説明

基板支持装置及び熱処理装置

【課題】基板を裏面側から支持装置により水平に支持するにあたり、当該基板と支持装置との接触による基板の裏面における傷の生成やパーティクルの発生を抑えること。
【解決手段】支持体本体31上に形成された複数の凹部41内に、磁性体からなる芯材42aと、この芯材42aの外周側を覆う被覆材42bと、を備えた転動体42を転動自在に収納し、これら転動体42の上面によりウエハWを裏面側から水平に支持すると共に、凹部41の下方側に位置規制機構43を設ける。そして、各々の位置規制機構43について、支持体本体31上に載置されるウエハWが水平方向に移動する場合、当該ウエハWの動きに倣って位置規制機構43の引きつける力に抗して転動体42が転動し、支持体本体31上にウエハWが載置されていない時には位置規制機構43の上方側に転動体42が戻るように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を裏面側から支持する基板支持装置及びこの基板支持装置を備えた熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する工程において、半導体ウエハなどの基板(以下「ウエハ」と言う)に対して、例えば真空雰囲気の処理容器内において数百℃程度の加熱処理が行われる場合がある。この加熱処理が行われた基板は、処理容器から真空搬送室に取り出された後、当該真空搬送室に気密に接続されたロードロック室に搬送されて例えば100℃程度まで冷却される。ロードロック室においてウエハの載置される載置台の内部には、ウエハを冷却するために、例えば冷却水の通流する冷媒路が引き回されている。
【0003】
このロードロック室では、ヒートショックによってウエハが割れないように、またウエハの裏面へのパーティクルの付着を抑えるために、載置台にウエハを直接載置(ベタ置き)せずに、載置台上に高さ寸法が例えば1mm程度のピンを複数箇所に配置して、当該ピンにより形成される隙間を介して載置台とウエハとを対向させている。そのため、載置台に載置されたウエハが冷却によって熱収縮すると、当該ウエハの裏面側とピンの上面とが擦れ合い、ウエハの裏面側に傷が形成されたり、パーティクルの発生したりするおそれがある。ウエハの裏面に傷が形成されると、その後の工程においてウエハに成膜される薄膜の膜厚にばらつきが生じて、露光工程において焦点が合わずに(デフォーカスとなり)パターンずれの起こってしまう場合がある。
また、既述の処理容器内においてウエハに対して加熱処理を行う時にも、この処理容器内の載置台上においてウエハが熱膨張する場合には、ウエハの裏面と当該載置台の表面に設けられたピンの上面とが擦れ合ってしまうおそれがある。
【0004】
更に、載置台にウエハが載置される時に、当該ウエハが撓んでいたり、あるいは載置台の表面に対してウエハが僅かに傾斜したりする場合には、複数のピンのうち例えば1つのピンにウエハが接触し、その後他のピンにウエハが接触することになる。そのため、前記1つのピンにウエハが接触した後、他のピンにウエハが接触する前に、ウエハの裏面側が当該1つのピンに対して擦れてしまう場合もある。この場合にも、同様にパターンずれやパーティクルの発生のおそれがある。
特許文献1には、ウエハチャックが記載されているが、既述の課題については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−193139
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板を裏面側から支持装置により水平に支持するにあたり、当該基板と支持装置との接触によって基板の裏面に傷やパーティクルの発生することを抑えることのできる基板支持装置及び熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基板支持装置は、
基板を裏面側から水平に支持する支持装置において、
非磁性体からなる支持体本体と、
この支持体本体の上面に形成された複数の凹部と、
基板を裏面側から水平に支持するために、前記凹部内において夫々転動自在に収納されると共に上面側が前記凹部から上方に突出するように構成され、磁性体及び磁石の少なくとも一方を含む転動体と、
前記凹部毎に設けられ、前記凹部内の転動体を磁力により引きつけて当該転動体の位置を規制するための磁石及び電磁石の少なくとも一方を有する位置規制機構と、を備え、
前記転動体の各々は、基板を支持していない時には前記位置規制機構に引きつけられる位置に転動するように構成されていることを特徴とする。
この基板支持装置は、以下のように構成しても良い。
【0008】
前記転動体の各々は、当該転動体が支持する基板の動きに倣って前記位置規制機構の磁力に抗して転動する構成。前記転動体上に基板を載置する前は前記転動体の位置を規制し、また前記転動体上に基板を載置する時は前記転動体の位置の規制を解除するように制御信号を出力する制御部を備えた構成。
前記位置規制機構は電磁石により構成され、
前記制御部は、前記位置規制機構に対する電流をオンにすることにより前記転動体の位置の規制を行い、前記位置規制機構に対する電流をオフにすることにより前記転動体の位置の規制の解除を行う構成。前記凹部内の転動体の位置を規制する領域と前記凹部内の転動体の位置の規制を解除する領域との間で前記位置規制機構を移動させる駆動部を備え、
前記制御部は、この駆動部を介して前記位置規制機構を移動させることによって前記転動体の位置の規制と解除とを行う構成。
【0009】
前記転動体の各々は、磁性体及び磁石の少なくとも一方からなる芯材と、この芯材を覆うように配置され、非磁性体からなる被覆材と、を備えている構成。
前記位置規制機構は、前記凹部の下方側に各々設けられ、
前記芯材は、当該芯材の中心位置が前記転動体の中心位置から外れて偏心するように配置され、
前記転動体は、前記位置規制機構の上方において前記芯材が当該転動体の下面側に偏心するように各々配置されている構成。
【0010】
前記位置規制機構は電磁石により構成され、
前記転動体の各々は、S極側の表面とN極側の表面とが転動により基板の裏面側に交互に対向するように構成された磁石からなる芯材を備え、
