説明

昇圧回路、および降圧回路

【課題】入力電圧を昇圧して出力する半導体集積回路における、トランジスタの耐圧が、入力電圧以下に抑えられる昇圧回路を提供する。
【解決手段】コンデンサCpは、一方の端子がクロック信号を出力するクロック端子に接続され、他方の端子が整流回路4に接続されている。コンデンサCpの他方の端子の最低電圧を第1の電圧にクランプするクランプ回路3を備えている。このクランプ回路3は、第1のN型トランジスタN1、および第2のN型トランジスタN2を有している。この第1のN型トランジスタN1は、ドレインをコンデンサの他方の端子に接続し、ソースを前記第2のN型トランジスタN2のドレインに接続し、さらに、ゲートを第1の電圧よりも高い第2の電圧Vaに接続している。また、第2のN型トランジスタN2は、ソースを第1の電圧Vpに接続し、ゲートを前記クロック信号の反転信号を出力する反転信号端子に接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体集積回路等で用いられる、入力電圧を昇圧して出力する昇圧回路、および入力電圧を降圧して出力する降圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路等で用いられていた、入力電圧を昇圧して出力する昇圧回路として、図1に示す回路があった。この昇圧回路は、0〜3Vでスイングさせたクロック信号を入力端子aに入力し、これを4Vに昇圧して出力端子fに出力する回路である。入力端子aには、2つのインバータINV51、52を直列に接続したクロック回路が接続されている。クロック回路の出力であるインバータINV52の出力端子は、コンデンサCpの一方の端子に接続している。このコンデンサCpの他方の端子(図中に示すd点)には、P型トランジスタP51、およびN型トランジスタN51のドレインが接続されている。N型トランジスタN51は、コンデンサCpの他方の端子の最低電圧をVp(=1V)にクランプするクランプ回路を構成している。N型トランジスタN51のソースには、Vpが印加されている。また、N型トランジスタN51のゲートは、インバータINV51の出力端子(図中に示すb点)に接続している。
【0003】
P型トランジスタP51は、ドレインをコンデンサCpの他方の端子に接続し、ソースを出力端子fに接続している。このP型トランジスタP51をオン/オフすることによって、P型トランジスタP51のソース−接地間に接続されたコンデンサCLに電荷をチャージするとともに、このコンデンサCLにチャージした電荷がコンデンサCp側に引き抜かれる逆流を阻止する。このコンデンサCLは、図示していない負荷回路に対して電源供給を行う。
【0004】
N型トランジスタN52、およびP型トランジスタP52が、P型トランジスタP51をオン/オフするオン/オフ回路を構成する。P型トランジスタP52は、P型トランジスタP51のソース−ゲート間に接続している。P型トランジスタP51のソースは、P型トランジスタP52のソースに接続している。また、P型トランジスタP51のゲートは、P型トランジスタP52のドレインに接続している。また、P型トランジスタP52のゲートは、クロック回路の出力であるインバータINV52の出力端子(図中に示すc点)に接続している。また、N型トランジスタN52は、ドレインをP型トランジスタP51のゲート、およびP型トランジスタP52のソース(図中に示すe点)に接続している。また、N型トランジスタN52は、ソースを接地しており、ゲートをクロック回路の出力であるインバータINV52の出力端子に接続している。
【0005】
この図1に示す昇圧回路は、図2(A)に示す、0〜3Vスイングさせたクロック信号を入力端子aに入力する。インバータINV51の出力であるb点は、図2(B)に示すように、入力されたクロックを反転させたクロック信号になる。インバータINV52の出力であるc点は、図2(A)に示すように、入力されたクロック信号と同じである。
【0006】
P型トランジスタP51は、入力端子aに入力されているクロック信号に同期してオン/オフする。また、N型トランジスタN51が、コンデンサCpの他方の端子の最低電圧を1Vにクランプしているので、コンデンサCpの他方の端子であるd点は、P型トランジスタP51のソース−接地間(出力端子f−接地間)に接続されたコンデンサCLがチャージされるにしたがって、図2(C)に示すように、スイング幅が1〜4Vに近づく。
