説明

基板乾燥装置及び基板乾燥方法

【課題】加熱槽内の状態に応じてポンプの運転状態を切り換えることにより、溶剤濃度を高く維持して基板の乾燥処理を好適に行うことができるとともに、ポンプの負担を軽減することができる基板乾燥装置を提供する。
【解決手段】制御部は、処理液に基板を浸漬させて処理液による処理を行った後、基板の乾燥を行う際に、チャンバ内を減圧するとともに、温度検出器37による測定温度と、圧力検出器39による測定圧力と、飽和蒸気曲線データとに基づきベローズポンプ87の動作速度を切り換える。したがって、加熱槽77内における有機溶剤の状態に応じてベローズポンプ87を動作させることができるので、有機溶剤の状態に係わらず、有機溶剤を蒸発皿81に対して十分に供給きる。その結果、基板の乾燥不良を防止できる。また、ベローズポンプ87の空運転を防止できるので、ベローズポンプ87の負担を軽減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶表示装置用のガラス基板(以下、単に基板と称する)等の基板に対して、処理液により洗浄、エッチング等の処理を行った後、チャンバ内を減圧して溶剤蒸気雰囲気中にて減圧を行って基板を乾燥させる基板乾燥装置及び基板乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、処理液を貯留する処理槽と、この処理槽を囲うチャンバと、基板を保持するとともに、処理槽内にあたる処理位置と処理槽の上方にあたる乾燥位置とにわたって昇降可能なリフタと、チャンバ内に配設された蒸気ノズルに対して、有機溶剤(例えば、イソプロピルアルコール(IPA))の蒸気を供給する溶剤供給部とを備えたものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
溶剤供給部は、底面に配設されたヒータによって貯留した有機溶剤を加熱する加熱槽と、有機溶剤の蒸発を促進するために、蒸発面積を増大させた蒸発皿と、加熱槽から蒸発皿へ加熱された有機溶剤を供給するポンプとを備えている。また、溶剤の蒸気を蒸気ノズルに送り込むために、蒸発皿に不活性ガス(例えば、窒素ガス)をキャリアガスとして供給する構成を採用する場合もある。
【0004】
しかし、基板に形成されるパターンの微細化が進むにしたがって、基板に付着している液滴の置換効率をさらに向上することが望まれている。そのためは、チャンバ内における有機溶剤の濃度を高くすること必要があるので、濃度を低下させる原因となっているキャリアガスを供給する構成を採用せず、チャンバと蒸発皿とを連通させておき、チャンバ内を高減圧にすることで蒸発皿における有機溶剤の蒸発度合いを著しく高める構成を採ることがある。
【特許文献1】特開平10−275794号公報(図4)
【特許文献2】特開2007−273758号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、加熱槽から蒸発皿に対して有機溶剤をポンプで供給しているが、非減圧下から減圧を開始すると、最初はポンプで有機溶剤を供給することができるものの、ポンプによる吸引力も加わって、加熱槽から吸い込んだ有機溶剤が配管内において瞬間的に沸騰する。これによりポンプは、有機溶剤の気体を供給するような状態となって、加熱槽で加熱された有機溶剤の液体を蒸発皿に供給することができない。その結果、蒸発皿からの蒸発量が低下し、基板の乾燥不良を生じる恐れがある。
【0006】
また、チャンバの減圧が進むにつれて、ポンプが液体より気体を供給することになるので、ポンプの動作速度が増してゆくことになる。したがって、ポンプは空運転の状態に近づいてゆくので、ポンプに負担がかかるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、加熱槽内の状態に応じてポンプの運転状態を切り換えることにより、溶剤濃度を高く維持して基板の乾燥処理を好適に行うことができるとともに、ポンプの負担を軽減することができる基板乾燥装置及び基板乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、基板を乾燥させるための基板乾燥装置において、処理液を貯留する処理槽と、前記処理槽を囲うチャンバと、前記チャンバ内を減圧するための減圧ポンプと、前記チャンバ内に連通接続され、有機溶剤を貯留するとともに有機溶剤を加熱する加熱槽と、前記チャンバ内に連通接続され、有機溶剤を供給される蒸発皿と、前