説明

感光性エレメント、これを用いたレジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法

【課題】 特定波長の光線に対して高い感度を有するとともに、感光特性を安定に維持可能であり、更に、レジストパターンのライン断面形状を良好とすることができる感光性エレメントを提供すること。
【解決手段】 感光性エレメント1は、支持体10と、この上に形成された感光層20とを備えている。感光層は、(A)バインダーポリマー、(B)光重合性化合物及び(C)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物から構成される。C成分は、特定構造の(C1)クマリン系化合物、(C2)イミダゾール二量体及び(C3)フェニルグリシン化合物を含有している。そして、感光層20においては、A成分及びB成分の総質量100質量部に対するC1成分の含有量Pと、感光層の厚さQμmとの積Rが、10.0以上22.0未満であり、また、C3成分の含有量が、A成分及びB成分の総質量100質量部に対して0.02〜0.8質量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性エレメント、これを用いたレジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板の製造分野では、回路パターンを形成する際に行われるエッチングやめっきにおいて、レジスト材料が用いられている。レジスト材料としては、感光性樹脂組成物や、支持体上に感光性樹脂組成物からなる感光層を積層した感光性エレメントが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、プリント配線板の製造において感光性エレメントを用いる場合、まず、感光性エレメントを銅基板上にラミネートし、感光層に対して露光を行い露光部に重合・硬化を生じさせ、更に未露光部を現像液で除去することによりレジストパターンを形成する。次いで、こうして形成されたレジストパターンを備える銅基板に対してエッチング又はめっきを施し、回路パターンを形成する。
【0004】
このような方法において、露光に用いる活性光線としては、水銀灯を光源とする光線が従来主流であったが、近年、これに代わる光線として可視光レーザーが検討されている。しかし、この可視光レーザーを用いる場合、レジスト材料として可視光域に感度を有するものを用いる必要があるため、暗所や赤色灯下での取り扱いが求められるなど、露光を行う環境等に厳しい制限があった。
【0005】
そこで、最近では、水銀灯からの光線に対して365nm以下の波長の光を99.5%以上カットした光線や、窒化ガリウム系青色レーザー光源からの波長400〜415nmの光線等が露光用の光源として使用されるようになっている。また、これらの光線は、DLP(Digital Light Processing)露光法の露光用にも用いられるようになっている。
【特許文献1】特開2000−310855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来レジスト材料として用いられてきた感光性樹脂組成物は、水銀灯からの365nmの光を中心とする光線の全波長に対応するように設計されている場合が多かった。このような感光性樹脂組成物は、特定波長の光線に対する光学密度(以下、「O.D.値」という)が小さいため、十分に光線を吸収できずに重合が開始できず、上記特定波長の光線に対する感度が低い傾向にあった。
【0007】
このような不都合を解消するために、感光性樹脂組成物に対しては、400〜450nmの波長に吸収波長を有する増感剤を添加したり、増感剤及び光重合開始剤を増量することにより400〜450nmの波長の光線に対する感度を向上させたりする試みがなされている。しかし、このような増感剤の使用や光重合開始剤等の増量は、感光性樹脂組成物の感度を過度に高めてしまう場合があった。そして、このように過度に感度が高められた感光性樹脂組成物は、保管時に用いられる黄色灯からの光線や熱等によって感光特性が変動し易く、レジスト材料として安定に用いるのが困難な傾向にあった。
【0008】
さらに、感光性樹脂組成物から形成されるレジストパターンに対しては、ラインの断面形状が略矩形状であることが求められる。このような略矩形状の断面形状を有するレジストパターンによれば、エッチングやメッキによる回路パターンの形成を精度良く行うことができるようになる。ところが、上述のように感度向上のために増感剤を用いたり、光重合開始剤等の含有量を増大させたりすると、露光の際の活性光線が、感光層の上層部において過度に吸収されてしまい、下層部にまで十分に光が到達しなくなる場合があった。こうなると、下層部の露光が不十分となって上層部よりも現像され易くなり、レジストパターンのライン断面形状が、下部に向かって幅が狭くなる逆台形となる。そして、このような形状のレジストパターンでは、所望とする形状の回路パターンが得難くなるため、良好に回路パターン等を形成するのが困難となる等の不都合が生じることとなる。
【0009】
そこで、本発明はこのような事情にかんがみてなされたものであり、特定波長、特に400〜450nmの波長の光線に対して高い感度を有するとともに、感光特性を安定に維持可能であり、更に、得られるレジストパターンのライン断面形状を良好にすることができる感光性樹脂組成物及び感光性エレメントを提供することを目的とする。本発明はまた、上記感光性エレメントを用いたレジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、特定のクマリン系化合物を光重合開始剤として用いるとともに、このクマリン系化合物の含有量を感光層の厚さに応じた量に調整することで、特定波長の光線に対する十分な感度が得られるとともに感光特性の安定化が図れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の感光性エレメントは、支持体と、この支持体上に形成された感光性樹脂組成物からなる感光層とを備え、感光性樹脂組成物は、バインダーポリマー、エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、及び、光重合開始剤を含有し、光重合開始剤は、下記一般式(1)で表されるクマリン系化合物、下記一般式(2)で表されるイミダゾール二量体及び下記一般式(3)で表されるフェニルグリシン化合物を含有しており、バインダーポリマー及び光重合性化合物の総質量100質量部に対するクマリン系化合物の含有量をP質量部とし、感光層の厚さをQμmとしたとき、PとQとの積Rは、10.0以上22.0未満であり、フェニルグリシン化合物の含有量は、バインダーポリマー及び光重合性化合物の総質量100質量部に対し、0.02〜0.7質量部であることを特徴とする。
【化1】


[式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の炭化水素基を示す。]
【化2】


[式中、Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有していてもよいアリール基を示し、X及びXは、それぞれ独立に、塩素原子、アルキル基、アルケニル基又はアルコキシ基を示し、a及びbは、それぞれ独立に、1〜5の整数を示す。但し、X及びXのうち少なくとも一つは塩素原子である。なお、a又はbが2以上であるとき、複数のX及びXは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【化3】


