説明

建設機械のエンジン制御装置

【課題】1種類の車体コントローラでエンジン駆動方式の異なる複数種類のエンジンを制御することを可能とし、車体コントローラのコストダウンを可能としかつ設計管理や在庫管理等の諸管理を容易にする建設機械のエンジン制御装置を提供する。
【解決手段】車体コントローラ5は、エンジン駆動装置の種類の異なる2種類のエンジン11,21を選択的に接続可能とする出力ポート5a,5bと、エンジン駆動装置の種類を選択する選択部3と、選択部3により選択したエンジン駆動装置の種類に応じて目標エンジン回転数を対応する指令信号に変換し、その指令信号を出力ポート5a,5bから出力する出力変換部7a,7bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に設けられ、車体コントローラで演算・設定した目標エンジン回転数をエンジン駆動装置に送り、エンジン駆動装置でエンジンを制御する建設機械のエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の建設機械には原動機としてディーゼルエンジンが搭載されている。このディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)には、エンジン駆動装置の種類(エンジン駆動方式)として、モータ駆動のメカニカルガバナを用いて燃料噴射制御を行うメカニカルガバナ方式と、電子制御によりバルブを開閉して燃料噴射制御を行う電子ガバナ方式がある。電子ガバナ方式のエンジンは、例えば、特開2003−254137号(特許文献1)に記載されている。
【0003】
図9にメカニカルガバナ方式のエンジンとそのエンジン制御装置を示し、図10に電子ガバナ方式のエンジンとそのエンジン制御装置を示す。
【0004】
図9において、エンジン101はエンジンコントロールモータ(以下、ECモータという)103及びガバナレバー107と、メカニカルガバナ102とを有するメカニカルガバナ方式のエンジン駆動装置101Mを備え、ECモータ103は、車体コントローラ105から信号線106を介して送られる目標エンジン回転数の指令信号(パルス信号)により駆動され、その回転がガバナレバー107を介してメカニカルガバナ102のガバナ軸102aに伝えられる。メカニカルガバナ102はガバナ軸102aの回転により燃料噴射量を調整し、エンジン101の回転数を制御する。
【0005】
車体コントローラ105はエンジンコントロールダイヤル(以下、ECダイヤルという)104からの指示信号(電圧)に基づき目標エンジン回転数を演算し、この目標エンジン回転数をメカニカルガバナ方式に対応した指令信号(パルス信号)に変換し、信号線106を介してECモータ103に出力する。
【0006】
図10において、エンジン201はエンジンコントローラ203と電子ガバナ202とを有する電子ガバナ方式のエンジン駆動装置201Eを備え、エンジンコントローラ203は、車体コントローラ205から信号線206を介してCAN通信により目標エンジン回転数の指令信号を受信し、その指令信号に基づいて燃料噴射指令を演算し、この燃料噴射指令を電子ガバナ202に出力する。電子ガバナ202はその燃料噴射指令により燃料噴射量を調整し、エンジン201の回転数を制御する。
【0007】
車体コントローラ205はECダイヤル204からの指示信号(電圧)に基づき目標エンジン回転数を演算する。また、自動制御システムを搭載している場合は、ECダイヤル204の指示に優先してそれら制御システムにより演算された目標エンジン回転数を設定する。そして、車体コントローラ205は、その目標エンジン回転数を電子ガバナ方式に対応した指令信号(シリアル通信又はCAN信号)に変換し、信号線206を介してエンジンコントローラ203に出力する。
【0008】
【特許文献1】特開2003−254137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題がある。
【0010】
