説明

半導体装置の製造方法及び基板処理装置

【課題】生産性を向上し、空隙率が高いエアギャップを形成することができる半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供することができる。
【解決手段】表面に複数の配線層が形成された基板に対し処理ガスを供給して、前記基板の表面における隣り合う配線層間に形成される溝に対して段差被覆性の悪い条件で絶縁膜を形成する工程と、前記基板に対しエッチングガスを供給して、前記絶縁膜に対して等方性エッチングを行う工程と、を所定回数行うことにより、隣り合う配線層間にエアギャップを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理容器内で基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法及びその工程において好適に用いられる基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一つに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて基板上に所定の薄膜を堆積する成膜工程がある。CVD法とは、ガス状原料の気相及び表面での反応を利用して、原料分子に含まれる元素を構成要素とする薄膜を被処理基板上へ堆積する方法である。
また、近年、エアギャップ配線の開発が活発化している。エアギャップ配線とは、配線間絶縁膜を除去し真空ギャップを形成することにより、低誘電率化を図る技術である。
【0003】
非特許文献1は、このエアギャップを形成する方法を開示するものである。すなわち、非特許文献1では、図9に示すようにシード層12を形成するために、一度、配線層18のパターン全体をシリコン窒化膜(SiN膜)16で埋め込み、その上に二酸化珪素膜(SiO2膜)であるシード層12を形成し(図9(a)参照)、フォトリソグラフィーでマスクを形成し、ドライエッチングを行う(図9(b)参照)。ここで、配線層18の下方にはエッチストップ層(エッチストッパー)20が設けられているため、配線層間はエッチストップ層20上までエッチングされる。次に、TEOS膜(TEOS(テトラエトキシシラン:Si(OC254))を用いて形成したSiO2膜)14を成膜するが、このTEOS膜14が配線層18の上に形成された厚いシード層12の表面上だけに選択成長することを利用して、エアギャップ10を形成する(図9(c)参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Interconnect Technology Conference, 2006 International, page 134−136
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の構成では、マスク形成工程やドライエッチング工程が必要であるため、形成工程が複雑であるという問題があった。また、エアギャップの空隙率が低いと誘電率が上がり、ノイズや寄生容量が増加するといった問題がある。
【0006】
本発明は、生産性を向上し、空隙率が高いエアギャップを形成することができる半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、表面に複数の配線層が形成された基板に対し処理ガスを供給して、前記基板の表面における隣り合う配線層間に形成される溝に対して段差被覆性の悪い条件で絶縁膜を形成する工程と、前記基板に対しエッチングガスを供給して、前記絶縁膜に対して等方性エッチングを行う工程と、を所定回数行うことにより、隣り合う配線層間にエアギャップを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、基板を収容する処理容器と、前記処理容器内で基板を加熱するヒータと、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と、前記処理容器内にエッチングガスを供給するエッチングガス供給系と、前記処理容器内を排気する排気系と、表面に複数の配線層が形成された基板を前記処理容器内に収容した状態で、前記基板に対し処理ガスを供給して、前記基板の表面における隣り合う配線層間に形成される溝に対して段差被覆性の悪い条件で絶縁膜を形成する工程と、前記基板に対しエッチングガスを供給して、前記絶縁膜に対して等方性エッチングを行う工程と、を所定回数行うことにより、隣り合う配線層間にエアギャップを形成するように、前記ヒータ、前記処理ガス供給系、前記エッチングガス供給系および前記排気系を制御する制御部と、を有することを特徴とする基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生産性を向上し、空隙率が高いエアギャップを形成することができる半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態にかかる基板処理装置のウェハ処理時における断面構成図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる基板処理装置のウェハ搬送時における断面構成図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系および排気系の構成図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。
【図5】本発明の実施形態におけるエアギャップ形成工程のガス供給のタイミング図である。
【図6】本発明の実施形態にかかるエアギャップが形成される様子を示している。
【図7】(a)は比較例にかかる条件で形成されたエアギャップを示し、(b)は本実施例にかかる条件で形成されたエアギャップを示している。
【図8】本発明の他の実施形態で好適に用いられる縦型CVD装置の縦型処理炉の概略構成図であり、(a)は処理炉302部分を縦断面で示し、(b)は処理炉302部分を(a)のA−A線断面図で示す。
【図9】従来例に係るエアギャップが形成される様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施形態にかかる基板処理装置の構成について、図1、図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のウェハ処理時における断面構成図であり、図2は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のウェハ搬送時における断面構成図である。
【0012】
<処理室>
図1、図2に示すとおり、本実施形態にかかる基板処理装置は処理容器202を備えている。処理容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、処理容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。処理容器202内には、基板としてのシリコンウェハ等のウェハ200を処理する処理室201が形成されている。
【0013】
<支持台>
処理室201内には、ウェハ200を支持する支持台203が設けられている。ウェハ200が直接触れる支持台203の上面には、例えば、石英(SiO2)、カーボン、セラミックス、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al23)、又は窒化アルミニウム(AlN)などから構成された支持板としてのサセプタ217が設けられている。また、支持台203には、ウェハ200を加熱する加熱手段(加熱源)としてのヒータ206が内蔵されている。なお、支持台203の下端部は、処理容器202の底部を貫通している。
