圧延用ロールの表面欠陥検出装置、研削装置、表面欠陥検出方法及び表面欠陥検出用プログラム並びに圧延用ロール研削方法
【課題】 表面品質のよい鋼板(圧延材)を製造できるようにするため、例えば検査時に圧延ロール外周表面に生じた微小の欠陥を検出することができる欠陥検出方法、装置並びにその方法を実現できるような研削装置、研削方法を得る。
【解決手段】 欠陥検出対象となる圧延用ロール10の外周表面にレーザ光を照射するレーザ光源6と、外周表面からのレーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段7と、受光手段7からの信号に基づいて、外周表面の欠陥の有無を検出する信号処理手段8とを備えたものである。
【解決手段】 欠陥検出対象となる圧延用ロール10の外周表面にレーザ光を照射するレーザ光源6と、外周表面からのレーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段7と、受光手段7からの信号に基づいて、外周表面の欠陥の有無を検出する信号処理手段8とを備えたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延用ロールの表面欠陥検出方法等に関するものである。特に従来の方法等では行えなかった微細な表面欠陥の検出を可能にするものである。さらに、表面欠陥検出結果を用いた圧延用ロール研削方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧延加工に使用される圧延用ロール(以下、圧延ロールという)は、使用中の摩耗、焼き付き、転動疲労等によって、表層に微細な割れや欠落が生じる場合がある。表層のことを、便宜上、表面と称することにすると、圧延ロール表面に生じるこれらの表面欠陥は、圧延材の表面品質を低下させる原因や新たな焼き付きの発生原因となる。そこで、圧延ロールは定期的に表面が研削される。そして、研削後には圧延ロール表面の検査が行われている。この検査方法として、渦流探傷法(例えば特許文献1参照)、表面波を用いた超音波探傷法(例えば特許文献2参照)等が広く用いられている。
【0003】
【特許文献1】特公昭58−11571号公報
【特許文献2】特開2001−13113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
渦流探傷法によれば、圧延ロール表面に渦電流を発生させるための励磁周波数が高くなるにつれて渦電流の浸透深さが浅くなる表皮効果によって、圧延ロール表層部分の欠陥を比較的容易に検出することが可能である。それでも、圧延ロールの表面欠陥探傷に渦流探傷法を用いた場合に探傷可能な深さは0.2mm程度までである。これは圧延ロールの場合、残留応力による透磁率変化が大きく、励磁周波数を高くすると感度が上がる一方で、透磁率変化による影響が大きくなってしまうためである。
【0005】
また、表面波を用いた超音波探傷法では、回転する円柱体(ロール)の表面に接触媒質の膜を介して表面波探触子を接触させながら表面波を伝播させて反射波を受信し、反射波の周波数、振幅から欠陥部分の有無を判定する。しかしながら、このような方法では、表面波探触子と圧延ロールとの間に接触媒質の膜を介したある一定のギャップを形成する必要がある。そのため、圧延ロールの偏心、局部摩耗、ロールクラウン等により、そのギャップに変化が生じた場合には、探触子から圧延ロールへの超音波伝達効率も変化する。そして、その変化に応じて欠陥部分からの反射波の周波数や振幅にも変化が生じる。特に疵深さが0.05mm以下というような微細な表面欠陥を検出する場合には、ギャップ変化によるノイズ成分と欠陥部分とを区別するのが困難である。
【0006】
一方で、ユーザの製品表面品質要求の厳格化、薄い圧延材の増加等によって、圧延ロールの表面品質に対する管理基準はますます厳しくなってきている。特にブリキ(極薄)材の冷間圧延や調質圧延の鏡面仕上げ(ブライト材)に用いられる圧延ロールでは、圧延ロールの表面粗さレベルに近い深さ0.05mm(50μm)以下の欠陥でも、それが圧延によって鋼板(圧延材)表面に転写された場合には、鋼板表面の欠陥と認識される場合がある。そのため、研削した圧延ロール表面の微細な欠陥を精度よく検出する必要がある。しかしながら、上述した2つの探傷方法では、圧延ロールの欠陥部分の寸法(深さ)が数〜数百μmというような、圧延用ロール表面の仕上げ粗さと同レベルの欠陥を検出するには、その能力が不十分であった。
【0007】
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたもので、例えば、より厳しい表面品質要求に耐えられる鋼板(圧延材)を製造できるようにするために、例えば圧延ロール検査時に圧延ロール表面に生じた微細な欠陥を検出することができる圧延用ロールの表面欠陥検出方法及び装置並びにその方法を実現できる手段を搭載した圧延用ロール研削装置、方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る圧延用ロールの表面欠陥検出装置は、圧延用ロールの外周表面にレーザ光を照射するレーザ光源と、外周表面からのレーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段と、受光手段からの信号に基づいて、外周表面の欠陥の有無を判定する処理手段とを備えたものである。
【0009】
また、本発明に係る圧延用ロールの表面欠陥検出装置の処理手段は、信号に基づいて、正常部分と欠陥部分の反射光の強さの違いを判断して欠陥の有無を検出する。
【0010】
また、本発明に係る表面欠陥検出装置のレーザ光源及び受光手段の光軸は、圧延用ロール軸心を含むある平面内に配置され、レーザ光源による照射角又は受光手段の受光角に変更することができる。
【0011】
また、本発明に係る表面欠陥検出装置は、外周表面の正常部分と欠陥部分の反射光の強さの違いがある一定以上となるように、目標とする圧延用ロールの仕上げ粗さに基づいて照射角及び/又は受光角を設定する。
【0012】
また、本発明に係る表面欠陥検出装置は、外周表面と受光手段との間に、反射光を集光する焦点距離fを有する第1のレンズと、第1のレンズにより集光された反射光の特定周波数成分を遮断するマスキングスリットと、第1のレンズと同じ焦点距離fを有する第2のレンズとが、反射光の光路に沿って、外周表面、第1のレンズ、マスキングスリット、第2のレンズ、受光手段の順に、焦点距離fの等間隔で配置されてなるものである。
【0013】
また、本発明に係る表面欠陥検出装置は、マスキングスリットの幅が可変とすることができる。
【0014】
また、本発明に係る圧延用ロール研削装置は、圧延用ロール軸心を中心として圧延用ロールを回転させる駆動体を有し、圧延用ロールを支持する台盤と、回転する圧延用ロールの外周表面を研削する研削手段と、外周表面にレーザ光を照射するレーザ光源と、外周表面からのレーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段と、研削手段並びにレーザ光源及び受光手段を圧延用ロール軸心方向に移動させる移動体と、を備えたものである。
【0015】
また、本発明に係る圧延用ロールの表面欠陥検出方法は、圧延用ロール軸心を含むある平面内において受光した、圧延用ロールの外周表面に向けて照射されたレーザ光の反射光の強さに基づいて、正常部分と欠陥部分の反射光の強さの違いにより圧延用ロールの外周表面の欠陥の有無を検出する。
【0016】
また、本発明に係る圧延用ロールの表面欠陥検出方法は、レーザ光を照射する前に、目標とする圧延用ロールの仕上げ粗さに基づいてあらかじめ求めておいた範囲の角度に、圧延用ロールの外周表面に向けてレーザ光を照射するレーザ光源の照射角及び/又は、外周表面からのレーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段の受光角を調整しておく。
【0017】
また、本発明に係る圧延用ロールの表面欠陥検出方法は、焦点距離fを有する第1のレンズ、マスキングスリット、焦点距離fを有する第2のレンズを、反射光の光路に沿って、外周表面、第1のレンズ、マスキングスリット、第2のレンズ、レーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段の順に、焦点距離fの等間隔で配置し、マスキングスリットにより反射光の特定周波数成分を遮断する。
【0018】
また、本発明に係る圧延用ロールの表面欠陥検出用プログラムは、圧延用ロール軸心を含むある平面内において受光した、圧延用ロール外周表面に向けて照射されたレーザ光の反射光の強さのデータと、あらかじめ定めたある一定の閾値との比較に基づいて、圧延用ロールの外周表面の欠陥の有無の検出をコンピュータにて行う。
【0019】
また、本発明に係る圧延用ロール研削方法は、研削装置を制御手段により制御して圧延用ロールの外周表面の研削を行う圧延用ロール研削方法において、あらかじめ定められたパス数及び条件で粗研削及び仕上研削を行い、仕上研削の最終パス中又は仕上研削後に、上述に記載の表面欠陥検出方法による表面欠陥検出を行い、その表面欠陥検出結果により、除去すべき表面欠陥が存在するものと判定すると、表面欠陥についてあらかじめ定めた関係に基づいて、切り込み深さ、圧延用ロール1回転あたりの砥石の圧延用ロール軸心方向への送り量、砥石回転数又は圧延用ロール回転数に係る条件のうち、1又は複数の条件を変更して仕上研削を行い、除去すべき表面欠陥が存在しないと判定するまで、表面欠陥検出及び仕上研削を行う。
【0020】
また、本発明に係る圧延用ロール研削方法は、研削装置を制御手段により制御して圧延用ロールの外周表面の研削を行う圧延用ロール研削方法において、あらかじめ定められたパス数及び条件で粗研削及び仕上研削を行い、仕上研削の最終パス中又は仕上研削後に、上述に記載の表面欠陥検出方法による表面欠陥検出を行い、その表面欠陥検出結果により、除去すべき表面欠陥が存在するものと判定すると、表面欠陥についてあらかじめ定めた関係に基づいて、切り込み深さ、圧延用ロール1回転あたりの砥石の圧延用ロール軸心方向への送り量、砥石回転数又は圧延用ロール回転数の条件のうち、1又は複数の条件を変更して仕上研削するパス数を決定し、そのパス数で仕上研削を行うとともに、除去すべき表面欠陥が存在しないと判定するまで、表面欠陥検出及び決定した仕上研削するパス数による再度の仕上研削を行う。
【0021】
また、本発明に係る圧延用ロール研削方法は、除去すべき表面欠陥が存在するものと判定した後の仕上研削に用いる砥石を、高い粒度の砥石に変更する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、レーザ光源から、圧延ロールの外周表面に照射したレーザ光の反射光の強さを、受光手段が光の強さを表す信号に変換し、その信号に基づいて、外周表面の欠陥の有無を処理手段が判定するようにしたので、従来検出が不可能であった非常に微細な大きさの圧延ロールの外周表面の欠陥を非接触で検出することができる。そして、微細な欠陥を検出することにより、圧延ロールに対して後述のように種々対策をとることができるので、鋼板等の表面品質を向上させることができる。その際、正常部分と欠陥部分とで反射光の強さが違うことを利用するが、圧延ロール研削の際にできる研削痕による反射光の干渉による作用を利用するため、レーザ光源及び受光手段の光軸を圧延ロール軸心を含むある平面内に配置し、そして、目標とする圧延ロールの仕上げ粗さに基づいてレーザ光源の照射角、受光手段の受光角を調整しておくことにより、正常部分と欠陥部分の反射光の強さの違いをある一定以上にするようにしたので、より正確な検出を行うことができる。また、圧延ロール研削装置にレーザ光源及び受光手段を設け、研削手段とともに圧延ロール軸心方向に移動できるようにしたので、研削と並行して表面欠陥検出を行うこともできるようになり、表面欠陥検出に要する時間の短縮を図ることができる。
【0023】
さらに、焦点距離fを有する第1のレンズ、マスキングスリット、焦点距離fを有する第2のレンズを、反射光の光路に沿って、外周表面、第1のレンズ、マスキングスリット、第2のレンズ、受光手段の順に、焦点距離fの等間隔で配置し、マスキングスリットにより反射光の特定周波数成分を遮断することにより、圧延ロールの外周表面の仕上げ粗さが大きく、研削痕の幅のばらつきが大きく、入射角や反射角の設定のみで全ての研削痕からの反射光強度を弱めることが困難な場合であっても、正常部分に対応する周波数成分を遮断してから受光することができるので、受光手段は欠陥部分からの反射光のみを受光することが可能となる。
【0024】
また、本発明によれば、表面欠陥が検出された場合に、切り込み深さ、送り量、砥石回転数又は圧延ロール回転数に係る条件のうち、1又は複数の条件を変更した上で、次のパス又は次のパス以降の研削を行うか、あるいは条件を変更して研削するパス数を決定し、そのパス数で仕上研削を行い、除去すべき表面欠陥が存在しないと判定するまで表面欠陥検出及び仕上研削を行うようにしたので、表面欠陥検出結果に基づいて表面欠陥がなくなるまで圧延ロール研削装置による自動研削を行うことができる。その際、次の仕上研削に粒度の高い砥石を用いるようにすると、よりきめ細かな研削を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
第1の実施の形態.