近年は、制御の多様化や排ガス対策への対応のし易さのため、建設機械の生産時に搭載するエンジンの駆動方式は電子ガバナ方式が増えつつある。建設機械に電子ガバナ方式のエンジンを搭載する場合、車体コントローラは電子ガバナ方式に対応したものとする必要がある。また、減少傾向にあるとはいえ、メカニカルガバナ方式のエンジンを搭載した建設機械も生産されており、この場合は、車体コントローラはメカニカルガバナ方式に対応したものとする必要がある。更に、市場で稼働中の建設機械には、メカニカルガバナ方式のエンジンを搭載した建設機械も数多く存在しており、このような建設機械のメンテナンス時に車体コントローラを交換する際には、メカニカルガバナ方式に対応した車体コントローラが必要となる。
【0011】
従来のエンジン制御装置は、上記のように、エンジン駆動方式の相違に対して、それぞれ、別々の車体コントローラ105,295を用いている。その結果、建設機械の生産時やメンテナンス時にエンジン駆動方式の相違に対応するためには、エンジン駆動方式の違いに応じた複数種類の車体コントローラ105,205を生産し、用意しておく必要がある。しかし、このようにするためには、複数種類の車体コントローラを製造する必要があり、車体コントローラのコストダウンが難しかった。
【0012】
また、複数種類の車体コントローラを製造し、保管する必要があるため、設計管理や在庫管理等の諸管理が煩雑となるという問題もあった。
【0013】
本発明の目的は、1種類の車体コントローラでエンジン駆動方式の異なる複数種類のエンジンを制御することができるようにし、車体コントローラのコストダウンを可能としかつ設計管理や在庫管理等の諸管理を容易にする建設機械のエンジン制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、エンジンと、目標エンジン回転数に基づいて前記エンジンを制御するエンジン駆動装置とを備える建設機械のエンジン制御装置において、エンジン回転指示装置と、このエンジン回転指示装置からの指示に基づいて前記目標エンジン回転数を演算する車体コントローラとを備え、前記車体コントローラは、前記エンジンの種類の異なるエンジン駆動装置を選択的に接続可能とする出力ポートと、前記エンジン駆動装置の種類を選択する選択部と、前記選択部により選択したエンジン駆動装置の種類に応じて前記目標エンジン回転数を対応する指令信号に変換し、その指令信号を前記出力ポートから出力する出力変換部とを有するものとする。
【0015】
このように車体コントローラに出力ポート、選択部、出力変換部を設け、選択部により選択したエンジン駆動装置の種類に応じて目標エンジン回転数を対応する指令信号に変換し出力ポートから出力する構成とすることにより、車体コントローラは、選択部を切り換えることで、エンジン駆動の異なる複数種類のエンジンに対して対応可能となり、1種類の車体コントローラでエンジン駆動方式の異なる複数種類のエンジンを制御することができる。
【0016】
また、1種類の車体コントローラでエンジン駆動方式の異なる複数種類のエンジンを制御することがでるので、1種類の車体コントローラを複数種類のエンジンに共用することができ、車体コントローラの生産個数の増加により量産効果が高まり、車体コントローラのコストダウンが可能となる。また、駆動方式の異なるエンジン毎に異なる車体コントローラを生産し、保管する必要がないため、車体コントローラの設計管理、在庫管理等の諸管理が容易となる。
【0017】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記選択部は、前記エンジン駆動装置の種類として、メカニカルガバナ方式とCAN通信信号を用いる電子ガバナ方式のいずれかを選択可能であり、前記出力変換部は、前記目標エンジン回転数をメカニカルガバナ方式に対応した指令信号に変換する第1出力変換部と、前記目標エンジン回転数をCAN通信を用いる電子ガバナ方式に対応した指令信号に変換する第2出力変換部とを有する。
【0018】
これにより1種類の車体コントローラで、メカニカルガバナ方式のエンジン駆動装置を備えたエンジンとCAN通信信号を用いる電子ガバナ方式のエンジン駆動装置を備えたエンジンの2種類のエンジンを制御することができる。
【0019】
