半導体装置の金属電極形成方法及び金属電極形成装置
【課題】切削量の要求精度(±1μm以内)を満たしつつコストを低減できる半導体装置の金属電極形成方法及び金属電極形成装置を提供する。
【解決手段】裏面11bの形状を反映して表面部11aの凹凸差が増大した半導体基板11の凹凸差を低減すべく、表面部の表面形状データを取得し、このデータに基づいて変形手段により半導体基板に変位を与え、切削面Pと半導体基板の表面部との距離が切削量の要求精度の範囲内になるように変形させる。変形手段として、変位をそれぞれ制御可能な複数個のアクチュエータ24aを用い、各アクチュエータを、吸着ステージの裏面に当接してそれぞれ設けるとともに、その配置間隔を半導体基板の厚さ分布の空間周波数の最小波長に対し、1/2よりも大きく1以下とする。そして、変形させた半導体基板を吸着ステージに吸着固定したまま、切削面において切削加工を行い、金属膜をパターニングして金属電極15を形成する。
【解決手段】裏面11bの形状を反映して表面部11aの凹凸差が増大した半導体基板11の凹凸差を低減すべく、表面部の表面形状データを取得し、このデータに基づいて変形手段により半導体基板に変位を与え、切削面Pと半導体基板の表面部との距離が切削量の要求精度の範囲内になるように変形させる。変形手段として、変位をそれぞれ制御可能な複数個のアクチュエータ24aを用い、各アクチュエータを、吸着ステージの裏面に当接してそれぞれ設けるとともに、その配置間隔を半導体基板の厚さ分布の空間周波数の最小波長に対し、1/2よりも大きく1以下とする。そして、変形させた半導体基板を吸着ステージに吸着固定したまま、切削面において切削加工を行い、金属膜をパターニングして金属電極15を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体基板の主面に形成された下地電極に対する接続用の金属電極を、切削加工により金属膜をパターニングして形成する半導体装置の金属電極形成方法及び金属電極形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
はんだ接合用などの金属電極を安価に形成する技術として、例えば特許文献1には、パターニングにホトリソグラフィー工程を行わずに金属電極を形成する技術が示されている。
【0003】
特許文献1では、半導体基板の一面上に下地電極を形成し、下地電極の上に保護膜を形成し、保護膜に開口部を形成するとともに、開口部から臨む下地電極の表面上に、接続用の金属電極を形成してなる半導体装置において、保護膜の上面に対して開口部から臨む下地電極の表面が引っ込むように段差が形成されていることを利用して、下地電極及び保護膜の上に形成した金属膜を切削加工によりパターニングし、金属電極としている。
【0004】
このような半導体装置では、半導体基板の厚み方向にばらつきが生じても、保護膜の上面上に位置する金属膜を切削加工によって確実に除去するために、保護膜上の金属膜とともに保護膜の一部も除去される。しかしながら、半導体装置では、半導体基板に構成される半導体素子の電気絶縁性の確保や、半導体基板の面内における電気絶縁性のばらつきを抑制するために、所定厚さの保護膜を確保する必要がある。したがって、切削により金属電極をパターニングする場合、半導体基板の全面において、金属膜の表面を基準とした切削量のばらつきを、±1μm以内(2μm以内)という高い精度で切削加工を行うことが好ましい。例えば、アルミニウムからなる厚さ5μmの下地電極に対し、保護膜を、半導体基板の一面上の部分で厚さ10μmとなるように形成すると、保護膜の下地電極上の部分の厚さは約8μmとなる。したがって、電気絶縁の信頼性確保のために必要な最低膜厚約3μmを、下地電極上の部分においても確保するためには、2μm以内(±1μm以内)という精度が必要となる。
【0005】
一方、切削加工では、半導体基板を吸着ステージ上に吸着固定するが、半導体基板の裏面は平坦になるように変形されるため、半導体基板の主面が、裏面の元の凹凸形状を反映した形状となる。また、切削加工は吸着ステージと平行な面に沿って行われる。したがって、半導体基板が、その面内に、上記した切削量の要求精度(±1μm以内)よりも大きい厚さばらつきを有する場合には、面内の一部に切削量の要求精度を満足しない領域が存在することとなり、製造歩留が低下する。
【0006】
これに対し、本出願人は、特許文献2に記載の方法を提案している。特許文献2では、金属膜が形成された半導体基板を吸着ステージに吸着固定した後に、表面形状測定手段により、吸着ステージに吸着固定された半導体基板の金属膜のうち保護膜を覆っている表面部の表面形状データを取得する。次いで、表面形状データに基づいて、半導体基板に吸着ステージ側から変位を与えて変形させる変形手段により、吸着ステージと平行に設定された切削面と半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように変形させる。そして、表面形状測定手段により変形された半導体基板の表面形状を測定し、切削面と表面部との距離が所定の範囲内であると判定された場合に、変形手段により変形された半導体基板を吸着ステージに吸着固定したまま、切削面において切削加工を行うようにしている。これによれば、半導体基板における表面部の凹凸差を小さくした状態で切削加工するので、製造歩留を向上させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−186304号公報
【特許文献2】特開2009−49356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2では、変形手段としての複数個のアクチュエータの配置については特に言及していない。したがって、アクチュエータの配置によっては、半導体基板における表面部の凹凸、すなわちうねりを精度よく補正することができない恐れがある。基板表面のうねりを精度よく補正するには、アクチュエータの配置間隔(ピッチ)を狭くするほど好ましいが、それに伴い、アクチュエータの本数が増加し、本数増加に伴って制御系も複雑化するため、コストが増加してしまう。
【0009】
なお、周知の標本化定理(サンプリング定理)に基づけば、基板表面のうねりの空間周波数の波長に対し、該波長の1/2以下の間隔でアクチュエータを配置すると、アクチュエータの変位をつないでうねりを復元できる。すなわち、標本化定理に基づいて理想的にアクチュエータを配置したとしても、うねりを精度よく補正するには、上記空間周波数の波長の1/2が、アクチュエータの配置間隔の上限となる。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑み、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たしつつコストを低減できる半導体装置の金属電極形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する為に請求項1に記載の半導体装置の金属電極形成方法は、
半導体基板の主面に、半導体素子と電気的に接続された下地電極を形成する工程と、
下地電極を覆う保護膜を形成した後、該保護膜に下地電極を露出させる開口部を形成する工程と、
保護膜及び開口部から臨む下地電極の表面を覆う金属膜を形成する工程と、半導体基板を吸着固定する吸着ステージに、金属膜が形成された半導体基板を吸着固定した後に、半導体基板の主面に臨んで配設され、半導体基板の表面形状を測定する表面形状測定手段により、吸着ステージに吸着固定された半導体基板の、金属膜のうち保護膜を覆っている表面部の表面形状データを取得する工程と、
表面形状測定手段により取得された表面形状データに基づいて、吸着ステージに固定された半導体基板に吸着ステージ側から変位を与えて変形させる変形手段により、変形前の吸着ステージと平行に設定された切削面と半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように変形させる変形工程と、
表面形状測定手段により、変形された半導体基板の表面部の表面形状を測定し、切削面と変形された半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内であるか否かを判定する判定工程と、
切削面と変形された半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内であると判定された場合に、変形された半導体基板を吸着ステージに吸着固定したまま、切削面において切削を行う切削加工により、金属膜をパターニングして金属電極を形成する工程と、を備える。
【0012】
そして、変形手段として、変位をそれぞれ制御可能な複数個のアクチュエータを用い、複数個のアクチュエータを、吸着ステージを介して半導体基板に変位を与えるように、吸着ステージの裏面に当接してそれぞれ設けるとともに、アクチュエータの配置間隔を、半導体基板の厚さ分布の空間周波数の最小波長に対し、1/2よりも大きく1以下とすることを特徴とする。
【0013】
本発明者は、先ず、金属膜が形成された半導体基板の厚さ分布を測定し、この測定結果に基づいて、基板表面のうねりの振幅と空間周波数の波長分布を明らかにした。そして、アクチュエータの配置間隔と基板表面のうねりとの関係について鋭意検討を行った。その結果、アクチュエータの配置間隔を、半導体基板の厚さ分布の空間周波数の最小波長に対し、1/2よりも大きく1以下としても、切削量の要求精度を満たすことができることを新たに見出した。本発明はこの知見に基づいており、従来の1/2以下の配置間隔に比べて、アクチュエータの本数を低減できるため、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たしつつコストを低減できる。なお、アクチュエータの配置間隔を、空間周波数の最小波長よりも長くすると、うねりを補正しきれず、切削量の要求精度を満たすことができなかった。
【0014】
なお、本発明によれば、切削加工により、金属膜をパターニングして金属電極を形成することができる。また、切削加工するに際し、金属膜が形成された半導体基板を吸着ステージに吸着固定した状態で、表面形状測定手段により、半導体基板の表面部の表面形状データを取得する。そして、この表面形状データに基づいて、変形手段としての複数個のアクチュエータにより、切削面と半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように半導体基板を変形させる。また、表面形状測定手段により、変形された半導体基板の表面形状を測定し、切削面と表面部との距離が所定の範囲内であると判定された場合に、変形手段により変形された半導体基板を吸着ステージに吸着固定したまま、切削面において切削加工を行う。したがって、吸着ステージに吸着固定されることにより裏面形状を反映して表面部の凹凸差が増大した半導体基板について、表面部の凹凸差を小さくし、切削面と表面部との距離を所定の範囲(切削量の要求精度)内にすることができる。
【0015】
また、変形手段として、変位をそれぞれ制御可能な複数個のアクチュエータを備えているため、半導体基板の変形状態に応じて異なる変位を与えることができ、半導体基板の表面形状を精度良く制御することができる。
【0016】
また、変形手段としてのアクチュエータは、吸着ステージの裏面に当接して設けられており、吸着ステージを介して半導体基板に変位を与えるため、変形手段により半導体基板に局所的に応力が発生し、半導体基板が局所的に変形することを防止することができる。
【0017】
請求項2に記載のように、変形工程として、
表面形状測定手段により取得された表面形状データに基づいて、所定の範囲から外れ且つ最小波長の1/2以下のうねり領域の有無を判定するうねり判定工程と、
うねり領域がある場合に、うねり領域に対応するアクチュエータにより、うねり領域を所定の範囲内となるように変形させる局部変形工程と、
うねり領域なしと判定された場合、上記表面形状データに基づき、切削面と半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように、全体を変形対象として半導体基板を変形させ、うねり領域ありと判定された場合、局部変形工程後に、表面形状測定手段により、変形された半導体基板の表面部の表面形状を測定し、取得された表面形状データに基づき、切削面と半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように、全体を変形対象として半導体基板を変形させる全体変形工程と、を含むことが好ましい。
【0018】
本発明によれば、所定の範囲から外れ且つ最小波長の1/2以下のうねりが生じても、うねりが生じた領域に対応するアクチュエータにより、うねり領域が所定の範囲内となるように、半導体基板を局部変形させる。そして、うねり領域を補正した状態で、基板全体を変形対象として半導体基板を変形させる。このように2段階で半導体基板を変形させるので、上記うねり領域が存在する場合でも、表面部の凹凸差を小さくし、切削面と表面部との距離を所定の範囲(切削量の要求精度)内にすることができる。すなわち、より確実に、切削面と表面部との距離を所定の範囲(切削量の要求精度)内にすることができる。
【0019】
また、請求項3に記載のように、
表面形状データを取得する工程にて取得された表面形状データに基づき、切削面と半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように、全体を変形対象として半導体基板を変形させる、変形工程としての全体変形工程と、
全体変形工程後に半導体基板の表面部の表面形状を測定し、切削面と変形された半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内であるか否かを判定する、判定工程としての第1判定工程と、
第1判定工程にて所定の範囲外と判定された場合、所定の範囲から外れ且つ最小波長の1/2以下のうねり領域の有無を判定する、判定工程としてのうねり判定工程と、
うねり領域ありと判定された場合、うねり領域に対応するアクチュエータにより、うねり領域を所定の範囲内となるように変形させる、変形工程としての局部変形工程と、
局部変形工程後に半導体基板の表面部の表面形状を測定し、切削面と変形された半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内であるか否かを判定する、判定工程としての第2判定工程と、を備えても良い。
【0020】
本発明によれば、先ず基板全体を変形対象として半導体基板を変形させる。そして、この変形状態で、所定の範囲から外れ且つ最小波長の1/2以下のうねりが生じた場合には、うねりが生じた領域に対応するアクチュエータにより、うねり領域が所定の範囲内となるように、半導体基板を局部変形させる。このように、本発明でも2段階で半導体基板を変形させるので、上記うねり領域が存在する場合でも、表面部の凹凸差を小さくし、切削面と表面部との距離を所定の範囲(切削量の要求精度)内にすることができる。すなわち、より確実に、切削面と表面部との距離を所定の範囲(切削量の要求精度)内にすることができる。
【0021】
請求項4に記載のように、下地電極を形成する工程の前に主面とは反対の裏面側から研削されて、所定厚さとされた半導体基板に好適である。半導体基板の裏面を研削する場合、半導体基板の少なくとも主面側に半導体素子(主面側の部分)を形成した後、主面側の表面に保護テープを貼り付けて裏面を研削し、これにより所定の厚さとする。このとき、保護テープには切削量の要求精度を超える厚さばらつきがあるため、保護テープの厚さばらつきが半導体基板に転写されてしまい、これにより、半導体基板が切削量の要求精度(±1μm以内)よりも大きい厚さばらつきを有することとなる。しかしながら、本発明によれば、主面側の表面に保護テープを貼り付けて裏面を研削してなる半導体基板であっても、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たしつつコストを低減できる。
【0022】
請求項5に記載のように、半導体素子が、半導体基板の厚み方向に電流が流れる縦型トランジスタ素子のときに特に好適である。このような縦型トランジスタ素子、例えば電力用(パワー系)のIGBTやMOSFETでは、半導体基板の厚さを薄くしてオン抵抗を低減するために、通常、半導体基板を裏面側から研削する。本発明によれば、縦型トランジスタ素子のオン抵抗を低減しつつ、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たし、且つ、コストを低減することができる。
【0023】
請求項6に記載のように、アクチュエータとして、圧電素子を用いた圧電アクチュエータを用いると良い。圧電アクチュエータを用いると、他のアクチュエータに比べて変位制御の精度を高くすることができる。また、バックラッシュが少なく、作動時の発熱量も小さいという利点もある。
【0024】
