説明

同時クランプによって車輪グリップ係数を求める方法

本発明は、所与の路面上を走行している車両の車輪のグリップ状態を表す特性値を求める方法であって、次のステップを有し、即ち、車両の同一アクスルの2本の車輪に所与の同時旋回角変化を与えるステップを有し、旋回角変化は、2本の車輪について等しい大きさを有するが互いに逆方向であり、2本の車輪のうちの少なくとも1本について上記特性量を測定するステップを有することを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所与の路面上を走行している車両の車輪のグリップ状態に特有の量を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所与の路面上を走行するタイヤのグリップ状態及び特にその最大グリップ係数は、走行条件に応じて極めて大幅なばらつきのあることが知られている。主要な要因としては、車輪が走行している道路の形式、天候及び温度が挙げられる。
【0003】
グリップ状態及び特に走行中の車輪の最大グリップ係数をリアルタイムで知って車輪が路面に対するそのグリップの喪失に近づいているかどうかを判定することが特に有利である。
【0004】
車輪のグリップに関するこの性能を車輪が装着された車両の運転手に伝えるのが良く、その結果、運転手は、自分の運転をそれに応じて変えることができるようになり、或いは、かかる情報は、車両の路面保持具合をモニタする電子装置に伝えられるのが良い。
【0005】
先行技術において、特に、国際公開第03/066400号パンフレットに示されているように、車輪のタイヤの最大グリップ係数をタイヤに加わる力の3つの成分、即ち、自動調心トルク、タイヤインフレーション圧力及びタイヤキャンバの測定値から求めることが可能である。
【0006】
特に、上述の特許文献は、走行中のタイヤと路面との接触領域にスリップ域が存在している場合に最大グリップ係数を求めることができるということを明記している。このスリップ域が生じるやいなや、例えば、横力が同一の場合、自動調心トルクは、最大グリップ係数の単調関数である。
【0007】
最大グリップ係数を求めるこの方法は、大きな加速力又は制動力下にある場合又はカーブでしかこの方法を実施することができないので、制限がある。
【0008】
仏国特許第2916412号明細書は、少なくとも1つのピボットにより車両と関連した車輪ホルダによって自動車用車輪組立体を提供しており、車輪の平面は、実質的にゼロの第1のトー角及びゼロではない第2のトー角をなすことができるようになっている。この組立体は、所与の走行条件下において車輪の平面をシフトさせるよう設計されている制御装置を備えた2進アクチュエータを有している。
【0009】
以下において、「車輪」という用語は、ホイール(特定の意味では、円板及びリムを備えている)とホイールのリムに取り付けられたタイヤとから成る組立体を意味するものと理解されたい。
【0010】
定義上、車両のアクスルの各車輪は、路面に垂直であり且つ車両の進行方向に平行な平面と操舵角と呼ばれる角度をなす。同一のアクスルに関し、このアクスルの車輪の平面が車両のフロント寄りで互いに交差するよう収斂している場合、これは、「トー設定」と呼ばれている。同一アクスルに関し、このアクスルの車輪の平面が車両のリヤ寄りで互いに交差するよう収斂している場合、これは、「開き設定」と呼ばれている。車輪のキャンバ角は、路面に垂直であり且つ車輪の軸線を含む平面内において、車輪の平面が車両の中間平面となす角度である。逆キャンバ角(又は負のキャンバ角)は、同一アクスルの車輪の平面が路面の上方で互いに交差している場合を意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第03/066400号パンフレット
【特許文献2】仏国特許第2916412号明細書
【発明の概要】
【0012】
本発明の要旨は、所与の路面上を走行している車両の車輪のグリップ状態を表す特性量を求める方法であって、
‐車両の同一アクスルの2本の車輪に所与の同時操舵角変化を与えるステップを有し、操舵角変化は、2本の車輪について同一の大きさのものであるが互いに逆方向であり、
‐2本の車輪のうちの少なくとも1本について特性量を測定するステップを有することを特徴とする方法にある。
【0013】
