説明

半導体加工用保護膜形成用塗布液、その調製方法およびこれより得られる半導体加工用保護膜

【課題】 高い膜強度と低い比誘電率を有するCMP犠牲膜やエッチング・ストッパー膜等の半導体加工用保護膜を形成するための塗布液、その調整方法および該塗布液より得られる半導体加工用保護膜に関する。
【解決手段】 (a)テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)およびアルコキシシラン(AS)をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)および水の存在下で加水分解して得られるケイ素化合物、またはテトラアルキルオルソシリケート(TAOS)をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)および水の存在下で加水分解または部分加水分解した後、アルコキシシラン(AS)またはその加水分解物もしくは部分加水分解物と混合し、さらに必要に応じてこれらの一部または全部を加水分解して得られるケイ素化合物、(b)有機溶媒、および(c)水を含む液状組成物であり、しかも該液状組成物中に含まれる水の量が35〜65重量%の範囲にあることを特徴とする半導体加工用保護膜形成用塗布液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い膜強度と低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を形成するための塗布液並びにその調製方法、および該塗布液を半導体基板または半導体基板上に形成された層間絶縁膜等の上部に塗布して得られる半導体加工用保護膜に関する。本発明でいう半導体加工用保護膜には、(1)層間絶縁膜の化学機械研磨時に用いられるCMP(Chemical Mechanical Polishing)犠牲膜、(2)層間絶縁膜のエッチング加工時に用いられるエッチング・ストッパー膜等を含み、これらの保護膜は、ハードマスク膜やキャップ膜等と云われる場合もある。
【背景技術】
【0002】
近年、情報ネットワーク社会の進展に伴い、情報通信機器に対する高機能化、低消費電力化、小型軽量化等のニーズが高まっており、これらを実現するために半導体デバイスのさらなる高速化、高集積度化が求められている。従来,半導体デバイスの性能は微細化によって向上してきたが,デバイスの設計ルールがサブミクロン領域に入ってくると,集積度は向上するものの,配線容量の増大のため,消費電力はかえって増大し,配線遅延やクロストークなどの問題も起こる等,微細化による性能の向上は望めなくなってきた。特に、多層配線を有する0.25ミクロンルール以下の半導体装置においては、金属配線間隔が狭くなるため、静電誘導による金属配線のインピーダンスが増大し、応答速度の遅れや消費電力の増大などが懸念されている。このため、半導体基板とアルミニウム配線層や銅配線層などの金属配線層との間、あるいは金属配線層間に設けられる層間絶縁膜の誘電率をできるだけ小さくすることが必要とされている。
【0003】
本願発明者らは、上記のような問題を解決することを目的として鋭意研究を行った結果、(a)テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)および特定のアルコキシシラン(AS)をテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の存在下で加水分解して得られるケイ素化合物を含む低誘電率非晶質シリカ系被膜形成用塗布液を用いれば、比誘電率が3.0以下、さらに詳しくは2.5以下であり、しかもヤング弾性率が6.0GPa以上の高い被膜強度を有する非晶質シリカ系被膜を形成できることを見いだし、これを出願している。(特許文献1に記載)さらに、本願発明者らは、この発明に関連して(1)前記ケイ素化合物を含む塗布液を基板上に塗布して80〜350℃の温度で加熱処理した後、350〜450℃の温度で焼成して低誘電率非晶質シリカ系被膜を形成する方法、および(2)前記ケイ素化合物を含む塗布液を基板上に塗布して80〜350℃の温度で加熱処理した後、エレクトロンビームを照射してキュアすることによって低誘電率非晶質シリカ系被膜を形成する方法を見いだし、これらを出願している。(特許文献2および特許文献3に記載。)
【0004】
このようにして、半導体製造業界の要望に合致する層間絶縁膜が形成できるようになったが、これに伴い、昨今では、優れた研磨耐性や高いエッチング選択比を与えることのできる高い膜強度と低い比誘電率を有し、更には密着性、耐薬品性、耐アッシング性、耐プラズマ性、耐熱性、耐吸湿性、安定性等に優れたCMP犠牲膜やエッチング・ストッパー膜等の半導体加工用保護膜を形成するための材料の提供が求められている。
従来、これらの保護膜としては、プラズマCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)による気相成長法を用いて形成される二酸化ケイ素膜(SiO2)、窒化ケイ素膜(SiN)、炭化ケイ素膜(SiC)、炭化窒素ケイ素膜(SiCN)等が一般的に用いられている。しかし、これらの保護膜は、一般にその比誘電率が二酸化ケイ素膜で3.8前後、その他の膜で4.0以上と高いため、たとえ前記の層間絶縁膜の比誘電率が3.0以下と低くても、半導体基板全体の実効誘電率が高くなってしまうという欠点を有している。
【0005】
これに対し、前記保護膜の比誘電率をより低くすることなどを目的として、ポリカルボシラン等の有機ケイ素ポリマーを含む塗布液等を用いて、CMP犠牲膜やエッチング・ストッパー膜等の半導体加工用保護膜を形成する方法(いわゆる、塗布法)も一部、提案されている。(特許文献4および特許文献5等に記載。)しかし、これらの塗布液を用いて形成された前記保護膜は、その比誘電率が3.0以上であるばかりでなく、必ずしも高い膜強度のものが得られないため、昨今の半導体製造業界からの要望に合致しているとは云えない。
【特許文献1】特開2004−149714号公報
【特許文献2】特開2004−153147号公報
【特許文献3】特願2004−141749号出願明細書
【特許文献4】特開2004−186610号公報
【特許文献5】特開2004−186611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この技術分野における半導体製造業界からの要望はますます高まっており、昨今では、ヤング弾性率が8.0 GPa以上(願わくば、10.0 GPa以上)の高い膜強度と3.0以下の低い比誘電率を有し、更には密着性、耐薬品性、耐アッシング性、耐プラズマ性、耐吸湿性、耐熱性、安定性等に優れたCMP犠牲膜やエッチング・ストッパー膜等の半導体加工用保護膜を形成するための材料の提供が求められている。
そこで、本発明者らは、昨今の半導体製造業界からの要望に合致した材料を求めて鋭意研究を繰り返したところ、本発明者らが低誘電率特性を備えた層間絶縁膜の形成を目的として開発した上記の特許文献1に記載された塗布液の調製原料から特定のものを選択し、さらに得られる塗布液の組成その他を或る一定範囲に調整した材料(塗布液)を使用すればよいことを見いだし、本発明を成すに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、高い膜強度(ヤング弾性率が8.0 GPa以上)と低い比誘電率(比誘電率が2.7〜3.0)を有し、更には密着性、耐薬品性、耐アッシング性、耐プラズマ性、耐熱性、耐吸湿性、安定性等に優れた半導体加工用保護膜を形成するための塗布液並びにその調製方法、および該塗布液を半導体基板上に形成された層間絶縁膜の上部に塗布して得られる半導体加工用保護膜を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第一の半導体加工用保護膜形成用塗布液は、
高い膜強度と低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を形成するための塗布液であって、
(a)テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)および下記一般式(I)で示されるアルコキシシラン(AS)をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)および水の存在下で加水分解して得られるケイ素化合物、
nSi(OR)4-n (I)
(式中、Xは水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基もしくはビニル基を表し、Rは水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、アリール基もしくはビニル基を表す。また、nは0〜3の整数である。)
(b)有機溶媒、および
(c)水
を含む液状組成物であり、しかも前記液状組成物中に含まれる水の量が35〜65重量%の範囲にあることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る第二の半導体加工用保護膜形成用塗布液は、
高い膜強度と低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を形成するための塗布液であって、
(a)テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)および水の存在下で加水分解または部分加水分解した後、上記一般式(I)で示されるアルコキシシラン(AS)またはその加水分解物もしくは部分加水分解物と混合し、さらに必要に応じてこれらの一部または全部を加水分解して得られるケイ素化合物、
(b)有機溶媒、および
(c)水
を含む液状組成物であり、しかも前記液状組成物中に含まれる水の量が35〜65重量%の範囲にあることを特徴としている。
【0010】
これらの塗布液において、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)は、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)、テトラメチルオルソシリケート(TMOS)またはその混合物であることが好ましく、また前記アルコキシシラン(AS)は、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)またはその混合物であることが好ましい。
前記ケイ素化合物としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)と水に加えて、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の存在下で加水分解して得られたものも使用することができる。
前記有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を含む有機溶媒であることが好ましい。
前記ケイ素化合物の数平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算基準で10000〜100000の範囲にあることが好ましい。
また、前記ケイ素化合物の含有量は、前記液状組成物に対し0.1〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
【0011】
本発明に係る第一の半導体加工用保護膜形成用塗布液の調製方法は、
高い膜強度と低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を形成するための塗布液を調製する方法であって、
(a)有機溶媒と混合されたテトラアルキルオルソシリケート(TAOS)および下記一般式(I)で示されるアルコキシシラン(AS)を、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)および水の存在下で加水分解してケイ素化合物を含む液状組成物を調製する工程、
nSi(OR)4-n (I)
(式中、Xは水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基もしくはビニル基を表し、Rは水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、アリール基もしくはビニル基を表す。また、nは0〜3の整数である。)
(b)前記工程(a)から得られる液状組成物中に含まれる有機溶媒の少なくとも一部をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)と溶媒置換する工程、
(c)前記工程(b)から得られる液状組成物中に含まれるケイ素化合物の量を形成すべき半導体加工用保護膜の種類や用途に応じて調整すると共に、水の量を35〜65重量%の範囲に調整する工程
を含むことを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る第二の半導体加工用保護膜形成用塗布液の調製方法は、
高い膜強度と低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を形成するための塗布液を調製する方法であって、
(a)有機溶媒と混合されたテトラアルキルオルソシリケート(TAOS)をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)および水の存在下で加水分解または部分加水分解した後、有機溶媒と混合された上記一般式(I)で示されるアルコキシシラン(AS)またはその加水分解物もしくは部分加水分解物と混合し、さらに必要に応じてこれらの一部または全部を加水分解してケイ素化合物を含む液状組成物を調製する工程、
(b)前記工程(a)から得られる液状組成物中に含まれる有機溶媒の少なくとも一部をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)と溶媒置換する工程、
(c)前記工程(b)から得られる液状組成物中に含まれるケイ素化合物の量を形成すべき半導体加工用保護膜の種類や用途に応じて調整すると共に、水の量を35〜65重量%の範囲に調整する工程
を含むことを特徴としている。
【0013】
これらの塗布液の調製方法において、前記工程(a)で使用される有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類であることが好ましい。
前記工程(a)で使用されるテトラアルキルオルソシリケート(TAOS)は、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)、テトラメチルオルソシリケート(TMOS)またはその混合物であることが好ましく、前記工程(a)で使用されるアルコキシシラン(AS)は、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)またはその混合物であることが好ましい。
前記工程(a)で調製される液状組成物としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)と水に加えて、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の存在下で加水分解して得られるケイ素化合物を含むものも使用することができる。
また、前記工程(b)における溶媒置換は、ロータリーエバポレーターを用いて行うことが好ましい。