【0014】
<昇降機構>
処理室201の外部には、支持台203を昇降させる昇降機構207bが設けられている。この昇降機構207bを作動させて支持台203を昇降させることにより、サセプタ217上に支持されるウェハ200を昇降させることが可能となっている。支持台203は、ウェハ200の搬送時には図2で示される位置(ウェハ搬送位置)まで下降し、ウェハ200の処理時には図1で示される位置(ウェハ処理位置)まで上昇する。なお、支持台203下端部の周囲は、ベローズ203aにより覆われており、処理室201内は気密に保持されている。
【0015】
<リフトピン>
また、処理室201の底面(床面)には、例えば3本のリフトピン208bが鉛直方向に立ち上がるように設けられている。また、支持台203(サセプタ217も含む)には、かかるリフトピン208bを貫通させる貫通孔208aが、リフトピン208bに対応する位置にそれぞれ設けられている。そして、支持台203をウェハ搬送位置まで下降させた時には、図2に示すように、リフトピン208bの上端部がサセプタ217の上面から突出して、リフトピン208bがウェハ200を下方から支持するようになっている。また、支持台203をウェハ処理位置まで上昇させたときには、図1に示すようにリフトピン208bはサセプタ217の上面から埋没して、サセプタ217がウェハ200を下方から支持するようになっている。なお、リフトピン208bは、ウェハ200と直接触れるため、例えば、石英やアルミナなどの材質で形成することが望ましい。
【0016】
<ウェハ搬送口>
処理室201(処理容器202)の内壁側面には、処理室201の内外にウェハ200を搬送するウェハ搬送口250が設けられている。ウェハ搬送口250にはゲートバルブ251が設けられており、ゲートバルブ251を開くことにより、処理室201内と搬送室(予備室)271内とが連通するようになっている。搬送室271は搬送容器(密閉容器)272内に形成されており、搬送室271内にはウェハ200を搬送する搬送ロボット273が設けられている。搬送ロボット273には、ウェハ200を搬送する際にウェハ200を支持する搬送アーム273aが備えられている。支持台203をウェハ搬送位置まで下降させた状態で、ゲートバルブ251を開くことにより、搬送ロボット273により処理室201内と搬送室271内との間でウェハ200を搬送することが可能となっている。処理室201内に搬送されたウェハ200は、上述したようにリフトピン208b上に一時的に載置される。なお、搬送室271のウェハ搬送口250が設けられた側と反対側には、図示しないロードロック室が設けられており、搬送ロボット273によりロードロック室内と搬送室271内との間でウェハ200を搬送することが可能となっている。なお、ロードロック室は、未処理もしくは処理済のウェハ200を一時的に収容する予備室として機能する。
【0017】
<排気系>
処理室201(処理容器202)の内壁側面であって、ウェハ搬送口250の反対側には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口260が設けられている。排気口260には排気チャンバ260aを介して排気管261が接続されており、排気管261には、処理室201内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器262、原料回収トラップ263、及び真空ポンプ264が順に直列に接続されている。主に、排気口260、排気チャンバ260a、排気管261、圧力調整器262、原料回収トラップ263、真空ポンプ264により排気系(排気ライン)が構成される。
【0018】
<ガス導入口>
処理室201の上部に設けられる後述のシャワーヘッド240の上面(天井壁)には、処理室201内に各種ガスを供給するガス導入口210が設けられている。なお、ガス導入口210に接続されるガス供給系の構成については後述する。
【0019】
<シャワーヘッド>
ガス導入口210と処理室201との間には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド240が設けられている。シャワーヘッド240は、ガス導入口210から導入されるガスを分散させる分散板240aと、分散板240aを通過したガスをさらに均一に分散させて支持台203上のウェハ200の表面に供給するシャワー板240bと、を備えている。分散板240aおよびシャワー板240bには、複数の通気孔が設けられている。分散板240aは、シャワーヘッド240の上面及びシャワー板240bと対向するように配置されており、シャワー板240bは、支持台203上のウェハ200と対向するように配置されている。なお、シャワーヘッド240の上面と分散板240aとの間、および分散板240aとシャワー板240bとの間には、それぞれ空間が設けられており、かかる空間は、ガス導入口210から供給されるガスを分散させる第1バッファ空間(分散室)240c、および分散板240aを通過したガスを拡散させる第2バッファ空間240dとしてそれぞれ機能する。
【0020】
<排気ダクト>
処理室201(処理容器202)の内壁側面には、段差部201aが設けられている。そして、この段差部201aは、コンダクタンスプレート204をウェハ処理位置近傍に保持するように構成されている。コンダクタンスプレート204は、内周部にウェハ200を収容する穴が設けられた1枚のドーナツ状(リング状)をした円板として構成されている。コンダクタンスプレート204の外周部には、所定間隔を開けて周方向に配列された複数の排出口204aが設けられている。排出口204aは、コンダクタンスプレート204の外周部がコンダクタンスプレート204の内周部を支えることができるよう、不連続に形成されている。
【0021】
一方、支持台203の外周部には、ロワープレート205が係止している。ロワープレート205は、リング状の凹部205bと、凹部205bの内側上部に一体的に設けられたフランジ部205aとを備えている。凹部205bは、支持台203の外周部と、処理室201の内壁側面との隙間を塞ぐように設けられている。凹部205bの底部のうち排気口260付近の一部には、凹部205b内から排気口260側へガスを排出(流通)させるプレート排気口205cが設けられている。フランジ部205aは、支持台203の上部外周縁上に係止する係止部として機能する。フランジ部205aが支持台203の上部外周縁上に係止することにより、ロワープレート205が、支持台203の昇降に伴い、支持台203と共に昇降されるようになっている。
【0022】
支持台203がウェハ処理位置まで上昇したとき、ロワープレート205もウェハ処理位置まで上昇する。その結果、ウェハ処理位置近傍に保持されているコンダクタンスプレート204が、ロワープレート205の凹部205bの上面部分を塞ぎ、凹部205bの内部をガス流路領域とする排気ダクト259が形成されることとなる。なお、このとき、排気ダクト259(コンダクタンスプレート204及びロワープレート205)及び支持台203によって、処理室201内が、排気ダクト259よりも上方の処理室上部と、排気ダクト259よりも下方の処理室下部と、に仕切られることとなる。なお、コンダクタンスプレート204およびロワープレート205は、排気ダクト259の内壁に堆積する反応生成物をエッチングする場合(セルフクリーニングする場合)を考慮して、高温保持が可能な材料、例えば、耐高温高負荷用石英で構成することが好ましい。
【0023】