記加熱槽内の有機溶剤を前記蒸発皿に供給するための供給ポンプと、前記加熱槽内の圧力を測定する圧力測定手段と、前記加熱槽内の温度を測定する温度測定手段とを備え、前記チャンバ内に有機溶剤の蒸気を供給する溶剤蒸気供給手段と、有機溶剤の飽和蒸気曲線データを記憶している記憶手段と、前記処理槽に貯留している処理液に基板を浸漬させて処理液による処理を行った後、基板を処理液から露出させて乾燥を行う際には、前記チャンバ内を前記減圧ポンプで減圧するとともに、前記温度測定手段による測定温度と、前記圧力測定手段による測定圧力と、前記飽和蒸気曲線データとに基づき前記供給ポンプの動作速度を切り換える制御手段と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、制御手段は、処理槽に貯留している処理液に基板を浸漬させて処理液による処理を行った後、基板を処理液から露出させて乾燥を行う際に、チャンバ内を減圧ポンプで減圧するとともに、温度測定手段による測定温度と、圧力測定手段による測定圧力と、記憶手段の飽和蒸気曲線データとに基づき供給ポンプの動作速度を切り換える。したがって、加熱槽内における有機溶剤の状態に応じて供給ポンプを動作させることができるので、有機溶剤の状態に係わらず、有機溶剤を蒸発皿に対して十分に供給することができる。その結果、基板の乾燥不良を防止することができる。また、供給ポンプの空運転を防止することができるので、供給ポンプの負担を軽減することができる。
【0010】
また、本発明において、前記制御手段は、測定温度における蒸気圧が飽和蒸気圧以下である場合には、測定温度における蒸気圧が飽和蒸気圧よりも高い場合よりも前記供給ポンプの動作速度を遅くすることが好ましい(請求項2)。加熱槽内の測定温度における蒸気圧が飽和蒸気圧以下である場合には、加熱槽内の有機溶剤が沸騰して活発に気体となっているので、供給ポンプの動作速度を遅くする。すると、供給ポンプの吸引が圧力低下を招き、さらなる有機溶剤の沸騰を生じさせるという事態を防止できるだけでなく、ゆっくりであっても確実に有機溶剤を蒸発皿に供給することができる。
【0011】
また、本発明において、前記供給ポンプは、ベローズポンプで構成され、前記ベローズポンプに動作用の圧縮空気を供給するものであって、それぞれ圧縮空気の供給速度が異なる複数個の供給弁を備え、前記制御手段は、前記複数個の供給弁を切り換えて前記ベローズポンプの動作速度を切り換えることが好ましい(請求項3)。供給速度が異なる複数個の供給弁を制御部が切り換えるだけで、ベローズポンプの動作速度を調整することができるので、比較的簡単な構成でベローズポンプの動作を容易に制御できる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明によれば、基板を乾燥させるための基板乾燥方法において、チャンバ内の処理槽に貯留している処理液に基板を浸漬させて、基板に対して処理液による処理を行う過程と、基板を処理液から露出させて乾燥させる過程とを実施する際に、有機溶剤を貯留する加熱槽から蒸発皿に有機溶剤を供給ポンプで供給するとともに、チャンバ及びチャンバに連通接続された加熱槽及び蒸発皿を減圧する過程と、加熱槽内の測定温度と、加熱槽内の測定圧力と、有機溶剤の飽和蒸気曲線データとに基づき供給ポンプの動作速度を切り換える過程と、を実施することを特徴とするものである。
【0013】
[作用・効果]請求項4に記載の発明によれば、チャンバ内の処理槽に貯留している処理液に基板を浸漬させ、基板に対して処理液による処理を行って、基板を処理液から露出させて乾燥を行わせる処理を実施する際には、有機溶剤を貯留する加熱槽から蒸発皿に有機溶剤を供給する供給ポンプを次のように制御する。つまり、チャンバ及びチャンバに連通接続された加熱槽及び蒸発皿が減圧されると、加熱槽内の測定温度と、加熱槽内の測定圧力と、有機溶剤の飽和蒸気曲線データとに基づき供給ポンプの動作速度を切り換える。したがって、加熱槽内における有機溶剤の状態に応じて供給ポンプを動作させることができるので、有機溶剤の状態に係わらず、有機溶剤を蒸発皿に対して十分に供給することができる。その結果、基板の乾燥不良を防止することができる。また、供給ポンプの空運転を防止することができるので、供給ポンプの負担を軽減することができる。
【0014】