前記電磁石に供給する電流の向きを切り替えるための切り替え部と、
基板を支持する前記転動体の各々の表面がS極側の表面とN極側の表面とのいずれか一方となるように前記切り替え部に制御信号を出力する制御部と、を備えた構成。
前記位置規制機構は、一端側及び他端側が夫々S極及びN極となるように構成された磁石であり、
前記転動体の各々は、S極側の表面とN極側の表面とが転動により基板の裏面側に交互に対向するように構成された磁石からなる芯材を備え、
前記凹部の各々に前記位置規制機構の一端側及び他端側のいずれか一方が対向するように当該位置規制機構の向きを切り替える切り替え部と、
基板を支持する前記転動体の各々の表面がS極側の表面とN極側の表面とのいずれか一方となるように前記切り替え部に制御信号を出力する制御部と、を備えた構成。
【0011】
前記転動体は、前記芯材における一方側の表面を覆う第1の被覆材と前記芯材における他方側の表面を覆う第2の被覆材とを備え、
前記制御部は、前記支持体本体に載置される基板の種別に応じて、前記第1の被覆材と前記第2の被覆材のいずれか一方が当該基板の裏面側に当接するように制御信号を出力する構成。
前記凹部の各々の底面は、水平に形成されている構成。
【0012】
本発明の熱処理装置は、
前記いずれか一つに記載の基板支持装置と、
前記支持体本体を収納する容器と、
前記支持体本体上の基板に対して加熱及び冷却の少なくとも一方を行う熱処理機構と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、支持体本体の上面に形成された複数の凹部内に、転動自在に構成された磁性体及び磁石の少なくとも一方を含む転動体を各々収納し、これら転動体の上面により基板を裏面側から水平に支持している。そのため、熱膨張収縮により基板が転動体上において水平方向に移動しようとしても、あるいは基板の歪みや傾斜により基板が複数の転動体のうち一の転動体に始めに接触して当該一の転動体上において水平方向に位置ずれしながら他の転動体に接触しようとしても、転動体が転動することによって当該転動体と基板との摩擦を抑えることができる。従って、基板の裏面における傷の生成やパーティクルの発生を抑えることができる。また、基板を支持していない時は磁石及び電磁石の少なくとも一方を有する位置規制機構により各々の転動体の位置を規制しているので、複数枚の基板を順次支持する場合であっても、一の基板を支持した後転動体が元の位置から位置ずれしていても当該元の位置に戻すことができるので、複数の基板について各々の転動体が転動自在な位置において支持できる。更に、基板を支持している時においても転動体を位置規制機構側に引きつけることにより、転動体上において基板が水平方向に揺動(振動)することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の基板支持装置が適用された基板処理装置の一例を示す平面図である。
【図2】前記基板処理装置に設けられるロードロック室の一例を示す縦断面図である。
【図3】前記ロードロック室における載置台の一例を示す平面図である。
【図4】前記載置台の一部を拡大して示す縦断面図である。
【図5】前記基板処理装置に設けられる処理容器の一例を示す縦断面図である。
【図6】前記基板処理装置における作用を示す載置台の縦断面図である。
【図7】前記基板処理装置における作用を示す載置台の縦断面図である。
【図8】前記基板処理装置における作用を示す載置台の縦断面図である。
【図9】前記基板処理装置における作用を示す載置台の縦断面図である。
【図10】本発明の基板支持装置の他の例における載置台の一部を拡大して示す縦断面図である。
【図11】本発明の基板支持装置の更に他の例における作用を示す載置台の縦断面図である。
【図12】前記他の例における作用を示す載置台の縦断面図である。
【図13】本発明の基板支持装置の別の例における載置台の一部を拡大して示す縦断面図である。
【図14】本発明の基板支持装置の更に別の例における載置台の一部を拡大して示す縦断面図である。
【図15】前記別の例における基板支持装置の作用を示す載置台の縦断面である。
【図16】前記別の例における基板支持装置の作用を示す載置台の縦断面である。
【図17】本発明の基板支持装置の更にまた他の例における載置台の縦断面である。
【図18】前記他の例における作用を示す載置台の縦断面図である。
【図19】前記他の例における作用を示す載置台の縦断面図である。
【図20】前記基板支持装置の他の構成例を示す載置台の縦断面図である。
【図21】前記基板支持装置における転動体の構成例を示す載置台の縦断面図である。
【図22】前記転動体を示す載置台の平面図である。
【図23】前記基板支持装置における凹部の形状の例を示す載置台の縦断面図である。
【図24】前記転動体の形状の他の例を示す載置台の縦断面図である。
【図25】前記転動体の他の例を示す載置台の平面図である。
【図26】前記基板支持装置における位置規制機構の他の例における載置台の縦断面図である。
【図27】前記位置規制機構の他の例を示す載置台の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
本発明の基板支持装置を備えた基板処理装置の一例について、第1の実施の形態として以下に説明する。この基板処理装置は、図1に示すように、基板例えば半導体ウエハ(以下「ウエハ」と言う)Wに対して真空雰囲気において例えば数百℃程度に加熱する加熱処理を行う処理容器11と、内部の雰囲気を真空雰囲気と大気雰囲気との間で切り替えると共に処理容器11で加熱処理されたウエハWを冷却するためのロードロック室12と、これら処理容器11とロードロック室12との間に気密に接続された真空搬送室13と、を備えている。この例では、図1において真空搬送室13の手前側に2つのロードロック室12、12が配置されており、真空搬送室13の左右及び奥側に4つの処理容器11が設けられている。真空搬送室13の内部には、鉛直軸周りに回転自在に構成された真空搬送アーム14が設けられており、この真空搬送アーム14は、ウエハWを下方側から支持すると共にこれら4つの処理容器11及びロードロック室12、12に対して夫々アクセスできるように進退自在に構成された2枚のピック14aを備えている。尚、図1中Gはゲートバルブである。
