説明

基板処理装置及び基板処理方法

【課題】洗浄対象となる基板近傍にて光触媒反応を利用してOHラジカルを潤沢に発生させることによって、基板上に付着した有機物等のパーティクルを効果的に除去することのできる基板処理装置及び基板処理方法を提供する。
【解決手段】処理対象である基板W上の被処理面W1を洗浄する第1のノズル11と、被処理面W1上に液を供給する第2のノズル12と、を備え、第1のノズル11は、被処理面W1に対向し液に接触する光触媒11aと、光触媒11aを保持する保持部材11bと、保持部材11bを透過して光触媒11aに光を照射する光源11cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置は、半導体装置や液晶表示装置などの製造工程において、半導体ウエーハやガラス基板などの基板の表面(被処理面)に対して処理液の供給等を行い、その被処理面を処理する装置である。この基板処理装置としては、例えば、被処理面から不要になったレジスト膜を剥離するレジスト剥離装置や、被処理面に付着したパーティクル(粒子)を除去して洗浄する洗浄装置等を挙げることができる。
【0003】
ところで洗浄装置に対しては、近年のデバイスの微細化に伴い細かな構造物を破壊することなく洗浄する機能が求められる。そのための洗浄方法としては、物理的な方法として例えば、液滴を基板に向けてスプレー状に噴霧吐出させてパーティクルを除去する方法、超音波等を利用してキャビテーションの圧壊による洗浄方法等を挙げることができる(例として以下の特許文献1参照)。一方、化学的な方法としては、例えば、酸化還元反応を利用した方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−120817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、特許文献1に示されている二流体スプレーノズルを利用して物理的に基板からパーティクルを除去する方法の場合、液滴の粒径や流速等の適切な制御を行わなければ基板上の微細な構造物を破壊してしまう。また、超音波を利用した洗浄は、キャビテーションの圧壊によりヒドロキシルラジカル(・OH)(以下、「OHラジカル」と表わす)が発生するため、有機物のパーティクルの除去に効果的であるが、圧壊場所が基板近傍であるとやはり構造物の破壊につながるため、特に微細な構造物をもつパターン洗浄には不向きである。
【0006】
酸化還元反応を利用した方法については、確かに基板上に付着したパーティクルを除去する力は大きいが、基板の表面を腐食、或いは、変質させてしまう可能性がある。そのため洗浄対象との関係で万能ではない。
【0007】
さらには、上述したように有機物の除去のためにはOHラジカルの利用が有益であるが、OHラジカルの寿命は100万分の1秒とも言われるように非常に短いため、単にキャビテーションの圧壊によってOHラジカルを発生させる方法では基板上で効果的にOHラジカルを利用して洗浄を行うのは困難である。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、洗浄対象となる基板近傍にてOHラジカルを潤沢に発生させることによって、基板上に付着した有機物等のパーティクルを効果的に除去することのできる基板処理装置及び基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、基板処理装置において、処理対象である基板上の被処理面を洗浄する第1のノズルと、被処理面上に液を供給する第2のノズルと、を備え、第1のノズルは、被処理面に対向し液に接触する光触媒と、光触媒を保持する保持部材と、保持部材を透過して光触媒に光を照射する光源とを備える。
【0010】
本発明の実施の形態に係る第2の特徴は、基板処理装置において、処理対象である基板上の被処理面に処理液を吐出して洗浄するノズルと、処理液に超音波を印加する超音波発生装置と、超音波が印加された処理液が吐出する位置に設けられる多孔質材で形成される超音波の振動を減衰させる装置とを備える。
【0011】
本発明の実施の形態に係る第3の特徴は、基板処理方法において、処理対象である基板を保持して回転させる工程と、基板の被処理面に対して液を第2のノズルから供給する工程と、被処理面に対向し液に接触する光触媒と、光触媒を保持する保持部材と、保持部材を透過して光触媒に光を照射する光源とを備える第1のノズルにより被処理面を洗浄する工程とを備える。
【0012】