【0007】
また、P型トランジスタP52が、P型トランジスタP51のソース電圧の上昇に応じて、このN型トランジスタN52のドレインの電圧(図中に示すe点の電圧)を、図2(E)に示すように上昇させるので、N型トランジスタN52のオン/オフに同期して、P型トランジスタP51を確実にオン/オフできる。したがって、出力端子fの電圧は、図2(D)に示すように、コンデンサCLがチャージされるにしたがって上昇し、最終的に4Vに達する。
【0008】
なお、ここでは、N型トランジスタN51のソースに1Vを印加し、コンデンサCpの他方の端子の最低電圧を1Vにクランプした場合を示したが、コンデンサCpの他方の端子の最低電圧を変化させることによって、出力端子fの電圧を変化させることができる。例えば、コンデンサCpの他方の端子の最低電圧を2Vにクランプすれば、出力端子fの電圧を5Vにできる。
【0009】
この昇圧回路では、図2(E)に示したように、e点の電圧が0〜4Vで変化する。また、P型トランジスタP52、およびN型トランジスタN52のゲートは、0〜3Vで変化するので、P型トランジスタP52、およびN型トランジスタN52は、入力電圧である3Vを超える耐圧のもの(この例では、耐圧が4Vを超えるもの)を使用しなければならない。また、N型トランジスタN51も、ゲートドレイン間の電位差が最大で4Vに達するので、入力電圧である3Vを超える耐圧のものを使用しなければならない。そして、半導体集積回路では、トランジスタ等の耐圧を上げる場合、ゲート酸化膜を厚くしたり、ゲート酸化膜を他の高耐圧性の絶縁膜に置き換えたり、あるいは、トランジスタサイズを大きくする等の対策が必用になる。その結果、半導体集積回路は、回路形成面積の増大や、製造工程の煩雑化等といった不都合をともなう。
【0010】
このような不都合に対して、トランジスタのゲートソース間電圧について、耐圧向上を要求することなく、高電圧においても安定した動作を可能とするブートストラップ型インバータが特許文献1で提案されている。この特許文献1は、高電圧となる節点の高電圧となる前の初期電圧を下げることにより、電源電圧より上昇する節点の最高電圧を低めにする構成を提案している。また、所定の電源電圧を使用し、クロック信号に応答して電源電圧とは異なる内部電圧を供給するチャージポンプ回路を構成する半導体集積回路において、内部電圧を供給するトランジスタに接続された、クロック信号の振幅をブーストさせるダブルブースト部から出力される繰り返しパルスの振幅を電源電圧の2倍未満にする構成が特許文献2で提案されている。さらに、電源電圧を第1、および第2のレベル変換部により2段階でレベルシフトする回路において、各段の高電源電圧側と低電源電圧側とを変化させ、その間の電位差を所定の範囲に抑える構成が特許文献3で提案されている。
【特許文献1】特開昭61−7724号公報
【特許文献2】特開2002−191169号公報
【特許文献3】特開2007−235815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明の目的は、入力電圧を昇圧して出力する半導体集積回路における、トランジスタの耐圧が、入力電圧以下に抑えられる昇圧回路を提供することにある。
【0012】
また、この発明は、入力電圧を降圧して出力する半導体集積回路における、トランジスタの耐圧を、入力電圧以下に抑えられる降圧回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の昇圧回路は、上記目的を達するために、以下のように構成している。
【0014】
コンデンサは、一方の端子がクロック信号を出力するクロック端子に接続され、他方の端子が整流回路に接続されている。また、このコンデンサの他方の端子の最低電圧を第1の電圧にクランプするクランプ回路を備えている。
【0015】
そして、このクランプ回路は、第1のN型トランジスタ、および第2のN型トランジスタを有している。この第1のN型トランジスタは、ドレインをコンデンサの他方の端子に接続し、ソースを前記第2のN型トランジスタのドレインに接続し、さらに、ゲートを第1の電圧よりも高い第2の電圧に接続している。また、第2のN型トランジスタは、ソースを第1の電圧に接続し、ゲートを前記クロック信号の反転信号を出力する反転信号端子に接続している。
