説明

半導体不揮発性記憶装置およびその製造方法

【課題】高い信頼性で書き込み・消去・読み出しが可能な低コストの半導体不揮発性記憶装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態の半導体不揮発性記憶装置は、基体Sと、第1の電極2と、機能膜10と、第2の電極50と、を持つ。前記第1の電極2は、前記基体S上に設けられる。前記機能膜10は、前記第1の電極2上に成膜されて記憶媒体をなす。前記第2の電極50は、上面に凸の曲面を有するように、前記機能膜10上または前記機能膜10内に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体不揮発性記憶装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体メモリは応用製品群の拡大に伴い、その記憶容量の増大がより一層求められている。
【0003】
しかしながら、素子の微細化により記憶容量を増大させようとすると、短波長の高価な光源等を使用しなければならず、製造コストの増大を招いてしまう。
【0004】
素子の微細化を用いないメモリとしてMEMSプローブ型メモリがある。しかし、機能膜として単結晶の強誘電体膜を用いる場合は各メモリセルのサイズが大きくなるという問題があり、また、強誘電体膜に代えて抵抗可変膜を用いる場合はプローブと機能膜との間で接触不良等が発生し、信頼性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4115998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い信頼性で書き込み・消去・読み出しが可能な低コストの半導体不揮発性記憶装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の半導体不揮発性記憶装置は、基体と、第1の電極と、機能膜と、第2の電極と、を持つ。前記第1の電極は、前記基体上に設けられる。前記機能膜は、前記第1の電極上に成膜されて記憶媒体をなす。前記第2の電極は、上面に凸の曲面を有するように、前記機能膜上または前記機能膜内に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態1による接触型半導体不揮発性記憶装置の概略構成を示す図。
【図2】図1の上部電極を示す部分平面図。
【図3】図1の記憶装置の変形例を示す略示断面図。
【図4A】実施形態1による半導体不揮発性記憶装置の製造方法の説明図。
【図4B】実施形態1による半導体不揮発性記憶装置の製造方法の説明図。
【図4C】実施形態1による半導体不揮発性記憶装置の製造方法の説明図。
【図4D】実施形態1による半導体不揮発性記憶装置の製造方法の説明図。
【図5A】実施形態2による半導体不揮発性記憶装置の製造方法の説明図。
【図5B】実施形態2による半導体不揮発性記憶装置の製造方法の説明図。
【図5C】実施形態2による半導体不揮発性記憶装置の製造方法の説明図。
【図5D】実施形態2による半導体不揮発性記憶装置の製造方法の説明図。
【図5E】実施形態2による半導体不揮発性記憶装置の製造方法の説明図。
【図6】上部電極の抵抗率と上部電極の接触抵抗率との関係を示すグラフ。
【図7】実施形態2による非接触型半導体不揮発性記憶装置の概略構成を示す図。
【図8A】実施形態3による半導体不揮発性記憶装置の製造方法の説明図。
【図8B】実施形態3による半導体不揮発性記憶装置の製造方法の説明図。
【図9】図7の半導体不揮発性記憶装置への書き込み・消去方法の説明図。
【図10】実施形態3による半導体不揮発性記憶装置の概略構成を示す平面図。
【図11】図10のA−A線に沿った断面図。
【図12A】実施形態4による半導体不揮発性記憶装置の製造方法の説明図。
【図12B】実施形態4による半導体不揮発性記憶装置の製造方法の説明図。
【図12C】実施形態4による半導体不揮発性記憶装置の製造方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態のいくつかについて図面を参照しながら説明する。各図において同一の部分には同一の参照番号を付し、重複説明は適宜省略する。
【0010】
(A)抵抗変化膜を記憶媒体とするMEMSプローブメモリ
(1)記憶装置
