説明

半導体装置およびその作製方法

【課題】短チャネル効果による電気特性の変動が生じにくい、チャネル領域に酸化物半導体を含むトランジスタを用いた半導体装置を作製する。
【解決手段】窒素を含む一対の酸窒化物半導体領域、および該一対の酸窒化物半導体領域に挟まれる酸化物半導体領域を有する酸化物半導体膜と、ゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜を介して酸化物半導体領域上に設けられるゲート電極とを有する半導体装置。ここで、一対の酸窒化物半導体領域はトランジスタのソース領域およびドレイン領域となり、酸化物半導体領域はトランジスタのチャネル領域となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体装置および半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能し得る装置全般をいい、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜の材料としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0004】
例えば、トランジスタの活性層として、電子キャリア密度が1018/cm未満であるインジウム(In)、ガリウム(Ga)、および亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物を用いたトランジスタが開示されている(特許文献1参照。)。
【0005】
特許文献2では、酸化物半導体を用いたスタガ型のトランジスタにおいて、ソース領域およびドレイン領域と、ソース電極およびドレイン電極との間に、緩衝層として導電性の高い窒素を含む酸化物半導体を設け、酸化物半導体と、ソース電極およびドレイン電極とのコンタクト抵抗を低減する技術が開示されている。
【0006】
非特許文献1では、セルフアラインプロセスによってチャネル領域、ソース領域およびドレイン領域を形成したトップゲート構造の酸化物半導体トランジスタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−165528号公報
【特許文献2】特開2010−135774号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Jae Chul Park et al.,”High performance amorphous oxide thin film transistors with self−aligned top−gate structure” IEDM2009, pp191−194
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
短チャネル効果による電気特性の変動が生じにくい、チャネル領域に酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置を作製することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る半導体装置は、窒素を含む一対の酸窒化物半導体領域、および該一対の酸窒化物半導体領域に挟まれる酸化物半導体領域を有する酸化物半導体膜と、ゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜を介して酸化物半導体領域上に設けられるゲート電極と、を有する。
【0011】
ここで、一対の酸窒化物半導体領域はトランジスタのソース領域およびドレイン領域となり、酸化物半導体領域はトランジスタのチャネル領域となる。
【0012】
トップゲート構造のトランジスタにおいて、ソース領域およびドレイン領域は、ゲート電極をマスクにして酸化物半導体膜に窒素を含むイオンを注入することで形成できる。ゲート電極をマスクにしてソース領域およびドレイン領域を形成することよって、ソース領域およびドレイン領域と、ゲート電極との重なりが生じず、寄生容量を低減することができる。
【0013】
寄生容量を低減できるため、トランジスタを高速動作させることができる。
【0014】
このとき、酸窒化物半導体領域の窒素濃度が0.01原子%以上30原子%以下とする。窒素濃度を増加させると酸窒化物半導体領域のキャリア密度を増加させることができるが、窒素濃度を高くしすぎると、キャリアの移動を阻害し、却って導電性を低下させることになる。
【0015】
なお、酸化物半導体膜に窒素を含むイオンと同時に水素を含むイオンを注入しても構わない。酸窒化物半導体領域に水素を注入することによって、窒素のみを注入した場合と比べてキャリア密度を増加させることができる。即ち、注入する窒素濃度を低減しても導電性を高めることができる。酸窒化物半導体領域の水素濃度は、1×1019atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下とする。水素濃度を高めることで、キャリア密度を増加させることができるが、水素濃度を高くしすぎると、キャリアの移動を阻害し、却って導電性を低下させることになる。
【0016】
このとき、酸化物半導体膜のソース領域およびドレイン領域を介してチャネル領域に水素が注入されないようにすると好ましい。酸化物半導体膜のチャネル領域に水素が注入されると、ゲート電圧を印加しなくてもキャリアのパスが形成されることがある。即ち、ノーマリーオンの特性となる。具体的には、チャネル領域の水素濃度は、1×1020atoms/cm以下、好ましくは1×1019atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下とする。
【0017】
また、酸窒化物半導体領域をソース領域およびドレイン領域に用いることによって、酸化物半導体領域であるチャネルのバンド端の曲がりがほとんど生じない効果を奏する。一方、ソース領域およびドレイン領域を金属材料で設けた場合、酸化物半導体領域であるチャネルのバンド端の曲がりが無視できなくなり、実効上のチャネル長が短くなってしまうことがある。この傾向はトランジスタのチャネル長が短いときほど顕著である。
【0018】
さらに、酸窒化物半導体領域は、酸化物半導体領域と比較して水素を吸蔵しやすい性質を有する。そのため、外部から取り込まれる水素および内部から拡散する水素は、ソース領域およびドレイン領域である酸窒化物半導体領域に吸蔵され、チャネル領域である酸化物半導体領域の水素濃度を低減することができる。即ち、ソース領域およびドレイン領域を酸窒化物半導体領域で設けることによって、水素が起因となって起こるトランジスタの電気特性の劣化および信頼性の低下を抑制することができる。
【0019】
加えて、酸窒化物半導体領域は、水素を吸蔵すると、窒素と水素が結合し、その一部がドナーとなり、キャリア密度が高まることで導電性を増すことができる。
【0020】
なお、後述するが、酸窒化物半導体領域の窒素は、酸化物半導体領域へ拡散しないことを確認している。
【0021】
また、酸窒化物半導体領域によってソース領域およびドレイン領域を形成することで、ソース領域およびドレイン領域と配線とのコンタクト抵抗を低減できるため、トランジスタのオン電流を増大させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によって、電気特性が良好で、かつ信頼性の高い酸化物半導体を用いたトランジスタを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一態様に係るトランジスタの一例を示す上面図および断面図。
【図2】本発明の一態様に係るトランジスタの作製工程の一例を示す断面図。
【図3】本発明の一態様に係るトランジスタの作製工程の一例を示す断面図。
【図4】本発明の一態様に係るトランジスタの作製工程の一例を示す断面図。
【図5】酸化物半導体、酸窒化物半導体および金属材料のバンド構造を説明する図。
【図6】酸化物半導体および酸窒化物半導体における水素の拡散を説明する図。
【図7】酸化物半導体および酸窒化物半導体における窒素の拡散を説明する図。
【図8】本発明の一態様に係るトランジスタを有する表示装置の一例を示す上面図および断面図。
【図9】本発明の一態様に係るトランジスタを有する電子機器の一例を示す斜視図。
【図10】本発明の一態様に係るトランジスタの例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。なお、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0025】
