説明

半導体集積回路の設計装置及び半導体集積回路の設計方法

【課題】チップ内の温度差が小さい高信頼性の半導体集積回路を提供できるようにする。
【解決手段】熱解析部11は、設計する半導体集積回路のデータから熱解析を行い、温度分布を算出し、ベクトル生成部12は、算出された温度分布の温度勾配に応じたベクトルを生成し、ダミーパターン生成部13は、生成されたベクトルにしたがってダミーパターンを生成し、半導体集積回路のレイアウトデータに追加する。このようなダミーパターンを生成することで、温度分布が平均化され、チップ内の温度差が小さい高信頼性の半導体集積回路を提供できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路の設計装置及び半導体集積回路の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路では、トランジスタなどの各種素子の配置位置などによって、チップ内の領域間での温度が異なる場合がある。大きなものでは、チップ内の領域間の温度差が100℃程度になる場合もあった。
【0003】
従来、多層配線構造の半導体集積回路において、熱のたまりやすい低誘電率の層間絶縁膜の熱を放熱するために、各配線層にダミー配線膜を設け、各ダミー配線膜を、スルーホールを介して相互に接続し、熱を上層の配線層まで伝達できるようにした技術があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−302729号公報
【特許文献2】特開2010−67842号公報
【特許文献3】特開平10−199882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チップ内での温度差が大きいと、半導体集積回路が設計通りに動作しない場合があった。
これは、たとえば、温度差によって、素子(トランジスタ、抵抗または容量)の特性や、配線抵抗または配線容量が局所的に異なり、素子の静特性や信号のタイミングなどが、シミュレーション結果と異なってしまうことなどに起因するものである。また、信頼性の観点からも、たとえば、EM(エレクトロマイグレーション)、TDDB(絶縁膜の経時破壊)は温度が高いほど不利になり、温度の高い場所によって信頼性が決まってくるため(温度の高い一部分で信頼性が決まってしまう)、信頼性の高い半導体集積回路が得られなくなる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の一観点によれば、設計する半導体集積回路のデータから熱解析を行い、温度分布を算出する熱解析部と、算出された前記温度分布の温度勾配に応じたベクトルを生成するベクトル生成部と、生成された前記ベクトルにしたがってダミーパターンを生成し、前記半導体集積回路のレイアウトデータに追加するダミーパターン生成部と、を備えた半導体集積回路の設計装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
開示の半導体集積回路の設計装置及び半導体集積回路の設計方法によれば、チップ内の温度差が小さい、高信頼性の半導体集積回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施の形態の設計装置の一例を示す図である。
【図2】設計装置の動作例を示すフローチャートである。
【図3】熱解析結果の一例を示す図である。
【図4】生成したベクトルの一例を示す図である。
【図5】1つのメッシュ領域に複数のベクトルが生成されている例を示す図である。
【図6】分割したメッシュ領域ごとにベクトルを生成する例を示す図である。
【図7】拡大したメッシュ領域の例を示す図である。
【図8】ダミーパターンの生成方法の一例を示すフローチャートである。
【図9】平坦化用ダミーパターンを加えたレイアウト例を示す図である。
【図10】平坦化用のダミーパターンの配置例を示す図である。
【図11】平坦化用ダミーパターンの接続例を示す図である。
【図12】ダミーパターン入りのレイアウトデータの例である。
【図13】完成したレイアウトデータに対する熱解析結果の例を示す図である。
【図14】ダミーパターン生成処理の2つ目の例を示すフローチャートである。
【図15】生成されるダミーパターンの例を示す図である。
【図16】干渉部分の例を示す図である。
【図17】干渉部分を除去したダミーパターンを含むレイアウトデータの例を示す図である。
【図18】平坦化用ダミーパターンの生成例を示す図である。