図1は、実施形態1による記憶装置の概略構成を示す図である。図1に示す記憶装置は、接触型のMEMSプローブメモリであり、シリコン基板Sと、下部電極2と、抵抗変化膜10と、上部電極50と、情報書き込み・消去・読み出し用の複数のプローブPB1と、可変電圧源92と、位置センサ94と、圧力センサ96と、X,Y,Zの方向に移動可能なプローブ移動ユニット98とを備える。圧力センサ96は、電極50を有する機能膜10付きのシリコン基板SにプローブPB1が接触する際に、適度な接触圧力になるよう、独立のプローブPB10で圧力を検知する。
【0011】
シリコン基板Sは本実施形態において例えば基体に対応する。基体としては、以下の実施形態のようにシリコン基板に限るものではなく、例えばガラス基板やセラミック基板を用いてもよい。
下部電極2は、酸化物も導電性を有する金属、例えばRuの電極膜で形成され、本実施形態において、例えば第1の電極に対応する。
【0012】
抵抗変化膜10は、および上部電極50は、本実施形態において、例えば記憶媒体をなす機能膜および第2の電極にそれぞれ対応し、互いに、電極50を構成する金属と機能膜10を構成する金属との間に、酸化物を形成する際のGibbs自由エネルギー低下量がより大きい、酸化しやすい金属と、Gibbs自由エネルギー低下量がより小さい、酸化しにくい金属との組み合わせから形成される。
【0013】
より具体的には、抵抗変化膜10は、酸素の濃度で導電率が変化する遷移金属、例えばバナジウム(V),ニオブ(Nb),タンタル(Ta),クロム(Cr),モリブデン(Mo),タングステン(W)などの酸化物膜で形成され、上部電極50は、酸化物も導電性を有する金属、例えばルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、またはその合金などで形成される。
【0014】
上部電極50の特徴の1つは、直径が約2nm〜約20nmの上面に凸の曲面を有する電極膜パターン、例えば底面が平坦な半球状の電極膜パターンで構成される点にある。
図2は、上部電極50の配置を示す平面図である。本実施形態において上部電極50はハニカム状に配置される。
【0015】
図1に戻り、上部電極50並びに、抵抗変化膜10および下部電極2のうちで上部電極50の直下の領域は、それぞれメモリセル(最小単位の半導体不揮発性記憶素子)MC1を構成する。
プローブPB1は、X方向およびY方向(図2参照)に複数本設けられたアレイ状のマルチプローブである。プローブPB1と下部電極2とは共に可変電圧源92に接続され、書き込み・消去時に可変電圧源92からプローブPB1へ正の電圧が印加されて抵抗変化膜10から酸素イオン0−が上部電極50へ移動して低抵抗になることにより「1」が書き込まれ、逆に負の電圧が印加されて上部電極50から酸素イオン0−が抵抗変化膜10へ移動して高抵抗になることにより「0」が書き込まれる。
本実施形態において、書き込み・消去動作と読み出し動作は、いずれも単一のアレイ内に配置されたプローブPB1の数量単位で行われ、プローブ移動ユニット98によってXYの二次元平面内で走査されることにより行われる。各プローブPB1は、図示しないセンスアンプおよびロウ/カラム(row/column)デコーダに接続され、本実施形態において、書き込み・消去時には1V乃至3V、読み出し時には1V乃至2Vの電圧が印加される。
【0016】
本実施形態によれば、上部電極50が実質的に半球状に形成されているので、例えば矩形状の凸パターンで形成された場合と比較してマルチプローブPB1の走査は円滑に行われる。
個々のプローブPB1と上部電極50との間の接触圧を最適にするため、位置センサ94により上部電極50の頂面の高さ(Z方向の位置)がモニタされ、圧力センサ96によりプローブPB1と上部電極50との間の接触圧がモニタされ、これらの検出結果に応じてプローブ移動ユニット98が個々のプローブPB1の高さを調整する。
【0017】
本実施形態の変形例の1つを図3の略示断面図に示す。同図中、最小単位のメモリセルMC3を点線で示す。図3の変形例においては、上部電極54の側面および底面が抵抗変化膜10に覆われるように形成され、上部電極54の頂面と抵抗変化膜10の頂面とはほぼ面一となっている。このため、プローブPB1の走査は、図1の実施形態の場合と比較してより一層容易になる。
【0018】
以上の実施形態1およびその変形例による接触型半導体不揮発性メモリによれば、上部電極50が酸化物でも導電性を有する金属またはその合金で形成され、プローブPB1が接触するのも実質的に半球状の導体であるため、「0」が書き込まれたメモリセルにおいても、低い抵抗率となり、わずかの接触面積でかつ、低い接触抵抗で書き込み・消去・読み出しを行うことができる。