本発明の実施の形態に係る第4の特徴は、基板処理方法において、処理対象である基板を保持して回転させる工程と、基板上の被処理面に吐出する処理液に超音波を印加する工程と、超音波が印加された処理液が吐出する位置に設けられる多孔質材で形成される超音波の振動を減衰させる装置により振動が減衰された処理液を被処理面に吐出して洗浄する工程とを備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、洗浄対象となる基板近傍にてOHラジカルを潤沢に発生させることによって、基板上に付着した有機物等のパーティクルを効果的に除去することのできる基板処理装置及び基板処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1及び第2の実施の形態における基板処理装置の主要構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における第1のノズルおよび洗浄対象となる基板との一部分を拡大して示す拡大図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態における第1のノズルおよび洗浄対象となる基板との一部分を拡大して示す拡大図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態における基板処理装置の主要構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態における基板処理装置の主要構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態における供給ノズルおよび洗浄対象となる基板との一部分を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1及び第2の実施の形態における基板処理装置1の主要構成を示す断面図である。図1に示すように、第1及び第2の実施の形態における基板処理装置1は、処理室となる処理ボックス2と、その処理ボックス2内に設けられているカップ3と、カップ3内に設けられ基板Wを水平状態で保持する保持テーブル4と、この保持テーブル4を水平面内で回転させる回転機構5とを備えている。また、保持テーブル4上の基板Wの上方にはその被処理面W1を洗浄する第1のノズル11が位置し、第1のノズル11は、移動機構6によって被処理面W1に沿って移動可能とされている。
【0017】
さらに、被処理面W1上に液膜Mを形成するために液を供給する第2のノズル12が処理ボックス2の側方から伸びている。この第2のノズル12は、図示しない液体供給部に接続されており、図示しない制御部からの制御に基づいて適宜被処理面W1に液を供給する。この制御部は、また、回転機構5や移動機構6の制御も行い、必要に応じて保持テーブル4を回転させたり、第1のノズル11を被処理面W1上で移動させたりする。
【0018】
処理ボックス2は、カップ3、保持テーブル4、第1のノズル11、或いは第2のノズル12を収容している。処理ボックス2の上部には、ダウンフロー用のフィルタ付きファン2aが設けられている。このファン2aも図示しない制御部と電気的に接続されており、制御部の制御に基づいて駆動する。
【0019】
カップ3は、円筒形状に形成されており、その内部に保持テーブル4を収容する。このカップ3の周壁の上部は径方向の内側に向かって傾斜している。また、保持テーブル4は、カップ3の内部であってその上部側に水平面内で回転可能に設けられており、挟持部材4aにより基板Wを脱着可能に保持する。この際、基板Wのうち被処理面W1が第1のノズル11と対向するように、ファン2aに向かい合って保持される。
【0020】
回転機構5は、保持テーブル4に連結される回転軸とその回転軸を回転させるモータ(図示せず)とからなる。このモータは図示しない制御部と電気的に接続されており、制御部の制御に基づいて駆動する。回転機構5は、モータにより回転軸を、例えば図1に示すR方向に回転させ、保持テーブル4を基板Wの被処理面W1に交差する回転軸まわりに回転させる。
【0021】
移動機構6は、第1のノズル11を支持するアームと、そのアームに連結された回転軸と、その回転軸を回転させるモータ(図示せず)とを備えている。このモータは図示しない制御部と電気的に接続されており、制御部の制御に基づいて駆動する。移動機構6は、モータにより回転軸を図1に示すR方向に回転させ、アームを介して第1のノズル11を基板Wの被処理面W1に沿って基板Wの半径方向であるX軸方向(図1参照)に移動させる。また、移動機構6は、第1のノズル11を上下方向であるZ軸方向(図1参照)に移動させる機構も有している。
【0022】
第1のノズル11は、被処理面W1との間で光触媒反応を起こす機能を備えている。図2は、本発明の第1の実施の形態における第1のノズル11および処理対象となる基板W(被処理面W1)の一部分を拡大して示す拡大図である。
【0023】
第1のノズル11は、被処理面W1に対向する位置に設けられている光触媒11aと、この光触媒11aを保持する保持部材11bと、保持部材11bを透過して光触媒11aに光を照射する光源11cとから構成される。この光源11cが移動機構6のアームによって支持されていることから、制御部(図示せず)からの指示に基づいて、第1のノズル11は被処理面W1上を自在に移動することができる。
【0024】
