説明

封止型デバイス、物理量センサ、その製造方法、及びその内部圧力制御方法

【課題】本発明は、封止空間内の内部圧力を制御して錘部の振動周波数fzを所望のピーク幅に調整可能にする封止型デバイス及び物理量センサを提供する。
【解決手段】物理量センサは、フレーム部と、フレーム部の内側に配置された錘部と、錘部とフレーム部とを接続する可撓部と、を備えた半導体基板と、フレーム部の一方の側に接合された第1基板と、フレーム部の他方の側に接合された第2基板と、第1基板上に設けられ、錘部と対向する第1電極と、第2基板上に設けられ、錘部と対向する第2電極と、第1基板上又は第2基板上に形成され、第1基板及び第2基板の接合により封止された半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定する内部圧力調整部材と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部が形成された半導体基板を封止した封止型デバイスに関し、特に、外力に応じて変位可能な容量素子を用いて物理量を検出する物理量センサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の小型軽量化、多機能化や高機能化が進み、実装される電子部品にも高密度化が要求されている。このような要求に応じて各種電子部品が半導体デバイスとして製造されるものが増加している。このため、回路素子として製造される半導体デバイス以外に物理量を検出するセンサ等も半導体デバイスを用いて製造されて、小型軽量化が図られている。例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて小型で単純な構造を有する加速度センサあるいは角速度センサでは、外力に応じて変位する可動部を半導体基板に形成し、この可動部の変位が静電容量素子を利用して検出されるタイプのセンサ(いわゆる静電容量型センサ)等が実用化されている。このようなセンサでは、可動部を安定して変位させるため、半導体基板を封止材(例えば、ガラス基板等)で密封する構造がとられており、密封された封止空間はガス抜き等が行われて、可動部の変位を阻害する要因が排除されている。このような可動部を密封した封止構造を有するデバイスを、本書面では封止型デバイスと呼称するものとする。封止型デバイスには、MEMS素子以外に、SAW(Surface Acoustic Wave)素子やF−BAR(Thin Film Bulk Acoustic Wave Resonators)素子等も含まれる。静電容量型センサは、一般に一対のガラス基板に挟まれて接合された半導体基板内に、所定の自由度をもって変位可能な錘部を用意し、当該錘部を加速度や角速度などに伴う変位を検出する錘部として利用する。変位の検出は、容量素子の静電容量の値に基づいて行われる。静電容量型センサにおいて、多軸成分の物理量を検出するために、従来、1軸のセンサを複数組み合わせて使われていたが、サイズやコストの点で問題であった。
【0003】
そこで、1つのセンサ素子によって多軸成分の検出を行うことが可能な静電容量型センサの研究が進んでいる。このような1つのセンサ素子によって多軸成分の物理量を検出するセンサが開示されている(特許文献1及び非特許文献1)。
【0004】
静電容量型の角速度センサの動作原理について、図19を参照して説明する。図19(A)及び(B)は、静電容量型の角速度センサの概略構成と、基本動作を示す図である。図19(A)において、角速度センサ700は、上ガラス基板(第1基板)701と、半導体基板702と、下ガラス基板(第2基板)703と、により構成される。上ガラス基板701の半導体基板702との対向面には、駆動用の電極704が形成されている。半導体基板702には、錘部705と、錘部705を図中の上下方向に変位可能に支持する可撓部706が形成されている。半導体基板702は、その上面と下面が上ガラス基板701と下ガラス基板703に接合されて封止されることにより、その内部は真空封止されている。
【0005】
図19(A)は、電極704に駆動電圧として5Vを印加した状態を示す図である。この場合、錘部705は電極704との間の静電引力Fcにより上方に引っ張り上げられる。図19(B)は、電極704に印加する駆動電圧を0Vにした状態を示す図である。この場合、錘部705は可撓部706のばね復元力Fbにより元の位置に戻される。この角速度センサ700では、図19(A)及び(B)の駆動電圧の印加動作を繰り返すことにより錘部705を振動させた状態で、角速度に伴うコリオリ力が検出される。
【0006】
図19(A)及び(B)に示した角速度センサ700は、半導体基板702は、上ガラス基板701と下ガラス基板703とにより囲まれた領域が真空封止されている。このような上下ガラス基板701,703により封止された領域の真空度を上げる力学量センサが、例えば、特許文献2により提案されている。
【0007】
この力学量センサでは、密閉室(封止空間)を形成する上下ガラス基板の内側の表面に、錘部の変位を検出する検出電極と同一材料からなる気体分子吸収材を設けて、密閉室内の真空度を上げるようにしている。これは、錘部705の気体粘性による振動動作の減衰を抑えるためである。すなわち、錘部705の振動動作は、封止空間内の内部圧力に依存することが判る。例えば、図20に示すように、錘部705の共振スペクトルの振動周波数幅は、製品の仕様等により所望の共振周波数幅(図中の半値幅)が必要である。図20では、共振スペクトルの共振周波数がfzである場合を示している。なお、本明細書では、共振スペクトルとは共振周波数で最大値をとる周波数スペクトルに現れる山のことであり、共振周波数とは共振スペクトルのピーク周波数のことであり、共振周波数幅とは共振スペクトルの半値幅のことである。
【特許文献1】特開2006−226770号公報
【特許文献2】特開2007−57469号公報
【非特許文献1】Transaction on Sensors and Micromachines,Vol.126,No.6,2006(電気学会論文誌E,126巻,6号,2006年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記図19(A)及び(B)に示したような角速度センサ700は、その共振周波数幅が狭ければ性能が良いというものではなく、仕様等により設定される角速度のセンサ特性に対応した共振スペクトルの所望の共振周波数幅に調整することが望ましい。
【0009】
本発明は上記に鑑み、封止型デバイス及び静電容量型の物理量センサにおいて、封止空間内の内部圧力を制御して、錘部の共振スペクトルを所望の共振周波数幅に調整可能にする封止型デバイス、物理量センサ、その製造方法、及びその内部圧力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態に係る封止型デバイスは、フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置された可動部と、を備えた半導体基板と、前記フレーム部の一方の側に接合された第1基板と、前記フレーム部の他方の側に接合された第2基板と、前記第1基板及び前記第2基板の接合により封止された封止空間内に配置され、前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定する内部圧力調整部材と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の実施の形態に係る物理量センサは、フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置された錘部と、前記錘部と前記フレーム部とを接続する可撓部と、を備えた半導体基板と、前記フレーム部の一方の側に接合された第1基板と、前記フレーム部の他方の側に接合された第2基板と、前記第1基板上に設けられ、前記錘部と対向する第1電極と、前記第2基板上に設けられ、前記錘部と対向する第2電極と、を備え、前記第1基板及び前記第2基板の接合により封止された封止空間内に配置され、前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定する内部圧力調整部材と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の実施の形態に係る封止型デバイスの製造方法は、半導体基板に、フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置される可動部と、を形成し、前記フレーム部の一方の側に接合される第1基板上、又は、前記フレーム部の他方の側に接合される第2基板上に、前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定する内部圧力調整部材を形成し、前記フレーム部の一方の側と前記第1基板とを接合し、前記フレーム部の他方の側と前記第2基板とを接合し、前記内部圧力調整部材の形成時に混入された気体を、加熱温度と加熱時間を設定した加熱処理により放出させて、前記封止空間内部を所望の圧力に設定することを特徴とする。
【0013】