【0014】
一方、本発明に係る半導体加工用保護膜は、以下の方法により半導体基板上に形成されることが好ましい。
(1)本発明に係る半導体加工用保護膜形成用塗布液を、半導体基板または半導体基板上に形成された層間絶縁膜等の上部に塗布した後、該基板を80〜350℃の温度で加熱処理し、さらに350〜450℃の温度で焼成する方法。
(2)本発明に係る半導体加工用保護膜形成用塗布液を、半導体基板または半導体基板上に形成された層間絶縁膜等の上部に塗布した後、該基板を80〜350℃の温度で加熱処理し、さらにエレクトロンビームを照射してキュアする方法。
【0015】
このようにして得られる半導体加工用保護膜は、該保護膜中に含まれる細孔の平均細孔径が3nm以下であり、しかも2nm未満の細孔径を有するミクロポアの細孔容積率が75%以上であることが好ましく、また前記保護膜中に含まれる細孔の最大細孔径は10nm以下であり、しかも2nm以上の細孔径を有するメソポアの平均細孔径は4nm以下であることが好ましい。
前記保護膜のヤング弾性率は、8.0 GPa以上であることが好ましい。また、前記保護膜の比誘電率は、2.7〜3.0の範囲にあることが好ましい。
さらに、前記保護膜の好ましき用途としては、層間絶縁膜の化学機械研磨時に用いられるCMP犠牲膜や層間絶縁膜のエッチング加工時に用いられるエッチング・ストッパー膜等がある。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る半導体加工用保護膜形成用塗布液によれば、ヤング弾性率(Youngs Modulus)が8.0 GPa以上、さらに詳しくは10.0 GPa以上の高い膜強度と3.0以下の低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を半導体基板上に形成することができる。さらに詳しくは、平均細孔径が2nm以下であり、しかも3nm未満の細孔径を有するミクロポアの細孔容積率が75%以上である細孔を含む保護膜を形成することができ、更には最大細孔径が10nm以下であり、しかも2nm以上の細孔径を有するメソポアの平均細孔径が4nm以下である細孔を含む保護膜を形成することができる。これに加えて、本発明に係る前記塗布液によれば、密着性、耐薬品性、耐アッシング性、耐プラズマ性、耐熱性、耐吸湿性、安定性等に優れた保護膜を形成することができる。
【0017】
また、このようにして得られる半導体加工用保護膜、即ちCMP犠牲膜やエッチング・ストッパー膜等は、昨今の半導体製造業界の要望に十分に対応しており、好適に使用できるものである。
さらに付言すれば、本発明に係る前記塗布液を使用すれば、上記の特許文献1に記載された低誘電率非晶質シリカ系被膜形成用塗布液を用いて層間絶縁膜を形成するための設備(例えば、ホットプレート)をそのまゝ使用することができ、更には同様な方法で半導体加工用保護膜を形成できるという利点を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る半導体加工用保護膜形成用塗布液およびその調製方法について具体的に説明する。さらに、本発明に係る前記塗布液を用いて形成される半導体加工用保護膜について具体的に説明する。
【0019】
〔半導体加工用保護膜形成用塗布液〕
本発明に係る第一の半導体加工用保護膜形成用塗布液(塗布液A)は、
高い膜強度と低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を形成するための塗布液であって、
(a)テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)および下記一般式(I)で示されるアルコキシシラン(AS)をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)および水の存在下で加水分解して得られるケイ素化合物、
nSi(OR)4-n (I)
(式中、Xは水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基もしくはビニル基を表し、Rは水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、アリール基もしくはビニル基を表す。また、nは0〜3の整数である。)
(b)有機溶媒、および
(c)水
を含む液状組成物であり、しかも前記液状組成物中に含まれる水の量が35〜65重量%の範囲にあることを特徴としている。
【0020】
また、本発明に係る第二の半導体加工用保護膜形成用塗布液(塗布液B)は、
高い膜強度と低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を形成するための塗布液であって、
(a)テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)および水の存在下で加水分解または部分加水分解した後、上記一般式(I)で示されるアルコキシシラン(AS)またはその加水分解物もしくは部分加水分解物と混合し、さらに必要に応じてこれらの一部または全部を加水分解して得られるケイ素化合物、
(b)有機溶媒、および
(c)水
を含む液状組成物であり、しかも前記液状組成物中に含まれる水の量が35〜65重量%の範囲にあることを特徴としている。
【0021】
ここで、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)としては、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート、テトラプロピルオルソシリケート、テトライソプロピルオルソシリケート、テトラブチルオルソシリケートなどが挙げられる。この中でも、本発明で使用される前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)としては、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)、テトラメチルオルソシリケート(TMOS)またはその混合物であることが好ましい。
【0022】
前記アルコキシシラン(AS)としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジフルオロジメトキシシラン、ジフルオロジエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシランなどが挙げられる。この中でも、本発明で使用されるアルコキシシラン(AS)としては、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)またはその混合物であることが好ましい。
【0023】
前記ケイ素化合物としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)と水に加えて、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の存在下で加水分解して得られたものであってもよい。この場合、前記テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)は、前記テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)に対する重量比が10/10以下、好ましくは5/10以下にあることが望ましい。ここで、前記重量比が10/10を超えると、比誘電率が2.7以下になるものの、被膜の膜強度も低下して半導体加工用保護膜に要求されるヤング弾性率を達成することが難しくなるため、好ましくない。
【0024】
また、前記有機溶媒としては、水と相溶性があり、前記ケイ素化合物を分散させることができるアルコール類、ケトン類、グリコール類、グリコールエーテル類、エステル類などが挙げられる。この中でも、本発明で使用される有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を含む有機溶媒、さらに詳しくはメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)との混合物からなる有機溶媒であることが好ましい。特に、エタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)との混合物は、前記ケイ素化合物を分散させた時に、非常に安定性がよいため、これらを含む塗布液の寿命を長く保つことができるので、本発明においては、これを使用することが望ましい。さらに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が含まれていると、塗布液の表面張力を下げることができる。
さらに、前記水は、不純物イオンを含まない純水または超純水であることが好ましい。
【0025】
本発明に係る塗布液において、前記液状組成物中に含まれる水の量は、該液状組成物に対し35〜65重量%、好ましくは40〜60重量%の範囲にある。ここで、水の含有量が35重量%未満であると、塗布液の安定性が悪いためその寿命が短くなり、また65重量%を超えると、塗布液の表面張力が高くなってシリコンウェハーや層間絶縁膜等の塗布面で塗布液がはじかれ、結果として該塗布面全体に均一な被膜を形成することができなくなる。
前記ケイ素化合物の数平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算基準で10000〜100000、好ましくは20000〜60000の範囲にあることが好ましい。ここで、この数平均分子量が10000未満であると、前記塗布面全体に均一な被膜を形成することが難しくなり、また100000を超えると、塗布液の安定性が悪くなる。
【0026】
また、前記ケイ素化合物の含有量は、前記液状組成物に対し0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%の範囲にあることが望ましい。ここで、この含有量が0.1重量%未満であると、前記塗布面全体に均一な被膜を所望の膜厚で形成することが難しくなる。また、この含有量が10重量%を超えても、被膜の形成には特に問題はないが、半導体加工用保護膜として必要な膜厚を超えてしまう場合がある。さらに具体的には、CMP犠牲膜形成用塗布液の場合には、前記ケイ素化合物を1〜7重量%の範囲で含んでいることが好ましく、またエッチング・ストッパー膜形成用塗布液の場合には、前記ケイ素化合物を0.1〜4重量%の範囲で含んでいることが好ましい。
また、前記有機溶媒は、前記液状組成物を構成する残余成分(バランス成分)であって、その含有量は特に制限されるものではないが、前記液状組成物に対し25〜64.9重量%の範囲で含まれていることが望ましい。
【0027】
〔半導体加工用保護膜形成用塗布液の調製方法〕
[塗布液A]
本発明に係る第一の半導体加工用保護膜形成用塗布液(塗布液A)の調製方法は、
高い膜強度と低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を形成するための塗布液を調製する方法であって、
(a)有機溶媒と混合されたテトラアルキルオルソシリケート(TAOS)および下記一般式(I)で示されるアルコキシシラン(AS)を、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)および水の存在下で加水分解してケイ素化合物を含む液状組成物を調製する工程、
nSi(OR)4-n (I)
(式中、Xは水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基もしくはビニル基を表し、Rは水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、アリール基もしくはビニル基を表す。また、nは0〜3の整数である。)
(b)前記工程(a)から得られる液状組成物中に含まれる有機溶媒の少なくとも一部をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)と溶媒置換する工程、
(c)前記工程(b)から得られる液状組成物中に含まれるケイ素化合物の量を形成すべき半導体加工用保護膜の種類や用途に応じて調整すると共に、水の量を35〜65重量%の範囲に調整する工程
を含むことを特徴としている。
【0028】
ここで、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)としては、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート、テトラプロピルオルソシリケート、テトライソプロピルオルソシリケート、テトラブチルオルソシリケートなどが挙げられる。この中でも、本発明で使用される前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)としては、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)、テトラメチルオルソシリケート(TMOS)またはその混合物であることが好ましい。
【0029】
また、前記アルコキシシラン(AS)としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジフルオロジメトキシシラン、ジフルオロジエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシランなどが挙げられる。この中でも、本発明で使用されるアルコキシシラン(AS)としては、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)またはその混合物であることが好ましい。
【0030】
さらに、上記の特許文献1に記載された低誘電率非晶質シリカ系被膜形成用塗布液の調製方法においては、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド(TBAOH)またはその混合物から選択されたテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)が使用されたが、本発明に係る半導体加工用保護膜形成用塗布液の調製に際しては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)が使用される。これは、このテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)によって調製された半導体加工用保護膜形成用塗布液を用いると、メソポアの細孔容積率が極端に少ない緻密な膜構造の半導体加工用保護膜を形成することができるからである。これにより、本発明においては、高い膜強度を有する半導体加工用保護膜を得ることができる。
また、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)に関しては、最近、高純度化されたものが市販されているので、これを使用することが望ましい。
【0031】