【0019】
図6は、実施形態1およびその変形例における上部電極の抵抗率と上部電極の接触抵抗率との関係を示すグラフである。図6に示すように、上部電極50の抵抗率は1×10−3Ω・cm以下となり、上部電極50とプローブPB1との接触抵抗率は10−9Ω・cm以下になり、特性ばらつきが低減する。すなわち、高い信頼性で書き込み・消去・読み出しが可能な半導体不揮発性記憶装置が提供される。
【0020】
(2)記憶装置の製造方法
(a)実施形態1
図1乃至図3に示す半導体不揮発性記憶装置の製造方法について、実施形態1による半導体不揮発性記憶装置の製造方法として説明する。
【0021】
図4Aおよび図4Bは、図1および図2に示した半導体不揮発性記憶装置の製造方法を説明するための略示断面図である。
まず、シリコン基板Sの上に下部電極2と抵抗変化膜10を順次に積層して形成する。このとき、抵抗変化膜10の表面を水酸基(OH)または水素(H)またはフッ素(F)で終端させる処理を行うことが望ましい。
【0022】
次に、図4Aに示すように、抵抗変化膜10の上に、酸化物も導電性を有する金属、例えばルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)などの金属膜またはその合金膜52を約1nm〜約20nmの厚みで成膜する。
【0023】
次いで、シリコン基板S、下部電極2、抵抗変化膜10、および金属膜またはその合金膜52の積層体を真空処理装置(図示せず)に投入し、水素(H)もしくはフッ素(F)またはこれらの少なくともいずれかを含む分子を不活性ガスまたは窒素(N)で希釈した混合ガスを該真空装置に導入し、高周波(RF:adio−requency)または5GHz以上の周波数のマイクロ波による加熱、または電子サイクロトロン共鳴(ECR:lectron yclotron esonance)などによりプラズマを形成し、基板温度が約100℃〜約300℃になるように加熱処理を行う。これにより、金属膜またはその合金膜52が凝集して直径が約2nm〜約20nmの半球状の金属膜パターンが形成され、室温に至ると上部電極50となる。金属膜またはその合金膜52は、互いにほぼ等間隔になるよう凝集し、これにより、上部電極50は図2に示すようにハニカム状に配置される。このような凝集現象は、プラズマの代わりに、水素(H)もしくはフッ素(F)またはこれらの少なくともいずれかを含む分子を不活性ガスまたは窒素(N)で希釈した混合ガス中で5.8GHzまたはそれ以上の周波数の電磁波(約500〜約1000W)を照射して、約100〜約300℃の加熱を行った場合にも同様の現象と効果が確認された。もしも凝集した等間隔パターンの境界に金属が残留した場合には、エッチング除去により等間隔パターン間の電気的なショートを防止する。
【0024】
図4Cおよび図4Dは、図3に示した半導体不揮発性記憶装置の製造方法を説明するための略示断面図である。
まず、シリコン基板Sの上に下部電極2と抵抗変化膜10を順次に積層して形成する。
次に、エッチングにより、図4Cに示すように、抵抗変化膜10に、深さが10nm以下で直径が20nm以下の円柱状の穴パターン58を形成し、次いで、図4Dに示すように、1nm〜20nmの厚さの金属膜またはその合金膜56を成膜した後に真空装置内に投入する。
【0025】
続いて、水素(H)もしくはフッ素(F)またはこれらの少なくともいずれかを含む分子を不活性ガスまたは窒素(N)で希釈した混合ガスを該真空装置に導入して、高周波(RF)または50GHz以上の周波数のマイクロ波による加熱、またはそれらの電磁波か電子サイクロトロン共鳴(ECR)などを用いたプラズマを形成し、基板温度が約100〜約300℃になるように加熱処理を行う。その結果、膜56を構成する金属またはその合金が穴パターン58に凝集し、図3に示したように上面がほぼ平坦な形状の上部電極54が形成される。
【0026】
(b)実施形態2
本実施形態では、上部電極50の厚さが20nm以上である場合の製造方法を説明する。このような場合には、抵抗変化膜10上に成膜した金属膜またはその合金膜の凝集現象が均一に起こりにくい。そこで、金属膜またはその合金膜の上にさらに混合有機材料膜を成膜して凝集させ、これをマスクとするエッチング等により、ハニカム状に配置された上部電極を取得する。
【0027】
図5A乃至図5Eは、本実施形態による半導体不揮発性記憶装置の製造方法を説明するための略示断面図である。