【図19】本実施の形態に用いるコンピュータのハードウェアの一構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態の設計装置の一例を示す図である。
設計装置10は、熱解析部11、ベクトル生成部12、ダミーパターン生成部13、記憶部14を有する。
【0010】
熱解析部11は、設計する半導体集積回路のデータから熱解析を行い、温度分布を算出する。熱解析は、たとえば、設計対象の半導体集積回路のレイアウトデータやネットリストなどの回路シミュレーション用データD1を用いて行われる。熱解析には、シリコンの熱伝導率や、層間絶縁膜の誘電率など、各部の物性値などを用いるようにしてもよい。熱解析には市販の熱解析シミュレーションツールが使用可能である。
【0011】
ベクトル生成部12は、算出された温度分布の温度勾配に応じたベクトルを生成する。
ダミーパターン生成部13は、生成されたベクトルにしたがってダミーパターンを生成し、半導体集積回路のレイアウトデータに追加し、ダミーパターン入りのレイアウトデータD2を得る。なお、ダミーパターンとは、半導体集積回路の素子や配線などの機能をもたないパターンのことを意味する。
【0012】
記憶部14は、設計対象の半導体集積回路のレイアウトデータやネットリストなどの回路シミュレーション用データD1を記憶している。また、記憶部14は、ダミーパターン生成部13で生成されたダミーパターン入りのレイアウトデータD2を記憶する。
【0013】
図2は、設計装置の動作例を示すフローチャートである。
まず、熱解析部11にて熱解析が行われる(ステップS1)。
熱解析部11は、たとえば、回路シミュレーション用データD1をもとに、半導体集積回路の回路を全て抵抗に置き換え、熱解析シミュレーションを実行する。そして、熱解析部11は、それらの抵抗と、抵抗に流れる電流からジュール熱を計算することで、発熱量を見積もり、レイアウトデータと発熱量とから温度分布を作成する。
【0014】
図3は、熱解析結果の一例を示す図である。
図3では、熱解析によって得られた半導体集積回路の温度分布の例が示されている。領域20,21,22,23,24は、それぞれある温度範囲の領域を示し、領域20〜24の順で温度が高くなっている。
【0015】
次に、ベクトル生成部12によるベクトルの生成が行われる(ステップS2)。ベクトル生成部12は、たとえば、図3に示したような温度分布を、一定の大きさごとのメッシュ領域に区切り、メッシュ領域ごとにベクトルを生成する。
【0016】
図4は、生成したベクトルの一例を示す図である。
図4中の矢印が、ベクトルを表している。たとえば、ベクトル生成部12は、各メッシュ領域内で、温度分布の温度勾配に垂直な向きのベクトルを生成する。ベクトルの大きさは、メッシュ領域内での温度勾配の大きさ(急峻さ)に応じて設定する。温度差が大きいメッシュ領域ほど、大きなベクトルが設定される。
【0017】
1つのメッシュ領域において、複数のベクトルが生成される場合、ベクトル生成部12は、たとえば、最も大きいベクトルを、そのメッシュ領域のベクトルとする。
図5は、1つのメッシュ領域に複数のベクトルが生成されている例を示す図である。
【0018】
1つのメッシュ領域30に、ベクトル31,32が生成されている。このような例の場合、ベクトル生成部12は、最も大きいベクトル31を、そのメッシュ領域30のベクトルとする。
【0019】
また、1つのメッシュ領域において、複数のベクトルが生成される場合、ベクトル生成部12は、たとえば、そのメッシュ領域を複数のメッシュ領域に分割して、分割したメッシュ領域ごとに新たにベクトルを生成するようにしてもよい。
【0020】
図6は、分割したメッシュ領域ごとにベクトルを生成する例を示す図である。
図6には、1つのメッシュ領域を4分割したメッシュ領域35−1,35−2,35−3,35−4が示されている。ベクトルは、細分化されたメッシュ領域35−1〜35−4ごとに新たに生成される。図6の例では、メッシュ領域35−1にベクトル36、メッシュ領域35−2にベクトル37、メッシュ領域35−4にベクトル38が生成されている。
【0021】
メッシュ領域内に温度勾配が見られない場合、ベクトル生成部12は、たとえば、そのメッシュ領域に隣接するメッシュ領域のベクトルのうち、最も大きいものを選択して、温度勾配が見られないメッシュ領域のベクトルとするようにしてもよい。
【0022】
また、メッシュ領域内に温度勾配が見られない場合、ベクトル生成部12は、そのメッシュ領域を、ベクトルが生成されているメッシュ領域を含むまで拡大していき、そのベクトルを、拡大したメッシュ領域のベクトルとするようにしてもよい。
【0023】
図7は、拡大したメッシュ領域の例を示す図である。
