説明

増幅回路装置

【課題】意図しない低周波信号の入力を防止することにより、規格値を超過するドレイン電流を発生することを回避できる接合形電界効果トランジスタを用いた増幅回路装置を提供する。
【解決手段】J−FET1の封止部材内で、ゲートと直列に容量を付加し、当該容量とJ−FET1のゲート−ソース間に接続される抵抗2とによってハイパスフィルタ5を構成する。ハイパスフィルタ5の遮断周波数を20Hz未満に設定することで、音声信号を低下させることなく、可聴周波数帯の下限より低い周波数を遮断できる。チップを構成する基板の裏面にイオン注入によりn型不純物層を設け、p+型半導体基板とpn接合を形成して接合容量をハイパスフィルタ5の容量4とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅回路装置に係り、特に接合型電界効果トランジスタを用いた増幅回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等に用いられるエレクトレットコンデンサマイクロフォン(Electret Condenser Microphone:以下ECM)のインピーダンス変換および増幅を行うために、接合型電界効果トランジスタ(Junction Field Effect Transistor:以下J−FET)が採用される場合がある。
【0003】
図9は、J−FET201を用いた増幅回路装置200の一例を示す回路図である。J−FET201はゲートGが、例えばECM(不図示)の一端と接続する。ドレインDは例えば電源(不図示)と接続する。また、J−FET201のゲートG−ソースS間には抵抗202とpn接合ダイオード203がそれぞれ並列に接続されている。抵抗202は例えば抵抗値が1GΩ程度の高抵抗体である。
【0004】
この増幅回路装置200は、電源投入時にはソースS−抵抗202−ゲートGの経路で電流が流れるので、電源投入から入力電圧(ゲート電位)の変動が安定し定常状態になるまでの時間を短縮することができ、良好な過渡特性が得られる。また、pn接合ダイオード203によって、静電破壊耐量を高めることができる(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−160963号公報 (第3頁 第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
増幅回路装置に採用されるJ−FET201は、電源投入から過渡状態を経過した後の定常状態、すなわちドレイン電流の飽和領域で使用することが一般的である。
【0007】
図9に示す増幅回路装置200では、抵抗202の抵抗値を適切に選択することにより、電源投入時直後の過渡状態におけるゲート電位を接地(GNDに吸収)させ、短期間でゲート電位を安定化させて定常状態にすることができる。
【0008】
しかし定常状態においても、増幅回路装置200の封止部材(パッケージ)外部からの要因で入力電圧が変動し、すなわち意図しない(増幅すべきでない)ゲート電位の変動が生じる場合がある。例えば、高湿度環境下などにおいては特に顕著に、封止部材の外部に導出するゲート端子のゲート電位が変動する場合がある。このようなゲート電位の変動(大きくて100mV)は、可聴周波数より低周波の信号が入力信号(例えば10mV)とは無関係にJ−FETのゲートに入力されることを意味し、これによってドレイン電流が規格値を大きく超えてしまう問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる課題に鑑みてなされ、一導電型半導体基板と、該一導電型半導体基板の上方に設けられた逆導電型半導体領域と、該逆導電型半導体領域表面に設けられた逆導電型のソース領域およびドレイン領域と、前記逆導電型半導体領域表面に設けられた一導電型のゲート領域と、前記逆導電型半導体領域の周囲に設けられ、該逆導電型半導体領域表面から少なくとも底面まで達する深さの高濃度一導電型不純物領域と、一端が前記ソース領域と電気的に接続し、他端が前記一導電型半導体基板と電気的に接続する抵抗と、前記一導電型半導体基板の他の主面に設けられた逆導電型不純物層と、該逆導電型不純物層と固着してゲート電位が印加される導電部材と、を具備することにより解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0011】