[式中、R31は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、R32は、アルキル基、アルケニル基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を示し、cは、1〜5の整数である。なお、cが2以上であるとき、複数のR32は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0012】
上記構成を有する感光性エレメントは、特定波長、特に400〜450nmの光線に対して高い感度を有することから、レジスト材料として用いる際に優れた感度及び解像度を発揮し得るとともに、得られたレジストパターンのライン断面形状を極めて良好にすることができる。また、このような感光性エレメントは、保管時における黄色灯からの光線や熱等に対して優れた安定性を有するものとなる。
【0013】
上記の要因については必ずしも明らかではないものの、本発明者らは次のように推測している。すなわち、400〜450nmの波長を有する活性光線に吸収性を有する化合物は、通常、感光性樹脂組成物のかかる波長に対する感度を向上させ得るが、保管時に用いられる黄色灯からの光線(500nmの波長)に対する感度も同時に増大させてしまうものが多く、この化合物を含む感光性樹脂組成物は、保管時の安定性が低い傾向にあった。
【0014】
これに対し、上記本発明の感光性エレメントに用いる感光性樹脂組成物に含まれるクマリン系化合物は、400〜450nmの波長の光に対する大きな吸収性を有しているにもかかわらず、500nm以上の波長を有する光線への吸収性を有していないという特徴を有している。このため、本発明の感光性エレメントが有する感光層は、400〜450nmの波長の光に対する高い感度を有するとともに、黄色灯による光線下で保管した場合に感光特性の劣化等が極めて生じ難い。
【0015】
また、本発明の感光性エレメントにおける感光層においては、感光性樹脂組成物中のクマリン系化合物の含有量と当該層の厚さとが上述した条件を満たしている。このような感光層は、その厚さに応じて適量のクマリン系化合物が含まれることになり、上記波長の光に対して十分な感度を有するとともに、下層部の硬化が十分に生じるようになっている。このため、良好なライン断面形状を有するレジストパターンを形成することができる。
【0016】
より具体的には、本発明の感光性エレメントにおける感光性樹脂組成物は、40Wの黄色灯照射下で72時間放置する前及び後における、同一の条件で遮光したときに硬化に要する活性光線の露光量を、それぞれEmJ/cm及びEmJ/cmとしたとき、E及びEが、下記式(I)の条件を満たすものであると特に好ましい。
−30≦(E−E)/E×100≦30 (I)
【0017】
及びEがこのような条件を満たす感光性樹脂組成物は、黄色光の存在下で長期間保管された後であっても、レジストパターンの形成に対して十分な感光性を維持し得るものとなる。したがって、かかる感光性樹脂組成物からなる感光層を備える本発明の感光性エレメントは、感光特性を極めて安定に維持することができる。
【0018】
特に、感光性樹脂組成物としては、光学濃度1.00の条件で遮光しながら、100mJ/cmの露光量で活性光線を照射したときに、現像後に未溶解部分が残存するものであると更に好ましい。つまり、感光性樹脂組成物は、上記条件の活性光線の照射によって硬化を生じるものであると好ましい。このような感度を有する感光性樹脂組成物は、上記式(I)の条件をより満たし易いものとなる。
【0019】
また、本発明のレジストパターンの形成方法は、回路形成用基板上に、上記本発明の感光性エレメントにおける感光層を積層する積層工程と、感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を形成する露光工程と、感光層を現像して露光部以外の部分を除去する現像工程とを有することを特徴とする。かかる本発明のレジストパターンの形成方法によれば、上記本発明の感光性エレメントを用いていることから、解像度に優れ、しかもライン断面形状が良好なレジストパターンを形成することができる。
【0020】
さらに、本発明のプリント配線板の製造方法は、上記本発明のレジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された回路形成用基板に対し、エッチングまたはめっきを施すことによって、回路形成用基板に回路パターンを形成することを特徴とする。
【0021】
本発明はまた、上記本発明の感光性エレメントにおける感光層を構成する感光性樹脂組成物を提供する。すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、40Wの黄色灯照射下で72時間放置する前及び後において、同一の条件で遮光したときに硬化に要する活性光線の露光量を、それぞれEmJ/cm及びEmJ/cmとしたとき、E及びEが、下記式(I)の条件を満たすことを特徴とする。このような感光性樹脂組成物は、上述の如く、黄色光の存在下で長期間保管された場合であっても、レジストパターンの形成に対して十分な感光性を有するものとなる。
−30≦(E−E)/E×100≦30 (I)
【0022】
このような感光性樹脂組成物は、光学濃度1.00の条件で遮光しながら、100mJ/cmの露光量で活性光線を照射したとき、現像後に未溶解部分が残存するものであると更に好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、特定波長、特に400〜450nmの波長の光線に対して高い感度を有するとともに、黄色光下でも感光特性を安定に維持可能であり、更に、レジストパターンのライン断面形状を略区形状とすることができる感光性エレメントを提供することが可能となる。また、本発明によれば、上記感光性エレメントを用いることにより、解像度及びライン断面形状の良好なレジストパターンを得ることができるレジストパターンの形成方法、及び、かかるレジストパターンを用い、高解像度の回路パターンを有するプリント配線板を製造する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、好適な実施形態に係る感光性エレメントの断面構成を模式的に示す図である。感光性エレメント1は、支持体10と、この支持体10上に設けられた感光層20と、感光層20上に設けられた保護フィルム30とを備えている。
【0026】
支持体10としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルム等が挙げられる。また、保護フィルム30としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルム等が挙げられる。保護フィルム30としては、感光層20に対する接着力が、支持体10よりも小さいものを選択して用いることが好ましく、低フィッシュアイのフィルムであるとより好ましい。
【0027】
次に、感光層20について説明する。感光層20は、感光性樹脂組成物から構成される層である。感光層を構成する感光性樹脂組成物は、(A)バインダーポリマー(以下、「A成分」という)、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物(以下、「B成分」という)、(C)光重合開始剤(以下、「C成分」という)を少なくとも含んでいる。以下、A成分、B成分及びC成分についてそれぞれ詳細に説明する。
【0028】
(A成分)
