説明

成膜装置

【課題】回転テーブルの回転速度を高めた場合でも良好な成膜処理を行うことができる成膜装置を提供すること。
【解決手段】真空容器1内にて、複数のウエハWを載置した回転テーブル2を回転して、前記ウエハWが第1及び第2の処理領域P1,P2に供給された第1及び第2の反応ガスと順次接触して、前記ウエハWの表面に薄膜を形成するにあたり、ウエハW表面に第1の反応ガスを吸着させる処理を行う第1の処理領域P1と、この第1の処理領域P1よりも面積が大きく、ウエハW表面に吸着された第1の反応ガスと第2の反応ガスとを化学反応させる処理を行う第2の処理領域P2とを設ける。これにより吸着に比べて化学反応の処理時間を長く確保することができ、回転テーブル2の回転速度を高めても、金属の吸着よりも長時間を要する化学反応を十分に進行させて、良好な成膜処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内にて、複数の基板を載置した回転テーブルを回転して、前記基板が複数の異なる処理領域に供給された反応ガスと順次接触して、前記基板の表面に薄膜を形成する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスにおいて、半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)等の基板に対して成膜処理やエッチング処理等の真空処理を行う装置の一例として、真空容器の周方向に沿ってウエハの載置台を設けると共に、載置台の上方側に複数の処理ガス供給部を設け、複数のウエハを回転テーブルに載せて公転させながら真空処理を行ういわばミニバッチ式の装置が知られている。この装置は、第1の反応ガス及び第2の反応ガスを交互にウエハに供給して原子層あるいは分子層を積層していく例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)等と呼ばれる手法を行う場合に好適である。
【0003】
このような装置では、第1及び第2の反応ガスがウエハ上で混合しないように、これら反応ガスを分離することが要求される。例えば特許文献1には、サセプタと対向するように設けられたシャワーヘッド状のガス噴射部に、第1の原料ガス用及び第2の原料ガス用のガス供給領域(ガス供給孔)を夫々設けると共に、これら原料ガスの混合を防ぐために第1及び第2の原料ガスのガス供給領域の間と、ガス噴射部の中心からパージガスを供給する構成が記載されている。また前記サセプタを囲むように設けられた排気溝部は隔壁により2つに区画され、第1の原料ガスと第2の原料ガスとが互いに異なった排気溝部から夫々排気されるようになっている。
【0004】
また特許文献2には、基板ホルダに対向するように設けられたチャンバ上部に、第1の前駆物質用のガスを供給する吸気ゾーンと、当該ガスを排気する排気ゾーンと、第2の前駆物質用のガスを供給する吸気ゾーンと、当該ガスを排気する排気ゾーンとを放射状に設ける構成が記載されている。この例では吸気第1及び第2の前駆物質用のガスの吸気ゾーンに夫々対応する排気ゾーンを備えることにより、第1及び第2の前駆物質用のガスを分離している。また隣接する前駆物質領域の排気ゾーン同士の間にパージガスを吸気することにより、第1及び第2の前駆物質用のガスの分離を図っている。
【0005】
ところで既述のように基板をサセプタ等に載置して、当該サセプタ等を回転させる構成では、サセプタの回転速度が一定の場合には処理領域の面積が大きいほど、処理時間が長くなる。従って第1及び第2の反応ガス同士の間で反応速度が異なる場合には、夫々の処理領域の面積が同じであれば、反応速度の大きい反応ガスでは十分に反応が進行するが、反応速度の小さい反応ガスでは処理時間が足りず、反応が不十分な状態で次の処理領域へ移行してしまうおそれがある。ALDやMLDの手法では、第1の反応ガスによる基板表面への吸着反応と、第2の反応ガスによる吸着された第1の反応ガスの酸化反応とが交互に多数回繰り返されるが、第1の反応ガスの吸着反応に比べて酸化反応には時間がかかる。このため酸化反応が十分に進行しない状態で、次の第1の反応ガスの吸着反応が実行されてしまうと、結果として得られる薄膜の膜質が低下してしまう懸念が生じる。
【0006】
このような事態は、反応速度の小さいガスにおいても十分に反応が進行するように回転速度を小さくしたり、反応ガスの流量を多くすることにより改善できるが、スループットや反応ガスの省量化の観点からは得策ではない。また特許文献1,2の構成においても、反応速度の異なる複数のガスを用いて、基板の回転速度を高速にした状態で膜質の良好な薄膜を形成することについては考慮されていないので、本発明の課題を解決することは困難である。
【0007】
またこれら特許文献1,2の装置では、サセプタや基板ホルダに対向するように設けられたガス供給部から原料ガスや前駆物質用のガスがパージガスと共に下方側の基板に向けて供給されており、異なる原料ガス等同士をパージガスで分離しようとすると、基板の表面で当該パージガスと原料ガスが混合してしまい、原料ガスがパージガスで希釈されてしまう。このためサセプタや基板ホルダを高速で回転させると、第1の反応ガスの濃度が低下して、第1の反応ガスを確実にウエハに吸着させることができなくなったり、第2の反応ガスの濃度が低下して、第1の反応ガスの酸化を十分に行うことができずに不純物が多い膜を形成してしまい、結果として膜質の良好な薄膜を形成することができない懸念が生じる。
【0008】
特許文献3では、添付された図4に示されたとおり、第1の反応ガスが原料ガスシャワーヘッド270aから供給され、この原料ガスシャワーヘッド270aと対向した位置に設けられると共に、原料ガスシャワーヘッド270aと同じ面積のシャワーヘッド270bを介して、第2の反応ガスが供給される構成となっている。またシャワーヘッド270aとシャワーヘッド270bとにより挟まれた広面積の対向領域270cから不活性ガスが供給される構成となっている。これらのガスは、図3に示すウエハWを6枚載せて回転する回転テーブルの外周を取り囲むバッフル板において、全周に亘って均等に配置された複数の開口236a,236bを介して図5に示された排気通路238a,238bから排気されるようになっている。このような構成をとることで、シャワーヘッド270a,270bが対向配置された同じ面積の処理空間の中で第1、第2の反応ガスの反応が進むようになっている。
【0009】
特許文献4では、図2に示すとおり、6枚の基板を載置した回転テーブル802が、基板に対向配置されたシャワーヘッドの下を回転してプロセスが実行されるが、処理を行う空間は不活性ガスのカーテン204A,B,C,D,E,Fにより均等の面積の広さの処理空間に分割されている。
【0010】
特許文献5では、図8に示すとおり、二つの異なる反応ガスが、対向配置された二つのスリット200,210から同じ面積の大きさの処理領域の中に導入されている。前記反応ガスは、これらの同じ面積の処理領域を取り囲む排気領域220,230から装置の上方に設けられた真空排気手段に連通して排気されている。
【0011】
特許文献6には、真空チャンバの内部空間を4枚の仕切り板72,74,68,70の位置で決定する技術が開示されている。第1の発明実施例には、これらの仕切り板が回転中心を通り、直線的に対向配置された実施例が示されている。第1発明を示す図2及び図4に示されたとおり、第1の反応ガス90が、ガス導入パイプ112,116を通り、真空チャンバ内を4分割した空間76の内部に導入され、この空間76に対向配置された同じ面積の4分割の一つである空間80に第2の反応ガス供給システム92からガスが導入される構成となっている。またこれらが対向配置され、面積の等しい処理空間に挟まれた空間82,84は不活性ガスが導入される空間となっている。またこの真空チャンバ内は、図3Aに示されるとおり、回転中心上方に上向きに設けられた排気通路42を経由して真空ポンプ46により排気されている。
【0012】
一方、この同じ明細書の第2の発明実施例を示す図8によれば、真空チャンバ内部の処理空間を仕切る壁が4分割から不均等な位置に移動されて、結果として対向配置された空間80a,76aの面積が大きく、空間82a,78aの面積が小さい空間構成として図示されている。
【0013】
また図9によれば、対向配置された空間80bの面積が小さく、空間76aの面積が大きい空間構成が示されている。いずれも仕切り板を移動して空間の面積を変更する実施例である。この構成では、複数のプロセス空間に供給される反応ガスを分離し、両者を混合させないために、隣接した仕切り板に囲まれた空間内を不活性ガスで満たしている。
【0014】
これらの図面に対応した明細書の詳細な説明における段落0061から段落0064によれば、パーティション68b,70b,72b,74bを移動してプロセスに適した面積の空間を構成する技術が開示されている。しかしながら、特許文献6全体を通して
(1)真空チャンバ内の空間構成は、物理的なパーティションにより壁を作り、当該壁で囲まれた空間の中に反応ガス、不活性ガスを流して満たす方式である。
(2)排気方法が回転中心に位置した上方排気である。
(3)高速回転に必要な反応ガス同士の反応を防止する技術がなく、低速(20〜30rpm)に適応可能な技術である。
【0015】
このため当該特許文献3〜6の技術によっても、回転テーブルの回転速度を高めた場合に、第1及び第2の反応ガスの混合を抑え、かつ第1の反応ガスによる吸着反応及び第2の反応ガスによる酸化反応を十分に進行させて、良好な成膜処理を行うという本発明の課題を解決することはできない。
【0016】
【特許文献1】公開番号10−2009−0012396号
【特許文献2】特表2008−516428号
【特許文献3】国際公開W0 2009/017322 A1
【特許文献4】米国特許 6,932,871号
【特許文献5】米国公開特許2006/0073276 A1
【特許文献6】米国公開特許2008/0193643 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、一回転あたりのALD成膜反応を促進させて一回転あたりの膜厚の大きな成膜装置を提供すること、及び高速回転させてもこの一回転あたりの膜厚の成長速度が維持でき、回転数に応じた膜厚が得られ、更に品質の高い成膜を行うことができる成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、真空容器内にて、複数の基板を載置した回転テーブルを回転して、前記基板が複数の異なる処理領域に供給された反応ガスと順次接触して、前記基板の表面に薄膜を形成する成膜装置において、
前記回転中の基板の近傍に対向して、前記処理領域の中に設けられ、前記基板の方向に向けて反応ガスを供給する反応ガス供給手段と、
基板の方向に向けて反応ガスを供給する反応ガス供給手段と、
前記異なる反応ガスが互いに反応することを防止するための分離ガスを、前記複数の処理領域の間に設けられた分離領域内に供給する分離ガス供給手段と、
前記複数の処理領域の夫々の外側において、前記回転テーブルの外周方向に対応した範囲の中に排気口を設け、前記処理領域に供給した反応ガスと前記分離領域に供給した分離ガスとを前記処理領域を経由して前記排気口に導き、前記排気口に連通して排気する排気手段と、を備え、
前記複数の処理領域は、基板表面に第1の反応ガスが吸着する処理を行う第1の処理領域と、