図1は研削後の圧延ロール表面を模式的に示した図である。まず、ここでは本発明に基づく表面欠陥(疵)検出の原理について説明する。本発明は疵幅に基づいて表面欠陥検出を行おうとするものである。圧延ロールに対し、表面欠陥や表層疲労層の除去を目的として、圧延ロール表面からある一定の深さの研削が行われる。このとき、目標とする圧延ロールの仕上げ粗さに応じて、使用する砥石、研削条件等を選択するのであるが、研削後の圧延ロールには、この選択に応じ、図1に示すように、ある一定の幅と深さを有する研削痕1が形成されるのが特徴である。個々の研削痕1の幅と深さは厳密には一定ではないが、次に述べる表面欠陥2に比べると、ほぼ一定と見て良い。一方、表面欠陥(疵)2は、研削前に存在した大きなクラックが除去しきれなかった場合や、研削中に砥石、砥粒が脱落し、噛み込む等して発生し、その疵幅、疵深さは微小とはいえ、研削痕1よりも大きい。そして、発生した疵の多くは、疵幅が大きいほど疵深さも深くなる。
【0026】
このような圧延ロールの外周表面に波長及び位相がそろったレーザ光3を入射し、圧延ロール表面で反射した反射光同士で干渉を起こさせる。レーザ光を用いる理由は、波長、位相がそろったコヒーレント光でなければ干渉現象を利用した検出を行うことが困難なためである。したがって、波長、位相がそろっており、干渉を起こせるものであれば、レーザ光を入射する装置(光源)の種類(例えば、固体レーザ、半導体レーザ、ガスレーザ等)は特に限定しない。例えば、欠陥検出対象である圧延ロールの表面仕上げ粗さのレベル、検出対象とする欠陥の幅、深さ等に応じたレーザ光の波長、波形、出力等に基づいて選択することができる。
【0027】
ここで、レーザ光の入射角をθin、反射角をθout 、研削痕1の幅をdとすると、図1に示すように光路4と光路5とではabの分だけ光路差が生じることになる。この光路差により、次式(1)で表されるような光の位相差αが生じる。そして、このときの反射光の強さAは次式(2)で表される。
【0028】
【数1】
【0029】
つまり、ある反射角(ある位置)で観察される反射光の強さは、レーザ光の波長λ、入射角θin、反射角θout 、研削痕1の幅dによって決まることになる。研削痕1の幅dと比較すると表面欠陥2の幅は大きく異なる。したがって、レーザ光源が同じ照射角(入射角)でレーザ光を入射し、受光素子(手段)が同じ受光角(反射角)で反射光を受光した場合、ほぼ一定の幅と深さを有する研削痕による正常部分の反射光の干渉具合は、欠陥部分における反射光の干渉具合とは異なる。そのため、反射光を受光した光の強さも異なる。したがって、レーザ光源の照射角(レーザ光の入射角)と受光素子による反射光の受光角(レーザ光の反射角)を適当に選択することで、正常部分の反射光同士を干渉によって弱めたり、欠陥部分の反射光を強めたりして、コントラスト(正常部分と欠陥部分の反射光の強さの違い)を強調させることが可能となる(逆に正常部分を強め、欠陥部分を弱めることも可能である)。より検出を正確に行うためには、ある一定以上のコントラストが得られるような照射角、受光角の範囲に調整するとよい。そこで、レーザ光源からレーザ光を照射し、受光素子を用いて受光した反射光の強さに基づいて、反射光の局部的に強い部分があるかどうかを判定することにより、欠陥部分の有無を容易に判定し、検出することができる。もちろん、圧延ロールにおける欠陥の位置も検出することができる。
【0030】
この方法によれば、光学的手法を用いて非接触で欠陥部分の検出を行うため、従来の渦流探傷における残留応力の影響、超音波探傷におけるギャップ変化におけるノイズ成分等の問題は皆無であり、しかも欠陥部分の深さや幅などの寸法が数〜数十μmレベルの微細なものでも検出することができる。
【0031】
図2は本発明の実施の形態に係る表面欠陥検出装置を示す図である。図2において、レーザ光源6は検出対象である圧延ロールの外周表面にレーザ光を照射する手段である。レーザ光源6から照射されるレーザ光の圧延ロールの外周表面からの反射光を、例えばCCDカメラ等の受光素子を1又は複数有する受光手段7が受光し、その光の強さを例えば電気信号に変換する。ここで、レーザ光源6と受光手段7の光軸B,Cは圧延ロール軸心を含む平面(圧延ロール外周表面における外周方向と称する接線に垂直な平面)内に配置されるようにするのが好ましい。これは、後述する圧延ロール研削装置の砥石による研削方向を考慮したものである。圧延ロール全体に残されている研削痕は、圧延ロールの外周方向にほぼ均一の幅で形成されている。そのため、圧延ロール軸心を含む平面内でレーザ光の入反射をさせることで干渉現象をよりうまく発生させることができるからである。
【0032】
また、レーザ光源6、受光手段7については、それぞれを支持している梁の角度を変更することで、レーザ光源6による照射角度(レーザ光の入射角度)、受光手段7の受光角度(圧延ロール表面からのレーザ光の反射角度)を適切に設定し、位置を変更できる構造としている。このようにレーザ光源6の照射角と受光手段7の受光角を可変とするのは、研削痕の幅dが圧延ロールの仕上げ粗さによって異なり、仕上げ粗さに応じて最適な照射角及び受光角が異なるためである。そのため、あらかじめ目標とする圧延ロールの仕上げ粗さに応じて最適な角度(位置)に調整できるようにするのが好ましい。また、前述の位置とは、角度のみならず光軸方向の位置も含む意味とし、光軸方向にレーザ光源6及び/又は受光手段7の位置を調整することができるようにするのも好ましい。
【0033】
信号処理手段8は、さらにAD変換部8A、データ処理部8B、表示部8C及びデータ記憶部8D等で構成されている。AD変換部8Aは、受光手段7が変換した光の強さを表す電気信号をデータ処理部8Bが処理することができるデジタルデータ(以下、光の強さを数値化したデータ(以下、光の強さのデータという)とする)に変換する。データ処理部8Bは、光の強さのデータに基づいて、欠陥部分の有無を判定する。また欠陥部分の位置も判定することができる。具体的には、例えば、あらかじめある一定の閾値を定めておき、その閾値以上の強さの光を受光手段7が受光したものと判定した部分について、欠陥部分であると判定する。また、信号処理手段8の各部の制御も行う。この信号処理手段8(特にデータ処理部8B)をハードウェアだけで構成することもできるが、データ処理部8Bを、例えば、CPU(Central Prosessing Unit )のような演算制御手段(コンピュータ)で構成する一方、処理手順をあらかじめプログラム化し、ソフトウェア、ファームウェア等で構成するのも好ましいため、本実施の形態ではそうする。そして、演算制御手段がそのプログラムを実行し、そのプログラムに基づく処理を信号処理手段8中の各部で行う。
【0034】
表示部8Cは、データ処理部8Bからの表示信号に基づく表示(例えば、判定結果、受光手段7が受光した光の強さに基づいてデータ処理部8が処理した画像等の表示)を行う。データ記憶部8Dは、例えばデータ処理部8Bが処理を行うための光の強さのデータを一時的又は長期的に記憶する。ここで、データ記憶部8Dに、光の強さのデータを記憶できる十分な記憶容量があれば、リアルタイム処理だけでなく、圧延ロール10全体の光の強さのデータを記憶した後に一括処理を行うこともできる。
【0035】
図3は表面欠陥検出部9を含む圧延ロール研削装置の構成を示す図である。上述した表面欠陥検出装置のうち、レーザ光源6及び受光手段7は圧延ロール研削装置の表面欠陥検出部9に設けられている。信号処理手段8は表面欠陥検出部9に収納されていてもよいし、表面欠陥検出部9(圧延ロール研削装置)外に設けられていてもよい。
【0036】
研削加工対象(欠陥検出対象)となる圧延ロール10を、第1駆動源12を備えた台盤11で支持している。第1駆動源12は圧延ロール10を回転させる。また、台盤11には第1移動体13が設けられている。第1移動体13は圧延ロール10の軸心方向Dに往復移動を行うことができる。一方、第1移動体13上に設けられている第2移動体14は、圧延ロール10の軸心方向と垂直な方向に往復移動を行うことができる。そのため、第2移動体14上の回転砥石15及び第2駆動源16は、圧延ロール10に対して、近接離反することができる。回転砥石15が圧延ロール10に接触した状態とした上で、第2駆動源16が回転砥石15を回転駆動させることにより、研削手段である回転砥石15が圧延ロール10の外周表面を研削する。
【0037】
また、第1移動体13上には支柱17が設けられており、その上部には前述した表面欠陥検出部9が設けられている。したがって、表面欠陥検出部9も圧延ロール10の軸心方向Dに往復移動することができる。表面欠陥検出部9を第1移動体13により移動させることができるので、回転砥石15に追従して移動させて研削直後の圧延ロール10の表面を表面欠陥検出部9により表面欠陥検出することも可能である。そのため、研削と並行して表面欠陥検出を行うことも可能であり、表面欠陥検出に要する時間の短縮にもつながる。
【0038】
以上のように第1の実施の形態によれば、レーザ光源6から圧延ロール10の外周表面に照射したレーザ光の反射光の強さを受光手段7が信号に変換し、信号処理手段8が、その信号に基づいて、研削痕(正常部分)と疵(欠陥部分)で幅が異なることによる反射光の強さの違いによって、欠陥の有無を判定するようにしたので、従来検出が不可能であった非常に微細な欠陥についても検出することが可能となる。このように微細な欠陥に対して後述のように種々対策をとることができるようになるので、本実施の形態の方法、装置で検査された圧延ロールで圧延される鋼板等の表面品質を向上することができるようになる。
【0039】
また、レーザ光源6の照射角及び受光手段7の受光角を適切に設定し、位置を変更できるようにしたので、目標とする圧延ロールの仕上げ粗さに応じて、照射角、受光角を変更することができる。そのため、目標とする圧延ロールの仕上げ粗さに応じて正常部分と欠陥部分の反射光のコントラストをある一定以上とすることで、より正確な欠陥検出を行うことができる。そして、圧延ロール研削装置にレーザ光源6及び受光手段7からのデータにより表面欠陥検出を行う表面欠陥検出部9を設け、圧延ロール10の外周表面を研削するための回転砥石15とともに圧延ロール軸心方向に移動できるようにしたので、研削と並行して表面欠陥検出を行うこともできるようになり、表面欠陥検出に要する時間の短縮を図ることができる。また、圧延ロール10の外周方向に沿って研削が行われ、研削痕はほぼ一定の幅、深さでできるので、レーザ光源6及び受光手段7の光軸B,Cを圧延ロール軸心を含む平面内に設置するようにしておくことで、位相、波長のそろったレーザ光に対し、研削痕による反射光同士の干渉による作用を有効に発揮させ、表面欠陥検出をより正確に行うことができる。
【0040】
第2の実施の形態.
上述の実施の形態に加えて、焦点距離fを有する第1のレンズ、マスキングスリット、焦点距離fを有する第2のレンズを、反射光の光路に沿って、外周表面、第1のレンズ、マスキングスリット、第2のレンズ、受光手段の順に、焦点距離fの等間隔で配置し、マスキングスリットにより反射光の特定周波数成分を遮断するようにしてもよい。
【0041】
上述の実施の形態では、検出対象である圧延ロールの外周表面の仕上げ粗さが小さく、正常部分である研削痕の幅がほぼ均一の場合には、その検出精度は非常に高くなる。しかしながら、仕上げ粗さが大きい場合には、研削痕幅のばらつきが大きく、入射角や反射角の設定のみで全ての研削痕からの反射光強度を弱めることが困難となる。そのため、正常部分の研削痕の平均幅からの偏差が大きい研削痕は、欠陥でないにもかかわらず、欠陥として認識されてしまい、欠陥の過検出となる恐れがある。
【0042】
図4は実際の圧延ロール表面の欠陥プロフィルを表す図であり、仕上げ粗さの異なる2種類のロール表面を触針式の表面粗さ計を用いて表面欠陥検出した結果である。ここでは、JIS−B0601で規定される平均粗さRa=0.55μmとRa=0.15μm(鏡面仕上げロールレベル)を示している。仕上げ粗さの小さいRa=0.15μmの圧延ロールでは欠陥部分以外の研削痕の疵幅がほぼ均一であるのに対して、仕上げ粗さの大きいRa=0.55μmの圧延ロールでは研削痕の幅がばらついていることがわかる。
【0043】
このように、仕上げ粗さの大きい圧延ロールの外周表面においても欠陥の過検出を防止するため、第2の実施の形態では光学的フーリエ変換を利用する。光学的フーリエ変換は、図5に示されるような光学系において、コヒーレント光を物体面P1に照射する。そして、物体面P1から発せられる反射光を、焦点距離fの第1のレンズを通し、集光点P2により集光し、さらに焦点距離fの第2のレンズL2で平行光に変換し、出力面P3で結像する。ここで、物体面P1、第1のレンズL1、集光点P2、第2のレンズL2、出力面P3を、焦点距離fの間隔でこの順に配置しておくと、集光点P2の面には、物体面P1の画像の空間的(二次元)フーリエ変換像が現れる。すなわち、物体面P1の画像が周波数成分に分解され、集光点P2面上において周波数成分に応じて分布する。通常は、集光点P2の面上の中央部が低周波数成分となり、中央部から離れるほど高周波数成分となる。この集光点P2の画像をもう一度同じ焦点距離fの第2のレンズL2を通して出力面P3で結像すると、逆フーリエ変換が生じ、元の画像が復元される。ここで集光点P2の面でマスクを掛けて特定の周波数成分を遮断すると、出力面P3ではその周波数成分を含まない画像が得られる。
【0044】
ここで第2の実施の形態では、物体面P1を圧延ロールの外周表面とし、圧延ロールの外周表面からレンズの焦点距離fの等間隔で第1のレンズL1、マスキング手段、第2のレンズL2、受光手段を順に配置する。すなわち、前出の集光点P2の位置にマスキング手段を配置し、出力面P3の位置に受光手段を配置することで、圧延ロール表面からの反射光の光学的フーリエ変換が可能となる。通常、正常部分の研削痕の幅は、欠陥部分よりも小さいため、高周波数成分となっており、マスキング手段では正常部分での研削痕の幅に応じた周波数成分を遮断するように、ある幅を有するマスキングスリットを設置することで、集光点の中央部から離れた高周波数成分である正常部分からの反射光をフィルタリングすることが可能であり、欠陥部分のみからの反射光を強調することができる。この方法では、干渉現象を利用して正常部分からの反射光の一次フィルタリングを行った後に、光学的フーリエ変換によって二次フィルタリングを行うことができるため、フィルタリングでの閾値を一次と二次とで変えることで、より広範囲の研削痕からの反射成分をフィルタリングすることが可能となり、バックグランドである研削痕のばらつきが大きい仕上げ粗さの大きなロールにおいても欠陥部分からの反射光のみを抽出することが可能となる。
【0045】
図6は第2の実施の形態に係る表面欠陥検出装置を表す図である。図6において、レーザ光源6は検出対象である圧延ロールの外周表面にレーザ光を照射する手段である。レーザ光源6による圧延ロールの外周表面からの反射光を、圧延ロールの外周表面から焦点距離fの位置に設置された第1のレンズL1で集光する。第1のレンズL1から焦点距離f離れた位置には、第1のレンズL1によって集光されたフーリエ変換像から、正常部分である研削痕からの反射光成分を遮断するマスキングスリット20が設置されている。さらにマスキングスリット20から焦点距離f離れた位置には、第2のレンズL2が設置されている。第2のレンズL2から焦点距離f離れた位置には上述の第1の実施の形態と同様の受光手段7が配置され、第2のレンズL2によって逆フーリエ変換された圧延ロール外周表面からの反射光に対して、その光の強さを例えば電気信号に変換する。
【0046】
ここで、レーザ光源6,第1のレンズL1、マスキングスリット20、第2のレンズL2、受光手段7は圧延ロール軸心を含む平面(圧延ロール外周表面の接線と垂直な面)内に配置するようにするのが好ましい。これは、後述する圧延ロール研削装置の砥石による研削方向を考慮したものである。圧延ロール全体に残され、バックグランドとなる研削痕は、周方向にほぼ均一の幅で形成される。そのため、圧延ロール軸心を含む平面内でレーザ光の入反射をさせると、干渉現象を最もうまく発生させることができる。
【0047】
また、第1の実施の形態と同様、レーザ光源6、受光手段7については、それぞれを支持している梁の角度を変更することで、レーザ光源6による照射角度(レーザ光の入射角度)、受光手段7の受光角度(圧延ロール表面からのレーザ光の反射角度)を適切に設定し、位置を変更できる構造としている。さらに第2の実施の形態においては、第1のレンズL1、マスキングスリット20、第2のレンズL2は受光手段7と一体構造になっており、受光手段7の受光角変更に追従するようになっている。
【0048】
また、マスキングスリット20の幅も可変とすることが好ましく、遮断する周波数成分を圧延ロールの仕上げ粗さに応じて、適切に選定できるようにすることが好ましい。信号処理手段8は、上述した第1の実施の形態と同様にAD変換部8A、データ処理部8B、表示部8C及びデータ記憶部8D等で構成されている。信号処理手段8の動作については、上述の第1の実施の形態と同様であるので、個々では説明を省略する。
【0049】
以上、説明した第2の実施の形態によれば、研削痕に対応する周波数成分をマスキングスリット20により遮断した後に受光することができるので、仕上げ粗さの大きい場合であっても、欠陥を精度よく検出することが可能となる。
【0050】
第3の実施の形態.