第1に、J−FETのゲート−ソース間に抵抗を接続し、ゲートと直列に容量を接続して、抵抗と容量によってハイパスフィルタを構成する。ハイパスフィルタの遮断周波数を可聴周波数帯域の下限付近に設定することにより、増幅回路装置の封止部材(パッケージ)外部の要因(例えば湿度など)によって、封止部材外部のゲート端子においてゲート電位の変動が生じても、封止部材内のハイパスフィルタで遮断し、入力信号とは無関係な低周波の信号がJ−FETのゲートに入力されることを防止できる。増幅すべき入力信号は、可聴周波数帯域の音声信号であり、容量若しくはハイパスフィルタで遮断されることはなく、意図しない低周波信号の入力を防止し、これにより規格値を超過するドレイン電流が発生することを回避できる。
【0012】
第2に、容量の静電容量と抵抗の抵抗値を適宜選択し、これらを用いてあらわされるハイパスフィルタの電圧利得を、可聴周波数帯域において0.9以上とすることにより、増幅すべき入力信号(音声信号)の感度を低下させることなく、入力信号とは無関係に発生する可聴周波数を下回る低周波信号のゲートへの入力を防止できる。
【0013】
第3に、ハイパスフィルタは、従来、ゲート電位の安定化のために設けられていた抵抗を用いて、これに容量を1つ付加するのみで構成できるので、増幅回路装置のチップの外形(封止部材の外形)の増大を押さえることができる。
【0014】
具体的には、J−FETのチップを構成するp+型半導体基板の裏面全面にn型半導体層を設けることでpn接合容量を形成し、これをハイパスフィルタの容量とすることができる。これにより、チップサイズ(面積)は、従来と同等を維持できる。また、n型半導体層はp+型半導体基板の裏面にイオン注入によって形成した不純物イオン注入領域であるので、チップの厚みも従来と同等を維持できる。
【0015】
第4に、p+型半導体基板の裏面へのイオン注入で容量を構成できるので、部品点数を増加させることなく、容量を付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の増幅回路装置を説明する図であり、(A)は増幅回路装置の使用例を示す回路図であり、(B)は増幅回路装置の回路図であり、(C)はハイパスフィルタの回路図である。
【図2】本発明の増幅回路装置を説明する特性図である。
【図3】本発明の増幅回路装置を説明する特性図である。
【図4】本発明の増幅回路装置を説明する特性図である。
【図5】本発明の増幅回路装置を説明する特性図である。
【図6】本発明の増幅回路装置を説明する断面図である。
【図7】本発明の増幅回路装置を説明する断面図である。
【図8】本発明の増幅回路装置を説明する断面図である。
【図9】従来技術を説明する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、図1から図8を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施形態の増幅回路装置10を説明するための回路図であり、図1(A)が増幅回路装置10の使用の一例を示す回路図、図1(B)が増幅回路装置10の回路図、図1(C)がハイパスフィルタ5の回路図である。
【0019】
図1(A)を参照して、本実施形態の増幅回路装置10は、例えば、エレクトレットコンデンサマイクロフォン(Electret Condenser Microphone:以下ECM)15に接続して用いられる。
【0020】
ECM15は、振動膜(振動板)と、これと対向する電極を筐体内に配置したものであり、振動膜は例えば高分子材料などにより構成され、エレクトレット効果により振動膜に電荷を持続させたものである。ECM15は、音による振動膜の動きが振動膜および電極間の静電容量の変化として取り出され、これが増幅回路装置10によって増幅される。
【0021】
増幅回路装置10は、接合型電界効果トランジスタ(Junction Field Effect Transistor:以下J−FET)1と、抵抗2と、ダイオード3と、容量4と、を有する。
【0022】
J−FET1は、ゲートG、ソースSおよびドレインDの3つの端子を有し、ゲートGがECM15の一端と接続し、ドレインDは負荷抵抗Rを介して電源6に接続し、ソースSが接地される。負荷抵抗Rの抵抗値は、例えば1kΩ〜15kΩ程度である。ゲートGは入力側となり、直流的にゲートGが開放の状態で使用する。増幅は主に、J−FET1の定常状態(ゲートGの電位が安定した状態、ドレイン電流の飽和領域)において行われる。ドレインDは出力側となる。
【0023】
詳細には、ECM15の容量変化(電圧変化)が入力電圧Vin(ゲートG−ソースS間電圧VGS)の変化としてJ−FET1のゲートGに印加され、J−FET1に流れるドレイン電流が制御される。ドレインDに流れるドレイン電流が増幅回路装置10により増幅される。増幅後の電流(消費電流)は負荷抵抗Rによって電圧変換され、J−FET1のドレインDから出力電圧VoutのAC成分として取り出すことができる。