なお、「ノズル」とは一般的に「気体や液体を噴き出させるための筒状の装置」を指すが、本発明の実施の形態においては便宜上、光触媒11a、保持部材11b、光源11cから構成される「第1のノズル11」のように噴き出し用の孔が設けられていないものについても「ノズル」と表わす。
【0025】
光触媒11aとしては、第1の実施の形態においては、酸化チタン(TiO2)が採用されている。但し、光触媒としての役割が果たせる物質であればいずれの物質であっても良い。光触媒11aは、保持部材11bに例えば、酸化チタンをスパッタリングすることによって保持部材11bに保持される。
【0026】
一方、光触媒11aは光が印加されることによってその機能を発揮するものである。本発明の実施の形態においては、その構成上、保持部材11bには光源11cからの光を透過する機能を備えていることが求められる。従って、保持部材11bは、例えば石英である。
【0027】
光源11cは、光触媒11aに光を印加する。光触媒反応を行うために、本発明の実施の形態における光源11cからは紫外線が照射される。
【0028】
第2のノズル12からは、図示しない液体供給部から例えば超純水が供給される。第2のノズル12から供給された超純水は、被処理面W1上に液膜Mを形成する。この液膜Mの厚みは、例えば、1ないし2mm程度である。この形成された液膜Mに第1のノズル11の光触媒11aを接触させて光触媒反応を行う。
【0029】
ここで、基板処理の流れについて説明する。まず、基板Wが保持テーブル4上に挟持部材4aを介して保持される。このような基板Wの被処理面W1上に第2のノズル12から超純水が供給されると、回転機構5が保持テーブル4を介して基板Wを回転させるため、被処理面W1上に液膜Mが形成される。そして、移動機構6が第1のノズル11を被処理面W1上の液膜Mに光触媒11aが接する位置まで移動させる。この際、図1或いは、図2において示すように、光触媒11aの部分が液膜M内に含浸し、被処理面W1と非常に近い距離にある。なお、光触媒11aが液膜Mに接している間は、被処理面W1に対して第2のノズル12から超純水が継続して供給されている。
【0030】
光源11cから紫外線が照射されると、光触媒11aと被処理面W1との間で光触媒反応が起こる。光触媒反応によって、OHラジカルが発生し、このOHラジカルが基板Wの被処理面W1に供給されることによって、被処理面W1を洗浄し被処理面W1上に付着した有機物(パーティクル)を除去することができる。
【0031】
以上説明した構成を採用することによって、洗浄対象となる基板近傍にて光触媒反応を利用してOHラジカルを潤沢に発生させ、基板上に付着した有機物等のパーティクルを効果的に除去することのできる基板処理装置及び基板処理方法を提供することができる。
【0032】
特に光触媒11aを被処理面W1に近づけて反応させることによって、発生するOHラジカルが消滅する前に潤沢に被処理面W1上に供給することができ、その分より効果的にパーティクルの除去を行うことができる。
【0033】
なお、これまでは第2のノズル12から被処理面W1上に供給される液として超純水を例に挙げて説明を行った。但し、被処理面W1上に供給される液は超純水のみでなくとも良い。例えば、被処理面W1上に供給される液として、酸素を過剰に溶解させた酸素飽和溶液、或いは、超純水とともに酸素バブルを併せて供給することとしても良い。このような液が第2のノズル12から被処理面W1上に供給されることによって、酸素の還元反応が促され光触媒反応が促進されることになるため、OHラジカルがより潤沢に被処理面W1上に供給され、基板上に付着した有機物等のパーティクルをより効果的に除去することができることになる。
【0034】
(第2の実施の形態)
次に本発明における第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0035】
図3は、本発明の第2の実施の形態における第1のノズルおよび洗浄対象となる基板の一部分を拡大して示す拡大図である。本発明の第1の実施の形態における第1のノズル11と第2の実施の形態における第1のノズル21との違いは、光触媒22が酸化チタン(TiO2)のみで構成されるのではなく、酸化チタン(TiO2)22aとこの酸化チタン22aと電気的に接続される金属触媒22bとから構成される点である。その他の構成や光触媒反応を用いて被処理面W1の洗浄を行う基板処理の流れは第1の実施の形態で説明した流れと同様である。
【0036】
ここで、金属触媒22bとして、第2の実施の形態においてはプラチナ(Pt)を採用しているが、オーミック接触が可能な金属であれば金属触媒22bとして採用することが可能である。
【0037】
また、酸化チタン22aから対向する被処理面W1までの距離と金属触媒22bから対向する被処理面W1までの距離は、前者が後者よりも短く、酸化チタン22aが被処理面W1により近い位置に配置されている。この配置は、光触媒反応の結果生じるOHラジカルが消滅する前に被処理面W1に供給するためである。
【0038】