上述の実施の形態では、受光手段7をCCDカメラとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、フォトダイオードアレイを用いて受光を行うようにしてもよい。また、上述の実施の形態では、レーザ光源6、受光手段7をそれぞれ1つずつ設けているが、照射範囲、受光範囲を広げて圧延ロールの表面欠陥検出に要する時間を短縮するために、それぞれの手段を複数設けるようにしてもよい。ただ、干渉による正常部分と欠陥部分とのコントラストを十分に確保するために、照射角、受光角の関係はできる限り崩さないようにするとよい。
【0051】
第4の実施の形態.
図7は本発明の第4の実施の形態に係る圧延ロール研削装置を制御するための装置を含む構成を示す図である。図において、図3と同じ符号を付しているものは実施の形態1で説明したのと同じであるので説明を省略する。本実施の形態においては、実施の形態1において表面欠陥検出装置を構成している信号処理手段8を、データ処理装置18という独立した手段として設けている。そして、データ処理装置18とNC研削盤制御装置19とは、信号を送受信することにより、相互に必要なデータのやりとりを行うことができる。例えば、NC研削盤制御装置19が有する記憶手段には、第1駆動源12の回転角、第1移動体の位置(座標)のデータが記憶されている。これらのデータを含む信号をデータ処理装置18に送信し、データ処理装置18においてそれらのデータを処理することにより、圧延ロール10の外周表面を座標としてとらえ、表面欠陥の位置を座標で特定することができる。
【0052】
NC研削盤制御装置19は圧延ロール研削装置による研削を制御するための装置(制御手段)である。NC研削盤制御装置19が有する記憶手段には、粗研削及び1度目の仕上研削を行うための手順に関するプログラム(第1の実施の形態や第2の実施の形態による圧延ロールの表面欠陥検出あるいはその他を具現化するもの)及びデータが記憶されている。NC研削盤制御装置19はプログラム及びデータに基づいて制御を行うことで第1駆動源12、第1移動体13による圧延ロール10の回転・移動制御及び第2駆動源14、第2移動体16による回転砥石15の回転・移動制御を行い、自動的に研削を行うことができる。2度目以降の仕上研削のプログラム及びデータについては、データ処理装置18の判断に基づいてデータ処理装置18から送られることになる。ここではデータ処理装置18とNC研削盤制御装置19とで役割により装置を分けているが、1つの装置でこれらの処理を行うようにしてもよい。
【0053】
図8は圧延ロール10の研削手順のフローチャートを示す図である。圧延作業終了後、研削を行う圧延ロール10が圧延機から抜出されて圧延ロール研削装置にセットされる。まず、NC研削盤制御装置19内の記憶手段に記憶された研削条件で粗研削をMパス行う(S1)。粗研削では、圧延中に圧延ロール10が受けた深さ0.05mm以上の熱的・機械的損傷をロール表面から除去するための研削を行う。
【0054】
さらに圧延ロール10の外周表面の粗さが平滑になるように、あらかじめNC研削盤制御装置19内の記憶手段に記憶された研削条件で仕上研削をNパス行う(S2)。そして、その仕上研削の最終パスであるNパス目に又はNパス終了(仕上研削終了)後、圧延ロール10が回転した状態で、データ処理装置18は、受光手段7から送信される検出信号(電気信号)に基づいて、研削により生じたスクラッチ、ビビリ、送りマーク等により生じる深さ0.05mm以下の微細な表面欠陥を対象として、表面欠陥検出を行う(S3)。その際、データ処理装置18は、受光手段7からの検出信号を光の強さのデータに変換する。そのデータの値が、あらかじめ定めたある一定の閾値よりも小さいと判定すると、圧延ロール10には除去すべき表面欠陥がないと判定して仕上研削を終了する(S4)。
【0055】
これに対し、検出信号に基づく光の強さのデータの値があらかじめ定めたある一定の閾値以上であると判定すると、データ処理装置18は仕上研削の次のパス又は次のパス以降の研削条件及び/又はパス数を設定しなおし(S5)、その再度の仕上研削で研削装置に再度研削を行わせるためのプログラム及びデータをNC研削盤制御装置19に送る(パス毎に表面欠陥検出を行う場合は、N=1とする)。NC研削盤制御装置19はそのプログラム及びデータに基づいて、再度研削装置による仕上研削を行う。ここで、データ処理装置18がパス数の設定を行う際、研削条件である切り込み深さ、砥石回転数、圧延ロール回転数、ロール1回転あたりの回転砥石15の圧延ロール軸心方向への送り量のうち、1又は複数の条件を変更するようにしてもよい。条件の変更に際して、切り込み深さ、送り量は低減し、砥石回転数はアップし、圧延ロール回転数は低減するように変更するのが好ましい。回転砥石15については、最初の仕上研削と同じものを用いてもよいし、粒度の高いもの(砥粒径が小さいもの)に交換してもよい。同じものであれば、交換時間を省略することができる。粒度が高いものに交換した場合は、表面欠陥のレベルに応じたきめ細かな研削を行うことができる。研削条件の変更、回転砥石15の交換を両方行ってもよい。
【0056】
そして、再度の仕上研削中又は終了後に、再度、表面欠陥検出を行い、検出信号に基づく光の強さのデータが表す値があらかじめ定めたある一定の閾値より小さくなるまで仕上研削と表面欠陥検出を繰り返し行う。
【0057】
以上のように第4の実施の形態によれば、表面欠陥検出部による検出信号に含まれる光の強さのデータに基づいて、除去すべき表面欠陥が存在すると判定すると、データ処理装置18が、切り込み深さ、送り量、砥石回転数又は圧延ロール回転数の条件のうち、1又は複数の条件を変更して、次のパス又は次のパス以降の研削を行うか、あるいは条件を変更して研削するパス数を決定し、そのパス数で仕上研削を行うか、あるいはそれらの両方を行うとともに、除去すべき表面欠陥が存在しないと判定するまで表面欠陥検出及び仕上研削を行うようにしたので、表面欠陥検出結果に基づいて表面欠陥がなくなるまで圧延ロール研削装置による自動研削を行うことができる。その際、次の仕上研削に粒度の高い砥石を用いるようにすると、よりきめ細かな研削を行うことができる。
【実施例】
【0058】
実施例1.
次に表面欠陥を有する、ロール径φ500mmの目標とする仕上げ粗さの異なる2種類の冷間圧延用ワークロールを検出対象として表面欠陥検出を行った例について説明する。ここでは、JIS−B0601で規定される平均粗さRa=0.55μm(図4(a):仕上げ粗さが大きいロール)とRa=0.15μm(図4(b):鏡面仕上げロール)の仕上げ粗さのロールを用いる。図4からみてわかるように、2つのロールの欠陥部分はいずれも幅200μm以下、深さ10μm以下の非常に微細な凹み状の表面欠陥である(それでも研削痕よりは大きい)。
【0059】
本実施例で用いるレーザ光源6として、出力50mW、波長685nm、照射領域φ35mmの半導体レーザを使用する。一方、受光手段7として24万画素のCCDカメラを用いる。また、信号処理手段8として、CCDカメラが撮像した画像を処理する画像処理装置を用いる。
【0060】
図9はロールの欠陥部分を受光手段7であるCCDカメラで撮像した画像を示す図である。図9(a)はRa=0.55μmのロール表面をレーザ光の照射角を80゜、CCDカメラの受光角を−20゜として撮影したものである。ここで、本実施例においては、照射角は、図2における時計回りを正とし、受光角は反時計回りを正としている。図9(a)では正常部分においては反射光同士が干渉し、これにより受光した光が弱まっており、欠陥部分においては反射光を受光した光が明瞭に現れている。図9(b)は図9(a)と同一の表面を、照射角を80゜、受光角を0゜として撮影したものである。反射光同士が干渉しても、正常部分と欠陥部分とで受光した光の強さの差が少ないために欠陥部分を特定することが困難である。また、図9(c)はRa=0.15μmのロール表面を、照射角を70゜、受光角を0゜として撮影したものである。正常部分においては反射光同士が干渉し、これにより受光した光が弱まっており、欠陥部分においては反射光を受光した光が明瞭に現れている。この例では、疵深さ5μm以下の欠陥部分も判断、検出することができている。
【0061】
図10は照射角、受光角を変更した場合の検出結果を示す図である。図10(a)はRa=0.55μmのロール表面を検出した場合、図10(b)はRa=0.15μmのロール表面を検出した場合をそれぞれ示す。図10によれば、圧延ロールの表面、レーザ光源6、受光手段7が同じでも、照射角(レーザ光の入射角)又は受光角(レーザ光の反射角)により検出を行えない範囲があることがわかる。これは、目標とする圧延ロールの仕上げ粗さによって、選択した砥石の粒度が異なり、これにより研削痕の幅dも異なるためである。したがって、高精度の検出を行うためには、目標とする圧延ロールの仕上げ粗さに応じてレーザ光源6、受光手段7の位置を調整する必要がある。また、検出しようとする疵幅レベルも考慮する必要がある。これについては、目標とする圧延ロールの各種の仕上げ粗さ毎に最適な位置をあらかじめ調べておき、設定できるようにしておくことで対応することができる。
【0062】
上述の表面欠陥検出方法による検査結果を表1に示す。上述の方法による圧延ロールの検査に先立って、通常、仕上研削の後に行われるオペレータによる目視評価の結果も示す。従来は、目視評価で微細な欠陥の検出も行っていた。圧延ロール検査時には、仕上研削と同様に、回転数を40rpm、送り量を500mm/minとして、検査対象である圧延ロールを回転させた。ここで、条件1は照射角を70゜、受光角を0゜としたものである。一方、条件2は照射角を80゜、受光角を−20゜としたものである。
【0063】
【表1】
【0064】
Ra=0.55μmの圧延ロールでは、条件2だけがオペレータの目視評価とよい一致を見ている。一方、Ra=0.15μmのロールでは、条件1、2ともにオペレータの目視評価とよい一致を見せており、目標とする圧延ロールの仕上げ粗さに応じて照射角、受光角を最適にする(レーザ光源6、受光手段7の位置を最適にする)ことで、微細な表面欠陥の検出が可能になることがわかる。このような方法で欠陥検出を行うことで、研削と並行して表面欠陥検出を行うことも可能になる。
【0065】
実施例2.
