説明

半導体基板、半導体装置およびその製造方法

【課題】 (111)表面のシリコン(Si)基板に、原子レベルで超平坦な表面を実現する。
【解決手段】 シリコン基板(111)表面を、予め、フッ化アンモニウム(NHF)溶液で表面処理した後、濃度68%,沸点120.7℃の共沸硝酸溶液内に浸漬して、前記シリコン基板表面に二酸化シリコン(SiO)主体の被膜を形成し、ついで、濃度40重量%のフッ化アンモニウム(NHF)溶液で上記二酸化シリコン(SiO)主体の被膜をエッチング除去する。AFM像では、バイレイヤー ステップが観測され、表面粗さの指標(RMSラフネス値)が0.07nmと判定され、原子レベルでの超平坦な表面が形成できた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平坦性の優れた半導体基板、とりわけ面方位(111)の半導体基板、その製造方法並びにその基板を用いて形成された半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体表面に酸化被膜等を形成する場合、平坦な半導体面を作成しておくことが望ましく、例えばシリコン(Si)の場合には、通常、表面をフッ化アンモニウム(NHF)水溶液で処理する,いわゆるケミカルエッチングの技術が周知である。しかし、面方位(111)のSi表面のフッ化アンモニウム(NHF)水溶液でのエッチングは、ステップからの進行が支配的ではあるが、一部テラスからも進行するため、このエッチングの影響を受けたテラス部分が少しラフになり、原子レベルでの平坦化が難しい。
【0003】
また、Si基板を酸化性溶液、例えば共沸硝酸(濃度68%,沸点120.7℃)内に浸漬して、そのSi基板上に化学酸化法により均一性の高い良質の二酸化シリコン主体の被膜を形成することは、本発明者らも多くの研究を重ねているが、今や既知の技術である(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−311302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、化学酸化法により半導体基板の表面に均一な酸化膜を形成することおよびフッ化アンモニウム(NHF)溶液により上記酸化膜をエッチング除去することを利用して、半導体基板の表面を、従来の方法であるフッ化アンモニウム(NHF)溶液等によるケミカルエッチングのみの場合よりもさらに平坦度を高めて、原子レベルの超平坦化することにある。
【0005】
すなわち、本発明の目的は、第1段階で、化学酸化法によって半導体の表面に均一な酸化膜主体の被膜を形成し、第2段階で、その表面の均一な酸化膜主体の被膜をフッ化アンモニウム(NHF)溶液エッチングすることで、その半導体基板の表面の平坦性が格段に向上するという知見に基づき、このことを利用して、半導体基板表面の原子レベルに匹敵する超平坦化、並びにその半導体基板を用いたことにより、半導体装置の格段の高性能化を実現することにある。
【0006】
さらに、本発明の他の目的として、化学酸化法により半導体基板の表面に均一な酸化膜を形成することおよびフッ化アンモニウム(NHF)溶液により上記酸化膜をエッチング除去することを利用して超平坦化された半導体上に別の固体、例えば絶縁体、異種半導体等を形成して、それらの超平坦化された基板を実現することも含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、半導体基板表面を、少なくとも酸化性溶液またはその気体に接触させて前記半導体基板表面に酸化物主体の化学酸化膜を形成する過程および前記化学酸化膜をフッ化アンモニウム(NHF)溶液によりエッチング除去する過程を経て、前記半導体基板の表面を,元の表面より格段に平坦化した,半導体基板を得ることである。
【0008】
本発明は、前記半導体基板が面方位(111)のシリコンまたはそれと同等の表面を有する場合に特に有効に機能する。
【0009】
本発明は、前記酸化性溶液が、硝酸,硫酸および過塩素酸の群から選定された少なくとも1つからなる(好ましくはその共沸濃度である)ときに顕著な作用が認められる。
【0010】
