説明

半導体装置の製造方法

【課題】薄膜中への不純物の取り込みを抑制し、膜質を向上させる。
【解決手段】基板を処理する処理室内にハロゲン含有ガスを供給するハロゲン含有ガス供給工程と、処理室内にハロゲン含有ガスとは異なる原料ガスを供給する原料ガス供給工程と、処理室内に電子ビームを供給して基板近傍で原料ガスの活性種を生成する原料ガス活性種生成工程と、を有し、原料ガスの活性種とハロゲン含有ガスとを反応させて基板上に薄膜を形成する薄膜形成工程と、処理室内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス工程と、処理室内に電子ビームを供給して基板近傍で水素含有ガスの活性種を生成する水素活性種生成工程と、を有し、水素含有ガスの活性種と、基板上に形成した薄膜中のハロゲン元素と、を反応させて基板上に形成した薄膜を改質する薄膜改質工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DRAMやIC等の半導体装置の製造方法の一工程として、基板を処理する処理室内にハロゲン含有ガスを供給するハロゲン含有ガス供給工程と、前記処理室内に前記ハロゲン含有ガスとは異なる原料ガスを供給する原料ガス供給工程と、前記処理室内に電子ビームを供給して前記基板近傍で前記原料ガスの活性種を生成する原料ガス活性種生成工程と、を有し、前記原料ガスの活性種と前記ハロゲン含有ガスとを反応させて前記基板上に薄膜を形成する薄膜形成工程が行われる場合がある(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−53298号公報
【特許文献2】特開2009−33064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の半導体装置の製造方法では、前記基板上に形成された薄膜中にCl元素が残留してしまう場合があった。そして、この残留したCl元素が不純物としての酸素(O)を取り込んでしまい、薄膜の膜質が悪化してしまう場合があった。
【0005】
本発明は、薄膜中への不純物の取り込みを抑制し、膜質を向上させることが可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、基板を処理する処理室内にハロゲン含有ガスを供給するハロゲン含有ガス供給工程と、前記処理室内に前記ハロゲン含有ガスとは異なる原料ガスを供給する原料ガス供給工程と、前記処理室内に電子ビームを供給して前記基板近傍で前記原料ガスの活性種を生成する原料ガス活性種生成工程と、を有し、前記原料ガスの活性種と前記ハロゲン含有ガスとを反応させて前記基板上に薄膜を形成する薄膜形成工程と、前記処理室内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給工程と、前記処理室内に電子ビームを供給して前記基板近傍で前記水素含有ガスの活性種を生成する水素活性種生成工程と、を有し、前記水素含有ガスの活性種と、前記基板上に形成した前記薄膜中のハロゲン元素と、を反応させて前記基板上に形成した前記薄膜を改質する薄膜改質工程と、を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、薄膜中への不純物の取り込みを抑制し、膜質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の全体斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る処理炉の縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る処理炉の横断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る基板処理工程における成膜フロー図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る基板処理工程におけるガス供給タイミング図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る基板処理工程におけるTiN膜の薄膜形成モデル図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る基板処理工程におけるTiN膜の薄膜改質モデル図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るArパージガス供給ノズルの変形例を示す処理室の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明の一実施形態>
(1)基板処理装置の構成
本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成について、図1を参照しながら説明する。
【0010】
(基板処理装置の概略構成)
図1に示すように、本実施形態に係る基板処理装置には、筐体101の内部の前面側に保持具授受部材としてのカセットステージ105が設けられている。カセットステージ105は、図示しない外部搬送装置との間で基板収納容器としてのカセット100の授受を行うようになっている。カセットステージ105の後ろ側には、昇降手段としてのカセットエレベータ115が設けられている。カセットエレベータ115には、搬送手段としてのカセット移載機114が取り付けられている。また、カセットエレベータ115の後側には、カセット100の載置手段としてのカセット棚109が設けられている。さらに、カセットエレベータ115の上方にも予備カセット棚110が設けられている。カセット棚109には、移載棚123が設けられている。移載棚123は、後述のウエハ移載機112の搬送対象となるカセット110が収納されるようになっている。予備カセット棚110の上方には、クリーンユニット118が設けられている。クリーンユニット118は、清浄化した雰囲気又は、不活性ガスであるクリーンエアを筐体101の内部に流通させるように供給ファン及び防塵フィルタにより構成されている。
【0011】
