説明

操舵制御車両

【課題】操舵制御手段が制御不能となった場合に車両挙動をより安定化させる。
【解決手段】自動車Vは、左右後輪3rに設けられた後輪トー角可変機構6と、左右前輪3fと左右後輪3rに設けられた減衰力可変ダンパ4およびスタビライザ8とを有する。ECU20は、故障検出部34によって左右両方の後輪トー角可変機構6に故障が検出された場合(ステップS5:Yes)、前輪3のダンパ4rの目標減衰力を大きく補正するとともに(ステップS6)、フロントスタビライザ8fの目標ロール剛性を高く補正する(ステップS7)。また、ECU20は、故障検出部34によって左右どちらかの後輪トー角可変機構6に故障が検出された場合(ステップS5:No)、故障した側の後輪3rの目標減衰力を小さく設定するとともに(ステップS11,S13)、フロントスタビライザ8fの目標ロール剛性を高く補正する(ステップS7)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵制御手段を有する操舵制御車両に係り、いずれか1つの操舵制御手段が故障した場合に他の制御手段を用いて車両挙動を安定化させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の回頭性や操縦安定性を向上させるために、後輪のトー角を可変制御する後輪トー角可変装置を備えた4輪操舵車両が開発されている。後輪トー角可変装置としては、後輪を支持する懸架装置におけるラテラルリンクあるいはトレーリングリンクの車体との連結部に直線変位する電動アクチュエータを左右後輪にそれぞれ設け、これらを伸縮駆動することによって左右両輪のトー角を個別に可変制御できるように構成したものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような後輪トー角を可変制御する後輪トー角可変装置を備えた車両では、左右一方の後輪トー角可変装置の故障により、電動アクチュエータが制御指示値と異なる作動をした場合(セルフステア)や、電動アクチュエータが作動しなくなった場合(固着)、想定外の後輪横力やヨーモーメントが発生して車両挙動の安定性向上が望めないことがある。このような問題に対処すべく、左右の後輪のトー角を独立して制御可能な後輪トー角可変装置は、故障していない車輪のトー角を制御することにより車両挙動を安定化させるなどのフェールセーフ機能を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−30438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、後輪トー角可変装置が上記したようなフェールセーフ機能を備えていても、ECU(Electronic Control Unit)などの制御装置の故障や電動アクチュエータへの電源ラインの断線などにより、両後輪ともにトー角制御が不能に陥った場合、後輪トー角の制御による車両挙動の安定性向上は望めない。また、例え、左右一方の後輪トー角可変装置が故障した場合であっても、旋回走行時には外輪のコーナリングフォースが大きくなって車両の挙動に影響を与えるなど、車両の走行状態によってはフェールセーフ機能が車両挙動の安定化に十分寄与し得ないこともある。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、操舵制御手段が制御不能となった場合に車両挙動をより安定化させることのできる操舵制御車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第1の発明は、左右前輪(3f)と左右後輪(3r)との少なくとも一方に設けられた操舵制御手段(後輪トー角可変機構6)と、左右前輪(3f)と左右後輪(3r)との少なくとも一方に設けられたサスペンション剛性制御手段(アクティブスタビライザ8)と、操舵制御手段(6)の故障を検出する故障検出手段(34)とを有する操舵制御車両(V)であって、故障検出手段(34)によって左右両方の操舵制御手段(6)に故障が検出された場合、サスペンション剛性制御手段(8)は、操舵制御手段(6)が故障した車輪(3)のサスペンション剛性を他の車輪(3)のサスペンション剛性よりも低くすることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、操舵制御手段が故障した車輪のサスペンション剛性が他の車輪のサスペンション剛性よりも低くされることにより、左右両方の操舵制御手段に故障が検出された場合であっても、当該車輪の接地荷重が小さくなって車両挙動に与える影響が小さくなる。したがって、左右の操舵制御手段の故障による車両挙動への影響が抑制される。
【0009】