【0016】
ロードロック室12、12の手前側には、内部の雰囲気が大気雰囲気に設定された大気搬送室15が接続されている。また、大気搬送室15の手前側には、例えば25枚のウエハWが収納されたFOUP16を載置するためのロードポート17が複数箇所例えば2箇所に設けられている。大気搬送室15の側方側には、ウエハWのアライメント(位置合わせ)を行うためのアライメント室18が接続されており、大気搬送室15内には、これらロードロック室12、ロードポート17及びアライメント室18との間においてウエハWの受け渡しを行うために、ロードポート17、17の並びに沿って水平に移動自在な大気搬送アーム19が設けられている。図1中19aは大気搬送アーム19に設けられたピックである。
【0017】
各々のロードロック室12は、図2に示すように、気密に構成された筐体である収納容器21と、この収納容器21内に設けられ、ウエハWを下方側から支持する基板支持装置である載置台22と、を備えている。収納容器21の床面には、この収納容器21内に窒素(N2)ガスなどの不活性ガスを供給するためのガス供給口23と、当該収納容器21内の雰囲気を真空排気するための排気口24と、が開口している。図2中23a及び23bは、夫々バルブなどを備えた流量調整部及びガス供給源である。また、図2中24a及び24bは、夫々バタフライバルブなどの流量調整部及び真空排気ポンプである。
【0018】
載置台22は、例えば直径寸法が300mmのウエハWを水平に載置するために概略円板状に形成された例えばアルミニウムなどの非磁性体からなる支持体本体31と、この支持体本体31を下方側から支持する支持軸32と、を備えている。支持体本体31には、当該支持体本体31を上下に貫通する貫通孔33が複数箇所例えば3箇所に形成されており、この貫通孔33を介して支持体本体31上に載置されるウエハWを下方側から突き上げるように、支持体本体31の下方側には3本のピン34aが昇降機構34によって昇降自在に設けられている。図2中34bはピン34aと昇降機構34とを接続する昇降軸であり、34cはベローズである。支持体本体31の内部には、既述の処理容器11にて熱処理されたウエハWを例えば100℃程度まで冷却するために、外部の図示しない冷媒貯留槽から冷却水などの冷媒が通流する熱処理機構をなす冷媒路36が水平方向に例えば蛇腹状に引き回されている。従って、このロードロック室12は、ウエハWに対して熱処理(冷却処理)を行うための熱処理装置をなしている。図2中35は、ピン34aと真空搬送アーム14あるいは大気搬送アーム19との間でウエハWの受け渡しを行うための搬送口である。
【0019】
続いて、支持体本体31について詳述する。この支持体本体31の上面には、図3及び図4にも示すように、概略円筒状の凹部41が複数箇所この例では9箇所に形成されている。具体的には、この凹部41は、支持体本体31に載置されるウエハWの外縁よりも内周側に例えば10mm程度離間した位置において周方向に等間隔となるように6箇所に配置されると共に、当該支持体本体31上のウエハWの中心位置よりも外周側に例えば100mm程度離れた位置において既述の貫通孔33、33間に各々位置するように周方向に等間隔に3箇所設けられている。これら凹部41は、開口径(直径寸法)Dが例えば3mm〜10mm、深さ寸法Hが例えば3.7mm〜9.7mmとなっている。尚、冷媒路36については、図4では図示を省略している。
【0020】
各々の凹部41内には、支持体本体31上においてウエハWを水平に支持するために、外表面が球状に形成された転動体42が収納されている。この転動体42の各々は、図4に示すように、例えば鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)あるいはこれら金属の合金や磁性流体を含む磁性体この例ではサマリウムコバルトからなる芯材42aと、この芯材42aを覆うように設けられた非磁性体この例ではダイヤモンドライクカーボン(diamond-like carbon)からなる被覆材42bと、を備えており、凹部41内において転動できるように構成されている。この例では、芯材42aは転動体42の中心部に配置されている。転動体42の外径寸法Rは例えば3〜7mm、芯材42aの外径寸法rは例えば2.999〜6.999mmとなっている。従って、各々の転動体42の上方側が凹部41から上方に突出しており、支持体本体31(転動体42)に載置されるウエハWの下面と当該支持体本体31の上面との間の離間寸法tは、例えば0.3mm〜2mmとなっている。尚、図4は図3におけるA−A線にて支持体本体31を切断した縦断面図であり、当該支持体本体31の中央側の領域については描画を省略している。
【0021】
各々の凹部41の下方側には、例えば磁性体からなる棒状体43aの外表面に導線43bをコイル状に巻回してなる電磁石が位置規制機構43として支持体本体31の内部に埋設されて(支持体本体31の表面よりも下方側に設けられて)おり、位置規制機構43の各々は、支持体本体31を上方側から見た時に各々の凹部41の中心部に位置するように配置されている。これら位置規制機構43には、当該位置規制機構43の上方側における凹部41内の領域に磁界を発生させ、この磁界により転動体42(芯材42a)を引きつけるために、例えば直流電流の供給される電源部44が互いに並列に接続されている。即ち、各々の位置規制機構43において、電源部44の2つの端子のうち一方側から伸びる導線43bが下方側から上方側に向かって棒状体43aに巻回されると共に、当該上方側において導線43bが下方側に向かって折り返されるように棒状体43aに巻回されて、電源部44の2つの端子のうち他方側に接続されている。これら位置規制機構43は、各々の転動体42に対して加えられる磁界の大きさ(転動体42を引きつける力)が揃うように、既述の棒状体43aの各寸法や導線43bの巻回回数などが互いに同じに構成されている。各々の位置規制機構43の幅寸法(位置規制機構43により凹部41内に形成される磁界の幅寸法)kは、例えば3mmとなっている。図4中45はスイッチである。尚、位置規制機構43について、図2及び図4では簡略化して示している。
