有機薄膜トランジスタ
【課題】ゲート絶縁層に対する密着性が良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗が低いソース電極とドレイン電極とを有する有機薄膜トランジスタを実現する。
【解決手段】本発明の有機薄膜トランジスタは、絶縁性基板上に、ゲート電極と、ゲート絶縁層と、ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体層とを備える有機薄膜トランジスタであり、上記ソース電極と絶縁性基板若しくはゲート絶縁層との間、及び上記ドレイン電極と絶縁性基板若しくはゲート絶縁層との間に、金を主成分とした合金からなる密着層をそれぞれ備え、上記ソース電極及びドレイン電極は金からなり、上記密着層は、金の含有量が、67原子%以上97原子%以下の範囲内である。
【解決手段】本発明の有機薄膜トランジスタは、絶縁性基板上に、ゲート電極と、ゲート絶縁層と、ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体層とを備える有機薄膜トランジスタであり、上記ソース電極と絶縁性基板若しくはゲート絶縁層との間、及び上記ドレイン電極と絶縁性基板若しくはゲート絶縁層との間に、金を主成分とした合金からなる密着層をそれぞれ備え、上記ソース電極及びドレイン電極は金からなり、上記密着層は、金の含有量が、67原子%以上97原子%以下の範囲内である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体部分に有機材料を用いた有機薄膜トランジスタに関し、特に、有機半導体と電気的に接続する、密着性に優れた電極を有する有機薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコンに代表される無機半導体に対して、有機材料からなる半導体を用いた、いわゆる有機薄膜トランジスタが注目されている。
【0003】
有機薄膜トランジスタは、近年ではアモルファスシリコン薄膜トランジスタ(以下a‐Si TFT)と同等の移動度を示す例も報告されている。また、200℃以下の低いプロセス温度で素子を作製することが可能であることから、耐熱性の低いプラスチック基板等にトランジスタ素子を形成することが可能となり、プラスチック基板の柔軟性を活かした、フレキシブルなデバイスを実現するための技術として検討されている。
【0004】
また、有機材料は、材料の種類によって印刷法等によるデバイス作製も可能であることから、製造コストの低減及び印刷による大面積なデバイスの製造が可能な半導体素子としても期待されている。
【0005】
一般的に薄膜トランジスタは、ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層及びソース電極とドレイン電極とから構成されており、その素子構造は、主に半導体層上にソース電極とドレイン電極とが形成されているトップコンタクト型と、半導体下部にソース電極とドレイン電極とが形成されているボトムコンタクト型の2種類に大別されている。
【0006】
例えば特許文献1に示されているように、トップコンタクト型の構造では、ソース電極とドレイン電極とは、一般的なフォトリソグラフィー法やリフトオフ法、及び電極形状の開口部を有するシャドーマスクを用いたパターン成膜法等によって作製される。
【0007】
トップコンタクト型の場合には、有機材料からなる半導体層上に直接電極が作製されることから、フォトリソグラフィー用の薬品や、電極材料のエッチング等による有機半導体層へのダメージが懸念される。このため、電極形成時の半導体層へのダメージが少ない、上記シャドーマスクやインクジェット印刷技術等によるソース電極とドレイン電極形成が行われてきた。
【0008】
しかしながらこれら手法では、薄膜トランジスタ素子の特性に影響する、ソース電極とドレイン電極間の距離であるチャネル長を微細化することが困難である。また、形成される電極の寸法安定性、再現性などにも問題があった。
【0009】
一方、ボトムコンタクト型の場合には、上記ソース電極とドレイン電極とを形成した後に有機半導体層を形成することから、トップコンタクト型のように有機半導体層へダメージを与えることが無い。このため、前述のチャネル長を微細に形成することが可能なフォトリソグラフィー法やリフトオフ法による、ソース電極とドレイン電極との形成方法を用いることが可能である。
【0010】
有機半導体と電気的に接続するためのソース電極とドレイン電極とを構成する材料としては、例えば、特許文献2に示されているように、有機半導体と電気的接続が得やすい金(Au)からなる電極が用いられることが多い。金は良導体であり、電極材料としては一般的に用いられる金属であるが、その一方、金は他の材料に対する密着力が低いという問題が有った。このため、金を電極材料として用いる場合には、特許文献2に開示されているような密着層を金電極と基板との間に形成するなどの対策が一般的に行われてきた。
【0011】
しかし、非特許文献1によれば、ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタにおいて、ソース電極とドレイン電極との密着性改善のために用いられる電極と基板との間に設けられた密着層が、ソース電極及びドレイン電極と有機半導体層との間に生じる寄生抵抗の原因となっていることが示されている。
【0012】
非特許文献1によれば、ゲート電極に重畳されたゲート絶縁層上に形成されたボトムコンタクト構造を有する有機薄膜トランジスタでは、ゲート電極に印加されたゲート電圧により有機半導体中に形成されるチャネル層は、ゲート絶縁層/有機半導体層界面から数ナノメートル程度の厚みで形成されており、金電極下部に設けられた密着層が、該チャネル層の膜厚よりも厚い場合には、密着層が、チャネル層に直接接触することになる。このために、ソース電極とドレイン電極とを構成する金電極部分がこのチャネル層に対して直接接触することが出来ず、金電極−密着層−有機半導体の直列構造となるために寄生抵抗が生じるとしている。
【0013】
この様な寄生抵抗の問題に対しては、非特許文献1及び特許文献3に、膜厚が数ナノメートルの自己組織化単分子膜(Self−Assembled Monolayer:SAM)を極薄い密着層として形成することで寄生抵抗を抑制する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004‐288836(2004年10月14日公開)
【特許文献2】特開2005‐175157(2005年6月30日公開)
【特許文献3】特開2005‐86147(2005年3月31日公開)
【非特許文献1】N.Yoneya et al,Applied Physics Letters,85, (2004) 4663−4665
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、SAM膜は特定の表面に対して化学結合可能な官能基を有する有機分子を組み合わせることによって形成可能な有機単分子膜である。上記方法ではSAM膜を構成する有機分子が化学的に結合可能な材料が、SAM膜を形成するための基板表面に形成されている必要が有る。このため、任意の基板表面に密着層としてのSAM膜を形成することが困難であった。
【0015】
また、上記密着層としてのSAM膜は、基本的に絶縁体である有機分子から形成されていることから、非特許文献1に記載の構造では、上記有機半導体とゲート絶縁層との界面近傍に形成されたチャネル層には、上記SAM膜と上記SAM膜上に形成された金属電極とが接触することになる。このため、極薄いチャネル層のうち、SAM膜に接している部分はソース電極とドレイン電極との電気接続に対してなんら寄与することは無いという問題も有った。
【0016】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゲート絶縁層に対する密着性が良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗が低いソース電極とドレイン電極とを有する有機薄膜トランジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、これまで密着性を向上する材料として用いられておらず、この材料を有機トランジスタに用いた場合に、素子特性および基板との密着性の双方を満足するような組成比率、特に密着性の向上に着目して組成比を検討した例がない、所定の組成比を有する金合金を、ソース電極及びドレイン電極とゲート絶縁層との間に密着層を設けることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
本発明の有機薄膜トランジスタは、上記課題を解決するために、絶縁性基板上に、ゲート電極と、ゲート絶縁層と、ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体層とを備える有機薄膜トランジスタであり、上記ソース電極と絶縁性基板若しくはゲート絶縁層との間、及び上記ドレイン電極と絶縁性基板若しくはゲート絶縁層との間に、金を主成分とした合金からなる密着層をそれぞれ備え、上記ソース電極及びドレイン電極は金からなり、上記密着層は、金の含有量が、67原子%以上97原子%以下の範囲内であることを特徴としている。
【0019】
上記構成によれば、所定の組成比の上記金合金からなる密着層を設けているため、ゲート絶縁層に対する密着性が良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗が低いソース電極とドレイン電極とを備えた、優れた特性を有する有機薄膜トランジスタを提供することができるという効果を奏する。
【0020】
本発明の有機薄膜トランジスタでは、上記密着層が、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、及びモリブデン(Mo)からなる群から選択される少なくとも1種の金属と、金との合金であることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、ゲート絶縁層に対する密着性がより良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗がより低いソース電極とドレイン電極とを備えた、優れた特性を有する有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【0022】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記密着層は、上記ソース電極及びドレイン電極から、上記ゲート絶縁層へ向かって金の含有率が変化していることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、ゲート絶縁層に対する密着性がより良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗がより低いソース電極とドレイン電極とを備えた、優れた特性を有する有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【0024】
また、例えば、電極中に含まれる金以外の金属材料の比率を膜厚方向に減少するように変化させることによって、密着性の良好な合金部分と電極となるAu部分とを有する金属薄膜を一回のプロセスで作製可能であり、製造コストを低減することが可能となる。
【0025】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記密着層の厚さは、1nm以上3nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、ゲート絶縁層に対する密着性がより良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗がより低いソース電極とドレイン電極とを備えた、優れた特性を有する有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【0027】
