説明

基板処理装置

【課題】排気中の溶剤を回収することにより、排気中の溶剤濃度を低減して排気設備の負担を軽減できる。
【解決手段】処理槽1を囲うチャンバ11内に溶剤ノズル17を介して高濃度のイソプロピルアルコールの蒸気が供給される場合であっても、スタティックミキサ63により排気が純水と混合される。したがって、気体にイソプロピルアルコールの蒸気が含まれていても、純水とともに気液分離部53に送られるので、イソプロピルアルコールの蒸気は純水とともに排出される。その結果、気液分離部53からの排気中のイソプロピルアルコールの濃度を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶表示装置用のガラス基板(以下、単に基板と称する)等の基板に対して、処理液により洗浄、エッチング等の処理を行った後、溶剤蒸気により基板を乾燥する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、純水を貯留する処理槽と、処理槽の周囲を囲うチャンバと、処理槽内の処理位置と処理槽の上方にあたる乾燥位置とにわたって基板を昇降させる保持機構と、イソプロピルアルコール(IPA)の蒸気を発生させる蒸気発生部と、チャンバ内にイソプロピルアルコールの蒸気を供給するノズルと、チャンバ内の気体を排気する排気ポンプとを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような構成の装置では、まず、基板を保持した保持機構を処理位置に移動させ、純水に浸漬させた状態で基板を純水洗浄する。そして、ノズルからイソプロピルアルコールの蒸気を供給してチャンバ内を溶剤雰囲気にした後、基板を保持した保持機構を処理位置から乾燥位置へと移動させる。次いで、排気ポンプによってチャンバ内の気体を排気して減圧し、基板に付着しているイソプロピルアルコールの蒸気を乾燥させて基板を乾燥させる。
【特許文献1】特許第3585199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、プロセスの微細化に伴い、チャンバ内に供給される蒸気におけるイソプロピルアルコールの濃度が高められている場合がある。このような場合には、排気ポンプからの排気に含まれるイソプロピルアルコールの濃度が高くなるので、ユーザの排気設備(ユーティリティ)に負荷がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、排気中の溶剤を回収することにより、排気中の溶剤濃度を低減して排気設備の負担を軽減できる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、処理液により基板を処理した後、溶剤蒸気により基板を乾燥する基板処理装置において、処理液を貯留する処理槽と、前記処理槽内において基板を保持する保持手段と、前記処理槽の周囲を囲うチャンバと、前記チャンバ内に溶剤蒸気を供給する溶剤蒸気供給手段と、前記チャンバ内に一端側が接続された排気管を介して前記チャンバ内から気体を排気する排気手段と、前記チャンバ内に一端側が接続され、前記チャンバ内から処理液を排出する排液管と、前記排気管の他端側が接続され、前記排気手段により排気された気体を取り込むとともに、前記排液管の他端側が接続され、前記排液管を介して排出された処理液を取り込み、気体と液体とを分離する気液分離手段と、前記排気管に設けられ、前記排気手段により排気された気体に純水を混合させる混合手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、排気手段によりチャンバ内に一端側が接続された排気管を介してチャンバ内から排気された気体は、混合手段により純水と混合され、気液分離手段に取り込まれる。したがって、チャンバから排気された気体に溶剤蒸気が含まれていても、溶剤蒸気は純水に溶け込まれるので、気液分離手段から排気される気体に含まれる溶剤の濃度を低減できる。
【0008】
また、本発明において、前記混合手段は、気体と純水とを混合させるスタティックミキサと、前記スタティックミキサの上流側に純水を注入する注入部と、を備えていることが好ましい(請求項2)。注入部から純水を注入することにより、チャンバから排気された気体と純水とがスタティックミキサで混合されるので、純水に溶剤蒸気を十分に溶け込ませることができる。これにより、気液分離手段から排気される気体に含まれる溶剤の濃度をさらに低減できる。
【0009】
なお、ここでいうスタティックミキサは、駆動部がなく、純水と気体とを分割・転換・反転の作用により攪拌し、混合する混合器である。
【0010】
