説明

半導体デバイスおよびその製造方法

【課題】CMOS回路側の仕様で不純物領域の深さや濃度が制約を受けるような場合でもhFEの向上を可能とする。
【解決手段】1つのバイポーラトランジスタが、横型の主トランジスタ部と、縦型の補助トランジスタ部とから形成されている。横型の主トランジスタ部は、エミッタ領域31と、ベース領域14Bの表面側部分とコレクタ側部領域13Bとを電流チャネルとして動作する。縦型の補助トランジスタ部は、エミッタ領域31と、その底面に接するベース領域14Bの深部側部と、コレクタ深部領域12Bとを電流チャネルとして動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板に、基板深部側から、コレクタ領域、ベース領域、エミッタ領域が順に形成されているバイポーラトランジスタを有する半導体デバイスと、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
相補絶縁ゲートトランジスタ(いわゆるCMOS)を利用したアナログ回路の実現が進んでいる。
ところが、ノイズ、電源電圧、温度に対する安定性を確保したい回路ではMOSFETでは十分な安定性が達成できない。このため、高い信頼性を要求する特定の回路では、バイポーラトランジスタが用いられる。
【0003】
そのような高い信頼性を要求する回路が半導体集積回路の一部である場合、CMOS回路のウェル構造と共通なウェル構造を用いてコスト増加を抑えてバイポーラトランジスタ回路をCMOS回路と集積化する。
【0004】
このようなCMOS回路と一体形成される横型(ラテラル型)バイポーラトランジスタが例えば特許文献1および2に、縦型バイポーラトランジスタが例えば特許文献3に開示されている。
また、横型バイポーラトランジスタの駆動能力を向上させる技術が例えば特許文献4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平02−294063号公報
【特許文献2】特開平06−177334号公報
【特許文献3】特開2005−236084号公報
【特許文献4】特開2001−230333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えばCMOSのウェル構造と共通する構造のウェルを用いて形成するなど、トランジスタ構造に制約が課せられる場合、十分な性能のバイポーラトランジスタが得られない。
【0007】
バイポーラトランジスタの増幅能力を示す代表的な指標として電流増幅率hFEが知られる。
半導体デバイスの微細化に伴って、チャネル濃度を規定するベース領域のウェル濃度が高くなる傾向にある。ベース領域の単位面積当たりの不純物量(イオン注入の場合は、そのドーズ量)が高くなると、詳細は後述するが電流増幅率hFEは下がる方向となる。このため、バイポーラトランジスタの増幅能力も低下する。
【0008】
横型(ラテラル型)バイポーラトランジスタでは、ベース距離(平面視のエミッタとコレクタの領域間距離)で電流増幅率hFEを規定できる。
ところが、例えばCMOS回路側の仕様にベース濃度が制約を受ける場合などにおいては、ベース距離を短くするだけでは、耐圧その他の特性を維持しながら電流増幅率hFEを高くすることに限界がある。
また、縦型バイポーラトランジスタは、さらにウェル深さ等が制約されるため、深さ方向のベース距離(基板表面側のエミッタと基板深部側のコレクタとの領域間距離)を自由に設定できず、電流増幅率hFEを高くすることは更に困難である。
【0009】
前記特許文献4に記載の横型バイポーラトランジスタは、2重ウェルの基板深部側の外側ウェル領域にコレクタ電位を与えることにより、電流増幅率hFEを増加させるトランジスタ構造を開示する。
【0010】
しかしながら、この構造では、コレクタ電位を基板深部側から与えるウェル電極がトランジスタ部の外側に位置し、このウェル電極とコレクタ電極を上層の配線等で接続する構成をとっている。
そのため、横型バイポーラトランジスタにコレクタ電極から与えられる電位より、縦型動作のために実際の実効的なトランジスタ部の下方のウェル部分に与えられる電位が構造上かなり低くなり、このことがhFE増大の制約事項になる可能性が高い。
【0011】
本発明は、例えばCMOS回路側の仕様で不純物領域の深さや濃度が制約を受けるような場合でも、電流増幅率hFE等の増幅性能を向上できるバイポーラトランジスタを有する半導体デバイスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に関わる半導体デバイスは、第1導電型の半導体基板と、第1導電型のベース領域と、第2導電型のエミッタ領域と、第2導電型のコレクタ深部領域およびコレクタ側部領域とを有する。
前記ベース領域は、半導体基板内の表面側部に形成されている。
【0013】
前記コレクタ深部領域は、前記ベース領域の基板深部側に形成されている。
前記エミッタ領域は、前記ベース領域の基板表面側の内部にベース領域より浅く形成されている。
前記コレクタ側部領域は、前記ベース領域の表面側部分を介して前記エミッタ領域と近接し、前記コレクタ深部領域に接続されている。
【0014】
また、本発明では、1つのバイポーラトランジスタが、横型の主トランジスタ部と、縦型の補助トランジスタ部とから形成されている。
横型の主トランジスタ部は、前記エミッタ領域と、前記ベース領域の前記表面側部分と、前記コレクタ側部領域とを電流チャネルとして動作する。
前記縦型の補助トランジスタ部は、前記エミッタ領域と、エミッタ領域の底面に接する前記ベース領域の深部側部と、前記コレクタ深部領域とを電流チャネルとして動作する。
【0015】
上記構成によれば、コレクタ側部領域が、ベース領域の側面に接し、ベース領域の表面側部分を介してエミッタ領域と近接している。そのため、このコレクタ側部領域、ベース領域の表面側部分、エミッタ領域によって横型の主トランジスタ部が形成されている。この主トランジスタ部は、バイポーラトランジスタ内で動作電流を主に流す部分として機能する。
【0016】
一方、縦方向(深さ方向)の構造においては、エミッタ領域の底面から、エミッタ領域より深い個所のベース領域部分(深部側部)を介してコレクタ深部領域が配置されている。このため、この3つの領域や領域部分によって縦型の補助トランジスタ部が形成されている。