【0024】
図1(A)(B)を参照して、J−FET1は、例えばnチャネルのデプレッション型J−FETである。すなわち、n型のチャネル領域とp型のゲート領域及びp型のバックゲート領域及びそれぞれn型のソース領域及びドレイン領域を有する。
【0025】
抵抗2は、ゲートG−ソースS間に並列に接続する。抵抗2は、抵抗値Rが例えば1GΩ〜30GΩ(より好適には1GΩ〜3GΩ)であり、電源6を投入直後のJ−FET1の過渡状態の期間中に、ソースS−抵抗2−ゲートGの経路に電流を流すことにより、ゲート電位を短期間で安定化させるために接続される。
【0026】
また、ダイオード3が、ゲートG−ソースS間に並列に接続する。ダイオード3は、pn接合ダイオードであり、アノード(ソースS)側に負電圧を印加する(逆方向バイアスが印加される)ように接続することにより、ゲートG−ソースS間に印加される静電気を放電し、静電破壊耐量を向上させている。
【0027】
容量4は、J−FET1のゲートGに直列に接続される。容量4の静電容量は例えば、1pF〜50pFである。
【0028】
J−FET1、抵抗2、ダイオード3および容量4は全て単一の封止部材7内に収められ、増幅回路装置10を構成している。封止部材7は例えば封止樹脂パッケージであるが、メタルキャンパッケージやセラミックパッケージも採用できる。また、一例として、J−FET1、抵抗2、ダイオード3および容量4は、全て同一の半導体基板(チップ)に集積化される。
【0029】
図1(B)(C)を参照して、本実施形態の増幅回路装置10は、ゲートG、および抵抗2の一端と直列接続する容量4を有し、これによりゲートGに直列に、抵抗2と容量4によるハイパスフィルタ5が接続された構成となっている。
【0030】
ハイパスフィルタ5は、可聴周波数帯域(例えば20Hz〜2万Hz(20KHz))の下限付近の遮断周波数を有する。これにより、例えば20Hzより低い周波数の信号を遮断できる。つまり、J−FET1の定常状態において、増幅回路装置10の使用環境などの外部要因によって意図しないゲート電位の変動が生じ、それが信号として増幅回路装置10に入力された場合であっても、増幅する前にその変動(信号)を低減できる。
【0031】
具体的に説明すると、例えば高湿度環境下での使用などによって、定常状態においても増幅すべき入力電圧Vinの変化(入力信号または音声信号)とは無関係に、ゲート電位が変動する場合がある。この場合のゲート電位の変動は、可聴周波数帯域の下限(20Hz)より大幅に低い周波数の信号として、J−FET1のゲートGに入力される。本実施形態ではこの低周波数の信号によって図1(B)のI1点のゲート電位が変動した場合であっても、これをハイパスフィルタ5で遮断できるので、I2点でのゲート電位の変動を低減できる。一方で、増幅すべき可聴周波数帯域の高周波の入力信号はほとんど損失(低下)することなく、I2点に到達させることができる。
【0032】
増幅すべき高周波の入力信号の損失の大きさは、ハイパスフィルタ5の電圧利得Gainによって算出され、電圧利得Gainの周波数特性は、以下の式で表される。
【0033】
【数1】

ここで、Vin:入力電圧[V]、Vout:出力電圧[V]、ω:角周波数[rad](=2πf(f:周波数[Hz]))、C:静電容量[pF]、R:抵抗[Ω]である。
【0034】
本実施形態では、上式であらわされるハイパスフィルタ5の電圧利得Gainが、可聴周波数帯域において0.9以上となるように、抵抗2の抵抗値Rと容量4の静電容量Cとを選択する。これにより、増幅すべき入力信号(音声信号)の感度はほとんど低下させることなく、増幅すべき入力信号とは無関係に発生する低周波の信号が、J−FET1のゲートGに入力されることを防止できる。
【0035】
図2から図5は、上式を用いて計算した電圧利得Gainおよび周波数fの、容量4の依存性を示す特性図である。いずれもY軸が電圧利得Gain、X軸が周波数f[Hz]であり、図2から図4はそれぞれ容量4の静電容量Cが0.1pF、1pF、5pF、10pF、30pF、50pFの6つの場合について、図5は容量4の静電容量Cが0.1pF、0.5pF、1pF、2pF、5pF、10pF、30pF、50pFの8つの場合について抵抗2の抵抗値Rを変えて依存性を算出した。図2は抵抗2の抵抗値R=1GΩ(1.00E09Ω)、図3は抵抗値R=3GΩ、図4は抵抗値R=10GΩ、図5は抵抗値R=30GΩの場合である。またいずれも破線が可聴周波数帯域の下限付近を示し、矢印で示した破線より周波数の高い領域(2万Hz程度まで)が、可聴周波数帯域である。
【0036】