本発明のこの要旨によれば、同一アクスルの2本の車輪には、同時操舵角設定、好ましくはアクスルがリヤアクスルの場合にはこれら2本の車輪の同時トーイン角設定及びアクスルがフロントアクスルの場合には2本の車輪の同時トーアウト角設定が与えられる。この同時トー角(又は開き角)設定は、2本の車輪より生じる横力がおおよそ互いに補償して互いに打ち消し合うという利点を有している。かくして、車両の動的平衡は、乱されることがない。特に、この同時トー角(又は開き角)設定は、車両が直線状に走行している時に、即ち、事実上任意の時点で可能である。
【0014】
特に簡単な一実施形態によれば、同一アクスルの2本の車輪の操舵角の単純な同時変化を与えることができる。好ましくは、数回の同時操舵角変化が同一アクスルの2本の車輪に連続的に与えられ、操舵角の変化は、2本の車輪について同一の大きさのものであるが互いに逆方向である。
【0015】
このことは、同時トー角(又は開き角)設定を可変トー角(開き角)の大きさで同一リヤ(又はフロント)アクスルの2本の車輪に適用することと同じである。
【0016】
好ましくは、所与の操舵角変化を2本のタイヤに与えた後、特性量は、タイヤの周長の半分よりも長い車両の走行距離後に測定される。これにより、車輪により伝達される力を安定化することができる。
【0017】
測定される特性量は、タイヤの自動調心トルク(MZ)であるのが良い。
【0018】
測定される特性量は、タイヤの横力(FY)であるのが良い。
【0019】
これら2つの測定値は、操舵角が所与の場合、各々、タイヤのグリップ状態の第1の又は最初の推定値を与え、これは、非常に有用な場合がある。
【0020】
好ましくは、測定される特性量は、自動調心トルク(MZ)及び横力(FY)を含む。これら2つの量を同時に測定することにより、タイヤのグリップ状態及び特に最大グリップ係数の優れた推定値をチャートと測定値の比較によって得ることができる。
【0021】
数個の測定点を得るということにより、推定値の精度がリアルタイムで大幅に向上する。
【0022】
例えば、この方法を利用することにより、操舵角βによる例えば横力FYの変化及び特にこの力の最大値の良好な推定を得て、そしてこれを車両の運転支援システムのための入力データとして用いることが可能である。
【0023】
与えられた操舵角のオーダは、好ましくは、0.5〜2°、非常に好ましくは1〜1.5°である。これら操舵角の値では、殆どの乗用車用タイヤの場合、良好なグリップ条件下であっても接触領域にスリップ域が生じることが判明している。
【0024】
これら与えられた操舵角値は、車両の乗員にとって事実上検出不能であるという利点をも有している。
【0025】
推定値の質を向上させるため、車輪のタイヤのインフレーション圧力を更に測定するのが良い。
【0026】
車両が直線状に走行している時、この同時トーイン角設定を適用することが可能であり、又好ましい。
【0027】
選択されたアクスルは、好ましくは、非操舵且つ非動力供給アクスルである。この場合、同時トーイン角設定を適用する前に、アクスルが制動力を受けていないかどうかをチェックすることが望ましい。力の軸方向又は長手方向成分FXは、この場合、ゼロであり、特性量及び最大グリップ係数μmaxの推定には関与しない。
【0028】
アクスルは、動力供給アクスルであっても良い。この場合、車両が加速段階又は制動段階にないかどうかをチェックすることが望ましい。
【0029】
具体的細部の全ては、図1〜図8により補完される以下の説明に与えられている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】最大グリップ係数μmaxの関数として実際のタイヤに加わる自動調心トルクMZと横力FYの関係を示す図である。
【図2】自動車のリヤアクスルの場合に本発明の要旨のうちの1つとしての方法の作用を説明する非常に概略的な平面図であり、2本の車輪がゼロに近い通常のトー角である状態を示す図である。
【図3】自動車のリヤアクスルの場合に本発明の要旨のうちの1つとしての方法の作用を説明する非常に概略的な平面図であり、2本の車輪がゼロではないトー角の状態にある図である。
【図4】本発明の方法を実施するための車輪組立体の一実施形態の横断面図である。
【図5】車体側から見た図4の車輪組立体の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一要旨は、所与の路面上を走行している車両の車輪のグリップ状態を表す特性量を求める方法であって、車両の同一アクスルの2本の車輪に所与の同時操舵角変化を与えるステップを有し、操舵角変化は、2本の車輪について同一の大きさのものであるが互いに逆方向であり、更に、2本の車輪のうちの少なくとも1本について特性量を測定するステップを有することを特徴とする方法にある。