筐体101の後部上方には、処理炉5が設けられている。処理炉5の下方には、昇降手段としてのボートエレベータ121が設けられている。ボートエレベータ121は、基板保持具としてのボート3を処理炉5内に対して昇降させるようになっている。ボート3は、基板としての半導体シリコンウエハ(以下、単にウエハ)6を水平姿勢で多段に保持するようになっている。ボートエレベータ121には、昇降部材122が取り付けられている。昇降部材122の先端部には、蓋体としてのシールキャップ125が取り付けられている。昇降部材122は、シールキャップ125を介してボート3を垂直に支持している。ボートエレベータ121とカセット棚109との間には、昇降手段としてのウエハ移載機112が取り付けられている。また、ボートエレベータ121の横側には、処理炉5の下側のウエハ搬入搬出口131を気密に閉塞する開閉手段としての炉口シャッタ116が設けられている。
【0012】
なお、本実施形態に係る基板処理装置は、基板処理装置の各部の動作を制御する制御部240を備えている。制御部240は、システム全体の運用制御、カセット移載機114等の搬送動作、処理炉5の後述する処理室46内の圧力調整動作等を制御するようになっている。
【0013】
(2)基板処理装置の全体動作
次に、上述の基板処理装置におけるウエハ6の一連の流れを図1に即して説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、制御部240により全体的に制御される。
【0014】
ウエハ6が装填されたカセット100が、図示しない外部搬送装置からカセットステージ105上に搬入される。このとき、ウエハ6が上向き姿勢となるように、カセット100がカセットステージ105上に搬入される。ウエハ6が水平姿勢となるように、カセットステージ105上でカセット100が90度回転される。さらに、カセットエレベータ115の昇降動作、横行動作及びカセット移載機114の進退動作、回転動作の協働により、カセットステージ105からカセット棚109、予備カセット棚110にカセット100が搬送される。
【0015】
カセットエレベータ115、カセット移載機114により、カセット100が移載棚123に移載される。カセット100が移載棚123に移載されると、ウエハ移載機112の進退動作、回転動作及び移載エレベータ113の昇降動作の協働により移載棚123から降下状態のボート3にウエハ6が装填(ウエハチャージ)される。
【0016】
ボート3に複数枚のウエハ6が移載されて装填(ウエハチャージ)されると、ボートエレベータ121の駆動によりボート3が上昇されて処理炉5内に搬入(ボートロード)される。このとき、シールキャップ125により処理炉5のウエハ搬入搬出口131が気密に閉塞される。気密に閉塞された処理炉5内では、ウエハ6が加熱されると共に、処理ガスが処理炉5内に供給され、ウエハ6に後述の基板処理工程が実施される。
【0017】
ウエハ6の基板処理工程が完了すると、処理炉5内でパージしながら、ボート3が降下されて処理炉5内から搬出(ボートアンロード)される。なお、炉口シャッタ116は、ボート3が降下した状態の際には、処理炉5のウエハ搬入搬出口131を気密に閉塞し、外気が処理炉5内に侵入するのを防止している。そして、ボート3が降下した状態で、ウエハ6のクーリングが所定時間行われる。その後、上記した作動の逆の手順により、ウエハ6がボート3から移載棚123のカセット100に脱装(ウエハディスチャージ)される。カセット移載機114により移載棚123からカセットステージ105にカセット100が移載される。そして、図示しない外部搬送装置によりカセット100が筐体101の外部に搬出される。
【0018】
(3)処理炉の構成
次に、処理炉5の構成について、図2及び図3を用いて説明する。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態に係る処理炉の縦断面図である。図3は、本発明の一実施形態に係る処理炉の横断面図である。
【0020】
(プロセスチューブ)
図2及び図3に示すように、処理炉5は、バッチ式縦形ホットウォール型として構成されている。処理炉5は、プロセスチューブ7を備えている。プロセスチューブ7は上端が閉塞し、下端が開口した円筒形状に形成されている。プロセスチューブ7は、例えば石英(SiO)等の耐熱性材料により構成されている。プロセスチューブ7は、中心線が垂直になるように縦に配されて固定的に支持されている。プロセスチューブ7の下端開口は、ウエハ6を搬入搬出するウエハ搬入搬出口131を形成している。
【0021】
プロセスチューブ7内には、ウエハ6を処理する処理室46が形成されている。この処理室46は、基板保持具としてのボート3を収容可能に構成されている。ボート3は、例えば石英や炭化珪素(SiC)等の耐熱性材料により構成されている。ボート3は、複数枚のウエハ6を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で垂直方向に多段に整列させて保持するようになっている。
【0022】
(ベース及びシールキャップ)
プロセスチューブ7の下端部には、プロセスチューブ7の下端開口を気密に閉塞可能な保持体としてのベース15と、炉口蓋体としてのシールキャップ125とが設けられている。ベース15は、円盤状に形成されている。ベース15は、例えばステンレス等の金属により構成されている。シールキャップ125は、例えばステンレス等の金属により構成されている。シールキャップ125は、円盤状に形成されている。シールキャップ125は、ボートエレベータ121の昇降部材122に連結され、垂直方向に昇降自在に構成されている(図1参照)。シールキャップ125は、ボート3を処理室46内に搬入した際に、ベース15を介して図示しないOリングによりプロセスチューブ7の下端(ウエハ搬入搬出口131)を気密に閉塞するように構成されている。
【0023】
(回転手段)