ここで、ウェハ処理時における処理室201内のガスの流れについて説明する。まず、ガス導入口210からシャワーヘッド240の上部へと供給されたガスは、第1バッファ空間(分散室)240cを経て分散板240aの多数の孔から第2バッファ空間240dへと入り、さらにシャワー板240bの多数の孔を通過して処理室201内に供給され、ウェハ200上に均一に供給される。そして、ウェハ200上に供給されたガスは、ウェハ200の径方向外側に向かって放射状に流れる。そして、ウェハ200に接触した後の余剰なガスは、ウェハ200外周部に位置する排気ダクト259上、すなわち、コンダクタンスプレート204上を、ウェハ200の径方向外側に向かって放射状に流れ、コンダクタンスプレート204に設けられた排出口204aから、排気ダクト259内のガス流路領域内(凹部205b内)へと排出される。その後、ガスは排気ダクト259内を流れ、プレート排気口205cを経由して排気口260へと排気される。このようにガスを流すことで、処理室下部、すなわち、支持台203の裏面や処理室201の底面側へのガスの回り込みが抑制される。
【0024】
<ガス供給系>
続いて、上述したガス導入口210に接続されるガス供給系の構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、本発明の実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系および排気系の構成図である。
【0025】
本発明の実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系は、常温で液体状態であるテトラエトキシシラン(TEOS)を含む液体原料を気化する気化部としてのバブラ220aと、バブラ220aにて液体原料を気化させて得た処理ガスとしての原料ガス(TEOSガス)を処理室201内に供給する原料ガス供給系と、処理室201内に処理ガスとしてのオゾンガスを供給するオゾンガス供給系と、処理室201内にエッチングガスである三フッ化塩素(ClF3)ガスを供給するエッチングガス供給系と、処理室201内にパージガスを供給するパージガス供給系と、を有している。さらに、本発明の実施形態にかかる基板処理装置は、バブラ220aからの原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスするよう排気するベント(バイパス)系を有している。以下に、各部の構成について説明する。
【0026】
<バブラ>
処理室201の外部には、液体原料を収容する原料容器としてのバブラ220aが設けられている。バブラ220aは、内部に液体原料を収容(充填)可能なタンク(密閉容器)として構成されており、また、液体原料をバブリングにより気化させて原料ガスを生成させる気化部としても構成されている。なお、バブラ220aの周りには、バブラ220aおよび内部の液体原料を加熱するサブヒータ206aが設けられている。原料としては、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン(Si(OC254))等が用いられる。
【0027】
バブラ220aには、キャリアガス供給管237aが接続されている。キャリアガス供給管237aの上流側端部には、図示しないキャリアガス供給源が接続されている。また、キャリアガス供給管237aの下流側端部は、バブラ220a内に収容した液体原料内に浸されている。キャリアガス供給管237aには、キャリアガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222aと、キャリアガスの供給を制御するバルブva1,va2とが設けられている。なお、キャリアガスとしては、液体原料とは反応しないガスを用いることが好ましく、例えばN2ガスやArガスやHeガス等の不活性ガスが好適に用いられる。主に、キャリアガス供給管237a、MFC222a、バルブva1,va2により、キャリアガス供給系(キャリアガス供給ライン)が構成される。
【0028】
上記構成により、バルブva1,va2を開き、キャリアガス供給管237aからMFC222aで流量制御されたキャリアガスをバブラ220a内に供給することにより、バブラ220a内部に収容された液体原料をバブリングにより気化させて原料ガス(TEOSガス)を生成させることが可能となる。
【0029】
<原料ガス供給系>
バブラ220aには、バブラ220a内で生成された原料ガスを処理室201内に供給する原料ガス供給管213aが接続されている。原料ガス供給管213aの上流側端部は、バブラ220aの上部に存在する空間に連通している。原料ガス供給管213aの下流側端部は、ガス導入口210に接続されている。原料ガス供給管213aには、上流側から順にバルブva5,va3が設けられている。バルブva5は、バブラ220aから原料ガス供給管213a内への原料ガスの供給を制御するバルブであり、バブラ220aの近傍に設けられている。バルブva3は、原料ガス供給管213aから処理室201内への原料ガスの供給を制御するバルブであり、ガス導入口210の近傍に設けられている。バルブva3と後述するバルブve3は高耐久高速ガスバルブとして構成されている。高耐久高速ガスバルブは、短時間で素早くガス供給の切り替えおよびガス排気ができるように構成された集積バルブである。なお、バルブve3は、原料ガス供給管213aのバルブva3とガス導入口210との間の空間を高速にパージしたのち、処理室201内をパージするパージガスの導入を制御するバルブである。
【0030】
上記構成により、バブラ220aにて液体原料を気化させて原料ガスを発生させるとともに、バルブva5,va3を開くことにより、原料ガス供給管213aから処理室201内へ原料ガスを供給することが可能となる。主に、原料ガス供給管213a、バルブva5,va3により原料ガス供給系(原料ガス供給ライン)が構成される。
【0031】
また、主に、キャリアガス供給系、バブラ220a、原料ガス供給系により、原料供給系(原料供給ライン)が構成される。
【0032】
<オゾンガス供給系>
また、処理室201の外部には、オゾンガスを供給するオゾンガス供給源220bが設けられている。オゾンガス供給源220bには、オゾンガス供給管213bの上流側端部が接続されている。オゾンガス供給管213bの下流側端部は、バルブvb3を介してガス導入口210に接続されている。オゾンガス供給管213bには、オゾンガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222bと、オゾンガスの供給を制御するバルブvb1,vb2,vb3が設けられている。主に、オゾンガス供給源220b、オゾンガス供給管213b、MFC222b、バルブvb1,vb2,vb3により、オゾンガス供給系(オゾンガス供給ライン)が構成される。
【0033】
また、主に、原料ガス供給系とオゾンガス供給系により、処理ガス供給系が構成される。
【0034】
<エッチングガス供給系>
また、処理室201の外部には、エッチングガスを供給するエッチングガス供給源220gが設けられている。エッチングガス供給源220gには、エッチングガス供給管213gの上流側端部が接続されている。エッチングガス供給管213gの下流側端部は、バルブvg3を介してガス導入口210に接続されている。エッチングガス供給管213gには、エッチングガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222gと、エッチングガスの供給を制御するバルブvg1,vg2,vg3が設けられている。エッチングガスとしては、例えば、三フッ化塩素(ClF3)ガス等が用いられる。
【0035】
主に、エッチングガス供給源220g、エッチングガス供給管213g、MFC222g、バルブvg1,vg2,vg3により、エッチングガス供給系(エッチングガス供給ライン)が構成される。
