説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】エッチング処理中におけるエッチングレートの低下を抑制することにより、エッチング処理に要する時間を短縮することができる基板処理装置および基板処理方法を提供すること。
【解決手段】ふっ硝酸処理開始後、処理時間の経過に従って、ベース昇降用モータ20が制御されて、吸着ベース10が上昇される。この吸着ベース10の上昇は、ウエハWの上面とリング上面28との間の間隔が一定範囲内に保たれるように行われる。ふっ硝酸処理の結果ウエハWは薄くなるが、吸着ベース10が上昇されるために、ウエハWの上面に形成されるふっ硝酸の液膜の厚みをほぼ一定に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の上面に対し、エッチング液を用いたエッチング処理を施すための基板処理装置および基板処理方法に関する。エッチング処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などの基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)に対して処理液を用いた液処理が行われる。このような液処理の一つは、エッチング液をウエハの主面に供給して行うエッチング処理である。ここでいうエッチング処理には、ウエハの主面(ウエハ自体またはウエハ上に形成された薄膜)にパターンを形成するためのエッチング処理のほか、エッチング作用を利用してウエハの主面の異物を除去する洗浄処理が含まれる。
【0003】
ウエハの主面に対し処理液による処理を施すための基板処理装置には、複数枚のウエハに対して一括して処理を施すバッチ式のものと、ウエハを一枚ずつ処理する枚葉式のものとがある。枚葉式の基板処理装置は、たとえば、ウエハをほぼ水平姿勢に保持しつつ鉛直軸線周りに回転させる基板保持部材と、この基板保持部材に保持されたウエハの主面に向けて処理液を供給する処理液ノズルと、この処理液ノズルをウエハ上で移動させるノズル移動機構とを備えている。
【0004】
エッチング処理では、ウエハはエッチング処理の対象になる面を上向きにして、基板保持部材に保持される。そして、基板保持部材に保持されたウエハの上面に処理液ノズルからエッチング液が吐出されるとともに、ノズル移動機構によって処理液ノズルが移動される。処理液ノズルの移動にともなって、ウエハの上面におけるエッチング液の着液位置が移動する。また、基板保持手段に保持されたウエハは回転される。これにより、ウエハの上面の全域にエッチング液を行き渡らせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−88381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウエハに対するエッチング処理では、ウエハの上面に均一厚みのエッチング液の液膜が形成されることが望ましい。また、このエッチング液の液膜は、予め定められる厚みであることが望ましい。
このため、本願発明者は、スピンチャックの側方に円環状の規制部材を設け、この規制部材によってウエハの上面にエッチング液の液膜を保持することを検討している。具体的には、規制部材はウエハの側方を取り囲む円環状に形成されており、その内周面には、ウエハの周端面に対向する円筒状の規制面が形成されている。この規制面の上端の高さはウエハの上面よりも少し高く設定されている。このため、ウエハの上面に供給されたエッチング液は、規制面によってウエハの上面からのエッチング液の流出が規制されて、ウエハの上面上に留まる。これにより、ウエハの上面にエッチング液の液膜が保持される。このエッチング液の液膜の厚みは、規制面の上端の高さとウエハの上面との間の間隔によって規定される。
【0007】
ところが、エッチングの進行に伴ってウエハの厚みが変化し、ウエハの上面が下がる。ウエハの上面が下がると、ウエハの上面と規制面の上端との間の間隔が拡大し、ウエハの上面に形成されるエッチング液の液膜が厚くなる(別の言い方をすれば、規制面の内壁面とウエハの上面とで形成される凹部に貯留される液溜めの深さが深くなる)。エッチング液の液膜が厚くなると、ウエハはエッチング液の液膜から熱を奪われ、その結果、ウエハ上面に接しているエッチング液の温度も低下するため、エッチングの処理速度(以下、「エッチングレート」という)が低下する。すなわち、エッチング処理の進行に伴って、エッチングレートが低下していく。このため、エッチング処理に要する時間が長くなり、スループットが低下するおそれがある。
【0008】
そこで、この発明の目的は、エッチング処理中におけるエッチングレートの低下を抑制することにより、エッチング処理に要する時間を短縮することができることができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)の下面を支持して基板を水平姿勢に保持する基板保持部材(10;205;309)と、前記基板保持部材に保持された基板の上面にエッチング液を供給するエッチング液供給手段(4)と、前記基板保持部材に保持された基板の周端面と対向し、基板の上面からのエッチング液の流出を規制するための筒状の規制面(27;221;317)を有する規制部材(6;201;311)と、前記基板保持部材に保持された基板の下面と前記規制部材とを相対的に昇降させる昇降機構(20;230;322)と、前記規制部材の前記規制面の上端に対して前記基板保持部材が相対的に上昇するように前記昇降機構を制御する昇降制御手段(61;261;361)とを含む、基板処理装置(1;200;300,400)である。
【0010】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この発明によれば、基板の上面にエッチング液の液膜が形成される。この液膜の厚みは、規制面の上端と基板の上面との間の間隔によって規定される。また、基板保持部材が規制面の上端に対して相対的に上昇させられる。
【0011】
したがって、エッチングの進行に伴って基板の厚みが減少しても、基板保持部材に保持される基板の上面と規制面の上端との間の間隔を、小さく保つことできる。そのため、基板の上面に形成されるエッチング液の液膜の厚み(液溜めの深さ)を小さく保つことで、エッチング液の温度低下を抑制できるため、エッチングレートの低下を抑制できる。これにより、エッチング処理に要する時間を短縮することができ、スループットの向上を図ることができる。
【0012】
また、請求項2記載の発明のように、前記昇降制御手段が、前記基板保持部材に保持される基板の上面からのエッチングの進行に伴って、前記規制部材の前記規制面の上端に対して前記基板保持部材が相対的に上昇するように、前記昇降機構を制御してもよい。
この場合、エッチングの進行に伴って、基板保持部材が規制面の上端に対して相対的に上昇させられる。したがって、エッチングの進行に伴って基板の厚みが減少しても、基板保持部材に保持される基板の上面と規制面の上端との間の間隔を、エッチングの進行によらずに一定範囲内に保つことができる。これにより、処理の全期間を通じ、ほぼ一定厚みのエッチング液の液膜を用いた処理を、基板の上面に施すことができる。その結果、エッチングレートの変動を抑制できるので、エッチング量を正確に制御することができる。 請求項3記載の発明は、前記昇降機構が、前記基板保持部材を昇降させる基板保持部材昇降機構(20)を備える、請求項1または2記載の基板処理装置である。
【0013】
この発明によれば、基板保持部材昇降機構により基板保持部材が昇降される。このため、エッチングの進行に伴って基板保持部材が上昇されることにより、基板の上面と規制面の上端との間の間隔を小さく保つことができる。これにより、基板の上面に形成されるエッチング液の液膜の厚みを小さく保つことができる。
請求項4記載の発明は、前記昇降機構が、前記規制部材を昇降させる規制部材昇降機構(230)を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0014】
この発明によれば、規制部材昇降機構により規制部材が昇降される。このため、エッチングの進行に伴って規制部材が下降されることにより、基板の上面と規制面の上端との間の間隔を小さく保つことができる。これにより、基板の上面に形成されるエッチング液の液膜の厚みを小さく保つことができる。
請求項5記載の発明は、前記基板保持部材が、ベース(303)と、前記ベース上に設けられ、基板の下面を支持する収縮可能な支持部材(325)と、前記ベースと基板の下面との間の空間を減圧する減圧手段(320,323)とを含み、前記昇降機構が、前記減圧手段による減圧量を調整する減圧調整手段(322)を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0015】
この発明によれば、基板の下面を支持する支持部材が収縮可能である。このため、ベースと基板との間の空間における減圧量が変化すると、支持部材の収縮量が変化し、基板とベースとの間隔が変化する。したがって、基板とベースとの間の空間の減圧量が調節されることにより、基板の上面とベースとの間の間隔が調節される。
