際に基板の冷却を緩和して基板の変形を戻すように制御する制御機構と
を具備することを特徴とするロードロック装置。
【請求項2】
前記制御機構は、前記容器内の圧力を上昇させ、その途中で前記基板変形検出手段が所定値以上の基板の変形を検出した際に、圧力の上昇を停止し、または圧力を低下させて冷却を緩和することを特徴とする請求項1に記載のロードロック装置。
【請求項3】
前記制御機構が冷却を緩和した後、前記基板変形検出手段が基板の変形が所定値よりも小さくなったことを検出した際に、前記制御機構が前記容器内の圧力上昇を再開することを特徴とする請求項2に記載のロードロック装置。
【請求項4】
前記冷却部材に対して突没可能に設けられ、前記冷却部材から突出した状態で基板を受け取り、その状態で降下することにより基板を前記冷却部材に載置または近接させる基板支持ピンをさらに具備し、
前記制御機構は、前記基板変形検出手段が所定値以上の基板の変形を検出した際に、前記基板支持ピンを上昇させる、または前記基板支持ピンが基板を支持して下降している場合には下降を停止させることにより冷却を緩和することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のロードロック装置。
【請求項5】
前記制御機構が冷却を緩和した後、前記基板変形検出手段が基板の変形が所定値よりも小さくなったことを検出した際に、前記制御機構が前記支持ピンの位置を元に戻す、または前記基板支持ピンの下降が停止している場合には前記基板支持ピンの下降を再開させることを特徴とする請求項4に記載のロードロック装置。
【請求項6】
前記基板変形検出手段は、基板中心部の変位を測定する第1のセンサーと、基板エッジ部の変位を測定する第2のセンサーとを有し、これら第1のセンサーの検出値および第2のセンサーの検出値の差から基板の変形を検出することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のロードロック装置。
【請求項7】
前記第1のセンサーおよび前記第2のセンサーはレーザー変位計であることを特徴とする請求項6に記載のロードロック装置。
【請求項8】
前記真空室は、真空処理室に基板を搬送する搬送機構を備えた搬送室であり、前記真空処理室において高温の処理がなされ、前記容器内に前記真空室を介して高温の基板が搬送されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のロードロック装置。
【請求項9】
真空室に対応する圧力と大気圧との間で圧力を変動可能に設けられた容器と、前記容器内が前記真空室と連通する際に、前記容器内の圧力を前記真空室に対応する圧力に調整し、前記容器内が前記大気雰囲気の空間と連通する際に、前記容器内の圧力を大気圧に調整する圧力調整機構と、冷却機構を有し、前記容器内に設けられ基板が載置または近接されて冷却される冷却部材とを具備し、大気雰囲気から真空に保持された真空室へ基板を搬送し、前記真空室から高温の基板を前記大気雰囲気に搬送する際に用いられるロードロック装置における基板冷却方法であって、
前記容器内が前記真空室に対応する圧力に調整され、前記真空室から高温の基板が前記容器内に搬入されてから、前記容器内の圧力が大気圧にされるまでの間の基板冷却期間に、基板の変形が所定値以上となった際に基板の冷却を緩和して基板の変形を戻すようにすることを特徴とする基板冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−182235(P2009−182235A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21321(P2008−21321)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】