この第1の処理領域よりも面積が大きく、基板表面に吸着した前記第1の反応ガスと第2の反応ガスとを反応させて前記基板表面に成膜する処理を行う第2の処理領域と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板表面に第1の反応ガスを吸着させる処理を行う第1の処理領域よりも、当該基板表面の第1の反応ガスと第2の反応ガスとを反応させて成膜する処理を行う第2の処理領域の面積を大きく設定しているので、第1及び第2の反応ガスの反応領域が均等(両者の処理面積が同じ)である場合に比較して成膜処理の処理時間を長く確保することができる。このため一回転あたりの膜厚成長が厚くなり、この一回転あたりの成膜膜厚を維持したまま、回転テーブルの回転速度を高めることで高い成膜速度を確保でき、かつ膜質の良好な成膜処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る成膜装置の縦断面を示す図3のI−I’線断面図である。
【図2】上記の成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】上記の成膜装置の横断平面図である。
【図4】上記の成膜装置における処理領域及び分離領域を示す縦断面図である。
【図5】上記の成膜装置の一部を示す縦断面図である。
【図6】上記の成膜装置の一部を示す平面図である。
【図7】分離ガスあるいはパージガスの流れる様子を示す説明図である。
【図8】上記の成膜装置の一部破断斜視図である。
【図9】第1の反応ガス及び第2の反応ガスが分離ガスにより分離されて排気される様子を示す説明図である。
【図10】本発明の他の例の成膜装置を示す横断平面図である。
【図11】前記成膜装置に用いられるプラズマ発生手段を示す斜視図である。
【図12】前記プラズマ発生手段を示す断面図である。
【図13】本発明のさらに他の例の成膜装置を示す横断平面図である。
【図14】本発明のさらに他の例の成膜装置の一部を示す断面図である。
【図15】前記成膜装置に用いられるノズルカバーを示す斜視図と平面図である。
【図16】前記ノズルカバーの作用を説明するための断面図である。
【図17】本発明の成膜装置を用いた基板処理システムの一例を示す概略平面図である。
【図18】本発明の効果を確認するために行った評価実験の結果を示す特性図である。
【図19】本発明の効果を確認するために行った評価実験の結果を示す特性図である。
【図20】本発明の効果を確認するために行った評価実験の結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態である成膜装置は、図1(図3のI−I’線に沿った断面図)に示すように平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は天板11が容器本体12から分離できるように構成されている。天板11は、内部の減圧状態により封止部材例えばOリング13を介して容器本体12側に押し付けられていて気密状態を維持しているが、天板11を容器本体12から分離するときには図示しない駆動機構により上方に持ち上げられる。
【0022】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りにこの例では時計方向に回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0023】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板であるウエハを載置するための円形状の凹部24が設けられている。なお図3には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを描いてある。ここで図4は、回転テーブル2を同心円に沿って切断しかつ横に展開して示す展開図であり、凹部24は、図4(a)に示すようにその直径がウエハの直径よりも僅かに例えば4mm大きく、またその深さはウエハの厚みと同等の大きさに設定されている。従ってウエハを凹部24に落とし込むと、ウエハの表面と回転テーブル2の表面(ウエハが載置されない領域)とが揃うことになる。ウエハの表面と回転テーブル2の表面との間の高さの差が大きいとその段差部分によりガスのパージ効率が落ち、ガスの滞留時間が変わる。この結果ガスの濃度勾配がつくことから、ウエハの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えることが、膜厚の面内均一性を揃える観点から好ましい。ウエハの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えるとは、同じ高さであるかあるいは両面の差が5mm以内であることをいうが、加工精度などに応じてできるだけ両面の高さの差をゼロに近づけることが好ましい。凹部24の底面には、ウエハの裏面を支えて当該ウエハを昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピン16(図7参照)が貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0024】
凹部24はウエハを位置決めして回転テーブル2の回転に伴う遠心力により飛び出さないようにするためのものであるが、基板載置領域(ウエハ載置領域)は、凹部に限らず例えば回転テーブル2の表面にウエハの周縁をガイドするガイド部材をウエハの周方向に沿って複数並べた構成であってもよく、あるいは回転テーブル2側に静電チャックなどのチャック機構を持たせてウエハを吸着する場合には、その吸着によりウエハが載置される領域が基板載置領域となる。
【0025】
図2及び3に示すように真空容器1には、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する位置に第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32と2本の分離ガスノズル41、42とが真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて中心部から放射状に伸びている。これら反応ガスノズル31、32及び分離ガスノズル41、42は、例えば真空容器1の側周壁に取り付けられており、その基端部であるガス導入ポート31a、32a、41a、42aは当該側壁を貫通している。ガスノズル31、32、41、42は図示の例では、真空容器1の周壁部から真空容器1内に導入されているが、後述する環状の突出部5から導入してもよい。この場合、突出部5の外周面と天板11の外表面とに開口するL字型の導管を設け、真空容器1内でL字型の導管の一方の開口にガスノズル31、(32、41、42)を接続し、真空容器1の外部でL字型の導管の他方の開口にガス導入ポート31a(32a、41a、42a)を接続する構成を採用することができる。
【0026】
反応ガスノズル31、32は、夫々第1の反応ガスであるBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)ガスのガス供給源及び第2の反応ガスであるO(オゾン)ガスのガス供給源(いずれも図示せず)に接続されており、分離ガスノズル41、42はいずれも分離ガスであるNガス(窒素ガス)のガス供給源(図示せず)に接続されている。この例では、第2の反応ガスノズル32、分離ガスノズル41、第1の反応ガスノズル31及び分離ガスノズル42がこの順に時計方向に配列されている。
【0027】
反応ガスノズル31、32には、下方側に反応ガスを吐出するための吐出孔33がノズルの長さ方向に間隔を置いて配列されている。この例では各ガスノズルの吐出口の口径は0.5mmであり、各ノズルの長さ方向に沿って例えば10mmの間隔をおいて配列されている。反応ガスノズル31、32は夫々第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段に相当し、その下方領域は夫々BTBASガスをウエハに吸着させるための第1の処理領域P1及びOガスをウエハに吸着させるための第2の処理領域P2となる。こうして各ガスノズル31,32,41,42は、前記回転テーブル2の回転中心に向いて配置され、複数のガス噴出孔(吐出口)が直線状に配列されたインジェクターを構成する。
【0028】
そしてこれら反応ガスノズル31,32は、夫々の処理領域P1,P2の天井部から離間して前記回転テーブル2上の近傍に設けられ、回転テーブル2上のウエハWに対して夫々反応ガスを供給するように構成されている。ここで反応ガスノズル31,32が、夫々の処理領域P1,P2の天井部から離間し、前記回転テーブル2上の近傍に設けられるとは、反応ガスノズル31,32の上面と処理領域P1,P2の天井部との間にガスが通流する空間が形成されていればよく、反応ガスノズル31,32の上面と処理領域P1,P2の天井部との間の間隔が、反応ガスノズル31,32の下面と回転テーブル2表面との間の間隔より大きい場合のみならず、両者の間隔がほぼ同じである場合や、反応ガスノズル31,32の上面と処理領域P1,P2の天井部との間の間隔が、反応ガスノズル31,32の下面と回転テーブル2表面との間の間隔より小さい場合も含まれる。
【0029】
前記分離ガスノズル41、42には、下方側に分離ガスを吐出するための吐出孔40が長さ方向に間隔を置いて穿設されており、この例では各ガスノズルの吐出口の口径は0.5mmであり、各ノズルの長さ方向に沿って例えば10mmの間隔をおいて配列されている。これら分離ガスノズル41、42は、前記第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間に設けられた分離領域Dに、第1の反応ガスと第2の反応ガスが互いに反応することを防止するための分離ガスを供給する分離ガス供給手段をなすものである。
【0030】
この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には図2〜図4に示すように、回転テーブル2の回転中心を中心としかつ真空容器1の内周壁の近傍に沿って描かれる円を周方向に分割してなる、平面形状が扇型で下方に突出した凸状部4が設けられている。分離ガスノズル41、42は、この例においては、前記凸状部4における前記円の周方向中央にて当該円の半径方向に伸びるように形成された溝部43内に収められている。即ち分離ガスノズル41、(42)の中心軸から凸状部4である扇型の両縁(回転方向上流側の縁及び下流側の縁)までの距離は同じ長さに設定されている。なお、溝部43は、本実施形態では凸状部4を二等分するように形成されているが、他の実施形態においては、例えば溝部43から見て凸状部4における回転テーブル2の回転方向上流側が前記回転方向下流側よりも広くなるように溝部43を形成してもよい。従って分離ガスノズル41、42における前記周方向両側には、前記凸状部4の下面である例えば平坦な低い天井面44(第1の天井面)が存在し、この天井面44の前記周方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が存在することになる。この凸状部4の役割は、回転テーブル2との間に第1の反応ガス及び第2の反応ガスの侵入を阻止してこれら反応ガスの混合を阻止するための狭隘な空間である分離空間を形成することにある。
【0031】