本発明の実施の形態に係る物理量センサの製造方法は、半導体基板に、フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置される錘部と、前記錘部と前記フレーム部とを接続する可撓部と、を形成し、前記フレーム部の一方の側と接合される第1基板上に、第1電極と、前記第1電極と電気的に接続される第1配線を形成し、前記フレーム部の他方の側と接合される第2基板上に、第2電極と、前記第2電極と電気的に接続される第2配線と、を形成し、第1基板上又は前記第2基板上に、前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定する内部圧力調整部材を形成し、前記錘部と前記第1電極とを対向させて前記第1基板と前記フレーム部の一方の側とを接合し、前記錘部と前記第2電極とを対向させて前記第2基板と前記フレーム部の他方の側とを接合し、前記内部圧力調整部材の形成時に混入された気体を、加熱温度と加熱時間を設定した加熱処理により放出させて、前記第1基板及び前記第2基板の接合により封止された前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定することを特徴とする。
【0014】
本発明の実施の形態に係る封止型デバイスの内部圧力制御方法は、フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置された可動部と、を備えた半導体基板と、前記フレーム部の一方の側に接合された第1基板と、前記フレーム部の他方の側に接合された第2基板と、前記第1基板上又は前記第2基板上に配置され、前記第1基板及び前記第2基板の接合により封止された前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定する内部圧力調整部材と、を備える封止型デバイスにおいて、前記内部圧力調整部材の形成時に混入された気体を、加熱温度と加熱時間を制御する加熱処理により放出させて、前記第1基板及び前記第2基板の接合により封止された前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定することを特徴とする。
【0015】
本発明の実施の形態に係る物理量センサの内部圧力制御方法は、フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置された錘部と、前記錘部と前記フレーム部とを接続する可撓部と、を備えた半導体基板と、前記フレーム部の一方の側に接合された第1基板と、前記フレーム部の他方の側に接合された第2基板と、前記第1基板上に設けられ、前記錘部と対向する第1電極と、前記第2基板上に設けられ、前記錘部と対向する第2電極と、前記第1基板上又は前記第2基板上に配置され、前記第1基板及び前記第2基板の接合により封止された前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定する内部圧力調整部材と、を備える物理量センサにおいて、前記内部圧力調整部材の形成時に混入された気体を、加熱温度と加熱時間を制御する加熱処理により放出させて、前記第1基板及び前記第2基板の接合により封止された前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、封止型デバイス及び静電容量型の物理量センサにおいて、封止空間内の内部圧力を制御して、錘部の共振スペクトルを所望の共振周波数幅に調整可能にする封止型デバイス、物理量センサ、その製造方法、及びその圧力制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、封止型デバイスとして物理量センサの例について説明する。
<物理量センサの構造>
図1は物理量センサ100を分解した状態を示す分解斜視図である。図1では物理量センサ100の面内に直交する2軸(X軸とY軸)を設定し、この2軸に垂直な方向をZ軸と定めている。物理量センサ100は、半導体基板Wを、その上下に位置する第1基板140と第2基板150とで挟んで構成されている。半導体基板Wは、シリコン膜110、BOX層120、シリコン基板130が順に積層して構成される。半導体基板Wは後述するような製造工程により、枠状のフレーム(フレーム部111とフレーム部131とを含む)と、このフレーム内に可撓性を有する可撓部113(113a〜113d)により変位可能に支持される錘接合部(錘接合部112と錘接合部132とを含む)とが、一体的に構成され、物理量を検出するセンサ部を形成している。また、シリコン膜110には、フレーム部111、錘接合部112a〜112e及び可撓部113(113a〜113d)から離隔して、ブロック上層部114a〜114jが形成されている。
【0018】
シリコン膜110、BOX層120、シリコン基板130、第1基板140、第2基板150は、その外周が例えば3mm×3mmの略正方形状であり、これらの高さはそれぞれ20μm、2μm、600μm、500μm、500μmである。これらの外形、高さは一例であり、上記に限定されるものではない。
【0019】
シリコン膜110、BOX層120、シリコン基板130から構成される半導体基板Wは、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いて製造可能である。また、第1基板140および第2基板150は、ガラス材料、半導体材料、金属材料、絶縁性樹脂材料のいずれかにより構成される。
【0020】
次に、シリコン膜110の詳細な構成について、図2を参照して説明する。図2において、(A)はシリコン膜110の平面図、(B)は(A)のA−A線から見た半導体基板Wの断面図、(C)は(A)のC−C線から見た半導体基板Wの断面図である。
【0021】
図2(A)に示すシリコン膜110には、フレーム部111、錘接合部112a〜112e、可撓部113a〜113e及びブロック上層部114a〜114jが形成されている。フレーム部111は、外周が略正方形、内周が錘接合部112a〜112eの形状に応じた多角形の枠形状の基板である。錘接合部112a〜112eは、図2(A)をZ方向から見た場合、略クローバー状の形状を有している。錘接合部112a〜112eは、該錘接合部112a〜112eと略同一形状の錘部132(図2(B)及び(C)に示す錘部132)とBOX層120を介して接合され、フレーム部111に対して一体的に変位する。可撓部113a〜113dは、それぞれ略長方形の基板であり、フレーム部111と錘接合部112b〜112eとを4方向で接続する。可撓部113a〜113dは、厚みが薄いため可撓性を有しており、撓みが可能な梁として機能する。可撓部113a〜113dが撓むことで、錘接合部112a〜112eがフレーム部111に対して変位可能である。なお、ブロック上層部114a〜114jは、フレーム部111、錘接合部112a〜112e及び可撓部113a〜113eから離間して形成されている。
【0022】
錘接合部112a〜112e及び可撓部113a〜113eは、その一部を図2(B)に示すように、フレーム部111表面よりも低い位置に形成された第1基板140に対して変位可能である。
【0023】
錘接合部112aの上面は、駆動用電極として機能する。この錘接合部112aの上面は、第1基板140の下面に設置された後述する駆動用電極144a〜144e(図3参照)との間に印加された電圧によって錘接合部112a〜112eをZ軸方向に振動させる。この駆動の詳細については後述する。
【0024】
錘接合部112b〜112eの上面は、錘接合部112b〜112eのX軸およびY軸方向の変位を検出する後述する検出用電極としてそれぞれ機能する。この錘接合部112b〜112eの上面は、第1基板140の下面に設置された後述する検出用電極141b〜141eとそれぞれ容量性結合する。なお、錘接合部112b〜112eと検出用電極141b〜141eにそれぞれ付した符号のアルファベット部分(b〜e)は、それぞれ相互の位置関係に対応させて同様の順序で付している。この検出の詳細については後述する。
【0025】
図2(B)において、シリコン基板130には、フレーム部131と、錘部132(132a〜132e)と、ブロック下層部134a〜134jと、が形成されている。シリコン基板130は、半導体基板Wをエッチングして開口を形成することで、フレーム部131と錘部132(132a〜132e)が作成可能である。なお、錘部132の高さ(図2(B)のZ軸方向)は、フレーム部131の高さより低く作成する。これは、錘部132と第2基板150との間に測定レンジに相当するギャップを確保し、錘部132の変位を可能にするためである。なお、ブロック下層部134a〜134jは、フレーム部131、錘部132及び可撓部113a〜113eから離間して形成されている。
【0026】
フレーム部131は、外周が略正方形、内周が錘部132の形状に応じた多角形の枠形状の基板であり、シリコン膜110のフレーム部111と対応した形状を有する。フレーム部131は、BOX層120aを介してフレーム部111に接合されており、フレーム部111と一体化されている。
【0027】
錘部132は、加速度に起因する力、あるいは、角速度に起因するコリオリ力を受ける錘(作用体)として機能する。錘部132は、略直方体形状の錘部132a〜132eに区分される。中心に配置された錘部132aには、4方向から錘部132b〜132eが接続され、全体として一体的に変位(移動、回転)することが可能となっている。即ち、錘部132aは、錘部132b〜132eを接続する接続部として機能する。錘部132は、図2(A)を鉛直方向から見た場合に、略クローバー状の形状を有している。
【0028】
錘部132a〜132eは、それぞれ錘接合部112a〜112eと対応する略正方形の断面形状(図2(A)のX−Y座標平面から見た形状)を有する。錘部132a〜132eは、BOX層120bを介して錘接合部112a〜112eと接合される。錘部132a〜132eに加わった力に応じて錘接合部112が変位し、その結果、物理量の測定が可能となる。