図2を参照して、抵抗2の抵抗値Rが1GΩの場合、可聴周波数帯域の下限付近において電圧利得Gainが0.9以上となるのは、容量4の静電容量Cが30pF以上の場合であり、50pFでは電圧利得Gainがほぼ1となる。これより静電容量Cが小さい場合は、高い周波数では電圧利得Gainが0.9以上となるものの、可聴周波数帯域の下限付近では電圧利得Gainが0.9を下回り、ゲートGに入力される低周波の信号の遮断はできても、可聴周波数帯域の損失が大きくなりすぎてしまう。
【0037】
同様に、図3を参照して、抵抗2の抵抗値Rが3GΩの場合、可聴周波数帯域の下限付近において電圧利得Gainが0.9以上となるのは、容量4の静電容量が5pFより大きい場合であり、静電容量Cが10pF以上では電圧利得Gが0.95以上となる。
【0038】
更に図4を参照して、抵抗2の抵抗値Rが10GΩの場合には、静電容量Cが5pF以上であれば可聴周波数帯域の下限付近において電圧利得Gainが0.95以上でほぼ1に近くなる。
【0039】
更に図5を参照して、抵抗2の抵抗値Rが30GΩの場合には、静電容量Cが1pF以上であれば可聴周波数帯域の下限付近において電圧利得Gainが0.95以上となる。
【0040】
これらから明らかなように、抵抗2の抵抗値Rが大きいほど、小さい静電容量Cで可聴周波数帯域において良好な電圧利得Gainが得られる。一方で、抵抗2の抵抗値Rは過渡状態の期間においてゲート電位が安定するまでの時間に影響し、抵抗値Rが大きくなるほどソースS−抵抗2−ゲートG間に電流が流れにくくなり、ゲート電位が安定するまでの時間がかかることになる。つまり、過渡状態の期間におけるゲート電位の安定化に適切な抵抗値Rが例えば1GΩ〜3GΩであるとすると、静電容量Cは30pF以上が望ましいといえる。
【0041】
また、静電容量Cは、大きいほど可聴周波数帯域の広範囲において損失を少なくすることができるといえるが、極端に大きくなると、容量4を追加しない従来構造に近づき、すなわち低周波の信号を遮断できない。本実施形態においては静電容量Cの上限値は、例えば、30pF〜50pF程度までである。この値は、理論上、低周波の信号を遮断できなくなる静電容量よりも小さく、現実的な容量4のサイズに制約される。
【0042】
すなわち、後に詳述するが、容量4をゲートGに直列に接続する増幅回路装置10の具体的なデバイスとしては、以下の構成が考えられる。例えばJ−FET1のチップを構成し、バックゲート領域となるp+型半導体基板の裏面にn型半導体層を設けるなどして、pn接合容量による容量4を接続する構造である。また、少なくとも同一の封止部材7内に収めるのであれば、容量4はJ−FET1と別異の素子(チップ)としてもよい。
【0043】
いずれにしても、J−FET1のチップサイズまたは封止部材7の外形のサイズの制約があるため、例えばチップサイズが0.3mm角程度の場合、静電容量Cが50pFを超えるような容量4を作りこむことは現実的でない。つまり、本実施形態の容量4の静電容量Cの上限値は、増幅回路装置10の外形サイズによって決定される(例えばチップサイズが0.3mm角程度の場合で、静電容量Cは50pF)。これに対し、静電容量Cを小さくすると、可聴周波数帯域の電圧利得Gainが低下してしまうので、下限は適切な値を選択する必要がある。つまり、抵抗2の抵抗値Rも考慮すると、本実施形態の容量4の下限は、1pF程度が望ましい。
【0044】
このように、本実施形態では、J−FET1の封止部材7内で、ゲートGと直列に容量4を付加し、容量4とJ−FET1のゲート−ソース間に接続される抵抗2とによってハイパスフィルタ5を構成する。ハイパスフィルタ5の遮断周波数を20Hz未満に設定することで、増幅すべき入力信号(音声信号)を低下させることなく、可聴周波数帯の下限より低い周波数を遮断できるので、定常状態での外部要因による意図しないゲート電位の変動の影響を低減できる。
【0045】
次に、図6を参照して、増幅回路装置10の具体的な構造について説明する。図6は、一例としてnチャネルJ−FET1を用いた第1の実施形態の増幅回路装置10の構造の概略を示す断面図である。尚、図1の回路図と同様の構成は、同一符号で示す。
【0046】
増幅回路装置10は、p+型半導体基板11と、p型半導体層12と、n型半導体領域14a、14b、14cと、ソース領域15と、ドレイン領域16と、ゲート領域17と、高濃度p型不純物領域50と、抵抗2と、ダイオード3と、n型不純物層41と、導電部材42と、を具備する。
【0047】
