説明

半導体装置の製造方法及び基板処理装置

【課題】 リモートプラズマを用いたクリーニングでありながら、反応室内に付着した金属酸化膜を容易に除去することができるようにする。
【解決手段】 反応室内でサセプタに保持した基板の上にハフニウムを含む膜またはジルコニウムを含む膜を形成する成膜工程と、反応室外部で塩素原子を含むガスをプラズマで活性化して反応室内に供給することにより前記成膜工程において反応室内に付着した膜を除去するクリーニング工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び基板処理装置に係り、特に反応室内に付着した金属酸化膜等の膜をクリーニングするものに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法を実施するための基板処理装置において、その消費電力を減らすためにSiO2ゲート酸化膜の薄膜化が進められている。しかし、SiO2ゲート絶縁膜が薄膜化すると、ゲート電極とチャネル層との間の直接トンネル効果によるリーク電流が増加する。またゲート絶縁膜の絶縁破壊による信頼性低下の懸念が生じる。
【0003】
リーク電流や絶縁破壊を抑制するために、SiO2に代わる材料として物理的に厚い膜を用いてもSiO2と同じ静電容量が得られる高誘電率材料の適用検討が進んでいる。高誘電率ゲート絶縁膜材料としては具体的にZr酸化膜、Hf酸化膜などの熱力学的に安定な酸化膜の採用が検討されている。
【0004】
これらの金属酸化膜をウェーハなどの基板に成膜するCVD装置では、反応室の内壁面にもウェーハ表面と同様に反応生成物である金属酸化膜が堆積する。この堆積物は堆積量が増加するほど熱応力や膜自身が持つ応力で壁面から剥れやすくなる。剥がれた堆積物は重力、静電気力、流体力でウェーハ表面に付着して配線の断線や短絡を引き起こす。そのためにこの様な事が起きる前に堆積物を定期的に除去(クリーニング)する必要がある。
【0005】
クリーニング方法として標準的には、熱エネルギーを用いて除去する方法が多用されているが、最近ではリモートプラズマを用いたクリーニングも使われている。
【0006】
熱エネルギーを用いる方法では、クリーニングガスにHCl,BCl3,ClF3,Cl2などを用いる。ガスを活性化するためのエネルギー源は熱のみとなるから、反応室内壁やサセプタ(反応室部品)を加熱して反応室内の温度を上げてやる必要がある。このためクリーニング温度は成膜温度よりも高い温度となるので、成膜工程からクリーニング工程への移行時間が長くなる。例えばClF3を用いて、金属酸化膜であるHf酸化膜を所望のエッチングレートでクリーニングするには、反応室の温度を500℃近くまで昇温することが必要で、それにともなう移行時間が約1時間程必要となる。また、昇温することにより高温クリーニングに耐え得る材料で反応室部品を作らなければならない。
【0007】
つぎに、プラズマを発生させる場所を基板領域からガス供給側に移し、基板へのプラズマが与えるダメージをなくしたリモートプラズマを用いる方法では、クリーニング温度の低温化が図れるが、クリーニングガスによっては高誘電率材料である金属酸化膜を気化させることができず、堆積物をクリーニングできないことがある。例えば、リモートプラズマを用いたクリーニングに多用されるNF3ガスを用いて、Zr酸化膜、Hf酸化膜をクリーニングしようとする場合、これらの金属酸化膜がNF3と接触してZrF4、HfF4などの反応生成物が生成される。しかし、これらの反応生成物の蒸気圧は非常に低く、例えばZrF4の場合、蒸気圧は500℃で約0.1Pa、200℃ではほぼゼロである。CVD装置のクリーニング時の壁面温度がほぼ200℃程度かそれ以下であることを考えると、その温度では反応生成物が気化しないため、堆積物をエッチング除去できないという不都合を生じている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したような半導体装置の製造方法を実施するための基板処理装置において、従来の熱エネルギーを用いるクリーニング方法では、高温クリーニングになるため、成膜工程からクリーニング工程への移行時間が長くなり、しかも反応室部品を高耐熱性材料で作らなければならないという欠点があった。また、従来のリモートプラズマを用いるクリーニング方法では、低温化できるものの、Zr酸化膜、Hf酸化膜などの金属酸化膜とクリーニングガスとから生成される反応生成物をガス化できないため、堆積物である金属酸化膜をクリーニングすることが困難になるという問題があった。この問題は、Zr酸化膜やHf酸化膜に限らず、広く金属酸化膜に共通する。
