説明

半導体装置の製造方法

【課題】キャップ材料を使用した半導体装置のウェハ面内における閾値電圧Vtのバラツキを抑制することを目的とする。
【解決手段】まず、半導体基板1001の上に、高誘電率ゲート絶縁膜1006及び第1のキャップ膜1008を順に形成する。次に、熱処理を行って、第1のキャップ膜1008中の第1の金属を高誘電体膜1006に拡散させる。その後、高誘電体膜1006に拡散せずに高誘電体膜1006の上に残存した第1のキャップ膜1008を除去して、第1の金属が拡散した高誘電率ゲート絶縁膜1006Aの上に金属電極1010を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置に関して、低消費電力化と動作の高速化とが要求されている。半導体装置の高速化を実現するためには、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)のゲート容量を増加させることにより駆動電流を増加させるという方法が採用されている。MISFETのゲート容量を増加させるためには、ゲート絶縁膜を薄膜化して電極間の距離(基板とゲート電極との間の距離)を短くする必要がある。この要求に応えるために、現在、MISFETのゲート絶縁膜の物理膜厚は、ゲート絶縁膜としてSiON(シリコン酸窒化物)膜を用いた場合には、2nm程度にまで薄膜化されている。しかし、ゲート絶縁膜の薄膜化に伴い、ゲートリーク電流の増大が大きな問題となってきている。ゲート絶縁膜を薄膜化しつつゲートリーク電流を抑えるためには、ゲート絶縁膜として、シリコン酸化物(SiO)系の材料に代えて、Hfを含む酸化物等の誘電率の高い材料(高誘電体材料)を使用することが検討されている。
【0003】
また、多結晶シリコンからなるゲート電極では、ゲート絶縁膜の薄膜化に伴い、ゲート電極が空乏化してゲート容量が低下するという問題も生じている。ゲート電極の空乏化によるゲート容量の低下量を例えばシリコン酸化物(SiO)からなるゲート絶縁膜の膜厚に換算すると、その低下量はゲート絶縁膜の膜厚を約0.5nm分増加させることに相当する。ゲート電極の空乏化を抑えることができれば、ゲートリーク電流を増大させることなくゲート絶縁膜の実効的な膜厚を薄くすることができる。ゲート絶縁膜がSiO膜の場合、ゲート絶縁膜の膜厚を0.1nm薄くすると、ゲート絶縁膜を薄膜化する前と比べて10倍以上ゲートリーク電流が増大する。このため、ゲート電極の空乏化を抑制することにより実効的なゲート絶縁膜の膜厚を薄くすることの効果は非常に大きい。
【0004】
ゲート電極の空乏化を回避するため、ゲート電極の材料を多結晶シリコンから空乏化の生じない金属に置き換える検討が行われている。ゲート電極の材料として多結晶シリコンを用いた場合、不純物の注入により不純物準位を形成することが可能であり、よって、p−MISFET用ゲート電極とn−MISFET用ゲート電極とを作り分けることができる。一方、ゲート電極の材料として金属を用いた場合、不純物の注入によりp−MISFET用ゲート電極とn−MISFET用ゲート電極とを作り分けることができない。このため、p側領域のWF(work function)値とn側領域のWF値とのほぼ中央に相当するWF値を有する金属をp−MISFET用ゲート電極及びn−MISFET用ゲート電極の共通の材料として用いることにより、p−MISFETとn−MISFETとが互いに同じ閾値電圧Vtを持つように設計している。
【0005】
近年では、半導体装置には、より高速な動作が要求されるため、低閾値電圧化が不可欠である。よって、p−MISFET用ゲート電極及びn−MISFET用ゲート電極の各々がシリコンのバンドエッジに近い仕事関数(WF)値を有するということが必要となってきている。なお、ここでいうバンドエッジとは、p側領域はシリコンの価電子帯の上部(トップエッジ)の仕事関数値(約5.2eV)に近い高WFを意味し、n側領域はシリコンの伝導帯の底部(ボトムエッジ)の仕事関数値(約4.1eV)に近い低WFを意味している。このため、p側領域のWF値とn側領域のWF値とのほぼ中央に相当するWF値を有する金属をp−MISFET用ゲート電極及びn−MISFET用ゲート電極の共通の材料とした半導体装置は実用的でなくなってきている。
【0006】
現在、p−MISFET及びn−MISFETの各ゲート電極の材料として使用できる金属材料の探索が盛んに行われている。しかし、常温で適切なWFを示す材料であっても、ソースドレインの活性化等の高温処理を経るとWFが変動するということが明らかになってきている。最近では、高誘電体膜とゲート電極との間に有効仕事関数(eWF(effective eork function))を制御するためのキャップ材料を堆積し、ゲート絶縁膜中及び高誘電体膜と金属との界面にダイポールを形成することによりeWFを制御する検討が行われている(例えば、非特許文献1を参照。)。酸化ランタン(以下では「LaO」と記す場合がある。)にはeWFを低減させる効果が知られており、酸化ランタンはn−MISFETのゲート電極を形成するためのキャップ材料として期待されている。(例えば、非特許文献2を参照。)。また、酸化アルミニウム(以下では「AlO」と記す場合がある)にはeWFを増加させる効果が知られており、酸化アルミニウムはp−MISFETのゲート電極を形成するためのキャップ材料として期待されている。特許文献1に開示しているように、現在は、LaOとAlOとの両方を使用したCMOS(complementary metal-oxide semiconductor)の開発が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−194352号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】S. Kubicek et al, "IEDM Tech Dig.", 2007年, p.49
【非特許文献2】P.D.Kirsch, "IEDM", 2006年, p.629