また、本発明において、前記気液分離手段内における溶剤の濃度を測定する溶剤濃度測定手段と、前記注入部へ注入される純水の流量を調整する制御弁と、前記溶剤濃度測定手段により測定された溶剤の濃度が高い場合、前記制御弁を制御して純水流量を増加させ、前記溶剤濃度測定手段により測定された溶剤の濃度が低い場合、前記制御弁を制御して純水流量を減少させる制御手段と、をさらに備えていることが好ましい(請求項3)。制御手段は、溶剤濃度測定手段により測定された溶剤の濃度が高い場合、制御弁を制御して純水流量を増加させ、溶剤濃度測定手段により溶剤の濃度が低い場合、制御弁を制御して純水流量を減少させるので、チャンバから排気された気体に含まれる溶剤濃度の変動にかかわらず、溶剤濃度を低減することができる。
【0011】
また、本発明において、前記気液分離手段から排気管を介して気体を排出する排出部と、前記排気管に設けられ、前記排出部から排出された気体を圧縮及び冷却することにより気体を液化させる液化手段と、をさらに備えていることが好ましい(請求項4)。液化手段は、排出部から排出された気体を圧縮及び冷却することにより気体を液化させているので、気液分離手段から排気される気体に含まれる溶剤の濃度をさらに低減できる。
【0012】
また、本発明において、前記液化手段は、前記排気管の流路を絞るオリフィスと、前記オリフィスの外周面から気体を冷却する冷却手段とを備え、前記オリフィスの下流側に前記液化手段により液化された溶剤を流下させることが好ましい(請求項5)。冷却手段は、オリフィスの外周面から気体を冷却し、冷却手段により液化された溶剤を流下させているので、気体に含まれる溶剤を効率的に液化し、排出できる。
【0013】
また、本発明において、前記液化手段は、前記排気管の流路内に設けられた冷却手段と、前記冷却手段の下流側に設けられた排液管とを備え、前記排液管を介して前記冷却手段により液化された溶剤を流下させることが好ましい(請求項6)。冷却手段は、排気管の流路内に設けられており、この冷却手段により排気管の気体を冷却し、排液管を介して冷却手段により液化された溶剤を流下させているので、気体に含まれている溶剤を効率的に液化し、排出できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る基板処理装置によれば、排気手段により排気管を介してチャンバ内から排気された気体は、混合手段により純水と混合され、気液分離手段に取り込まれるので、チャンバから排気された気体に溶剤蒸気が含まれていても、溶剤蒸気は純水に溶け込まれるので、気液分離手段から排気される気体に含まれる溶剤の濃度を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態について、混合手段と気液分離手段による例を説明する。
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
図1は、実施例に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【0017】
実施例に係る基板処理装置は、処理液を貯留する処理槽1を備えている。この処理槽1は、処理液を貯留し、起立姿勢とされた複数枚の基板Wを収容可能である。処理槽1の底部には、複数枚の基板Wが整列されて方向(紙面方向)に沿って長軸を有し、処理液を供給するための二本の噴出管3が配設されている。各噴出管3には、供給管5の一端側が接続され、供給管5の他端側が処理液供給源7に連通接続されている。供給管5における処理液の流量は、制御弁からなる処理液弁9で調整される。
【0018】
処理槽1は、その上部がチャンバ11で囲われている。チャンバ11は、上部に開閉自在の上部カバー13を備えている。起立姿勢で複数枚の基板Wを保持するリフタ15は、チャンバ11の上部にあたる「待機位置」と、処理槽1の内部にあたる「処理位置」と、処理槽1の上方であってチャンバ11の内部にあたる「乾燥位置」とにわたって移動可能である。
【0019】
上部カバー13の下方であってチャンバ11の上部内壁には、一対の溶剤ノズル17と、一対の不活性ガスノズル19とが配設されている。溶剤ノズル17には、供給管21の一端側が連通接続されている。その他端側は、蒸気発生部23に連通接続されている。この供給管21には、その上流側から順に、溶剤蒸気の流量を調整するための制御弁からなる蒸気弁25と、溶剤蒸気の流量を検出する流量計27と、溶剤蒸気を加熱するためのインラインヒータ29とが配設されている。なお、供給管21は、従来装置よりも大径(9.52mm程度)で構成され、供給管21中における溶剤蒸気の流路抵抗を減らして蒸気発生部23から溶剤ノズル17への供給が円滑に行われる。
【0020】
蒸気発生部23は、蒸気発生空間である内部空間を所定温度にしたり、加熱して溶剤の蒸気を圧制させたりするためのヒータ(不図示)を内蔵しており、内部空間に溶剤を供給することにより溶剤が蒸気化される。この例における溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)が挙げられる。また、蒸気発生部23には、その内部空間を減圧するための真空ポンプ(不図示)が接続されている。
【0021】