また、本発明において、前記供給ポンプの動作速度を切り換える過程では、測定温度における蒸気圧が飽和蒸気圧以下である場合には、測定温度における蒸気圧が飽和蒸気圧よりも高い場合よりも前記供給ポンプの動作速度を遅くすることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る基板乾燥装置によれば、制御手段は、処理槽に貯留している処理液に基板を浸漬させて処理液による処理を行った後、基板を処理液から露出させて乾燥を行う際に、チャンバ内を減圧ポンプで減圧するとともに、温度測定手段による測定温度と、圧力測定手段による測定圧力と、記憶手段の飽和蒸気曲線データとに基づき供給ポンプの動作速度を切り換える。したがって、加熱槽内における有機溶剤の状態に応じて供給ポンプを動作させることができるので、有機溶剤の状態に係わらず、有機溶剤を蒸発皿に対して十分に供給きる。その結果、基板の乾燥不良を防止できる。また、供給ポンプの空運転を防止できるので、供給ポンプの負担を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る基板乾燥装置について説明する。
図1は、実施例に係る基板乾燥装置の概略構成を示すブロック図である。
【0017】
本実施例に係る基板乾燥装置は、処理液を貯留する処理槽1を備えている。この処理槽1は、処理液を貯留し、起立姿勢にされた複数枚の基板Wを収容可能である。処理槽1の底部には、複数枚の基板Wが整列されている方向(紙面方向)に沿って長軸を有し、処理液を供給するための二本の供給・排気管3が配設されている。各供給・排気管3には、配管5の一端側が連通接続され、配管5の他端側は、供給管7と吸引管9に分岐されている。供給管7は、処理液供給源11に連通接続されており、その流量が供給管7に設けられた処理液弁13で制御される。吸引管9は、真空時排気ポンプ15に接続され、吸引管9に設けられた排気弁17により開閉される。処理液供給源11は、フッ化水素酸(HF)や、硫酸・過酸化水素水(HSO,H)の混合液や、純水などを処理液として供給管7に供給する。
【0018】
処理槽1は、その周囲がチャンバ19によって囲われている。チャンバ19は、上部に開閉自在の上部カバー21を備えている。起立姿勢で複数枚の基板Wを保持するリフタ22は、図示しない駆動機構により、チャンバ19の上方にあたる「待機位置」と、処理槽1の内部にあたる「処理位置」と、処理槽1の上方であってチャンバ19の内部にあたる「乾燥位置」とにわたって移動可能である。
【0019】
上部カバー21の下方であってチャンバ19の上部内壁には、一対の溶剤ノズル23と、一対の不活性ガスノズル25とが配設されている。溶剤ノズル23には、供給管27の一端側が連通接続されている。供給管27の他端側は、本発明における「溶剤蒸気供給手段」に相当する蒸気発生装置29に連通接続されている。この供給管27には、その上流側から順に、溶剤蒸気の流量を調整する蒸気弁31と、溶剤蒸気を加熱するためのインラインヒータ33とが配設されている。供給管27がインラインヒータ33を備えているので、発生された溶剤蒸気が供給管27で凝結することを軽減でき、溶剤濃度が低下することを防止することができる。
【0020】
蒸気発生装置29については、詳細後述するが、貯留している有機溶剤を加熱するためのヒータ35が付設されている。この蒸気発生装置29は、有機溶剤として、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)が内部空間に貯留されている。なお、有機溶剤としてイソプロピルアルコールに代えて、ハイドロフルオロエーテル(HFE)を用いてもよい。また、蒸気発生装置29は、内部空間の温度を測定するための温度検出器37(温度測定手段)と、内部空間の圧力を測定するための圧力検出器39(圧力測定手段)とを備えている。蒸気発生装置29には、溶剤供給源41が連通接続されている。
【0021】
不活性ガスノズル25には、供給管43の一端側が連通接続されている。供給管43の他端側は、不活性ガスを供給する不活性ガス供給源45に連通接続されている。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス(N)が挙げられる。不活性ガス供給源45からの不活性ガスの供給量は、不活性ガス弁47によって調整される。不活性ガス弁47の下流側には、インラインヒータ49が取り付けられている。このインラインヒータ49は、不活性ガス供給源45からの不活性ガスを所定の温度に加熱する。
【0022】