請求項7に記載のように、金属電極を形成する工程において、金属膜のうち開口部の内部に形成された部分のみを残すようにパターニングして、金属電極を形成しても良い。これによれば、開口部から臨む下地電極の表面及び開口部から下地電極の表面に向かって段差を形成する保護膜の側面に金属電極を形成することができる。また、保護膜の上面(側面を除く)に位置する金属膜を切削により除去するので、製造工程を簡素化することができる。
【0025】
請求項8に記載のように、表面形状測定手段による表面形状データの測定点数を、アクチュエータの数よりも多くすると良い。これによれば、アクチュエータ間の領域の変位も測定することができるので、表面形状の測定精度を向上させることができる。
【0026】
請求項9に記載のように、表面形状測定手段が、アクチュエータにより変位を与える点に対応する表面部の表面形状を少なくとも測定すると良い。これによれば、最も変形が大きい部分を測定することができるので、表面形状の測定精度を向上させることができる。
【0027】
請求項10に記載のように、表面形状測定手段として、切削面に平行な面に沿って走査されるレーザ変位計を採用すると良い。これによれば、表面形状を非接触で精度良く測定することができるとともに、測定時間を短くすることができる。
【0028】
次に、請求項11に記載の発明は、
半導体基板を吸着固定する吸着ステージと、
該吸着ステージを介して半導体基板に変位を与えるように、吸着ステージの裏面に当接して設けれた複数のアクチュエータと、を備え、
半導体基板の固定面と反対の主面上に下地電極が形成され、保護膜の開口部から望む下地電極及び保護膜を覆うように形成された金属膜を、変形前の吸着ステージと平行に設定された切削面にて切削して金属電極を形成するための金属電極形成装置であって、
複数のアクチュエータが、半導体基板の厚さ分布の空間周波数の最小波長に対し、1/2よりも大きく1以下の間隔で配置されていることを特徴とする。
【0029】
本発明の作用効果は、請求項1に記載の発明の作用効果と同じであるので、その記載を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る金属電極形成方法及び金属電極形成装置により金属電極が形成された半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】金属電極の形成方法を示す工程別の断面図である。
【図3】金属電極の形成方法を示す工程別の断面図である。
【図4】金属電極の形成方法を示す工程別の断面図である。
【図5】金属電極形成方法に適用される表面形状制御装置の概略構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は半導体基板側から見た平面図である。
【図6】金属電極にはんだを介してヒートシンクが接合された半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【図7】(a)〜(c)は、圧電アクチュエータの配置間隔と、半導体基板の表面部のうねりとの関係を示す模式的な図である。
【図8】半導体基板の厚さ分布を示す図である。
【図9】図8のデータをフーリエ変換し、空間周波数のデータとした図である。
【図10】圧電アクチュエータの配置を示す図である。
【図11】図10のデータをフーリエ変換し、空間周波数のデータとした図である。
【図12】図9のデータと図11のデータをコンボリューションした図である。
【図13】図12から導き出される誤差を示す図である。
【図14】図13のデータを逆フーリエ変換した図である。
【図15】図12の得られた情報(A4)を逆フーリエ変換してなる点を、図8及び図10のデータと重ね合わせた結果を示す図である。
【図16】圧電アクチュエータの配置間隔と誤差幅との関係を示す図である。
【図17】補正前の半導体基板の表面部のうねりの実測値と、圧電アクチュエータの各配置において、計算により上記うねりを再現した結果を示す図である。
【図18】うねり領域を説明するための図である。
【図19】本発明の第2実施形態に係る金属電極形成方法を示すフロー図である。
【図20】局部変形工程を説明するための模式的な図である。
【図21】金属電極形成方法の変形例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
【0032】
(第1実施形態)
本実施形態の特徴部分は、半導体装置の金属電極を切削加工により形成する際の、変形手段としてのアクチュエータの配置にある。それ以外の点については、上記した本出願人による特許文献2(特開2009−49356号公報)に示されるものと基本的に同じであるので、重複する部分の説明は簡素化し、アクチュエータの配置について詳細に説明する。
【0033】
図1は、第1実施形態に係る金属電極形成方法により金属電極が形成された半導体装置の概略構成を示す断面図である。図2〜図4は、金属電極の形成方法を示す工程別の断面図であり、図2、図3、図4の順に推移する。図5は、金属電極形成方法に適用される表面形状制御装置の概略構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は半導体基板側から見た平面図である。図6は、金属電極にはんだを介してヒートシンクが接合された半導体装置の概略構成を示す断面図である。なお、各図では、説明のために一部を拡大し、一部を省略して示している。
【0034】
図1に示すように、半導体装置10は、シリコン等からなり、素子が構成された半導体基板11と、素子の電極であり、半導体基板11の主面11aに形成された下地電極12と、絶縁材料からなり、主面11aと下地電極12の一部とを覆う保護膜13と、保護膜13に形成された開口部13aを介して下地電極12と接続された金属電極15と、を有している。
【0035】
半導体基板11に構成される素子(半導体素子)としては、特に限定されるものではない。本実施形態では、シリコンからなる半導体基板11に対し、厚み方向に電流が流れる縦型トランジスタ素子としてのIGBTが構成されている。なお、縦型トランジスタ素子としては、IGBT以外にも、縦型のMOSFETがある。これらゲートを有する縦型トランジスタ素子は、例えば負荷を駆動するためのインバータ内に備えられるパワーデバイスとして用いられる。また、このような半導体基板11を備える半導体装置10は、所謂パワーカードなどに用いられる。
【0036】
下地電極12は、素子と電気的に接続される電極のうち、素子と接続される部分である。本実施形態では、シリコンからなる半導体基板11に対し、Al、Al−Si,Al−Si−CuなどのAl合金などのAl系材料を用いて形成されている。また、半導体基板11に構成されたIGBTのエミッタやゲートと接続されている。なお、図1に示す下地電極12は全てエミッタと接続されたものである。以下においても、エミッタと接続されたもののみを例示する。一方、保護膜13は、例えば厚さ数μm〜20μmのポリイミド系樹脂からなり、下地電極12を露出させる開口部13aが形成されている。そして、保護膜13の上面13bに対して、開口部13aから臨む下地電極12の表面12aが引っ込むように段差が形成されている。
【0037】
金属電極15は、素子と電気的に接続される電極のうち、はんだやワイヤなどの部材により他の部材と接続される部分である。本実施形態では、金属電極15が、開口部13a内のみに形成されており、開口部13aを介して露出する下地電極12の表面12aと段差を形成する保護膜13の側面13cとを覆って形成されている。また、金属電極15が、下地電極12側からTi膜/Ni膜/Au膜の順に積層して形成されている。なお、金属電極15の膜構成としては、上記例に限定されるものではなく、例えば下地電極12側からNi膜/Au膜の順に積層した構成としても良いし、単層の金属膜でも良い。さらには、Ni膜の代わりに、NiV膜を用いても良い。
【0038】
次に、金属電極15の形成方法について説明する。まず、図2(a)に示すように、図示しない素子が構成された半導体基板11を準備する。本実施形態では、シリコンウェハ(半導体基板11)の主面側にIGBTの主面側の部分(エミッタ、ゲートなど)を形成し、次いで主面に保護テープを貼り付けた状態でウェハを裏面から研削し、厚さを100〜200μm程度とする。これは、上記のごとく、素子(IGBT)のオン抵抗を低減するためである。そして、研削後、ウェハの裏面側にIGBTの裏面側の部分(コレクタ)を形成し、次いで裏面上に裏面側の電極(コレクタ電極)を形成する。半導体基板11は、以上の工程を経てなるものである。このように、主面側の電極(下地電極12及び金属電極15)を形成する前に、素子の裏面側の部位や裏面側の電極を先に形成するのは、金
属電極15を形成する際に、その構成材料(Au)により、ウェハの露出された裏面側の部位が汚染されるのを防ぐためである。
【0039】
このように、下地電極12を形成する前の状態で、半導体基板11は、裏面側から研削されて所定厚さとされている。裏面を研削する際に用いる保護テープは、ウェハに貼り付けられる面内で厚さばらつきをもっている。具体的には、ウェハに貼り付けられる面内での厚さばらつきが数μm(1〜3μm)、製造ロット間での厚さばらつきが5μm程度ある。したがって、研削後、保護テープを剥がしたシリコンウェハ(半導体基板11)では、保護テープの厚さばらつきが転写されており、テープが厚かった部分は薄くなり、テープが薄かった部分では厚くなっている。なお、本発明者が確認したところ、直径200mm程度(100〜300m)のウェハを厚さ120μm程度(50〜300μm)に研削してなる半導体基板11では、金属膜14までを形成した状態(切削加工前の状態)で、表面部11cの高さばらつき(凹凸差)が8σで7.5μm程度であった。また、研削後、下地電極12までを形成した状態で、半導体基板11の厚み方向における表面部11cのばらつきが8σで5.5μm程度であった。この結果からも、保護テープの厚さばらつきの転写が、半導体基板11の厚さばらつきの主要因であると考えられる。
【0040】
この準備した半導体基板11の主面11aに、スパッタ法などによりAl−Si膜が成膜され、ホトリソグラフィー法によりパターニングされた下地電極12を形成する。また、下地電極12を覆うように、半導体基板11の主面11a全面に、スピンコート法などによりポリイミド系樹脂からなる厚さ10μmの保護膜13を形成する。そして、保護膜13の所定部位に、下地電極12を露出させる開口部13aを、ホトリソグラフィー法により表面から下地電極12に向けて開口して形成する。このように、保護膜13として樹脂系材料を用いることにより、厚さがある下地電極12を適切に覆うことができる。また、開口部13aが形成された状態で、保護膜13の上面13bに対して開口部13aから臨む下地電極12の表面12aが引っ込むような段差が形成される。
【0041】
開口部13aを備えた保護膜13の形成後、図2(b)に示すように、下地電極12及び保護膜13の上面13b、側面13cを覆って、スパッタ法などにより金属膜14を形成する。本実施形態では、Ti膜/NiV膜/Au膜を順に積層して金属膜14が形成されている。なお、NiV膜のVは、はんだに対するバリア層として機能する。
【0042】
金属膜14の形成後、図2(c)に示すように、半導体基板11を裏面11bにおいて、表面形状制御装置20(図5)の吸着ステージ21bに設けられた吸着面21aに載置し、吸着固定する。このとき、吸着面21aにおいて発生する吸着力により、裏面11bが平坦になるため、半導体基板11の表面部11cは、裏面11bの元の凹凸形状を反映して、凹凸が大きい表面形状となる。なお、表面部11cとは、金属膜14のうち、保護膜13の上面13bを覆っている部分を示す。また、「表面形状」とは、表面部11cの凹凸のプロファイルであり、表面部11cと後述する切断面Pとの距離のプロファイルに対応する。
【0043】
ここで、表面形状制御装置20の構成について、図5(a),(b)を参照して説明する。表面形状制御装置20は、半導体基板11を載置するステージ21と、半導体基板11を吸着固定するための吸着装置22と、半導体基板11の表面部11cの形状を測定する表面形状測定装置23と、半導体基板11を裏面11bから変形させるための変形装置24と、これらの装置を制御するための制御コンピュータ25とから構成されている。上記のうち、変形装置24が、特許請求の範囲に記載の金属電極形成装置に相当する。
【0044】
ステージ21は、吸着ステージ21bと下部ステージ21cとの間に中空部21dを有する中空形状に形成されており、吸着ステージ21bには、半導体基板11を吸着固定する吸着面21aと、真空ポンプなどの吸着装置22を用いて中空部21dを減圧することにより生じる吸着力を半導体基板11に作用させる吸着孔21eとが形成されている。
【0045】
吸着ステージ21bは、後述する変形装置24による変位を半導体基板11に加えるために、変形しやすく形成されている。ここでは、吸着ステージ21bは、厚さ0.5mm〜3mmの板状のステンレス鋼(SUS)により形成されている。このような吸着ステージ21bを介することで、圧電アクチュエータ24a間の変位を滑らかにつなぐことができる。また、下部ステージ21cには、吸着装置22を接続するための減圧孔21fと変形装置24とが設けられている。
【0046】
本実施形態では、変形装置24として、複数個の圧電アクチュエータ24aを用いた。圧電アクチュエータ24aは、所定の間隔で例えば格子状に配置されており、吸着ステージ21bの裏面21gに当接し、上向きの変位を発生させることができるように設けられている。この圧電アクチュエータ24aの配置が本実施形態の特徴部分である。この点については後述する。なお、図3(a),(b)、図4(a)、及び図5(a),(b)には、便宜上、16個の圧電アクチュエータ24aが、縦4個、横4個の格子状に配置されている場合を例示している。各圧電アクチュエータ24aは、制御コンピュータ25により独立して変位を制御することができ、それぞれ異なる変位を発生させることができる。ここで、圧電アクチュエータ24aは、変位制御の精度が高く、バックラッシュが少ないとともに、作動時の発熱量も小さいという利点がある。本実施形態では、圧電アクチュエータ24aのストロークを19μmとしている。
【0047】
圧電アクチュエータ24aに上向きの変位を生じさせると、吸着ステージ21bを介して半導体基板11に上向きの変位を与えて、半導体基板11を変形させることができる。ここで、圧電アクチュエータ24aは、吸着ステージ21bを介して半導体基板11に変位を与えるため、圧電アクチュエータ24aにより半導体基板11に局所的に応力が発生し、局所的に変形することを防止することができる。また、吸着装置22による負圧を用いて半導体基板11に下向きの変位を与えることもできる。
【0048】
変形装置24は、上端部を吸着ステージ21bの裏面21gと接合して設けてもよい。この構成を用いると、半導体基板11に上向きの変位を与える場合に遊びが生じないとともに、半導体基板11に吸着ステージ21bを介して下向きの変位を与えることもできる。
【0049】
表面形状測定装置23は、半導体基板11の表面部11cの表面形状を測定する装置である。本実施形態では、表面形状測定装置23としてレーザ変位計を用いた。レーザ変位計を用いると、表面形状を非接触で精度良く測定することができるとともに、測定時間を短くすることができる。表面形状測定装置23により測定された表面部11cの表面形状データは、制御コンピュータ25に対して出力される。
【0050】
半導体基板11を吸着ステージ21bの吸着面21aに吸着固定した後、図3(a)に示すように、表面形状測定装置23により半導体基板11の表面部11cの表面形状を測定する。ここでは、半導体基板11の表面部11cに格子状に測定点を設定して、表面形状測定装置23を、切削面Pに平行な面に沿って走査して半導体基板11の厚さを測定し、各点の測定データを制御コンピュータ25に対して出力する。そして、制御コンピュータ25では、各点の測定データに基づいて、各測定点間を補完して、半導体基板11の表面部11cの表面形状データを構築する。なお、切削面Pは、変位する前の吸着ステージ21bと平行であって、保護膜13の上面13b上に位置する金属膜14を確実に除去するために、保護膜13の一部(半導体基板11の厚み方向において、上面13bからの一部)を除去するような高さに設定されている。
【0051】
ここで、表面形状測定装置23は、図5(b)の直線Sに示すように、測定点に少なくとも変形装置24により変位が与えられる点に対応する表面部11cの点が含まれるように走査する。
【0052】
これによれば、最も変位が大きくなる測定点を測定することができるので、表面形状の測定精度を向上させることができる。また、測定点の数は圧電アクチュエータ24aの数よりも多くすることができる。これによれば、各圧電アクチュエータ24a間の領域の変位も測定することができ、各圧電アクチュエータ24a間を補完する測定点を増やすことができるため、表面形状の測定精度を向上させることができる。
【0053】
表面形状データの取得後、図3(b)に示すように、半導体基板11の裏面11bから変形装置24により変位を加えて、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが、後述する切削加工における要求精度内に収まるように半導体基板11を変形させ、表面形状を制御する。つまり、表面部11cの凹凸差が切削量の要求精度内に収まるように半導体基板11を変形させる。