まず、前述した実施形態1と同様にしてシリコン基板Sの上に下部電極2と抵抗変化膜10を順次に積層し、抵抗変化膜10の上に、酸化物も導電性を有する金属、例えばルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)などの金属膜またはその合金膜62を約20nm以上の厚みで成膜する。
【0028】
次に、自己組織化パターンを形成する有機物質(SAM)を含む溶媒に、シリコン基板S、下部電極2、抵抗変化膜10、および金属膜またはその合金膜62の積層体を浸すことにより、図5Aに示すように、混合有機材料膜72を形成する。本実施形態では、混合有機材料膜72の材料として、ポリスチレン/ポリブタジエンの組み合わせやポリスチレン/ポリイソプレンの組み合わせなどのブロックコポリマー(Block co−polymer)を使用する。
【0029】
次いで、約100〜約200℃のホットプレート加熱または上述した電磁波加熱を用いて、混合有機材料膜72を凝集させ、図5Bに示すようにハニカム状の有機材料パターン70を形成する。本実施形態では、上記加熱工程により、ポリスチレンパターンの周りをポリブタジエンやポリイソプレンで囲まれた構造ができ、この構造に対してオゾン(O)処理を行う。これにより、ポリスチレンでなる有機材料パターン70のみを残すことができる。
【0030】
続いて、ハニカム状の有機材料パターン70をマスクとして下地の金属膜またはその合金膜62を反応性イオンエッチング、ガスクラスターイオンビーム(GCIB:as luster on eam)またはイオンミリングなどにより選択的に除去することにより、図5Cに示すように電極パターン61を形成する。さらに、有機材料パターン70を有機溶媒または気相処理により除去することにより、図5Dに示すように電極パターン61が得られるまた、前述した加熱を行って電極パターン61を、上面が凸の曲面を有するようにさらに変形させてもよい。
【0031】
上述の実施形態1および2による半導体不揮発性記憶装置の製造方法によれば、凝集現象を用いることで、フォトリソグラフィを用いることなく上部電極50を形成できるので、低い製造コストで製造することができる。また、上部電極50が平面視においてハニカム状に配置されるので、上部電極50の直径をFとし、互いの配置間隔もFに等しい場合、単一のメモリセル当たりに必要な面積は2.2F〜2.3Fとなる。これに対して、例えば幅Fの矩形電極を同様に間隔Fでアレイ状に配置した倍は、単一のメモリセル当たり4Fの面積が必要になる。従って、集積度が4F/(2.2F〜2.3F)倍だけ高まる。
【0032】
このように実施形態1および2によれば、信頼性が高い高密度の半導体不揮発性記憶装置を低コストで製造することが可能である。
【0033】
(B)磁性体膜を記憶媒体とするMEMSプローブメモリ
(1)記憶装置
図7は、実施形態2による記憶装置の概略構成を示す図である。図7に示す記憶装置は、シリコン基板Sと、下部電極2と、磁性体膜20と、金属酸化膜層22と、磁性体電極パターン40と、書き込み・消去用プローブPB2と、コイル100と、書き込み・消去回路108と、読み出し用のマルチプローブPB1と、可変電圧源92と、位置センサ94と、圧力センサ96と、プローブ移動ユニット98,198と、を備える。
【0034】
磁性体膜20は、アモルファスCoFeB合金膜で構成され、シリコン基板Sの頂面に垂直な方向(図7のZ方向)に、シリコン基板S側からN極→S極と分極した状態で予め作成された磁性体膜で構成される。磁性体膜20は参照層として機能する。
金属酸化膜層22は、Al膜またはMgO膜で構成される。MgO膜は成膜時からある程度の結晶配向性を有しており、その後のランプ加熱、ホットプレート加熱または電磁波等による加熱によって結晶配向性が高くなり、また、下方で接触している磁性体膜20の結晶配向性も高くなるため、金属酸化膜層22としてはAl膜よりもMgO膜の方が望ましい。
【0035】
磁性体電極パターン40は金属酸化膜層22上に形成され、初期状態では磁性体膜20と同様にZ方向にシリコン基板S側からN極→S極と分極した状態を有する。
【0036】
書き込み・消去用プローブPB2にはコイル100が巻回され、書き込み・消去回路108から流れる電流の向きに応じて磁性体電極パターン40の分極が変化する。書き込み・消去動作によって磁性体電極パターン40の分極が下層の磁性体膜20と同一になる場合は低抵抗となって「1」の情報が記録された状態となり、磁性体膜20と逆になるい場合には高抵抗となって「0」の情報が記録された状態となる。磁性体電極パターン40への書き込み・消去動作については、後により具体的に説明する。
