説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】特性を劣化させることなく、微細化することができる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、主表面を有する半導体基板SBと、主表面に互いに間隔をおいて形成されたソース領域SRおよびドレイン領域DRと、ソース領域SRとドレイン領域DRとに挟まれる主表面上に形成されたゲート電極層GEと、ソース領域SRの表面に接するように形成された第1導電層PL1と、ドレイン領域DRの表面に接するように形成された第2導電層PL2とを備え、第1導電層PL1とソース領域SRとの接触領域CR1からゲート電極層GEの下側を通って第2導電層PL2とドレイン領域DRとの接触領域CR2まで延びるように溝REが主表面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置およびその製造方法に関し、特に、半導体基板の主表面に溝が形成された半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の主表面に溝を形成した半導体装置は、たとえば特開平7−131009号公報に開示されている。この公報の半導体装置では、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタのチャネル領域において、微細なトレンチ(溝)がチャネル幅方向と直交して形成されている。このため、実際のゲート寸法に比べて実効的なチャネル幅を長くすることができる。その結果、安定した動作特性を維持した状態でチャネル幅方向の微細化が最大限に実現されたMOSトランジスタを得ることができるとこの公報には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−131009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この公報に記載の半導体装置では、ドレイン電流が不十分であるという問題がある。そのため、特性を劣化させることなく半導体装置を微細化することは困難である。
【0005】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、特性を劣化させることなく、微細化することができる半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態の半導体装置は、主表面を有する半導体基板と、主表面に互いに間隔をおいて形成されたソース領域およびドレイン領域と、ソース領域と前記ドレイン領域とに挟まれる主表面上に形成されたゲート電極層と、ソース領域の表面に接するように形成された第1導電層と、ドレイン領域の表面に接するように形成された第2導電層とを備え、第1導電層とソース領域との接触領域からゲート電極層の下側を通って第2導電層とドレイン領域との接触領域まで延びるように溝が主表面に形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本実施の形態の半導体装置によれば、第1導電層とソース領域との接触領域からゲート電極層の下側を通って第2導電層とドレイン領域との接触領域まで延びるように溝が主表面に形成されている。このため、溝の底壁に加えて側壁がソース領域からドレイン領域までドレイン電流の経路となるのでドレイン電流を増大させることができる。これにより、特性を劣化させることなく半導体装置を微細化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体装置の概略平面図である。
【図2】図1の概略断面図であって、IIA−IIA線に沿う概略断面図(A)と、IIB−IIB線に沿う概略断面図(B)と、IIC−IIC線に沿う概略断面図(C)と、IID−IID線に沿う概略断面図(D)である。
【図3】図2(A)のP1部のB濃度の分布を示す図である。
【図4】図2(B)のP2部のB濃度の分布を示す図である。
【図5】図2(C)のP3部のB濃度の分布を示す図である。
【図6】図2(A)のP1部のP濃度の分布を示す図である。
【図7】図2(A)のP1部のAs濃度の分布を示す図である。
【図8】図2(A)のVIII−VIII線に沿う不純物濃度のプロファイルを示す図である。
【図9】図2(B)のIX−IX線に沿う不純物濃度のプロファイルを示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第1工程を示す概略平面図である。
【図11】図10の概略断面図であって、XIA−XIA線に沿う概略断面図(A)と、XIB−XIB線に沿う概略断面図(B)と、XIC−XIC線に沿う概略断面図(C)と、XID−XID線に沿う概略断面図(D)である。
【図12】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第2工程を示す概略断面図であって、図2(C)のP3部に対応する位置においてトレンチが形成された状態を示す概略断面図である。
【図13】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第2工程を示す概略断面図であって、図2(C)のP3部に対応する位置においてトレンチに酸化シリコン膜が形成された状態を示す概略断面図である。
【図14】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第2工程を示す概略断面図であって、図2(C)のP3部に対応する位置において窒化シリコン膜の一部がエッチングされた状態を示す概略断面図である。
【図15】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第2工程を示す概略断面図であって、図2(C)のP3部に対応する位置において酸化シリコン膜がさらに形成された状態を示す概略断面図である。
【図16】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第2工程を示す概略断面図であって、図2(C)のP3部に対応する位置において酸化シリコン膜および窒化シリコン膜がエッチングされた状態を示す概略断面図である。
【図17】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第3工程を示す概略断面図(A)〜(D)であって、その断面位置は図11(A)〜(D)にそれぞれ対応する。
【図18】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第4工程を示す概略断面図(A)〜(D)であって、その断面位置は図11(A)〜(D)にそれぞれ対応する。
【図19】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第5工程を示す概略断面図(A)〜(D)であって、その断面位置は図11(A)〜(D)にそれぞれ対応する。
【図20】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の溝に対するイオン注入を示す概略平面図である。
【図21】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第6工程を示す概略断面図(A)〜(D)であって、その断面位置は図11(A)〜(D)にそれぞれ対応する。
【図22】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第7工程を示す概略平面図である。
【図23】図22の概略断面図であって、XXIIIA−XXIIIA線に沿う概略断面図(A)と、XXIIIB−XXIIIB線に沿う概略断面図(B)と、XXIIIC−XXIIIC線に沿う概略断面図(C)と、XXIIID−XXIIID線に沿う概略断面図(D)である。
【図24】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第8工程を示す概略断面図(A)〜(D)であって、その断面位置は図11(A)〜(D)にそれぞれ対応する。
【図25】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第9工程を示す概略平面図である。
【図26】図25の概略断面図であって、XXVIA−XXIVA線に沿う概略断面図(A)と、XXVIB−XXVIB線に沿う概略断面図(B)と、XXVIC−XXVIC線に沿う概略断面図(C)と、XXVID−XXVID線に沿う概略断面図(D)である。
【図27】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法の第10工程を示す概略平面図である。
【図28】図27の概略断面図であって、XXVIIIA−XXVIIIA線に沿う概略断面図(A)と、XXVIIIB−XXIIIVB線に沿う概略断面図(B)と、XXVIIIC−XXVIIIC線に沿う概略断面図(C)と、XXVIIID−XXVIIID線に沿う概略断面図(D)である。
【図29】本発明の実施の形態1における比較例1の半導体装置の概略平面図(A)と、本発明の実施の形態1における比較例2の半導体装置の概略平面図(B)である。
【図30】本実施の形態、比較例1および比較例2の半導体装置の構成におけるドレイン電流を示す図である。
【図31】比較例3のB濃度の分布を示す図であり、その位置は図3に対応する位置である。
【図32】比較例3のB濃度の分布を示す図であり、その位置は図4対応する位置である。
【図33】比較例3のB濃度の分布を示す図であり、その位置は図5に対応する位置である。
【図34】本発明の実施の形態2における半導体装置の概略平面図である。
【図35】図34の概略断面図であって、XXXVA−XXXVA線に沿う概略断面図(A)と、XXXVB−XXXVB線に沿う概略断面図(B)と、XXXVC−XXXVC線に沿う概略断面図(C)と、XXXVD−XXXVD線に沿う概略断面図(D)である。
【図36】本発明の実施の形態2における半導体装置の製造方法の第1工程を示す概略平面図である。
【図37】図36の概略断面図であって、XXXVIIA−XXXVIIA線に沿う概略断面図(A)と、XXXVIIB−XXXVIIB線に沿う概略断面図(B)と、XXXVIIC−XXXVIIC線に沿う概略断面図(C)と、XXXVIID−XXXVIID線に沿う概略断面図(D)である。
【図38】本発明の実施の形態2における半導体装置の製造方法の第3工程を示す概略断面図(A)〜(D)であって、その断面位置は図37(A)〜(D)にそれぞれ対応する。
【図39】本発明の実施の形態2における半導体装置の製造方法の第4工程を示す概略断面図(A)〜(D)であって、その断面位置は図37(A)〜(D)にそれぞれ対応する。
【図40】本発明の実施の形態2における半導体装置の製造方法の第5工程を示す概略断面図(A)〜(D)であって、その断面位置は図37(A)〜(D)にそれぞれ対応する。
【図41】本発明の実施の形態2における半導体装置の製造方法の第6工程を示す概略断面図(A)〜(D)であって、その断面位置は図37(A)〜(D)にそれぞれ対応する。
【図42】本発明の実施の形態2における半導体装置の製造方法の第7工程を示す概略平面図である。
【図43】図42の概略断面図であって、XLIIIA−XLIIIA線に沿う概略断面図(A)と、XLIIIB−XLIIIB線に沿う概略断面図(B)と、XLIIIC−XLIIIC線に沿う概略断面図(C)と、XLIIID−XLIIID線に沿う概略断面図(D)である。
【図44】本発明の実施の形態2における半導体装置の製造方法の第8工程を示す概略断面図(A)〜(D)であって、その断面位置は図37(A)〜(D)にそれぞれ対応する。
【図45】本発明の実施の形態2における半導体装置の製造方法の第9工程を示す概略平面図である。
【図46】図45の概略断面図であって、XLVIA−XLVIA線に沿う概略断面図(A)と、XLVIB−XLVIB線に沿う概略断面図(B)と、XLVIC−XLVIC線に沿う概略断面図(C)と、XLVID−XLVID線に沿う概略断面図(D)である。