【0054】
具体的には、制御コンピュータ25において構築された表面形状データに基づいて、表面部11cの凹凸差が、切削量の要求精度(±1μm以内)の範囲内になるように、制御コンピュータ25により変形装置24の各圧電アクチュエータ24aの変位量を制御して、吸着ステージ21bを介して裏面11bから半導体基板11に変位を与える。ここで、変形装置24の各圧電アクチュエータ24aの変位と半導体基板11の変形量との関係は、シミュレーションまたは実測によりあらかじめ求めておく。
【0055】
半導体基板11に変位を与えた後、図示しないが、変形された半導体基板11の表面部11cの表面形状を表面形状測定装置23により測定し、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内であるか否かを制御コンピュータ25において判定する。ここでは、表面部11cの凹凸差が±1μm以内であるか否かを判定する。
【0056】
制御コンピュータ25において、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内であると判定されると、続いて、図4(a)に示すように、バイト31を用いて金属膜14の表面から切削加工を行い、金属膜14をパターニングして金属電極15を形成する。本実施形態では、金属膜14とともに保護膜13の一部(上面13bからの一部)も切削加工され、新たな上面13dが表出する。また、バイト31と半導体装置10との相対速度は20m/s、切削加工のピッチは70μmに設定した。さらには、バイト31の金属膜14に対する高さ精度を、±1μm以下とした。
【0057】
上記切削条件で、半導体基板11の主面11a全面にわたって切削加工を行うことにより、保護膜13の上面13b上に位置する金属膜14を除去し、開口部13aの内部にのみ金属膜14を残すようにパターニングして金属電極15を形成することができる。つまり、金属電極15は、開口部13aから露出する下地電極12の表面12a及び段差を形成する保護膜13の側面13cを覆って形成される。
【0058】
そして、図4(b)に示すように、圧電アクチュエータ24aの変位を解除して、半導体基板11をステージ21から外すことにより、半導体基板11に金属電極15を形成することができる。
【0059】
上記した工程によれば、半導体基板11の主面11a全面にわたって切削加工を行うことにより、保護膜13の上面13b上に位置する金属膜14を除去し、開口部13aの内部にのみ金属膜14を残すようにパターニングして金属電極15を形成することができる。金属電極15は、開口部13aから露出する下地電極12の表面12a及び段差を形成する保護膜13の側面13cを覆って形成されているので、下地電極12の表面12aのみに金属電極15が形成される場合と比べて、金属電極15の強度を向上させることができる。
【0060】
また、吸着ステージ21bに吸着固定されることにより裏面11bの形状を反映して表面部11cの凹凸差が増大した半導体基板11について、表面部11cの凹凸差を小さくすることができる。これにより、切削加工の加工精度を向上させることができるため、金属電極形成における製品歩留まりを向上させることができる。
【0061】
このようにして得られる半導体装置10の金属電極15は、はんだやワイヤなどの部材を介して他の部材が接続される。例えば、図6に示すように、半導体基板11の主面11aの大部分を占めるエミッタ電極としての金属電極15には、はんだ41を介してヒートシンク40が接合された構造を採用することができる。ここで、金属電極15は、その表面に凹部を有しているため、これにより、はんだ41との接触面積を増大させることができ、ひいては、はんだ41の接合強度を向上させることができる。
【0062】
しかしながら、上記した金属電極形成方法では、変形手段としての圧電アクチュエータ24aの配置によって、半導体基板11における表面部11cの凹凸、すなわちうねりを精度よく補正することができない恐れがある。図7(a)〜(c)は、圧電アクチュエータの配置間隔と、半導体基板の表面部のうねりとの関係を示す模式的な図である。
【0063】
圧電アクチュエータ24aの配置間隔(隣接する圧電アクチュエータ24aの中心間の距離)を広くすると、例えば図7(a)に示すように、圧電アクチュエータ24aにより半導体基板11を変形させても、半導体基板11の表面部11cのうねりを補正しきれず、切削量の要求精度を満たすことができない。
【0064】
一方、圧電アクチュエータ24aの配置間隔(隣接する圧電アクチュエータ24aの中心間の距離)を狭くすると、例えば図7(b)に示すように、圧電アクチュエータ24aにより半導体基板11を変形させた状態で、半導体基板11の表面部11cのうねりを補正し、切削量の要求精度を満たすことができる。しかしながら、圧電アクチュエータ24aの配置間隔を狭くするほど、圧電アクチュエータ24aの個数が増加し、また個数増加に伴って制御系も複雑化するため、コストが増加することとなる。
【0065】
したがって、圧電アクチュエータ24aの配置間隔は、例えば図7(c)に示すように、圧電アクチュエータ24aにより半導体基板11を変形させた状態で、半導体基板11の表面部11cのうねりを補正し、切削量の要求精度を満たすことができる配置間隔であって、できる限り広くすることが好ましい。
【0066】
そこで、本発明者は、圧電アクチュエータ24aの配置間隔と、変形後の半導体基板11の表面部11cのうねりとの関係について鋭意検討を行った。具体的には、半導体基板11の厚さ分布を実測し、その結果をフーリエ変換して、空間周波数解析を行った。そして、解析結果をもとに、圧電アクチュエータ24aの配置間隔を仮定してこの配置での半導体基板11の表面部11cのうねり補正結果を計算し、配置間隔と誤差幅(補正しきれずに残ったうねり)との関係について精査した。以下にその結果を、順をおって説明する。
【0067】
図8は、半導体基板の厚さ分布を示す図である。図9は、図8のデータをフーリエ変換し、空間周波数のデータとした図である。図10は、圧電アクチュエータの配置を示す図である。図11は、図10のデータをフーリエ変換し、空間周波数のデータとした図である。図12は、図9のデータと図11のデータをコンボリューションした図である。図13は、図12から導き出される誤差を示す図である。図14は、図13のデータを逆フーリエ変換した図である。図15は、図12の得られた情報(A4)を逆フーリエ変換してなる点を、図8及び図10のデータと重ね合わせた結果を示す図である。図16は、圧電アクチュエータの配置間隔と誤差幅との関係を示す図である。図17は、補正後の半導体基板のうねりの実測値と計算結果を示す図である。
【0068】
なお、この検討に際しては、上記した半導体基板11同様、表面部11cのうねり(凹凸差)が、8σで7.5μm程度のものを用いた。ただし、測定を簡素化するために、主面11a全面を覆うように下地電極12、保護膜13、及び金属膜14がそれぞれ形成された半導体基板11(半導体ウェハ)を準備し、金属膜14の表面全面を表面部11cに相当する部分とした。
【0069】
先ず準備した半導体基板11について、面内の厚さ分布を測定する。この厚さ分布の測定では、半導体基板11を吸着ステージ21bの吸着面21aに搭載し、吸引固定した状態で、表面形状測定装置23としてレーザ変位計を、吸着面21aに平行な一方向(X方向)に沿って走査し、測定を行う。具体的には、レーザ変位計の走査ライン上において、半導体基板11の中心の厚さを、半導体基板11が有りの状態と無しの状態のレーザ変位計の値から求め、走査ラインの中心以外の部分は、半導体基板11有りでの、中心を基準とするレーザ変位計の値から求める。その結果を図8に示す。
【0070】
次いで、得られた図8に示すデータをフーリエ変換し、周波数成分とその強度を示すデータとする。その結果を図9に示す。図9に示すように、半導体基板11の表面部11cのうねりには高周波成分が認められず、0.02/mm以下の低周波成分が殆どであり、空間周波数の最小波長は50mmであることが明らかとなった。なお、図9中の破線A1は、図9の波形(実線)を、誤差を含めて模式的に示したものである。
【0071】
一方、レーザ変位計が走査される半導体基板11上のラインにおいて、図10に示すように、ΔXの配置間隔(ピッチ)で複数の圧電アクチュエータ24aを配置するものとし、フーリエ変換により、周波数成分のデータとする。その結果を図11に示す。図11に示すように、この場合の周波数は1/ΔXである。この1/ΔXの周波数成分を示す線をA2とする。
【0072】
次いで、半導体基板11の厚さ分布の空間周波数データ(図9)と、圧電アクチュエータ24aの配置の空間周波数データ(図11)とを、図12に示すようにコンボリューション(畳み込み)し、得られた情報と、圧電アクチュエータ24aの所定の配置間隔で、うねりを補正した後の、半導体基板11の表面部11cのうねり(補正しきれずに残ったうねり、すなわち誤差)とを求める。
【0073】
圧電アクチュエータ24aが線A2に示す周波数で配置された状態で、半導体基板11の厚さ分布の周波数成分が線A1となる。半導体基板11の厚さ分布の周波数成分を示す線A1のうち、圧電アクチュエータ24aの配置を示す線A2よりも高周波側の部分A11が、補正しきれずに残る誤差となる。この線A11を線A2で折り返したものが線A3であり、この線A3が上記誤差を示す。
【0074】
また、線A4は、線A2よりも低周波側の範囲において、線A1と線A3とを足し合わせたものである。この線A4が、得られた情報(所定のピッチで配置した圧電アクチュエータ24aにより補正した後のうねりで誤差を含むうねりの周波数成分)を示す。すなわち、線A3は、線A4と線A1の差であり、上記誤差を示す。
【0075】
図13では、図12のうち、補正後の表面部11cのうねり、すなわち誤差を示すデータ(線A3)のみを抜き出して示している。そして、この誤差データ(周波数成分)を逆フーリエ変換することで、図14に示すように、誤差データを、位置と厚さとの関係とすることができる。この図14において、波形の最大値と最小値の差が、所定配置での圧電アクチュエータ24aによっても補正しきれずに残る誤差幅を示すこととなる。図14では、一例として、圧電アクチュエータ24aの配置間隔ΔXが20mmの結果を示している。
【0076】
なお、図15は、図8に示す半導体基板11の厚さ分布のデータ(位置データ)と、図10に示す圧電アクチュエータ24aの配置データ(位置データ)とを重ね合わせ、さらに、図12に示す線A4(得られた情報)を逆フーリエ変換したデータを重ね合わせた図である。図15に示す圧電アクチュエータ24aの各配置位置において、半導体基板11の厚さ分布と得られた情報(補正後の、誤差を含むうねりの周波数成分)を逆フーリエ変換した情報と差が誤差に相当し、差の最大値と最小値の差が誤差幅を示すこととなる。このように、得られた情報(A4)を逆フーリエ変換しても、図14に示す誤差幅を求めることができる。
【0077】
そして、圧電アクチュエータ24aの配置間隔ΔXを変数とし、各配置間隔について上記した誤差幅を求める。それをまとめたものが図16である。図16に示すように、圧電アクチュエータ24aの配置間隔ΔXを50mm以下、すなわち変形前の半導体基板11の表面部11cのうねりの空間周波数の最小波長(50mm)と同じ長さ以下(1波長以下)とすれば、誤差幅を±1μm(2μmの幅)以下とすることができることが明らかとなった。すなわち、圧電アクチュエータ24aの配置間隔ΔXを50mm以下とすれば、切削量の要求精度(±1μm)内となるように、半導体基板11を変形させることができることが明らかとなった。
【0078】
なお、図17は、補正前の半導体基板11の表面部11cのうねりの実測値と、圧電アクチュエータ24aの各配置において、計算により上記うねりを再現した結果を示す図である。測定値(実測値)を実線、圧電アクチュエータ24aの配置間隔が10mmを破線、20mmを一点鎖線、50mmを二点鎖線で示している。測定値は、サンプリング0.4mmピッチの静電容量式厚さ測定器における測定値である。図17に示すように、配置間隔が狭くなるほどその波形が測定値に近づいており、10mm間隔ではその波形が測定値の波形とほぼ一致しているが、配置間隔50mmであっても、測定値との差が2μm以内となっている。この結果からも、圧電アクチュエータ24aの配置間隔ΔXを50mm以下とすれば、切削量の要求精度(±1μm)内となるように、半導体基板11を変形させることができることが明らかである。
【0079】
また、周知の標本化定理(サンプリング定理)によれば、表面部11cのうねりに対し、その空間周波数の波長の1/2以下の間隔で圧電アクチュエータ24aを配置すると、うねりを復元できることが知られている。すなわち、標本化定理に基づいて理想的に圧電アクチュエータ24aを配置した場合、うねりを精度よく補正するには、半導体基板11のうねりの空間周波数の波長の1/2が、圧電アクチュエータ24aの配置間隔の上限となる。したがって、標本化定理に基づいた場合、圧電アクチュエータ24aの配置間隔は25mmピッチ以下となる。
【0080】
これに対し、本実施形態では、圧電アクチュエータ24aの配置間隔を、変形前の半導体基板11の表面部11cのうねりの空間周波数の最小波長(50mm)に対し、1/2よりも大きくしても、誤差幅を±1μm(2μmの幅)以下とすることができる。
【0081】
以上に基づき、本実施形態では、圧電アクチュエータ24aの配置間隔を、半導体基板11の厚さ分布の空間周波数の最小波長に対し、1/2よりも大きく1以下とする。したがって、従来の1/2以下の配置間隔に比べて、圧電アクチュエータ24aの個数を低減できるため、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たしつつコストを低減できる。
【0082】
また、本実施形態では、変形手段としての圧電アクチュエータ24aが、吸着ステージ21bの裏面21gに当接して設けられており、吸着ステージ21bを介して半導体基板11に変位を与えるため、変形手段により半導体基板11に局所的に応力が発生し、半導体基板11が局所的に変形することを防止することができる。
【0083】
また、本実施形態では、半導体基板11が、下地電極12を形成する工程の前に、主面11aとは反対の裏面11b側から研削されて、所定厚さとされている。このような半導体基板11では、上記のごとく、保護テープの厚さばらつきが半導体基板11に転写され、これにより、切削量の要求精度(±1μm以内)よりも大きい厚さばらつきを有している。しかしながら、このような半導体基板11であっても、本実施形態に係る金属電極形成方法によれば、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たしつつコストを低減できる。
【0084】
また、本実施形態では、半導体基板11に、縦型トランジスタ素子としてのIGBTが構成されている。このような縦型トランジスタ素子、例えば電力用(パワー系)のIGBTやMOSFETでは、半導体基板11の厚さを薄くしてオン抵抗を低減するために、通常、半導体基板11を裏面11b側から研削する。すなわち、上記したように、保護テープの厚さばらつきが半導体基板11に転写され、半導体基板11の厚さばらつきが大きい。しかしながら、このような半導体基板11であっても、本実施形態に係る金属電極形成方法によれば、縦型トランジスタ素子のオン抵抗を低減しつつ、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たし、且つ、コストを低減することができる。
【0085】
(第2実施形態)
本発明者がn増しで確認したところ、稀ではあるが、第1実施形態に示した金属電極形成方法及び金属電極装置を用いても、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たせないことがあることが明らかとなった。また、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たせない半導体基板11は、厚さ分布の最大値と最小値の中心に対して切削加工の要求精度の範囲から外れ、且つ、上記最小波長の1/2以下のうねりの領域を有していた。すなわち、うねりの高周波成分を有していた。このうねり領域を図18に例示する。図18では、上記中心が580μmとなっている。そして、破線で囲まれる領域が上記うねり領域となっている。
【0086】
そこで、本実施形態では、第1実施形態同様、圧電アクチュエータ24aの配置間隔を、半導体基板11の厚さ分布の空間周波数の最小波長に対し、1/2よりも大きく1以下としつつ、以下に示す方法で金属電極15を形成する。
【0087】
金属膜14の形成後、図19に示すように、半導体基板11を吸着ステージ21bの吸着面21aに吸着固定し、表面形状測定装置23により、変形前の半導体基板11の表面部11cの表面形状を測定する(ステップ10)。ここまでの工程は、第1実施形態と同じである。
