説明

前方障害物検出機能付き携帯情報端末

【課題】 前方障害物を検知するために省電力設計された障害物検出センサを装備することにより、前方障害物を検知し、ユーザに報知することを可能にした携帯情報端末を提供する。
【解決手段】 障害物検出センサに加えて、振動センサを装備することにより、携帯情報端末が使用されている状況を検知し、その状況に応じて障害物センサを起動する。この障害物検出センサにより、端末のディスプレィを凝視しているユーザが注視していない前方障害物を検知し、報知することができる携帯情報端末ができる。また、振動センサに監視タイマーを設けることで、一定期間毎に振動センサを一時起動させる事により、省電力化がなされた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は携帯情報端末に関し、特に前方障害物の検出及び使用者への報知が可能な携帯情報端末に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、障害物を検出し報知可能な携帯情報端末が特開2001−116564号公報に記載されているが、この従来技術は車両に搭載されているGPSを有する通信システムと歩行者が携帯している携帯情報端末の間でお互いのやりとりが必要とされる。この為、車両搭載システムがない場合には車両から歩行者の位置を確認することができず、また携帯情報端末を所持している歩行者も車両の位置情報を受信することができない。
【0003】また、障害物として注意を報知できる対象物は通信システム搭載車両に限られる。
【0004】メール操作やブラウズ操作をしている場合に危険となる障害物は電信柱、自転車、バイクなど、車両以外にも広範に渡るために、この従来技術を用いた進行方向にある障害物の危険を促す手段としては不充分であると思われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来技術には、障害が車両搭載システムを持った特殊な車両でない限り、歩行者がメール操作している時、前方に現れる障害物を全て認識できないという課題がある。本発明の第一の目的は、この課題を解決した携帯情報端末である。
【0006】また、単に障害物検知センサを付けただけでは、使用していない時、例えばポケットに入れているときにはポケットを障害物として検知してしまう。使用中、例えば信号待ちで静止している時でも、前方に立っている人を障害物として検知してしまうという課題が残る。これを含め、本発明の第二の目的は、この課題を解決した携帯情報端末である。使用していない時また、使用していても移動が見られない時に応じて障害物センサが作動しないようにすること、かつ静止中や障害物検出が必要でないと、判断される時も作動しないようにする携帯情報端末を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述した第一の目的を達成する為の発明によれば、ユーザが携帯情報端末に注視している時に前方からの障害物を検知できるように、障害物検知センサを端末に設け、障害物を検知した場合には使用者に注意を促す報知手段も兼ね備える。
【0008】上記の報知手段としては、バイブレータ、サウンダ、ディスプレィなどがある。いずれも障害物の接近状態に応じて、サウンダ、バイブレータなどでは鳴動の間隔を調整、ディスプレィ上におけるアラームメッセージの表示に関しては表示内容及び文面を変化させることで、注意喚起から危険勧告までのいくつかのレベルに分けて使用者への報知を充分に促す手段を持つことが望ましい。また、障害物の接近方向をディスプレイ上に簡略表示する手段もある。
【0009】上記の前方障害物の検出動作を行う為の障害物検出センサは、赤外線センサ、超音波、またはカメラなどを用い、予めセンサ検知エリアを前方1〜2m、幅45度程度に設定しておくことにより、使用者に対して障害になる対象物以外の物体に対して検知されるのを防ぐこともできる。
【0010】また本発明の第二の目的を達成するために、端末装置の内部に歩行・走行状態或いは移動中の検出を行う為の感知手段と、これに対する省電力対策用の監視タイマーを具備し、このタイマーの満了毎に感知手段を起動させるシステムを持つ。
【0011】また、上記の障害物検出センサ及び感知手段は常時電源ONとするのではなく、一定のタイマー周期毎にONとすること、かつ歩行、走行の状態を検出した場合のみ障害物センサの検出動作を行う。タイマーが起動される時としては、携帯情報端末が開状態になった時、またはメールやブラウズ操作がなされるなど、使用者が端末を使用し始めた時と限定することによって、携帯電話装置のバッテリー消費を抑制し、携帯電話装置本来の機能に与える影響を低減することが可能となる。