なお、溶剤ノズル17が本発明における「溶剤蒸気供給手段」に相当する。
【0022】
不活性ガスノズル19には、供給管31の一端側が連通接続されている。供給管31の他端側は、不活性ガスを供給する不活性ガス供給源33に連通接続されている。供給管31には、その上流側から順に、流量制御のための制御弁からなる不活性ガス弁35と、不活性ガスを所定の温度に加熱するためのインラインヒータ37とが配設されている。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス(N)が挙げられる。
【0023】
チャンバ11の内部が減圧下であっても液体を排出可能な真空ポンプ39が配設されている。真空ポンプ39の吸入側には、排出管41の一端側が連通接続され、他端側がチャンバ11の底部に連通接続されている。この排出管41には、開閉操作用の真空弁43が取り付けられている。この真空ポンプ39は、減圧環境で排水も可能なように、封水型の真空ポンプ39であることが好ましい。
【0024】
なお、真空ポンプ39が本発明における「排気手段」に相当する。
【0025】
また、チャンバ11には、減圧状態を解消するための開閉弁からなる呼吸弁45が取り付けられているとともに、チャンバ11内の内部圧力を検出するための圧力計47が配設されている。
【0026】
処理槽1の底部には、排出口49が形成されている。この排出口49には、QDR弁51が取り付けられている。このQDR弁51から処理槽1内の処理液を排出すると、処理液がチャンバ11内の底部に一旦排出される。チャンバ11の底部には、気液分離部53に連通接続された排液管55が取り付けられ、ここには排液弁57が取り付けられている。気液分離部53は、排出管41及び排液管55から気体と液体等とを取り込むとともに、それらを分離して排出する。
【0027】
気液分離部53の詳細な構成については後述するが、気体及び液体を取り込むための取り込み口59を備えている。この取り込み口59には、排液管55の下流側が連通接続されているとともに、真空ポンプ39からの排気が送り込まれる排気管61の下流側が連通接続されている。
【0028】
排気管61には、真空ポンプ39と気液分離器53との間にスタティックミキサ63が取り付けられている。スタティックミキサ63の上流部には、純水を注入するための注入部65を備えている。流量制御弁67は、注入部65への純水の流量を制御する。なお、スタティックミキサ63は、詳細後述するが、駆動部がなく、流体を分割・転換・反転の作用により順次攪拌混合する機能を備えたものである。
【0029】
なお、気液分離部53が本発明における「気液分離手段」に相当し、スタティックミキサ63が本発明における「混合手段」に相当する。
【0030】
次に、図2を参照する。なお、図2は、スタティックミキサの概略構成を示す縦断面図である。
【0031】
スタティックミキサ63は、筒状を呈する本体部69と、本体部69内に、直列的に配置された複数個のエレメント71とを備えている。各エレメント71は、長方形の板部材を180°ねじった形に形成され、隣接するエレメント71はそれぞれ逆方向にねじって形成されたものである。このスタティックミキサ63は、上述した注入部65を上流側に備え、排気管61を流通する排気(空気、窒素、溶剤蒸気、水蒸気などを含む)に対して純水を注入して、それらを分割・転換・反転の作用で攪拌混合する。このように混合することにより、気液分離部53による気体と液体の分離効率を向上させることができる。
【0032】
次に、図3を参照する。なお、図3は、気液分離部の概略構成を示す縦断面図である。
【0033】
気液分離部53は、ハウジング73と、ハウジング73底部の導入部74と、導入部74からの排気及び排液を濾過するフィルタ75と、フィルタ75を通過したもののうち、比重が大きいものを貯留する第1貯留部77と、比重が小さいものを貯留する第2貯留部79と、導入部74に排気及び排液を取り込む取り込み口59と、第1貯留部77内の液体を排出する第1排出部81と、第2貯留部79の気体を排出する第2排出部83と、ハウジング73の外壁に沿って配設され、間接的にフィルタ75を冷却するための冷却パイプ85とを備えている。フィルタ75は、微分散した遊離液を超極細繊維フィルタにより捕捉し、凝集して粗大化する機能を備え、ミクロンオーダに微分散した遊離液をミリメートルオーダに粗大化させて、比重差によって瞬時に完全二層系に分散する。また、ハウジング73の上部には、第2貯留部79内における溶剤濃度を測定するための濃度計87が取り付けられている。
【0034】
なお、冷却パイプ85は、フィルタ75の温度が、排気の温度よりも低い温度となるように冷却を行う。例えば、イソプロピルアルコールの蒸気の温度が50℃である場合には、50℃よりもフィルタ75の温度度が低くなるようにすればよい。
【0035】