シールキャップ125の下側中心付近には、ボート3を回転させる回転機構36が設置されている。回転機構36の回転軸36aは、シールキャップ125とベース15とを貫通して、円筒形状の断熱筒8を下方から支持している。なお、回転軸36aは、軸受35により支持されている。また、断熱筒8は、ボート3を下方から支持している。回転機構36を作動させることで、処理室46内にてウエハ6が回転可能になっている。また、断熱筒8は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料により構成されている。断熱筒8は、ヒータ16からの熱をプロセスチューブ7の下端側に伝達し難くする断熱部材として機能する。回転機構36は、制御部240に接続されている。
【0024】
(加熱手段)
プロセスチューブ7の外部には、加熱手段としてのヒータ16がプロセスチューブ7の周囲を包囲するように同心円に設備されている。ヒータ16は、処理室46を全体に亘って均一に加熱するようになっている。ヒータ16は、処理炉5の機枠(図示せず)に支持されて垂直に据え付けられた状態になっている。なお、図示しないが処理炉5の機枠には、温度検出器としての温度センサが設置されている。ヒータ16は、温度センサの温度情報に基づき温度を制御されるようになっている。ヒータ16及び温度センサは、制御部240に接続されている。
【0025】
(排気系)
プロセスチューブ7の下側側壁には、ガス排気管32が接続されている。ガス排気管32には、上流側から順に、圧力センサ34a、APC(Auto Pressure Controller)バルブとして構成された圧力制御装置34b、真空ポンプとして構成された排気装置34cが設けられている。排気装置34cにより処理室46内を排気しつつ、圧力センサ34aにより検出した圧力情報により圧力制御装置34bの弁開度を調整することにより、処理室46内を所定の圧力に調整可能なように構成されている。圧力センサ34a、圧力制御装置34b、及び排気装置34cは、制御部240に接続されている。
【0026】
(プラズマ発生室)
プロセスチューブ7内(処理室46内)には、円弧状のプラズマ発生室17が設けられている。プラズマ発生室17は、例えば樋形状の隔壁11とプロセスチューブ7の内壁面とにより処理室46から区画されて構成されている。隔壁11は、各ウエハ6の外周に沿った断面円弧状の中心壁11aと、この中心壁11aをプロセスチューブ7に接続する接続壁11bと、から構成されている。隔壁11の中心壁11aには、電子を噴出させる複数の噴出口12が垂直方向にそれぞれ配列するように形成されている。これら噴出口12の個数は、処理されるウエハ6の枚数に対応している。各噴出口12は、隣接する各ウエハ6の間の高さの位置に上下に並んでそれぞれ等間隔に設けられている。すなわち、各噴出口12は、ボート3に保持されて上下に多段に積層された複数のウエハ6、6の間にそ
れぞれ電子ビーム24を照射可能に構成されている。なお、各噴出口は、ウエハ6の中心方向に電子ビーム24を通過させるようにそれぞれ配置されている場合に限らず、ウエハ6の中心方向から多少ずれた向きに電子ビーム24を通過させるように構成されていてもよい。
【0027】
(グリッド,中間電極,アノード)
プラズマ発生室17内には、隔壁11の噴出口12側から順にアノード20、中間電極29、グリッド19が設けられている。すなわち、アノード20は、隔壁11の中心壁11aに対面して配置されている。グリッド19は、プラズマ発生室17の内壁面であるプロセスチューブ7に隣接して配置されている。中間電極29は、アノード20とグリッド19との間に配置されている。これらアノード20、中間電極29及びグリッド19は、平板状に構成されている。アノード20、中間電極29及びグリッド19には、共に吹出口12に対応して電子通過孔20a,29a及び19aが縦方向に多段にそれぞれ形成されている。
【0028】
アノード20は、直流電源21aの陽極に接続されると共に、アースに接地されている。グリッド19は、直流電源21aの陰極に接続されている。中間電極29は、直流電源21bの陽極に接続されている。また、直流電源21bの陰極は、アースに接地されている。後述するようにグリッド19とアノード20とは、これらの間に直流電源21aで電圧を印加すれば、電子通過孔19aから電子通過孔20aの間で電子を加速する電界が発生するようになっている。また、後述するように正に印加された中間電極29は、電子ビームの照射により生成された原子,分子イオンを軌道修正させ、ゼロ電位に接地されたアノード20へ向わせる電界を発生させるように構成されている。
【0029】
(電子ビーム供給部)
プラズマ発生室17の外側には、一対の電極22が設けられている。一対の電極22は、例えば金属や炭素の棒等から構成されている。一対の電極22とプロセスチューブ7との間には、金属製のシールド23が介設されている。一対の電極22の間には、高周波電源13が接続されている。一対の電極22に高周波を印加することにより、プロセスチューブ7とグリッド19との間にはプラズマが生成されるようになっている。これらプラズマ発生室17、グリッド19、中間電極29、アノード20、直流電源21a,直流電源21b、電極22、高周波電源13により電子ビーム供給部(電子銃)18(図6,図7参照)が構成されている。
【0030】
本実施形態では、電子ビーム供給部(電子銃)18によって生成した電子ビーム24を直接ウエハ6,6の間に照射し、ウエハ6の近傍で原料ガス、水素含有ガスを励起するように構成されている。
【0031】
(ガス供給系)
プロセスチューブ7の側壁下方には、電子ビーム生成用のプラズマ生成用ガス及びパージ用ガスを供給する供給ノズル50が接続されている。供給ノズル50の下流側は、プロセスチューブ7の側壁に沿って鉛直方向に立ち上がるように構成されている。供給ノズル50の上流側はプロセスチューブ7の側壁から水平方向に突出するように構成されている。供給ノズル50の上流端には、ガス配管が接続されている。ガス配管の上流側には、プラズマ生成用ガスとしてHeガスを供給するHeガス配管と、パージ用ガスとしてArガスを供給するArガス配管と、が接続されている。Heガス配管の上流側には、上流側から順に、Heガス供給源61a、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ61b及びバルブ61cが設けられている。主にHeガス供給源61a、マスフローコントローラ61b及びバルブ61cによりHeガス供給部33aが構成されている。また、Arガス配管の上流側には、上流側から順に、Arガス供給源62a、流量制御器(