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0026】
(実施の形態1)
本実施の形態では、図1を用いてチャネル領域に酸化物半導体を含むトップゲート構造のトランジスタにおいて、チャネル領域と同一層に設けられるソース領域およびドレイン領域に酸窒化物半導体を含む例について説明する。
【0027】
図1は、トップゲート構造のトランジスタの上面図および断面図である。ここで、図1(A)は上面図であり、図1(B)および図1(C)はそれぞれ、図1(A)におけるA−B断面およびC−D断面における断面図である。なお、図1(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ151の構成要素の一部(例えば、層間絶縁膜124など)を省略している。
【0028】
図1に示すトランジスタ151は、絶縁表面上の酸化物半導体領域126および一対の酸窒化物半導体領域122を含む酸化物半導体膜と、酸化物半導体領域126上のゲート絶縁膜112と、ゲート絶縁膜112上のゲート電極114と、下地絶縁膜102、一対の酸窒化物半導体領域122およびゲート電極114を覆う層間絶縁膜124と、層間絶縁膜124に設けられたコンタクトホール130を介して、一対の酸窒化物半導体領域122と接続された配線116と、を有するトランジスタである。本実施の形態では、絶縁表面として、基板100上に下地絶縁膜102を設けた場合について説明する。
【0029】
ここで、一対の酸窒化物半導体領域122は、トランジスタ151のソース領域およびドレイン領域となり、酸化物半導体領域126は、トランジスタ151のチャネル領域となる。
【0030】
酸化物半導体領域126および一対の酸窒化物半導体領域122を含む酸化物半導体膜は、In、Ga、SnおよびZnのいずれかを二種以上を含む材料とすればよい。例えば、酸化物半導体領域126はIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体とし、一対の酸窒化物半導体領域122はIn−Ga−Zn−O−N系酸窒化物半導体とする。
【0031】
一対の酸窒化物半導体領域122の窒素濃度は、0.01原子%以上30原子%以下とする。なお、窒素濃度は、二次イオン質量分析(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)、X線光電子分光法(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)または電子線マイクロアナライザー(EPMA:Electron Probe X−ray MicroAnalyzer)によって定量可能である。
【0032】
ここで、一対の酸窒化物半導体領域122の水素濃度は、1×1019atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下とする。また、酸化物半導体領域126の水素濃度は、1×1020atoms/cm以下、好ましくは1×1019atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下とする。なお、水素濃度は、SIMSによって定量可能である。
【0033】
また、一対の酸窒化物半導体領域122は、導電率が10S/cm以上1000S/cm以下、好ましくは100S/cm以上1000S/cm以下とする。10S/cmよりも導電率が低いと、トランジスタのオン電流が低下してしまう。また、1000S/cm以下の導電率とすることで、一対の酸窒化物半導体領域122の作用で酸化物半導体領域126に掛かる電界の影響を和らげ、短チャネル効果を低減することができる。
【0034】
基板100に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを、基板100として用いてもよい。また、十分な耐熱性を有するプラスチック基板を用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板100として用いてもよい。
【0035】
また、基板100として、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板上にトランジスタを設ける場合、可撓性基板上に直接トランジスタを作製してもよいし、他の基板にトランジスタを作製した後、これを剥離し、可撓性基板に転置してもよい。なお、トランジスタを剥離し、可撓性基板に転置するためには、上記他の基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。
【0036】
下地絶縁膜102は、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜および窒化シリコン膜の単層または積層とすればよい。
【0037】
ここで、酸化窒化シリコンとは、その組成において、窒素よりも酸素の含有量が多いものを示し、例えば、酸素が50原子%以上70原子%以下、窒素が0.5原子%以上15原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以下、水素が0原子%以上10原子%以下の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化シリコンとは、その組成において、酸素よりも窒素の含有量が多いものを示し、例えば、酸素が5原子%以上30原子%以下、窒素が20原子%以上55原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以下、水素が10原子%以上25原子%以下の範囲で含まれるものをいう。但し、上記範囲は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や、水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合のものである。また、構成元素の含有比率は、その合計が100原子%を超えない値をとる。
【0038】
下地絶縁膜102は、加熱により酸素を放出する膜を用いてもよい。
【0039】
「加熱により酸素を放出する」とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の放出量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm以上であることをいう。
【0040】
なお、酸素の放出量は、TDS分析において、基板温度が150℃以上700℃以下、好ましくは200℃以上650℃以下、さらに好ましくは250℃以上470℃以下の範囲で測定する。これは、例えば、基板温度が150℃未満で起こる酸素の放出が、主として基板表面に吸着した、比較的安定性の低い酸素起因と推定されるためである。また、基板温度を700℃以下の範囲とすることで、トランジスタの作製工程に即した酸素の放出量を評価していることになる。
【0041】
ここで、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の放出量の測定方法について、以下に説明する。
【0042】
TDS分析したときの気体の放出量は、スペクトルの積分値に比例する。このため、絶縁膜のスペクトルの積分値と、標準試料から得られる基準値に対する比とにより、気体の放出量を計算することができる。標準試料の基準値とは、所定の原子を含む試料の、スペクトルの積分値に対する原子の密度の割合である。
【0043】
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、及び絶縁膜のTDS分析結果から、絶縁膜の酸素分子の放出量(NO2)は、数式1で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量数32で検出されるスペクトルの全てが酸素分子由来と仮定する。質量数32のものとしてCHOHがあるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体である質量数17の酸素原子及び質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
【0044】
O2=NH2/SH2×SO2×α (数1)
【0045】