【0022】
従って、凹部41内の転動体42は、位置規制機構43の磁界によって凹部41内の中央部にその位置が各々規制されていることになる。ここで、電源部44から各々の位置規制機構43に供給される電流値は、後述するように、支持体本体31(転動体42)上に載置されるウエハWが熱収縮などにより水平方向に移動する場合、当該ウエハWの動きに倣って位置規制機構43の引きつける力に抗して転動体42が転動(水平方向に移動)し、支持体本体31上にウエハWが載置されていない時には位置規制機構43の上方側に転動体42が戻るように設定されている。
【0023】
次に、既述の処理容器11について、図5を参照して簡単に説明する。この処理容器11内には、円板状の支持体本体51と、この支持体本体51を下方側から支持する支持軸52と、を備えた載置台53が設けられている。この支持体本体51上には、当該支持体本体51上に載置されるウエハWの裏面とこの支持体本体51の表面とを僅かに離間させるためのピン54が複数箇所に設けられている。支持体本体51の内部には、ウエハWを数百℃程度この例では300℃〜700℃に加熱するためのヒーター55が埋設されている。処理容器11の天井面には、支持体本体51上に載置されるウエハWに対向するように、処理容器11内に例えば窒素ガスなどを供給するためのガスシャワーヘッド57が設けられている。図5中56は電源であり、58はガス吐出孔である。尚、図5において既述の図2のロードロック室12と同じ部位については同じ符号を付して説明を省略しており、ガスシャワーヘッド57の一部を切り欠いて描画している。
【0024】
この基板処理装置には、図2に示すように、例えばコンピュータからなる制御部100が設けられており、この制御部100は、プログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部などを備えている。プログラムは、基板処理装置の一連の動作を制御するためのものであり、後述するように、FOUP16から取り出したウエハWを処理容器11に搬送して熱処理を行い、続いて当該ウエハWをロードロック室12にて冷却した後、元のFOUP16に戻すように構成されている。
【0025】
次に、基板処理装置の作用について、図6〜図9を参照して説明する。先ず、ロードポート17に載置されたFOUP16から大気搬送アーム19を介してウエハWを取り出し、アライメント室18においてウエハWの向きを調整した後、大気雰囲気に設定されたロードロック室12に搬入する。続いて、このロードロック室12を気密に閉じて当該ロードロック室12内の雰囲気を真空雰囲気に切り替えた後、真空搬送室13側のゲートバルブGを開放して、真空搬送アーム14によりウエハWを取り出す。そして、このウエハWを処理容器11内に搬入する。この処理容器11内では、ウエハWに対して数百℃程度の加熱処理が行われる。
【0026】
加熱処理が行われたウエハWは、真空搬送アーム14によって例えば高温のまま取り出されて、既述のピン34aとの協働作用により、搬送口35を介してロードロック室12内の支持体本体31上に載置される。ロードロック室12では、位置規制機構43の各々に対して電源部44から直流電流が供給されており、従って各々の転動体42は下方側の位置規制機構43に引きつけられている。また、支持体本体31の冷媒路36には冷媒が通流している。
【0027】
ここで、支持体本体31上にウエハWが載置される時に、例えばウエハWが撓んでいたり、あるいは水平面に対して僅かに傾斜したりする場合には、図6に示すように、ウエハWの裏面が複数の転動体42のうち例えば外周側における一の転動体42に接触し、続いて他の転動体42に接触する場合がある。そのため、ウエハWと前記他の転動体42とが接触する前に、ウエハWの裏面と前記一の転動体42の上面とが擦れ合おうとする。即ち、前記一の転動体42上においてウエハWが当該転動体42と擦れ合いながら、例えば外周側に移動しようとする。しかし、既述のように電源部44から各々の位置規制機構43に供給する電流値を設定しているので、この一の転動体42は、当該転動体42の下方側の位置規制機構43の磁力に抗して、ウエハWの移動に伴って凹部41内を例えば外周側に向かって転動する。そのため、転動体42とウエハWとの擦れ合いが抑えられる。具体的には、ウエハWと接触する時に転動体42が転動することにより、当該転動体42が固定されている(転動しない)場合と比べて、転動体42とウエハWとの間の摩擦力が例えば1/100程度に抑えられることになる。
【0028】
そして、図7に示すように、ウエハWはピン34aから各々の転動体42に受け渡されて、支持体本体31上に水平に載置される。この時、ウエハWの裏面側からピン34aが離れると、ウエハWは各々転動自在な(固定されていない)複数の転動体42により支持されるので、例えば水平方向に移動しようとする(揺らぐ)場合がある。具体的には、各々の転動体42が凹部41内において自在に転動してしまい、ウエハWがいわば水平方向に振動(揺動)する場合がある。しかし、位置規制機構43によって各々の転動体42を引きつけていることから、これら転動体42上においてウエハWは静止することになる。そして、位置規制機構43の磁力に抗して側方に移動した前記一の転動体42は、ウエハWの裏面側によっていわば下方側に押さえつけられた状態で静止する。尚、ウエハWの裏面には例えば酸化膜が形成されているが、ここでは図示を省略している。
【0029】
続いて、支持体本体31内の冷媒によりウエハWが冷却されていくと、図8に示すように、当該ウエハWは例えば水平方向に例えば0.1mm〜0.4mm程度熱収縮しようとする。即ち、各々の転動体42の上方側におけるウエハWの裏面側の部位は、各々の転動体42の上方側の位置から例えば中心側に向かって各々移動しようとする。そのため、このウエハWの移動に倣うように、各々の転動体42は、位置規制機構43の磁力に抗して凹部41内において転動し、位置規制機構43の上方側の位置から中央部寄りに移動する。従って、各々の転動体42は、ウエハWの裏面側との擦れ合いが抑えられる。この場合においても、ウエハWの水平方向への振動(揺動)が抑えられると共に、各々の転動体42は、位置規制機構43の磁力に抗して移動した位置に留まることになる。尚、図8では各々の転動体42の移動距離を模式的に大きく示している。