そして、エッチングの進行に伴ってベースと基板との間の空間における減圧量が小さく(圧が高く)されることにより、基板の上面と規制面の上端との間の間隔を小さく保つことができる。これにより、基板の上面に形成されるエッチング液の液膜の厚みを小さく保つことができる。
【0016】
請求項6記載の発明のように、前記基板の上面に形成されるエッチング液の液膜の厚みを計測するための液膜厚検出手段(401)をさらに含み、前記昇降制御手段が、前記液膜厚検出手段によって検出されたエッチング液の液膜の厚みに基づいて、前記昇降機構を制御するものであってもよい。
この発明によれば、基板の上面に形成されるエッチング液の液膜の厚みが液膜厚検出手段によって検出される。そして、その液膜の厚みに基づいて、基板の上面と規制面の上端との間の間隔が調整される。これにより、基板の上面に形成されるエッチング液の液膜の厚みを、より正確に制御することができる。
【0017】
この発明が、請求項3または5記載の発明と組み合わされるときは、前記液膜厚検出手段が、前記基板保持部材に保持される基板の上面の高さを検出するための基板上面高さ検出手段(401)を含んでいてもよい。規制部材の上端の高さがほとんど変化しないとすれば、基板の上面高さを検出することにより、基板の上面に形成されるエッチング液の液膜を検出することができる。
【0018】
請求項7記載の発明は、前記基板保持部材に保持される基板が、シリコン基板(W)を含み、前記エッチング液供給手段が、ふっ酸硝酸混合液を供給するふっ酸硝酸混合液供給手段(4)を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
ふっ酸硝酸混合液が、シリコン基板の上面に供給されることにより、上面の表層部のシリコン材料がエッチング除去される。このため、エッチングの進行に伴い、基板の上面が下がる。基板の上面が下がると、基板の上面と規制面の上端との間の間隔が拡大し、基板の上面に形成されるふっ酸硝酸混合液の液膜が厚くなるおそれがある。
【0019】
シリコン基板とふっ酸硝酸混合液とのエッチング反応は発熱反応であり、シリコン基板の上面が高温になる。その一方で、シリコン基板の上面に形成されるふっ酸硝酸混合液の液膜が厚いと、ウエハは液膜から熱を奪われ、シリコン基板の上面温度が低下してエッチングレートが低下するおそれがある。このため、エッチング処理に要する時間が長くなり、スループットが低下するおそれがある。
【0020】
これに対し、請求項7の発明によれば、基板の上面にエッチング液の液膜が形成される。この液膜の厚みは、規制面の上端と基板の上面との間の間隔によって規定される。エッチングの進行に伴って、基板保持部材が規制面の上端に対して相対的に上昇させられる。したがって、基板保持部材に保持される基板の上面と規制面の上端との間の間隔を小さく保つことができる。このため、基板の上面に形成されるふっ酸硝酸混合液の液膜の厚みを小さく保つことができる。これにより、ふっ酸硝酸混合液の温度低下を抑制し、エッチングレートの低下を抑制することができる。
【0021】
請求項8記載の発明は、基板(W)の下面を支持する基板保持部材(10;205;309)で基板を保持する工程と、基板の上面からの液の流出を規制するための筒状の規制面(27;221;317)を有する規制部材(6;201;311)を、前記規制面が前記基板保持部材に保持された基板の周端面に対向するように配置する工程と、前記基板保持部材に保持された基板の上面にエッチング液を供給するエッチング液供給工程(S2)と、前記エッチング液供給工程と並行して、前記規制面の上端に対して前記基板保持部材を相対的に上昇させる工程とを含む、基板処理方法である。
【0022】
この発明によれば、請求項1の発明に関連して述べた作用効果と同様な作用効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す基板処理装置の構成を模式的に示す平面図である。
【図3】図1に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す基板処理装置における処理の一例を示す工程図である。
【図5】ふっ硝酸処理の処理時間と吸着ベースの上昇量との関係を示すグラフである。
【図6】図4の処理に含まれるふっ硝酸処理を説明するための断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の構成を示す図解的な断面図である。
【図8】図7に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図9】図7に示す基板処理装置におけるふっ硝酸処理を説明するための断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る基板処理装置の構成を示す図解的な断面図である。
【図11】図10に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図12】図10に示す基板処理装置におけるふっ硝酸処理を説明するための断面図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係る基板処理装置の構成を示す図解的な断面図である。
【図14】図13に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図15】ふっ硝酸処理時に実行される上面高さ調節処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る基板処理装置1の構成を模式的に示す断面図である。図2は、基板処理装置1の構成を模式的に示す平面図である。
基板処理装置1は、たとえばシリコンウエハからなる円形のウエハWにおけるデバイス形成領域側の表面とは反対側の裏面(上面)に対して、ウエハWのシンニング(薄化)のためのエッチング処理を施すための枚葉式の装置である。この実施形態では、エッチング液として、たとえばふっ酸硝酸混合液(以下、「ふっ硝酸」という。)が用いられる。
【0025】
この基板処理装置1は、隔壁(図示せず)により区画された処理室2内に、ウエハWの下面を支持して、ウエハWを水平姿勢に保持しつつウエハWの中心を通る鉛直軸線まわりに回転させるためのスピンチャック3と、スピンチャック3に保持されたウエハWの上面にふっ硝酸を供給するためのスリットノズル(ふっ酸硝酸混合液供給手段)4と、スピンチャック3に保持されたウエハWの上面に向けてDIW(deionized water:脱イオン化された純水)を供給するためのDIWノズル5と、スピンチャック3に保持されたウエハWの上面に処理液の液膜を形成するための外周リング部材(規制部材)6とを備えている。
【0026】
スピンチャック3は真空吸着式チャックである。このスピンチャック3は、側面の隔壁に固定的に配置されたスピンモータ7と、鉛直方向に延び、スピンモータ7の回転駆動力が入力されるスピン軸8と、スピン軸8と同軸に、かつ一体回転可能に連結された昇降軸9と、昇降軸9の上端に取り付けられて、ウエハWをほぼ水平な姿勢でその下面(表面)を吸着して保持する基板保持部材としての吸着ベース10とを備えている。この実施形態では、スピン軸8はスピンモータ7に固定されている。また、昇降軸9がスピン軸8に対して相対的に昇降可能に設けられている。そのため、吸着ベース10が昇降可能に設けられている。
【0027】
なお、この実施形態では、ウエハWとして、ガラス基板Sが一体化されたものが用いられる。ガラス基板SがウエハWの表面(デバイス形成面)に貼り合わせられることにより、ウエハWが補強される。
スピン軸8は中空の円筒状に形成されており、その上下方向の途中部には、フランジ部材11がこのスピン軸8と同軸に固定されている。フランジ部材11は有底のものであり、その底壁12の中央部には底壁12の上下面を貫通する貫通孔13が形成されている。フランジ部材11の開口部が上方に向いた状態(すなわち、フランジ部材11の円筒が鉛直方向に延びた状態)で、貫通孔13にスピン軸8が挿通されている。
【0028】
昇降軸9は、円筒状に形成されており、その下端部がフランジ部材11に内嵌されている。昇降軸9内には、スピン軸8が内挿されている。昇降軸9の内周面とスピン軸8の外周面との間には所定の間隔が隔てられている。昇降軸9の外周面とフランジ部材11の内周面とは、昇降軸9のフランジ部材11に対する鉛直方向の相対変位は許容されるが、昇降軸9のフランジ部材11に対する回転方向の相対変位は阻止されるようにスプライン結合している。具体的には、昇降軸9の外周面およびフランジ部材11の内周面の少なくとも一方には、上下方向に延びるスプライン溝が形成されており、昇降軸9の外周面とフランジ部材11の内周面とがスプライン結合している。したがって、昇降軸9はフランジ部材11の回転に伴って一体回転するが、昇降軸9はフランジ部材11に対して昇降自在である。
【0029】
スピン軸8の回転に伴って、フランジ部材11が回転し、昇降軸9が回転する。したがって、スピンモータ7の回転駆動により、スピン軸8と昇降軸9とを同軸まわりに一体的に回転させることができる。