即ち、分離ガスノズル41を例にとると、回転テーブル2の回転方向上流側からOガスが侵入することを阻止し、また回転方向下流側からBTBASガスが侵入することを阻止する。「ガスの侵入を阻止する」とは、分離ガスノズル41から吐出した分離ガスであるNガスが第1の天井面44と回転テーブル2の表面との間に拡散して、この例では当該第1の天井面44に隣接する第2の天井面45の下方側空間に吹き出し、これにより当該隣接空間からのガスが侵入できなくなることを意味する。そして「ガスが侵入できなくなる」とは、隣接空間から凸状部4の下方側空間に全く入り込むことができない場合のみを意味するのではなく、多少侵入はするが、両側から夫々侵入したOガス及びBTBASガスが凸状部4内で混じり合わない状態が確保される場合も意味し、このような作用が得られる限り、分離領域Dの役割である第1の処理領域P1の雰囲気と第2の処理領域P2の雰囲気との分離作用が発揮できる。従って狭隘な空間における狭隘の程度は、狭隘な空間(凸状部4の下方空間)と当該空間に隣接した領域(この例では第2の天井面45の下方空間)との圧力差が「ガスが侵入できなくなる」作用を確保できる程度の大きさになるように設定され、その具体的な寸法は凸状部4の面積などにより異なるといえる。またウエハに吸着したガスについては当然に分離領域D内を通過することができ、ガスの侵入阻止は、気相中のガスを意味している。
【0032】
こうしてこの例においては第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とは分離領域Dにより互いに区画され、第1の天井面44を有する凸状部4の下方側領域が分離領域、凸状部4の周方向両側における第2の天井面45を有する領域が処理領域となる。この例では、第1の処理領域P1は、分離ガスノズル41における、回転テーブル2の回転方向下流側に隣接する領域に形成され、第2の処理領域P2は、分離ガスノズル41における、回転テーブル2の回転方向上流側に隣接する領域に形成されている。
【0033】
ここで第1の処理領域P1とはウエハW表面に金属を吸着させる領域であり、この例ではBTBASガスにより金属であるシリコンが吸着される。また第2の処理領域P2とは前記金属の化学反応を起こさせる領域である。化学反応には、例えば金属の酸化反応や窒化反応が含まれるが、この例ではOガスによるシリコンの酸化反応が行われる。なおこれら処理領域P1、P2は反応ガスが拡散する拡散領域ということもできる。
【0034】
また第1の処理領域P1の面積は、第2の処理領域P2の面積よりも大きくなるように設定されている。これは既述のように第1の処理領域P1では第1の反応ガスによる金属(シリコン)の吸着が行われ、第2の処理領域P2では第1の処理領域P1で形成された金属に対する第2の反応ガスによる化学反応が進行するが、これら第1の反応ガス及び第2の反応ガスでは反応形態に差異があり、吸着反応の方が化学反応よりも反応速度が大きいからである。
【0035】
第1の反応ガス供給手段の特徴は、回転テーブル2上のウエハW表面に向けて第1の反応ガスを噴出し、同時にガス供給装置である直線状に配列された噴出孔を備えたインジェクターであることである。
【0036】
また第1の反応ガス供給手段が配置され、扇形の扇の要を軸として広がる扇形の第1の処理領域P1では、第1の反応ガスがウエハW表面に達すると直ちにウエハW表面に吸着するため、当該第1の処理領域P1を面積が小さい空間とすることができる。これに対して第2の処理は、ウエハW板表面に予め付着した第1の反応ガスの存在を前提とする処理であり、具体的な実施例としては酸化プロセス、窒化プロセス、High−K膜の成膜プロセスを挙げることができる。これらの反応に共通することは、第2の処理はウエハW表面での夫々の反応に時間を要するプロセスであることである。従って第2の処理領域P2において回転テーブル2の回転方向の前半部分において供給された第2の反応ガスが、第2の処理領域P2全体に行き渡り、面積が広い領域P2の全長に亘って反応を継続させることは重要である。こうして前記第1の反応ガスが供給される処理領域よりも面積が広い前記第2の反応ガスを供給する処理領域において、前記ウエハWが前記第2の反応ガスの中を長い時間をかけて表面反応を行いながら通過していくことになる。
【0037】
ここで本発明者らは、第2の処理が進めば進むほど、その結果得られる成膜の膜厚は厚くなり、結果として一回転あたりの膜厚が厚くなることを見出し、本発明に至った。逆に第1及び第2の処理領域P1,P2の面積を等しくすると、第2の処理領域P2における成膜反応が十分に進まないまま、回転テーブル2の回転に伴って、ウエハWが隣接した分割領域Dの中に入り、当該分割領域DではウエハW表面に到達した第2の反応ガスが分離ガスによって一掃されてしまうため、それ以上の成膜・酸化(窒化)プロセスが進行しない。即ち回転一回あたりのウエハW上の成膜膜厚が薄いまま少しずつ成膜を積み重ねて膜厚を稼ぐことなり、従来からの成膜装置と同様になってしまう。
【0038】
このように本発明においては、第1及び第2の反応ガスの夫々の果たす役割と反応に寄与する特性をよく見極めることにより、一回転あたりの成膜厚さを厚くするためにより効率の高い面積比とすることで、一回転あたりの成膜量を増やすことができる。従って一回転あたりの成膜膜厚を厚くし、120rpm乃至140rpmという高速で回転テーブル2を回転させた場合であっても、この成膜膜厚を維持できるので、回転テーブル2を高速回転させるほど成膜速度が高くなるという量産に適した成膜装置とすることができる。これに対して従来のミニバッチ式回転式の成膜装置では、通常20rpm乃至30rpmが回転数の限界であり、それ以上の高速回転は困難である。
【0039】
また本発明者は本発明の効果を獲得するために、分離ガスが供給される分離領域Dにおける回転テーブル2の外周側と、それに対応した真空容器の側壁との間の隙間を実質的にガスが流れない程度に抑えることで、分離領域Dにて供給する分離ガスが隣接する処理領域内部を回転方向に横断して、処理領域の回転テーブル外周方向に設けた排気口に向けて流れを形成させ、排気口に連通した真空ポンプから真空排気されるようにしている。
【0040】
また複数の異なる反応ガスがお互いに反応することを防止する分離ガスの分離領域Dを高速回転においても維持できる構成とした。さらに回転テーブル2の回転中心から分離ガスを供給することで、分離領域Dの回転中心方向において分離ガスが回転中心を横断して、真空容器を横切るいわばガスのカーテンを形成して、複数の異なる反応ガスの分離を高速回転においても維持する技術を開発することに成功した。以下これらの点についても説明する。
【0041】
従って第1の反応ガスの吸着を行う第1の処理領域P1では面積をそれ程大きくしなくても吸着処理が十分に進行するが、化学反応を十分に進行させるためには処理時間が必要であるため、第2の処理領域は第1の処理領域P1よりも面積を大きくして、処理時間を稼ぐ必要がある。また高価な第1の反応ガスは、第1の処理領域P1が広過ぎると、当該領域P1に拡散して吸着せずに排気される量が多くなってしまい、ガスの供給量を多くしなければならないため、この観点からも第1の処理領域P1では面積が狭い方が有利である。
【0042】
また第1及び第2の処理領域P1,P2において、反応ガスノズル31,32は、夫々回転方向の中央部か、その中央部よりも当該回転方向に沿った前半部分(回転方向の上流側)に設けられることが望ましい。これはウエハWに供給した反応ガスの成分を十分にウエハWに吸着させたり、既にウエハWに吸着された反応ガスの成分と新たにウエハWに供給した反応ガスとを十分に反応させるためである。この例においては、第1の反応ガスノズル31は第1の処理領域P1における前記回転方向のほぼ中央部に設けられ、第2の反応ガスノズル32は第2の処理領域P2における前記回転方向の上流側に設けられている。
【0043】
一方天板11の下面には、回転テーブル2におけるコア部21よりも外周側の部位と対向するようにかつ当該コア部21の外周に沿って突出部5が設けられている。この突出部5は凸状部4における前記回転中心側の部位と連続して形成されており、その下面は図5に示すように、凸状部4の下面(天井面44)よりも僅かに低くなるように形成されている。このように突出部5の下面を凸状部4の下面よりも僅かに低く形成するのは、回転テーブル2の中心部において圧力バランスを確保するためと、前記中心部の方が回転テーブル2の周縁側に比べて駆動クリアランスが少なくて済むからである。図2及び図3は、前記天井面45よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて天板11を水平に切断して示している。なお突出部5と凸状部4とは、必ずしも一体であることに限られるものではなく、別体であってもよい。
【0044】
凸状部4及び分離ガスノズル41(42)の組み合わせ構造の作り方については、凸状部4をなす1枚の扇型プレートの中央に溝部43を形成してこの溝部43内に分離ガスノズル41(42)を配置する構造に限らず、2枚の扇型プレートを用い、分離ガスノズル41(42)の両側位置にて天板本体の下面にボルト締めなどにより固定する構成などであってもよい。
【0045】
真空容器1の天板11の下面、つまり回転テーブル2のウエハ載置領域(凹部24)から見た天井面は既述のように第1の天井面44とこの天井面44よりも高い第2の天井面45とが周方向に存在するが、図1では、高い天井面45が設けられている領域についての縦断面を示しており、図5では、低い天井面44が設けられている領域についての縦断面を示している。扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は図2及び図5に示されているように回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲して屈曲部46を形成している。扇型の凸状部4は天板11側に設けられていて、容器本体12から取り外せるようになっていることから、前記屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。この屈曲部46も凸状部4と同様に両側から反応ガスが侵入することを防止して、両反応ガスの混合を防止する目的で設けられており、屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間は回転テーブル2の熱膨張を考慮して約10mmに設定されているが、屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、回転テーブル2の表面に対する天井面44の高さh1と同様の寸法に設定されている。これらは熱膨張等を考慮して、両反応ガスの混合を防止するという目的を確保するために適切な範囲に設定することが好ましい。この例においては、回転テーブル2の表面側領域からは、屈曲部46の内周面が真空容器1の側壁(内周壁)を構成していると見ることができる。
【0046】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては図5に示すように前記屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、処理領域P1,P2においては、図1に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底面部14に亘って縦断面形状が矩形に切り欠かれて外方側に窪んだ構造になっている。つまり前記分離領域Dにおける回転テーブル2と前記真空容器の内周壁との隙間SDは、前記処理領域P1,P2における回転テーブル2と前記真空容器の内周壁との隙間SPよりも狭く設定されている。ここで分離領域Dにおいては、既述のように屈曲部46の内周面が真空容器1の内周壁を構成しているため、図5に示すように、前記隙間SDとは屈曲部46の内周面と回転テーブル2との隙間に相当する。また前記窪んだ部分を排気領域6と呼ぶことにすると、前記隙間SPとは図1及び図7に示すように、排気領域6の内周面と回転テーブル2との隙間に相当する。なお前記分離領域Dにおける前記隙間SDが、前記処理領域P1,P2における前記隙間SPよりも狭く設定される場合には、図6に示すように、凸状部4の一部が排気領域6側に入り込む場合も含まれる。またこの例では分離領域Dでは、前記屈曲部46の内周面が真空容器1の内周壁を構成しているが、この屈曲部46は必ずしも必要ではなく、屈曲部46を設けない場合には、分離領域Dにおける回転テーブル2と真空容器1の内周壁との隙間が、処理領域Dにおける回転テーブル2と真空容器1の内周壁との隙間よりも狭くなるように設定される。