【0012】本発明では、起動した感知手段によって端末装置における振動の検出処理を行い、振動が検出されない場合にはこの端末使用者が静止状態であると判断され、監視タイマーを再スタートする。逆に振動が検出された場合には歩行中など移動中と判断され、障害物センサを起動、その後タイマーは感知手段によって使用者が静止状態であると判断されるまでカウントされず、障害物センサは作動を続ける。
【0013】従って使用者が移動中のみ障害物センサが起動され、検知を続けるが、静止中には障害物センサが起動されない為、携帯電話装置のバッテリー消費を抑制し、携帯電話装置本来の機能に与える影響を低減することが可能となる。また、使用者が静止している時に前方に障害物として人が立っている時など不必要な時に報知システムの誤作動を回避することも可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】図1は本発明による実施の形態の携帯情報端末の使用状態を示す平面図である。また、図2は本発明の携帯情報端末の電気回路系を示すブロック図である。
【0016】図1に示すように携帯情報端末は上部筐体と下部筐体2をヒンジ部3でつなげた折畳み式携帯情報端末とする。上部筐体1にはスピーカ7、アンテナ9、ディスプレィ4、その上部に本発明の特徴である障害物検出センサ6を有し、下部筐体2には操作部5、振動センサ17及びマイクロフォン8を有する。
【0017】障害物検出センサ6は上部筐体1にあるディスプレィ部4の上部、つまり携帯情報端末頭頂部に取り付けられた超音波センサもしくは赤外線センサであり、メール操作及び、ブラウズ操作をしながら、ユーザが歩行中の時に前方から障害物が出てきた場合に、障害物を検知できるようになっている。このセンサは予めセンサ検知エリアを前方1〜2m、幅45度程度に設定しておくことにより、使用者に対して障害になる対象物以外の物体に対して検知されるのを防ぐこともできる。
【0018】この検知した障害物をユーザに知らせる為に、ディスプレィ4上に注意表示、サウンダ、光又はバイブレータを用いて注意を促す。
【0019】図5にあるとおり、いずれも障害物の接近状態に応じて、サウンダ、バイブレータなどでは鳴動の間隔を調整、ディスプレィ上におけるアラームメッセージの表示に関しては表示内容及び文面を変化させることで、注意喚起から危険勧告までのいくつかのレベルに分けて使用者への報知を充分に促す手段を持つことが望ましい。
【0020】また、図6に示すように障害物が右方向にある場合はディスプレィの右上に抽象的なマークを表示させることで使用者に報知をする手段を持つ事もあり得る。振動センサ17はユーザの移動中すなわち歩行・走行状態を検出するものである。
【0021】図2において、操作部13はユーザの電話番号の入力やメール作成の操作といった操作のインターフェイスを司る。ユーザが電話番号を操作部4から入力すると、発呼のための信号が制御部13から送信回路15に向けて発信され、この信号がアンテナを介して基地局へ送信される。また、相手側からの信号は(基地局からの信号)アンテナ9より受信され、受信回路14を経て制御部13で処理され、着信表示、メール表示音声出力等が行われる。ユーザが携帯電話を使用する時、制御部13の中にあるタイマー12が起動されカウントを始める。タイマー満了時には制御部13より、振動センサ17を起動するよう信号を送る。この信号により振動センサ17が起動し、端末の振動の有無を検知する。ここで得られた検出結果は制御部に送られ、そこで振動が見られない場合にはタイマーを再スタートさせる。見られた場合には制御部は障害物検出センサ6を起動させ、そこから検出結果を得る。そこの結果より、障害物が検知された場合には、制御部13からディスプレィ部4、サウンダ11、バイブレーダ10に注意報知を行う命令を下す。
【0022】本発明の実施の携帯ではメール操作及び、ブラウズ操作をしながら、ユーザが歩行中の時に前方から障害物が出てきた場合には携帯情報端末装置のディスプレィ4の上部にある障害物検出センサ6が、障害物を検知する。
【0023】この検知した障害物をユーザに知らせる為に、ディスプレィ4上に注意表示、サウンダ、光又はバイブレータを用いて注意を促す報知手段のシステムを起こす。