なお、これまで説明した酸化チタン22aと金属触媒22bとの関係が維持できるのであれば、両者の配置は、例えば、格子状、或いは、ストライプ状等、どのような配置であっても良い。
【0039】
光触媒22の構成を以上のようにすることによって、第1の実施の形態において説明した構成を採用するよりも、さらに洗浄対象となる基板近傍にて光触媒反応を利用してOHラジカルを潤沢に発生させ、基板上に付着した有機物等のパーティクルを効果的に除去することのできる基板処理装置及び基板処理方法を提供することができる。
【0040】
(第3の実施の形態)
次に本発明における第3の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態において、上述の第1、或いは第2の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0041】
第3の実施の形態は、これまで第1、或いは、第2の実施の形態において説明してきた光触媒反応を利用した基板Wの洗浄に加えて、併せて物理的な方法を用いた洗浄も行うものである。ここで物理的な方法を利用した洗浄方法とは、例えば、液滴を基板に向けてスプレー状に噴霧吐出させてパーティクルを除去する方法、超音波等を利用してキャビテーションの圧壊による洗浄方法等である。
【0042】
図4は、本発明の第3の実施の形態における基板処理装置31の主要構成を示す断面図である。第1、或いは、第2の実施の形態における構成と異なる点は、第1のノズル41が被処理面W1に対して物理的な方法によって洗浄を行うために対応した構成を採用していること、及び、第1のノズル41へ液体を供給するための液体供給部42及び、気体を供給するための気体供給部43が設けられていることである。
【0043】
第1のノズル41は、例えば、以下のような構成である。まず第1のノズル41の中央に、例えば、二流体ノズルが配置されている(図4では図示せず)。この二流体ノズルは、第1流体として液体が供給される中央流路となる内筒と、その内筒を収容して第2流体として気体が供給されるリング状の流路となる外筒等を有している。第1流体としての液体は、液体供給部42から、第2流体としての気体は気体供給部43からそれぞれ供給される。被処理面W1には、外筒のノズル孔から排出される気体により内筒のノズル孔から液体を液滴化(霧化)して噴射する。
【0044】
二流体ノズルの周囲には、上述した光触媒、保持部材、光源から成る光触媒反応を行うノズルが設けられている。光触媒反応については上述した通りであり、また、第1の実施の形態で示した構成、或いは、第2の実施の形態において示した構成のいずれを採用しても良い。また、洗浄工程において、いずれの方法を先に被処理面W1に適用しても良い。
【0045】
このように化学的な洗浄のみならず物理的な洗浄も併せて行うことができるように構成することにより、洗浄対象となる基板近傍にて光触媒反応を利用してOHラジカルを潤沢に発生させることによって、基板上に付着した有機物等のパーティクルを効果的に除去するとともに、物理的にもパーティクルを除去することのできる基板処理装置及び基板処理方法を提供することができる。
【0046】
(第4の実施の形態)
次に本発明における第4の実施の形態について説明する。なお、第4の実施の形態において、上述の第1ないし第3の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0047】
第4の実施の形態においては、OHラジカルを利用した洗浄方法に関し、より潤沢に被処理面W1に対してOHラジカルを供給するための構成について説明する。図5は、本発明の第4の実施の形態における基板処理装置51の主要構成を示す断面図である。
【0048】
図5に示すように、第4の実施の形態における基板処理装置51は、処理室となる処理ボックス2と、その処理ボックス2内に設けられているカップ3と、カップ3内に設けられ基板Wを水平状態で保持する保持テーブル4と、この保持テーブル4を水平面内で回転させる回転機構5とを備えている。また、保持テーブル4上の基板Wの上方にはその被処理面W1を洗浄する供給ノズル61が位置し、供給ノズル61は、移動機構6によって被処理面W1に沿って移動可能とされている。
【0049】
さらに、供給ノズル61へ液体を供給するための液体供給部42及び、気体を供給するための気体供給部43が設けられている。これら液体供給部42及び気体供給部43は、図示しない制御部からの制御に基づいて適宜供給ノズル61に液体、或いは気体を供給する。この制御部は、また、回転機構5や移動機構6の制御も行い、必要に応じて保持テーブル4を回転させたり、供給ノズル61を被処理面W1上で移動させたりする。
【0050】
処理ボックス2は、カップ3、保持テーブル4、或いは供給ノズル61を収容している。処理ボックス2の上部には、ダウンフロー用のフィルタ付きファン2aが設けられている。このファン2aも図示しない制御部と電気的に接続されており、制御部の制御に基づいて駆動する。
【0051】