流量制御手段)であるマスフローコントローラ62b及びバルブ62cが設けられている。主にArガス供給源62a、マスフローコントローラ62b及びバルブ62cによりArガス供給部33bが構成されている。なお、パージガスとしては、Arガスを用いる場合に限らず、例えばNガス、Heガス等を用いてもよい。
【0032】
また、シールキャップ125には、処理室46内にハロゲン含有ガスを供給するガス供給ノズル51と、処理室46内にハロゲン含有ガスとは異なる原料ガスを供給するガス供給ノズル52と、処理室46内に水素含有ガスを供給するガス供給ノズル53とが接続されている。ガス供給ノズル51の上流端には、ハロゲン含有ガスとしてTiClガスを供給するTiClガス配管が接続されている。TiClガス配管の上流側には、上流側から順にTiClガス供給源63a、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ63b及びバルブ63cが設けられている。主にTiClガス供給源63a、マスフローコントローラ63b及びバルブ63cによりTiClガス供給部54aが構成されている。ガス供給ノズル52の上流端には、原料ガスとしてNHガスを供給するNHガス配管が接続されている。NHガス配管の上流側には、上流側から順にNHガス供給源64a、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ64b及びバルブ64cが設けられている。主にNHガス供給源64a、マスフローコントローラ64b及びバルブ64cによりNHガス供給部54bが構成されている。ガス供給ノズル53の上流端には、水素含有ガスとしてHガスを供給するHガス配管が接続されている。Hガス配管の上流側には、上流側から順にHガス供給源65a、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ65b及びバルブ65cが設けられている。主にHガス供給源65a、マスフローコントローラ65b及びバルブ65cによりHガス供給部54cが構成されている。そして、主に、Heガス供給部33a、Arガス供給部33b、TiClガス供給部54a、NHガス供給部54b、Hガス供給部54cにより、本実施形態に係るガス供給系が構成されている。
【0033】
なお、Heガス供給源61a、マスフローコントローラ61b及びバルブ61c、Arガス供給源62a、マスフローコントローラ62b及びバルブ62c、TiClガス供給源63a、マスフローコントローラ63b及びバルブ63c、NHガス供給源64a、マスフローコントローラ64b及びバルブ64c、Hガス供給源65a、マスフローコントローラ65b及びバルブ65cは、制御部240に接続されている。
【0034】
(制御部)
制御部240は、上述したようにシステム全体の運用制御、カセット移載機114等の搬送動作の他に、処理炉5の処理室内の圧力調整動作等を制御するようになっている。すなわち、制御部240は、回転機構36、ボートエレベータ121、ヒータ16、温度センサ(図示せず)、圧力センサ34a、圧力制御装置34b、排気装置34c、Heガス供給部33a、Arガス供給部33b、TiClガス供給部54a、NHガス供給部54b、Hガス供給部54cにそれぞれ接続されており、基板処理装置の各部の動作を制御している。
【0035】
具体的には、制御部240は、回転機構36の回転軸36aを所定のタイミングで回転させるように構成されている。制御部240は、ボートエレベータ121を所定のタイミングで昇降させるように構成されている。また、制御部240は、圧力センサ34aにより検出された圧力情報に基づいて圧力制御装置34bの弁開度を調整し、処理室46内が所定のタイミングで所定の圧力となるように構成されている。また、制御部240は、温度センサにより検出された温度情報に基づきヒータ16への通電具合を調整し、処理室46内及びウエハ6表面が所定のタイミングにて所定の温度となるように構成されている。また、制御部240は、Heガス供給部33a,Arガス供給部33b,TiClガス供給部54a,NHガス供給部54b及びHガス供給部54cのマスフローコントロ
ーラ61b,62b,63b,64b及び65bをそれぞれ流量制御しつつ、バルブ61c,62c,63c,64c及び65cをそれぞれ開閉制御することにより、処理室46内に所定のタイミングにて所定の流量のガス供給をそれぞれ開始し、或いは停止するように構成されている。
【0036】
(4)基板処理工程
次に、半導体装置の製造工程の一工程として実施される基板処理工程を、主に図4〜図7を参照しながら説明する。
【0037】
図4は、本発明の一実施形態に係る基板処理工程における成膜フロー図である。図5は、本発明の一実施形態に係る基板処理工程におけるガス供給タイミング図である。図6は、本発明の一実施形態に係る基板処理工程におけるTiN膜の薄膜形成モデル図である。図7は、本発明の一実施形態に係る基板処理工程におけるTiN膜の薄膜改質モデル図である。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、主に制御部240により制御される。
【0038】
(搬入工程(ステップS1))
先ず、ボート3に複数枚のウエハ6を装填(ウエハチャージ)する。次に、制御部240の制御に基づいてボートエレベータ121を駆動し、ボート3を上昇させる。これにより、図2に示されているように、複数枚のウエハ6を保持したボート3が処理室46内に搬入(ボートローディング)される。このとき、シールキャップ121は、ベース15を介してOリング(図示せず)によりプロセスチューブ7の下端(ウエハ搬入搬出口131)を閉塞する。これにより、処理室46内を気密に封止する。
【0039】