【0088】
次いで、制御コンピュータ25が、ステップ10で取得した表面形状データに基づいて、切削面Pと表面部11cとの距離が切削加工における要求精度の範囲から外れ、且つ、上記した最小波長の1/2以下のうねり領域が存在するか否かを判定する(ステップ11)。このステップ11が、特許請求の範囲に記載のうねり判定工程に相当する。
【0089】
うねり領域ありと判定すると、制御コンピュータ25は、うねり領域が切削加工における要求精度の範囲内になるように、うねり領域に対応する圧電アクチュエータ24の変位量を制御する。これにより、半導体基板11には、吸着ステージ21bを介して裏面11bから局所的な変位が与えられる(ステップ12)。例えば図18に示すうねり領域の場合、うねり領域部分の厚さが増すように、半導体基板11に局所的な変位を与える。このステップ12が、特許請求の範囲に記載の局部変形工程に相当する。
【0090】
なお、うねり領域に対応する圧電アクチュエータ24の個数は特に限定されるものではない。例えば、図20に示すように、うねり領域11uの直下に圧電アクチュエータ24が位置しない場合、うねり領域11uに近接する4つの圧電アクチュエータ24tにより、半導体基板11に局所的な変位を与えても良い。また、うねり領域11uの直下に1つの圧電アクチュエータ24が存在する場合には、この圧電アクチュエータ24によって半導体基板11に局所的な変位を与えても良い。
【0091】
半導体基板11に局所的な変位を与えた後、表面形状測定装置23により、局部変形された半導体基板11の表面部11cの表面形状を測定する(ステップ13)。そして、制御コンピュータ25は、取得した表面形状データに基づいて、圧電アクチュエータ24の変位量を制御し、吸着ステージ21bを介して裏面11bから、全体を変形対象として半導体基板11に変位を与える(ステップ14)。このステップ13及びステップ14が、特許請求の範囲に記載の全体変形工程に相当する。
【0092】
なお、ステップ11にてうねり領域ありと判定した場合は、ステップ14において、制御コンピュータ25が、ステップ10で取得した表面形状データに基づいて圧電アクチュエータ24の変位量を制御し、吸着ステージ21bを介して裏面11bから、全体を変形対象として半導体基板11に変位を与える。
【0093】
半導体基板11の全体に変位を与えた後、変形された半導体基板11の表面部11cの表面形状を表面形状測定装置23により測定する(ステップ15)。そして、制御コンピュータ25は、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内であるか否かを判定する(ステップ16)。
【0094】
制御コンピュータ25において、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内であると判定されると、バイト31を用いて金属膜14の表面から切削加工を行い、金属膜14をパターニングして金属電極15を形成する(ステップ17)。
【0095】
一方、ステップ16において、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲外であると判定されると、ステップ11に戻り、半導体基板11のうねりを再度補正する。
【0096】
上記したように、本実施形態では、半導体基板11に、切削加工の要求精度の範囲から外れ、且つ、上記最小波長の1/2以下のうねり領域が存在しても、うねり領域に対応する圧電アクチュエータ24により、うねり領域が切削加工の要求精度の範囲となるように、半導体基板11を局部変形させる。そして、うねり領域を補正した状態で、基板全体を変形対象として半導体基板11を変形させる。
【0097】
このように2段階で半導体基板11を変形させるので、上記うねり領域が存在する場合でも、表面部11cの凹凸差を小さくし、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内を切削量の要求精度内にすることができる。すなわち、より確実に、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきを切削加工における要求精度の範囲内にすることができる。
【0098】
(変形例)
上記実施形態では、基板全体を対象とする半導体基板11の変形の前に、うねり領域を局所的に変形させる例を示した。しかしながら、基板全体を対象とする半導体基板11の変形を行った後に、うねり領域を局所的に変形させても良い。この金属電極形成方法を図21に示す。
【0099】
金属膜14の形成後、半導体基板11を吸着ステージ21bの吸着面21aに吸着固定し、表面形状測定装置23により、変形前の半導体基板11の表面部11cの表面形状を測定する(ステップ20)。ここまでの工程は、第1実施形態と同じである。
【0100】
そして、制御コンピュータ25は、取得した表面形状データに基づいて、圧電アクチュエータ24の変位量を制御し、吸着ステージ21bを介して裏面11bから、全体を変形対象として半導体基板11に変位を与える(ステップ21)。このステップ21が、特許請求の範囲に記載の全体変形工程に相当する。
【0101】
半導体基板11の全体に変位を与えた後、変形された半導体基板11の表面部11cの表面形状を表面形状測定装置23により測定する(ステップ22)。そして、制御コンピュータ25は、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内であるか否かを判定する(ステップ23)。このステップ22及びステップ23が、特許請求の範囲に記載の第1判定工程に相当する。
【0102】
制御コンピュータ25において、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内であると判定されると、バイト31を用いて金属膜14の表面から切削加工を行い、金属膜14をパターニングして金属電極15を形成する(ステップ24)。
【0103】
一方、ステップ16において、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲外であると判定されると、制御コンピュータ25は、ステップ22で取得した表面形状データに基づいて、切削面Pと表面部11cとの距離が切削加工における要求精度の範囲から外れ、且つ、上記した最小波長の1/2以下のうねり領域が存在するか否かを判定する(ステップ25)。このステップ25が、特許請求の範囲に記載のうねり判定工程に相当する。
【0104】
うねり領域ありと判定すると、制御コンピュータ25は、うねり領域が切削加工における要求精度の範囲内になるように、うねり領域に対応する圧電アクチュエータ24の変位量を制御する。これにより、半導体基板11には、吸着ステージ21bを介して裏面11bから局所的な変位が与えられる(ステップ26)。このステップ26が、特許請求の範囲に記載の局部変形工程に相当する。
【0105】
半導体基板11に局部的な変位を与えた後、変形された半導体基板11の表面部11cの表面形状を表面形状測定装置23により測定する(ステップ27)。そして、制御コンピュータ25は、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内であるか否かを判定する(ステップ28)。このステップ27及びステップ28が、特許請求の範囲に記載の第2判定工程に相当する。
【0106】
そして、ステップ28で切削加工における要求精度の範囲内であると判定されると、バイト31を用いて金属膜14の表面から切削加工を行い、金属膜14をパターニングして金属電極15を形成する(ステップ24)。
【0107】
なお、ステップ25にてうねり領域なしと判定された場合、及び、ステップ28にて切削加工における要求精度の範囲外と判定された場合は、ステップ21に戻り、半導体基板11のうねりを再度補正する。
【0108】
この金属電極形成方法においても、2段階で半導体基板11を変形させるので、切削量の要求精度から外れ、且つ、最小波長の1/2以下のうねり領域が存在しても、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内を切削量の要求精度内にすることができる。すなわち、より確実に、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきを切削加工における要求精度の範囲内にすることができる。
【0109】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0110】
本実施形態では、金属電極15が、開口部13a内に位置し、且つ、その表面に凹部を有する例を示した。しかしながら、金属電極15の配置は、上記例に限定されるものではない。例えばその表面に凹部を有さず、平坦なものを採用することができる。上記したように、開口部13a内のみ金属電極15が位置する構成の場合、保護膜13の上面13b(側面13cを除く)に位置する金属膜14を、保護膜13の一部とともに切削により除去することが形成できるので、製造工程を簡素化することができる。
【0111】
本実施形態では、半導体基板11が、下地電極12を形成する工程の前に、主面11aとは反対の裏面11b側から研削されて、所定厚さとされている例を示した。しかしながら、下地電極12を形成する前において、半導体基板11の厚さばらつき(吸着ステージ21bに吸着固定した状態での表面部11cの凹凸差)が、切削量の要求精度(±1μm以内)よりも大きいものであれば良い。
【0112】
本実施形態では、半導体基板11に素子としてIGBTが構成される例を示した。しかしながら、縦型のパワーMOSFETを採用しても良い。さらには、LDMOSトランジスタ素子やバイポーラトランジスタ素子などの横型の素子を採用しても良い。
【0113】
本実施形態では、アクチュエータとして圧電アクチュエータ24aの例を示したが、特に限定されるものではない。ただし、圧電アクチュエータ24aを用いると、他のアクチュエータに比べて変位制御の精度を高くすることができる。また、バックラッシュが少なく、作動時の発熱量も小さいという利点もある。
【符号の説明】
【0114】
10・・・半導体装置
11・・・半導体基板
11a・・・主面
11c・・・表面部
12・・・下地電極
13・・・保護膜
13a・・・開口部
13b,13d・・・上面
14・・・金属膜
15・・・金属電極
21b・・・吸着ステージ
24a・・・圧電アクチュエータ(アクチュエータ)
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体基板の主面に形成された下地電極に対する接続用の金属電極を、切削加工により金属膜をパターニングして形成する半導体装置の金属電極形成方法及び金属電極形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
はんだ接合用などの金属電極を安価に形成する技術として、例えば特許文献1には、パターニングにホトリソグラフィー工程を行わずに金属電極を形成する技術が示されている。
【0003】
特許文献1では、半導体基板の一面上に下地電極を形成し、下地電極の上に保護膜を形成し、保護膜に開口部を形成するとともに、開口部から臨む下地電極の表面上に、接続用の金属電極を形成してなる半導体装置において、保護膜の上面に対して開口部から臨む下地電極の表面が引っ込むように段差が形成されていることを利用して、下地電極及び保護膜の上に形成した金属膜を切削加工によりパターニングし、金属電極としている。
【0004】
このような半導体装置では、半導体基板の厚み方向にばらつきが生じても、保護膜の上面上に位置する金属膜を切削加工によって確実に除去するために、保護膜上の金属膜とともに保護膜の一部も除去される。しかしながら、半導体装置では、半導体基板に構成される半導体素子の電気絶縁性の確保や、半導体基板の面内における電気絶縁性のばらつきを抑制するために、所定厚さの保護膜を確保する必要がある。したがって、切削により金属電極をパターニングする場合、半導体基板の全面において、金属膜の表面を基準とした切削量のばらつきを、±1μm以内(2μm以内)という高い精度で切削加工を行うことが好ましい。例えば、アルミニウムからなる厚さ5μmの下地電極に対し、保護膜を、半導体基板の一面上の部分で厚さ10μmとなるように形成すると、保護膜の下地電極上の部分の厚さは約8μmとなる。したがって、電気絶縁の信頼性確保のために必要な最低膜厚約3μmを、下地電極上の部分においても確保するためには、2μm以内(±1μm以内)という精度が必要となる。
【0005】
一方、切削加工では、半導体基板を吸着ステージ上に吸着固定するが、半導体基板の裏面は平坦になるように変形されるため、半導体基板の主面が、裏面の元の凹凸形状を反映した形状となる。また、切削加工は吸着ステージと平行な面に沿って行われる。したがって、半導体基板が、その面内に、上記した切削量の要求精度(±1μm以内)よりも大きい厚さばらつきを有する場合には、面内の一部に切削量の要求精度を満足しない領域が存在することとなり、製造歩留が低下する。
【0006】
これに対し、本出願人は、特許文献2に記載の方法を提案している。特許文献2では、金属膜が形成された半導体基板を吸着ステージに吸着固定した後に、表面形状測定手段により、吸着ステージに吸着固定された半導体基板の金属膜のうち保護膜を覆っている表面部の表面形状データを取得する。次いで、表面形状データに基づいて、半導体基板に吸着ステージ側から変位を与えて変形させる変形手段により、吸着ステージと平行に設定された切削面と半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように変形させる。そして、表面形状測定手段により変形された半導体基板の表面形状を測定し、切削面と表面部との距離が所定の範囲内であると判定された場合に、変形手段により変形された半導体基板を吸着ステージに吸着固定したまま、切削面において切削加工を行うようにしている。これによれば、半導体基板における表面部の凹凸差を小さくした状態で切削加工するので、製造歩留を向上させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−186304号公報
【特許文献2】特開2009−49356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2では、変形手段としての複数個のアクチュエータの配置については特に言及していない。したがって、アクチュエータの配置によっては、半導体基板における表面部の凹凸、すなわちうねりを精度よく補正することができない恐れがある。基板表面のうねりを精度よく補正するには、アクチュエータの配置間隔(ピッチ)を狭くするほど好ましいが、それに伴い、アクチュエータの本数が増加し、本数増加に伴って制御系も複雑化するため、コストが増加してしまう。
【0009】
なお、周知の標本化定理(サンプリング定理)に基づけば、基板表面のうねりの空間周波数の波長に対し、該波長の1/2以下の間隔でアクチュエータを配置すると、アクチュエータの変位をつないでうねりを復元できる。すなわち、標本化定理に基づいて理想的にアクチュエータを配置したとしても、うねりを精度よく補正するには、上記空間周波数の波長の1/2が、アクチュエータの配置間隔の上限となる。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑み、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たしつつコストを低減できる半導体装置の金属電極形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する為に請求項1に記載の半導体装置の金属電極形成方法は、
半導体基板の主面に、半導体素子と電気的に接続された下地電極を形成する工程と、
下地電極を覆う保護膜を形成した後、該保護膜に下地電極を露出させる開口部を形成する工程と、
保護膜及び開口部から臨む下地電極の表面を覆う金属膜を形成する工程と、半導体基板を吸着固定する吸着ステージに、金属膜が形成された半導体基板を吸着固定した後に、半導体基板の主面に臨んで配設され、半導体基板の表面形状を測定する表面形状測定手段により、吸着ステージに吸着固定された半導体基板の、金属膜のうち保護膜を覆っている表面部の表面形状データを取得する工程と、
表面形状測定手段により取得された表面形状データに基づいて、吸着ステージに固定された半導体基板に吸着ステージ側から変位を与えて変形させる変形手段により、変形前の吸着ステージと平行に設定された切削面と半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように変形させる変形工程と、
表面形状測定手段により、変形された半導体基板の表面部の表面形状を測定し、切削面と変形された半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内であるか否かを判定する判定工程と、