【0009】
本発明の課題は、上述した従来の問題点を解消して、クリーニング温度の低温化を図って反応室部品に耐熱性が要求されず、クリーニング工程への移行時間を短縮化でき、反応室内に付着した金属酸化膜を容易に除去することが可能な半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
半導体製造装置の反応室内壁面に堆積するHf酸化膜、Zr酸化膜などの金属酸化膜をエッチング除去して反応室内を清浄化するためには、クリーニングガスが金属酸化膜と接触して生成される反応生成物の蒸気圧が高いことが要求される。
【0011】
ガスクリーニングによる反応生成物の蒸気圧を検討する。一般にガスクリーニングでは反応性の高い塩素、フッ素を含むハロゲンガスが用いられる。ハロゲンガスとZr酸化膜やHf酸化膜との接触によりZr、Hfのハロゲン化物が生成される。そこで、ZrCl4(塩化ジルコニウム)、ZrF4(フッ化ジルコニウム)や、HfCl4(塩化ハフニウム)、HfF4(フッ化ハフニウム)などのハロゲン化物の蒸気圧と温度との関係を調べた。その結果を図2、3に示す。同図からZrF4、HfF4(フッ化物)に比べて、ZrCl4、HfCl4(塩化物)の蒸気圧がはるかに高く、200℃で蒸気圧が100Pa程度であり、クリーニング時の反応生成物をガス化できることが分かる。よって、NF3等のフッ素系ガスではなく、塩素系のガスを用いれば、クリーニングによる反応生成物の蒸気圧を高くすることができる。したがって、基板処理装置の反応室内壁面に堆積するZr酸化膜、Hf酸化膜などの金属酸化膜をエッチングした時に生成される反応生成物を、ガス化して排気できる。
【0012】
したがって、第1の発明は、反応室内でサセプタに保持した基板の上に金属酸化膜を形成する成膜工程と、反応室外部で塩素原子を含むガスをプラズマを用いて活性化して反応室内に供給することにより前記成膜工程において反応室内に付着した膜を除去するクリーニング工程とを有することを特徴とする。ガスをプラズマを用いて活性化するから、クリーニング温度を低温化でき、成膜工程からクリーニング工程への移行時間が短くて済む。また、反応室を構成する部品に耐熱性が要求されない。また、塩素ガスを含むガスを活性化して反応室に供給するから、反応室内に付着した金属酸化膜と塩素ガスを含むガスとから生成される反応生成物は、その蒸気圧が高く気化しやくすくなる。したがって、反応室内に付着した金属酸化膜の除去が容易になる。
【0013】
第2の発明は、基板を処理する反応室と、反応室内の基板を加熱するヒータと、反応室内に金属酸化膜を形成するための処理ガスを供給する処理ガス供給口と、反応室外部に設けられクリーニングガスとしての塩素原子を含むガスをプラズマを用いて活性化する活性化手段と、活性化手段により活性化した塩素原子を含むガスを反応室内に供給するクリーニングガス供給口とを有することを特徴とする。塩素原子を含むガスを活性化する活性化手段と、活性化した塩素原子を含むガスを反応室内に供給するクリーニングガス供給口を設けるだけの簡単な構成で、反応室内に付着した金属酸化膜の除去を容易にすることができる。
【0014】
第3の発明は、第1の発明において、塩素原子を含むガスとはClF3ガスを含むガスであることを特徴とする。ClF3は常温でも分解して容易にF、Cl原子を放出するので、ノンプラズマであってもよいが、特にプラズマにより活性化させると、F、Cl原子の放出量がより多くなるので、エッチングレートが増大する。したがって、クリーニング時間の短縮が図れる。また、ClF3を使用すると、有害物質(C,S)の低残留化を実現できる点でも有利である。
【0015】
第4の発明は、第1の発明において、塩素原子を含むガスとはClF3とArの混合ガスであることを特徴とする。ClF3に不活性ガスArを混合することにより、プラズマの活性を促すことができる。
【0016】
第5の発明は、第1の発明において、クリーニング工程における反応室圧力を300Pa以下とすることを特徴とする。反応室圧力を300Pa以下にすることにより、プラズマ化されたガスの寿命を確保できる。
【0017】
第6の発明は、第1の発明において、反応室内壁を、NiP coat Sus316LまたはNiF2 coat Sus316Lで構成することを特徴とする。SUS316LにNiPやNiF2を被覆すると、クリーニングガスに対する耐食性、耐久性に優れる。
