説明

半導体配線の製造方法

【課題】例えばULSI(超大規模集積回路)等に代表されるSi半導体デバイス等の半導体装置において、高性能(低電気抵抗率)かつ高信頼性(高EM耐性)を示すCu系配線を提供する。
【解決手段】半導体基板上の絶縁膜に設けられた凹部にCu−Ti合金が直接埋め込まれてなる半導体装置のCu系配線の製造方法であって、前記Cu−Ti合金が、Tiを0.5原子%以上3.0原子%以下含むものであり、かつ、前記Cu−Ti合金をスパッタリング法で形成し、該Cu−Ti合金を前記凹部に埋め込む時または埋め込み後に、該Cu−Ti合金を下記加熱条件で加熱する工程を含むことを特徴とする半導体装置のCu系配線の製造方法。
(加熱条件)
加熱温度:350〜600℃
加熱時間:10〜120min.
室温から上記加熱温度までの昇温速度:10℃/min.以上
加熱雰囲気における酸素分圧:1×10−7〜1×10−4atm

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体配線の製造方法に関するものであり、詳細には、例えばULSI(超大規模集積回路)等に代表されるSi半導体デバイス等の半導体装置において、高性能(低電気抵抗率)かつ高信頼性(高EM耐性)を示す半導体配線(Cu系配線)の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSI(大規模集積回路)の高集積化や高速信号伝播の要求を満たすため、デザインルールは縮小の一途を辿っており、配線ピッチの縮小や配線幅の減少、配線間距離の縮小が行われている。また、半導体装置の高集積化に対応するため、配線を多層構造にすることが検討されている。
【0003】
配線回路の微細化・高集積化に伴い配線自体の電気抵抗(以下、配線抵抗ということがある)が問題になっている。配線抵抗の増加が信号伝達の遅延を招くからである。そこで配線抵抗を低減できる配線材料として、従来のAl系配線材料にかわり、Cuをベースにした配線材料(以下、Cu系配線材料ということがある)を使用し、Cu系配線を形成することが試みられている。
【0004】
多層構造のCu系配線を形成する方法として、ダマシン配線技術が知られている。この技術は、半導体基板上に設けられた絶縁膜に、配線溝や層間接続孔(ビア・トレンチ)(以下、これらをまとめて凹部ということがある)を形成し、凹部表面を純CuやCu合金等のCu系配線材料(薄膜)で覆い、これを加熱・加圧等することでCu系配線材料を流動させて凹部に埋め込み、その後、例えば化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing,CMP)法により研磨を行って凹部以外の部分に堆積した不要部分の配線材料を除去し、凹部内にのみ配線材料を残してCu系配線を形成する方法である。近年では、集積度の増加とともに、上記凹部のアスペクト比(深さ/孔径の比)がより高くなる傾向にある。
【0005】
ところでCu系配線材料を用いる場合、Cu系配線材料と絶縁膜を直接接触させると、Cuが絶縁膜へ拡散し、絶縁膜の絶縁性を劣化させてしまう。こうした問題となる現象は、エレクトロマイグレーション(Electro Migration;EM)と呼ばれている。そこでCuが絶縁膜へ拡散するのを防止して上記EMに対する耐性を確保するため、Cu系配線と絶縁膜の間にバリア層が設けられている。即ち、一般的なダマシン配線の形成プロセスでは、絶縁膜に形成された凹部に前記Cu系配線を形成する前に、バリア層(TaN薄膜など)を形成することが行われている。
【0006】
このバリア層には、Cu系配線材料を凹部に埋め込むために500〜700℃程度の高温に加熱した場合でもバリア性を発揮することが要求されるため、TaN膜やTiN膜などの金属窒化膜が用いられている。しかしこうした金属窒化膜は、金属膜に比べて電気抵抗率が高いため、Cu系配線の電気抵抗率を実効的に高めてしまうといった問題がある。