p+型半導体基板11は、J−FET1のチップを構成し、所望の静電破壊耐量が得られる比抵抗と厚みを有する。一例として比抵抗ρが例えば3Ω・cm〜4Ω・cmであり、厚みは80μmである。本実施形態の増幅回路装置10は、一例として、単一のp+型半導体基板11を複数の領域に区画して、その上方にJ−FET1、抵抗2およびダイオード3をそれぞれ集積化する。ここでは便宜上、p+型半導体基板11は第1領域r1、第2領域r2および第3領域r3に区画され、第1領域r1の上方にJ−FET1が形成され、第2領域r2の上方に抵抗2が形成され、第3領域r3の上方にダイオード3が形成されるとする。また、第1領域r1、第2領域r2および第3領域r3は、p+型半導体基板11のみを区画した領域に限らず、区画されたp+型半導体基板11の上方の各種半導体層(半導体領域)を含めた領域の総称とする。
【0048】
p型半導体層12は、p+型半導体基板11の一主面上に設けられた例えばエピタキシャル層であり、比抵抗は約3Ω・cm〜4Ω・cm、厚みは例えば約10μmである。p型半導体層12は、p+型半導体基板11とともにJ−FET1のバックゲート領域となる。
【0049】
第1領域r1のp型半導体層12上には、n型半導体領域14aと、その端部を囲む高濃度p型不純物領域50が設けられる。また第2領域r2のp型半導体層12の上には、n型半導体領域14bとその端部を囲む高濃度p型不純物領域50が設けられ、第3領域r3のp型半導体層12上には、n型半導体領域14cとその端部を囲む高濃度p型不純物領域50が設けられる。高濃度p型不純物領域50はそれぞれ、n型半導体領域14a、14b、14cの表面から少なくとも底面まで達する深さに設けられる。
【0050】
本実施形態では、n型半導体領域14a、14b、14cはいずれも、p型半導体層12表面に個別に、同条件のイオン注入及び拡散によって設けられた不純物拡散領域である。あるいはn型半導体領域14a、14b、14cはn型半導体層の一部であってもよい。すなわち、p型半導体層12上に例えばエピタキシャル成長などにより単一のn型半導体層を設け、その表面からn型半導体層の底面まで貫通し、p型半導体層12に達する高濃度p型不純物領域50を複数設けることにより、n型半導体領域14a、14b、14cを分離するとともに、それぞれ外周に高濃度p型不純物領域50が配置された第1領域r1、第2領域r2、第3領域r3が区画されるものであってもよい。
【0051】
尚、p型半導体領域12は設けられなくてもよく、その場合にはp+型半導体基板11の上に、高濃度p型不純物領域50で分離されたn型半導体領域14a、14b、14cが設けられる。この場合も、n型半導体領域14a、14b、14cを個別の不純物拡散領域として設けてもよいし、単一のn型半導体層をp+型半導体基板11上に設け、高濃度p型不純物領域50で分離して設けてもよい。
【0052】
第1領域r1において、n型半導体領域14a表面に、それぞれn+型のソース領域15およびドレイン領域16と、p+型のゲート領域17が設けられる。n型半導体領域14aはチャネル領域となり、ソース領域15とドレイン領域16は交互に配置され、これらの間にそれぞれゲート領域17が配置される。第1領域r1の周囲の高濃度p型不純物領域50は、ゲート領域17より不純物濃度が高く、ゲート領域17と一部重畳して設けられ、その深さはn型半導体領域14aの底部より深く、p型半導体層12に達する。これにより、ゲート電圧がバックゲート領域(p型半導体層12、p+型半導体基板11)、高濃度p型不純物領域50を介して、ゲート領域17に印加される。p型半導体層12が設けられない場合には、高濃度p型不純物領域50はp+型半導体基板11に達し、ゲート電圧はバックゲート領域(p+型半導体基板11)、高濃度p型不純物領域50を介して、ゲート領域17に印加される。以下の説明においても同様である。
【0053】
n型半導体領域14a上に第1絶縁膜(例えば酸化膜)91が設けられ、ソース領域15およびドレイン領域16上にコンタクトホールCHが設けられるが、ゲート領域17上は第1絶縁膜91で覆われる。例えばアルミニウム(Al)などにより、コンタクトホールCHを介してソース領域15およびドレイン領域16にそれぞれコンタクトする、1層目の第1ソース電極61および第1ドレイン電極62が設けられる。第1絶縁膜91上は第2絶縁膜(例えば窒化膜(SiN))92で覆われ、第1ソース電極61、第1ドレイン電極62上にスルーホールTHが設けられる。例えばアルミニウム(Al)などにより、スルーホールTHを介して第1ソース電極61および第1ドレイン電極62にそれぞれコンタクトする、2層目の第2ソース電極71および第2ドレイン電極72が設けられる。これにより、第1領域r1に、J−FET1が形成される。J−FET1は裏面がバックゲート領域となるいわゆるディスクリート素子である。チップ最外周の表面には、高濃度のn型不純物領域であるアニュラー51が設けられるが、これは設けられなくてもよい。