【0018】
第7の発明は、第1の発明において、クリーニング工程における反応室内壁温度を100〜300℃とすることを特徴とする。反応室内壁温度を100〜300℃とすると、所望のエッチングレートが確保でき、反応室部品へのダメージも少ない。
【0019】
第8の発明は、第1の発明において、サセプタはアルミナ材またはAlNにて構成されることを特徴とする。サセプタをアルミナ材またはAlNにて構成すると、クリーニングガスに対する耐食性、耐久性に優れる。
【0020】
第9の発明は、第1の発明において、サセプタ温度を300〜500℃とすることを特徴とする。サセプタには基板に成膜されなかった金属酸化膜の付着が生じているため、サセプタ温度を300〜500℃と高温にして、その金属酸化膜を除去する。
【0021】
第10の発明は、第1の発明において、金属酸化膜とは、ハフニウムを含む膜またはジルコニウムを含む膜であることを特徴とする。金属酸化膜がハフニウムを含む膜またはジルコニウムを含む膜である場合に、塩素原子を含むガスを用いてクリーニングすると、膜の除去が容易になる。
【0022】
第11の発明は、第10の発明において、ハフニウムを含む膜とはハフニウム酸化膜であり、ジルコニウムを含む膜とはジルコニウム酸化膜であることを特徴とする。ハフニウムを含む膜やジルコニウムを含む膜が、これらの酸化膜である場合に、塩素原子を含むガスを用いてクリーニングすると、ガスとの接触により生成される反応生成物の蒸気圧が高いので、膜の除去が容易になる。
【0023】
第12の発明は、第10、第11の発明において、ハフニウムを含む膜を形成する際の原料はHf[OC(CH32CH2OCH34(以下、Hf−(MMP)4と略す)であり、ジルコニウムを含む膜を形成する際に使用する原料はZr[OC(CH32CH2OCH34(以下、Zr−(MMP)4と略す)であることを特徴とする。ハフニウムを含む膜を形成する際の原料としては、Hf[OC(CH334、Hf−(MMP)4、Hf[O−Si−(CH3)]4などがある。これらのうちでHf−(MMP)4を用いると、基板温度450℃以下で高誘電率をもつHfO2膜を容易に形成することができる。また、ジルコニウムを含む膜を形成する際の原料としては、Zr[OC(CH334やZr−(MMP)4などがある。これらのうちでZr−(MMP)4を用いると、基板温度450℃以下で高誘電率をもつZrO2膜を容易に形成することができる。
【0024】
第13の発明は、第2の発明において、塩素原子を含むガスとはClF3ガスを含むガスであることを特徴とする。第3の発明と同様な利点がある。
【0025】
第14の発明は、第2の発明において、塩素原子を含むガスとはClF3とArの混合ガスであることを特徴とする。第4の発明と同様な利点がある。
【0026】
第15の発明は、第2の発明において、さらに反応室のクリーニング時における反応室圧力が300Pa以下となるよう制御する制御手段を有することを特徴とする。第5の発明と同様な利点がある。
【0027】
第16の発明は、第2の発明において、反応室内壁は、NiP coat Sus316LまたはNiF2 coat Sus316Lにて構成されることを特徴とする。第6の発明と同様な利点がある。
【0028】
第17の発明は、第2の発明において、さらに反応室内壁を加熱する第2のヒータと、反応室のクリーニング時における反応室内壁温度が100〜300℃となるよう制御する制御手段とを有することを特徴とする。第7の発明と同様な利点がある。
【0029】
第18の発明は、第2の発明において、さらに基板を支持するサセプタを有し、サセプタは、アルミナ材またはAlNにて構成されることを特徴とする。第8の発明と同様な利点がある。
【0030】
第19の発明は、第2の発明において、さらに基板を支持するサセプタと、反応室のクリーニング時におけるサセプタ温度が300〜500℃となるよう制御する制御手段とを有することを特徴とする。第9の発明と同様な利点がある。
【0031】
第20の発明は、第2の発明において、金属酸化膜とは、ハフニウムを含む膜またはジルコニウムを含む膜であることを特徴とする。第10の発明と同様な利点がある。
【0032】
第21の発明は、第20の発明において、ハフニウムを含む膜とはハフニウム酸化膜であり、ジルコニウムを含む膜とはジルコニウム酸化膜であることを特徴とする。第11の発明と同様な利点がある。
【0033】