また、第2の発明は、左右前輪(3f)と左右後輪(3r)との少なくとも一方に設けられた操舵制御手段(後輪トー角可変機構6)と、左右前輪(3f)と左右後輪(3r)との少なくとも一方に設けられたサスペンションストローク制御手段(減衰力可変ダンパ4、アクティブスタビライザ8)と、操舵制御手段(6)の故障を検出する故障検出手段(34)とを有する操舵制御車両(V)であって、故障検出手段(34)によって少なくとも1つの操舵制御手段(6)の故障が検出された場合、サスペンションストローク制御手段(4、8)は、操舵制御手段が(6)故障した車輪(3)の接地荷重が小さくなるようにサスペンションストロークを変化させることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、操舵制御手段が故障した車輪の接地荷重が小さくなるようにサスペンションストロークが変化することにより、すなわち操舵制御手段が故障した車輪の車両挙動への影響を小さくすることにより、少なくとも1つの操舵制御手段の故障が検出された場合において走行状態に応じて車両挙動への影響を抑制でき、挙動の安定化を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、操舵制御手段が故障して車両挙動の向上が望めない場合、サスペンション剛性制御手段またはサスペンションストローク制御手段により、操舵制御手段が故障した車輪の車両挙動への影響を小さくして車両挙動の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る自動車の概略構成を示す平面図である。
【図2】実施形態に係る自動車の概略構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係る各種制御処理のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施形態に係る車両挙動制御装置について詳細に説明する。先ず、図1を参照して、車両挙動制御装を搭載した4輪操舵自動車(以下、単に自動車Vと記す)の概略構成について説明する。説明にあたり、4本の車輪やそれらに対して配置された部材、すなわち、タイヤやサスペンション等については、それぞれ数字の符号に前後左右を示す添字を付して、例えば、左前輪3fl、右前輪3fr、左後輪3rl、右後輪3rrと記すとともに、総称する場合には車輪3、後輪3r等と記す。
【0014】
図1に示すように、自動車Vの車体1にはタイヤ2が装着された車輪3が前後左右に設置されており、これら各車輪3がナックルやサスペンションアーム、スプリング、減衰力可変ダンパ(以下、単にダンパ4と記す)等からなるサスペンション5によって車体1に懸架されている。
【0015】
自動車Vは、運転者によるステアリングホイール19の操舵により、ラックアンドピニオン機構を介して左右の前輪3fl,3frが直接転舵される。また、自動車Vは、車体1と後輪側ナックルとの間にそれぞれ介装された左右の操舵アクチュエータ7l,7rを伸縮駆動することにより、後輪トー角を個別に変化させる後輪トー角可変機構6l,6rを備えている。さらに、自動車Vのフロントサスペンション5fおよびリヤサスペンション5rには、スタビライザアクチュエータ9f,9rを駆動することにより、それぞれフロントサスペンション剛性およびリヤサスペンション剛性を変化させるアクティブスタビライザ(以下、単にスタビライザ8f,8rと記す)が設けられている。
【0016】
そして、自動車Vは、左右の操舵アクチュエータ7l,7rや、各ダンパ4fl〜4rr、フロントおよびリヤスタビライザアクチュエータ9f,9r等を駆動制御するECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)20を備えている。
【0017】
ダンパ4は、MRF(Magneto-Rheological Fluid:磁気粘性流体)を作動液とするテレスコピック型であり、ECU20がピストンに組み込まれた磁気流体バルブへの供給電流を制御することにより、その減衰力が無段階かつ瞬時に変化する。また、操舵アクチュエータ7は、DCモータ、減速機および送りねじ機構からなる直動式であり、ECU20がDCモータへの供給電流を制御することにより、左右後輪3rl,3rrを独立して転舵する。そして、スタビライザアクチュエータ9は、車幅方向に延在するスタビライザ8の中間部に左右のスタビライザ半体を連結するように設けられており、DCモータおよび減速機を備え、ECU20がDCモータへの供給電流を制御することにより、ロール方向に応じて左右のスタビライザ半体間に捩じれ角を与えてサスペンション剛性を無段階に変化させる。
【0018】