【0030】
そして、例えば100℃程度となるまで支持体本体31上においてウエハWの冷却を行った後、ロードロック室12内の雰囲気を真空雰囲気から大気雰囲気に切り替えると共に、大気搬送室15側のゲートバルブGを開放する。次いで、ピン34aと大気搬送アーム19との協働作用によりロードロック室12からウエハWを取り出して、当該ウエハWをFOUP16に収納する。この時、支持体本体31上からウエハWが持ち上げられると、即ち各々の転動体42が自由に転動できるようになると、各々の転動体42は、図9に示すように、位置規制機構43により引きつけられて、当該位置規制機構43の上方位置(ウエハWを支持する前の元の位置)に戻る。また、凹部41の底面が僅かに傾斜している場合であっても、各々の転動体42は位置規制機構43に引きつけられて元の位置に転動する。
【0031】
こうして他のウエハWについても同様にFOUP16から取り出されて加熱処理が行われた後、転動体42との擦れ合いが抑えられた状態で冷却されてFOUP16に戻される。当該他のウエハWが支持体本体31上に載置される時には、既述のように各々の転動体42が元の位置に戻っている。そのため、複数枚のウエハWに対して順次処理を行う場合であっても、各々の転動体42は水平方向のいずれの方向に対しても転動自在な位置においてウエハWを支持することになる。尚、以上において、説明を簡略化するためにあるウエハWの処理の流れに沿って説明したが、この基板処理装置では実際には4つの処理容器11を用いて複数枚のウエハWに対して並行して処理が行われている。
【0032】
上述の実施の形態によれば、支持体本体31の上面に形成された複数の凹部41内に、転動自在に構成された転動体42を収納し、これら転動体42の上面によりウエハWを裏面側から水平に支持しているので、ウエハWが熱収縮により水平方向に移動しようとしても、あるいはウエハWの歪みや傾斜により始めに一の転動体42に接触して当該一の転動体42上において水平方向に位置ずれしながら他の転動体42に接触しようとしても、転動体42が転動することによって当該転動体42とウエハWとの擦れ合い(摩擦)を抑えることができる。そのため、ウエハWの裏面における傷やパーティクルの発生を抑えることができる。従って、その後の工程においてウエハWに薄膜の成膜処理を行う場合、当該ウエハWの裏面の傷に起因する膜厚のばらつきを抑えることができるので、露光工程でのデフォーカス(焦点のずれ)の発生を抑えることができる。
【0033】
また、ウエハWを支持している時に、位置規制機構43の上方位置から外れた位置に各々の転動体42が転動したとしても、支持体本体31上にウエハWが載置されていない時に位置規制機構43により引きつけられて元の位置に各々の転動体42が戻るので、複数枚のウエハWを順次支持する場合であっても、あるいは凹部41の底面が僅かに傾斜している場合であっても、各々の転動体42が転動自在な位置において支持できる。更に、ウエハWを支持している時においても転動体42を位置規制機構43側に引きつけることにより、転動体42上においてウエハWが水平方向に揺動(振動)することを抑えることができる。
【0034】
更に、凹部41の底面を水平に形成していることから、ウエハWを支持している時に各々の転動体42が転動しても、ウエハWを水平に保つことができる。そのため、既述のようにウエハWを冷却するにあたって、面内において均一に冷却できる。
また、位置規制機構43により転動体42を引きつけているので、例えば凹部41内から転動体42が飛び出すことを防止するための防止機構を別途設ける必要がない。
【0035】
[第1の実施の形態の変形例]
既述の第1の実施の形態において、支持体本体31上からウエハWが持ち上げられた後、転動体42を元の位置に速やかに戻す必要がある場合には、各々の位置規制機構43に供給する電流値を可変できる電源部44を用いて、転動体42とウエハWとが離れた後、ウエハWを支持している時よりも位置規制機構43に供給する電流値を大きくしても良い。
また、第1の実施の形態では位置規制機構43として電磁石を用いたが、図10に示すように、電磁石に代えて磁石を用いても良い。あるいは電磁石に磁石を組み合わせても良い。
【0036】
第1の実施の形態では、ウエハWを支持している時においても各々の転動体42を位置規制機構43により引きつけるようにしたが、図11に示すように、ウエハWを支持体本体31上に載置する時にスイッチ45をオフにして、ウエハWが熱収縮する時は各々の転動体42が自在に転動するように(転動体42の位置の規制を解除)しても良い。この場合においても、支持体本体31上からウエハWを持ち上げた時には、各々の転動体42を元の位置に戻すために、図12に示すようにスイッチ45がオンに設定(転動体42の位置が規制)される。このようにスイッチ45をオフにするにあたり、例えばロードロック室12のメンテナンス時において、凹部41内をクリーニングするためにオフにしても良い。
【0037】
更に、位置規制機構43として電磁石に代えて磁石を用いる場合には、転動体42の位置の規制と解除とを行う時には、図13に示すように、例えば収納容器21の床面に駆動部である昇降機構60を設けると共に、この昇降機構60と位置規制機構43とを昇降軸61により接続しても良い。そして、転動体42の位置を規制する時には、当該転動体42に磁力が及ぶ領域に位置規制機構43を上昇させ、転動体42の位置の規制を解除する時には、転動体42に磁力が及ばない程度まで位置規制機構43を下降させる。
【0038】
また、以上の例では、処理容器11において加熱処理を行ったウエハWをロードロック室12において冷却する場合について説明したが、ロードロック室12の支持体本体31に図示しないヒーターを設けて、処理容器11にウエハWを搬入する前に予備加熱するようにしても良い。この場合において、支持体本体31上においてウエハWが熱膨張する時には、転動体42の転動によってウエハWと転動体42との擦れ合いが抑えられる。