【図47】本発明の実施の形態2における半導体装置の製造方法の第10工程を示す概略平面図である。
【図48】図47の概略断面図であって、XLVIIIA−XLVIIIA線に沿う概略断面図(A)と、XLVIIIB−XLIIIVB線に沿う概略断面図(B)と、XLVIIIC−XLVIIIC線に沿う概略断面図(C)と、XLVIIID−XLVIIID線に沿う概略断面図(D)である。
【図49】本発明の実施の形態2における変形例1の半導体装置の概略平面図である。
【図50】図49のL−L線に沿う概略断面図である。
【図51】本発明の実施の形態2における変形例2の半導体装置の概略平面図である。
【図52】本発明の実施の形態2における比較例1のMOSFETの概略断面図である。
【図53】本発明の実施の形態2における比較例2のMOSFETの概略断面図である。
【図54】本発明の実施の形態3における半導体装置の概略平面図である。
【図55】図54のLV−LV線に沿う概略断面図であって、溝の形状を示す概略断面図である。
【図56】本発明の実施の形態3における半導体装置と比較される本発明の実施の形態2の半導体装置の概略断面図であって、その断面は図55に対応する。
【図57】本発明の実施の形態4における半導体装置の概略平面図である。
【図58】本発明の実施の形態4における変形例の半導体装置の概略平面図である。
【図59】図58のLIX−LIX線に沿う概略断面図であって、溝の形状を示す概略断面図である。
【図60】本発明の実施の形態5における半導体装置の製造方法を示す概略斜視図であって、サイドウォール絶縁膜が形成される前のゲート電極層の近傍を示す概略斜視図である。
【図61】図60の概略断面図であって、LXIA−LXIA線に沿う概略断面図(A)と、LXIB−LXIB線に沿う概略断面図(B)と、LXIC−LXIC線に沿う概略断面図(C)である。
【図62】本発明の実施の形態5における半導体装置の製造方法の第1工程を示す概略図(A)〜(C)であって、その断面位置は図61(A)〜(C)に対応する。
【図63】本発明の実施の形態5における半導体装置の製造方法の第2工程を示す概略図(A)〜(C)であって、その断面位置は図61(A)〜(C)に対応する。
【図64】本発明の実施の形態5における半導体装置の製造方法の第3工程を示す概略図(A)〜(C)であって、その断面位置は図61(A)〜(C)に対応する。
【図65】本発明の実施の形態5における半導体装置の製造方法の第4工程を示す概略図(A)〜(C)であって、その断面位置は図61(A)〜(C)に対応する。
【図66】本発明の実施の形態5における半導体装置の製造方法を示す概略斜視図であって、サイドウォール絶縁膜が形成されたゲート電極層の近傍を示す概略斜視図である。
【図67】サイドウォール絶縁膜を形成する際の絶縁膜の残渣が溝に残った状態を示す概略断面図であって、その断面位置は図2(D)に対応する。
【図68】本発明の実施の形態6における半導体装置が搭載されたチップの概略平面図である。
【図69】本発明の実施の形態6における半導体装置の製造方法の第1工程を示す概略断面図であって、溝が形成された半導体装置の概略断面図(A)と、溝が形成されていない半導体装置の概略断面図(B)であり、その断面位置はそれぞれ図2(B)に対応する。
【図70】本発明の実施の形態6における溝が形成された半導体装置の概略断面図であって、その断面位置は図2(D)に対応する。
【図71】本発明の実施の形態6における半導体装置の製造方法の第2工程を示す概略断面図であって、溝が形成された半導体装置の概略断面図(A)と、溝が形成されていない半導体装置の概略断面図(B)であり、その断面位置は図69(A)および(B)にそれぞれ対応する。
【図72】本発明の実施の形態6における半導体装置の製造方法の第2工程を示す概略断面図であって、溝が形成された半導体装置の概略断面図であり、その断面位置は図70に対応する。
【図73】本発明の実施の形態6における半導体装置の製造方法の第3工程を示す概略断面図であって、溝が形成された半導体装置の概略断面図(A)と、溝が形成されていない半導体装置の概略断面図(B)であり、その断面位置は図69(A)および(B)にそれぞれ対応する。
【図74】本発明の実施の形態6における半導体装置の製造方法の第4工程を示す概略断面図であって、溝が形成された半導体装置の概略断面図(A)と、溝が形成されていない半導体装置の概略断面図(B)であり、その断面位置は図69(A)および(B)にそれぞれ対応する。
【図75】本発明の実施の形態6における半導体装置の製造方法の第4工程を示す概略断面図であって、溝が形成された半導体装置の概略断面図であり、その断面位置は図70に対応する。
【図76】本発明の実施の形態6における半導体装置の製造方法の第5工程を示す概略断面図であって、溝が形成された半導体装置の概略断面図(A)と、溝が形成されていない半導体装置の概略断面図(B)であり、その断面位置は図69(A)および(B)にそれぞれ対応する。
【図77】本発明の実施の形態6における半導体装置の製造方法の第6工程を示す概略断面図であって、溝が形成された半導体装置の概略断面図(A)と、溝が形成されていない半導体装置の概略断面図(B)であり、その断面位置は図69(A)および(B)にそれぞれ対応する。
【図78】本発明の実施の形態6における半導体装置の製造方法において、溝が形成された半導体装置にシリサイドプロテクションマスクが形成された状態を示す概略断面図(A)と、溝が形成されていない半導体装置にシリサイドプロテクションマスクが形成されていない状態を示す概略断面図(B)であって、その断面位置は図69(A)および(B)にそれぞれ対応する。
【図79】本発明の実施の形態6における半導体装置の製造方法において、溝が形成された半導体装置にシリサイドが形成された状態を示す概略断面図(A)と、溝が形成されていない半導体装置にシリサイドが形成された状態を示す概略断面図(B)であって、その断面位置は図69(A)および(B)にそれぞれ対応する。
【図80】本発明の実施の形態7における半導体装置の製造方法の第1工程を示す概略断面図であって、溝が形成された半導体装置の概略断面図(A)と、溝が形成されていない半導体装置の概略断面図(B)であり、その断面位置はそれぞれ図2(B)に対応する。
【図81】本発明の実施の形態7における半導体装置の製造方法の第2工程を示す概略断面図であって、溝が形成された半導体装置の概略断面図(A)と、溝が形成されていない半導体装置の概略断面図(B)であり、その断面位置は図80(A)および(B)にそれぞれ対応する。
【図82】本発明の実施の形態7における溝が形成された半導体装置の概略断面図であって、その断面位置は図2(D)に対応する。
【図83】本発明の実施の形態7における半導体装置の製造方法の第3工程を示す概略断面図であって、溝が形成された半導体装置の概略断面図(A)と、溝が形成されていない半導体装置の概略断面図(B)であり、その断面位置は図80(A)および(B)にそれぞれ対応する。
【図84】本発明の実施の形態7における半導体装置の製造方法の第4工程を示す概略断面図であって、溝が形成された半導体装置の概略断面図(A)と、溝が形成されていない半導体装置の概略断面図(B)であり、その断面位置は図80(A)および(B)にそれぞれ対応する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
まず本発明の実施の形態1の半導体装置の構成について説明する。
【0010】
図1を参照して、本実施の形態における半導体装置は、主表面を有する半導体基板SBと、半導体基板SBに形成されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)とを主に有している。半導体基板SBには、たとえばシリコン基板が適用され得る。
【0011】
図1、図2(A)および(B)を参照して、半導体基板SBの主表面には、たとえばLOCOS(Local Oxidation of Silicon)よりなる素子分離膜TIが形成されている。なお、図1は図2(A)のI−I線に沿う平面図である。図1ではソース側導電層CL1、ドレイン側導電層CL2、層間絶縁膜IIおよびゲート絶縁膜GIは見やすくするため図示されていない。
【0012】
この素子分離膜TIにより分離された領域にMOSFETが形成されている。このMOSFETは、たとえばn型MOSFETよりなっており、半導体基板SBの主表面のp型ウェル領域PWに形成されている。なお、このMOSFETは、p型MOSFETであってもよい。図示しないがp型MOSFETの場合にはp型MOSFETはn型ウェル領域に形成される。
【0013】
n型MOSFETは、n型不純物の低濃度領域と高濃度領域とによるLDD(Lightly Doped Drain)構造を有していてもよい。以下、本実施の形態の一例としてLDD構造を有するn型MOSFETについて説明する。
【0014】
LDD構造を有するn型MOSFETは、ソース側低濃度領域SLおよびドレイン側低濃度領域DLとなる一対のn型低濃度領域と、ソース領域SRおよびドレイン領域DRとなる一対のn型高濃度領域と、ゲート電極層GEと、ゲート絶縁膜GIと、溝REとを主に有している。
【0015】
ソース領域SRとドレイン領域DRとはp型ウェル領域PW内の半導体基板SBの主表面に互いに間隔をあけて形成されている。ソース領域SRとドレイン領域DRとは一対のn型不純物領域により構成されている。ソース領域SRとドレイン領域DRとはゲート電極層GEに対して非対称に形成されている。ドレイン領域DRは、ソース領域SRと比較してゲート電極層GEからオフセットされて形成されている。
【0016】
ソース側低濃度領域SLとドレイン側低濃度領域DLとは、p型ウェル領域PW内の半導体基板SBの主表面に互いに間隔をあけて形成されている。ソース側低濃度領域SLは、ソース領域SRの周囲を覆うように形成されている。ソース側低濃度領域SLは、ソース領域SRよりも低い不純物濃度を有している。ソース側低濃度領域SLは、ソース領域SRと同じ導電型に形成されている。
【0017】
ドレイン側低濃度領域DLは、ドレイン領域DRの周囲を覆うように形成されている。ドレイン側低濃度領域DLは、ドレイン領域DRよりも低い不純物濃度を有している。ドレイン側低濃度領域DLは、ドレイン領域DRと同じ導電型に形成されている。溝REはドレイン側低濃度領域DLとソース側低濃度領域SLを通るように形成されている。ソース側低濃度領域SLおよびドレイン側低濃度領域DLは、n型不純物領域を有するLDD層を構成している。
【0018】
ゲート電極層GEは、ソース領域SRとドレイン領域DRとに挟まれる半導体基板SBの主表面上に形成されている。ゲート電極層GEは、ソース側低濃度領域SLとドレイン側低濃度領域DLとなる一対のn型不純物領域に挟まれるチャネル形成領域上にゲート絶縁膜GIを挟んで形成されている。ゲート電極層GEの側壁には、サイドウォール絶縁膜SIが形成されている。ドレイン領域DRとサイドウォール絶縁膜SIと間には隔たりがある。
【0019】
ゲート絶縁膜GI、ゲート電極層GE、サイドウォール絶縁膜SIおよび素子分離膜TIを覆うように層間絶縁膜IIが形成されている。ゲート絶縁膜GIと層間絶縁膜IIとを貫通するように第1導電層PL1と第2導電層PL2とが形成されている。第1導電層PL1はソース領域SRの表面に接するように形成されている。第2導電層PL2は、ドレイン領域DRの表面に接するように形成されている。
【0020】
層間絶縁膜II上にはソース側導電層CL1とドレイン側導電層CL2とが形成されている。ソース側導電層CL1と第1導電層PL1とは電気的に接続されている。ドレイン側導電層CL2と第2導電層PL2とは電気的に接続されている。
【0021】
図1、図2(A)、(C)および(D)を参照して、半導体基板SBの主表面には溝REが形成されている。溝REは、第1導電層PL1とソース領域SRとの接触領域CR1からゲート電極層GEの下側を通って第2導電層PL2とドレイン領域DRとの接触領域CR2まで延びるように形成されている。