この縦型のトランジスタ部は、ベース領域の深さや濃度が制約を受けやすいため、補助的に動作する。つまり、縦型トランジスタ部におけるエミッタ領域からコレクタ深部領域までの深さ方向の距離(深部ベース幅)は、パターン設計で制御できず、ウェル構造に依存するため、それ単独では所望の電流増幅率が得にくい。但し、本発明では、横型のトランジスタ部と同時に動作する補助トランジスタとして機能する。つまり、横型の主トランジスタ部の動作で基板深部側にそれて本来なら基板に消失されてしまうようなキャリアを、動作電流の一部として有効に捕獲して全体の電流増幅率を高める機能が、縦型の補助トランジスタにある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、例えばCMOS回路側の仕様で不純物領域の深さや濃度が制約を受けるような場合でも、電流増幅率hFE等の増幅性能を向上できるバイポーラトランジスタを有する半導体デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に関わる半導体デバイスの概略的な断面図である。
【図2】図1におけるバイポーラトランジスタのより詳細な断面構造図と平面図である。
【図3】側部ベース幅WBLを変化させたときのhFE-Ic特性を示すグラフである。
【図4】第1の実施形態に関わる半導体デバイスの製造途中の断面図である。
【図5】第2の実施形態に関わる半導体デバイスにおいて、バイポーラトランジスタ部分の断面図と平面図である。
【図6】側部ベース幅WBLと電流増幅率hFEの関係をまとめて示す図表である。
【図7】第2の実施形態に関わる半導体デバイスの製造途中の断面図である。
【図8】第3の実施形態に関わる半導体デバイスにおいて、バイポーラトランジスタ部分の断面図である。
【図9】第3の実施形態に関わる半導体デバイスの製造途中の断面図である。
【図10】第1〜第3の実施形態においてCMOS構造を利用して形成可能な接合型の第1バラクタの構造図である。
【図11】第1〜第3の実施形態においてCMOS構造を利用して形成可能なMOS型の第2バラクタの構造図である。
【図12】第1〜第3の実施形態においてCMOS構造を利用して形成可能な第3バラクタの構造図である。
【図13】第3バラクタ構造の等価回路図である。
【図14】第1〜第3の実施形態においてCMOS構造を利用して形成可能な第4バラクタの構造図である。
【図15】第4バラクタ構造の等価回路図である。
【図16】第1〜第3の実施形態においてCMOS構造を利用して形成可能な第5バラクタの構造図である。
【図17】第5バラクタ構造の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を、図面を参照して、以下の順で説明する。
1.第1の実施の形態:横型の主トランジスタ部のベース上に素子分離絶縁膜が存在する場合の実施形態である。
2.第2の実施の形態:横型の主トランジスタ部のベース上にシリサイドブロックが存在する場合の実施形態である。
3.第3の実施の形態:横型の主トランジスタ部のベース上にゲート電極体が存在する場合の実施形態である。
4.CMOS部に形成可能な他のデバイス例(第1〜第5バラクタ構造)を示す。
【0020】
本発明は、BiCMOSプロセス等の高性能バイポーラトランジスタの専用プロセスで製造される半導体デバイスへの適用も可能である。
但し、本発明がより有効なのは、バイポーラトランジスタが、同一基板に形成される相補絶縁ゲートトランジスタ回路(例えばCMOS回路)とウェルの濃度や深さ等の構造パラメータを共通にしなければならないといった制約を受ける場合である。
よって、以下の説明では、CMOSプロセスにマスクや工程を追加することなく、MOSトランジスタと同時にウェル構造を形成し、さらに望ましくはソースやドレインの領域形成時に、エミッタ領域やコンタクト領域等が同時形成される場合を前提とする。
【0021】
<1.第1の実施の形態>
[デバイス構造]
図1は、CMOS部とバイポーラ部とを便宜上、横並びに示す概略的な断面図である。図2(A)は、バイポーラトランジスタのより詳細な断面構造図、図2(B)は、バイポーラトランジスタの平面図である。
【0022】
図1に図解する半導体デバイスは、CMOS部10Aと、バイポーラ部10Bとを半導体基板11の異なる領域に有する。図1のCMOS部10Aに、1つのn型MOSトランジスタ(NM)と、1つのp型MOSトランジスタ(PM)とを示す。
【0023】
n型MOSトランジスタ(NM)において、p型の半導体基板11の内部に、ディープn型ウェル領域12Aとn型ウェル領域13Aで囲まれたp型ウェル領域14Aが形成されている。p型ウェル領域14Aのチャネル領域となる部分の上には、ゲート絶縁膜15Aとゲート電極16Aの積層体が形成されている。
この積層体のチャネル長方向両側の面に側壁スペーサ17が形成されている。
側壁スペーサ17より外側の基板表面部に2つのn型のソース・ドレイン領域18Aが互いに離間して配置されている。各ソース・ドレイン領域18Aは、そのチャネル端側が不純物濃度を低くしたLDD(Lightly Doped Drain)構造となっている。
【0024】
p型MOSトランジスタ(PM)は、ディープn型ウェル領域12Aとn型ウェル領域13Aを有しない。また、チャネルが形成されるウェルやソース・ドレイン領域の不純物導電型がn型MOSトランジスタ(NM)と逆になっている。すなわち、半導体基板11にn型ウェル領域24Aが形成され、n型ウェル領域24A内の2つのソース・ドレイン領域18Cがp型不純物の導入によって形成されている。ゲートの導電型が異なる場合もあるがゲート積層体そのものは、n型MOSトランジスタ(NM)と同様である。
【0025】
n型MOSトランジスタ(NM)、p型MOSトランジスタ(PM)のそれぞれが有する2つのソース・ドレイン領域は、例えば、タングステン(W)等のプラグにより配線(符号なし)に接続される。プラグは、シリコン酸化膜からなる層間絶縁膜19に開孔するコンタクト孔に導電材料を埋め込んで形成されている。また、ソース・ドレイン領域のシリコン基板表面部は、接触抵抗を低減するため、コバルト(Co)などによりシリサイド化されている。このシリサイド化は、自己整合シリサイド(サリサイド)工程によってゲート電極上でも同時に行われている。
【0026】
なお、n型MOSトランジスタ(NM)、p型MOSトランジスタ(PM)の各デバイス間の分離はSTI(shallow trench isolation)によってなされている。また、n型ウェル領域13Aと24Aは同時に形成されることで、同一の深さと同一の不純物濃度を有することとしてもよい。
【0027】
一方、バイポーラ部10Bは、上記ディープn型ウェル領域12Aと同時形成されるn型のコレクタ深部領域12Bと、上記n型ウェル領域13Aと同時形成されるn型のコレクタ側部領域13Bとを有する。
また、コレクタ深部領域12Bとコレクタ側部領域13Bに囲まれる基板領域に、上記p型ウェル領域14Aと同時形成されるp型のベース領域14Bが設けられている。
【0028】