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、キャップ材料として膜厚がサブナノオーダーである極薄膜を用いると、eWFはシリコンバンドギャップの半分(約500meV)シフトする。このようにキャップ膜(キャップ材料からなる膜)はその膜厚に対するeWFのシフト量が非常に大きいため、キャップ膜の膜厚のバラツキに起因したトランジスタの閾値電圧Vtのバラツキが非常に大きいという課題が生じる。また、キャップ材料に因るeWFのシフト量は、キャップ膜の膜厚以外に、母体となるゲート絶縁膜の膜厚、高誘電率ゲート絶縁膜の材料の組成(たとえばHfSiO膜中のHf組成)、後工程でのアニール条件および電極金属の膜質によっても大きく変動する。これにより、閾値電圧Vtのバラツキが増大することとなる。キャップ材料に因るeWFシフト効果がキャップ膜の膜厚以外によって変動する要因は、キャップ材料に因るeWFシフト発生メカニズムに起因する。(P.Sivasubramani et al VLSI2007)
LaO又はAlO等のキャップ材料は、高誘電率ゲート絶縁膜(たとえばHfSiO)中を拡散して下地膜として使用しているSiOとの界面(高誘電率ゲート絶縁膜と下地膜との界面)にダイポールを形成することによって、eWFのシフトを発生させる。高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚又はHf組成が変化すると、高誘電率ゲート絶縁膜と下地膜との界面まで拡散するキャップ材料の量が変化し、よって、eWFのシフト量が変動する。また、このキャップ材料の拡散は後工程アニール処理で促進される為、アニール温度の面内分布の影響も大きくうける。
【0010】
以上の理由から、キャップ材料を使用した半導体装置のウエハ面内における閾値電圧Vtのバラツキは非常に大きく、実用化への大きな妨げとなっている。
【0011】
本発明は、前記の問題を解決し、キャップ材料を使用した半導体装置のウエハ面内における閾値電圧Vtのバラツキを抑制し、精度と歩留まりの高い半導体装置を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の半導体装置の第1の製造方法は、ゲート絶縁膜を半導体基板の上に形成する工程(a)と、第1の金属を含む第1のキャップ膜をゲート絶縁膜の上に形成する工程(b)と、熱処理により、第1の金属をゲート絶縁膜に拡散させる工程(c)と、工程(c)の後に、ゲート絶縁膜に拡散せずにゲート絶縁膜の上に残存した第1のキャップ膜を除去する工程(d)と、第1の金属が拡散したゲート絶縁膜の上に金属電極を形成する工程(e)とを備えている。
【0013】
本発明に係る半導体装置の第1の製造方法では、ゲート絶縁膜中に拡散せずに残存した第1のキャップ膜を除去するため、ゲート絶縁膜中に存在するキャップ材料(第1の金属)の量を熱処理で制御することができる。よって、キャップ膜の膜厚バラツキに因る影響を実質上回避できる。キャップ膜の膜厚をサブナノオーダーで制御する場合に比べて熱処理温度を制御する方が比較的容易であり、よって、より高精度であり、且つ、閾値電圧Vtのバラツキが低い半導体装置の形成が可能となる。このとき、キャップ膜の膜厚を大きくし、且つ、熱処理温度を低く設定すれば、ゲート絶縁膜中に存在するキャップ材料の量は拡散律速となる。よって、キャップ膜の膜厚バラツキに因る閾値電圧Vtのバラツキの影響をさらに低減できる。
【0014】
本発明の半導体装置の第1の製造方法では、ゲート絶縁膜は、ハフニウム、シリコン及び酸素を含んでいることが好ましく、第1の金属は、ハフニウムであることが好ましい。
【0015】
本発明の半導体装置の第1の製造方法では、第1の元素は、ランタン、ジスプロシウム、スカンジウム又はマグネシウムであれば良い。
【0016】
本発明の半導体装置の第1の製造方法では、熱処理後におけるゲート絶縁膜中の第1の金属は5atomic%以上30atomic%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の半導体装置の第1の製造方法では、工程(c)では、半導体基板における、ゲート絶縁膜の膜厚の面内分布、ゲート絶縁膜中の含有元素の組成比の面内分布、第1のキャップ膜の膜厚の面内分布、第1のキャップ膜中の含有元素の組成比の面内分布、金属電極の膜厚の面内分布及び金属電極中の含有元素の組成比の面内分布のうちの少なくとも一つの面内分布に応じて、半導体基板における熱処理温度の分布を変更すれば良い。これにより、第1の金属をゲート絶縁膜中へ均一に拡散させることができる。例えば、工程(c)では、半導体基板の周縁部におけるアニール温度を、半導体基板の周縁部以外の部分におけるアニール温度よりも高くすれば良い。
【0018】
本発明の半導体装置の第2の製造方法は、第1導電型の第1のトランジスタと第2導電型の第2のトランジスタとを備えた半導体装置の製造方法である。具体的には、ゲート絶縁膜を半導体基板の上に形成する工程(a)と、ゲート絶縁膜を挟んで電極膜を第2の活性領域の上に形成する工程(b)と、第1の金属を含む第1のキャップ膜を半導体基板の上面全体に形成する工程(c)と、熱処理により、第1の金属をゲート絶縁膜のうち第1の活性領域の上に形成された部分に拡散させる工程(d)と、ゲート絶縁膜に拡散せずにゲート絶縁膜の上に残存した第1のキャップ膜を除去する工程(e)と、金属電極膜及びポリシリコン膜を半導体基板の上面全体に形成する工程(f)と、ゲート絶縁膜、金属電極膜及びポリシリコン膜をエッチングして、第1の活性領域の上には、第1の金属を含む第1のゲート絶縁膜と、金属電極膜及びポリシリコン膜を有する第1のゲート電極とが順に形成され、第2の活性領域の上には、第2のゲート絶縁膜と、金属電極膜及びポリシリコン膜を有する第2のゲート電極とが順に形成される工程(g)とを備えている。
【0019】
本発明に係る半導体装置の第2の製造方法では、キャップ膜の膜厚バラツキに因る影響を実質上回避できるので、キャップ膜の膜厚バラツキに因る閾値電圧Vtのバラツキの影響を低減できる。
【0020】