第22の発明は、第20、第21の発明において、ハフニウムを含む膜を形成する際の原料はHf−(MMP)4であり、ジルコニウムを含む膜を形成する際に使用する原料はZr[OC(CH32CH2OCH34(以下、Zr−(MMP)4と略す)であることを特徴とする。第12の発明と同様な利点がある。
【0034】
第23の発明は、第1、第3の発明において、前記クリーニング工程では、さらにカーボンを含むガスを添加することを特徴とする。カーボンを含むガスは触媒として機能させる。触媒としてのカーボンを含むガスを添加して、プラズマにより活性化した塩素原子を含むガスと混合させることで、金属酸化膜との反応を化学的に促進させることができる。カーボンを含むガスは、塩素原子を含むガスと同様、反応室外部でプラズマを用いて活性化してから反応室内に供給しても、プラズマにより活性化させずにそのまま反応室内に供給してもよい。活性化させない場合、カーボンを含むガスは直接反応室内に供給してもよいが、活性化させた塩素原子を含むガスを反応室内に供給する配管内で混合させるのが好ましい。カーボンを含むガスとしては例えばCO2、C26などがある。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、塩素原子を含むガスをプラズマを用いて活性化してクリーニングするので、クリーニング温度の低温化を図ることができ、反応室部品に耐熱性が要求されず、クリーニング工程への移行時間を短縮化できる。また、反応室内に付着した金属酸化膜を容易に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0037】
図1は基板処理装置としての枚葉型CVD装置の構成を示したものである。CVD装置は、SiウェーハにHf(ハフニウム)酸化膜やZr(ジルコニウム)酸化膜を形成するもので、反応炉1、原料ガス供給部31、及びクリーニングガス供給部32で構成される。
【0038】
反応炉1は、1枚のウェーハを処理する反応容器45を備える。反応容器45は、内部に反応室43、上部に給気口となる多数の噴出孔5を設けたシャワーヘッド6、下部の一側に排気配管46を介して真空ポンプ12に接続された排気口47、側部にゲートバルブ11により開閉される搬送口10、下部の中央開口にベローズ41を介して昇降自在に取り付けられた昇降台42を備える。反応容器45の外周に、反応室43内を加熱して反応室内壁面2やシャワーヘッド6の温度を上げる温調ユニット13が設けられる。シャワーヘッド6は、クリーニングガス供給口及び処理ガス供給口を構成する。
【0039】
また、反応容器45の内部に、ウェーハ40を保持するサセプタ3が設けられる。サセプタ3は昇降台42上に支持されて、反応室43内を上下動するようになっている。ウェーハ搬送時は下降して反応容器45の下部の待機位置に移動し、成膜時は上昇して上部のシャワーヘッド6近傍の成膜位置に移動する。サセプタ3を介してウェーハ40を加熱するヒータ4は、サセプタ3内に埋め込まれるか、サセプタ3の下方に設けられる。ヒータ4へは給電線7から電力が供給される。また、サセプタ3に押上棒8が出没自在に設けられる。押上棒8は、ウェーハ40の受取り時はサセプタ3から突出してウェーハを受け取り、成膜時はサセプタ内に没入してウェーハをサセプタ3に受け渡すようになっている。
【0040】
また反応容器45の内壁面2などのクリーニングガスと接触する部位は、クリーニングによるダメージを低減するためにクリーニングガスに対して耐性のある材料を施す。例えば、Mo添加による優れた耐食性と、低炭素(C)による耐粒界腐食性を有するSUS316L(オーステナイト系ステンレス)に、クリーニングガスに対する耐食性、耐久性を向上するために、さらにリン化ニッケルを被覆したもの(NiP coat Sus316L)、またはフッ化ニッケルを被覆したもの(NiF2 coat Sus316L)が施されている。
【0041】
また、温調ユニット13及びヒータ4を制御して反応室内温度及びサセプタ温度を調整する温度制御手段48が設けられる。また、排気配管46のコンダクタンスを制御して反応室内の圧力を調整する圧力制御手段49が設けられる。
【0042】