切削面と変形された半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内であると判定された場合に、変形された半導体基板を吸着ステージに吸着固定したまま、切削面において切削を行う切削加工により、金属膜をパターニングして金属電極を形成する工程と、を備える。
【0012】
そして、変形手段として、変位をそれぞれ制御可能な複数個のアクチュエータを用い、複数個のアクチュエータを、吸着ステージを介して半導体基板に変位を与えるように、吸着ステージの裏面に当接してそれぞれ設けるとともに、アクチュエータの配置間隔を、半導体基板の厚さ分布の空間周波数の最小波長に対し、1/2よりも大きく1以下とすることを特徴とする。
【0013】
本発明者は、先ず、金属膜が形成された半導体基板の厚さ分布を測定し、この測定結果に基づいて、基板表面のうねりの振幅と空間周波数の波長分布を明らかにした。そして、アクチュエータの配置間隔と基板表面のうねりとの関係について鋭意検討を行った。その結果、アクチュエータの配置間隔を、半導体基板の厚さ分布の空間周波数の最小波長に対し、1/2よりも大きく1以下としても、切削量の要求精度を満たすことができることを新たに見出した。本発明はこの知見に基づいており、従来の1/2以下の配置間隔に比べて、アクチュエータの本数を低減できるため、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たしつつコストを低減できる。なお、アクチュエータの配置間隔を、空間周波数の最小波長よりも長くすると、うねりを補正しきれず、切削量の要求精度を満たすことができなかった。
【0014】
なお、本発明によれば、切削加工により、金属膜をパターニングして金属電極を形成することができる。また、切削加工するに際し、金属膜が形成された半導体基板を吸着ステージに吸着固定した状態で、表面形状測定手段により、半導体基板の表面部の表面形状データを取得する。そして、この表面形状データに基づいて、変形手段としての複数個のアクチュエータにより、切削面と半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように半導体基板を変形させる。また、表面形状測定手段により、変形された半導体基板の表面形状を測定し、切削面と表面部との距離が所定の範囲内であると判定された場合に、変形手段により変形された半導体基板を吸着ステージに吸着固定したまま、切削面において切削加工を行う。したがって、吸着ステージに吸着固定されることにより裏面形状を反映して表面部の凹凸差が増大した半導体基板について、表面部の凹凸差を小さくし、切削面と表面部との距離を所定の範囲(切削量の要求精度)内にすることができる。
【0015】
また、変形手段として、変位をそれぞれ制御可能な複数個のアクチュエータを備えているため、半導体基板の変形状態に応じて異なる変位を与えることができ、半導体基板の表面形状を精度良く制御することができる。
【0016】
また、変形手段としてのアクチュエータは、吸着ステージの裏面に当接して設けられており、吸着ステージを介して半導体基板に変位を与えるため、変形手段により半導体基板に局所的に応力が発生し、半導体基板が局所的に変形することを防止することができる。
【0017】
請求項2に記載のように、変形工程として、
表面形状測定手段により取得された表面形状データに基づいて、所定の範囲から外れ且つ最小波長の1/2以下のうねり領域の有無を判定するうねり判定工程と、
うねり領域がある場合に、うねり領域に対応するアクチュエータにより、うねり領域を所定の範囲内となるように変形させる局部変形工程と、
うねり領域なしと判定された場合、上記表面形状データに基づき、切削面と半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように、全体を変形対象として半導体基板を変形させ、うねり領域ありと判定された場合、局部変形工程後に、表面形状測定手段により、変形された半導体基板の表面部の表面形状を測定し、取得された表面形状データに基づき、切削面と半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように、全体を変形対象として半導体基板を変形させる全体変形工程と、を含むことが好ましい。
【0018】
本発明によれば、所定の範囲から外れ且つ最小波長の1/2以下のうねりが生じても、うねりが生じた領域に対応するアクチュエータにより、うねり領域が所定の範囲内となるように、半導体基板を局部変形させる。そして、うねり領域を補正した状態で、基板全体を変形対象として半導体基板を変形させる。このように2段階で半導体基板を変形させるので、上記うねり領域が存在する場合でも、表面部の凹凸差を小さくし、切削面と表面部との距離を所定の範囲(切削量の要求精度)内にすることができる。すなわち、より確実に、切削面と表面部との距離を所定の範囲(切削量の要求精度)内にすることができる。
【0019】
また、請求項3に記載のように、
表面形状データを取得する工程にて取得された表面形状データに基づき、切削面と半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように、全体を変形対象として半導体基板を変形させる、変形工程としての全体変形工程と、
全体変形工程後に半導体基板の表面部の表面形状を測定し、切削面と変形された半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内であるか否かを判定する、判定工程としての第1判定工程と、
第1判定工程にて所定の範囲外と判定された場合、所定の範囲から外れ且つ最小波長の1/2以下のうねり領域の有無を判定する、判定工程としてのうねり判定工程と、
うねり領域ありと判定された場合、うねり領域に対応するアクチュエータにより、うねり領域を所定の範囲内となるように変形させる、変形工程としての局部変形工程と、
局部変形工程後に半導体基板の表面部の表面形状を測定し、切削面と変形された半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内であるか否かを判定する、判定工程としての第2判定工程と、を備えても良い。
【0020】
本発明によれば、先ず基板全体を変形対象として半導体基板を変形させる。そして、この変形状態で、所定の範囲から外れ且つ最小波長の1/2以下のうねりが生じた場合には、うねりが生じた領域に対応するアクチュエータにより、うねり領域が所定の範囲内となるように、半導体基板を局部変形させる。このように、本発明でも2段階で半導体基板を変形させるので、上記うねり領域が存在する場合でも、表面部の凹凸差を小さくし、切削面と表面部との距離を所定の範囲(切削量の要求精度)内にすることができる。すなわち、より確実に、切削面と表面部との距離を所定の範囲(切削量の要求精度)内にすることができる。
【0021】
請求項4に記載のように、下地電極を形成する工程の前に主面とは反対の裏面側から研削されて、所定厚さとされた半導体基板に好適である。半導体基板の裏面を研削する場合、半導体基板の少なくとも主面側に半導体素子(主面側の部分)を形成した後、主面側の表面に保護テープを貼り付けて裏面を研削し、これにより所定の厚さとする。このとき、保護テープには切削量の要求精度を超える厚さばらつきがあるため、保護テープの厚さばらつきが半導体基板に転写されてしまい、これにより、半導体基板が切削量の要求精度(±1μm以内)よりも大きい厚さばらつきを有することとなる。しかしながら、本発明によれば、主面側の表面に保護テープを貼り付けて裏面を研削してなる半導体基板であっても、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たしつつコストを低減できる。
【0022】
請求項5に記載のように、半導体素子が、半導体基板の厚み方向に電流が流れる縦型トランジスタ素子のときに特に好適である。このような縦型トランジスタ素子、例えば電力用(パワー系)のIGBTやMOSFETでは、半導体基板の厚さを薄くしてオン抵抗を低減するために、通常、半導体基板を裏面側から研削する。本発明によれば、縦型トランジスタ素子のオン抵抗を低減しつつ、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たし、且つ、コストを低減することができる。
【0023】
請求項6に記載のように、アクチュエータとして、圧電素子を用いた圧電アクチュエータを用いると良い。圧電アクチュエータを用いると、他のアクチュエータに比べて変位制御の精度を高くすることができる。また、バックラッシュが少なく、作動時の発熱量も小さいという利点もある。
【0024】
請求項7に記載のように、金属電極を形成する工程において、金属膜のうち開口部の内部に形成された部分のみを残すようにパターニングして、金属電極を形成しても良い。これによれば、開口部から臨む下地電極の表面及び開口部から下地電極の表面に向かって段差を形成する保護膜の側面に金属電極を形成することができる。また、保護膜の上面(側面を除く)に位置する金属膜を切削により除去するので、製造工程を簡素化することができる。
【0025】
請求項8に記載のように、表面形状測定手段による表面形状データの測定点数を、アクチュエータの数よりも多くすると良い。これによれば、アクチュエータ間の領域の変位も測定することができるので、表面形状の測定精度を向上させることができる。
【0026】
請求項9に記載のように、表面形状測定手段が、アクチュエータにより変位を与える点に対応する表面部の表面形状を少なくとも測定すると良い。これによれば、最も変形が大きい部分を測定することができるので、表面形状の測定精度を向上させることができる。
【0027】
請求項10に記載のように、表面形状測定手段として、切削面に平行な面に沿って走査されるレーザ変位計を採用すると良い。これによれば、表面形状を非接触で精度良く測定することができるとともに、測定時間を短くすることができる。
【0028】
次に、請求項11に記載の発明は、
半導体基板を吸着固定する吸着ステージと、
該吸着ステージを介して半導体基板に変位を与えるように、吸着ステージの裏面に当接して設けれた複数のアクチュエータと、を備え、
半導体基板の固定面と反対の主面上に下地電極が形成され、保護膜の開口部から望む下地電極及び保護膜を覆うように形成された金属膜を、変形前の吸着ステージと平行に設定された切削面にて切削して金属電極を形成するための金属電極形成装置であって、
複数のアクチュエータが、半導体基板の厚さ分布の空間周波数の最小波長に対し、1/2よりも大きく1以下の間隔で配置されていることを特徴とする。
【0029】
本発明の作用効果は、請求項1に記載の発明の作用効果と同じであるので、その記載を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る金属電極形成方法及び金属電極形成装置により金属電極が形成された半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】金属電極の形成方法を示す工程別の断面図である。
【図3】金属電極の形成方法を示す工程別の断面図である。
【図4】金属電極の形成方法を示す工程別の断面図である。
【図5】金属電極形成方法に適用される表面形状制御装置の概略構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は半導体基板側から見た平面図である。
【図6】金属電極にはんだを介してヒートシンクが接合された半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【図7】(a)〜(c)は、圧電アクチュエータの配置間隔と、半導体基板の表面部のうねりとの関係を示す模式的な図である。
【図8】半導体基板の厚さ分布を示す図である。
【図9】図8のデータをフーリエ変換し、空間周波数のデータとした図である。
【図10】圧電アクチュエータの配置を示す図である。
【図11】図10のデータをフーリエ変換し、空間周波数のデータとした図である。
【図12】図9のデータと図11のデータをコンボリューションした図である。
【図13】図12から導き出される誤差を示す図である。
【図14】図13のデータを逆フーリエ変換した図である。
【図15】図12の得られた情報(A4)を逆フーリエ変換してなる点を、図8及び図10のデータと重ね合わせた結果を示す図である。
【図16】圧電アクチュエータの配置間隔と誤差幅との関係を示す図である。
【図17】補正前の半導体基板の表面部のうねりの実測値と、圧電アクチュエータの各配置において、計算により上記うねりを再現した結果を示す図である。
【図18】うねり領域を説明するための図である。
【図19】本発明の第2実施形態に係る金属電極形成方法を示すフロー図である。
【図20】局部変形工程を説明するための模式的な図である。
【図21】金属電極形成方法の変形例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
【0032】
(第1実施形態)
本実施形態の特徴部分は、半導体装置の金属電極を切削加工により形成する際の、変形手段としてのアクチュエータの配置にある。それ以外の点については、上記した本出願人による特許文献2(特開2009−49356号公報)に示されるものと基本的に同じであるので、重複する部分の説明は簡素化し、アクチュエータの配置について詳細に説明する。
【0033】
図1は、第1実施形態に係る金属電極形成方法により金属電極が形成された半導体装置の概略構成を示す断面図である。図2〜図4は、金属電極の形成方法を示す工程別の断面図であり、図2、図3、図4の順に推移する。図5は、金属電極形成方法に適用される表面形状制御装置の概略構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は半導体基板側から見た平面図である。図6は、金属電極にはんだを介してヒートシンクが接合された半導体装置の概略構成を示す断面図である。なお、各図では、説明のために一部を拡大し、一部を省略して示している。
【0034】
図1に示すように、半導体装置10は、シリコン等からなり、素子が構成された半導体基板11と、素子の電極であり、半導体基板11の主面11aに形成された下地電極12と、絶縁材料からなり、主面11aと下地電極12の一部とを覆う保護膜13と、保護膜13に形成された開口部13aを介して下地電極12と接続された金属電極15と、を有している。
【0035】
半導体基板11に構成される素子(半導体素子)としては、特に限定されるものではない。本実施形態では、シリコンからなる半導体基板11に対し、厚み方向に電流が流れる縦型トランジスタ素子としてのIGBTが構成されている。なお、縦型トランジスタ素子としては、IGBT以外にも、縦型のMOSFETがある。これらゲートを有する縦型トランジスタ素子は、例えば負荷を駆動するためのインバータ内に備えられるパワーデバイスとして用いられる。また、このような半導体基板11を備える半導体装置10は、所謂パワーカードなどに用いられる。
【0036】
下地電極12は、素子と電気的に接続される電極のうち、素子と接続される部分である。本実施形態では、シリコンからなる半導体基板11に対し、Al、Al−Si,Al−Si−CuなどのAl合金などのAl系材料を用いて形成されている。また、半導体基板11に構成されたIGBTのエミッタやゲートと接続されている。なお、図1に示す下地電極12は全てエミッタと接続されたものである。以下においても、エミッタと接続されたもののみを例示する。一方、保護膜13は、例えば厚さ数μm〜20μmのポリイミド系樹脂からなり、下地電極12を露出させる開口部13aが形成されている。そして、保護膜13の上面13bに対して、開口部13aから臨む下地電極12の表面12aが引っ込むように段差が形成されている。
【0037】
金属電極15は、素子と電気的に接続される電極のうち、はんだやワイヤなどの部材により他の部材と接続される部分である。本実施形態では、金属電極15が、開口部13a内のみに形成されており、開口部13aを介して露出する下地電極12の表面12aと段差を形成する保護膜13の側面13cとを覆って形成されている。また、金属電極15が、下地電極12側からTi膜/Ni膜/Au膜の順に積層して形成されている。なお、金属電極15の膜構成としては、上記例に限定されるものではなく、例えば下地電極12側からNi膜/Au膜の順に積層した構成としても良いし、単層の金属膜でも良い。さらには、Ni膜の代わりに、NiV膜を用いても良い。
【0038】
次に、金属電極15の形成方法について説明する。まず、図2(a)に示すように、図示しない素子が構成された半導体基板11を準備する。本実施形態では、シリコンウェハ(半導体基板11)の主面側にIGBTの主面側の部分(エミッタ、ゲートなど)を形成し、次いで主面に保護テープを貼り付けた状態でウェハを裏面から研削し、厚さを100〜200μm程度とする。これは、上記のごとく、素子(IGBT)のオン抵抗を低減するためである。そして、研削後、ウェハの裏面側にIGBTの裏面側の部分(コレクタ)を形成し、次いで裏面上に裏面側の電極(コレクタ電極)を形成する。半導体基板11は、以上の工程を経てなるものである。このように、主面側の電極(下地電極12及び金属電極15)を形成する前に、素子の裏面側の部位や裏面側の電極を先に形成するのは、金