本発明の半導体装置の第2の製造方法では、工程(d)では、第1の金属は、電極膜にも拡散する一方、ゲート絶縁膜のうち第2の活性領域の上に形成された部分に拡散しないことが好ましい。また、工程(e)では、電極膜も除去することが好ましい。これにより、第1の金属が第2のゲート絶縁膜に拡散することを防止できる。
【0021】
本発明の半導体装置の第2の製造方法では、工程(d)では、半導体基板における、ゲート絶縁膜の膜厚の面内分布、ゲート絶縁膜中の含有元素の組成比の面内分布、第1のキャップ膜の膜厚の面内分布、第1のキャップ膜中の含有元素の組成比の面内分布、金属電極の膜厚の面内分布及び金属電極中の含有元素の組成比の面内分布のうちの少なくとも一つの面内分布に応じて、半導体基板における熱処理温度の分布を変更すれば良い。これにより、第1の金属をゲート絶縁膜中へ均一に拡散させることができる。例えば、工程(d)では、半導体基板の周縁部におけるアニール温度を、半導体基板の周縁部以外の部分におけるアニール温度よりも高くすれば良い。
【0022】
本発明の半導体装置の第1及び第2の製造方法では、熱処理によりキャップ材料をゲート絶縁膜と下地膜との界面まで拡散させれば、不純物を活性化させる際のアニール等においてその界面においてキャップ材料が不均一に存在することを防止できる。
【0023】
高誘電率ゲート絶縁膜としては、HfSiO膜、HFSiON膜又はHfO膜などを用いることが好ましいが、Zr若しくはTa等の酸化膜又は酸窒化膜を使っても良い。
【0024】
n型MISFET用のキャップ材料としては、LaOなどのランタノイド系元素の酸化物を用いることが好ましいが、MgOなどを使用してもよい。また、p型MISFET用のキャップ材料としては、AlOを用いることが好ましいが、TaOなどを使用してもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法によれば、キャップ材料を使用しても、閾値電圧Vtのバラツキが少なく、精度及び歩留まりの高い半導体装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図3】(a)及び(b)は、閾値電圧Vtのウエハの面内分布の改善を説明するためのグラフ図である。
【図4】(a)〜(e)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図5】(a)〜(d)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されない。また、以下では、同一部材に対して同一の符号を付す場合がある。
【0028】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1(a)〜図2(c)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。図3(a)及び図3(b)は、閾値電圧Vtのウエハの面内分布の改善を説明するためのグラフ図である。
【0029】
まず、図1(a)に示すように、素子分離領域1002により分離されたp型活性領域1003をSi基板等の半導体基板1001に形成する。この後、半導体基板1001の上面全体に、厚さが1nm程度のSiOからなる下地膜1005を形成する。下地膜1005は、酸素ガスを用いた急速熱酸化(RTO(Rapid Thermal Oxidation))等により形成しても良いし、酸素ガス以外のガス種を用いたRTOにより形成しても良いし、加熱炉を用いた熱酸化により形成しても良い。また、下地膜1005は、酸窒化シリコン(SiON)膜であっても良いし、ケミカルオキサイド膜であっても良い。
【0030】
次に、下地膜1005の上に高誘電率ゲート絶縁膜1006を堆積する(工程(a))。ここでは、高誘電率ゲート絶縁膜1006は、Hf/(Hf+Si)組成が60%程度のHfSiO膜を使用しても良いし、HfO膜を使用しても良い。また、高誘電率ゲート絶縁膜1006におけるHf/(Hf+Si)組成は、60%に限定されない。高誘電率ゲート絶縁膜1006の膜厚は、例えば1.7nmであれば良いが、半導体装置の用途又は半導体装置に要求される能力によって変更してもよい。高誘電率ゲート絶縁膜1006は、ZrなどのHf以外の元素を用いた高誘電率膜(例えばZr酸化膜、Zr酸窒化膜、Ta酸化膜又はTa酸窒化膜)を用いても良い。
【0031】
次に、プラズマを用いてHfSiO膜をチッ化処理したあと、焼き締めの為、窒素雰囲気中で1000℃でアニールする。この場合、チッ化処理は膜中に4atomic%程度の窒素が入る処理であれば良いが、半導体装置の目的又はその用途に応じて窒素濃度を変更しても良い。また、チッ化処理は、電極を堆積する直前に行っても良い。焼き締めの為のアニール温度を800〜1100℃の範囲に変更しても良いし、アニールの処理雰囲気を窒素雰囲気から変更しても良い。
【0032】
次に、図1(b)に示すように、高誘電率ゲート絶縁膜1006の上にLaO膜(第1のキャップ膜)1008を堆積する(工程(b))。LaO膜1008はPVD法(physical vapor deposition)を用いて堆積しても良く、ALD法(atomic layer deposition)又はCVD法(chemical vapor deposition)を用いて堆積しても良い。また、LaO膜1008の膜厚は、例えば2nmであれば良いが、半導体装置の目的又は用途等に合わせて変更しても良い。
【0033】
次に、図1(c)に示すように、アニール処理をして、LaO膜1008中のLa(第1の金属)を高誘電率ゲート絶縁膜1006中に拡散させる(工程(c))。これにより、Laが拡散された高誘電率ゲート絶縁膜(以下では、「第1の高誘電率ゲート絶縁膜」と記す。)1006Aが下地膜1005上に形成される。
【0034】
このアニール処理では、Laを下地膜1005と高誘電率ゲート絶縁膜1006との界面まで拡散させることが好ましい。これにより、後工程における熱処理工程(ソースドレイン領域等中の不純物を活性させる工程)において、下地膜1005と高誘電率ゲート絶縁膜1006との界面におけるLaの量が不均一になることを防止できる。例えば、アニール温度は700℃であれば良い。