H2は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。SH2は、標準試料をTDS分析したときのスペクトルの積分値である。ここで、標準試料の基準値を、NH2/SH2とする。SO2は、絶縁膜をTDS分析したときのスペクトルの積分値である。αは、TDS分析におけるスペクトル強度に影響する係数である。数式1の詳細に関しては、特開平6−275697公報を参照する。なお、上記絶縁膜の酸素の放出量は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として1×1016atoms/cmの水素原子を含むシリコンウェハを用いて測定した。
【0046】
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の放出量についても見積もることができる。
【0047】
なお、NO2は酸素分子の放出量である。絶縁膜においては、酸素原子に換算したときの酸素の放出量は、酸素分子の放出量の2倍となる。
【0048】
上記構成において、加熱により酸素を放出する絶縁膜は、酸素が過剰な酸化シリコン(SiO(X>2))であってもよい。酸素が過剰な酸化シリコン(SiO(X>2))とは、シリコン原子数の2倍より多い酸素原子を単位体積当たりに含むものである。単位体積当たりのシリコン原子数および酸素原子数は、ラザフォード後方散乱法により測定した値である。
【0049】
下地絶縁膜から酸化物半導体領域に酸素が供給されることで、下地絶縁膜および酸化物半導体領域の界面準位密度を低減できる。この結果、トランジスタの動作などに起因して生じうる電荷などが、上述の下地絶縁膜および酸化物半導体領域の界面に捕獲されることを抑制することができ、電気特性の劣化の少ないトランジスタを得ることができる。
【0050】
さらに、酸化物半導体の酸素欠損に起因して電荷が生じる場合がある。一般に酸化物半導体の酸素欠損は、一部がドナーとなりキャリアである電子を生じる。この結果、トランジスタのしきい値電圧がマイナス方向にシフトしてしまう。これはバックチャネル側で生じる酸素欠損において顕著である。なお、本明細書におけるバックチャネルとは、酸化物半導体領域において下地絶縁膜側の界面近傍を指す。下地絶縁膜から酸化物半導体領域に酸素が十分に放出されることにより、しきい値電圧がマイナス方向へシフトする要因である、酸化物半導体領域の酸素欠損を低減することができる。
【0051】
即ち、酸化物半導体領域に酸素欠損が生じると、下地絶縁膜と酸化物半導体領域との界面における電荷の捕獲を抑制することが困難となるところ、下地絶縁膜に、加熱により酸素を放出する絶縁膜を設けることで、酸化物半導体領域および下地絶縁膜の界面準位密度、ならびに酸化物半導体領域の酸素欠損を低減し、酸化物半導体領域および下地絶縁膜の界面における電荷捕獲の影響を小さくすることができる。
【0052】
ゲート絶縁膜112は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウムまたはイットリア安定化ジルコニアなどを用いればよく、積層または単層で設ける。例えば、熱酸化法、CVD法、スパッタリング法などで形成すればよい。ゲート絶縁膜112は、加熱により酸素を放出する膜を用いてもよい。ゲート絶縁膜112に加熱により酸素を放出する膜を用いることで、酸化物半導体領域126に生じる酸素欠損を低減することができ、トランジスタの電気特性の劣化を抑制できる。
【0053】
本実施の形態に示す構造では、ゲート絶縁膜112の段差乗り越え部がないため、ゲート絶縁膜112を起因とするリーク電流を低減し、かつゲート絶縁膜112の耐圧を高めることができる。そのため、ごく薄い、5nm程度の厚さのゲート絶縁膜112を用いてもトランジスタを正常に動作させることができる。なお、ゲート絶縁膜112を薄膜化することで、短チャネル効果を低減し、かつトランジスタの動作速度を高める効果を奏する。
【0054】
ゲート電極114の材料は、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタルおよびタングステンを少なくとも一種以上含む、単体金属、合金または金属窒化物を用いればよい。酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いても構わない。また、前述の材料を積層した構成としても構わない。
【0055】
層間絶縁膜124の材料は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いればよく、積層または単層で設ける。例えば、熱酸化法、CVD法またはスパッタリング法などで形成すればよい。好ましくは、層間絶縁膜124は、窒化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜を用いる。
【0056】
配線116は、ゲート電極114と同様の構成とすればよい。
【0057】
このような構造を有することによって、トランジスタ151は、ゲート電極114と一対の酸窒化物半導体領域122との間に生じる寄生容量がほとんどなく、チャネル長を縮小した場合にもしきい値電圧の変動が小さい。また、一対の酸窒化物半導体領域122と配線116とのコンタクト抵抗が低減され、トランジスタのオン電流を増大することができる。また、酸化物半導体領域126中の水素濃度が低減され、トランジスタの電気特性および信頼性を高めることができる。
【0058】
なお、図4(D)のように、ゲート絶縁膜112が酸化物半導体領域126および一対の酸窒化物半導体領域122を覆って設けられる構造としても構わない。
【0059】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0060】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタと異なるトランジスタの例について図10を用いて説明する。
【0061】
図10(A)に示すトランジスタ152は、絶縁表面を有する基板100と、基板100上のゲート電極114と、ゲート電極114上のゲート絶縁膜112と、ゲート絶縁膜112を介してゲート電極114上に設けられた酸化物半導体領域126および一対の酸窒化物半導体領域122を含む酸化物半導体膜と、該酸化物半導体膜およびゲート絶縁膜112を覆う層間絶縁膜124と、層間絶縁膜124に設けられたコンタクトホール130を介して、一対の酸窒化物半導体領域122と接続された配線116と、を有するトランジスタである。なお、基板100とトランジスタ152との間に下地絶縁膜102を有する構造としても構わない。
【0062】
図10(B)に示すトランジスタ153は、絶縁表面を有する基板100と、基板100上のゲート電極114と、ゲート電極114上のゲート絶縁膜112と、ゲート絶縁膜112を介してゲート電極114上に設けられた酸化物半導体領域126および一対の酸窒化物半導体領域122を含む酸化物半導体膜と、一対の酸窒化物半導体領域122と接続された配線116と、を有するトランジスタである。なお、基板100とトランジスタ153との間に下地絶縁膜102を有する構造としても構わない。図示しないが、トランジスタ153上に層間絶縁膜124を有する構造としても構わない。
【0063】
図10(C)に示すトランジスタ154は、絶縁表面を有する基板100と、基板100上のゲート電極114と、ゲート電極114上のゲート絶縁膜112と、ゲート絶縁膜112上の配線116と、ゲート絶縁膜112を介してゲート電極114上に設けられた酸化物半導体領域126および配線116と接続された一対の酸窒化物半導体領域122を含む酸化物半導体膜と、を有するトランジスタである。なお、基板100とトランジスタ154との間に下地絶縁膜102を有する構造としても構わない。図示しないが、トランジスタ154上に層間絶縁膜124を有する構造としても構わない。
【0064】
図10(D)に示すトランジスタ155は、基板100上の下地絶縁膜102と、下地絶縁膜上の酸化物半導体領域126および一対の酸窒化物半導体領域122を含む酸化物半導体膜と、酸化物半導体領域126上のゲート絶縁膜112と、ゲート絶縁膜112上のゲート電極114と、一対の酸窒化物半導体領域122と接続された配線116と、を有するトランジスタである。図示しないが、トランジスタ155上に層間絶縁膜124を有する構造としても構わない。
【0065】
図10(E)に示すトランジスタ156は、基板100上の下地絶縁膜102と、下地絶縁膜上の配線116と、下地絶縁膜102上の酸化物半導体領域126および配線116と接続された一対の酸窒化物半導体領域122を含む酸化物半導体膜と、酸化物半導体領域126上のゲート絶縁膜112と、ゲート絶縁膜112上のゲート電極114と、を有するトランジスタである。図示しないが、トランジスタ156上に層間絶縁膜124を有する構造としても構わない。