【0016】
したがって、第2の電圧を適正に設定することにより、第1、および第2のN型トランジスタのソースドレイン間、ゲートドレイン間、およびゲートソース間の電圧が、入力電圧を超えることがない。例えば、入力電圧を3V、出力電圧を4Vにする昇圧回路であれば、第1の電圧を1V、第2の電圧を3Vに設定すればよい。
【0017】
なお、第1の電圧は、入力電圧と出力電圧とに応じて設定すればよい。
【0018】
また、整流回路は、例えば、ドレインを前記コンデンサの他方の端子に接続し、ソースを負荷が接続される負荷端子に接続した第1のP型トランジスタと、この第1のP型トランジスタを、クロック信号に同期させてオン/オフするオン/オフ回路と、で構成すればよい。
【0019】
さらに、このオン/オフ回路は、ドレインを前記第1のP型トランジスタのゲートに接続し、ソースを前記第1のP型トランジスタのソースに接続し、さらにゲートを前記クロック信号を出力するクロック信号端子に接続した第2のP型トランジスタと、ドレインを前記第1のP型トランジスタのゲートに接続し、ゲートを前記第2の電圧に接続した第3のN型トランジスタと、ドレインを前記第3のN型トランジスタのソースに接続し、ソースを前記第1の電圧に接続し、さらにゲートを前記クロック信号を出力するクロック信号端子に接続した第4のN型トランジスタと、で構成すればよい。
【0020】
このように構成したオン/オフ回路においても、使用する全てのトランジスタのソースドレイン間、ゲートドレイン間、およびゲートソース間の電圧を、入力電圧以下に抑えられる。
【0021】
また、この発明の降圧回路は、以下のように構成している。
【0022】
コンデンサは、一方の端子がクロック信号を出力するクロック端子に接続され、他方の端子が整流回路に接続されている。また、このコンデンサの他方の端子の最高電圧を第1の電圧にクランプするクランプ回路を備えている。
【0023】
そして、このクランプ回路は、第1のP型トランジスタ、および第2のP型トランジスタを有している。この第1のP型トランジスタは、ドレインをコンデンサの他方の端子に接続し、ソースを前記第2のP型トランジスタのドレインに接続し、さらに、ゲートを第1の電圧よりも低い第2の電圧に接続している。また、第2のP型トランジスタは、ソースを第1の電圧に接続し、ゲートを前記クロック信号の反転信号を出力する反転信号端子に接続している。
【0024】
したがって、第2の電圧を適正に設定することにより、第1、および第2のP型トランジスタのソースドレイン間、ゲートドレイン間、およびゲートソース間の電圧が、入力電圧を超えることがない。例えば、入力電圧を3V、出力電圧を−1Vにする降圧回路であれば、第1の電圧を2V、第2の電圧を0Vに設定すればよい。
【0025】
なお、第1の電圧は、入力電圧と出力電圧とに応じて設定すればよい。
【0026】
また、整流回路は、例えば、ドレインを前記コンデンサの他方の端子に接続し、ソースを負荷が接続される負荷端子に接続した第1のN型トランジスタと、この第1のN型トランジスタを、クロック信号に同期させてオン/オフするオン/オフ回路と、で構成すればよい。
【0027】
さらに、このオン/オフ回路は、ドレインを前記第1のN型トランジスタのゲートに接続し、ソースを前記第1のN型トランジスタのソースに接続し、さらにゲートを前記クロック信号を出力するクロック信号端子に接続した第2のN型トランジスタと、ドレインを前記第1のN型トランジスタのゲートに接続し、ゲートを前記第2の電圧に接続した第3のP型トランジスタと、ドレインを前記第3のP型トランジスタのソースに接続し、ソースを前記第1の電圧に接続し、さらにゲートを前記クロック信号を出力するクロック信号端子に接続した第4のP型トランジスタと、で構成すればよい。
【0028】
このように構成したオン/オフ回路においても、使用する全てのトランジスタのソースドレイン間、ゲートドレイン間、およびゲートソース間の電圧を、入力電圧以下に抑えられる。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、半導体集積回路における、トランジスタの耐圧が、入力電圧以下に抑えられるので、形成面積の増大や、製造工程の煩雑化等といった不都合が防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