本発明の有機薄膜トランジスタは、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極及びドレイン電極、有機半導体層をこの順で備え、トランジスタの構造が、ボトムゲート構造であり、且つボトムコンタクト構造であることが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、ゲート絶縁層に対する密着性が良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗が低いソース電極とドレイン電極とを有する有機薄膜トランジスタを提供することが可能となる。
【0029】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記密着層は、上記ソース電極若しくはドレイン電極から、上記ゲート絶縁層へ向かって金の含有率が減少していることが好ましい。
【0030】
上記構成によれば、ゲート絶縁層に対する密着性がより良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗がより低いソース電極とドレイン電極とを備えた、優れた特性を有する有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【0031】
また、電極中に含まれる金以外の金属材料の比率を膜厚方向に減少するように変化させることによって、密着性の良好な合金部分と電極となるAu部分とを有する金属薄膜を一回のプロセスで作製可能であり、製造コストを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の有機薄膜トランジスタは、以上のように、絶縁性基板上に、ゲート電極と、ゲート絶縁層と、ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体層とを備える有機薄膜トランジスタであり、上記ソース電極と絶縁性基板若しくはゲート絶縁層との間、及び上記ドレイン電極と絶縁性基板若しくはゲート絶縁層との間に、金を主成分とした合金からなる密着層をそれぞれ備え、上記ソース電極及びドレイン電極は金からなり、上記密着層は、金の含有量が、67原子%以上97原子%以下の範囲内であることを特徴としている。
【0033】
このため、ゲート絶縁層に対する密着性が良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗が低いソース電極とドレイン電極を有する有機薄膜トランジスタを提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明すれば以下のとおりであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
(1)有機薄膜トランジスタ
図1に有機薄膜トランジスタの要部構成を示し、(a)は上面図であり、(b)は図1(a)におけるA−A’線矢視断面図である。
【0036】
図1に示すように、本実施の形態に係る有機薄膜トランジスタは、ゲート電極2上にゲート絶縁層3を備え、当該ゲート絶縁層3上にソース電極4とドレイン電極5とを備え、当該ソース電極4及びドレイン電極5上に、チャネル領域11を含む有機半導体層9を備える有機薄膜トランジスタである。
【0037】
上記有機薄膜トランジスタでは、上記ソース電極4とゲート絶縁層3との間、及び上記ドレイン電極5とゲート絶縁層3との間に、密着層7をそれぞれ備える。
【0038】
上記ゲート電極2を構成する材料は特には限定されず、従来公知の材料を用いることができる。例えば、Al、Ti、Mo、Ta、シリコン(Si)、銀(Ag)またはこれらの合金がゲート電極2の構成材料として挙げられる。
【0039】
上記ゲート絶縁層3を構成する材料は、絶縁性であれば特に制限は無く、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル等の無機絶縁膜や、ポリイミド、ポリビニルフェノール等の有機系材料を採用することができる。
【0040】
上記ソース電極4及びドレイン電極5を構成する材料は金であり、上記密着層7を構成する材料は、金を主成分とした合金である。
【0041】
上記合金を構成する、金以外の金属としては特には限定されないが、例えば、Ni、Cr、Ti、Al、Ta、及びMoが挙げられる。
【0042】
上記密着層7を構成する上記合金における金の含有量は、67原子%以上97原子%以下の範囲内であり、70原子%以上97原子%以下の範囲内であることが好ましい。
【0043】
上記合金における金の含有量が67原子%未満であれば、密着層7を設けない場合と比べて電界効果移動度が低下してしまう。また、上記合金における金の含有量が97原子%より高いと、ゲート絶縁層3と電極との密着性が不十分となる。
【0044】
ここで、「原子%」とは、その物質における全原子数に対する、対象となる原子の数の百分率を意味する。
【0045】
上記密着層7の膜厚は1nm以上3nm以下の範囲内であることが好ましい。膜厚が当該範囲内であれば、寄生抵抗を増加させることなく、上記ソース電極4及びドレイン電極5とゲート絶縁層3との密着性を向上させることができる。
【0046】
上記有機半導体層9は、有機材料を主成分として含む層である。有機半導体層9を構成する材料としては、従来公知の有機薄膜トランジスタに用いられる有機半導体であれば特には限定されない。例えば、フラーレン、ポリチオフェン、ペンタセン等及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0047】
本実施の形態に係る有機薄膜トランジスタでは、金合金からなる密着層7を、ソース電極4及びドレイン電極5と、ゲート絶縁層3との間に備えているため、ソース電極4及びドレイン電極5とゲート絶縁層3とを良好に密着させることができる。
【0048】
また、ボトムゲート型の薄膜トランジスタ構造において、ゲート電極2に対して電圧を印加したときに、ゲート絶縁層3と有機半導体層9との界面近傍に形成される有機薄膜トランジスタのチャネル領域11は、ソース電極4及びドレイン電極5、並びに密着層7に接触することになる。
【0049】
本実施の形態では、密着層7として、有機半導体層9との電気的接続性が良好な金合金を用いたことにより、ソース電極4及びドレイン電極5と、有機半導体層9との間の寄生抵抗を抑制し、優れた特性の有機薄膜トランジスタを得ることが可能となる。
【0050】
(2)有機薄膜トランジスタの製造方法
本実施の形態に係る有機薄膜トランジスタは、例えば、以下のように製造することができる。図2は、本実施の形態に係る有機薄膜トランジスタの製造工程の一例を示す断面図である。
【0051】
(a)ゲート電極の作製
図2(a)に示すように、まず、ゲート電極2を、基板1上に形成する。
【0052】
尚、本実施の形態では説明の簡略化のために基板1全面がゲート電極2となる場合について説明しているが、ゲート電極2は、フォトリソグラフィー法やマスク成膜法等を用いて、パターン化してもよい。
【0053】
上記基板1としては、例えば、ガラス基板、及び石英基板等の透明基板、酸化膜付シリコン基板、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリイミド等の高分子からなるプラスチック基板を用いてもよい。また、上記基板の表面に必要に応じて絶縁層を形成したものを基板として用いてもよい。
【0054】
(b)ゲート絶縁層の作製
次に、ゲート電極2に重畳するようにゲート絶縁層3を形成する。ゲート絶縁層3の作製には、通常の真空蒸着やスパッタ成膜、スピンコーティング法やインクジェット法等、様々な方法を用いることが可能である。
【0055】
(c)密着層の作製
続いて、ゲート絶縁層3の上に、ソース電極4及びドレイン電極5を作製する。
【0056】
図2(b)に示すように、基板1上に形成されたゲート絶縁層3の上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィー手法を用いて、ソース電極4及びドレイン電極5が形成される領域に開口を有したフォトレジスト膜6を形成する。この時、対向する2つの開口部分間の距離が図1に示す有機薄膜トランジスタのチャネル長Lに相当し、対向する二つの開口部分の長さがチャネル幅Wに相当する。
【0057】
次に、図2(c)に示すように、この開口部が形成されたフォトレジスト膜6に対して、密着層7となる金合金を成膜する。
【0058】
上記金合金は、真空蒸着法やスパッタリング法のような一般的な金属薄膜の成膜手法で形成が可能である。例えば、金の含有量が67原子%以上97原子%以下の範囲内である上記合金からなる成膜材料を予め作製して、上記成膜方法により成膜を行ってもよい。また、金からなる成膜源と、金以外の金属からなる成膜源との複数の成膜源を用いて、同時に基板上に金属膜の成膜を行う、いわゆる共蒸着法やコスパッタ法のような成膜手法を用いてもよい。
【0059】
(d)ソース電極・ドレイン電極の作製
続いて、図2(d)に示すように、電極(ソース電極及びドレイン電極)8となるAuを上記密着層7に重畳して形成する。Auからなる電極8は上記蒸着法やスパッタリング法のような、いわゆる物理蒸着法を用いて作製してもよいし、上記密着層7をシード層として無電解金メッキ法等を用いて作製してもよい。
【0060】
次に、上記フォトレジスト膜6を基板1上から除去することにより、図2(e)に示しす、開口部内に形成された密着層7及び電極8が形成される。
【0061】
尚、本実施の形態では、一例としてリフトオフ法によるソース電極とドレイン電極の作製方法を説明したが、これ以外の方法でソース電極とドレイン電極を作製してもよい。具体的には、フォトリソグラフィー法や、マスク蒸着法等の通常の製造工程を用いて作製することが可能である。このような方法を採用することにより、トランジスタ素子の特性に影響するソース電極とドレイン電極間の距離(チャネル長)などを、目的に合せて微細加工したり、簡便にマスク蒸着で作製したりすることが可能となり、素子特性の向上や寸法安定性の向上、作製工数の削減等を図ることが可能となる。
【0062】
(e)有機半導体層の作製
最後に、図2(f)に示すように、有機半導体層9を、ソース電極4及びドレイン電極5に重畳するように形成する。
【0063】
有機半導体層9は、例えば、抵抗加熱による真空蒸着法を用いて作製することができ、また、可溶性の材料であれば、塗布法や印刷法等の一般的な手法を用いて作製することが可能である。
【0064】
有機半導体層9は基板1上全面に形成してもよいが、寄生容量等の観点からソース電極4及びドレイン電極5上に重畳するようにパターン化することが好ましい。
【0065】
尚、有機半導体層9のパターン形成には種々の方法があるが、図2(f)ではその一例として、有機半導体層9の形状に合せた開口部を有する蒸着用マスク10を用いて、有機半導体層9を蒸着法により形成する場合を示している。
【0066】
以上のような工程によって、本実施の形態におけるボトムゲート型で、ボトムコンタクト型の構造を有する有機薄膜トランジスタが作製される。
【0067】
尚、上述の説明では、トランジスタの構成が、ボトムゲート構造であり、且つボトムコンタクト構造である場合について説明したが、これに限るものではない。上記トランジスタの構成は、トップゲート構造であってもよい。
【0068】
また、以上に説明した本発明は、以下のように言い換えることもできる。即ち、
(1)絶縁性基板上に、ゲート電極と、ゲート絶縁膜と、ソース・ドレイン電極と、有機材料からなる半導体層を備えた有機薄膜トランジスタにおいて、該ソース・ドレイン電極は、金からなる電極部分と、金を主体とした合金からなる密着部分とを備えていることを特徴とする有機薄膜トランジスタであって、金を主体とした該合金は、金以外の金属含有量が3原子%乃至30原子%であることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【0069】
(2)前記、金を主体とした合金は、Ni、Cr、Ti、Al、Ta、Moの何れかとの合金であることを特徴とする(1)記載の有機薄膜トランジスタ。
【0070】
(3)前記密着部分の金を主体とした合金は、その膜厚方向に合金の含有率が変化していることを特徴とする(1)または(2)に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0071】