ベクトル生成部12は、たとえば、図7に示されるように、温度勾配が見られないメッシュ領域40を拡大していく(隣接するメッシュ領域をマージしていく)。メッシュ領域41の広さになると、ベクトル42を含むようになる。したがって、ベクトル生成部12は、このベクトル42を、メッシュ領域41のベクトル43として新たに規定する。なお、図7の例では、ベクトル43は、メッシュ領域41の大きさに合わせて、ベクトル42を拡大したものとしている。
【0024】
以上のようにベクトルが生成された後、ダミーパターンの生成が行われる(ステップS3)。ダミーパターンの生成方法として、以下に2つの例を挙げて説明する。
(ダミーパターン生成方法その1)
図8は、ダミーパターンの生成方法の一例を示すフローチャートである。
【0025】
ダミーパターン生成部13は、まず、配線パターンなどのレイアウトデータ(設計データ)に対して、平坦化用ダミーパターンを生成する(ステップS10)。
図9は、平坦化用ダミーパターンを加えたレイアウト例を示す図である。
【0026】
図9では、半導体集積回路の回路パターンである配線パターン50,51,52を有する配線層のレイアウトデータに対して、平坦化用ダミーパターン53を生成した例が示されている。
【0027】
平坦化用ダミーパターン53は、層内の密度を均一化して、層の平坦化を目的として配置されるものである。ダミーパターン生成部13は、たとえば、前述したメッシュ領域ごとに、密度解析をして平坦化用ダミーパターン53の挿入場所を調べる。前述したように、各メッシュ領域にはベクトルが設定されており、後述する工程において、ベクトルの向きにしたがって平坦化用ダミーパターン53を接続していくようにするため、それを考慮して平坦化用ダミーパターン53の配置が行われる。また、事前にベクトルが設定されているので、平坦化用ダミーパターン53を接続してダミーパターンを生成した後の配線密度も予測が可能であるため、密度解析の際には、その配線密度も考慮して、平坦化用ダミーパターン53の配置が行われる。
【0028】
図10は、平坦化用のダミーパターンの配置例を示す図である。
平坦化用ダミーパターン53は、たとえば、図10(A)のように、空き領域を挟んで一定間隔ごとに設けられている。このようにすることで、図10(B)のように、横方向のベクトルに対しては、横方向の平坦化用ダミーパターン53を接続するパターンを空き領域に発生させることで、ベクトルの方向に沿ったダミーパターン53a−1が得られる。また、図10(C)のように、斜め方向のベクトルに対しては、階段状に平坦化用ダミーパターン53を接続するパターンを空き領域に発生させることで、斜めのベクトルの方向に沿ったダミーパターン53a−2が得られる。
【0029】
平坦化用ダミーパターンの生成後、ダミーパターン生成部13は、ステップS2の処理で生成されたベクトルと、平坦化用ダミーパターンを加えたレイアウトとを用い、ベクトルに沿って、平坦化用ダミーパターンを接続していく(ステップS11)。
【0030】
図11は、平坦化用ダミーパターンの接続例を示す図である。
図10(B),(C)に示したように、ベクトルに沿って、平坦化用ダミーパターン53を接続していくことで、図11に示されるようなダミーパターン53aが得られる。
【0031】
ここで、ベクトルの大きさが大きいほど、たとえば、多くの平坦化用ダミーパターン53を接続し、長いダミーパターン53aを生成する。また、メッシュ領域55のように1つのメッシュ領域内で、ベクトルの向きに複数本のダミーパターン53aを生成するようにしてもよい。これにより、効率的にチップ内の領域間の温度差を小さくすることができる。
【0032】
なお、回路パターン(図11では配線パターン51)の製造時にダミーパターン53aが干渉しないように、平坦化用ダミーパターン53の接続の際には、回路パターンとの間で所定の距離が保てるようにすることが望ましい。
【0033】
以上の処理により、設計対象の半導体集積回路の、ある層における、ダミーパターン53a入りのレイアウトデータが生成される。
図12は、ダミーパターン入りのレイアウトデータの例である。
【0034】
レイアウトデータは、配線パターン50〜52の間などに配置されていた複数の平坦化用ダミーパターン53のいくつかが、ベクトルの向きにしたがって接続されて生成されるダミーパターン53aを含んでいる。
【0035】