まず、この発明の実施形態である昇圧回路について説明する。
【0031】
図3は、この発明の実施形態である昇圧回路を示す図である。この昇圧回路は、入力電圧を昇圧して出力する半導体集積回路である。この昇圧回路は、クロック回路1と、チャージ回路2と、クランプ回路3と、整流回路4と、負荷回路5と、を備えている。この昇圧回路は、0〜3Vでスイングさせたクロック信号を入力端子aに入力し、これを4Vに昇圧して出力端子fに出力する回路である。
【0032】
クロック回路1は、直列に接続した2つのインバータINV1、INV2で構成している。入力端子aは、クロック回路1のインバータINV1の入力端子に接続している。このクロック回路1は、出力として、入力端子aに入力されるクロック信号(インバータINV2の出力)、およびこれを反転したクロック信号(インバータINV1の出力)が得られる回路であればよい。
【0033】
チャージ回路2は、クロック回路1から出力される電荷をチャージするコンデンサCpで構成している。コンデンサCpの一方の端子cは、クロック回路1のインバータINV2の出力端子に接続している。すなわち、コンデンサCpの一方の端子cには、入力端子aに入力されるクロック信号と同じクロック信号が与えられる。コンデンサCpの他方の端子d1は、クランプ回路3、および整流回路4に接続している。
【0034】
クランプ回路3は、コンデンサCpの他方の端子d1の最低電圧(以下、クランプ電圧と言う。)をVp(ここでは、1V)にクランプする。このクランプ回路3は、第1のN型トランジスタN1、および第2のN型トランジスタN2で構成している。第1のN型トランジスタN1は、ドレインをコンデンサCpの他方の端子d1に接続している。また、第1のN型トランジスタN1のソースは、第2のN型トランジスタN2のドレインに接続している。第2のN型トランジスタN2のソースは、クランプ電圧Vpに接続している。このクランプ電圧が、この発明で言う第1の電圧に相当する。また、第1のN型トランジスタN1のゲートには、クランプ電圧Vpよりも高い電圧Va(ここでは、3V)に接続している。このVaが、この発明で言う第2の電圧に相当する。第1のN型トランジスタN1のゲートに印加する電圧は、この第1のN型トランジスタN1のドレインに印加される電圧が最大になったときのソースドレイン間、ゲートドレイン間、およびゲートソース間の電位差、およびソース電圧が入力電圧以下になる大きさであればよい。また、第2のN型トランジスタN2のゲートは、クロック回路1のインバータINV1の出力端子bに接続している。すなわち、第2のN型トランジスタN2のゲートには、入力端子aに入力されるクロック信号を反転したクロック信号が与えられる。
【0035】
整流回路4は、チャージ回路2のコンデンサCpに蓄えられた電荷を、負荷回路5のコンデンサCLにチャージするとともに、このコンデンサCLにチャージした電荷がコンデンサCp側に引き抜かれる逆流を阻止する第1のP型トランジスタP1を有する。この第1のP型トランジスタP1は、ドレインをチャージ回路のコンデンサCpに接続し、ソースを出力端子fに接続している。
【0036】
なお、負荷回路5のコンデンサCLは、出力端子fと接地(0V)間に接続している。負荷回路5は、コンデンサCLにチャージされた電荷により、出力端子fに接続された負荷(不図示)に対する電源供給を行う。
【0037】
また、整流回路4は、第1のP型トランジスタP1をオン/オフするオン/オフ回路4aを有している。このオン/オフ回路4aは、第2のP型トランジスタP2と、第3のN型トランジスタN3と、第4のN型トランジスタN4とで構成している。第2のP型トランジスタP2は、ドレインを第1のP型トランジスタP1のゲートに接続し、ソースを第1のP型トランジスタP1のソース(出力端子f)に接続している。また、第2のP型トランジスタP2は、クロック回路1のインバータINV2の出力端子cに接続している。すなわち、第2のP型トランジスタP2のゲートには、入力端子aに入力されるクロック信号が与えられる。また、第3のN型トランジスタN3は、ドレインを第1のP型トランジスタP1のゲート、および第2のP型トランジスタP2のドレインに接続している。また、第3のN型トランジスタN3は、ソースを第4のN型トランジスタN4のドレインに接続している。第4のN型トランジスタN4のソースは、クランプ電圧Vpに接続している。そして、第3のN型トランジスタN3のゲートには、上述した第1のN型トランジスタN1と同様にクランプ電圧Vpよりも高いVaに接続している。また、第4のN型トランジスタN4のゲートは、クロック回路1のインバータINV2の出力端子に接続している。すなわち、第2のN型トランジスタN2のゲートには、入力端子aに入力されるクロック信号が与えられる。