処理室46内へのボート3の搬入が完了するまでの間、処理室46内にはパージガスとしてArガスを流すことが好ましい。具体的には、Arガス供給部33bのマスフローコントローラ62bにより流量調整しつつ、バルブ62cを開とし、ガス配管内を流通したArガスを、供給ノズル50からプラズマ発生室17を介して処理室46内に供給することが好ましい。これにより、ボート3の搬入時における処理室46内へのパーティクルの侵入を抑制することが可能となる。
【0040】
(圧力調整工程(ステップS2)及び昇温工程(ステップS3))
処理室46内へのボート3の搬入(ボートロード)が完了したら、処理室46内が所定の圧力(例えば0.001〜0.01Pa)となるように処理室46内の雰囲気を排気する。具体的には、排気装置34cにより排気しつつ、圧力センサ34aにより検出された圧力情報に基づいて圧力制御装置34bの弁開度をフィードバック制御し、処理室46内を所定の圧力とする。
【0041】
また、処理室46内が所定の温度(成膜温度)となるようにヒータ16によって加熱する。具体的には、温度センサ(図示せず)により検出された温度情報に基づいてヒータ16への通電具合を制御して、処理室46内を成膜温度(例えば350〜550℃)とする。
【0042】
そして、回転機構36を作動させ、処理室46内に搬入されたウエハ6の回転を開始する。なお、ウエハ6の回転は、後述する繰り返し工程(ステップS6)が終了するまで継続する。
【0043】
(積層膜形成工程(ステップS4))
そして、薄膜形成工程としての積層膜形成工程(ステップS4)を実施する。積層膜形成工程S4は、以下に説明するようにハロゲンガス供給工程としてのTiClガス供給
工程(ステップS4a)、Arガスパージ工程(ステップS4b)、原料ガス供給工程としてのNHガス供給工程、及び原料ガス活性種生成工程としてのEBEP処理工程(ステップS4c)、Arガスパージ工程(ステップS4d)と、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数繰り返す(ステップS4e)ように構成されている。
【0044】
(TiClガス供給工程(ステップS4a))
先ず、Arガスのバルブ62cを開としたままプラズマ発生室17を介して処理室46内にArガスを流しつつ、TiClガスを処理室46内に供給する。具体的には、TiClガス供給部54aのマスフローコントローラ63bにより、流量が例えば0.1〜1slmの範囲内になるよう調整しつつ、バルブ63cを開とし、ガス配管内を流通したTiClガスをガス供給ノズル51から処理室46内に供給する。処理室46内に供給されたTiClガスは、処理室46内を流下し、ガス排気管32から排気される。ここで、TiClガスは、処理室46内を流下する際、ウエハ6上の表面に吸着する。所定時間(2〜5秒)経過後、TiClガス供給部54aのバルブ63cを閉としてTiClガスの供給を停止する。
【0045】
(Arガスパージ工程(ステップS4b))
次に、Arガスのバルブ62cを開としたままプラズマ発生室17を介して処理室46内にArガスを流しつつ、処理室46内を真空排気し、残留しているTiClガス等を処理室46内から排出する。所定時間経過後、Arガスのバルブ62cを閉として処理室46内へのArガスの供給を停止する。
【0046】
(NHガス供給工程及びEBEP処理工程(ステップS4c))
次に、処理室46内にNHガスを処理室46内に供給する。具体的には、NHガス供給部54bのマスフローコントローラ64bにより、流量が例えば1〜5slmの範囲内になるよう調整しつつ、バルブ64cを開とし、ガス配管内を流通したNHガスをガス供給ノズル52から処理室46内に供給する。処理室46内に供給されたNHガスは、処理室46内を流下し、ガス排気管32から排気される。
【0047】
処理室46内へのNHガスの供給と並行して処理室46内に電子ビーム24を照射し、電子ビーム24の照射により生成したNHガスのラジカルを、ウエハ6上の表面に吸着しているTiClガスのガス分子に作用させ、ウエハ6上に薄膜を形成する。
【0048】
先ず、Heガスをプラズマ発生室17内に供給する。具体的には、Heガス供給部33aのマスフローコントローラ61bにより流量調整しつつ、バルブ61cを開とし、ガス配管内を流通したHeガスを供給ノズル50からプラズマ発生室17内に供給する。プラズマ発生室17内に供給されたHeガスは、プラズマ発生室17及び処理室46内を流下し、ガス排気管32から排気される。
【0049】
そして、高周波電源13を作動させ、一対の電極22に電圧を印加する。すると、図6に示すように、プラズマ発生室17内において、Heガスによるプラズマが発生する。発生したプラズマ中には、Heイオン(He)25と電子(e)26とが混在し、全体として中性を保っている。
【0050】
そして、直流電源21a、直流電源21bを作動させ、グリッド19,アノード20及び中間電極29に電圧を印加する。すると、グリッド19で生成された電界により、プラズマ中の電子(e)26が、多段に形成された電子通過孔19aに集束する。集束した電子(e)26は、アノード20で生成された電界により、アノード20の(多段に形成された)電子通過孔20aに向かって加速する。加速した電子(e)26は、電子ビーム24となって隔壁11の(多段に形成された)吹出口12からウエハ6、6の間に向ってウ
エハ6、6と平行に出射する。すなわち、ウエハ6、6の間に存在するNHガス(NH分子)28に電子ビーム24が照射される。
【0051】
電子ビーム24の照射により、ウエハ6上の近傍において、所定の確率でNHガス28のガス分子(NH分子)が励起若しくはイオン化される。これにより、NH(n=1,2)ラジカル27等が生成される。ここで、電子ビーム励起プラズマ(EBEP)により励起若しくはイオン化される割合は、処理室46内の圧力や電子ビーム24の持つ運動エネルギ等による励起能率や電離能率で決定される。この生成されたNH(n=1,2)ラジカル27等がウエハ6上の表面に吸着しているTiClガス31のガス分子と反応し、NH(n=1,2)ラジカル27とTiClガス31のガス分子とが共に熱分解する。これにより、ウエハ6表面に1原子層未満から数原子層の原子層膜40aが形成される。所定時間(10〜30秒)経過後、直流電源21a、直流電源21b及び高周波電源13を停止させる。そして、NHガス供給部54bのバルブ64cを閉としてNHガス28の供給を停止する。同時にHeガス供給部33aのバルブ61cを閉としてHeガスの供給を停止する。