【0047】
前記排気領域6の底部には図1及び図3に示すように例えば2つの排気口(第1の排気口61及び第2の排気口62)が設けられている。これら第1及び第2の排気口61、62は各々排気管63を介して真空排気手段である例えば共通の真空ポンプ64に接続されている。なお図1中、65は圧力調整手段であり、排気口61、62ごとに設けてもよいし、共通化されていてもよい。
【0048】
前記第1の排気口61は第1の処理領域P1の外側において、回転テーブル2の外方側に、回転テーブル2の外周方向に対応した範囲の中に設けられ、例えば第1の反応ガスノズル31とこの反応ガスノズル31に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に設けられている。また前記第2の排気口62は第2の処理領域P2において、回転テーブル2の外方側に、回転テーブル2の外周方向に対応した範囲の中に設けられ、例えば第2の反応ガスノズル32とこの反応ガスノズル32に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に設けられている。これは分離領域Dの分離作用が確実に働くようにするためであり、平面で見たときに前記分離領域Dの前記回転方向両側に排気口61,62が設けられ、第1の排気口61は第1の反応ガスの排気を、第2の排気口62は第2の反応ガスの排気を夫々専用に行うようになっている。
【0049】
ここで図3に示すように、第1及び第2の排気口61,62は各々処理領域における回転方向の下流側に設けることが好ましい。第2の反応ガスノズル32は第2の処理領域P2における回転テーブル2の回転方向の上流側に設けられていることから、当該反応ガスノズル32から供給された反応ガスが当該処理領域P2内を回転テーブル2の回転方向の上流側から下流側へ向けて通気していき、当該処理領域P2内に満遍なく反応ガスが行き渡るからである。これにより面積が大きい第2の処理領域P2内をウエハWが通過する際に、当該ウエハW表面を十分に第2の反応ガスと接触させて、化学反応を進行させることができる。
【0050】
なお第1の処理領域P1は第2の処理領域P2に比べて狭いので、当該実施の形態のように第1の反応ガスノズル31を処理領域P1における回転テーブル2の回転方向のほぼ中央においても、処理領域P1内に十分に反応ガスが行き渡り、金属層の吸着反応を十分に進行させることができるが、当該第1の反応ガスノズル31も回転テーブル2の回転方向の上流側に設けるようにしてもよい。
【0051】
排気口の設置数は2個に限られるものではなく、例えば分離ガスノズル42を含む分離領域Dと当該分離領域Dに対して前記回転方向下流側に隣接する第2の反応ガスノズル32との間に更に排気口を設置して3個としてもよいし、4個以上であってもよい。この例では排気口61、62は回転テーブル2よりも低い位置に設けることで真空容器1の内周壁と回転テーブル2の周縁との間の隙間から排気するようにしているが、真空容器1の底面部に設けることに限られず、真空容器1の側壁に設けてもよい。また排気口61、62は、真空容器1の側壁に設ける場合には、回転テーブル2よりも高い位置に設けるようにしてもよい。このように排気口61、62を設けることにより回転テーブル2上のガスは、回転テーブル2の外側に向けて流れるため、回転テーブル2に対向する天井面から排気する場合に比べてパーティクルの巻上げが抑えられるという観点において有利である。
【0052】
前記回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図1、図2及び図6に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハをプロセスレシピで決められた温度に加熱するようになっている。前記回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から排気領域6に至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画するためにヒータユニット7を全周に亘って囲むようにカバー部材71が設けられている。図5に示すように分離領域Dにおいては、前記カバー部材71はブロック部材71a、71bより形成されている。こうして分離領域Dではブロック部材71a,71bの上面と回転テーブル2の下面との間の隙間を小さくして、回転テーブル2の下方側に外方からガスが侵入することを抑えている。またこのように屈曲部46の下方側にブロック部材71bを設けることにより、分離ガスが回転テーブル2の下方側まで流れることをさらに抑制できるため、より好ましい。なお図5に示すように、ブロック部材71aの上面とヒータユニット7の上面とに亘って、ヒータユニット7を保持する保護プレート7aを載置するようにしてもよい。これによりヒータユニット7が設けられる空間にBTBASガスやOガスが仮に流入したとしても、ヒータユニット7を保護することができる。当該保護プレート7aは例えば石英により作製することが好ましい。なお他の図においては保護プレート7aは省略して描いている。
【0053】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底面部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近、コア部21に接近してその間は狭い空間になっており、また当該底面部14を貫通する回転軸22の貫通穴についてもその内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間は前記ケース体20内に連通している。そして前記ケース体20にはパージガスであるNガスを前記狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側位置にて周方向の複数部位に、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が設けられている。
【0054】
このようにパージガス供給管72、73を設けることにより図7にパージガスの流れを矢印で示すように、ケース体20内からヒータユニット7の配置空間に至るまでの空間がNガスでパージされ、このパージガスが回転テーブル2とカバー部材71との間の隙間から排気領域6を介して排気口61、62に排気される。これによって既述の第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との一方から回転テーブル2の下方を介して他方にBTBASガスあるいはOガスが回り込むことが防止されるため、このパージガスは分離ガスの役割も果たしている。
【0055】
また真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるNガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出されることになる。この突出部5で囲まれる空間には分離ガスが満たされているので、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間で回転テーブル2の中心部を介して反応ガス(BTBASガスあるいはOガス・)が混合することを防止している。即ち、この成膜装置は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との雰囲気を分離するために回転テーブル2の回転中心部と真空容器11とにより区画され、分離ガスがパージされると共に当該回転テーブル2の表面に分離ガスを吐出する吐出口が前記回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。なおここでいう吐出口は前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50に相当する。この中心部領域Cは回転テーブル2の回転中心から真空容器内へ分離ガスを供給する回転中心供給用の分離ガス供給手段に相当する。
【0056】
更に真空容器1の側壁には、図2、図3及び図7に示すように外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハの受け渡しを行うための搬送口15が第2の処理領域P2に面して形成されており、この搬送口15は搬送経路に設けられた図示しないゲートバルブにより開閉されるようになっている。また回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン16の昇降機構(図示せず)が設けられる。
【0057】
またこの実施の形態の成膜装置は、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられ、この制御部100のメモリ内には装置を運転するためのプログラムが格納されている。このプログラムは後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体から制御部100内にインストールされる。
【0058】
ここで成膜装置の各部の大きさの一例について、直径300mmのウエハWを被処理基板とし、第1の反応ガスとしてBTBASガス、第2の反応ガスとしてOガスを用いる場合を例にして説明する。また回転テーブル2の回転数については、例えば1rpm〜500rpm程度に設定している。例えば回転テーブルの直径はφ960mm、また凸状部4は、回転中心から140mm離れた突出部5との境界部位においては、周方向の長さ(回転テーブル2と同心円の円弧の長さ)が例えば146mmであり、ウエハの載置領域(凹部24)の最も外側部位においては、周方向の長さが例えば502mmである。なお図4(a)に示すように、当該外側部位において分離ガスノズル41(42)の両脇から夫々左右に位置する凸状部4の周方向の長さLでみれば、長さLは246mmである。
【0059】
そして第1の処理領域P1と第2の処理領域P2の大きさは凸状部4の配置により調整されるが、例えば第1の処理領域P1については、回転中心から140mm離れた突出部5との境界部位においては、周方向の長さ(回転テーブル2と同心円の円弧の長さ)が例えば146mmであり、ウエハの載置領域(凹部24)の最も外側部位においては、周方向の長さが例えば502mmである。第2の処理領域P2については、回転中心から140mm離れた突出部5との境界部位においては、周方向の長さ(回転テーブル2と同心円の円弧の長さ)が例えば438mmであり、ウエハの載置領域(凹部24)の最も外側部位においては、周方向の長さが例えば1506mmである。
【0060】
また図4(a)に示すように凸状部4の下面即ち天井面44における回転テーブル2の表面からの高さh1は、例えば0.5mmから10mmであってもよく、約4mmであると好適である。前記分離領域Dにおける回転テーブル2と前記真空容器の内周壁との隙間SDはより狭い方が好ましいが、回転テーブル2の回転のクリアランスや、回転テーブル2を加熱したときの熱膨張を考慮すると、例えば0.5mmから20mmであってもよく、約10mmであると好適である。