表2は照射角を70゜、受光角を0゜とした上述の条件1で、レーザ光の入反射角を設定した状態で、スリット幅0.3mm、1.0mm2.8mm、6.5mmの4種類の異なるマスキングスリット20を取り付けた状態での検査結果を、マスキングスリット20を付けない状態での検出結果、オペレータの目視検査結果と比較して示したものである。圧延ロール検査時には、仕上げ研削工程と同様に、回転数40rpm、送り量を500mm/minで検査対象である圧延ロールを回転させた。
【0066】
【表2】
【0067】
マスキングスリット20がない状態では、研削痕のばらつきによって、欠陥部分以外でも一部の研削痕からの反射光の強さが大きく、過検出となっており検出不可能となっている。スリット幅が6.5mmのマスキングスリット20を設置した場合でも、高周波数成分のフィルタリングが不十分で一部の研削痕を過検出しており検出不可能となっている。スリット幅が2.8mmあるいは1.0mmのマスキングスリット20を設置した場合には、光学的フーリエ変換によるフィルタリング効果で欠陥部分からの反射光の強さのみを強調することができ、目視評価と同様に欠陥部分からの検出が可能であった。一方、スリット幅が0.3mmのマスキングスリット20を用いた場合には、受光手段7に入る光量が小さくなりすぎるために、欠陥部分からの反射光の強さも小さくなり検出が不可能であった。
【0068】
以上のように、光学的フーリエ変換を原理としたフィルタリング処理を行うことで、正常部分である研削痕からの反射光成分を弱め、欠陥部分からの反射光とのコントラストを明瞭にすることが可能であり、仕上げ粗さの大きいロールでも干渉現象と光学的フーリエ変換とを組み合わせることで、より高精度の検出が可能となる。また、フィルタリング処理を行うマスキングスリット20の幅は研削痕の幅に応じて最適値があり、仕上げロール粗さに応じて予め求めておいたスリット幅に調整することで対応できる。
【0069】
実施例3.
対象とした圧延ロールは、冷間圧延ロールであり、径φ500mm、胴長2mの寸法で仕上げ粗さはJIS−B0601−2001、JIS−B0651−2001で規定される平均粗さRa=0.15μmである。ちなみに、粗さ曲線用の基準長さlr(λc)を0.8mm、うねり曲線用の基準長さlw(λf)を8mm、断面曲線用の基準長さlp(評価長さln)を40mmとして測定した。
【0070】
この圧延ロールを調質圧延に用いた結果、摩耗による肌荒れ、微小なスクラッチ等がロール表面に生じた。そのため、上記の実施の形態3で説明した圧延ロール研削装置を用いてこの圧延ロールの研削を行った。本実施例では、まず、NC研削盤制御装置19にあらかじめ設定されているように、粗研削を6パス行って摩耗による表面の凹凸やクラック等を除去した。その後、仕上研削を4パス行って上記仕上げ粗さに仕上げた。
【0071】
表面欠陥検出を独立させて行う場合にも、圧延ロールを回転し、表面欠陥検出部9と圧延ロールとを相対的に移動させる必要がある。そのための圧延ロール回転数、圧延ロール1回転あたりの砥石の圧延ロール軸心方向への送り量の条件はあらかじめNC研削盤制御装置19内の記憶手段に記憶されている。本実施例では、仕上研削と同じロール回転数40rpm、送り量を50mm/minとして、圧延ロールを回転し、かつ、表面欠陥検出部9と圧延ロールとを相対的に移動させて表面欠陥検出を行った。ここで、回転砥石15は圧延ロールから離反させ、回転は停止してある。また、本実施例においても、レーザ光源6として出力50mW、波長685nm、照射領域φ35mmの半導体レーザを使用し、照射角は80゜とした。受光手段7としては、24万画素のCCDカメラを使用し、受光角は−20゜とした。
【0072】
図11は検出信号に基づく光の強さと圧延ロール軸心方向位置との関係を示す図である。縦軸は検出信号に基づく光の強さの指標を示す値(以下、輝度という)、横軸は受光部中心の圧延ロール軸心方向位置を示す。ここで本実施例では、圧延ロール1回転あたりの同軸心方向の移動距離は8mmとなる。したがって、その8mm内の光の強さのデータは圧延ロール1回転分の外周表面各位置でのデータに相当する。
【0073】
ここで、輝度について、理想的な平滑な表面による反射光の強さを0%、レーザ光が波長の整数倍の光路差で干渉して強められた場合の反射光の強さを100%として表している。図11では圧延ロール軸心方向位置800mmの箇所に、反射光の強い部分を検出できていることがわかる。この欠陥部分の実測プロフィルを示したものが、先術の実施例1の図4(b)である。実際の欠陥の幅、深さなどの寸法と反射光の強さとの関係を調査した結果、ここでは、再度の仕上研削を行うかどうかを判定するための閾値を輝度20%に設定し、輝度が20%以上であると判定した場合に再度の仕上研削を行うようにした。
【0074】
表面欠陥検出の結果を受けて再度の仕上研削を行った際の研削条件と、各パス後に表面欠陥が除去できたかどうかの判定結果を表3に示す。研削条件として3つのケースを設定し、各ケースにて除去すべき表面欠陥は、図11の圧延ロール軸心方向位置800mmの箇所にある表面欠陥と同じ深さ、大きさの表面欠陥とした。
【0075】
【表3】
【0076】
ケース1は、最初の研削条件よりも圧延ロール回転数を低下(40rpm→30rpm)させた条件である。仕上研削にて1パス毎に表面欠陥検出を行い、5パス目にて検出信号に基づく輝度が閾値20%より小さくなり、研削終了と判定した。また、ケース2は、最初の研削条件よりも圧延ロール回転数及び送り量を低減(40rpm→30rpm、500mm/min→300mm/min)した条件である。この場合は、3パス目にて検出信号に基づく輝度が閾値20%より小さくなり、研削終了と判定した。さらにケース3は、最初の研削条件よりも圧延ロール回転数、送り量及び切り込み深さを低下(40rpm→30rpm、500mm/min→300mm/min、3μm→2μm)すると共に、砥石を粒度の高いものに交換(#120→#270)した。この場合、2パス目にて検出信号に基づく輝度が閾値20%より小さくなり、研削終了と判定した。
【0077】
以上のように、ある表面欠陥に対し、様々な研削条件、砥石により仕上研削を行い、経験的に輝度が閾値より小さくなる仕上研削パス数をあらかじめ求めて決めておけば、実際の研削において、表面欠陥を検出した際に、再度の仕上研削を行うに際し、研削条件を変更して研削すべきパス数が決定できる。そして、これにより、表面欠陥検出及び表面欠陥を除去する仕上研削を自動的に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】研削後の圧延ロール表面を模式的に示した図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る表面欠陥検出装置を示す図である。
【図3】表面欠陥検出部9を含む圧延ロール研削装置の構成を示す図である。
【図4】欠陥部分のプロフィルを示す図である。
【図5】光学フーリエ変換を模式的に示した図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る表面欠陥検出装置を示す図である。
【図7】圧延ロール研削装置を制御するための装置を含む構成を示す図である。
【図8】圧延ロール10の研削手順のフローチャートを示す図である。
【図9】欠陥部分を受光手段7であるCCDカメラで撮像した画像を示す図である。
【図10】照射角、受光角を変更した場合の検出結果を示す図である。
【図11】検出信号に基づく光の強さと圧延ロール軸心方向位置との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1 研削痕
2 表面欠陥
3 レーザ光
4、5 光路
6 レーザ光源
7 受光手段
8 信号処理手段
8A AD変換部
8B データ処理部
8C 表示部
8D データ記憶部
9 表面欠陥検出部
10 圧延ロール
11 台盤
12 第1駆動源
13 第1移動体
14 第2移動体
15 回転砥石
16 第2駆動源
17 支柱
18 データ処理装置
19 NC研削盤制御装置
B,C 光軸
D 軸心方向
20 マスキングスリット
L1 第1のレンズ
L2 第2のレンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延用ロールの表面欠陥検出方法等に関するものである。特に従来の方法等では行えなかった微細な表面欠陥の検出を可能にするものである。さらに、表面欠陥検出結果を用いた圧延用ロール研削方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧延加工に使用される圧延用ロール(以下、圧延ロールという)は、使用中の摩耗、焼き付き、転動疲労等によって、表層に微細な割れや欠落が生じる場合がある。表層のことを、便宜上、表面と称することにすると、圧延ロール表面に生じるこれらの表面欠陥は、圧延材の表面品質を低下させる原因や新たな焼き付きの発生原因となる。そこで、圧延ロールは定期的に表面が研削される。そして、研削後には圧延ロール表面の検査が行われている。この検査方法として、渦流探傷法(例えば特許文献1参照)、表面波を用いた超音波探傷法(例えば特許文献2参照)等が広く用いられている。
【0003】
【特許文献1】特公昭58−11571号公報
【特許文献2】特開2001−13113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
渦流探傷法によれば、圧延ロール表面に渦電流を発生させるための励磁周波数が高くなるにつれて渦電流の浸透深さが浅くなる表皮効果によって、圧延ロール表層部分の欠陥を比較的容易に検出することが可能である。それでも、圧延ロールの表面欠陥探傷に渦流探傷法を用いた場合に探傷可能な深さは0.2mm程度までである。これは圧延ロールの場合、残留応力による透磁率変化が大きく、励磁周波数を高くすると感度が上がる一方で、透磁率変化による影響が大きくなってしまうためである。
【0005】
また、表面波を用いた超音波探傷法では、回転する円柱体(ロール)の表面に接触媒質の膜を介して表面波探触子を接触させながら表面波を伝播させて反射波を受信し、反射波の周波数、振幅から欠陥部分の有無を判定する。しかしながら、このような方法では、表面波探触子と圧延ロールとの間に接触媒質の膜を介したある一定のギャップを形成する必要がある。そのため、圧延ロールの偏心、局部摩耗、ロールクラウン等により、そのギャップに変化が生じた場合には、探触子から圧延ロールへの超音波伝達効率も変化する。そして、その変化に応じて欠陥部分からの反射波の周波数や振幅にも変化が生じる。特に疵深さが0.05mm以下というような微細な表面欠陥を検出する場合には、ギャップ変化によるノイズ成分と欠陥部分とを区別するのが困難である。
【0006】
一方で、ユーザの製品表面品質要求の厳格化、薄い圧延材の増加等によって、圧延ロールの表面品質に対する管理基準はますます厳しくなってきている。特にブリキ(極薄)材の冷間圧延や調質圧延の鏡面仕上げ(ブライト材)に用いられる圧延ロールでは、圧延ロールの表面粗さレベルに近い深さ0.05mm(50μm)以下の欠陥でも、それが圧延によって鋼板(圧延材)表面に転写された場合には、鋼板表面の欠陥と認識される場合がある。そのため、研削した圧延ロール表面の微細な欠陥を精度よく検出する必要がある。しかしながら、上述した2つの探傷方法では、圧延ロールの欠陥部分の寸法(深さ)が数〜数百μmというような、圧延用ロール表面の仕上げ粗さと同レベルの欠陥を検出するには、その能力が不十分であった。
【0007】
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたもので、例えば、より厳しい表面品質要求に耐えられる鋼板(圧延材)を製造できるようにするために、例えば圧延ロール検査時に圧延ロール表面に生じた微細な欠陥を検出することができる圧延用ロールの表面欠陥検出方法及び装置並びにその方法を実現できる手段を搭載した圧延用ロール研削装置、方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る圧延用ロールの表面欠陥検出装置は、圧延用ロールの外周表面にレーザ光を照射するレーザ光源と、外周表面からのレーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段と、受光手段からの信号に基づいて、外周表面の欠陥の有無を判定する処理手段とを備えたものである。
【0009】
また、本発明に係る圧延用ロールの表面欠陥検出装置の処理手段は、信号に基づいて、正常部分と欠陥部分の反射光の強さの違いを判断して欠陥の有無を検出する。
【0010】
また、本発明に係る表面欠陥検出装置のレーザ光源及び受光手段の光軸は、圧延用ロール軸心を含むある平面内に配置され、レーザ光源による照射角又は受光手段の受光角に変更することができる。
【0011】
また、本発明に係る表面欠陥検出装置は、外周表面の正常部分と欠陥部分の反射光の強さの違いがある一定以上となるように、目標とする圧延用ロールの仕上げ粗さに基づいて照射角及び/又は受光角を設定する。
【0012】
また、本発明に係る表面欠陥検出装置は、外周表面と受光手段との間に、反射光を集光する焦点距離fを有する第1のレンズと、第1のレンズにより集光された反射光の特定周波数成分を遮断するマスキングスリットと、第1のレンズと同じ焦点距離fを有する第2のレンズとが、反射光の光路に沿って、外周表面、第1のレンズ、マスキングスリット、第2のレンズ、受光手段の順に、焦点距離fの等間隔で配置されてなるものである。
【0013】
また、本発明に係る表面欠陥検出装置は、マスキングスリットの幅が可変とすることができる。
【0014】
また、本発明に係る圧延用ロール研削装置は、圧延用ロール軸心を中心として圧延用ロールを回転させる駆動体を有し、圧延用ロールを支持する台盤と、回転する圧延用ロールの外周表面を研削する研削手段と、外周表面にレーザ光を照射するレーザ光源と、外周表面からのレーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段と、研削手段並びにレーザ光源及び受光手段を圧延用ロール軸心方向に移動させる移動体と、を備えたものである。
【0015】
また、本発明に係る圧延用ロールの表面欠陥検出方法は、圧延用ロール軸心を含むある平面内において受光した、圧延用ロールの外周表面に向けて照射されたレーザ光の反射光の強さに基づいて、正常部分と欠陥部分の反射光の強さの違いにより圧延用ロールの外周表面の欠陥の有無を検出する。
【0016】
また、本発明に係る圧延用ロールの表面欠陥検出方法は、レーザ光を照射する前に、目標とする圧延用ロールの仕上げ粗さに基づいてあらかじめ求めておいた範囲の角度に、圧延用ロールの外周表面に向けてレーザ光を照射するレーザ光源の照射角及び/又は、外周表面からのレーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段の受光角を調整しておく。
【0017】
また、本発明に係る圧延用ロールの表面欠陥検出方法は、焦点距離fを有する第1のレンズ、マスキングスリット、焦点距離fを有する第2のレンズを、反射光の光路に沿って、外周表面、第1のレンズ、マスキングスリット、第2のレンズ、レーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段の順に、焦点距離fの等間隔で配置し、マスキングスリットにより反射光の特定周波数成分を遮断する。
【0018】