しかし、不純物としてナトリウム(Na)やカリウム(K)などのアルカリ金属元素の化合物からなる不純物がそれぞれ元素基準で50重量ppbより多く含まれると、半導体基板を構成するトランジスタ部分へ拡散し、トランジスタの劣化を引き起こすことがあり、また臭素(Br)や塩素(Cl)などのハロゲン元素の化合物からなる不純物がそれぞれ元素基準で1重量ppmより多く含まれると、半導体基板を構成するアルミニウム配線や銅配線などが腐食して、致命的な損傷を与えることがある。さらに、これらのアルカリ金属元素化合物の不純物が50重量ppbより多く含まれると、テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)および前記一般式(I)で示されるアルコキシシラン(AS)をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)の存在下で加水分解する際に、この不純物が触媒として作用し、結果として得られるケイ素化合物がゼオライト状の結晶性シリカとなる。その結果、形成されるシリカ系被膜がゼオライト結晶質となるため、その被膜表面が凹凸となり、平滑な表面が得られないことがある。
したがって、上記のような不純物を含むテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)しか手に入らない場合には、これらの不純物をあらかじめ上記レベルまで取り除いておく必要がある。すなわち、本発明で使用する前に、これを陽イオン交換樹脂処理工程および陰イオン交換樹脂処理工程に供することにより、その中に含まれるナトリウム(Na)、カリウム(K)などのアルカリ金属元素の化合物および臭素(Br)、塩素(Cl)などのハロゲン族元素の化合物からなる不純物を実質的に除去して高純度化することが必要である。
【0032】
上記の通り、本発明に係る半導体加工用保護膜形成用塗布液の調製方法においては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)が使用されるが、ある一定量以下であるならば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)に加えてテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)を使用することができる。すなわち、前記工程(a)で調製される液状組成物は、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)および水の存在下で加水分解して得られるケイ素化合物を含むものであってもよい。この場合、前記テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の使用量は、前記テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)に対する重量比が10/10以下、好ましくは5/10以下にあることが望ましい。ここで、前記重量比が10/10を超えると、比誘電率が2.7以下になるものの、被膜の膜強度も低下して半導体加工用保護膜に要求されるヤング弾性率を達成することが難しくなるため、好ましくない。
また、前記テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)についても、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)の場合と同様に、その中に含まれるナトリウム(Na)、カリウム(K)などのアルカリ金属元素の化合物および臭素(Br)、塩素(Cl)などのハロゲン族元素の化合物からなる不純物を実質的に除去して高純度化したものを使用する必要がある。
【0033】
本発明で使用される、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)と前記アルコキシシランのモル比(TAOS/AS)は、SiO2換算基準で6/4〜2/8、好ましくは5/5〜3/7の範囲にあることが望ましい。ここで、前記モル比(TAOS/AS)が6/4を超えると、得られるシリカ系被膜の疎水性が悪くなる。また、当該モル比が2/8未満であると、十分な膜強度を有するシリカ系被膜を得ることが難しくなる。
さらに、本発明方法で使用される、前記テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合物(TMAOH+TPAOH))と、シリカ系被膜形成成分(TAOS+AS)とのモル比(TMAOH/(TAOS+AS))(またはモル比((TMAOH+TPAOH)/(TAOS+AS)))は、SiO2換算基準で1/10〜7/10、好ましくは1/10〜6/10の範囲にあることが望ましい。ここで、前記モル比が1/10未満であると、テンプレート材としての機能が弱いため、被膜中に形成される細孔(細孔容積)が少なくなり、3.0以下の比誘電率を有するシリカ系被膜を得ることが難しくなる。また、当該モル比が7/10を超えると、テンプレート材としての機能が強いため、被膜中に形成される細孔(細孔容積)が多くなり、8.0 GPa以上(特に、10 GPa以上)のヤング弾性率からなる膜強度のシリカ系被膜を得ることが難しくなる。さらに、半導体基板上にシリカ系被膜を形成した場合、該被膜中に一部、残存して、半導体としての機能に悪影響を及ぼす可能性もある。
【0034】
また、前記工程(a)で使用される有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、グリコール類、グリコールエーテル類、エステル類、炭化水素類などが挙げられ、より具体的には、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタンなどの炭化水素類やトルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。この中でも、本発明方法においては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類を使用することが好ましい。特に、エタノールは、安全で分散性がよいので、本発明においては これを使用することが望ましい。
また、この有機溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、前記のシリカ系被膜形成成分(TAOS +AS)に対する重量混合比(有機溶媒/(TAOS+AS))が1/1〜3/1、好ましくは1/1〜2.5/1の範囲にあることが望ましい。
【0035】
次いで、本発明に係る前記被膜形成用塗布液(塗布液A)の調製方法について、さらに具体的に説明する。
工程(a)
前記工程(a)は、以下のような態様で実施することが好ましい。これにより、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)および前記アルコキシシラン(AS)の加水分解物であるケイ素化合物を含む液状組成物が得られる。
(i)テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)および上記一般式(I)で示されるアルコキシシラン(AS)を前記有機溶媒と混合した後、10〜30℃の温度でこれらの成分が十分に混合するまで100〜200rpmの速度で攪拌する。
(ii)次に、攪拌下にある該混合溶液中にテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)の水溶液(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合水溶液)を5〜20分かけて滴下した後、さらに10〜30℃の温度で30〜90分間、100〜200rpmの速度で攪拌する。
(iii)次いで、30〜80℃の温度に加熱した後、この温度に保ちながら1〜72時間、100〜200rpmの速度で撹拌する。
【0036】
この場合、上記に示す滴下方法(すなわち、前記(i)で調製されたTAOS 、ASおよび有機溶媒からなる混合溶液中に、前記(ii)のTAAOHの水溶液を滴下する方法)に代えて、前記(i)で調製されたテトラアルキルオルソシリケート(TAOS)、アルコキシシラン(AS)および有機溶媒からなる混合溶液を、上記と同様な条件下(温度10〜30℃、攪拌速度100〜200rpm)で、前記(ii)のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)の水溶液(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合水溶液)の中に30〜90分かけてゆっくりと滴下してもよい。
前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)、前記アルコキシシラン(AS)および前記テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合物)は、それぞれ上記のモル比となるように混合または添加して使用される。
【0037】
さらに、前記の混合溶液中に滴下されるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)の水溶液(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合水溶液)は、蒸留水または超純水中にテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合物)を5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%の割合で含んでいることが望ましい。しかし、この水溶液中に含まれる水は、テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)およびアルコキシシラン(AS)の加水分解反応を生起させるために使用されるので、その加水分解反応に必要な量を含むものでなければならない。なお、この加水分解反応を促進させるための触媒としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH))がその機能を有しているので、特別にその他の触媒(たとえば、アンモニア)を外部から添加する必要はない。
【0038】
前記加水分解の反応条件としては、30〜80℃、好ましくは35〜60℃の温度で、攪拌しながら1〜72時間、好ましくは10〜48時間かけて行うことが望ましい。
このようにして得られた液状組成物中に含まれるケイ素化合物(TAOS およびASの加水分解物)の数平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算で10000〜100000、好ましくは20000〜60000の範囲にあることが望ましい。この数平均分子量が10000未満であると、前記塗布面全体に均一な被膜を形成することが難しくなり、また100000を超えると、塗布液の安定性が悪くなる。
【0039】
工程(b)
前記工程(b)は、一般的に使用されているロータリーエバポレーターを用いて、以下のような態様で実施することが好ましい。これにより、前記工程(a)で使用された有機溶媒を、上記の新たな有機溶媒で溶媒置換した前記ケイ素化合物を含む液状組成物が得られる。
(i)前記工程(a)で得られた液状組成物を、ロータリーエバポレーターのフラスコ中に入れ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)またはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)と水との混合溶液をフラスコ中に入れる。
(ii)次いで、ロータリーエバポレーターを駆動して、50〜90℃、好ましくは60〜80℃の温度条件下、−0.05〜−0.1MPa、好ましくは−0.08〜−0.1MPaの減圧条件下で、前記フラスコを30〜120rpm、好ましくは60〜90rpmの速度で回転させる。すると、前記工程(a)で使用された有機溶媒(例えば、エタノール)と水が蒸発してくるので、これを冷却して系外に排出する。
(iii)前記操作(ii)を必要時間、続けて行うことにより、前記有機溶媒とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)とが溶媒置換された液状組成物が得られる。
【0040】
また、前記操作(i)において、前記工程(a)で得られた液状組成物のみを、ロータリーエバポレーターのフラスコ中に入れて、前記操作(ii)を行って、蒸発してくる前記有機溶媒と水を系外に排出させ、その後に、前記プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)またはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)と水との混合溶液を加えて、前記の溶媒置換を行うこともできる。しかし、この場合は、前記液状組成物中に含まれるケイ素化合物が変性することもあるので、注意を要する。
この工程(b)では、前記工程(a)から得られる液状組成物中に含まれる有機溶媒や水、更にはアルコキシシラン(AS)などの加水分解で副生されるアルコール類などが分離・除去される。この工程の操作をロータリーエバポレーターを用いて行えば、前記の溶媒置換をほゞ完全に行うこともできるが、本発明においては、必ずしもこれを完全に行う必要はない。
【0041】
工程(c)
前記工程(c)は、以下のような態様で実施することが好ましい。これにより、前記工程(b)から得られる液状組成物中に含まれるケイ素化合物の量を形成すべき半導体加工用保護膜の種類や用途に応じて調整すると共に、水の量を35〜65重量%の範囲に調整した液状組成物が得られる。
(i)前記工程(b)で得られた液状組成物の組成を測定する。
(ii)次いで、この液状組成物に、攪拌しながら純水もしくは超純水、またはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の水溶液を添加して、該液状組成物中に含まれるケイ素化合物の量を形成すべき半導体加工用保護膜の種類や用途に応じて調整すると共に、水の量を調整する。
このようにして、前記液状組成物中に含まれる水の量は、該液状組成物に対し35〜65重量%、好ましくは40〜60重量%の範囲となるように調整される。ここで、水の含有量が35重量%未満であると、塗布液の安定性が悪いためその寿命が短くなり、また65重量%を超えると、塗布液の表面張力が高くなってシリコンウェハーや層間絶縁膜等の塗布面で塗布液がはじかれ、結果として該塗布面全体に均一な被膜を形成することができなくなる。
【0042】
さらに、前記ケイ素化合物の量は、前記液状組成物に対し0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%の範囲となるように調製することが好ましい。ここで、この含有量が0.1重量%未満であると、前記塗布面全体に均一な被膜を所望の膜厚で形成することが難しくなる。なお、この含有量が10重量%を超えても、被膜の形成には特に問題はないが、半導体加工用保護膜として必要な膜厚を超えてしまう場合がある。さらに具体的には、CMP犠牲膜形成用塗布液を調製する場合には、前記ケイ素化合物の含有量は、1〜7重量%の範囲にあることが好ましく、またエッチング・ストッパー膜形成用塗布液を調製する場合には、前記ケイ素化合物の含有量は、0.1〜4重量%の範囲にあることが好ましい。
【0043】
また、前記有機溶媒は、前記液状組成物を構成する残余成分(バランス成分)であって、その含有量は特に制限されるものではないが、前記液状組成物に対し25〜64.9重量%の範囲で含まれていることが望ましい。なお、ここで云う有機溶媒の含有量は、前記工程(b)で溶媒置換用に使用された有機溶媒と、溶媒置換されずに残存している有機溶媒(前記工程(a)で使用)との合計量を意味する。