【0061】
また図4(a)に示すように処理領域P1,P2の天井面45における回転テーブル2の表面からの高さh2は、例えば15mm〜100mm例えば32mmである。さらに処理領域P1,P2における反応ガスノズル31,32は、夫々の処理領域P1,P2の天井面45から離間し、前記回転テーブル2上の近傍に設けられているが、このときの反応ガスノズル31,32の上面における天井面45からの高さh3は例えば10mm〜70mmであり、処理領域P1,P2における反応ガスノズル31,32の下面における回転テーブル2からの高さh4は、例えば0.2mm〜10mmである。このような反応ガスノズル31,32は例えばその先端が突出部5の近傍に位置し、処理領域P1,P2の径方向全体に反応ガスを吐出するように、吐出孔33が形成されている。
【0062】
実際には、反応ガスの種類や流量、回転テーブル2の回転数の使用範囲などのプロセス条件に応じて第1の処理領域P1や第2の処理領域P2の大きさや、十分な分離機能を確保するための分離領域Dの大きさが異なるため、前記プロセス条件に応じて、凸状部4の大きさや、第1の処理領域P1や第2の処理領域P2を決定するための凸状部4の設置個所、凸状部4の下面(第1の天井面44)における回転テーブル2の表面からの高さh1、処理領域P1,P2の回転テーブル2の表面における第2の天井面45からの高さh2、反応ガスノズル31,32の上面における第2の天井面45からの高さh3、反応ガスノズル31,32の下面における回転テーブル2からの高さh4、前記分離領域Dにおける回転テーブル2と前記真空容器の内周壁との隙間SDを例えば実験などに基づいて設定することになる。
【0063】
また第2の処理領域P2の回転テーブル2の表面における第2の天井面45からの高さh2を、第1の処理領域P1の回転テーブル2の表面における第2の天井面45からの高さh2よりも大きく設定してもよい。さらに反応ガスノズル31,32の上面における第2の天井面45からの高さh3、反応ガスノズル31,32の下面における回転テーブル2からの高さh4についても、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間で互いに異なる高さに設定してもよい。
【0064】
なお分離ガスとしては、Nガスに限られずArガスなどの不活性ガスを用いることができるが、不活性ガスに限らず水素ガスなどであってもよく、成膜処理に影響を与えないガスであれば、ガスの種類に関しては特に限定されるものではない。
【0065】
次に上述実施の形態の作用について説明する。先ず図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10により搬送口15を介してウエハを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに図8に示すように凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器の底部側から昇降ピン16が昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウエハWを載置する。続いて真空ポンプ64により真空容器1内を予め設定した圧力に真空引きすると共に、回転テーブル2を時計回りに回転させながらヒータユニット7によりウエハWを加熱する。詳しくは、回転テーブル2はヒータユニット7により予め例えば300℃に加熱されており、ウエハWがこの回転テーブル2に載置されることで加熱される。ウエハWの温度が図示しない温度センサにより設定温度になったことを確認した後、第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32から夫々BTBASガス及びOガスを吐出させると共に、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるNガスを吐出する。
【0066】
ウエハWは回転テーブル2の回転により、第1の反応ガスノズル31が設けられる第1の処理領域P1と第2の反応ガスノズル32が設けられる第2の処理領域P2とを交互に通過するため、BTBASガスが吸着してシリコンの分子層が形成され、次いでOガスが吸着してシリコン層が酸化されて酸化シリコンの分子層が1層あるいは複数層形成され、こうして酸化シリコンの分子層が順次積層されて所定の膜厚のシリコン酸化膜が成膜される。
【0067】
このとき分離ガス供給管51からも分離ガスであるNガスを供給し、これにより中心部領域Cから即ち突出部5と回転テーブル2の中心部との間から回転テーブル2の表面に沿ってNガスが吐出する。この例では反応ガスノズル31、32が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿った容器本体12の内周壁においては、既述のように内周壁が切りかかれて広くなっており、この広い空間の下方に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなる。ガスを各部位から吐出したときのガスの流れの状態を模式的に図9に示す。
【0068】
第1の処理領域P1では、第1の反応ガスノズル31から下方側に吐出されたBTBASガスは回転テーブル2の表面(ウエハWの表面及びウエハWの非載置領域の表面の両方)に当たってその表面に沿って第1の排気口61に向かって通流していく。この際BTBASガスは、その回転方向上流側及び下流側に隣接する扇型の凸状部4から吐出されているNガスと、中心部領域Cから吐出されているNガスと共に、回転テーブル2の周縁と真空容器1の内周壁との隙間SPから排気領域6を介して第1の排気口61に排気される。こうして第1の処理領域P1に供給された第1の反応ガスとNガスとが、第1の処理領域P1を経由して第1の排気口61を介して排気される。
【0069】
また第1の反応ガスノズル31から下方側に吐出され、回転テーブル2の表面に当たってその表面に沿って回転方向下流側に向かうNガスは、中心部領域Cから吐出されるNガスの流れと第1の排気口61の吸引作用により当該排気口61に向かおうとするが、一部は下流側に隣接する分離領域Dに向かい、扇型の凸状部4の下方側に流入しようとする。ところがこの凸状部4の天井面44の高さ及び周方向の長さは、各ガスの流量などを含む運転時のプロセスパラメータにおいて当該天井面44の下方側へのガスの侵入を防止できる寸法に設定されているため、図4(b)にも示してあるようにBTBASガスは扇型の凸状部4の下方側にほとんど流入できないかあるいは少し流入したとしても分離ガスノズル42付近までには到達できるものではなく、分離ガスノズル42から吐出したNガスにより回転方向上流側、つまり第1の処理領域P1側に押し戻されてしまい、中心部領域Cから吐出されているNガスと共に、回転テーブル2の周縁と真空容器1の内周壁との隙間SPから排気領域6を介して第1の排気口61に排気される。こうして中心部領域Cから吐出されている分離ガスは、第1の処理領域P1を経由して第1の排気口61から排気される。
【0070】
また第2の処理領域P2では、第2の反応ガスノズル32から下方側に吐出されたOガスは回転テーブル2の表面に沿って第2の排気口62に向かって通流していく。この際Oガスは、その回転方向上流側及び下流側に隣接する扇型の凸状部4から吐出されているNガスと、中心部領域Cから吐出されているNガスと共に、回転テーブル2の周縁と真空容器1の内周壁との間の排気領域6に流れ込み、第2の排気口62により排気される。こうして第2の処理領域P2に供給された第2の反応ガスとNガスとが、第2の処理領域P2を経由して第2の排気口62を介して排気される。
【0071】
第2の処理領域P2においても、Oガスは扇型の凸状部4の下方側にほとんど流入できないかあるいは少し流入したとしても分離ガスノズル41付近までには到達できるものではなく、分離ガスノズル41から吐出したNガスにより回転方向上流側、つまり第2の処理領域P2側に押し戻されてしまい、中心部領域Cから吐出されているNガスと共に、回転テーブル2の周縁と真空容器1の内周壁との隙間から排気領域6を介して第2の排気口62に排気される。こうして中心部領域Cから吐出されている分離ガスは、第2の処理領域P2を経由して第2の排気口62から排気される。
【0072】
このように各分離領域Dにおいては、雰囲気中を流れる反応ガスであるBTBASガスあるいはOガスの侵入を阻止するが、ウエハに吸着されているガス分子はそのまま分離領域つまり扇型の凸状部4による低い天井面44の下方を通過し、成膜に寄与することになる。また第1の処理領域P1のBTBASガス(第2の処理領域P2のOガス)は、中心部領域C内に侵入しようとするが、図7及び図9に示すように当該中心部領域Cからは分離ガスが回転テーブル2の周縁に向けて吐出されているので、この分離ガスにより侵入が阻止され、あるいは多少侵入したとしても押し戻され、この中心部領域Cを通って第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)に流入することが阻止される。
【0073】
そして分離領域Dにおいては、扇型の凸状部4の周縁部が下方に屈曲され、屈曲部46と回転テーブル2の外端面との間の隙間SDが既述のように狭くなっていてガスの通過を実質阻止しているので、第1の処理領域P1のBTBASガス(第2の処理領域P2のOガス)は、回転テーブル2の外側を介して第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)に流入することも阻止される。従って2つの分離領域Dによって第1の処理領域P1の雰囲気と第2の処理領域P2の雰囲気とが完全に分離され、BTBASガスは第1の排気口61に、またOガスは第2の排気口62に夫々排気される。この結果、両反応ガスこの例ではBTBASガス及びOガスが雰囲気中においてもウエハ上においても混じり合うことがない。なおこの例では、回転テーブル2の下方側をNガスによりパージしているため、排気領域6に流入したガスが回転テーブル2の下方側を潜り抜けて、例えばBTBASガスがOガスの供給領域に流れ込むといったおそれは全くない。
【0074】
また第1及び第2の反応ガスノズル31,32は、夫々の処理領域P1,P2の天井から離間して前記基板の近傍に設けられているので、分離ガスノズル41,42から吐出したNガスは、図4(b)に示すように、反応ガスノズル31,32の上方側と夫々の処理領域P1,P2の天井面45との間や、反応ガスノズル31,32の下方側にも通流していく。この際、反応ガスノズル31,32からは夫々反応ガスが吐出しているので、反応ガスノズル31,32の下方側よりも上方側の方が圧力が低くなっている。このため、Nガスは圧力の低い反応ガスノズル31,32の上方側と夫々の処理領域P1,P2の天井面45との間により通流していきやすい。これにより分離領域D側からNガスが処理領域P1,P2側へ流れ込むといっても、反応ガスノズル31,32の下方側へはNガスが流れ込みにくいため、反応ガスノズル31から吐出される反応ガスはNガスによりそれほど希釈されることなく、ウエハW表面に供給される。こうして成膜処理が終了すると、各ウエハは搬入動作と逆の動作により順次搬送アーム10により搬出される。
【0075】