【0039】
更に、既述の処理容器11においても、上面にピン54の配置された支持体本体51に代えて、転動体42を備えた支持体本体31を設けても良い。この場合にも、同様に加熱により膨張するウエハWと転動体42との擦れ合いが抑えられる。また、処理容器11において行われる処理としては、加熱処理に代えて、あるいは加熱処理と共に、ウエハWに対して成膜ガスを供給して薄膜の成膜を行う成膜処理や、プラズマ用ガスをプラズマ化してウエハWに対してエッチングを行うプラズマ処理などであっても良い。プラズマ処理を行う場合には、支持体本体31上のウエハWを冷却するようにしても良い。
【0040】
既述の被覆材42bとしては、石英以外にも樹脂などの非磁性体を用いても良いし、芯材42aとしては、磁性体に代えて、あるいは磁性体と共に磁石を用いても良い。芯材42aとして磁石を用いる場合には、当該芯材42aの表面の一端側及び他端側が夫々S極及びN極となり、凹部41側における位置規制機構43の一端側の極に引きつけられるように転動体42が転動することにより、当該転動体42の位置が規制される。
【0041】
[第2の実施の形態]
続いて、本発明の第2の実施の形態について、図14〜図16を参照して説明する。この第2の実施の形態では、図14に示すように、各々の転動体42の内部の芯材42aが偏心している。即ち、転動体42の中心位置と芯材42aの中心位置とが互いにずれており、各々の転動体42は、各々の位置規制機構43の上方側において、芯材42aが下方側に偏心した状態で配置されている。
【0042】
従って、図15に示すように転動体42が位置規制機構43の磁力に抗して移動(転動)すると、芯材42aは転動体42内において下方側から例えば側方に位置ずれするので、重力により元の位置(芯材42aが凹部41の下面に近接して偏心する位置)に戻ろうとする。そのため、ウエハWが支持体本体31上から持ち上げられると、図16に示すように、転動体42は、位置規制機構43の磁力に引きつけられると共に、芯材42aが元の位置に戻ろうとする力により、位置規制機構43の上方位置に速やかに転動する。
【0043】
そのため、各々の転動体42は、ウエハWを支持する時に当該ウエハWの裏面に接触する部位がほぼ一定となる。従って、既述の処理容器11において薄膜の成膜処理を行う場合、当該処理容器11にこの第2の実施の形態の転動体42を備えた支持体本体31を適用することが好ましい。即ち、成膜処理を行う場合、凹部41内に成膜ガスが入り込み、転動体42とウエハWの裏面や凹部41の床面との接触面以外における転動体42の周囲に成膜ガスが付着することがある。しかし、この第2の実施の形態では、ウエハWを支持する時に当該ウエハWの裏面に接触する転動体42の部位をほぼ一定に保つことができるので、当該転動体42の周囲に付着した成膜ガスがウエハWの裏面に転写することを抑えることができる。
【0044】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について、図17〜図19を参照して説明する。この第3の実施の形態では、図17に示すように、転動体42の芯材42aとして、当該転動体42の転動によりウエハWの裏面側にS極とN極とが交互に対向するように、一端側及び他端側が夫々S極及びN極となるように構成された磁石を用いている。また、被覆材42bとして、これら2つの極の一方側例えばS極側には例えばダイヤモンドライクカーボン(diamond-like carbon)からなる第1の被覆材71を設けると共に、他方側例えばN極側には例えば樹脂(PBI)からなる第2の被覆材72を設けている。そして、これら被覆材71、72間の領域には、例えばダイヤモンドライクカーボン(diamond-like carbon)からなる第3の被覆材73を設けている。
【0045】
また、各々の位置規制機構43と電源部44との間には、これら位置規制機構43に対して供給する電流の向きを変えることができるように、切り替え部75が設けられている。具体的には、各々の位置規制機構43から伸びる2本の導線43bの一方側及び他方側に夫々「76」及び「77」の符号を付すと、導線76と電源部44の+極との間にスイッチ45aが介設され、導線77と電源部44の−極との間にスイッチ45bが介設されている。また、電源部44とスイッチ45aとの間の導線76には、スイッチ45cの介設された導線78の一端側が接続されており、この導線78の他端側は導線77に接続されている。そして、電源部44とスイッチ45bとの間の導線77には、スイッチ45dの介設された導線79の一端側が接続されており、この導線79の他端側は導線76に接続されている。これらスイッチ45a〜45dにより既述の切り替え部75が構成され、各々の位置規制機構43に供給する電流の向きを切り替えることにより、位置規制機構43の上方において芯材42aの向きを上下反転させ、ウエハWに接触する転動体42の表面が第1の被覆材71と第2の被覆材72との間で変えられるように構成されている。
【0046】
この第3の実施の形態では、例えば処理容器11において加熱処理された高温のウエハWについては、当該ウエハWの熱により転動体42が劣化しないように、図18に示すように、スイッチ45c、45dをオフにすると共にスイッチ45a、45bを各々オンにして、各々の位置規制機構43における上端側が例えばS極となるようにする。各々の転動体42は、これら位置規制機構43によりN極側が下方を向くので、支持体本体31上にウエハWが載置されると、石英からなる第1の被覆材71がウエハWに接触する。一方、FOUP16から処理容器11に向かって搬送される低温の未処理のウエハWを支持する時には、転動体42との接触によりウエハWに衝撃が加わることを抑えるために、図19に示すように、スイッチ45a、45bをオフにすると共にスイッチ45c、45dを各々オンにして、樹脂からなる第2の被覆材72をウエハW側に向ける。
【0047】