これにより、高い膜強度と低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を形成するための塗布液Aを得ることができる。
【0044】
[塗布液B]
本発明に係る第二の半導体加工用保護膜形成用塗布液(塗布液B)の調製方法は、
高い膜強度と低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を形成するための塗布液を調製する方法であって、
(a)有機溶媒と混合されたテトラアルキルオルソシリケート(TAOS)をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)および水の存在下で加水分解または部分加水分解した後、有機溶媒と混合された上記一般式(I)で示されるアルコキシシラン(AS)またはその加水分解物もしくは部分加水分解物と混合し、さらに必要に応じてこれらの一部または全部を加水分解してケイ素化合物を含む液状組成物を調製する工程、
(b)前記工程(a)から得られる液状組成物中に含まれる有機溶媒の少なくとも一部をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)と溶媒置換する工程、
(c)前記工程(b)から得られる液状組成物中に含まれるケイ素化合物の量を形成すべき半導体加工用保護膜の種類や用途に応じて調整すると共に、水の量を35〜65重量%の範囲に調整する工程
を含むことを特徴としている。
【0045】
ここで、前記のテトラアルキルオルソシリケート(TAOS)、アルコキシシラン(AS)およびテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)は、塗布液Aの調製用に例示したものと同じものを使用することができる。
また、前記テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)は、塗布液Aの場合と同様に、市販のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを陽イオン交換樹脂処理工程および陰イオン交換樹脂処理工程に供することにより、その中に含まれるナトリウム(Na)、カリウム(K)などのアルカリ金属元素の化合物および臭素(Br)、塩素(Cl)などのハロゲン族元素の化合物からなる不純物を実質的に除去しておく必要がある。すなわち、この中に含まれるナトリウム(Na)やカリウム(K)などのアルカリ金属元素の化合物からなる不純物の含有量をそれぞれ元素基準で50重量ppb以下とし、また臭素(Br)や塩素(Cl)などのハロゲン元素の化合物からなる不純物の含有量をそれぞれ元素基準で1重量ppm以下とする必要がある。
【0046】
この液状組成物(塗布液B) の調製は、テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)および水の存在下で加水分解または部分加水分解した後、アルコキシシラン(AS)またはその加水分解物もしくは部分加水分解物を混合し、さらに必要に応じてそれらの一部または全部を加水分解させる形で行われる。
ここで、前記アルコキシシラン(AS)をあらかじめ加水分解(または部分加水分解)した後に混合する場合には、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)の加水分解(または部分加水分解)の場合と同様に、前記テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)の存在下で行うことが望まれる。
【0047】
このように、この液状組成物(塗布液B)の調製においても、塗布液Aの場合と同様に、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)が使用されるが、ある一定量以下であるならば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)に加えてテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)を使用することができる。すなわち、前記工程(a)で調製される液状組成物は、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)および水の存在下で加水分解して得られるケイ素化合物を含むものであってもよい。この場合、前記テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の使用量は、前記テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)に対する重量比が10/10以下、好ましくは5/10以下であることが望ましい。ここで、前記重量比が10/10を超えると、比誘電率が2.7以下になるものの、被膜の膜強度も低下して半導体加工用保護膜に要求されるヤング弾性率を達成することが難しくなるため、好ましくない。
また、前記テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)についても、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)の場合と同様に、その中に含まれるナトリウム(Na)、カリウム(K)などのアルカリ金属元素の化合物および臭素(Br)、塩素(Cl)などのハロゲン族元素の化合物からなる不純物を実質的に除去して高純度化したものを使用する必要がある。
【0048】
この液状組成物(塗布液B) の調製に使用される前記テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合物(TMAOH+TPAOH))は、塗布液Aの場合と同様に、各シリカ系被膜形成成分、すなわちテトラアルキルオルソシリケート(TAOS)およびアルコキシシラン(AS)に対するモル比(TMAOH/TAOSおよびTMAOH/AS)(またはモル比((TMAOH+TPAOH)/TAOS)および((TMAOH+TPAOH)/AS))が、それぞれSiO2換算基準で1/10〜7/10、好ましくは1/10〜6/10の範囲となるように添加することが望ましい。従って、これらを混合した後のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合物(TMAOH+TPAOH))と、シリカ系被膜形成成分(TAOS+AS)とのモル比(TMAOH/(TAOS+AS))(またはモル比((TMAOH+TPAOH)/(TAOS+AS)))は、塗布液Aの場合と同様に、SiO2換算基準で1/10〜7/10、好ましくは1/10〜6/10の範囲となる。
また、これらの成分を混合する場合、塗布液Aの場合と同様に、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)と前記アルコキシシラン(AS)のモル比(TAOS/AS)が、SiO2換算基準で6/4〜2/8、好ましくは5/5〜3/7の範囲となるように混合することが望ましい。
【0049】
次いで、本発明に係る前記被膜形成用塗布液(塗布液B)の調製方法について、さらに具体的に説明する。
工程(a)
前記工程(a)は、以下のような態様で実施することが好ましい。これにより、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)および前記アルコキシシラン(AS)の加水分解物であるケイ素化合物を含む液状組成物が得られる。なお、この実施態様には、以下に示す「ケイ素化合物調製法(1)」と「ケイ素化合物調製法(2)」がある。
【0050】
ケイ素化合物調製法(1)
(i)テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)を有機溶媒と混合した後、10〜30℃の温度でこれらの成分が十分に混合するまで100〜200rpmの速度で攪拌する。
(ii)次に、攪拌下にある該混合溶液中にテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)の水溶液(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合水溶液)を5〜20分かけて滴下した後、さらに10〜30℃の温度で30〜90分間、100〜200rpmの速度で攪拌する。
(iii)次いで、30〜80℃の温度に加熱した後、この温度に保ちながら0.5〜72時間、100〜200rpmの速度で撹拌して、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)の加水分解物および/または部分加水分解物を含む混合溶液を調製する。
(iv)さらに、上記一般式(I)で示されるアルコキシシラン(AS)またはこれを有機溶媒と混合したものを、前記(iii)で得られた混合溶液中に混合した後、10〜30℃の温度でこれらの成分が十分に混合するまで100〜200rpmの速度で攪拌する。
【0051】
(v)次に、攪拌下にある該混合溶液中にテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)の水溶液(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合水溶液)を5〜20分かけて滴下した後、さらに10〜30℃の温度で30〜90分間、100〜200rpmの速度で攪拌する。
(vi)次いで、前記(v)で得られた混合溶液を30〜80℃の温度に加熱した後、この温度に保ちながら10〜30時間、100〜200rpmの速度で撹拌する。
この場合、上記に示す滴下方法(すなわち、前記(i)で調製されたTAOS および有機溶媒からなる混合溶液中に前記(ii)のTMAOHの水溶液を滴下する方法)に代えて、前記(i)で調製されたテトラアルキルオルソシリケート(TAOS)および有機溶媒からなる混合溶液を、上記と同様な条件下(温度10〜30℃、攪拌速度100〜200rpm)で、前記(ii)のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)の水溶液(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合水溶液)の中に30〜90分かけてゆっくりと滴下してもよい。
【0052】
ケイ素化合物調製法(2)
(i)テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)を有機溶媒と混合した後、10〜30℃の温度でこれらの成分が十分に混合するまで100〜200rpmの速度で攪拌する。
(ii)次に、攪拌下にある該混合溶液中にテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)の水溶液(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合水溶液)を5〜20分かけて滴下した後、さらに10〜30℃の温度で30〜90分間、100〜200rpmの速度で攪拌する。
(iii)次いで、30〜80℃の温度に加熱した後、この温度に保ちながら0.5〜72時間、100〜200rpmの速度で撹拌して、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)の加水分解物および/または部分加水分解物を含む混合溶液を調製する。
(iv)さらに、上記一般式(I)で示されるアルコキシシラン(AS)を有機溶媒と混合した後、10〜30℃の温度でこれらの成分が十分に混合するまで100〜200rpmの速度で攪拌する。
【0053】
(v)次に、攪拌下にある該混合溶液中にテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)の水溶液(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合水溶液)を5〜20分かけて滴下した後、さらに10〜30℃の温度で30〜90分間、100〜200rpmの速度で攪拌する。
(vi)次いで、30〜80℃の温度に加熱した後、この温度に保ちながら0.5〜72時間、100〜200rpmの速度で撹拌して、前記アルコキシシラン(AS)の加水分解物および/または部分加水分解物を含む混合溶液を調製する。
(vii)次に、前記(iii)で得られた混合溶液と前記(vi)で得られた混合溶液を混合した後, 10〜30℃の温度でこれらの成分が十分に混合するまで100〜200rpmの速度で攪拌する。
(viii)さらに、必要に応じ前記(vii)で得られた溶液を30〜80℃の温度に加熱した後、この温度に保ちながら10〜30時間、100〜200rpmの速度で撹拌する。
【0054】
この場合、上記に示す滴下方法(すなわち、前記(i)で調製されたTAOSおよび有機溶媒からなる混合溶液中に前記(ii)のTMAOHの水溶液を滴下すると共に、前記(iv)で調製されたASおよび有機溶媒からなる混合溶液中に前記(v)のTMAOHの水溶液を滴下する方法)に代えて、前記(i)で調製されたテトラアルキルオルソシリケート(TAOS)および有機溶媒からなる混合溶液を、上記と同様な条件下(温度10〜30℃、攪拌速度100〜200rpm)で前記(ii)のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)の水溶液(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合水溶液)の中に30〜90分かけてゆっくりと滴下すると共に、前記(iv)で調製されたアルコキシシラン(AS)および有機溶媒からなる混合溶液を、上記と同様な条件下(温度10〜30℃、攪拌速度100〜200rpm)で、前記(v)のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)の水溶液(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合水溶液)の中に30〜90分かけてゆっくりと滴下してもよい。
【0055】
ここで、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)、前記アルコキシシラン(AS)および前記テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合物))は、それぞれ上記のモル比となるように混合または添加して使用される。
前記の有機溶媒としては、塗布液Aの調製用に例示したものと同じものを使用することができる。ここで、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)および前記アルコキシシラン(AS)と混合するそれぞれの有機溶媒は、その種類(たとえば、アルコール類)が同じであれば異なっていてよいが、できるだけ同一なものであることが望ましい。
【0056】
また、この有機溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、塗布液Aの場合と同様に、前記の各シリカ系被膜形成成分(TAOS およびAS)に対する重量混合比(有機溶媒/(TAOS+AS))が1/1〜3/1、好ましくは1/1〜2.5/1の範囲にあることが望ましい。従って、これらを混合した後の有機溶媒とシリカ系被膜形成成分(TAOS+AS)の重量混合比(有機溶媒/(TAOS+AS))は、塗布液Aの場合と同様に、1/1〜3/1、好ましくは1/1〜2.5/1の範囲となる。