また、本発明に係る圧延用ロールの表面欠陥検出用プログラムは、圧延用ロール軸心を含むある平面内において受光した、圧延用ロール外周表面に向けて照射されたレーザ光の反射光の強さのデータと、あらかじめ定めたある一定の閾値との比較に基づいて、圧延用ロールの外周表面の欠陥の有無の検出をコンピュータにて行う。
【0019】
また、本発明に係る圧延用ロール研削方法は、研削装置を制御手段により制御して圧延用ロールの外周表面の研削を行う圧延用ロール研削方法において、あらかじめ定められたパス数及び条件で粗研削及び仕上研削を行い、仕上研削の最終パス中又は仕上研削後に、上述に記載の表面欠陥検出方法による表面欠陥検出を行い、その表面欠陥検出結果により、除去すべき表面欠陥が存在するものと判定すると、表面欠陥についてあらかじめ定めた関係に基づいて、切り込み深さ、圧延用ロール1回転あたりの砥石の圧延用ロール軸心方向への送り量、砥石回転数又は圧延用ロール回転数に係る条件のうち、1又は複数の条件を変更して仕上研削を行い、除去すべき表面欠陥が存在しないと判定するまで、表面欠陥検出及び仕上研削を行う。
【0020】
また、本発明に係る圧延用ロール研削方法は、研削装置を制御手段により制御して圧延用ロールの外周表面の研削を行う圧延用ロール研削方法において、あらかじめ定められたパス数及び条件で粗研削及び仕上研削を行い、仕上研削の最終パス中又は仕上研削後に、上述に記載の表面欠陥検出方法による表面欠陥検出を行い、その表面欠陥検出結果により、除去すべき表面欠陥が存在するものと判定すると、表面欠陥についてあらかじめ定めた関係に基づいて、切り込み深さ、圧延用ロール1回転あたりの砥石の圧延用ロール軸心方向への送り量、砥石回転数又は圧延用ロール回転数の条件のうち、1又は複数の条件を変更して仕上研削するパス数を決定し、そのパス数で仕上研削を行うとともに、除去すべき表面欠陥が存在しないと判定するまで、表面欠陥検出及び決定した仕上研削するパス数による再度の仕上研削を行う。
【0021】
また、本発明に係る圧延用ロール研削方法は、除去すべき表面欠陥が存在するものと判定した後の仕上研削に用いる砥石を、高い粒度の砥石に変更する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、レーザ光源から、圧延ロールの外周表面に照射したレーザ光の反射光の強さを、受光手段が光の強さを表す信号に変換し、その信号に基づいて、外周表面の欠陥の有無を処理手段が判定するようにしたので、従来検出が不可能であった非常に微細な大きさの圧延ロールの外周表面の欠陥を非接触で検出することができる。そして、微細な欠陥を検出することにより、圧延ロールに対して後述のように種々対策をとることができるので、鋼板等の表面品質を向上させることができる。その際、正常部分と欠陥部分とで反射光の強さが違うことを利用するが、圧延ロール研削の際にできる研削痕による反射光の干渉による作用を利用するため、レーザ光源及び受光手段の光軸を圧延ロール軸心を含むある平面内に配置し、そして、目標とする圧延ロールの仕上げ粗さに基づいてレーザ光源の照射角、受光手段の受光角を調整しておくことにより、正常部分と欠陥部分の反射光の強さの違いをある一定以上にするようにしたので、より正確な検出を行うことができる。また、圧延ロール研削装置にレーザ光源及び受光手段を設け、研削手段とともに圧延ロール軸心方向に移動できるようにしたので、研削と並行して表面欠陥検出を行うこともできるようになり、表面欠陥検出に要する時間の短縮を図ることができる。
【0023】
さらに、焦点距離fを有する第1のレンズ、マスキングスリット、焦点距離fを有する第2のレンズを、反射光の光路に沿って、外周表面、第1のレンズ、マスキングスリット、第2のレンズ、受光手段の順に、焦点距離fの等間隔で配置し、マスキングスリットにより反射光の特定周波数成分を遮断することにより、圧延ロールの外周表面の仕上げ粗さが大きく、研削痕の幅のばらつきが大きく、入射角や反射角の設定のみで全ての研削痕からの反射光強度を弱めることが困難な場合であっても、正常部分に対応する周波数成分を遮断してから受光することができるので、受光手段は欠陥部分からの反射光のみを受光することが可能となる。
【0024】
また、本発明によれば、表面欠陥が検出された場合に、切り込み深さ、送り量、砥石回転数又は圧延ロール回転数に係る条件のうち、1又は複数の条件を変更した上で、次のパス又は次のパス以降の研削を行うか、あるいは条件を変更して研削するパス数を決定し、そのパス数で仕上研削を行い、除去すべき表面欠陥が存在しないと判定するまで表面欠陥検出及び仕上研削を行うようにしたので、表面欠陥検出結果に基づいて表面欠陥がなくなるまで圧延ロール研削装置による自動研削を行うことができる。その際、次の仕上研削に粒度の高い砥石を用いるようにすると、よりきめ細かな研削を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
第1の実施の形態.
図1は研削後の圧延ロール表面を模式的に示した図である。まず、ここでは本発明に基づく表面欠陥(疵)検出の原理について説明する。本発明は疵幅に基づいて表面欠陥検出を行おうとするものである。圧延ロールに対し、表面欠陥や表層疲労層の除去を目的として、圧延ロール表面からある一定の深さの研削が行われる。このとき、目標とする圧延ロールの仕上げ粗さに応じて、使用する砥石、研削条件等を選択するのであるが、研削後の圧延ロールには、この選択に応じ、図1に示すように、ある一定の幅と深さを有する研削痕1が形成されるのが特徴である。個々の研削痕1の幅と深さは厳密には一定ではないが、次に述べる表面欠陥2に比べると、ほぼ一定と見て良い。一方、表面欠陥(疵)2は、研削前に存在した大きなクラックが除去しきれなかった場合や、研削中に砥石、砥粒が脱落し、噛み込む等して発生し、その疵幅、疵深さは微小とはいえ、研削痕1よりも大きい。そして、発生した疵の多くは、疵幅が大きいほど疵深さも深くなる。
【0026】
このような圧延ロールの外周表面に波長及び位相がそろったレーザ光3を入射し、圧延ロール表面で反射した反射光同士で干渉を起こさせる。レーザ光を用いる理由は、波長、位相がそろったコヒーレント光でなければ干渉現象を利用した検出を行うことが困難なためである。したがって、波長、位相がそろっており、干渉を起こせるものであれば、レーザ光を入射する装置(光源)の種類(例えば、固体レーザ、半導体レーザ、ガスレーザ等)は特に限定しない。例えば、欠陥検出対象である圧延ロールの表面仕上げ粗さのレベル、検出対象とする欠陥の幅、深さ等に応じたレーザ光の波長、波形、出力等に基づいて選択することができる。
【0027】
ここで、レーザ光の入射角をθin、反射角をθout 、研削痕1の幅をdとすると、図1に示すように光路4と光路5とではabの分だけ光路差が生じることになる。この光路差により、次式(1)で表されるような光の位相差αが生じる。そして、このときの反射光の強さAは次式(2)で表される。
【0028】
【数1】
【0029】
つまり、ある反射角(ある位置)で観察される反射光の強さは、レーザ光の波長λ、入射角θin、反射角θout 、研削痕1の幅dによって決まることになる。研削痕1の幅dと比較すると表面欠陥2の幅は大きく異なる。したがって、レーザ光源が同じ照射角(入射角)でレーザ光を入射し、受光素子(手段)が同じ受光角(反射角)で反射光を受光した場合、ほぼ一定の幅と深さを有する研削痕による正常部分の反射光の干渉具合は、欠陥部分における反射光の干渉具合とは異なる。そのため、反射光を受光した光の強さも異なる。したがって、レーザ光源の照射角(レーザ光の入射角)と受光素子による反射光の受光角(レーザ光の反射角)を適当に選択することで、正常部分の反射光同士を干渉によって弱めたり、欠陥部分の反射光を強めたりして、コントラスト(正常部分と欠陥部分の反射光の強さの違い)を強調させることが可能となる(逆に正常部分を強め、欠陥部分を弱めることも可能である)。より検出を正確に行うためには、ある一定以上のコントラストが得られるような照射角、受光角の範囲に調整するとよい。そこで、レーザ光源からレーザ光を照射し、受光素子を用いて受光した反射光の強さに基づいて、反射光の局部的に強い部分があるかどうかを判定することにより、欠陥部分の有無を容易に判定し、検出することができる。もちろん、圧延ロールにおける欠陥の位置も検出することができる。
【0030】
この方法によれば、光学的手法を用いて非接触で欠陥部分の検出を行うため、従来の渦流探傷における残留応力の影響、超音波探傷におけるギャップ変化におけるノイズ成分等の問題は皆無であり、しかも欠陥部分の深さや幅などの寸法が数〜数十μmレベルの微細なものでも検出することができる。
【0031】
図2は本発明の実施の形態に係る表面欠陥検出装置を示す図である。図2において、レーザ光源6は検出対象である圧延ロールの外周表面にレーザ光を照射する手段である。レーザ光源6から照射されるレーザ光の圧延ロールの外周表面からの反射光を、例えばCCDカメラ等の受光素子を1又は複数有する受光手段7が受光し、その光の強さを例えば電気信号に変換する。ここで、レーザ光源6と受光手段7の光軸B,Cは圧延ロール軸心を含む平面(圧延ロール外周表面における外周方向と称する接線に垂直な平面)内に配置されるようにするのが好ましい。これは、後述する圧延ロール研削装置の砥石による研削方向を考慮したものである。圧延ロール全体に残されている研削痕は、圧延ロールの外周方向にほぼ均一の幅で形成されている。そのため、圧延ロール軸心を含む平面内でレーザ光の入反射をさせることで干渉現象をよりうまく発生させることができるからである。
【0032】
また、レーザ光源6、受光手段7については、それぞれを支持している梁の角度を変更することで、レーザ光源6による照射角度(レーザ光の入射角度)、受光手段7の受光角度(圧延ロール表面からのレーザ光の反射角度)を適切に設定し、位置を変更できる構造としている。このようにレーザ光源6の照射角と受光手段7の受光角を可変とするのは、研削痕の幅dが圧延ロールの仕上げ粗さによって異なり、仕上げ粗さに応じて最適な照射角及び受光角が異なるためである。そのため、あらかじめ目標とする圧延ロールの仕上げ粗さに応じて最適な角度(位置)に調整できるようにするのが好ましい。また、前述の位置とは、角度のみならず光軸方向の位置も含む意味とし、光軸方向にレーザ光源6及び/又は受光手段7の位置を調整することができるようにするのも好ましい。
【0033】
信号処理手段8は、さらにAD変換部8A、データ処理部8B、表示部8C及びデータ記憶部8D等で構成されている。AD変換部8Aは、受光手段7が変換した光の強さを表す電気信号をデータ処理部8Bが処理することができるデジタルデータ(以下、光の強さを数値化したデータ(以下、光の強さのデータという)とする)に変換する。データ処理部8Bは、光の強さのデータに基づいて、欠陥部分の有無を判定する。また欠陥部分の位置も判定することができる。具体的には、例えば、あらかじめある一定の閾値を定めておき、その閾値以上の強さの光を受光手段7が受光したものと判定した部分について、欠陥部分であると判定する。また、信号処理手段8の各部の制御も行う。この信号処理手段8(特にデータ処理部8B)をハードウェアだけで構成することもできるが、データ処理部8Bを、例えば、CPU(Central Prosessing Unit )のような演算制御手段(コンピュータ)で構成する一方、処理手順をあらかじめプログラム化し、ソフトウェア、ファームウェア等で構成するのも好ましいため、本実施の形態ではそうする。そして、演算制御手段がそのプログラムを実行し、そのプログラムに基づく処理を信号処理手段8中の各部で行う。
【0034】
表示部8Cは、データ処理部8Bからの表示信号に基づく表示(例えば、判定結果、受光手段7が受光した光の強さに基づいてデータ処理部8が処理した画像等の表示)を行う。データ記憶部8Dは、例えばデータ処理部8Bが処理を行うための光の強さのデータを一時的又は長期的に記憶する。ここで、データ記憶部8Dに、光の強さのデータを記憶できる十分な記憶容量があれば、リアルタイム処理だけでなく、圧延ロール10全体の光の強さのデータを記憶した後に一括処理を行うこともできる。
【0035】
図3は表面欠陥検出部9を含む圧延ロール研削装置の構成を示す図である。上述した表面欠陥検出装置のうち、レーザ光源6及び受光手段7は圧延ロール研削装置の表面欠陥検出部9に設けられている。信号処理手段8は表面欠陥検出部9に収納されていてもよいし、表面欠陥検出部9(圧延ロール研削装置)外に設けられていてもよい。
【0036】
研削加工対象(欠陥検出対象)となる圧延ロール10を、第1駆動源12を備えた台盤11で支持している。第1駆動源12は圧延ロール10を回転させる。また、台盤11には第1移動体13が設けられている。第1移動体13は圧延ロール10の軸心方向Dに往復移動を行うことができる。一方、第1移動体13上に設けられている第2移動体14は、圧延ロール10の軸心方向と垂直な方向に往復移動を行うことができる。そのため、第2移動体14上の回転砥石15及び第2駆動源16は、圧延ロール10に対して、近接離反することができる。回転砥石15が圧延ロール10に接触した状態とした上で、第2駆動源16が回転砥石15を回転駆動させることにより、研削手段である回転砥石15が圧延ロール10の外周表面を研削する。
【0037】
また、第1移動体13上には支柱17が設けられており、その上部には前述した表面欠陥検出部9が設けられている。したがって、表面欠陥検出部9も圧延ロール10の軸心方向Dに往復移動することができる。表面欠陥検出部9を第1移動体13により移動させることができるので、回転砥石15に追従して移動させて研削直後の圧延ロール10の表面を表面欠陥検出部9により表面欠陥検出することも可能である。そのため、研削と並行して表面欠陥検出を行うことも可能であり、表面欠陥検出に要する時間の短縮にもつながる。
【0038】
以上のように第1の実施の形態によれば、レーザ光源6から圧延ロール10の外周表面に照射したレーザ光の反射光の強さを受光手段7が信号に変換し、信号処理手段8が、その信号に基づいて、研削痕(正常部分)と疵(欠陥部分)で幅が異なることによる反射光の強さの違いによって、欠陥の有無を判定するようにしたので、従来検出が不可能であった非常に微細な欠陥についても検出することが可能となる。このように微細な欠陥に対して後述のように種々対策をとることができるようになるので、本実施の形態の方法、装置で検査された圧延ロールで圧延される鋼板等の表面品質を向上することができるようになる。
【0039】
また、レーザ光源6の照射角及び受光手段7の受光角を適切に設定し、位置を変更できるようにしたので、目標とする圧延ロールの仕上げ粗さに応じて、照射角、受光角を変更することができる。そのため、目標とする圧延ロールの仕上げ粗さに応じて正常部分と欠陥部分の反射光のコントラストをある一定以上とすることで、より正確な欠陥検出を行うことができる。そして、圧延ロール研削装置にレーザ光源6及び受光手段7からのデータにより表面欠陥検出を行う表面欠陥検出部9を設け、圧延ロール10の外周表面を研削するための回転砥石15とともに圧延ロール軸心方向に移動できるようにしたので、研削と並行して表面欠陥検出を行うこともできるようになり、表面欠陥検出に要する時間の短縮を図ることができる。また、圧延ロール10の外周方向に沿って研削が行われ、研削痕はほぼ一定の幅、深さでできるので、レーザ光源6及び受光手段7の光軸B,Cを圧延ロール軸心を含む平面内に設置するようにしておくことで、位相、波長のそろったレーザ光に対し、研削痕による反射光同士の干渉による作用を有効に発揮させ、表面欠陥検出をより正確に行うことができる。
【0040】
第2の実施の形態.