本発明は、半導体基板表面を酸化性溶液またはその気体に接触させる以前に、予め、前記半導体基板表面をフッ化アンモニウム(NHF)溶液により表面処理する過程をそなえ、その後に、前記半導体基板表面を酸化性溶液またはその気体に接触させて前記半導体基板表面に酸化物主体の化学酸化膜を形成する過程および前記化学酸化膜をフッ化アンモニウム(NHF)溶液によりエッチング除去する過程を経ることにより、この半導体基板の表面が,元の表面より,さらに格段と平坦化されることも認められた。
【0011】
本発明の半導体装置は、半導体基板表面を、少なくとも酸化性溶液またはその気体に接触させて前記半導体基板表面に酸化物主体の化学酸化膜を形成する過程および前記化学酸化膜をフッ化アンモニウム(NHF)溶液によりエッチング除去する過程を経て、前記半導体基板の平坦化された表面を有することで、これを用いた半導体装置において格段に高性能化を実現したものである。
【0012】
本発明の半導体装置は、前記半導体基板が面方位(111)のシリコンまたはそれと同等の表面を有することにより、特に顕著な機能を実現することができる。
【0013】
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板表面を酸化性溶液またはその気体に接触させて前記半導体基板表面に酸化物主体の化学酸化膜を形成する過程および前記化学酸化膜をフッ化アンモニウム(NHF)溶液によりエッチング除去する過程を備えたことにより、前記半導体基板の表面を、元の表面より一段と平坦化した半導体基板を実現し、これをもって格段に高性能な半導体装置を実現することができる。
【0014】
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板表面を酸化性溶液またはその気体に接触させる以前に、予め、前記半導体基板表面をフッ化アンモニウム(NHF)溶液により表面処理する過程をそなえたことにより、前記半導体基板の表面を、元の表面より一段と平坦化し、これをもって高性能な半導体装置を実現することができる。
【0015】
本発明の半導体装置の製造方法は、前記酸化性溶液またはその気体が、硝酸,硫酸および過塩素酸の群から選定された少なくとも1つからなる(好ましくはその共沸濃度である)ことにより、前記半導体基板の表面を、元の表面より一段と平坦化した半導体基板を実現し、これをもって高性能の半導体装置を実現することができる。
【0016】
本発明の半導体基板、半導体装置またはそのいずれかの製造方法は、前記半導体基板が単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、炭化シリコン、シリコン・ゲルマニウムから選ばれ、前記化学酸化膜の主体が前記半導体基板母体の酸化膜でなることにより、前記半導体基板の表面を、元の表面より一段と平坦化した半導体基板を実現し、これをもって高性能の半導体装置を実現することができる。
【0017】
本発明では、前記酸化性溶液またはその気体として、硝酸濃度63〜99重量%の溶液またはその気体を用いたときに、半導体基板、半導体装置またはその製造方法において、特に顕著な機能を得ることができる。
【0018】
さらに、本発明では、化学酸化法により半導体基板の表面に均一な酸化膜を形成することおよびフッ化アンモニウム(NHF)溶液により上記酸化膜をエッチング除去することを利用して超平坦化された半導体上に別の固体、例えば絶縁体、異種半導体等を形成して、それらの超平坦化された基板を実現し、これをもって高性能の半導体装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の半導体基板、半導体装置およびその製造方法により、前記半導体基板表面を酸化性溶液またはその気体に接触させて前記半導体基板表面に酸化物主体の化学酸化被膜形成し、ついでフッ化アンモニウム(NHF)溶液で前記化学酸化被膜をエッチング除去する過程を備えたことで、元の表面より一段と平坦化した半導体基板を実現することができる。特に、シリコン基板に対しては、共沸硝酸酸化法(濃度68重量%近傍の硝酸を用いてその沸点120・7℃近傍で化学酸化被膜を形成する方法)と室温近傍でのNHFエッチングとを組み合わせて利用することによって、原子レベルで一段と平坦な(111)Si表面を形成することができる。