【0052】
(Arガスパージ工程(ステップS4d))
次に、Arガスのバルブ62cを開としてプラズマ発生室17を介して処理室46内にArガスを供給しつつ、残留しているNHガス28等を処理室46内から排出する。所定時間経過後、Arガスのバルブ62cを閉として処理室46内へのArガスの供給を停止する。
【0053】
(繰り返し工程(ステップS4e))
そして、ステップS4a〜S4dを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数(例えば10回)行い、原子層膜40aが積層されてなる積層膜40bを形成する。このように、本実施形態では、ALD法(Atomic Layer Deposition)法により積層膜40bを形成する。
【0054】
(積層膜改質工程(ステップS5))
積層膜形成工程(ステップS4)の後、薄膜改質工程としての積層膜改質工程(ステップS5)を実施する。積層膜改質工程(ステップS5)は、水素含有ガス供給工程としてのHガス供給工程、及び水素活性種生成工程としてのEBEP処理工程とにより構成される。
【0055】
先ず、処理室46内にHガスを供給する。具体的には、Hガス供給部54cのマスフローコントローラ65bにより流量が例えば1〜5slmの範囲内になるよう調整しつつ、バルブ65cを開とし、ガス配管内を流通したHガスをガス供給ノズル53から処理室46内に供給する。処理室46内に供給されたHガスは、処理室46内を流下し、ガス排気管32から排気される。
【0056】
次に、電子ビーム24の照射により生成したHガスのラジカルを、ウエハ6上の表面に形成した積層膜40bに作用させる。積層膜形成工程(S4)のEBEP処理工程(S4d)と同様に、Heガスから生成された電子ビーム24を出射することにより、ウエハ6、6の間に存在するHガスのガス分子(H分子)に電子ビーム24を照射する。
【0057】
図7に示すように、電子ビーム24の照射により、ウエハ6上の近傍において、所定の確率でHガス38のガス分子(H分子)が励起若しくはイオン化されることにより、Hラジカル37等が生成される。この生成されたHラジカル37等がウエハ6上に形成された積層膜40bに作用し、積層膜40b中の残留Cl元素とHラジカル37とが結合してHClガス41となり、積層膜40bから残留Cl元素を除去する。これにより
、積層膜40bの改質が行われる。生成されたHClガス41は、処理室46内から排気される。なお、ウエハ6近傍にはHラジカル37だけでなく、正電荷を帯びたHイオン37bも生成される。このHイオン37bは、電子ビーム24に吸い寄せられて逆方向39へ流れ、プラズマ発生室17内のアノード20へ付着する。
【0058】
所定時間(10〜30秒)経過後、直流電源21a、直流電源21b及び高周波電源13を停止する。そして、Hガス供給部54cのバルブ65cを閉としてHガスの供給を停止する。同時にHeガス供給部33aのバルブ61cを閉としてHeガスの供給を停止する。そして、処理室46内を真空排気し、残留しているHガス及びHClガス等を処理室46内から排出する。
【0059】
(繰り返し工程(ステップS6))
そして、積層膜形成工程(ステップS4)と積層膜改質工程(ステップS5)とを1サイクルとして、このサイクルを所定回数行う繰り返し工程(S6)を実施する。これにより、改質された積層膜40bを積層して所望の膜厚のTiN膜を形成する。
【0060】
(Arガスパージ工程(ステップS7))
所望の膜厚のTiN膜が形成されたら、プラズマ発生室17を介して処理室46内にArガスを供給し、圧力制御装置34bの弁を開とするか開度を大きくして処理室46内をArガスのガス雰囲気に置換する。
【0061】
(大気圧復帰及び降温工程(ステップS8))
所定時間が経過して処理室46内のガス置換が完了したら、回転機構36を停止してウエハ6の回転を停止する。そして、大気圧復帰及び降温工程(ステップS8)として、Arガスを流しつつ、処理室46内の圧力を昇圧することにより大気圧に復帰させつつ、ウエハ6を降温させる。
【0062】
(搬出工程(ステップS9))
その後、上述の搬入工程を逆の手順により、処理後のウエハ6を保持したボート3を処理室46内から搬出(ボートアンローディング)する(ステップS9)。そして、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0063】
(5)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0064】
(a)本実施形態によれば、HガスのHラジカル37等と、ウエハ6上に形成した積層膜40b中のCl元素と、を反応させてウエハ6上に形成した積層膜40bを改質する積層膜改質工程を実施している。これにより、ウエハ6上に形成した積層膜40bから残留Cl元素を除去でき積層膜40bを改質できる。そして、最終的に形成されるTiN膜(積層膜40bが積層してなる膜)中におけるCl元素の残留を抑制できる。そして、残留Cl元素によるTiN膜中への不純物としての酸素(O)の取り込みを抑制でき、TiN膜の膜質を向上させることができる。
【0065】
なお、従来の基板処理工程では、ウエハ6上に形成されたTiN膜中にハロゲン元素(例えばCl元素)が多く残留してしまう場合があった。そして、基板処理工程の終了後に、ボート3を降下させて処理室46内からボード3を搬出すると、TiN膜中に含まれているCl元素等が不純物としての酸素(O)を取り込んでしまい、TiN膜の膜質を悪化させてしまう場合があった。
【0066】
(b)本実施形態によれば、電子供給部(電子銃)18により電子ビーム24を生成し、
ウエハ6近傍でHガスを活性化させて活性種を生成している。これにより、寿命が短い活性種であってもウエハ6近傍に必要量のHガスの活性種を供給することができる。また、ウエハ6と接触する前にHガスの活性種が失活してしまうことを回避でき、ウエハ6への活性種の供給効率を向上させることができる。これにより、積層膜40b中から残留Cl元素をより効率的に除去することができ、積層膜40bの改質をより効率的に行うことができる。