(4)前記有機薄膜トランジスタは、基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース・ドレイン電極および有機半導体層をこの順で備えたボトムゲート構造、且つボトムコンタクト構造であることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1つに記載の有機薄膜トランジスタ。
【0072】
(5)前記ソース・ドレイン電極は、前記密着部分と、前記電極部分とが積層して形成されていることを特徴とする(1)〜(4)の何れか1つに記載の有機薄膜トランジスタ。
【0073】
(6)前記積層して構成されたソース・ドレイン電極の密着部分の膜厚は1乃至3nmであることを特徴とする(5)に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0074】
(7)前記ソース・ドレイン電極は、膜厚の増加方向に金以外の材料の含有率が減少する金合金からなることを特徴とする(1)〜(4)の何れか1つに記載の有機薄膜トランジスタ。
【0075】
また、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種種の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0077】
〔参考例1〕
ゲート絶縁層を模した酸化シリコン(SiO2)付シリコン基板上に、Au−Ni合金からなる密着層及び金からなる電極層をマスク蒸着法によって形成し、Niの含有量が表1に示す値である密着層をそれぞれ有する積層体を作製した。
【0078】
尚、ソース電極及びドレイン電極は0.4mm×1.4mmの矩形電極として作製し、密着層の膜厚は3nm、ソース電極及びドレイン電極の膜厚はそれぞれ25nmとして作製した。
【0079】
次に、電極を作製した上記各積層体を、アセトン溶液中で1分間超音波洗浄することで機械的な振動を与えた後に、該電極の剥離の状況を目視及び光学顕微鏡で観察して、ソース電極及びドレイン電極と基板との密着性を確認した。密着性評価の結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示すように、密着層として、Niを含まないAuとした場合、並びにNiの含有量を1原子%とした場合には、ゲート絶縁層であるSiO2との密着性が弱く、作製したソース電極及びドレイン電極が基板上のSiO2表面から剥離した。
【0082】
Niの含有量を3原子%(Auの含有量を97原子%)程度まで増加した場合では、基板上のSiO2表面からソース電極及びドレイン電極の剥離は発生せず、良好な密着性を示すことが確認された。
【0083】
更に、上記密着性の評価において、密着層におけるNiの含有量を10原子%(Auの含有量を90原子%)として、Au−Ni合金からなる密着層の膜厚を表2に示す値に変化させ、密着性を評価した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
表2に示すように、上記密着層の膜厚を1nm以上とすることで密着性の改善に効果があることが確認された。
【0086】
尚、密着層の膜厚を更に厚くした場合にも同様に密着性の改善効果が得られると考えられるが、密着層である金合金の電気的な抵抗率は電極部分であるAuの抵抗率に比較すると高く、膜厚が厚くなるに従って密着層による寄生抵抗が増加し、後述する参考例2の結果の様に寄生抵抗の増大による素子特性が低下することが予想される。
【0087】
上記と同様の実験を、密着層のNiを、Ti、Cr,Al,Ta及びMoにそれぞれ変更して行ったところ、ほぼ同様の結果が得られた。
【0088】
これらの結果より、上記密着層となる金を主体とした金合金において、Au以外の合金材料の含有率を3原子%以上33原子%以下(Auの含有量を67原子%以上97原子%以下)、及び金合金層からなる密着層の膜厚を1nmから3nm程度とすることによって、良好な素子特性を有する有機薄膜トランジスタを作製できることが確認できた。
【0089】
〔参考例2〕
図1に示すような構造の有機薄膜トランジスタとして、基板1とゲート電極2とを兼ねたn型シリコン基板上に、ゲート絶縁層3として膜厚310nmのSiO2を形成し、この上に密着層7として、AuとNiとの合金膜を膜厚3nmで形成し、更に電極8としてAuを膜厚25nmで形成してリフトオフ法によりソース電極4とドレイン電極5を作製した。
【0090】
この上に有機半導体層9としてフラーレンC60をマスク蒸着法によって膜厚100nmで成膜することによりn型の有機薄膜トランジスタを作製した。尚、有機薄膜トランジスタは、密着層7におけるNiの含有量を0原子%から100原子%まで変化させて、複数作製した。
【0091】
得られたトランジスタを用いて、Niの含有量に対する薄膜トランジスタの電界効果移動度の評価を行った。尚、作製した有機薄膜トランジスタのチャネル長Lは10μm、チャネル幅Wは1mmとした。
【0092】
図3に、有機薄膜トランジスタの素子特性を示す電界効果移動度と、密着層である金合金の組成比との関係を示す。
【0093】
図3に示すように、密着層におけるNiの含有量が33原子%(Auの含有量が67原子%)程度である場合には、Niを含まないAuのみからなる電極を有する場合(白丸)とほぼ同様の高い電界効果移動度を示した。これに対して、Niの含有量を50原子%(Auの含有量を50原子%)程度まで増加させた場合には電界効果移動度の急激な減少が確認され、素子特性が劣化した。この原因としては、密着層に含まれるNiの量が増加することによって、有機半導体層9と密着層7との間の電気的な寄生抵抗が増大することにより、結果として、ソース電極4及びドレイン電極5と有機半導体層9との間の寄生抵抗が増大し、有機薄膜トランジスタの特性を示す電界効果移動度が低下したと考えられる。
【0094】
また、密着層をAuのみで作製した場合や、Niの含有量を1原子%とした場合では、ゲート絶縁層であるSiO2と密着層との密着性が弱く、作製したソース電極及びドレイン電極が基板上のSiO2表面から剥離した。密着層におけるNiの含有量を3原子%(Auの含有量を97原子%)程度まで増加させた場合には、基板上のSiO2表面からソース電極とドレイン電極の剥離は発生せず、良好な密着性を示した。
【0095】
〔実施例1〕
実施例1では、密着層としてAuとNiとの合金を用いて図4に示す有機薄膜トランジスタを作製した。
【0096】
まず、図5(a)に示すように、基板12としてガラス基板(コーニング社、商品名:Eagle2000)を用いた。そして、当該基板12上に、Tiに対してSiを10原子%添加したTiSi合金からなる金属ターゲットを用いて、スパッタリング法を行い、TiSiからなる金属膜を40nmの膜厚で形成した。このTiSiからなる金属膜を、フォトリソグラフィー及びエッチング法を用いて所望のパターンに加工することでゲート電極13を形成した。
【0097】
続いて、SiO2ターゲットを用いて、酸素を供給しながらスパッタリング成膜を行うことにより、ゲート電極13上にゲート絶縁層14としてSiO2を膜厚200nmで形成した。
【0098】
次に、フォトレジストとしてリフトオフプロセス用のネガ型フォトレジスト(日本ゼオン社、商品名:ZPN1150)を用いて、スピンコート法により膜厚4μmのレジスト膜を形成した。その後、フォトリソグラフィー法を用いて、露光及び現像工程を行うことで、図5(b)に示す、ソース電極及びドレイン電極を作製するための開口部を有するフォトレジスト膜15を形成した。
【0099】
次に、図5(c)に示すように、上記密着層におけるNiの組成比が3原子%(Auの含有量が97原子%)となるように調整した、Au及びNiの混合材料を用いて、真空蒸着法により、膜厚2nmで、ソース電極及びドレイン電極の密着層16となる、Au−Ni合金からなる金属膜を形成した。この時の真空蒸着装置の到達真空度は2×10-5Paであり、基板加熱は行わなかった。
【0100】
続いて、図5(d)に示す電極17として、Auからなる金属膜を、同様に真空蒸着法により、膜厚40nmで成膜した。
【0101】
密着層16及び電極17を順次積層した後、ゲート絶縁層14上のフォトレジスト膜15を除去するために、得られた積層体をアセトン等の有機溶媒中に浸漬させるリフトオフ工程を行い、フォトレジスト膜15と、その上に積層されていた不要なAu/Au−Ni積層膜とを取り除いた。
【0102】
この時、薄膜トランジスタのチャネル長Lに相当するソース電極19とドレイン電極20との間隔は10μm、チャネル幅Wに相当する長さは1mmであった。
【0103】
最後に、n型の有機半導体であるフラーレンC60を用いて、真空蒸着法により、基板温度120℃の条件で所定の開口部を有するマスク(図示せず)を介した蒸着を行い、図5(f)に示すような、膜厚100nmの有機半導体層21を作製した。
【0104】
図6に、実施例1で作製したn型有機薄膜トランジスタのゲート電圧(Vg)−ドレイン電流(Id)特性を示す。作製した有機薄膜トランジスタの移動度は約2.2cm2/Vsであった。
【0105】
実施例1の有機薄膜トランジスタでは、密着層として、密着性が良好で、且つ有機半導体との電気接続性が良い、Niを3原子%含有した金合金を用いたことにより、有機半導体層とソース電極及びドレイン電極との間の寄生抵抗が抑制され、図6に示すように良好なトランジスタ特性を得ることが出来た。
【0106】
尚、有機薄膜トランジスタの密着性の評価は以下のように行った。
【0107】
〔密着性の評価方法〕
密着性の評価は、レジストを取り除く工程における、ソース電極及びドレイン電極の剥離状態を観察して、レジストを取り除く工程において密着層が全く剥離していない場合に、密着性が良好であると判断した。尚、以下の実施例においても同様に評価した。
【0108】
〔実施例2〕
図7(a)に、実施例2で作製した有機薄膜トランジスタの概略断面図を示す。
【0109】
実施例2では、実施例1と同様に、基板30上にゲート電極31、ゲート絶縁層32、ソース電極37とドレイン電極38,及び有機半導体39を有するボトムゲート/ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタを作製した。
【0110】
本実施例2における有機トランジスタのソース電極37及びドレイン電極38は、図7(b)に示すようにそれぞれ一つの金属膜から形成されているが、その金属膜を構成する金属の比率は、図7(b)に示す膜厚方向Zに対して、図7(c)に示すように変化している。
【0111】
本実施例2の有機薄膜トランジスタの作製では、ソース電極37及びドレイン電極38の密着性を改善する為にAuとCrとの合金を密着層として用いた。
【0112】
図7(c)に示すように、ソース電極37及びドレイン電極38を構成する金属層36は、基板側に近い領域では密着層としてCrが約20原子%(Auが約80原子%)程度含まれたAu−Cr合金となっており、膜厚が増加するに従ってCrの含有率が減少して最終的にAuからなる電極部分として機能する領域が形成されている。この様に本実施例2の有機薄膜トランジスタは、ソース電極とドレイン電極となる金属膜中のAuとCrの含有比率を厚み方向に異ならせることによって、密着層と電極部分とを備えたソース電極とドレイン電極を有している。
【0113】
尚、上記構成では、密着層の厚さは2nmであり、上記密着層における金の含有量は、約88原子%であった。
【0114】
この様な有機薄膜トランジスタは以下のようにして作製される。
【0115】
基板上にゲート電極、ゲート絶縁層及びソース電極とドレイン電極を形成するためのフォトレジスト膜を形成するまでの工程は、実施例1と同様であるので、ここでは、続く密着層と電極部分とからなる金属膜の形成について図8(a)〜(e)を用いて説明を行う。
【0116】
実施例1と同様の操作により、図8(a)に示す、基板30上にゲート電極31、ゲート絶縁層32を形成し、ソース電極とドレイン電極が形成される領域に開口部を有するフォトレジスト膜33をゲート絶縁層32上に形成した。
【0117】