【0032】
アクスルがリヤアクスル(又はフロントアクスル)である場合に同時トー角(又は開き角)設定を2本の車輪に適用することが好ましい。トーイン角設定を車両のリヤアクスルの両輪に適用することにより、車両の動的安定性が向上し、他方、トーアウト角設定を車両のフロントアクスルの両輪に適用すると、その結果として、同様な結果が得られる。
【0033】
以下において、自動車のリヤアクスルの場合について本発明の内容を説明し、同時トーイン角設定をこのリヤアクスルの2本の車輪に適用する。
【0034】
路面上を走行する車輪のグリップ係数μmax又はこのグリップ係数に依存した特性量をリアルタイムで推定し又は測定するのが望ましい。
【0035】
例えば、上述の国際公開第03/066400号パンフレットから、μmaxは、特に、以下のパラメータ、即ち、
‐車輪に加えられる駆動又は制動力FX
‐車輪に加えられる横スラスト力又は横力FY
‐車輪によって支えられる荷重FZ
‐タイヤに及ぼされる垂直軸線周りの自動調心トルクMZ又はモーメント、
‐車輪のキャンバ、及び
‐車輪のタイヤのインフレーション圧力で決まることが知られている。
【0036】
というのは、車輪のタイヤと車輪が走行している路面との間の接触領域にスリップ域が存在している場合にこのようなるからである。
【0037】
事実、路面グリップ状態の変化、例えば、乾燥した路面から濡れた路面に進む変化により、μmaxの値がかなり減少し、特に、操舵角が所与の場合、接触領域のこのスリップが現れるやいなや横力FY及び自動調心トルクMZがかなり減少することも又よく経験することである。
【0038】
したがって、第1の実施形態によれば、本発明の方法により、横力又は自動調心トルクの測定値にのみ基づく車輪のグリップ条件と関連した特性量の第1の推定値を得ることが可能である。この推定値は、それほど正確ではないが、これにより、例えば、運転手にグリップ状態が劣化したことを警告し又は安定性支援装置、例えばESP装置又は制動支援装置、例えばABS装置の動作を定める原理を変えることができる。
【0039】
図1は、FXがゼロであり、FZが一定である場合に、2つの所与のグリップ係数μmaxについての自動調心トルクMZと横力FYの関係を示している。
【0040】
このグラフ図では、3つの領域を見分けることができ、領域1は、タイヤとの接触領域にスリップが存在していないことに対応し、領域2は、部分的にスリップが生じている状態に対応し、領域3は、完全にスリップしている状態に対応している。
【0041】
理解できるように、タイヤが領域1にある場合、即ち、タイヤが路面を完全にグリップしている場合、自動調心トルクMZは、横スラストFYに実質的に比例し、比例定数は、主として接触領域の長さで決まる。
【0042】
好ましい実施形態によれば、μmaxに特有の測定量は、少なくとも、自動調心トルクMZ及び横力FYを含む。この場合、種々のμmax値について横力の関数として一連の自動調心トルク曲線を与えるチャートを用いてμmaxの値の良好な推定値を得ることは極めて容易である。
【0043】
この方式は、良好なクオリティのものである。というのは、国際公開第03/066400号パンフレットに記載された他のパラメータは、実質的に一定であるパラメータ(キャンバ角、インフレーション圧力、加えられた荷重)か実質的にゼロのパラメータ(FX)かのいずれかである。
【0044】
車輪の1本のタイヤ又は複数本のタイヤのインフレーション圧力の補完的測定は、測定値の精度を一段と高める。
【0045】
必要条件の1つは、タイヤと路面との間の接触領域にスリップが存在するようトー角を与えることである。乗用車用タイヤ組立体に対して行った試験結果の示すところによれば、トー角が0.5°以下である場合、このスリップは、極めて劣化したグリップ状態下でのみ存在する。したがって、単一のトー角が与えられる場合、与えられる角度は、0.5°を超えなければならない。しかしながら、与えられるトー角が約2°の場合、車両の運転手は、これに対して敏感になり始める場合があり、横スラスト力が相当大きくなり、その結果、タイヤが或る程度の摩耗を生じる場合がある。したがって、与えられる角度は、好ましくは2°未満でなければならない。好ましい範囲は、1〜1.5°である。