【0066】
トランジスタのチャネル長は一対の酸窒化物半導体領域122の間隔またはゲート電極114の幅で決まる。一対の酸窒化物半導体領域122の間隔およびゲート電極114の幅が一致する場合、一対の酸窒化物半導体領域122とゲート電極114との重なりがなくなるため好ましいが、一対の酸窒化物半導体領域122の間隔およびゲート電極114の幅が一致していなくても構わない。例えば、一対の酸窒化物半導体領域122の間隔よりもゲート電極114の幅が狭い場合、ゲート電極114と酸化物半導体領域とが重畳しない領域にオフセット領域が形成され、電界の集中が緩和される効果によって短チャネル効果を低減することができる。
【0067】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0068】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタを作製する方法の例を説明する。
【0069】
まず、基板100上に下地絶縁膜102を成膜する(図2(A)参照。)。下地絶縁膜102は、スパッタリング法またはCVD法などで成膜すればよい。
【0070】
下地絶縁膜をスパッタリング法で成膜する場合、シリコンターゲット、石英ターゲット、アルミニウムターゲットまたは酸化アルミニウムターゲットなどを用いて、酸素を含む成膜ガスによって成膜すればよい。成膜ガス中の酸素の割合は、成膜ガス全体に対して6体積%以上とする。好ましくは、50体積%以上とする。成膜ガス中の酸素ガスの割合を高めることで、加熱により酸素を放出する絶縁膜を形成することができる。
【0071】
ターゲット中の水素も極力取り除かれていると好ましい。具体的には、OH基が100ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは1ppm以下の酸化物ターゲットを用いることで、下地絶縁膜102中の水素濃度を低減し、トランジスタの電気特性および信頼性を高めることができる。例えば、溶融石英は、OH基が10ppm以下で作製しやすく、またコストが低いため好ましい。もちろんOH基濃度の低い合成石英のターゲットを用いても構わない。
【0072】
次に、酸化物半導体膜を成膜し、加工して島状の酸化物半導体膜106を形成する(図2(B)参照。)。ここで、下地絶縁膜102および酸化物半導体膜は、真空連続で成膜しても構わない。例えば、基板100表面の水素を含む不純物を、熱処理またはプラズマ処理で除去した後、大気に暴露することなく下地絶縁膜102を成膜し、続けて大気に暴露することなく酸化物半導体膜を成膜してもよい。このようにすることで、基板表面の水素を含む不純物を低減し、また、各界面における大気成分の付着を抑制することができるため、電気特性が良好で、信頼性の高いトランジスタを作製することができる。酸化物半導体膜を加熱雰囲気で成膜するとさらに効果的である。
【0073】
酸化物半導体膜106を形成後、第1の熱処理を行ってもよい。第1の熱処理は、温度を150℃以上650℃以下、好ましくは250℃以上450℃以下とし、酸化性雰囲気または不活性雰囲気で行う。ここで、酸化性雰囲気は、酸素、オゾンまたは窒化酸素などの酸化性ガスを10ppm以上含有する雰囲気である。また、不活性雰囲気は、前述の酸化性ガスが10ppm未満であり、その他、窒素または希ガスで充填された雰囲気である。第1の熱処理を行うことによって、酸化物半導体膜106をさらに高純度化できるため、トランジスタの電気特性および信頼性を高めることができる。なお、第1の熱処理は、酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜の成膜直後に行っても構わない。
【0074】
次に、酸化物半導体膜106を覆ってゲート絶縁膜108および導電膜104を成膜する(図2(C)参照。)。ここで、ゲート絶縁膜108および導電膜104は、大気に暴露することなく、連続で成膜すると好ましい。
【0075】
次に、導電膜104およびゲート絶縁膜108を加工して、ゲート電極114およびゲート絶縁膜112を形成する。ゲート絶縁膜112は、ゲート電極114の直下に形成される(図3(A)参照。)。ゲート電極114は、テーパー形状であってもよい。また、ゲート電極114のみを細らせて、ゲート電極114が形成されている領域からゲート絶縁膜112がはみ出す構造としても構わない。ゲート絶縁膜112が、ゲート電極114が形成されている領域からはみ出して設けられることによって、後の工程で行うイオン注入の際に、イオンの注入量の少ない領域(LDD:Lightly Doped Drain)をチャネル領域とソース領域およびドレイン領域の間に形成することができる。LDDが設けられることによって、ホットキャリア劣化等を抑制できる。
【0076】
次に、酸化物半導体膜106に対して、イオン105を注入する(図3(B)参照。)。イオン105は、窒素を含むイオンである。イオン105の注入は、例えば、イオンドーピング法またはイオンインプランテーション法を用いればよい。
【0077】
または、イオン105は、窒素を含むイオンおよび水素を含むイオンで構成することができる。
【0078】
イオン105は、ゲート電極114およびゲート絶縁膜112によって遮られた領域以外に注入される。そのため、酸化物半導体膜に酸化物半導体領域126および一対の酸窒化物半導体領域122を設けることができる(図3(C)参照。)。
【0079】
酸窒化物半導体領域が形成において、一部の窒素と水素が結合し、結合した窒素と水素のさらに一部がキャリアを発生することがあるため、より導電率の高い酸窒化物半導体領域となる。この酸窒化物半導体領域と水素の結合は、酸化物半導体領域と水素の結合よりも強い。そのため、酸化物半導体領域への水素の拡散は起こりにくく、単に酸化物半導体膜へ水素を注入して導電率を高めた場合と比較して、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0080】
次に、下地絶縁膜102、一対の酸窒化物半導体領域122およびゲート電極114を覆って層間絶縁膜124を形成する。層間絶縁膜124の材料は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンを用い、スパッタリング法、CVD法などで成膜すればよい。このとき、加熱により酸素を放出しにくい材料を用いると好ましい。これは、一対の酸窒化物半導体領域122の導電率を低下させないためである。具体的には、CVD法により、シランガスを主材料とし、酸化窒素ガス、窒素ガス、水素ガスおよび希ガスから適切な原料ガスを混合して成膜すればよい。また、基板温度を150℃以上600℃以下、好ましくは300℃以上550℃以下とすればよい。CVD法を用いることで、加熱により酸素を放出しにくい層間絶縁膜124を形成することができる。また、シランガスを主材料とすることで膜中に水素が残留し、該水素が拡散することで一対の酸窒化物半導体領域122の導電率をさらに高めることができる。層間絶縁膜124中の水素濃度は、0.1原子%以上25原子%以下とすればよい。なお、水素濃度は、SIMS、またはRBSおよびHFSによって定量可能である。
【0081】
層間絶縁膜124は、一対の酸窒化物半導体領域122に達するコンタクトホール130を有する。コンタクトホール130を介して、一対の酸窒化物半導体領域122に配線116を接続して形成する。このとき、一対の酸窒化物半導体領域122を有するため、酸化物半導体膜のみの場合と比較して配線116とのコンタクト抵抗を低減することができる。
【0082】
配線116の材料は、ゲート電極114と同様の構成とすればよい。
【0083】
以上の工程で、トランジスタ151を作製することができる(図3(D)参照。)。
【0084】
なお、本実施の形態ではゲート絶縁膜112を形成してからイオン105を注入しているが、これに限定されず、ゲート電極114を形成した後、即ちゲート絶縁膜112を形成する前にゲート絶縁膜108を介してイオン105を注入しても構わない。一対の酸窒化物半導体領域122となる領域が、ゲート絶縁膜108で覆われていることによって、一対の酸窒化物半導体領域122のダメージを低減することができる。この場合、イオン105を注入後、ゲート電極114をマスクとしてゲート絶縁膜108を加工し、ゲート絶縁膜112を形成すればよい。
【0085】
このようにすることで、トランジスタを微細化し、チャネル長を縮小した際にも電気特性が良好で、かつ信頼性の高い酸化物半導体を用いたトランジスタを作製することができる。