次に、上記基板30に対してソース電極37及びドレイン電極38を形成するための金属膜を作製した。
【0118】
図8(b)に示すように、2種類の金属材料を同時に真空蒸着法により蒸着可能な、いわゆる2元系の抵抗加熱蒸着装置を用い、Au及びCrの2種類の蒸着材料を用いて以下のように金属膜の形成を行った。
【0119】
まず、Auを充填した蒸発源34とCrを充填した蒸発源35とを備えた抵抗加熱蒸着装置(図示せず)内に、上記フォトレジスト膜33及び開口部を形成した基板30を導入し、装置内を排気して真空引きを行った。この時の装置内の到達圧力は5×10−5Paであった。
【0120】
蒸着装置内には、図8(b)に示すように、Auの蒸発源34及びCrの蒸発源35が設置されており、各材料が充填されたルツボを電流制御等によって加熱することで、Au及びCrの蒸着速度を個別に制御しながら成膜を行う事が可能となっている。各蒸発源のルツボ上には、それぞれシャッターが設けられており、該シャッターの開閉を行うことで、基板に対する金属蒸気の供給を制御し、2種類の金属膜の堆積のオン・オフを個別に制御することが可能になっている。
【0121】
次に、密着層であるAu−Cr合金膜を形成するために、それぞれ蒸着可能温度まで加熱したAu蒸着源34及びCr蒸着源35のシャッターを同時に開くことで、基板30表面にAu及びCrの金属蒸気の供給を同時に開始し、Au及びCrの合金からなる密着層を基板30表面のゲート絶縁層32及びフォトレジスト膜33上に成膜した。
【0122】
成膜したAu−Cr合金膜の組成比の制御は、それぞれの材料の蒸発速度を、蒸着源を加熱するための電流量を制御することで行った。
【0123】
作製したAu−Cr合金膜の組成を調べた所、基板側に近い領域ではCrの含有量は20原子%(Auの含有量は80原子%)程度であった。Au−Cr密着層の膜厚は蒸着装置内に設けられた水晶振動子(図示せず)でモニタしながら制御を行い、膜厚2nmに達した時にCr蒸着源35側のシャッターを閉じることでCr蒸気の供給を遮断してAu−Cr合金からなる密着層の膜厚を制御した。
【0124】
この時、基板30表面には、図8(c)に示すように、引き続きAu蒸着源34からAu蒸気が供給されており、これによって密着層であるAu−Cr合金上に、Auのみからなる電極が連続して形成されることになる。Auからなる電極の膜厚は先程と同様に水晶振動子によりモニタしながら制御を行うことで、最終的に膜厚40nmのAuからなる電極を形成した。
【0125】
この様にして図7(b)、(c)に示したように、膜厚方向に組成が変化した、Crを含有したAu−Cr合金からなる密着層と、Auのみからなる電極とを含む金属層36を形成した。
【0126】
本実施例2の手法によれば、密着層領域となるAu−Cr合金層と電極部分領域となるAu層とを真空中で連続して形成することが可能であり、各領域を個別に形成した場合に比較して蒸発源の交換や成膜装置間における基板の移動等の必要も無く製造工程の簡略化が行える。
【0127】
更に密着層と電極部分との間への酸化層や不純物等の異物の混入による電気特性の劣化を抑制することが可能となり、この金属膜から形成されるソース電極とドレイン電極の電気的特性を更に向上させることが可能となる。
【0128】
続いて、基板表面のフォトレジスト膜33の剥離を行い、フォトレジスト開口部以外のフォトレジスト上の金属層36を除去することで、図8(d)に示すように、Au−Cr合金からなる密着層と、Auからなる、ソース電極37及びドレイン電極38を形成した。
【0129】
作製したソース電極とドレイン電極の電極間隔(チャネル長)は5μm、向かい合う電極の長さ(チャネル幅)は1mmとした。
【0130】
続いて、図8(e)に示すように、有機半導体層39としてフラーレンC60からなる有機薄膜を抵抗加熱蒸着法により、マスクを介して膜厚60nmで蒸着することにより、有機薄膜トランジスタを完成させた。この時のC60膜の成膜条件は、到達真空度4×105Pa,基板温度150℃,成膜速度1.2nm/minであった。得られた上記有機薄膜トランジスタの移動度は約2.1cm2/Vsであった。
【0131】
本実施例では、ソース電極とドレイン電極となる金属膜の組成をその膜厚方向に制御して作製することにより、基板側には密着性に優れ、且つ有機半導体との電気接続性の良いAuとCrの合金からなる密着層を形成した。そして、続けて、膜中のCr成分を減少させることで有機半導体との電気接続性に優れる、Auからなるソース電極とドレイン電極の作製を行った。これによって、優れた電気的特性を有する電極をより少ないプロセス工程によって作製することが出来た。
【0132】
なお、本実施例においては、密着層と電極部分とを連続して形成しているが、金の含有量が変化する金合金からなる部分が密着層であり、金からなる部分がソース電極及びドレイン電極である(図7(c)参照)。
【0133】
〔実施例3〕
本発明の実施例3ではソース電極とドレイン電極を実施例2と同様に作製した後、有機半導体層としてp型の有機半導体層であるペンタセンを用いて形成することで、p型の有機薄膜トランジスタを作製した。図9に本実施例3で作製したp型有機薄膜トランジスタの特性を示す。
【0134】
作製した有機薄膜トランジスタの移動度は約0.4cm2/Vsであった。また、作製した有機薄膜トランジスタは、基板との密着性が良好で且つ有機半導体との電気接続性の良いAu−Cr合金からなる密着層と、有機半導体であるペンタセンとの電気接続性に優れるソース電極及びドレイン電極を備えているため、寄生抵抗の影響の少ない良好な特性を有していた。
【0135】
〔実施例4〕
本発明の実施例4では、前述の実施例2,3で作製したn型及びp型の有機薄膜トランジスタを用いて、相補型の集積素子、いわゆるCMOS(Complementary MOS)素子を構成した。
【0136】
図10に、本実施例4のCMOS素子の概略図及び要部断面図を示す。
【0137】
CMOS素子は図10(a)及び(b)に示す様に、n型の有機薄膜トランジスタ52のゲート電極41と、p型の有機薄膜トランジスタ53のゲート電極42と、ソース電極とドレイン電極45〜47とが接続されて形成されており、各種論理回路の基本素子として応用の範囲が広く、消費電力が小さいといった利点がある。
【0138】
図11(a)に示すように、基板40にn型、p型それぞれのトランジスタのゲート電極41,42を形成した。本実施例4では、基板40としてガラス基板(コーニング社、商品名:Eagle2000)を用い、ゲート電極41,42を形成するための金属膜として、Tiに対してSiを10原子%添加したTiSi合金からなる金属ターゲットを用いて、スパッタリング法を行い、TiSiからなる金属膜を40nmの膜厚で形成した。その後、フォトリソグラフィー及びエッチング法を用いて所望のパターンに加工することでゲート電極41,42を作製した。
【0139】
ゲート電極41,42は図10(a)の上面図に示したとおり、電気的に接続された同一の電極となっており、n型、p型双方のトランジスタの共通したゲート電極として作用する。
【0140】
次に、図11(b)に示すように、ゲート電極41,42上にゲート絶縁層43として、ZrとSiとの合金ターゲットを用いて酸素を供給しながらスパッタリング成膜したZrSiOx膜を膜厚100nmで作製し、ゲート絶縁層43を形成した。
【0141】
続いて、図11(c)に示すように、ソース電極及びドレイン電極を作製するために、所定の開口部を有するフォトレジスト膜44をゲート絶縁層43上にフォトリソグラフィー法を用いて形成した。その後、前述の実施例2のように、AuとTiの2種類の蒸着源を有する真空蒸着装置(図示せず)を用いて金属膜の成膜を行った。
【0142】
密着層となるAuとTiとの合金部分は、Tiの含有率を約30原子%(Auの含有率を約70原子%)、密着層の膜厚1nmとなる成膜条件で形成を行い、更にTiの供給を停止後に、Auからなる電極部分を蒸着して全体で膜厚40nmの金属膜を作製した。
【0143】
続いて、不要なフォトレジスト膜44を剥離液等によって除去することで、図11(d)に示すようなソース電極及びドレイン電極45〜47を作製した。
【0144】
次に、図11(e)に示すように、n型トランジスタの有機半導体層48を形成するために、所定の領域に開口部を有する蒸着用マスク49を用いて、フラーレンC60の真空蒸着を行った。この時の真空蒸着装置(図示せず)の到達真空度は5×10−5Pa、フラーレンC60の膜厚は60nmとした。
【0145】
続いて、図11(f)に示すように、p型トランジスタを作製する領域にペンタセンからなる有機半導体層50を作製するために、この領域に開口を有する蒸着用マスク51を用いてペンタセンの真空蒸着を行い、有機半導体層50を形成した。この時のペンタセン半導体膜の膜厚は40nmとした。
【0146】
以上のようにして、図11(g)に示すようにフラーレンC60をn型の有機半導体層とした有機薄膜トランジスタ52と、ペンタセンをp型の有機半導体とした有機薄膜トランジスタ53とからなる本実施例4の有機薄膜トランジスタからなるCMOS素子を作製した。
【0147】
上記有機CMOS素子では、n型、p型それぞれの有機薄膜トランジスタを作製するにあたり、それぞれのトランジスタに用いられるソース電極及びドレイン電極を同一の工程で形成することが可能であり、素子作製に必要なプロセス工程数を減少させることが可能となる。また、良好な密着性を有し、且つ有機半導体との間の寄生抵抗も少ない密着層と、n型、p型どちらの半導体層に対しても優れた電気接続性を有する電極部分とを兼ね備えたソース電極とドレイン電極を用いていることから、各有機半導体層とソース電極及びドレイン電極との間の寄生抵抗が減少することでCMOS素子を構成するn型、p型それぞれの有機トランジスタの特性が向上し、良好なCMOS素子特性を得ることが可能となる。
【0148】
作製したn型、p型の有機薄膜トランジスタの移動度は、それぞれ約0.68cm2/Vs、0.59cm2/Vsであった。n型の移動度が実施例1,2と比較して低いのはゲート絶縁層を変更している影響と考えられる。
【0149】
図12に本実施例4で作製した有機CMOS回路によるインバータ動作特性を示す。本実施例4で作製したCMOS素子を用いて構成したインバータ回路において、0〜5Vの入力電圧(Vin)に対して、良好な反転出力(Vout)が得られており、寄生抵抗等による特性の劣化が無い、良好なインバータ特性が得られていることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の有機薄膜トランジスタは、ゲート絶縁層に対する密着性が良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗が低いソース電極とドレイン電極を有する。このため、各種電子部品に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明の実施形態に係る有機薄膜トランジスタの要部構成を示し、(a)は上面図であり、(b)は図1(a)におけるA−A’線矢視断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る有機薄膜トランジスタの製造方法のプロセス工程を示す断面図である。
【図3】参考例2に係る有機薄膜トランジスタの電界効果移動度と、ソース・ドレイン電極の密着層となる金合金のNi含有量との相関関係を示すグラフである。
【図4】実施例1に係る有機薄膜トランジスタの腰部構成を示す断面図である。
【図5】実施例1に係る有機薄膜トランジスタの製造プロセスを示す断面図である。
【図6】実施例1に係る有機薄膜トランジスタのVg−Id特性の相関関係を示すグラフである。
【図7】図7(a)は、実施例2に係る有機薄膜トランジスタの要部構成を示す断面図である。図7(b)は、図7(a)において点線で囲った電極部分の構造を拡大して示す断面図である。図7(c)は、実施例2に係る電極材料の組成分布図を示すグラフである。
【図8】実施例2に係る有機薄膜トランジスタの製造方法のプロセス工程を示す断面図である。
【図9】実施例3に係る有機薄膜トランジスタのVg−Id特性の相関関係を示すグラフである。
【図10】実施例4に係るCMOS素子の要部構成を示し、(a)は上面図であり、(b)は図10(a)におけるC−C’線矢視断面図である。