自動車Vには、ステアリングホイール19の操舵角を検出する操舵角センサ10、車速を検出する車速センサ11、横加速度を検出する横Gセンサ12、前後加速度を検出する前後Gセンサ13、ヨーレイトを検出するヨーレイトセンサ14等が車体1の適所に設置されるとともに、ホイールハウス付近の車体の上下加速度を検出する上下Gセンサ15と、ダンパ4のストローク速度を検出するストロークセンサ16(図示せず)とが各車輪3ごとに設置されている。また、操舵アクチュエータ7には、その作動量(すなわち、左右後輪3rl,3rrの実トー角)を検出するポジションセンサ17l,17r(図示せず)がそれぞれ設置され、スタビライザアクチュエータ9には、左右のスタビライザ半体間の捩じれ角度を検出する捩じれ角センサ18f,18r(図示せず)がそれぞれ設置されている。
【0019】
図2に示すように、ECU20は、CPUやROM、RAM、周辺回路、入出力インタフェース、各種ドライバ等から構成されており、通信回線(本実施形態では、CAN(Controller Area Network))を介して各センサ10〜18、ダンパ4、操舵アクチュエータ7およびスタビライザアクチュエータ9等と接続されている。ECU20には、各センサ10〜18の検出信号が入力する入力インタフェース21、操舵アクチュエータ7の駆動制御を行う後輪トー角制御部30、後輪トー角可変機構6の故障を検出する故障検出部34、ダンパ4の減衰力制御を行う減衰力制御部40、スタビライザアクチュエータ9の駆動制御を行うロール剛性制御部50、後輪トー角制御部30や減衰力制御部40、ロール剛性制御部50からの駆動電流の出力に供される出力インタフェース22とが内装されている。
【0020】
後輪トー角制御部30は、操舵角センサ10や車速センサ11の検出信号に基づき規範ヨーレイトを設定し、規範ヨーレイトを実現するための目標後輪トー角を設定する目標後輪トー角設定部31、故障検出部34から故障信号を受け取った場合に目標後輪トー角設定部31により設定された目標後輪トー角を補正する目標後輪トー角補正部32、目標後輪トー角とポジションセンサ17から入力した実後輪トー角との差に基づき操舵アクチュエータ7の目標電流を設定し、目標電流に基づく操舵アクチュエータ7の駆動電流を出力する駆動電流出力部33を有している。
【0021】
目標後輪トー角設定部31は、具体的には、自動車Vの操縦安定性を高めるべく、各種センサによって把握される車両の運動状態に基づき、加速時には目標後輪トー角をトーアウトに、減速時には目標後輪トー角をトーインに設定し、所定の車速よりも高速での旋回走行時には目標後輪トー角を前輪3fと同相に、所定の車速よりも低速での旋回走行時には目標後輪トー角を前輪3fと逆相に設定する。
【0022】
故障検出部34は、駆動電流出力部33から出力された駆動電流とポジションセンサ17から入力した実後輪トー角とを監視し、操舵アクチュエータ7の故障またはポジションセンサ17の故障を検出し、左右どちらかまたは左右両方の操舵アクチュエータ7が制御不能となって固着状態となった場合、左右の後輪トー角可変機構6の故障状態に応じて故障信号を出力する。
【0023】
減衰力制御部40は、各センサ10〜15の検出信号に基づき各ダンパ4fl〜4rrの目標減衰力を設定する目標減衰力設定部41、故障検出部34から故障信号を受け取った場合に目標減衰力設定部41により設定された目標減衰力を補正する目標減衰力補正部42、目標減衰力とストローク速度とに基づきダンパ4の目標電流を設定し、目標電流に基づくダンパ4の駆動電流を出力する駆動電流出力部43を有している。
【0024】
ロール剛性制御部50は、横Gセンサ12の検出信号に基づき車体1に作用するロールモーメントを推定し、このロールモーメントが基準値以上である場合、基準値を超えるロールモーメントを打ち消すアンチロールモーメントを発生させるための目標ロール剛性(捩じれ角)を設定する目標ロール剛性設定部51、故障検出部34から故障信号を受け取った場合に目標ロール剛性設定部51により設定された目標ロール剛性を補正する目標ロール剛性補正部52、目標ロール剛性と捩じれ角センサ18から入力した実捩じれ角との差に基づきスタビライザアクチュエータ9の目標電流を設定し、目標電流に基づきスタビライザアクチュエータ9の駆動電流を出力する駆動電流出力部53を有している。
【0025】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る操舵制御車両の各種制御の処理手順について説明する。自動車Vが運転を開始すると、ECU20は、所定の制御インターバル(例えば、2ms)をもって、以下に示す制御を実行する。
【0026】