この第3の実施の形態では、芯材42aを磁石で構成すると共に切り替え部75を設けることにより、ウエハWの種別例えばウエハWの温度に応じてウエハWに接触する転動体42の面を切り替えることができる。また、FOUP16から処理容器11に向かうウエハWと、処理容器11からFOUP16に向かうウエハWと、を互いに異なる表面において支持できるので、例えば処理容器11から取り出されたあるウエハWの裏面にパーティクルが付着していた場合、このパーティクルが転動体42及び別のウエハWを介して処理容器11に向かうことを抑えることができる。また、ウエハWを互いに異なる面において支持できることから、転動体42のロングライフ化を図ることができる。
【0048】
また、転動体42を反転させるにあたって、位置規制機構43として電磁石に代えて磁石を用いる場合には、図20に示すように、位置規制機構43は、凹部41の下方における支持体本体31の内部において、当該凹部41側に対してS極及びN極のいずれか一方が向くように反転自在に収納される。そして、例えば支持体本体31の側方領域に、図示しない固定部により収納容器21の内壁に固定されるモーターなどの切り替え部75が設けられる。図20中75aは回転軸である。
【0049】
更に、第3の実施の形態において転動体42を位置規制機構43の上方において反転させるにあたり、当該転動体42と凹部41の底面とが擦れ合う場合には、この転動体42について、図21及び図22に示すように構成しても良い。即ち、転動体42を水平方向に貫通する回転軸81を設けると共に、転動体42が例えば図示しない軸受けなどを介して回転軸81の軸周りに回転自在となるように構成する。そして、回転軸81の一端側及び他端側を各々凹部41の側壁に固定する。この場合には、各々の転動体42は、支持体本体31上に載置されるウエハWの移動方向(熱膨張収縮方向)即ち半径方向に回転できるように配置される。このように構成することによって、転動体42は、凹部41の下面に対して擦れ合うことを防止して、位置規制機構43の上方位置において反転自在となる。
【0050】
[その他の構成例]
凹部41の底面としては、例えば図23に示すように、支持体本体31の表面から位置規制機構43の上方位置に向かってなだらかに低くなるようにしても良い。この場合には、位置規制機構43によって転動体42が引きつけられる時には、転動体42は位置規制機構43の磁力と共に重力によって移動する。
【0051】
また、転動体42の外面形状としては、既述の各例において示した球体以外にも、楕円形状または図24及び図25に示すように円筒形状であっても良い。この場合には、図25に示すように、転動体42の転動方向(転動体42の周方向)と、支持体本体31上に載置されるウエハWの熱膨張収縮方向(ウエハWの半径方向)と、が各々の転動体42においてほぼ同じ向きとなるように、各々の転動体42は、ウエハWの外縁における接線と当該転動体42の軸方向とが平行になるように配置される。尚、図24は、図25におけるB−B線で支持体本体31を切断した縦断面を示している。
【0052】
更にまた、既述の各例では、凹部41の下方側に位置規制機構43を配置したが、図26及び図27に示すように、凹部41の側方側に位置規制機構43を設けても良い。この場合において、これら位置規制機構43は、当該位置規制機構43の上方側におけるウエハWが一方側から他方側に移動する時、凹部41における前記一方側の側方に配置される。具体的には、既述のように支持体本体31上においてウエハWが冷却により収縮する場合には、各々の位置規制機構43の上方側ではウエハWが外縁側から中心側に各々移動するので、各々の位置規制機構43は凹部41の外縁側に配置される。
【0053】
[本発明の適用例]
既述のロードロック室12においてウエハWを裏面側から支持する支持体本体31の形状としては、円板状以外にも、例えば水平方向に互いに離間する板状体を2つ配置して、ウエハWの直径方向における一方側及び他方側をこれら板状体により裏面側から支持するようにしても良い。
また、凹部41、転動体42及び位置規制機構43からなる基板支持装置を真空搬送アーム14や大気搬送アーム19に適用しても良い。具体的には、既述のように先端部がY字状に形成されたピック14a(19a)において、当該先端部の各々とピック14a(19a)の根本部分とに凹部41及び転動体42を配置して、ピック14a(19a)の内部領域に位置規制機構43を設けても良い。
【0054】
更に、ウエハWを支持する構造としては、当該ウエハWを裏面側から支持する例について説明したが、裏面側及び側面側からウエハWを支持する場合に本発明を適用しても良い。即ち、支持体本体31上において鉛直方向に伸びる起立面部をウエハWの外縁側に周方向に複数箇所に設けておき、支持体本体31上にウエハWが載置されると、これら起立面部がウエハWを側方側から挟み込むように移動自在に配置しても良い。これら起立面部により、ウエハWは支持体本体31上において位置がおおまかに規制されると共に、転動体42の転動により当該転動体42との擦れ合いが抑えられる。この場合において、前記起立面部の各々の下端をウエハWの中心部側に向かって直角に屈曲させ、この屈曲部分の上面に既述の凹部41及び転動体42を配置して、起立面部がウエハWの中心部側に向かって移動する時には転動体42がウエハWを支持しながら転動するようにしても良い。
【0055】
更にまた、以上の例では支持体本体31において一枚のウエハWを支持する場合について説明したが、支持体本体31を上下方向に複数段に亘って棚状に配置しても良い。具体的には、ロードロック室12において支持体本体31を棚状に設けると共にこれら支持体本体31を一体的に昇降自在に構成して、複数枚収納されたウエハWを順次真空搬送室13あるいは大気搬送室15に搬送する場合に本発明を適用しても良い。
【0056】
また、真空搬送アーム14や大気搬送アーム19と支持体本体31(51)との間においてウエハWの受け渡しを行うために配置した既述のピン34aの上端側に各々凹部41を形成し、これら凹部41の各々に転動体42を収納すると共に、各々のピン34aの内部に位置規制機構43を設けても良い。