ダミーパターン生成部13は、以上のようなステップS10,S11の処理を、設計対象の半導体集積回路の各層(配線層やバルク部分)について行うことで、レイアウトデータD2を完成させる。ダミーパターン生成部13は、バルク部分では、トランジスタの拡散層やポリシリコン層などを上記の回路パターンとして扱い、回路パターンに干渉しないように平坦化用ダミーパターンを接続してダミーパターンを生成する。バルク部分において、ポリシリコン層の間隔やレイアウトによって、ダミーパターンを配置することが難しい場合には、配置が容易な空き領域に対してダミーパターン生成処理を適用するようにしてもよい。
【0036】
このようなレイアウトデータD2がマスクデータとなる。半導体集積回路の製造工程においては、マスク製造装置により、マスクデータをもとにマスクが生成される。そして、生成されたマスクを使用したパターニングが露光装置などを用いて行われ、前述した配線パターン50〜52、平坦化用ダミーパターン53及びダミーパターン53aが実際に製造される。
【0037】
なお、そのとき平坦化用ダミーパターン53及びダミーパターン53aは、熱を伝達可能な材料で形成される。たとえば、配線パターン50〜52と同じ金属材料(銅やアルミニウムなど)により形成される。
【0038】
図13は、完成したレイアウトデータに対する熱解析結果の例を示す図である。
図13には、図3に示したような温度分布を有する半導体集積回路のある層において、図12に示したようなレイアウトデータを適用した場合の、熱解析結果の例が示されている。
【0039】
領域60,61,62の順で温度が高くなっている。図12に示したようなダミーパターン53aは、温度勾配に垂直な向きのベクトルにしたがって生成されているので、チップ内の温度分布が平均化される。つまり、チップ内の領域間での温度差を小さくすることができる。その結果、チップ内の領域間の温度差に起因する特性差を小さくすることができる。
【0040】
これにより、シミュレーション結果と実測との乖離を防げ、設計通りに動作する信頼性の高い半導体集積回路が提供できるようになる。また、温度分布を平均化して、高い温度の部分を減らすことができるので、温度が高い領域で決まっていたチップの寿命を延ばすことができる。また、上記の方法では、温度分布を平均化するので、チップ内の領域ごとに異なる温度を与えて回路シミュレーションを行うといった大がかりなことをせずに済む。
【0041】
また、上記のダミーパターン生成方法を用いることで、半導体集積回路の層の平坦化用に用いられる平坦化用ダミーパターンを利用して、温度分布を平均化させるダミーパターンを生成することができるようになる。
【0042】
以下、ダミーパターン生成方法の2つ目の例を説明する。
(ダミーパターン生成方法その2)
図14は、ダミーパターン生成処理の2つ目の例を示すフローチャートである。
【0043】
ダミーパターン生成部13は、図4に示したように生成したベクトルにしたがって、メッシュ領域ごとにダミーパターンを生成する(ステップS20)。
図15は、生成されるダミーパターンの例を示す図である。
【0044】
2つ目のダミーパターン生成方法では、ダミーパターン生成部13は、平坦化用ダミーパターンからベクトルにしたがったダミーパターンを生成するのではなく、ベクトルから直接、図15に示すようなダミーパターン70を生成する。
【0045】
ダミーパターン生成部13は、たとえば、生成されたベクトルの向きに沿ってダミーパターンを生成する。また、ダミーパターン生成部13は、たとえば、ベクトルの大きさが大きいほど、同一メッシュ領域において、ベクトルの方向に、複数本のダミーパターンを生成するようにしてもよい。また、ベクトルの大きさが大きいほど、ダミーパターンを太く生成したり、複数本のダミーパターンを生成するようにしてもよい。これにより、効率的に領域間の温度差を小さくすることができる。
【0046】
ただし、ダミーパターンの長さや幅、ダミーパターン間の間隔や、他のレイアウトパターン(配線パターンなど)との間隔は、デザインルールにしたがうものとする。
次に、ダミーパターン生成部13は、回路シミュレーション用データD1に含まれる、配線パターンなどの回路パターンのレイアウトデータを入力し、ダミーパターンの、回路パターンに対する干渉部分の除去を行う(ステップS21)。
【0047】
図16は、干渉部分の例を示す図である。
たとえば、各配線パターン50〜52から所定距離内の領域50a,51a,52a内に含まれるダミーパターン(たとえば、ダミーパターン70a)が、干渉部分となる。
【0048】
干渉部分は、配線パターン50〜52のような回路パターンに対して、ダミーパターンが近すぎると、露光工程の際に互いに干渉を起こし、パターンの精度が損なわれる可能性がある部分である。
【0049】