昇降軸9には、水平に延びる円板状の昇降板15が外嵌固定されている。昇降板15には、その外周部に軸受16の内輪が固定されている。軸受16の外輪には、ボールねじ機構17のボールナット22が固定されている。ボールねじ機構17のねじ軸18は、鉛直方向に沿って配置されている。このねじ軸18は、後述するカバー部材33などの周辺部材に固定的に配置されている。すなわち、ボールねじ機構17によって昇降軸9が保持されている。
【0030】
ねじ軸18の下端部にはギア19が固定されている。このギア19は、ベース昇降用モータ(基板保持部材昇降機構)20の出力軸に固定された駆動ギア21と噛合している。この構成により、ベース昇降用モータ20を回転駆動させることにより、ボールナット22を昇降させることができる。昇降軸9がフランジ部材11に対して昇降自在に設けられているので、ボールナット22を昇降させることにより、ボールナット22に軸受16および昇降板15を介して固定された昇降軸9を昇降させ、吸着ベース10を昇降させることができる。ボールナット22と昇降板15との間に軸受16が介装されているので、ともに回転状態にある昇降軸9および吸着ベース10を昇降させることができる。このように、ベース昇降用モータ20、ボールねじ機構17および軸受16などによって、吸着ベース10を昇降させる吸着ベース昇降機構14が構成されている。
【0031】
外周リング部材6は、吸着ベース10の下方を水平に延びる略円盤状の底壁部25と、底壁部25の径方向外方に設けられて、吸着ベース10および吸着ベース10に支持されたウエハWの外周を取り囲む円筒状のリング部26とを一体的に備えている。外周リング部材6は、ふっ硝酸に対する耐薬液性を有する樹脂材料、たとえば、塩化ビニル(polyvinyl chloride)によって形成されている。
【0032】
底壁部25は吸着ベース10とほぼ同径を有している。リング部26は、吸着ベース10に保持されるウエハWの周端面と対向する鉛直な円筒面(規制面)27と、円筒面27の上端に連続し、水平の円環面からなるリング上面(規制面の上端)28とを有している。リング上面28の高さが吸着ベース10に保持されるウエハWの上面よりも高くなるように、吸着ベース10と外周リング部材6との位置関係を設定することにより、円筒面27とウエハWの上面とによって構成される溝部分にふっ硝酸を溜めることができる。このとき、円筒面27は、ウエハWの上面からのふっ硝酸の流出を規制する。これにより、ウエハWの上面にふっ硝酸の液膜が形成される。そして、リング上面28とウエハWの上面との間の間隔によって、ウエハWの上面に形成されるふっ硝酸の液膜の厚みが規定される(図6(a)および図6(b)参照)。
【0033】
外周リング部材6の底壁部25は、複数本(図1では2本のみ図示)の支持ピン30によって支持される。各支持ピン30の上端は底壁部25の下面に固定されている。各支持ピン30は、昇降板15に上下方向に貫通して形成された挿通孔31内を挿通して、その下端が、フランジ部材11の上面に固定された円環状の固定板32の上面に固定されている。すなわち、外周リング部材6は、フランジ部材11に固定的に保持されている。このため、スピン軸8の回転に伴って、外周リング部材6は、スピン軸8と同軸に一体回転する。また、ベース昇降用モータ20の回転駆動によっては、外周リング部材6は昇降しない。これにより、吸着ベース10を外周リング部材6に対して相対的に昇降させることができる。
【0034】
スピン軸8、昇降軸9、スピンモータ7および吸着ベース昇降機構14の周囲はカバー部材33によって包囲されている。カバー部材33は、スピン軸8、昇降軸9、スピンモータ7および吸着ベース昇降機構14の側方を取り囲む円筒状の側壁部34と、外周リング部材6の下方に、当該下面に沿って延びる円環状の上壁部35とを備えている。
なお、外周リング部材6と固定板32とを連結する構成は、複数本の支持ピン30に限られず、たとえば、円筒形状の支持部材を採用することもできる。
【0035】
吸着ベース10の中央部には、スピン軸8の内部と連通する開口(図示しない)が形成されている。この開口およびスピン軸8の上端部には、ウエハWを昇降するためのリフトプッシャ37が収容されている。リフトプッシャ37は、ほぼ円筒形の外形を有する本体と、その本体の上端部に設けられ、本体部より大径の円筒部とを備えている。円筒部の上面には、所定の一方向(図1に示す紙面と直交する方向)に延びる長尺の平坦な載置面と、この載置面よりも一段低い低面とを有している。載置面は平坦面からなり、ウエハWの下面(ガラス基板Sの下面)と接してウエハWを持ち上げる。また、円筒部の上面には吸引口が複数個形成されている。
【0036】
リフトプッシャ37には、リフトプッシャ37を昇降させるためのリフトプッシャ昇降駆動機構38が結合されている。このリフトプッシャ昇降駆動機構38が駆動されることにより、リフトプッシャ37を、載置面が変形防止プレート39(後述する)の上面と面一になる退避位置(図1に実線で示す位置)と、その載置面がリング部26の上面(リング上面28)よりも上方に突出する突出位置(図1に二点鎖線で示す位置)との間で昇降させることができるようになっている。
【0037】
リフトプッシャ38内には、逆支弁が設けられているときは、リフトプッシャ昇降駆動機構38として、リフトプッシャ37にエア(ガス)を供給するエア供給手段を採用することができる。この場合、リフトプッシャ37内にエアが供給されることにより、リフトプッシャ37内が加圧されて、リフトプッシャ37が突出位置まで上昇される。また、エアの供給中が停止されると、リフトプッシャ37は、後述する真空発生装置44によって吸引されて、リフトプッシャ37内が減圧されて、リフトプッシャ37が退避位置まで下降される。また、リフトプッシャ昇降機構38として、ボールねじ機構やモータなどその他の機構を用いることもできる。
【0038】
吸着ベース10の上面の周縁領域には、リング状のシール部材40が、底壁部25の周縁に沿って配置されている。このシール部材40によって、ウエハWの下面が支持される。シール部材40としては、たとえば面でシールする面パッキン方式のものが採用されるが、リップ部でシールするリップパッキン方式のものが採用されていてもよい。
吸着ベース10の上面上には、ウエハWの変形を防止するための変形防止プレート39が配置されている。変形防止プレート39は、略円盤状に形成されており、吸着ベース10の上方の領域のうち、周縁領域およびリフトプッシャ37が配置される領域を除く領域に配置されている。変形防止プレート39の上面には、吸着ベース10の中心を中心とする多重(たとえば15重)の円環溝41(図6(a)および図6(b)参照)が形成されている。変形防止プレート39の上面高さは、ウエハWを保持したときのシール部材40の上端よりも若干低くなるように設定されている。
【0039】
前述のように、リフトプッシャ37の円筒部の低面上には、ウエハWの下面と吸着ベース10との間を吸引するための吸引口がたとえば複数開口している。各吸引口には、リフトプッシャ37の内部を通して、スピン軸8内を挿通する吸引管43(スピン軸8内を挿通する状態は図示しない)の先端が接続されている。吸引管43の基端は真空発生装置44に接続されている。吸引管43の途中部には、吸引管43を開閉するための吸引バルブ45が介装されている。
【0040】
真空発生装置44の駆動状態で、吸引バルブ45が開かれると、変形防止プレート39の各円環溝41の内部が吸引口によって吸引される。これにより、ウエハWが吸着ベース10に吸着保持される。このとき、変形防止プレート39が設けられているために、吸引によるウエハWの中央部の変形を防止することができる。
スリットノズル4は、所定の水平方向に沿う直方体状の外形を有した本体50を備えている。本体50の下面には、水平方向に沿って直線状に開口するスリット吐出口51が形成されている。スリット吐出口51の長さ(長手方向の大きさ)は、ウエハWの直径よりも大きい。スリット吐出口51は、本体50の長手方向に沿う帯状にふっ硝酸を吐出する。
【0041】
本体50の一方側側面(図1に示す左側)には、長方形状の可撓性の第1シート52が鉛直姿勢に取り付けられている。また、本体50の反対側側面(図1に示す右側)には、長方形状の可撓性の第2シート53が鉛直姿勢に取り付けられている。第1および第2シート52,53のシート幅(ウエハWの法線方向の長さ)は、その先端縁が吸着ベース10に支持されるウエハWの上面に当接して、第1および第2シート52,53が撓む程度の幅に設定されている。
【0042】
スリットノズル4は、ほぼ水平に延びるノズルアーム54に取り付けられている。このノズルアーム54は、スピンチャック3の側方でほぼ鉛直に延びたノズルアーム支持軸55に支持されている。ノズルアーム支持軸55には、ノズルアーム揺動駆動機構56が結合されており、このノズルアーム揺動駆動機構56の駆動力によって、ノズルアーム支持軸55を回動させて、ノズルアーム54を揺動させることができるようになっている。
【0043】
スリットノズル4には、スリット吐出口51に連通するふっ硝酸供給管57が接続されている。ふっ硝酸供給管57には、ふっ硝酸供給源からのふっ硝酸が供給されるようになっており、その途中部には、スリットノズル4へのふっ硝酸の供給および供給停止を切り換えるためのふっ硝酸バルブ58が介装されている。