【0046】
本発明の方法の別の実施形態によれば、操舵角の数種類の互いに異なる大きさについてアクスルがリヤアクスル(又はフロントアクスル)である場合、同時トー角(又は開き角)設定が同一アクスルの2本の車輪に連続的に適用される。
【0047】
この場合、与えられた操舵角の関数として測定特性量の変化の完全な又はほぼ完全な曲線を得ることができる。これにより、最大グリップ係数μmaxの推定値の正確さを実質的に高めることができる。
【0048】
別の好ましい実施形態によれば、操舵角の増大する変化が好ましくは、車両の1メートル走行距離当たり0.1°(以下、0.1°/車両走行メートルとのようにいう)以下の変化率で与えられる。
【0049】
大きさが2°の場合、この場合には試験全体にわたって車両の走行した距離は、20メートル以上である。
【0050】
より好ましくは、変化率は、0.05〜0.1°/走行メートルである。
【0051】
この場合、2本の車輪のうちの少なくとも1本について自動調心トルクを好ましくは連続的に測定し、自動調心トルクが最大値である場合の操舵角βcを特性量として決定することができる。
【0052】
自動調心トルクのこの特定の値は、重要である。具体的に説明すると、車輪に加わる応力がこのレベルである場合、車輪のタイヤと路面との間の接触領域にスリップが生じ、上述したように、横力が同一の場合、自動調心トルクは、最大グリップ係数の増加関数である。限界操舵角βcが大きければ大きいほど、車輪と路面との間のグリップ状態がそれだけ一層良好になる。かくして、この限界操舵角は、リアルタイムのグリップ状態の良好な指標である。
【0053】
好ましくは、自動調心トルクと横力の両方を測定し、自動調心トルクは最大値である場合の操舵角を求めた後、この限界操舵角βcに対応した横力Fycが特性量として決定される。
【0054】
この横力値Fycは、運転支援システムの入力データとして用いられるのが良い。
【0055】
より好ましくは、限界操舵角βcに対応した横力Fycを求めた後、車輪の最大横力Fymaxが特性量として推定される。
【0056】
この量Fymaxは、路面上における車輪のグリップ状態の優れた指標であると共に車両の運転支援装置のための極めて有用な入力データである。
【0057】
ymaxを以下の公式により簡単に推定することが可能である。
〔数1〕
Fymax = Fyc × K
上式において、Kは、車輪の特性係数である。この係数Kの値は、極めて多くのタイヤについて約1.25であることが実験的に判明した。
【0058】
ymaxを求めると、車輪の荷重FZが既知であればいつでも、次の公式により最大グリップ係数μmaxを推定することが極めて容易である。
〔数2〕

【0059】
車輪にかかる荷重を自動調心トルク及び横力と同時に又は当業者には周知である任意他の手段によって測定することができる。
【0060】
与える操舵角を次第に増大させるこの好ましい実施形態は、車輪について事前の知識を必要としないという利点を有している。好ましくは、限界操舵角を求めると試験を停止して横力FYが推定最大横力の85%を下回ったままであるようにする。
【0061】
この制限は、良好な車両安定性を維持するという利点を有する。
【0062】
本発明の要旨である方法は、以下に説明する装置を用いて実施可能である。
【0063】
図2及び図3は、リヤアクスルを備えた自動車の場合に上述した方法を実施する装置の動作原理を極めて概略的に示している。これらの図は、装置の必須のコンポーネントの平面図である。
【0064】
これらの図は、左後輪1及び右後輪3を示している。これら車輪の各々は、それぞれ、スタブアクスルキャリヤシステム5,7に取り付けられている。各スタブアクスルキャリヤシステム5,7は、それぞれ、垂直軸線のピボット9,11を備え、それにより、車輪の操舵角を変化させることができるようになっている。各スタブアクスルキャリヤシステムは、操舵角を与えるためにそれぞれアクチュエータ13,15を更に有している。2つのアクチュエータ13,15は、共通の制御装置17によって制御される。
【0065】
図2では、2本の車輪1,3は、車両製造業者により推奨されるこれらの通常の位置にある。図3では、2本の車輪は、約1〜1.5°のトー角βの状態で示されている。矢印は、車両の走行方向を示している。各スタブアクスルキャリヤシステム5,7は、車輪の操舵角設定の結果として生じる操舵横力又はスラスト及び自動調心トルクを測定する手段を有する。制御装置17は、信号を処理し、例えばチャートとの比較により路面上の車輪の最大摩擦係数で決まる量を推定し、結果として得られたデータを運転手又は車両の電子装置に伝えることができる手段を有している。