さらに、前記の混合有機溶媒中に滴下されるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)の水溶液(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合水溶液)は、塗布液Aの場合と同様に、蒸留水または超純水中にテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の混合物)を5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%の割合で含んでいることが望ましい。
【0057】
前記加水分解の反応条件としては、塗布液Aの場合と同様に、30〜80℃、好ましくは35〜60℃の温度で、攪拌しながら0.5〜72時間、好ましくは10〜48時間かけて行うことが望ましい。この場合、前記ケイ素化合物調製法(1)および(2)において、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)またはアルコキシシラン(AS)を単独で加水分解する時間は短くてもよいが、次のステップではこれらが完全に加水分解する程度の時間(たとえば、10〜30時間)をかけて行うことが望ましい。
このようにして得られた液状組成物中に含まれるケイ素化合物(TAOS およびASの加水分解物)の数平均分子量は、塗布液Aの場合と同様に、ポリエチレンオキサイド換算で10000〜100000、好ましくは20000〜60000の範囲にあることが望ましい。
【0058】
工程(b)
前記工程(b)は、塗布液Aの場合と同様に、以下のような態様で実施することが好ましい。これにより、前記工程(a)で使用された有機溶媒を、上記の新たな有機溶媒で溶媒置換した前記ケイ素化合物を含む液状組成物が得られる。
(i)前記工程(a)で得られた液状組成物を、ロータリーエバポレーターのフラスコ中に入れ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)またはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)と水との混合溶液をフラスコ中に入れる。
(ii)次いで、ロータリーエバポレーターを駆動して、50〜90℃、好ましくは60〜80℃の温度条件下、−0.05〜−0.1MPa、好ましくは−0.08〜−0.1MPaの減圧条件下で、前記フラスコを30〜120rpm、好ましくは60〜90rpmの速度で回転させる。すると、前記工程(a)で使用された有機溶媒(例えば、エタノール)と水が蒸発してくるので、これを冷却して系外に排出する。
(iii)前記操作(ii)を必要時間、続けて行うことにより、前記有機溶媒とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)とが溶媒置換された液状組成物が得られる。
【0059】
また、前記操作(i)において、前記工程(a)で得られた液状組成物のみを、ロータリーエバポレーターのフラスコ中に入れて、前記操作(ii)を行って、蒸発してくる前記有機溶媒と水を系外に排出させ、その後に、前記プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)またはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)と水との混合溶液を加えて、前記の溶媒置換を行うこともできる。しかし、この場合は、前記液状組成物中に含まれるケイ素化合物が変性することもあるので、注意を要する。
この工程(b)では、塗布液Aの場合と同様に、前記工程(a)から得られる液状組成物中に含まれる有機溶媒や水、更にはアルコキシシラン(AS)などの加水分解で副生されるアルコール類などが分離・除去される。この工程の操作をロータリーエバポレーターを用いて行えば、前記の溶媒置換をほゞ完全に行うこともできるが、本発明においては、必ずしもこれを完全に行う必要はない。
【0060】
工程(c)
前記工程(c)は、塗布液Aの場合と同様に、以下のような態様で実施することが好ましい。これにより、前記工程(b)から得られる液状組成物中に含まれるケイ素化合物の量を形成すべき半導体加工用保護膜の種類や用途に応じて調整すると共に、水の量を35〜65重量%の範囲に調整した液状組成物が得られる。
(i)前記工程(b)で得られた液状組成物の組成を測定する。
(ii)次いで、この液状組成物に、攪拌しながら純水もしくは超純水、またはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の水溶液を添加して、該液状組成物中に含まれるケイ素化合物の量を形成すべき半導体加工用保護膜の種類や用途に応じて調整すると共に、水の量を調整する。
このようにして、前記液状組成物中に含まれる水の量は、塗布液Aの場合と同様に、該液状組成物に対し35〜65重量%、好ましくは40〜60重量%の範囲となるように調整される。
【0061】
さらに、前記ケイ素化合物の量は、塗布液Aの場合と同様に、前記液状組成物に対し0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%の範囲となるように調製することが好ましい。さらに具体的には、CMP犠牲膜形成用塗布液を調製する場合には、前記ケイ素化合物の含有量は、1〜7重量%の範囲にあることが好ましく、またエッチング・ストッパー膜形成用塗布液を調製する場合には、前記ケイ素化合物の含有量は、0.1〜4重量%の範囲にあることが好ましい。
また、前記有機溶媒は、塗布液Aの場合と同様に、前記液状組成物を構成する残余成分(バランス成分)であって、その含有量は特に制限されるものではないが、前記液状組成物に対し25〜64.9重量%の範囲で含まれていることが望ましい。
これにより、高い膜強度と低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を形成するための塗布液Bを得ることができる。
【0062】
〔半導体加工用保護膜の形成方法〕
本発明に係る半導体加工用保護膜の形成方法としては、
(1)前記の半導体加工用保護膜形成用塗布液を、半導体基板または半導体基板上に形成された層間絶縁膜等の上部に塗布した後、該基板を80〜350℃の温度で加熱処理し、さらに350〜450℃の温度で焼成する方法(被膜形成方法A)、
(2)前記の半導体加工用保護膜形成用塗布液を、半導体基板または半導体基板上に形成された層間絶縁膜等の上部に塗布した後、該基板を80〜350℃の温度で加熱処理し、さらにエレクトロンビームを照射してキュアする方法(被膜形成方法B)
等がある。
以下に、これらの被膜形成方法について、具体的に説明する。
【0063】
[被膜形成方法A]
塗布工程
一般に、被膜形成用塗布液を基板上に塗布するためには、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、転写法等の塗布方法が採用されているが、本発明においても、このような従来公知の方法を用いて半導体加工用保護膜形成用塗布液を塗布することができる。この中でも、半導体基板上などに被膜形成用塗布液を塗布する場合には、スピンコート法が好適で、塗布膜厚の均一性や低発塵性などにおいて優れている。従って、本発明においては、このスピンコート法による塗布法を採用することが望ましいが、大口径の半導体基板上などに塗布する場合には、転写法などを採用してもよい。
【0064】
加熱工程
このようにして半導体基板上に塗布された被膜は、80〜350℃の温度にて加熱処理される。
ここで、この加熱処理を、350℃を超えた温度で行うと、上記の塗布被膜中に含まれる有機溶媒が急激に蒸発して、被膜中に比較的、大口径の細孔や空隙を形成してしまうこともあるので、その被膜強度が低下することがある。従って、この加熱処理は、必要に応じその温度を80〜350℃の範囲で段階的に上げて行うことが望ましい。たとえば、150℃の温度にて1分間、250℃の温度にて1分間、さらに350℃の温度にて1分間などの段階的温度で加熱処理する方法等である。また、この加熱処理を80℃未満の温度で行うと、上記の塗布被膜中に含まれる有機溶媒の殆どが蒸発せずにそのまま被膜中に残ってしまうことが多く、この加熱処理の目的を達成することができないばかりでなく、形成される被膜の膜厚にムラが生じることがある。
また、この加熱処理は、被膜の膜厚などによっても異なるが、1〜10分、好ましくは2〜5分をかけて行うことが望ましい。
【0065】
さらに、この加熱処理は、不活性ガスとしての窒素ガス雰囲気下または空気雰囲気下で行うことができる。これは、この処理が350℃以下という比較的、低い温度条件下で短時間行われるので、たとえ酸素を比較的多量に含んでいる空気雰囲気下で加熱処理しても半導体基板上に配設された金属配線に対し金属酸化などによるダメージを与えないからである。また、微量の酸素が被膜中に取り込まれる可能性が高まるので、後段の焼成処理工程で処理する過程でSi-O-Si結合の架橋の進んだシリカ系被膜が生成され、耐吸湿性(疎水性)と高い膜強度を有する半導体加工用保護膜を形成し易くなる。
このようにして加熱処理を施すと、上記の塗布被膜中に含まれる有機溶媒が蒸発するとともに、該被膜中に含まれるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH))が分解して脱離し、また一方では固形成分であるシリカ系被膜形成成分の重合が進んで硬化するとともに、加熱の過程で重合体の溶融粘度が低下して被膜のリフロー性が増大し、得られる被膜の平坦性が向上する結果となる。なお、この加熱処理は、前記の塗布工程で得られた基板を枚葉式のホットプレート上に載置して行うことが好ましい。
【0066】
焼成工程
次いで、前記の加熱処理が施された被膜は、不活性ガスの雰囲気下で、350〜450℃の温度にて焼成処理される。
前記不活性ガスとしては、窒素ガスを用いることが望ましく、さらに必要に応じて、これに酸素ガスまたは空気を加えて、少量の酸素(例えば、500〜10000容量ppm程度の酸素)を含む不活性ガスを用いてもよい。(国際出願公開WO 01/48806 A1 公報などに記載。)
前記焼成温度は、上記の被膜形成用塗布液の調製時に使用されるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)(またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)とテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH))の量やその塗布液の組成、更には形成すべき保護膜の種類(CMP犠牲膜やエッチング・ストッパー膜等)などによっても異なるが、高い膜強度と低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を得るためには、350〜450℃の温度範囲から選択することが望まれる。
【0067】
ここで、焼成処理の温度が350℃未満であると、シリカ系被膜形成成分の前駆体の架橋が進みにくいので充分な被膜強度を有する被膜が得られず、またこの焼成処理の温度が450℃を越えると、半導体基板を構成するアルミニウム配線や銅配線などが酸化されたり、あるいは溶融されたりして、当該配線層に致命的な損傷を与えることがある。
また、この焼成処理は、被膜形成用塗布液の組成や形成すべき保護膜の種類(CMP犠牲膜やエッチング・ストッパー膜等)や被膜の膜厚などによっても異なるが、5〜90分、好ましくは10〜60分かけて行うことが望ましい。
さらに、この焼成処理は、前記加熱工程の場合と同様に、枚葉式のホットプレート上に基板を載せて行うことが好ましい。
このようにして得られる半導体加工用保護膜の膜厚は、形成すべき保護膜の種類などによって異なり、CMP犠牲膜では50〜200nmの範囲にあり、またエッチング・ストッパー膜では20〜100nmの範囲にあることが望ましい。
【0068】
[被膜形成方法B]
塗布工程
本発明に係る前記塗布液は、前記被膜形成方法Aの場合と同様に、基板上に塗布される。
加熱工程
このようにして基板上に塗布された被膜は、前記被膜形成方法Aの場合と同様に、80〜350℃の温度にて加熱処理される。
【0069】
キュア工程
次いで、前記の加熱処理を施された被膜は、不活性ガス雰囲気下でエレクトロンビームを照射することによりキュア(硬化処理)される。
照射されるエレクトロンビームは、加速電圧が10〜26kVの範囲にあることが望ましい。ここで、加速電圧が26kVを超えると、シリコン基板(シリコンウェハー)やその上に形成されるシリカ系被膜等へのダメージが大きくなり、さらには該被膜の比誘電率が所望値(3.0以下)より大きくなってしまうことがある。また、加速電圧が10kV未満であると、所望の被膜強度(例えば、ヤング弾性率が10 GPa 以上)を有するシリカ系被膜が得られないことがある。
また、エレクトロンビームの照射線量は、50〜1000μC/cm2、好ましくは300〜600μC/cm2の範囲にあることが望ましい。ここで、照射線量が1000μC/cm2を超えると、形成されるシリカ系被膜の比誘電率が所望値(3.0以下)より大きくなってしまうことがあり、また50μC/cm2未満であると、所望の被膜強度(例えば、ヤング弾性率が10 GPa 以上)を有するシリカ系被膜が得られないことがある。
【0070】
さらに、このエレクトロンビームの照射は、280〜410℃、好ましくは300〜400℃の温度に加熱された不活性ガス、たとえば窒素ガスの雰囲気下で行うことが望ましい。ここで、この温度が410℃を超えると、半導体基板を構成するアルミニウム配線や銅配線などが酸化されたり、あるいは溶融されたりして、当該配線層に致命的な損傷を与えることがある。また、この温度が280℃未満であると、シリカ系被膜形成成分の前駆体の架橋が進みにくいので充分な被膜強度を有する被膜が得られないことがある。
また、このキュア処理は、被膜形成用塗布液の種類や被膜の膜厚などによっても異なるが、5〜90分、好ましくは10〜60分かけて行うことが望ましい。さらに、このキュア処理は、前記加熱工程の場合と同様に、枚葉式のホットプレート上に基板を載せて行うことが好ましい。
このようにして得られる半導体加工用保護膜の膜厚は、形成すべき保護膜の種類などによって異なり、CMP犠牲膜では50〜200nmの範囲にあり、またエッチング・ストッパー膜では20〜100nmの範囲にあることが望ましい。
【0071】
〔半導体加工用保護膜〕
本発明に係る半導体加工用保護膜は、上記の被膜形成方法より得られる被膜で、ヤング弾性率が8.0 GPa以上、さらに詳しくは10.0 GPa以上の高い膜強度を有し、更には比誘電率が3.0以下、さらに詳しくは2.7〜3.0の低誘電率特性を備えている。
すなわち、本発明に係る半導体加工用保護膜形成用塗布液によれば、被膜中に含まれる細孔の平均細孔径が3nm以下であり、しかも2nm以下のミクロポアの細孔容積率が75%以上である細孔を含む被膜を形成することができ、更には最大細孔径が10nm以下であり、しかも2nm以上の細孔径を有するメソポアの平均細孔径が4nm以下である細孔を含む被膜を形成することができる。これにより、前記のような特性を備えた半導体加工用保護膜が得られる。
【0072】