まず、A成分について説明する。A成分としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。アルカリ現像性に優れる点から、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
このようなA成分は、例えば、重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のα−位若しくは芳香族環において置換されている重合可能なスチレン誘導体、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸などが挙げられる。A成分としては、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ここで、本明細書においては、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味するものとする。
【0031】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル、(メタ)アクリル酸ドデシルエステルや、これらの構造異性体等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
A成分としては、後述するようなアルカリ現像性をより良好にする観点から、カルボキシル基を含むものが好ましい。このようなA成分としては、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させることにより得られたものが挙げられる。このようなA成分は、適宜、感光性を有する基を有していてもよい。
【0033】
カルボキシル基を有する重合性単量体としては、上述したような(メタ)アクリル酸が好ましい。また、その他の重合性単量体としては、可とう性をより向上させる観点から、スチレン又はスチレン誘導体が好ましい。なかでも、A成分としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、並びに、スチレン又はスチレン誘導体を共重合成分として得られた共重合体が好ましい。
【0034】
スチレン又はスチレン誘導体を共重合成分として用いることにより、感光性樹脂組成物の密着性及び剥離特性が共に良好となる。このスチレン又はスチレン誘導体の含有量は、A成分を形成するための共重合成分の全量を基準として、3〜30質量%であると好ましく、4〜28質量%であるとより好ましく、5〜27質量%であると更に好ましい。この含有量が3質量%未満であると、感光性樹脂組成物の密着性が低下する傾向にある。一方、30質量%を超えると、剥離片が大きくなって剥離時間が長くなる傾向にある。
【0035】
このようなA成分の酸価は、30〜200mgKOH/gであると好ましく、45〜150mgKOH/gであるとより好ましい。この酸価が30mgKOH/g未満であると、現像時間が長くなる傾向にある。一方、200mgKOH/gを超えると、光硬化したレジストの耐現像液性が低下する傾向にある。なお、現像時に溶剤による現像を行う場合は、カルボキシル基を有する重合性単量体の配合量を、溶剤現像を行わない場合に比して少量となるように調整することが望ましい。
【0036】
また、A成分の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.0〜3.0であると好ましく、1.0〜2.0であるとより好ましい。分散度が3.0を超えると、感光性樹脂組成物の密着性及び解像度が低下する傾向がある。ここで、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算した値を使用したものである。
【0037】
さらに、A成分の重量平均分子量は、5,000〜300,000であると好ましく、40,000〜150,000であるとより好ましい。重量平均分子量が5,000未満では、感光性樹脂組成物の耐現像液性が低下する傾向にある。一方、300,000を超えると、現像時間が長くなる傾向にある。
【0038】
A成分としては、上述した化合物等を単独で、または2種以上を組み合わせて適用することができる。2種以上のA成分の好適な組み合わせとしては、例えば、それぞれ異なる共重合成分から得られたもの同士、それぞれ異なる重量平均分子量を有するもの同士、それぞれ異なる分散度を有するもの同士といった組み合わせが挙げられる。また、A成分としては、特開平11−327137号公報に記載されたもののようなマルチモード分子量分布を有するポリマーも好ましい。
【0039】
(B成分)
次に、B成分について説明する。B成分としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーが挙げられる。また、これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート、フタル酸系化合物(例えば、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β´−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β´−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が例示可能である。
【0040】
なかでも、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物又は分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物が、得られるレジストパターンの耐めっき性や密着性を向上し得ることから好ましい。なお、B成分は、上述の如く、分子内にエチレン性不飽和結合を有する化合物であるが、かかるB成分としては、上述した化合物を単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。2種以上の組み合わせとしては、分子内に1つのエチレン性不飽和結合を有する化合物と、分子内に2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物との組み合わせが、感度、解像度を向上させる観点から特に好適である。
【0041】
上述した化合物のうち、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
ここで、EO及びPOは、それぞれエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを示し、EO変性された化合物は、エチレンオキサイド基のブロック構造を有するものであり、PO変性された化合物は、プロピレンオキサイド基のブロック構造を有するものである。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
また、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
より具体的には、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
これらのうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(製品名、新中村化学工業株式会社製)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(商品名、新中村化学工業株式会社製)として商業的に入手可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。なお、この2,2−ビス(4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンの一分子内のエチレンオキサイド基の数は、4〜20であると好ましく、8〜15であるとより好ましい。