上述の実施の形態に加えて、焦点距離fを有する第1のレンズ、マスキングスリット、焦点距離fを有する第2のレンズを、反射光の光路に沿って、外周表面、第1のレンズ、マスキングスリット、第2のレンズ、受光手段の順に、焦点距離fの等間隔で配置し、マスキングスリットにより反射光の特定周波数成分を遮断するようにしてもよい。
【0041】
上述の実施の形態では、検出対象である圧延ロールの外周表面の仕上げ粗さが小さく、正常部分である研削痕の幅がほぼ均一の場合には、その検出精度は非常に高くなる。しかしながら、仕上げ粗さが大きい場合には、研削痕幅のばらつきが大きく、入射角や反射角の設定のみで全ての研削痕からの反射光強度を弱めることが困難となる。そのため、正常部分の研削痕の平均幅からの偏差が大きい研削痕は、欠陥でないにもかかわらず、欠陥として認識されてしまい、欠陥の過検出となる恐れがある。
【0042】
図4は実際の圧延ロール表面の欠陥プロフィルを表す図であり、仕上げ粗さの異なる2種類のロール表面を触針式の表面粗さ計を用いて表面欠陥検出した結果である。ここでは、JIS−B0601で規定される平均粗さRa=0.55μmとRa=0.15μm(鏡面仕上げロールレベル)を示している。仕上げ粗さの小さいRa=0.15μmの圧延ロールでは欠陥部分以外の研削痕の疵幅がほぼ均一であるのに対して、仕上げ粗さの大きいRa=0.55μmの圧延ロールでは研削痕の幅がばらついていることがわかる。
【0043】
このように、仕上げ粗さの大きい圧延ロールの外周表面においても欠陥の過検出を防止するため、第2の実施の形態では光学的フーリエ変換を利用する。光学的フーリエ変換は、図5に示されるような光学系において、コヒーレント光を物体面P1に照射する。そして、物体面P1から発せられる反射光を、焦点距離fの第1のレンズを通し、集光点P2により集光し、さらに焦点距離fの第2のレンズL2で平行光に変換し、出力面P3で結像する。ここで、物体面P1、第1のレンズL1、集光点P2、第2のレンズL2、出力面P3を、焦点距離fの間隔でこの順に配置しておくと、集光点P2の面には、物体面P1の画像の空間的(二次元)フーリエ変換像が現れる。すなわち、物体面P1の画像が周波数成分に分解され、集光点P2面上において周波数成分に応じて分布する。通常は、集光点P2の面上の中央部が低周波数成分となり、中央部から離れるほど高周波数成分となる。この集光点P2の画像をもう一度同じ焦点距離fの第2のレンズL2を通して出力面P3で結像すると、逆フーリエ変換が生じ、元の画像が復元される。ここで集光点P2の面でマスクを掛けて特定の周波数成分を遮断すると、出力面P3ではその周波数成分を含まない画像が得られる。
【0044】
ここで第2の実施の形態では、物体面P1を圧延ロールの外周表面とし、圧延ロールの外周表面からレンズの焦点距離fの等間隔で第1のレンズL1、マスキング手段、第2のレンズL2、受光手段を順に配置する。すなわち、前出の集光点P2の位置にマスキング手段を配置し、出力面P3の位置に受光手段を配置することで、圧延ロール表面からの反射光の光学的フーリエ変換が可能となる。通常、正常部分の研削痕の幅は、欠陥部分よりも小さいため、高周波数成分となっており、マスキング手段では正常部分での研削痕の幅に応じた周波数成分を遮断するように、ある幅を有するマスキングスリットを設置することで、集光点の中央部から離れた高周波数成分である正常部分からの反射光をフィルタリングすることが可能であり、欠陥部分のみからの反射光を強調することができる。この方法では、干渉現象を利用して正常部分からの反射光の一次フィルタリングを行った後に、光学的フーリエ変換によって二次フィルタリングを行うことができるため、フィルタリングでの閾値を一次と二次とで変えることで、より広範囲の研削痕からの反射成分をフィルタリングすることが可能となり、バックグランドである研削痕のばらつきが大きい仕上げ粗さの大きなロールにおいても欠陥部分からの反射光のみを抽出することが可能となる。
【0045】
図6は第2の実施の形態に係る表面欠陥検出装置を表す図である。図6において、レーザ光源6は検出対象である圧延ロールの外周表面にレーザ光を照射する手段である。レーザ光源6による圧延ロールの外周表面からの反射光を、圧延ロールの外周表面から焦点距離fの位置に設置された第1のレンズL1で集光する。第1のレンズL1から焦点距離f離れた位置には、第1のレンズL1によって集光されたフーリエ変換像から、正常部分である研削痕からの反射光成分を遮断するマスキングスリット20が設置されている。さらにマスキングスリット20から焦点距離f離れた位置には、第2のレンズL2が設置されている。第2のレンズL2から焦点距離f離れた位置には上述の第1の実施の形態と同様の受光手段7が配置され、第2のレンズL2によって逆フーリエ変換された圧延ロール外周表面からの反射光に対して、その光の強さを例えば電気信号に変換する。
【0046】
ここで、レーザ光源6,第1のレンズL1、マスキングスリット20、第2のレンズL2、受光手段7は圧延ロール軸心を含む平面(圧延ロール外周表面の接線と垂直な面)内に配置するようにするのが好ましい。これは、後述する圧延ロール研削装置の砥石による研削方向を考慮したものである。圧延ロール全体に残され、バックグランドとなる研削痕は、周方向にほぼ均一の幅で形成される。そのため、圧延ロール軸心を含む平面内でレーザ光の入反射をさせると、干渉現象を最もうまく発生させることができる。
【0047】
また、第1の実施の形態と同様、レーザ光源6、受光手段7については、それぞれを支持している梁の角度を変更することで、レーザ光源6による照射角度(レーザ光の入射角度)、受光手段7の受光角度(圧延ロール表面からのレーザ光の反射角度)を適切に設定し、位置を変更できる構造としている。さらに第2の実施の形態においては、第1のレンズL1、マスキングスリット20、第2のレンズL2は受光手段7と一体構造になっており、受光手段7の受光角変更に追従するようになっている。
【0048】
また、マスキングスリット20の幅も可変とすることが好ましく、遮断する周波数成分を圧延ロールの仕上げ粗さに応じて、適切に選定できるようにすることが好ましい。信号処理手段8は、上述した第1の実施の形態と同様にAD変換部8A、データ処理部8B、表示部8C及びデータ記憶部8D等で構成されている。信号処理手段8の動作については、上述の第1の実施の形態と同様であるので、個々では説明を省略する。
【0049】
以上、説明した第2の実施の形態によれば、研削痕に対応する周波数成分をマスキングスリット20により遮断した後に受光することができるので、仕上げ粗さの大きい場合であっても、欠陥を精度よく検出することが可能となる。
【0050】
第3の実施の形態.
上述の実施の形態では、受光手段7をCCDカメラとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、フォトダイオードアレイを用いて受光を行うようにしてもよい。また、上述の実施の形態では、レーザ光源6、受光手段7をそれぞれ1つずつ設けているが、照射範囲、受光範囲を広げて圧延ロールの表面欠陥検出に要する時間を短縮するために、それぞれの手段を複数設けるようにしてもよい。ただ、干渉による正常部分と欠陥部分とのコントラストを十分に確保するために、照射角、受光角の関係はできる限り崩さないようにするとよい。
【0051】
第4の実施の形態.