【0029】
錘部132を錘部132a〜132として構成している理由は、物理量センサ100の小型化と高感度化の両立を図るためである。物理量センサ100を小型化(小容量化)すると、錘部132の容量も小さくなり、その質量が小さくなることから、物理量に対する感度も低下する。可撓部113a〜113dの撓みを阻害しないように錘部132b〜132eを分散配置することで、錘部132全体としての質量を確保している。この結果、物理量センサ100の小型化と高感度化の両立が図られる。
【0030】
錘部132aの下面(第2基板150の上面に対向する面)は、後述する駆動用電極Eとして機能する。この錘部132aの下面は、第2基板150の上面に設置された後述する駆動用電極151a(図3(B)参照)との間に印加された電圧によって錘接合部112a〜112eをZ軸方向に振動させる。なお、この駆動の詳細については後述する。
【0031】
錘部132b〜132eのそれぞれの下面は、錘接合部112b〜112eのX軸およびY軸方向の変位を検出する後述する検出用電極としてそれぞれ機能する。これらの錘部132b〜132eの裏面の検出用電極は、第2基板150の上面に設置された後述する検出用電極151b〜151e(図3(B)参照)とそれぞれ容量性結合する。なお、錘部132b〜132eと検出用電極151b〜151eにそれぞれ付した符号のアルファベット部分(b〜e)は、それぞれ相互の位置関係に対応させて同様の順序で付している。この検出の詳細については後述する。
【0032】
図2(B)及び(C)に示すBOX層120は、フレーム部111とフレーム部131とを接続するBOX層120aと、錘接合部112a〜112eと錘部132a〜132eを接続するBOX層120bと、ブロック上層部114a〜114jとブロック下層部134a〜134jを接続するBOX層120cと、により構成される。BOX層120は、図2(B)及び(C)に示す部分以外の部分では、シリコン膜110及びシリコン基板130とは接続されていない。
【0033】
ブロック下層部134a〜134jは、それぞれブロック上層部114a〜114jと対応する略正方形の断面形状を有し、BOX層120cによりブロック上層部114a〜114jと接合される。ブロック上層部114a〜114j及びブロック下層部134a〜134jを接合したブロックは、それぞれ駆動用電極141a及び検出用電極141b〜141eと、後述する駆動用電極151a及び検出用電極151b〜151eに電源を供給するための配線の用途で用いられる。
【0034】
また、図2(A)〜(C)に示すシリコン膜110のフレーム部111の一部及びブロック上層部114a〜114jの各中央部と、BOX層120bの一部及びBOX層120cの各中央部には、第1基板140とシリコン基板130とを必要な部分で導通させるため導通部160が形成されている。導通部160は、第1基板140とシリコン基板130とを導通させるものであり、シリコン膜110のフレーム部111の一部及びブロック上層部114a〜114jと、BOX層120bの一部及びBOX層120cを貫通して形成されている。導通部160は、例えば、テーパー形状の貫通孔内に金属層を配置して構成されている。これらの導通部160は、後述する第1基板140に形成された配線用端子T1〜T11の各形成位置に合わせて形成されている。なお、導通部160は活性層の上面に形成されないことが好ましい。
【0035】
次に、図3を参照して第1、第2基板140、150について説明する。図3(A)は第1基板140をZ正方向から透視した平面図である。第1基板140の下面(シリコン膜110と対向する側)には駆動電極141aと検出電極141b〜eが配置されている。駆動電極141aは配線L1を通じて配線用端子T1と電気的に接続されている。検出電極141b〜eは配線L3〜L6を通じて配線用端子T3〜T6と電気的に接続されている。なお、添え字の番号は対応している。なお、配線L1,L3〜L6と配線用端子T1,T3〜T6にそれぞれ付した符号の数字部分(1,3〜6)は、それぞれ相互の位置関係に対応させて同様の順序で付している。このように、駆動電極141aと検出電極141b〜eからの電気信号を外部に取り出すことが可能である。
【0036】
図3(B)はZ正方向からみた第2基板150の平面図である。第2基板150の上面(シリコン基板130と対向する側)には駆動電極151aと検出電極151b〜eが配置されている。駆動電極151aは配線L2を通じて配線用端子T2と電気的に接続されている。検出電極151b〜eは配線L7〜L10を通じて配線用端子T7〜T10と電気的に接続されている。ここでは詳細を図示しないが、配線L1〜L10は、ブロック部と第1基板または第2基板との間に介在された状態にある。このようにして、駆動電極151aと検出電極151b〜eからの電気信号を外部に取り出すことが可能である。なお、配線L2,L7〜L10と配線用端子T2,T7〜T10にそれぞれ付した符号の数字部分(2,7〜10)は、それぞれ相互の位置関係に対応させて同様の順序で付している。
【0037】
以上の図2及び図3に示した構成により、物理量センサ100の外部(C−V変換回路など)と駆動用電極141a,151a、検出用電極141b〜141e,151b〜151eへの電気的接続を可能としている。
【0038】
駆動用電極、検出用電極、および配線の全体あるいは一部には、例えば、第1の導電性材料を含む第1導電層を下層とし、第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料を含む第2導電層を上層とする2層構造を用いることができる。
【0039】
また、図3(B)に示す第2基板150の上面側には、気体吸収物質を含むゲッタ201(気体吸収部材)と、気体圧力を調整する物質を含むダミー電極202(気体圧力調整部材)と、が配置されている。ゲッタ201は、例えば、ジルコニウムZr等の水や酸素を吸収する物質を用いることができる。このゲッタ201は、加熱することにより接合された半導体基板W、第1基板140及び第2基板150の封止空間内に残留する酸素分子又は水分子と化学反応して吸収し、封止空間内の真空度を向上させる。
【0040】
なお、ゲッタ201を形成するための材料としては、加熱することにより酸素分子又は水分子と化学反応して吸収する金属であればよく、例えば、チタンTi、バナジウムV、鉄Fe、ニッケルNi、ジルコニウムZr、あるいはこれらを含む合金であってもよい。また、加熱する温度は、例えば、100℃以上であることが望ましいが、駆動用電極141a,151a、検出用電極141b〜141e,151b〜154e等の金属薄膜により形成されたパターンが損傷する温度よりも低い温度であることが望ましい。例えば、駆動用電極141a,151a、検出用電極141b〜141e,151b〜154eがアルミニウムAlにより形成されている場合は、400℃以下であることが望ましい。
【0041】
ダミー電極202は、第1の導電性材料を含む第1導電層を下層とし、第1の導電性材料より高融点であり、かつ吸着した気体をアニール温度(加熱温度)より高い温度で放出する第2の導電性材料を含む第2導電層を上層とする2層構造を用いる。このダミー電極202は、封止空間内の気体圧力を制御するために設けたものであり、その形成時の面積と、アニール温度及びアニール時間を調整することにより、封止空間内の気体圧力を制御することを可能にするものである。なお、この詳細は後述する。
【0042】
<物理量センサの動作>
上述したように、この物理量センサ100では、錘接合部112と錘部132(132a〜132e)が一体形成された錘部が、フレーム部111から延びる可撓部113により支持され、第1基板140、第2基板150、半導体基板Wにより囲まれた空間内で変位できるように構成されている。
【0043】
物理量センサ100を加速度センサとして用いる場合は、加速度の作用に起因して生じる錘部132の変位を検出すればよい。加速度は、錘接合部112および錘部132と検出電極とで形成した容量素子の静電容量変化により、錘部(錘接合部112と錘部132の接合体)の変位を検出する。X、Y軸方向の加速度は錘部の傾き、Z軸方向の加速度はZ軸方向に沿った錘部の変位を検出することで検出可能である。
【0044】
物理量センサ100を角速度センサとして用いる場合は、錘部132を駆動用電極141a,151aにより上下振動させ(一般に、交流電圧を印加し、単振動させる)、角速度の作用に起因して生じる錘部132の変位を検出すればよい。例えば、錘部132がZ軸方向に速度vzで移動しているときに角速度ωが印加されると錘部132にコリオリ力Fが作用する。具体的には、X軸方向の角速度ωxおよびY軸方向の角速度ωyそれぞれに応じて、Y軸方向のコリオリ力Fy(=2・m・vz・ωx)およびX軸方向のコリオリ力Fx(=2・m・vz・ωy)が錘部132に作用する(mは、錘部132の質量)。X軸方向の角速度ωxによるコリオリ力Fyが印加されると、錘接合部112にY方向への傾きが生じる。このように、角速度ωx,ωyに起因するコリオリ力Fy,Fxによって錘接合部112にY方向、X方向の傾き(変位)が生じる。したがって、錘部132の各軸方向の変位をそれぞれ検出すれば、各軸方向成分の角速度の値を求めることができる。物理量センサ100においては、各軸方向成分の角速度の値を、錘部132と各電極との間で形成される容量素子の静電容量変化を検出することで検出が可能である。
【0045】