上述したリフタ15の昇降や、真空ポンプ39の作動/停止、インラインヒータ29,37の温度制御、処理液弁9、蒸気弁25、不活性ガス弁35、真空弁43、呼吸弁45、QDR弁51、流量制御弁67などの制御弁の開閉制御などは、本発明における「制御手段」に相当する制御部89が統括的に制御する。また、圧力計47及び濃度計87の出力信号は、制御部89に与えられる。
【0036】
また、制御部89は、濃度計87の出力信号を参照して、溶剤濃度が高い場合には、純水流量を増加させるように流量制御弁67を操作し、溶剤濃度が低い場合には、純水流量を減少させるように流量制御弁67を操作する。これにより、排気中の溶剤濃度が高い場合には純水を増やして排気中の溶剤を取り込みやすくすることができ、排気中の溶剤濃度が低い場合には純水を減らして純水の消費量を抑制できる。その結果、排気中の溶剤濃度の変動に関わらず、溶剤濃度を低減できる。
【0037】
次に、図4を参照する。なお、図4は、液化ユニットの概略構成を示す縦断面図である。
第2排出部83の排気管に、排気管の流路を絞って流路断面積を小さくしたオリフィス91と、オリフィス91の外周面に配設され、オリフィス91を流通する流体を冷却する冷却部93とを備えた液化ユニット95を備えている。冷却部93は、排気温度よりも低い温度となるように冷却を行う。例えば、イソプロピルアルコールの蒸気の温度が50℃である場合には、50℃より低くなるようにすればよい。
【0038】
冷却部93としては、例えば、ペルチェ素子による冷却方式や、管路に冷媒を流通させる冷却方式が採用可能である。気体には、イソプロピルアルコールの蒸気が含まれるので、防爆の観点から冷媒による冷却が好ましい。
【0039】
また、オリフィス91には、気体との接触面積を増大させるためのラビリンス構造を有する冷却部材97を備えることが好ましい。この冷却部材97は、冷却される部分と、排気を通過させる部分とを備えた網状体99を複数備え、流路方向からみて、隣接する網状体99同士の気体を通過させる部分が重ならないように配置されている。そのため、気体はいずれかの網状体99の冷却部分に接触しながら流通するので、冷却効果を向上できる。
【0040】
次に、図5を参照して、上述した装置の動作について説明する。なお、図4は、動作を示すフローチャートである。
【0041】
ステップS1,S2
制御部89は、上部カバー13を開放し、未処理の基板Wを複数枚保持しているリフタ15を「待機位置」からチャンバ11内の「乾燥位置」へ移動させる。このとき、排液弁57は開放されたままである。次に、制御部89は、チャンバ11内の酸素濃度低減処理を行う。具体的には、不活性ガス弁35を開放し、不活性ガス供給源33から供給管31、不活性ガスノズル19を介してチャンバ11内に不活性ガスを供給させる。これにより、チャンバ11及び処理槽1の内部にある空気が不活性ガスによってパージされ、その結果、チャンバ11内の酸素濃度が低減される。さらに、リフタ15を「乾燥位置」から処理槽1内の「処理位置」にまで下降させる。
【0042】
ステップS3
制御部89は、処理液弁9を開放する。これにより処理液供給源7から薬液が処理液として処理槽1に供給され、処理槽1の上部から溢れた処理液がチャンバ11の底部で回収される。回収された処理液は、排液管55を介して気液分離部53で回収され、第1排出部81を通して排液処理部(不図示)に排出される。この状態を所定時間だけ維持して、基板Wに対して処理液による処理を行う。
【0043】
ステップS4
薬液処理を開始して所定時間が経過すると、制御部89は、リフタ15を「処理位置」に維持させたまま、処理液供給源7からの薬液に代えて純水を処理液として処理液として供給させる。そして、その状態を所定時間だけ維持して、基板Wを純水で洗浄する。
【0044】
ステップS5,S6
純水洗浄処理が完了すると、制御部89は、呼吸弁45を閉止してチャンバ11の内部を閉塞させるとともに、真空ポンプ39を作動させて、チャンバ11内の気体を排出管41に排出してチャンバ11内を減圧状態にさせ始める。制御部89は、圧力計47の出力信号に基づいて、チャンバ11内が所定圧力になったか否かを判断し、所定圧力となるまで真空ポンプ39による減圧を行う。
【0045】
ステップS7
制御部89は、インラインヒータ29を所定温度の加熱モードに設定するとともに、所定流量となるように調整した蒸気弁25を開放する。これにより、蒸気発生部23で発生されたイソプロピルアルコール(IPA)の蒸気が、チャンバ11内との圧力差により、所定の温度に加熱された状態で供給管21、溶剤ノズル17を介してチャンバ11内に供給される。このようにキャリアガスを用いることなく圧力差によってイソプロピルアルコールの蒸気を供給するので、チャンバ11内に高濃度のイソプロピルアルコールの蒸気を供給できる。
【0046】
ステップS8
上述したようにしてイソプロピルアルコールの蒸気をチャンバ11内に供給し始めると、蒸気がチャンバ11の内部を満たすとともに、処理槽1に貯留されている純水の液面が次第にイソプロピルアルコールの蒸気により置換される。その所定時間後、制御部89は、リフタ15を「処理位置」から「乾燥位置」へ上昇させる。