【0038】
次に、この昇圧回路の動作について説明する。
【0039】
入力端子aには、図4(A)に示す、0〜3Vでスイングするクロック信号が入力される。また、クロック回路1の出力端子であるインバータINV2の出力(図中に示すc点)も、この図4(A)に示すクロック信号になる。クロック回路1のインバータINV1の出力(図3におけるb点)は、図4(B)に示すように、入力されているクロック信号を反転させたクロック信号になる。
【0040】
整流回路4の第1のP型トランジスタP1は、チャージ回路2のコンデンサCpの一方の端子に入力されるクロック信号がハイレベルになったときにオンし、このクロック信号がローレベルになったときにオフする。第1のP型トランジスタP1がオンすることによって、コンデンサCpと、コンデンサCLとが電気的に接続される。また、コンデンサCpの他方の端子の最低電圧は、クランプ回路3によって最低電圧がVp(=1V)にクランプされている。したがって、コンデンサCpの他方の端子電圧(図3におけるd1点の電圧)は、図4(C)に示すように、負荷回路5のコンデンサCLに蓄えられている電荷量が上昇するにしたがってスイング幅が大きくなる。このスイング幅は、最終的に3V(1V〜4V)に達する。
【0041】
また、負荷回路5のコンデンサCLに蓄えられる電荷は、徐々に上昇していくので、出力端子fの電圧は、図4(E)に示すように上昇して行き、最終的に4Vに達する。このように、この昇圧回路では、0〜3Vでスイングするクロック信号を入力とし、4Vの出力を得ることができる。
【0042】
ここで、クランプ回路3の第1のN型トランジスタN1のドレインは、印加される電圧が最大で4Vに達するが、ソースに印加される電圧Vs(すなわち、第2のN型トランジスタN2のドレインに印加される電圧)は、ゲート電圧をVg、ゲート−ソース間の閾値電圧をVtとすると、
Vs<Vg−Vt
になる。ここで、ゲート電圧Vgは、Va(=3V)であるので、Vsが3Vを超えることはない。また、一般的なN型トランジスタであれば、Vtが0.6V程度であるので、実際には、Vsは、最大でも2.4V程度に抑えられる。すなわち、第1のN型トランジスタN1のソースに印加される電圧(図4中に示すd2点の電圧)は、図4(D)に示すように変化する。また、第2のN型トランジスタN2は、ゲートに印加される電圧が、0〜3Vで変化するが、上述したように、ドレインに印加される電圧(第1のN型トランジスタN1のソースに印加される電圧)が3Vを超えることがない。
【0043】
したがって、第1のN型トランジスタN1、および第2のN型トランジスタN2は、ソースドレイン間、ゲートドレイン間、およびゲートソース間のいずれにおいても、入力電圧である3Vを超える電位差が生じることはない。すなわち、第1のN型トランジスタN1、および第2のN型トランジスタN2は、必用な耐圧を入力電圧以下に抑えられる
また、第2のP型トランジスタP2のドレインの電圧(図3におけるe1点の電圧)は、図4(F)に示すように、最大で4Vに達する。しかし、第3のN型トランジスタN3は、第1のN型トランジスタN1と同様にゲートに3Vを印加しているので、この第3のN型トランジスタN3のソース電圧(図5に示すe2点の電圧)は、図4(G)に示すように、最大で2.4V程度に抑えられる。したがって、第3のN型トランジスタN3、および第4のN型トランジスタN4も、ソースドレイン間、ゲートドレイン間、およびゲートソース間のいずれにおいても、入力電圧である3Vを超える電位差が生じることはない。
【0044】
さらに、第4のN型トランジスタのソースにクランプ電圧Vpを印加しているので、第2のP型トランジスタP2においても、ソースドレイン間、ゲートドレイン間、およびゲートソース間のいずれにおいても、入力電圧である3Vを超える電位差が生じることはない。