ベース領域14B内の基板表面側に、ベース領域14Bより浅いn型のエミッタ領域31が形成されている。エミッタ領域31に対し、素子分離絶縁層(STI)を挟んで反対側のベース領域表面部に、ベース領域より高濃度なp型のベースコンタクト領域32が配置されている。また、コレクタ側部領域13Bの表面側部に、コレクタ側部領域より高濃度なn型のコレクタコンタクト領域33が形成されている。
このコレクタコンタクト領域33とエミッタ領域31は、例えば、n型MOSトランジスタ(NM)のソース・ドレイン領域18Aと同時形成できる。また、ベースコンタクト領域32は、p型MOSトランジスタ(PM)のソース・ドレイン領域18Cと同時形成できる。
【0029】
エミッタ領域31とコレクタコンタクト領域33との間には素子分離絶縁層(STI)が形成され、その下にコレクタ側部領域13Bとベース領域14Bが側面同士の境界をもつ。この境界部分からエミッタ領域側に、横型の主トランジスタ部のチャネルが形成される。
つまり、n型のコレクタ側部領域13Bの側面が、p型のベース領域14Bの基板表面側部分を挟んでn型のエミッタ領域31と近接しており、この3者に動作電流が流れることで横型の主トランジスタ部(npnバイポーラトランジスタ)が動作する。
【0030】
一方、エミッタ領域31の底面は、ベース領域14Bの深部側領域を挟んで、コレクタ深部領域12Bと対向しており、この3者に動作電流が流れることで縦型の補助トランジスタ部(npnバイポーラトランジスタ)が動作する。
【0031】
縦型のnpnトランジスタ(主トランジスタ部)と横型のnpnトランジスタ(補助トランジスタ部)とは、コレクタコンタクト領域33がプラグ43を通して同一のコレクタ電極53に接続されている。また、エミッタ領域31がプラグ41を通してエミッタ電極51に接続され、ベースコンタクト領域32がプラグ42を通してベース電極52と接続されている。エミッタ電極51とベース電極52のそれぞれは、主トランジスタ部と補助トランジスタ部で共通の電極である。よって、主トランジスタ部と補助トランジスタ部は、コレクタ電極、エミッタ電極およびベース電極に並列に接続されて、1つのnpnバイポーラトランジスタを構成している。
【0032】
なお、この場合も、プラグ41〜43が、シリコン酸化膜からなる層間絶縁膜19に形成されたコンタクト孔にタングステン(W)などの導電材料を埋め込むことで形成さている。各プラグの下方接触面には、接触抵抗を低減するため、コバルト(Co)などによりシリサイド層(SC)が形成されている。また、エミッタ、ベース、コレクタの取り出し間は素子分離絶縁層(STI)によって分離されている。
【0033】
[ベース幅に関する要件]
縦型npnトランジスタ(補助トランジスタ)のベース幅(以下、深部ベース幅)は、図2(A)に示すように、n型のエミッタ領域31の底面からコレクタ深部領域12Bの上面までの距離(深部ベース幅WBV)で規定される。
一方、横型npnトランジスタ(主トランジスタ)のベース幅は、エミッタとコレクタ間に形成された素子分離絶縁層(STI)の下方に形成されたコレクタ側部領域13Bの側面境界と、n型のエミッタ領域のエッジとの距離(側部ベース幅WBL)で規定される。
【0034】
図2(A)において、符号“NSD”は、図1のソース・ドレイン領域18Aといったn型の不純物領域と同一プロセスで形成されることを示している。また、符号“PSD”は、図1のソース・ドレイン領域18Cといったp型の不純物領域と同一プロセスで形成されることを示している。
縦型npnトランジスタ(補助トランジスタ)は、n型のソース・ドレイン領域(NSD)をエミッタ領域31、p型ウェル領域14A(図1)をベース領域14B、n型ウェル(12A+13A)をコレクタ(12B+13B)とする。この場合、ウェルはMOSトランジスタの特性を最適化するように設計される。
【0035】
いま、縦型npnトランジスタ(補助トランジスタ)の主たる動作領域において、hFE=IC/IB=Dn/Dp・QE/QB2で表される。ここで“IC”はコレクタ電流、“IB”はベース電流、“Dn”はドナー濃度、“Dp”はアクセプタ濃度、“QE”はエミッタガンメル数、“QB2”はベースガンメル数を表す。ベースガンメル数とは、擬似中位ベースのキャリア積分濃度のことで、ベース領域のキャリア面密度NB2(x)を用いて、QB2=∫WBVNB2(x)dxで表される。図2(C)に示すように、例えば、エミッタ領域31の底面を“0”として深さ方向に深部ベース幅WBVまでキャリア面密度を積分する。この積分によって、補助トランジスタのベースガンメル数、すなわちエミッタ領域31直下のベース領域部分の総不純物量(この場合、第1導電型(n型)のドナー濃度の総量)が計算できる。
【0036】
同様に、横型npnトランジスタ(主トランジスタ)の主たる動作領域において、hFE=IC/IB=Dn/Dp・QE/QB1で表される。ここでのベースガンメル数QB1は、ベース領域の深さ方向の平均的なキャリア分布密度NB1(x)を用いて、QB1=∫WBLNB1(x)dxで表される。図2(C)に示すように、例えば、エミッタ領域3のエッジを“0”として横方向に側部ベース幅WBLまでキャリア分布密度を積分する。この積分によって、主トランジスタのベースガンメル数、すなわちエミッタ領域31のエッジからコレクタ側部領域13B側のベース領域部分の総不純物量(この場合、第1導電型(n型)のドナー濃度の総量)が計算できる。
【0037】
横型バイポーラトランジスタを支配的に動作させ、縦型バイポーラトランジスタを補助的に動作させるには、望ましくは、横型バイポーラトランジスタベースの総不純物量を、縦型バイポーラトランジスタのベースの総不純物量より小さくする。すなわち、次式(1)が成り立つようにウェルや不純物領域の大きさや濃度を制御するとよい。
【0038】
[数1]
WBLNB1(x)dx<∫WBVNB2(x)dx…(1)
【0039】
ここで、図2(B)に示すエミッタ領域31とベース領域14Bの最短距離は、側部ベース幅WBLと等しい。したがって、側部ベース幅WBLを規定するエミッタ領域31の辺と、これに平行なコレクタ側部領域13Bの辺で区切られる上面視が矩形の領域を上面とする3次元ベース領域の総不純物濃度が、上記式(1)の左辺に相当する。
一方、エミッタ領域31の底面を上面とする3次元ベース領域の総不純物濃度が、上記式(1)の右辺に相当する。
しかし、この2つの3次元ベース領域は、側部ベース幅WBLと直交する方向のサイズが等しいため、側部ベース幅WBLを通る任意の断面での総不純物量で比較しても結果は同じである。図2(C)は、このある断面における側部側の2次元ベース領域の総不純物量をQ1とし、当該断面における深部側の2次元ベース領域の総不純物量をQ2と定義したときに、Q1<Q2が成り立つことを示している。
【0040】