【図11】実施例4に係るCMOS素子の製造方法のプロセス工程を示す断面図である。
【図12】実施例4に係るCMOS素子を用いたインバータ回路の動作特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0152】
1,12,30,40 基板
2,13,31,41,42 ゲート電極
3,14,32,43 ゲート絶縁層
6,15,33,44 フォトレジスト膜
4,19,37,45 ソース電極
5,20,38,47 ドレイン電極
46 ソース/ドレイン電極
7,16 密着層
8,17 電極(ソース電極、ドレイン電極)
9,21,39,48,50 有機半導体層
10,49,51 蒸着用マスク
11 チャネル領域
34,35 蒸発源
36 金属膜
52 n型有機薄膜トランジスタ
53 p型有機薄膜トランジスタ
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体部分に有機材料を用いた有機薄膜トランジスタに関し、特に、有機半導体と電気的に接続する、密着性に優れた電極を有する有機薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコンに代表される無機半導体に対して、有機材料からなる半導体を用いた、いわゆる有機薄膜トランジスタが注目されている。
【0003】
有機薄膜トランジスタは、近年ではアモルファスシリコン薄膜トランジスタ(以下a‐Si TFT)と同等の移動度を示す例も報告されている。また、200℃以下の低いプロセス温度で素子を作製することが可能であることから、耐熱性の低いプラスチック基板等にトランジスタ素子を形成することが可能となり、プラスチック基板の柔軟性を活かした、フレキシブルなデバイスを実現するための技術として検討されている。
【0004】
また、有機材料は、材料の種類によって印刷法等によるデバイス作製も可能であることから、製造コストの低減及び印刷による大面積なデバイスの製造が可能な半導体素子としても期待されている。
【0005】
一般的に薄膜トランジスタは、ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層及びソース電極とドレイン電極とから構成されており、その素子構造は、主に半導体層上にソース電極とドレイン電極とが形成されているトップコンタクト型と、半導体下部にソース電極とドレイン電極とが形成されているボトムコンタクト型の2種類に大別されている。
【0006】
例えば特許文献1に示されているように、トップコンタクト型の構造では、ソース電極とドレイン電極とは、一般的なフォトリソグラフィー法やリフトオフ法、及び電極形状の開口部を有するシャドーマスクを用いたパターン成膜法等によって作製される。
【0007】
トップコンタクト型の場合には、有機材料からなる半導体層上に直接電極が作製されることから、フォトリソグラフィー用の薬品や、電極材料のエッチング等による有機半導体層へのダメージが懸念される。このため、電極形成時の半導体層へのダメージが少ない、上記シャドーマスクやインクジェット印刷技術等によるソース電極とドレイン電極形成が行われてきた。
【0008】
しかしながらこれら手法では、薄膜トランジスタ素子の特性に影響する、ソース電極とドレイン電極間の距離であるチャネル長を微細化することが困難である。また、形成される電極の寸法安定性、再現性などにも問題があった。
【0009】
一方、ボトムコンタクト型の場合には、上記ソース電極とドレイン電極とを形成した後に有機半導体層を形成することから、トップコンタクト型のように有機半導体層へダメージを与えることが無い。このため、前述のチャネル長を微細に形成することが可能なフォトリソグラフィー法やリフトオフ法による、ソース電極とドレイン電極との形成方法を用いることが可能である。
【0010】
有機半導体と電気的に接続するためのソース電極とドレイン電極とを構成する材料としては、例えば、特許文献2に示されているように、有機半導体と電気的接続が得やすい金(Au)からなる電極が用いられることが多い。金は良導体であり、電極材料としては一般的に用いられる金属であるが、その一方、金は他の材料に対する密着力が低いという問題が有った。このため、金を電極材料として用いる場合には、特許文献2に開示されているような密着層を金電極と基板との間に形成するなどの対策が一般的に行われてきた。
【0011】
しかし、非特許文献1によれば、ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタにおいて、ソース電極とドレイン電極との密着性改善のために用いられる電極と基板との間に設けられた密着層が、ソース電極及びドレイン電極と有機半導体層との間に生じる寄生抵抗の原因となっていることが示されている。
【0012】
非特許文献1によれば、ゲート電極に重畳されたゲート絶縁層上に形成されたボトムコンタクト構造を有する有機薄膜トランジスタでは、ゲート電極に印加されたゲート電圧により有機半導体中に形成されるチャネル層は、ゲート絶縁層/有機半導体層界面から数ナノメートル程度の厚みで形成されており、金電極下部に設けられた密着層が、該チャネル層の膜厚よりも厚い場合には、密着層が、チャネル層に直接接触することになる。このために、ソース電極とドレイン電極とを構成する金電極部分がこのチャネル層に対して直接接触することが出来ず、金電極−密着層−有機半導体の直列構造となるために寄生抵抗が生じるとしている。
【0013】
この様な寄生抵抗の問題に対しては、非特許文献1及び特許文献3に、膜厚が数ナノメートルの自己組織化単分子膜(Self−Assembled Monolayer:SAM)を極薄い密着層として形成することで寄生抵抗を抑制する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004‐288836(2004年10月14日公開)
【特許文献2】特開2005‐175157(2005年6月30日公開)
【特許文献3】特開2005‐86147(2005年3月31日公開)
【非特許文献1】N.Yoneya et al,Applied Physics Letters,85, (2004) 4663−4665
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、SAM膜は特定の表面に対して化学結合可能な官能基を有する有機分子を組み合わせることによって形成可能な有機単分子膜である。上記方法ではSAM膜を構成する有機分子が化学的に結合可能な材料が、SAM膜を形成するための基板表面に形成されている必要が有る。このため、任意の基板表面に密着層としてのSAM膜を形成することが困難であった。
【0015】
また、上記密着層としてのSAM膜は、基本的に絶縁体である有機分子から形成されていることから、非特許文献1に記載の構造では、上記有機半導体とゲート絶縁層との界面近傍に形成されたチャネル層には、上記SAM膜と上記SAM膜上に形成された金属電極とが接触することになる。このため、極薄いチャネル層のうち、SAM膜に接している部分はソース電極とドレイン電極との電気接続に対してなんら寄与することは無いという問題も有った。
【0016】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゲート絶縁層に対する密着性が良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗が低いソース電極とドレイン電極とを有する有機薄膜トランジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、これまで密着性を向上する材料として用いられておらず、この材料を有機トランジスタに用いた場合に、素子特性および基板との密着性の双方を満足するような組成比率、特に密着性の向上に着目して組成比を検討した例がない、所定の組成比を有する金合金を、ソース電極及びドレイン電極とゲート絶縁層との間に密着層を設けることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
本発明の有機薄膜トランジスタは、上記課題を解決するために、絶縁性基板上に、ゲート電極と、ゲート絶縁層と、ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体層とを備える有機薄膜トランジスタであり、上記ソース電極と絶縁性基板若しくはゲート絶縁層との間、及び上記ドレイン電極と絶縁性基板若しくはゲート絶縁層との間に、金を主成分とした合金からなる密着層をそれぞれ備え、上記ソース電極及びドレイン電極は金からなり、上記密着層は、金の含有量が、67原子%以上97原子%以下の範囲内であることを特徴としている。
【0019】
上記構成によれば、所定の組成比の上記金合金からなる密着層を設けているため、ゲート絶縁層に対する密着性が良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗が低いソース電極とドレイン電極とを備えた、優れた特性を有する有機薄膜トランジスタを提供することができるという効果を奏する。
【0020】
本発明の有機薄膜トランジスタでは、上記密着層が、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、及びモリブデン(Mo)からなる群から選択される少なくとも1種の金属と、金との合金であることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、ゲート絶縁層に対する密着性がより良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗がより低いソース電極とドレイン電極とを備えた、優れた特性を有する有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【0022】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記密着層は、上記ソース電極及びドレイン電極から、上記ゲート絶縁層へ向かって金の含有率が変化していることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、ゲート絶縁層に対する密着性がより良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗がより低いソース電極とドレイン電極とを備えた、優れた特性を有する有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【0024】
また、例えば、電極中に含まれる金以外の金属材料の比率を膜厚方向に減少するように変化させることによって、密着性の良好な合金部分と電極となるAu部分とを有する金属薄膜を一回のプロセスで作製可能であり、製造コストを低減することが可能となる。
【0025】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記密着層の厚さは、1nm以上3nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、ゲート絶縁層に対する密着性がより良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗がより低いソース電極とドレイン電極とを備えた、優れた特性を有する有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【0027】
本発明の有機薄膜トランジスタは、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極及びドレイン電極、有機半導体層をこの順で備え、トランジスタの構造が、ボトムゲート構造であり、且つボトムコンタクト構造であることが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、ゲート絶縁層に対する密着性が良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗が低いソース電極とドレイン電極とを有する有機薄膜トランジスタを提供することが可能となる。