駆動用電極間に電圧を印加すると、クーロン力によって駆動用電極が互いに引き合い、錘部(錘接合部112と錘部132)はZ軸正方向に変位する。また、駆動用電極間に電圧を印加すると、クーロン力によって駆動用電極が互いに引き合い、錘接合部112(錘部132も)はZ軸負方向に変位する。即ち、上下の駆動用電極に電圧印加を交互に行うことで、錘接合部112(錘部132も)はZ軸方向に振動する。この電圧の印加は正又は負の直流波形(非印加時も考慮するとパルス波形)、半波波形等を用いることができる。錘接合部112の振動の周期は電圧を切り換える周期で決定される。この切換の周期は錘接合部112の固有振動数にある程度近接していることが好ましい。錘部の固有振動数は、可撓部113の弾性力や錘部132の質量等で決定される。錘部132に加えられる振動の周期が固有振動数に対応しないと、錘部に加えられた振動のエネルギーが発散されてエネルギー効率が低下する。なお、駆動用電極間、又は駆動用電極間のいずれか一方のみに、錘部の固有振動数の1/2の周波数の交流電圧を印加してもよい。
【0046】
一般に、角速度信号は数kHz以上であり、加速度信号は角速度信号よりも2桁以上低い周波数であるため、外部の信号処理回路において各々を識別することができる。すなわち、加速度、角速度は外部に設けた信号処理回路により、低周波数成分(あるいはバイアス成分)、振動周波数に追随する信号をそれぞれフィルタ回路で処理し、その処理後の各信号を検出することで、3軸(X,Y,Z)方向の加速度および2軸(X,Y)方向の角速度を検出することが可能である。すなわち、1つのセンサ素子である物理量センサ100を用いることにより、3軸(X,Y,Z)方向の加速度および2軸(X,Y)方向の角速度を検出することが可能である。また、物理量センサ100を加速度/角速度のみを検出するセンサとして用いることができる。本実施の形態に記載した物理量センサ100は、3軸(X,Y,Z)方向の加速度と、2軸まわり(X,Y)の角速度を検出することができる。なお、3軸方向の加速度を検出する場合には、前述の駆動用電極141a,151aはZ軸方向の加速度を検出する検出用電極として機能するものとする。
【0047】
<物理量センサの製造方法>
以下、物理量センサ100の製造方法について図4(A)〜(D)と図5(A)〜(C)を参照しながら説明する。なお、図4(A)〜(D)と図5(A)〜(C)は、図2(A)に示したC−C線から見た断面に基づいて各製造工程を示している。
【0048】
(1)半導体基板Wの準備(図4(A)参照)
シリコン膜110、BOX層120、シリコン基板130を積層してなる半導体基板W(SOI基板)を用意する。上述したように、シリコン膜110は、フレーム部111、錘接合部112、可撓部113、およびブロック上層部114を構成する層である。BOX層120は、シリコン膜110とシリコン基板130とを接合する層であり、かつエッチングストッパ層として機能する層である。シリコン基板130は、フレーム部131、錘部132、およびブロック下層部134を構成する層である。半導体基板Wは、SIMOXないし、貼り合せ法等により作成される。
【0049】
(2)シリコン膜110の加工(図4(B)参照)
フレーム部111、錘接合部112a〜112e、可撓部113a〜113d、ブロック上層部114a〜114jを加工するためのマスクを形成し、該マスクを介してシリコン膜110をエッチングすることにより、フレーム部111と、錘接合部112a〜112e及び可撓部113a〜113dを形成する位置に凹部170を形成する。エッチング方法として、RIE(Reactive Ion Etching)法を用いることができる。
【0050】
(3)シリコン膜110とBOX層120の加工(図4(C)参照)
所定のマスクが形成されたシリコン膜110とBOX層120をエッチングすることにより、錘接合部112a〜112e、可撓部113a〜113d、ブロック上層部114a〜114j及び導通部160それぞれの加工位置を決める開口を形成し、シリコン膜110とBOX層120に錘接合部112a〜112eと、可撓部113a〜113dと、ブロック上層部114a〜114jと、導通部160に対応する開口161を形成する。エッチング方法として、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)と呼ばれているエッチング方法を用いることができる。DRIEでは材料層を厚み方向に浸食しながら掘り進むエッチング工程と、掘った穴の側面にポリマーの壁を形成するデポジション工程とを交互に繰り返し、ほぼ厚み方向にのみ浸食を進ませることが可能になる。この場合、酸化シリコンとシリコンとでエッチング選択性を有するエッチング材料を用いればよい。例えば、エッチング段階では、SFガス、およびOガスの混合ガスを、デポジション段階では、Cガスを用いることが考えられる。続いて、シリコン膜110とBOX層120aを貫通する開口161に対して、例えば、Alを蒸着法やスパッタ法等により堆積させて、導通部160を形成する。シリコン膜110の上面に堆積した不要な金属層(導通部160の上端の縁(図示せず)の外側の金属層)はエッチングで除去する。なお、図4(C)では、フレーム部111と錘接合部112aの加工された断面を示している。
【0051】
(4)第1基板140の接合(図4(D)参照)
第1基板140の接合は、以下の1)〜3)に示す工程により行われる。
【0052】
1)第1基板140の作成
第1基板140は、ガラス材料、半導体、金属材料、絶縁性樹脂材料のいずれかより構成される。第1基板140としてガラス材料を用いる場合について説明する。可動イオンを含むガラス基板(例えばパイレックス(登録商標)ガラス)を用いる。第1基板140のシリコン膜110との対向面の錘接合部112a〜112eにそれぞれ対向する位置に駆動用電極141a、検出用電極141b〜141e、及び配線L1,L3〜L6を、例えば、Alからなるパターンによって形成する(図3(A)参照)。また、第1基板140をエッチングあるいはサンドブラストにより、配線用端子T1〜T11を形成するための上広の錐状貫通孔171を11個形成する(図4(D)、図3(A)参照)。なお、図4(D)では、配線用端子T1が形成された断面を示している。
【0053】
上述のように、駆動用電極141a検出用電極141b〜141e、および配線L1,L3〜L6は、2層構造(第1導電層、第2導電層)とすることができる。また、全体を2層構造とせずに、その一部を2層構造とする構成であってもよい。駆動用電極141aと検出用電極141b〜141eを2層構造とすることで、エッチングの際に駆動用電極141aと検出用電極141b〜141eがエッチングガスにより劣化することを抑制できる。これら第1、第2導電層はいずれもスパッタ法を用いて形成できる。なお、第1導電層として、金Au、プラチナPt等を使用する場合には、第2基板150の上面との間に密着膜(金Auの場合は銅Cu、プラチナPtの場合はチタンTi)を付加することが好ましい。
【0054】
2)半導体基板Wと第1基板140の接合
第1基板140と半導体基板Wとを、陽極接合により接合する(図4(D)参照)。可動部を形成する前に、第1基板140を陽極接合しているので、半導体基板Wと第1基板140の陽極接合時に静電引力が発生しても錘接合部112a〜112eは第1基板140側に引き寄せられることはない。
【0055】
3)配線用端子T1〜T11の形成
第1基板140の上面及び錐状貫通孔171内に、例えば、Cr層、Au層の順に金属層を蒸着法やスパッタ法等により形成する。不要な金属層(配線用端子T1〜T11の上端の縁の外側の金属層)をエッチングにより除去し、配線用端子T1〜T11を形成する(図3(A)参照)。配線用端子T1〜T11は、半導体基板Wとの接合前に形成しておいてもよい。
【0056】
(5)シリコン基板130の加工(図5(A)参照)
シリコン基板130の第2基板150との対向面の、フレーム部131、錘部132a〜132e及びブロック下層部134a〜134jの形成位置と、ゲッタ201及びダミー電極202の配置位置に対応する領域をエッチングすることにより凹部180を形成する。エッチング方法として、RIE(Reactive Ion Etching)法を用いることができる。
【0057】
(6)シリコン基板130の加工(図5(B)参照)
フレーム部131、錘部132a〜132e、ブロック下層部134a〜134jを加工するためのマスクを形成し、該マスクを介してシリコン基板130をエッチングすることにより、フレーム部111と、錘接合部112a〜112e及び可撓部113a〜113dに対応する開口181を形成する。エッチング方法として、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)と呼ばれているエッチング方法を用いることができる。なお、図5(B)では、フレーム部131と錘部132aの加工された断面を示している。
【0058】
(7)第2基板150の接合(図5(C)参照)
第2基板150の接合は、以下の1)〜2)に示す工程により行われる。
【0059】
1)第2基板150の作成
第2基板150としては、前述した第1基板140と略同様の材料を用いることができる。本実施の形態では、第2基板150としてガラス基板を用いた場合について説明する。可動イオンを含むガラス基板の錘部132a〜132eにそれぞれ対向する位置に、駆動用電極151a、検出用電極151b〜151e、及び配線L2,L7〜L10を、例えば、アルミニウムAl等からなるパターンによって形成する(図3(B)参照)。また、図3(B)に示した位置にゲッタ201を、例えば、アルミニウムAl等からなるパターンによって形成するとともに、図3(B)に示した位置にダミー電極202を2層構造としてパターンによって形成する。