【0022】
溝REは、複数の溝部RPを含んでいてもよい。複数の溝部RPのそれぞれは互いに並走するように形成されていてもよい。図2(C)および(D)に示されるように複数の溝部RPによってn型MOSFETのチャネル幅方向にリップル形状が形成されていてもよい。このリップル形状に沿ってp型ウェル領域PW内の半導体基板SBの主表面にドレイン領域DR、ドレイン側低濃度領域DLが形成されている。複数の溝部RPの上にゲート絶縁膜GIを挟んでゲート電極層GEが形成されている。
【0023】
第2導電層PL2は、溝REの複数の溝部RPの各々のチャネル長方向の側壁SWに接するように構成されている。第2導電層PL2は、溝REの複数の溝部RPのチャネル幅方向の壁面と接するように構成されていてもよい。
【0024】
なお、図示されていないソース領域SR側も上述のドレイン領域DR側と同様の構成を有している。複数の溝部RPのリップル形状に沿ってp型ウェル領域PW内の半導体基板SBの主表面にソース領域SR、ソース側低濃度領域SLが形成されている。第1導電層PL1は、溝REの複数の溝部RPの各々のチャネル長方向の側壁SWに接するように構成されている。
【0025】
続いて、本実施の形態における半導体装置を構成するn型MOSFETの各層(領域)の濃度について説明する。図3〜図5に示すB(ホウ素)は、たとえば加速電圧70keV、角度45度、濃度2×1012/cm2、回数4回でイオン注入されている。
【0026】
図3を参照して、図2(A)のP1部の濃度分布においては、n型MOSFETのB(ホウ素)濃度は、チャネルドープ層CDで均一に分布している。図4を参照して、図2(B)のP2部の濃度分布においては、n型MOSFETのB(ホウ素)濃度は、チャネルドープ層CDで均一に分布している。
【0027】
図5を参照して、n型MOSFETのB濃度においては、溝REの底部、角部、側部ともまんべんなく不純物濃度が濃い領域が分布している。溝REの角部においてもB濃度の濃い領域が分布している。
【0028】
図6を参照して、n型MOSFETのP(リン)濃度においては、P濃度の濃い領域であるソース側低濃度領域SLおよびドレイン側低濃度領域DLが形成されている。これらソース側低濃度領域SLおよびドレイン側低濃度領域DLによりLDD構造が形成されている。図6に示すP(リン)は、たとえば加速電圧130keV、角度45度、濃度3.75×1012/cm2、回数4回、加速電圧150keV、角度45度、濃度5×1012/cm2、回数4回でイオン注入されている。
【0029】
図7を参照して、n型MOSFETのAs(砒素)濃度においては、As濃度の濃い領域であるソース領域SRおよびドレイン領域DRが形成されている。ドレイン領域DRは、サイドウォール絶縁膜SIより隔てられて形成されている。図7に示すAs(砒素)は、加速電圧50keV、角度7度、濃度4×1015/cm2、回数1回でイオン注入されている。
【0030】
図8および図9を参照して、図8および図9の横軸は、図2(A)のVIII−VIII線および図2(B)のIX−IX線に沿う位置を示している。図8および図9の縦軸は、それぞれの位置での不純物濃度(単位(cm-2))を示している。この不純物は、As、BおよびPである。図8および図9に示すように、ソース領域SRおよびドレイン領域DRでは、As濃度が高くなっている。As濃度は、2×1020cm-2程度のピーク濃度を有している。ソース側低濃度領域SLおよびドレイン側低濃度領域DLではP濃度が高くなっている。P濃度は、9×1017cm-2程度のピーク濃度を有している。B濃度は、9×1016cm-2程度のほぼ一定の濃度を有している。図2(A)のP1部および図2(B)のP2部に示すように、溝REの底部と溝REの周辺とでは、不純物濃度の大きな差はない。
【0031】
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。
図10および図11(A)〜(D)を参照して、まず半導体基板SBが準備される。半導体基板SBの主表面に酸化シリコン膜(SiO)IL1が形成される。酸化シリコン膜ではなく酸化窒化シリコン膜(SiON)が形成されてもよい。酸化シリコン膜IL1は、たとえば5〜50nm程度の厚さに形成される。酸化シリコン膜IL1上に窒化シリコン膜(SiN)IL2が形成される。窒化シリコン膜IL2は、たとえば50〜200nm程度の厚さに形成される。通常のフォトグラフィにより、その窒化シリコン膜IL2上にフォトレジストパターンPR1が形成される。このフォトレジストパターンPR1をマスクとして酸化シリコン膜IL1および窒化シリコン膜IL2がエッチングされてパターニングされる。この後、フォトレジストパターンPR1は、たとえばアッシングなどにより除去される。
【0032】
図12を参照して、パターニングされた酸化シリコン膜IL1および窒化シリコン膜IL2をマスクとして異方性エッチングされることにより半導体基板SBの主表面にトレンチが形成される。トレンチは、たとえば50〜500nm程度の厚さに形成される。
【0033】
この後、図13を参照して、たとえば炉体またはRTP(Rapid Thermal Process)により、ドライ雰囲気またはウェット雰囲気において、トレンチの内面に酸化シリコン膜IL11が形成される。この際、窒化シリコン膜IL2の表面は酸化されずにトレンチの内面に酸化シリコン膜IL11が形成される条件で酸化が行われる。酸化シリコン膜IL11は、たとえば5〜20nm程度の厚さに形成される。
【0034】
続いて、図14を参照して、たとえば熱リン酸により窒化シリコン膜IL2の一部がエッチングされる。このエッチング量は、5〜50nm程度である。この結果、窒化シリコン膜IL2は、トレンチの開口部から後退した形状となる。
【0035】
この後、図15を参照して、窒化シリコン膜IL2がトレンチの開口部から後退した状態でさらに酸化が行われる。これにより、酸化シリコン膜IL1および酸化シリコン膜IL11がさらに厚くなるように形成される。この際、トレンチの開口部の酸化シリコン膜IL1および酸化シリコン膜IL11が窒化シリコン膜IL2から突き出しているため、酸化によってトレンチの開口部の角部が丸くなるように形成される。
【0036】
この後、たとえば熱リン酸により窒化シリコン膜IL2がエッチングされる。続いて、たとえばフッ酸により酸化シリコン膜IL1および酸化シリコン膜IL11がエッチングされる。図16を参照して、上記のエッチングにより溝部RPの角部は丸くなるように形成される。溝REの側壁は曲線形状を有するように形成される。この溝部RPが複数個(たとえば3つ)並走するように形成されて、複数の溝部RPからなる溝REが形成される。
【0037】
この後、図17(A)〜(D)を参照して、溝REが形成された半導体基板SBの主表面に酸化シリコン膜IL3が形成される。酸化シリコン膜IL3上に窒化シリコン膜IL4が形成される。通常のフォトグラフィにより、その窒化シリコン膜IL4上にフォトレジストパターンPR2が形成される。このフォトレジストパターンPR2をマスクとして窒化シリコン膜IL4がエッチングされてパターニングされる。この後、フォトレジストパターンPR2は、たとえばアッシングなどにより除去される。
【0038】
パターニングされた窒化シリコン膜IL4をマスクとして、酸化シリコン膜IL3がさらに酸化される。この後、たとえば熱リン酸により窒化シリコン膜IL4がエッチングされる。
【0039】
図18(A)〜(D)を参照して、上記の酸化シリコン膜IL3の酸化により、半導体基板SBの主表面にLOCOSよりなる素子分離膜TIが形成される。この後、たとえばフッ酸により酸化シリコン膜IL3がエッチングされる。なお、素子分離膜TIはSTI(Shallow Trench Isolation)よりなっていてもよい。
【0040】
次に、通常のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)トランジスタの形成プロセスによりウェル領域が形成される。図19(A)〜(D)を参照して、半導体基板SBの主表面にシールド酸化膜SOが形成される。続いて、シールド酸化膜SOがアニールされる。通常のリソグラフィにより半導体基板SBの主表面のp型ウェル領域PWを形成する領域がパターニングされる。このパターニングされた領域にたとえばB(ホウ素)がイオン注入される。これにより、半導体基板SBの主表面にp型ウェル領域PWが形成される。また、しきい値電圧を調整するためにチャネル注入が行われてもよい。
【0041】
また、通常のリソグラフィにより半導体基板SBの主表面のn型ウェル領域を形成する領域がパターニングされる。このパターニングされた領域にたとえばP(リン)がイオン注入される。これにより、半導体基板SBの主表面に図示されていないn型ウェル領域が形成される。
【0042】
上記のウェル形成のためのイオン注入は、通常のMOSFETの形成の際には、半導体基板SBの主表面の法線方向に沿って垂直注入されることが一般的である。本実施の形態の半導体装置の製造方法では、半導体基板SBの主表面に溝REが形成されているため、半導体基板SBの主表面は立体構造を有している。そのため、この立体構造に対応したイオン注入が行われる。
【0043】
図19(A)に示すように、垂直注入、斜め注入などを組み合わせて、半導体基板SBの主表面、溝REの側壁SW、溝REの底壁でのイオン注入量が同等となるようにイオン注入が行われる。垂直注入は、半導体基板SBの主表面に対して図中矢印AC方向からイオン注入される。斜め注入は、半導体基板SBの主表面に対して図中矢印AL,AR方向からイオン注入される。
【0044】
斜め注入は、一方向からだけでなく、図中矢印AL方向と図中矢印AR方向とのように互いに逆方向からイオン注入されてもよい。また、回転注入では、図20に示すように半導体基板SBの主表面に沿う面において回転するように複数の方向から複数ステップに分けてイオン注入されてもよい。たとえば斜め注入の角度は、半導体基板SBの主表面に対して15°〜60°程度とされる。また、回転注入のステップ数は1〜8ステップとされる。図20に示すように4ステップでイオン注入する場合には斜め注入の角度は45°とされる。溝REの底壁と側壁SWとのイオン注入量の差を少なくするためには、垂直注入と斜め注入との2回のイオン注入を行うことが効果的である。この後、シールド酸化膜SOが除去される。
【0045】
図21(A)〜(D)を参照して、半導体基板SBの主表面にゲート絶縁膜GIが形成される。ゲート絶縁膜GIは、酸化シリコン膜により形成される。ゲート絶縁膜GIの膜厚は、MOSFETが扱う電圧値により決められるが、たとえば10〜50nm程度の厚さに形成される。
【0046】
ゲート絶縁膜GI上にゲート電極層GEとなる多結晶シリコン膜(以下、ゲートポリシリコン膜)GE1が形成される。ゲートポリシリコン膜GE1の上面がCMP(Chemical Mechanical Polishing)される。これにより溝REの形状に従って形成されたゲートポリシリコン膜GE1の上面の段差が平坦化される。続いて、ゲートポリシリコン膜GE1がHF(フッ化水素)洗浄される。この後、さらにゲートポリシリコン膜GE1が形成される。
【0047】
ゲートポリシリコン膜GE1の膜厚は、半導体基板SBの主表面に形成された溝REの深さに対応して形成される。つまり、溝REに堆積されるゲートポリシリコン膜GE1の上面が半導体基板SBの主表面より十分高くなる程度の膜厚に形成される。ゲートポリシリコン膜GE1の膜厚は、たとえば500〜1000nm程度の膜厚に形成される。続いて、ゲートポリシリコン膜GE1上にTEOS(Tetraethoxysilane)膜TEが形成される。
【0048】