【0045】
このように、この実施形態の昇圧回路によれば、使用する全てのトランジスタの耐圧が、入力電圧以下に抑えられるので、形成面積の増大や、製造工程の煩雑化等といった不都合が防止できる。
【0046】
なお、クランプ電圧Vpは、出力端子fに得る電圧に応じて設定すればよい。また、このクランプ電圧Vpに応じて、Vaを定めればよい。
【0047】
次に、この発明の実施形態にかかる降圧回路について説明する。図5は、この発明の実施形態である降圧回路を示す図である。この降圧回路は、入力電圧を降圧して出力する半導体集積回路である。この降圧回路は、この昇圧回路は、0〜3Vでスイングさせたクロック信号を入力端子aに入力し、これを−1Vに降圧して出力端子fに出力する回路である。
【0048】
この降圧回路も、上述した昇圧回路と同様に、クロック回路1と、チャージ回路2と、クランプ回路3と、整流回路4と、負荷回路5と、を備えている。クロック回路1、チャージ回路2、および負荷回路5は、上述した昇圧回路と同じである。
【0049】
クランプ回路3は、コンデンサCpの他方の端子の最高電圧(以下、クランプ電圧と言う。)をVp(ここでは、2V)にクランプする。このクランプ回路3は、第1のP型トランジスタP11、および第2のP型トランジスタP12で構成している。第1のP型トランジスタP11は、ドレインをコンデンサCpの他方の端子に接続している。また、第1のP型トランジスタP11のソースと、第2のP型トランジスタP12のドレインと、を接続している。第2のP型トランジスタP12のソースは、クランプ電圧Vpに接続している。このクランプ電圧が、この発明で言う第1の電圧に相当する。また、第1のP型トランジスタP11のゲートには、クランプ電圧Vpよりも低い電圧Va(ここでは、0V)に接続している。このVaが、この発明で言う第2の電圧に相当する。第1のP型トランジスタP11のゲートに印加する電圧は、この第1のP型トランジスタP11のドレインに印加される電圧が最大になったときのソースドレイン間、ゲートドレイン間、およびゲートソース間の電位差、およびソース電圧が入力電圧以下になる大きさであればよい。また、第2のP型トランジスタP12のゲートは、クロック回路1のインバータINV1の出力端子に接続している。すなわち、第2のP型トランジスタP12のゲートには、入力端子aに入力されるクロック信号を反転したクロック信号が与えられる。
【0050】
整流回路4は、チャージ回路2のコンデンサCpに蓄えられた電荷を、負荷回路5のコンデンサCLにチャージするとともに、このコンデンサCLにチャージした電荷がコンデンサCp側に引き抜かれる逆流を阻止する第1のN型トランジスタN11を有する。この第1のN型トランジスタN11は、ドレインをチャージ回路のコンデンサCpに接続し、ソースを出力端子fに接続している。
【0051】
また、整流回路4は、第1のN型トランジスタN11をオン/オフするオン/オフ回路4aを有している。このオン/オフ回路4aは、第2のN型トランジスタN12と、第3のP型トランジスタP13と、第4のP型トランジスタP14とで構成している。第2のN型トランジスタN12は、ドレインを第1のN型トランジスタN11のゲートに接続し、ソースを第1のN型トランジスタN11のソース(出力端子f)に接続している。また、第2のN型トランジスタN12は、クロック回路1のインバータINV2の出力端子に接続している。すなわち、第2のN型トランジスタN12のゲートには、入力端子aに入力されるクロック信号が与えられる。また、第3のP型トランジスタP13は、ドレインを第1のN型トランジスタN11のゲート、および第2のN型トランジスタN2のドレインに接続している。また、第3のP型トランジスタP13は、ソースを第4のP型トランジスタP14のドレインに接続している。第4のP型トランジスタP14のソースは、クランプ電圧Vpに接続している。そして、第3のP型トランジスタP13のゲートには、上述した第1のP型トランジスタP11と同様にクランプ電圧Vpよりも高いVaに接続している。また、第4のP型トランジスタP14のゲートは、クロック回路1のインバータINV2の出力端子に接続している。すなわち、第2のP型トランジスタP12のゲートには、入力端子aに入力されるクロック信号が与えられる。