【0054】
第2領域r2において、n型半導体領域14b上に第1絶縁膜91が設けられ、その上に第3絶縁膜(例えば窒化膜(Si))93を介して、抵抗2が設けられる。抵抗2は例えば、不純物を導入したポリシリコン層などの導電層である。尚、第2領域r2のn型半導体領域14bは設けられなくてもよい。
【0055】
抵抗2は、一端T1がJ−FET1のソース領域15と電気的に接続し、他端T2が第2領域r2のp+型半導体基板11を介して第1領域r1のp+型半導体基板11と電気的に接続する。より詳細には、第1領域r1のJ−FET1の例えば端部に設けられた第1ソース電極61は、第2領域r2まで延在する配線(例えば金属層などの導電層)63と接続し、抵抗2の一端T1とコンタクトする。そして、抵抗2の他端T2に接続する他の配線64が設けられ、配線64の一部は、第1絶縁膜91に設けられたコンタクトホールCHを介して、第2領域r2の表面のp+型コンタクト領域21とコンタクトする。p+型コンタクト領域21は、第2領域r2の周囲を区画する高濃度p型不純物領域50表面に設けられており、これにより抵抗2の他端T2は、第2領域r2のp+型半導体基板11と接続し、これを介してJ−FET1のバックゲート領域である第1領域r1のp+型半導体基板11と接続する。このようにして抵抗2は、一端T1がJ−FET1のソースSと接続し、他端T2がゲートGと接続する(図1参照)。
【0056】
第3領域r3において、p+型半導体基板11(p型半導体層12)上にn型半導体領域14cが設けられ、その表面にn+型不純物領域31が設けられる。n+型不純物領域31は、第1絶縁膜91に設けられたコンタクトホールCHを介して配線64とコンタクトする。つまりn+型不純物領域31(n型半導体領域14c)は、配線64を介して抵抗2の他端T2と電気的に接続する。また、n型半導体領域14cの表面には、p+型不純物領域32が設けられ、第1絶縁膜91に設けられたコンタクトホールCHを介して、他の配線65とコンタクトする。
【0057】
抵抗2の上、およびこれに接続する配線63、64の上は、第2絶縁膜92で被覆され、その上に2層目の配線73が延在する。配線73は、第2絶縁膜92に設けたスルーホールTHを介して、第3領域r3の1層目の配線65とコンタクトし、第1ソース電極61ともコンタクトする。
【0058】
このようにして、第3領域r3には、p+型不純物領域32をアノードとし、n+型不純物領域31(n型半導体領域14c)をカソードとしたダイオード3が形成される。ダイオード3はp+型不純物領域32が配線73を介してJ−FET1のソース領域15と接続し、n+型不純物領域31(n型半導体領域14c)が配線64と第2領域r2のp+型半導体基板11を介して、J−FET1のバックゲート領域となるp+型半導体基板11と接続する。つまりダイオード3は、J−FET1のソースSとゲートG間に逆方向に接続される。
【0059】
本実施形態では更に、チップを構成するp+型半導体基板11の他の主面(裏面)全面に、n型不純物層41が設けられる。n型不純物層41は例えば、p+型半導体基板11の裏面からn型不純物をイオン注入して形成した領域である。チップの裏面として露出するn型不純物層41の主面にはたとえばニッケル−クロム(NiCr)メッキおよび金(Au)蒸着などによるゲート電極66が設けられ、ゲート電極66が導電部材42と固着する。導電部材42は例えば銅もしくは銅を主成分とする合金素材からなるリードフレーム基材であり、エッチングまたは打ち抜き加工によってアイランドおよびリードが形成され、アイランドにn型不純物層41が固着され、リードの1つが封止部材(不図示)から外部に導出してゲート電位が印加される。これにより、n型不純物層41とp+型半導体基板11のpn接合容量による容量4が構成される。
【0060】
以上の構成により、単一のp+型半導体基板11に、J−FET1と抵抗2とダイオード3が集積化され、J−FET1のゲートG−ソースS間に並列に抵抗2とダイオード3が接続し、ゲートGに直列に容量4が接続した増幅回路装置10が構成される。
【0061】
更に、抵抗2の抵抗値と容量4の静電容量を適宜選択することにより、ハイパスフィルタが構成され、ハイパスフィルタ内蔵の増幅回路装置10が得られる。抵抗値と静電容量の関係は、図2から図5を参照して既に説明したとおりであるので、説明は省略するが、pn接合容量について更に説明する。
【0062】