【0020】
詳細には、予め、面方位(111)の表面を有するシリコン基板をNHF水溶液でエッチングして清浄な表面を露出した後、このシリコン基板を共沸硝酸酸化法,すなわち濃度68%近傍で沸点120.7℃近傍の共沸状態に維持された硝酸溶液に浸漬して、そのシリコン基板の表面に膜厚1nm程度の極薄の二酸化シリコン主体の被膜を形成し、さらにNHF水溶液で前記極薄二酸化シリコン主体の被膜をエッチング除去することにより、(111)Si面の超平坦面を実現する。
【0021】
すなわち、(111)Si面の硝酸酸化過程では、レイヤー バイ レイヤー(layer-by-layer)で酸化膜(SiO)生成が進行するため、SiO/(111)Si界面が原子層のレベル(原子レベル)で均一かつ、平坦になる。ついで、上記硝酸酸化過程で形成されたSiO膜を、NHF水溶液を用いてエッチング除去してみると、硝酸酸化前の元の表面よりも格段に平坦化された超平坦面(111)Si表面が得られていることがわかった。
【0022】
さらに、この原子レベルでの平坦な(111)Si表面に、再度、上述の硝酸酸化過程で酸化膜生成を行い、この半導体基板を用いて半導体装置を形成することによって、低温条件下でも,超平坦面(111)Si表面かつ均一性の高い酸化膜主体の被膜をもって,性能向上の図られた半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
つぎに、本発明を、実施の形態である実施例装置により、図面を参照して詳細に述べる。
【実施例1】
【0024】
本発明を、以下、実施例により、その製造工程にしたがい詳細に述べる。
【0025】
リンをドープした抵抗率が約10Ωcmの(111)面を持つn型シリコンウェーハを、予め、RCA洗浄法を用いて洗浄した後、濃度40重量%のフッ化アンモニウム(NHF)水溶液に室温で10分間浸漬した。この処理後に原子間力顕微鏡(AFM)で観測したAFM像を図1に示す。これにはSi(111)面のミスオリエンテーションに起因するバイレイヤーステップ(bi-layer step)が観測され、この場合、自乗平均平方根(RMS)で表わされる表面粗さの指標(以下、RMSラフネス値)は0.13nmであった。このbi-layer stepが見られるのは、シリコン表面が原子レベルで平坦であることを示すものである。一方、RCA洗浄後、濃度約0.5重量%のフッ化水素酸(HF)で表面処理(エッチング)したのみのシリコンウェーハでは、図2に示すAFM像のように、RMSラフネス値は0.19nmであり、明らかにシリコン表面が原子レベルでラフであることがわかり、bi-layer stepは全く観測されない。
【0026】
次に、上述のように、予め、濃度40重量%のフッ化アンモニウム(NHF)水溶液中に室温で10分間浸漬して表面の自然酸化膜等をエッチング除去して、(111)Si表面が露出したシリコンウェーハを、濃度68重量%近傍,約120℃近傍で沸騰中の硝酸(以下、共沸硝酸という)に10分間浸漬して、(111)Si表面のシリコンウェーハ上に膜厚が1nm程度の極薄二酸化シリコン(SiO)膜を形成した。
【0027】
上述の共沸硝酸法で極薄二酸化シリコン(SiO)膜を形成して、同極薄二酸化シリコン(SiO)膜表面をAFMにより観測したところ、その極薄二酸化シリコン(SiO)膜表面が図3に示される。図3に示されるAFM像でわかるように、明らかにbi-layer stepが観測され、極薄二酸化シリコン(SiO)膜表面が原子レベルで平坦であることがわかる。この極薄二酸化シリコン膜表面のRMSラフネス値は、0.11nmであった。
【0028】
一方、比較のため、RCA洗浄後、濃度約0.5重量%のフッ化水素酸(HF)で表面処理(エッチング)したのみのシリコンウェーハ(比較用試料)では、シリコンウェーハを本実施例同様の共沸硝酸に10分間浸漬して化学酸化処理した場合、このシリコンウェーハ表面に形成された二酸化シリコン膜の表面は、図4に示すAFM像のように、bi-layer stepは観測されなく、RMSラフネス値も0.16nmであった。このことから、ラフなシリコン表面を硝酸酸化したときは、二酸化シリコン膜表面もまた、ラフな表面そのままに形成されることがわかる。