【0046】
また、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとジイソシアネート化合物(イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等)との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、UA−11(新中村化学工業社製、製品名)等が挙げられる。また、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、UA−13(新中村化学工業社製、製品名)等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
さらに、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレートとしては、例えば、ノニルフェノキシテトラエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシペンタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘキサエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘプタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシノナエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシデカエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシウンデカエチレンオキシオキシアクリレートが挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
またさらに、フタル酸系化合物としては、例えば、γ―クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β´−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β´−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0050】
(C成分)
次に、C成分について説明する。本実施形態の感光性樹脂組成物は、C成分として、上記一般式(1)で表されるクマリン系化合物(C1成分)、上記一般式(2)で表されるイミダゾール二量体(C2成分)及び上記一般式(3)で表されるフェニルグリシン化合物(C3成分)を含有している。
【0051】
C1成分であるクマリン系化合物としては、上記一般式(1)においてR11〜R17で表される基が、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基であるものが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアルケニル基であるものがより好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であるものが更に好ましい。なかでも、上記一般式(1)で表される化合物のうち、R12がメチル基であり、R16及びR17がエチル基であるものが特に好ましい。
【0052】
このようなC1成分としては、例えば、7−アミノ−4−メチルクマリン、7−ジメチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−メチルアミノ−4−メチルクマリン、7−エチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ジメチルアミノシクロペンタ[c]クマリン、7−アミノシクロペンタ[c]クマリン、7−ジエチルアミノシクロペンタ[c]クマリン、4,6−ジメチル−7−エチルアミノクマリン、4,6−ジエチル−7−エチルアミノクマリン、4,6−ジメチル−7−ジエチルアミノクマリン、4,6−ジメチル−7−ジメチルアミノクマリン、4,6−ジエチル−7−ジエチルアミノクマリン、4,6−ジエチル−7−ジメチルアミノクマリン、4,6−ジメチル−7−エチルアミノクマリン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0053】
また、C2成分であるイミダゾール二量体において、上記一般式(2)におけるAr〜Arで表されるアリール基(好ましくは炭素数6〜12のアリール基、更に好ましくはフェニル基)の置換基としては、炭素数6〜12のアリール基(より好ましくはフェニル基)、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。また、X及びXとしては、それぞれ独立に、塩素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。
【0054】
このようなC2成分としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等が挙げられる。2つの2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体のアリール基の置換基は同一で対象な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。
【0055】
なかでも、C2成分としては、上記一般式(2)で表される化合物において、Ar〜Arが全てフェニル基であり、X及びXの両方が塩素原子であり、a及びbの両方が1である2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5−4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾールが好ましい。これらのC2成分は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0056】
感光性樹脂組成物中のC2成分の含有量は、A成分及びB成分の総質量100質量部に対して、1〜10質量部であると好ましく、2〜8質量部であるとより好ましく、3〜5質量部であると更に好ましい。C2成分のA成分及びB成分の総質量100質量部に対する含有量が1質量部未満であると、波長400〜450nmの光に対して感度が低くなる傾向にある。一方、10質量部を超えると、感度は高くなるものの、感光層20の底部にまで光が到達し難くなる傾向にあり、当該底部の硬化性が悪くなる場合がある。その結果、現像後のライン断面形状が逆台形状になったり、解像度が不十分となったりする。
【0057】
また、C3成分であるフェニルグリシン化合物は、上記一般式(3)で表される化合物である。当該化合物が、R32で表される基を2以上有する(すなわち、cが2以上である)場合、かかる基はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。このようなC3成分としては、例えば、N−フェニルグリシン(NPG)やN−フェニルグリシン誘導体が挙げられる。N−フェニルグリシン誘導体としては、例えば、N−(p−クロロフェニルフェニル)グリシン、N−(p−ブロモフェニル)グリシン、N−(p−シアノフェニル)グリシン、N−(p−メチルフェニル)グリシン、N−ブチル−N−フェニルグリシン、N−エチル−N−フェニルグリシン、N−プロピル−N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−(p−ブロモフェニル)−N−メチルグリシン、N−(p−クロロフェニル)−N−エチルグリシン等が例示できる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