【0035】
また、このアニール処理では、半導体基板1001の周縁部をアニールするためのヒーター温度を半導体基板1001の中央部をアニールするためのヒーター温度よりも高温、具体的には5〜10℃高温にする。これにより、半導体基板1001の周縁部におけるLaの拡散が促進され、半導体基板1001の周縁部においてLaO膜1008が薄膜化していることに起因するLaの拡散低下を補うことができる。半導体基板1001の周縁部でHfSiOのHf組成が高くなっている場合であっても、半導体基板1001において電極(後述の第1の電極膜1010)の組成に面内分布がある場合であっても、半導体基板1001において電極(後述の第1の電極膜1010)中の酸素濃度に面内分布がある場合であっても、この手法を用いてeWFを均一化させることができる。
【0036】
詳細には、半導体基板において高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚又は高誘電率ゲート絶縁膜の組成に面内分布があると、キャップ材料が高誘電率ゲート絶縁膜中で均一に拡散し難いという不具合を引き起こし、よって、図3(a)に示すように閾値電圧Vtが半導体基板の周縁部において高くなる場合がある(閾値電圧Vtのバラツキ)。しかし、本実施形態のように半導体基板の周縁部のアニール温度を半導体基板の中央部のアニール温度よりも高くすると、高誘電率ゲート絶縁膜中の酸素濃度が半導体基板の周縁部でのみ高くなるため、キャップ材料を高誘電率ゲート絶縁膜中で均一に拡散させることができ、よって、図3(b)に示すように閾値電圧Vtのバラツキを防止することができる。
【0037】
続いて、図1(d)に示すように、図1(c)に示すアニール処理において高誘電率ゲート絶縁膜1006中に拡散しなかった余剰のLaO膜1008を除去する(工程(d))。余剰のLaO膜1008を除去する方法としては、どのような方法であっても良いが、例えば塩酸(濃度は例えば37質量%であることが好ましい)を1000倍に希釈した希塩酸(dilute HCl)により10秒間洗浄を行えばよい。塩酸の希釈倍率及び希塩酸による洗浄時間は、それぞれ、余剰のLaO膜1008の膜厚又は図1(c)に示すアニール処理における熱処理時間等に応じて適宜変更すれば良い。
【0038】
余剰のLaO膜1008を除去した後に第1の高誘電率ゲート絶縁膜1006A中に存在しているLa量は、5atomic%以上30atomic%以下であれば良く、LaO膜の膜厚に換算して0.6nm程度であれば良い。このLa量(第1の高誘電率ゲート絶縁膜1006A中に存在するLa量)は、LaO膜1008の膜厚と図1(c)に示すアニール温度とによって、制御可能である。LaO膜1008の膜厚を厚くし、且つ、図1(c)に示すアニール温度を低温化すると、La量は拡散律速により近くなる。そのため、Laの拡散はLaO膜1008の膜厚分布の影響を受け難く、よって、Laが比較的均一に拡散した分布を実現することが可能となる。
【0039】
次に、図2(a)に示すように例えばTiNからなる第1の電極膜(金属電極,金属電極膜)1010を第1の高誘電率ゲート絶縁膜1006A上に形成した後(工程(e))、図2(b)に示すように例えばポリシリコンからなる第2の電極膜1012を第1の電極膜1010上に形成する。続いて、第2の電極膜1012中に不純物を注入する。このとき、第2の電極膜1012中に不純物を注入する代わりに、不純物がドープされたポリシリコン膜を堆積してもよい。
【0040】
第1の電極膜1010の材料は、キャップ材料との組み合わせにより適切なeWFが得られれば良く、例えば窒化タンタル(TaN)等であっても良い。また、第2の電極膜1012は、上述のようにメタル挿入ポリシリコン積層構造(MIPS:Metal-inserted Poly-silicon Stack)であっても良いし、フルメタルゲート電極(第2の電極膜1012の材料は金属)であっても良い。また、第2の電極膜1012を設けなくても良い。
【0041】
次に、図2(c)に示すように、リソグラフィー法及び反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法を用いて、下地膜1005、第1の高誘電率ゲート絶縁膜1006A、第1の電極膜1010及び第2の電極膜1012を選択的にエッチングする。これにより、p型活性領域1003上には、下地膜1005及び第1の高誘電率ゲート絶縁膜1006Aからなるゲート絶縁膜と、第1の電極膜1010及び第2の電極膜1012からなるゲート電極とが順に形成される。
【0042】
次に、p型活性領域1003におけるゲート電極の側方下にn型不純物を注入してn型エクステンション領域1013を形成し、ゲート電極の側面上にサイドウォール1014を形成し、p型活性領域1003におけるサイドウォール1014の外側方下にn型不純物を注入してn型ソースドレイン領域1015を形成し、n型エクステンション領域1013及びn型ソースドレイン領域1015の各領域に注入されたn型不純物を活性化させる。
【0043】
このとき、図1(c)に示すアニール処理においてLaが下地膜1005と高誘電率ゲート絶縁膜1006との界面まで拡散していれば、n型エクステンション領域1013等に注入されたn型不純物を活性化させるときにLaが更に拡散することを防止できる。よって、半導体装置の閾値電圧Vtが変動することを防止できる。また、過剰のLaが界面酸化膜に達することに因るトランジスタの信頼性低下を防止できる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、キャップ膜の膜厚の均一化又はキャップ膜以外の膜の成膜状態の影響等を回避して半導体装置の閾値電圧Vtを均一化させ安定化させることが可能である。よって、製造された半導体装置では、閾値電圧Vtの均一化且つ安定化を図ることができる。
【0045】
本実施形態では、n型不純物を活性化させてから、第2の電極膜1012の上面及びn型ソースドレイン領域1015の上面をシリサイド化させても良い。