【0036】
<パージガス供給系>
また、処理室201の外部には、パージガスを供給するパージガス供給源220c,220eが設けられている。パージガス供給源220c,220eには、パージガス供給管213c,213eの上流側端部がそれぞれ接続されている。パージガス供給管213cの下流側端部は、バルブvc3を介してガス導入口210に接続されている。パージガス供給管213eの下流側端部は、バルブve3を介して原料ガス供給管213aのバルブva3とガス導入口210との間の部分に合流し、ガス導入口210に接続されている。パージガス供給管213c,213eには、パージガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222c,222eと、パージガスの供給を制御するバルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3と、がそれぞれ設けられている。パージガスとしては、例えばN2ガスやArガスやHeガス等の不活性ガスが用いられる。主に、パージガス供給源220c,220e、パージガス供給管213c,213e、MFC222c,222e、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3により、パージガス供給系(パージガス供給ライン)が構成される。
【0037】
<ベント(バイパス)系>
また、原料ガス供給管213aのバルブva3よりも上流側には、ベント管215aの上流側端部が接続されている。また、ベント管215a下流側端部は排気管261の圧力調整器262よりも下流側であって原料回収トラップ263よりも上流側に接続されている。ベント管215aには、ガスの流通を制御するバルブva4が設けられている。
【0038】
上記構成により、バルブva3を閉じ、バルブva4を開くことで、原料ガス供給管213a内を流れるガスを、処理室201内に供給することなく、ベント管215aを介して処理室201をバイパスさせ、排気管261より排気することが可能となる。主に、ベント管215a、バルブva4によりベント系(ベントライン)が構成される。
【0039】
なお、バブラ220aの周りには、サブヒータ206aが設けられることは上述した通りだが、この他、キャリアガス供給管237a、原料ガス供給管213a、パージガス供給管213e、ベント管215a、排気管261、処理容器202、シャワーヘッド240等の周囲にもサブヒータ206aが設けられている。サブヒータ206aは、これらの部材を例えば100℃以下の温度に加熱することで、これらの部材内部での原料ガスの再液化を防止するように構成されている。
【0040】
<制御部>
本実施形態にかかる基板処理装置は、基板処理装置の各部の動作を制御する制御部としてのコントローラ280を有している。コントローラ280は、ゲートバルブ251、昇降機構207b、搬送ロボット273、ヒータ206、サブヒータ206a、圧力調整器(APC)262、真空ポンプ264、バルブva1〜va5,vb1〜vb3,vc1〜vc3,ve1〜ve3,vg1〜vg3,マスフローコントローラ222a,222b,222c,222e,222g等の動作を制御する。
【0041】
(2)基板処理工程
続いて、半導体装置の製造工程の一工程として、上述の基板処理装置を用いて処理容器202内で、表面に複数の例えばCuからなる配線層18が形成されたウェハ200上に絶縁膜であるSiO2膜12を形成し、ウェハ200上の隣り合う配線層18間にエアギャップ10を形成する基板処理工程について、図4、図5及び図6を参照しながら説明する。図4は、本発明の実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。図5は、本発明の実施形態におけるエアギャップ形成工程のガス供給のタイミング図である。図6は、本発明の実施形態にかかるエアギャップ10が形成される様子を示す図である。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ280により制御される。
【0042】
なお、ここでは、ウェハ200を収容した処理室201内にCVD反応が生じる条件下で、処理ガスとしての原料ガス(TEOSガス)とO3ガスとを供給し排気して、段差被覆性の悪い条件でウェハ200上に絶縁膜である酸化珪素膜(CVD−SiO2膜)を形成する工程(図6(a)参照)と、処理室201内にエッチングガスとしてのClF3ガスを供給し排気して、CVD−SiO2膜を等方性エッチングする工程(図6(b)参照)と、エッチングされたCVD−SiO2膜の表面にさらにCVD−SiO2膜を段差被覆性の悪い条件で形成する工程(図6(c)参照)とにより、エアギャップ10を形成する例について説明する。
【0043】
<基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)>
まず、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図2に示すウェハ搬送位置まで下降させる。そして、ゲートバルブ251を開き、処理室201と搬送室271とを連通させる。そして、搬送ロボット273により、搬送室271内から処理室201内へ、処理対象のウェハ200を搬送アーム273aで支持した状態で搬入する(S1)。処理室201内に搬入したウェハ200は、支持台203の上面から突出しているリフトピン208b上に一時的に載置される。搬送ロボット273の搬送アーム273aが処理室201内から搬送室271内へ戻ると、ゲートバルブ251が閉じられる。
【0044】
続いて、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図1に示すウェハ処理位置まで上昇させる。その結果、リフトピン208bは支持台203の上面から埋没し、ウェハ200は、支持台203上面のサセプタ217上に載置される(S2)。
【0045】
<圧力調整工程(S3)、温度調整工程(S4)>
続いて、圧力調整器(APC)262により、処理室201内の圧力が所定の処理圧力となるように制御する(S3)。また、ヒータ206に供給する電力を調整し、ウェハ200の表面温度が所定の処理温度となるように制御する(S4)。なお、温度調整工程(S4)は、圧力調整工程(S3)と並行して行うようにしてもよいし、圧力調整工程(S3)よりも先行して行うようにしてもよい。ここで、所定の処理温度、処理圧力とは、後述するCVD−SiO2膜形成工程(S5a)において、CVD法によりCVD−SiO2膜を形成可能な処理温度、処理圧力である。すなわち、CVD−SiO2膜形成工程(S5a)で用いる原料が自己分解する程度の処理温度、処理圧力である。なお、ここでいう所定の処理温度、処理圧力は、後述する等方性エッチング工程(S5c)において、ウェハ200上に形成されたCVD−SiO2膜に対して等方性エッチング処理がなされ得る処理温度、処理圧力でもある。
【0046】
なお、基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)、圧力調整工程(S3)、及び温度調整工程(S4)においては、真空ポンプ264を作動させつつ、バルブva3,vb3,vg3を閉じ、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3を開くことで、処理室201内にN2ガスを常に流しておく。これにより、ウェハ200上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。
【0047】
