説明

基板処理装置

【課題】 プラズマ源が処理容器から離れていても、ラジカル又はプラズマを失活させることなく処理容器へ導入することが可能な基板処理装置を提供すること。
【解決手段】 被処理基板Wに対して処理を施す処理容器21と、ラジカル又はプラズマを生成するプラズマ源26と、プラズマ源26で生成されたラジカル又はプラズマを、処理容器21に導入する導入配管30と、を備え、導入配管30の内壁が、ダイヤモンドライクカーボン膜31、又はC−H系膜でコーティングされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ等の被処理基板に処理を行う基板処理装置に係わり、特に、リモートプラズマ源を用いた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の超高速半導体装置では、微細化プロセスの進歩とともに、0.1μm以下のゲート長が可能になりつつある。ゲート長が0.1μm以下になると、ゲート絶縁膜の膜厚は、熱酸化膜を使った場合には1〜2nm、あるいはそれ以下に設定されなければならない。非常に薄いゲート絶縁膜では、トンネル電流が増大し、その結果ゲートリーク電流が増大する、という事情がある。
【0003】
このような事情から、実際の膜厚が厚くても、SiO膜に換算した場合の膜厚を薄くできるTa、Al、ZrO、HfO、ZrSiO、あるいはHfSiOのような高誘電体材料(いわゆるHigh−k材料)が、ゲート絶縁膜に適用されるようになってきている。ゲート絶縁膜に高誘電体材料を用いる場合には、シリコン基板表面と高誘電体材料との間に、好ましくは0.4nm程度の膜厚のシリコン酸化膜、あるいはシリコン酸窒化膜を形成するのが望ましい、とされている。
【0004】
このように非常に薄いシリコン酸化膜、あるいはシリコン酸窒化膜を成膜する成膜装置としてはリモートプラズマ源を用いるものがあり、例えば、特許文献1、2などに記載されている。
【特許文献1】再表2005−48337号公報
【特許文献2】特開2007−73539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成膜プロセスにおいて、処理容器、例えば、プロセスチャンバ等を高温に制御する場合、リモートプラズマ源器機の許容温度によっては、リモートプラズマ源をプロセスチャンバから離れた位置に設置しなければならない。この場合にはリモートプラズマ源で生成されたラジカル又はプラズマは、SUS配管等からなる導入配管を用いてプロセスチャンバに導入しなければならない。
【0006】
しかしながら、導入配管のコンダクタンスあるいは曲り形状によってラジカルが失活し、所望のプロセス性能が得られない懸念がある。特に、導入配管がSUS等の金属である場合には、ラジカルが内壁に衝突すると、電子授受により基底状態となることが想定される。
【0007】
この発明は、プラズマ源が処理容器から離れていても、ラジカル又はプラズマを失活させることなく処理容器へ導入することが可能な基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明の一態様に係る基板処理装置は、被処理基板に対して処理を施す処理容器と、ラジカル又はプラズマを生成するプラズマ源と、前記プラズマ源で生成されたラジカル又はプラズマを、前記処理容器に導入する導入配管と、を備え、前記導入配管の内壁が、ダイヤモンドライクカーボン膜、又はC−H系膜でコーティングされている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、プラズマ源が処理容器から離れていても、ラジカル又はプラズマを失活させることなく処理容器へ導入することが可能な基板処理装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。参照する図面全てにわたり、同一の部分については同一の参照符号を付す。この説明においては、この発明を基板処理装置として、半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)上に薄膜を成膜する成膜装置に適用した場合について示す。
【0011】
図1はこの発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成の一例を示す断面図である。
【0012】
図1に示すように、基板処理装置20は、ヒーターを備え、プロセス位置と基板搬入・搬出位置との間を上下動自在に設けられた基板保持台22を収納し、基板保持台22と共にプロセス空間21Bを画成する処理容器21を備えており、基板保持台22は駆動機構22Cにより回動される。なお、処理容器21の内壁面は石英ガラスよりなる内部ライナ(図示せず)により覆われており、これにより、露出金属面からの被処理基板の金属汚染を抑制している。
【0013】
処理容器21はゲートバルブ27Aを介して基板搬送ユニット27に結合されており、基板保持台22が搬入・搬出位置に下降した状態において、ゲートバルブ27Aを介して基板搬送ユニット27からウエハWが基板保持台22上に搬送され、また処理済みのウエハWが基板保持台22から基板搬送ユニット27に搬送される。