図22および図23(A)〜(D)を参照して、TEOS膜TE上に図示されないポリシリコン膜が形成される。通常のリソグラフィにより、このポリシリコン膜がエッチングされてパターニングされる。このパターニングされたポリシリコン膜をマスクとしてTEOS膜TEがエッチングされてパターニングされる。この後、ポリシリコン膜が除去される。このパターニングされたTEOS膜TEをマスクとしてゲートポリシリコン膜GE1が異方性エッチングされる。この後、TEOS膜TEが除去される。これにより、図22および図23(A)〜(D)に示されるようにゲート電極層GEが形成される。
【0049】
図24(A)〜(D)を参照して、ゲート電極層GEおよびゲート絶縁膜GI上にシールドHTO(High Temperature Oxide)膜SHが形成される。通常のリソグラフィによりゲート電極層GE上のシールドHTO膜SHを残すようにシールドHTO膜SHがエッチングされてパターニングされる。この後、シールドHTO膜SHおよびゲート電極層GEをマスクとしてp型ウェル領域PW内にLDD層がイオン注入により形成される。LDD層には、たとえばP(リン)がイオン注入される。これにより、ソース側低濃度領域SLおよびドレイン側低濃度領域DLが形成される。
【0050】
上述の垂直注入、斜め注入などを組み合わせることにより、ソース側低濃度領域SLおよびドレイン側低濃度領域DLにおいて、半導体基板SBの主表面、溝REの側壁SW、溝REの底壁でのイオン注入量が同等となるようにイオン注入される。なお、n型ウェル領域の場合には、LDD層には、たとえばB(ホウ素)がイオン注入される。これにより、ソース側低濃度領域SLおよびドレイン側低濃度領域DLが形成される。
【0051】
図25および図26(A)〜(D)を参照して、ゲート電極層GEの側壁にサイドウォール絶縁膜SIが形成される。サイドウォール絶縁膜SIは、まずゲート絶縁膜GIおよびシールドHTO膜SH上に、たとえばTEOS膜(SiO2)SI1、窒化シリコン膜(SiN)SI2、TEOS膜(SiO2)SI3の順に3層に積層される。この後、上層のTEOS膜(SiO2)SI1が異方性エッチングされる。
【0052】
続いて、窒化シリコン膜(SiN)SI2がドライまたはウェットエッチングにより等方性エッチングされる。続いて、下層のTEOS膜(SiO2)SI3がドライまたはウェットエッチングにより等方性エッチングされる。このようにして、ゲート電極層GEの側壁にサイドウォール絶縁膜SIが形成される。
【0053】
図27および図28(A)〜(D)を参照して、通常のリソグラフィにより、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極層GE、サイドウォール絶縁膜SI上にフォトレジストパターンPR3が形成される。このフォトレジストパターンPR3をマスクとしてソース側低濃度領域SLおよびドレイン側低濃度領域DL内にソース領域SRおよびドレイン領域DRが形成される。ソース領域SRおよびドレイン領域DRには、たとえばAs(砒素)がイオン注入される。上述の垂直注入、斜め注入などを組み合わせることにより、ソース領域SRおよびドレイン領域DRにおいて、半導体基板SBの主表面、溝REの側壁SW、溝REの底壁でのイオン注入量が同等となるようにイオン注入される。続いて、ソース領域SRおよびドレイン領域DRがアニールされる。
【0054】
なお、n型ウェル領域の場合には、ソース領域SRおよびドレイン領域DRには、たとえばBF2(フッ化ホウ素)がイオン注入される。続いて、ソース領域SRおよびドレイン領域DRがアニールされる。
【0055】
次に、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極層GE、サイドウォール絶縁膜SI上に層間絶縁膜II(図2(A))が形成される。通常のリソグラフィにより層間絶縁膜IIがエッチングされる。この層間絶縁膜IIのエッチングされた部分にソース側導電層CL1およびドレイン側導電層CL2(図2(A))が埋め込まれて形成される。続いて、層間絶縁膜II、ソース側導電層CL1およびドレイン側導電層CL2上に配線層が形成される。この後、通常のリソグラフィにより配線層がエッチングされてパターニングされる。これにより、第1導電層PL1および第2導電層PL2が形成される。続いて、水素シンタが行われる。これにより、本実施の形態のn型MOSFETを備えたCMOSが形成される(図1)。
【0056】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
まず、本実施の形態の半導体装置がドレイン電流を増大できる作用効果について説明する。本実施の形態の半導体装置におけるドレイン電流の増加の効果を調べるために、本実施の形態としての図1の半導体装置の構成と、比較例1としての図29(A)の半導体装置の構成および比較例2としての図29(B)の半導体装置の構成とについて検討を行った。それらの結果を図30に示す。
【0057】
なお、検討では、条件の一例として、ドレイン電圧Vd=5V、Vd=0.5Vの場合のドレイン電流を測定した。本実施の形態、比較例1および比較例2の各半導体装置の溝REのピッチは、0.7μm(L(ライン)/S(スペース)=0.35/0.35μm)とした。溝REの深さは、0.35μmとした。
【0058】
図29(A)を参照して、比較例1の半導体装置の構成では、溝REがソース領域SRには形成されていない。そのため、溝REは、第1導電層PL1とソース領域SRとの接触領域CR1(図2(A))には形成されていない。
【0059】
図29(B)を参照して、比較例2の半導体装置の構成では、溝REがソース領域SRおよびドレイン領域DRの両方に形成されていない。そのため、溝REは、第1導電層PL1とソース領域SRとの接触領域CR1(図2(A))および第2導電層PL2とドレイン領域DRとの接触領域CR2(図2(A))には形成されていない。
【0060】
図30に示されるように、本実施の形態の半導体装置の構成は、比較例1および比較例2の半導体装置の構成よりドレイン電流が大きくなる。
【0061】
図29(A)に示す比較例1の半導体装置の構成では、溝REがソース領域SRには形成されていない。したがって、第1導電層PL1とソース領域SRとの接続部は平坦となるため、第1導電層PL1とソース領域SRとの接続面積が小さくなる。そのため、この構成では、ドレイン電流の経路の面積が小さくなる。このため、溝REが形成されていない領域によりドレイン電流の増大が制限される。
【0062】
図29(B)に示す比較例2の半導体装置の構成では、溝REがソース領域SRおよびドレイン領域DRの両方に形成されていない。したがって、第1導電層PL1とソース領域SRとの接続部および第2導電層PL2とドレイン領域DRとの接続部は、両方とも平坦となる。このため、第1導電層PL1とソース領域SRとの接続面積および第2導電層PL2とドレイン領域DRとの接続面積は、両方とも小さくなる。そのため、この構成では、ドレイン電流の経路の面積がさらに小さくなる。このため、溝REが形成されていない領域によりドレイン電流の増大がさらに制限される。
【0063】
これらに対して、本実施の形態の半導体装置によれば、第1導電層PL1とソース領域SRとの接触領域CR1からゲート電極層GEの下側を通って第2導電層PL2とドレイン領域DRとの接触領域CR2まで延びるように溝REが主表面に形成されている。このため溝REの底壁に加えて側壁SWがソース領域SRからドレイン領域DRまでドレイン電流の経路となるので、ドレイン電流を増大させることができる。そのため、MOSFETのデバイスサイズを小さくしても溝REにより実効的なチャネル幅を得ることができる。これにより、特性を劣化させることなく半導体装置を微細化することができる。
【0064】
また、本実施の形態の半導体装置によれば、第1導電層PL1および第2導電層PL2の各々が溝REの側壁SWに接するように構成されていてもよい。これにより、溝REの側壁SWを確実にドレイン電流の経路とすることができる。
【0065】
また、本実施の形態の半導体装置によれば、ドレイン領域DRの周囲を覆うように形成され、かつドレイン領域DRよりも低い不純物濃度を有し、かつドレイン領域DRと同じ導電型のドレイン側低濃度領域DLと、ソース領域SRの周囲を覆うように形成され、かつソース領域SRよりも低い不純物濃度を有し、かつソース領域SRと同じ導電型のソース側低濃度領域SLをさらに備え、溝REはドレイン側低濃度領域DLとソース側低濃度領域SLを通るように形成されていてもよい。これにより、LDD構造を採用することができる。
【0066】
また、本実施の形態の半導体装置によれば、溝REは複数の溝部RPを含んでおり、複数の溝部RPのそれぞれは互いに並走するように形成されていてもよい。これにより、溝REの側壁SWを増加させることができるため、ドレイン電流を増大させることができる。
【0067】
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法が、半導体基板SBの主表面に形成された溝REの不純物濃度を均一化することができる作用効果について説明する。
【0068】
図31〜図33に示す比較例3のB(ホウ素)は、たとえば加速電圧50keV、角度7度、濃度2×1012/cm2、回数4回でイオン注入されている。比較例3では、角度7度とすることにより、溝REの角部にB(ホウ素)が十分にイオン注入されない場合を示している。
【0069】
図31および図32を参照して、比較例3のB濃度の分布は、図3および図4に示す本実施の形態のB濃度の分布と比較して、半導体基板SBの主表面では同様の傾向を示している。図33を参照して、比較例3のB濃度の分布は、溝REにおいて均一化されていない。具体的には、比較例3のB濃度の分布は、図5に示す本実施の形態のB濃度の分布と比較して、溝REの底壁と側壁SWとをつなぐ角部において異なっている。イオン注入の角度が垂直に近いため、この角部に十分にB(ホウ素)が注入されない。このため、この角部において比較例3のB濃度は本実施の形態のB濃度に比較して低くなっている。
【0070】
本実施の形態の半導体装置の製造方法では、垂直注入、斜め注入などを組み合わせて不純物をイオン注入している。そのため、溝REの底面、角部、側面などの形状にあわせて不純物をイオン注入することができる。これにより、溝REにおいてB(ホウ素)などの不純物濃度を均一化することができる。不純物濃度を均一化することができるので、溝REの底面、角部、側面にまんべんなく濃い濃度でイオン注入することができる。
【0071】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置と比較して、溝の構成が主に異なっている。
【0072】
図34を参照して、本実施の形態における半導体装置は、主表面を有する半導体基板SBと、半導体基板SBに形成されたMOSFETとを主に有している。
【0073】
図34、図35(A)および(B)を参照して、半導体基板SBの主表面には、素子分離膜TIにより分離された領域にMOSFETが形成されている。なお、図34は図35のXXXIV−XXXIV線に沿う平面図である。図34ではソース側導電層CL1、ドレイン側導電層CL2、層間絶縁膜IIおよびゲート絶縁膜GIは見やすくするため図示されていない。以下、本実施の形態の一例としてLDD構造を有するn型MOSFETについて説明する。
【0074】
LDD構造を有するn型MOSFETは、ソース側低濃度領域SLおよびドレイン側低濃度領域DLとなる一対のn型低濃度領域と、ソース領域SRおよびドレイン領域DRとなる一対のn型高濃度領域と、ゲート電極層GEと、ゲート絶縁膜GIと、第1溝RE1と、第2溝RE2を主に有している。
【0075】
ソース領域SRとドレイン領域DRとはp型ウェル領域PW内の半導体基板SBの主表面に互いに間隔をあけて形成されている。ソース側低濃度領域SLは、ソース領域SRの周囲を覆うように形成されている。ドレイン側低濃度領域DLは、ドレイン領域DRの周囲を覆うように形成されている。ソース側低濃度領域SLおよびドレイン側低濃度領域DLは、n型不純物領域を有するLDD層を構成している。ゲート電極層GEは、ソース領域SRとドレイン領域DRとに挟まれる半導体基板SBの主表面上に形成されている。