そのため、ダミーパターン生成部13は、領域50a,51a,52aに含まれるダミーパターンを削除したり、領域50a,51a,52aから外れるようにダミーパターンをシフトさせたりして、干渉部分を除去する。配線パターン50〜52からどれくらいの距離を離した領域50a,51a,52aを設定するかは、たとえば、使用する露光装置の性能などを考慮して設定される。
【0050】
図17は、干渉部分を除去したダミーパターンを含むレイアウトデータの例を示す図である。
ここでは、図16に示したレイアウトデータの干渉部分を除去した例が示されている。たとえば、ダミーパターン70bは、配線パターン52から所定距離内の領域52aに含まれる部分を除去したものとなっている。
【0051】
その後、ダミーパターン生成部13は、平坦化用ダミーパターンを生成する(ステップS22)。
図18は、平坦化用ダミーパターンの生成例を示す図である。
【0052】
前述したように平坦化用ダミーパターン80は、層内の密度を均一化して、層の平坦化を目的として配置されるものである。2つ目のダミーパターン生成方法の例では、ダミーパターンの生成が先に行われるため、平坦化用ダミーパターン80は、生成されたダミーパターン70,70bや配線パターン50〜52の間などに、層内の密度が均一になるように配置される。
【0053】
ダミーパターン生成部13は、以上のようなステップS20〜S22の処理を、設計する半導体集積回路の各層(配線層やバルク部分)について行うことで、レイアウトデータD2を完成させる。ダミーパターン生成部13は、バルク部分では、トランジスタの拡散層やポリシリコン層などを上記の回路パターンとして扱い、ベクトルにしたがったダミーパターンを生成する。バルク部分において、ポリシリコン層の間隔やレイアウトによって、ダミーパターンを配置することが難しい場合には、配置が容易な空き領域に対してダミーパターン生成処理を実行するようにしてもよい。
【0054】
完成したレイアウトデータD2はマスクデータとなり、半導体集積回路の製造工程においては、マスク製造装置により、マスクデータをもとにマスクが生成される。そして、生成されたマスクを使用したパターニングが行われ、前述した配線パターン50〜52、ダミーパターン70,70b及び平坦化用ダミーパターン80が実際に製造される。
【0055】
なお、前述のように、ダミーパターン70,70b及び平坦化用ダミーパターン80は、熱を伝達可能な材料で形成される。たとえば、配線パターン50〜52と同じ金属材料により形成される。
【0056】
以上のようなダミーパターンの生成方法を用いて生成した、図18のようなレイアウトデータを適用しても、図13に示したような温度分布が得られ、同様の効果が得られる。
また、2つ目のダミーパターンの生成方法では、算出されるベクトルに沿ったダミーパターンを生成できるので、より効率的に、温度分布の平均化を行うことができる。
【0057】
なお、図1に示した設計装置10は、以下に示すようなコンピュータで実行できる。
図19は、本実施の形態に用いるコンピュータのハードウェアの一構成例を示す図である。コンピュータ100は、CPU(Central Processing Unit)101によって装置全体が制御されている。CPU101は、バス108を介してRAM(Random Access Memory)102と複数の周辺機器と接続しており、図1に示した熱解析部11、ベクトル生成部12、ダミーパターン生成部13の機能を実現する。
【0058】
RAM102は、コンピュータ100の主記憶装置として使用される。RAM102には、CPU101に実行させるOS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、RAM102には、CPU101による処理に用いる各種データが格納される。
【0059】
バス108に接続されている周辺機器としては、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)103、グラフィック処理装置104、入力インタフェース105、光学ドライブ装置106、及び通信インタフェース107がある。
【0060】
HDD103は、内蔵したディスクに対して、磁気的にデータの書き込み及び読み出しを行う。HDD103は、コンピュータ100の二次記憶装置として使用される。HDD103には、OSのプログラム、アプリケーションプログラム、及び各種データが格納される。なお、二次記憶装置としては、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を使用することもできる。HDD103は、たとえば、図1に示した記憶部14の機能を有し、回路シミュレーション用データD1やダミーパターン入りのレイアウトデータなどを記憶する。また、たとえば、HDD103は、半導体集積回路の熱解析用のシミュレーションツールなども記憶する。