【0052】
上記の説明から明らかなように、この降圧回路は、上述した昇圧回路における第1〜第4のN型トランジスタN1〜N4を、それぞれ第1〜第4のP型トランジスタP11〜P14に置き換えるとともに、第1、および第2のP型トランジスタP1、P2を、それぞれ第1、および第2のN型トランジスタN11、N12に置き換えた構成である。また、クランプ電圧Vpを2Vとし、Vaを0Vにした構成である。
【0053】
次に、この降圧回路の動作について説明する。
【0054】
入力端子aには、図6(A)に示す、0〜3Vでスイングするクロック信号が入力される。また、クロック回路1の出力端子であるインバータINV2の出力(図中に示すc点)も、この図6(A)に示すクロック信号になる。クロック回路1のインバータINV1の出力(図3におけるb点)は、図6(B)に示すように、入力されているクロック信号を反転させたクロック信号になる。
【0055】
整流回路4の第1のN型トランジスタN11は、チャージ回路2のコンデンサCpの一方の端子に入力されるクロック信号がハイレベルになったときにオンし、このクロック信号がローレベルになったときにオフする。第1のN型トランジスタN11がオンすることによって、コンデンサCpと、コンデンサCLとが電気的に接続される。また、コンデンサCpの他方の端子の最低電圧は、クランプ回路3によって最高電圧がVp(=2V)にクランプされている。したがって、コンデンサCpの他方の端子電圧(図5におけるd1点の電圧)は、図6(C)に示すように、負荷回路5のコンデンサCLに蓄えられている電荷量が上昇するにしたがってスイング幅が大きくなる。このスイング幅は、最終的に3V(−1V〜2V)に達する。
【0056】
また、負荷回路5のコンデンサCLに蓄えられる電荷は、徐々に上昇していくので、出力端子fの電圧は、図6(E)に示すように下降して行き、最終的に−1Vに達する。このように、この昇圧回路では、0〜3Vでスイングするクロック信号を入力とし、−1Vの出力を得ることができる。
【0057】
ここで、クランプ回路3の第1のP型トランジスタP11のドレインに印加される電圧は、図6(C)に示したように、−1Vに達するが、第1のP型トランジスタP11のソース(すなわち、第2のP型トランジスタP12のドレイン)に印加される電圧(図5中に示すd2点の電圧)は、ゲート−ソース間の閾値電圧を考慮すると、図6(D)に示すように変化し、最大でも1.4V程度になる。したがって、第1のP型トランジスタP11、および第2のP型トランジスタP12は、ソースドレイン間、ゲートドレイン間、およびゲートソース間のいずれにおいても、入力電圧である3Vを超える電位差が生じることはない。すなわち、第1のP型トランジスタP11、および第2のP型トランジスタP12は、必用な耐圧を入力電圧以下に抑えられる。
【0058】
また、第2のN型トランジスタN12のドレインの電圧(図5に示すe1点の電圧)は、図6(F)に示すように、−1Vに達するが、第4のP型トランジスタP14のドレインに印加される電圧(図5に示すe2点の電圧)は、ゲート−ソース間の閾値電圧を考慮すると、図6(G)に示すように、最大で1.4V程度になる。したがって、第3のP型トランジスタP13、および第4のP型トランジスタP14は、ソースドレイン間、ゲートドレイン間、およびゲートソース間のいずれにおいても、入力電圧である3Vを超える電位差が生じることはない。
【0059】
このように、この実施形態の降圧回路によれば、使用する全てのトランジスタの耐圧が、入力電圧以下に抑えられるので、形成面積の増大や、製造工程の煩雑化等といった不都合が防止できる。
【0060】
なお、クランプ電圧Vpは、出力端子fに得る電圧に応じて設定すればよい。また、このクランプ電圧Vpに応じて、Vaを定めればよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】従来の昇圧回路を示す図である。
【図2】従来の昇圧回路における各点の電圧変化を示す図である。
【図3】この発明の実施形態である昇圧回路を示す図である。
【図4】この発明の実施形態である昇圧回路における各点の電圧変化を示す図である。
【図5】この発明の実施形態である降圧回路を示す図である。