言い換えると、『横型トランジスタ部の最短のベース幅を含む任意の断面において、その第1導電型不純物の総量Q1が、縦型トランジスタ部における当該断面での第1導電型不純物の総量Q2より少ない』としてもよい。ここで、断面は、エミッタ領域とコレクタ側部領域との最短距離の箇所を含む断面であり、Q1はエミッタ端からコレクタ側部領域側のベース領域部分が有する第1導電型不純物の総量である。また、Q2は、エミッタ領域底面とコレクタ深部領域との間のベース領域部分が前記断面でもつ第1導電型不純物の総量である。
【0041】
以上の式(1)またはQ1<Q2の式が満たされれば、横型トランジスタが主トランジスタ部として支配的に動作する。このとき、縦型トランジスタは、縦型の主トランジスタの動作で基板深部側に向かい本来なら基板内に消失するキャリア(この場合、電子)をコレクタ深部領域12Bで効率よく捕獲する。したがって、縦型トランジスタがない場合に比べると、その分、電流増幅率hFEが増大する。つまり、縦型トランジスタは補助的に機能する。
【0042】
このように総不純物量の比較で動作の主、補助を規定するのは、比較対象である上記3次元または2次元のベース領域の深さが、素子分離絶縁層(STI)等の存在で同一でないからである。仮に素子分離絶縁層(STI)がなければ、ベース領域の深さは一定であるため、以上の式(1)またはQ1<Q2の式に変えて、WBL<WBVを満たすだけでよい。つまり、この場合は、WBL<WBVを満たすだけで、横型トランジスタが主トランジスタ部として支配的に動作するようになる。
【0043】
なお、縦型と横型でベース幅が同じ場合、縦型のチャネルが面状チャネルであり、横型のチャネルが表面部に形成されるナローチャネルであることを考慮すると、電界がより集中しやすい横型が動作の主体となる。同じ理由から、式(1)、Q1<Q2またはWBL<WBVの不等号が逆の場合であっても、縦型が主体的に動作する場合もないわけではない。しかし、その横型が支配的になるか否かの境界は、不純物濃度分布の急峻性や動作バイアス条件によって左右される。
【0044】
少なくとも、式(1)またはQ1<Q2で表す濃度の要件と、WBL<WBVで表す距離の要件の少なくとも一方を満たせば、これらの他の条件によらず必ず横型が主体的に動作することが確認されており、本実施形態は、横型が必ず主体的に動作する最低の要件を規定するものである。
【0045】
この要件が満たされる限り、電流増幅率hFEは主体的には横方向のトランジスタ動作で決まる。このため、縦型に比べhFEを高くすることができ、縦方向に注入された少数キャリアも、縦型バイポーラトランジスタのコレクタに到達し、動作に寄与するため高いhFEを確保することができる。その結果、MOSFETの特性で一意的に決定される縦型トランジスタと違い、電流増幅性能が高いバイポーラトランジスタの設計が可能となる。また、縦方向、横方向のコレクタを共通な電極で取り出すことから、性能向上に付随して占有面積の増大はない。
【0046】
図3は、側部ベース幅WBLを変化させたときのhFE-Ic特性を示すグラフである。
図3において、WBL=0.15[μm]のデバイスは式(1)またはQ1<Q2で表す濃度の要件と、WBL<WBVで表す距離の要件を同時に満たしているが、WBL=0.5、1.0および1.5[μm]のデバイスは上記2つの要件を同時に満たしていない。
より詳細には、図3を得たシミュレーション計算では、深部ベース幅WBVのパラメータを0.7[μm]としている。WBL=0.5[μm]は距離の要件を満たすが濃度の要件を満たさない。WBL=1.0[μm]とWBL=1.5[μm]は2つの要件とも満たさない。唯一、WBL=0.15[μm]が両要件を満たす。
【0047】
このグラフのように、上記要件を満たすと電流増幅率hFEを大幅に満たすことができる。
上記濃度の要件と距離の要件を同時に満たすというのは、電流増幅率hFEに対する寄与の割合について、横型のトランジスタの割合が縦型のトランジスタの割合より十分大きくする、つまり確実に横型を主、縦型を副とするために最も望ましい条件である。
本実施形態のトランジスタ構造において、コレクタ側部領域13Bがコレクタ深部領域12Bの上面に接している。このため、縦型トランジスタ部のコレクタ電位を高く維持できる。この構造において横型を主、縦型を副とする動作を行うには、例えば、上記濃度の要件と距離の要件の一方が満たされればよい。そして上記図3のグラフのように大幅にhFEを増大させるに、さらに望ましくは、上記濃度の要件と距離の要件の両方を満たすことが必要となる。
【0048】
[製造方法]
図4に、第1の実施形態に関わる半導体デバイスの製造途中の断面図を示す。
図4(A)では、p型の半導体基板11を用意し、これにシリコン酸化膜等からなる素子分離絶縁層(STI)を形成する。素子分離の手法はSTIに限定されないが、以下、STIを例示する。
【0049】
燐(P)などのn型不純物を、例えばイオン注入などの手法により半導体基板11に導入する。これにより、p型MOSトランジスタ(PM)のn型ウェル領域24Aおよびnpnトランジスタの横型トランジスタのコレクタとして機能するコレクタ側部領域13Bを形成する。
続いて、npnトランジスタの形成領域ならびにn型MOSトランジスタ(NM)の形成領域に、燐(P)などのイオン注入によりディープn型ウェル領域12Aとコレクタ深部領域12Bを同時に形成する。また、続いてボロン(B)などのイオン注入により、npnトランジスタのベース領域14Bおよびn型MOSトランジスタ(NM)のp型ウェル領域14Aを形成する。
その後、活性化アニールを施す。
【0050】
図4(B)の工程では、ゲート絶縁膜15Aとなるシリコン酸化膜を基板表面に熱酸化等により形成し、続いて多結晶シリコン膜をCVDなどにより形成する。n型MOSトランジスタ(NM)形成領域の多結晶シリコン膜にはヒ素(As)を選択的に導入し、p型MOSトランジスタ(PM)形成領域の多結晶シリコン膜にはボロン(B)を選択的に導入する。
続いてRIE等で多結晶シリコン膜を所望のパターンに加工してゲート電極16A,16Bを同時に形成する。
【0051】
ゲート電極と素子分離絶縁層(STI)をマスクとして自己整合的に、n型MOSトランジスタ(NM)の形成領域にヒ素(As)を、p型MOSトランジスタ(PM)の形成領域にボロン(B)を導入し、LDD領域を形成する。
このときnpnトランジスタ領域には、不図示のレジストを被覆することによりLDD領域を形成しない。但し、エミッタやコレクタの取り出しとなる領域にはn型MOSトランジスタ(NM)のLDD領域と同じ不純物を、ベースの取り出しとなる領域にはp型MOSトランジスタ(PM)のLDD領域と同じ不純物を導入しても構わない。
【0052】