【0066】
図4は、本発明の要旨のうちの1つとしての車輪組立体の一実施形態を横断面図で示している。
【0067】
車輪3は、車両の右後ろの位置にある。矢印Fは、車両の走行方向を示している。この車輪は、タイヤ(図示せず)、円板19及びリム21を有している。
【0068】
車輪3は、スタブアクスル25に取り付けられたセンサ軸受/車輪ホルダカセット23に回転可能に取り付けられている。
【0069】
このセンサ軸受/車輪ホルダカセットは、軸受の固定レースに加わる歪みを測定する伸縮計を備えており、この固定レースは車輪と路面との接触時に生じる力及びモーメントを受ける。かかる軸受カセットの一例は、エスエヌアール・ルールメンツ(仏語表記:SNR Roulements、英語表記:SNR Bearings)社から入手できるASB3(登録商標)力センサである。
【0070】
スタブアクスルは、中央ピボット11を支持したスタブアクスルキャリヤシステム7を介して車両に連結されており、この中央ピボット11は、システム7を車体に対して回動させることにより車輪の平面を2つ又は3つ以上の角度位置に配置することができる。
【0071】
スタブアクスルキャリヤシステム7は、アクチュエータ15及びサスペンションアーム31を介して車体に結合するプレート29を備えたスタブアクスルホルダ27を有している。サスペンションアーム31は、実質的に水平の軸線を備えた撓み継手又は玉継手33を介してプレート29に連結されている。
【0072】
図示の実施例では、アクチュエータ15は、可変圧力下において非圧縮性流体で満たされている2つのチャンバ37,39を備えた流体弾性シリンダ35を有している。これらチャンバは、例えばゴム材料で作られた弾性部品43により密閉され、これら弾性部品は、チャンバ37,39うちのそれぞれの圧力の影響を受けて変形し、かくして可変操舵角を車輪に与えることができる。
【0073】
流体弾性シリンダを制御する方法に応じて、このアクチュエータは、2進アクチュエータであっても良く、非2進アクチュエータであっても良い。換言すると、アクチュエータは、2つ又は3つ以上の設定位置を備えるのが良い。
【0074】
図5は、図4の車輪組立体の車体側の部分斜視図である。図5には、サスペンションアーム31の端部、玉継手33、ピボット11を備えた結合プレート29及びアクチュエータ15を備えたスタブアクスルホルダ27が示されている。また、車輪ホルダに接合されたブレーキ板41が示されている。
【0075】
本発明は、図示すると共に説明した例には限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなくかかる例の種々の改造例を想到できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所与の路面上を走行している車両の車輪のグリップ状態を表す特性量を求める方法であって、
‐前記車両の同一アクスルの2本の車輪に所与の同時操舵角変化を与えるステップを有し、前記操舵角変化は、前記2本の車輪について同一の大きさのものであるが互いに逆方向であり、
‐前記2本の車輪のうちの少なくとも1本について前記特性量を測定するステップを有する、方法。
【請求項2】
同時トーイン角設定が前記車両のリヤアクスルの前記2本の車輪に適用される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
同時トーアウト角設定が前記車両のフロントアクスルの前記2本の車輪に適用される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
数回の同時操舵角変化が同一アクスルの前記2本の車輪に連続的に与えられ、前記操舵角の前記変化は、前記2本の車輪について同一の大きさのものであるが互いに逆方向である、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
前記所与の操舵角変化を前記2本のタイヤに与えた後、前記特性量は、前記タイヤの周長の半分よりも長い前記車両の走行距離後に測定される、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項6】