【0014】
本例の基板処理装置20では、処理容器21のゲートバルブ27Aに近い部分に排気口21Aが形成されており、排気口21Aにはバルブ23AおよびAPC(自動圧力制御装置、図示せず)を介してターボ分子ポンプ(TMP)23Bが結合されている。ターボ分子ポンプ23Bには、さらにドライポンプ(DP)24がバルブ23Cを介して結合されており、ターボ分子ポンプ23Bおよびドライポンプ24を駆動することにより、プロセス空間21Bの圧力を1.33×10−1〜1.33×10−4Pa(10−3〜10−6Torr)まで減圧することが可能になる
一方、排気口21Aはバルブ24Aおよび別のAPC(図示せず)を介して直接にポンプ24に結合されており、バルブ24Aを開放することにより、プロセス空間21Bは、ポンプ24により1.33Pa〜1.33kPa(0.01〜10Torr)の圧力まで減圧される。
【0015】
処理容器21には、ウエハWを隔てて排気口21Aと対向する側に酸素ガスを供給される処理ガス供給ノズル21Dが設けられており、処理ガス供給ノズル21Dに供給された酸素ガスは、プロセス空間21B中をウエハWの表面に沿って流れ、排気口21Aから排気される。
【0016】
このように処理ガス供給ノズル21Dから供給された処理ガスを活性化し酸素ラジカルを生成させるため、本例の基板処理装置20では処理容器21上に、処理ガス供給ノズル21DとウエハWとの間の領域に対応して石英窓25Aを有する、好ましくは波長が172nmのエキシマランプよりなる紫外光源25が設けられる。すなわち紫外光源25を駆動することにより処理ガス供給ノズル21Dからプロセス空間21Bに導入された酸素ガスが活性化され、その結果形成された酸素ラジカルがウエハWの表面に沿って流れる。これにより、ウエハWの表面に、1nm以下の膜厚の、特に2〜3原子層分の厚さに相当する約0.4nmの膜厚のラジカル酸化膜を一様に形成することが可能になる。
【0017】
ラジカル酸化膜の形成工程では、バルブ24Aを閉じバルブ23Aを開放することにより、プロセス空間21Bは、酸素ラジカルによるウエハWの酸化処理に適した1.33×10−1〜1.33×10−4Pa(10−3〜10−6Torr)の圧力範囲まで減圧される。
【0018】
また、処理容器21のウエハWに対して排気口21Aと対向する側には、プラズマ導入口21Cが設けられている。プラズマ導入口21Cは導入配管30を介してリモートプラズマ源26に接続される。リモートプラズマ源26にArなどの不活性ガスと共に窒素ガスを供給し、これをプラズマにより活性化することにより、窒素ラジカルを形成することが可能である。このようにして形成された窒素ラジカルはウエハWの表面に沿って流れ、ウエハWの表面を窒化する。プラズマ窒化処理の場合には、バルブ23Aを閉じ、バルブ24Aを開放することにより、プロセス空間21Bは、1.33Pa〜1.33kPa(0.01〜10Torr)の圧力まで減圧される。このようなプラズマ窒化処理を行うことにより、膜厚が0.4nm前後の非常に薄い酸化膜を窒化処理することが可能になる。
【0019】
図2は、図1に示す基板処理装置20においてリモートプラズマ源26として使われる高周波プラズマ源の一例を示す断面図である。
【0020】
図2に示すように、リモートプラズマ源26は、内部にガス循環通路26aとこれに連通したガス入り口26bおよびガス出口26cを形成された、典型的にはアルミニウムよりなるブロック26Aを含み、ブロック26Aの一部にはフェライトコア26Bが形成されている。ブロック26Aの一部には、直流遮断のための絶縁部材26dcが形成されている。
【0021】
ガス循環通路26aおよびガス入り口26b、ガス出口26cの内面にはアルマイト処理膜26dが形成されており、さらにアルマイト処理膜26dにはフッ素樹脂が含浸されている。フェライトコア26Bに巻回されたコイルに垂直に周波数が400kHzの高周波(RF)パワーを供給することにより、ガス循環通路26a内にプラズマ26Cが形成される。
【0022】
プラズマ26Cの励起に伴って、ガス循環通路26a中には窒素ラジカルおよび窒素イオンが形成されるが、直進性の強い窒素イオンは循環通路26aを循環する際に消滅し、ガス出口26cからは主に窒素ラジカルN*が放出される。さらに、本例では、ガス出口26cに接地されたイオンフィルタ26eを設けることにより、窒素イオンをはじめとする荷電粒子が除去され、処理空間21Bには窒素ラジカルのみが供給される。また、イオンフィルタ26eを接地させない場合においても、イオンフィルタ26eの構造は拡散板として作用するため、十分に窒素イオンをはじめとする荷電粒子を除去することができる。なお、大量の窒素ラジカルを必要とするプロセスを実行する場合においては、イオンフィルタ26eでの窒素ラジカルの衝突による消滅を防ぐ為、イオンフィルタ26eを取り外す場合もある。ガス出口26cは、上述の導入配管30に接続される。本例の導入配管30は金属製、一例を挙げればSUS製である。図3A及び図3Bに、導入配管30の例を示す。