【0024】これによって、ユーザがメール操作を一時中断して、前方に注意を傾けることで、携帯電話使用に伴う危険性を軽減する事ができる。
【0025】次に制御部13による障害物検出の動作について図2と図3及び図4を参照にして説明する。
【0026】電源投入時(ステップS1)には制御部13で震動センサ17の起動のための監視タイマー12を起動(ステップS2)させ、電源断時(ステップS3)には同タイマーを停止させる処理(ステップS4)を行う。制御部13は、操作部5によるユーザ設定によって、予めメール作成や、ブラウズ操作などによって障害物検出動作の許可の設定がされていた場合のみ、監視タイマー12の起動処理を行い、メール作成終了、ブラウズ操作終了や、通話中など禁止と設定されていた場合など、障害物を検出する必要がないときには起動処理を行わない様にして障害物検出センサ6を起動しないようにする。また、本発明の実施の形態にある通り、折り畳み型の場合には、開閉検出センサ、またはスイッチにより端末の開状態を検出した場合に制御部はタイマー12を起動し、閉状態を検出した場合にタイマー停止処理を行う。
【0027】この監視タイマー12がカウントをはじめ、設定された一定期間の満了(ステップS5)毎に制御部13は振動センサ17を起動(ステップS6)し、振動検出の処理を行わせる。検出結果を取得(ステップS7)した後は直ちに振動センサ17の電源がOFFとなる(ステップS8)。
【0028】この検出結果より(ステップS9)、振動センサ17による検出が見られたときには図4のステップS12に移行する。振動が検出されない場合には制御部13は歩行、走行の状態ではないと判断し、監視タイマー12の再スタート処理処理(ステップS10)のみを実施して一連の処理を終了する(ステップS11)。
【0029】振動を検出した場合のみ、障害物検知センサ6を起動(ステップS12)し、前方障害物の検出処理を行わせる。障害物検出センサ6は検出結果を取得(ステップS13)した後、制御部13の制御により振動センサ17の場合と同じく直ちにOFFとなる(ステップS14)。ステップ13での検出結果により(ステップS15)障害物が検出されなかった場合は、制御部13は振動が検出されなかった場合と同様に監視タイマー12の再スタート処理(ステップS10)を実施する。ここで障害物検出センサ6が前方に障害物を検出した場合には、アラーム処理が行われる(ステップS16)。アラーム処理の例としてはディスプレィ4にあらかじめ設定されたアラームメッセージの表示を行う(図4R>4)、同時にサウンダ11、バイブレータ10を鳴動させる、またはそれらの組み合わせ、段階的な警告報知によりユーザに更なる注意を喚起することも可能である。
【0030】アラーム動作は一定時間経過または操作部14からのユーザ操作によって停止し(ステップS17)、監視タイマー12の再スタート処理を実施して(ステップS10)、一連の処理を終了(ステップS11)するものとする。
【0031】以上のように、携帯情報端末装置のディスプレィ4に情報を表示することによって、ユーザは前方に有る障害物の存在を認識し、回避の手段をとることが可能となる為、不注意による怪我・事故の発生を回避することができる。
【0032】振動センサ17で振動を検出した場合のみ、障害物センサ6の動作を行うことによって、例えば交差点待ち等の人が密集した状態での停止時には、センサが不要に動作することが回避される。
【0033】またセンサ部の電源を常時ONとするのでは無く、一定のタイマー周期毎にONとすること、かつ歩行・走行の状態を検出した場合のみ、障害物センサ6の検出動作を行うことによって、携帯電話装置のバッテリー消費を抑制し、携帯電話装置本来の機能に与える影響を低減することが可能となる。
【0034】振動センサ16のかわりにGPS部18を用いた場合を装置の構成(図5)に示す。このGPS18により、ユーザの歩行・走行状態を振動に変わって移動量で検知するものである。GPS18は定期的に位置情報を取得する動作としておき、前回の位置情報から変化が検出された際に、「移動中」であると認識する。その他の各部の動作は前述と同様である。
【0035】障害物検出センサ6は操作部5の特定の操作によって起動及び停止できるようにしてもよい。また、監視タイマー12はなくてもよい。この場合、震動センサ等の感知手段によって移動中を感知した場合に、制御手段によって障害物検出センサ6が起動される。更にメール作成していない時やブラウザ操作をしていない時、或いは通話中と判断された時など、障害物を検出する必要がないと判断された時、障害物検出センサを停止してもよい。