(3)また、上記(1)において、好ましくは、前記選択部は、前記エンジン駆動装置の種類として、メカニカルガバナ方式とCAN通信信号を用いる電子ガバナ方式とシリアル通信信号を用いる電子ガバナ方式のうちの少なくとも2つのいずれかを選択可能であり、前記出力変換部は、前記目標エンジン回転数をメカニカルガバナ方式に対応した指令信号に変換する第1出力変換部と、前記目標エンジン回転数をCAN通信を用いる電子ガバナ方式に対応した指令信号に変換する第2出力変換部と、前記目標エンジン回転数をシリアル通信信号を用いる電子ガバナ方式に対応した指令信号に変換する第3出力変換部のうちの、前記選択部で選択可能な少なくとも2つのエンジン駆動装置の種類に対応したものを有する。
【0020】
これにより1種類の車体コントローラで、メカニカルガバナ方式のエンジン駆動装置を備えたエンジンとCAN通信信号を用いる電子ガバナ方式のエンジン駆動装置を備えたエンジンとシリアル通信信号を用いる電子ガバナ方式の3種類のエンジンのうちの、少なくとも2種類のエンジンを制御することができる。
【0021】
(4)更に、上記(1)〜(3)において、前記車体コントローラに接続可能な外部設定装置を更に備え、前記選択部は、前記外部設定装置により切り換えられる。
【0022】
これにより、選択部は外部設定装置を接続しない限り切り換えることができないので、操作者が作業中に誤って切換部を切り換えてしまうことが防止され、作業を安全に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、1種類の車体コントローラでエンジン駆動方式の異なる複数種類のエンジンを制御することができ、車体コントローラのコストダウンが可能となる。また、駆動方式の異なるエンジン毎に異なる車体コントローラを生産し、保管する必要がないため、車体コントローラの設計管理、在庫管理等の諸管理が容易となる。
【0024】
また、選択部は外部設定装置を接続しない限り切り換えることができないので、操作者が作業中に誤って切換部を切り換えることが防止され、作業を安全に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる建設機械のエンジン制御装置をエンジンと共に示す図であり、エンジン制御装置を符号1で示している。
【0027】
図1において、エンジン制御装置1は、目標エンジン回転数を指示する指示信号(電圧信号)を出力するエンジンコントロールダイヤル(エンジン回転指示装置)4と、このエンジンコントロールダイヤル(以下、ECダイヤルという)4からの指示信号(電圧信号)に基づき目標エンジン回転数(目標回転数)を演算し、この目標エンジン回転数を指令信号に変換して出力する車体コントローラ5とを備えている。車体コントローラ5は2つの出力ポート5a,5bを有し、この出力ポート5a,5bに信号線6a,6bを接続することにより、2種類のディーゼルエンジン(以下単にエンジンという)11,21のそれぞれのエンジン駆動装置11M,21Eが選択的に接続可能である。
【0028】
また、車体コントローラ5は入力ポート5dを有し、この入力ポート5dに通信線9aを接続することにより、外部設定装置9が接続可能である。
【0029】
2種類のエンジン11,21のうち、エンジン11は、エンジン駆動装置11Mがメカニカルガバナ方式のエンジン駆動装置であるエンジン(以下、メカニカルガバナ方式のエンジンという)であり、エンジン21は、エンジン駆動装置21EがCAN通信信号(以下CAN信号という)を用いる電子ガバナ方式のエンジン駆動装置であるエンジン(以下、CAN通信電子ガバナ方式のエンジンという)である。図示の実施の形態では、車体コントローラ5にメカニカルガバナ方式のエンジン11のエンジン駆動装置11Mを接続した場合を示している。このエンジン11は建設機械に搭載され、油圧源である油圧ポンプを駆動する。例えば、建設機械が油圧ショベルである場合、その油圧ポンプはエンジン11により駆動されることにより圧油を吐出し、その吐出油はブームシリンダ、アームシリンダ等の各種アクチュエータに供給され、それらアクチュエータを駆動する。油圧ショベルは、それらアクチュエータが駆動されることにより掘削作業、走行作業等の各種作業を行う。CAN通信電子ガバナ方式のエンジン21が建設機械に搭載される場合も同様である。
【0030】
ここで、エンジン11のメカニカルガバナ方式のエンジン駆動装置11Mは、エンジンコントロールモータ(以下、ECモータという)13及びガバナレバー17と、メカニカルガバナ12とを備えている。ECモータ13は、車体コントローラ5から信号線6aを介して送られる目標エンジン回転数の指令信号(パルス信号)により駆動され、その回転がガバナレバー17を介してメカニカルガバナ12のガバナ軸12aに伝えられる。メカニカルガバナ12はガバナ軸12aの回転により燃料噴射量を調整し、エンジン11の回転数を制御する。