【0060】
上述のように、駆動用電極151aと検出用電極151b〜151eは、2層構造(第1導電層、第2導電層)を用いることができる。配線L2,L7〜L10は、第1導電層を用いた構造であればよく、その一部を第1導電層の上に第2導電層を有する構成としてもよい。駆動用電極151aと検出用電極151b〜151eを2層構造とすることで、エッチングの際に駆動用電極151aと検出用電極151b〜151eがエッチングガスにより劣化することを抑制できる。これら第1、第2導電層はいずれもスパッタ法を用いて形成できる。なお、第1導電層として、金Au、プラチナPt等を使用する場合には、第2基板150の上面との間に密着膜(金Auの場合は銅Cu、プラチナPtの場合はチタンTi)を付加することが好ましい。
【0061】
2)半導体基板Wと第2基板150の接合
第2基板150と半導体基板Wとを、陽極接合により接合する。図5(C)は、半導体基板Wと第2基板150を接合した状態を示す。
【0062】
(8)半導体基板W、第1基板140、第2基板150のダイシング
例えば、450℃のアニール処理によりゲッタ201を活性化して封止空間内に残留した酸素分子や水分子を吸収させ後、互いに接合された半導体基板W、第1基板140、及び第2基板150をダイシングソー等で切断し、個々の物理量センサ100に分離する。以上のように物理量センサ100が製造できる。なお、駆動用電極151aと検出用電極151b〜151eを2層構造とした場合、これらの電極群からはアニール処理中の加熱温度により吸着されたスパッタガス(例えば、Arガス)が放出される。この積層電極による気体放出現象の詳細については、後述する。
【0063】
ここで、駆動用電極151a及び検出用電極151b〜151eに2層構造(第1導電層、第2導電層)を用いる理由について説明する。
【0064】
駆動用電極151a及び検出用電極151b〜151eに2層構造(第1導電層、第2導電層)を用いることにより、物理量センサ100が封止された後のアニール処理において後述する気体放出現象が発生する。この気体放出現象を利用して、封止空間内の内部圧力を調整することが可能になる。さらに、駆動用電極151a及び検出用電極151b〜151eに2層構造(第1導電層、第2導電層)を用いることにより、以下に説明する「スティッキング」や「ヒロック」等を抑制することが可能になる。半導体基板Wと第2基板150を陽極接合する時には、錘接合部112a〜112eは可撓部113a〜113dにより可動支持されているため、陽極接合時に発生する静電引力により錘部132a〜132eは第2基板150側に引き寄せられる可能性がある。例えば、半導体基板Wと第2基板150とを陽極接合する時に発生する静電引力により錘部132a〜132eが第2基板150に引き寄せられて第2基板150に付着する「スティッキング」という状態が発生する可能性がある。「スティッキング」の有無は、錘部132a〜132eと駆動用電極151a等間の導通を調べることにより確認できる。「スティッキング」が発生していればショート(導通)となり、「スティッキング」が発生していなければオープン(絶縁)となる。
【0065】
また、半導体基板Wと第2基板150とを陽極接合する時に「ヒロック」が発生する可能性がある。この「ヒロック」とは、駆動電極や検出用電極等に発生する、例えば、半球状の突起物である。「ヒロック」の有無は、製品間での特性のばらつき、及び電極間のショートの原因となる。「ヒロック」の有無は、光学顕微鏡で観察することにより確認できる。
【0066】
上述の封止空間内の内部圧力を調整し、「スティッキング」及び「ヒロック」を防止するため、駆動用電極151a及び検出用電極151b〜151eとして、上述の第1の導電性材料を含む第1導電層を下層とし、第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料を含む第2導電層を上層とする2層構造(第1導電層、第2導電層)を用いることにした。
【0067】
ここで、図5(C)に示した駆動用電極151a及び検出用電極151b,151dを2層構造とした例を図6に示す。図6において、駆動用電極151a及び検出用電極151b,151dは、下層電極151a1,151b1,151d1(第1導電層)と、上層電極151a2,151b2,151d2(第2導電層)と、により形成される。下層電極151a1,151b1,151d1を形成する第1の導電性材料と、上層電極151a2,151b2,151d2を形成する第2の導電性材料としては、以下のような組み合わせが好ましい。
【0068】
(1)下層電極の第1の導電性材料:Al,Al−Cu,Al−Nd,Al−Si,Al−Si−Cu,Pt,Au等
これらの第1の導電性材料は、以下のような条件を有することが好ましい。
・低抵抗であることが好ましい(物理量センサ100の感度に影響)。
・配線L2,L7〜L10と、ブロック下層部134b,134g〜134jの裏面との電気的接続が良好であることが好ましい。具体的には、陽極接合の温度(200℃〜400℃)でブロック下層部134b等の裏面(シリコン等の半導体)とオーミック接続(あるいはオーミック接続とみなせる低抵抗接続)されることが好ましい。
・陽極接合の温度下において、接合圧力により潰れる程度の柔軟性を有することが好ましい。配線L2,L7〜L10は、ブロック下層部134b等の裏面と第2基板150との間に挟まれて、ブロック下層部134b等の裏面と接続される。このとき、配線L2,L7〜L10が変形して、ブロック下層部134b等の裏面と配線L2,L7〜L10の接続箇所の全体が均一に接触することが好ましい。下層電極が変形することで、配線L2,L7〜L10とブロック下層部134b,134g〜134jとの電気的接続の信頼性が高くなる。
【0069】
(2)上層電極の第2の導電性材料:Cr,W,TiN,Mo,Ta等
これらの第1の導電性材料は、以下のような条件を有することが好ましい。
・第1の導電性材料よりも高融点であることが望ましい。陽極接合の温度(〜500℃)で軟化せず、硬いことが望ましい。これにより錘部132a〜132eの下面との融合が制限される。
・陽極接合の温度で錘部132a〜132eの下面の材料と化合物(例えば、シリサイド)を形成しないことが望ましい。
・上述の「ヒロック」等を抑制することが望ましい。
・低抵抗であることが望ましい。但し、下層電極に比べて、この要請は低い。
・下層電極との密着性が良好なことが好ましい。
【0070】
(3)錘部132a〜132e:シリコン等の半導体材料
・陽極接合の温度で上層電極の材料と化合物を作らないことが望ましい。
【0071】
以上の下層電極の第1の導電性材料の条件と、上層電極の第2の導電性材料の条件とを考慮して、第1の導電性材料:Al,Al−Nd,Al−Si,Pt,Auと、第2の導電性材料:Cr,W,TiN,Mo,Taとの組み合わせを評価した結果、以下のような結果が得られた。
【0072】
錘部132a〜132eの下面と上層電極それぞれが、半導体(Si)及び下層電極の第1の導電性材料よりも高融点の導電性材料(Cr,W,TiN)の時に、「スティッキング」が少なかった。「ヒロック」に関しては、Alの下層電極をAlより高融点の金属含有材料の上層電極で覆うことで、下層電極の「ヒロック」を抑制できた。下層電極がAuやCrの場合、「ヒロック」は発生しないので上層電極の材料は「ヒロック」の抑制には寄与しない。電気的接続に関しては、下層電極がCrの場合以外は概ね良好であった。
【0073】
以上の結果から、駆動用電極151a及び検出用電極151b〜151eに2層構造(第1導電層、第2導電層)を用いることにより、半導体基板Wと第2基板150を陽極接合する際の「スティッキング」や「ヒロック」の発生を抑制可能になった。
【0074】
<電極の気体放出現象>
本実施の形態の物理量センサ100では、封止空間内の真空度を向上させるためゲッタ201を第2基板150の上面に配置している。このゲッタ201は、アルミニウムAl等の金属により形成される。ゲッタ201は、半導体基板Wに第2基板150を陽極接合した後、所定のアニール温度(例えば、415℃以上)のアニール処理で活性化され、封止空間内に残留する酸素分子又は水分子と化学反応して吸収し、封止空間内の真空度を向上させている。下層電極の第1の導電性材料としてAl系材料(Al,Al−Nd,Al−Si)を用い、上層電極の第2の導電性材料としてCrを用いて、スパッタ法により2層構造の積層電極を形成した場合、陽極接合後のアニール処理においてスパッタ処理時に積層電極膜中に混入した気体が放出されることが判明した。
【0075】
図6に示す駆動用電極151a及び検出用電極151b,151dは、例えば、下層電極151a1,151b1,151d1の第1の導電性材料としてAl系材料(Al,Al−Nd,Al−Si)を用い、上層電極151a2,151b2,151d2の第2の導電性材料としてCrを用いて、スパッタ法にて形成することができる。この場合、スパッタ処理に際して用いられる希ガス(例えば、Arガス)が下層電極151a1,151b1,151d1及び上層電極151a2,151b2,151d2の各電極膜中に混入する。この電極膜中に混入されたArガスは、陽極接合時の温度では放出されず、封止後にゲッタを活性化するめのアニール処理時のアニール温度(415℃以上)以上で放出されることが判明した。
【0076】