DIWノズル5は、たとえば連続流の状態でDIWを吐出するストレートノズルであり、スピンチャック3の上方で、その吐出口をウエハWの中央部に向けて配置されている。このDIWノズル5には、DIW供給管59が接続されており、DIW供給源からのDIWがDIW供給管59を通して供給されるようになっている。DIW供給管59の途中部には、DIWノズル5へのDIWの供給および供給停止を切り換えるためのDIWバルブ60が介装されている。
【0044】
ノズルアーム揺動駆動機構56の駆動により、ノズルアーム54が揺動されて、スリットノズル4が、スピンチャック3の上方領域外にある第1スキャン位置P1(図2にて実線で図示)と、この第1スキャン位置P1とウエハWの回転中心を中心として90°離間し、スピンチャック3の上方領域外にある第2スキャン位置P2(図2にて二点鎖線で図示)との間を、水平方向に沿って往復移動する。
【0045】
たとえば、スリットノズル4が第1スキャン位置P1から第2スキャン位置P2に向けて移動する際には、第1シート52が、ウエハWの上面におけるふっ硝酸の着液位置よりも進行方向の前方側の領域に接触しつつ移動する。これにより、ウエハWの上面から失活したふっ硝酸を掻き取り、排除することができる。また、第2シート53が、ウエハWの上面におけるふっ硝酸の着液位置よりも進行方向の後方側の領域に接触しつつ移動する。これにより、ウエハWの上面に供給されたふっ硝酸を均すことができる。
【0046】
また、スリットノズル4が第2スキャン位置P2から第1スキャン位置P1に向けて戻る際には、第2シート53が、ウエハWの上面におけるふっ硝酸の着液位置よりも進行方向の前方側の領域に接触しつつ移動する。これにより、ウエハWの上面から失活したふっ硝酸を掻き取り、排除することができる。また、第1シート52が、ウエハWの上面におけるふっ硝酸の着液位置よりも進行方向の後方側の領域に接触しつつ移動する。これにより、ウエハWの上面に供給されたふっ硝酸を均すことができる。
【0047】
図3は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。基板処理装置1は、たとえば、マイクロコンピュータで構成される制御装置61を備えている。制御装置61は、CPU(図示しない)および記憶部(図示しない)を含む構成である。制御装置61には、計時のためのタイマ(図示しない)が接続されている。
制御装置61には、スピンモータ7、ノズルアーム揺動駆動機構56、真空発生装置44、ふっ硝酸バルブ58、DIWバルブ60、吸引バルブ45、ベース昇降用モータ20およびリフトプッシャ昇降駆動機構38が制御対象として接続されている。
【0048】
また、制御装置61には、公知の構成の基板厚計測装置80が接続されている。基板厚計測装置80は、処理室2の外方に配置されており、処理室2内に搬入される前のウエハWの厚みを計測するものである。この基板厚計測装置80では、たとえば、非接触のレーザセンサにより検出されたウエハWの上下面の表面高さに基づいて、ウエハWの厚みが算出されるようになっている。基板厚計測装置80からの出力信号は、制御装置61に入力されるようになっている。
【0049】
制御装置61は、メモリに保持されたレシピに従って処理の各工程が実行されるように、制御対象の各部の動作を制御する。
図4は、基板処理装置1における処理の一例を示す工程図である。図5は、ふっ硝酸処理の処理時間と吸着ベース10の上昇量との関係を示すグラフである。図6は、図4の処理に含まれるふっ硝酸処理を説明するための断面図である。
【0050】
また、ウエハWの処理に先立って、ウエハWを補強するための補強基板としてのガラス基板Sが、接着剤を介して、未処理のウエハWの表面(デバイス形成面)に貼り合わせられる。ガラス基板Sは、ウエハWと同径の円板状をなしている。
このウエハWとガラス基板Sとの貼り合わせは、作業者の手作業によって行われ、その後、ウエハWおよびガラス基板Sに紫外線が照射されることにより、ウエハWとガラス基板Sとの間に介在する接着剤が硬化して、ウエハWとガラス基板Sとが強固に接合される。特許請求の範囲における「基板」という語は、ウエハWと、ウエハWに接合されたガラス基板Sとを含めたものを指す趣旨である。
【0051】
また、ウエハWの処理に先立って、処理室2の外方に配置された基板厚計測装置80によってウエハWの厚み(ウエハWとガラス基板との合計厚み)が計測される。そして、ウエハWの厚みの計測終了後のウエハWが処理室2に搬入される。このとき、基板厚計測装置80からの出力信号は、制御装置61に入力される。なお、このとき計測されるウエハWの厚みは、ガラス基板Sと一体化された後のウエハの厚みであるが、ウエハWだけの厚みを計測するようにしてもよい。
【0052】
また、ウエハWの処理に先立って、スリットノズル4は、スピンチャック3の側方の退避位置に退避させられている。また、リフトプッシャ37は、突出位置(図1で二点鎖線で示す位置)に上昇させられている。さらに、また、ふっ硝酸バルブ58およびDIWバルブ60は、いずれも閉状態に制御されている。
ウエハWの処理に際して、未処理のウエハWが、搬送ロボット(図示しない)によって処理室2内に搬入される。具体的には、突出位置にあるリフトプッシャ37上にウエハWが載置される。その後、制御装置61は、リフトプッシャ昇降駆動機構38を駆動して、リフトプッシャ37を退避位置まで下降させる。これにより、吸着ベース10にウエハWが受け渡される(ステップS1)。
【0053】
ウエハWが吸着ベース10へ受け渡された後、制御装置61は、真空発生装置44を作動させる。これにより、ウエハWを吸着ベース10に吸着保持させることができる(ステップS2)。
この状態で、制御装置61は、ベース昇降用モータ20を制御して、吸着ベース10の高さを調節する。吸着ベース10の高さ位置の調節は、基板厚計測装置80により計測されたウエハWの厚みに基づいて行われる。この吸着ベース10の高さ位置の調節によって、処理室2に搬入されるウエハWの個体差によらずに、ウエハWの上面とリング上面28との間の間隔を予め定める間隔に設定することができる。
【0054】
ウエハWの吸着保持後、制御装置61は、スピンモータ7を駆動して、吸着ベース10および外周リング部材6を低回転速度(たとえば5rpm)で等速回転させる。また、制御装置61は、ノズルアーム揺動駆動機構56を駆動して、スリットノズル4をウエハWの上方へと導く。
スリットノズル4がウエハWの上方に到達すると、制御装置61は、ふっ硝酸バルブ58を開き、スリット吐出口51から、帯状のプロファイルでふっ硝酸を吐出する(S2:ふっ硝酸処理)。また、制御装置61は、ノズルアーム揺動駆動機構56を駆動して、スリットノズル4を、外周リング部材6の上方領域外にある第1スキャン位置P1(図2にて実線で図示)と、スピンチャック3の上方領域外にある第2スキャン位置P2(図2にて二点鎖線で図示)との間を、往復揺動(往復スキャン)させる。
【0055】
かかるふっ硝酸処理(ステップS2)では、ウエハWの裏面(上面)の表層部のシリコン材料がエッチング除去されるので、処理の進行に伴ってウエハWの上面が下がる。ウエハWの上面が下降すると、ウエハWの上面とリング上面28の上端との間の間隔が拡大し、ウエハWの上面に形成されるふっ硝酸の液膜が厚くなるおそれがある。
ふっ硝酸処理開始後、制御装置61は、処理時間の経過に従って、ベース昇降用モータ20を制御して、吸着ベース10を上昇させる。この吸着ベース10の上昇は、ウエハWの上面とリング上面28との間の間隔が一定範囲内に保たれるように行われる。
【0056】
具体的には、制御装置61のメモリに保持されているレシピには、図5に実線で示すグラフのようなふっ硝酸処理の処理時間と吸着ベース10の上昇量との関係が規定されている。図5では、処理時間の経過に伴って、吸着ベース10が段階的に上昇するように規定されている。図5に示すグラフでは、たとえば、吸着ベース10が、所定量(たとえば100μm)ずつ上昇するように規定されている。処理の経過時間と吸着ベース10の上昇量との関係は、ウエハWの上面とリング上面28との間の間隔が常に一定範囲内(700μm〜800μm)に保たれるように実験値などに基づいて定められている。
【0057】
制御装置61は、タイマによる計時時間とメモリに保持されているレシピとに基づいて、吸着ベース10を上昇させる。図6(a)は、ふっ硝酸処理の開始直後の状態を表し、図6(b)はふっ硝酸処理の終了直前の状態を表している。図6(a)および図6(b)に示すように、ふっ硝酸処理の結果ウエハWは薄くなるが、吸着ベース10が上昇されるために、ウエハWの上面に形成されるふっ硝酸の液膜の厚みをほぼ一定に保つことができる。
【0058】
また、図5に二点鎖線で示すように、処理時間の経過に伴って、吸着ベース10を断続的に上昇させる構成とすることもできる。
所定の処理時間(たとえば30分間)の経過後、制御装置61は、ふっ硝酸バルブ58を閉じ、スリットノズル4からのふっ硝酸の吐出を停止する。また、制御装置61は、ノズルアーム揺動駆動機構56を駆動して、スリットノズル4をスピンチャック3の側方の退避位置に退避させる。
【0059】