【0046】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図4(a)〜図5(d)は本実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図であり、図6は本実施形態に係る半導体装置の断面図である。なお、図4(a)〜図6では、図1(a)〜図2(c)に示す部材と同一の部材には、同一の符号を付している。
【0047】
図6に示すように、本実施形態の半導体装置は、n−MISFETとp−MISFETとを備えた相補型MIS(CMIS,Complementary Metal Insulator Semiconductor)である。
【0048】
Si基板等の半導体基板1001には、STI(Shallow Trench Isolation)からなる素子分離領域1002により互いに分離されたp型活性領域1003とn型活性領域1004とが形成されている。
【0049】
p型活性領域1003の上には、SiO等からなる下地膜1005及び第1の高誘電率ゲート絶縁膜1006Aを有する第1のゲート絶縁膜と、第1のゲート電極(後述)とが順次形成されている。第1のゲート電極の側面上には、サイドウォール1014が形成されている。
【0050】
p型活性領域1003における第1のゲート電極の側方下には、n型エクステンション領域1013Aが形成され、n型エクステンション領域1013Aの外側方にはn型ソースドレイン領域1015Aが形成されている。
【0051】
n型活性領域1004の上には、SiO等からなる下地膜1005、第2の高誘電率ゲート絶縁膜1006B及びAlO膜(p型MISFET用キャップ膜)1011を有する第2のゲート絶縁膜と、第2のゲート電極(後述)とが順次形成されている。第2のゲート電極の側面上には、サイドウォール1014が形成されている。
【0052】
n型活性領域1004における第2のゲート電極の側方下には、p型エクステンション領域1013Bが形成され、p型エクステンション領域1013Bの外側方にはp型ソースドレイン領域1015Bが形成されている。
【0053】
第1のゲート電極は、TiN等からなる第1の電極膜1010と、第1の電極膜1010の上に形成されたポリシリコン等からなる第2の電極膜1012とを有している。第2のゲート電極は、TiN等からなる中間電極膜(電極膜)1007と、中間電極膜1007の上に形成されたTiNからなる第1の電極膜1010と、第1の電極膜1010の上に形成されたポリシリコン膜である第2の電極膜1012とを有している。このように第1のゲート電極は中間電極膜1007を有していないが第2のゲート電極は中間電極膜1007を有しているため、第2のゲート電極の厚みは第1のゲート電極の厚みよりも大きい。
【0054】
第1の高誘電率ゲート絶縁膜1006Aと第2の高誘電率ゲート絶縁膜1006Bとは、HfSiO又はHfSiON等を含む酸化ハフニウム(HfO)系の高誘電体膜である。第1の高誘電率ゲート絶縁膜1006AはLa(n型MISFET用のキャップ材料,第1の金属)を含んでいるが、第2の高誘電率ゲート絶縁膜1006BはLaを含んでいない又は極微量のLaを含んでいるに過ぎない。
【0055】
以下に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。
【0056】
まず、図4(a)に示すように、Si基板等の半導体基板1001に素子分離領域1002により分離されたp型活性領域1003及びn型活性領域1004を形成する。この後、半導体基板1001上の全面に厚さが1nm程度のSiOからなる下地膜1005を形成する。下地膜1005は、酸素ガスを用いたRTO等により形成しても良いし、酸素ガス以外のガス種を用いたRTOにより形成しても良いし、加熱炉を用いた熱酸化により形成しても良い。また、下地膜1005は、SiON膜であっても良いし、ケミカルオキサイド膜等であっても良い。
【0057】
次に、下地膜1005の上に高誘電率ゲート絶縁膜1006を堆積する(工程(a))。ここでは、高誘電率ゲート絶縁膜1006は、Hf/(Hf+Si)組成が60%程度のHfSiO膜を使用しても良いし、HfO膜を使用しても良い。また、高誘電率ゲート絶縁膜1006におけるHf/(Hf+Si)組成は、60%に限定されない。高誘電率ゲート絶縁膜1006の膜厚は、例えば1.7nmであれば良いが、半導体装置の用途又は半導体装置に要求される能力によって変更してもよい。高誘電率ゲート絶縁膜1006は、Hf以外の元素を含む高誘電率膜であっても良く、例えばZr酸化膜、Zr酸窒化膜、Ta酸化膜又はTa酸窒化膜であっても良い。
【0058】
次に、プラズマを用いてHfSiO膜をチッ化処理したあと、焼き締めの為、窒素雰囲気中で1000℃でアニールする。この場合、チッ化は膜中に4atomic%程度の窒素が入る処理であれば良いが、半導体装置の目的又はその用途に応じて窒素濃度を変更しても良い。また、チッ化処理は、電極を堆積する直前に行っても良い。焼き締めの為のアニール温度を800〜1100℃の範囲に変更しても良いし、アニールの処理雰囲気を窒素雰囲気から変更しても良い。
【0059】
次に、高誘電率ゲート絶縁膜1006の上に、p型MISFET用キャップ膜となるAlO膜1011を堆積する。AlO膜1011の膜厚は、例えば0.7nmであればよく、半導体装置に求められる性能等に応じて変更可能である。
【0060】
次に、AlO膜1011の上に、膜厚が5nm程度のTiN膜からなる中間電極膜(電極膜)1007を形成する(工程(b))。
【0061】
次に、図4(b)に示すように、n型活性領域1004の上を覆うレジスト膜1009を形成する。この後、図4(c)に示すように、レジスト膜1009をマスクとして、中間電極膜1007及びAlO膜1011のそれぞれにおけるp型活性領域1003の上に形成された部分を除去する。
【0062】
次に、図4(d)に示すように、シンナー洗浄によりレジスト膜1009を除去した後、半導体基板1001上の全面にLaO膜1008を堆積する(工程(c))。LaO膜はPVD法を用いて堆積しても良いし、ALD法又はCVD法を用いて堆積しても良い。この場合LaO膜1008の膜厚は、例えば2nmであれば良いが、半導体装置の用途等に合わせて変更しても良い。