これに加えて、本発明に係る前記塗布液によれば、以下に示すような特性を有する半導体加工用保護膜を形成することができる。
(1)前記保護膜は、被膜表面の粗さ(Rms)が1nm以下である平滑な表面を有している。(この表面粗さは、原子間力顕微鏡AFMで測定された値の二乗平均粗さである。)これは、ゼオライト被膜がもつMFI結晶構造などのX線回折ピークを有しない非晶質のシリカ系被膜であることによる。
(2)前記保護膜は、それ自体が耐吸湿性(疎水性)に優れた被膜であるので、たとえ飽和水蒸気を含む空気雰囲気下に放置しても、ゼオライト被膜のように比誘電率の悪化(すなわち、比誘電率の増加)を招くことがない。
(3)前記保護膜は、層間絶縁膜などの被膜形成面との密着性、耐アルカリ性などの耐薬品性や耐クラック性に優れ、更にはレジスト処理時の耐アッシング性やビアホール作成時の耐プラズマ性(耐熱性)などにおいても優れた特性を備えている。
【0073】
よって、本発明においては、昨今の半導体製造業界からの要望に合致したCMP犠牲膜やエッチング・ストッパー膜等の半導体加工用保護膜を提供することができる。
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0074】
テトラエチルオルソシリケート(TEOS、多摩化学工業(株)製)、メチルトリメトキシシラン(MTMS、信越化学工業(株)製)および99.5重量%濃度のエタノール(ETOH、和光純薬(株)製)を表1に示す割合で混合し、この混合溶液を20℃の温度に保持し、150rpmの速度で30分間撹拌した。
これらの混合溶液に、表1に示すテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド((TMAOH、多摩化学(株)製))の水溶液を10分かけて滴下し、さらに20℃の温度で200rpmの速度で1時間撹拌した。その後、50℃の温度に加熱し、この温度条件下にて200rpmの速度で攪拌しながら20時間、前記のシリカ系被膜形成成分(TEOS およびMTMS)の加水分解を行った。なお、ここで使用したテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド((TMAOH)中の不純物の含有量は、元素基準でナトリウム10重量ppb以下(検出限界)、カリウム10重量ppb(検出限界)、臭素1重量ppm以下および塩素1重量ppm以下であった。
【0075】
次いで、このようにして得られたシリカ系被膜形成成分の加水分解物(ケイ素化合物)を含む混合溶液をロータリーエバポレーター(柴田科学(株)製R-114)のフラスコ中に入れ、さらに純水50重量%およびプロピレングリコールモノメチルエーテル50重量%を含む混合溶媒を表1に示す割合で入れて、前記混合溶液に含まれるエタノールをプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、協和発酵ケミカル(株)製)と溶媒置換する工程に供した。この時、ロータリーエバポレーターは、温度70℃、圧力−0.09MPa(減圧状態)の条件下で、前記フラスコを70rpmの速度で回転させながら操作した。
その結果、前記のケイ素化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノールおよび水を表1に示す割合で含む液状組成物が得られた。
【0076】
次いで、これらの液状組成物から100gづつ取り出し、これらに純水および/またはプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加して、それぞれの液状組成物中に含まれる水の量とケイ素化合物の量を調整した後、200rpmの速度で1時間撹拌した。これにより、表2に示す組成からなる液状組成物(被膜形成用塗布液)を得た。なお、表2に示すケイ素化合物の含有率(重量%)は、前記液状組成物の一部を150℃の温度条件下で乾燥して得られる残留固形物の量から換算したものである。(前記液状組成物を150℃の温度条件下で乾燥すると、該液状組成物中に含まれる有機溶媒と水はそのまゝ蒸発し、さらにテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)等は分解して蒸発するので、ケイ素化合物のみが固形分として残こることになる。なお、以下も同様である。)また、ケイ素化合物の数平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算基準で表したものである。
このようにして得られた被膜形成用塗布液5mlを、従来公知のスピンコート法(東京エレクトロン(株)製ACT-8)を用いて8インチサイズのシリコンウェハー基板上に滴下して、2000rpmの速度で20秒間、塗布処理を行った。このような操作を繰り返し行い、塗布処理を施した複数枚の基板を得た。
【0077】
次に、これらの基板を枚葉式のホットプレート(東京エレクトロン(株)製)上に載置して、窒素ガス雰囲気下、150℃の温度にて3分間、加熱処理を行った。この加熱処理工程では、被膜中に含まれる有機溶媒(PGMEおよびエタノール)などが蒸発してくるので、これらを系外に排出した。
さらに、これらの基板を枚葉式のホットプレート上に載せたまま、窒素ガス雰囲気下、400℃の温度にて30分間、焼成処理を行った。次に、これらの基板(実施例基板(1)〜(5))を室温近くの温度まで冷却した後、系外に取り出した。
このようにして得られた基板上に形成されたシリカ系被膜の膜厚(SOPRA製分光エリプソメーターESVG)は、約100nmであった。
【0078】
次いで、基板上に形成されたシリカ系被膜の(i)平均細孔径(窒素吸着法、Quantachrome社製、Autosorb-1)、(ii)細孔分布(2nm未満のミクロポアおよび2nm以上のメソポアの細孔容積率、窒素吸着法、Quantachrome社製、Autosorb-1)、(iii)被膜強度(ヤング弾性率Young's Modulus、ナノインデンテーション法、MTS Systems 社製ナノインデンターDCM)、(iV)比誘電率(水銀プローブ法、周波数1MHz、Solid State Measurements 社製SSM495)および(V)酸素プラズマ照射前後における被膜の水分吸着量変化(TDS法:Desorption Mass-Spectroscopy、電子科学(株)製 EMD-1000)を測定した。その結果を表3に示す。
なお、この実施例1で使用された上記の処理装置および測定・分析装置については、以下に示す実施例2〜4および比較例1〜2でも同じものを使用した。
【0079】
【表1】

【実施例2】
【0080】
テトラメチルオルソシリケート41.4g(TMOS、多摩化学工業(株)製)、メチルトリメトキシシラン85.5g(MTMS、信越化学工業(株)製)および99.5重量%濃度のエタノール476.6g(ETOH、和光純薬(株)製)を混合し、この混合溶液を20℃の温度に保持し、150rpmの速度で30分間撹拌した。
この混合溶液に、実施例1で使用したテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液186.2g(7.8重量%のTMAOHを含む)を10分かけて滴下し、さらに20℃の温度で150rpmの速度で1時間撹拌した。その後、50℃の温度に加熱し、この温度条件下にて200rpmの速度で攪拌しながら20時間、前記のシリカ系被膜形成成分(TEOS およびMTMS)の加水分解を行った。
【0081】
次いで、実施例1と同様な条件下で、このようにして得られたシリカ系被膜形成成分の加水分解物(ケイ素化合物)を含む混合溶液をロータリーエバポレーター(柴田科学(株)製R-114)のフラスコ中に入れ、さらに純水50重量%およびプロピレングリコールモノメチルエーテル50重量%を含む混合溶媒789.59gを入れて、前記混合溶液に含まれるエタノールをプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、協和発酵ケミカル(株)製)と溶媒置換する工程に供した。
その結果、前記ケイ素化合物を約16重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルを約34重量%、エタノールを約12重量%および水を約38重量%を含む液状組成物が得られた。
【0082】
次いで、この液状組成物100gを取り出し、これに純水50重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル50重量%を含む混合溶媒を添加して、それぞれの液状組成物中に含まれる水の量とケイ素化合物の量を調整した後、200rpmの速度で1時間撹拌した。これにより、表2に示す組成からなる液状組成物(被膜形成用塗布液)を得た。なお、表2に示すケイ素化合物の含有率(重量%)は、前記液状組成物の一部を150℃の温度条件下で乾燥して得られる残留固形物の量から換算したものである。また、ケイ素化合物の数平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算基準で表したものである。
このようにして得られた被膜形成用塗布液5mlを、実施例1と同様な条件下で、スピンコート法を用いて8インチサイズのシリコンウェハー基板上に塗布した。
次に、この基板を枚葉式のホットプレート上に載置して、窒素ガス雰囲気下、150℃の温度にて3分間、加熱処理を行った。この加熱処理工程では、被膜中に含まれる有機溶媒(PGMEおよびエタノール)などが蒸発してくるので、これらを系外に排出した。
【0083】
さらに、この基板を枚葉式のホットプレート上に載せたまま、窒素ガス雰囲気下、400℃の温度にて30分間、焼成処理を行った。次に、この基板(実施例基板(6))を室温近くの温度まで冷却した後、系外に取り出した。
このようにして得られた基板上に形成されたシリカ系被膜の膜厚(SOPRA製分光エリプソメーターESVG)は、約100nmであった。
次いで、実施例1の場合と同様に、基板上に形成されたシリカ系被膜の(i)平均細孔径、(ii)細孔分布、(iii)被膜強度、(iV)比誘電率および(V)酸素プラズマ照射前後における被膜の水分吸着量変化を測定した。その結果を表3に示す。
【実施例3】
【0084】
テトラエチルオルソシリケート96.0g(TEOS、多摩化学工業(株)製)、メチルトリエトキシシラン79.77g(MTMS、信越化学工業(株)製)および99.5重量%濃度のエタノール463.1g(ETOH、和光純薬(株)製)を混合し、この混合溶液を20℃の温度に保持し、150rpmの速度で30分間撹拌した。
この混合溶液に、実施例1で使用したテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液58.2g(25重量%のTMAOHを含む)、後記する比較例2に記載の方法で精製したテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液54.2g(15重量%のTPAOHを含む)および純水93.9gからなる混合液を10分かけて滴下し、さらに20℃の温度で150rpmの速度で1時間撹拌した。その後、50℃の温度に加熱し、この温度条件下にて200rpmの速度で攪拌しながら20時間、前記のシリカ系被膜形成成分(TEOS およびMTMS)の加水分解を行った。
【0085】
次いで、実施例1と同様な条件下で、このようにして得られたシリカ系被膜形成成分の加水分解物(ケイ素化合物)を含む混合溶液をロータリーエバポレーター(柴田科学(株)製R-114)のフラスコ中に入れ、さらに純水50重量%およびプロピレングリコールモノメチルエーテル50重量%を含む混合溶媒845.23gを入れて、前記混合溶液に含まれるエタノールをプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、協和発酵ケミカル(株)製)と溶媒置換する工程に供した。
その結果、前記ケイ素化合物を約16重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルを約35重量%、エタノールを約12重量%および水を約37重量%を含む液状組成物が得られた。
【0086】
次いで、この液状組成物100gを取り出し、これに純水50重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル50重量%を含む混合溶媒を添加して、それぞれの液状組成物中に含まれる水の量とケイ素化合物の量を調整した後、200rpmの速度で1時間撹拌した。これにより、表2に示す組成からなる液状組成物(被膜形成用塗布液)を得た。なお、表2に示すケイ素化合物の含有率(重量%)は、前記液状組成物の一部を150℃の温度条件下で乾燥して得られる残留固形物の量から換算したものである。また、ケイ素化合物の数平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算基準で表したものである。
このようにして得られた被膜形成用塗布液5mlを、実施例1と同様な条件下で、スピンコート法を用いて8インチサイズのシリコンウェハー基板上に塗布した。
次に、これらの基板を枚葉式のホットプレート上に載置して、窒素ガス雰囲気下、150℃の温度にて3分間、加熱処理を行った。この加熱処理工程では、被膜中に含まれる有機溶媒(PGMEおよびエタノール)などが蒸発してくるので、これらを系外に排出した。
【0087】
さらに、この基板を枚葉式のホットプレート上に載せたまま、窒素ガス雰囲気下、400℃の温度にて30分間、焼成処理を行った。次に、この基板(実施例基板(7))を室温近くの温度まで冷却した後、系外に取り出した。
このようにして得られた基板上に形成されたシリカ系被膜の膜厚(SOPRA製分光エリプソメーターESVG)は、約100nmであった。
次いで、実施例1の場合と同様に、基板上に形成されたシリカ系被膜の(i)平均細孔径、(ii)細孔分布、(iii)被膜強度、(iV)比誘電率および(V)酸素プラズマ照射前後における被膜の水分吸着量変化を測定した。その結果を表2に示す。
【実施例4】
【0088】
テトラエチルオルソシリケート96.0g(TEOS、多摩化学工業(株)製)および99.5重量%濃度のエタノール262g(ETOH、和光純薬(株)製)を混合し、この混合溶液を20℃の温度に保持し、150rpmの速度で30分間撹拌した。次に、実施例1で使用したテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの水溶液112g(6.5重量%のTPAOHを含む)を10分かけて滴下し、さらに20℃の温度にて150rpmの速度で2時間攪拌した。その後、50℃の温度に加熱し、この温度条件下にて200rpmの速度で攪拌しながら40時間、テトラエチルオルソシリケートの加水分解を行った。
次いで、この混合溶液に、メチルトリメトキシシラン61.1g(MTMS、信越化学工業(株)製)と99.5重量%濃度のエタノール262g(ETOH、和光純薬(株)製)を混合した溶液を混合し、20℃の温度に保持しながら、150rpmの速度で10分間、攪拌した。次に、前記テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの水溶液112g(6.5重量%のTPAOHを含む)を10分かけて滴下し、さらに20℃の温度で150rpmの速度で1時間、撹拌した。その後、50℃の温度に加熱し、この温度条件下にて200rpmの速度で攪拌しながら25時間、メチルトリメトキシシランおよびその他の被加水分解成分(テトラエチルオルソシリケートの部分加水分解物など)の加水分解を行った。