工程S1〜S4と並行して、原料(TEOS)を気化させて原料ガス(TEOSガス)を生成(予備気化)させておく。すなわち、バルブva1,va2,va5を開き、キャリアガス供給管237aからMFC222aで流量制御されたキャリアガスをバブラ220a内に供給することにより、バブラ220a内部に収容された原料をバブリングにより気化させて原料ガスを生成させておく(予備気化工程)。この予備気化工程では、真空ポンプ264を作動させつつ、バルブva3を閉じたまま、バルブva4を開くことにより、原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。バブラにて原料ガスを安定して生成させるには所定の時間を要する。このため、本実施形態では、原料ガスを予め生成させておき、バルブva3,va4の開閉を切り替えることにより、原料ガスの流路を切り替える。その結果、バルブの切り替えにより、処理室201内への原料ガスの安定した供給を迅速に開始あるいは停止できるようになり、好ましい。
【0048】
<エアギャップ形成工程(S5)>
〔CVD−SiO2膜形成工程(S5a)〕
S4に続いて、真空ポンプ264を作動させたまま、バルブva4を閉じ、バルブva3を開いて、処理室201内への処理ガスである原料ガス(TEOSガス)の供給を開始する。原料ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給される。余剰な原料ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。また、同時に、真空ポンプ264を作動させたまま、バルブvb1,vb2,vb3を開いて、処理室201内への処理ガスであるO3ガスの供給を開始する。なお、O3ガスの供給は、原料ガスの供給よりも先行して開始するようにしてもよい。O3ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給される。余剰なO3ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。なお、O3ガスは、シャワーヘッド240内にて原料ガスと混合されることとなる。すなわち、シャワーヘッド240からはO3ガスと原料ガスとの混合ガスが供給され、この混合ガスがウェハ200に対して均一に供給されることとなる。
【0049】
このとき、処理温度(ウェハ温度)、処理圧力(処理室内圧力)は、原料ガスが自己分解する程度の処理温度、処理圧力とされるので、処理室201内或いはウェハ200表面において、原料ガスとO3ガスとの気相反応が生じる。その結果、表面に複数の配線層18が形成されたウェハ200上には、CVD反応が生じることで絶縁膜である酸化珪素膜としてのCVD−SiO2膜12aが形成される(図6(a))。そしてこのとき、図6(a)に示されているように、ウェハ200表面の膜厚aが溝22の側面下方の膜厚bの2倍程度、すなわち、ステップカバレッジ(段差被覆性)b/a=50%程度となる条件、すなわち、ステップカバレッジの悪い条件で成膜する。なお、ステップカバレッジの悪い条件とは、b/aが100%未満、例えば80%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下となるような条件のことである。本実施形態では、b/aが50%程度となるような条件としている。
【0050】
このように、CVD−SiO2膜形成工程(S5a)では、ウェハ200を収容した処理室201内にCVD反応が生じる条件下で、原料ガスとO3ガスとを供給し排気して、ステップカバレッジの悪い条件で、ウェハ200上にCVD−SiO2膜12aを形成する。
【0051】
処理室201内への原料ガスとO3ガスとの供給時には、処理室201内における原料ガス及びO3ガスの拡散を促すように、バルブve1,ve2,ve3,vc1,vc2,vc3は開いたままとし、処理室201内にN2ガスを常に流しておくことが好ましい。
【0052】
処理室201内への原料ガスとO3ガスとの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブva3を閉じ、バルブva4を開いて、処理室201内への原料ガスの供給を停止すると共に、バルブvb1,vb2,vb3を閉じ、処理室201内へのO3ガスの供給を停止する。なお、O3ガスの供給は、原料ガスの供給を停止した後に、停止するようにしてもよい。
【0053】
〔パージ工程(S5b)〕
バルブva3,vb1,vb2,vb3を閉じ、原料ガス及びO3ガスの供給を停止した後は、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3が開いた状態を維持し、処理室201内へのN2ガスの供給を継続する。N2ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。これにより、処理室201内に残留している原料ガス、O3ガス、反応副生成物等を除去し、処理室201内をN2ガスによりパージする。
【0054】
〔等方性エッチング工程(S5c)〕
処理室201内をパージしたら、真空ポンプ264を作動させたまま、バルブvg1,vg2,vg3を開いて、処理室201内へのエッチングガスの供給を開始する。上述したように、本実施形態ではエッチングガスとしてClF3ガスを用いる。エッチングガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給される。余剰なエッチングガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。このとき、ウェハ200上に供給されたエッチングガスにより、ウェハ200上に形成されているCVD−SiO2膜12aを等方性のエッチングで、少なくとも溝22の底面に形成されたデポ膜厚分エッチングする。すなわち、少なくとも溝22の底面が露出されるまでエッチングを行う(図6(b))。なお、事前に溝22の底面上に窒化珪素(SiN)、炭窒化珪素(SiCN)等から形成されたエッチストッパー(不図示)を設けておけば、オーバーエッチングを行うことも可能である。このように、等方性エッチング工程(S5c)において、少なくとも溝22の底面が露出されるまでエッチングを行うことで、最終的にエアギャップが形成される際に溝22の底面がCVD−SiO2膜で埋まらないようにすることができる。
【0055】
なお、等方性エッチングとは、縦方向にも横方向にもどの方向にも同じ量だけエッチングするエッチングをいう。すなわち、等方性エッチング工程(S5c)では、CVD−SiO2膜12aの表面から同じ膜厚分だけ表面全体にわたり均等にエッチングが行われることとなる。
【0056】
処理室201内へのエッチングガスの供給時には、原料ガス供給管213a内へのエッチングガスの侵入を防止するように、また、処理室201内におけるエッチングガスの拡散を促すように、バルブve1,ve2,ve3,vc1,vc2,vc3は開いたままとし、処理室201内にN2ガスを常に流しておくことが好ましい。
【0057】
処理室201内へのエッチングガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブvg1,vg2,vg3を閉じ、処理室201内へのエッチングガスの供給を停止する。
【0058】
〔パージ工程(S5d)〕
バルブvg1,vg2,vg3を閉じ、エッチングガスの供給を停止した後は、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3が開いた状態を維持し、処理室201内へのN2ガスの供給を継続する。N2ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。これにより、処理室201内に残留しているエッチングガスや反応副生成物等を除去し、処理室201内をN2ガスによりパージする。