属電極15を形成する際に、その構成材料(Au)により、ウェハの露出された裏面側の部位が汚染されるのを防ぐためである。
【0039】
このように、下地電極12を形成する前の状態で、半導体基板11は、裏面側から研削されて所定厚さとされている。裏面を研削する際に用いる保護テープは、ウェハに貼り付けられる面内で厚さばらつきをもっている。具体的には、ウェハに貼り付けられる面内での厚さばらつきが数μm(1〜3μm)、製造ロット間での厚さばらつきが5μm程度ある。したがって、研削後、保護テープを剥がしたシリコンウェハ(半導体基板11)では、保護テープの厚さばらつきが転写されており、テープが厚かった部分は薄くなり、テープが薄かった部分では厚くなっている。なお、本発明者が確認したところ、直径200mm程度(100〜300m)のウェハを厚さ120μm程度(50〜300μm)に研削してなる半導体基板11では、金属膜14までを形成した状態(切削加工前の状態)で、表面部11cの高さばらつき(凹凸差)が8σで7.5μm程度であった。また、研削後、下地電極12までを形成した状態で、半導体基板11の厚み方向における表面部11cのばらつきが8σで5.5μm程度であった。この結果からも、保護テープの厚さばらつきの転写が、半導体基板11の厚さばらつきの主要因であると考えられる。
【0040】
この準備した半導体基板11の主面11aに、スパッタ法などによりAl−Si膜が成膜され、ホトリソグラフィー法によりパターニングされた下地電極12を形成する。また、下地電極12を覆うように、半導体基板11の主面11a全面に、スピンコート法などによりポリイミド系樹脂からなる厚さ10μmの保護膜13を形成する。そして、保護膜13の所定部位に、下地電極12を露出させる開口部13aを、ホトリソグラフィー法により表面から下地電極12に向けて開口して形成する。このように、保護膜13として樹脂系材料を用いることにより、厚さがある下地電極12を適切に覆うことができる。また、開口部13aが形成された状態で、保護膜13の上面13bに対して開口部13aから臨む下地電極12の表面12aが引っ込むような段差が形成される。
【0041】
開口部13aを備えた保護膜13の形成後、図2(b)に示すように、下地電極12及び保護膜13の上面13b、側面13cを覆って、スパッタ法などにより金属膜14を形成する。本実施形態では、Ti膜/NiV膜/Au膜を順に積層して金属膜14が形成されている。なお、NiV膜のVは、はんだに対するバリア層として機能する。
【0042】
金属膜14の形成後、図2(c)に示すように、半導体基板11を裏面11bにおいて、表面形状制御装置20(図5)の吸着ステージ21bに設けられた吸着面21aに載置し、吸着固定する。このとき、吸着面21aにおいて発生する吸着力により、裏面11bが平坦になるため、半導体基板11の表面部11cは、裏面11bの元の凹凸形状を反映して、凹凸が大きい表面形状となる。なお、表面部11cとは、金属膜14のうち、保護膜13の上面13bを覆っている部分を示す。また、「表面形状」とは、表面部11cの凹凸のプロファイルであり、表面部11cと後述する切断面Pとの距離のプロファイルに対応する。
【0043】
ここで、表面形状制御装置20の構成について、図5(a),(b)を参照して説明する。表面形状制御装置20は、半導体基板11を載置するステージ21と、半導体基板11を吸着固定するための吸着装置22と、半導体基板11の表面部11cの形状を測定する表面形状測定装置23と、半導体基板11を裏面11bから変形させるための変形装置24と、これらの装置を制御するための制御コンピュータ25とから構成されている。上記のうち、変形装置24が、特許請求の範囲に記載の金属電極形成装置に相当する。
【0044】
ステージ21は、吸着ステージ21bと下部ステージ21cとの間に中空部21dを有する中空形状に形成されており、吸着ステージ21bには、半導体基板11を吸着固定する吸着面21aと、真空ポンプなどの吸着装置22を用いて中空部21dを減圧することにより生じる吸着力を半導体基板11に作用させる吸着孔21eとが形成されている。
【0045】
吸着ステージ21bは、後述する変形装置24による変位を半導体基板11に加えるために、変形しやすく形成されている。ここでは、吸着ステージ21bは、厚さ0.5mm〜3mmの板状のステンレス鋼(SUS)により形成されている。このような吸着ステージ21bを介することで、圧電アクチュエータ24a間の変位を滑らかにつなぐことができる。また、下部ステージ21cには、吸着装置22を接続するための減圧孔21fと変形装置24とが設けられている。
【0046】
本実施形態では、変形装置24として、複数個の圧電アクチュエータ24aを用いた。圧電アクチュエータ24aは、所定の間隔で例えば格子状に配置されており、吸着ステージ21bの裏面21gに当接し、上向きの変位を発生させることができるように設けられている。この圧電アクチュエータ24aの配置が本実施形態の特徴部分である。この点については後述する。なお、図3(a),(b)、図4(a)、及び図5(a),(b)には、便宜上、16個の圧電アクチュエータ24aが、縦4個、横4個の格子状に配置されている場合を例示している。各圧電アクチュエータ24aは、制御コンピュータ25により独立して変位を制御することができ、それぞれ異なる変位を発生させることができる。ここで、圧電アクチュエータ24aは、変位制御の精度が高く、バックラッシュが少ないとともに、作動時の発熱量も小さいという利点がある。本実施形態では、圧電アクチュエータ24aのストロークを19μmとしている。
【0047】
圧電アクチュエータ24aに上向きの変位を生じさせると、吸着ステージ21bを介して半導体基板11に上向きの変位を与えて、半導体基板11を変形させることができる。ここで、圧電アクチュエータ24aは、吸着ステージ21bを介して半導体基板11に変位を与えるため、圧電アクチュエータ24aにより半導体基板11に局所的に応力が発生し、局所的に変形することを防止することができる。また、吸着装置22による負圧を用いて半導体基板11に下向きの変位を与えることもできる。
【0048】
変形装置24は、上端部を吸着ステージ21bの裏面21gと接合して設けてもよい。この構成を用いると、半導体基板11に上向きの変位を与える場合に遊びが生じないとともに、半導体基板11に吸着ステージ21bを介して下向きの変位を与えることもできる。
【0049】
表面形状測定装置23は、半導体基板11の表面部11cの表面形状を測定する装置である。本実施形態では、表面形状測定装置23としてレーザ変位計を用いた。レーザ変位計を用いると、表面形状を非接触で精度良く測定することができるとともに、測定時間を短くすることができる。表面形状測定装置23により測定された表面部11cの表面形状データは、制御コンピュータ25に対して出力される。
【0050】
半導体基板11を吸着ステージ21bの吸着面21aに吸着固定した後、図3(a)に示すように、表面形状測定装置23により半導体基板11の表面部11cの表面形状を測定する。ここでは、半導体基板11の表面部11cに格子状に測定点を設定して、表面形状測定装置23を、切削面Pに平行な面に沿って走査して半導体基板11の厚さを測定し、各点の測定データを制御コンピュータ25に対して出力する。そして、制御コンピュータ25では、各点の測定データに基づいて、各測定点間を補完して、半導体基板11の表面部11cの表面形状データを構築する。なお、切削面Pは、変位する前の吸着ステージ21bと平行であって、保護膜13の上面13b上に位置する金属膜14を確実に除去するために、保護膜13の一部(半導体基板11の厚み方向において、上面13bからの一部)を除去するような高さに設定されている。
【0051】
ここで、表面形状測定装置23は、図5(b)の直線Sに示すように、測定点に少なくとも変形装置24により変位が与えられる点に対応する表面部11cの点が含まれるように走査する。
【0052】
これによれば、最も変位が大きくなる測定点を測定することができるので、表面形状の測定精度を向上させることができる。また、測定点の数は圧電アクチュエータ24aの数よりも多くすることができる。これによれば、各圧電アクチュエータ24a間の領域の変位も測定することができ、各圧電アクチュエータ24a間を補完する測定点を増やすことができるため、表面形状の測定精度を向上させることができる。
【0053】
表面形状データの取得後、図3(b)に示すように、半導体基板11の裏面11bから変形装置24により変位を加えて、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが、後述する切削加工における要求精度内に収まるように半導体基板11を変形させ、表面形状を制御する。つまり、表面部11cの凹凸差が切削量の要求精度内に収まるように半導体基板11を変形させる。
【0054】
具体的には、制御コンピュータ25において構築された表面形状データに基づいて、表面部11cの凹凸差が、切削量の要求精度(±1μm以内)の範囲内になるように、制御コンピュータ25により変形装置24の各圧電アクチュエータ24aの変位量を制御して、吸着ステージ21bを介して裏面11bから半導体基板11に変位を与える。ここで、変形装置24の各圧電アクチュエータ24aの変位と半導体基板11の変形量との関係は、シミュレーションまたは実測によりあらかじめ求めておく。
【0055】
半導体基板11に変位を与えた後、図示しないが、変形された半導体基板11の表面部11cの表面形状を表面形状測定装置23により測定し、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内であるか否かを制御コンピュータ25において判定する。ここでは、表面部11cの凹凸差が±1μm以内であるか否かを判定する。
【0056】
制御コンピュータ25において、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内であると判定されると、続いて、図4(a)に示すように、バイト31を用いて金属膜14の表面から切削加工を行い、金属膜14をパターニングして金属電極15を形成する。本実施形態では、金属膜14とともに保護膜13の一部(上面13bからの一部)も切削加工され、新たな上面13dが表出する。また、バイト31と半導体装置10との相対速度は20m/s、切削加工のピッチは70μmに設定した。さらには、バイト31の金属膜14に対する高さ精度を、±1μm以下とした。
【0057】
上記切削条件で、半導体基板11の主面11a全面にわたって切削加工を行うことにより、保護膜13の上面13b上に位置する金属膜14を除去し、開口部13aの内部にのみ金属膜14を残すようにパターニングして金属電極15を形成することができる。つまり、金属電極15は、開口部13aから露出する下地電極12の表面12a及び段差を形成する保護膜13の側面13cを覆って形成される。
【0058】
そして、図4(b)に示すように、圧電アクチュエータ24aの変位を解除して、半導体基板11をステージ21から外すことにより、半導体基板11に金属電極15を形成することができる。
【0059】
上記した工程によれば、半導体基板11の主面11a全面にわたって切削加工を行うことにより、保護膜13の上面13b上に位置する金属膜14を除去し、開口部13aの内部にのみ金属膜14を残すようにパターニングして金属電極15を形成することができる。金属電極15は、開口部13aから露出する下地電極12の表面12a及び段差を形成する保護膜13の側面13cを覆って形成されているので、下地電極12の表面12aのみに金属電極15が形成される場合と比べて、金属電極15の強度を向上させることができる。
【0060】
また、吸着ステージ21bに吸着固定されることにより裏面11bの形状を反映して表面部11cの凹凸差が増大した半導体基板11について、表面部11cの凹凸差を小さくすることができる。これにより、切削加工の加工精度を向上させることができるため、金属電極形成における製品歩留まりを向上させることができる。
【0061】
このようにして得られる半導体装置10の金属電極15は、はんだやワイヤなどの部材を介して他の部材が接続される。例えば、図6に示すように、半導体基板11の主面11aの大部分を占めるエミッタ電極としての金属電極15には、はんだ41を介してヒートシンク40が接合された構造を採用することができる。ここで、金属電極15は、その表面に凹部を有しているため、これにより、はんだ41との接触面積を増大させることができ、ひいては、はんだ41の接合強度を向上させることができる。
【0062】
しかしながら、上記した金属電極形成方法では、変形手段としての圧電アクチュエータ24aの配置によって、半導体基板11における表面部11cの凹凸、すなわちうねりを精度よく補正することができない恐れがある。図7(a)〜(c)は、圧電アクチュエータの配置間隔と、半導体基板の表面部のうねりとの関係を示す模式的な図である。
【0063】
圧電アクチュエータ24aの配置間隔(隣接する圧電アクチュエータ24aの中心間の距離)を広くすると、例えば図7(a)に示すように、圧電アクチュエータ24aにより半導体基板11を変形させても、半導体基板11の表面部11cのうねりを補正しきれず、切削量の要求精度を満たすことができない。
【0064】
一方、圧電アクチュエータ24aの配置間隔(隣接する圧電アクチュエータ24aの中心間の距離)を狭くすると、例えば図7(b)に示すように、圧電アクチュエータ24aにより半導体基板11を変形させた状態で、半導体基板11の表面部11cのうねりを補正し、切削量の要求精度を満たすことができる。しかしながら、圧電アクチュエータ24aの配置間隔を狭くするほど、圧電アクチュエータ24aの個数が増加し、また個数増加に伴って制御系も複雑化するため、コストが増加することとなる。
【0065】
したがって、圧電アクチュエータ24aの配置間隔は、例えば図7(c)に示すように、圧電アクチュエータ24aにより半導体基板11を変形させた状態で、半導体基板11の表面部11cのうねりを補正し、切削量の要求精度を満たすことができる配置間隔であって、できる限り広くすることが好ましい。
【0066】
そこで、本発明者は、圧電アクチュエータ24aの配置間隔と、変形後の半導体基板11の表面部11cのうねりとの関係について鋭意検討を行った。具体的には、半導体基板11の厚さ分布を実測し、その結果をフーリエ変換して、空間周波数解析を行った。そして、解析結果をもとに、圧電アクチュエータ24aの配置間隔を仮定してこの配置での半導体基板11の表面部11cのうねり補正結果を計算し、配置間隔と誤差幅(補正しきれずに残ったうねり)との関係について精査した。以下にその結果を、順をおって説明する。
【0067】
図8は、半導体基板の厚さ分布を示す図である。図9は、図8のデータをフーリエ変換し、空間周波数のデータとした図である。図10は、圧電アクチュエータの配置を示す図である。図11は、図10のデータをフーリエ変換し、空間周波数のデータとした図である。図12は、図9のデータと図11のデータをコンボリューションした図である。図13は、図12から導き出される誤差を示す図である。図14は、図13のデータを逆フーリエ変換した図である。図15は、図12の得られた情報(A4)を逆フーリエ変換してなる点を、図8及び図10のデータと重ね合わせた結果を示す図である。図16は、圧電アクチュエータの配置間隔と誤差幅との関係を示す図である。図17は、補正後の半導体基板のうねりの実測値と計算結果を示す図である。
【0068】
なお、この検討に際しては、上記した半導体基板11同様、表面部11cのうねり(凹凸差)が、8σで7.5μm程度のものを用いた。ただし、測定を簡素化するために、主面11a全面を覆うように下地電極12、保護膜13、及び金属膜14がそれぞれ形成された半導体基板11(半導体ウェハ)を準備し、金属膜14の表面全面を表面部11cに相当する部分とした。
【0069】
先ず準備した半導体基板11について、面内の厚さ分布を測定する。この厚さ分布の測定では、半導体基板11を吸着ステージ21bの吸着面21aに搭載し、吸引固定した状態で、表面形状測定装置23としてレーザ変位計を、吸着面21aに平行な一方向(X方向)に沿って走査し、測定を行う。具体的には、レーザ変位計の走査ライン上において、半導体基板11の中心の厚さを、半導体基板11が有りの状態と無しの状態のレーザ変位計の値から求め、走査ラインの中心以外の部分は、半導体基板11有りでの、中心を基準とするレーザ変位計の値から求める。その結果を図8に示す。
【0070】
次いで、得られた図8に示すデータをフーリエ変換し、周波数成分とその強度を示すデータとする。その結果を図9に示す。図9に示すように、半導体基板11の表面部11cのうねりには高周波成分が認められず、0.02/mm以下の低周波成分が殆どであり、空間周波数の最小波長は50mmであることが明らかとなった。なお、図9中の破線A1は、図9の波形(実線)を、誤差を含めて模式的に示したものである。
【0071】