【0089】
次に、実施例1と同様な条件下で、このようにして得られたシリカ系被膜形成成分の加水分解物(ケイ素化合物)を含む混合溶液をロータリーエバポレーター(柴田科学(株)製R-114)のフラスコ中に入れ、さらに純水50重量%およびプロピレングリコールモノメチルエーテル50重量%を含む混合溶媒905.1gを入れて、前記混合溶液に含まれるエタノールをプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、協和発酵ケミカル(株)製)と溶媒置換する工程に供した。
その結果、前記ケイ素化合物を約15重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルを約36重量%、エタノールを約16重量%および水を約34重量%を含む液状組成物が得られた。
【0090】
次いで、この液状組成物100gを取り出し、これに純水50重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル50重量%を含む混合溶媒を添加して、それぞれの液状組成物中に含まれる水の量とケイ素化合物の量を調整した後、200rpmの速度で1時間撹拌した。これにより、表2に示す組成からなる液状組成物(被膜形成用塗布液)を得た。なお、表2に示すケイ素化合物の含有率(重量%)は、前記液状組成物の一部を150℃の温度条件下で乾燥して得られる残留固形物の量から換算したものである。また、ケイ素化合物の数平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算基準で表したものである。
このようにして得られた被膜形成用塗布液5mlを、実施例1と同じ条件下で、スピンコート法を用いて8インチサイズのシリコンウェハー基板上に塗布した。
次に、この基板を枚葉式のホットプレート上に載置して、150℃の温度にて3分間、加熱処理を行った。この加熱処理工程では、被膜中に含まれる有機溶媒(PGMEおよびエタノール)などが蒸発してくるので、これらを系外に排出した。
【0091】
さらに、この基板を枚葉式のホットプレート上に載せたまま、窒素ガス雰囲気下、300℃の温度にて30分間、加速電圧13KVのエレクトロンビーム(ウシオ電機(株)製、miniEB)を500μC/cm2、照射して、キュア処理を行った。次に、この基板(実施例基板(8))を室温近くの温度まで冷却した後、系外に取り出した。
このようにして得られた基板上に形成されたシリカ系被膜の膜厚(SOPRA製分光エリプソメーターESVG)は、約 100nmであった。
次いで、実施例1の場合と同様に、基板上に形成されたシリカ系被膜の(i)平均細孔径、(ii)細孔分布、(iii)被膜強度、(iV)比誘電率および(V)酸素プラズマ照射前後における被膜の水分吸着量変化を測定した。その結果を表3に示す。
【比較例1】
【0092】
実施例1で調製された液状組成物から100gづつ取り出し、これらに純水および/またはプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加して、それぞれの液状組成物中に含まれる水の量とケイ素化合物の量を調整した後、200rpmの速度で1時間撹拌した。これにより、表2に示す組成からなる液状組成物(被膜形成用塗布液)を得た。なお、表2に示すケイ素化合物の含有率(重量%)は、前記液状組成物の一部を150℃の温度条件下で乾燥して得られる残留固形物の量から換算したものである。また、ケイ素化合物の数平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算基準で表したものである。
このようにして得られた被膜形成用塗布液5mlを、実施例1と同じ条件下で、スピンコート法を用いて8インチサイズのシリコンウェハー基板上に塗布した。このような操作を繰り返し行い、塗布処理を施した複数枚の基板を得た。
【0093】
次に、これらの基板を枚葉式のホットプレート上に載置して、実施例1と同じ条件下で、加熱処理を施した。この加熱処理工程では、被膜中に含まれる有機溶媒(PGMEおよびエタノール)などが蒸発してくるので、これらを系外に排出した。
さらに、これらの基板を枚葉式のホットプレート上に載せたまま、実施例1と同じ条件下で、加熱処理を行った。次に、これらの基板(比較例基板(1)〜(2))を室温近くの温度まで冷却した後、系外に取り出した。
このようにして得られた基板上に形成されたシリカ系被膜の膜厚(SOPRA製分光エリプソメーターESVG)は、約100nmであった。
次いで、実施例1の場合と同様に、基板上に形成されたシリカ系被膜の(i)平均細孔径、(ii)細孔分布、(iii)被膜強度、(iV)比誘電率および(V)酸素プラズマ照射前後における被膜の水分吸着量変化を測定した。その結果を表3に示す。
【比較例2】
【0094】
テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイドを40重量%含む水溶液1kg(TPAOH、ライオン(株)製)に、陽イオン交換樹脂の粉末300g(WK−40、三菱化学(株)製)を添加し、室温条件下、100rpmの速度で1時間撹拌した後、添加した陽イオン交換樹脂粉末を濾過して取り除いた。次に、陰イオン交換樹脂の粉末2100g(SAT−10、三菱化学(株)製)を添加し、室温条件下、100rpmの速度で1時間攪拌した後、添加した陰イオン交換樹脂粉末を濾過して取り除いた。
得られたテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の水溶液に超純水を加えて、10重量%の濃度に調整し、該水溶液中に不純物として含まれるナトリウム(Na)およびカリウム(K)のアルカリ金属元素の化合物、並びに臭素(Br)および塩素(Cl)のハロゲン族元素の化合物の量をそれぞれ原子吸光法(AAS法、(株)日立製作所製偏光ゼーマン原子吸光光度計Z-5710)およびイオンクロマト法(DIONEX製2020i)で測定した。
【0095】
さらに、上記のイオン交換処理を行う前の前記テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイドの水溶液(市販品)に超純水を加えて、10重量%の濃度に調整した後、同様にその中に含まれる不純物の含有量を測定した。
その結果、イオン交換処理前の水溶液中に含まれていた不純物量が元素基準でナトリウム50重量ppm、カリウム2500重量ppm、臭素2250重量ppmおよび塩素13重量ppmであったのに対し、イオン交換処理後の水溶液中に含む不純物の含有量は、元素基準でナトリウム10重量ppb以下(検出限界)、カリウム10重量ppb(検出限界)、臭素1重量ppm以下および塩素1重量ppm以下であった。すなわち、本発明で求められる許容不純物レベルまで、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(市販品)の高純度化を行うことができた。
【0096】
次に、テトラエチルオルソシリケート85.71g(TEOS、多摩化学工業(株)製)、メチルトリメトキシシラン127.27g(MTMS、信越化学工業(株)製)および99.5重量%濃度のエタノール467.9g(ETOH、和光純薬(株)製)を混合し、この混合溶液を20℃の温度に保持し、150rpmの速度で30分間撹拌した。
この混合溶液に、高純度化された前記テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液298.3g(10重量%のTPAOHを含む)を10分かけて滴下し、さらに20℃の温度で200rpmの速度で1時間撹拌した。その後、50℃の温度に加熱し、この温度条件下にて200rpmの速度で攪拌しながら20時間、前記のシリカ系被膜形成成分(TEOS およびMTMS)の加水分解を行った。
【0097】
次いで、実施例1と同様な条件下で、このようにして得られたシリカ系被膜形成成分の加水分解物(ケイ素化合物)を含む混合溶液をロータリーエバポレーター(柴田科学(株)製R-114)のフラスコ中に入れ、さらに純水50重量%およびプロピレングリコールモノプロピルエーテル50重量%を含む混合溶媒1000gを入れて、前記混合溶液に含まれるエタノールをプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGP、日本乳化剤(株)製)と溶媒置換する工程に供した。
その結果、前記ケイ素化合物を約16重量%、プロピレングリコールモノプロピルエーテルを約43重量%、エタノールを約8重量%および水を約33重量%を含む液状組成物が得られた。
【0098】
次いで、この液状組成物100gを取り出し、これに純水50重量%、プロピレングリコールモノプロピルエーテル50重量%を含む混合溶媒を添加して、それぞれの液状組成物中に含まれる水の量とケイ素化合物の量を調整した後、200rpmの速度で1時間撹拌した。これにより、表2に示す組成からなる液状組成物(被膜形成用塗布液)を得た。なお、表2に示すケイ素化合物の含有率(重量%)は、前記液状組成物の一部を150℃の温度条件下で乾燥して得られる残留固形物の量から換算したものである。また、ケイ素化合物の数平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算基準で表したものである。
このようにして得られた被膜形成用塗布液5mlを、従来公知のスピンコート法(東京エレクトロン(株)製ACT-8)を用いて8インチサイズのシリコンウェハー基板上に滴下して、2000rpmの速度で20秒間、塗布処理を行った。
次に、この基板を枚葉式のホットプレート上に載置して、窒素ガス雰囲気下、150℃の温度にて3分間、加熱処理を行った。この加熱処理工程では、被膜中に含まれる有機溶媒(PGPおよびエタノール)などが蒸発してくるので、これらを系外に排出した。
【0099】
さらに、この基板を枚葉式のホットプレート上に載せたまま、窒素ガス雰囲気下、400℃の温度にて30分間、焼成処理を行った。次に、この基板(比較例基板(3))を室温近くの温度まで冷却した後、系外に取り出した。
このようにして得られた基板上に形成されたシリカ系被膜の膜厚(SOPRA製分光エリプソメーターESVG)は、約100nmであった。
次いで、実施例1の場合と同様に、基板上に形成されたシリカ系被膜の(i)平均細孔径、(ii)細孔分布、(iii)被膜強度、(iV)比誘電率および(V)酸素プラズマ照射前後における被膜の水分吸着量変化を測定した。その結果を表2に示す。
なお、この比較例2に示す被膜形成用塗布液は、上記の特許文献1に記載された低誘電率非晶質シリカ系塗布液に関するもので、本発明者らによって主に層間絶縁膜の形成を目的として開発されたものである。
【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
表3からも明らかなように、本発明に係る半導体加工用保護膜形成用塗布液を用いて形成されたシリカ系被膜では、ヤング弾性率が8.0 GPa以上、さらに詳しくは10.0 GPa以上の高い膜強度と3.0以下、さらに詳しくは2.7〜3.0の低い比誘電率を有していることが分かった。また、本発明に係る半導体加工用保護膜は、該保護膜中に含まれる細孔の平均細孔径が3nm以下であり、しかも2nm未満の細孔径を有するミクロポアの細孔容積率が75%以上である細孔を含み、更には最大細孔径が10nm以下であり、2nm以上の細孔径を有するメソポアの平均細孔径が4nm以下である細孔を含んでいることが分かった。なお、表3には記載されていないが、実施例基板上に形成された被膜中には、10nmを超える細孔径を有する細孔は認められなかった。
【0103】
これに対し、比較例に示すシリカ系被膜では、半導体加工用保護膜に要求される高い被膜強度と低い比誘電率が得られないことが分かった。さらに詳しくは、比較例1に示す基板(比較例基板(1)および(2))においては、以下のような問題が生じて実用的でないことが分かった。すなわち、比較例基板(1)においては、水分含有量32.4重量%の前記液状組成物(塗布液)中に含まれるシリカ系成分の分散性が悪いため、所望の被膜を形成することができなかった。また、この塗布液を放置しておいたところ、経時的に分子量が増大するなどの変化が起こり、結果として塗布液寿命が極端に短いことが分かった。さらに、比較例基板(2)においては、水分含有量66.3重量%の前記液状組成物(塗布液)の表面張力が高いため(すなわち、濡れ性が悪い)、基板の塗布面上で該塗布液がはじかれ、結果として被膜中にピンホール等が生じたりして均一な被膜を形成することができなかった。
また、比較例2に示す基板(すなわち比較例基板(3))においては、層間絶縁膜に要求される低い比誘電率は得られるものの、被膜の焼成(キュア)を加熱法で行う限りにおいては、2nm未満の細孔径を有するミクロポアの細孔容積率が70%前後で、しかもヤング弾性率が7.0 GPa前後の被膜が得られていることが分かった。
【実施例5】
【0104】
上記の実施例基板(1)用に調製された被膜形成用塗布液5mlを、従来公知のスピンコート法(東京エレクトロン(株)製ACT-8)を用いて8インチサイズのシリコンウェハー基板1上に滴下して、2000rpmの速度で20秒間、塗布処理を行った。次に、この基板を枚葉式のホットプレート上に載置して、窒素ガス雰囲気下、150℃の温度にて3分間、加熱処理を行った。この加熱処理工程では、被膜中に含まれる有機溶媒(PGMEおよびエタノール)などが蒸発してくるので、これらを系外に排出した。 さらに、この基板を枚葉式のホットプレート上に載せたまま、窒素ガス雰囲気下、400℃の温度にて30分間、焼成処理を行って、エッチング・ストッパー膜2を形成した。このようにして得られた基板上に形成されたシリカ系被膜の膜厚(SOPRA製分光エリプソメーターESVG)は、約100nmであった。
【0105】
次いで、上記の比較例基板(3 )用に調製された被膜形成用塗布液5mlを、前記の場合と同様に、スピンコート法(東京エレクトロン(株)製ACT-8)を用いて前記エッチング・ストッパー膜2が形成された基板上に滴下して、2000rpmの速度で20秒間、塗布処理を行った。次に、この基板を枚葉式のホットプレート上に載置して、窒素ガス雰囲気下、150℃の温度にて3分間、加熱処理を行った。この加熱処理工程では、被膜中に含まれる有機溶媒(PGPおよびエタノール)などが蒸発してくるので、これらを系外に排出した。さらに、この基板を枚葉式のホットプレート上に載せたまま、窒素ガス雰囲気下、400℃の温度にて30分間、焼成処理を行って、層間絶縁膜3を形成した。このようにして得られた基板上に形成されたシリカ系被膜の膜厚(SOPRA製分光エリプソメーターESVG)は、約200nmであった。
【0106】
次いで、上記の実施例基板(2)用に調製された被膜形成用塗布液5mlを、前記の場合と同様に、スピンコート法(東京エレクトロン(株)製ACT-8)を用いて前記層間絶縁膜3が形成された基板上に滴下して、2000rpmの速度で20秒間、塗布処理を行った。次に、この基板を枚葉式のホットプレート上に載置して、窒素ガス雰囲気下、150℃の温度にて3分間、加熱処理を行った。この加熱処理工程では、被膜中に含まれる有機溶媒(PGMEおよびエタノール)などが蒸発してくるので、これらを系外に排出した。さらに、この基板を枚葉式のホットプレート上に載せたまま、窒素ガス雰囲気下、400℃の温度にて30分間、焼成処理を行って、CMP犠牲膜4を形成した。このようにして得られた基板上に形成されたシリカ系被膜の膜厚(SOPRA製分光エリプソメーターESVG)は、約100nmであった。