【0059】
〔所定回数実施工程(S5e)〕
以上のCVD−SiO2膜形成工程(S5a)、パージ工程(S5b)、等方性エッチング工程(S5c)、パージ工程(S5d)を1サイクルとして、このサイクルを所定回数、例えば1回行う。このサイクルが所定回数実施された場合には、次のCVD−SiO2膜形成工程(S5f)へ進み、所定回数実施されていない場合にはCVD−SiO2膜形成工程(S5a)に戻る。なお、図6は、このサイクルを1回行う例を示している。
【0060】
〔CVD−SiO2膜形成工程(S5f)〕
上述のサイクルが所定回数実施された後、真空ポンプ264を作動させたまま、バルブva4を閉じ、バルブva3を開いて、再び、処理室201内への処理ガスである原料ガス(TEOSガス)の供給を開始する。また、同時に、真空ポンプ264を作動させたまま、バルブvb1,vb2,vb3を開いて、処理室201内への処理ガスであるO3ガスの供給を開始する。すなわち、シャワーヘッド240からO3ガスと原料ガス(TEOSガス)との混合ガスが供給され、この混合ガスがウェハ200に対して均一に供給される。
【0061】
このとき、処理温度(ウェハ温度)、処理圧力(処理室内圧力)は、原料ガスが自己分解する程度の処理温度、処理圧力とされるので、処理室201内或いはウェハ200表面において、原料ガスとO3ガスとの気相反応が生じる。そしてこのとき、ステップカバレッジ(段差被覆性)b/a=50%程度となる条件、すなわち、ステップカバレッジの悪い条件で再度成膜する。その結果、エッチングされたCVD−SiO2膜12a上に、絶縁膜である酸化珪素膜としてのCVD−SiO2膜12bが溝22の上部を塞ぐようにして成膜され、エアギャップ10が形成される(図6(c))。
【0062】
このように、CVD−SiO2膜形成工程(S5f)では、ウェハ200を収容した処理室201内にCVD反応が生じる条件下で、再度、原料ガスとO3ガスとを供給し排気して、その際、ステップカバレッジの悪い条件とすることで、エッチングされたCVD−SiO2膜12a上に溝22の上部を塞ぐようにしてCVD−SiO2膜12bが成膜されてエアギャップ10が形成される。
すなわち、上述のサイクルを所定回数行い、最後にCVD−SiO2膜形成工程(S5f)を行うことで、ウェハ200上に所定膜厚のSiO2膜が形成され、ウェハ200上の隣り合う配線層間にエアギャップ10が形成される。
【0063】
〔残留ガス除去工程(S6)〕
エアギャップ10が形成された後、処理室201内の真空引きを行い、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3が開いた状態を維持し、処理室201内へのN2ガスの供給を継続する。N2ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。これにより、処理室201内に残留しているガスや反応副生成物を除去し、処理室201内をN2ガスによりパージする。
【0064】
<基板搬出工程(S7)>
その後、上述した基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)に示した手順とは逆の手順により、エアギャップ10が形成された後のウェハ200を、処理室201内から搬送室271内へ搬出し、本実施形態にかかる基板処理工程を完了する。
【0065】
このように、配線層18間の溝22への段差被覆性の悪い条件での絶縁膜の成膜と、この絶縁膜に対する等方性エッチングとを繰り返すことにより、配線層18間に空隙率の高いエアギャップ10が形成され、配線層間の容量を低減することができる。なお、上述のサイクルは、1〜5回実施するのが好ましい。サイクルの実施回数が多いほど空隙率は高くなるが、回数が多すぎても生産性が悪くなるからである。
【0066】
なお、本実施形態のエアギャップ形成工程(S5)におけるCVD−SiO2膜形成工程(S5a)でのウェハ200の処理条件としては、
処理温度(ウェハ温度):250〜400℃、
処理圧力(処理室内圧力):13.3〜1333Pa(0.1〜10Torr)、
バブリング用キャリアガス供給流量:10〜2000sccm、
オゾンガス(O3ガス)供給流量:500〜5000sccm、
1サイクル毎の原料ガス及びオゾンガス供給時間:60〜900秒(1〜15分)
が例示される。
【0067】
また、本実施形態のエアギャップ形成工程(S5)における等方性エッチング工程(S5c)でのウェハ200の処理条件としては、
処理温度(ウェハ温度):250〜400℃、
処理圧力(処理室内圧力):13.3〜1333Pa(0.1〜10Torr)、
エッチングガス(ClF3ガス)供給流量:50〜500sccm、
1サイクル毎のClF3ガス供給時間:60〜900秒(1〜15分)
が例示される。
【0068】
また、本実施形態のエアギャップ形成工程(S5)におけるパージ工程(S5b、S5d)での処理条件としては、
処理温度(ウェハ温度):250〜400℃、
処理圧力(処理室内圧力):13.3〜1333Pa(0.1〜10Torr)、
パージガス(N2ガス)供給流量:1000〜3000sccm、
1サイクル毎のパージ時間:1〜600秒
が例示される。
【0069】
なお、本実施形態においては、CVD−SiO2膜形成工程(S5a)と、パージ工程(S5b)と、等方性エッチング工程(S5c)と、パージ工程(S5d)とでウェハ200の温度を同様な温度帯に保持するようにヒータ206の温度を設定する。すなわち、エアギャップ形成工程(S5)では、ウェハ200の温度を一定の温度帯に保持する。
【0070】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0071】
本実施形態によれば、成膜と等方性エッチングとが同じ処理室201で、また、同様な処理条件にて行われるので生産性が向上する。
【0072】
また、本実施形態によれば、エアギャップの空隙率を高くすることができ、これにより、誘電率を下げることができ、ノイズや寄生容量を低減させることができる。また、遅延時間の発生を防止できる。また、配線間の容量を低減することができる。
【0073】
<比較例>
図7(a)に、比較例に係る段差被覆性の悪い条件での成膜だけで形成されたエアギャップの模式図が示されている。段差被覆性の悪い条件での成膜とは、例えばプラズマCVDによる供給律速条件での成膜である。また、図7(b)に、本実施形態に係る上述の段差被覆性の悪い条件での成膜と等方性エッチングとを繰り返すことにより形成されたエアギャップの模式図が示されている。
図7(b)に示されているように、本実施形態に係る手法により形成されたエアギャップ10は、配線層18間にオーバハング状態の絶縁膜12が成膜されて形成され、図7(a)に示されている比較例に係る条件で形成されたエアギャップ10と比較してもエアギャップの空隙率が高いことが分かる。
【0074】
<本発明の更に他の実施形態>
上述の実施形態では、基板処理装置(成膜装置)として1度に1枚の基板を処理する枚葉式のCVD装置を用いて処理する例について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、基板処理装置として1度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型CVD装置を用いて処理するようにしてもよい。以下、この縦型CVD装置について説明する。
【0075】
図8は、本実施形態で好適に用いられる縦型CVD装置の縦型処理炉の概略構成図であり、(a)は、処理炉302部分を縦断面で示し、(b)は、処理炉302部分を図8(a)のA−A線断面図で示す。