上述の気体放出現象について、Al−Nd単層電極とした場合と、Cr/Al−Nd積層電極とした場合で比較した例を図9に示すグラフを参照して説明する。図9は、単層電極と積層電極の各気体放出特性を加熱温度(℃)(横軸)とArガス放出強度(a.u.)(縦軸)との対応関係で示したグラフである。この場合、単層電極と積層電極の各試料の面積は1cmである。図9において、実線は積層電極の気体放出現象を示し、点線は単層電極の気体放出現象を示す。なお、スパッタ処理に際して用いられるArガスは、電極膜中に、例えば、0.01〜1at%混入する。また、図9において、第2基板150と半導体基板Wの陽極接合時の温度は360℃である。
【0077】
図9において、スパッタ処理によりAl−Nd単層電極に混入したArガスは、加熱温度が約470℃になると放出される。この加熱温度は、上述のアニール温度(420℃)よりも高いため、Al−Nd単層電極では気体放出現象は発生しない。また、図9において、スパッタ処理によりCr/Al−Nd積層電極に混入したArガスは、加熱温度が約415℃になると放出される。この加熱温度は、上述のアニール温度(420℃)に近いため、Cr/Al−Nd積層電極では気体放出現象が発生する。すなわち、Cr/Al−Nd積層電極は、陽極接合時の温度(360℃)では気体放出現象は発生せず、ゲッタ201を活性化するアニール処理時のアニール温度(420℃)で気体放出現象が発生することが判った。また、図9に示すCr/Al−Nd積層電極の気体放出特性では、加熱温度が約420℃になると気体放出が開始され、その後、加熱温度を上げても気体放出量はほぼ一定になることが判明した。
【0078】
以上の気体放出現象により、物理量センサ100では、封止後にゲッタ201を活性化するめのアニール処理に際して、封止空間内に残留した酸素分子又は水分子はゲッタ201の化学反応により吸収されるが、Cr/Al−Nd積層電極から放出されるArガスはゲッタ201に吸収されないことが判明した。すなわち、積層電極から放出されたArガスにより封止空間内の内部圧力が上昇することが判明した。本実施の形態の物理量センサ100では、この積層電極による気体放出現象を利用して、封止空間内の内部圧力を制御することに特徴がある。
【0079】
<封止空間内の内部圧力制御方法>
上述の図20において説明したように、物理量センサの錘部の共振スペクトルの共振周波数幅(図20に示す半値幅)は、封止空間内の内部圧力に依存しているが、その共振周波数幅が狭ければ性能が良いといものではなく、仕様等により設定される加速度や角速度の検出範囲に対応した共振スペクトルの共振周波数幅に調整される必要がある。このため、本実施の形態の物理量センサ100では、上述の図9に示したCr/Al−Nd積層電極の気体放出特性を利用して、封止空間内の内部圧力を制御して、錘部の共振スペクトルを所望の共振周波数幅に調整する。
【0080】
ここで、内部圧力を求める数式(1)を以下に示す。
P=NkT/V=(vSkT)t/V・・・(1)
なお、数式(1)において、V:内部体積,S:Arガス放出面積,v:Arガス放出速度,t:加熱処理時間,T:製品使用温度,N=vSt:内部のAr分子数,k:ボルツマン定数である。また、NkT/Vは、理想気体の状態方程式である。
【0081】
本実施の形態の物理量センサ100では、内部圧力を求める数式(1)に基づいて、積層電極を形成する導電性材料(例えば、Cr/Al−Nd)の面積Sと、そのアニール温度Tとアニール時間tを調整することにより、封止空間内に放出されるArガス量を制御して、封止空間の内部圧力を制御することを可能にする。特に、図9に示したCr/Al−Nd積層電極の気体放出特性を考慮すると、アニール温度(420℃)でArガスの放出量が一定になるため、面積Sと加熱処理時間tを主に制御することにより、封止空間の内部圧力を所望の圧力に設定することが容易にできる。また、積層電極の気体放出温度は、ゲッタ202として用いられる材料を活性化する際に設定するアニール温度に近いことが望ましく、陽極接合時の加熱温度(第1の加熱温度)より高い加熱温度(第2の加熱温度)であることが望ましい。
【0082】
図6に示した例では、駆動用電極151a及び検出用電極151b,151dをCr/Al−Ndを積層した2層構造とし、その面積Sと、そのアニール温度Tとアニール時間tを調整して、封止空間内に放出されるArガス量を制御することにより、封止空間内の内部圧力を制御することができる。また、駆動用電極151a及び検出用電極151b〜151eの一部の電極として、例えば、図7に示すように、検出用電極151dのみをCr/Al−Ndを積層した2層構造(図中の下層電極151d1と上層電極151d2)として、その面積Sと、そのアニール温度Tとアニール時間tを調整するようにしてもよい。
【0083】
また、図3(B)に示したように、第2基板150の上面にダミー電極202を配置し、図8に示すように、Cr/Al−Ndを積層した2層構造(図中の下層電極202aと上層電極202b)として、その面積Sと、そのアニール温度Tとアニール時間tを調整するようにしてもよい。また、図10に示すように、駆動用電極151a及び検出用電極151b,151dと、ダミー電極202をCr/Al−Ndを積層した2層構造として、これらの面積Sと、そのアニール温度Tとアニール時間tを調整するようにしてもよい。さらに、図11に示すように、例えば、配線L10の一部をCr/Al−Ndを積層した2層構造としたダミー電極210として形成し、このダミー電極210の面積Sと、そのアニール温度Tとアニール時間tを調整するようにしてもよい。また、図12に示すように、配線L10に接続されるダミー電極及びダミー配線211をCr/Al−Ndを積層して形成し、このダミー電極及びダミー配線211の面積Sと、そのアニール温度Tとアニール時間tを調整するようにしてもよい。
【0084】
また、Cr/Al−Ndを積層して2層構造とした積層電極からArガスが放出されたことを検証する方法として、アニール処理前後でCr/Al−Nd積層電極のシート抵抗値を測定する方法がある。アニール処理前後でCr/Al−Nd積層電極のシート抵抗値を測定した例を図13に示す。この場合、Al−Nd層の厚さは300nm、Cr層の厚さは100nm、アニール温度は420℃に設定している。アニール処理前のシート抵抗値は約0.4(Ω/sq)、アニール処理後のシート抵抗値は約3.1(Ω/sq)である。このシート抵抗値の変化は、気体放出現象特有のものであり、従来のシート抵抗値を下げるためのアニール処理とは異なる結果である。すなわち、例示したCr/Al−Nd積層電極における気体放出現象の特徴は、上述のようにゲッタ202として用いられる材料を活性化する際に設定するアニール温度に近いことが望ましく、陽極接合時の加熱温度(第1の加熱温度)より高い加熱温度(第2の加熱温度)であり、かつ、シート抵抗値を下げるためのアニール処理時のアニール温度設定よりも低いことが望ましい。
【0085】
さらに、例えば、Al系等の単一の導電性材料を用いて単層電極を形成した場合でも気体放出現象は発生する。しかし、このような単層電極では、気体放出現象が発生するアニール温度が、Cr/Al−Nd積層電極の場合に比べて高くなり、例えば、470℃になる。この場合、単層電極表面には上述の「ヒロック」が発生するため、物理量センサ100の電極として用いることは望ましくない。Cr/Al−Nd積層電極を用いた場合は、単層電極を用いた場合に比べて気体放出現象が発生する温度が、上述のように420℃と低いため、「ヒロック」は発生しない。したがって、封止空間を所望の内部圧力に設定する電極としては、2種類の導電性材料を積層した積層電極を用いることが、物理量センサ100に対しては最適である。なお、上記実施の形態では、積層電極としてCr/Al−Nd積層電極を例示したが、これらの導電性材料に限定するものではなく、上述の条件で気体放出現象を発生する特徴を有する導電性材料であればよい。上記例示したように、駆動用電極151a及び検出用電極151b,151dの一部、ダミー電極202、又は、ダミー配線211を2層構造とし、アニール処理により気体放出現象を発生させる場合を示した。しかし、気体放出現象が発生した結果、使用する導電性材料によっては2層構造とした部分が高抵抗化する可能性がある。そこで、動用電極151a及び検出用電極151b,151d等の高抵抗化が望ましくない部分は、アニール処理において気体放出現象が発生せず高抵抗化しない導電性材料としてTiN/Al−Ndを使用し、気体放出現象を利用するダミー電極202やダミー配線211の部分は、導電性材料としてCr/Al−Ndを使用することが好適である。
【0086】
アニール処理前後のCr/Al−Nd積層電極表面の金属顕微鏡写真を図14及び図15に示す。なお、この場合、アニール温度は420℃である。図15に示すように、アニール処理後のCr/Al−Nd積層電極表面には「ヒロック」は発生していない。
【0087】
以上のように、静電容量型の物理量センサ100において、第2基板150の面上に形成する駆動用電極151a,検出用電極151b〜151e、又は、これら電極の一部、又は、ダミー電極202を、Al系の第1の導電性材料を含む下層電極と、第1の導電性材料より高融点のCr系の第2の導電性材料を含む上層電極とを積層した積層電極として形成した。この積層電極は、成膜時に混入した気体(Arガス)を陽極接合時の加熱温度より高いアニール温度で一定量放出する特徴を持つため、その面積、アニール温度及びアニール時間を制御することにより、物理量センサ100内の封止空間の内部圧力を所望の圧力に設定することが容易にできる。このため、封止空間の内部圧力に依存する錘部132a〜132eの共振スペクトルの共振振動周波数幅を任意に設定することが容易になる。その結果、検出感度等の仕様に応じて錘部の共振スペクトルを所望の共振周波数幅に調整した物理量センサ100を容易に製造することが可能になる。