【0047】
ステップS9
制御部89は、真空ポンプ39による減圧を再開させて、排出管41を介してチャンバ11内の気体、つまり窒素、イソプロピルアルコールの蒸気、処理槽1やチャンバ11に付着している水滴からの水蒸気などが排気される。また、排気管61には、封水型の真空ポンプ39から出される封水が排気とともに流入する。この排気は、気液分離部53に送られる前にスタティックミキサ63により攪拌・混合される。そのため、イソプロピルアルコールの蒸気は、気液分離部53により純水に混合されて液体の状態で排液される。この処理(混合分離処理)は、IPA蒸気が停止される時点まで、あるいは停止されてから所定時間が経過した時点で停止される。。
【0048】
これにより、「乾燥位置」にある基板Wの表面に付着している純水がイソプロピルアルコールの蒸気によって置換される。
【0049】
ステップS10
次に、制御部89は、蒸気弁25を閉止するとともに、真空ポンプ39を停止させる。このときチャンバ11内の減圧が維持され、基板Wに対して減圧乾燥が継続的に行われている。その所定時間後、不活性ガス弁35を開放して不活性ガスノズル19から不活性ガスをチャンバ11内に導入するとともに、呼吸弁45を開放して、チャンバ11内の圧力を大気圧に戻す。
【0050】
ステップS11
制御部89は、不活性ガス弁35を閉止するとともに、上部カバー13を開放するとともに、リフタ15を「乾燥位置」からチャンバ11外の「待機位置」へと上昇させる。その後、制御部89は、処理液弁9、排液弁57、不活性ガス弁35を開放する。これにより次なる基板Wの処理のために、新たな処理液を処理槽1に供給させるとともに、チャンバ11内を不活性ガスで充満させておく。
【0051】
上述したように、本実施例装置によると、処理槽1を囲うチャンバ11内に溶剤ノズル17を介して高濃度のイソプロピルアルコールの蒸気が供給される場合であっても、スタティックミキサ63により排気が純水と混合される。したがって、排気にイソプロピルアルコールの蒸気が含まれていても、純水とともに気液分離部53に送られるので、イソプロピルアルコールの蒸気は純水とともに排出される。その結果、気液分離部53からの排気中のイソプロピルアルコールの濃度を低減できる。
【0052】
また、注入部65から純水を注入することにより、排気と純水とがスタティックミキサ63で効率的に混合されるので、排気中のイソプロピルアルコールと純水等の液体と気体とを均等に混合することができる。したがって、気液分離部53で気液の分離精度を高くできるので、排気中のイソプロピルアルコールの濃度をより低減できる。
【0053】
なお、本実施例では、混合手段としてスタティックミキサ63を備えているが、これに代えて可動部を備えたミキサを採用してもよい。
【0054】
また、本実施例では、注入部65を備え、純水と排気とを混合する構成とし、さらに純水の流量を気液分離部73におけるイソプロピルアルコール濃度によって調整するようにしているが、注入部65及び流量制御弁67を省略して、単にスタティックミキサ63で混合するようにしてもよい。これにより構成を簡易化でき、制御部89の負荷を軽減することができる。
【0055】
さらに本実施例によると、気液分離部53の第2排出部83から排出された気体は、液化ユニット95により圧縮及び冷却されるので、気体に含まれるイソプロピルアルコールの蒸気が凝縮されて液体にされる。したがって、気体にイソプロピルアルコールの蒸気が含まれていても、液体にされて液化ユニット95内において流下させられるので(図4参照)、イソプロピルアルコールの蒸気は液体として排出される。その結果、気液分離部53からの排気中の気体に含まれるイソプロピルアルコールの濃度を低減できる。
【0056】
また、本実施例によると、オリフィス91により排気を圧縮し、さらに冷却部93で冷却するので、排気に含まれる溶剤を効率よく凝縮させることができる。
【0057】
なお、上述した液化ユニット95に代えて、図6に示すような液化ユニット95Aを採用してもよい。
【0058】
ここで、図6を参照する。なお、図6は、液化ユニットの他の構成を示す縦断面図である。
【0059】
この液化ユニット95Aは、第2排出部83の排気管の流路内に冷却部93を備え、その下流に排液管101を備えている。上述した液化ユニット95のようにオリフィス91を備えていないが、流路内に冷却部93を備えているので、結果として流路が狭められ、上述した液化ユニット95と同様の作用効果を奏する。また、冷却部93によって直接的に排気を冷却するので、液化効率を高くできる。凝縮した溶剤は、排液管101に流下されて排液される。
【0060】
なお、上記の液化ユニット95,95Aが本発明における「液化手段」に相当し、上記の冷却部93が本発明における「冷却手段」に相当する。
【0061】