【0076】
図8(a)に示されるように、処理炉302は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ307を有する。ヒータ307は円筒形状であり、保持板としてのヒータベースに支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0077】
ヒータ307の内側には、ヒータ307と同心円状に反応管としてのプロセスチューブ303が配設されている。プロセスチューブ303は、例えば石英(SiO2)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。プロセスチューブ303の筒中空部には処理室301が形成されており、基板としてのウェハ200を、後述するボート317によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0078】
プロセスチューブ303の下方には、プロセスチューブ303と同心円状にマニホールド309が配設されている。マニホールド309は、例えばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド309は、プロセスチューブ303に係合しており、プロセスチューブ303を支持するように設けられている。なお、マニホールド309とプロセスチューブ303との間には、シール部材としてのOリング320aが設けられている。マニホールド309がヒータベースに支持されることにより、プロセスチューブ303は垂直に据え付けられた状態となっている。プロセスチューブ303とマニホールド309とにより反応容器が形成される。
【0079】
マニホールド309には、第1ガス導入部としての第1ノズル333aと、第2ガス導入部としての第2ノズル333bとが、マニホールド309の側壁を貫通するように接続されている。第1ノズル333aと第2ノズル333bは、それぞれ水平部と垂直部とを有するL字形状であり、水平部がマニホールド309に接続され、垂直部がプロセスチューブ303の内壁とウェハ200との間における円弧状の空間に、プロセスチューブ303の下部より上部の内壁に沿って、ウェハ200の積載方向に向かって立ち上がるように設けられている。第1ノズル333a、第2ノズル333bの垂直部の側面には、ガスを供給する供給孔である第1ガス供給孔348a、第2ガス供給孔348bがそれぞれ設けられている。この第1ガス供給孔348a、第2ガス供給孔348bは、それぞれ下部から上部にわたって同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0080】
第1ノズル333a、第2ノズル333bに接続されるガス供給系は、上述の実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、第1ノズル333aに原料ガス供給系が接続され、第2ノズル333bにオゾンガス供給系及びエッチングガス供給系が接続される点が、上述の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、原料ガスと、オゾンガス及びエッチングガスとを、別々のノズルにより供給する。なお、原料ガスとオゾンガス及びエッチングガスとは同一のノズルにより供給するようにしてもよい。
【0081】
マニホールド309には、処理室301内の雰囲気を排気する排気管331が設けられている。排気管331には、圧力検出器としての圧力センサ345及び圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ342を介して、真空排気装置としての真空ポンプ346が接続されており、圧力センサ345により検出された圧力情報に基づきAPCバルブ342を調整することで、処理室301内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。なお、APCバルブ342は弁を開閉して処理室301内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調整して処理室301内の圧力を調整することができるよう構成されている開閉弁である。
【0082】
マニホールド309の下方には、マニホールド309の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ319が設けられている。シールキャップ319は、マニホールド309の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ319は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ319の上面には、マニホールド309の下端と当接するシール部材としてのOリング320bが設けられている。シールキャップ319の処理室301と反対側には、後述するボート317を回転させる回転機構367が設置されている。回転機構367の回転軸355は、シールキャップ319を貫通して、ボート317に接続されており、ボート317を回転させることでウェハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ319は、プロセスチューブ303の外部に配置された昇降機構としてのボートエレベータ315によって、垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート317を処理室301内に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0083】
基板保持具としてのボート317は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなり、複数枚のウェハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。なお、ボート317の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなる断熱部材318が設けられており、ヒータ307からの熱がシールキャップ319側に伝わりにくくなるように構成されている。プロセスチューブ303内には、温度検出器としての温度センサ363が設置されており、温度センサ363により検出された温度情報に基づきヒータ307への通電具合を調整することにより、処理室301内の温度が所定の温度分布となるように構成されている。温度センサ363は、第1ノズル333a及び第2ノズル333bと同様に、プロセスチューブ303の内壁に沿って設けられている。
【0084】
制御部(制御手段)であるコントローラ380は、APCバルブ342、ヒータ307、温度センサ363、真空ポンプ346、回転機構367、ボートエレベータ315、バルブva1〜va5,vb1〜vb3,vc1〜vc3,ve1〜ve3,vg1〜vg3,マスフローコントローラ222a,222b,222c,222e,222g等の動作を制御する。
【0085】
次に、上記構成にかかる縦型CVD装置の処理炉302を用いて、半導体装置の製造工程の一工程として、表面に複数の配線層(例えばCu層)が形成されたウェハ200上に絶縁膜であるSiO2膜を形成し、ウェハ200上の隣り合う配線層間にエアギャップを形成する基板処理工程について説明する。なお、以下の説明において、縦型CVD装置を構成する各部の動作は、コントローラ380により制御される。
【0086】