次に、制御装置61は、スピンモータ7を制御して、吸着ベース10および外周リング部材6の回転速度を所定のリンス処理回転速度(100rpm程度)に加速するとともに、DIWバルブ60を開いて、DIWノズル5から、回転状態のウエハWの上面の回転中心に向けてDIWを供給する。これにより、ウエハWの裏面上のふっ硝酸が洗い流されて、ウエハWにリンス処理が施される(ステップS3)。
【0060】
このリンス処理を所定時間(たとえば60秒間)行った後に、制御装置61は、DIWバルブ60を閉じてリンス処理を終了させる。
制御装置61は、さらにスピンモータ7を制御して、吸着ベース10および外周リング部材6の回転速度を所定の乾燥回転速度(2500rpm程度)に加速する。これによって、ウエハWの上面のDIWが遠心力によって振り切られ、ウエハWがスピンドライ処理される(ステップS4)。
【0061】
スピンドライ処理を所定時間(たとえば30秒間)行った後、制御装置61は、スピンモータ7を制御して、吸着ベース10および外周リング部材6の回転を停止させる。その後、制御装置61が真空発生装置44の駆動を停止させて、ウエハWと吸着ベース10との空間の減圧状態が解除されて、ウエハWの吸着保持が解除される。
次いで、制御装置61は、リフトプッシャ昇降駆動機構38を駆動して、リフトプッシャ37を突出位置まで上昇させる。これにより、処理済みのウエハWが、外周リング部材6から上方に離脱される。
【0062】
その後、処理済みのウエハWが搬送ロボットによって処理室2から搬出される(ステップS5)。
以上によりこの実施形態によれば、ふっ硝酸処理では、エッチングの進行に伴って、吸着ベース10が上昇させられる。したがって、ウエハWの上面とリング上面28との間の間隔を、エッチングの進行によらずに一定範囲内に保つことできる。このため、ウエハWの上面に形成されるふっ硝酸の液膜の厚みを、ふっ硝酸処理の全期間を通じて一定範囲内に保つことができる。これにより、ふっ硝酸処理の全期間を通じて均一なレートの処理をウエハWに施すことができる。その結果、エッチングレートの変動を抑制できるので、エッチング量を正確に制御することができる。
【0063】
また、ふっ硝酸処理中におけるウエハWの上面のふっ硝酸の液膜の厚みを小さく保つことができるので、ふっ硝酸の温度低下を抑制し、エッチングレートの低下を抑制できる。これにより、ふっ硝酸処理に要する時間を短縮することができ、スループットの向上を図ることができる。
図7は、この発明の他の実施形態(第2実施形態)に係る基板処理装置200の構成を示す図解的な断面図である。この第2実施形態において、前述の図1〜図6の実施形態(第1実施形態)に示された各部に対応する部分には、図1〜図6の場合と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
【0064】
この第2実施形態の基板処理装置200が基板処理装置1と相違する点は、吸着ベース205ではなく、外周リング部材(規制部材)201が昇降可能な構成を採用した点にある。
この基板処理装置200は、隔壁(図示せず)により区画された処理室2内に、ウエハWをほぼ水平姿勢に保持しつつウエハWの中心を通る鉛直軸線まわりに回転させるための基板保持機構202を備えている。
【0065】
基板保持機構202は、スピンモータ203と、スピンモータ203によって所定の鉛直軸線Cまわりに回転される略円盤状のスピンベース204と、スピンモータ203の上端縁に固定された略円盤状のスピンベース204と、スピンベース204の上面に固定されて、ウエハWをほぼ水平な姿勢でその下面(表面)を吸着して保持する基板保持部材としての円盤状の吸着ベース205と、吸着ベース205に保持されたウエハWの上面に液膜を形成するための外周リング部材201とを備えている。
【0066】
スピンモータ203は、たとえば有底円筒状のロータ206を備えている。ロータ206は円筒状の側壁部207と、側壁部207の下端部を接続する水平な下壁部208とを備えている。このロータ206は、鉛直軸線Cまわりに回転可能に設けられている。側壁部207の外周面にはたとえば磁石が貼り付けられており、側壁部207の外面を取り囲むように配置されるステータ(図示しない)の駆動によってロータ206が鉛直軸線Cまわりに回転される。ロータ206の上端縁にスピンベース204が固定されている。このため、ロータ206の回転に伴ってスピンベース204が鉛直軸線Cまわりに回転される。
【0067】
ロータ206の内部には、円筒状の収容空間209が形成されている。この収容空間209は、ロータ206の回転とともに一体的には回転せず、静止状態にある。
吸着ベース205の上面の周縁領域には、円環状のシール部材210(図7では図示しない。図9参照)が、吸着ベース205の周縁に沿って配置されている。
吸着ベース205の中央には、吸引用の吸引ノズル211が配置されている。吸引ノズル211の先端部(上端部)は、吸着ベース205の上面に開口する吸引口を有している。吸引ノズル211からは、鉛直下方に向けて吸引管212が延びている。吸引管212は、吸引管212を開閉するための吸引バルブ213を介して真空発生装置214に接続されている。
【0068】
スピンベース204の中央部には、スピンベース204の上下面を貫通する貫通孔215が形成されている。スピンベース204の上面には略円柱状の収容凹部216が形成されている。収容凹部216の底壁部217には、平坦面からなり吸着ベース205を支持するための支持面218と、支持面218と連続し、底壁部217の周縁領域に沿う円環溝219とが形成されている。円環溝219は、外周リング部材201を収容できる大きさおよび位置に形成されている。
【0069】
外周リング部材201は、吸着ベース205および吸着ベース205に支持されたウエハWの外周を取り囲む円筒状をなしており、吸着ベース205に保持されるウエハWの周端面と対向する鉛直な円筒面221(規制面)と、円筒面221の上端に連続し、水平の円環面からなるリング上面(規制面の上端)222とを備えている。外周リング部材201は、ふっ硝酸に対する耐薬液性を有する樹脂材料、たとえば、塩化ビニル(polyvinyl chloride)によって形成されている。
【0070】
リング上面222の高さが吸着ベース205に保持されるウエハWの上面よりも高くなるように、吸着ベース205と外周リング部材201との位置関係を設定することにより、円筒面221とウエハWの上面とによって構成される溝部分にふっ硝酸を溜めることができる。このとき、円筒面221は、ウエハWの上面からのふっ硝酸の流出を規制する。これにより、ウエハWの上面にふっ硝酸の液膜が形成される。そして、リング上面222とウエハWの上面との間の間隔によって、ウエハWの上面に形成されるふっ硝酸の液膜の厚みが規定される(図9(a)および図9(b)参照)。
【0071】
基板処理装置200は、外周リング部材201を支持して、この外周リング部材201昇降させるための複数本(たとえば、4つ)のリングピン223が設けられている(図7では、2つのリングピン223のみ図示)。各リングピン223はスピンベース204を上下に貫通して形成された貫通孔215に挿通されて、スピンベース204に対して昇降可能に設けられている。各リングピン223の下端は、収容空間209内に収容された円環状の第1昇降リング224の上端に固定されている。
【0072】
第1昇降リング224は、第1軸受225の外輪に外嵌されて固定されている。第1軸受225の内輪には、収容空間209内に収容された第1ボールねじ機構226の第1ボールナット228が固定されている。第1ボールねじ機構226の第1ねじ軸227は、鉛直方向に沿って配置されている。この第1ねじ軸227は、収容空間209内に収容された周辺部材(図示しない)に固定的に配置されている。
【0073】
第1ねじ軸227の下端部には第1ギア229が固定されている。この第1ギア229は、収容空間209内に収容されたリングピン昇降用モータ(規制部材昇降機構)230の出力軸に固定された第1駆動ギア231と噛合している。この構成により、リングピン昇降用モータ230を回転駆動させることにより、第1ボールナット228を昇降させることができ、これにより、複数本のリングピン223を一括して昇降させることができるようになっている。
【0074】
基板処理装置200は、ウエハWを外周リング部材201によって取り囲まれる状態と、外周リング部材201から上方に離脱された状態との間で昇降させるための複数本(たとえば、4つ)のリフトピン240が設けられている(図7では、2つのリフトピン240のみ図示)。各リフトピン240は、吸着ベース205およびスピンベース204を上下に貫通して形成された貫通孔250に挿通されて、吸着ベース205およびスピンベース204に対して昇降可能に設けられている。各リフトピン240は、第1昇降リング224の内側を通過して、その下端が収容空間209内に収容された円環状の第2昇降リング241の上端に固定されている。
【0075】
第2昇降リング241は、第2軸受242の内輪に内嵌されて固定されている。第2軸受242の外輪には、収容空間209内に収容された第2ボールねじ機構243の第2ボールナット244が固定されている。第2ボールねじ機構243の第2ねじ軸245は、鉛直方向に沿って配置されている。この第2ねじ軸245は、収容空間209内に収容された周辺部材(図示しない)に固定的に配置されている。