チャンバ19には、その内部から気体を排出可能な排気管51が連通接続されている。この排気管51には、排気ポンプ53が配設されている。また、チャンバ19には、減圧状態を解消するための呼吸弁55が取り付けられている。さらに、チャンバ19には、内部の圧力を検出するための圧力計57が取り付けられている。
【0023】
なお、上述した真空時排気ポンプ15と排気ポンプ53とが本発明における「減圧ポンプ」に相当する。
【0024】
処理槽1の底部には、排出口59が配設されている。この排出口59には、QDR弁61が取り付けられている。このQDR弁61から処理槽1内の処理液を排出すると、処理液がチャンバ19の底部に一旦排出される。チャンバ19の底部には、気液分離部63に連通接続された排出管65が取り付けられている。この排出管65には、排液弁67が取り付けられている。気液分離部63は、排気管51及び排出管65から気体と液体とを取り込むとともに、それらを分離して排出する機能を備えている。
【0025】
上述した処理液弁13、真空時排気ポンプ15、排気弁17、上部カバー21、リフタ22、蒸気発生装置29、蒸気弁31、インラインヒータ33、ヒータ35、不活性ガス弁47、インラインヒータ49、排気ポンプ53、呼吸弁55、QDR弁61、排液弁67などは、本発明における「制御手段」に相当する制御部69によって統括的に制御される。制御部69には、本発明における「記憶手段」に相当する記憶部71と、測定圧力や測定濃度などをオペレータに知らせるため等に用いられる表示部73とが接続されている。
【0026】
記憶部71は、制御部69が実行する制御プログラムの他、処理手順を規定したレシピや、蒸気発生装置29に貯留されている有機溶剤に応じた飽和蒸気曲線データなどを記憶している。
【0027】
制御部69は、各部を制御するとともに、記憶部71を参照し、圧力計57からの圧力信号が蒸気圧曲線以下となった場合には、チャンバ19内の減圧を停止する制御を行う。また、制御部69は、蒸気発生装置29から蒸気を発生させる過程において、温度検出器37からの測定温度と、圧力検出器39からの測定圧力と、記憶部71の飽和蒸気曲線データとに基づいて、後述するように蒸気発生装置29を制御する。
【0028】
次に、図2を参照して蒸気発生装置29について説明する。なお、図2は、蒸気発生タンクの概略構成を示す一部切り欠き縦断面図である。
【0029】
蒸気発生装置29は、蒸気発生空間75を有し、有機溶剤を貯留する加熱槽77を備え、加熱槽77の底面に上述したヒータ35が付設されている。加熱槽77には、有機溶剤を供給するための溶剤供給源41が連通接続されている。加熱槽77の上部には、蒸気化促進室79が二つ配備されている。これらの蒸気化促進室79には、有機溶剤が供給される蒸発皿81が設けられている。この蒸発皿81は、有機溶剤の蒸発面積を増大させるように構成されたものである。加熱槽77の一側面には、供給口83が形成されており、この供給口83と各蒸気化促進室79の上部とは、溶剤供給管85とで連通接続されている。溶剤供給管85には、本発明における「供給ポンプ」に相当するベローズポンプ87が取り付けられている。ベローズポンプ87により取り込まれた加熱槽77内の有機溶剤は、蒸気化促進室79内の蒸発皿81に供給されて、加熱槽77で加熱された有機溶剤の蒸気化が促進される。蒸気化促進室79と供給管27とは、ガス導入管89によって連通接続されている。
【0030】
次に、図3を参照してベローズポンプ87について説明する。なお、図3は、ベローズポンプの構成を示す縦断面図である。
【0031】
ベローズポンプ87は、容器91と、この容器91の両端部を閉塞するエンドベース部材93と、容器91の内部空間を二分するセンターブロック95とを備えたポンプ本体97とを有する。センターブロック95には、互いに連通していない吸引流路99と吐出流路101が形成されている。吸引流路99には、吸引口103が形成されており、吐出流路101には、吐出口105が形成されている。吸引口103及び吐出口105は、ともに溶剤供給管85に連通接続されている。
【0032】
センターブロック95には、一対のベローズ107,109が取り付けられている。ベローズ107は、一対のチェッキ弁111,113を介して吸引流路99及び吐出流路101に連通接続されている。また、ベローズ109は、一対のチェッキ弁115,117を介して吸引流路99及び吐出流路101に連通接続されている。一対のベローズ107,109は、センターブロック95の反対側の端部が、センターブロック95に形成されている貫通孔119に挿通された一つの連結棒121で連結されている。