【0107】
次いで、従来公知のフッ素系ガス(CF4、O2)によるプラズマエッチング法(ANELVA社製 Reactive Ion Etching装置DEM-451T)を用いて前記基板にエッチングを施し、ビアホールを形成した。この場合、ビアホール形成のためのエッチングは、前記エッチング・ストッパー膜2に到達するところまで行った。
次いで、従来公知のスパッタリング法(PVD、ノベラス社製INOVA)を用いて前記ビアホール内に銅製のバリアメタル層5を形成した。次に、従来公知の電解メッキ法(ノベラス社製 SABER)を用いて前記バリアメタル層5内に配線用のCu層6を埋め込んだ。さらに、従来公知のコロイダルシリカを用いたCMP装置(スピードファーム IPAC社製 AVANTI 472)を用いて前記基板上に形成されたCuメッキ層とバリアメタル層を削り落とした。この場合、CMP(化学機械研磨加工)による研磨は、前記CMP犠牲膜3の一部を削り落とすところまで行った。
【0108】
このようにして得られた半導体基板の概念的な断面図を示せば、図1の通りである。
前記半導体基板の制作時および制作後において、エッチング・ストッパー膜2およびCMP犠牲膜4の物理特性を測定した結果を示せば、以下の通りある。
エッチング・ストッパー膜
フッ素系プラズマガス(CF4:45 sccm、O2:5 sccm)を用いて、高周波電力250W、操作圧力(減圧)10Paの操作条件下で測定した前記エッチング・ストッパー膜のエッチングレートは、28nm/minであった。これに対して、前記層間絶縁膜のエッチングレートは、83nm/minであった。すなわち、前記エッチング・ストッパー膜のエッチングレートは、前記層間絶縁膜のエッチングレートの約1/3倍であった。
【0109】
CMP犠牲膜
a)研磨レート
コロイダルシリカを含むスラリーを用いて、スラリー流量150cc/min、荷重圧力2psi、テーブル回転数28rpm、研磨時間60秒の操作条件下で測定した前記CMP犠牲膜の研磨レートは、19.6nm/minであった。これに対して、比較用に試作したタンタル(Ta)によるCMP犠牲膜の研磨レートは、22.5nm/minであった。
b)密着性
前記a)に示す条件下で研磨した前記CMP犠牲膜の表面を目視および顕微鏡で観測したところ、この被膜のはがれは確認されなかった。さらに、カッターを用いて前記CMP犠牲膜に切り込みを入れて約3mmx3mmの格子を25個作成し、この上に市販の接着用テープを貼り付け、素早くテープを剥ぎ取り、顕微鏡で観測した。その結果、このテープ法による観測でも、被膜のはがれは確認されなかった。
【0110】
c)耐プラズマ性
CMP処理を施した前記半導体基板に、フッ素系プラズマガス(CF4:45 sccm、H2:5 sccm)を用いて、高周波電力250W、操作圧力(減圧)10Paの操作条件下でプラズマ処理を行い、膜厚、屈折率、比誘電率、リーク電流量、膜組成比等における膜質の変化を測定したところ、いずれにおいても変化がなかった。
d)耐薬品性
CMP処理を施した前記半導体基板の表面を、弱酸性洗浄液(クエン酸、シュウ酸等を含む薬液)を用いて洗浄処理を行い、膜厚、屈折率、比誘電率、リーク電流量、膜組成比等における膜質の変化を測定したところ、いずれにおいても変化がなかった。

以上の結果からも明らかなように、本発明に係る半導体加工用保護膜形成用塗布液を用いて形成されたシリカ系被膜、すなわちエッチング・ストッパー膜およびCMP犠牲膜は、昨今の半導体製造業界からの要望に十分に応え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】実施例5で試作された半導体基板の概念的な断面図を示す。ここで、エッチング・ストッパー膜2およびCMP犠牲膜4は、本発明に係る半導体加工用保護膜に関するものである。
【符号の説明】
【0112】
1.基板(シリコンウェハー)
2.エッチング・ストッパー膜
3.層間絶縁膜
4.CMP犠牲膜
5.バリアメタル層
6.Cu層(配線部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い膜強度と低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を形成するための塗布液であって、
(a)テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)および下記一般式(I)で示されるアルコキシシラン(AS)をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)および水の存在下で加水分解して得られるケイ素化合物、
nSi(OR)4-n (I)
(式中、Xは水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基もしくはビニル基を表し、Rは水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、アリール基もしくはビニル基を表す。また、nは0〜3の整数である。)
(b)有機溶媒、および
(c)水
を含む液状組成物であり、しかも前記液状組成物中に含まれる水の量が35〜65重量%の範囲にあることを特徴とする半導体加工用保護膜形成用塗布液。
【請求項2】
高い膜強度と低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を形成するための塗布液であって、
(a)テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)および水の存在下で加水分解または部分加水分解した後、上記一般式(I)で示されるアルコキシシラン(AS)またはその加水分解物もしくは部分加水分解物と混合し、さらに必要に応じてこれらの一部または全部を加水分解して得られるケイ素化合物、
(b)有機溶媒、および
(c)水
を含む液状組成物であり、しかも前記液状組成物中に含まれる水の量が35〜65重量%の範囲にあることを特徴とする半導体加工用保護膜形成用塗布液。
【請求項3】
前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)が、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)、テトラメチルオルソシリケート(TMOS)またはその混合物であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の半導体加工用保護膜形成用塗布液。
【請求項4】
前記アルコキシシラン(AS)が、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)またはその混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体加工用保護膜形成用塗布液。
【請求項5】
前記ケイ素化合物が、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)と水に加えて、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の存在下で加水分解して得られたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体加工用保護膜形成用塗布液。
【請求項6】
前記有機溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を含む有機溶媒であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体加工用保護膜形成用塗布液。
【請求項7】
前記ケイ素化合物の数平均分子量が、ポリエチレンオキサイド換算基準で10000〜100000の範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の半導体加工用保護膜形成用塗布液。
【請求項8】
前記ケイ素化合物の含有量が、前記液状組成物に対し0.1〜10重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の半導体加工用保護膜形成用塗布液。
【請求項9】
高い膜強度と低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を形成するための塗布液を調製する方法であって、
(a)有機溶媒と混合されたテトラアルキルオルソシリケート(TAOS)および下記一般式(I)で示されるアルコキシシラン(AS)を、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)および水の存在下で加水分解してケイ素化合物を含む液状組成物を調製する工程、
nSi(OR)4-n (I)
(式中、Xは水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基もしくはビニル基を表し、Rは水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、アリール基もしくはビニル基を表す。また、nは0〜3の整数である。)
(b)前記工程(a)から得られる液状組成物中に含まれる有機溶媒の少なくとも一部をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)と溶媒置換する工程、
(c)前記工程(b)から得られる液状組成物中に含まれるケイ素化合物の量を形成すべき半導体加工用保護膜の種類や用途に応じて調整すると共に、水の量を35〜65重量%の範囲に調整する工程
を含むことを特徴とする半導体加工用保護膜形成用塗布液の調製方法。
【請求項10】
高い膜強度と低い比誘電率を有する半導体加工用保護膜を形成するための塗布液を調製する方法であって、
(a)有機溶媒と混合されたテトラアルキルオルソシリケート(TAOS)をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)および水の存在下で加水分解または部分加水分解した後、有機溶媒と混合された上記一般式(I)で示されるアルコキシシラン(AS)またはその加水分解物もしくは部分加水分解物と混合し、さらに必要に応じてこれらの一部または全部を加水分解してケイ素化合物を含む液状組成物を調製する工程、
(b)前記工程(a)から得られる液状組成物中に含まれる有機溶媒の少なくとも一部をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)と溶媒置換する工程、
(c)前記工程(b)から得られる液状組成物中に含まれるケイ素化合物の量を形成すべき半導体加工用保護膜の種類や用途に応じて調整すると共に、水の量を35〜65重量%の範囲に調整する工程
を含むことを特徴とする半導体加工用保護膜形成用塗布液の調製方法。
【請求項11】
前記工程(a)で使用される有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類であることを特徴とする請求項9〜10のいずれかに記載の半導体加工用保護膜形成用塗布液の調製方法。
【請求項12】
前記工程(a)で使用されるテトラアルキルオルソシリケート(TAOS)が、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)、テトラメチルオルソシリケート(TMOS)またはその混合物であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の半導体加工用保護膜形成用塗布液の調製方法。
【請求項13】
前記工程(a)で使用されるアルコキシシラン(AS)が、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)またはその混合物であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の半導体加工用保護膜形成用塗布液の調製方法。
【請求項14】
前記工程(a)で調製される液状組成物が、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)と水に加えて、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の存在下で加水分解して得られるケイ素化合物を含むものであることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の半導体加工用保護膜形成用塗布液の調整方法。
【請求項15】
前記工程(b)における溶媒置換を、ロータリーエバポレーターを用いて行うことを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の半導体加工用保護膜形成用塗布液の調製方法。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれかに記載の半導体加工用保護膜形成用塗布液を、半導体基板または半導体基板上に形成された層間絶縁膜等の上部に塗布した後、該基板を80〜350℃の温度で加熱処理し、さらに350〜450℃の温度で焼成することによって得られる半導体加工用保護膜。
【請求項17】
請求項1〜8のいずれかに記載の半導体加工用保護膜形成用塗布液を、半導体基板または半導体基板上に形成された層間絶縁膜等の上部に塗布した後、該基板を80〜350℃の温度で加熱処理し、さらにエレクトロンビームを照射してキュアすることによって得られる半導体加工用保護膜。
【請求項18】
前記保護膜中に含まれる細孔の平均細孔径が3nm以下であり、しかも2nm未満の細孔径を有するミクロポアの細孔容積率が75%以上であることを特徴とする請求項16〜17のいずれかに記載の半導体加工用保護膜。
【請求項19】
前記保護膜中に含まれる細孔の最大細孔径が10nm以下であり、しかも2nm以上の細孔径を有するメソポアの平均細孔径が4nm以下であることを特徴とする請求項16〜18のいずれかに記載の半導体加工用保護膜。
【請求項20】
前記保護膜のヤング弾性率が8.0 GPa以上であることを特徴とする請求項16〜19のいずれかに記載の半導体加工用保護膜。
【請求項21】
前記保護膜の比誘電率が2.7〜3.0の範囲にあることを特徴とする請求項16〜20のいずれかに記載の半導体加工用保護膜。
【請求項22】
前記保護膜が、層間絶縁膜の化学機械研磨時に用いられるCMP犠牲膜であることを特徴とする請求項16〜21のいずれかに記載の半導体加工用保護膜。
【請求項23】
前記保護膜が、層間絶縁膜のエッチング加工時に用いられるエッチング・ストッパー膜であることを特徴とする請求項16〜22のいずれかに記載の半導体加工用保護膜。

【図1】
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【公開番号】特開2006−120783(P2006−120783A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305662(P2004−305662)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】