【0007】
Cu系配線の電気抵抗率を低くするには、バリア層を極力薄く、且つ均一に形成する必要があるが、現状の成膜方法(スパッタリング法)では該バリア層を薄く、かつ均一に形成することが難しい。電気抵抗率低減の観点からはバリア層厚をできるだけ薄くする必要があるが、全体的または局部的に薄くなりすぎるとその部分でバリア性を十分に確保できないといった問題が生じうる。また近年では、配線溝の幅や接続孔の直径はますます小さく、また配線溝の深さ/幅比や、接続孔の深さ/直径比はますます大きくなっているため、バリア層の形成は一層難しくなっている。
【0008】
そこで本出願人は、バリア層(TaN薄膜など)を使用せずに、凹部にCu合金配線を直接形成し、熱処理を施すことによって、絶縁膜とCu合金配線の界面にバリア層を自立的(自己整合的)に形成するダマシン配線形成技術を提案している。例えば特許文献1では、絶縁膜の凹部に、Tiを0.5〜10原子%含有するCu合金薄膜を凹部形状に沿って10〜50nmの厚さで形成した後、Cu合金薄膜付き凹部に純Cu薄膜を形成し、350℃以上に加熱して絶縁膜とCu合金薄膜との間にTiを析出させることを提案している。この通り、Cuに対する固溶限の小さいTiを含むCu合金を凹部に沿って形成し、これを加熱することで、CuとTiが2相分離し、TiがCu系配線と絶縁膜の界面に異常拡散してTi濃化層が形成される。このTi濃化層がバリア層として作用するため、従来のダマシンCu系配線よりも実効電気抵抗を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−021807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、半導体装置のCu系配線には、配線抵抗のより確実かつ十分に低減されたものが求められているが、上記特許文献1等の熱処理条件では、配線抵抗を低減できるものの、より確実かつ十分に低減するには更なる検討が必要であると思われる。本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、半導体装置(Si半導体デバイス等)のCu系配線の製造時に、該配線の熱処理条件を適切なものとすることにより、Cu−Ti合金の自己バリア形成能を存分に発揮させて、Cu系配線(特には、Cu−Ti合金配線)の配線抵抗を実効的に低減し、高信頼性と低電気抵抗率を確保した半導体配線(Cu系配線)を製造するための方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る半導体配線の製造方法は、半導体基板上の絶縁膜に設けられた凹部にCu−Ti合金が直接埋め込まれてなる半導体配線の製造方法であって、
前記Cu−Ti合金がTiを0.5原子%以上3.0原子%以下含むものであり、かつ、
前記Cu−Ti合金をスパッタリング法で形成後、該Cu−Ti合金を前記凹部に埋め込む時または埋め込み後に、該Cu−Ti合金を下記加熱条件で加熱する工程を含むところに特徴を有する。
(加熱条件)
加熱温度:350〜600℃
加熱時間:10〜120min.
室温から上記加熱温度までの昇温速度:10℃/min.以上
加熱雰囲気における酸素分圧:1×10−7〜1×10−4atm
【0012】
また、本発明に係る半導体配線の別の製造方法は、半導体基板上の絶縁膜に設けられた凹部に沿ってCu−Ti合金からなる層を形成した後、該Cu−Ti合金からなる層付き凹部に純Cuが埋め込まれてなる半導体配線の製造方法であって、
前記Cu−Ti合金がTiを0.5原子%以上3.0原子%以下含むものであり、かつ、