【0031】
エンジン21のCAN通信信号を用いる電子ガバナ方式のエンジン駆動装置21Eは、エンジンコントローラ23と電子ガバナ22とを備えている。エンジンコントローラ23は、車体コントローラ5から信号線6bを介してCAN通信により目標エンジン回転数の指令信号を受信し、その指令信号に基づいて燃料噴射指令を演算し、この燃料噴射指令を電子ガバナ22に出力する。電子ガバナ22はその燃料噴射指令により燃料噴射量を調整し、エンジン21の回転数を制御する。
【0032】
車体コントローラ5はそのような2種類のエンジン11,21の制御を行うエンジン制御部2を備え、このエンジン制御部2は、選択部3と、第1エンジン演算部7と、第2エンジン演算部8の各処理機能を有している。
【0033】
選択部3は、a位置とb位置の2つの切換位置を有し、a位置にあるときは、ECダイヤル4からの指示信号(電圧信号)を第1エンジン演算部7に送り、b位置にあるときは、ECダイヤル4からの指示信号(電圧信号)を第2エンジン演算部8に送る。本実施の形態では、車体コントローラ5はメカニカルガバナ方式のエンジン11に接続されているため、選択部3はa位置に切り換えられている。車体コントローラ5がCAN通信電子ガバナ方式のエンジン21に接続される場合は、選択部3はb位置に切り換えられる。
【0034】
選択部3の切換位置の変更は外部設定装置9により行う。すなわち、選択部3の切換位置を変更するときは、外部設定装置9の通信線9aを車体コントローラ5の入力ポート5dに接続し、外部設定装置9を操作して選択部3の切換位置を切り換える。
【0035】
第1エンジン演算部7及び第2エンジン演算部8は、それぞれ、選択部3の切り換え位置に応じて目標エンジン回転数の指令信号を生成し出力する。
【0036】
第1エンジン演算部7及び第2エンジン演算部8の処理機能の詳細を図2及び図3に示す。
【0037】
第1エンジン演算部7は、図2に示すように、目標エンジン回転数演算部7aと出力変換部7bとを有している。目標エンジン回転数演算部7aは、ECダイヤル4から選択部3を介して入力された指示信号(電圧信号)をメモリに記憶してあるテーブルに参照させ、その指示信号に対応する目標エンジン回転数を演算する。メモリのテーブルには、図示の如く、指示信号の電圧が高くなるにしたがって目標エンジン回転数が増加するよう、指示信号と目標エンジン回転数との関係が設定されている。出力変換部7bは、演算部7aで演算された目標エンジン回転数をメカニカルガバナ方式のエンジン駆動装置11Mに対応した指令信号(パルス信号)に変換して出力する。
【0038】
第2エンジン演算部8は、図3に示すように、目標エンジン回転数演算部8aと出力変換部8bとを有している。目標エンジン回転数演算部8aの処理機能は第1エンジン演算部7の目標エンジン回転数演算部7aと同じであり、ECダイヤル4から選択部3を介して入力された指示信号(電圧信号)に基づいて、目標エンジン回転数を演算する。出力変換部8bは、演算部8aで演算された目標エンジン回転数をCAN通信電子ガバナ方式のエンジン駆動装置21Eに対応した指令信号(CAN信号)に変換して出力する。
【0039】
以上のように構成した本実施の形態の動作を説明する。
【0040】
例えば建設機械の生産(製造、組み立て)時、エンジンがメカニカルガバナ方式のエンジン11である場合は、車体コントローラ5の出力ポート5aに信号線6aを介してメカニカルガバナ方式のエンジン駆動装置11Mを接続する。この場合、選択部3の初期位置をa位置とすれば、選択部3の位置の切り換えは不要である。
【0041】
また、このように車体コントローラ5にメカニカルガバナ方式のエンジン駆動装置11Mが接続された場合、ECダイヤル4から車体コントローラ5に入力された目標エンジン回転数の指示信号(電圧信号)はa位置にある選択部3を介して第1エンジン演算部7に送られる。第1エンジン演算部7は、目標エンジン回転数演算部7aにおいて、その指示信号(電圧信号)に基づいて目標エンジン回転数を演算し、出力変換部7bにおいて、メカニカルガバナ方式のエンジン駆動装置11Mに対応した指令信号(パルス信号)に変換し、その指令信号を出力ポート5aから出力する。これにより車体コントローラ5はメカニカルガバナ方式のエンジン駆動装置11Mを駆動し、エンジン11を制御することができる。