【0029】
次に、図3に示された,原子レベルで平坦なシリコン表面上に共沸硝酸での処理により極薄二酸化シリコン膜を形成したシリコンウェーハを、濃度40重量%のフッ化アンモニウム(NHF)水溶液中に室温で10分間浸漬して、シリコンウェーハ表面の二酸化シリコン膜をエッチング除去した。この結果の観測されたシリコン表面のAFM像を図5に示す。図5では、bi-layer stepが明らかに観測され、RMSラフネス値は、0.07nmと判定され、図1に示した硝酸酸化前のシリコンウェーハのラフネス値0.13nmと較べて、半分程度に小さくなっており、表面の原子レベルでの平坦性が格段に向上していることがわかる。
【0030】
共沸硝酸での処理により形成した極薄二酸化シリコン膜(化学酸化膜)をエッチング除去する際のフッ化アンモニウム(NHF)水溶液の濃度は、NHF濃度40重量%のもので実施したが、経験的に濃度10〜40重量%で変更することは十分可能である。
【0031】
なお、図6は当初のシリコンウェーハ、すなわちRCA洗浄後、濃度約0.5重量%のフッ化水素酸(HF)で表面処理(エッチング)したのみのシリコンウェーハ表面の二酸化シリコン膜を形成して、同二酸化シリコン膜を再度フッ酸(HF)でエッチング除去したもののシリコンウェーハ表面のAFM像である。この場合、RMSラフネス値も0.18nmであり、シリコン表面は原子レベルでラフであることがわかり、図2の場合(RMSラフネス値は0.19nm)と比べてほとんど違いは見られなかった。
【0032】
これらの結果は、(111)Si表面での硝酸酸化による化学酸化膜形成と、その後の前記化学酸化膜のNHFエッチング除去とを組み合わせることによって、(111)Si表面の平坦性が原子レベルで超平坦な表面に改善されたことを示すものである。
【0033】
上記実施例では、面方位(111)Si面のシリコンウェーハを用いたが、本発明は、面方位(111)Si面以外の面、例えば面方位(100)面、(110)面、あるいは(511)面を持ったシリコンウェーハ、さらにはこれらSi面と同等に表面を持つ半導体基板に対して適用可能である。
【0034】
さらに、この硝酸酸化で形成された化学酸化膜をNHFエッチングで除去した後、再び硝酸酸化で化学酸化膜を形成と同化学酸化膜のNHFエッチング除去の工程を行う、すなわち、NHFエッチングの後、化学酸化膜の形成とNHFエッチング除去とを繰り返し行うことにより、原子レベルでのさらなる超平坦な半導体基板表面が実現できることも明らかである。
【0035】
MOS構造半導体装置は、予め、濃度40重量%のフッ化アンモニウム(NHF)水溶液中に室温で10分間浸漬して、表面の自然酸化膜等をエッチング除去してSi表面が露出したシリコンウェーハに対して、硝酸濃度68重量%近傍,約120℃近傍で沸騰中の硝酸(以下、共沸硝酸という)に10分間浸漬して、シリコンウェーハ上に1nm程度の二酸化シリコン(SiO)膜を形成し、ついでその二酸化シリコン(SiO)膜を,濃度40重量%のフッ化アンモニウム(NHF)水溶液中に室温で10分間浸漬して,エッチング除去し、その後、再びSi表面上に膜厚が1.5nm程度の極薄二酸化シリコン(SiO)膜を形成し、さらに、必要に応じて、CVD法により堆積酸化膜等の絶縁膜を形成したシリコンウェーハを用いて、この極薄二酸化シリコン膜および絶縁膜上にアルミニウム(Al)被膜等で所望形状の電極を形成してMOS構造にすることができる。
【0036】
このMOS構造半導体装置は、界面準位低減などの界面性能向上の見られる高性能な電気特性を呈し、実用性の高いものである。
【0037】
以上に、本発明を実施例により詳細に述べたが、Si(111)表面と同様の構成を持った半導体基板に対して、本発明を実施した場合、そのデバイスでは同様の特性、性能の向上が期待される。すなわち、本発明は、結晶構造が類似の半導体装置の場合にも適用可能である。
【0038】