【0033】
エンドベース部材93には、それぞれ吸排口123が形成されている。各吸排口123には、吸排管125の一端側が連通接続されており、他端側が5ポートの電磁弁127に連通接続されている。電磁弁127の供給口には、圧縮空気が供給され、与えられた切り換え信号に応じていずれか一方の吸排管125だけに圧縮空気を供給する。各吸排管125には、大気開放弁129が取り付けられている。大気開放弁129は、与えられた開放信号に応じて吸排管125内部を大気圧に開放する動作を行う。
【0034】
電磁弁127の供給口には、圧縮空気が供給される空気供給管131の一端側が連通接続されている。空気供給管131は、第1供給管133と第2供給管135とに分岐されている。第1供給管133には、予め流量が第1の流量F1に設定された流量制御弁137と、開閉弁139とが直列に取り付けられている。また、第2供給管135には、予め流量が第2の流量F2に設定された流量制御弁141と、開閉弁143とが直列に取り付けられている。ここで、流量制御弁137,141は、本発明における「供給弁」に相当する。
【0035】
なお、ここでは、第1の流量F1は、第2の流量F2よりも大流量となるように設定されているものとする。また、第1供給管133と第2供給管135とは同一の圧縮空気の供給源に連通されており、例えば、第1の流量F1と第2の流量F2との合計が圧縮空気の供給源における最大供給流量(圧力)となる。
【0036】
制御部69は、電磁弁127に対して所定のタイミングで切り換え信号を与え、両吸排管125に対して交互に圧縮空気を送り込む。また、圧縮空気の送り込みとは逆のタイミングで、大気開放弁129に対して開放信号を与え、両吸排管125を交互に大気に対して開放する。これにより、センターブロック95で仕切られた容器91の両空間の圧力を調整して、ベローズ107(符号A側)と、ベローズ109(符号B側)とを交互に伸縮させる。
【0037】
なお、制御部69は、電磁弁127に対して切り換え信号を与える際に、測定温度と、測定圧力と、飽和蒸気曲線データとに基づいて、両吸排管125に供給する圧縮空気の流量を切り換える。
【0038】
具体的には、制御部69は、温度検出器37からの測定温度と、圧力検出器39からの測定圧力と、記憶部71に記憶されている飽和蒸気曲線データとに基づき、測定温度における蒸気圧と測定圧力とを比較し、その結果、測定圧力が飽和蒸気圧以下である場合と、そうでない場合とで流量を切り換える。より具体的に説明すると、測定圧力が飽和蒸気圧以上である場合には、加熱槽77内の有機溶剤が沸騰せず、液体として安定して存在している状態であるので、第2の流量F2より大流量である第1の流量F1で圧縮空気が吸排管125に供給されるように、開閉弁143と流量制御弁141を閉止したまま、開閉弁139と流量制御弁137を開放する。その一方、測定圧力が飽和蒸気圧より低い場合には、加熱槽77内の有機溶剤が激しく沸騰している状態であるので、第1の流量F1より小流量である第2の流量F2で圧縮空気が吸排管125に供給されるように、開閉弁141と流量制御弁143を開放する。これにより、ベローズポンプ87は、制御部69の制御の下で、加熱槽77内における有機溶剤の気液状態に応じて、その動作速度が切り換えられる。
【0039】
なお、第1の流量F1と第2の流量F2とで二段階に切り換えるのではなく、第1の流量F1と、第2の流量F2と、第3の流量F3(=F1+F2)とで三段階に切り換えるようにしてもよい。例えば、装置を始動し始めた時点では、第3の流量F3で加熱槽77から蒸発皿81に最大流量で有機溶剤を供給しておき、加熱槽77におけるヒータ35で加熱を開始してから所定時間経過後に、上述した制御で第1の流量F1と第2の流量F2のいずれかに切り換えるようにしてもよい。
【0040】
制御部69が参照する記憶部71の飽和蒸気曲線データは、例えば、図4に示すようなものである。なお、図4は、イソプロピルアルコールの飽和蒸気曲線データの一例を示す図である。例えば、測定温度がTm1であって、測定圧力がPm1である場合、測定温度Tm1における飽和蒸気圧Psa1と測定圧力Pm1とを比較する。この場合には、測定圧力Pm1>飽和蒸気圧Psa1の関係であるので、第1の流量F1にする。一方、例えば、測定温度がTm1であって、測定圧力がPm2である場合、測定圧力Pm2<飽和蒸気圧Psa1の関係であるので、第2の流量F2にする。
【0041】