【0042】
建設機械の製造、組み立て時、エンジンがCAN通信電子ガバナ方式のエンジン21である場合は、車体コントローラ5の出力ポート5bに信号線6bを介してCAN通信電子ガバナ方式のエンジン駆動装置21Eを接続する。図4はこの状態を示している。また、車体コントローラ5の入力ポート5dに通信線9aを介して外部設定装置9を接続し、外部設定装置9を操作して車体コントローラ5の選択部3を図1に示すa位置から図4に示すb位置に切り換える。
【0043】
このように車体コントローラ5にCAN通信電子ガバナ方式のエンジン駆動装置21Eが接続された場合は、ECダイヤル4から車体コントローラ5に入力された目標エンジン回転数の指示信号(電圧信号)はb位置にある選択部3を介して第2エンジン演算部8に送られる。第2エンジン演算部8は、目標エンジン回転数演算部8aにおいて、その指示信号(電圧信号)に基づいて目標エンジン回転数を演算し、出力変換部8bにおいて、CAN通信電子ガバナ方式のエンジン駆動装置21Eに対応した指令信号(CAN信号)に変換し、その指令信号を出力ポート5bから出力する。これにより車体コントローラ5はCAN通信電子ガバナ方式のエンジン駆動装置21Eを駆動し、エンジン21を制御することができる。
【0044】
建設機械のメンテナンス時に車体コントローラを交換する場合も、同様である。すなわち、メンテナンスの対象となる建設機械に搭載されるエンジンがメカニカルガバナ方式のエンジン11、CAN通信電子ガバナ方式のエンジン21のいずれであっても、車体コントローラを本実施の形態に係わる車体コントローラ5に交換し、外部設定装置9を接続し、エンジン駆動方式に応じて選択部3をa位置かb位置のいずれかに切り換える。これによりエンジン駆動方式が異なっても、1種類の車体コントローラ5でエンジンを制御することができる。
【0045】
以上のように本実施の形態によれば、1種類の車体コントローラ5でエンジン駆動方式の異なる2種類のエンジン11,21を制御することができる。
【0046】
また、1種類の車体コントローラ5でエンジン駆動方式の異なる2種類のエンジン11,21を制御することができるので、1種類の車体コントローラ5を2種類のエンジン11,21に共用することができ、その分、車体コントローラ5の生産個数が増加する。その結果、車体コントローラ5の量産効果が高まり、車体コントローラのコストダウンが可能となる。また、駆動方式の異なるエンジン毎に異なる車体コントローラを生産し、保管する必要がないため、車体コントローラの設計管理、在庫管理等の諸管理が容易となる。
【0047】
また、車体コントローラ5の選択部3は、外部設定装置9からの切換信号によってのみ切り換えることができ、外部設定装置9は、選択部3を切り換える必要がある場合にのみコントローラ5に接続すればよいので、操作者が作業中に誤って選択部3を切り換えることが防止され、作業を安全に行うことができる。
【0048】
本発明の第2の実施の形態を図5〜図8を用いて説明する。本実施の形態は、エンジン制御装置をエンジン駆動方式の異なる3種類のエンジンに共用できるようにしたものである。
【0049】
図5は、本実施の形態に係わる建設機械のエンジン制御装置をエンジンと共に示す図であり、エンジン制御装置を符号1Aで示している。図中、図1と同等の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0050】
図5において、エンジン制御装置1Aは、車体コントローラ5に代え車体コントローラ5Aを備えている。車体コントローラ5Aは3つの出力ポート5a,5b,5cを有し、この出力ポート5a,5b,5cに信号線6a,6b,6cを接続することにより、エンジン駆動方式の異なる3種類のディーゼルエンジン(以下単にエンジンという)11,21,31のそれぞれのエンジン駆動装置11M,21E,31Eが選択的に接続可能である。
【0051】
また、車体コントローラ5Aは入力ポート5dを有し、この入力ポート5dに通信線9aを接続することにより、外部設定装置9Aが接続可能である。
【0052】