【0076】
図34、図35(A)、(B)および(D)を参照して、半導体基板SBの主表面には第1溝RE1が形成されている。第1溝RE1は、ソース領域SRとドレイン領域DRとが互いに対向する方向に交差するように形成されている。第1溝RE1は、たとえばMOSFETのチャネル幅方向に長く延びるように構成されている。第1溝RE1は、平面視においてゲート電極層GEとドレイン領域DRとの間に配置されている。
【0077】
図34、図35(A)および(C)を参照して、半導体基板SBの主表面には第2溝RE2が形成されていてもよい。第2溝RE2は、ソース領域SRとドレイン領域DRとが互いに対向する方向(たとえばチャネル長方向)に長く延びるように、ソース領域SRとドレイン領域DRとに挟まれて形成されている。第2溝RE2は、n型MOSFETのチャネル幅方向にリップル形状となるように形成されていてもよい。第1溝RE1は平面視においてゲート電極層GEとドレイン領域DRとの間に形成されており、第2溝RE2は第1溝RE1とソース領域SRとの間に形成されている。このため、第2溝RE2は、ドレイン領域DRには形成されていない。
【0078】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成は、上述した実施の形態1の構成と同様であるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0079】
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。
図36および図37(A)〜(D)を参照して、酸化シリコン膜IL1が形成される。酸化シリコン膜IL1上に窒化シリコン膜IL2が形成される。通常のフォトグラフィにより、その窒化シリコン膜IL2上にフォトレジストパターンPR1が形成される。このフォトレジストパターンPR1をマスクとして酸化シリコン膜IL1および窒化シリコン膜IL2がエッチングされてパターニングされる。パターニングされた酸化シリコン膜IL1および窒化シリコン膜IL2をマスクとして異方性エッチングされることにより半導体基板SBの主表面に第1溝RE1および第2溝RE2となるトレンチが形成される。この後、図12〜図16で説明した実施の形態1と同様に方法により第1溝RE1および第2溝RE2が形成される。
【0080】
次に、図38(A)〜(D)を参照して、第1溝RE1および第2溝RE2が形成された半導体基板SBの主表面に酸化シリコン膜IL3が形成される。酸化シリコン膜IL3上に窒化シリコン膜IL4が形成される。通常のフォトグラフィにより、その窒化シリコン膜IL4上にフォトレジストパターンPR2が形成される。このフォトレジストパターンPR2をマスクとして窒化シリコン膜IL4がエッチングされてパターニングされる。パターニングされた窒化シリコン膜IL4をマスクとして、酸化シリコン膜IL3がさらに酸化される。この後、窒化シリコン膜IL4がエッチングされる。
【0081】
図39(A)〜(D)を参照して、上記の酸化シリコン膜IL3の酸化により半導体基板SBの主表面にLOCOSよりなる素子分離膜TIが形成される。この後、酸化シリコン膜IL3がエッチングされる。
【0082】
次に、図40(A)〜(D)を参照して、半導体基板SBの主表面にシールド酸化膜SOが形成される。続いて、シールド酸化膜SOがアニールされる。通常のリソグラフィにより半導体基板SBの主表面のp型ウェル領域PWを形成する領域がパターニングされ、イオン注入されることにより、半導体基板SBの主表面にp型ウェル領域PWが形成される。
【0083】
図40(A)に示すように、垂直注入、斜め注入などを組み合わせて、半導体基板SBの主表面、第1溝RE1および第2溝RE2の各々において側壁SWおよび底壁でのイオン注入量が同等となるようにウェル形成のためのイオン注入が行われる。この後、シールド酸化膜SOが除去される。
【0084】
図41(A)〜(D)を参照して、半導体基板SBの主表面にゲート絶縁膜GIが形成される。ゲート絶縁膜GI上にゲート電極層GEとなるゲートポリシリコン膜GE1が形成される。ゲートポリシリコン膜GE1の上面がCMPされる。続いて、ゲートポリシリコン膜GE1がHF洗浄される。この後、さらにゲートポリシリコン膜GE1が形成される。続いて、ゲートポリシリコン膜GE1上にTEOS膜TEが形成される。
【0085】
図42および図43(A)〜(D)を参照して、図示されないポリシリコン膜をマスクとしてTEOS膜TEがエッチングされてパターニングされる。この後、このポリシリコン膜は除去される。このパターニングされたTEOS膜TEをマスクとしてゲートポリシリコン膜GE1が異方性エッチングされる。この後、TEOS膜TEが除去される。これにより、図42および図43(A)〜(D)に示されるようにゲート電極層GEが形成される。
【0086】
図44(A)〜(D)を参照して、ゲート電極層GEおよびゲート絶縁膜GI上にシールドHTO膜SHが形成される。通常のリソグラフィによりゲート電極層GE上のシールドHTO膜SHを残すようにシールドHTO膜SHがエッチングされてパターニングされる。この後、シールドHTO膜SHおよびゲート電極層GEをマスクとしてp型ウェル領域PW内にLDD層が垂直注入、斜め注入などを組み合わせたイオン注入により形成される。これにより、ソース側低濃度領域SLおよびドレイン側低濃度領域DLが形成される。
【0087】
図45および図46(A)〜(D)を参照して、ゲート電極層GEの側壁にサイドウォール絶縁膜SIが形成される。
【0088】
図47および図48(A)〜(D)を参照して、通常のリソグラフィにより、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極層GE、サイドウォール絶縁膜SI上にフォトレジストパターンPR3が形成される。このフォトレジストパターンPR3をマスクとして、垂直注入、斜め注入などを組み合わせたイオン注入により、ソース側低濃度領域SLおよびドレイン側低濃度領域DL内にソース領域SRおよびドレイン領域DRが形成される。続いて、ソース領域SRおよびドレイン領域DRがアニールされる。
【0089】
次に、層間絶縁膜II(図35(A))が形成される。この層間絶縁膜IIにソース側導電層CL1およびドレイン側導電層CL2(図35(A))が埋め込まれて形成される。続いて、第1導電層PL1および第2導電層PL2が形成される。続いて、水素シンタが行われる。
【0090】
なお、本実施の形態のこれ以外の製造方法は、上述した実施の形態1と同様であるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0091】
また、本実施の形態の半導体装置では、ゲート電極層GEの下側において半導体基板SBの主表面に第3溝RE3が形成されていてもよい。
【0092】
図49および図50を参照して、本実施の形態の変形例1の半導体装置では、第1溝RE1と第3溝RE3とが半導体基板SBの主表面に形成されている。第3溝RE3は、ソース領域SRとドレイン領域DRとが互いに対向する方向に交差する方向に延びるように形成されていている。第3溝RE3は、平面視においてゲート電極層GEと重なるように形成されている。
【0093】
第3溝RE3は、ソース領域SRとドレイン領域DRとが互いに対向する方向においてゲート電極層GEの中心線LNよりソース領域SR側に形成されていてもよい。第3溝RE3の深さd2は、ドレイン領域DRの深さd1より大きくなるよう形成されていてもよい。
【0094】
図51を参照して、本実施の形態の変形例2の半導体装置では、第1溝RE1と第2溝RE2と第3溝RE3とが半導体基板SBの主表面に形成されている。第3溝RE3は、第2溝RE2と半導体基板SBの主表面において交差するように形成されている。
【0095】
なお、本実施の形態の変形例1および変形例2のこれ以外の構成および製造方法は、上述した本実施の形態の構成および製造方法と同様であるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0096】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
MOSFETは、たとえば自動車の制御部品や光ディスクドライブなどにおいて、数十〜数百ボルトの高い電圧を制御する用途に用いられている。スイッチング素子であるMOSFETは、ゲート電極層GEに加えるバイアス電圧を変化させ、ソース領域SRおよびドレイン領域DR間に電流が流れるOn状態と、電流が流れないOff状態を切り替える。Off状態では、通常高い電圧が印加されるドレイン領域DRから、半導体基板SBやソース領域SRへパンチスルー電流が流れないようにしなければならない。そのため、ゲート電極層GEに加えるバイアス電圧がOffされた際、ドレイン領域DRに加える電圧が徐々に高くされてソース領域SRへパンチスルー電流が流れ始める臨界電圧(Off耐圧)を、デバイスの動作電圧領域より高く設定して、パンチスルー電流が流れないようにデバイスを設計する必要がある。
【0097】
図52を参照して、本実施の形態の比較例1のn型MOSFETでは、ソース領域SRおよびドレイン領域DRがゲート電極層GEに対して対称に形成されている。ドレイン領域DRが正バイアスされると、p型ウェル領域PW側およびドレイン側低濃度領域DL側に空乏層DEが拡がる。空乏層DE端がドレイン領域DRに到達すると、それ以上空乏層DE幅を伸ばすことができなくなる。その場合に、より高い電圧が印加されると、p型ウェル領域PW側に拡がった空乏層DEがさらに伸びて電界緩和が行われる。空乏層DEは、半導体基板SBの主表面から内側方向に加えてソース領域SRの方向にも伸びるため、ソース・ドレイン間耐圧が劣化される。これにより、パンチスルー電流が発生し易くなる。
【0098】
この耐圧劣化によるパンチスルー電流の発生を避けるため、ドレイン領域DRをゲート電極層GEからオフセットして形成し、ドレイン側低濃度領域DL内にも十分空乏層DEを伸ばすことが可能な構造として、図53に示すような非対称ソース・ドレイン構造が用いられる。
【0099】
図53を参照して、非対称ソース・ドレイン構造を有するn型MOSFETでは、ソース領域SRがゲート電極層GEのサイドウォール絶縁膜SIに隣接して形成されるのに対し、高い電圧が印加されるドレイン領域DRは、サイドウォール絶縁膜SIからオフセットして形成されている。p型ウェル領域PWとドレイン側低濃度領域DLとによって形成されたPN接合による空乏層DE幅が拡がることによってドレイン・ソース間の電界を緩和することができる。その場合、空乏層DE幅が拡がるほど、より電界緩和が可能となる。したがって、非対称ソース・ドレイン構造では、ドレイン領域DRがPN接合と十分離れて形成されているため、より電界緩和が可能となる。
【0100】
しかし、比較例2のMOSFETでは、微細化が困難である。MOSFETの微細化では、デバイスサイズの縮小と電源電圧の低下は同時に行う必要がある。デバイスサイズの縮小のみを行うと短チャネル効果などの影響でカットオフ特性が劣化するので、それを補うためにゲート、ドレイン電圧を下げる必要があるためである。
【0101】
一定のルール(スケーリング則)に従って微細化されたデバイスは、数分の一のフットプリントで同等のDC(直流)特性、同等以上のAC(交流)特性を得ることができるため、微細化はコスト低減と特性向上の上で大きなメリットがある。
【0102】
ところが、高い電圧を制御するMOSFETでは電源電圧を下げることが難しい。高い電圧を制御するMOSFETは外部に繋がれた高い電圧で動作する素子のスイッチングを行うため、電源電圧(ドレイン領域DRに印加される電圧に対応)は、外部の素子の要求により決まる。したがって、ドレイン領域に加わる電圧が高いままでは、パンチスルー耐性を劣化させないために、ゲート・ドレイン間のオフセット長や、チャネル長などを縮めることができなくなる。このため、半導体装置を微細化することができない。
【0103】