【0086】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0087】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタについて、実施の形態3とは異なる作製方法の例について説明する。
【0088】
図2(C)までは実施の形態3と同様である。
【0089】
その後、導電膜104を加工して、ゲート電極114を形成する(図4(A)参照。)。
【0090】
次に、ゲート絶縁膜108を介してイオン105を注入し(図4(B)参照。)、酸化物半導体領域126および一対の酸窒化物半導体領域122を形成する(図4(C)参照。)。
【0091】
次に、層間絶縁膜124およびコンタクトホール130を形成する。コンタクトホール130は、ゲート絶縁膜108にも設けられる。
【0092】
次に、コンタクトホール130を介して、一対の酸窒化物半導体領域122に配線116を接続して形成する。
【0093】
以上の工程で、トランジスタ157を作製することができる(図4(D)参照。)。
【0094】
ゲート絶縁膜108によって一対の酸窒化物半導体領域122が形成される領域が保護されるため、一対の酸窒化物半導体領域122のダメージを低減することができる。また、一対の酸窒化物半導体領域122上にもゲート絶縁膜108が設けられているため、ゲート電極114と一対の酸窒化物半導体領域122との間のリーク電流を発生を抑制することができる。
【0095】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0096】
(実施の形態5)
実施の形態1乃至実施の形態4で例示したトランジスタを用いた表示装置の一形態を図8に示す。
【0097】
図8(A)は、トランジスタ750、および液晶素子713を、第1の基板701と第2の基板706との間にシール材705によって封止したパネルの上面図であり、図8(B)は、図8(A)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0098】
第1の基板701上に設けられた画素部702を囲むようにして、シール材705が設けられ、画素部702上に第2の基板706が設けられている。よって画素部702は、第1の基板701とシール材705と第2の基板706とによって、液晶層708と共に封止されている。
【0099】
また、第1の基板701上のシール材705によって囲まれている領域とは異なる領域に、入力端子720を有し、FPC(Flexible printed circuit)718a、FPC718bが接続されている。FPC718aは、別途異なる基板に作製された信号線駆動回路703と電気的に接続され、FPC718bは、別途異なる基板に作製された走査線駆動回路704と電気的に接続されている。画素部702に与えられる各種信号および電位は、FPC718aおよびFPC718bを介して、信号線駆動回路703および走査線駆動回路704から供給される。
【0100】
なお、別途異なる基板に作製された駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、TCP(Tape Carrier Package)方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。
【0101】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)を用いることができる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0102】
図8に示す表示装置は、電極715および配線716を有しており、電極715および配線716はFPC718aが有する端子と異方性導電膜719を介して、電気的に接続されている。
【0103】
電極715は、第1の電極730と同じ導電膜から形成され、配線716は、トランジスタ750のソース電極およびドレイン電極と同じ導電膜で形成されている。
【0104】
なお、画素部702に設けられたトランジスタ750は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことがでれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0105】
図8は、表示素子として液晶素子を用いた表示装置の例を示している。図8において、表示素子である液晶素子713は、第1の電極730、第2の電極731、および液晶層708を含む。なお、液晶層708を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜732、絶縁膜733が設けられている。第2の電極731は第2の基板706側に設けられ、第1の電極730と第2の電極731とは液晶層708を介して積層する構成となっている。
【0106】
また、スペーサ735は、第2の基板706上に絶縁膜で形成された柱状のスペーサであり、液晶層708の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いても良い。
【0107】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0108】
また、液晶層708に、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するためにカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1ミリ秒以下と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。
【0109】
また、液晶材料の固有抵抗率は、1×10Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗率の値は、20℃で測定した値とする。
【0110】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。チャネル領域が形成される半導体膜に、酸化物半導体を用いたトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0111】
本実施の形態で用いる酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、酸窒化物領域であるソース領域およびドレイン領域が水素を吸蔵する効果を奏することにより、酸化物半導体領域であるチャネル領域における水素濃度を低くすることができる。そのため、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。また、酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、特別に容量素子を設けなくても、または特別に設ける容量素子の容量値が極めて小さくても、液晶素子に印加された電位の保持が可能となる。
【0112】
また、本実施の形態で用いる酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。よって、液晶表示装置の画素部に上記トランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。また、上記トランジスタは、同一基板上に駆動回路部または画素部に作り分けて作製することもできるため、液晶表示装置の部品点数を削減することができる。
【0113】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0114】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。ここで、垂直配向モードとは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種であり、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super−View)モードなどを用いることができる。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0115】
また、液晶表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板および位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0116】