3種類のエンジン11,21,31のうち、エンジン11,21は、それぞれ前述したように、エンジン駆動装置11Mがメカニカルガバナ方式のエンジン駆動装置であるメカニカルガバナ方式のエンジンと、エンジン駆動装置21EがCAN通信信号(以下CAN信号という)を用いる電子ガバナ方式のエンジン駆動装置であるCAN通信電子ガバナ方式のエンジンである。また、エンジン31は、シリアル通信信号を用いる電子ガバナ方式のエンジン駆動装置31Eを備えたエンジン(以下、シリアル通信電子ガバナ方式のエンジンという)である。図示の実施の形態では、車体コントローラ5Aにメカニカルガバナ方式のエンジン11を接続した場合を示している。
【0053】
エンジン31のシリアル通信信号を用いる電子ガバナ方式のエンジン駆動装置31Eは、エンジンコントローラ33と電子ガバナ32とを備えている。エンジンコントローラ33は、車体コントローラ5Aから信号線6bを介してシリアル通信信号により目標エンジン回転数の指令信号を受信し、その指令信号に基づいて燃料噴射指令を演算し、この燃料噴射指令を電子ガバナ32に出力する。電子ガバナ32はその燃料噴射指令により燃料噴射指量を調整し、エンジン31の回転数を制御する。
【0054】
車体コントローラ5Aはそのような3種類のエンジン11,21,31の制御を行うエンジン制御部2Aを備え、このエンジン制御部2Aは、選択部3Aと、第1エンジン演算部7と、第2エンジン演算部8と、第3エンジン演算部18の各処理機能を有している。
【0055】
選択部3Aは、a位置とb位置とc位置の3つの切換位置を有し、a位置にあるときは、ECダイヤル4からの指示信号(電圧信号)を第1エンジン演算部7に送り、b位置にあるときは、ECダイヤル4からの指示信号(電圧信号)を第2エンジン演算部8に送り、c位置にあるときは、ECダイヤル4からの指示信号(電圧信号)を第3エンジン演算部に送る。本実施の形態では、車体コントローラ5Aはメカニカルガバナ方式のエンジン11に接続されているため、選択部3Aはa位置に切り換えられている。車体コントローラ5AがCAN通信電子ガバナ方式のエンジン21に接続される場合は、選択部3Aはb位置に切り換えられ、車体コントローラ5Aがシリアル通信電子ガバナ方式のエンジン21に接続される場合は、選択部3Aはc位置に切り換えられる。
【0056】
選択部3Aの切換位置の変更は、上記第1の実施の形態と同様に外部設定装置9Aにより行う。
【0057】
第1エンジン演算部7、第2エンジン演算部8及び第3エンジン演算部18は、それぞれ、選択部3Aの切換位置に応じて目標エンジン回転数の指令信号を生成し出力する。第1エンジン演算部7及び第2エンジン演算部8の処理機能は第1の実施の形態におけるものと同じである(図2及び図3)。
【0058】
第3エンジン演算部18の処理機能の詳細を図6に示す。第3エンジン演算部18は、図6に示すように、目標エンジン回転数演算部18aと出力変換部18bとを有している。目標エンジン回転数演算部18aの処理機能は第1及び第2エンジン演算部7,8の目標エンジン回転数演算部7a,8aと同じである。出力変換部18bは、演算部18aで演算された目標エンジン回転数をシリアル通信電子ガバナ方式のエンジン駆動装置31Eに対応した指令信号(シリアル信号)に変換して出力する。
【0059】
以上のように構成した本実施の形態の動作を説明する。
【0060】
建設機械の製造、組み立て時やメンテナンス時において、エンジンがメカニカルガバナ方式のエンジン11である場合及びCAN通信電子ガバナ方式のエンジン21である場合の動作は、第1の実施の形態と同じである。すなわち、車体コントローラ5にメカニカルガバナ方式のエンジン駆動装置11M又はCAN通信電子ガバナ方式のエンジン駆動装置21Eを接続し、選択部3Aをa位置又はB位置に切り換えることで、エンジン11又は21を制御することができる。図7は、車体コントローラ5にCAN通信電子ガバナ方式のエンジン駆動装置21Eを接続した状態を示している。
【0061】
また、建設機械の製造、組み立て時、エンジンがシリアル通信電子ガバナ方式のエンジン31である場合は、車体コントローラ5Aの出力ポート5cに信号線6cを介してシリアル通信電子ガバナ方式のエンジン駆動装置31Eを接続する。図8はこの状態を示している。また、車体コントローラ5Aの入力ポート5dに通信線9aを介して外部設定装置9Aを接続し、外部設定装置9Aを操作して車体コントローラ5Aの選択部3Aを図5に示すa位置から図8に示すc位置に切り換える。