前記Cu−Ti合金からなる層をスパッタリング法で形成する工程、および該Cu−Ti合金からなる層を上記加熱条件で加熱する工程を含むところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、半導体基板上の絶縁膜に設けられた凹部と直接接触するCu−Ti合金の配線抵抗を確実かつ十分に下げることができるため、例えばULSI(超大規模集積回路)等に代表されるSi半導体デバイス等の半導体装置において、高性能(低電気抵抗率)かつ高信頼性(高EM耐性)を示す半導体配線(Cu系配線)を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1における熱処理(熱処理時の加熱温度:400℃)時の酸素分圧と試料の電気抵抗率の関係を示したグラフである。
【図2】実施例2における熱処理(熱処理時の加熱温度:500℃)時の酸素分圧と試料の電気抵抗率の関係を示したグラフである。
【図3】実施例3における熱処理(熱処理時の加熱温度:600℃)時の酸素分圧と試料の電気抵抗率の関係を示したグラフである。
【図4】実施例4における熱処理時の酸素分圧と試料の電気抵抗率の関係を絶縁膜の種類別に示したグラフである。
【図5】実施例5における熱処理時の加熱温度と試料の電気抵抗率の関係を示したグラフである。
【図6】実施例6における熱処理時の加熱時間と試料の電気抵抗率の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、絶縁膜とCu系配線(特には、Cu−Ti合金)の界面にバリア層を別途成膜しなくとも、電気抵抗率の低減されたCu系配線(半導体配線)を製造する方法を確立すべく、鋭意検討を重ねてきた。その結果、絶縁膜に形成された凹部にて、該絶縁膜と少なくとも直接接触する配線部分を、特定のCu−Ti合金とし、かつ該Cu−Ti合金を特定の条件で加熱すれば、上記絶縁膜とCu−Ti合金との界面に自己バリア層(絶縁膜とCu系配線の界面に濃化し、該界面に例えばTiCを形成してバリア性を発揮させる層)を確実に形成することができ、配線抵抗(電気抵抗)の確実かつ十分に低減されたCu系配線が得られることを見出した。以下、本発明について詳述する。
【0016】
まず本発明では、絶縁膜に形成された凹部にて該絶縁膜と少なくとも直接接触する配線部分に、Tiを0.5〜3.0原子%含むCu−Ti合金を用いる。Tiは、上記自己バリア層を構成するのに必要な元素であり、0.5原子%以上必要である。しかしTi量が過剰になると、絶縁膜との界面に偏析しきれなかったTiが配線中に固溶状態で残留したり、Cuと金属間化合物(Ti析出物)を形成する。こうした固溶TiやTi析出物は、Cu系配線の電気抵抗率を高める原因となる。従ってTi量は3.0原子%以下とする。
【0017】
上記Cu−Ti合金の残部組成はCuおよび不可避不純物であるが、例えば、AgやMg、Siなどを含有させてもよい。
【0018】
絶縁膜に形成された凹部にて該絶縁膜と少なくとも直接接触する配線部分に上記成分組成のCu−Ti合金を形成したCu系配線の形態として、
(1)半導体基板上の絶縁膜に設けられた凹部に上記成分組成のCu−Ti合金が直接埋め込まれてなるCu系配線や、
(2)半導体基板上の絶縁膜に設けられた凹部に沿って上記成分組成のCu−Ti合金からなる層(Cu−Ti合金層)を形成した後、該Cu−Ti合金層付き凹部に純Cuが埋め込まれてなるCu系配線が挙げられる。
【0019】
上記(1)のCu系配線を得る場合には、絶縁膜に形成された凹部の表面を、上記成分組成のCu−Ti合金からなる薄膜で覆い、これを加熱および/または加圧することでCu系配線材料を流動させて凹部に埋め込み、その後、例えば化学機械研磨法により研磨を行って凹部以外の部分に堆積した不要部分の配線材料を除去し、凹部内にのみ配線材料を残してCu系配線を形成する方法が挙げられる。
【0020】