また、液化ユニット95(95A)の前段に、排気圧力を高めるブロア(加圧器)を備えるようにして、圧縮による液化効果を高めるようにしてもよい。
【0062】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0063】
(1)上述した実施例では、処理槽1が単槽で構成されているが、例えば、内槽と、内槽から溢れた処理液を回収する外槽とを備えた複槽式を採用してもよい。
【0064】
(2)上述した実施例では、溶剤としてイソプロピルアルコールを例示しているが、本発明はこの溶剤に限定されるものではなく、他の溶剤であっても同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
(3)上述した各実施例では、チャンバ11に窒素ガスを供給して酸素濃度低減を図る構成を備えているが、必ずしもこの構成を備える必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施例に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】スタティックミキサの概略構成を示す縦断面図である。
【図3】気液分離部の概略構成を示す縦断面図である。
【図4】液化ユニットの概略構成を示す縦断面図である。
【図5】動作を示すフローチャートである。
【図6】液化ユニットの他の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 … 処理槽
3 … 噴出管
5 … 供給管
11 … チャンバ
13 … 上部カバー
15 … リフタ
17 … 溶剤ノズル
39 … 真空ポンプ
51 … QDR弁
53 … 気液分離部
63 … スタティックミキサ
87 … 濃度計
89 … 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液により基板を処理した後、溶剤蒸気により基板を乾燥する基板処理装置において、
処理液を貯留する処理槽と、
前記処理槽内において基板を保持する保持手段と、
前記処理槽の周囲を囲うチャンバと、
前記チャンバ内に溶剤蒸気を供給する溶剤蒸気供給手段と、
前記チャンバ内に一端側が接続された排気管を介して前記チャンバ内から気体を排気する排気手段と、
前記チャンバ内に一端側が接続され、前記チャンバ内から処理液を排出する排液管と、
前記排気管の他端側が接続され、前記排気手段により排気された気体を取り込むとともに、前記排液管の他端側が接続され、前記排液管を介して排出された処理液を取り込み、気体と液体とを分離する気液分離手段と、
前記排気管に設けられ、前記排気手段により排気された気体に純水を混合させる混合手段と、
を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記混合手段は、気体と純水とを混合させるスタティックミキサと、前記スタティックミキサの上流側に純水を注入する注入部と、を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記気液分離手段内における溶剤の濃度を測定する溶剤濃度測定手段と、
前記注入部へ注入される純水の流量を調整する制御弁と、
前記溶剤濃度測定手段により測定された溶剤の濃度が高い場合、前記制御弁を制御して純水流量を増加させ、前記溶剤濃度測定手段により測定された溶剤の濃度が低い場合、前記制御弁を制御して純水流量を減少させる制御手段と、
をさらに備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記気液分離手段から排気管を介して気体を排出する排出部と、
前記排気管に設けられ、前記排出部から排出された気体を圧縮及び冷却することにより気体を液化させる液化手段と、
をさらに備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置において、
前記液化手段は、
前記排気管の流路を絞るオリフィスと、
前記オリフィスの外周面から気体を冷却する冷却手段とを備え、
前記オリフィスの下流側に前記液化手段により液化された溶剤を流下させることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載の基板処理装置において、
前記液化手段は、
前記排気管の流路内に設けられた冷却手段と、
前記冷却手段の下流側に設けられた排液管とを備え、
前記排液管を介して前記冷却手段により液化された溶剤を流下させることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−152395(P2009−152395A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328927(P2007−328927)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】