【0076】
第2ねじ軸245の下端部には第2ギア246が固定されている。この第2ギア246は、収容空間209内に収容されたリフトピン昇降用モータ248の出力軸に固定された第2駆動ギア247と噛合している。この構成により、リフトピン昇降用モータ248を回転駆動させることにより、第2ボールナット244を昇降させることができ、これにより、複数本のリフトピン240を、その先端がリング上面222よりも上方に突出する突出位置(図7で二点鎖線で示す位置)と、その先端が、吸着ベース205の上面と面一に退避する退避位置(図7で実線で示す位置)との間で一括して昇降させることができるようになっている。
【0077】
図8は、基板処理装置200の電気的構成を示すブロック図である。基板処理装置200は、たとえば、マイクロコンピュータで構成される制御装置261を備えている。制御装置261は、CPU(図示しない)および記憶部(図示しない)を含む構成である。制御装置261には、計時のためのタイマ(図示しない)が接続されている。
制御装置261には、スピンモータ203、ノズルアーム揺動駆動機構56、真空発生装置214、ふっ硝酸バルブ58、DIWバルブ60、吸引バルブ213、リングピン昇降用モータ230およびリフトピン昇降用モータ248が制御対象として接続されている。また、制御装置261には、基板厚計測装置80からの出力信号が入力されるようになっている。
【0078】
この基板処理装置200では、基板処理装置1における処理(図4参照)と同様の処理がウエハWに施される。
ウエハWの処理に際して、ガラス基板Sに接合された未処理のウエハWが、搬送ロボットによって処理室2内に搬入され、突出位置にある複数本のリフトピン240上にウエハWが載置される。その後、制御装置261は、リフトピン昇降用モータ248を駆動して、リフトピン240を退避位置まで下降させる。これにより、吸着ベース205にウエハWが受け渡される(図4のステップS1に相当)。
【0079】
その後、図4のステップS2に相当するふっ硝酸処理、ステップS3に相当するリンス処理、ステップS4に相当するスピンドライ処理がウエハWに施される。
図9は、基板処理装置200におけるふっ硝酸処理を説明するための断面図である。
かかるふっ硝酸処理(図4のステップS2に相当)では、制御装置261は、処理時間の経過に従って、リングピン昇降用モータ230を制御して、外周リング部材201を下降させる。この外周リング部材201の下降は、ウエハWの上面とリング上面222との間の間隔を一定範囲内に保つことができる。
【0080】
具体的には、制御装置261のメモリに保持されているレシピには、ふっ硝酸処理の処理時間と外周リング部材201の下降量との関係が規定されている。具体的には、外周リング部材201が所定量(たとえば100μm)ずつ段階的に下降するように規定されている。処処理時間と外周リング部材201の下降量との関係は、ウエハWの上面とリング上面222との間の間隔が常に一定範囲内(700μm〜800μm)に保たれるように実験値などに基づいて定められている。
【0081】
制御装置261は、タイマによる計時時間とメモリに保持されているレシピとに基づいて、外周リング部材201を下降させる。図9(a)は、ふっ硝酸処理の開始直後の状態を表し、図9(b)はふっ硝酸処理の終了直前の状態を表している。図9(a)および図9(b)に示すように、ふっ硝酸処理の結果ウエハWは薄くなるが、外周リング部材201を下降させるために、ウエハWの上面に形成されるふっ硝酸の液膜の厚みをほぼ一定に保つことができる。
【0082】
なお、制御装置261は、処理時間の経過に伴って外周リング部材201が断続的に下降するように、リングピン昇降用モータ230を制御することもできる。
したがって、ウエハWの上面とリング上面222との間の間隔を、エッチングの進行によらずに一定範囲内に保つことできる。このため、ウエハWの上面に形成されるふっ硝酸の液膜の厚みを、処理の全期間を通じて一定範囲内に保つことができる。これにより、ふっ硝酸処理の全期間を通じて均一なレートの処理をウエハWに施すことができる。その結果、エッチングレートの変動を抑制できるので、エッチング量を正確に制御することができる。
【0083】
また、ふっ硝酸処理中におけるウエハWの上面のふっ硝酸の液膜の厚みを小さく保つことができるので、ふっ硝酸の温度低下を抑制し、エッチングレートの低下を抑制できる。これにより、ふっ硝酸処理に要する時間を短縮することができ、スループットの向上を図ることができる。
また、リンス処理(図4のステップS3に相当)に先立って、制御装置261は、リフトピン昇降用モータ248を駆動して、複数本のリフトピン240を突出位置まで上昇させる。そして、ウエハWを外周リング部材201の上方位置で、DIWノズル5からのDIWが供給されて、ウエハWにリンス処理が施される。また、DIWノズル5からのDIWが、吸着ベース205上にも供給される。これにより、吸着ベース205上や外周リング部材201の円筒面221に付着したふっ硝酸が洗い流される。
【0084】
スピンドライ処理後は、吸着ベース205および外周リング部材201の回転が停止された後、ウエハWと吸着ベース205との空間の減圧状態が解除されて、ウエハWの吸着保持が解除される。
次いで、制御装置261は、リフトピン昇降用モータ248を駆動して、リフトピン240を突出位置まで上昇させる。これにより、処理済みのウエハWが、外周リング部材201から上方に離脱されて、搬送ロボットによって処理室2から搬出される(図4のステップS5に相当)。
【0085】
図10は、この発明のさらに他の実施形態(第3実施形態)に係る基板処理装置300の構成を示す図解的な断面図である。この第3実施形態において、前述の図1〜図6の実施形態(第1実施形態)に示された各部に対応する部分には、図1〜図6の場合と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
この基板処理装置300は、隔壁(図示せず)により区画された処理室2内に、ウエハWをほぼ水平姿勢に保持しつつウエハWの中心を通る鉛直軸線まわりに回転させるための基板保持機構301を備えている。
【0086】
基板保持機構301は、スピンモータ302と、スピンモータ302によって所定の鉛直軸線Cまわりに回転される略円盤状のスピンベース(ベース)303と、スピンベース303の上面に固定された基板支持部材304とを備えている。
スピンモータ302は、たとえば有底円筒状のロータ305を備えている。ロータ305は円筒状の側壁部306と、側壁部306の下端部を接続する水平な下壁部307とを備えている。このロータ305は、鉛直軸線Cまわりに回転可能に設けられている。側壁部306の外周面には磁石が貼り付けられており、側壁部207の外面を取り囲むように配置されるステータ(図示しない)の駆動によって、ロータ305が鉛直軸線Cまわりに回転される。ロータ305の上端縁にスピンベース303が固定されている。このため、ロータ305の回転に伴ってスピンベース303が鉛直軸線Cまわりに回転される。
【0087】
ロータ305の内部には、円筒状の収容空間308が形成されている。この収容空間308は、ロータ305の回転とともに一体的には回転せず、静止状態にある。
基板支持部材304は、水平に延びる略円盤状の底壁部(基板保持部材)309と、底壁部309の径方向外方に設けられて、底壁部309に支持されたウエハWの外周を取り囲む円筒状の外周リング部(規制部材)311と、外周リング部311よりも径方向外方に設けられて、スピンベース303に固定される複数の円筒状の固定部312と、底壁部309と各固定部312とを接続する接続部313とを一体的に備えている。固定部312は、複数本のボルト314によってスピンベース303に固定されている。スピンベース303の中央部には、スピンベース303の上下面を貫通する貫通孔315が形成されている。底壁部309の上面と外周リング部311の内周面とで区画される円筒状の収容凹部316内に、ウエハWが収容保持される。外周リング部311は、収容凹部316に収容されるウエハWの外周端を取り囲む。基板支持部材304は、ふっ硝酸に対する耐薬液性を有する樹脂材料、たとえば、塩化ビニル(polyvinyl chloride)によって形成されている。
【0088】
底壁部309はウエハWとほぼ同径を有している。外周リング部311は、底壁部309に保持されるウエハWの周端面と対向する鉛直な円筒面からなる円筒面(規制面)317と、円筒面317の上端に連続し、水平の円環面からなるリング上面(規制面の上端)318とを備えている。
リング上面318の高さが底壁部309に保持されるウエハWの上面よりも高くなるように設定されている。これにより、円筒面317とウエハWの上面とによって構成される溝部分にふっ硝酸を溜めることができる。このとき、円筒面317は、ウエハWの上面からのふっ硝酸の流出を規制する。これにより、ウエハWの上面にふっ硝酸の液膜が形成される。そして、リング上面318とウエハWの上面との間の間隔によって、ウエハWの上面に形成されるふっ硝酸の液膜の厚みが規定される(図12(a)および図12(b)参照)。
【0089】