【0023】
図3A及び図3Bに示すように、本例の導入配管30は、その内壁が、ダイヤモンドライクカーボン膜31でコーティングされている。ダイヤモンドライクカーボン膜31の膜厚の一例は、1nm乃至20nmである。導入配管30は、本例では金属製、例えば、SUSであるが、ダイヤモンドライクカーボン膜31は絶縁性である。このため、導入配管30の中でラジカル又はプラズマが、導入配管30の内壁に衝突したとしても電子授受は抑制される。例えば、導入配管30が、図3Bに示すように屈曲し、ラジカル又はプラズマが衝突しやすい形状になっていた、としても、ラジカル又はプラズマの失活を抑制することができる。また、このような失活抑制は、ダイヤモンドライクカーボン膜の他、C−H系膜を導入配管30の内壁にコーティングすることでも可能である。
【0024】
また、ダイヤモンドライクカーボン膜、又はC−H系膜は、C、又はCとHのみである。半導体装置に有害となる汚染物質を含まない。このため、導入配管30の内壁にコーティングしたとしても、半導体装置の製造に影響はない。
【0025】
さらに、ダイヤモンドライクカーボン膜、又はC−H系膜は、ガス放出速度が小さい。このため、処理容器21の内部を減圧して処理を施す場合にも対応できる。即ち、処理容器21が減圧されて導入配管30も減圧状態になった、としても、ダイヤモンドライクカーボン膜、又はC−H系膜によるコーティングは揮発し難い。このため、長期間の使用に耐えることができる。例えば、ダイヤモンドライクカーボン膜、又はC−H系膜のガス放出速度はPTFEよりも小さい。このため、導入配管30の内壁をPTFEでコーティングした場合に比較して、より長い期間、導入配管30を交換せずに済み、メンテナンスの省力化も図ることができる。
【0026】
しかも、導入配管30が長くなったり、導入配管30が屈曲していたりしても、プラズマの失活を抑制できるので、リモートプラズマ源26の設置箇所に、自由度を持たせることができる。特に、処理容器21が高温制御される場合においては、リモートプラズマ源26を処理容器21から充分に離すことが可能となり、リモートプラズマ源26の不慮の故障等も抑制することができる。
【0027】
以上、この発明を一実施形態により説明したが、この発明は一実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。また、この発明の実施形態は、上記一実施形態が唯一の実施形態でもない。
【0028】
例えば、上記一実施形態では、リモートプラズマ源を用いた基板処理装置として、成膜プロセスに使用される成膜装置を例示したが、リモートプラズマ源を用いた基板処理装置はこれに限られるものではない。例えば、半導体ウエハのドライクリーニングプロセスに使用されるドライクリーニング装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】一実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成の一例を示す断面図
【図2】高周波プラズマ源の一例を示す断面図
【図3】導入配管の例を示す断面図
【符号の説明】
【0030】
20…基板処理装置、21…処理容器、26…リモートプラズマ源、30…導入配管、31…ダイヤモンドライクカーボン膜。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に対して処理を施す処理容器と、
ラジカル又はプラズマを生成するプラズマ源と、
前記プラズマ源で生成されたラジカル又はプラズマを、前記処理容器に導入する導入配管と、を備え、
前記導入配管の内壁が、ダイヤモンドライクカーボン膜、又はC−H系膜でコーティングされていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記導入配管が屈曲していることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記導入配管が金属製であることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記導入配管の内部が減圧されることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
ダイヤモンドライクカーボン膜、又はC−H系膜の厚さが、1nm以上20nm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか一項に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−239151(P2009−239151A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85605(P2008−85605)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】