【0063】
次に、図4(e)に示すように、アニール処理をして、LaO膜1008中のLaを高誘電率ゲート絶縁膜1006中に拡散させる(工程(d))。これにより、Laが拡散された高誘電率ゲート絶縁膜(第1の高誘電率ゲート絶縁膜)1006Aが下地膜1005上に形成される。
【0064】
このアニール処理では、Laを下地膜1005と高誘電率ゲート絶縁膜1006との界面まで拡散させることが好ましい。これにより、後工程における熱処理工程(ソースドレイン領域等中の不純物を活性させる工程)において、下地膜1005と高誘電率ゲート絶縁膜1006との界面におけるLaの量が不均一になることを防止できる。例えば、アニール温度は700℃であれば良い。
【0065】
また、このアニール処理では、半導体基板1001の周縁部をアニールするためのヒーター温度を半導体基板1001の中央部をアニールするためのヒーター温度よりも高温、具体的には5〜10℃高温にする。これにより、半導体基板1001の周縁部におけるLaの拡散が促進され、半導体基板1001の周縁部においてLaO膜1008が薄膜化していることに起因するLaの拡散低下を補うことができる。半導体基板1001の周縁部でHfSiOのHf組成が高くなっている場合、電極の組成が変動している場合、又は、電極中の酸素濃度が変化している場合であっても、この手法を用いてeWFを均一化させることができる。詳細は、上記第1の実施形態で説明した通りである。
【0066】
続いて、図5(a)に示すように、図4(e)に示すアニール処理において高誘電率ゲート絶縁膜1006中に拡散しなかった余剰のLaO膜1008を除去する(工程(e))。余剰のLaO膜1008を除去する方法としては、どのような方法であっても良いが、例えば塩酸(濃度は例えば37質量%であることが好ましい)を1000倍に希釈した希塩酸により10秒間洗浄を行えばよい。塩酸の希釈倍率及び希塩酸による洗浄時間は、それぞれ、余剰のLaO膜1008の膜厚又は図4(e)に示すアニール処理における熱処理時間等に応じて適宜変更すれば良い。
【0067】
余剰のLaO膜1008を除去した後に第1の高誘電率ゲート絶縁膜1006A中に存在しているLa量は、5atomic%以上30atomic%以下であれば良く、LaO膜の膜厚に換算して0.6nm程度であれば良い。このLa量(第1の高誘電率ゲート絶縁膜1006A中に存在するLa量)は、LaO膜1008の膜厚と図4(e)に示すアニール温度とによって、制御可能である。LaO膜1008の膜厚を厚くし、且つ、図4(e)に示すアニール温度を低温化すると、La量は拡散律速により近くなる。そのため、Laの拡散はLaO膜1008の膜厚分布の影響を受け難く、よって、Laが比較的均一に拡散した分布を実現することが可能となる。
【0068】
一方、n型活性領域1004の上においては、LaO膜1008中のLaは、図4(e)に示すアニールにより、中間電極膜1007の上部にのみ拡散し、高誘電率ゲート絶縁膜1006及びAlO膜1011には殆ど拡散しない。よって、n型活性領域1004の上には、Laが拡散していない、又は、極微量のLaが拡散しているに過ぎない高誘電率ゲート絶縁膜(第2の高誘電率ゲート絶縁膜)1006Bが形成される。図4(e)に示すアニール処理の温度及び時間は、必要とするeWFの値、高誘電率ゲート絶縁膜1006の組成及び膜厚、又は、AlO膜1011の組成及び膜厚等により、適宜変更すればよい。
【0069】
このようにn型活性領域1004の上では、LaO膜1008中のLaは中間電極膜1007の上部に拡散する。そのため、図5(b)に示すように、中間電極膜1007の上部を除去することが好ましい。中間電極膜1007の上部を除去する方法としては、高誘電率ゲート絶縁膜1006を劣化させることなくキャップ材料が拡散した領域を除去できればどんな方法を用いて行ってもよい。中間電極膜1007がTiN膜であり、第1のキャップ膜1008がLaO膜である場合には、過酸化水素水(H22)を用いて中間電極膜1007の上部を除去しても良いし、硫酸−過酸化水素水(SPM,Sulfuric acid Hydrogen Peroxide Mixture)又はアンモニア−過酸化水素水(APM, ammonium hydroxide -hydrogen peroxide-mixture)等を用いて中間電極膜1007の上部を除去しても良い。
【0070】
次に、図5(c)に示すように、半導体基板1001上の全面にTiNからなる第1の電極膜1010及びポリシリコンからなる第2の電極膜1012を順次堆積する(工程(f))。続いて、第2の電極膜1012に不純物を注入する。なお、第2の電極膜1012に不純物を注入する代わりに、不純物をドープしたポリシリコン膜を堆積してもよい。
【0071】
次に、図5(d)に示すように、リソグラフィー法及び反応性イオンエッチング(RIE)法を用いて、p型活性領域1003においては下地膜1005、第1の高誘電率ゲート絶縁膜1006A、第1の電極膜1010及び第2の電極膜1012を選択的にエッチングし、n型活性領域1004においては下地膜1005、第2の高誘電率ゲート絶縁膜1006B、AlO膜1011、中間電極膜1007、第1の電極膜1010及び第2の電極膜1012を選択的にエッチングする。これにより、p型活性領域1003の上には、下地膜1005及び第1の高誘電率ゲート絶縁膜1006Aを有する第1のゲート絶縁膜と、TiNからなる第1の電極膜1010及びポリシリコンからなる第2の電極膜1012を有する第1のゲート電極とが形成される。また、n型活性領域1004の上には、下地膜1005、第2の高誘電率ゲート絶縁膜1006B及びAlO膜1011を有する第2のゲート絶縁膜と、TiNからなる中間電極膜1007、TiNからなる第1の電極膜1010及びポリシリコンからなる第2の電極膜1012を有する第2のゲート電極が形成される(工程(g))。
【0072】