感光性樹脂組成物中のC3成分の含有量は、A成分及びB成分の総質量100質量部に対して、0.02〜0.7質量部であり、0.05〜0.6質量部であると好ましく、0.1〜0.4質量部であるとより好ましい。C3成分の含有量が、A成分及びB成分の総質量100質量部に対して0.02質量部未満であると、波長400〜450nmの光に対する感度が低下する傾向にある。一方、0.8質量部を超えると、感度が過度に向上して現像後のライン断面形状が逆台形となったり、黄色光下での安定性が悪くなったり、或いは、解像度が低下したりする。
【0059】
さらに、本実施形態に係る感光性樹脂組成物には、上述したC1〜C3成分以外に、他の光重合開始剤を含有していてもよい。C1〜C3成分以外の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N´−テトラメチル−4,4´−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N´−テトラエチル−4,4´−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4´−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9´−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体などが挙げられる。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。これらは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0060】
以上、感光性樹脂組成物に含まれるA〜C成分について説明したが、これらのA〜C成分は、感光性樹脂組成物において、以下に示す含有量で含有されていると好ましい。まず、A成分の含有量は、A成分及びB成分の総量100質量部に対して40〜80質量部であると好ましく、45〜70質量部であるとより好ましい。A成分の含有量が40質量部未満であると、感光性樹脂組成物の硬化物からなるレジストが脆くなる他、感光性エレメントを形成する際の塗膜性が劣化する傾向にある。一方、80質量部を超えると、感度が低下する傾向にある。
【0061】
また、B成分の含有量はA成分及びB成分の総量100質量部に対して20〜60質量部であると好ましく、30〜55質量部であるとより好ましい。この含有量が20質量部未満であると、感光性樹脂組成物の感度が不十分となる傾向にあり、60質量部を超えると、レジストが脆くなる傾向にある。
【0062】
さらに、C成分の含有量は、A成分及びB成分の総量100質量部に対して0.1〜20質量部であると好ましく、0.2〜10質量部であるとより好ましい。この含有量が0.1質量部未満であると、感光性樹脂組成物の感度が不十分となる傾向にあり、20質量部を超えると、露光の際、感光層20の表面領域での活性光線の吸収が増大し、下層部の硬化が不十分となる場合がある。
【0063】
なお、本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記A〜C成分以外に、所望とする性状に応じてその他の成分を更に含有していてもよい。その他の成分としては、分子内にカチオン重合可能な環状エーテル基を含むオキセタン化合物、カチオン重合開始剤、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などが挙げられる。これらの成分の含有量は、A成分及びB成分の総量100質量部に対して各々0.01〜20質量部であると好ましい。これらは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
また、感光性樹脂組成物は、必要に応じて溶剤を含むワニスの形態とされてもよい。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルやこれらの混合溶剤等が挙げられる。このワニスは、固形分30〜60質量%程度の溶液であると、後述する塗布が容易となるため、好ましい。
【0065】
このように、本実施形態の感光性エレメント1における感光層20は、上述したA〜C成分を含む感光性樹脂組成物からなるものである。ここで、この感光層20においては、光重合開始剤(C成分)中にC1成分として含まれるクマリン系化合物の含有量P(A成分及びB成分の総量に対する質量部)と、当該感光層20の厚さQ(μm)との積Rが下記式(II)で表される関係を満たしている。
10.0≦R≦22.0 (II)
【0066】
つまり、感光層20において、Rは、10.0以上22.0未満である。このRが10.0未満であると、感光層20の400〜405nmの波長の光に対するO.D.値が顕著に低くなり、当該波長の活性光線を十分に吸収できなくなって、感度が低下する傾向にある。一方、Rが22.0を超えると、感度は高いものの、感光層20の上部領域での上記波長の光の吸収が過度に増大して下層部にまで光が到達し難くなり、この部分の硬化が不十分となる。その結果、下層部が現像時に過剰に除去されてしまい、得られるレジストパターンのライン断面形状が下部に向かって狭くなる逆台形状となったり、レジストパターンの解像度が低くなったりする不都合が生じ易くなる。
【0067】
これに対し、感光層20におけるRが上記範囲内であると、上述した波長の光に対する十分な感度が得られるとともに、下層部の硬化が十分に生じるようになって、良好なライン断面形状を有するレジストパターンを形成し易くなる。このような効果をより良好に得る観点からは、感光層20におけるRは、12.0以上21.6以下であると好ましく、13.2以上20.4以下であるとより好ましく、14.4以上19.2以下であると更に好ましい。
【0068】
そして、感光層20を構成している感光性樹脂組成物は、上記A〜C成分、特に、500nm以上の波長の光に対する吸収性を有していないクマリン系化合物(C1成分)を光重合開始剤として含むことから、黄色灯による光線(500nmの波長)下で長期間保管したとしても、その感光特性の劣化が極めて小さいものとなる。
【0069】
より具体的には、好適な場合、この感光性樹脂組成物は、40Wの黄色灯照射下で72時間放置する前及び後における、同一の条件で遮光したときに硬化に要する活性光線の露光量をそれぞれEmJ/cm及びEmJ/cmとしたとき、E及びEが、上記式(I)の条件を満たすものとなる。つまり、黄色光の照射前後で、感光性樹脂組成物を硬化するために必要な露光量が変化する割合(露光量変化率:(E−E)/E×100)が、−30%〜30%の範囲内となっている。長期間保管後の感光特性の劣化を更に低減する観点からは、かかる露光量変化率が、−15〜15%の範囲であるとより好ましい。
【0070】