ここで処理パラメータの一例について記載しておくと、回転テーブル2の回転数は、300mm径のウエハWを被処理基板とする場合例えば1rpm〜500rpm、プロセス圧力は例えば1067Pa(8Torr)、ウエハWの加熱温度は例えば350℃、BTBASガス及びOガスの流量は例えば夫々100sccm及び10000sccm、分離ガスノズル41、42からのNガスの流量は例えば20000sccm、真空容器1の中心部の分離ガス供給管51からのNガスの流量は例えば5000sccmである。また1枚のウエハに対する反応ガス供給のサイクル数、即ちウエハが処理領域P1、P2の各々を通過する回数は目標膜厚に応じて変わるが、多数回例えば600回である。
【0076】
上述実施の形態によれば、回転テーブル2の回転方向に複数のウエハWを配置し、回転テーブル2を回転させて第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを順番に通過させていわゆるALD(あるいはMLD)を行うようにしているため、高いスループットで成膜処理を行うことができる。そして前記回転方向において第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間に分離領域Dを設け、当該分離領域Dから処理領域P1,P2に向けて分離ガスを吐出し、第1の処理領域P1においては、第1の反応ガスを分離ガスと共に回転テーブル2の周縁と真空容器の内周壁との隙間SPを介して第1の排気口61から排気し、第2の処理領域P2においては、第2の反応ガスを分離ガスと共に回転テーブル2の周縁と真空容器の内周壁との隙間SPを介して第2の排気口62から排気している。これにより両反応ガスの混合を防止することができ、この結果良好な成膜処理を行うことができる。また回転テーブル2上において反応生成物が生じることが全くないか極力抑えられ、パーティクルの発生が抑えられる。なお本発明は、回転テーブル2に1個のウエハWを載置する場合にも適用できる。
【0077】
またウエハW表面に吸着されたシリコンを酸化反応させる処理を行う第2の処理領域P2は、ウエハW表面にシリコンを吸着させる処理を行う第1の処理領域P1よりも面積が大きくなるように設定されているので、シリコンの吸着反応に比べて時間がかかるシリコンの酸化反応の処理時間を長く確保することができる。このため回転テーブル2の回転速度を高めても、シリコンの酸化反応を十分に進行させることができ、不純物の少ない、膜質の良好な薄膜を形成することができて、良好な成膜処理を行うことができる。またBTBASガスはウエハWの吸着力が大きいので、第1の処理領域P1の面積を小さくしても、ウエハWとの接触によりBTBASガスがウエハW表面に直ちに吸着される。このためむやみに処理領域P1を大きくしても、反応に寄与せずに排気されるBTBASガスの量が増加するばかりであり、BTBASガスの省量化の観点からも第1の処理領域P1の面積を小さくすることは有効である。
【0078】
さらに上述の実施の形態では、凸状部4を設けて分離領域Dを形成しているので、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを区画でき、より第1の反応ガスと第2の反応ガスとの分離効果を高めることができる。
【0079】
さらにまた分離領域Dにおける回転テーブル2と真空容器1の内周壁との隙間SDが、処理領域P1、P2における回転テーブル2と真空容器1の内周壁との隙間SPよりも狭く設定されており、また排気口61,62は処理領域P1,P2に設けられているので、当該隙間SPの方が前記隙間SDよりも圧力が低くなる。このため分離領域Dから供給された分離ガスの大部分が処理領域P1,P2に設けて通流していき、残りの僅かな分離ガスが前記隙間SDに向けて流れていく。ここで分離ガスの大部分とは、分離ガスノズル41,42から供給される分離ガスの90%以上をいう。これにより分離領域Dからの分離ガスは、実質的には分離領域Dの両側の処理領域P1,P2へ向けて通流していき、回転テーブル2の外方側へはほとんど通流していかないので、分離領域Dによる第1及び第2の反応ガスの分離作用が大きくなる。
【0080】
さらにまた真空容器内へのウエハWの搬入及び搬出を行うウエハWの搬送口15を第2の処理領域P2に面して設けたので、確実に金属の酸化処理が行われたウエハWが搬出されることになる。
【0081】
続いて本発明の第2の実施の形態について図10〜図13に基づいて説明する。この実施の形態は、前記第2の処理領域P2における、前記回転テーブル2の回転方向に沿った後半部分(下流側)に、第2の処理領域P2内で成膜したウエハWの表面改質をプラズマにより行うプラズマ発生手段200を設けるものである。このプラズマ発生手段200は、図10〜図12に示すように、回転テーブル2の半径方向に沿って伸びるように配置された筐体からなるインジェクター本体201を備え、このインジェクター本体201は回転テーブル2上のウエハW近傍に配置されている。このインジェクター本体201内には、隔壁202によって長さ方向に区画された幅の異なる2つの空間が形成されていて、一方側は前記プラズマ発生用のガスをプラズマ化(活性化)するためのガス活性化用流路であるガス活性化室203、他方側はこのガス活性化室203へプラズマ発生用のガスを供給するためのガス導入用流路であるガス導入室204となっている。
【0082】
図10〜図12において、205はガス導入ノズル、206はガス孔、207はガス導入ポート、208は継手部、209はガス供給ポートである。そしてプラズマ発生用のガスは、ガス導入ノズル205のガス孔206からガス導入室204内に供給され、前記ガスは隔壁202の上部に形成された切り欠き部211を介してガス活性化室203に通流するように構成されている。ガス活性化室203内には、2本の誘電体からなる例えばセラミックス製のシース管212が当該ガス活性化室203の基端側から先端側へ向けて隔壁202に沿って伸び出しており、これらのシース管212の管内には、棒状の電極213が貫挿されている。これらの電極213の基端側はインジェクター本体201の外部に引き出され、真空容器1の外部にて整合器214を介して高周波電源215と接続されている。インジェクター本体201の底面には、当該電極213の間の領域であるプラズマ発生部220にてプラズマ化して活性化されたプラズマを下方側に吐出するためのガス吐出孔221がインジェクター本体201の長さ方向に配列されている。このインジェクター本体201は、その先端側が回転テーブル2の中心部へ向けて伸び出した状態となるように配設されている。図10中231はガス導入ノズル205にプラズマ発生用のガスを導入するためのガス導入路、232はバルブ、233は流量調整部、234は前記プラズマ発生用のガスが貯留されたガス源である。プラズマ発生用のガスとしては、アルゴン(Ar)ガスや、酸素(O)ガス及び窒素(N)ガス等が用いられる。
【0083】
この実施の形態においても、同様の回転テーブル2上にウエハWを5枚載置して、回転テーブル2を回転させて、各ガスノズル31,32,41,42からBTBASガス、Oガス及びNガスをウエハWに向けて夫々供給すると共に、既述のようにパージガスを中心部領域Cや回転テーブル2の下方の領域に供給する。そしてヒータユニット7に給電し、プラズマ発生手段200に対してプラズマ発生用のガス例えばArガスを供給すると共に、高周波電源215からプラズマ発生部220(電極213)に高周波電力を供給する。このとき真空容器1内は真空雰囲気となっているので、ガス活性化室203の上方部へ流入したプラズマ発生用のガスは上記の高周波電力によりプラズマ化(活性化)された状態となってガス吐出孔221を介してウエハWへ向けて供給される。こうして回転テーブル2上のウエハWが第2の処理領域P2を通過していく際に、当該ウエハW近傍に配置されたプラズマ発生手段200から供給されたプラズマを直接ウエハW表面に曝すことになる。
【0084】
このプラズマが第2の処理領域P2を通過して既述のシリコン酸化膜が形成されたウエハWに到達すると、当該シリコン酸化膜内に残っていた炭素成分や水分が気化して排出されたり、あるいはシリコンと酸素との間の結合が強められたりすることになる。このようにプラズマ発生手段200を設けることにより、シリコン酸化膜が改質され、不純物が少なく、また結合強度の強いシリコン酸化膜を成膜することができる。この際プラズマ発生手段200を回転テーブル2の回転方向の下流側に設けることにより、第2の反応ガスによる酸化反応が十分に進行した状態の薄膜に対してプラズマを照射できるので、より膜質の良好なシリコン酸化膜を成膜することができる。
【0085】
この例においては、プラズマ発生用のガスとしてArガスを用いたが、このガスに代えて、あるいはこのガスと共にOガスやNガスを用いてもよい。このArガスを用いた場合には、膜中のSiO結合を作り、SiOH結合をなくすという効果が得られ、またOガスを用いた場合には、未反応部分の酸化を促進し、膜中のC(炭素)が減少して電気特性が向上するという効果が得られる。
【0086】
また上述の例は、第2の反応ガスノズル32と別個にプラズマ発生手段200を設ける構成であるが、図13に示すように、当該プラズマ発生手段200は第2の反応ガスノズルを兼用するものであってもよい。この例では、第1の反応ガスノズル31から第1の反応ガスとしてDCS(ジクロロシラン)ガスを供給して、第1の処理領域P1にてシリコンの吸着処理が行われ、次いで第2の処理領域P2においてプラズマ発生手段200から第2の反応ガスとしてプラズマ化したNHガスが供給される。第2の処理領域P2では、プラズマ化したNHガスによるシリコンの窒化反応と、この窒化反応により得られた窒化シリコン膜(SiN膜)の改質が行われるようになっている。また第1の反応ガスノズル31から第1の反応ガスとしてTiClガスを供給すると共に、プラズマ発生手段200から第2の反応ガスとしてプラズマ化したNHガスを供給するように構成し、TiN膜を成膜するようにしてもよい。
【0087】
続いて本発明の第3の実施の形態について図14〜図17に基づいて説明する。この実施の形態では、第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32にノズルカバー34が設けられている。このノズルカバー34は、ガスノズル31,32の長さ方向に沿って伸長し、その縦断面がコ字型をなす基部35を備えており、この基部35によりガスノズル31,32の上方及び側方が被覆される。そして基部35の下端の左右から水平方向に、つまり回転テーブル2の回転方向の上流側、下流側に整流板36A,整流板36Bが突出している。図15に示すように、整流板36A,36Bは回転テーブル2の中心部側から周縁部側に向かう程大きく基部35から突出するように形成され、平面視状扇状に構成されている。この例では整流板36A,36Bは基部35に対して左右対称に形成されており、図15(b)中に点線で示した整流板36A,36Bの輪郭線の延長線がなす角度(扇の開き角度)は例えば10度である。ここでθはNガスが供給される分離領域Dの周方向の大きさや前記処理領域P1,P2の周方向の大きさを考慮することで適宜設計されるが、例えば5度以上90度未満である。
【0088】
図15に示すように、ノズルカバー34は、整流板36A,36Bの先端側(幅が狭い側)が突出部5に近接すると共に後端側(幅が広い側)が回転テーブル2の外縁に向かうように設けられている。またノズルカバー34は分離領域Dから離れ、かつ第2の天井面45との間にガスの通流空間である隙間Rを介するように設けられている。図16では、回転テーブル2上における各ガスの流れを矢印で示しており、この図に示すように、隙間Rは分離領域Dから処理領域P1,P2に向かったNガスの通流路をなしている。