また上記(2)のCu系配線を得るには、絶縁膜に設けられた凹部に沿って、シード層として上記成分組成のCu−Ti合金層を形成した後、該Cu−Ti合金層付き凹部に純Cuをフル配線(配線本体部)として埋め込み、その後、上記(1)と同様にしてCu系配線を形成する方法が挙げられる。
【0021】
上記(1)におけるCu−Ti合金からなる薄膜や(2)におけるCu−Ti合金層(以下、これらをCu−Ti合金と総称することがある)の形成は、スパッタリング法で行う。Cu−Tiは合金であるため、従来の電解めっき法では形成が難しく、CVD法でも形成が難しいからである。この様にCu−Ti合金をスパッタリング法で形成することにより、気相急冷による非平衡固溶現象を利用することができる。即ち、Cuに対して固溶限の小さいTiを添加したCu−Ti合金をスパッタリング法で形成することにより、As-deposited(非熱処理)状態でCu−Ti非平衡固溶状態にありTiが拡散しやすいCu−Ti合金を形成することができる。
【0022】
上記(1)の場合、スパッタリング法により、Cu−Ti合金を薄膜として、膜厚100nm以上500nm以下の範囲内で成膜することが好ましい。
【0023】
また上記(2)の場合、スパッタリング法により、Cu−Ti合金からなる層(Cu−Ti合金層)を膜厚10nm以上50nm以下の範囲内で、凹部に沿って成膜することが好ましい。膜厚が10nm未満では、加熱しても充分な厚さのTi濃化層が生成せず、バリア性が低下するからである。より好ましい膜厚は15nm以上であり、更に好ましくは20nm以上である。一方、上記膜厚が50nmを超えると、過剰なCu−Ti合金層が凹部の開口部を覆うようにブリッジングを生じやすく、凹部内に空隙を形成してしまい、Cu系配線の品質の劣化を招くため好ましくない。より好ましい膜厚は45nm以下であり、更に好ましくは40nm以下である。
【0024】
上記の通りスパッタリング法でCu−Ti合金を形成するには、スパッタリングターゲットとして、Tiを含有するCu合金ターゲットを用いるか、純Cuターゲットの表面にTiチップを貼付したチップオンターゲットを用いればよい。該ターゲットを用い不活性ガス雰囲気下でスパッタリングすることが挙げられる。不活性ガスとして、例えば、ヘリウムやネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンなどを用いることができる。好ましくはアルゴンやキセノンを用いるのがよく、特にアルゴンは比較的安価であり、好適に用いることができる。なお、上記不活性ガスはN2ガスやH2ガスを含有していてもよい。
【0025】
その他のスパッタリング条件(例えば、到達真空度、スパッタガス圧、放電パワー密度、基板温度、極間距離など)は、通常の範囲で適宜調整できる。
【0026】
本発明では、この様にして形成されたCu−Ti合金に対して、下記の加熱条件を全て満たすように加熱することが大変重要である。最適化された条件で加熱することによって、Cu−Ti合金の自己バリア形成能を十分に発揮させて、絶縁膜とCu−Ti合金との界面に上述した自己バリア層を確実に形成することができる。具体的には、Cu−Ti合金中のTiが2相分離を起こし、Cu−Ti合金/絶縁膜界面にTiが異常拡散し濃化する。界面濃化したTiは絶縁膜と反応し、TiSi、TiCなどの化合物からなる層が形成される。この化合物層は界面で極薄で均一に形成される。また、下記の条件で加熱することによって、Cu系配線(Cu−Ti合金)の絶縁膜と接触していない表面にも、Tiを十分に異常拡散、濃化させることができる。その結果、Cuが絶縁膜へ拡散するのを防止できると共に、Cu系配線内部に存在する固溶TiやTiの金属間化合物を排除して、従来のダマシンCu系配線よりも配線抵抗を確実に低減でき、高性能(低電気抵抗率)かつ高信頼性(高EM耐性)を示すCu系配線を実現できる。
(加熱条件)
加熱温度:350〜600℃
加熱時間:10〜120min.