原料ガス供給部31は、シャワーヘッド6に接続されて、液体原料槽14内の液体原料を気化して反応室43内に送り込む。液体原料としては、Hf−(MMP)4やZr−(MMP)4などの有機材料を用いる。HeもしくはN2ガスの圧力で液体原料槽14より押し出された液体原料は、液体マスフローコントローラ15により流量制御され、所望量が気化器16に送り込まれる。送り込まれた液体原料は気化器16により気化されて処理ガス供給配管41を通じて反応室43内に導入される。処理ガス供給配管41は気化した液体原料が、再液化しないように所望の温度(100〜200℃程度)に加熱してある。また、O2ガスボンベ18から処理ガス供給配管41を通じてO2ガスがマスフローコントローラ19により流量制御され、所望量が反応室43内に供給できるようになっている。
【0043】
クリーニングガス供給部32は、シャワーヘッド6に接続されて、クリーニングガスをリモートプラズマにより活性化して反応室43内に送り込む。Arガスボンベ22とClF3ガスボンベ20とから、Arガス及びClF3ガスがマスフローコントローラ23、25により流量制御され、所要量がリモートプラズマ源24に導入される。リモートプラズマ源24に導入されたArガスとClF3ガスはプラズマエネルギーで活性化されて内面がアルマイト処理されたクリーニングガス供給配管26を通して反応室43内に供給できるようになっている。
【0044】
なお、必要に応じてボンベ21を設け、ボンベ21から触媒としてカーボンを含むガスが、マスフローコントローラ27により流量制御され、所要量が反応室43内に供給できるようになっている。カーボンを含むガスは、例えばCO2、C26等である。プラズマにより活性化したClF3ガスに、触媒としてカーボンを含むガスを混合させることで、化学的に金属酸化膜との反応を促進させることができる。カーボンを含むガスは、ClF3ガスと同様、リモートプラズマ源24に導入して活性化してから反応室43内に供給してもよい。また、プラズマにより活性化させずにそのまま反応室43内に供給してもよい。活性化させない場合、カーボンを含むガスは、活性化させたClF3ガスと混合させることなく、直接反応室43内に供給してもよいが、活性化させたClF3ガスを反応室43内に供給するクリーニングガス供給配管26内で混合させるのが好ましい。
【0045】
クリーニングガスとしてプラズマで活性化したClF3を使用するのは、次の理由からである。ClF3は常温でも分解して容易にF、Cl原子を放出するので、ノンプラズマであってもよいが、特にプラズマにより活性させると、F、Cl原子の放出量がより多くなるので、反応生成物のエッチングレートを増大できる。そのためクリーニング時間の短縮化が図れる。また、リモートプラズマにより活性化したF、Cl原子が導入されれば、炉内が500℃よりも低い温度でも、エッチングレートの向上が見込まれる。これに対して、リモートプラズマを使用しない場合は、炉内温度500℃近くまで高くしなければ所望のエッチングレートが見込めないし、エッチングレートを確保するために炉内温度を高くした場合には、反応室部品へのダメージが生じるという弊害が発生してしまう。
【0046】
次に、半導体装置の製造工程の一工程として、上述したCVD装置を稼働してシリコンウェーハ上に、例えばZrO2膜を形成する方法について説明する。本発明におけるCVD装置では、次の(1)〜(3)の作業が繰り返される。(1)の作業では、ウェーハ上にZrO2膜を形成する作業を繰り返す。(2)の作業では、複数枚のウェーハに成膜作業をしたら、装置を停止してクリーニング作業を行なう。(3)の作業では、再度成膜作業に入るためにプリ成膜作業を行なう。以下、詳述する。
【0047】
(1)成膜作業
まず、サセプタ3を反応室43内の待機位置まで下げて、その上面位置が搬送口10の水平面位置になるようにする。このとき押上棒8はサセプタ3の上面より突出している。ゲートバルブ11を開けて、図示しない搬送アームによりウェーハ40を搬送口10から反応室43内に搬送して、待機位置にあるサセプ夕3から突出している押上棒8上へ移載する。搬送アームを反応室43外に移動するとともに、ゲートバルブ11を閉じる。サセプタ3を上昇すると押上棒8が没入してウェーハ40はサセプタ3の上面に移載されるとともに、サセプタ3はそのまま反応室43内の成膜位置まで移動する。このときサセプタ3に埋め込まれたヒータ4に給電線7から電力を供給する。ヒータ4に供給する電力を温度制御手段48で調整することによりウェーハ40を所望の設定温度(300〜500℃程度)に制御する。300〜500℃程度に制御するのは、成膜の生成を促進してウェーハ40上に金属酸化膜が付着しやすいようにするためである。同様に、反応室内壁面2とシャワーヘッド6も、温調ユニット13に供給する電力を温度制御手段48で調整することにより、成膜温度よりも低い所望の設定温度(100〜300℃)に制御しておく。100〜300℃に制御するのは、反応室内壁面2での成膜の生成を抑制して反応副生成物が堆積しないようにするためである。