【0089】
図14にh5で示した第1及び第2の処理領域P1における隙間Rの高さは例えば10〜70mmであり、図中h6で示した第1及び第2の処理領域P1,P2におけるウエハW表面から第2の天井面45までの高さは例えば15mm〜100mm例えば32mmである。ここで隙間Rの高さh5、h6については、ガス種やプロセス条件により適宜その大きさを変更することができ、ノズルカバー34による分離ガスを隙間Rにガイドして処理領域P1,P2への流れ込みを抑える整流効果ができるだけ有効になるような大きさに設定される。そのような整流効果を得るために例えばh5は、回転テーブル2とガスノズル31,32の下端との高さ以上であることが望ましい。また隙間Rの高さは、第1の処理領域P1よりも第2の処理領域P2の方が大きくなるように設定してもよい。この場合例えば第1の処理領域P1の隙間Rの高さは例えば10mm〜100mm、第2の処理領域P2の隙間Rの高さは例えば15mm〜150mmに設定される。
【0090】
また図14に示すように、ノズルカバー34の整流板36A,36Bの下面は反応ガスノズル31,32の吐出口33の下端とほぼ同じ高さ位置に形成されており、この図中にh7として示す整流板36A,36Bの回転テーブル2表面(ウエハW表面)からの高さは0.5mm〜4mmである。なお前記高さh7は0.5mm〜4mmに限られるものではなく、Nガスを上記のように隙間Rへガイドし、処理領域P1、P2における反応ガス濃度をウエハWに処理を行うことができるような十分な濃度に確保できる高さに設定すればよく、例えば0.2mm〜10mmでもよい。ノズルカバー34の整流板36A,36Bは、後述するように分離領域Dから進入したNガスが、反応ガスノズル31,32の下方側に潜り込む流量を減少させると共に、反応ガスノズル31,32から夫々供給されたBTBASガス、Oガスの回転テーブル2からの舞い上がりを防ぐ役割を有しており、その役割を果たすことができれば、ここに示した位置に設けることに限られない。
【0091】
図16に、Nガスの第1及び第2の反応ガスノズル31,32周辺における流れを実線の矢印で示す。反応ガスノズル31,32の下方の第1及び第2の処理領域P1,P2には、BTBASガス及びOガスが吐出されており、点線の矢印でその流れを示している。吐出されたBTBASガス(Oガス)は、整流板36A,36Bにより、整流板36A,36Bの下方から上方への舞い上がりが規制されているため、整流板36A,36Bの下方領域は、整流板36A,36Bの上方領域に比べて圧力が高くなっている。回転方向の上流側から反応ガスノズル31,32に向かうNガスについては、このような圧力差及び回転方向の上流側に突出した整流板36Aにより、その流れが規制されるため、前記処理領域P1,P2への潜り込みが防がれて下流側へと向かう。そして前記Nガスは、ノズルカバー34と天井面45との間に設けられた隙間Rを通って前記回転方向を反応ガスノズル31,32の下流側へと向かう。つまり反応ガスノズル31,32の上流側から下流側へ向かうNガスについて、その多くを反応ガスノズル31,32の下方側を迂回して隙間Rにガイドすることができるような位置に前記整流板36A,36Bは配置されており、従って第1及び第2の処理領域P1,P2に流れ込むNガスの量が抑えられる。
【0092】
また第1の処理領域P1に流れ込んだNガスは、ガスを受ける反応ガス31,32の上流側(正面側)に比べて下流側(背面側)の圧力が低くなっていることから、この反応ガスノズル31の下流側の位置へ向けて上昇しようとし、それに伴って反応ガスノズル31から吐出されて回転方向下流側へ向かうBTBASガスも回転テーブル2から舞い上がろうとする。しかし図16に示すように、回転方向下流側に設けられた整流板36BによってこれらBTBASガス及びNガスはその舞い上がりが抑えられ、当該整流板36Bと回転テーブル2との間を下流側へと向かい、そして処理領域P1の下流側で上記した反応ガスノズル31の上側の隙間Rを通過して下流側へ流れたNガスと合流する。
【0093】
そしてこれらBTBASガス及びNガスは、処理領域P1,P2の下流側に位置する分離ガスノズルから上流側に向かうNガスに押されて、当該分離ガスノズルが設けられた凸状部4の下方側に進入することが抑えられる。そして分離ガスノズル41,42からのNガスと、中心部領域Cから吐出されているNガスと共に排気領域6を介して夫々の排気口61,62から排気される。
【0094】
このような実施の形態によれば、ウエハWが載置された回転テーブル2上に設けられた第1及び第2の反応ガスノズル31,32の上方に分離領域Dから回転テーブル2の回転方向の上流側から下流側に向かうNガスの通流路をなす隙間Rが設けられると共に、第1及び第2の反応ガスノズル31,32には前記回転方向の上流側に突出した整流板36A,36Bを備えたノズルカバー34が設けられている。この整流板36A,36Bにより分離ガスノズル41,42が設けられた分離領域Dから、第1及び第2の処理領域P1,P2側に向かって流れるNガスについては、その多くが前記隙間Rを介して当該第1及び第2の処理域P1,P2の下流側へと流れて排気口61,62に流入するので、第1及び第2の反応ノズル31,32の下方側に流入することが抑えられる。従って第1及び第2の処理領域P1,P2におけるBTBASガス、Oガスの濃度が低下することが抑えられ、回転テーブル2の回転数を上昇させた場合でも、第1の処理領域P1ではBTBASガスの分子を確実にウエハに吸着させて、正常に成膜を行うことができる。また第2の処理領域P2ではOガスの濃度の低下が抑えられるので、BTBASの酸化を十分に行うことができ、不純物の少ない膜を形成することができる。従って回転テーブル2の回転速度を高めても、ウエハWに均一性高く成膜することができ、膜質も向上し、良好な成膜処理を行うことができる。
【0095】
このノズルカバー34は、いずれか一方の反応ガスノズル31,32に設けるようにしてもよいし、プラズマ発生手段200に設けるようにしてもよい。またノズルカバー34の整流板36A,36Bは、反応ガスノズル31,32の回転方向の上流側のみに設けるようにしてもよいし、下流側のみに設けるようにしてもよい。また反応ガスノズル31,32には、基部35を設けずに、反応ガスノズル31,32の下端から回転方向の上流側及び下流側に夫々突出するように整流板を設けるようにしてもよい。また整流板の平面形状は扇形には限られない。
【0096】
本発明で適用される第1の反応ガスとしては、上述の例の他に、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]、TMA[トリメチルアルミニウム]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]、 Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]、モノアミノシランなどを挙げることができる。また第2の反応ガスとしては、酸化処理を行う場合にはOガスの他に、Hガス等を用いることができ、窒化処理を行う場合にはNHガスの他に、Nガス等を用いることができる。また本発明では第1の反応ガスとして、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMAH[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)[ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]を用い、第2の反応ガスとしてOガスやNHガスを用いて、High−K膜(高誘電率層絶縁膜)を形成する場合にも適用できる。さらに本発明では第1の反応ガスとして、トリメチルアルミニウム(TMA)、チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト(Ti(MPD)(THD))を用い、第2の反応ガスとしてOガスを用いて、酸化アルミニウム(Al),酸化チタニウム(TiO)等のメタル膜を形成する場合にも適用できる。また本発明では、第1の処理領域P1は1つに限らず2つ以上であってもよいし、第2の処理領域P2も1つに限らず2つ以上であってもよい。さらにまた一つの第1の処理領域P1に対して複数の第2の処理領域P2を用意するようにしてもよく、この際一つの第2の処理領域P2の面積は第1の処理領域P1よりも小さいが、第2の処理領域P2のトータルの面積が第1の処理領域P1よりも大きい場合も、本発明の範囲に含まれる
さらに前記分離領域Dの天井面44において、前記分離ガスノズル41、42に対して回転テーブル2の回転方向の上流側部位は、外縁に位置する部位ほど前記回転方向の幅が大きいことが好ましい。その理由は回転テーブル2の回転によって上流側から分離領域Dに向かうガスの流れが外縁に寄るほど速いためである。この観点からすれば、上述のように凸状部4を扇型に構成することは得策である。
【0097】
また本発明では、分離ガス供給手段としては、分離ガスノズル41、42の両側に凸状部44が配置されている上述の構成に限らず、凸状部4の内部に分離ガスの通流室を回転テーブル2の直径方向に伸びるように形成し、この通流室の底部に長さ方向に沿って多数のガス吐出孔が穿設される構成を採用してもよい。
【0098】
さらに本発明では、反応ガス供給手段として、回転テーブルの回転中心を要とする扇形の互いに隣接する分離領域同士の間に配置され、前記回転テーブルに載置された基板が通過する際に、前記基板を覆う複数のガス噴出孔を備えたシャワーヘッドを用いるようにしてもよい。
【0099】
さらにまた回転テーブルの端部を取り囲むようにバッフル板を設けると共に、このバッフル板に開口またはスリットを形成して、前記回転テーブルの回転テーブル外周方向において、前記回転テーブルの端部と前記真空容器の側壁との隙間から排出されたガスを、前記バッフル板に設けられた開口またはスリットを経由して回転テーブルの外方に設けられた排気口から前記排気手段により排気するように構成してもよい。この際、前記バッフル板に設けられた開口またはスリットを十分小さく開放させることにより、前記分離領域に供給された分離ガスは実質的に前記処理領域の方向を経由して前記排気口の方向に流れることになる。
【0100】
さらに本発明では、前記第1の反応ガスとして金属を含有した反応前駆体を用い、前記第2の反応ガスとして前記第1の反応ガスと反応して金属酸化物の成膜を行う酸化ガス又は金属窒化物を成膜する窒素含有ガスを用いることができる。
【0101】
以上述べた成膜装置を用いた基板処理装置について図17に示しておく。図17中、101は例えば25枚のウエハを収納するフープと呼ばれる密閉型の搬送容器、102は搬送アーム103が配置された大気搬送室、104、105は大気雰囲気と真空雰囲気との間で雰囲気が切り替え可能なロードロック室(予備真空室)、106は、2基の搬送アーム107が配置された真空搬送室、108、109は本発明の成膜装置である。搬送容器101は図示しない載置台を備えた搬入搬出ポートに外部から搬送され、大気搬送室102に接続された後、、図示しない開閉機構により蓋が開けられて搬送アーム103により当該搬送容器101内からウエハが取り出される。次いでロードロック室104(105)内に搬入され当該室内を大気雰囲気から真空雰囲気に切り替え、その後搬送アーム107によりウエハが取り出されて成膜装置108、109の一方に搬入され、既述の成膜処理がされる。このように例えば5枚処理用の本発明の成膜装置を複数個例えば2個備えることにより、いわゆるALD(MLD)を高いスループットで実施することができる。