【0037】
(2)製造方法
図7に示す記憶装置の製造方法について、実施形態3による半導体不揮発性記憶装置の製造方法として図8Aおよび図8Bを参照しながら説明する。
【0038】
まず、前述した実施形態1と同様にしてシリコン基板Sの上に下部電極2を形成した後、アモルファスCoFeB合金膜を成膜して磁性体膜20を形成する。このとき、磁性体膜20は、シリコン基板Sの頂面に垂直な方向(図8AのZ方向)にS極とN極が予め分極した状態で作成しておく。本実施形態においては、シリコン基板S側からN極→S極の順で分極させる。
次に、磁性体膜20上にMgO膜を約1nm〜約2nmの厚さで成膜して金属酸化膜層22を形成する。
【0039】
続いて、図8Aに示すように、金属酸化膜層22の上に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)または電子のf軌道が満たされていない希土類金属を含む金属膜42を約1nm〜約10nmの厚さで成膜した後に真空装置内に投入し、水素(H)または水素(H)を含む分子を不活性ガスまたは窒素(N)で希釈した混合ガスを該真空装置に導入して、高周波(RF)または5GHz以上の周波数のマイクロ波による加熱またはそれらの電磁波か電子サイクロトロン共鳴(ECR)などによりプラズマを形成し、基板温度が約100〜約300℃になるように加熱処理を行う。なお、金属膜42の材料は、上述したものに限らず、磁性体材料であればよい。
【0040】
その結果、図8Bに示すように、金属膜42が凝集して、直径が約2nm〜約20nmの半球状の金属膜パターン40が形成される。金属電極パターン40は、図2に示すようにほぼ等間隔で配列した。この凝集現象は、プラズマの代わりに水素(H)または水素(H)を含む分子を不活性ガスまたは窒素(N)で希釈した混合ガス中で5.8GHzまたはそれ以上の周波数の電磁波(500−1000W)を照射して、約100℃〜約300℃の加熱処理を行った場合にも同様な現象と効果が確認される。
【0041】
(3)書き込み・消去方法および読み出し方法
図9に示すように、プローブ移動ユニット198により書き込み・消去用プローブPB2をメモリセルMC10の磁性体電極パターン40に接近させ、書き込み・消去回路108から書き込み信号に応じた方向の電流をコイル100に流す。コイル100は磁性体の書き込み・消去用プローブPB2に巻回され、これにより磁界が発生し、コイル100を流れる電流の向きに応じて磁性体電極パターン40がシリコン基板Sの頂面に垂直な方向(図9のZ方向)において分極する。
【0042】
例えば図9のメモリセルMC10aのように、シリコン基板Sから見てN極→S極と分極すれば、磁性体膜20の分極と同一であるので、読み出し時に読み出し用プローブPB1から下部電極2へ電流が流れ、情報「1」が検出される。これとは逆に、メモリセルMC10bのように、シリコン基板Sから見てS極→N極と分極すると、磁性体膜20の分極と逆になるために高抵抗となり、読み出し時に読み出し用プローブPB1から下部電極2へ電流が流れず、情報「0」が検出される。
【0043】
このように、実施形態2による半導体不揮発性記憶装置によれば、非接触で書き込み・消去が可能な記憶装置が提供される。
【0044】
また、上述した実施形態1と同様に、実施形態2による半導体不揮発性記憶装置によれば、金属電極パターン40が半球状に形成されているので、読み出し時にマルチプローブPB1で円滑な走査が可能である。
【0045】
(C)クロスポイント型メモリ
(1)記憶装置の概略構造
図10は、実施形態3による記憶装置の概略構成を示す図であり、図11は、図10のA−A線に沿った断面図である。図10および図11に示す記憶装置は、クロスポイント型メモリであり、シリコン基板S(図11参照)と、導体で形成されるワード線WL1,WL2,…と、ワード線WL1,WL2,…と交差するように導体で形成されるビット線BL1,BL2…と、メモリセルMC30とを備える。本実施形態において、ワード線WL1,WL2,…は、例えば第1の電極に対応し、また、ビット線BL1,BL2…は、例えば第2の電極に対応する。
【0046】
メモリセルMC30は、ワード線WL1,WL2,…上で、ワード線WL1,WL2,…とビット線BL1,BL2…との交差部分に形成される。メモリセルMC30は、図11に示すように、ワード線WL側から見て第1乃至第3の誘電体膜32,36,38が順に積層された構造体で構成される。そして、第2の誘電体膜36内には、電荷捕捉膜をなす、上面に凸の曲面を有する有機微粒子34、例えば底面が平坦な半球状の有機微粒子34が形成され、電荷を捕捉することにより情報を記憶する。