カップ3は、円筒形状に形成されており、その内部に保持テーブル4を収容する。このカップ3の周壁の上部は径方向の内側に向かって傾斜している。また、保持テーブル4は、カップ3の内部であってその上部側に水平面内で回転可能に設けられており、挟持部材4aにより基板Wを脱着可能に保持する。この際、基板Wのうち被処理面W1が供給ノズル61と対向するように、ファン2aに向かい合って保持される。
【0052】
回転機構5は、保持テーブル4に連結される回転軸とその回転軸を回転させるモータ(図示せず)とからなる。このモータは図示しない制御部と電気的に接続されており、制御部の制御に基づいて駆動する。回転機構5は、モータにより回転軸を、例えば図5に示すR方向に回転させ、保持テーブル4を基板Wの被処理面W1に交差する回転軸まわりに回転させる。
【0053】
移動機構6は、供給ノズル61を支持するアームと、そのアームに連結された回転軸と、その回転軸を回転させるモータ(図示せず)とを備えている。このモータは図示しない制御部と電気的に接続されており、制御部の制御に基づいて駆動する。移動機構6は、モータにより回転軸を図5に示すR方向に回転させ、アームを介して供給ノズル61を基板Wの被処理面W1に沿って基板Wの半径方向であるX軸方向(図5参照)に移動させる。また、移動機構6は、供給ノズル61を上下方向であるZ軸方向(図5参照)に移動させる機構も有している。
【0054】
供給ノズル61は、超音波を用いたキャビテーションの圧壊に基づくOHラジカルを発生させ被処理面W1に噴射する。供給ノズル61には液体供給部42及び気体供給部43から液体、気体がそれぞれ供給され混合されることでキャビテーションが発生する。
【0055】
但し、このままキャビテーションの圧壊が被処理面W1の近傍で起こると、被処理面W1上の微細な構造物を破壊してしまう可能性がある。そこで、本発明の第4の実施の形態における供給ノズル61および洗浄対象となる基板Wとの一部分を拡大して示す拡大図である図6に示すように、もともとの構成要素である移動機構6のアーム側から、超音波発生装置61aとノズル本体61bに加えて、供給ノズル61には、超音波の振動を減衰させる装置(以下、「振動減衰装置」と表わす)61cが組み合わせられる。
【0056】
超音波発生装置61aによって、キャビテーションの圧壊が行われることになるが、振動減衰装置61cが供給ノズル61の被処理面W1に最も近接した位置に設けられていることから、供給ノズル61内部において伝達する振動を効果的に抑制する。この効果によってキャビテーションの圧壊を被処理面W1近傍で発生させることなく供給ノズル61(ノズル本体61b)内部に集中させることができる。従って、超音波の振動が直接被処理面W1へと伝達されることを防止して被処理面W1上の微細な構造物の破壊を回避することができ、キャビテーションの圧壊により発生するOHラジカルを含む処理液を被処理面W1上へと供給することができる(図6参照)。
【0057】
また、振動減衰装置61cが設けられることによって、超音波発生装置61aから振動減衰装置61cに向けて超音波の振動が伝達されることになるが、振動減衰装置61cが後述するように多孔質部材であると、超音波の振動は振動減衰装置61c内において乱反射する(図6の振動減衰装置61cから上方へと向かう矢印参照)。従って、処理液に満遍なく超音波の振動が印加されることになる。さらに、超音波発生装置61aと振動減衰装置61cとの間においてノズル本体61bはいわば仕切られた空間となるため、処理液に対して超音波の振動を集中して印加することができる。これらのことは、OHラジカルの発生に大いに寄与する。
【0058】
ここで、振動減衰装置61cとしては、多孔質材を挙げることができる。この多孔質材は材質として多くの孔を持つ構造であり、例えば、シリコン(Si)、ガラス材料、カーボン材料、高分子材料等である。
【0059】
また、供給ノズル61から被処理面W1に供給される液体には、気体供給部43から供給される気体が混合されるが、予め液体に所定の気体を溶解させておくことも可能である。このように液体に気体を溶解させておくことで、発生させるOHラジカルの量を制御することができる。溶解させる気体としては、例えば、水素(H2)、ヘリウム(He)、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)、アルゴン(Ar)、アンモニア(NH3)等を挙げることができる。
【0060】
さらに、液体に過飽和となるように溶解させることもできる。この場合には、例えば、図5においては図示していないが、溶解槽にて気体を加圧状態で大気飽和濃度以上に溶解させ、供給ノズル61への供給前に圧力開放装置(例えば、バルブやオリフィス)を介してその圧力を開放する。これにより圧力の開放とともに液体に気泡が大量に導入される。
【0061】