本実施形態として、共沸濃度近傍の硝酸、例えば、濃度70重量%の硝酸(水溶液)を用いて、これに、予め、フッ化アンモニウム溶液で表面の二酸化シリコン膜等をエッチング除去したSi表面が露出したシリコンウェーハを浸漬して、この状態で硝酸温度を高めて沸騰を持続して共沸状態に加熱維持しながら、硝酸濃度が68%(wt),沸点120.7℃の共沸硝酸に到らせ、これを10分程度継続してシリコンウェーハ表面に極薄の酸化膜を形成し、さらにフッ化アンモニウム溶液で上記極薄の二酸化シリコン膜をエッチング除去することで、シリコンウェーハの表面を原子レベルで超平坦な表面にすることができる。
【0039】
さらに、本実施例では、硝酸濃度が68%(wt),沸騰状態(沸点120.7℃)の硝酸水溶液(いわゆる共沸硝酸)を用いたが、硝酸濃度が63〜99重量%の水溶液またはその蒸気内での酸化処理により二酸化シリコン膜を形成することも可能である。
【0040】
なお、本実施形態では、シリコンウェーハ表面に極薄の酸化膜、いわゆる化学酸化膜を形成する際に、酸化性溶液または酸化性気体として、硝酸(水溶液)またはその蒸気を用いた例で述べたが、硝酸に代えて、過塩素酸、硫酸、オゾン溶解水、過酸化水素水、塩酸と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と過酸化水素水との混合溶液、アンモニア水と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と硝酸との混合溶液および王水の群から選ばれた少なくとも1つの水溶液、あるいは酸化力のある沸騰水を用いること、またはそれらを蒸気(気体)の状態で用いることもできる。
【0041】
本実施形態の他の例としては、シリコン基板のみならず、化学酸化法により半導体基板の表面に均一な酸化膜を形成することおよびフッ化アンモニウム(NHF)溶液により上記酸化膜をエッチング除去することを利用して超平坦化された半導体上に別の固体、例えば絶縁体を設けてSOI構造を形成すること、あるいは上記超平坦化された半導体上にGaN等の異種半導体等を形成すること、ならびにそれらの超平坦化された基板を実現し、これをもって高性能の半導体装置を実現することができる。
【0042】
さらには、あるいは二酸化シリコン(SiO)膜上に高誘電体膜例えば、ハフニウムオキサイド、酸化アルミニウム等を積層した複合膜として、MOSトランジスタのゲート絶縁膜に用いることができる。その場合は高誘電体膜のみを用いる場合に比べて、トランジスタ特性の性能向上(リーク電流の低減、界面準位の低減等による移動度の向上など)が得られる。この場合、前記高誘電体膜の下に形成する酸化膜主体の被膜、あるいは二酸化シリコン膜は、例えば1nmまたはそれ以下の極薄膜でも、半導体基板表面の原子レベルでの平坦性は十分に維持され、高性能が得られる。
【0043】
本実施形態の酸化膜主体の被膜、あるいは二酸化シリコン(SiO)膜は、この上に厚い絶縁膜を形成した積層構造の複合膜に適しており、複合膜としても前記高誘電体膜のみでなく、強誘電体膜を積層して形成したものにも適用できる。
【0044】
また、前記半導体基板は平面形状に限られることなく、3次元形状や球状の凹凸や曲面を持つ基板でも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、MOS構造半導体装置に利用することを初めとして、半導体の表面とその表面に設けた絶縁体との界面で,原子レベルで超平坦な表面が有効に機能する種々のデバイスに利用することができる。また、単に結晶表面のラフネスを向上、安定化することにも、本発明の原理を利用することができる。
【0046】
上述の各工程は、MOS構造を製造する場合に限らず、酸化膜主体の被膜、あるいは二酸化シリコン膜などの絶縁膜を用いるデバイス単体、さらにはそれによる大規模集積回路(LSI)、例えば、フラッシュメモリ等のメモリの容量絶縁膜を製造する過程などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明実施例の過程で観測したSi表面の原子間力顕微鏡(AFM)像図
【図2】比較用試料で観測したSi表面のAFM像図
【図3】本発明実施例の他の過程で観測したSi表面のAFM像図