【0047】
他のクロスポイント型メモリと同様に、本実施形態においても、セレクタ(図示せず)によりメモリセルMC30の位置が特定される。そして、特定されたメモリセルMC30に書き込み・消去回路(図示せず)から電流が流される際に、第2の誘電体膜36内の有機微粒子34が電子を捕捉することにより情報が記録される。電子が有機微粒子34に捕捉されると、例えばN型のトランジスタ(図示せず)がメモリセルMC30に接続される場合は閾値電圧が上昇し、通常の電圧ではトランジスタがオンにならないため、情報「0」が検出される。
【0048】
(2)製造方法
図10および図11に示す記憶装置の製造方法について実施形態4による半導体不揮発性記憶装置の製造方法として図12A乃至図12Cを参照しながら説明する。
【0049】
まず、既知の方法によりシリコン基板S上にワード線WL1,WL2,…を形成した後に、約1nm〜約3nmの厚さのSiOまたはSiON膜を成膜して第1の誘電体膜32を形成し、続いて第1の誘電体膜32の表面を水素(H)またはフッ素(F)または水酸基(OH)で終端させる処理を行う。
【0050】
次に、図12Aに示すように、第1の誘電体膜32上に、酸化物形成時の自由エネルギーの低下量がSiよりも小さい金属(モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、鉛(Pd)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu))または金属の合金35を0.5nm〜2nmの厚みで成膜する。
次いで、図12Bに示すように、前述のマイクロ波またはそれらの電磁波か共鳴(ECR)を用いたプラズマまたは水素(H)やフッ素(F)を含む雰囲気中で約100℃〜約300℃の加熱処理を行い、凝集現象により、金属または合金35を、直径が3nm以下の半球体の金属または合金のパターン34を形成する。
【0051】
続いて、図12Cに示すように、第1の誘電体膜よりも窒素濃度が高い、または、誘電率の大きい第2の誘電体膜36を、金属または合金のパターン34を覆うように成膜し、さらに、第2の誘電体膜36の上に、約3〜約20nmの厚さのSiOまたはSiON膜またはSiN膜を成膜して第3の誘電体膜38を形成する。
【0052】
その後は、フォトレジストを用いたパターニングにより、ワード線WL1,WL2,…とビット線BL1,BL2…との交差部分となる領域が残存するように、第3の誘電体膜38、第2の誘電体膜36、金属または合金のパターン34、および第1の誘電体膜32を選択的に除去してメモリセルMC30を形成し、その上にさらにビット線BL1,BL2…を形成する。
【0053】
このように、本実施形態の記憶装置の製造方法によれば、電荷捕獲膜形成方法を利用して、ワード線とビットが交差する部分にメモリセルを形成することにより、10nm□以下のセルサイズで十分な数の電子を出し入れ可能な半導体不揮発性記憶装置を提供することが可能になる。
【0054】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述の実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
2…下部電極、10…抵抗変化膜、20…磁性体膜、22…金属酸化膜層、32…第1の誘電体膜、34…金属膜パターン(超微粒子)、36…第2の誘電体膜、38…第3の誘電体膜、40…磁性体電極パターン、50,60…上部電極、52,62…金属膜、70…有機材料パターン、92…可変電圧源、94…位置センサ、96…圧力センサ、98…プローブ移動ユニット、100…コイル、BL1,BL2…ビット線、MC1,MC3,MC10,MC30…メモリセル、PB1…情報書き込み・消去・読み出し用プローブ、PB2…磁性体書き込み・消去用プローブ、S…基板、WL1,WL2…ワード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体上に設けられた第1の電極と、
前記第1の電極上に成膜され、記憶媒体をなす機能膜と、
前記機能膜上または前記機能膜内に設けられ、上面に凸の曲面を有する第2の電極と、
を備える半導体不揮発性記憶装置。
【請求項2】
前記機能膜は抵抗変化膜であることを特徴とする請求項1に記載の半導体不揮発性記憶装置。