室温から上記加熱温度までの昇温速度:10℃/min.以上
加熱雰囲気における酸素分圧:1×10−7〜1×10−4atm
以下、各条件を規定した理由について詳述する。
【0027】
〈加熱温度:350〜600℃〉
Cu−Ti合金配線に含まれるTiを異常拡散させて、絶縁膜とCu−Ti合金との界面に偏析・濃化させるには、準安定状態で合金元素(Ti)を、Cu−Ti合金/絶縁膜界面やCu系配線(Cu−Ti合金)の絶縁膜と接触していない面に移動・反応させる必要がある。この準安定状態でのTiを移動・反応させるには、350℃以上に加熱する必要がある。加熱温度が350℃よりも低いと、TiがCu中に固溶状態で残留したり、Cuと金属間化合物を形成する。どちらの場合も十分に電気抵抗率を低下させることができず、配線の実効的電気抵抗率が高くなるため好ましくない。加熱温度は、好ましくは400℃以上である。一方、加熱温度が高すぎても上記準安定状態でのTiの移動・反応が生じにくくなることから、加熱温度の上限は600℃とする。好ましくは500℃以下である。
【0028】
〈加熱時間:10〜120min.〉
上記加熱温度での準安定状態での合金元素(Ti)の移動・反応は、10min.(分)以内にほぼ完了するが、本発明では、上記Tiの移動・反応を十分促進させるため、上記加熱温度での保持時間(加熱時間)を10min.以上とする。一方、加熱時間を長くしすぎても、電気抵抗率の低減効果は飽和し、生産性の低下を招くことから、加熱時間は120min.以下とする。
【0029】
〈室温から上記加熱温度までの昇温速度:10℃/min.以上〉
Cu−Ti合金中の合金元素(Ti)を移動(拡散)させるには、多数の拡散路(高速拡散路)が必要であり、高速拡散路として貫通粒界を形成させる必要がある。この貫通粒界は、上記加熱温度域(350〜600℃)での加熱により形成されるが、昇温速度が速いほど、柱状晶の多結晶組織が形成されやすく貫通粒界が多く形成される。よって、室温から上記加熱温度までの昇温速度は10℃/min.以上とする。
【0030】
〈加熱雰囲気における酸素分圧:1×10−7〜1×10−4atm〉
Cu−Ti合金中の合金元素(Ti)をCu系配線(Cu−Ti合金)の絶縁膜と接触していない面に移動(拡散)させるには、上記面で反応を促進させる物質が必要であり、この場合酸素が有効である。十分にTiを移動(拡散)させて、電気抵抗率を低減すべく、加熱雰囲気における酸素分圧を1×10−7atm以上とする。一方、加熱雰囲気における酸素分圧が高すぎると、加熱の初期段階においてTiの酸化物が表面や結晶粒界に強固に形成されて、Tiの高速拡散経路がふさがれてしまうため、電気抵抗率の低減を図ることができない。よって本発明では、加熱雰囲気における酸素分圧を1×10−4atm以下とする。
【0031】
上記条件での加熱は、以下の時期に行うことが挙げられる。
【0032】
上記(1)の場合には、(1−1)Cu−Ti合金(薄膜)を、凹部を覆うようにスパッタリングで形成後、Cu−Ti合金を前記凹部に埋め込むための加熱時、または加熱および加圧時に、上記条件で加熱することが挙げられる。また、(1−2)Cu−Ti合金(薄膜)を、凹部を覆うようにスパッタリングで形成し、該Cu−Ti合金(薄膜)を前記凹部に埋め込んで配線を形成した後、上記条件で加熱することが挙げられる。尚、前記埋め込みのための加圧の条件や、(1−2)の場合の埋め込みのための加熱の条件は、通常行われている条件を採用することができる。
【0033】
上記(2)の場合には、凹部に沿ってCu−Ti合金層をスパッタリングで形成した後、純Cuからなる配線本体部を形成(電解めっき法やスパッタリング法等で形成)する前にまたは後に、上記条件で加熱することが挙げられる。
【0034】
尚、本発明の製造方法は、特定のCu−Ti合金をスパッタリング法で形成後、上記条件で該Cu−Ti合金を加熱する工程を設けるところに特徴があり、その他の製造工程・条件については特に問わず、例えば、下記の条件を採用することができる。
【0035】
前記絶縁膜としては、シリコン酸化膜(SiO)や、このシリコン酸化膜(SiO)にCを含有させたSiCOやSiCNなどを用いることができる。