【0029】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記密着層は、上記ソース電極若しくはドレイン電極から、上記ゲート絶縁層へ向かって金の含有率が減少していることが好ましい。
【0030】
上記構成によれば、ゲート絶縁層に対する密着性がより良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗がより低いソース電極とドレイン電極とを備えた、優れた特性を有する有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【0031】
また、電極中に含まれる金以外の金属材料の比率を膜厚方向に減少するように変化させることによって、密着性の良好な合金部分と電極となるAu部分とを有する金属薄膜を一回のプロセスで作製可能であり、製造コストを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の有機薄膜トランジスタは、以上のように、絶縁性基板上に、ゲート電極と、ゲート絶縁層と、ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体層とを備える有機薄膜トランジスタであり、上記ソース電極と絶縁性基板若しくはゲート絶縁層との間、及び上記ドレイン電極と絶縁性基板若しくはゲート絶縁層との間に、金を主成分とした合金からなる密着層をそれぞれ備え、上記ソース電極及びドレイン電極は金からなり、上記密着層は、金の含有量が、67原子%以上97原子%以下の範囲内であることを特徴としている。
【0033】
このため、ゲート絶縁層に対する密着性が良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗が低いソース電極とドレイン電極を有する有機薄膜トランジスタを提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明すれば以下のとおりであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
(1)有機薄膜トランジスタ
図1に有機薄膜トランジスタの要部構成を示し、(a)は上面図であり、(b)は図1(a)におけるA−A’線矢視断面図である。
【0036】
図1に示すように、本実施の形態に係る有機薄膜トランジスタは、ゲート電極2上にゲート絶縁層3を備え、当該ゲート絶縁層3上にソース電極4とドレイン電極5とを備え、当該ソース電極4及びドレイン電極5上に、チャネル領域11を含む有機半導体層9を備える有機薄膜トランジスタである。
【0037】
上記有機薄膜トランジスタでは、上記ソース電極4とゲート絶縁層3との間、及び上記ドレイン電極5とゲート絶縁層3との間に、密着層7をそれぞれ備える。
【0038】
上記ゲート電極2を構成する材料は特には限定されず、従来公知の材料を用いることができる。例えば、Al、Ti、Mo、Ta、シリコン(Si)、銀(Ag)またはこれらの合金がゲート電極2の構成材料として挙げられる。
【0039】
上記ゲート絶縁層3を構成する材料は、絶縁性であれば特に制限は無く、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル等の無機絶縁膜や、ポリイミド、ポリビニルフェノール等の有機系材料を採用することができる。
【0040】
上記ソース電極4及びドレイン電極5を構成する材料は金であり、上記密着層7を構成する材料は、金を主成分とした合金である。
【0041】
上記合金を構成する、金以外の金属としては特には限定されないが、例えば、Ni、Cr、Ti、Al、Ta、及びMoが挙げられる。
【0042】
上記密着層7を構成する上記合金における金の含有量は、67原子%以上97原子%以下の範囲内であり、70原子%以上97原子%以下の範囲内であることが好ましい。
【0043】
上記合金における金の含有量が67原子%未満であれば、密着層7を設けない場合と比べて電界効果移動度が低下してしまう。また、上記合金における金の含有量が97原子%より高いと、ゲート絶縁層3と電極との密着性が不十分となる。
【0044】
ここで、「原子%」とは、その物質における全原子数に対する、対象となる原子の数の百分率を意味する。
【0045】
上記密着層7の膜厚は1nm以上3nm以下の範囲内であることが好ましい。膜厚が当該範囲内であれば、寄生抵抗を増加させることなく、上記ソース電極4及びドレイン電極5とゲート絶縁層3との密着性を向上させることができる。
【0046】
上記有機半導体層9は、有機材料を主成分として含む層である。有機半導体層9を構成する材料としては、従来公知の有機薄膜トランジスタに用いられる有機半導体であれば特には限定されない。例えば、フラーレン、ポリチオフェン、ペンタセン等及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0047】
本実施の形態に係る有機薄膜トランジスタでは、金合金からなる密着層7を、ソース電極4及びドレイン電極5と、ゲート絶縁層3との間に備えているため、ソース電極4及びドレイン電極5とゲート絶縁層3とを良好に密着させることができる。
【0048】
また、ボトムゲート型の薄膜トランジスタ構造において、ゲート電極2に対して電圧を印加したときに、ゲート絶縁層3と有機半導体層9との界面近傍に形成される有機薄膜トランジスタのチャネル領域11は、ソース電極4及びドレイン電極5、並びに密着層7に接触することになる。
【0049】
本実施の形態では、密着層7として、有機半導体層9との電気的接続性が良好な金合金を用いたことにより、ソース電極4及びドレイン電極5と、有機半導体層9との間の寄生抵抗を抑制し、優れた特性の有機薄膜トランジスタを得ることが可能となる。
【0050】
(2)有機薄膜トランジスタの製造方法
本実施の形態に係る有機薄膜トランジスタは、例えば、以下のように製造することができる。図2は、本実施の形態に係る有機薄膜トランジスタの製造工程の一例を示す断面図である。
【0051】
(a)ゲート電極の作製
図2(a)に示すように、まず、ゲート電極2を、基板1上に形成する。
【0052】
尚、本実施の形態では説明の簡略化のために基板1全面がゲート電極2となる場合について説明しているが、ゲート電極2は、フォトリソグラフィー法やマスク成膜法等を用いて、パターン化してもよい。
【0053】
上記基板1としては、例えば、ガラス基板、及び石英基板等の透明基板、酸化膜付シリコン基板、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリイミド等の高分子からなるプラスチック基板を用いてもよい。また、上記基板の表面に必要に応じて絶縁層を形成したものを基板として用いてもよい。
【0054】
(b)ゲート絶縁層の作製
次に、ゲート電極2に重畳するようにゲート絶縁層3を形成する。ゲート絶縁層3の作製には、通常の真空蒸着やスパッタ成膜、スピンコーティング法やインクジェット法等、様々な方法を用いることが可能である。
【0055】
(c)密着層の作製
続いて、ゲート絶縁層3の上に、ソース電極4及びドレイン電極5を作製する。
【0056】
図2(b)に示すように、基板1上に形成されたゲート絶縁層3の上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィー手法を用いて、ソース電極4及びドレイン電極5が形成される領域に開口を有したフォトレジスト膜6を形成する。この時、対向する2つの開口部分間の距離が図1に示す有機薄膜トランジスタのチャネル長Lに相当し、対向する二つの開口部分の長さがチャネル幅Wに相当する。
【0057】
次に、図2(c)に示すように、この開口部が形成されたフォトレジスト膜6に対して、密着層7となる金合金を成膜する。
【0058】
上記金合金は、真空蒸着法やスパッタリング法のような一般的な金属薄膜の成膜手法で形成が可能である。例えば、金の含有量が67原子%以上97原子%以下の範囲内である上記合金からなる成膜材料を予め作製して、上記成膜方法により成膜を行ってもよい。また、金からなる成膜源と、金以外の金属からなる成膜源との複数の成膜源を用いて、同時に基板上に金属膜の成膜を行う、いわゆる共蒸着法やコスパッタ法のような成膜手法を用いてもよい。
【0059】
(d)ソース電極・ドレイン電極の作製
続いて、図2(d)に示すように、電極(ソース電極及びドレイン電極)8となるAuを上記密着層7に重畳して形成する。Auからなる電極8は上記蒸着法やスパッタリング法のような、いわゆる物理蒸着法を用いて作製してもよいし、上記密着層7をシード層として無電解金メッキ法等を用いて作製してもよい。
【0060】
次に、上記フォトレジスト膜6を基板1上から除去することにより、図2(e)に示しす、開口部内に形成された密着層7及び電極8が形成される。
【0061】
尚、本実施の形態では、一例としてリフトオフ法によるソース電極とドレイン電極の作製方法を説明したが、これ以外の方法でソース電極とドレイン電極を作製してもよい。具体的には、フォトリソグラフィー法や、マスク蒸着法等の通常の製造工程を用いて作製することが可能である。このような方法を採用することにより、トランジスタ素子の特性に影響するソース電極とドレイン電極間の距離(チャネル長)などを、目的に合せて微細加工したり、簡便にマスク蒸着で作製したりすることが可能となり、素子特性の向上や寸法安定性の向上、作製工数の削減等を図ることが可能となる。
【0062】
(e)有機半導体層の作製
最後に、図2(f)に示すように、有機半導体層9を、ソース電極4及びドレイン電極5に重畳するように形成する。
【0063】
有機半導体層9は、例えば、抵抗加熱による真空蒸着法を用いて作製することができ、また、可溶性の材料であれば、塗布法や印刷法等の一般的な手法を用いて作製することが可能である。
【0064】
有機半導体層9は基板1上全面に形成してもよいが、寄生容量等の観点からソース電極4及びドレイン電極5上に重畳するようにパターン化することが好ましい。
【0065】
尚、有機半導体層9のパターン形成には種々の方法があるが、図2(f)ではその一例として、有機半導体層9の形状に合せた開口部を有する蒸着用マスク10を用いて、有機半導体層9を蒸着法により形成する場合を示している。
【0066】
以上のような工程によって、本実施の形態におけるボトムゲート型で、ボトムコンタクト型の構造を有する有機薄膜トランジスタが作製される。
【0067】
尚、上述の説明では、トランジスタの構成が、ボトムゲート構造であり、且つボトムコンタクト構造である場合について説明したが、これに限るものではない。上記トランジスタの構成は、トップゲート構造であってもよい。
【0068】
また、以上に説明した本発明は、以下のように言い換えることもできる。即ち、
(1)絶縁性基板上に、ゲート電極と、ゲート絶縁膜と、ソース・ドレイン電極と、有機材料からなる半導体層を備えた有機薄膜トランジスタにおいて、該ソース・ドレイン電極は、金からなる電極部分と、金を主体とした合金からなる密着部分とを備えていることを特徴とする有機薄膜トランジスタであって、金を主体とした該合金は、金以外の金属含有量が3原子%乃至30原子%であることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【0069】
(2)前記、金を主体とした合金は、Ni、Cr、Ti、Al、Ta、Moの何れかとの合金であることを特徴とする(1)記載の有機薄膜トランジスタ。
【0070】
(3)前記密着部分の金を主体とした合金は、その膜厚方向に合金の含有率が変化していることを特徴とする(1)または(2)に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0071】
(4)前記有機薄膜トランジスタは、基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース・ドレイン電極および有機半導体層をこの順で備えたボトムゲート構造、且つボトムコンタクト構造であることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1つに記載の有機薄膜トランジスタ。