【0067】
(c)本実施形態では、ウエハ6表面と平行に電子ビーム24を照射しているので、ウエハ6表面の近傍の広い範囲でHガスの活性種を生成することができる。これに加えて、回転機構36により複数のウエハ6を回転させている。これにより、ウエハ6近傍でのHガスの活性種密度をウエハ6の面内、面間で均一にすることができる。特にバッチ処理においては、基板処理の均一性を向上できる。
【0068】
(d)本実施形態では、処理室46内にプラズマを発生させてHガスを活性化させるのではなく、電子供給部(電子銃)18により発生させた電子ビーム24をウエハ6表面に供給することでHガスを活性化させている。すなわち、プラズマ発生室17内にのみプラズマを発生させ、処理室46内にプラズマを発生させないようにしている。これにより、ウエハ6がプラズマによりダメージを受けてしまうことを抑制できる。さらに、プラズマ発生室17内では、電子を取り出すためだけにプラズマを発生させているので、ウエハ6近傍で高出力の高周波を印加する必要がなく、プロセスチューブ7等を構成する石英等がスパッタリングされることを抑制できる。
【0069】
(e)本実施形態によれば、中間電極29をグリッド19とアノード20との間に設置している。これにより、電子ビーム24と逆方向30へ流れる正電荷を帯びたHイオン37bは、隔壁11に吹出口12からプラズマ発生室17内へ流れ込むことなく、軌道を修正される。すなわち、正電荷を帯びたHイオン37bは、正に印加された中間電極29により作られた電界により軌道修正され、ゼロ電位に設置されたアノード20へ向かう。これにより、グリッド19やアノード20のスパッタリングを抑制できる。また、プラズマ発生室17内でHeガスプラズマを安定して発生させることができ、電子ビーム照射時の励起、若しくはイオン化ロスを低減させることが可能となる。
【0070】
<一実施形態の変形例>
(パージノズルの変形例)
なお、パージ用ガスをプラズマ発生室17内に供給するガス供給ノズルは、図8に示すように構成してもよい。図8は、本発明の一実施形態に係るArパージガス供給ノズルの変形例を示す処理室の概略図である。
【0071】
図8に示すように、Arパージガス供給ノズル55は、例えばグリッド19、中間電極29及びアノード20を側方から挟むように対向して一対設けられている。そして、Arパージガス供給ノズル55は、グリッド19、中間電極29及びアノード20の電子通過孔19a,29a及び20aに側方から対向するようにガス供給孔55aが複数形成されている。
【0072】
そして、少なくとも、上述のTiClガス供給工程(ステップS4a)、NHガス供給工程及びEBEP処理工程(ステップS4c)において、Arパージガス供給ノズル50からパージ用Arガスを供給し、プラズマ発生室17内をArガスでパージするようにしている。
【0073】
これにより、グリッド19、中間電極29及びアノード20等の電極表面の汚染を抑制でき、プラズマ発生室17内及び処理室46内のメンテナンスの周期改善を大幅に向上さ
せることができる。
【0074】
なお、従来は、パージ用Arガスを積極的に流してパージを行うことができないので、ボート3の降下時、プラズマ発生室17を含む処理室46内がArパージ状態(Arガス雰囲気)であるが大気に曝される。このため、プラズマ発生室17内が大気に曝されると、後の基板処理工程に影響を及ぼす。
【0075】
<本発明の他の実施形態>
なお、上述の実施形態においては、ALD法を用いて例えばウエハ6上にTiN膜40を形成すると共に、TiN膜40の改質を行っている。しかしながら、本発明は、これに限定されず、CVD法においても適用可能である。例えばハロゲン含有ガスとしてSiHClガス、原料ガスとしてNHガスを用いたCVD法によりウエハ6上にシリコン窒化膜(SiN)を形成した後に、シリコン窒化膜(SiN)の改質を行う場合にも適用可能である。
【0076】
<本発明のさらに他の実施形態>
なお、本実施形態では、プラズマ発生室17内にプラズマを生成する方法の一例として、一対の電極22に高周波を印加することでプラズマを生成する方式を用いているが、本発明はこれに限定されない。例えば、電子サイクロトロン共鳴プラズマや、表面波プラズマなど、スパッタ作用を極力抑えたプラズマ発生方式ならば他の方式を適用することも可能である。
【0077】
また、本実施形態では、ウエハ6を複数枚処理するバッチ処理に本発明を適用しているが、本発明はこれに限定されず、ウエハ6を1枚毎に処理する枚葉処理に適用しても構わない。
【0078】
なお、処理される基板としては、Siウエハ基板の他に石英ガラス基板、結晶化ガラス基板等であってもよい。また、本発明は、本実施形態にかかる半導体製造装置等のウエハ基板を処理する半導体装置の製造方法に限らず、プリント配線基板、液晶パネル、磁気ディスクやコンパクトディスク等の基板を処理する半導体装置の製造方法にも好適に適用できる。
【0079】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0080】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0081】
本発明の一態様によれば、
基板を処理する処理室内にハロゲン含有ガスを供給するハロゲン含有ガス供給工程と、前記処理室内に前記ハロゲン含有ガスとは異なる原料ガスを供給する原料ガス供給工程と、前記処理室内に電子ビームを供給して前記基板近傍で前記原料ガスの活性種を生成する原料ガス活性種生成工程と、を有し、前記原料ガスの活性種と前記ハロゲン含有ガスとを反応させて前記基板上に薄膜を形成する薄膜形成工程と、
前記処理室内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給工程と、前記処理室内に電子ビームを供給して前記基板近傍で前記水素含有ガスの活性種を生成する水素活性種生成工程と、を有し、前記水素含有ガスの活性種と、前記基板上に形成した前記薄膜中のハロゲン元素と、を反応させて前記基板上に形成した前記薄膜を改質する薄膜改質工程と、
を備える