【0036】
【発明の効果】以上述べたように本発明の前方障害物検出機能付き携帯情報端末によれば、ユーザが歩行・移動中、メール操作及びブラウズ操作している時に気付きにくい前方にある障害物を検知し、これをユーザに報知するので、危険を回避できる効果がある。
【0037】また、感知手段として振動センサ、GPS、加えてこの感知手段の監視タイマー等を設けることにより、障害物検出の必要がない時に障害物を検出しないように制御することができる。さらに、これにより、省電力対策も兼ね備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の障害物検出センサの取付け位置の実施の形態の使用状態を示す正面図である。
【図2】同障害物検出センサ及び振動センサ、タイマーの電気回路系を示すブロック図である。
【図3】障害物を検出するまでの障害物検出センサ及び振動センサ、タイマーの動作を示すフローチャートである。
【図4】障害物を検出した後の障害物検出センサ及び振動センサ、タイマーの動作を示すフローチャートである。
【図5】(a)、(b)は障害物を検出した時のディスプレィにおける2段階に分けた障害物報知内容のイメージである。
【図6】右方向からの障害物接近を示した報知内容のイメージである。
【図7】振動センサの代わりにGPSを用いた場合の装置構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 上部筐体
2 下部筐体
3 ヒンジ部
4 ディスプレィ部
5 操作部
6 障害物検出センサ
7 スピーカ
8 マイクロフォン
9 アンテナ
10 バイブレーダ
11 サウンダ
12 タイマー
13 制御部
14 操作部
15 送信回路
16 受信回路
17 振動センサ
18 障害物の存在マーク
19 GPS

【特許請求の範囲】
【請求項1】 進行方向にある障害物を検出する検知手段と、その検知した結果を携帯端末使用者に報知する報知手段とを含む携帯情報端末。
【請求項2】 前記検知手段として障害物接近センサは、赤外線センサ、超音波、カメラのうちいずれかを備えたものである請求項1記載の携帯情報端末。
【請求項3】 前記報知手段は、音、光、振動、表示のうちいずれかにより報知することを特徴とする請求項1または2記載の携帯情報端末。
【請求項4】 前記報知手段は障害物警告用の情報を表示出力する表示ディスプレィと、障害物警告用の音信号を外部に発信出力する障害物警告音信号発信手段とを備えたことを特徴とする前記請求項1記載の移動通信システム。
【請求項5】 前記検出手段及び前記報知手段に加えて、使用者が移動中であることを感知する手段と、前記移動中の感知に応じ前記報知手段の起動を制御する制御手段とを含む前記請求項1,2、3及び,4のうちいずれかひとつに記載の携帯情報端末。
【請求項6】 前記感知手段は振動センサである前記請求項5記載の携帯情報端末。
【請求項7】 前記感知手段はGPSである前記請求項5記載の携帯情報端末。
【請求項8】 前記感知手段は前記請求項6または7を組み合わせた携帯情報端末。
【請求項9】 監視タイマーを含み、前記制御手段は、前記監視タイマーにより、一定時間ごとの移動量を測定し、移動量に応じて感知手段の電源をOFFに制御する請求項5記載の携帯情報端末。
【請求項10】 前記制御手段は障害物を検出する必要がないときに前記監視タイマーの起動処理を行わないようにする前記請求項1、2、3、4、8及び、9記載の携帯情報端末。
【請求項11】 前記制御手段は障害物を検出する必要がないときに障害物検出センサの起動処理を行わないようにする前記請求項1、2、3、4、8及び、9記載の携帯情報端末。
【請求項12】 操作部のある特定のボタンを押すことにより障害物検出センサを停止することが可能である前記請求項10、11記載の携帯情報端末。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2003−240850(P2003−240850A)
【公開日】平成15年8月27日(2003.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−40191(P2002−40191)
【出願日】平成14年2月18日(2002.2.18)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】