次に、p型活性領域1003における第1のゲート電極の側方下にn型不純物を注入してn型エクステンション領域1013Aを形成し、n型活性領域1004における第2のゲート電極の側方下にp型不純物を注入してp型エクステンション領域1013Bを形成する。その後、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の各側面上にサイドウォール1014(図6を参照)を形成する。その後、p型活性領域1003におけるサイドウォール1014の外側方下にn型不純物を注入してn型ソースドレイン領域1015Aを形成し、n型活性領域1004におけるサイドウォール1014の外側方下にp型不純物を注入してp型ソースドレイン領域1015Bを形成する。その後、n型エクステンション領域1013A及びn型ソースドレイン領域1015Aの各領域に注入されたn型不純物を活性化させ、p型エクステンション領域1013B及びp型ソースドレイン領域1015Bの各領域に注入されたp型不純物を活性化させる。これにより、図6に示すように、p型活性領域1003にはn−MISFETが形成され、n型活性領域1004にはp−MISFETが形成される。
【0073】
このとき、図4(e)に示すアニール処理においてLaが下地膜1005と高誘電率ゲート絶縁膜1006との界面まで拡散していれば、n型エクステンション領域1013等に注入されたn型不純物を活性化させるときにLaが更に拡散することを防止できる。よって、半導体装置の閾値電圧Vtが変動することを防止できる。また、過剰のLaが界面酸化膜に達することに因るトランジスタの信頼性低下を防止できる。
【0074】
本実施形態においては、第1のゲート電極及び第2のゲート電極をTiN膜とポリシリコン膜との積層膜としている。この場合、ポリシリコン膜の少なくとも一部をシリサイド化してもよい。これにより、第1のゲート電極及び第2のゲート電極を低抵抗化することができる。また、第2の電極膜1012はポリシリコン膜に代えて他の金属膜を用いてもよく、第2の電極膜1012を設けなくても良い。
【0075】
第1の電極膜1010及び中間電極膜1007は、TiN膜に限られないが、Ti又はTaを含む金属膜とすることが好ましく、TaN膜、TaC膜又はTaCN膜等であっても良いし、キャップ材料と組み合わせた際に適切なeWFが得られる材料であれば他の金属材料(Ti及びTa以外の金属)を有する膜であっても良い。
【0076】
第1の電極膜1010及び中間電極膜1007の各膜厚は、材質及び製造プロセスに応じて適宜変更してかまわない。但し、第1の電極膜1010と中間電極膜1007とを共にTiN膜とする場合、p−MISFETにおいて適切なeWFの値を得るためには第1の電極膜1010と中間電極膜1007との膜厚の和を15nm以上とすることが好ましい。
【0077】
また、p−MISFETの第2の高誘電率ゲート絶縁膜1006Bに、Al等のeWFを上昇させる効果を有するキャップ材料を拡散させても良い。
【0078】
本実施形態においては、キャップ材料の拡散を行った後、中間電極膜1007の一部を残すことにより、第2のゲート電極が第1の電極膜1010と中間電極膜1007との積層膜を有する構成としている。しかし、キャップ材料の拡散を行った後、中間電極膜1007を完全に除去してもよい。この場合には、n−MISFETとp−MISFETとでゲート電極の高さが揃うため、その後のプロセスが容易になるという利点がある。また、n型活性領域1004において中間電極膜1007を残存させた場合には、中間電極膜1007と第1の電極膜1010との界面に薄い絶縁膜が形成され、その結果、ゲート抵抗が上昇する場合がある。しかし、n型活性領域1004において中間電極膜1007を完全に除去した場合には、ゲート抵抗の上昇が生じることを防止できる。
【0079】
第1及び第2の実施形態において、n型MISFET用キャップ膜としてLaO膜を用いる例を示したが、このキャップ膜は、電極のeWFを低下させる効果のある絶縁膜であればよく、酸化ジスプロシウム(DyO)等のランタノイド系元素の酸化物を用いても良いし、酸化スカンジウム(ScO)又は酸化マグネシウム(MgO)等を用いても良い。
【0080】
第2の実施形態において、p型MISFET用キャップ膜としてAlO膜を用いる例を示したが、このキャップ膜はTaO膜等であっても良い。
【0081】
高誘電率ゲート絶縁膜は、ALD法を用いて形成しても良いし、有機金属気相堆積(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法又は物理気相堆積(PVD:Physical Vapor Deposition)法等を用いて形成してもよい。MOCVD法の場合には、成膜温度及びガス流量比を変えることにより、Hf組成が高い膜とHf組成が低い膜とを容易に形成することができる。また、第1及び第2の実施形態ではプラズマ窒化を行ってHfSiO膜をHfSiON膜とする例を示したが、プラズマ窒化に代えてアンモニア雰囲気におけるアニールを用いてもよい。また、ゲート絶縁膜の誘電率及びゲート絶縁膜のEOT(シリコン酸化膜と静電容量的に等価な厚さ)によっては、HfSiO膜の窒化処理を省略しても良い。
【0082】
高誘電率ゲート絶縁膜としてHf系の膜を用いる例を示したが、Hfに代えてアルミニウム又はジルコン等を含む膜を用いてもよい。この場合にも高誘電率ゲート絶縁膜の組成を変更すればキャップ材料の拡散性を制御することができる。
【0083】
第1及び第2の実施形態では、半導体基板において高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚又は組成に面内分布がある場合について説明している。しかし、半導体基板において、LaO膜の膜厚に面内分布がある場合、LaO膜中の含有元素の組成比に面内分布がある場合、第1の電極膜の膜厚に面内分布がある場合、又は、第1の電極膜中の含有元素の組成比に面内分布がある場合にも、半導体装置の閾値電圧Vtのバラツキを引き起こす場合がある。そのため、これらの場合であっても、Laを拡散させる際の熱処理温度の分布を変更することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法によれば、高誘電率ゲート絶縁膜と金属電極とを有する高性能CMOSデバイスを高精度かつ高歩留まりで実現できる。