また、バックライトとして複数の発光ダイオード(LED)を用いて、時間分割表示方式(フィールドシーケンシャル駆動方式)を行うことも可能である。フィールドシーケンシャル駆動方式を適用することで、カラーフィルタを用いることなく、カラー表示を行うことができる。
【0117】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、またはRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、本発明はカラー表示の液晶表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の液晶表示装置に適用することもできる。
【0118】
なお、図8において、第1の基板701、第2の基板706としては、ガラス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(polyvinyl fluoride)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0119】
液晶表示装置は光源または表示素子からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁膜、導電膜などの薄膜はすべて可視光の波長領域の光に対して透光性とする。
【0120】
表示素子に電圧を印加する第1の電極および第2の電極(画素電極、共通電極、対向電極などともいう。)においては、取り出す光の方向、電極が設けられる場所、および電極のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0121】
第1の電極730、第2の電極731は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(ITOともいう。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。また、1枚乃至10枚のグラフェンシートよりなる材料を用いてもよい。
【0122】
また、第1の電極730、第2の電極731のいずれか一方はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、またはその合金、もしくはその窒化物から一つ、または複数種を用いて形成することができる。
【0123】
また、第1の電極730、第2の電極731として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンまたはその誘導体、またはアニリン、ピロール及びチオフェンの2種以上の共重合体またはその誘導体などがあげられる。
【0124】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0125】
以上のように実施の形態1乃至実施の形態4で例示したトランジスタを適用することで、信頼性の高い液晶表示装置を提供することができる。なお、実施の形態1乃至実施の形態4で例示したトランジスタは上述の表示機能を有する半導体装置のみでなく、電源回路に搭載されるパワーデバイス、LSI等の半導体集積回路、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置など様々な機能を有する半導体装置に適用することが可能である。
【0126】
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0127】
(実施の形態6)
本発明の一態様である半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビまたはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどのカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した半導体装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0128】
図9(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体801、筐体802、表示部803、キーボード804などによって構成されている。実施の形態1乃至実施の形態5で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高いノート型のパーソナルコンピュータとすることができる。
【0129】
図9(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体811には表示部813と、操作ボタン814などが設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス812がある。実施の形態1乃至実施の形態5で示した半導体装置を適用することにより、より信頼性の高い携帯情報端末(PDA)とすることができる。
【0130】
図9(C)は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍820は、筐体821及び筐体822の2つの筐体で構成されている。筐体821及び筐体822は、軸部825により一体とされており、該軸部825を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0131】
筐体821には表示部823が組み込まれ、筐体822には表示部824が組み込まれている。表示部823及び表示部824は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図9(C)では表示部823)に文章を表示し、左側の表示部(図9(C)では表示部824)に挿絵を表示することができる。実施の形態1乃至実施の形態5で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高い電子書籍とすることができる。
【0132】
また、図9(C)では、筐体821に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体821において、電源826、操作キー827、スピーカー828などを備えている。操作キー827により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍820は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0133】
また、電子書籍820は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0134】
図9(D)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置860は、筐体861に表示部863が組み込まれている。表示部863により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド865により筐体861を支持した構成を示している。実施の形態1乃至実施の形態5で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置860とすることができる。
【0135】
テレビジョン装置860の操作は、筐体861が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0136】
なお、テレビジョン装置860は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0137】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いてもよい。
【実施例1】
【0138】
本実施例では、スパッタリング法によりIn−Ga−Zn−Oターゲットを用いて成膜した酸窒化物半導体膜について、具体例を示し、物性およびバンド図を説明する。
【0139】
条件1の成膜条件は以下の通りである。
【0140】
成膜方法:DCスパッタリング法
ターゲット:In−Ga−Zn−Oターゲット(原子数比、In:Ga:Zn:O=1:1:1:4)
成膜電力:500W
成膜ガス:O 40sccm
成膜圧力:0.4Pa
T−S間距離:60mm
成膜時基板温度:200℃
膜厚:100nm
【0141】
条件2の成膜条件は以下の通りである。
【0142】
成膜方法:DCスパッタリング法