図7は本発明の第4の実施の形態に係る圧延ロール研削装置を制御するための装置を含む構成を示す図である。図において、図3と同じ符号を付しているものは実施の形態1で説明したのと同じであるので説明を省略する。本実施の形態においては、実施の形態1において表面欠陥検出装置を構成している信号処理手段8を、データ処理装置18という独立した手段として設けている。そして、データ処理装置18とNC研削盤制御装置19とは、信号を送受信することにより、相互に必要なデータのやりとりを行うことができる。例えば、NC研削盤制御装置19が有する記憶手段には、第1駆動源12の回転角、第1移動体の位置(座標)のデータが記憶されている。これらのデータを含む信号をデータ処理装置18に送信し、データ処理装置18においてそれらのデータを処理することにより、圧延ロール10の外周表面を座標としてとらえ、表面欠陥の位置を座標で特定することができる。
【0052】
NC研削盤制御装置19は圧延ロール研削装置による研削を制御するための装置(制御手段)である。NC研削盤制御装置19が有する記憶手段には、粗研削及び1度目の仕上研削を行うための手順に関するプログラム(第1の実施の形態や第2の実施の形態による圧延ロールの表面欠陥検出あるいはその他を具現化するもの)及びデータが記憶されている。NC研削盤制御装置19はプログラム及びデータに基づいて制御を行うことで第1駆動源12、第1移動体13による圧延ロール10の回転・移動制御及び第2駆動源14、第2移動体16による回転砥石15の回転・移動制御を行い、自動的に研削を行うことができる。2度目以降の仕上研削のプログラム及びデータについては、データ処理装置18の判断に基づいてデータ処理装置18から送られることになる。ここではデータ処理装置18とNC研削盤制御装置19とで役割により装置を分けているが、1つの装置でこれらの処理を行うようにしてもよい。
【0053】
図8は圧延ロール10の研削手順のフローチャートを示す図である。圧延作業終了後、研削を行う圧延ロール10が圧延機から抜出されて圧延ロール研削装置にセットされる。まず、NC研削盤制御装置19内の記憶手段に記憶された研削条件で粗研削をMパス行う(S1)。粗研削では、圧延中に圧延ロール10が受けた深さ0.05mm以上の熱的・機械的損傷をロール表面から除去するための研削を行う。
【0054】
さらに圧延ロール10の外周表面の粗さが平滑になるように、あらかじめNC研削盤制御装置19内の記憶手段に記憶された研削条件で仕上研削をNパス行う(S2)。そして、その仕上研削の最終パスであるNパス目に又はNパス終了(仕上研削終了)後、圧延ロール10が回転した状態で、データ処理装置18は、受光手段7から送信される検出信号(電気信号)に基づいて、研削により生じたスクラッチ、ビビリ、送りマーク等により生じる深さ0.05mm以下の微細な表面欠陥を対象として、表面欠陥検出を行う(S3)。その際、データ処理装置18は、受光手段7からの検出信号を光の強さのデータに変換する。そのデータの値が、あらかじめ定めたある一定の閾値よりも小さいと判定すると、圧延ロール10には除去すべき表面欠陥がないと判定して仕上研削を終了する(S4)。
【0055】
これに対し、検出信号に基づく光の強さのデータの値があらかじめ定めたある一定の閾値以上であると判定すると、データ処理装置18は仕上研削の次のパス又は次のパス以降の研削条件及び/又はパス数を設定しなおし(S5)、その再度の仕上研削で研削装置に再度研削を行わせるためのプログラム及びデータをNC研削盤制御装置19に送る(パス毎に表面欠陥検出を行う場合は、N=1とする)。NC研削盤制御装置19はそのプログラム及びデータに基づいて、再度研削装置による仕上研削を行う。ここで、データ処理装置18がパス数の設定を行う際、研削条件である切り込み深さ、砥石回転数、圧延ロール回転数、ロール1回転あたりの回転砥石15の圧延ロール軸心方向への送り量のうち、1又は複数の条件を変更するようにしてもよい。条件の変更に際して、切り込み深さ、送り量は低減し、砥石回転数はアップし、圧延ロール回転数は低減するように変更するのが好ましい。回転砥石15については、最初の仕上研削と同じものを用いてもよいし、粒度の高いもの(砥粒径が小さいもの)に交換してもよい。同じものであれば、交換時間を省略することができる。粒度が高いものに交換した場合は、表面欠陥のレベルに応じたきめ細かな研削を行うことができる。研削条件の変更、回転砥石15の交換を両方行ってもよい。
【0056】
そして、再度の仕上研削中又は終了後に、再度、表面欠陥検出を行い、検出信号に基づく光の強さのデータが表す値があらかじめ定めたある一定の閾値より小さくなるまで仕上研削と表面欠陥検出を繰り返し行う。
【0057】
以上のように第4の実施の形態によれば、表面欠陥検出部による検出信号に含まれる光の強さのデータに基づいて、除去すべき表面欠陥が存在すると判定すると、データ処理装置18が、切り込み深さ、送り量、砥石回転数又は圧延ロール回転数の条件のうち、1又は複数の条件を変更して、次のパス又は次のパス以降の研削を行うか、あるいは条件を変更して研削するパス数を決定し、そのパス数で仕上研削を行うか、あるいはそれらの両方を行うとともに、除去すべき表面欠陥が存在しないと判定するまで表面欠陥検出及び仕上研削を行うようにしたので、表面欠陥検出結果に基づいて表面欠陥がなくなるまで圧延ロール研削装置による自動研削を行うことができる。その際、次の仕上研削に粒度の高い砥石を用いるようにすると、よりきめ細かな研削を行うことができる。
【実施例】
【0058】
実施例1.
次に表面欠陥を有する、ロール径φ500mmの目標とする仕上げ粗さの異なる2種類の冷間圧延用ワークロールを検出対象として表面欠陥検出を行った例について説明する。ここでは、JIS−B0601で規定される平均粗さRa=0.55μm(図4(a):仕上げ粗さが大きいロール)とRa=0.15μm(図4(b):鏡面仕上げロール)の仕上げ粗さのロールを用いる。図4からみてわかるように、2つのロールの欠陥部分はいずれも幅200μm以下、深さ10μm以下の非常に微細な凹み状の表面欠陥である(それでも研削痕よりは大きい)。
【0059】
本実施例で用いるレーザ光源6として、出力50mW、波長685nm、照射領域φ35mmの半導体レーザを使用する。一方、受光手段7として24万画素のCCDカメラを用いる。また、信号処理手段8として、CCDカメラが撮像した画像を処理する画像処理装置を用いる。
【0060】
図9はロールの欠陥部分を受光手段7であるCCDカメラで撮像した画像を示す図である。図9(a)はRa=0.55μmのロール表面をレーザ光の照射角を80゜、CCDカメラの受光角を−20゜として撮影したものである。ここで、本実施例においては、照射角は、図2における時計回りを正とし、受光角は反時計回りを正としている。図9(a)では正常部分においては反射光同士が干渉し、これにより受光した光が弱まっており、欠陥部分においては反射光を受光した光が明瞭に現れている。図9(b)は図9(a)と同一の表面を、照射角を80゜、受光角を0゜として撮影したものである。反射光同士が干渉しても、正常部分と欠陥部分とで受光した光の強さの差が少ないために欠陥部分を特定することが困難である。また、図9(c)はRa=0.15μmのロール表面を、照射角を70゜、受光角を0゜として撮影したものである。正常部分においては反射光同士が干渉し、これにより受光した光が弱まっており、欠陥部分においては反射光を受光した光が明瞭に現れている。この例では、疵深さ5μm以下の欠陥部分も判断、検出することができている。
【0061】
図10は照射角、受光角を変更した場合の検出結果を示す図である。図10(a)はRa=0.55μmのロール表面を検出した場合、図10(b)はRa=0.15μmのロール表面を検出した場合をそれぞれ示す。図10によれば、圧延ロールの表面、レーザ光源6、受光手段7が同じでも、照射角(レーザ光の入射角)又は受光角(レーザ光の反射角)により検出を行えない範囲があることがわかる。これは、目標とする圧延ロールの仕上げ粗さによって、選択した砥石の粒度が異なり、これにより研削痕の幅dも異なるためである。したがって、高精度の検出を行うためには、目標とする圧延ロールの仕上げ粗さに応じてレーザ光源6、受光手段7の位置を調整する必要がある。また、検出しようとする疵幅レベルも考慮する必要がある。これについては、目標とする圧延ロールの各種の仕上げ粗さ毎に最適な位置をあらかじめ調べておき、設定できるようにしておくことで対応することができる。
【0062】
上述の表面欠陥検出方法による検査結果を表1に示す。上述の方法による圧延ロールの検査に先立って、通常、仕上研削の後に行われるオペレータによる目視評価の結果も示す。従来は、目視評価で微細な欠陥の検出も行っていた。圧延ロール検査時には、仕上研削と同様に、回転数を40rpm、送り量を500mm/minとして、検査対象である圧延ロールを回転させた。ここで、条件1は照射角を70゜、受光角を0゜としたものである。一方、条件2は照射角を80゜、受光角を−20゜としたものである。
【0063】
【表1】
【0064】
Ra=0.55μmの圧延ロールでは、条件2だけがオペレータの目視評価とよい一致を見ている。一方、Ra=0.15μmのロールでは、条件1、2ともにオペレータの目視評価とよい一致を見せており、目標とする圧延ロールの仕上げ粗さに応じて照射角、受光角を最適にする(レーザ光源6、受光手段7の位置を最適にする)ことで、微細な表面欠陥の検出が可能になることがわかる。このような方法で欠陥検出を行うことで、研削と並行して表面欠陥検出を行うことも可能になる。
【0065】
実施例2.
表2は照射角を70゜、受光角を0゜とした上述の条件1で、レーザ光の入反射角を設定した状態で、スリット幅0.3mm、1.0mm2.8mm、6.5mmの4種類の異なるマスキングスリット20を取り付けた状態での検査結果を、マスキングスリット20を付けない状態での検出結果、オペレータの目視検査結果と比較して示したものである。圧延ロール検査時には、仕上げ研削工程と同様に、回転数40rpm、送り量を500mm/minで検査対象である圧延ロールを回転させた。
【0066】
【表2】
【0067】
マスキングスリット20がない状態では、研削痕のばらつきによって、欠陥部分以外でも一部の研削痕からの反射光の強さが大きく、過検出となっており検出不可能となっている。スリット幅が6.5mmのマスキングスリット20を設置した場合でも、高周波数成分のフィルタリングが不十分で一部の研削痕を過検出しており検出不可能となっている。スリット幅が2.8mmあるいは1.0mmのマスキングスリット20を設置した場合には、光学的フーリエ変換によるフィルタリング効果で欠陥部分からの反射光の強さのみを強調することができ、目視評価と同様に欠陥部分からの検出が可能であった。一方、スリット幅が0.3mmのマスキングスリット20を用いた場合には、受光手段7に入る光量が小さくなりすぎるために、欠陥部分からの反射光の強さも小さくなり検出が不可能であった。
【0068】
以上のように、光学的フーリエ変換を原理としたフィルタリング処理を行うことで、正常部分である研削痕からの反射光成分を弱め、欠陥部分からの反射光とのコントラストを明瞭にすることが可能であり、仕上げ粗さの大きいロールでも干渉現象と光学的フーリエ変換とを組み合わせることで、より高精度の検出が可能となる。また、フィルタリング処理を行うマスキングスリット20の幅は研削痕の幅に応じて最適値があり、仕上げロール粗さに応じて予め求めておいたスリット幅に調整することで対応できる。
【0069】
実施例3.
対象とした圧延ロールは、冷間圧延ロールであり、径φ500mm、胴長2mの寸法で仕上げ粗さはJIS−B0601−2001、JIS−B0651−2001で規定される平均粗さRa=0.15μmである。ちなみに、粗さ曲線用の基準長さlr(λc)を0.8mm、うねり曲線用の基準長さlw(λf)を8mm、断面曲線用の基準長さlp(評価長さln)を40mmとして測定した。
【0070】
この圧延ロールを調質圧延に用いた結果、摩耗による肌荒れ、微小なスクラッチ等がロール表面に生じた。そのため、上記の実施の形態3で説明した圧延ロール研削装置を用いてこの圧延ロールの研削を行った。本実施例では、まず、NC研削盤制御装置19にあらかじめ設定されているように、粗研削を6パス行って摩耗による表面の凹凸やクラック等を除去した。その後、仕上研削を4パス行って上記仕上げ粗さに仕上げた。
【0071】
表面欠陥検出を独立させて行う場合にも、圧延ロールを回転し、表面欠陥検出部9と圧延ロールとを相対的に移動させる必要がある。そのための圧延ロール回転数、圧延ロール1回転あたりの砥石の圧延ロール軸心方向への送り量の条件はあらかじめNC研削盤制御装置19内の記憶手段に記憶されている。本実施例では、仕上研削と同じロール回転数40rpm、送り量を50mm/minとして、圧延ロールを回転し、かつ、表面欠陥検出部9と圧延ロールとを相対的に移動させて表面欠陥検出を行った。ここで、回転砥石15は圧延ロールから離反させ、回転は停止してある。また、本実施例においても、レーザ光源6として出力50mW、波長685nm、照射領域φ35mmの半導体レーザを使用し、照射角は80゜とした。受光手段7としては、24万画素のCCDカメラを使用し、受光角は−20゜とした。
【0072】
図11は検出信号に基づく光の強さと圧延ロール軸心方向位置との関係を示す図である。縦軸は検出信号に基づく光の強さの指標を示す値(以下、輝度という)、横軸は受光部中心の圧延ロール軸心方向位置を示す。ここで本実施例では、圧延ロール1回転あたりの同軸心方向の移動距離は8mmとなる。したがって、その8mm内の光の強さのデータは圧延ロール1回転分の外周表面各位置でのデータに相当する。
【0073】
ここで、輝度について、理想的な平滑な表面による反射光の強さを0%、レーザ光が波長の整数倍の光路差で干渉して強められた場合の反射光の強さを100%として表している。図11では圧延ロール軸心方向位置800mmの箇所に、反射光の強い部分を検出できていることがわかる。この欠陥部分の実測プロフィルを示したものが、先術の実施例1の図4(b)である。実際の欠陥の幅、深さなどの寸法と反射光の強さとの関係を調査した結果、ここでは、再度の仕上研削を行うかどうかを判定するための閾値を輝度20%に設定し、輝度が20%以上であると判定した場合に再度の仕上研削を行うようにした。
【0074】
表面欠陥検出の結果を受けて再度の仕上研削を行った際の研削条件と、各パス後に表面欠陥が除去できたかどうかの判定結果を表3に示す。研削条件として3つのケースを設定し、各ケースにて除去すべき表面欠陥は、図11の圧延ロール軸心方向位置800mmの箇所にある表面欠陥と同じ深さ、大きさの表面欠陥とした。
【0075】
【表3】
【0076】
ケース1は、最初の研削条件よりも圧延ロール回転数を低下(40rpm→30rpm)させた条件である。仕上研削にて1パス毎に表面欠陥検出を行い、5パス目にて検出信号に基づく輝度が閾値20%より小さくなり、研削終了と判定した。また、ケース2は、最初の研削条件よりも圧延ロール回転数及び送り量を低減(40rpm→30rpm、500mm/min→300mm/min)した条件である。この場合は、3パス目にて検出信号に基づく輝度が閾値20%より小さくなり、研削終了と判定した。さらにケース3は、最初の研削条件よりも圧延ロール回転数、送り量及び切り込み深さを低下(40rpm→30rpm、500mm/min→300mm/min、3μm→2μm)すると共に、砥石を粒度の高いものに交換(#120→#270)した。この場合、2パス目にて検出信号に基づく輝度が閾値20%より小さくなり、研削終了と判定した。