ここで、上述した各条件を測定する際の好適条件は、次の通りである。すなわち、露光に用いる活性光線としては、365nm以下の波長をカットした高圧水銀灯による活性光線が好ましい。また、上述した遮光は、例えば、濃度領域0.00〜2.00、濃度ステップ0.05、タブレットの大きさ20mm×187mm、且つ、各ステップの大きさが3mm×12mmである41段のステップタブレット(例えば、富士写真フィルム社製、日立41段ステップタブレット)を用いて行うことが好ましく、E及びEは、この41段ステップタブレットの23段が硬化する露光量とすると更に好適である。
【0071】
また、「硬化」とは、次の条件を満たす状態をいうものとする。すなわち、露光前の感光性樹脂組成物からなる層に対して、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を0.15MPaの圧力でスプレー噴射した場合に、当該層が除去されるまでの時間を最小現像時間とし、露光後の感光性樹脂組成物からなる層に対して、上記と同様の条件で最小現像時間の2倍の時間現像を行った場合に、露光された領域の総面積中、90%以上の面積が残存する状態を、「硬化」された状態であるとする。
【0072】
そして、このような感光性樹脂組成物は、光学濃度1.00の条件で遮光しながら、100mJ/cmの露光量で活性光線を照射したとき、現像後に未溶解部分が残存するものであると更に好ましい。つまり、上記41段ステップタブレットの23段が、100mJ/cmの露光量で硬化し得るものであると好ましい。このような条件を満たす感光性樹脂組成物は十分な感度を有するものとなり、感光性エレメント1における感光層20に適用した場合に更に良好にレジストパターンを形成し得る。
【0073】
上記構成を有する感光性エレメント1は、例えば、以下に示す方法で製造することができる。例えば、支持体10上に、上述の感光性樹脂組成物を所定の溶剤に溶解して得られる塗布液を塗布した後、溶剤を除去することにより感光層20を形成し、次いで、感光層20上に上記したポリプロピレンフィルム等の保護フィルムを積層する方法が挙げられる。この塗布液としては、上述したような感光性樹脂組成物のワニスが好適である。
【0074】
塗布の方法としては、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の方法が挙げられる。また、溶剤の除去は、例えば、加熱により行うことができ、その場合の加熱温度は約70〜150℃であると好ましく、加熱時間は5〜30分間程度であると好ましい。なお、溶剤除去後の感光層20中の溶剤残存量は、その後の工程の溶剤の拡散を防止する観点から、2質量%以下とすることが望ましい。
【0075】
また、感光層20上にポリプロピレンフィルムを積層する方法としては、例えば、ポリプロピレンフィルムを感光層上に供給しながらロールにより加圧する方法が挙げられる。
【0076】
上記構成を有する感光性エレメント1は、例えば、そのままの平板状の形態で、又は、円筒状などの巻芯に巻きとり、ロール状の形態で貯蔵することができる。この巻芯としては、従来用いられているものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックなどが挙げられる。貯蔵時には、支持体が最も外側になるように巻き取られることが好ましい。また、ロール状に巻き取られた感光性エレメント(感光性エレメントロール)の端面には、端面保護の観点から端面セパレータを設置することが好ましく、加えて耐エッジフュージョンの観点から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、感光性エレメント1を梱包する際には、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。
【0077】
なお、感光性エレメント1は、上記構成に限られず、支持体10.感光層20及び保護フィルム30のほかに、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層や保護層を更に有していてもよい。
【0078】
次に、好適な実施形態に係るレジストパターンの形成方法について説明する。本実施形態のレジストパターンの形成方法は、上記本実施形態の感光性エレメント1を、保護フィルム30を剥がしながら感光層20が密着するように積層する積層工程、積層工程後に感光層20の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめる露光工程、及び、露光工程後に露光部以外の部分を除去する現像工程を備える。なお、「回路形成用基板」とは、絶縁層と、この絶縁層上に形成された導体層とを備える基板をいう。
【0079】
回路形成用基板上への感光層20の積層方法としては、保護フィルム30が存在している場合、これを除去した後、感光層20を加熱しながら回路形成用基板に圧着することにより積層する方法などが挙げられる。なお、感光層20は、回路形成用基板の導体層上に積層される。なお、積層は、密着性及び追従性を向上させる観点から、減圧下で行うことが好ましい。
【0080】
感光層20の加熱温度は、70〜130℃とすることが好ましく、圧着圧力は、0.1〜1.0MPa程度(1〜10kgf/cm程度)とすることが好ましいが、これらの条件には特に制限はない。また、感光層を70〜130℃に加熱すれば、予め回路形成用基板を予熱処理することは必要ではないが、積層性をさらに向上させるために、回路形成用基板の予熱処理を行うこともできる。
【0081】
感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめる方法としては、例えば、回路形成用基板上に積層が完了した感光層20に、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射し、露光部を光硬化する方法が挙げられる。この際、感光層20上に存在する支持体10が透明の場合には、そのまま活性光線を照射することができ、支持体20が活性光線に対して遮光性を示す場合には、支持体20を除去した後に、活性光線を感光層20に照射する。
【0082】
活性光線の光源としては、従来公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いられる。特に、本実施形態の感光性エレメント1を用いる場合の活性光線としては、フィルタを使用して365nm以下の波長の光を99.5%以上カットした水銀灯光源の光や、半導体レーザーによる波長405nmの光が好適である。これらの活性光線によって、感光性エレメント1における感光層20が極めて良好に硬化を生じる。365nm以下の波長の光をカットするフィルタとしては、例えば、シグマ光機社製シャープカットフィルタSCF−100S−39Lや朝日分光社製分光フィルタ「HG0405」(製品名)が挙げられる。
【0083】
また、上記のようにマスクパターンを介して行うマスク露光法以外に、レーザー直接描画露光法及びDLP露光法等の直接描画露光法により感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめることもできる。
【0084】
上記直接描画露光法で用いる光としては、最大波長が390nm〜440nmの光が挙げられる。最大波長が390nm〜440nmの光としては、390nm〜440nmのレーザー光を発振する半導体レーザーを光源とする光が挙げられ、このような半導体レーザーとしては、窒化ガリウム系の青色レーザーを好適に用いることができる。特に、直接描画露光法でレジストパターンを形成することが容易である点で、半導体レーザーを光源として用いることが好ましい。
【0085】