複数枚のウェハ200をボート317に装填(ウェハチャージ)する。そして、図8(a)に示すように、複数枚のウェハ200を保持したボート317を、ボートエレベータ315によって持ち上げて処理室301内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ319はOリング320bを介してマニホールド309の下端をシールした状態となる。
【0087】
処理室301内が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ346によって処理室301内を真空排気する。この際、処理室301内の圧力を圧力センサ345で測定して、この測定された圧力に基づき、APCバルブ342をフィードバック制御する。また、処理室301内が所望の温度となるように、ヒータ307によって加熱する。この際、処理室301内が所望の温度分布となるように、温度センサ363が検出した温度情報に基づきヒータ307への通電具合をフィードバック制御する。続いて、回転機構367により、ウェハ200の回転を開始させる。
【0088】
その後、上述の実施形態におけるエアギャップ形成工程(S5)と同様な手順で、ウェハ200上に所定膜厚のCVD−SiO2膜を形成し、ウェハ200上の隣り合う配線層間にエアギャップを形成する。すなわち、ウェハ200を収容した処理室301内にCVD反応が生じる条件下で、処理ガスとしての原料ガス(TEOSガス)と、処理ガスとしてのO3ガスとを供給し排気して、段差被覆性の悪い条件でウェハ200上に絶縁膜である酸化珪素膜(CVD−SiO2膜)を形成する工程(S5a)と、処理室301内に残留している原料ガス、オゾンガス、反応副生成物等を除去するパージ工程(S5b)と、処理室301内にエッチングガスとしてのClF3ガスを供給し排気して、CVD−SiO2膜を等方性エッチングする工程(S5c)と、処理室301内に残留している反応副生成物等を除去するパージ工程(S5d)と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行い(S5e)、エッチングされたCVD−SiO2膜の表面にさらにCVD−SiO2膜を形成する工程(S5f)を行うことにより、ウェハ200上に所定膜厚のCVD−SiO2膜を形成し、ウェハ200上の隣り合う配線層間に、エアギャップを形成する。エアギャップが形成された後、上述の実施形態における残留ガス除去工程(S6)と同様な手順で残留ガス除去工程を行う。
【0089】
その後、ボートエレベータ315によりシールキャップ319を下降させて、マニホールド309の下端を開口させるとともに、エアギャップが形成された後のウェハ200を、ボート317に保持させた状態でマニホールド309の下端からプロセスチューブ303の外部に搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済のウェハ200をボート317より取り出す(ウェハディスチャージ)。
【0090】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0091】
本発明の一態様によれば、表面に複数の配線層が形成された基板に対し処理ガスを供給して、前記基板の表面における隣り合う配線層間に形成される溝に対して段差被覆性の悪い条件で絶縁膜を形成する工程と、前記基板に対しエッチングガスを供給して、前記絶縁膜に対して等方性エッチングを行う工程と、を所定回数行うことにより、隣り合う配線層間にエアギャップを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0092】
好ましくは、前記等方性エッチングを行う工程では、少なくとも前記溝の底面を露出させる。
【0093】
好ましくは、前記等方性エッチングを行う工程では、前記溝の底面が露出するまで前記絶縁膜に対する等方性エッチングを継続する。
【0094】
好ましくは、前記等方性エッチングを行う工程では、前記溝の底面上に形成された絶縁膜が除去されるまで前記絶縁膜に対する等方性エッチングを継続する。
【0095】
また好ましくは、前記絶縁膜を形成する工程と、前記等方性エッチングを行う工程と、を同一処理容器内で所定回数行う。
【0096】
本発明の他の態様によれば、基板を収容する処理容器と、前記処理容器内で基板を加熱するヒータと、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と、前記処理容器内にエッチングガスを供給するエッチングガス供給系と、前記処理容器内を排気する排気系と、表面に複数の配線層が形成された基板を前記処理容器内に収容した状態で、前記基板に対し処理ガスを供給して、前記基板の表面における隣り合う配線層間に形成される溝に対して段差被覆性の悪い条件で絶縁膜を形成する工程と、前記基板に対しエッチングガスを供給して、前記絶縁膜に対して等方性エッチングを行う工程と、を所定回数行うことにより、隣り合う配線層間にエアギャップを形成するように、前記ヒータ、前記処理ガス供給系、前記エッチングガス供給系および前記排気系を制御する制御部と、を有することを特徴とする基板処理装置が提供される。
【0097】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0098】
10 エアギャップ
12 SiO2
18 配線層
22 溝
200 ウェハ(基板)
201 処理室
202 処理容器
203 支持台
206 ヒータ
213a 原料ガス供給管
213b オゾンガス供給管
213c パージガス供給管
213e パージガス供給管
213g エッチングガス供給管
237a キャリアガス供給管
220a バブラ
261 排気管
280 コントローラ(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の配線層が形成された基板に対し処理ガスを供給して、前記基板の表面における隣り合う配線層間に形成される溝に対して段差被覆性の悪い条件で絶縁膜を形成する工程と、
前記基板に対しエッチングガスを供給して、前記絶縁膜に対して等方性エッチングを行う工程と、
を所定回数行うことにより、隣り合う配線層間にエアギャップを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記等方性エッチングを行う工程では、少なくとも前記溝の底面を露出させることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内で基板を加熱するヒータと、
前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と、
前記処理容器内にエッチングガスを供給するエッチングガス供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
表面に複数の配線層が形成された基板を前記処理容器内に収容した状態で、前記基板に対し処理ガスを供給して、前記基板の表面における隣り合う配線層間に形成される溝に対して段差被覆性の悪い条件で絶縁膜を形成する工程と、前記基板に対しエッチングガスを供給して、前記絶縁膜に対して等方性エッチングを行う工程と、を所定回数行うことにより、隣り合う配線層間にエアギャップを形成するように、前記ヒータ、前記処理ガス供給系、前記エッチングガス供給系および前記排気系を制御する制御部と、
を有することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−64836(P2012−64836A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208932(P2010−208932)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】