上述した動作は、図5のフローチャートのようになる。なお、図5は、ベローズポンプの動作制御を示すフローチャートである。
【0042】
制御部69は、まず圧力検出器39から測定圧力を取得する(ステップS1)。次に、温度検出器37から測定温度を取得する(ステップS2)。そして、飽和蒸気曲線データを参照して、上述したようにして測定温度における飽和蒸気圧と測定圧力とを比較し(ステップS3)、飽和蒸気圧との関係、つまり有機溶剤の気液状態に応じて、ベローズポンプ87の動作速度を切り換える(ステップS4,S5)。つまり、有機溶剤が沸騰してない液体の場合には、通常速度でベローズポンプ87を動作させ(ステップS4,第1の流量F1)、有機溶剤が沸騰している場合には、動作速度を遅くしてベローズポンプ87を動作させる(ステップS5,第2の流量F2)。
【0043】
次に、上述した構成の基板乾燥装置の動作例について図6を参照して説明する。なお、図6は、乾燥処理の動作を示すフローチャートである。
【0044】
まず、主要動作について説明する。
制御部69は、上部カバー21を開放し、未処理の基板Wを複数枚保持しているリフタ22を「待機位置」から「乾燥位置」に搬入させる。このとき、排液弁67は、開放されたままである。次に、制御部69は、チャンバ19内の酸素濃度低減処理を行う。具体的には、上部カバー21を閉止するとともに、不活性ガス弁47を開放し、不活性ガス供給源45からチャンバ19内に不活性ガスを供給させる。これにより、チャンバ19内にある空気が不活性ガスによってパージされて、その結果、チャンバ19内の酸素濃度が低減される。さらに、制御部69は、リフタ22を「乾燥位置」から「処理位置」にまで下降させる。
【0045】
処理槽1及びチャンバ19内の酸素濃度が低減されると、制御部69は処理液弁13を開放する。これにより、処理液供給源11から処理液(例えば、常温の純水)が処理槽1に供給されて、処理槽1の上部から溢れた処理液がチャンバ19の底部で回収される。回収された処理液は、排出管65を通して気液分離部63で回収される。このようにして処理液が処理槽1に供給された後、制御部69は、リフタ22を「処理位置」に所定時間だけ維持して、基板Wに対して処理液による処理を行う。
【0046】
処理液による処理を開始して所定時間が経過すると、制御部69は、リフタ22を「処理位置」に維持させたまま、排気ポンプ53を作動させて、チャンバ19の底部に排出された処理液を排出するとともに、QDR弁61を開放して処理液をチャンバ19に急速排出させる。処理槽1の処理液が完全に排出された後、不活性ガス弁47を閉止するとともに、呼吸弁55を閉止してチャンバ19内部を完全に閉塞させる。これにより、処理液で処理された基板Wが処理槽1内において周囲に対して露出された状態にされる。
【0047】
ステップT1
制御部69は、蒸気発生装置29における蒸気発生の準備を行わせる。具体的には、有機溶剤を加熱するために、加熱温度(例えば72℃)でヒータ35への供給電力を制御する。このとき、蒸気弁31は閉止されたままである。なお、このステップT1は、上述した主要動作の前の動作中に開始するようにしてもよい。また、この動作を開始するとともに、後述するステップT8にわたって、上述したベローズポンプ87の動作制御(ステップS1〜S5)を繰り返し実行する。
【0048】
ステップT2
チャンバ19内の減圧を開始する。具体的には、排液弁67を閉止するとともに、排気弁17を開放し、排気ポンプ53及び真空時排気ポンプ15による減圧を開始する。この時、チャンバ19内の圧力は、圧力計57によって逐次測定され、その圧力信号が制御部69に出力される。また、その圧力信号に基づく圧力値が、制御部69を介して表示部73に出力され、減圧処理が正常に行われているか否かの判断に用いられる。
【0049】
ステップT3
制御部69は、記憶部71の飽和蒸気曲線データを参照し、圧力信号が、蒸気発生装置29の加熱温度における飽和蒸気圧以下になるまで排気ポンプ53及び真空時排水ポンプ15による減圧を行う。
【0050】
ステップT4
上記の条件が満たされると、排気弁17及び排液弁67を閉止するとともに、真空時排気ポンプ15及び排気ポンプ53を停止させる。これにより、チャンバ19内の圧力が、それまでに減圧されてきた状態に維持される。
【0051】
ステップT5