【図4】別の比較用試料で観測したSi表面のAFM像図
【図5】本発明実施例で観測したSi表面のAFM像図
【図6】比較用試料で観測したSi表面のAFM像図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板表面を、少なくとも酸化性溶液またはその気体に接触させて前記半導体基板表面に酸化物主体の化学酸化膜を形成する過程および前記化学酸化膜をフッ化アンモニウム溶液によりエッチング除去する過程を経て、前記半導体基板の平坦化された表面を有することを特徴とする半導体基板。
【請求項2】
予め、フッ化アンモニウム溶液により表面処理した半導体基板表面を、酸化性溶液またはその気体に接触させて前記半導体基板表面に酸化物主体の化学酸化膜を形成する過程および前記化学酸化膜をフッ化アンモニウム溶液によりエッチング除去する過程を経て、前記半導体基板の平坦化された表面を有することを特徴とする半導体基板。
【請求項3】
前記半導体基板が面方位(111)のシリコンまたはそれと同等の表面を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体基板。
【請求項4】
前記酸化性溶液が、硝酸,硫酸および過塩素酸の群から選定された少なくとも1つからなる(好ましくはその共沸濃度である)ことを特徴とする請求項1〜3に記載のいずれか1つの半導体基板または半導体基板の製造方法。
【請求項5】
半導体基板表面を、酸化性溶液またはその気体に接触させて前記半導体基板表面に酸化物主体の化学酸化膜を形成する過程および前記化学酸化膜をフッ化アンモニウム溶液によりエッチング除去する過程を経て、前記半導体基板の平坦化された表面を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
予め、フッ化アンモニウム溶液により表面処理した半導体基板表面を、酸化性溶液またはその気体に接触させて前記半導体基板表面に酸化物主体の化学酸化膜を形成する過程および前記化学酸化膜をフッ化アンモニウム溶液によりエッチング除去する過程を経て、前記半導体基板の平坦化された表面を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記半導体基板が面方位(111)のシリコンまたはそれと同等の表面を有することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
半導体基板表面を酸化性溶液またはその気体に接触させて前記半導体基板表面に酸化物主体の化学酸化膜を形成する過程および前記化学酸化膜をフッ化アンモニウム溶液によりエッチング除去する過程を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記酸化性溶液またはその気体が、硝酸,硫酸および過塩素酸の群から選定された少なくとも1つからなる(好ましくはその共沸濃度である)ことを特徴とする請求項5〜8に記載のいずれか1つの半導体装置または半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記半導体基板が単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、炭化シリコン、シリコン・ゲルマニウムから選ばれ、前記化学酸化膜の主体が前記半導体基板母体の酸化膜でなる請求項1〜9に記載のいずれか1つの半導体基板、半導体装置またはその製造方法。
【請求項11】
前記酸化性溶液またはその気体に硝酸濃度63〜99重量%の溶液またはその気体を用いた請求項1〜10に記載のいずれか1つの半導体基板、半導体装置またはその製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−45204(P2010−45204A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208398(P2008−208398)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(594056384)
【Fターム(参考)】