前記測定される特性量は、前記タイヤの自動調心トルク(MZ)である、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
前記測定される特性量は、前記タイヤの横力(FY)である、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
前記測定される特性量は、前記自動調心トルク(MZ)及び前記横力(FY)を含む、請求項1〜7のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項9】
前記与えられる操舵角は、0.5〜2°、好ましくは1〜1.5°である、請求項1〜8のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項10】
前記特性量を測定した後、前記タイヤのグリップ係数は、前記特性量を前記グリップ係数に関連づけるチャートによって求められる、請求項1〜9のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項11】
前記操舵角の一様に増大する変化が、0.1°/車両走行メートル以下の変化率で与えられる、請求項4記載の方法。
【請求項12】
‐前記自動調心トルクは、前記2本の車輪のうちの少なくとも1本について測定され、
‐前記自動調心トルクが最大である操舵角(βc)が特性量として求められる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
‐前記自動調心トルクは、前記2本の車輪のうちの少なくとも1本について測定され、
‐前記自動調心トルクが最大である操舵角(βc)が特性量として求められ、
‐前記操舵角(βc)に対応した横力(Fyc)が特性量として求められる、請求項11記載の方法。
【請求項14】
‐前記自動調心トルクは、前記2本の車輪のうちの少なくとも1本について測定され、
‐前記自動調心トルクが最大である操舵角(βc)が特性量として求められ、
‐前記車輪の最大横力(Fymax)が特性量として推定される、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記車輪の前記最大横力(Fymax)は、次の公式、即ち、
〔数1〕
Fymax = Fyc × K
によって推定され、上式において、Kは、前記車輪の特性係数である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記車輪に加わる荷重(FZ)が、既知である場合、最大グリップ係数は、次の公式、即ち、
〔数2〕

によって推定される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
提案される前記最大操舵角は、前記横力が前記推定された最大横力の85%を下回ったままであるようなものである、請求項14〜16のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項18】
前記車両は、直線状に走行する、請求項1〜17のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項19】
前記車両の前記アクスルは、非操舵且つ非動力供給アクスルであり、前記アクスルが前記車輪への所与の操舵角変化を与える前に制動トルクを受けていないかどうかのチェックが行われる、請求項1〜18のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項20】
前記車両の前記アクスルが動力供給アクスルである場合、所与の操舵角変化が前記車輪に与えられる前に前記車両が加速段階又は制動段階にないかどうかのチェックが行われる、請求項1〜19のうちいずれか一に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−520792(P2012−520792A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500255(P2012−500255)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053543
【国際公開番号】WO2010/106137
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】