【0062】
このように車体コントローラ5Aにシリアル通信電子ガバナ方式のエンジン駆動装置31Eを接続した場合は、ECダイヤル4から車体コントローラ5Aに入力された目標エンジン回転数の指示信号(電圧信号)はc位置にある選択部3Aを介して第3エンジン演算部18に送られる。第3エンジン演算部18は、目標エンジン回転数演算部18aにおいて、その指示信号(電圧信号)に基づいて目標エンジン回転数を演算し、出力変換部18bにおいて、シリアル通信電子ガバナ方式のエンジン駆動装置31Eに対応した指令信号(シリアル信号)に変換し、その指令信号を出力ポート5cから出力する。これにより車体コントローラ5Aはシリアル通信電子ガバナ方式のエンジン駆動装置31Eを駆動し、エンジン31を制御することができる。
【0063】
建設機械のメンテナンス時に車体コントローラを交換する場合も、同様である。すなわち、メンテナンスの対象となる建設機械に搭載されるエンジンがシリアル通信電子ガバナ方式のエンジン31である場合は、車体コントローラ5Aに交換し、外部設定装置9Aを用い、選択部3Aをc位置に切り換える。これにより車体コントローラ5Aはシリアル通信電子ガバナ方式のエンジン駆動装置31Eを駆動し、エンジン31を制御することができる。
【0064】
以上のように本実施の形態によれば、1種類の車体コントローラ5Aでエンジン駆動方式の異なる3種類のエンジンを制御することができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、1種類の車体コントローラ5Aでエンジン駆動方式の異なる3種類のエンジンを制御することができるので、1種類の車体コントローラ5Aを3種類のエンジンに共用することができ、その分、車体コントローラ5Aの生産個数が更に増加する。その結果、車体コントローラ5Aの量産効果が一層高まり、車体コントローラのコストダウンが可能となる。また、駆動方式の異なるエンジン毎に異なる車体コントローラを生産し、保管する必要がないため、車体コントローラの設計管理、在庫管理等の諸管理が容易となる。
【0066】
なお、上記第1の実施の形態では、エンジン駆動方式の異なる2種類のエンジンがメカニカルガバナ方式のエンジン11とCAN通信電子ガバナ方式のエンジン21である場合のものとして説明したが、エンジンがメカニカルガバナ方式のエンジン11とシリアル通信電子ガバナ方式のエンジン31の2種類、或いは、CAN通信電子ガバナ方式のエンジン21とシリアル通信電子ガバナ方式のエンジン31の2種類であってもよく、その場合も本発明を適用し、同様の効果を得ることができる。
【0067】
また、上記第2の実施の形態では、エンジン制御装置をエンジン駆動方式の異なる3種類のエンジンに共用できるようにしたが、エンジン制御装置をエンジン駆動方式の異なる4種類以上のエンジンに共用できるようにしてもよい。
【0068】
更に、上記第1及び第2の実施の形態では、車体コントローラにエンジン駆動方式の異なるエンジンの種類毎に対応する数の出力ポート5a,5b又は5a,5b,5cを設けたが、出力ポートを1つにし、この1つの出力ポートをそれぞれの信号線6a,6b又は6a,6b,6cに接続できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる建設機械のエンジン制御装置をエンジンと共に示す図である。
【図2】車体コントローラにおける第1エンジン演算部の処理機能の詳細を示す図である。
【図3】車体コントローラにおける第2エンジン演算部の処理機能の詳細を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係わる建設機械のエンジン制御装置のコントローラにCAN通信電子ガバナ方式のエンジン接続した状態を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係わる建設機械のエンジン制御装置をエンジンと共に示す図である。