露光後、感光層20上の支持体10を除去した後、ウエット現像、ドライ現像等で未露光部を除去することによって現像し、レジストパターンを形成する。ウエット現像の場合は、アルカリ性水溶液、水系現像液及び有機溶剤等の現像液を用いることができる。これらのうち、アルカリ性水溶液が、安全かつ安定であり、操作性が良好であることから特に好ましい。
【0086】
アルカリ性水溶液の現像液としては、例えば、0.1〜5重量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等が挙げられる。さらに、アルカリ性水溶液のpHは、9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光層の現像性に合わせて調整することができる。また、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を添加してもよい。
【0087】
本実施形態においては、必要に応じて、上記した現像方式のうち2種以上の現像方法を併用してもよい。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等があり、高圧スプレー方式が解像度向上のためには最も適している。また、現像後の処理として、必要に応じて60〜250℃程度の加熱又は0.2〜10mJ/cm程度の露光を行うことによりレジストパターンをさらに硬化してもよい。
【0088】
次に、本実施形態のプリント配線板の製造方法について説明する。
【0089】
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、本実施形態のレジストパターンの形成方法によりレジストパターンの形成された回路形成用基板を、エッチング又はめっきして、回路形成用基板に回路パターンを形成するものである。
【0090】
回路形成用基板のエッチング及びめっきは、形成されたレジストパターンをマスクとして、回路形成用基板の導電体層に対して行われる。エッチングに用いられるエッチング液としては、例えば、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液、過酸化水素系エッチング液を用いることができるが、エッチファクタが良好な点から塩化第二鉄溶液を用いることが望ましい。また、めっきを行う場合のめっき法としては、例えば、硫酸銅めっき、ピロリン酸銅めっき等の銅めっき、ハイスローはんだめっき等のはんだめっき、ワット浴(硫酸ニッケル−塩化ニッケル)めっき、スルファミン酸ニッケルめっき等のニッケルめっき、ハード金めっき、ソフト金めっき等の金めっきなどが挙げられる。
【0091】
エッチング又はめっき終了後、レジストパターンは、例えば、現像に用いたアルカリ性水溶液よりさらに強アルカリ性の水溶液で剥離することができる。この強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1〜10質量%水酸化カリウム水溶液等が用いられる。剥離方式としては、例えば、浸漬方式、スプレー方式等が挙げられ、浸漬方式及びスプレー方式を単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0092】
以上によりプリント配線板が得られるが、本実施形態のプリント配線板の製造方法においては、単層のプリント配線板の製造のみならず、多層プリント配線板の製造にも適用可能である。また、プリント配線板は、スルーホール等を有していても構わない。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[感光性エレメントの作製]
【0094】
(実施例1〜3、比較例1〜2)
まず、表1に示す配合量(質量部)にしたがって各成分を混合し、感光性樹脂組成物の溶液を得た。なお、表中、A成分は、メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレンの共重合体(重量比25/50/25、重量平均分子量55000)の2−メトキシエタノール及びトルエン溶液(固形分酸価163mgKOH/g)、B成分はビスフェノールA骨格EO変性ジメタクリレート、C1成分は7−ジメチルアミノ−4−メチルクマリン、C2成分は2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5−4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール、C3成分はN−フェニルグリシン、発色剤はロイコクリスタルバイオレット、染料はマラカイトグリーンをそれぞれ示す。
【表1】

【0095】
次いで、各感光性樹脂組成物の溶液を、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に均一に塗布した後、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して、PETフィルム上に感光性樹脂組成物からなる感光層が形成された感光性エレメントを得た。なお、各感光性エレメントにおける感光層の膜厚は、それぞれ38μmとなるようにした。
【0096】
ここで、得られた各感光性エレメントにおける感光層の露光波長の光に対するO.D.値を、UV分光光度計(日立製作所社製、分光光度計、U−3310)により測定した。なお、測定は、測定側に感光性エレメントを置き、リファレンス側にPETフィルムのみを置き、吸光度モードにより550〜300nmまでを連続測定し、405nmにおける値を読み取ることにより行った。得られた結果を表2に示す。
[特性評価]
【0097】
実施例1〜3及び比較例1〜2の感光性エレメントを用いて以下の試験を行い、各感光性エレメントの感度及び黄色光下での保管安定性、並びに、各感光性エレメントから得られたレジストパターンの解像度及びライン断面形状を評価した。得られた結果をまとめて表2に示す。なお、表2中、各感光性エレメントの感光層を構成している感光性樹脂組成物中のC3成分の含有量P(A成分とB成分の総量に対する質量部)、感光層の膜厚Q(μm)、及び、R(P×Q)の値も併せて示した。
【0098】
(感度の測定)
まず、銅箔を両面に積層したガラスエポキシ材である銅張積層板(日立化成工業社製、製品名、MCL−E−67)の銅表面を♯600相当のブラシを持つ研磨機(三啓社製)により研磨し、水洗して、空気流で乾燥させた後、80℃に加温した。その後、この銅張積層板に対して、感光性エレメントをその感光層が銅表面に密着するように配置して、120℃、4kgf/cmの圧力下で積層して、感光層付き銅張積層板を得た。この感光層付き銅張積層板を、実施例1〜3及び比較例1〜2の感光性エレメントのそれぞれを用いて作製した。
【0099】
次に、各感光層付き銅張積層板を冷却し、23℃になった時点で、各感光層付き銅張積層板のPETフィルム面に、濃度領域0.00〜2.00、濃度ステップ0.05、タブレットの大きさ20mm×187mm、各ステップの大きさ3mm×12mmである41段ステップタブレットを有するフォトツール、及び、解像度評価用ネガであるライン幅/スペース幅が6/6〜35/35(単位:μm)のパターンを有するフォトツールを置いた。続いて、これらの上に、365nm以下の波長の光を99.5%以上カットするためのフィルタ(シグマ光機社製シャープカットフィルタSCF−100S−39L)を置いた。
【0100】