【0048】
なお、ウェーハ40の搬送時や、ウェーハ40搬送後のウェハ昇温時等、成膜時以外は、反応室の内壁面や、サセプタ(ウェーハ加熱時)等からのパーティクルや金属汚染物のウェーハ40への付着を防ぐために、Ar、He、N2などの不活性ガスを反応室43内に流しておくとよい。
【0049】
上述した設定温度のもとで、原料ガス供給部31から、Zr−(MMP)4:0.1g/minと、O2ガス:0.1slmとをシャワーヘッド6に導入して、多数の噴出孔5を経由させて、反応室43内のウェーハ40上へシャワー状に供給する。このとき反応室43内は、圧力制御手段49で排気配管コンダクタンスを調整することにより、所望の設定圧力(100〜数1000Pa)に制御する。ガスの供給を必要時間実施することにより、所望膜厚の金属酸化膜であるZrO2膜をウェーハ40上に成膜する。成膜工程中に、必要に応じて、CH、OHなどの不純物除去処理工程を挿入する。
【0050】
所望膜厚成膜した後、成膜ガス供給部31からのガス供給を停止して反応室43内の成膜ガスを排気する。排気後、サセプタ3を待機位置まで下降して、その上面位置が搬送口10の水平面位置になるようにする。この過程で、押上棒8がサセプタ上面から突出して、サセプタ3から押上棒8上にウェーハ40が移載される。ゲートバルブ11を開けて、図示しない搬送アームを反応室43内に挿入し、ウェーハ40を搬送アームに載せる。そして、搬送アームを反応室43外へ移動することによりウェーハ40を搬送口10から払い出し、ゲートバルブ11を閉じる。上述した搬送と成膜とを複数回繰り返して、複数枚のウェーハ上にZrO2膜を形成する。
【0051】
(2)クリーニング作業
搬送と成膜を、複数回繰り返すと、反応室43の内壁面2、シャワーヘッド6、サセプタ3にもウェーハ40表面と同様に金属酸化膜であるZrO2膜が付着する。この付着した堆積物は堆積量が増加するほど、熱応力や膜自身がもつ応力で壁面から剥れやすくなり、異物等の発生を引き起こしてしまう。よって、これを除去するために反応室43内を清浄化するためのクリーニング作業を実施する。
【0052】
反応室壁面2とシャワーヘッド6も温調ユニット13を所望の設定温度、100〜300℃程度にする。100℃よりも低いとアンダーエッチになってしまう。300℃以上だとオーバエッチになって、内壁面2やサセプタ3を削るなどのダメージ発生が生じる。このためエッチングレートが確保でき、反応室部品へのダメージが少ない上記温度範囲で行なうのが好ましい。
【0053】
同様にサセプタ3内に埋め込まれたヒータ4に給電線7から電力を供給することにより、サセプタ3を所望の設定温度、300〜500℃程度にする。サセプタ温度を反応室壁等の温度よりも高く設定するのは、サセプタ表面にはウェーハに成膜されなかった反応膜の付着が生じているため、それを除去するために温度を上げて効率良くクリーニングするためである。なお、成膜工程からクリーニング工程、もしくはクリーニング工程から成膜工程への移行時間短縮を考慮すると、クリーニング工程の温度と成膜工程の温度は同一温度、または近似の温度が好ましい。
【0054】
このような温度設定のもとでクリーニングガス供給部32からリモートプラズマ源24により活性化したAr(1〜5slm)と、ClF3(0.2〜1.0slm)を所望量反応室43内に供給する。Arはプラズマの活性を促すのに必要なキャリアガスである。Arの比率は20〜70%程度が好ましい。比率が低すぎるとエッチングレートが低くなり、高すぎるとプラズマ発生の安定性が低下するからである。なお、このときプラズマにより活性化した又は活性化しないカーボン含有ガスであるCO2、C26を、プラズマにより活性化したClF3ガスと混合して反応室43内に供給することで、金属酸化膜との反応を化学的に促進させるようにしてもよい。
【0055】
上記成膜ガスの導入と共に、真空ポンプ12で反応室43内を所望の圧力(50〜300Pa)にして必要時間クリーニングする。300Paよりも高圧になるとリモートプラズマにより活性化されたガスの寿命が短くなり、エッチングの均一性低下になる場合がある。これを回避するためにプラズマ化されたガスの寿命が確保される50〜300Paで行なうのが好ましい。
【0056】