【請求項3】
前記第2の電極は、平面視においてハニカム状に複数配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体不揮発性記憶装置。
【請求項4】
前記第2の電極の頂面は前記機能膜の頂面と実質的に面一であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体不揮発性記憶装置。
【請求項5】
電圧源に接続され、前記第2の電極に接触することにより、前記機能膜への書き込み・消去および前記機能膜からの読み出しを行う複数の導電性プローブをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体不揮発性記憶装置。
【請求項6】
前記機能膜は磁性体膜であり、前記第2の電極は磁性体電極であることを特徴とする請求項1に記載の半導体不揮発性記憶装置。
【請求項7】
コイルが巻回されて書き込み・消去時および読み出し時に前記第2の電極に接近する磁性体プローブをさらに備え、
前記コイルに流れる電流の向きに応じて非接触で前記基体の頂面に垂直な方向へ前記磁性体膜を所望の態様で分極させることにより書き込み・消去が行われることを特徴とする請求項6に記載の半導体不揮発性記憶装置。
【請求項8】
基体上に形成された、第1の方向を長手方向とするライン状の第1の電極と、
前記第1の電極上に形成され、前記第1の方向と交差する第2の方向を長手方向とするライン状の第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との交差部分において前記第1の電極と前記第2の電極との間に形成されたメモリセルとを備え、
前記メモリセルは、前記第1の電極上に形成された第1乃至第3の誘電体膜の積層体と、前記第2の誘電体膜中に配置され、酸化物形成時の自由エネルギー低下量がシリコンよりも小さい金属または該金属と他の金属との合金で形成され、上面に凸の曲面を有する微粒子と、を含む、
半導体不揮発性記憶装置。
【請求項9】
基体上に第1の電極を形成する工程と、
前記第1の電極上に記憶媒体となる機能膜を成膜する工程と、
前記機能膜上に金属膜を成膜する工程と、
加熱処理による凝集現象を用いて前記金属膜から上面に凸の曲面を有する第2の電極を形成する工程と、
を備える半導体不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項10】
前記機能膜は抵抗変化膜であり、
前記金属膜は、その酸化物も導電性を有する金属を用いて成膜され、
前記加熱処理は、マイクロ波、プラズマ、および、水素(H)またはフッ素(F)を含む雰囲気の少なくともいずれかを用いて行われることを特徴とする請求項9に記載の半導体不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項11】
前記機能膜は磁性体膜であり、
前記金属膜は磁性体材料を用いて成膜されることを特徴とする請求項9に記載の半導体不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項12】
基体上に第1の方向を長手方向とするライン状の第1の電極を形成する工程と、
前記第1の方向と交差する第2の方向を長手方向とするライン状の第2の電極を前記第1の電極上に形成する工程と、
前記第1の電極と前記第2の電極との交差部分において前記第1の電極と前記第2の電極との間にメモリセルを形成する工程とを備え、
前記メモリセルを形成する工程は、
前記第1の電極上に第1の誘電体膜を成膜する工程と、
前記第1の誘電体膜上に、酸化物形成時の自由エネルギー低下量がシリコンよりも小さい金属を含む金属膜または金属合金膜を形成する工程と、
加熱処理による凝集現象を用いて前記金属膜または前記金属合金膜から、上面に凸の曲面を有する金属膜パターンを形成する工程と、
前記金属膜パターンを覆うように第2の誘電体膜を成膜する工程と、
前記第2の誘電体膜上に第3の誘電体膜を成膜する工程と、
を含む、
半導体不揮発性記憶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【公開番号】特開2012−238811(P2012−238811A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108500(P2011−108500)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】