【図6】この発明の実施形態である降圧回路における各点の電圧変化を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1−クロック回路
2−チャージ回路
3−クランプ回路
4−整流回路
4a−オン/オフ回路
5−負荷回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端子が、クロック信号を出力するクロック端子に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサの他方の端子に接続された整流回路と、
前記コンデンサの他方の端子の最低電圧を第1の電圧にクランプするクランプ回路と、を備え、
前記クランプ回路は、第1のN型トランジスタ、および第2のN型トランジスタを有し、
前記第1のN型トランジスタは、ドレインを前記コンデンサの他方の端子に接続し、ソースを前記第2のN型トランジスタのドレインに接続し、さらに、ゲートを前記第1の電圧よりも高い第2の電圧に接続しており、
前記第2のN型トランジスタは、ソースを前記第1の電圧に接続し、ゲートを前記クロック信号の反転信号を出力する反転信号端子に接続した、
昇圧回路。
【請求項2】
前記整流回路は、
ドレインを前記コンデンサの他方の端子に接続し、ソースを負荷が接続される負荷端子に接続した第1のP型トランジスタと、
前記第1のP型トランジスタを、前記クロック信号に同期させてオン/オフするオン/オフ回路と、を有する、
請求項1に記載の昇圧回路。
【請求項3】
前記オン/オフ回路は、
ドレインを前記第1のP型トランジスタのゲートに接続し、ソースを前記第1のP型トランジスタのソースに接続し、さらにゲートを前記クロック信号を出力するクロック信号端子に接続した第2のP型トランジスタと、
ドレインを前記第1のP型トランジスタのゲートに接続し、ゲートを前記第2の電圧に接続した第3のN型トランジスタと、
ドレインを前記第3のN型トランジスタのソースに接続し、ソースを前記第1の電圧に接続し、さらにゲートを前記クロック信号を出力するクロック信号端子に接続した第4のN型トランジスタと、を有する、
請求項2に記載の昇圧回路。
【請求項4】
一方の端子が、クロック信号を出力するクロック端子に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサの他方の端子に接続された整流回路と、
前記コンデンサの他方の端子の最高電圧を第1の電圧にクランプするクランプ回路と、を備え、
前記クランプ回路は、第1のP型トランジスタ、および第2のP型トランジスタを有し、
前記第1のP型トランジスタは、ドレインを前記コンデンサの他方の端子に接続し、ソースを前記第2のP型トランジスタのドレインに接続し、さらに、ゲートを前記第1の電圧よりも低い第2の電圧に接続しており、
前記第2のP型トランジスタは、ソースを前記第1の電圧に接続し、ゲートを前記クロック信号の反転信号を出力する反転信号端子に接続した、
降圧回路。
【請求項5】
前記整流回路は、
ドレインを前記コンデンサの他方の端子に接続し、ソースを負荷が接続される負荷端子に接続した第1のN型トランジスタと、
前記第1のN型トランジスタを、前記クロック信号に同期させてオン/オフするオン/オフ回路と、を有する、
請求項4に記載の降圧回路。
【請求項6】
前記オン/オフ回路は、
ドレインを前記第1のN型トランジスタのゲートに接続し、ソースを前記第1のN型トランジスタのソースに接続し、さらにゲートを前記クロック信号を出力するクロック信号端子に接続した第2のN型トランジスタと、
ドレインを前記第1のN型トランジスタのゲートに接続し、ゲートを前記第2の電圧に接続した第3のP型トランジスタと、
ドレインを前記第3のP型トランジスタのソースに接続し、ソースを前記第1の電圧に接続し、さらにゲートを前記クロック信号を出力するクロック信号端子に接続した第4のP型トランジスタと、を有する、
請求項5に記載の降圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−88030(P2010−88030A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257391(P2008−257391)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】