その後、クリーニングガス供給部32のArとClF3、及びCO2、C26の供給を止め、クリーニングガス雰囲気である反応室43を一定時間パージし、クリーニングガスもしくは分解した残留ガス(F、Cl)を排気して、これでクリーニング作業が終了する。
【0057】
なお、クリーニング作業時に、サセプタ保護のために搬送口10よりウェーハと同径のカバーウェーハ50を挿入し、サセプタ3を覆うようにしてもよい。成膜時にはサセプタ3上にウェーハ40が存在しているために、サセプタ3に付着する膜はサセプタ上のウェーハ領域外の部分がほとんどであり、ウェーハ領域内には成膜が若干しか付着していないと考えられる。したがって、サセプタ3内の成膜が薄いウェーハ領域内をアルミナ製などのカバーウェーハで保護する。
【0058】
(3)プリ成膜作業
プリ成膜作業の目的は、クリーニング後の反応室壁面2などに予めプリコート膜を生成することで、本成膜でウェーハ上に生成される膜厚が不均一になったり、内壁面2からの金属等によりウェーハが汚染されたりするのを防止するためである。プリ成膜において、まず反応室43内を排気後、(1)の成膜作業(本成膜)と同様に原料ガス供給部31から成膜用ガスを導入して、反応室内壁に成膜を施す。このプリ成膜での成膜時間、温度、圧力などの成膜条件は、本成膜の条件とは異なる。成膜後、反応室内を排気し、プリ成膜作業が完了する。
【0059】
以上述べたように、実施の形態によれば次の効果を奏する。
【0060】
(1)成膜時に反応室等に堆積した堆積物を除去するクリーニング時に、リモートプラズマを用いているので、熱エネルギーを用いたものに比べて、反応室内の温度を低温化できる。したがって、成膜工程からクリーニング工程への移行時間を短縮することができる。また、実施の形態では、クリーニング時に、NF3ガスではなく塩素含有ガスであるClF3ガスを流して、成膜時に反応容器の内壁面等に堆積したZr酸化物、Hf酸化物に、リモートプラズマにより活性化させたClF3を接触させて反応させることで、Zr塩化物、ハフニウム塩化物を形成する。これらの金属塩化物は、NF3を反応させたときに形成されるZrフッ化物、Hfフッ化物と比べて、低温でも容易にガス化できる。したがって、反応室に堆積した金属酸化物を容易に除去でき、反応室内を清浄化できる。
【0061】
特に、活性化したClF3ガスは、Zr酸化膜またはHf酸化膜が、ZrO2またはHfO2であるときに有効である。ClF3ガスを用いると、蒸気圧の高い反応生成物HfCl4、ZrCl4が形成され、低い温度でも気化するため、容易にクリーニングできるからである。
【0062】
(2)クリーニングガスとしてClF3とArの混合ガスを用い、これをブラズマで活性化して供給するようにしたので、ノンプラズマで供給する場合に比べて、エッチング速度を向上することができる。また、同じエッチング温度条件でも、プラズマはノンプラズマと比べてエッチング速度が大きいので、より低い温度でクリーニングすることができる。したがって、クリーニングのために装置を停止する時間を短縮することができ、装置稼働率を向上できる。
【0063】
図4は、リモートブラズマユニット(RPU)を用いた場合と、リモートプラズマユニットを用いないノンプラズマ(no RPU)の場合とを比較したエッチングレート特性図である。エッチング条件は、圧力:100Pa、ClF3/Ar=0.5/2.0slmである。同図からノンプラズマ(no RPU)のClF3を用いた場合、400℃だとZrO2ではエッチングレートは大きくて問題ないが、HfO2ではエッチングレートが低すぎるため問題がある。HfO2膜でのエッチングレートを確保するためには、更に昇温しなければならず、それにより温度移行待ち時間が生じたり、反応室部品の高温ダメージが生じる場合がある。ノンプラズマと比べてプラズマを用いたZrO2、HfO2のエッチングレート(E.R.)が格段に優れており、300℃でエッチングレートが、HfO2の場合で150nm/min以上、ZrO2の場合で200nm/min以上あることがわかる。よって、より低い温度で短時間でクリーニングすることができる。
【0064】
(3)反応室内壁をNiP coat Sus316LまたはNiF2 coat Sus316Lで構成し、サセプタをアルミナ材または窒化アルミ(AlN)で構成することで、クリーニングガスと接触する部位のダメージを低減し、耐食性、耐久性を向上することができる。
【0065】