図4(C)の工程では、基板面上にシリコン酸化膜をCVDで形成し、RIEなどで異方性エッチングを行い、MOSFETの側壁スペーサ17を形成する。側壁スペーサ17、ゲート電極および素子分離絶縁層(STI)を自己整合マスクとして、n型MOSトランジスタ(NM)の形成領域にヒ素(As)を、p型MOSトランジスタ(PM)の形成領域にボロン(B)を導入する。不純物を活性化すると、MOSトランジスタにソース・ドレイン領域18A,18Cが形成される。このとき、npnトランジスタのエミッタ領域31とコレクタコンタクト領域33を、n型MOSトランジスタ(NM)のソース・ドレイン領域18Aと同時に形成する。npnトランジスタのベースコンタクト領域32は、p型MOSトランジスタ(PM)のソース・ドレイン領域18Cの形成工程で同時に形成する。
【0053】
図4(D)の構造を形成するには、まず、基板面上にスパッタなどによりコバルト(Co)を堆積し、熱処理を行って、シリコンに接していないコバルト膜を除去する。このときシリコン基板や多結晶シリコン上のコバルト膜がシリコンと反応してシリサイド化されるが、酸化膜上では反応しないためコバルト膜のままとなる。
これにより、MOSFETのソース・ドレイン領域18A,18Cおよびゲート電極上にシリサイド層(SC)が形成される。このとき同時に、npnトランジスタのエミッタ領域31、ベースコンタクト領域32、コレクタコンタクト領域33の上部にもシリサイド層(SC)が形成される。
【0054】
その後、基板面上にシリコン酸化膜やプラズマ窒化膜などの層間絶縁膜19をCVDで堆積し、これに電極の取り出し孔を形成する。チタン(Ti)などのバリアメタルを蒸着し、タングステン(W)を堆積する。そして、CMP等で平滑化して各種プラグを形成する。最後に、アルミニウム(Al)等により配線を形成する。
【0055】
<2.第2の実施の形態>
第1の実施形態では、横型の主トランジスタのチャネルが素子分離絶縁層(STI)の直下に形成される。しかし、素子分離絶縁層(STI)は本来、素子間に電流が流れるのを防止するものなので、電流量を増やすには不利である。
そこで、第2の実施形態では、その部分に素子分離絶縁層(STI)を形成しない。但し、その部分に素子分離絶縁層(STI)はエミッタ領域31やコレクタコンタクト領域33を自己整合的に分離する役目(エミッタマスク層の役目)がある。
本実施形態は、このエミッタマスク層の役目をシリサイドブロック(絶縁層の一種)で代替した実施形態である。
【0056】
[デバイス構造]
図5(A)に、第2の実施形態に関わるバイポーラトランジスタ部分の断面図を示す。また、図5(B)には、この断面図に対応した平面図を示す。なお、MOSトランジスタ部の構造は第1の実施形態と同様であるため、ここでの図示を省略する。
【0057】
図5に図解したバイポーラ部は、横型の主トランジスタを形成するエミッタ領域31と、コレクタコンタクト領域33との間の基板表面に、素子分離絶縁層(STI)に代えて、シリサイドブロック(SB)が酸化シリコンなどの絶縁材料から形成されている。後述するように、n型のソース・ドレイン領域(NSD)を形成するときの自己整合マスク層(エミッタマスク層)を兼用するためには、例えば側壁スペーサ17と同じ膜材を利用するとよい。
【0058】
この構成にすることにより、ベースコンタクト領域32の側部ベース幅WBLを微細化できるため、さらに電流増幅率hFEを高く設計できる。
図6の図表に、側部ベース幅WBLと電流増幅率hFEの関係をまとめて示す。このように、側部ベース幅WBLを小さくすると、電流増幅率hFEが各段に向上することが分かる。
【0059】
[製造方法]
図7に、第2の実施形態に関わる半導体デバイスの製造途中の断面図を示す。
図7(A)〜図7(B)までは、第1の実施形態に関わる図4(A)〜図4(B)までと製造方法自体は同じである。但し、本例では、横型トランジスタの実効的なベース領域となるエミッタ領域31とコレクタコンタクト領域33との間の基板表面には素子分離絶縁層(STI)を形成していない。
【0060】
図7(C1)の工程では、側壁スペーサとなる絶縁膜、例えばシリコン酸化(SiO)膜17Aを成膜する。次工程の全面エッチングでシリサイドブロック(SB)となるSiO膜部分が除去されないようにレジストRをパターニングにより形成する。このレジストRの形成位置は、横型トランジスタの実効的なベース領域となるエミッタ領域31とコレクタコンタクト領域33間の領域上方である。
【0061】
図7(C1)の工程で、図4(C)と同様にRIE等の異方性エッチングを行うと、側壁スペーサ17と同時に、レジストR1で保護された領域にシリサイドブロック(SB)が形成される。その後、レジストRを除去する。
続いて、形成したシリサイドブロック(SB)と、素子分離絶縁層(STI)、ならびに、側壁スペーサ付きのゲート電極を自己整合マスクとしてn型不純物、例えば燐(P)をイオン注入する。
これにより、n型MOSトランジスタ(NM)の形成領域にソース・ドレイン領域18A,18Cが形成され、これと同時に、シリサイドブロック(SB)をマスクとして自己整合的にnpnトランジスタのエミッタ領域31が形成される。また、コレクタコンタクト領域33も同時に形成される。
【0062】
以後は、第1の実施形態と同様な工程を経て、当該半導体デバイスを完成させる。
【0063】
第2の実施形態では、横型npnトランジスタ(主トランジスタ)の側部ベース幅WBLがシリサイドブロック(SB)によって、少なくともエミッタ領域31側は自己整合的に決めることができ、側部ベース幅WBLを微細化することができる。
【0064】
<3.第3の実施の形態>
本実施形態は、エミッタマスク層の役目をゲート積層体(ゲート絶縁膜とゲート電極)で代替した実施形態である。
【0065】
[デバイス構造]
図8に、第3の実施形態に関わるバイポーラトランジスタ部分の断面図を示す。なお、MOSトランジスタ部の構造は第1の実施形態と同様であるため、ここでの図示を省略する。
【0066】
図8に図解したバイポーラ部は、横型の主トランジスタを形成するエミッタ領域31端が、ゲート電極16A,16B(図1参照)と同時加工される電極16とその下の絶縁膜15とから自己整合的に規定される。すなわち、エミッタ領域31と、コレクタコンタクト領域33との間の基板表面に、電極16と絶縁膜15の積層体が形成されている。
なお、電極16は、その下方の半導体基板電位を電位的に安定させる趣旨から、エミッタ電極51(図1参照)と電気的に接続することが望ましい。
【0067】
この構成にすることにより、側部ベース幅WBLはゲート電極16A,16B加工に近い精度で微細化できるため、さらに電流増幅率hFEを高く設計できる。
【0068】
[製造方法]
図9に、第3の実施形態に関わる半導体デバイスの製造途中の断面図を示す。
図9(A)までは、第1の実施形態に関わる図4(A)〜図4(B)までと製造方法自体は同じである。但し、本例では、横型トランジスタの実効的なベース領域となるエミッタ領域31とコレクタコンタクト領域33との間の基板表面には素子分離絶縁層(STI)を形成していない。