【0061】
グラフィック処理装置104には、モニタ104aが接続されている。グラフィック処理装置104は、CPU101からの命令にしたがって、画像をモニタ104aの画面に表示させる。モニタ104aとしては、CRT(Cathode Ray Tube)を用いた表示装置や液晶表示装置などがある。
【0062】
入力インタフェース105には、キーボード105aとマウス105bとが接続されている。入力インタフェース105は、キーボード105aやマウス105bから送られてくる信号をCPU101に送信する。なお、マウス105bは、ポインティングデバイスの一例であり、他のポインティングデバイスを使用することもできる。他のポインティングデバイスとしては、タッチパネル、タブレット、タッチパッド、トラックボールなどがある。
【0063】
光学ドライブ装置106は、レーザ光などを利用して、光ディスク106aに記録されたデータの読み取りを行う。光ディスク106aは、光の反射によって読み取り可能なようにデータが記録された可搬型の記録媒体である。光ディスク106aには、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などがある。
【0064】
通信インタフェース107は、ネットワーク107aに接続されている。通信インタフェース107は、ネットワーク107aを介して、他のコンピュータまたは通信機器との間でデータの送受信を行う。
【0065】
以上のようなハードウェア構成によって、本実施の形態の処理機能を実現することができる。
このように、本実施の形態の処理機能は、コンピュータによって実現することができ、その場合、設計装置10が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記憶装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記憶装置には、ハードディスク装置(HDD)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープなどがある。光ディスクには、DVD、DVD−RAM、CD−ROM/RWなどがある。光磁気記録媒体には、MO(Magneto-Optical disk)などがある。
【0066】
プログラムを流通させる場合には、たとえば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0067】
プログラムを実行するコンピュータは、たとえば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムにしたがった処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムにしたがった処理を実行することもできる。また、コンピュータは、ネットワークを介して接続されたサーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムにしたがった処理を実行することもできる。
【0068】
また、上記の処理機能の少なくとも一部を、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)などの電子回路で実現することもできる。
【0069】
以上、実施の形態に基づき、本発明の半導体集積回路の設計装置及び半導体集積回路の設計方法の一観点について説明してきたが、これらは一例にすぎず、上記の記載に限定されるものではない。
【0070】
以上説明した複数の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 設計する半導体集積回路のデータから熱解析を行い、温度分布を算出する熱解析部と、
算出された前記温度分布の温度勾配に応じたベクトルを生成するベクトル生成部と、
生成された前記ベクトルにしたがってダミーパターンを生成し、前記半導体集積回路のレイアウトデータに追加するダミーパターン生成部と、
を有することを特徴とする半導体集積回路の設計装置。
【0071】
(付記2) 前記ダミーパターン生成部は、前記半導体集積回路の層の平坦化用の複数の他のダミーパターンを、前記ベクトルにしたがって接続していくことで、前記ダミーパターンを生成することを特徴とする付記1に記載の半導体集積回路の設計装置。
【0072】