【0072】
(5)前記ソース・ドレイン電極は、前記密着部分と、前記電極部分とが積層して形成されていることを特徴とする(1)〜(4)の何れか1つに記載の有機薄膜トランジスタ。
【0073】
(6)前記積層して構成されたソース・ドレイン電極の密着部分の膜厚は1乃至3nmであることを特徴とする(5)に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0074】
(7)前記ソース・ドレイン電極は、膜厚の増加方向に金以外の材料の含有率が減少する金合金からなることを特徴とする(1)〜(4)の何れか1つに記載の有機薄膜トランジスタ。
【0075】
また、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種種の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0077】
〔参考例1〕
ゲート絶縁層を模した酸化シリコン(SiO2)付シリコン基板上に、Au−Ni合金からなる密着層及び金からなる電極層をマスク蒸着法によって形成し、Niの含有量が表1に示す値である密着層をそれぞれ有する積層体を作製した。
【0078】
尚、ソース電極及びドレイン電極は0.4mm×1.4mmの矩形電極として作製し、密着層の膜厚は3nm、ソース電極及びドレイン電極の膜厚はそれぞれ25nmとして作製した。
【0079】
次に、電極を作製した上記各積層体を、アセトン溶液中で1分間超音波洗浄することで機械的な振動を与えた後に、該電極の剥離の状況を目視及び光学顕微鏡で観察して、ソース電極及びドレイン電極と基板との密着性を確認した。密着性評価の結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示すように、密着層として、Niを含まないAuとした場合、並びにNiの含有量を1原子%とした場合には、ゲート絶縁層であるSiO2との密着性が弱く、作製したソース電極及びドレイン電極が基板上のSiO2表面から剥離した。
【0082】
Niの含有量を3原子%(Auの含有量を97原子%)程度まで増加した場合では、基板上のSiO2表面からソース電極及びドレイン電極の剥離は発生せず、良好な密着性を示すことが確認された。
【0083】
更に、上記密着性の評価において、密着層におけるNiの含有量を10原子%(Auの含有量を90原子%)として、Au−Ni合金からなる密着層の膜厚を表2に示す値に変化させ、密着性を評価した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
表2に示すように、上記密着層の膜厚を1nm以上とすることで密着性の改善に効果があることが確認された。
【0086】
尚、密着層の膜厚を更に厚くした場合にも同様に密着性の改善効果が得られると考えられるが、密着層である金合金の電気的な抵抗率は電極部分であるAuの抵抗率に比較すると高く、膜厚が厚くなるに従って密着層による寄生抵抗が増加し、後述する参考例2の結果の様に寄生抵抗の増大による素子特性が低下することが予想される。
【0087】
上記と同様の実験を、密着層のNiを、Ti、Cr,Al,Ta及びMoにそれぞれ変更して行ったところ、ほぼ同様の結果が得られた。
【0088】
これらの結果より、上記密着層となる金を主体とした金合金において、Au以外の合金材料の含有率を3原子%以上33原子%以下(Auの含有量を67原子%以上97原子%以下)、及び金合金層からなる密着層の膜厚を1nmから3nm程度とすることによって、良好な素子特性を有する有機薄膜トランジスタを作製できることが確認できた。
【0089】
〔参考例2〕
図1に示すような構造の有機薄膜トランジスタとして、基板1とゲート電極2とを兼ねたn型シリコン基板上に、ゲート絶縁層3として膜厚310nmのSiO2を形成し、この上に密着層7として、AuとNiとの合金膜を膜厚3nmで形成し、更に電極8としてAuを膜厚25nmで形成してリフトオフ法によりソース電極4とドレイン電極5を作製した。
【0090】
この上に有機半導体層9としてフラーレンC60をマスク蒸着法によって膜厚100nmで成膜することによりn型の有機薄膜トランジスタを作製した。尚、有機薄膜トランジスタは、密着層7におけるNiの含有量を0原子%から100原子%まで変化させて、複数作製した。
【0091】
得られたトランジスタを用いて、Niの含有量に対する薄膜トランジスタの電界効果移動度の評価を行った。尚、作製した有機薄膜トランジスタのチャネル長Lは10μm、チャネル幅Wは1mmとした。
【0092】
図3に、有機薄膜トランジスタの素子特性を示す電界効果移動度と、密着層である金合金の組成比との関係を示す。
【0093】
図3に示すように、密着層におけるNiの含有量が33原子%(Auの含有量が67原子%)程度である場合には、Niを含まないAuのみからなる電極を有する場合(白丸)とほぼ同様の高い電界効果移動度を示した。これに対して、Niの含有量を50原子%(Auの含有量を50原子%)程度まで増加させた場合には電界効果移動度の急激な減少が確認され、素子特性が劣化した。この原因としては、密着層に含まれるNiの量が増加することによって、有機半導体層9と密着層7との間の電気的な寄生抵抗が増大することにより、結果として、ソース電極4及びドレイン電極5と有機半導体層9との間の寄生抵抗が増大し、有機薄膜トランジスタの特性を示す電界効果移動度が低下したと考えられる。
【0094】
また、密着層をAuのみで作製した場合や、Niの含有量を1原子%とした場合では、ゲート絶縁層であるSiO2と密着層との密着性が弱く、作製したソース電極及びドレイン電極が基板上のSiO2表面から剥離した。密着層におけるNiの含有量を3原子%(Auの含有量を97原子%)程度まで増加させた場合には、基板上のSiO2表面からソース電極とドレイン電極の剥離は発生せず、良好な密着性を示した。
【0095】
〔実施例1〕
実施例1では、密着層としてAuとNiとの合金を用いて図4に示す有機薄膜トランジスタを作製した。
【0096】
まず、図5(a)に示すように、基板12としてガラス基板(コーニング社、商品名:Eagle2000)を用いた。そして、当該基板12上に、Tiに対してSiを10原子%添加したTiSi合金からなる金属ターゲットを用いて、スパッタリング法を行い、TiSiからなる金属膜を40nmの膜厚で形成した。このTiSiからなる金属膜を、フォトリソグラフィー及びエッチング法を用いて所望のパターンに加工することでゲート電極13を形成した。
【0097】
続いて、SiO2ターゲットを用いて、酸素を供給しながらスパッタリング成膜を行うことにより、ゲート電極13上にゲート絶縁層14としてSiO2を膜厚200nmで形成した。
【0098】
次に、フォトレジストとしてリフトオフプロセス用のネガ型フォトレジスト(日本ゼオン社、商品名:ZPN1150)を用いて、スピンコート法により膜厚4μmのレジスト膜を形成した。その後、フォトリソグラフィー法を用いて、露光及び現像工程を行うことで、図5(b)に示す、ソース電極及びドレイン電極を作製するための開口部を有するフォトレジスト膜15を形成した。
【0099】
次に、図5(c)に示すように、上記密着層におけるNiの組成比が3原子%(Auの含有量が97原子%)となるように調整した、Au及びNiの混合材料を用いて、真空蒸着法により、膜厚2nmで、ソース電極及びドレイン電極の密着層16となる、Au−Ni合金からなる金属膜を形成した。この時の真空蒸着装置の到達真空度は2×10-5Paであり、基板加熱は行わなかった。
【0100】
続いて、図5(d)に示す電極17として、Auからなる金属膜を、同様に真空蒸着法により、膜厚40nmで成膜した。
【0101】
密着層16及び電極17を順次積層した後、ゲート絶縁層14上のフォトレジスト膜15を除去するために、得られた積層体をアセトン等の有機溶媒中に浸漬させるリフトオフ工程を行い、フォトレジスト膜15と、その上に積層されていた不要なAu/Au−Ni積層膜とを取り除いた。
【0102】
この時、薄膜トランジスタのチャネル長Lに相当するソース電極19とドレイン電極20との間隔は10μm、チャネル幅Wに相当する長さは1mmであった。
【0103】
最後に、n型の有機半導体であるフラーレンC60を用いて、真空蒸着法により、基板温度120℃の条件で所定の開口部を有するマスク(図示せず)を介した蒸着を行い、図5(f)に示すような、膜厚100nmの有機半導体層21を作製した。
【0104】
図6に、実施例1で作製したn型有機薄膜トランジスタのゲート電圧(Vg)−ドレイン電流(Id)特性を示す。作製した有機薄膜トランジスタの移動度は約2.2cm2/Vsであった。
【0105】
実施例1の有機薄膜トランジスタでは、密着層として、密着性が良好で、且つ有機半導体との電気接続性が良い、Niを3原子%含有した金合金を用いたことにより、有機半導体層とソース電極及びドレイン電極との間の寄生抵抗が抑制され、図6に示すように良好なトランジスタ特性を得ることが出来た。
【0106】
尚、有機薄膜トランジスタの密着性の評価は以下のように行った。
【0107】
〔密着性の評価方法〕
密着性の評価は、レジストを取り除く工程における、ソース電極及びドレイン電極の剥離状態を観察して、レジストを取り除く工程において密着層が全く剥離していない場合に、密着性が良好であると判断した。尚、以下の実施例においても同様に評価した。
【0108】
〔実施例2〕
図7(a)に、実施例2で作製した有機薄膜トランジスタの概略断面図を示す。
【0109】
実施例2では、実施例1と同様に、基板30上にゲート電極31、ゲート絶縁層32、ソース電極37とドレイン電極38,及び有機半導体39を有するボトムゲート/ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタを作製した。
【0110】
本実施例2における有機トランジスタのソース電極37及びドレイン電極38は、図7(b)に示すようにそれぞれ一つの金属膜から形成されているが、その金属膜を構成する金属の比率は、図7(b)に示す膜厚方向Zに対して、図7(c)に示すように変化している。
【0111】
本実施例2の有機薄膜トランジスタの作製では、ソース電極37及びドレイン電極38の密着性を改善する為にAuとCrとの合金を密着層として用いた。
【0112】
図7(c)に示すように、ソース電極37及びドレイン電極38を構成する金属層36は、基板側に近い領域では密着層としてCrが約20原子%(Auが約80原子%)程度含まれたAu−Cr合金となっており、膜厚が増加するに従ってCrの含有率が減少して最終的にAuからなる電極部分として機能する領域が形成されている。この様に本実施例2の有機薄膜トランジスタは、ソース電極とドレイン電極となる金属膜中のAuとCrの含有比率を厚み方向に異ならせることによって、密着層と電極部分とを備えたソース電極とドレイン電極を有している。
【0113】
尚、上記構成では、密着層の厚さは2nmであり、上記密着層における金の含有量は、約88原子%であった。
【0114】
この様な有機薄膜トランジスタは以下のようにして作製される。
【0115】
基板上にゲート電極、ゲート絶縁層及びソース電極とドレイン電極を形成するためのフォトレジスト膜を形成するまでの工程は、実施例1と同様であるので、ここでは、続く密着層と電極部分とからなる金属膜の形成について図8(a)〜(e)を用いて説明を行う。
【0116】
実施例1と同様の操作により、図8(a)に示す、基板30上にゲート電極31、ゲート絶縁層32を形成し、ソース電極とドレイン電極が形成される領域に開口部を有するフォトレジスト膜33をゲート絶縁層32上に形成した。
【0117】
次に、上記基板30に対してソース電極37及びドレイン電極38を形成するための金属膜を作製した。
【0118】
図8(b)に示すように、2種類の金属材料を同時に真空蒸着法により蒸着可能な、いわゆる2元系の抵抗加熱蒸着装置を用い、Au及びCrの2種類の蒸着材料を用いて以下のように金属膜の形成を行った。
【0119】
まず、Auを充填した蒸発源34とCrを充填した蒸発源35とを備えた抵抗加熱蒸着装置(図示せず)内に、上記フォトレジスト膜33及び開口部を形成した基板30を導入し、装置内を排気して真空引きを行った。この時の装置内の到達圧力は5×10−5Paであった。