一方、レーザ変位計が走査される半導体基板11上のラインにおいて、図10に示すように、ΔXの配置間隔(ピッチ)で複数の圧電アクチュエータ24aを配置するものとし、フーリエ変換により、周波数成分のデータとする。その結果を図11に示す。図11に示すように、この場合の周波数は1/ΔXである。この1/ΔXの周波数成分を示す線をA2とする。
【0072】
次いで、半導体基板11の厚さ分布の空間周波数データ(図9)と、圧電アクチュエータ24aの配置の空間周波数データ(図11)とを、図12に示すようにコンボリューション(畳み込み)し、得られた情報と、圧電アクチュエータ24aの所定の配置間隔で、うねりを補正した後の、半導体基板11の表面部11cのうねり(補正しきれずに残ったうねり、すなわち誤差)とを求める。
【0073】
圧電アクチュエータ24aが線A2に示す周波数で配置された状態で、半導体基板11の厚さ分布の周波数成分が線A1となる。半導体基板11の厚さ分布の周波数成分を示す線A1のうち、圧電アクチュエータ24aの配置を示す線A2よりも高周波側の部分A11が、補正しきれずに残る誤差となる。この線A11を線A2で折り返したものが線A3であり、この線A3が上記誤差を示す。
【0074】
また、線A4は、線A2よりも低周波側の範囲において、線A1と線A3とを足し合わせたものである。この線A4が、得られた情報(所定のピッチで配置した圧電アクチュエータ24aにより補正した後のうねりで誤差を含むうねりの周波数成分)を示す。すなわち、線A3は、線A4と線A1の差であり、上記誤差を示す。
【0075】
図13では、図12のうち、補正後の表面部11cのうねり、すなわち誤差を示すデータ(線A3)のみを抜き出して示している。そして、この誤差データ(周波数成分)を逆フーリエ変換することで、図14に示すように、誤差データを、位置と厚さとの関係とすることができる。この図14において、波形の最大値と最小値の差が、所定配置での圧電アクチュエータ24aによっても補正しきれずに残る誤差幅を示すこととなる。図14では、一例として、圧電アクチュエータ24aの配置間隔ΔXが20mmの結果を示している。
【0076】
なお、図15は、図8に示す半導体基板11の厚さ分布のデータ(位置データ)と、図10に示す圧電アクチュエータ24aの配置データ(位置データ)とを重ね合わせ、さらに、図12に示す線A4(得られた情報)を逆フーリエ変換したデータを重ね合わせた図である。図15に示す圧電アクチュエータ24aの各配置位置において、半導体基板11の厚さ分布と得られた情報(補正後の、誤差を含むうねりの周波数成分)を逆フーリエ変換した情報と差が誤差に相当し、差の最大値と最小値の差が誤差幅を示すこととなる。このように、得られた情報(A4)を逆フーリエ変換しても、図14に示す誤差幅を求めることができる。
【0077】
そして、圧電アクチュエータ24aの配置間隔ΔXを変数とし、各配置間隔について上記した誤差幅を求める。それをまとめたものが図16である。図16に示すように、圧電アクチュエータ24aの配置間隔ΔXを50mm以下、すなわち変形前の半導体基板11の表面部11cのうねりの空間周波数の最小波長(50mm)と同じ長さ以下(1波長以下)とすれば、誤差幅を±1μm(2μmの幅)以下とすることができることが明らかとなった。すなわち、圧電アクチュエータ24aの配置間隔ΔXを50mm以下とすれば、切削量の要求精度(±1μm)内となるように、半導体基板11を変形させることができることが明らかとなった。
【0078】
なお、図17は、補正前の半導体基板11の表面部11cのうねりの実測値と、圧電アクチュエータ24aの各配置において、計算により上記うねりを再現した結果を示す図である。測定値(実測値)を実線、圧電アクチュエータ24aの配置間隔が10mmを破線、20mmを一点鎖線、50mmを二点鎖線で示している。測定値は、サンプリング0.4mmピッチの静電容量式厚さ測定器における測定値である。図17に示すように、配置間隔が狭くなるほどその波形が測定値に近づいており、10mm間隔ではその波形が測定値の波形とほぼ一致しているが、配置間隔50mmであっても、測定値との差が2μm以内となっている。この結果からも、圧電アクチュエータ24aの配置間隔ΔXを50mm以下とすれば、切削量の要求精度(±1μm)内となるように、半導体基板11を変形させることができることが明らかである。
【0079】
また、周知の標本化定理(サンプリング定理)によれば、表面部11cのうねりに対し、その空間周波数の波長の1/2以下の間隔で圧電アクチュエータ24aを配置すると、うねりを復元できることが知られている。すなわち、標本化定理に基づいて理想的に圧電アクチュエータ24aを配置した場合、うねりを精度よく補正するには、半導体基板11のうねりの空間周波数の波長の1/2が、圧電アクチュエータ24aの配置間隔の上限となる。したがって、標本化定理に基づいた場合、圧電アクチュエータ24aの配置間隔は25mmピッチ以下となる。
【0080】
これに対し、本実施形態では、圧電アクチュエータ24aの配置間隔を、変形前の半導体基板11の表面部11cのうねりの空間周波数の最小波長(50mm)に対し、1/2よりも大きくしても、誤差幅を±1μm(2μmの幅)以下とすることができる。
【0081】
以上に基づき、本実施形態では、圧電アクチュエータ24aの配置間隔を、半導体基板11の厚さ分布の空間周波数の最小波長に対し、1/2よりも大きく1以下とする。したがって、従来の1/2以下の配置間隔に比べて、圧電アクチュエータ24aの個数を低減できるため、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たしつつコストを低減できる。
【0082】
また、本実施形態では、変形手段としての圧電アクチュエータ24aが、吸着ステージ21bの裏面21gに当接して設けられており、吸着ステージ21bを介して半導体基板11に変位を与えるため、変形手段により半導体基板11に局所的に応力が発生し、半導体基板11が局所的に変形することを防止することができる。
【0083】
また、本実施形態では、半導体基板11が、下地電極12を形成する工程の前に、主面11aとは反対の裏面11b側から研削されて、所定厚さとされている。このような半導体基板11では、上記のごとく、保護テープの厚さばらつきが半導体基板11に転写され、これにより、切削量の要求精度(±1μm以内)よりも大きい厚さばらつきを有している。しかしながら、このような半導体基板11であっても、本実施形態に係る金属電極形成方法によれば、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たしつつコストを低減できる。
【0084】
また、本実施形態では、半導体基板11に、縦型トランジスタ素子としてのIGBTが構成されている。このような縦型トランジスタ素子、例えば電力用(パワー系)のIGBTやMOSFETでは、半導体基板11の厚さを薄くしてオン抵抗を低減するために、通常、半導体基板11を裏面11b側から研削する。すなわち、上記したように、保護テープの厚さばらつきが半導体基板11に転写され、半導体基板11の厚さばらつきが大きい。しかしながら、このような半導体基板11であっても、本実施形態に係る金属電極形成方法によれば、縦型トランジスタ素子のオン抵抗を低減しつつ、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たし、且つ、コストを低減することができる。
【0085】
(第2実施形態)
本発明者がn増しで確認したところ、稀ではあるが、第1実施形態に示した金属電極形成方法及び金属電極装置を用いても、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たせないことがあることが明らかとなった。また、切削量の要求精度(±1μm以内)を満たせない半導体基板11は、厚さ分布の最大値と最小値の中心に対して切削加工の要求精度の範囲から外れ、且つ、上記最小波長の1/2以下のうねりの領域を有していた。すなわち、うねりの高周波成分を有していた。このうねり領域を図18に例示する。図18では、上記中心が580μmとなっている。そして、破線で囲まれる領域が上記うねり領域となっている。
【0086】
そこで、本実施形態では、第1実施形態同様、圧電アクチュエータ24aの配置間隔を、半導体基板11の厚さ分布の空間周波数の最小波長に対し、1/2よりも大きく1以下としつつ、以下に示す方法で金属電極15を形成する。
【0087】
金属膜14の形成後、図19に示すように、半導体基板11を吸着ステージ21bの吸着面21aに吸着固定し、表面形状測定装置23により、変形前の半導体基板11の表面部11cの表面形状を測定する(ステップ10)。ここまでの工程は、第1実施形態と同じである。
【0088】
次いで、制御コンピュータ25が、ステップ10で取得した表面形状データに基づいて、切削面Pと表面部11cとの距離が切削加工における要求精度の範囲から外れ、且つ、上記した最小波長の1/2以下のうねり領域が存在するか否かを判定する(ステップ11)。このステップ11が、特許請求の範囲に記載のうねり判定工程に相当する。
【0089】
うねり領域ありと判定すると、制御コンピュータ25は、うねり領域が切削加工における要求精度の範囲内になるように、うねり領域に対応する圧電アクチュエータ24の変位量を制御する。これにより、半導体基板11には、吸着ステージ21bを介して裏面11bから局所的な変位が与えられる(ステップ12)。例えば図18に示すうねり領域の場合、うねり領域部分の厚さが増すように、半導体基板11に局所的な変位を与える。このステップ12が、特許請求の範囲に記載の局部変形工程に相当する。
【0090】
なお、うねり領域に対応する圧電アクチュエータ24の個数は特に限定されるものではない。例えば、図20に示すように、うねり領域11uの直下に圧電アクチュエータ24が位置しない場合、うねり領域11uに近接する4つの圧電アクチュエータ24tにより、半導体基板11に局所的な変位を与えても良い。また、うねり領域11uの直下に1つの圧電アクチュエータ24が存在する場合には、この圧電アクチュエータ24によって半導体基板11に局所的な変位を与えても良い。
【0091】
半導体基板11に局所的な変位を与えた後、表面形状測定装置23により、局部変形された半導体基板11の表面部11cの表面形状を測定する(ステップ13)。そして、制御コンピュータ25は、取得した表面形状データに基づいて、圧電アクチュエータ24の変位量を制御し、吸着ステージ21bを介して裏面11bから、全体を変形対象として半導体基板11に変位を与える(ステップ14)。このステップ13及びステップ14が、特許請求の範囲に記載の全体変形工程に相当する。
【0092】
なお、ステップ11にてうねり領域ありと判定した場合は、ステップ14において、制御コンピュータ25が、ステップ10で取得した表面形状データに基づいて圧電アクチュエータ24の変位量を制御し、吸着ステージ21bを介して裏面11bから、全体を変形対象として半導体基板11に変位を与える。
【0093】
半導体基板11の全体に変位を与えた後、変形された半導体基板11の表面部11cの表面形状を表面形状測定装置23により測定する(ステップ15)。そして、制御コンピュータ25は、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内であるか否かを判定する(ステップ16)。
【0094】
制御コンピュータ25において、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内であると判定されると、バイト31を用いて金属膜14の表面から切削加工を行い、金属膜14をパターニングして金属電極15を形成する(ステップ17)。
【0095】
一方、ステップ16において、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲外であると判定されると、ステップ11に戻り、半導体基板11のうねりを再度補正する。
【0096】
上記したように、本実施形態では、半導体基板11に、切削加工の要求精度の範囲から外れ、且つ、上記最小波長の1/2以下のうねり領域が存在しても、うねり領域に対応する圧電アクチュエータ24により、うねり領域が切削加工の要求精度の範囲となるように、半導体基板11を局部変形させる。そして、うねり領域を補正した状態で、基板全体を変形対象として半導体基板11を変形させる。
【0097】
このように2段階で半導体基板11を変形させるので、上記うねり領域が存在する場合でも、表面部11cの凹凸差を小さくし、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内を切削量の要求精度内にすることができる。すなわち、より確実に、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきを切削加工における要求精度の範囲内にすることができる。
【0098】
(変形例)
上記実施形態では、基板全体を対象とする半導体基板11の変形の前に、うねり領域を局所的に変形させる例を示した。しかしながら、基板全体を対象とする半導体基板11の変形を行った後に、うねり領域を局所的に変形させても良い。この金属電極形成方法を図21に示す。
【0099】
金属膜14の形成後、半導体基板11を吸着ステージ21bの吸着面21aに吸着固定し、表面形状測定装置23により、変形前の半導体基板11の表面部11cの表面形状を測定する(ステップ20)。ここまでの工程は、第1実施形態と同じである。
【0100】
そして、制御コンピュータ25は、取得した表面形状データに基づいて、圧電アクチュエータ24の変位量を制御し、吸着ステージ21bを介して裏面11bから、全体を変形対象として半導体基板11に変位を与える(ステップ21)。このステップ21が、特許請求の範囲に記載の全体変形工程に相当する。
【0101】
半導体基板11の全体に変位を与えた後、変形された半導体基板11の表面部11cの表面形状を表面形状測定装置23により測定する(ステップ22)。そして、制御コンピュータ25は、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内であるか否かを判定する(ステップ23)。このステップ22及びステップ23が、特許請求の範囲に記載の第1判定工程に相当する。
【0102】
制御コンピュータ25において、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内であると判定されると、バイト31を用いて金属膜14の表面から切削加工を行い、金属膜14をパターニングして金属電極15を形成する(ステップ24)。
【0103】
一方、ステップ16において、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲外であると判定されると、制御コンピュータ25は、ステップ22で取得した表面形状データに基づいて、切削面Pと表面部11cとの距離が切削加工における要求精度の範囲から外れ、且つ、上記した最小波長の1/2以下のうねり領域が存在するか否かを判定する(ステップ25)。このステップ25が、特許請求の範囲に記載のうねり判定工程に相当する。
【0104】
うねり領域ありと判定すると、制御コンピュータ25は、うねり領域が切削加工における要求精度の範囲内になるように、うねり領域に対応する圧電アクチュエータ24の変位量を制御する。これにより、半導体基板11には、吸着ステージ21bを介して裏面11bから局所的な変位が与えられる(ステップ26)。このステップ26が、特許請求の範囲に記載の局部変形工程に相当する。
【0105】
半導体基板11に局部的な変位を与えた後、変形された半導体基板11の表面部11cの表面形状を表面形状測定装置23により測定する(ステップ27)。そして、制御コンピュータ25は、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内であるか否かを判定する(ステップ28)。このステップ27及びステップ28が、特許請求の範囲に記載の第2判定工程に相当する。
【0106】
そして、ステップ28で切削加工における要求精度の範囲内であると判定されると、バイト31を用いて金属膜14の表面から切削加工を行い、金属膜14をパターニングして金属電極15を形成する(ステップ24)。
【0107】
なお、ステップ25にてうねり領域なしと判定された場合、及び、ステップ28にて切削加工における要求精度の範囲外と判定された場合は、ステップ21に戻り、半導体基板11のうねりを再度補正する。
【0108】
この金属電極形成方法においても、2段階で半導体基板11を変形させるので、切削量の要求精度から外れ、且つ、最小波長の1/2以下のうねり領域が存在しても、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきが切削加工における要求精度の範囲内を切削量の要求精度内にすることができる。すなわち、より確実に、切削面Pと表面部11cとの距離のばらつきを切削加工における要求精度の範囲内にすることができる。