このような構成を採用することによって、液体に気泡を大量に導入することが可能となるとともに、超音波発生装置、振動減衰装置を利用することでキャビテーションを圧壊させてOHラジカルを潤沢に発生させつつも、さらに振動減衰装置によって超音波の振動は被処理面W1へは伝達されない。従って、洗浄対象となる基板近傍にてOHラジカルを含む処理液を潤沢に供給させることが可能となり、基板上に付着した有機物等のパーティクルを効果的に除去することのできる基板処理装置及び基板処理方法を提供することができる。
【0062】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上述した被処理面上に液が供給される際のその液の温度について、処理室(処理ボックス)内の温度よりも低い温度で供給することができる。このような低温の液は高温の液に比べて多量の溶解ガスをその液内に含むことが可能であり、低温の液を利用することで多量のOHラジカルの供給を行うことができる。
【0063】
また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0064】
1,31,51…基板処理装置、2…処理ボックス、3…カップ、4…保持テーブル、4a…挟持部材、5…回転機構、6…移動機構、11,21,41…第1のノズル、11a…光触媒、11b…保持部材、11c…光源、12…第2のノズル、22…光触媒、22a…酸化チタン、22b…金属触媒、42…液体供給部、43…気体供給部、M…液膜、W…ウエーハ、W1…被処理面。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象である基板上の被処理面を洗浄する第1のノズルと、
前記被処理面の上に液を供給する第2のノズルと、を備え、
前記第1のノズルは、前記被処理面に対向し前記液に接触する光触媒と、前記光触媒を保持する保持部材と、前記保持部材を透過して前記光触媒に光を照射する光源とを備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記光触媒は、酸化チタン及び前記酸化チタンと電気的に接続される金属触媒とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記酸化チタンから対向する前記被処理面までの距離と前記金属触媒から対向する前記被処理面までの距離は、前者が後者よりも短く前記被処理面に近い位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第2のノズルから供給される前記液は、気体を溶解させた液、或いは、バブルであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第1のノズルは、前記被処理面に気体により液体を液滴化して噴射するノズル孔を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第1のノズルは、さらに超音波発生装置を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
第1のノズルから供給される前記液体、前記第2のノズルから供給される前記液の温度は、処理室内の温度よりも低い温度であることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
処理対象である基板上の被処理面に処理液を吐出して洗浄するノズルと、
前記処理液に超音波を印加する超音波発生装置と、
前記超音波が印加された前記処理液が吐出する位置に設けられる多孔質材で形成される前記超音波の振動を減衰させる装置と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
前記処理液には、気体が溶解されていることを特徴とする請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
処理対象である基板を保持して回転させる工程と、
前記基板の被処理面に対して液を第2のノズルから供給する工程と、
前記被処理面に対向し前記液に接触する光触媒と、前記光触媒を保持する保持部材と、前記保持部材を透過して前記光触媒に光を照射する光源とを備える第1のノズルにより前記被処理面を洗浄する工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項11】
処理対象である基板を保持して回転させる工程と、
基板上の被処理面に吐出する処理液に超音波を印加する工程と、
前記超音波が印加された前記処理液が吐出する位置に設けられる多孔質材で形成される前記超音波の振動を減衰させる装置により振動が減衰された前記処理液を前記被処理面に吐出して洗浄する工程と、
を備えていることを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−15293(P2012−15293A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149785(P2010−149785)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】