更に、支持体本体31をなす図示しない回転テーブル上に複数枚のウエハWを周方向に並べて、当該回転テーブルを鉛直方向軸周りに回転させることにより各々のウエハWに対して複数の処理ガスと例えば窒素ガスなどの分離ガスとが交互に供給されるセミバッチ(ミニバッチ)式の成膜装置に本発明を適用しても良い。この場合には、回転テーブルの遠心力によって各々の転動体42が外側に飛び出さないように、当該転動体42の位置が規制される。
以上の各例においては、基板として概略円状のウエハWについて説明したが、例えば角型のガラス基板やLCD(Liquid Crystal Display)基板あるいはセラミックス基板に本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0057】
W ウエハ
11 処理容器
12 ロードロック室
22 載置台
31 支持体本体
36 冷媒路
41 凹部
42 転動体
42a 芯材
42b 被覆材
43 位置規制機構
44 電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を裏面側から水平に支持する支持装置において、
非磁性体からなる支持体本体と、
この支持体本体の上面に形成された複数の凹部と、
基板を裏面側から水平に支持するために、前記凹部内において夫々転動自在に収納されると共に上面側が前記凹部から上方に突出するように構成され、磁性体及び磁石の少なくとも一方を含む転動体と、
前記凹部毎に設けられ、前記凹部内の転動体を磁力により引きつけて当該転動体の位置を規制するための磁石及び電磁石の少なくとも一方を有する位置規制機構と、を備え、
前記転動体の各々は、基板を支持していない時には前記位置規制機構に引きつけられる位置に転動するように構成されていることを特徴とする基板支持装置。
【請求項2】
前記転動体の各々は、当該転動体が支持する基板の動きに倣って前記位置規制機構の磁力に抗して転動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板支持装置。
【請求項3】
前記転動体上に基板を載置する前は前記転動体の位置を規制し、また前記転動体上に基板を載置する時は前記転動体の位置の規制を解除するように制御信号を出力する制御部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板支持装置。
【請求項4】
前記位置規制機構は電磁石により構成され、
前記制御部は、前記位置規制機構に対する電流をオンにすることにより前記転動体の位置の規制を行い、前記位置規制機構に対する電流をオフにすることにより前記転動体の位置の規制の解除を行うことを特徴とする請求項3に記載の基板支持装置。
【請求項5】
前記凹部内の転動体の位置を規制する領域と前記凹部内の転動体の位置の規制を解除する領域との間で前記位置規制機構を移動させる駆動部を備え、
前記制御部は、この駆動部を介して前記位置規制機構を移動させることによって前記転動体の位置の規制と解除とを行うことを特徴とする請求項3に記載の基板支持装置。
【請求項6】
前記転動体の各々は、磁性体及び磁石の少なくとも一方からなる芯材と、この芯材を覆うように配置され、非磁性体からなる被覆材と、を備えていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の基板支持装置。
【請求項7】
前記位置規制機構は、前記凹部の下方側に各々設けられ、
前記芯材は、当該芯材の中心位置が前記転動体の中心位置から外れて偏心するように配置され、
前記転動体は、前記位置規制機構の上方において前記芯材が当該転動体の下面側に偏心するように各々配置されていることを特徴とする請求項6に記載の基板支持装置。
【請求項8】
前記位置規制機構は電磁石により構成され、
前記転動体の各々は、S極側の表面とN極側の表面とが転動により基板の裏面側に交互に対向するように構成された磁石からなる芯材を備え、
前記電磁石に供給する電流の向きを切り替えるための切り替え部と、
基板を支持する前記転動体の各々の表面がS極側の表面とN極側の表面とのいずれか一方となるように前記切り替え部に制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板支持装置。
【請求項9】
前記位置規制機構は、一端側及び他端側が夫々S極及びN極となるように構成された磁石であり、
前記転動体の各々は、S極側の表面とN極側の表面とが転動により基板の裏面側に交互に対向するように構成された磁石からなる芯材を備え、
前記凹部の各々に前記位置規制機構の一端側及び他端側のいずれか一方が対向するように当該位置規制機構の向きを切り替える切り替え部と、
基板を支持する前記転動体の各々の表面がS極側の表面とN極側の表面とのいずれか一方となるように前記切り替え部に制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板支持装置。
【請求項10】
前記転動体は、前記芯材における一方側の表面を覆う第1の被覆材と前記芯材における他方側の表面を覆う第2の被覆材とを備え、
前記制御部は、前記支持体本体に載置される基板の種別に応じて、前記第1の被覆材と前記第2の被覆材のいずれか一方が当該基板の裏面側に当接するように制御信号を出力することを特徴とする請求項8または9に記載の基板支持装置。
【請求項11】
前記凹部の各々の底面は、水平に形成されていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一つに記載の基板支持装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一つに記載の基板支持装置と、
前記支持体本体を収納する容器と、
前記支持体本体上の基板に対して加熱及び冷却の少なくとも一方を行う熱処理機構と、を備えたことを特徴とする熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−69793(P2012−69793A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214110(P2010−214110)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】