【0088】
本発明の実施の形態に係る物理量センサ100は、例えば、IC等の能動素子を搭載する回路基板上に実装され、ワイヤボンディング接続等の周知の方法および材料によって配線用端子T(T1〜T11)と、電子回路基板もしくはIC等の能動素子とを接続することにより、物理量センサと電子回路とを1つの電子部品として提供することができる。この電子部品は、例えば、ゲーム機、携帯電話等のモバイル端末機に搭載されて市場に流通することが可能である。
【0089】
以下に、物理量センサ100により検出される加速度と角速度の各変位信号を処理する処理回路について説明する。
【0090】
<処理回路>
上記物理量センサ100により検出される加速度と角速度の変位信号を処理する各処理回路の構成例について図16を参照して説明する。
【0091】
図16は、物理量センサ100により検出される加速度及び角速度の変位信号を処理する処理回路300の回路構成を示す図である。図16において、処理回路300は、C−Vコンバータ301と、アンプ回路(Amp)302と、フィルタ回路303と、から構成される。
【0092】
C−Vコンバータ301は、印加される加速度及び角速度に応じて物理量センサ100から出力される各軸方向の各変位信号(静電容量変化)を電圧信号に変換してアンプ回路302に出力する。アンプ回路302は、C−Vコンバータ301から入力される電圧信号を所定の増幅率で増幅してフィルタ回路303に出力する。フィルタ回路303は、数kHz以上の信号成分を通過させるフィルタ機能を有する。フィルタ回路303は、アンプ回路302で増幅された電圧信号から数kHz以上の信号成分を通過させて、X軸方向とY軸方向の角速度検出信号として出力する。フィルタ回路303は、低周波数の信号成分をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の加速度検出信号として出力する。
【0093】
次に、上記物理量センサ100と処理回路300を実装した半導体装置とした例について説明する。なお、本明細書において半導体装置とは、半導体技術を利用して機能しうる装置全般を指し、電子機器も半導体装置の範囲に含まれるものとする。
【0094】
図17は、上記物理量センサ100と処理回路300を実装した半導体装置として、例えば、センサモジュール400の一例を示す図である。図17において、センサモジュール400は、上記処理回路300を含む信号処理チップ401と、メモリチップ402と、上記物理量センサ100を含むセンサチップ403と、が基板404上に実装されている。各チップ401,402,403は、ボンディングワイヤ405により接続されている。メモリチップ402は、信号処理チップ401の制御用のプログラムやパラメータ等を記憶するメモリである。
【0095】
上記のようなセンサモジュール400を提供することにより、ゲーム機、携帯電話等のモバイル端末機への実装が容易になる。
【0096】
次に、図17に示したセンサモジュール400を電子機器として、例えば、モバイル端末機に実装した例について説明する。
【0097】
図18は、センサモジュール400を実装した携帯型情報端末500の一例を示す図である。図18において、携帯型情報端末500は、ディスプレイ部501と、キーボード部502と、から構成される。センサモジュール400は、キーボード部502の内部に実装されている。携帯型情報端末500は、その内部に各種プログラムを記憶し、各種プログラムにより通信処理や情報処理等を実行する機能を有する。この携帯型情報端末500では、センサモジュール400により検出される加速度や角速度をアプリケーションプログラムで利用することにより、例えば、落下時の加速度を検出して電源をオフさせる等の機能を付加することが可能になる。
【0098】
上記のようにセンサモジュール400をモバイル端末機に実装することにより、新たな機能を実現することができ、モバイル端末機の利便性や信頼性を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の一実施の形態に係る物理量センサを分解した状態を示す分解斜視図である。
【図2】半導体基板の構成を示す図であり、(A)はシリコン膜の上面を示す平面図、(B)は(A)のB−B線から見たシリコン基板の断面図、(C)は(A)のC−C線から見たシリコン基板の断面図である。
【図3】基板の構成を示す図であり、(A)は第1基板の下面を示す平面図、(B)は第2基板の上面を示す平面図である。
【図4】物理量センサの製造方法を示す図であり、(A)は加工前の半導体基板を示す断面図、(B)は半導体基板にフレーム部、錘接合部及び可撓部に対応する領域に凹部を形成する工程を示す断面図、(C)は半導体基板にフレーム部、錘接合部及び導通部を形成する工程を示す断面図、(D)は半導体基板に第1基板を接合する工程を示す断面図である。
【図5】物理量センサの製造方法を示す図であり、(A)は半導体基板に錘部等に対応する領域に凹部を形成する工程を示す断面図、(B)は半導体基板に錘部等を形成する工程を示す断面図、(C)は半導体基板に第2基板を接合する工程を示す断面図である。
【図6】第2基板上の駆動用電極と検出用電極を積層電極として形成した例を示す断面図である。
【図7】第2基板上の検出用電極のみを積層電極として形成した例を示す断面図である。
【図8】第2基板上に積層電極として形成したダミー電極を設けた例を示す断面図である。
【図9】Al−Nd単層電極とCr/Al−Nd積層電極の各気体放出特性を示すグラフである。
【図10】第2基板上に積層電極として形成した駆動用電極、検出用電極及びダミー電極を設けた例を示す断面図である。
【図11】第2基板上の配線の一部を積層電極のダミー電極として形成した例を示す平面図である。
【図12】第2基板上の配線に接続されるダミー配線及びダミー電極を積層電極として形成した例を示す平面図である。
【図13】気体放出現象が発生する積層電極のアニール処理前後のシート抵抗値の一例を示す図である。
【図14】アニール処理前のCr/Al−Nd積層電極表面のSEM写真を示す図である。
【図15】アニール処理後のCr/Al−Nd積層電極表面のSEM写真を示す図である。
【図16】物理量センサにより検出される角速度の変位信号を処理する角速度処理回路の一例を示す図である。
【図17】物理量センサと処理回路を実装したセンサモジュールの一例を示す図である。
【図18】センサモジュールを実装したモバイル端末機の一例を示す図である。
【図19】従来の物理量センサの動作原理を示す図であり、(A)は駆動電圧5V印加時の状態を示す図、(B)は駆動電圧0V印加時の状態を示す図である。
【図20】従来の物理量センサにおける振動周波数の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
100…物理量センサ、110…シリコン膜、111,131…フレーム部、112a〜112e…錘接合部、113a〜113d…可撓部、120…BOX層、130…シリコン基板、132(132a〜132e)…錘部、140…第1基板、1441,151a…駆動用電極、141b〜141e,151b〜151e…検出用電極、150…第2基板、151a1,151b1,151d1,202a…下層電極、151a2,151b2,151d2,202b…上層電極、160…導通部、201…ゲッタ、202…ダミー電極、300…処理回路、400…センサモジュール、500…携帯型情報端末、L1,L2…(駆動用電極と接続する)配線、L3〜L10…(検出用電極と接続する)配線。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置された可動部と、を備えた半導体基板と、
前記フレーム部の一方の側に接合された第1基板と、
前記フレーム部の他方の側に接合された第2基板と、
前記第1基板及び前記第2基板の接合により封止された封止空間内に配置され、前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定する内部圧力調整部材と、
を備えたことを特徴とする封止型デバイス。
【請求項2】
フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置された錘部と、前記錘部と前記フレーム部とを接続する可撓部と、を備えた半導体基板と、
前記フレーム部の一方の側に接合された第1基板と、
前記フレーム部の他方の側に接合された第2基板と、
前記第1基板上に設けられ、前記錘部と対向する第1電極と、
前記第2基板上に設けられ、前記錘部と対向する第2電極と、
前記1基板及び前記第2基板の接合により封止された封止空間内に配置され、前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定する圧力調整部材と、
を備えたことを特徴とする物理量センサ。
【請求項3】
前記内部圧力調整部材は、前記第1電極、前記第1電極の一部、前記第2電極、又は、前記第2電極の一部に、第1の導電性材料を含む第1導電層と、前記第1導電層上に積層され、前記第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料を含む第2導電層とが積層されて形成されたことを特徴とする請求項2記載の物理量センサ。
【請求項4】
前記内部圧力調整部材は、前記第1電極又は前記第2電極から独立したダミー電極として前記第1導電層と前記第2導電層とが積層されて形成されたことを特徴とする請求項3記載の物理量センサ。