(評価実験1)
本発明の効果を確認するために、コンピュータによるシミュレーションを行った。先ず上記の図1〜図8に示す実施の形態の成膜装置をシミュレーションで設定した。このとき回転テーブル2の直径はφ960mm、凸状部4は、回転中心から140mm離れた突出部5との境界部位においては、周方向の長さが例えば146mm、ウエハの載置領域の最も外側部位においては、周方向の長さが例えば502mmの大きさに夫々設定した。また第1の処理領域P1については、回転中心から140mm離れた突出部5との境界部位においては周方向の長さを146mm、ウエハの載置領域の最も外側部位においては周方向の長さを502mmに夫々設定し、第2の処理領域P2については、回転中心から140mm離れた突出部5との境界部位においては周方向の長さを438mm、ウエハの載置領域の最も外側部位においては周方向の長さを1506mmに夫々設定した。さらに凸状部4の下面における回転テーブル2の表面からの高さh1は4mm、分離領域Dにおける回転テーブル2と前記真空容器の内周壁との隙間SDは10mmに夫々設定した。さらにまた処理領域P1,P2の天井面45における回転テーブル2の表面からの高さh2は例えば26mm、反応ガスノズル31,32の上面における天井面45からの高さh3は11mm、処理領域P1,P2における反応ガスノズル31,32の下面における回転テーブル2からの高さh4は2mmに夫々設定した。
【0102】
また第1の反応ガスとしてBTBASガス、第2の反応ガスとしてOガスを用いた。これらの供給流量は、BTBASガス:300sccmとし、Oガスはオゾナイザーからの供給のため、Oガス+Oガス:10slmとし、O発生量:200g/Nmに夫々設定した。さらに分離ガス及びパージガスとしてNガスを用い、これらのトータル供給流量は89slmとした。その内訳は、分離ガスノズル41,42:各25slm、分離ガス供給管51:30slm、パージガス供給管72:3lm、その他6slmである。そして処理条件としては、処理圧力:1.33kPa(10Torr)、処理温度:300℃に設定し、Nガスの濃度分布をシミュレーションした。
【0103】
このシミュレーション結果について図18に示す。実際のシミュレーション結果は、コンピュータグラフィクスにより、Nガスの濃度分布(単位%)がグラデーション表示されるようにカラー画面にてアウトプットされているが、図示の便宜上、図18では概略の濃度分布を示してある。従ってこれらの図で実際に濃度分布が飛び飛びになっているわけではなく、これらの図に等濃度線で区画した領域間に急な濃度勾配が存在していることを意味している。この図18では、領域A1:窒素濃度95%以上、領域A2:窒素濃度65%〜95%、領域A3:窒素濃度35%〜65%、領域A4:窒素濃度15%〜35%、領域A5:窒素装置15%以下の領域を夫々示している。また第1及び第2の反応ガスノズル31,32の近傍領域では、夫々の反応ガスに対する窒素濃度を示している。
【0104】
この結果から、反応ガスノズル31,32近傍では窒素濃度が低くなるものの、分離領域Dでは窒素濃度が95%以上であり、この分離領域Dにより第1及び第2の反応ガスの分離が確実に行われることが認められる。また第1及び第2の反応領域P1,P2においては、反応ガスノズル31,32の近傍において窒素濃度が低いが、回転テーブル2の回転方向の下流側に向けて窒素濃度が高くなり、下流側に隣接する分離領域Dでは窒素濃度が95%以上になっていることが認められた。これにより窒素ガスは反応ガスと共に処理領域P1,P2を経由して夫々の排気口61,62へ排気されることが理解された。また第2の処理領域P2では、当該処理領域P2の回転方向の上流側に設けられた第2の反応ガスノズル32から、当該処理領域P2の回転方向の下流側に設けられた排気口62に向かってガスが流れていく様子が認められ、面積の大きい第2の処理領域P2全体に反応ガスが行き渡ることが確認された。
【0105】
(評価試験2)
上記の図1〜図8に示す実施の形態の成膜装置を用いて実際に成膜処理を行い、形成された薄膜の膜厚を測定した。このとき成膜装置の構成は(評価試験1)で設定したものと同じである。また成膜条件は次の通りである。
【0106】
第1の反応ガス(BTBASガス):100sccm、
第2の反応ガス(Oガス):10slm(約200g/Nm
分離ガス及びパージガス:Nガス(トータル供給流量73slm、その内訳は、分離ガスノズル41:14slm、分離ガスノズル42:18slm、分離ガス供給管51:30slm、パージガス供給管72:5slm、その他6slm)
処理圧力:1.06kPa(8Torr)
処理温度:350℃
そして5つの凹部24の夫々にウエハWを載置して、回転テーブル2を回転させずに30分間処理を行った後、5枚のウエハWの夫々について膜厚を測定した。この結果を図19に示す。なお薄膜のイニシャル膜厚は0.9nmである。また凸状部4を設けない構成においても同様の処理を行った。この結果を図20に示す。
【0107】
これら図19及び図20では、夫々のウエハW1〜W5の膜厚を示すと共に、膜厚分布を4段階のグラデーションにて簡単に示している。最も膜厚の小さい領域がA11、2番目に膜厚の小さい領域がA12、3番目に膜厚の大きい領域がA13、最も膜厚の大きい領域がA14である。この結果より凸状部4が設けられていない構成ではBTBASガスの供給領域に置かれたウエハW4において局所的な増膜が認められ、当該BTBASガスの供給領域までOガスが回り込んでいるものと推察される。これに対して凸状部4が設けられている構成では、局所的な増膜の発生等の異常成膜が認められず、NガスによるBTBASガスとOガスの分離が行われていることが理解される。これにより本発明の成膜装置を用いることにより、ALD法による良好な成膜処理を行うことができるものと推察される。
【符号の説明】
【0108】
1 真空容器
W ウエハ
11 天板
12 容器本体
15 搬送口
2 回転テーブル
24 凹部
31 第1の反応ガスノズル
32 第2の反応ガスノズル
34 ノズルカバー
P1 第1の処理領域
P2 第2の処理領域
D 分離領域
C 中心部領域
4 凸状部
41、42 分離ガスノズル
44 第1の天井面
45 第2の天井面
5 突出部
51 分離ガス供給管
6 排気領域
61、62 排気口
7 ヒータユニット
72〜75 パージガス供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内にて、複数の基板を載置した回転テーブルを回転して、前記基板が複数の異なる処理領域に供給された反応ガスと順次接触して、前記基板の表面に薄膜を形成する成膜装置において、
前記回転中の基板の近傍に対向して、前記処理領域の中に設けられ、前記基板の方向に向けて反応ガスを供給する反応ガス供給手段と、
前記異なる反応ガスが反応することを防止するための分離ガスを、前記複数の処理領域の間に設けられた分離領域内に供給する分離ガス供給手段と、
前記複数の処理領域の夫々の外側において、前記回転テーブルの外周方向に対応した範囲の中に排気口を設け、前記処理領域に供給した反応ガスと前記分離領域に供給した分離ガスとを前記処理領域を経由して前記排気口に導き、前記排気口に連通して排気する排気手段と、を備え、
前記複数の処理領域は、基板表面に第1の反応ガスが吸着する処理を行う第1の処理領域と、
この第1の処理領域よりも面積が大きく、基板表面に吸着した前記第1の反応ガスと第2の反応ガスとを反応させて前記基板表面に成膜する処理を行う第2の処理領域と、を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記第2の処理領域における、前記回転テーブルの回転方向に沿った前半部分に前記第2の反応ガスを供給する反応ガス供給手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第2の処理領域における、前記回転テーブルの回転方向に沿った後半部分に、前記第2の処理領域内で成膜した基板の表面改質をプラズマにより行うプラズマ発生手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記プラズマ発生手段は前記回転テーブルに載置した基板近傍に配置され、前記回転テーブルに載置した基板が前記第2の処理領域を通過する際に、前記プラズマ発生手段から発生したプラズマを直接基板表面に曝すことを特徴とする請求項3記載の成膜装置。
【請求項5】
前記回転テーブルの回転中心から真空容器内へ分離ガスを供給する回転中心供給用の分離ガス供給手段を設け、
前記回転中心から供給する分離ガスが、前記複数の処理領域を経由して前記排気口から排気されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項6】
前記分離領域から前記複数の処理領域に流入した分離ガスが、夫々前記処理領域の天井から離間して設けられた前記反応ガス供給手段と前記天井との間を経由して前記排気口に排気されることを特徴とする請求項1乃至2記載の成膜装置。
【請求項7】
前記回転テーブルと前記真空容器の側壁との隙間が、前記分離領域の回転テーブルの外周方向において、分離領域の外側では処理領域の外側よりも狭く設定され、分離領域から供給された分離ガスの大部分が当該分離領域を介して処理領域に向けて通流していくことを特徴とする請求項1乃至2記載の成膜装置。
【請求項8】
前記真空容器内への基板の搬入及び前記真空容器からの基板の搬出を行う基板の搬送経路のゲートバルブを、前記面積の大きな第2の処理領域に面して設けたことを特徴とする請求項1乃至2記載の成膜装置。
【請求項9】
前記反応ガス供給手段が、前記回転テーブルの回転中心に向いて配置され、複数のガス噴出孔が直線状に配列されたインジェクター、又は前記回転テーブルの回転中心を要とする扇形の前記分離領域同士の間に配置され、前記回転テーブルに載置された基板が通過する際に前記基板を覆う複数のガス噴出孔を備えたシャワーヘッドであることを特徴とする請求項1乃至2記載の成膜装置。
【請求項10】
前記回転テーブルの回転テーブル外周方向において、前記回転テーブルの端部と前記真空容器の側壁との隙間から排出されたガスは、前記回転テーブルの端部を取り囲むバッフル板に設けられた開口またはスリットを経由して前記排気手段で排気されると共に、前記開口またはスリットは十分小さく開放することで、前記分離領域に供給された分離ガスは実質的に前記処理領域の方向を経由して前記排気口の方向に流れることを特徴とした請求項1乃至2記載の成膜装置。
【請求項11】
前記第1の反応ガスは金属を含有した反応前駆体であり、前記第2の反応ガスは前記第1の反応ガスと反応して金属酸化物の成膜を行う酸化ガス又は金属窒化物を成膜する窒素含有ガスであることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項12】
前記第1の反応ガスが供給される処理領域よりも面積が広い前記第2の反応ガスを供給する処理領域において、前記基板が前記第2の反応ガスの中を長い時間をかけて表面反応を行いながら通過していくことを特徴とする請求項1記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−134996(P2011−134996A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295226(P2009−295226)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】