【0036】
上記(2)のCu系配線を形成する場合の純Cuをフル配線(配線本体部)として埋め込む方法についても特に限定されず、例えば、電解めっき法や化学気相法(CVD法)、スパッタリング法、(アーク)イオンプレーティング法などを採用できる。特に電解めっき法を採用すれば、純Cuを、Cu−Ti合金層付き凹部の底から徐々に埋め込みながら充填することができるため、凹部の最小幅が狭く、深い場合でも純Cuを凹部の隅々に亘って埋め込むことができる。尚、スパッタリング法の場合は、まず純Cu薄膜を、Cu−Ti合金層付き凹部を覆うように形成した後、この純Cu薄膜を該Cu−Ti合金からなる層付き凹部に埋め込むのがよい。この場合、スパッタリング法の条件や埋め込み時の条件(埋め込み時に上記条件で加熱する場合の加熱条件を除く)として、上記特許文献1に記載の条件を採用することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0038】
[実施例1]
シリコンウェハー表面に、絶縁膜としてSiCO膜を厚みが100nmとなるように形成した基板を用意し、該絶縁膜の表面に、Cu−1.0原子%(at%)Ti合金薄膜を、DCマグネトロンスパッタリング法で膜厚が300nmとなるように成膜した。スパッタリング条件(成膜条件)は下記の通りとし、ターゲットとしてチップオンターゲットを用いてCu合金薄膜の組成を調整した。尚、上記チップオンターゲットとして、ベースとなる純Cuターゲット(80mmφ)の表面に、Tiチップ(厚みが1mmの長方形板材)を3〜6枚放射状に貼り付けたものを用いた。
【0039】
(成膜条件)
到達真空度:1×10−8Torr以下
スパッタリング時の雰囲気ガス:Ar
スパッタガス圧:8×10−3Torr
放電パワー: 300W
ターゲットサイズ:φ80mm
基板温度(Ts):RT(水冷)
極間距離:100mm
【0040】
成膜して得られた試料(Cu合金薄膜)を、石英管を使用した横型管状炉に入れて熱処理した。熱処理は、熱処理雰囲気を、真空度を変化させた真空雰囲気または純度(残留酸素濃度)の異なるArガスをフローさせた雰囲気(Ar流量:20mL/min.)とすることにより横型管状炉内の酸素分圧を変化させた。昇温速度:200℃/min.で室温から400℃まで加熱し、2時間保持する熱処理を行って、熱処理を施した試料(Cu合金薄膜)を得た。
【0041】
次に、As−deposited(非熱処理)状態の試料および前記熱処理を施した試料について、4探針法によりCu合金薄膜のシート抵抗を測定し、膜厚を乗じてCu合金薄膜の電気抵抗率(μΩ・cm)を算出した。
【0042】
熱処理雰囲気中の酸素分圧と試料の電気抵抗率の関係を整理した結果を図1に示す。図1より、電気抵抗率は、熱処理時の酸素分圧によって異なり、電気抵抗率が最小となる最適酸素分圧域が存在することが分かる。具体的には、熱処理雰囲気において、酸素分圧を本発明で規定した1×10−7〜1×10−4atmとすることによって、4μΩ・cm以下の低電気抵抗率を達成できることが分かる。尚、As−deposited(非熱処理)状態の試料の電気抵抗率は16〜20μΩ・cmであった。
【0043】
[実施例2]
上記熱処理において、室温から500℃まで加熱し、加熱温度:500℃で保持する以外は、実施例1と同様にして、試料を作製し電気抵抗率を測定した。
【0044】
熱処理雰囲気中の酸素分圧と試料の電気抵抗率の関係を整理した結果を図2に示す。図2より、400℃で熱処理した場合と比較して、電気抵抗率は全体的にやや低下しており、電気抵抗率の酸素分圧依存性は前記図1(熱処理時の加熱温度:400℃)の場合と同様の傾向を示している。即ち、電気抵抗率が最小となる最適酸素分圧域が存在すると推察され、電気抵抗率が最小となる最適酸素分圧域は、熱処理時の加熱温度が400℃の場合と同様と考えられる。
【0045】
[実施例3]
上記熱処理において、室温から600℃まで加熱し、加熱温度:600℃で保持する以外は、実施例1と同様にして、試料を作製し電気抵抗率を測定した。