【0069】
図9(B)の工程では、CMOS部のゲート電極16A,16Bの形成時に、エミッタ領域31とコレクタコンタクト領域33との間の基板表面に絶縁膜15と電極16の積層体を形成する。なお、側壁スペーサ17およびLDD領域も必然的に、このバイポーラ部の箇所にも同時形成される。
【0070】
続いて、形成したゲート積層体と、素子分離絶縁層(STI)とを自己整合マスクとしてn型不純物、例えば燐(P)をイオン注入する。
これにより、n型MOSトランジスタ(NM)の形成領域にソース・ドレイン領域18A,18Cが形成され、これと同時に、ゲート積層体(15+16)をマスクとして自己整合的にnpnトランジスタのエミッタ領域31が形成される。また、コレクタコンタクト領域33のも同時に形成される。
【0071】
以後は、第1の実施形態と同様な工程を経て、当該半導体デバイスを完成させる。
【0072】
<4.CMOS部に形成可能な他のデバイス例>
上記CMOS部には、メモリ、ロジックの一般的なCMOS回路の他に、キャパシタ、インダクタ、抵抗などの回路素子を、CMOS構造を利用して形成可能である。ここで一例として、可変容量(バラクタ:バリアブルキャパシタ)について、その構造と形成方法を説明する。
【0073】
最初に、バラクタについて説明する。
チューナーなどの周波数帯域全体にわたってチューニングを必要とするワイヤレスシステムや、その他の通信システムに搭載される電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)に使用される半導体素子として、バラクタ(可変容量)がある。バラクタは、半導体の接合容量を利用した接合型と、MOS構造を利用したMOS型が存在する。
【0074】
[第1および第2バラクタ構造]
図10に接合型バラクタ、図11にMOS型バラクタの構造図を示す。
接合型バラクタの構造は、図10に示すように、例えば、半導体基板11にp型ウェル領域14C(もしくはn型ウェル領域)を形成している。p型ウェル領域14Cの表面側にp型ソース・ドレイン領域(PSD)18E(もしくはn型のソース・ドレイン領域)を形成し、この接合容量が利用される。p型ウェル領域14Cには、NSDのコンタクト領域18Dが形成されている。
【0075】
MOS型バラクタの構造は、図11に示すように、例えば、半導体基板11にp型ウェル領域14D(もしくはn型ウェル領域)を形成し、その上にゲート絶縁膜15Bを形成し、上部電極となるゲート電極16Bを形成している。そのゲート電極16Bの両側下方の基板表面部に、2つのn型のソース・ドレイン領域(NSD)18F(もしくはp型ソース・ドレイン領域)を互いに離して形成している。2つのソース・ドレイン領域18Fは短絡して用いる。
【0076】
接合型バラクタは、接合部分の空乏層を利用した可変容量であり、同時にダイオード構造でもあるためにバイアス方向に注意する必要がある。また、単位面積あたりの容量値としては、MOS型に比べ比較的小さく、所望の容量値を得るには、大面積が必要である。
一方、MOS型バラクタは、ゲート絶縁膜と、ゲート電極直下のチャネル領域の空乏層を利用した可変容量であるが、接合型に比較し、容量の変化率が小さく、クオリティファクタQ値をあまり高くすることができない。
【0077】
以下、この2種類の長所を併せ持つ構造のバラクタを、MOS回路部に形成可能な容量素子の一例として、以下、図面を参照して説明する。
【0078】
[第3バラクタ構造]
第3バラクタ構造について、図12および図13を用いて説明する。
図12は、第3バラクタ構造の断面図である。図13は、第3バラクタ構造の等価回路図である。
図12に示すように、例えば、p型の半導体基板11に、素子分離領域(STI)が形成されている。素子分離領域は、STI法に限らず、LOCOS法で形成された絶縁膜で代替可能である。
【0079】
素子領域には、n型ウェル領域14Eが形成されている。n型ウェル領域14Eは、MOSトランジスタのウェル領域と兼用してよい。n型ウェル領域14Eを形成するためには、例えば、燐(P)イオンを500[keV]〜1000[keV]、1E12〜1E14程度の条件でイオン注入する。
n型ウェル領域14Eの表面には、薄い絶縁膜15Cが形成される。この絶縁膜15Cは、通常のMOSトランジスタのゲート絶縁膜と兼用してもよい。絶縁膜15Cの上部には、MOS型バラクタの上部電極となる電極16Cが形成される。この電極16Cは、通常のMOSトランジスタのゲート電極と同じ、例えばポリシリコン膜で形成してもよい。
【0080】
電極16Cをマスクとして、例えば左側のn型ウェル領域14Eの表面部には、p型領域(PSD)18Gが形成される。p型領域18Gは、例えばp型MOSトランジスタ(PM)のソース・ドレイン領域と兼用してもよい。
また、電極16Cをマスクとして、例えば右側のn型ウェル領域14Eの表面部には、n型領域18Hが形成される。n型領域18Hは、例えばn型MOSトランジスタ(NM)のソース・ドレイン領域と兼用してもよい。
配線工程により、p型領域18Gと、電極16が電気的に接続され、これをバラクタの第1電極とし、n型領域18Hを第2電極とする。
【0081】
この第3バラクタ構造によれば、図13に等価回路を示すように、p型領域18Gと、n型ウェル領域14Eとの接合部を利用した接合型容量(ダイオードD1で示す)を有する。また、この接合容量に加え、絶縁膜15Cを介して電極16とn型ウェル領域14EとのMOS構造を利用したMOS型容量C1とが並列に形成されている。これにより、単位面積あたりの容量値を大きくすることが可能である。
【0082】
[第4バラクタ構造]
第4バラクタ構造について、図14および図15を用いて説明する。
図14は、第4バラクタ構造の断面図である。図15は、第4バラクタ構造の等価回路図である。
図14に示すように、例えば、p型の半導体基板11に、素子分離領域(STI)が形成されている。素子分離領域は、素子分離領域STI法に限らず、LOCOS法で形成された絶縁膜で代替可能である。
【0083】
素子領域には、n型ウェル領域14Eが形成されている。このn型ウェル領域14Eは、MOSトランジスタのウェル領域と兼用してもよい。n型ウェル領域14Eを形成するためには、例えば、燐(P)イオンを500[keV]〜1000[keV]、1E12〜1E14程度の条件でイオン注入する。
n型ウェル領域14Eの表面には、薄い絶縁膜(符号なし)が形成される。この絶縁膜は、通常のMOSトランジスタのゲート絶縁膜と兼用してもよい。絶縁膜がそれぞれの電極と基板の間に介在するようにして、MOS型バラクタの電極16D〜16Gが形成される。この電極は、少なくとも2つ以上形成され、通常のMOSトランジスタのゲート電極と同じ、例えばポリシリコン膜から形成してもよい。