制御部69は、インラインヒータ33を動作させて、有機溶剤の加熱温度(例えば、72℃以上)に合わせて昇温させておくとともに蒸気弁31を開放する。すると、蒸気発生装置29の加熱槽77及び蒸気化促進室79がチャンバ19に連通され、チャンバ19と同じ高減圧の状態にされる。その結果、加熱槽77及び蒸気化促進室79内では、有機溶剤が沸騰して大量の溶剤蒸気が発生する。さらに、チャンバ19内の圧力は、蒸気発生装置29内の圧力よりも極端に低い状態であるので、その圧力差に応じて溶剤蒸気が蒸気発生装置29からチャンバ19内に流入する。チャンバ19内は、圧力差によってチャンバ19内に流入した溶剤蒸気により、溶剤蒸気雰囲気とされる。このとき、常温の処理液から露出され、温度が溶剤蒸気に比較して非常に低い状態の基板Wは、その全面に有機溶剤が凝結する。そして、基板Wの全面に付着している処理液の液滴が有機溶剤によって置換される。また、このとき基板Wは、チャンバ19に比較して小容積である処理槽1内に収容された状態で乾燥処理が行われるので、効率的に乾燥処理が行われる。
【0052】
ステップT6、T7
制御部69は、溶剤蒸気の処理を所定時間だけ行った後、リフタ22を「処理位置」から「乾燥位置」に引き上げさせる。そして、この状態を維持したまま、所定時間だけ維持して、乾燥処理の仕上げを行う。
【0053】
ステップT8
制御部69は、所定時間が経過した時点で、呼吸弁55を開放するとともに、不活性ガス弁49を開放して、不活性ガスをチャンバ19内に導入する。そして、チャンバ19内の圧力を大気圧に戻す。これにより、蒸気発生装置29との圧力差が解消されるので、溶剤蒸気の発生が止まることになる。その後、蒸気弁31を閉止する。
【0054】
上述した処理の後、制御部69は、上部カバー21を開放するとともに、リフタ22を「乾燥位置」から「待機位置」へと移動させる。
【0055】
上述したように、制御部69は、処理槽1に貯留している処理液に基板Wを浸漬させて処理液による処理を行った後、基板Wを処理液から露出させて乾燥を行う際に、チャンバ19内を排気ポンプ53及び真空時排気ポンプ15で減圧するとともに、温度検出器37による測定温度と、圧力検出器39による測定圧力と、記憶部71の飽和蒸気曲線データとに基づきベローズポンプ87の動作速度を切り換える。したがって、加熱槽77内における有機溶剤の状態に応じてベローズポンプ87を動作させることができるので、有機溶剤の状態に係わらず、有機溶剤を蒸発皿81に対して十分に供給できる。その結果、基板Wの乾燥不良を防止できる。また、ベローズポンプ87の空運転を防止できるので、ベローズポンプ87の負担を軽減できる。
【0056】
また、加熱槽77内の測定温度における蒸気圧が飽和蒸気圧以下である場合には、加熱槽77内の有機溶剤が沸騰して活発に気体となっているので、ベローズポンプ87の動作速度を遅くする。すると、ベローズポンプ87の吸引が圧力低下を招き、さらなる有機溶剤の沸騰を生じさせるという事態を防止できるだけでなく、ゆっくりであっても確実に有機溶剤を蒸発皿81に供給することができる。
【0057】
また、異なる供給速度(流量)に設定されている二つの流量制御弁137,141を切り換えてベローズポンプ87の動作速度を切り換える構成を採用しているので、比較的簡単な構成でベローズポンプ87の動作を容易に制御できる。
【0058】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0059】
(1)上述した実施例では、二つの流量制御弁を切り換えてベローズポンプ87の動作速度を切り換えているが、例えば、一つの流量制御弁を用いて、その流量を適宜調整することにより動作速度を切り換えるように構成してもよい。
【0060】
(2)上述した実施例では、供給ポンプとしてベローズポンプ87を例示したが、これに代えて回転式のポンプを採用してもよい。その場合には、モータの回転速度を切り換えればよい。
【0061】
(3)上述した実施例では、基板Wを処理液から露出させるために、処理槽1から処理液を排出しているが、例えば、処理槽1に処理液を貯留させたままリフタ22処理槽1の上方に上昇させるようにしてもよい。
【0062】
(4)上述した実施例では、蒸気発生装置29の構成において、加熱槽77が蒸発皿81と別体となっているが、加熱槽77の内部に蒸発皿81を備える構成としてもよい。
【0063】
(5)上述した実施例では、ベローズポンプ87が二つのベローズ107,109を備えているが、一つのベローズを備えた、いわゆる片肺式のベローズポンプであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例に係る基板乾燥装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】蒸気発生装置の概略構成を示す一部切り欠き縦断面図である。