pn接合による容量4は、pn接合に広がる空乏層が誘電体的性質を有する。既述のごとく、本実施形態の静電容量の好適な範囲は概ね1pF〜50pFであるので、この静電容量が得られるようにチップサイズや、n型不純物層41およびp+型半導体基板11の不純物濃度など、空乏層の形成条件を適宜選択してpn接合を形成する。尚、容量4はゲート電位によって可変となるが、ハイパスフィルタで取り除きたい電位変動は大きくて100mVであり、容量4が変位したとしても無視できるレベルであるので、問題はない。
【0063】
さらにp+型半導体基板11は所望の静電破壊耐圧が得られることが必要である。また導電部材42とチップの接続にAu−Si共晶方式を採用する場合は、Auの這い上がりも考慮する必要がある。これらのことから本実施形態のn型不純物層41の厚みは、例えば0.1μm〜0.5μm程度であり、p+型半導体基板11は比抵抗ρが3Ω・cm〜4Ω・cm、厚み80μm程度とする。
【0064】
n型不純物層41の形成工程の一例は、以下の通りである。まず、第1領域r1、第2領域r2および第3領域r3にそれぞれ、J−FET1、抵抗2およびダイオード3の拡散領域等を形成した後、p+型半導体基板11の裏面をバックグラインドで80μm程度まで薄化する。その後、裏面にn型不純物をイオン注入(ドーズ量は例えば1E15cm−3)し、短時間の熱処理(Rapid Thermal Annealing:以下RTA)を施して所望の深さ(例えば0.1μm〜0.5μm)に拡散して形成する。チップ表面の金属層(第1ソース電極61、第1ドレイン電極62、第2ソース電極71、第2ドレイン電極72および配線63、64、65、73等)の形成は、n型不純物層41の形成工程の直前又は直後に行われるが、当該金属層にAlが含まれる場合は、その融点を考慮するとn型不純物層41を形成する際の熱処理量は少ないほうがよい。n型不純物層41を形成する場合、イオン注入に代えてn型不純物を含む膜を堆積して拡散する方法も採用できるが、熱処理量を少なくするにはイオン注入とRTAでn型不純物層41を形成するほうが望ましい。
【0065】
J−FET1、抵抗2、ダイオード3が集積化され、裏面に容量4が形成された増幅回路装置10のチップは、導電部材42とともに封止部材(不図示)により被覆され一体で支持される。封止部材7は例えば、封止樹脂パッケージであるが、メタルキャンパッケージやセラミックパッケージも採用できる。
【0066】
このように本実施形態によれば、n型不純物層41をp+型半導体基板11の裏面に形成することにより容量4をJ−FET1のゲートに直列に接続し、J−FET1と同一のp+型半導体基板11に集積化されるゲート電位を安定化するための抵抗2と容量4とでハイパスフィルタ5を構成するので、チップサイズ(面積)あるいはパッケージ外形のサイズを増加させること無く、増幅回路装置10にハイパスフィルタ5を内蔵できる。
【0067】
また、n型不純物層41はイオン注入により形成できるので、製造工程や部品点数の増加を抑えて容量4を接続できる。
【0068】
図7及び図8は、他の実施形態を示す断面図である。図6に示す増幅回路装置10は、p+型半導体基板11の裏面にn型不純物層41を形成するため、チップの端部側面にはpn接合面が露出する。チップの端部側面に露出したpn接合面にはリークが生じる場合があるので、チップ端部側面にp型不純物領域またはn型不純物領域を設けてpn接合面の露出を防止する構成としてもよい。
【0069】
図7は、第2の実施形態を示す図であり、n型不純物領域81を設けた場合であり、例えばn型不純物のイオン注入などによって、チップ端部側面にpn接合面が露出しないよう、n型不純物領域81を形成する。チップの厚みによって、表面または裏面からのイオン注入で、チップの表面から裏面まで達するn型不純物領域81が形成できない場合は、例えば表面と裏面から複数回イオン注入を行うなどしてもよい。これ以外の構成は第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0070】
図8は、第3の実施形態を示す図であり、p型不純物領域82を設けた場合である。ここでは、一例として、n型不純物層41を、チップの端部を除いて選択的に形成し、p+型半導体基板11の外周を残して、p型不純物領域82とした。すなわち、マスクなどによってチップの周辺を除いてn型不純物層41を形成する。チップ裏面の外周にはp+型半導体基板11が露出するので、その表面を例えば絶縁膜83などにより被覆し、n型不純物層41の表面にゲート電極66を形成する。これを例えばAgペーストなどによって導電部材42に固着することで、チップ端部のリークを防止できる。これ以外の構成は第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0071】
本実施形態は、n型不純物層41をp+型半導体基板11の裏面に形成して容量4をJ−FET1のゲートに直列に接続し、当該容量4と、J−FET1と同一の封止部材に収納されてゲート電位を安定化するための抵抗2とでハイパスフィルタ5を構成するものである。