(付記3) 前記ダミーパターン生成部は、前記ベクトルにしたがって生成した前記ダミーパターンにおいて、前記半導体集積回路の回路パターンと干渉する部分を除去することを特徴とする付記1に記載の半導体集積回路の設計装置。
【0073】
(付記4) 前記ダミーパターン生成部は、前記ベクトルの大きさに応じて前記ダミーパターンの本数または太さを変えることを特徴とする付記1乃至3の何れか1つに記載の半導体集積回路の設計装置。
【0074】
(付記5) 前記ベクトル生成部は、前記温度分布を一定の大きさごとの領域に区切り、前記領域内の温度勾配から、前記ベクトルを生成することを特徴とする付記1乃至4の何れか1つに記載の半導体集積回路の設計装置。
【0075】
(付記6) 前記ベクトル生成部は、1つの前記領域内に複数の前記ベクトルが生成できる場合、最も大きいベクトルを当該領域のベクトルとすることを特徴とする付記5に記載の半導体集積回路の設計装置。
【0076】
(付記7) 前記ベクトル生成部は、1つの前記領域内に複数の前記ベクトルが生成できる場合、当該領域を複数の領域に分割し、分割した領域ごとに、前記ベクトルを生成することを特徴とする付記5に記載の半導体集積回路の設計装置。
【0077】
(付記8) 前記ベクトル生成部は、前記領域内に温度勾配が見られない場合、前記領域を前記ベクトルが生成されている領域を含むまで拡大し、当該ベクトルを用いて、拡大した領域のベクトルを生成することを特徴とする付記5乃至7の何れか1つに記載の半導体集積回路の設計装置。
【0078】
(付記9) 設計する半導体集積回路のデータから熱解析を行い、温度分布を算出し、
算出された前記温度分布の温度勾配に応じたベクトルを生成し、
生成された前記ベクトルにしたがってダミーパターンを生成し、前記半導体集積回路のレイアウトデータに追加することを特徴とする半導体集積回路の設計方法。
【0079】
(付記10) 設計する半導体集積回路のデータから熱解析を行い、温度分布を算出し、
算出された前記温度分布の温度勾配に応じたベクトルを生成し、
生成された前記ベクトルにしたがってダミーパターンを生成し、前記半導体集積回路のレイアウトデータに追加する処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0080】
10 設計装置
11 熱解析部
12 ベクトル生成部
13 ダミーパターン生成部
14 記憶部
D1 回路シミュレーション用データ
D2 レイアウトデータ(ダミーパターン入り)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計する半導体集積回路のデータから熱解析を行い、温度分布を算出する熱解析部と、
算出された前記温度分布の温度勾配に応じたベクトルを生成するベクトル生成部と、
生成された前記ベクトルにしたがってダミーパターンを生成し、前記半導体集積回路のレイアウトデータに追加するダミーパターン生成部と、
を有することを特徴とする半導体集積回路の設計装置。
【請求項2】
前記ダミーパターン生成部は、前記半導体集積回路の層の平坦化用の複数の他のダミーパターンを、前記ベクトルにしたがって接続していくことで、前記ダミーパターンを生成することを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路の設計装置。
【請求項3】
前記ダミーパターン生成部は、前記ベクトルにしたがって生成した前記ダミーパターンにおいて、前記半導体集積回路の回路パターンと干渉する部分を除去することを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路の設計装置。
【請求項4】
前記ダミーパターン生成部は、前記ベクトルの大きさに応じて前記ダミーパターンの本数または太さを変えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の半導体集積回路の設計装置。
【請求項5】
設計する半導体集積回路のデータから熱解析を行い、温度分布を算出し、
算出された前記温度分布の温度勾配に応じたベクトルを生成し、
生成された前記ベクトルにしたがってダミーパターンを生成し、前記半導体集積回路のレイアウトデータに追加することを特徴とする半導体集積回路の設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−12004(P2013−12004A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143716(P2011−143716)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】