底壁部309の中央には、吸引用の吸引ノズル319が配置されている。吸引ノズル319の先端部(上端部)は、底壁部309の上面に開口する吸引口を有している。吸引ノズル319からは、鉛直下方に向けて吸引管(減圧手段)320が延びている。吸引管320は、スピンベース303の貫通孔315を挿通して、その他端が、真空発生装置(減圧手段)323に接続されている。吸引管320の途中部には、吸引管320を開閉するための吸引バルブ321、流量調節バルブなどの開度調節機構(減圧調節手段)322および、吸引管320内の真空度を測定するための真空度センサ324が、真空発生装置323側からこの順で介装されている。開度調節機構322は、吸引管320の開度を調節するためのものである。このため、ウエハWが収容凹部316に収容された状態では、開度調節機構322を制御することにより、ガラス基板Sと底壁部309との間の空間SPの真空度(減圧量)を調節することができる。
【0090】
底壁部309の上面には、リング状のシール部材(支持部材)325(図10に併せて図12(a)および図12(b)を参照)が、底壁部309の周縁に沿って配置されている。このシール部材325によって、ウエハWの下面が支持される。シール部材325としては、たとえば面でシールする面パッキン方式のものが採用されるが、リップ部でシールするリップパッキン方式のものが採用されていてもよい。
【0091】
このシール部材325は、単位応力当たりの収縮量が比較的大きくなるように、材料の選択および形状の設計が行われている。したがって、底壁部309とガラス基板Sとの間の空間SPの真空度(減圧量)の変化に伴って、シール部材325は収縮/拡大し、その厚み(上下方向の大きさ)が変化して、ウエハWと底壁部309との間隔が変化する。
基板保持機構301には、ウエハWを収容凹部316に収容された状態と、収容凹部316から上方に離脱された状態との間で昇降させるための複数本(たとえば、4つ)のリフトピン326が設けられている(図10では、2つのリフトピン326のみ図示)。各リフトピン326は、スピンベース303を上下に貫通して形成された貫通孔350に挿通されて、スピンベース303に対して昇降可能に設けられている。各リフトピン326は、昇降リング330の内側を通過して、その下端が収容空間308内に収容された円環状の昇降リング330の上端に固定されている。
【0092】
昇降リング330は、軸受331の内輪に内嵌されて固定されている。軸受331の外輪には、収容空間308内に収容されたボールねじ機構332のボールナット333が固定されている。ボールねじ機構332のねじ軸334は、鉛直方向に沿って配置されている。このねじ軸334は、収容空間308内に収容された周辺部材(図示しない)に固定的に配置されている。
【0093】
ねじ軸334の下端部にはギア335が固定されている。このギア335は、収容空間308内に収容されたリフトピン用昇降モータ336の出力軸に固定された駆動ギア337と噛合している。この構成により、リフトピン用昇降モータ336を回転駆動させることにより、ボールナット333を昇降させることができ、これにより、複数本のリフトピン326を、その先端がリング上面318よりも上方に突出する突出位置(図10で二点鎖線で示す位置)と、その先端が、底壁部309の上面と面一に退避する退避位置(図10で実線で示す位置)との間で一括して昇降させることができるようになっている。
【0094】
図11は、基板処理装置300の電気的構成を示すブロック図である。基板処理装置300は、たとえば、マイクロコンピュータで構成される制御装置361を備えている。制御装置361は、CPU(図示しない)および記憶部(図示しない)を含む構成である。制御装置361には、計時のためのタイマ(図示しない)が接続されている。
制御装置361には、スピンモータ302、ノズルアーム揺動駆動機構56、真空発生装置323、ふっ硝酸バルブ58、DIWバルブ60、吸引バルブ321、開度調節機構322およびリフトピン用昇降モータ336が制御対象として接続されている。
【0095】
また、制御装置361には、基板厚計測装置80から出力される検出信号および真空度センサ324から出力される検出信号が入力されるようになっている。真空度センサ324からの出力される検出信号に基づいて、制御装置361は開度調節機構322の開度を制御する。
制御装置361は、メモリに保持されたレシピに従って処理の各工程が実行されるように、制御対象の各部の動作を制御する。
【0096】
この基板処理装置300では、基板処理装置1における処理(図4参照)と同様の処理がウエハWに施される。この実施形態では、ガラス基板Sと底壁部309との間の空間SPの真空度(減圧量)が調節されることにより、ウエハWの上面とリング上面318との間の間隔が調節される。
ウエハWの処理に際して、ガラス基板Sに接合された未処理のウエハWが、搬送ロボットによって処理室2内に搬入され、突出位置にある複数本のリフトピン336上にウエハWが載置される。その後、制御装置361は、リフトピン昇降用モータ326を駆動して、リフトピン336を退避位置まで下降させる。これにより、底壁部309にウエハWが受け渡される(図4のステップS1に相当)。
【0097】
その後、図4のステップS2に相当するふっ硝酸処理、ステップS3に相当するリンス処理、ステップS4に相当するスピンドライ処理がウエハWに施される。
図12は、基板処理装置300におけるふっ硝酸処理を説明するための断面図である。このふっ硝酸処理(図4のステップS2に相当)では、制御装置361は、ウエハWの上面とリング上面318との間の間隔が一定範囲内に保たれるように、開度調節機構322を制御して、底壁部309とガラス基板Sとの間の空間SPの真空度を小さく(圧を高く)する。具体的には、制御装置361のメモリに保持されているレシピには、ふっ硝酸処理の処理時間と、底壁部309とガラス基板Sとの間の空間SPの真空度との関係が規定されている。
【0098】
底壁部309とガラス基板Sとの間の空間SPの真空度が変化すると、シール部材325の厚み方向(高さ方向)の大きさが変化する。したがって、シール部材325の厚みを拡大させることにより、ウエハWの上面とリング上面318との間の間隔を調節することができる。レシピには、ウエハWの上面とリング上面318との間の間隔が所定量(たとえば100μm)ずつ段階的に短縮するように規定されている。
【0099】
処理時間と空間SPの真空度との関係は、ウエハWの上面とリング上面318との間の間隔が常に一定範囲内(700μm〜800μm)に保たれるように実験値などに基づいて定められている。
制御装置361は、タイマによる計時時間とメモリに保持されているレシピとに基づいて、吸着ベース310を上昇させる。図12(a)は、ふっ硝酸処理の開始直後の状態を表し、図12(b)はふっ硝酸処理の終了直前の状態を表している。図12(a)および図12(b)に示すように、ふっ硝酸処理の結果ウエハWは薄くなるが、シール部材325の厚み方向の大きさを拡大するために、ウエハWの上面に形成されるふっ硝酸の液膜の厚みをほぼ一定に保つことができる。
【0100】
ふっ硝酸処理の進行に伴って、底壁部309とガラス基板Sとの間の空間SPにおける真空度が小さくされて、ウエハWと底壁部309との間隔が変化し、ウエハWの上面とリング上面318との間の間隔が一定範囲内に保たれる。このため、ウエハWの上面に形成されるふっ硝酸の液膜の厚みを、ふっ硝酸処理の全期間を通じて一定範囲内に保つことができる。これにより、ふっ硝酸処理の全期間を通じて均一なレートの処理をウエハWに施すことができる。その結果、エッチングレートの変動を抑制できるので、エッチング量を正確に制御することができる。
【0101】
また、ふっ硝酸処理中におけるウエハWの上面のふっ硝酸の液膜の厚みを小さく保つことができるので、ふっ硝酸の温度低下を抑制し、エッチングレートの低下を抑制できる。これにより、ふっ硝酸処理に要する時間を短縮することができ、スループットの向上を図ることができる。
スピンドライ処理後は、基板支持部材304の回転が停止された後、ウエハWと底壁部309との空間の減圧状態が解除されて、ウエハWの吸着保持が解除される。
【0102】
次いで、制御装置361は、リフトピン昇降用モータ336を駆動して、リフトピン326を突出位置まで上昇させる。これにより、処理済みのウエハWが、基板支持部材304から上方に離脱されて、搬送ロボットによって処理室2から搬出される(図4のステップS5に相当)。
図13は、この発明の他の実施形態(第4実施形態)に係る基板処理装置400の構成を示す図解的な断面図である。図14は、基板処理装置400の電気的構成を示すブロック図である。この第4実施形態において、前述の図1〜図6の実施形態(第1実施形態)に示された各部に対応する部分には、図1〜図6の場合と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
【0103】
この第4実施形態の基板処理装置400が基板処理装置1と相違する点は、ウエハWの上面高さを計測するための上面高さセンサ(基板上面高さ検出手段)401を設けた点である。この上面高さセンサ401から出力される検出信号が制御装置61に入力されるようになっている。この上面高さセンサ401として、レーザ非接触方式(たとえばCCDレーザ方式やブルーレーザフォーカス方式など)の変位センサを採用することができる。