【0077】
以上のように、ある表面欠陥に対し、様々な研削条件、砥石により仕上研削を行い、経験的に輝度が閾値より小さくなる仕上研削パス数をあらかじめ求めて決めておけば、実際の研削において、表面欠陥を検出した際に、再度の仕上研削を行うに際し、研削条件を変更して研削すべきパス数が決定できる。そして、これにより、表面欠陥検出及び表面欠陥を除去する仕上研削を自動的に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】研削後の圧延ロール表面を模式的に示した図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る表面欠陥検出装置を示す図である。
【図3】表面欠陥検出部9を含む圧延ロール研削装置の構成を示す図である。
【図4】欠陥部分のプロフィルを示す図である。
【図5】光学フーリエ変換を模式的に示した図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る表面欠陥検出装置を示す図である。
【図7】圧延ロール研削装置を制御するための装置を含む構成を示す図である。
【図8】圧延ロール10の研削手順のフローチャートを示す図である。
【図9】欠陥部分を受光手段7であるCCDカメラで撮像した画像を示す図である。
【図10】照射角、受光角を変更した場合の検出結果を示す図である。
【図11】検出信号に基づく光の強さと圧延ロール軸心方向位置との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1 研削痕
2 表面欠陥
3 レーザ光
4、5 光路
6 レーザ光源
7 受光手段
8 信号処理手段
8A AD変換部
8B データ処理部
8C 表示部
8D データ記憶部
9 表面欠陥検出部
10 圧延ロール
11 台盤
12 第1駆動源
13 第1移動体
14 第2移動体
15 回転砥石
16 第2駆動源
17 支柱
18 データ処理装置
19 NC研削盤制御装置
B,C 光軸
D 軸心方向
20 マスキングスリット
L1 第1のレンズ
L2 第2のレンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延用ロールの外周表面にレーザ光を照射するレーザ光源と、
前記外周表面からの前記レーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段と、
該受光手段からの信号に基づいて、前記外周表面の欠陥の有無を判定する処理手段と
を備えたことを特徴とする圧延用ロールの表面欠陥検出装置。
【請求項2】
前記処理手段は、前記信号に基づいて、正常部分と欠陥部分の前記反射光の強さの違いを判定して前記欠陥の有無を検出することを特徴とする請求項1に記載の圧延用ロールの表面欠陥検出装置。
【請求項3】
前記レーザ光源及び前記受光手段の光軸は、前記圧延用ロール軸心を含むある平面内に配置され、前記レーザ光源による照射角又は前記受光手段の受光角は、変更することができることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧延用ロールの表面欠陥検出装置。
【請求項4】
前記外周表面の前記正常部分と前記欠陥部分の反射光の強さの違いがある一定以上となるように、目標とする前記圧延用ロールの仕上げ粗さに基づいて前記照射角及び/又は前記受光角を調整することを特徴とする請求項3記載の圧延用ロールの表面欠陥検出装置。
【請求項5】
前記外周表面と前記受光手段との間に、前記反射光を集光する焦点距離fを有する第1のレンズと、
該第1のレンズにより集光された反射光の特定周波数成分を遮断するマスキングスリットと、
前記第1のレンズと同じ焦点距離fを有する第2のレンズとが、
前記反射光の光路に沿って、前記外周表面、前記第1のレンズ、前記マスキングスリット、前記第2のレンズ、前記受光手段の順に、前記焦点距離fの等間隔で配置されてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の圧延用ロールの表面欠陥検出装置。
【請求項6】
前記マスキングスリットの幅が可変であることを特徴とする請求項5記載の圧延用ロールの表面欠陥検出装置。
【請求項7】
圧延用ロール軸心を中心として圧延用ロールを回転させる駆動体を有し、前記圧延用ロールを支持する台盤と、
回転する前記圧延用ロールの外周表面を研削する研削手段と、
前記外周表面にレーザ光を照射するレーザ光源と、
前記外周表面からの前記レーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段と、
前記研削手段並びに前記レーザ光源及び前記受光手段を前記圧延用ロール軸心方向に移動させる移動体と、
を備えたことを特徴とする圧延用ロール研削装置。
【請求項8】
圧延用ロール軸心を含むある平面内において受光した、圧延用ロールの外周表面に向けて照射されたレーザ光の反射光の強さに基づいて、正常部分と欠陥部分の前記反射光の強さの違いにより前記圧延用ロールの外周表面の欠陥の有無を検出することを特徴とする圧延用ロールの表面欠陥検出方法。
【請求項9】
前記レーザ光を照射する前に、
目標とする前記圧延用ロールの仕上げ粗さに基づいてあらかじめ求めておいた範囲の角度に、前記圧延用ロールの外周表面に向けてレーザ光を照射するレーザ光源の照射角及び/又は、前記外周表面からの前記レーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段の受光角を調整しておくことを特徴とする請求項6記載の圧延用ロールの表面欠陥検出方法。
【請求項10】
焦点距離fを有する第1のレンズ、マスキングスリット、焦点距離fを有する第2のレンズを、前記反射光の光路に沿って、前記外周表面、前記第1のレンズ、前記マスキングスリット、前記第2のレンズ、前記レーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段の順に、前記焦点距離fの等間隔で配置し、前記マスキングスリットにより前記反射光の特定周波数成分を遮断することを特徴とする請求項8又は9に記載の圧延用ロールの表面欠陥検出方法。
【請求項11】
圧延用ロール軸心を含むある平面内において受光した、圧延用ロール外周表面に向けて照射されたレーザ光の反射光の強さのデータと、あらかじめ定めたある一定の閾値との比較に基づいて、前記圧延用ロールの外周表面の欠陥の有無の検出をコンピュータにて行うことを特徴とする圧延用ロールの表面欠陥検出用プログラム。
【請求項12】
研削装置を制御手段により制御して圧延用ロールの外周表面の研削を行う圧延用ロール研削方法において、
あらかじめ定められたパス数及び条件で粗研削及び仕上研削を行い、
前記仕上研削の最終パス中又は前記仕上研削後に、請求項8乃至10のいずれかに記載の表面欠陥検出方法による表面欠陥検出を行い、
その表面欠陥検出結果により、除去すべき表面欠陥が存在するものと判定すると、表面欠陥についてあらかじめ定めた関係に基づいて、切り込み深さ、前記圧延用ロール1回転あたりの砥石の前記圧延用ロール軸心方向への送り量、砥石回転数又は圧延用ロール回転数に係る条件のうち、1又は複数の条件を変更して仕上研削を行い、
前記除去すべき表面欠陥が存在しないと判定するまで、前記表面欠陥検出及び前記仕上研削を行うことを特徴とする圧延用ロール研削方法。
【請求項13】
研削装置を制御手段により制御して圧延用ロールの外周表面の研削を行う圧延用ロール研削方法において、
あらかじめ定められたパス数及び条件で粗研削及び仕上研削を行い、
前記仕上研削の最終パス中又は前記仕上研削後に、請求項8乃至10のいずれかに記載の表面欠陥検出方法による表面欠陥検出を行い、
その表面欠陥検出結果により、除去すべき表面欠陥が存在するものと判定すると、表面欠陥についてあらかじめ定めた関係に基づいて、切り込み深さ、前記圧延用ロール1回転あたりの砥石の前記圧延用ロール軸心方向への送り量、砥石回転数又は圧延用ロール回転数の条件のうち、1又は複数の条件を変更して仕上研削するパス数を決定し、そのパス数で仕上研削を行うとともに、前記除去すべき表面欠陥が存在しないと判定するまで、前記表面欠陥検出及び前記決定した仕上研削するパス数による再度の仕上研削を行うことを特徴とする圧延用ロール研削方法。
【請求項14】
前記除去すべき表面欠陥が存在するものと判定した後の仕上研削に用いる砥石を、高い粒度の砥石に変更することを特徴とする請求項12又は13記載の圧延用ロール研削方法。
【請求項1】
圧延用ロールの外周表面にレーザ光を照射するレーザ光源と、
前記外周表面からの前記レーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段と、
該受光手段からの信号に基づいて、前記外周表面の欠陥の有無を判定する処理手段と
を備えたことを特徴とする圧延用ロールの表面欠陥検出装置。
【請求項2】
前記処理手段は、前記信号に基づいて、正常部分と欠陥部分の前記反射光の強さの違いを判定して前記欠陥の有無を検出することを特徴とする請求項1に記載の圧延用ロールの表面欠陥検出装置。
【請求項3】
前記レーザ光源及び前記受光手段の光軸は、前記圧延用ロール軸心を含むある平面内に配置され、前記レーザ光源による照射角又は前記受光手段の受光角は、変更することができることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧延用ロールの表面欠陥検出装置。
【請求項4】
前記外周表面の前記正常部分と前記欠陥部分の反射光の強さの違いがある一定以上となるように、目標とする前記圧延用ロールの仕上げ粗さに基づいて前記照射角及び/又は前記受光角を調整することを特徴とする請求項3記載の圧延用ロールの表面欠陥検出装置。
【請求項5】
前記外周表面と前記受光手段との間に、前記反射光を集光する焦点距離fを有する第1のレンズと、
該第1のレンズにより集光された反射光の特定周波数成分を遮断するマスキングスリットと、
前記第1のレンズと同じ焦点距離fを有する第2のレンズとが、
前記反射光の光路に沿って、前記外周表面、前記第1のレンズ、前記マスキングスリット、前記第2のレンズ、前記受光手段の順に、前記焦点距離fの等間隔で配置されてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の圧延用ロールの表面欠陥検出装置。
【請求項6】
前記マスキングスリットの幅が可変であることを特徴とする請求項5記載の圧延用ロールの表面欠陥検出装置。
【請求項7】
圧延用ロール軸心を中心として圧延用ロールを回転させる駆動体を有し、前記圧延用ロールを支持する台盤と、
回転する前記圧延用ロールの外周表面を研削する研削手段と、
前記外周表面にレーザ光を照射するレーザ光源と、
前記外周表面からの前記レーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段と、
前記研削手段並びに前記レーザ光源及び前記受光手段を前記圧延用ロール軸心方向に移動させる移動体と、
を備えたことを特徴とする圧延用ロール研削装置。
【請求項8】
圧延用ロール軸心を含むある平面内において受光した、圧延用ロールの外周表面に向けて照射されたレーザ光の反射光の強さに基づいて、正常部分と欠陥部分の前記反射光の強さの違いにより前記圧延用ロールの外周表面の欠陥の有無を検出することを特徴とする圧延用ロールの表面欠陥検出方法。
【請求項9】
前記レーザ光を照射する前に、
目標とする前記圧延用ロールの仕上げ粗さに基づいてあらかじめ求めておいた範囲の角度に、前記圧延用ロールの外周表面に向けてレーザ光を照射するレーザ光源の照射角及び/又は、前記外周表面からの前記レーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段の受光角を調整しておくことを特徴とする請求項6記載の圧延用ロールの表面欠陥検出方法。
【請求項10】
焦点距離fを有する第1のレンズ、マスキングスリット、焦点距離fを有する第2のレンズを、前記反射光の光路に沿って、前記外周表面、前記第1のレンズ、前記マスキングスリット、前記第2のレンズ、前記レーザ光による反射光を受光し、光の強さを表す信号に変換する受光手段の順に、前記焦点距離fの等間隔で配置し、前記マスキングスリットにより前記反射光の特定周波数成分を遮断することを特徴とする請求項8又は9に記載の圧延用ロールの表面欠陥検出方法。
【請求項11】
圧延用ロール軸心を含むある平面内において受光した、圧延用ロール外周表面に向けて照射されたレーザ光の反射光の強さのデータと、あらかじめ定めたある一定の閾値との比較に基づいて、前記圧延用ロールの外周表面の欠陥の有無の検出をコンピュータにて行うことを特徴とする圧延用ロールの表面欠陥検出用プログラム。
【請求項12】
研削装置を制御手段により制御して圧延用ロールの外周表面の研削を行う圧延用ロール研削方法において、
あらかじめ定められたパス数及び条件で粗研削及び仕上研削を行い、
前記仕上研削の最終パス中又は前記仕上研削後に、請求項8乃至10のいずれかに記載の表面欠陥検出方法による表面欠陥検出を行い、
その表面欠陥検出結果により、除去すべき表面欠陥が存在するものと判定すると、表面欠陥についてあらかじめ定めた関係に基づいて、切り込み深さ、前記圧延用ロール1回転あたりの砥石の前記圧延用ロール軸心方向への送り量、砥石回転数又は圧延用ロール回転数に係る条件のうち、1又は複数の条件を変更して仕上研削を行い、
前記除去すべき表面欠陥が存在しないと判定するまで、前記表面欠陥検出及び前記仕上研削を行うことを特徴とする圧延用ロール研削方法。
【請求項13】
研削装置を制御手段により制御して圧延用ロールの外周表面の研削を行う圧延用ロール研削方法において、
あらかじめ定められたパス数及び条件で粗研削及び仕上研削を行い、
前記仕上研削の最終パス中又は前記仕上研削後に、請求項8乃至10のいずれかに記載の表面欠陥検出方法による表面欠陥検出を行い、
その表面欠陥検出結果により、除去すべき表面欠陥が存在するものと判定すると、表面欠陥についてあらかじめ定めた関係に基づいて、切り込み深さ、前記圧延用ロール1回転あたりの砥石の前記圧延用ロール軸心方向への送り量、砥石回転数又は圧延用ロール回転数の条件のうち、1又は複数の条件を変更して仕上研削するパス数を決定し、そのパス数で仕上研削を行うとともに、前記除去すべき表面欠陥が存在しないと判定するまで、前記表面欠陥検出及び前記決定した仕上研削するパス数による再度の仕上研削を行うことを特徴とする圧延用ロール研削方法。
【請求項14】
前記除去すべき表面欠陥が存在するものと判定した後の仕上研削に用いる砥石を、高い粒度の砥石に変更することを特徴とする請求項12又は13記載の圧延用ロール研削方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−208347(P2006−208347A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49068(P2005−49068)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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