【図3】ベローズポンプの構成を示す縦断面図である。
【図4】イソプロピルアルコールの飽和蒸気曲線データの一例を示す図である。
【図5】ベローズポンプの動作制御を示すフローチャートである。
【図6】乾燥処理の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
W … 基板
1 … 処理槽
15 … 真空時排気ポンプ
19 … チャンバ
22 … リフタ
29 … 蒸気発生装置
37 … 温度検出器
39 … 圧力検出器
53 … 排気ポンプ
61 … QDR弁
69 … 制御部
71 … 記憶部
73 … 表示部
75 … 蒸気発生空間
77 … 加熱槽
79 … 蒸気化促進室
81 … 蒸発皿
87 … ベローズポンプ
137 … 流量制御弁
F1 … 第1の流量
141 … 流量制御弁
F2 … 第2の流量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を乾燥させるための基板乾燥装置において、
処理液を貯留する処理槽と、
前記処理槽を囲うチャンバと、
前記チャンバ内を減圧するための減圧ポンプと、
前記チャンバ内に連通接続され、有機溶剤を貯留するとともに有機溶剤を加熱する加熱槽と、前記チャンバ内に連通接続され、有機溶剤を供給される蒸発皿と、前記加熱槽内の有機溶剤を前記蒸発皿に供給するための供給ポンプと、前記加熱槽内の圧力を測定する圧力測定手段と、前記加熱槽内の温度を測定する温度測定手段とを備え、前記チャンバ内に有機溶剤の蒸気を供給する溶剤蒸気供給手段と、
有機溶剤の飽和蒸気曲線データを記憶している記憶手段と、
前記処理槽に貯留している処理液に基板を浸漬させて処理液による処理を行った後、基板を処理液から露出させて乾燥を行う際には、前記チャンバ内を前記減圧ポンプで減圧するとともに、前記温度測定手段による測定温度と、前記圧力測定手段による測定圧力と、前記飽和蒸気曲線データとに基づき前記供給ポンプの動作速度を切り換える制御手段と、
を有することを特徴とする基板乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板乾燥装置において、
前記制御手段は、測定温度における蒸気圧が飽和蒸気圧以下である場合には、測定温度における蒸気圧が飽和蒸気圧よりも高い場合よりも前記供給ポンプの動作速度を遅くすることを特徴とする基板乾燥装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板乾燥装置において、
前記供給ポンプは、ベローズポンプで構成され、
前記ベローズポンプに動作用の圧縮空気を供給するものであって、それぞれ圧縮空気の供給速度が異なる複数個の供給弁を備え、
前記制御手段は、前記複数個の供給弁を切り換えて前記ベローズポンプの動作速度を切り換えることを特徴とする基板乾燥装置。
【請求項4】
基板を乾燥させるための基板乾燥方法において、
チャンバ内の処理槽に貯留している処理液に基板を浸漬させて、基板に対して処理液による処理を行う過程と、基板を処理液から露出させて乾燥させる過程とを実施する際に、
有機溶剤を貯留する加熱槽から蒸発皿に有機溶剤を供給ポンプで供給するとともに、チャンバ及びチャンバに連通接続された加熱槽及び蒸発皿を減圧する過程と、
加熱槽内の測定温度と、加熱槽内の測定圧力と、有機溶剤の飽和蒸気曲線データとに基づき供給ポンプの動作速度を切り換える過程と、
を実施することを特徴とする基板乾燥方法。
【請求項5】
請求項4に記載の基板乾燥方法において、
前記供給ポンプの動作速度を切り換える過程では、測定温度における蒸気圧が飽和蒸気圧以下である場合には、測定温度における蒸気圧が飽和蒸気圧よりも高い場合よりも前記供給ポンプの動作速度を遅くすることを特徴とする基板乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−86981(P2010−86981A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250851(P2008−250851)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】