【符号の説明】
【0085】
1001 半導体基板
1002 素子分離領域
1003 p型活性領域
1004 n型活性領域
1005 下地膜
1006 高誘電率ゲート絶縁膜
1006A 第1の高誘電率ゲート絶縁膜
1006B 第2の高誘電率ゲート絶縁膜
1007 中間電極膜(電極膜)
1008 LaO膜(第1のキャップ膜)
1010 第1の電極膜(金属電極,金属電極膜)
1011 AlO膜
1012 第2の電極膜
1013 n型エクステンション領域
1013A n型エクステンション領域
1013B p型エクステンション領域
1014 サイドウォール
1015 n型ソースドレイン領域
1015A n型ソースドレイン領域
1015B p型ソースドレイン領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート絶縁膜を半導体基板の上に形成する工程(a)と、
第1の金属を含む第1のキャップ膜を前記ゲート絶縁膜の上に形成する工程(b)と、
熱処理により、前記第1の金属を前記ゲート絶縁膜に拡散させる工程(c)と、
前記工程(c)の後に、前記ゲート絶縁膜に拡散せずに前記ゲート絶縁膜の上に残存した第1のキャップ膜を除去する工程(d)と、
前記第1の金属が拡散したゲート絶縁膜の上に、金属電極を形成する工程(e)とを備えている半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ゲート絶縁膜は、ハフニウム、シリコン及び酸素を含んでおり、
前記第1の金属は、ランタンであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の元素は、ランタン、ジスプロシウム、スカンジウム又はマグネシウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
熱処理後における前記ゲート絶縁膜中の前記第1の金属は、5atomic%以上30atomic%以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記工程(c)では、前記半導体基板における、前記ゲート絶縁膜の膜厚の面内分布、前記ゲート絶縁膜中の含有元素の組成比の面内分布、前記第1のキャップ膜の膜厚の面内分布、前記第1のキャップ膜中の含有元素の組成比の面内分布、前記金属電極の膜厚の面内分布及び前記金属電極中の含有元素の組成比の面内分布のうちの少なくとも一つの面内分布に応じて、前記半導体基板における熱処理温度の分布を変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程(c)では、前記半導体基板の周縁部におけるアニール温度を、前記半導体基板の前記周縁部以外の部分におけるアニール温度よりも高くすることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
半導体基板における第1の活性領域上に設けられた第1導電型の第1のトランジスタと、素子分離領域により前記第1の活性領域とは分離された前記半導体基板における第2の活性領域上に設けられた第2導電型の第2のトランジスタとを備えた半導体装置の製造方法であって、
ゲート絶縁膜を前記半導体基板の上に形成する工程(a)と、
前記ゲート絶縁膜を挟んで電極膜を前記第2の活性領域の上に形成する工程(b)と、
第1の金属を含む第1のキャップ膜を前記半導体基板の上面全体に形成する工程(c)と、
熱処理により、前記第1の金属を前記ゲート絶縁膜のうち前記第1の活性領域の上に形成された部分に拡散させる工程(d)と、
前記ゲート絶縁膜に拡散せずに前記ゲート絶縁膜の上に残存した第1のキャップ膜を除去する工程(e)と、
金属電極膜及びポリシリコン膜を前記半導体基板の上面全体に形成する工程(f)と、
前記ゲート絶縁膜、前記金属電極膜及び前記ポリシリコン膜をエッチングして、前記第1の活性領域の上には、前記第1の金属を含む第1のゲート絶縁膜と、前記金属電極膜及び前記ポリシリコン膜を有する第1のゲート電極とが順に形成され、前記第2の活性領域の上には、第2のゲート絶縁膜と、前記金属電極膜及び前記ポリシリコン膜を有する第2のゲート電極とが順に形成される工程(g)とを備えている半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記工程(d)では、前記第1の金属は、前記電極膜にも拡散する一方、前記ゲート絶縁膜のうち前記第2の活性領域の上に形成された部分に拡散せず、
前記工程(e)では、前記電極膜も除去する請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記工程(d)では、前記半導体基板における、前記ゲート絶縁膜の膜厚の面内分布、前記ゲート絶縁膜中の含有元素の組成比の面内分布、前記第1のキャップ膜の膜厚の面内分布、前記第1のキャップ膜中の含有元素の組成比の面内分布、前記金属電極の膜厚の面内分布及び前記金属電極中の含有元素の組成比の面内分布のうちの少なくとも一つの面内分布に応じて、前記半導体基板における熱処理温度の分布を変更することを特徴とする請求項7又は8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記工程(d)では、前記半導体基板の周縁部におけるアニール温度を、前記半導体基板の前記周縁部以外の部分におけるアニール温度よりも高くする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−238655(P2011−238655A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106459(P2010−106459)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】