【請求項5】
前記第1基板上に設けられ、前記第1電極と電気的に接続される第1配線と、
前記第2基板上に設けられ、前記第2電極と電気的に接続される第2配線と、を備え、
前記内部圧力調整部材は、前記第1配線、前記第1配線の一部、前記第2配線、又は、前記第2配線の一部に、第1の導電性材料を含む第1導電層と、前記第1導電層上に積層され、前記第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料を含む第2導電層とが積層されて形成されたことを特徴とする請求項2記載の物理量センサ。
【請求項6】
前記内部圧力調整部材は、前記第1電極、前記第2電極、前記第1配線、又は前記第2配線に接続されるダミー電極又はダミー配線として前記第1導電層と前記第2導電層とが積層されて形成されたことを特徴とする請求項3又は5記載の物理量センサ。
【請求項7】
前記第2の導電性材料がCr,W,Mo,またはTaの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の物理量センサ。
【請求項8】
前記第1の導電性材料がAl,Al−Cu,Al−Nd,Al−SiまたはAl−Si−Cuの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の物理量センサ。
【請求項9】
前記封止空間内部の気体を吸収する材料を含む気体吸収部材を前記第1基板上又は前記第2基板上に設けたことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の物理量センサ。
【請求項10】
半導体基板に、フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置される可動部と、を形成し、
前記フレーム部の一方の側に接合される第1基板上、又は、前記フレーム部の他方の側に接合される第2基板上に、前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定する内部圧力調整部材を形成し、
前記フレーム部の一方の側と前記第1基板とを接合し、
前記フレーム部の他方の側と前記第2基板とを接合し、
前記内部圧力調整部材の形成時に混入された気体を、加熱温度と加熱時間を設定した加熱処理により放出させて、前記封止空間内部を所望の圧力に設定することを特徴とする封止型デバイスの製造方法。
【請求項11】
半導体基板に、フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置される錘部と、前記錘部と前記フレーム部とを接続する可撓部と、を形成し、
前記フレーム部の一方の側と接合される第1基板上に、第1電極と、前記第1電極と電気的に接続される第1配線を形成し、
前記フレーム部の他方の側と接合される第2基板上に、第2電極と、前記第2電極と電気的に接続される第2配線を形成し、
前記第1基板上又は前記第2基板上に、前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定する内部圧力調整部材を形成し、
前記錘部と前記第1電極とを対向させて前記第1基板と前記フレーム部の一方の側とを接合し、
前記錘部と前記第2電極とを対向させて前記第2基板と前記フレーム部の他方の側とを接合し、
前記内部圧力調整部材の形成時に混入された気体を、加熱温度と加熱時間を設定した加熱処理により放出させて、前記第1基板及び前記第2基板の接合により封止された前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定することを特徴とする物理量センサの製造方法。
【請求項12】
前記内部圧力調整部材の形成時に、第1の導電性材料を含む第1導電層と、前記第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料を含む第2導電層とを積層して形成したことを特徴とする請求項11記載の物理量センサの製造方法。
【請求項13】
前記第1電極の形成時、前記第1配線の形成時、前記第2電極の形成時、又は、前記第2配線の形成時に、第1の導電性材料を含む第1導電層と、前記第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料を含む第2導電層とを積層して前記内部圧力調整部材を形成したことを特徴とする請求項11又は12記載の物理量センサの製造方法。
【請求項14】
前記第1基板又は前記第2基板は、第1の加熱温度により加熱されて前記フレーム部に接合され、
前記内部圧力調整部材の形成時に面積を設定し、前記加熱温度を前記第1の加熱温度より高い第2の加熱温度に設定し、前記面積及び前記加熱温度に応じて前記加熱時間を設定したことを特徴とする請求項11又は12記載の物理量センサの製造方法。
【請求項15】
フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置された可動部と、を備えた半導体基板と、
前記フレーム部の一方の側に接合された第1基板と、
前記フレーム部の他方の側に接合された第2基板と、
前記第1基板上又は前記第2基板上に配置され、前記第1基板及び前記第2基板の接合により封止された前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定する内部圧力調整部材と、を備える封止型デバイスにおいて、
前記内部圧力調整部材の形成時に混入された気体を、加熱温度と加熱時間を制御する加熱処理により放出させて、前記第1基板及び前記第2基板の接合により封止された前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定することを特徴とする封止型デバイスの内部圧力制御方法。
【請求項16】
フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置された錘部と、前記錘部と前記フレーム部とを接続する可撓部と、を備えた半導体基板と、
前記フレーム部の一方の側に接合された第1基板と、
前記フレーム部の他方の側に接合された第2基板と、
前記第1基板上に設けられ、前記錘部と対向する第1電極と、
前記第2基板上に設けられ、前記錘部と対向する第2電極と、
前記第1基板上又は前記第2基板上に配置され、前記第1基板及び前記第2基板の接合により封止された前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定する内部圧力調整部材と、を備える物理量センサにおいて、
前記内部圧力調整部材の形成時に混入された気体を、加熱温度と加熱時間を制御する加熱処理により放出させて、前記第1基板及び前記第2基板の接合により封止された前記半導体基板内の封止空間内部を所望の圧力に設定することを特徴とする物理量センサの内部圧力制御方法。
【請求項17】
前記内部圧力調整部材は、第1の導電性材料を含む第1導電層と、前記第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料を含む第2導電層とが積層されて形成され、前記内部圧力調整部材の形成時に面積を設定し、前記面積に応じて前記加熱温度及び前記加熱時間を制御して、前記封止空間内部を所望の圧力に設定することを特徴とする請求項16記載の物理量センサの内部圧力制御方法。
【請求項18】
前記内部圧力調整部材は、前記第1電極、前記第1電極の一部、前記第2電極、又は、前記第2電極の一部に、第1の導電性材料を含む第1導電層と、前記第1導電層上に積層され、前記第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料を含む第2導電層とが積層されて形成され、前記内部圧力調整部材の形成時に面積を設定し、前記加熱温度を前記第1の加熱温度より高い第2の加熱温度に設定し、前記面積及び前記加熱温度に応じて前記加熱時間を設定したことを特徴とする請求項16記載の物理量センサの内部圧力制御方法。
【請求項19】
前記第1基板上に、前記第1電極と電気的に接続される第1配線を形成し、前記第2基板上に、前記第2電極と電気的に接続される第2配線を形成し、前記第1配線、前記第1配線の一部、前記第2配線、又は、前記第2配線の一部に第1の導電性材料を含む第1導電層と、前記第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料を含む第2導電層とを積層して形成し、前記内部圧力調整部材の形成時に面積を設定し、前記面積に応じて前記加熱温度及び前記加熱時間を制御して、前記封止空間内部を所望の圧力に設定することを特徴とする請求項16記載の物理量センサの内部圧力制御方法。
【請求項20】
前記第1基板又は前記第2基板は、第1の加熱温度により加熱されて前記フレーム部に接合され、
前記加熱処理時の加熱温度は、前記第1の加熱温度より高い第2の加熱温度に設定したことを特徴とする請求項15乃至18のいずれか一項に記載の物理量センサの内部圧力制御方法。
【請求項21】
請求項2乃至9のいずれか一項に記載の物理量センサと、
前記物理量センサにより検出される物理量検出信号を処理する処理回路と、
を備えることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−141088(P2010−141088A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315413(P2008−315413)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】