【0084】
電極16D〜16Gをマスクとして、例えば電極16Dの左側、電極16Eと電極16Fの間、電極16Gより右側のn型ウェル領域14Eの表面には、それぞれp型領域18I,18J,18Kが形成される。このp型領域18I,18J,18Kは、例えばp型MOSトランジスタ(PM)のソース・ドレイン領域(PSD)と同時形成される。
さらに、形成した電極とソース・ドレイン領域を保護するレジスト等をマスクとして、電極16Dと16Eの間の基板表面部、電極16Fと16Gの間の基板表面部に、それぞれn型領域18L、18Mが形成される。このn型領域18Lと18Mは、例えばn型MOSトランジスタ(NM)のソース・ドレイン領域(NSD)と同時形成される。
【0085】
配線工程により、p型領域18Iと電極16Dが電気的に接続され、さらにp型領域18Kと電極16Gが電気的に接続される。これをバラクタの第1アノード電極A1とする。
配線工程により、p型領域18Jと電極16Eと16Fが電気的に接続され、これをバラクタの第2アノード電極A2とする。
また、配線工程により、n型領域18Lと18Mを電気的に接続し、これをカソード電極Kとする。
【0086】
この第4バラクタ構造によれば、第1アノード電極と、第2アノード電極A2を用いることにより、単位面積あたりの容量を大きくすることができる。これに加えて、図15に示すように、1対の2容量(C1またはC2対(C1+C2)の合成容量)を差動動作させることができる。これにより、カソード電極Kが共通になることから、下部電極の抵抗成分を回路的に考えなくてもよいため、Q値を高くすることが可能になる。
【0087】
[第5バラクタ構造]
第5バラクタ構造について、図16および図17を用いて説明する。
図16は、第5バラクタ構造の断面図である。図17は、第5バラクタ構造の等価回路図である。
図16に示すように、例えば、p型の半導体基板11に、素子分離領域(STI)が形成されている。素子分離領域は、STI法に限らず、LOCOS法で形成された絶縁膜で代替可能である。
【0088】
素子領域には、n型ウェル領域14Eが形成されている。このn型ウェル領域14Eは、MOSトランジスタのウェル領域と兼用してもよい。n型ウェル領域14Eを形成するためには、例えば、燐(P)イオンを500[keV]〜1000[keV]、1E12〜1E14程度の条件でイオン注入する。
n型ウェル領域14Eの表面には、薄い絶縁膜(符号なし)が形成される。この絶縁膜は、通常のMOSトランジスタのゲート絶縁膜と兼用してもよい。絶縁膜をそれぞれの電極と基板の間に介在させることで、MOS型バラクタの電極16D〜16Gが形成される。この電極は、少なくとも2つ以上形成され、通常のMOSトランジスタのゲート電極と同じ、例えばポリシリコン膜から形成してもよい。
【0089】
電極16D〜16Gをマスクとして、例えば電極16Dの左側、電極16Eと電極16Fの間、電極16Gより右側のn型ウェル領域14Eの表面には、それぞれp型領域18I,18J,18Kが形成される。さらに、電極16Dと16Eの間の基板表面部、電極16Fと16Gの間の基板表面部にも、それぞれp型領域18N、18OMが形成される。これらの5つのp型領域18I,18J,18K,18N,18Oは、例えばp型MOSトランジスタ(PM)のソース・ドレイン領域(PSD)と同時形成される。
さらに、n型ウェル領域14Eの例えば周辺部の表面には、n型領域18Pが形成される。このn型領域18Pは、例えばn型MOSトランジスタ(NM)のソース・ドレイン領域(NSD)と同時形成される。
【0090】
配線工程により、p型領域18I,18J,18Kが電気的に接続され、これをバラクタの第1アノード電極A1とする。
配線工程により、p型領域18Nと18Oが電気的に接続され、これをバラクタの第2アノード電極A2とする。
また、配線工程により、電極16D〜16Gが電気的に接続される。
【0091】
このような第5バラクタ構造によれば、第1アノード電極A1と、第2アノード電極A2を用いることにより、1対の2容量(図17ではC4)を差動動作させることができる。これにより、カソード電極Kが共通になることから、下部電極の抵抗成分を回路的に考えなくてもよいため、Q値を高くすることが可能になる。さらに、第1アノード電極A1と第2アノード電極A2を短絡し、ゲート電極と接続することによって、単位面積あたりの容量を大きくすることが可能となる。
【0092】
以上の第3〜第5バラクタ構造によれば、接合型の第1バラクタ構造と、MOS型の第2バラクタ構造を電気的に結合させる。このため、単位面積あたりの容量値を大きくすることが可能となり、所望の容量値を得る面積を小さくすることができる。
また、接合型バラクタ構造と、MOS型バラクタ構造を電気的に結合させたものを、1対の構造になるようにするため、p型ウェル領域の抵抗成分を考える必要がなく、Q値を高くすることが可能となる。
【0093】
以上述べてきた、第1〜第3の実施形態によれば、バイポーラトランジスタの電流増幅率hFEを高めることができる。また、横方向動作の寄生バイポーラトランジスタで電流増幅率hFEを決めることができ、縦型に比べ電流増幅率hFEを高くすることができる。このとき、縦方向に注入された少数キャリアも、縦型バイポーラトランジスタのコレクタコンタクト領域に到達し、動作に寄与するため効率よく電流増幅率hFEを確保することができる。縦方向、横方向のコレクタコンタクト領域を共通な電極で取り出すことにより、面積の縮小を図れる。
【0094】
また、第2および第3の実施形態によれば、シリサイドブロック(SB)もしくはゲート積層体により、側部ベース幅WBLを自己整合的に決定できるため、この側部ベース幅を小さく制御でき、高い電流増幅率hFEを得ることができる。
【符号の説明】
【0095】
11…半導体基板、12A…ディープn型ウェル領域、12B…コレクタ深部領域、13A…n型ウェル領域、13B…コレクタ側部領域、14A…p型ウェル領域、14B…ベース領域、15…絶縁膜、16…電極、16A等…ゲート電極、18A等…ソース・ドレイン領域、31…エミッタ領域、32…ベースコンタクト領域、33…コレクタコンタクト領域、51…エミッタ電極、52…ベース電極、53…コレクタ電極、(SB)…シリサイドブロック、(SC)…シリサイド層、(STI)…素子分離絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
半導体基板内の表面側部に形成されている第1導電型のベース領域と、
前記ベース領域の基板深部側に形成されている第2導電型のコレクタ深部領域と、
前記ベース領域の基板表面側の内部にベース領域より浅く形成されている第2導電型のエミッタ領域と、
前記ベース領域の表面側部分を介して前記エミッタ領域と近接し、前記コレクタ深部領域に接続される第2導電型のコレクタ側部領域と、