これらに対して、本実施の形態の半導体装置によれば、ソース領域SRとドレイン領域DRとが互いに対向する方向に交差するように第1溝RE1が半導体基板SBの主表面に形成されており、かつ第1溝RE1は平面視においてゲート電極層GEとドレイン領域DRとの間に配置されている。
【0104】
このため、Off状態において、第1溝RE1によって抵抗が大きくなるため電界を緩和することができる。これにより、耐圧の低下を抑制することができる。よって、パンチスルー電流の発生を抑制することができる。したがって、MOSFETをチャネル長方向に縮小することができるため半導体装置を微細化することができる。
【0105】
また、On状態において、第1溝RE1によってドレイン電流の電流経路が長くなるためドレイン電流を流れすぎないようにすることができる。
【0106】
また、本実施の形態の半導体装置によれば、ソース領域SRとドレイン領域DRとが互いに対向する方向に延びるように、ソース領域SRとドレイン領域DRとに挟まれる主表面に第2溝RE2が形成されていてもよい。このため、第2溝RE2によってMOSFETをチャネル幅方向に縮小することができる。これにより、半導体装置を微細化することができる。
【0107】
また、本実施の形態の変形例1および変形例2における半導体装置によれば、ソース領域SRとドレイン領域DRとが互いに対向する方向に交差する方向に延びるように、かつ平面視においてゲート電極層GEと重なるように主表面に第3溝RE3が形成されていてもよい。
【0108】
このため、Off状態において、第3溝RE3によって抵抗が大きくなるため電界を緩和することができる。これにより、耐圧の低下を抑制することができる。よって、パンチスルー電流の発生を抑制することができる。したがって、MOSFETをチャネル長方向に縮小することができるため半導体装置を微細化することができる。また、MOSFETのチャネル長を長くすることができるため、しきい値を高くすることができる。また、ドレイン側低濃度領域DLから伸びる空乏層DEがソース側低濃度領域SL側に拡がることを第3溝RE3によって防ぐことができる。
【0109】
また、On状態において、第3溝RE2によってドレイン電流の電流経路が長くなるためドレイン電流を流れすぎないようにすることができる。
【0110】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3の半導体装置は、実施の形態2の半導体装置と比較して、溝の構成が主に異なっている。
【0111】
図54を参照して、本実施の形態における半導体装置では、ソース領域SRとドレイン領域DRとが互いに対向する方向と交差する方向に対して、第4溝RE4が斜めに半導体基板SBの主表面に形成されている。また本実施の形態における半導体装置では、実施の形態2の半導体装置と比較して、第2溝RE2および第3溝RE3が形成されていない。
【0112】
図55を参照して、ソース領域SRとドレイン領域DRとが互いに対向する方向と交差する方向に対して傾斜角θ45°で第4溝RE4が形成された場合、第4溝RE4の側面は(1,1,0)面となる。なお、第4溝RE4の底面は(1,0,0)面となる。
【0113】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成および製造方法は、上述した実施の形態2の構成および製造方法と同様であるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0114】
一方、図56を参照して、本実施の形態の半導体装置と比較するための実施の形態2の半導体装置では、第3溝RE3の側面は(1,0,0)面となる。この面は等価面として表示している。
【0115】
本実施の形態の半導体装置では、ソース領域SRとドレイン領域DRとが互いに対向する方向と交差する方向に対して、第4溝RE4が斜めに形成されている。このため、実施の形態2における第2溝RE2と第3溝RE3に対応する第4溝RE4を形成することにより、第2溝RE2と第3溝RE3の両方の構造を一括して形成することができる。そのため、プロセスプローを簡略化することができる。よって、簡略化されたプロセスフローにより、特性を劣化させることなく半導体装置を微細化することができる。
【0116】
また、本実施の形態の半導体装置では、ソース領域SRとドレイン領域DRとが互いに対向する方向と交差する方向に対する第4溝RE4の傾斜角θを調整することにより、実効的なチャネル長およびチャネル幅を調整することができる。つまり、傾斜角θが0〜45°の間では実効的なチャネル長を長くすることができる。また傾斜角θが45°〜90°の間では実効的なチャネル幅を大きくすることができる。これにより、半導体装置を微細化する方向を調整することができる。
【0117】
また、本実施の形態の半導体装置では、ソース領域SRとドレイン領域DRとが互いに対向する方向と交差する方向に対して傾斜角θ45°で第4溝RE4が形成された場合、第4溝RE4の側面は(1,1,0)面となる。この場合、第3溝RE3の側面が(1,0,0)面である実施の形態2の半導体装置と比較して、本実施の形態の半導体装置は、チャネル幅の増大とチャネル長の増大を同時に実現でき、素子面積を縮小することができる。
【0118】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4の半導体装置は、実施の形態2の半導体装置と比較して、溝の構成が主に異なっている。
【0119】
図57を参照して、本実施の形態の半導体装置では、複数の第5溝RE5が半導体基板SBの主表面に形成されている。第5溝REは、平面視において四角形状を有している。複数の第5溝RE5は、密集するように形成されている。
【0120】
チャネル長またはチャネル幅の実効的長さを稼ぐためには、溝REは、深い形状、アスペクト比(深さ/幅)が大きい形状が好ましい。
【0121】
本実施の形態の半導体装置では、アスペクト比が大きい溝パターン形成が困難な場合、四角形状の第5溝RE5を密集させることによって、チャネル長またはチャネル幅の実効的長さを稼ぐことができる。したがって、溝REのアスペクト比が小さい場合でも、半導体装置を微細化することができる。
【0122】
本実施の形態の半導体装置によれば、実施の形態2における第2溝RE2と第3溝RE3に対応する第5溝RE5を形成することにより、第2溝RE2と第3溝RE3の両方の構造を一括して形成することができる。そのため、プロセスフローを簡略化することができる。よって、簡略化されたプロセスフローにより、特性を劣化させることなく半導体装置を微細化することができる。
【0123】
また、図58を参照して、本実施の形態の半導体装置では、第6溝RE6が平面視において円形状を有するように半導体基板SBの主表面に形成されていてもよい。複数の第6溝RE6は、密集するように形成されている。
【0124】
図59(A)を参照して、この本実施の形態における変形例の半導体装置では、複数の第6溝RE6は、抜きパターン(ホール型)で形成されていてもよい。また、図59(B)を参照して、複数の第6溝REは、残しパターン(円柱型)で形成されていてもよい。
【0125】
本実施の形態の変形例の半導体装置では、第6溝RE6が溝平面視において溝の角部を丸めた円形状を有しているため、さらに微細化することができる。また、電界集中を抑制することができる。
【0126】
また、本実施の形態の半導体装置では、ソース領域SRとドレイン領域DRとが互いに対向する方向と交差する方向に対して傾斜角θ45°で第6溝RE6が形成された場合、第6溝RE6の側面は(1,1,1)面などの複数の面が形成される(図59(A))。この場合、第3溝RE3の側面が(1,0,0)面である実施の形態2の半導体装置と比較して、本実施の形態の半導体装置は、チャネル幅の増大とチャネル長の増大を同時に実現でき、素子面積を縮小することができる。
【0127】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5の半導体装置の製造方法では、実施の形態1と比較して、サイドウォール絶縁膜を形成する際の絶縁膜の残渣が溝に残らない点で主に異なっている。
【0128】
実施の形態1ではふれていないが、サイドウォール絶縁膜SIを形成する際に、サイドウォール絶縁膜SIになる絶縁膜が残渣として溝に残ってしまう。本実施の形態では、サイドウォール絶縁膜SIを形成する際の残渣が溝に残らない半導体装置の製造方法について説明する。
【0129】
図60および図61(A)〜(C)を参照して、半導体基板SBの主表面に溝REが形成される。溝RE上にゲート電極層GEとマスク層MLとの積層構造が形成される。マスク層MLを形成するときのマスク層MLの厚みMTは、溝REの深さRDより大きくなるよう形成されている。マスク層MLは、たとえばハードマスクからなっている。
【0130】
図62(A)〜(C)を参照して、半導体基板SBの主表面に形成された溝RE、ゲート電極層GEとマスク層MLとの積層構造を覆うように絶縁膜SI1が形成される。絶縁膜SI1は、たとえば酸化シリコン膜(SiO2)からなっている。絶縁膜SI1上に絶縁膜SI2形成される。絶縁膜SI2は、絶縁膜SI1のエッチングの際に溝REの深さ相当以上のオーバーエッチングを施しても残膜が確保できる初期膜厚に形成される。絶縁膜SI2は、たとえば窒化シリコン膜(SiN)からなっている。絶縁膜SI2上に絶縁膜SI3が形成される。絶縁膜SI3は、絶縁膜SI2のエッチングの際に残膜が確保できる初期膜厚に形成される。絶縁膜SI3は、たとえば酸化シリコン膜(SiO2)からなっている。
【0131】
図63(A)〜(C)を参照して、絶縁膜SI3が異方性エッチングされる。続いて、図64(A)〜(C)を参照して、絶縁膜SI2がドライまたはウェットエッチングにより等方性エッチングされる。続いて、図65(A)〜(C)を参照して、絶縁膜SI1がドライまたはウェットエッチングにより等方性エッチングされる。図64(A)〜(C)および図66を参照して、ゲート電極層GEとマスク層MLとの積層構造の側壁LSWに絶縁膜SI1、絶縁膜SI2、絶縁膜SI3からなるサイドウォール絶縁膜SIが形成される。ゲート電極層GEとマスク層MLとの積層構造の少なくともゲート電極層GEの側壁にサイドウォール絶縁膜SIが形成される。
【0132】
図67を参照して、マスク層MLを形成するときのマスク層MLの厚みMTが、溝REの深さRDより大きくなるように形成されていない場合には、溝REの側壁RSWにサイドウォール絶縁膜SIを形成する際の絶縁膜SI1、絶縁膜SI2、絶縁膜SI3の残渣が残ってしまう。これに対して、本実施の形態の半導体装置の製造方法では、溝REの側壁RSWには絶縁膜SI1、絶縁膜SI2、絶縁膜SI3を残さないようエッチングが施される。
【0133】
本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、マスク層MLを形成するときのマスク層MLの厚みMTは、溝REの深さRDより大きくなるように形成されているため、サイドウォール絶縁膜SIを形成する際に溝REの深さRD相当以上のオーバーエッチングを施してもゲート電極層GEの側壁が露出されない。このため、ゲート電極層GEの側壁を露出させることなく、サイドウォール絶縁膜SIを形成する際の残渣が溝REに残らないようにすることができる。そのため、溝REに対して十分に不純物をイオン注入することができる。よって、溝REにより半導体装置を微細化しつつ所望のトランジスタ特性を実現することができる。
【0134】
また、本実施の形態の半導体装置によれば、積層構造の側壁LSWにはサイドウォール絶縁膜SIが形成され、かつ溝REの側壁には絶縁膜SI1、SI2、SI3を残さないように絶縁膜SI1、SI2、SI3がエッチングされるため、溝REに対して十分に不純物をイオン注入することができる。
【0135】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態5の半導体装置の製造方法では、実施の形態1と比較して、サイドウォール絶縁膜を溝を形成する際の絶縁膜の残渣が溝に残らない点で主に異なっている。