ECU20は、まず、目標後輪トー角設定部31において、左右の後輪3rの目標後輪トー角を設定する(ステップS1)。目標後輪トー角の設定にあたり、目標後輪トー角設定部31は、操舵角センサ10や車速センサ11の検出信号に基づき目標後輪トー角マップから左右後輪3rl,3rrの目標後輪トー角を検索し、この値を目標後輪トー角として設定する。
【0027】
次に、ECU20は、目標減衰力設定部41において、前後左右の目標減衰力を設定する(ステップS2)。目標減衰力の設定にあたり、目標減衰力設定部41は、各センサ10〜15の検出信号に基づき自動車Vの運動状態を判定した後、その判定結果からスカイフック制御値とロール制御値とピッチ制御値とを各車輪3についてそれぞれ算出する。そして、目標減衰力設定部41は、これら3つの制御値から、ダンパ4のストローク速度の方向と符号が等しく、絶対値が最も大きいものを目標減衰力として選択する。
【0028】
また、ECU20は、目標ロール剛性設定部51において、フロントおよびリヤの目標ロール剛性を設定する(ステップS3)。目標ロール剛性の設定にあたり、目標ロール剛性設定部51は、横Gセンサ12の検出信号に基づき車体1に作用するロールモーメントを推定し、このロールモーメントが基準値以上である場合に目標ロール剛性マップからフロントおよびリヤサスペンション5の目標ロール剛性(捩じれ角)を検索し、この値を目標ロール剛性として設定する。
【0029】
その後、ECU20は、目標後輪トー角補正部32、目標減衰力補正部42および目標ロール剛性補正部52において、故障検出部34から操舵アクチュエータ7の故障またはポジションセンサ17の故障信号が出力されたか否かを判定する(ステップS4)。故障信号が出力されていない場合(No)、各補正部32,42,52は、ステップS1,SS2,S3で設定した目標後輪トー角、目標減衰力および目標ロール剛性をそのまま補正せずに出力し(ステップS8)、本処理を終了する。なお、ステップS8で出力された各目標制御値は、各駆動電流出力部33,43,53においてそれぞれ目標電流に変換され、操舵アクチュエータ7、ダンパ4およびスタビライザアクチュエータ9へ駆動電流として出力される。
【0030】
一方、ステップS4で故障信号が出力されている場合(Yes)、ECU20は、各補正部32,42,52において、左右ともに操舵アクチュエータ7が固着しているか否かを判定し(ステップS5)、左右どちらか一方の操舵アクチュエータ7のみが固着している場合(No)、左側操舵アクチュエータ7が固着しているか否かを判定する(ステップS9)。
【0031】
操舵アクチュエータ7が左右ともに固着している場合(ステップS5:Yes)、ECU20は、目標減衰力補正部42において、前輪3fに対して設けられたダンパ4fl,4frの目標減衰力を大きく補正し(ステップS6)、さらに、目標ロール剛性補正部52において、フロントスタビライザ8fの目標ロール剛性を高く補正し(ステップS7)、補正された目標減衰力および目標ロール剛性を出力して(ステップS8)本処理を終了する。
【0032】
一方、操舵アクチュエータ7が左側のみ固着している場合(ステップS9:Yes)、目標後輪トー角補正部32において、右側後輪トー角を左側後輪トー角と同一値(右側がトーインであれば、左側もトーイン)に補正し(ステップS10)、目標減衰力補正部42において、左後のダンパ4rlの目標減衰力を小さく補正する(ステップS11)。そして、ECU20は、目標ロール剛性補正部52において、フロントスタビライザ8fの目標ロール剛性を高く補正し(ステップS7)、補正された目標後輪トー角、目標減衰力および目標ロール剛性を出力して(ステップS8)本処理を終了する。
【0033】
他方、操舵アクチュエータ7が右側のみ固着している場合(ステップS9:No)、目標後輪トー角補正部32において、左側後輪トー角を右側後輪トー角と同一値に補正し(ステップS12)、目標減衰力補正部42において、右後のダンパ4rlの目標減衰力を小さく補正する(ステップS13)。そして、ECU20は、目標ロール剛性補正部52において、フロントスタビライザ8fの目標ロール剛性を高く補正し(ステップS7)、補正された目標後輪トー角、目標減衰力および目標ロール剛性を出力して(ステップS8)本処理を終了する。
【0034】
このように、操舵アクチュエータ7が左右ともに固着した場合に、ステップS6で前輪3fのダンパ4fl、4frの目標減衰力を大きく補正するとともに、ステップS7でフロントスタビライザ8fの目標ロール剛性を高く補正することにより、旋回走行時など車体にロールモーメントが作用した場合であっても、操舵が不能になった後輪3rの接地荷重の増大が防止され、車両挙動への影響が抑制される。
【0035】