を有し、
前記エミッタ領域と、前記ベース領域の前記表面側部分と、前記コレクタ側部領域とを電流チャネルとする横型の主トランジスタ部と、
前記エミッタ領域と、エミッタ領域の底面に接する前記ベース領域の深部側部と、前記コレクタ深部領域とを電流チャネルとする縦型の補助トランジスタ部と、から1つのバイポーラトランジスタが形成されている
半導体デバイス。
【請求項2】
前記横型の主トランジスタ部において前記エミッタ領域と前記コレクタ側部領域との最短距離の箇所を含む断面でエミッタ領域端からコレクタ側部領域側のベース領域部分が有する第1導電型不純物の総量が、前記縦型の補助トランジスタ部における前記エミッタ領域の底面と前記コレクタ深部領域との間のベース領域部分が前記断面でもつ第1導電型不純物の総量より少ない
請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記コレクタ側部領域の表面側部分に、高濃度な第2導電型のコレクタコンタクト領域が形成され、
前記コレクタコンタクト領域と前記エミッタ領域との離間方向の途中に前記コレクタ側部領域と前記ベース領域の境界が位置し、
前記境界から前記エミッタ領域までの実効ベース部に対し、前記離間方向の長さの一部が重なるベース幅規定層が形成されている
請求項2に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記コレクタ側部領域の表面側部分に、高濃度な第2導電型のコレクタコンタクト領域が形成され、
当該コレクタコンタクト領域と、前記エミッタ領域との上面にシリサイド層が形成され、
当該シリサイド層が形成されたコレクタコンタクト領域と前記エミッタ領域との間の基板表面に、シリサイドブロックが前記ベース幅規定層として配置されている
請求項3に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記半導体基板には、前記バイポーラトランジスタの形成領域と異なる基板領域に、相補絶縁ゲートトランジスタ回路が形成され、
前記相補絶縁ゲートトランジスタ回路における第1導電型の絶縁ゲートトランジスタのチャネルが形成される第2導電型のウェルが、前記コレクタ側部領域と同じ不純物濃度と同じ深さを有し、
前記相補絶縁ゲートトランジスタ回路における第2導電型の絶縁ゲートトランジスタのチャネルが形成される第1導電型のウェルが、前記ベース領域と同じ不純物濃度と同じ深さを有する
請求項4に記載の半導体デバイス。
【請求項6】
前記コレクタ側部領域の表面側部分に、より高濃度な第2導電型のコレクタコンタクト領域が形成され、
当該コレクタコンタクト領域と前記エミッタ領域の間の基板表面上に、絶縁膜と電極層の積層体が前記ベース幅規定層として配置されている
請求項3に記載の半導体デバイス。
【請求項7】
前記半導体基板には、前記バイポーラトランジスタの形成領域と異なる基板領域に、相補絶縁ゲートトランジスタ回路が形成され、
前記相補絶縁ゲートトランジスタ回路における第1導電型の絶縁ゲートトランジスタのチャネルが形成される第2導電型のウェルが、前記コレクタ側部領域と同じ不純物濃度と同じ深さを有し、
前記相補絶縁ゲートトランジスタ回路における第2導電型の絶縁ゲートトランジスタのチャネルが形成される第1導電型のウェルが、前記ベース領域と同じ不純物濃度と同じ深さを有し、
前記積層体の下層の前記絶縁膜が、第1および第2導電型の絶縁ゲートトランジスタのゲート絶縁膜と同じ膜材と同じ厚さを有し、
前記積層体の上層の前記電極層が、第1および第2導電型の絶縁ゲートトランジスタのゲート電極と同じ電極材と同じ厚さを有する
請求項6に記載の半導体デバイス。
【請求項8】
前記エミッタ領域に電気的接続をとるエミッタ電極を有し、当該エミッタ電極に対し前記電極層が電気的に接続されている
請求項7に記載の半導体デバイス。
【請求項9】
前記横型の主トランジスタ部における前記エミッタ領域と前記コレクタ側部領域との最小距離で規定される側部ベース幅が、前記縦型の補助トランジスタ部において前記エミッタ領域の底面と前記コレクタ深部領域との距離で規定される深部ベース幅より小さい
請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項10】
第1導電型の半導体基板における相補絶縁ゲートトランジスタ回路の形成領域に、第2導電型ウェルを形成すると同時に、前記半導体基板におけるバイポーラトランジスタの形成領域に第2導電型のコレクタ領域を形成するステップと、
前記第2導電型ウェルの基板表面を含む深さ方向の一部に、第2導電型の絶縁ゲートトランジスタのチャネルが形成される第1導電型ウェルを形成すると同時に、前記コレクタ領域の基板表面を含む深さ方向の一部に、平面視でコレクタ領域外周の内側に位置する第1導電型のベース領域を形成するステップと、
前記第1導電型ウェルに前記第2導電型の絶縁ゲートトランジスタを形成する際に、前記コレクタ領域と前記ベース領域の境界を含む位置にエミッタマスク層を形成するステップと、
前記エミッタマスク層で規定される前記ベース領域内の位置に、第2導電型のエミッタ領域を形成するステップと、を含み、
前記エミッタ領域を形成するステップでは、当該エミッタ領域の底面からコレクタ領域までの深さ方向の距離が、前記境界とエミッタ領域端との最小距離より大きくなる深さのエミッタ領域を形成する
半導体デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記エミッタマスク層が、絶縁ゲートトランジスタのソース領域およびドレイン領域の上に形成されるシリサイド層の形成を阻止する絶縁性のシリサイドブロックである
請求項10に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記エミッタマスク層が、絶縁ゲートトランジスタのゲート絶縁膜とゲート電極との加工時に同時形成される、絶縁膜と電極層との積層体である
請求項10に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記コレクタ領域は、基板深部に埋め込まれるコレクタ深部領域と、当該コレクタ深部領域と前記ベース領域の側面とに接するコレクタ側部領域を含む領域とを、それぞれ形成することで得られる
請求項10に記載の半導体デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−129562(P2011−129562A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283878(P2009−283878)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】