ターゲット:In−Ga−Zn−Oターゲット(原子数比、In:Ga:Zn:O=1:1:1:4)
成膜電力:500W
成膜ガス:N 40sccm
成膜圧力:0.4Pa
T−S間距離:60mm
成膜時基板温度:200℃
膜厚:100nm
【0143】
石英基板に成膜した条件1および条件2を、それぞれsample1およびsample2とし、sample1およびsample2に対し、紫外線光電子分光分析(UPS:Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy)を行って、イオン化ポテンシャルを評価したところ、sample1は7.8eV、sample2は7.6eVであった。
【0144】
次に、分光エリプソメータ(HORIBA JOBIN YVON社 UT−300)を用いて、sample1およびsample2の分光スペクトルデータを取得し、該分光スペクトルデータを解析して、吸収係数αを導出した。
【0145】
次に、縦軸に(αhν)1/2をとり横軸にhνをとり(tauc plot)から直線部分を通る接線を引き、該接線と横軸hνとの交点を光学バンドギャップとした。ここで、hはプランク定数、νは光の振動数である。
【0146】
このようにして見積もったsample1およびsample2の光学バンドギャップは、それぞれ3.2eVおよび1.7eVであった。
【0147】
ここで、酸窒化物半導体をソースおよびドレインに、酸化物半導体をチャネルとしたときのバンド構造について図5を用いて説明する。
【0148】
図5(A)は、真空準位Evacと、sample1、sample2およびmetalの有する準位との関係である。ここで、IPはイオン化ポテンシャル、Eaは電子親和力、Egはエネルギーギャップ、Wfは仕事関数を示す。また、Ecは伝導帯の下端、Evは価電子帯の上端、Efはフェルミ準位を示す。なお、各符号の末尾に示す記号は、1がsample1を、2がsample2を、mがmetalをそれぞれ示す。ここではmetalとしてWf_mが4.8eV(タングステン、モリブデンなど)を想定している。
【0149】
ここで、sample1は極めて高純度化された半導体であり、極めてキャリア密度が低いためEf_1はEcおよびEvの概ね中央にあるとする。また、sample2はキャリア密度の高いn型半導体であり、Ec_2とEf_2が概ね一致する。
【0150】
このときのsample1、sample2およびmetalの、イオン化ポテンシャル、エネルギーギャップ、電子親和力および仕事関数を表1に示す。なお、Wf_1=Ea_1+(1/2)・Eg_1、Wf_2=Ea_2の関係とする。
【0151】
【表1】

【0152】
図5(B)は、本発明の実施の形態1に示した半導体装置のチャネルおよびソースおよびドレインの接続を想定したバンド構造である。即ち、チャネルであるsample1と、ソースおよびドレインであるsample2が接触すると、フェルミ準位が一致するようにキャリアの移動が起こり、sample1のバンド端が曲がる。
【0153】
図5(C)は、比較例としてチャネルであるsample1にソースおよびドレインであるmetalが接触した場合のバンド構造を示す。この場合もフェルミ準位が一致するようにキャリアの移動が起こり、sample1のバンド端が曲がるが、Wf_2>Wf_mの関係があるため、sample2と比較してバンド端の曲がりが大きくなる。このようにバンドが大きく曲がるため、トランジスタの微細化に伴いチャネル長を縮小していくと、実際にチャネル長を縮小した分よりも実効上のチャネル長の縮小する割合が大きくなる。即ち短チャネル効果が顕著になり、トランジスタのしきい値電圧のシフトや基板面内における電気特性のばらつきの増大が懸念される。この傾向は仕事関数が小さい材料をソースおよびドレインに用いた場合に顕著となる。なお、本実施例では、Wf_m=4.8eVと、比較的仕事関数の大きな金属材料をmetalとして想定しているが、これよりも大きな仕事関数を有する金属材料はほとんどないか非常に高価であるため実用的ではない。
【0154】
このように、酸化物半導体であるsample1をチャネルに、酸窒化物半導体であるsample2をトランジスタのソースおよびドレインにすることで、金属材料をソースおよびドレインにする場合と比較してトランジスタの短チャネル効果を低減できることがわかる。
【実施例2】
【0155】
本実施例では、酸化物半導体および酸窒化物半導体における水素の拡散について、図6を用いて説明する。
【0156】
サンプルの構造は、以下の通りである。
【0157】
ガラス基板上に酸化物半導体膜551を成膜し、酸化物半導体膜551上に酸化物半導体膜552を成膜し、酸化物半導体膜552上に酸窒化物半導体膜553を成膜した。
【0158】
酸化物半導体膜551の成膜条件は以下の通りである。
【0159】
成膜方法:DCスパッタリング法
ターゲット:In−Ga−Zn−Oターゲット(原子数比、In:Ga:Zn:O=2:2:1:7)
成膜電力:500W
成膜ガス:Ar 40sccm
成膜圧力:0.4Pa
T−S間距離:60mm
成膜時基板温度:RT
膜厚:100nm
【0160】
酸化物半導体膜552の成膜条件は以下の通りである。
【0161】
成膜方法:DCスパッタリング法
ターゲット:In−Ga−Zn−Oターゲット(原子数比、In:Ga:Zn:O=2:2:1:7)
成膜電力:500W
成膜ガス:Ar 30sccm、O 15sccm
成膜圧力:0.4Pa
T−S間距離:60mm
成膜時基板温度:RT
膜厚:100nm
【0162】
酸窒化物半導体膜553の成膜条件は以下の通りである。
【0163】
成膜方法:DCスパッタリング法
ターゲット:In−Ga−Zn−Oターゲット(原子数比、In:Ga:Zn:O=2:2:1:7)
成膜電力:500W
成膜ガス:Ar 35sccm、N 5sccm
成膜圧力:0.4Pa
T−S間距離:60mm
成膜時基板温度:RT
膜厚:200nm
【0164】
上述のサンプルを、熱処理前後でSIMSを行い、水素および窒素濃度を評価した。熱処理は、抵抗加熱炉を用い、温度を350℃とし、窒素雰囲気にて1時間処理している。
【0165】
SIMSの結果を図6に示す。横軸はサンプルの深さ(depth)、縦軸は水素および窒素の濃度(concentration)である。なお、本明細書にてSIMSにおける深さとは、酸化シリコン膜のエッチングレートから概算した値であり、実際の深さとはずれが生じるため、あくまで目安とする。太点線501は、熱処理等行っていないサンプル(as−depo)の窒素濃度を示し、細点線503はas−depoの水素濃度を示し、太実線511は熱処理後の窒素濃度を示し、細実線513は熱処理後の水素濃度をそれぞれ示す。なお、3つの両矢印で示す範囲はそれぞれ、酸化物半導体膜551、酸化物半導体膜552および酸窒化物半導体膜553を示す。
【0166】
水素濃度を比較すると、as−depoと熱処理後において、酸化物半導体膜551および酸化物半導体膜552で低減し、酸窒化物半導体膜553で増大している。即ち、酸化物半導体膜551および酸化物半導体膜552から酸窒化物半導体膜553への水素の拡散が示唆された。
【0167】
なお、各層における熱処理前後の窒素濃度に違いは見られなかった。
【0168】
以上より、酸窒化物半導体は、酸化物半導体と比較し、水素を吸蔵しやすく、かつ水素を脱離しにくいことがわかった。
【実施例3】
【0169】
本実施例では、酸化物半導体および酸窒化物半導体における窒素の拡散について、図7を用いて説明する。
【0170】
ガラス基板上に酸窒化物半導体膜651を成膜し、酸窒化物半導体膜651上に酸化物半導体膜652を成膜することでサンプルを得た。
【0171】
酸窒化物半導体膜651の成膜条件は以下の通りである。
【0172】
成膜方法:DCスパッタリング法
ターゲット:In−Ga−Zn−Oターゲット(原子数比、In:Ga:Zn:O=1:1:1:4)
成膜電力:500W
成膜ガス:Ar 35sccm、N 5sccm
成膜圧力:0.4Pa
T−S間距離:60mm
成膜時基板温度:200℃
膜厚:100nm
【0173】
酸化物半導体膜652の成膜条件は以下の通りである。
【0174】
成膜方法:DCスパッタリング法
ターゲット:In−Ga−Zn−Oターゲット(原子数比、In:Ga:Zn:O=1:1:1:4)
成膜電力:500W
成膜ガス:Ar 30sccm、O 15sccm
成膜圧力:0.4Pa
T−S間距離:60mm
成膜時基板温度:200℃
膜厚:200nm
【0175】
上述のサンプルを、熱処理前後でSIMSを行い、窒素濃度を評価した。熱処理の条件は、抵抗加熱炉を用い、温度を450℃または650℃とし、窒素雰囲気にて1時間処理している。