【0136】
図68を参照して、チップには高耐圧トランジスタ(HV−CMOS部)HC、キャパシタ部CA、core−トランジスタ(core−CMOS)CCが混載されている。このチップにおいて、溝REが形成された素子と溝REが形成されていない素子ではサイドウォール絶縁膜SIの形状が異なっている。たとえば溝REを有する高耐圧トランジスタHCと、溝REを有さないcore−トランジスタCCではサイドウォール絶縁膜SIの形状が異なっている。
【0137】
図69(A)および図70を参照して、高耐圧トランジスタHCの半導体基板SBの主表面に溝REが形成される。溝REの一部の領域上にゲート電極層GEが形成される。
【0138】
図69(A)、(B)および図70を参照して、溝REが形成された高耐圧トランジスタHCおよび溝REが形成されていないcore−トランジスタCCの半導体基板SBの主表面にゲート電極層GEを覆うようにサイドウォール絶縁膜SIとなる絶縁膜SILが形成される。溝REが形成された高耐圧トランジスタHCのゲート電極層GEと溝REとを覆う絶縁膜SILが形成される。
【0139】
図71(A)および(B)を参照して、サイドウォール絶縁膜SIとなる絶縁膜SILがエッチングされて、溝REが形成された高耐圧トランジスタHCおよび溝REが形成されていないcore−トランジスタCCにそれぞれサイドウォール絶縁膜SIが形成される。図72を参照して、溝REが形成された高耐圧トランジスタHCでは、サイドウォール絶縁膜SIとなる絶縁膜SILの残渣が溝REの側壁に残ってしまう。
【0140】
図73(A)を参照して、溝REが形成された高耐圧トランジスタHCでは、サイドウォール絶縁膜SIが露出されるようにレジストマスクRM1が形成される。図73(B)を参照して、溝REが形成されていないcore−トランジスタCCでは、サイドウォール絶縁膜SIを覆うようにレジストマスクRM2が形成される。
【0141】
図74(A)を参照して、溝REが形成された高耐圧トランジスタHCでは、レジストマスクRM1をマスクとしてサイドウォール絶縁膜SIがさらにエッチングされる。この後、レジストマスクRM1は除去される。図75を参照して、この追加エッチングにより、溝REに残ったサイドウォール絶縁膜SIとなる絶縁膜SILの残渣がエッチングされる。このため、溝REにはサイドウォール絶縁膜SIとなる絶縁膜SILの残渣が残らない。このように、ゲート電極層GEの側壁には絶縁膜SILからなるサイドウォール絶縁膜SIが形成される。そして、溝REの側壁には絶縁膜SILを残さないように絶縁膜SILがエッチングされる。
【0142】
図74(A)および図75を参照して、溝REが形成された高耐圧トランジスタHCでは、サイドウォール絶縁膜SIの高さSTは、溝REの深さRDの半分以下の大きさに形成されている。
【0143】
図75(B)を参照して、溝REが形成されていないcore−トランジスタCCでは、レジストマスクRM1により、サイドウォール絶縁膜SIはエッチングされない。このため、溝REを有する高耐圧トランジスタHCのサイドウォール絶縁膜SIは、溝REを有さないcore−トランジスタCCのサイドウォール絶縁膜SIより高さが低くなる。たとえば、溝REを有する高耐圧トランジスタHCのサイドウォール絶縁膜SIの高さは、溝REを有さないcore−トランジスタCCのサイドウォール絶縁膜SIの高さの半分以下となる
また、溝REを有する高耐圧トランジスタHCのゲート電極層GEは、溝REを有さないcore−トランジスタCCのゲート電極層GEより高さが低くなる。たとえば溝REを有する高耐圧トランジスタHCのゲート電極層GEの高さは、溝REを有さないcore−トランジスタCCのゲート電極層GEの高さ3/4〜7/8程度の高さになる。また、溝REを有する高耐圧トランジスタHCの素子分離膜TIは、溝REを有さないcore−トランジスタCCの素子分離膜TIより高さが低くなる。たとえば溝REを有する高耐圧トランジスタHCの素子分離膜TIは、ゲート電極層GEと比較して1/4〜1/2程度の高さが減少する。
【0144】
図76(A)を参照して、溝REを有する高耐圧トランジスタHCのゲート電極層GEおよびサイドウォール絶縁膜SIを覆うようにレジストマスクRM2が形成される。レジストマスクRM2をマスクとして不純物がイオン注入されることにより、ソース側低濃度領域SLおよびドレイン側低濃度領域DLが形成される。
【0145】
図76(B)を参照して、溝REを有さないcore−トランジスタCCのゲート電極層GEおよびサイドウォール絶縁膜SIはレジストマスクRM2で覆われていない。そのため、ゲート電極層GEおよびサイドウォール絶縁膜SIをマスクとして不純物がイオン注入されることにより、ソース側低濃度領域SLおよびドレイン側低濃度領域DLが形成される。
【0146】
図77(A)および(B)を参照して、この後、層間絶縁膜II、ソース側導電層CL1、ドレイン側導電層CL2、第1導電層PL1、第2導電層PL2が形成される。これにより、溝REを有する高耐圧トランジスタHCおよび溝REを有さないcore−トランジスタCCが形成される。
【0147】
また、ゲート電極層GE、ソース領域SRおよびドレイン領域DRにシリサイドSCが形成されてもよい。
【0148】
図78(A)を参照して、溝REを有する高耐圧トランジスタHCのゲート電極層GE、ソース領域SRおよびドレイン領域DRの一部が露出するようにシリサイドプロテクションマスクSPMが形成される。図78(B)を参照して、溝REを有さないcore−トランジスタCCでは、シリサイドプロテクションマスクSPMは形成されていない。
【0149】
図79(A)を参照して、シリサイドプロテクションマスクSPMをマスクとして、ゲート電極層GE、ソース領域SRおよびドレイン領域DRの一部にシリサイドSCが形成される。この後、シリサイドプロテクションマスクSPMが除去される。続いて、層間絶縁膜II、ソース側導電層CL1、ドレイン側導電層CL2、第1導電層PL1、第2導電層PL2が形成される。
【0150】
図79(B)を参照して、ゲート電極層GE、ソース領域SRおよびドレイン領域DRの上部にシリサイドが形成される。この後、層間絶縁膜II、ソース側導電層CL1、ドレイン側導電層CL2、第1導電層PL1、第2導電層PL2が形成される。
【0151】
溝REを有する高耐圧トランジスタHCにシリサイドが形成される場合、ゲート電極層GEの上面の一部が露出されてシリサイドSCが形成されてもよい。これにより、ゲート電極層GE上のシリサイドSCとソース領域SRおよびドレイン領域DRのシリサイドSCとが短絡することにより、歩留まりが低下することを回避することができる。よって、溝REを有する素子のゲート電極層GE、ソース領域SRおよびドレイン領域DRにシリサイドSCを形成することにより、良好なトランジスタ特性を実現することができる。
【0152】
本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、サイドウォール絶縁膜SIの高さが溝REの深さRDの半分以下の大きさに形成されるため、溝REにはサイドウォール絶縁膜SIとなる絶縁膜SILの残渣が残らないようにすることができる。そのため、溝REに対して十分に不純物をイオン注入することができる。よって、溝REにより半導体装置を微細化しつつ所望のトランジスタ特性を実現することができる。
【0153】
また、本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、ゲート電極層GEの側壁にはサイドウォール絶縁膜SIを形成するように、かつ溝REの側壁には絶縁膜SILを残さないように絶縁膜SILがエッチングされる。そのため、溝REに対して十分に不純物をイオン注入することができる。
【0154】
(実施の形態7)
本発明の実施の形態7の半導体装置の製造方法では、実施の形態1と比較して、溝が形成された半導体装置のサイドウォール絶縁膜を形成しない点で主に異なっている。
【0155】
図80(A)および(B)を参照して、半導体基板SBの主表面には第1のトランジスタ形成領域TR1と第2のトランジスタ形成領域TR2とが形成される。第1のトランジスタ形成領域TR1には、たとえば溝REが形成されていないcore−トランジスタCCが形成される。第2のトランジスタ形成領域TR2には、たとえば溝REが形成された高耐圧トランジスタHCが形成される。
【0156】
図80(A)および図82を参照して、半導体基板SBの主表面に溝REが形成される。半導体基板SBの主表面に第2のトランジスタ形成領域TR2の第2のゲート電極層GESが形成される。溝RE上および第2のゲート電極層GES上とを覆うように絶縁膜SILが形成される。図82に示すように、溝REの内部に達する凹部SIRを有するように絶縁膜SILが溝RE上に形成されている。第2のゲート電極層GES上および溝RE上の絶縁膜SIL上に第1マスク層ML1が形成される。
【0157】
図80(B)を参照して、半導体基板SBの主表面に第1のトランジスタ形成領域TR1の第1のゲート電極層GEFが形成される。第1のゲート電極層GEF上を覆うように絶縁膜SILが形成される。第1のトランジスタ形成領域TR1では、第1マスク層ML1が形成されない。このため、第1のトランジスタ形成領域TR1の絶縁膜SILが露出される。
【0158】
図81(A)を参照して、第2のトランジスタ形成領域TR2では、第1マスク層MLでマスクされているため、絶縁膜SILはエッチングされない。図81(B)を参照して、第1のトランジスタ形成領域TR1では、第1マスク層MLをマスクとして第1のトランジスタ形成領域TR1の絶縁膜SILをエッチングすることにより第1のゲート電極層GEFの側壁に絶縁膜SILよりなるサイドウォール絶縁膜SIが形成される。
【0159】
図83(A)を参照して、第2のゲート電極層GES上の絶縁膜SILを覆い、かつ第2トランジスタ形成領域TR2のソース形成領域SFRおよびドレイン形成領域DFR上の絶縁膜SILを露出するように第2マスク層ML2が形成される。絶縁膜SILを通して半導体基板SBの主表面におけるソース形成領域SFRおよびドレイン形成領域DFRに不純物を導入することによりソース領域SRおよびドレイン領域DRが形成される。
【0160】
図83(B)を参照して、第1のトランジスタ形成領域TR1では、第2マスク層ML2が形成されない。このため、ゲート電極層GEおよびサイドウォール絶縁膜SIをマスクとして、半導体基板SBの主表面に不純物を導入することにより、ソース領域SRおよびドレイン領域DRが形成される。
【0161】
図83(A)および(B)を参照して、ソース領域SRおよびドレイン領域DRを形成するために半導体基板SBの主表面に導入される不純物は、主表面に対して斜めの角度から導入される。
【0162】
図84(A)および(B)を参照して、この後、層間絶縁膜II、ソース側導電層CL1、ドレイン側導電層CL2、第1導電層PL1、第2導電層PL2が形成される。これにより、高耐圧トランジスタHCおよびcore−トランジスタCCが形成される。また、core−トランジスタCCのゲート電極層GE、ソース領域SRおよびドレイン領域DRの上部にはシリサイドSCが形成されていてもよい。
【0163】
本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、第2のゲート電極層GES上および溝RE上の絶縁膜SILを第1マスク層ML1で覆い、かつ第1のトランジスタ形成領域TR1の絶縁膜SILを露出するように第1マスク層ML1が形成される。そして第1マスク層ML1をマスクとして第1のトランジスタ形成領域TR1の絶縁膜SILをエッチングすることにより第1のゲート電極層GEFの側壁に絶縁膜SILよりなるサイドウォール絶縁膜が形成される。このため、溝REの形成された半導体装置では、サイドウォール絶縁膜SIを形成するためのエッチングが行われずにソース領域SRおよびドレイン領域DRを形成するための不純物が導入される。そのため、プラズマダメージのない、高信頼性を有するゲート絶縁膜GIを形成することができる。したがって、高信頼性を有する半導体装置を製造することができる。よって、溝REにより半導体装置を微細化しつつ所望のトランジスタ特性を実現することができる。