その後、各感光層付き銅張積層板における感光層に対し、上記フォトツール及びフィルタを介して、5kWショートアークランプ光源とする平行光露光機(オーク製作所社製、製品名EXM−1201)による露光を行った。なお、露光は、各実施例及び比較例の感光性エレメントを用いた感光層付き銅張積層板をそれぞれ3つずつ準備し、各3つの感光層付き銅張積層板に対して、現像後に残存する41段ステップタブレットのステップの段数が14段、17段、20段となるような露光量で行った。ここで、露光量は、照度×露光時間とし、照度は、上記フィルタを透過した光について、405nm対応プローブを適用した紫外線照度計(ウシオ電機社製、UIT−101)により測定された値とした。そして、41段ステップタブレットの17段が残存するときの露光量を、各感光性エレメントの感度とした。この値が小さいほど、感光性エレメントの感度が高いことを意味している。
【0101】
(黄色光下での保管安定性の評価)
まず、実施例1〜3及び比較例1〜2の感光性エレメントをそれぞれ2つずつ作製した。次いで、各2つの感光性エレメントのうちの一方を、黄色蛍光灯(日立製作所社製黄色蛍光灯、FLRラピッド、光波長:500nm以上、40W)の照射下、光源からの距離1.5mの条件で72時間放置した。
【0102】
得られた各感光性エレメントを用い、上記「感度の測定」と同様にして、感光層付き銅張積層板を製造してフォトツール及びフィルタを配置し、更に露光を行った。露光は、上記41段ステップタブレットの23段が硬化する露光量に調整した。そして、黄色光未照射の感光性エレメントを用いた場合に要する露光量をE、黄色光照射後の感光性エレメントを用いた場合に要する露光量をEとし、各実施例及び比較例に対応する感光性エレメントについてのE及びEの値をそれぞれ下記式(III)に代入して、露光量変化率Eを算出した。このEは、0に近いほど黄色光照射による感光性エレメントの感光性の劣化が小さく、黄色光下での保管安定性に優れていることを示している。
=(E−E)/E×100 (III)
【0103】
(解像度及びレジストのライン断面形状の評価)
実施例1〜3及び比較例1〜2の感光性エレメントを用い、上記「感度の測定」と同様にして感光層付き銅張積層板を製造してフォトツール及びフィルタを配置し、更に露光を行った。露光は、上記41段ステップタブレットの23段が硬化する露光量で行った。露光後の感光層付き銅張積層板からPETフィルムを除去した後。感光層に、1.0重量%炭酸ナトリウム水溶液を24秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去して、銅張積層板上にレジストパターンを形成させた。
【0104】
得られたレジストパターンを目視で観察して、未露光部がきれいに除去され、ラインの蛇行やラインの欠け等が見られなかった最小のスペース幅を確認した。この最小のスペース幅を解像度とした。この値が小さいほど解像度に優れていることを示している。
【0105】
また、レジストパターンを、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所社製、走査型電子顕微鏡S−500A)により観察し、ラインの断面形状を、矩形、上部に向かって幅が狭くなる台形、及び、下部に向かって幅が狭くなる逆代形状のいずれであるかを評価した。レジストパターンのライン断面形状は、矩形に近いほど良好である。
【0106】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】好適な実施形態に係る感光性エレメントの断面構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0108】
1…感光性エレメント、10…支持体、20…感光層、30…保護フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に形成された感光性樹脂組成物からなる感光層と、を備え、
前記感光性樹脂組成物は、バインダーポリマー、エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、及び、光重合開始剤を含有し、
前記光重合開始剤は、下記一般式(1)で表されるクマリン系化合物、下記一般式(2)で表されるイミダゾール二量体及び下記一般式(3)で表されるフェニルグリシン化合物を含有しており、
前記バインダーポリマー及び前記光重合性化合物の総質量100質量部に対する前記クマリン系化合物の含有量をP質量部とし、前記感光層の厚さをQμmとしたとき、前記Pと前記Qとの積Rは、10.0以上22.0未満であり、
前記フェニルグリシン化合物の含有量は、前記バインダーポリマー及び前記光重合性化合物の総質量100質量部に対し、0.02〜0.7質量部である、
ことを特徴とする感光性エレメント。
【化1】


[式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の炭化水素基を示す。]
【化2】


[式中、Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有していてもよいアリール基を示し、X及びXは、それぞれ独立に、塩素原子、アルキル基、アルケニル基又はアルコキシ基を示し、a及びbは、それぞれ独立に、1〜5の整数を示す。但し、X及びXのうち少なくとも一つは塩素原子である。なお、a又はbが2以上であるとき、複数のX及びXは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【化3】


[式中、R31は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、R32は、アルキル基、アルケニル基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を示し、cは、1〜5の整数である。なお、cが2以上であるとき、複数のR32は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記感光性樹脂組成物は、40Wの黄色灯照射下で72時間放置する前及び後における、同一の条件で遮光したときに硬化に要する活性光線の露光量を、それぞれEmJ/cm及びEmJ/cmとしたとき、
前記E及び前記Eが、下記式(I)の条件を満たすものであることを特徴とする請求項1記載の感光性エレメント。
−30≦(E−E)/E×100≦30 (I)
【請求項3】
前記感光性樹脂組成物は、光学濃度1.00の条件で遮光しながら、100mJ/cmの露光量で活性光線を照射したとき、現像後に未溶解部分が残存するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の感光性エレメント。
【請求項4】
回路形成用基板上に、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性エレメントにおける感光層を積層する積層工程と、
前記感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を形成する露光工程と、
前記感光層を現像して前記露光部以外の部分を除去する現像工程と、を有することを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【請求項5】
請求項4記載のレジストパターンの製造方法によりレジストパターンが形成された回路形成用基板を、エッチング又はめっきすることを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−330168(P2006−330168A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150987(P2005−150987)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】