【0176】
SIMSの結果を図7に示す。実線601は、熱処理等行っていないサンプル(as−depo)の窒素濃度を示し、実線611は450℃にて熱処理後のサンプルの窒素濃度を示し、実線621は650℃にて熱処理後のサンプルの窒素濃度をそれぞれ示す。なお、両矢印で示す範囲はそれぞれ、酸窒化物半導体膜651および酸化物半導体膜652を示す。
【0177】
as−depoと、450℃にて熱処理後のサンプルとを比較すると、450℃の熱処理によって酸窒化物半導体膜651から酸化物半導体膜652への窒素の拡散はほとんどないことがわかる。一方、as−depoと、650℃にて熱処理後のサンプルとを比較すると、650℃の熱処理によって酸窒化物半導体膜651から酸化物半導体膜652へ、僅かに窒素が拡散していることがわかる。
【0178】
本実施例によれば、酸窒化物半導体から酸化物半導体へ、450℃以下の工程ではほとんど窒素は拡散せず、650℃にて僅かに拡散するのみであることがわかった。
【0179】
即ち、酸窒化物半導体は極めて安定であり、熱処理などによって容易に窒素の拡散が起こらないといえる。
【符号の説明】
【0180】
100 基板
102 下地絶縁膜
104 導電膜
105 イオン
106 酸化物半導体膜
108 ゲート絶縁膜
112 ゲート絶縁膜
114 ゲート電極
116 配線
122 一対の酸窒化物半導体領域
124 層間絶縁膜
126 酸化物半導体領域
130 コンタクトホール
151 トランジスタ
152 トランジスタ
153 トランジスタ
154 トランジスタ
155 トランジスタ
156 トランジスタ
157 トランジスタ
501 太点線
503 細点線
511 太実線
513 細実線
551 酸化物半導体膜
552 酸化物半導体膜
553 酸窒化物半導体膜
601 実線
611 実線
621 実線
651 酸窒化物半導体膜
652 酸化物半導体膜
701 基板
702 画素部
703 信号線駆動回路
704 走査線駆動回路
705 シール材
706 基板
708 液晶層
713 液晶素子
715 電極
716 配線
718a FPC
718b FPC
719 異方性導電膜
720 入力端子
730 電極
731 電極
732 絶縁膜
733 絶縁膜
735 スペーサ
750 トランジスタ
801 本体
802 筐体
803 表示部
804 キーボード
811 本体
812 スタイラス
813 表示部
814 操作ボタン
820 電子書籍
821 筐体
822 筐体
823 表示部
824 表示部
825 軸部
826 電源
827 操作キー
828 スピーカー
860 テレビジョン装置
861 筐体
863 表示部
865 スタンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素を含む一対の酸窒化物半導体領域、および前記一対の酸窒化物半導体領域に挟まれる酸化物半導体領域を有する酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と少なくとも一部が接するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜を介して前記酸化物半導体領域と重畳して設けられるゲート電極と、を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記一対の酸窒化物半導体領域がトランジスタのソース領域およびドレイン領域となり、前記酸化物半導体領域が前記トランジスタのチャネル領域となることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記酸化物半導体領域および前記酸窒化物半導体領域が、In、Ga、SnおよびZnのいずれかを二種以上を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記酸窒化物半導体領域の窒素濃度が0.01原子%以上30原子%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記一対の酸窒化物半導体領域の水素濃度が1×1019atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下であり、
前記酸化物半導体領域の水素濃度が1×1020atoms/cm以下である前記酸化物半導体膜を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記一対の酸窒化物半導体領域上およびゲート電極上に層間絶縁膜を有し、
前記層間絶縁膜は、前記一対の酸窒化物半導体領域にそれぞれ達するコンタクトホールを有し、
前記コンタクトホールを介して前記一対の酸窒化物半導体領域の一方または他方とそれぞれ接続する配線を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記層間絶縁膜が、0.1原子%以上25原子%以下の水素を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
絶縁表面上に酸化物半導体膜を形成し、
前記酸化物半導体膜上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、
前記ゲート電極をマスクに、前記酸化物半導体膜に窒素を含むイオンを注入することで一対の酸窒化物半導体領域を形成し、
前記一対の酸窒化物半導体領域とそれぞれ接続する配線を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
絶縁表面上に酸化物半導体膜を形成し、
前記酸化物半導体膜を覆うゲート絶縁膜を成膜し、
前記ゲート絶縁膜上に導電膜を成膜し、
前記導電膜を加工してゲート電極を形成し、
前記ゲート絶縁膜を介して前記酸化物半導体膜に窒素を含むイオンを注入することで、前記酸化物半導体膜の前記ゲート電極と重畳しない領域に一対の酸窒化物半導体領域を形成し、
前記一対の酸窒化物半導体領域とそれぞれ接続する配線を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項10】
絶縁表面上に酸化物半導体膜を形成し、
前記酸化物半導体膜を覆う絶縁膜を成膜し、
前記絶縁膜上に導電膜を成膜し、
前記導電膜および前記絶縁膜を加工し、ゲート電極と、前記酸化物半導体膜の一部を露出するゲート絶縁膜とを形成し、
前記酸化物半導体膜に窒素を含むイオンを注入することで、前記酸化物半導体膜の露出された領域に一対の酸窒化物半導体領域を形成し、
前記一対の酸窒化物半導体領域とそれぞれ接続する配線を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれか一において、
前記一対の酸窒化物半導体領域の窒素濃度が0.01原子%以上30原子%以下となるよう前記窒素を含むイオンを注入することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項12】
請求項8乃至請求項11のいずれか一において、
前記酸窒化物半導体領域の水素濃度が1×1019atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下であり、
前記酸窒化物半導体領域に挟まれる領域の水素濃度が1×1020atoms/cm以下となるよう前記酸化物半導体膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項13】
請求項8乃至請求項12のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜が、In、Ga、SnおよびZnのいずれかを二種以上を含んで設けられることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項14】
請求項8乃至請求項13のいずれか一において、
前記絶縁表面を構成する絶縁膜および前記ゲート絶縁膜の少なくともいずれかが、成膜後の加熱により酸素を放出することを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−119667(P2012−119667A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243195(P2011−243195)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】