【0164】
また、本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、溝REの内部に達する凹部SIRを溝RE上に有するように絶縁膜SILが溝REの壁面に沿って形成されるため、半導体基板SBの主表面に不純物をイオン注入する際に不純物を均一に導入することができる。そのため、溝REにおいて不純物濃度を均一化することができる。不純物濃度を均一化することができるので、溝REの底面、角部、側面にまんべんなく濃い濃度でイオン注入することができる。
【0165】
また、本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、第2のゲート電極層GES上の絶縁膜SILを覆い、かつ第2のトランジスタ形成領域TR2のソース形成領域SFRおよびドレイン形成領域DFR上の絶縁膜SILを露出するように第2マスク層ML2が形成される。そして、絶縁膜SILを通して半導体基板SBの主表面におけるソース形成領域SFRおよびドレイン形成領域DFRに不純物を導入することによりソース領域SRおよびドレイン領域DRが形成される。そのため、プラズマダメージのない、高信頼性を有するゲート絶縁膜GIを形成することができる。したがって、高信頼性を有する半導体装置を製造することができる。
【0166】
また、本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、ソース領域SRおよびドレイン領域DRを形成するために半導体基板SBの主表面に導入される不純物は主表面に対して斜めの角度から導入されるため、半導体基板SBの主表面に不純物を均一に導入することができる。そのため、溝REにおいて不純物濃度を均一化することができる。不純物濃度を均一化することができるので、溝REの底面、角部、側面にまんべんなく濃い濃度でイオン注入することができる。
【0167】
上記の各実施の形態は、適時組み合わせることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明は、半導体基板の主表面に溝が形成された半導体装置およびその半導体装置の製造方法に特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0169】
CA キャパシタ部、CC Core−CMOS部、CD チャネルドープ層、CL1 ソース側導電層、CL2 ドレイン側導電層、CR1 ソース側接触領域、CR2 ドレイン側接触領域、DE 空乏層、DFR ドレイン形成領域、DL ドレイン側低濃度領域、DR ドレイン領域、GE ゲート電極層、GE1 ゲートポリシリコン膜、GEF 第1のゲート電極層、GES 第2のゲート電極層、GI ゲート絶縁膜、GS ゲート電極層の側壁、HC HV−CMOS部、II 層間絶縁膜、IL1 酸化シリコン膜、IL2 窒化シリコン膜、IL3 酸化シリコン膜、IL4 窒化シリコン膜、LN 中心線、LSW 積層構造の側壁、ML マスク層、MT マスク層の厚さ、PL1 第1導電層、PL2 第2導電層、PR1,PR2,PR3 フォトレジストパターン、PW p型ウェル領域、RD 溝の深さ、RE 溝、RE1 第1溝、RE2 第2溝、RE3 第3溝、RE4 第4溝、RE5 第5溝、RE6 第6溝、RM1,RM2 レジストマスク、RP 溝部、RSW 溝の側壁、SB 半導体基板、SC シリサイド、SFR ソース形成領域、SI サイドウォール絶縁膜、SI1 絶縁膜、SI2 絶縁膜、SI3 絶縁膜、SIL 絶縁膜、SIR 絶縁膜の凹部、SH シールドHTO、SL ソース側低濃度領域、SO シールド酸化膜、SPM シリサイドプロテクションマスク、SR ソース領域、ST サイドウォール絶縁膜の高さ、SW 側壁、TE TEOS膜、TI 素子分離膜、TR1 第1のトランジスタ形成領域、TR2 第2のトランジスタ形成領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主表面を有する半導体基板と、
前記主表面に互いに間隔をおいて形成されたソース領域およびドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域とに挟まれる前記主表面上に形成されたゲート電極層と、
前記ソース領域の表面に接するように形成された第1導電層と、
前記ドレイン領域の表面に接するように形成された第2導電層とを備え、
前記第1導電層と前記ソース領域との接触領域から前記ゲート電極層の下側を通って前記第2導電層と前記ドレイン領域との接触領域まで延びるように溝が前記主表面に形成されている、半導体装置。
【請求項2】
前記第1導電層および前記第2導電層の各々が前記溝の側壁に接するように構成されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ドレイン領域の周囲を覆うように形成され、かつ前記ドレイン領域よりも低い不純物濃度を有し、かつ前記ドレイン領域と同じ導電型のドレイン側低濃度領域と、
前記ソース領域の周囲を覆うように形成され、かつ前記ソース領域よりも低い不純物濃度を有し、かつ前記ソース領域と同じ導電型のソース側低濃度領域とをさらに備え、
前記溝は前記ドレイン側低濃度領域と前記ソース側低濃度領域を通るように形成されている、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記溝は複数の溝部を含んでおり、複数の前記溝部のそれぞれは互いに並走するように形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
主表面を有する半導体基板と、
前記主表面に互いに間隔をおいて形成されたソース領域およびドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域とに挟まれる前記主表面上に形成されたゲート電極層とを備え、
前記ソース領域と前記ドレイン領域とが互いに対向する方向に交差するように第1溝が前記主表面に形成されており、かつ前記第1溝は平面視において前記ゲート電極層と前記ドレイン領域との間に配置されている、半導体装置。
【請求項6】
前記ソース領域と前記ドレイン領域とが互いに対向する方向に延びるように、前記ソース領域と前記ドレイン領域とに挟まれる前記主表面に第2溝が形成されている、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ソース領域と前記ドレイン領域とが互いに対向する方向に交差する方向に延びるように、かつ平面視において前記ゲート電極層と重なるように前記主表面に第3溝が形成されている、請求項5または6に記載の半導体装置。
【請求項8】
半導体基板の主表面に溝を形成する工程と、
前記溝の一部の領域上にゲート電極層とマスク層との積層構造を形成する工程と、
前記積層構造の少なくとも前記ゲート電極層の側壁にサイドウォール絶縁膜を形成する工程とを備え、
前記マスク層を形成するときの前記マスク層の厚みは、前記溝の深さより大きくなるよう形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記サイドウォール絶縁膜を形成する工程は、前記積層構造と前記溝とを覆う絶縁膜を形成する工程と、
前記積層構造の側壁には前記絶縁膜からなる前記サイドウォール絶縁膜を形成するように、かつ前記溝の側壁には前記絶縁膜を残さないように前記絶縁膜をエッチングする工程とを含んでいる、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
半導体基板の主表面に溝を形成する工程と、
前記溝の一部の領域上にゲート電極層を形成する工程と、
前記ゲート電極層の側壁にサイドウォール絶縁膜を形成する工程とを備え、
前記サイドウォール絶縁膜を形成する工程は、前記サイドウォール絶縁膜の高さを前記溝の深さの半分以下の大きさに形成する、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記サイドウォール絶縁膜を形成する工程は、前記ゲート電極層と前記溝とを覆う絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート電極層の側壁には前記絶縁膜からなる前記サイドウォール絶縁膜を形成するように、かつ前記溝の側壁には前記絶縁膜を残さないように前記絶縁膜をエッチングする工程とを含んでいる、請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
半導体基板の主表面に溝と、前記主表面上に第1のトランジスタ形成領域の第1のゲート電極層と、第2のトランジスタ形成領域の第2のゲート電極層とを形成する工程と、
前記第1のゲート電極層上と、前記第2のゲート電極層上および前記溝上とを覆うように絶縁膜を形成する工程と、
前記第2のゲート電極層上および前記溝上の前記絶縁膜を第1マスク層で覆い、かつ前記第1のトランジスタ形成領域の前記絶縁膜を露出するように前記第1マスク層を形成する工程と、
前記第1マスク層をマスクとして前記第1のトランジスタ形成領域の前記絶縁膜をエッチングすることにより前記第1のゲート電極層の側壁に前記絶縁膜よりなるサイドウォール絶縁膜を形成する工程とを備えた、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記絶縁膜を形成する工程は、前記溝の内部に達する凹部を前記溝上に有するように前記絶縁膜が前記溝の壁面に沿って形成される、請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第2のゲート電極層上の前記絶縁膜を覆い、かつ前記第2のトランジスタ形成領域のソース形成領域およびドレイン形成領域上の前記絶縁膜を露出するように前記第2マスク層を形成する工程と、
前記絶縁膜を通して前記半導体基板の前記主表面における前記ソース形成領域および前記ドレイン形成領域に不純物を導入することによりソース領域およびドレイン領域を形成する工程とをさらに備えた、請求項12または13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記ソース領域および前記ドレイン領域を形成する前記工程において、前記半導体基板の前記主表面に導入される前記不純物は前記主表面に対して斜めの角度から導入される、請求項12〜14のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【図78】
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【図79】
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【図80】
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【図81】
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【図82】
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【図83】
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【図84】
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【公開番号】特開2011−187530(P2011−187530A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48755(P2010−48755)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】