半導体装置の製造方法が提供される。
【0082】
好ましくは、前記薄膜形成工程は、前記ハロゲン含有ガスを前記基板上に吸着させた後、前記電子ビームにより生成した前記原料ガスの活性種と、前記基板上に吸着させた前記ハロゲン含有ガスと、を反応させ前記基板上に薄膜を形成し、
前記薄膜形成工程を少なくとも1回行った後、前記薄膜改質工程は、前記電子ビームにより生成した前記水素含有ガスの活性種と、前記基板上に形成した前記薄膜中のハロゲン元素と、を反応させて前記基板上に形成した前記薄膜を改質し、
前記薄膜形成工程と、前記薄膜改質工程と、を1サイクルとして前記サイクルを少なくとも1回行う。
【0083】
より好ましくは、前記薄膜形成工程は、前記電子ビームにより生成した前記原料ガスの活性種と、前記処理室内に供給した前記ハロゲン含有ガスと、を前記処理室内の気層中で反応させ前記基板上に薄膜を形成する。
半導体装置の製造方法が提供される。
【0084】
より好ましくは、前記薄膜形成工程は、不活性ガスによるパージ工程を含む。
【0085】
より好ましくは、前記ハロゲン含有ガスは、TiClガス,SiHClガス,SiHClガスのいずれか1つである。
【0086】
より好ましくは、前記原料ガスは、NHガスである。
【0087】
より好ましくは、前記水素含有ガスは、Hガス,NHガスのいずれか1つである。
【0088】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内にハロゲン含有ガスを供給するハロゲン含有ガス供給部系と、
前記処理室内に前記ハロゲン含有ガスとは異なる原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理室内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給系と、
前記処理室内に電子ビームを供給する電子ビーム供給部と、
少なくとも前記ハロゲン含有ガス供給系、前記原料ガス供給系、前記水素含有ガス供給系及び電子ビーム供給部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記処理室内に前記電子ビーム供給部からの電子ビームを供給して前記原料ガス供給系から供給した前記原料ガスの活性種を前記基板近傍で生成すると共に、前記原料ガスの活性種と、前記ハロゲン含有ガス供給系から供給した前記ハロゲン含有ガスと、を反応させて前記基板上に薄膜を形成し、
前記処理室内に前記電子ビーム供給部からの電子ビームを供給して前記水素含有ガス供給系から供給した前記水素含有ガスの活性種を前記基板近傍で生成すると共に、前記水素含有ガスの活性種と、前記基板上に形成した前記薄膜中のハロゲン元素と、を反応させて前記基板上に形成した薄膜を改質する
基板処理装置が提供される。
【0089】
好ましくは、
前記制御部は、前記ハロゲン含有ガスを前記基板上に吸着させた後、前記電子ビームにより生成した前記原料ガスの活性種と、前記基板上に吸着させた前記ハロゲン含有ガスと、を反応させ前記基板上に薄膜を形成し、
前記薄膜の形成を少なくとも1回行った後、前記電子ビームにより生成した前記水素含
有ガスの活性種と、前記基板上に形成した前記薄膜中のハロゲン元素と、を反応させて前記基板上に形成した前記薄膜を改質し、
前記薄膜の形成と、前記薄膜の改質と、を1サイクルとして前記サイクルを少なくとも1回行う。
【0090】
より好ましくは、
前記制御部は、前記薄膜の形成は、前記電子ビームにより生成した前記原料ガスの活性種と、前記処理室内に供給した前記ハロゲン含有ガスと、を前記処理室内の気層中で反応させ前記基板上に薄膜を形成した後、前記電子ビームにより生成した前記水素含有ガスの活性種と、前記基板上に形成した前記薄膜中のハロゲン元素と、を反応させて前記基板上に形成した前記薄膜を改質する。
【0091】
より好ましくは、前記電子ビーム供給部は、プラズマを発生するプラズマ発生室と、前記プラズマ発生室で生成したプラズマから電子を集束するグリッドと、前記グリッドで集束した電子を加速するアノードと、前記グリッド及び前記アノードにパージガスを供給するパージノズルを備える。
【0092】
前記パージノズルは、前記グリッド、前記中間電極及び前記アノードを側方から挟むように対向して一対設けられている。
【0093】
前記パージノズルは、前記グリッド、前記中間電極及び前記アノードの電子通過孔に対応して該電子通過孔の側方から対向するようにガス供給孔が複数形成されている。
【0094】
より好ましくは、前記電子ブーム供給部は、前記グリッドと前記アノードとの間に中間電極を備え、前記パージノズルは、前記中間電極へパージガスを供給する。
【符号の説明】
【0095】
6 ウエハ(基板)
24 電子ビーム
46 処理室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室内にハロゲン含有ガスを供給するハロゲン含有ガス供給工程と、前記処理室内に前記ハロゲン含有ガスとは異なる原料ガスを供給する原料ガス供給工程と、前記処理室内に電子ビームを供給して前記基板近傍で前記原料ガスの活性種を生成する原料ガス活性種生成工程と、を有し、前記原料ガスの活性種と前記ハロゲン含有ガスとを反応させて前記基板上に薄膜を形成する薄膜形成工程と、
前記処理室内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給工程と、前記処理室内に電子ビームを供給して前記基板近傍で前記水素含有ガスの活性種を生成する水素活性種生成工程と、を有し、前記水素含有ガスの活性種と、前記基板上に形成した前記薄膜中のハロゲン元素と、を反応させて前記基板上に形成した前記薄膜を改質する薄膜改質工程と、
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−68974(P2011−68974A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222920(P2009−222920)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】