【0046】
熱処理雰囲気中の酸素分圧と試料の電気抵抗率の関係を整理した結果を図3に示す。図3より、400℃で熱処理した場合と比較して、電気抵抗率は全体的に低下しており、電気抵抗率の酸素分圧依存性は前記図1(熱処理時の加熱温度:400℃)の場合と同様の傾向を示している。即ち、電気抵抗率が最小となる最適酸素分圧域が存在すると推察され、電気抵抗率が最小となる最適酸素分圧域は、熱処理時の加熱温度が400℃の場合と同様と考えられる。
【0047】
[実施例4]
絶縁膜として、SiO膜、SiCO膜またはSiCN膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、試料を作製し電気抵抗率を測定した。
【0048】
熱処理雰囲気(加熱雰囲気)中の酸素分圧と試料の電気抵抗率の関係を、絶縁膜の種類別に図4に示す。図4より、電気抵抗率は熱処理時の酸素分圧によって異なるが、絶縁膜の種類によってはほとんど変化しないことが分かる。
【0049】
[実施例5]
絶縁膜としてSiO膜を形成したこと、および熱処理において、熱処理雰囲気(加熱雰囲気)中の酸素分圧を2×10−6atmとし、加熱温度(室温からの到達温度)を350℃から600℃の間で変化させた以外は、実施例1と同様にして、試料を作製し電気抵抗率を測定した。
【0050】
熱処理時の加熱温度と試料の電気抵抗率の関係を整理した結果を図5に示す。図5より、電気抵抗率は熱処理時の加熱温度が高くなるにつれて低下していくことが分かる。
【0051】
[実施例6]
絶縁膜としてSiO膜を形成したこと、および熱処理において、熱処理雰囲気中の酸素分圧を2×10−6atmとし、加熱温度:400℃での加熱時間を0〜120min.の間で変化させた以外は、実施例1と同様にして、試料を作製し電気抵抗率を測定した。
【0052】
熱処理時の加熱時間(加熱温度で保持する時間)と試料の電気抵抗率の関係を整理した結果を図6に示す。図6より、試料の電気抵抗率は熱処理することで急激に低下し、電気抵抗率:4μΩ・cm以下を達成するには、加熱時間を10min.以上とすればよいこと、および長時間の熱処理を行っても電気抵抗率低下の効果は飽和することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上の絶縁膜に設けられた凹部にCu−Ti合金が直接埋め込まれてなる半導体配線の製造方法であって、
前記Cu−Ti合金がTiを0.5原子%以上3.0原子%以下含むものであり、かつ、
前記Cu−Ti合金をスパッタリング法で形成し、該Cu−Ti合金を前記凹部に埋め込む時または埋め込み後に、該Cu−Ti合金を下記加熱条件で加熱する工程を含むことを特徴とする半導体配線の製造方法。
(加熱条件)
加熱温度:350〜600℃
加熱時間:10〜120min.
室温から上記加熱温度までの昇温速度:10℃/min.以上
加熱雰囲気における酸素分圧:1×10−7〜1×10−4atm
【請求項2】
半導体基板上の絶縁膜に設けられた凹部に沿ってCu−Ti合金からなる層を形成した後、該Cu−Ti合金からなる層付き凹部に純Cuが埋め込まれてなる半導体配線の製造方法であって、
前記Cu−Ti合金がTiを0.5原子%以上3.0原子%以下含むものであり、かつ、
前記Cu−Ti合金からなる層をスパッタリング法で形成する工程、および該Cu−Ti合金からなる層を下記加熱条件で加熱する工程を含むことを特徴とする半導体配線の製造方法。
(加熱条件)
加熱温度:350〜600℃
加熱時間:10〜120min.
室温から上記加熱温度までの昇温速度:10℃/min.以上
加熱雰囲気における酸素分圧:1×10−7〜1×10−4atm

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−171063(P2010−171063A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9971(P2009−9971)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】