【図6】車体コントローラにおける第3エンジン演算部の処理機能の詳細を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係わる建設機械のエンジン制御装置のコントローラにCAN通信電子ガバナ方式のエンジンを接続した状態を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係わる建設機械のエンジン制御装置のコントローラにシリアル通信電子ガバナ方式のエンジンを接続した状態を示す図である。
【図9】従来のメカニカルガバナ方式の建設機械のエンジン制御装置を示す図である。
【図10】従来の電子ガバナ方式の建設機械のエンジン制御装置を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1,1A エンジン駆動装置
2,2A エンジン制御部
3,3A 選択部
4 エンジンコントロールダイヤル(エンジン回転指示装置)
5,5A 車体コントローラ
5a,5b,5c 出力ポート
9d 入力ポート
6a,6b, 信号線
7 第1エンジン演算部
8 第2エンジン演算部
7a,8a,18a 演算部
7b,8b,18b 出力変換部
9,9A 外部設定装置
9a 信号線
11,21,31 エンジン
12 メカニカルガバナ
12a ガバナ軸
13 エンジンコントロールモータ
17 ガバナレバー
18 第3エンジン演算部
22,32 電子ガバナ
23,33 エンジンコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、目標エンジン回転数に基づいて前記エンジンを制御するエンジン駆動装置とを備える建設機械のエンジン制御装置において、
エンジン回転指示装置と、
このエンジン回転指示装置からの指示に基づいて前記目標エンジン回転数を演算する車体コントローラとを備え、
前記車体コントローラは、
前記エンジンの種類の異なるエンジン駆動装置を選択的に接続可能とする出力ポートと、
前記エンジン駆動装置の種類を選択する選択部と、
前記選択部により選択したエンジン駆動装置の種類に応じて前記目標エンジン回転数を対応する指令信号に変換し、その指令信号を前記出力ポートから出力する出力変換部とを有することを特徴とする建設機械のエンジン制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のエンジン駆動装置において、
前記選択部は、前記エンジン駆動装置の種類として、メカニカルガバナ方式とCAN通信信号を用いる電子ガバナ方式のいずれかを選択可能であり、
前記出力変換部は、前記目標エンジン回転数をメカニカルガバナ方式に対応した指令信号に変換する第1出力変換部と、前記目標エンジン回転数をCAN通信を用いる電子ガバナ方式に対応した指令信号に変換する第2出力変換部とを有することを特徴とする建設機械のエンジン制御装置。
【請求項3】
請求項1記載のエンジン駆動装置において、
前記選択部は、前記エンジン駆動装置の種類として、メカニカルガバナ方式とCAN通信信号を用いる電子ガバナ方式とシリアル通信信号を用いる電子ガバナ方式のうちの少なくとも2つのいずれかを選択可能であり、
前記出力変換部は、前記目標エンジン回転数をメカニカルガバナ方式に対応した指令信号に変換する第1出力変換部と、前記目標エンジン回転数をCAN通信を用いる電子ガバナ方式に対応した指令信号に変換する第2出力変換部と、前記目標エンジン回転数をシリアル通信信号を用いる電子ガバナ方式に対応した指令信号に変換する第3出力変換部のうちの、前記選択部で選択可能な少なくとも2つのエンジン駆動装置の種類に対応したものを有することを特徴とする建設機械のエンジン制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のエンジン制御装置において、
前記車体コントローラに接続可能な外部設定装置を更に備え、
前記選択部は、前記外部設定装置により切り換えられることを特徴とする建設機械のエンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−138651(P2008−138651A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328717(P2006−328717)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】