また、操舵アクチュエータ7が左右どちらか一方のみが固着した場合、ステップS10またはステップS12で固着していない側の操舵アクチュエータ7の目標後輪トー角を固着した操舵アクチュエータ7のトー角と同一値に補正することにより、自動車Vの直進安定性が確保される。また、ステップS11またはステップS13で操舵アクチュエータ7が固着した側のダンパ4の目標減衰力を小さく設定し、ステップS7でフロントスタビライザ8fの目標ロール剛性を高く補正することにより、旋回走行時など車体1にロールモーメントが作用した場合であっても、操舵が不能になった後輪3rの接地荷重の増大が防止され、車両挙動への影響が抑制される。
【0036】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の態様は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、後輪操舵制御について言及したが、ステアバイワイヤ装置や可変ギヤレシオステアリング装置等を備えていれば前輪操舵制御にも適用可能である。また、上記実施形態は減衰力可変ダンパを搭載した車両に本発明を適用したものであるが、サスペンションストローク制御手段としてアクティブ制御式のエアサスペンションやハイドロニューマチックサスペンション等を搭載した車両にも適用可能である。これらサスペンション装置を用いた場合、操舵アクチュエータ7が固着した後輪3rの接地荷重が小さくなるように、操舵制御不能となった車輪3のサスペンション長を短く(車高を低く)、他の車輪3のサスペンション長を長く(車高を高く)すればよい。
【0037】
また、上記実施形態では、1つのECU20が全ての制御をおこなっているが、各制御手段に対してECUがそれぞれ設けられるような形態であってもよい。このような場合、操舵アクチュエータ7の故障がECUの故障に起因するものであってもよく、他のECUがダンパ4の制御およびスタビライザ8の制御のみを行えばよい。さらに、上記実施形態では、左右両方の後輪3rに故障が検出された場合およびどちらか一方の後輪3rに故障が検出された場合であっても、フロントスタビライザ8fの目標ロール剛性を高く補正しているが、リヤスタビライザ8rのロール剛性が相対的に小さくなりさえすればよいため、フロントスタビライザ8fの目標ロール剛性を高くするとともにリヤスタビライザ8rの目標ロール剛性を低くしたり、リヤスタビライザ8rの目標ロール剛性のみを低くしたりしてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、自動車や制御装置の具体的構成、制御の具体的手順等について適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 車体
3 車輪
4 減衰力可変ダンパ(サスペンションストローク制御手段)
5 サスペンション
6 後輪トー角可変機構(操舵制御手段)
7 操舵アクチュエータ
8 アクティブスタビライザ(サスペンション剛性制御手段、サスペンションストローク制御手段)
9 スタビライザアクチュエータ
20 ECU
30 後輪トー角制御部
32 目標後輪補正部
34 故障検出部
40 減衰力制御部
42 目標減衰力補正部
50 ロール剛性制御部
52 目標ロール剛性補正部
V 自動車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右前輪と左右後輪との少なくとも一方に設けられた操舵制御手段と、左右前輪と左右後輪との少なくとも一方に設けられたサスペンション剛性制御手段と、前記操舵制御手段の故障を検出する故障検出手段とを有する操舵制御車両であって、
前記故障検出手段によって左右両方の操舵制御手段に故障が検出された場合、前記サスペンション剛性制御手段は、操舵制御手段が故障した車輪のサスペンション剛性を他の車輪のサスペンション剛性よりも低くすることを特徴とする操舵制御車両。
【請求項2】
左右前輪と左右後輪との少なくとも一方に設けられた操舵制御手段と、左右前輪と左右後輪との少なくとも一方に設けられたサスペンションストローク制御手段と、前記操舵制御手段の故障を検出する故障検出手段とを有する操舵制御車両であって、
前記故障検出手段によって少なくとも1つの操舵制御手段の故障が検出された場合、前記サスペンションストローク制御手段は、操舵制御手段が故障した車輪の接地荷重が小さくなるようにサスペンションストロークを変化させることを特徴とする操舵制御車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−254268(P2010−254268A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138906(P2009−138906)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】