【0104】
制御装置61は、上面高さセンサ401から入力される検出信号に基づいて、ウエハWの上面高さを求めることができる。ふっ硝酸処理時には、ウエハWの上面の高さを調節する上面高さ調節処理が実行される。
図15は、ふっ硝酸処理時に実行される上面高さ調節処理のフローチャートである。
ふっ硝酸処理中(図4のステップS2に相当)では、制御装置61は、上面高さセンサ401から入力される検出信号を常に監視している(ステップS10でYES)。ウエハWの上面高さ(すなわち、ふっ硝酸の液膜の厚み)が、予め定める設定上限値を超えると(ステップS11でYES)、制御装置61は、吸着ベース10を所定高さ△H(たとえば100μm)だけ上昇させる(ステップS12)。その後、ふっ硝酸処理が終了するまで(ステップS13でYES)、ウエハWの上面高さの監視が続行される。
【0105】
これにより、ウエハWの上面に形成されるふっ硝酸の液膜の厚みを、より確実に、一定範囲内に保つことができる。
以上、本発明の4つの実施形態について説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、第4実施形態で採用した上面高さセンサ400を、第3実施形態の基板処理装置300に採用することもできる。この場合、上面高さセンサ400から入力される検出信号に基づいて開度調節機構322が制御される。
【0106】
また、第4実施形態の基板処理装置400の上面高さセンサ401に代えて、ウエハWの上面に形成されるふっ硝酸の液膜の厚みを直接計測する液膜厚センサを採用することもできる。この場合、この液膜厚センサから入力される検出信号に基づいて、ベース昇降用モータ20が制御される。また、この液膜厚センサを、第2実施形態の基板処理装置200や第3実施形態の基板処理装置に適用することもできる。この場合、液膜厚センサから入力される検出信号に基づいてリングピン昇降用モータ230が制御され、また、液膜厚センサから入力される検出信号に基づいて開度調節機構322が制御される。
【0107】
また、第1および4実施形態で採用した変形防止プレート39が、第2実施形態で採用されていてもよい。すなわち、吸着ベース205とウエハW(ガラス基板S)との間に変形防止プレート39が配設されていてもよい。この場合、変形防止プレートには、リプトピンが挿通するための貫通孔が、その上下面を貫通して形成されていることが好ましい。
また、スリットノズル4に代えて、連続流の状態でフッ硝酸を吐出する一本または複数本のストレートノズルが用いられてもよい。また、回転せずに停止状態にあるウエハWに対して、ふっ硝酸を供給しつつノズル(好ましくはスリットノズル4)を移動(スキャン)させることにより、エッチング処理を施す構成であってもよい。
【0108】
前述の各実施形態では、ふっ硝酸処理中にウエハWの上面とリング上面28,222,318との間の間隔を、たとえば100μmずつ短縮させていく構成を例に挙げて説明したが、1回当たりの短縮量は、200μm程度であってもよいし、300μm程度であってもよい。これらの場合、エッチング処理前のウエハWの厚みが725μm程度であると、ふっ硝酸処理中に、ウエハWの上面とリング上面28,222,318との間のとの間の間隔を3回ないし2回だけ短縮させることになるが、この場合であっても、ふっ硝酸処理のエッチングレートの低下を十分に抑制することができる。
【0109】
また、1回当たりの短縮量が一定でなくてもよい。具体的には、最初の短縮量は200μm程度とし、その次の短縮量を300μm程度としてもよい。
むろん、ふっ硝酸処理中にウエハWの上面とリング上面28,222,318との間のとの間の間隔を1回だけ短縮させるものであってもよい。この場合であっても、ふっ硝酸処理のエッチングレートの低下を抑制することができる。
【0110】
また、リング上面28,222,318は平坦面であるとして説明したが、ウエハWの回転半径方向外方に向かうにつれて低くなるテーパ面で形成されていてもよい。
また、薄化のためのエッチング処理を施す基板処理装置1,200,300,400を例にとって説明したが、たとえば酸化膜シリコンウエハからなる円板状のウエハWにおけるデバイス形成面(上面または下面)に対して、酸化膜の除去のためのエッチング処理を施す構成であってもよい。かかる場合、エッチング液としてたとえばフッ酸が用いられることが望ましい。また、ウエハWの窒化膜の除去のためのエッチング処理を施す場合には、エッチング液として燐酸を用いることもできる。
【0111】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0112】
4 スリットノズル(ふっ酸硝酸混合液供給手段)
6 外周リング部材(規制部材)
10 吸着ベース(基板保持部材)
20 ベース昇降用モータ(基板保持部材昇降機構)
27 円筒面(規制面)
28 リング上面(規制面の上端)
61 制御装置
201 外周リング部材(規制部材)
205 吸着ベース(基板保持部材)
221 円筒面(規制面)
222 リング上面(規制面の上端)
230 リングピン昇降用モータ(規制部材昇降機構)
261 制御装置
300 基板処理装置
303 スピンベース(ベース)
309 底壁部(基板保持部材)
311 外周リング部(規制部材)
317 円筒面(規制面)
318 リング上面(規制面の上端)
320 吸引管(減圧手段)
322 開度開閉機構(減圧調節手段)
323 真空発生装置(減圧手段)
325 シール部材(支持部材)
361 制御装置
400 基板処理装置
401 上面高さセンサ(基板上面高さ検出手段)
S ガラス基板(基板)
W ウエハ(シリコン基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の下面を支持して基板を水平姿勢に保持する基板保持部材と、
前記基板保持部材に保持された基板の上面にエッチング液を供給するエッチング液供給手段と、
前記基板保持部材に保持された基板の周端面と対向し、基板の上面からのエッチング液の流出を規制するための筒状の規制面を有する規制部材と、
前記基板保持部材に保持された基板の下面と前記規制部材とを相対的に昇降させる昇降機構と、
前記規制部材の前記規制面の上端に対して前記基板保持部材が相対的に上昇するように前記昇降機構を制御する昇降制御手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記昇降制御手段が、前記基板保持部材に保持される基板の上面からのエッチングの進行に伴って、前記規制部材の前記規制面の上端に対して前記基板保持部材が相対的に上昇するように、前記昇降機構を制御する、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記昇降機構が、前記基板保持部材を昇降させる基板保持部材昇降機構を備える、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記昇降機構が、前記規制部材を昇降させる規制部材昇降機構を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板保持部材が、
ベースと、
前記ベース上に設けられ、基板の下面を支持する収縮可能な支持部材と、
前記ベースと基板の下面との間の空間を減圧する減圧手段とを含み、
前記昇降機構が、前記減圧手段による減圧量を調節する減圧調節手段を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記基板の上面に形成されるエッチング液の液膜の厚みを計測するための液膜厚検出手段をさらに含み、
前記昇降制御手段が、前記液膜厚検出手段によって検出された液膜の厚みに基づいて、前記昇降機構を制御する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板保持部材に保持される基板が、シリコン基板を含み、
前記エッチング液供給手段が、ふっ酸硝酸混合液を供給するふっ酸硝酸混合液供給手段を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
基板の下面を支持する基板保持部材で基板を保持する工程と、
基板の上面からの液の流出を規制するための筒状の規制面を有する規制部材を、前記規制面が前記基板保持部材に保持された基板の周端面に対向するように配置する工程と、
前記基板保持部材に保持された基板の上面にエッチング液を供給するエッチング液供給工程と、
前記エッチング液供給工程と並行して、前記規制面の上端に対して前記基板保持部材を相対的に上昇させる工程とを含む、基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−238782(P2010−238782A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82843(P2009−82843)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】