【0109】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0110】
本実施形態では、金属電極15が、開口部13a内に位置し、且つ、その表面に凹部を有する例を示した。しかしながら、金属電極15の配置は、上記例に限定されるものではない。例えばその表面に凹部を有さず、平坦なものを採用することができる。上記したように、開口部13a内のみ金属電極15が位置する構成の場合、保護膜13の上面13b(側面13cを除く)に位置する金属膜14を、保護膜13の一部とともに切削により除去することが形成できるので、製造工程を簡素化することができる。
【0111】
本実施形態では、半導体基板11が、下地電極12を形成する工程の前に、主面11aとは反対の裏面11b側から研削されて、所定厚さとされている例を示した。しかしながら、下地電極12を形成する前において、半導体基板11の厚さばらつき(吸着ステージ21bに吸着固定した状態での表面部11cの凹凸差)が、切削量の要求精度(±1μm以内)よりも大きいものであれば良い。
【0112】
本実施形態では、半導体基板11に素子としてIGBTが構成される例を示した。しかしながら、縦型のパワーMOSFETを採用しても良い。さらには、LDMOSトランジスタ素子やバイポーラトランジスタ素子などの横型の素子を採用しても良い。
【0113】
本実施形態では、アクチュエータとして圧電アクチュエータ24aの例を示したが、特に限定されるものではない。ただし、圧電アクチュエータ24aを用いると、他のアクチュエータに比べて変位制御の精度を高くすることができる。また、バックラッシュが少なく、作動時の発熱量も小さいという利点もある。
【符号の説明】
【0114】
10・・・半導体装置
11・・・半導体基板
11a・・・主面
11c・・・表面部
12・・・下地電極
13・・・保護膜
13a・・・開口部
13b,13d・・・上面
14・・・金属膜
15・・・金属電極
21b・・・吸着ステージ
24a・・・圧電アクチュエータ(アクチュエータ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の主面に、半導体素子と電気的に接続された下地電極を形成する工程と、
前記下地電極を覆う保護膜を形成した後、該保護膜に前記下地電極を露出させる開口部を形成する工程と、
前記保護膜及び前記開口部から臨む前記下地電極の表面を覆う金属膜を形成する工程と、
前記半導体基板を吸着固定する吸着ステージに、前記金属膜が形成された半導体基板を吸着固定した後に、前記半導体基板の主面に臨んで配設され、前記半導体基板の表面形状を測定する表面形状測定手段により、前記吸着ステージに吸着固定された半導体基板の、前記金属膜のうち前記保護膜を覆っている表面部の表面形状データを取得する工程と、
前記表面形状測定手段により取得された表面形状データに基づいて、前記吸着ステージに固定された半導体基板に前記吸着ステージ側から変位を与えて変形させる変形手段により、変形前の前記吸着ステージと平行に設定された切削面と前記半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように変形させる変形工程と、
前記表面形状測定手段により、前記変形された半導体基板の表面部の表面形状を測定し、前記切削面と前記変形された半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内であるか否かを判定する判定工程と、
前記切削面と前記変形された半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内であると判定された場合に、前記変形された半導体基板を前記吸着ステージに吸着固定したまま、前記切削面において切削を行う切削加工により、前記金属膜をパターニングして金属電極を形成する工程と、を備える半導体装置の金属電極形成方法であって、
前記変形手段として、変位をそれぞれ制御可能な複数個のアクチュエータを用い、
複数個の前記アクチュエータを、前記吸着ステージを介して前記半導体基板に変位を与えるように、前記吸着ステージの裏面に当接してそれぞれ設けるとともに、前記アクチュエータの配置間隔を、前記半導体基板の厚さ分布の空間周波数の最小波長に対し、1/2よりも大きく1以下とすることを特徴とする半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項2】
前記変形工程として、
前記表面形状測定手段により取得された表面形状データに基づいて、前記所定の範囲から外れ且つ前記最小波長の1/2以下のうねり領域の有無を判定するうねり判定工程と、
前記うねり領域がある場合に、前記うねり領域に対応するアクチュエータにより、前記うねり領域を前記所定の範囲内となるように変形させる局部変形工程と、
前記うねり領域なしと判定された場合、前記表面形状データに基づき、前記切削面と前記半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように、全体を変形対象として前記半導体基板を変形させ、前記うねり領域ありと判定された場合、前記局部変形工程後に、前記表面形状測定手段により、前記変形された半導体基板の表面部の表面形状を測定し、取得された表面形状データに基づき、前記切削面と前記半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように、全体を変形対象として前記半導体基板を変形させる全体変形工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項3】
表面形状データを取得する工程にて取得された表面形状データに基づき、前記切削面と前記半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように、全体を変形対象として前記半導体基板を変形させる、前記変形工程としての全体変形工程と、
前記全体変形工程後に前記半導体基板の表面部の表面形状を測定し、前記切削面と前記変形された半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内であるか否かを判定する、前記判定工程としての第1判定工程と、
前記第1判定工程にて前記所定の範囲外と判定された場合、前記所定の範囲から外れ且つ前記最小波長の1/2以下のうねり領域の有無を判定する、前記判定工程としてのうねり判定工程と、
前記うねり領域ありと判定された場合、前記うねり領域に対応するアクチュエータにより、前記うねり領域を前記所定の範囲内となるように変形させる、前記変形工程としての局部変形工程と、
前記局部変形工程後に、前記半導体基板の表面部の表面形状を測定し、前記切削面と前記変形された半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内であるか否かを判定する、前記判定工程としての第2判定工程と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項4】
前記半導体基板は、前記下地電極を形成する工程の前に主面とは反対の裏面側から研削されて、所定厚さとされていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項5】
前記半導体素子は、前記半導体基板の厚み方向に電流が流れる縦型トランジスタ素子であることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項6】
前記アクチュエータは、圧電素子を用いた圧電アクチュエータであることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項7】
前記金属電極を形成する工程において、前記金属膜のうち前記開口部の内部に形成された部分のみを残すようにパターニングして、前記金属電極を形成することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項8】
前記表面形状測定手段による前記表面形状データの測定点数は、前記アクチュエータの数よりも多いことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項9】
前記表面形状測定手段は、前記アクチュエータにより変位を与える点に対応する前記表面部の表面形状を少なくとも測定することを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項10】
前記表面形状測定手段は、前記切削面に平行な面に沿って走査されるレーザ変位計であることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項11】
半導体基板を吸着固定する吸着ステージと、
該吸着ステージを介して前記半導体基板に変位を与えるように、前記吸着ステージの裏面に当接して設けれた複数のアクチュエータと、を備え、
前記半導体基板の固定面と反対の主面上に下地電極が形成され、保護膜の開口部から望む前記下地電極及び前記保護膜を覆うように形成された金属膜を、変形前の前記吸着ステージと平行に設定された切削面にて切削して金属電極を形成するための金属電極形成装置であって、
複数の前記アクチュエータが、前記半導体基板の厚さ分布の空間周波数の最小波長に対し、1/2よりも大きく1以下の間隔で配置されていることを特徴とする金属電極形成装置。
【請求項1】
半導体基板の主面に、半導体素子と電気的に接続された下地電極を形成する工程と、
前記下地電極を覆う保護膜を形成した後、該保護膜に前記下地電極を露出させる開口部を形成する工程と、
前記保護膜及び前記開口部から臨む前記下地電極の表面を覆う金属膜を形成する工程と、
前記半導体基板を吸着固定する吸着ステージに、前記金属膜が形成された半導体基板を吸着固定した後に、前記半導体基板の主面に臨んで配設され、前記半導体基板の表面形状を測定する表面形状測定手段により、前記吸着ステージに吸着固定された半導体基板の、前記金属膜のうち前記保護膜を覆っている表面部の表面形状データを取得する工程と、
前記表面形状測定手段により取得された表面形状データに基づいて、前記吸着ステージに固定された半導体基板に前記吸着ステージ側から変位を与えて変形させる変形手段により、変形前の前記吸着ステージと平行に設定された切削面と前記半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように変形させる変形工程と、
前記表面形状測定手段により、前記変形された半導体基板の表面部の表面形状を測定し、前記切削面と前記変形された半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内であるか否かを判定する判定工程と、
前記切削面と前記変形された半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内であると判定された場合に、前記変形された半導体基板を前記吸着ステージに吸着固定したまま、前記切削面において切削を行う切削加工により、前記金属膜をパターニングして金属電極を形成する工程と、を備える半導体装置の金属電極形成方法であって、
前記変形手段として、変位をそれぞれ制御可能な複数個のアクチュエータを用い、
複数個の前記アクチュエータを、前記吸着ステージを介して前記半導体基板に変位を与えるように、前記吸着ステージの裏面に当接してそれぞれ設けるとともに、前記アクチュエータの配置間隔を、前記半導体基板の厚さ分布の空間周波数の最小波長に対し、1/2よりも大きく1以下とすることを特徴とする半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項2】
前記変形工程として、
前記表面形状測定手段により取得された表面形状データに基づいて、前記所定の範囲から外れ且つ前記最小波長の1/2以下のうねり領域の有無を判定するうねり判定工程と、
前記うねり領域がある場合に、前記うねり領域に対応するアクチュエータにより、前記うねり領域を前記所定の範囲内となるように変形させる局部変形工程と、
前記うねり領域なしと判定された場合、前記表面形状データに基づき、前記切削面と前記半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように、全体を変形対象として前記半導体基板を変形させ、前記うねり領域ありと判定された場合、前記局部変形工程後に、前記表面形状測定手段により、前記変形された半導体基板の表面部の表面形状を測定し、取得された表面形状データに基づき、前記切削面と前記半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように、全体を変形対象として前記半導体基板を変形させる全体変形工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項3】
表面形状データを取得する工程にて取得された表面形状データに基づき、前記切削面と前記半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内になるように、全体を変形対象として前記半導体基板を変形させる、前記変形工程としての全体変形工程と、
前記全体変形工程後に前記半導体基板の表面部の表面形状を測定し、前記切削面と前記変形された半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内であるか否かを判定する、前記判定工程としての第1判定工程と、
前記第1判定工程にて前記所定の範囲外と判定された場合、前記所定の範囲から外れ且つ前記最小波長の1/2以下のうねり領域の有無を判定する、前記判定工程としてのうねり判定工程と、
前記うねり領域ありと判定された場合、前記うねり領域に対応するアクチュエータにより、前記うねり領域を前記所定の範囲内となるように変形させる、前記変形工程としての局部変形工程と、
前記局部変形工程後に、前記半導体基板の表面部の表面形状を測定し、前記切削面と前記変形された半導体基板の表面部との距離が所定の範囲内であるか否かを判定する、前記判定工程としての第2判定工程と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項4】
前記半導体基板は、前記下地電極を形成する工程の前に主面とは反対の裏面側から研削されて、所定厚さとされていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項5】
前記半導体素子は、前記半導体基板の厚み方向に電流が流れる縦型トランジスタ素子であることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項6】
前記アクチュエータは、圧電素子を用いた圧電アクチュエータであることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項7】
前記金属電極を形成する工程において、前記金属膜のうち前記開口部の内部に形成された部分のみを残すようにパターニングして、前記金属電極を形成することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項8】
前記表面形状測定手段による前記表面形状データの測定点数は、前記アクチュエータの数よりも多いことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項9】
前記表面形状測定手段は、前記アクチュエータにより変位を与える点に対応する前記表面部の表面形状を少なくとも測定することを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項10】
前記表面形状測定手段は、前記切削面に平行な面に沿って走査されるレーザ変位計であることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項11】
半導体基板を吸着固定する吸着ステージと、
該吸着ステージを介して前記半導体基板に変位を与えるように、前記吸着ステージの裏面に当接して設けれた複数のアクチュエータと、を備え、
前記半導体基板の固定面と反対の主面上に下地電極が形成され、保護膜の開口部から望む前記下地電極及び前記保護膜を覆うように形成された金属膜を、変形前の前記吸着ステージと平行に設定された切削面にて切削して金属電極を形成するための金属電極形成装置であって、
複数の前記アクチュエータが、前記半導体基板の厚さ分布の空間周波数の最小波長に対し、1/2よりも大きく1以下の間隔で配置されていることを特徴とする金属電極形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−97027(P2011−97027A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195812(P2010−195812)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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