【0072】
従って、図6から図8に示す構成に限らず、例えばJ−FET1が単独で形成されるp+型半導体基板11の裏面にn型不純物層41を設け、導電部材42と固着することによりJ−FET1のゲートに容量4を直列に接続し、抵抗2とダイオード3はJ−FET1とは別の基板(チップ)に設けて、これらを単一の封止部材に収納するものであってもよい。
【0073】
以上、本実施形態ではnチャネルのJ−FETを例示したが、導電型を逆にしたJ―FETであっても同様に実施でき、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0074】
1 J−FET
2 抵抗
3 ダイオード3
4 容量
5 ハイパスフィルタ
11 p+型半導体基板
12 p型半導体層
14a、14b、14c n型半導体領域
15 ソース領域
16 ドレイン領域
17 ゲート領域
41 n型不純物層
42 導電部材
50 高濃度p型不純物領域50
61 第1ソース電極
62 第1ドレイン電極
63、64、73 配線
71 第2ソース電極
72 第2ドレイン電極
91 第1絶縁膜
92 第2絶縁膜
93 第3絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一導電型半導体基板と、
該一導電型半導体基板の上方に設けられた逆導電型半導体領域と、
該逆導電型半導体領域表面に設けられた逆導電型のソース領域およびドレイン領域と、
前記逆導電型半導体領域表面に設けられた一導電型のゲート領域と、
前記逆導電型半導体領域の周囲に設けられ、該逆導電型半導体領域表面から少なくとも底面まで達する深さの高濃度一導電型不純物領域と、
一端が前記ソース領域と電気的に接続し、他端が前記一導電型半導体基板と電気的に接続する抵抗と、
前記一導電型半導体基板の他の主面に設けられた逆導電型不純物層と、
該逆導電型不純物層と固着してゲート電位が印加される導電部材と、
を具備することを特徴とする増幅回路装置。
【請求項2】
前記一導電型半導体基板は、第1領域と第2領域に区画され、
前記逆導電型半導体領域、前記ソース領域、前記ドレイン領域および前記ゲート領域は前記第1領域の上方に設けられ、前記高濃度一導電型不純物領域は前記第1領域の周囲に設けられ、
前記抵抗は、前記第2領域の上方に設けられ、他端が前記第2領域の前記一導電型半導体基板を介して前記第1領域の前記一導電型半導体基板と電気的に接続することを特徴とする請求項1に記載の増幅回路装置。
【請求項3】
前記逆導電型不純物層および前記一導電型半導体基板の接合容量と、前記抵抗とによってハイパスフィルタが構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の増幅回路装置。
【請求項4】
前記逆導電型不純物層は、不純物イオン注入領域であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の増幅回路装置。
【請求項5】
前記ハイパスフィルタは可聴周波数帯域の下限付近の遮断周波数を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の増幅回路装置。
【請求項6】
前記容量の静電容量と前記抵抗の抵抗値を用いてあらわされる前記ハイパスフィルタの電圧利得は、可聴周波数帯域において0.9以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の増幅回路装置。
【請求項7】
前記静電容量は、1pFから50pFであることを特徴とする請求項6に記載の増幅回路装置。
【請求項8】
前記一導電型半導体基板は第3領域が区画され、該第3領域上方に、前記抵抗の他端と電気的に接続する他の逆導電型半導体領域と、前記ソース領域と電気的に接続する一導電型不純物領域とからなるダイオードが設けられることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の増幅回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−49795(P2012−49795A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189611(P2010−189611)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(311003743)オンセミコンダクター・トレーディング・リミテッド (166)
【Fターム(参考)】