(4)実施の形態の基板処理装置を用いて半導体装置を製造すると、リーク電流や絶縁破壊の少ないゲート絶縁膜を有する信頼性の高い半導体装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施の形態による半導体装置の製造方法を実施するための基盤処理装置の構成図である。
【図2】Zrハロゲン化物の温度と蒸気圧との関係を示す図である。
【図3】Hfハロゲン化物の温度と蒸気圧との関係を示す図である。
【図4】プラズマで活性化した場合とノンプラズマで活性化しない場合のClF3/Arガスクリーニングの温度依存性の比較結果を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
3 サセプタ
4 ヒータ
6 シャワーヘッド(クリーニングガス供給口、処理ガス供給口)
24 リモートプラズマ源(活性化手段)
40 ウェーハ(基板)
43 反応室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応室内でサセプタに保持した基板の上にハフニウムを含む膜またはジルコニウムを含む膜を形成する成膜工程と、
反応室外部で塩素原子を含むガスをプラズマで活性化して反応室内に供給することにより前記成膜工程において反応室内に付着した膜を除去するクリーニング工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
ハフニウムを含む膜またはジルコニウムを含む膜とは、ハフニウム酸化膜またはジルコニウム酸化膜であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記クリーニング工程では、反応室内に付着した膜に、プラズマで活性化した塩素原子を含むガスを接触させて反応させることで、ハフニウム塩化物またはジルコニウム塩化物を形成し、これをガス化して排気することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記クリーニング工程では、さらに反応室内に付着した膜と塩素原子を含むガスとの反応を促進させる触媒を反応室内に供給することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記クリーニング工程では、さらにカーボンを含むガスを反応室内に供給することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記クリーニング工程における反応室内壁温度を100〜300℃、サセプタ温度を300〜500℃とすることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記クリーニング工程における反応室内圧力を50〜300Paとすることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記クリーニング工程における反応室内圧力を50〜300Pa、反応室内壁温度を100〜300℃、サセプタ温度を300〜500℃とすることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
基板を処理する反応室と、
反応室内の基板を加熱するヒータと、
反応室内にハフニウムを含む膜またはジルコニウムを含む膜を形成するための処理ガスを供給する処理ガス供給口と、
反応室外部に設けられクリーニングガスとしての塩素原子を含むガスをプラズマにより活性化する活性化手段と、
活性化手段により活性化した塩素原子を含むガスを反応室内に供給するクリーニングガス供給口と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
前記活性化した塩素原子を含むガスを反応室内に供給する際に反応室内に付着した膜と塩素原子を含むガスとの反応を促進させる触媒を反応室内に供給するようにしたことを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−103959(P2007−103959A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314488(P2006−314488)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【分割の表示】特願2002−193242(P2002−193242)の分割
【原出願日】平成14年7月2日(2002.7.2)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】