【0120】
蒸着装置内には、図8(b)に示すように、Auの蒸発源34及びCrの蒸発源35が設置されており、各材料が充填されたルツボを電流制御等によって加熱することで、Au及びCrの蒸着速度を個別に制御しながら成膜を行う事が可能となっている。各蒸発源のルツボ上には、それぞれシャッターが設けられており、該シャッターの開閉を行うことで、基板に対する金属蒸気の供給を制御し、2種類の金属膜の堆積のオン・オフを個別に制御することが可能になっている。
【0121】
次に、密着層であるAu−Cr合金膜を形成するために、それぞれ蒸着可能温度まで加熱したAu蒸着源34及びCr蒸着源35のシャッターを同時に開くことで、基板30表面にAu及びCrの金属蒸気の供給を同時に開始し、Au及びCrの合金からなる密着層を基板30表面のゲート絶縁層32及びフォトレジスト膜33上に成膜した。
【0122】
成膜したAu−Cr合金膜の組成比の制御は、それぞれの材料の蒸発速度を、蒸着源を加熱するための電流量を制御することで行った。
【0123】
作製したAu−Cr合金膜の組成を調べた所、基板側に近い領域ではCrの含有量は20原子%(Auの含有量は80原子%)程度であった。Au−Cr密着層の膜厚は蒸着装置内に設けられた水晶振動子(図示せず)でモニタしながら制御を行い、膜厚2nmに達した時にCr蒸着源35側のシャッターを閉じることでCr蒸気の供給を遮断してAu−Cr合金からなる密着層の膜厚を制御した。
【0124】
この時、基板30表面には、図8(c)に示すように、引き続きAu蒸着源34からAu蒸気が供給されており、これによって密着層であるAu−Cr合金上に、Auのみからなる電極が連続して形成されることになる。Auからなる電極の膜厚は先程と同様に水晶振動子によりモニタしながら制御を行うことで、最終的に膜厚40nmのAuからなる電極を形成した。
【0125】
この様にして図7(b)、(c)に示したように、膜厚方向に組成が変化した、Crを含有したAu−Cr合金からなる密着層と、Auのみからなる電極とを含む金属層36を形成した。
【0126】
本実施例2の手法によれば、密着層領域となるAu−Cr合金層と電極部分領域となるAu層とを真空中で連続して形成することが可能であり、各領域を個別に形成した場合に比較して蒸発源の交換や成膜装置間における基板の移動等の必要も無く製造工程の簡略化が行える。
【0127】
更に密着層と電極部分との間への酸化層や不純物等の異物の混入による電気特性の劣化を抑制することが可能となり、この金属膜から形成されるソース電極とドレイン電極の電気的特性を更に向上させることが可能となる。
【0128】
続いて、基板表面のフォトレジスト膜33の剥離を行い、フォトレジスト開口部以外のフォトレジスト上の金属層36を除去することで、図8(d)に示すように、Au−Cr合金からなる密着層と、Auからなる、ソース電極37及びドレイン電極38を形成した。
【0129】
作製したソース電極とドレイン電極の電極間隔(チャネル長)は5μm、向かい合う電極の長さ(チャネル幅)は1mmとした。
【0130】
続いて、図8(e)に示すように、有機半導体層39としてフラーレンC60からなる有機薄膜を抵抗加熱蒸着法により、マスクを介して膜厚60nmで蒸着することにより、有機薄膜トランジスタを完成させた。この時のC60膜の成膜条件は、到達真空度4×105Pa,基板温度150℃,成膜速度1.2nm/minであった。得られた上記有機薄膜トランジスタの移動度は約2.1cm2/Vsであった。
【0131】
本実施例では、ソース電極とドレイン電極となる金属膜の組成をその膜厚方向に制御して作製することにより、基板側には密着性に優れ、且つ有機半導体との電気接続性の良いAuとCrの合金からなる密着層を形成した。そして、続けて、膜中のCr成分を減少させることで有機半導体との電気接続性に優れる、Auからなるソース電極とドレイン電極の作製を行った。これによって、優れた電気的特性を有する電極をより少ないプロセス工程によって作製することが出来た。
【0132】
なお、本実施例においては、密着層と電極部分とを連続して形成しているが、金の含有量が変化する金合金からなる部分が密着層であり、金からなる部分がソース電極及びドレイン電極である(図7(c)参照)。
【0133】
〔実施例3〕
本発明の実施例3ではソース電極とドレイン電極を実施例2と同様に作製した後、有機半導体層としてp型の有機半導体層であるペンタセンを用いて形成することで、p型の有機薄膜トランジスタを作製した。図9に本実施例3で作製したp型有機薄膜トランジスタの特性を示す。
【0134】
作製した有機薄膜トランジスタの移動度は約0.4cm2/Vsであった。また、作製した有機薄膜トランジスタは、基板との密着性が良好で且つ有機半導体との電気接続性の良いAu−Cr合金からなる密着層と、有機半導体であるペンタセンとの電気接続性に優れるソース電極及びドレイン電極を備えているため、寄生抵抗の影響の少ない良好な特性を有していた。
【0135】
〔実施例4〕
本発明の実施例4では、前述の実施例2,3で作製したn型及びp型の有機薄膜トランジスタを用いて、相補型の集積素子、いわゆるCMOS(Complementary MOS)素子を構成した。
【0136】
図10に、本実施例4のCMOS素子の概略図及び要部断面図を示す。
【0137】
CMOS素子は図10(a)及び(b)に示す様に、n型の有機薄膜トランジスタ52のゲート電極41と、p型の有機薄膜トランジスタ53のゲート電極42と、ソース電極とドレイン電極45〜47とが接続されて形成されており、各種論理回路の基本素子として応用の範囲が広く、消費電力が小さいといった利点がある。
【0138】
図11(a)に示すように、基板40にn型、p型それぞれのトランジスタのゲート電極41,42を形成した。本実施例4では、基板40としてガラス基板(コーニング社、商品名:Eagle2000)を用い、ゲート電極41,42を形成するための金属膜として、Tiに対してSiを10原子%添加したTiSi合金からなる金属ターゲットを用いて、スパッタリング法を行い、TiSiからなる金属膜を40nmの膜厚で形成した。その後、フォトリソグラフィー及びエッチング法を用いて所望のパターンに加工することでゲート電極41,42を作製した。
【0139】
ゲート電極41,42は図10(a)の上面図に示したとおり、電気的に接続された同一の電極となっており、n型、p型双方のトランジスタの共通したゲート電極として作用する。
【0140】
次に、図11(b)に示すように、ゲート電極41,42上にゲート絶縁層43として、ZrとSiとの合金ターゲットを用いて酸素を供給しながらスパッタリング成膜したZrSiOx膜を膜厚100nmで作製し、ゲート絶縁層43を形成した。
【0141】
続いて、図11(c)に示すように、ソース電極及びドレイン電極を作製するために、所定の開口部を有するフォトレジスト膜44をゲート絶縁層43上にフォトリソグラフィー法を用いて形成した。その後、前述の実施例2のように、AuとTiの2種類の蒸着源を有する真空蒸着装置(図示せず)を用いて金属膜の成膜を行った。
【0142】
密着層となるAuとTiとの合金部分は、Tiの含有率を約30原子%(Auの含有率を約70原子%)、密着層の膜厚1nmとなる成膜条件で形成を行い、更にTiの供給を停止後に、Auからなる電極部分を蒸着して全体で膜厚40nmの金属膜を作製した。
【0143】
続いて、不要なフォトレジスト膜44を剥離液等によって除去することで、図11(d)に示すようなソース電極及びドレイン電極45〜47を作製した。
【0144】
次に、図11(e)に示すように、n型トランジスタの有機半導体層48を形成するために、所定の領域に開口部を有する蒸着用マスク49を用いて、フラーレンC60の真空蒸着を行った。この時の真空蒸着装置(図示せず)の到達真空度は5×10−5Pa、フラーレンC60の膜厚は60nmとした。
【0145】
続いて、図11(f)に示すように、p型トランジスタを作製する領域にペンタセンからなる有機半導体層50を作製するために、この領域に開口を有する蒸着用マスク51を用いてペンタセンの真空蒸着を行い、有機半導体層50を形成した。この時のペンタセン半導体膜の膜厚は40nmとした。
【0146】
以上のようにして、図11(g)に示すようにフラーレンC60をn型の有機半導体層とした有機薄膜トランジスタ52と、ペンタセンをp型の有機半導体とした有機薄膜トランジスタ53とからなる本実施例4の有機薄膜トランジスタからなるCMOS素子を作製した。
【0147】
上記有機CMOS素子では、n型、p型それぞれの有機薄膜トランジスタを作製するにあたり、それぞれのトランジスタに用いられるソース電極及びドレイン電極を同一の工程で形成することが可能であり、素子作製に必要なプロセス工程数を減少させることが可能となる。また、良好な密着性を有し、且つ有機半導体との間の寄生抵抗も少ない密着層と、n型、p型どちらの半導体層に対しても優れた電気接続性を有する電極部分とを兼ね備えたソース電極とドレイン電極を用いていることから、各有機半導体層とソース電極及びドレイン電極との間の寄生抵抗が減少することでCMOS素子を構成するn型、p型それぞれの有機トランジスタの特性が向上し、良好なCMOS素子特性を得ることが可能となる。
【0148】
作製したn型、p型の有機薄膜トランジスタの移動度は、それぞれ約0.68cm2/Vs、0.59cm2/Vsであった。n型の移動度が実施例1,2と比較して低いのはゲート絶縁層を変更している影響と考えられる。
【0149】
図12に本実施例4で作製した有機CMOS回路によるインバータ動作特性を示す。本実施例4で作製したCMOS素子を用いて構成したインバータ回路において、0〜5Vの入力電圧(Vin)に対して、良好な反転出力(Vout)が得られており、寄生抵抗等による特性の劣化が無い、良好なインバータ特性が得られていることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の有機薄膜トランジスタは、ゲート絶縁層に対する密着性が良好で、且つ有機半導体層との間の寄生抵抗が低いソース電極とドレイン電極を有する。このため、各種電子部品に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明の実施形態に係る有機薄膜トランジスタの要部構成を示し、(a)は上面図であり、(b)は図1(a)におけるA−A’線矢視断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る有機薄膜トランジスタの製造方法のプロセス工程を示す断面図である。
【図3】参考例2に係る有機薄膜トランジスタの電界効果移動度と、ソース・ドレイン電極の密着層となる金合金のNi含有量との相関関係を示すグラフである。
【図4】実施例1に係る有機薄膜トランジスタの腰部構成を示す断面図である。
【図5】実施例1に係る有機薄膜トランジスタの製造プロセスを示す断面図である。
【図6】実施例1に係る有機薄膜トランジスタのVg−Id特性の相関関係を示すグラフである。
【図7】図7(a)は、実施例2に係る有機薄膜トランジスタの要部構成を示す断面図である。図7(b)は、図7(a)において点線で囲った電極部分の構造を拡大して示す断面図である。図7(c)は、実施例2に係る電極材料の組成分布図を示すグラフである。
【図8】実施例2に係る有機薄膜トランジスタの製造方法のプロセス工程を示す断面図である。
【図9】実施例3に係る有機薄膜トランジスタのVg−Id特性の相関関係を示すグラフである。
【図10】実施例4に係るCMOS素子の要部構成を示し、(a)は上面図であり、(b)は図10(a)におけるC−C’線矢視断面図である。
【図11】実施例4に係るCMOS素子の製造方法のプロセス工程を示す断面図である。
【図12】実施例4に係るCMOS素子を用いたインバータ回路の動作特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0152】
1,12,30,40 基板
2,13,31,41,42 ゲート電極
3,14,32,43 ゲート絶縁層
6,15,33,44 フォトレジスト膜
4,19,37,45 ソース電極
5,20,38,47 ドレイン電極
46 ソース/ドレイン電極
7,16 密着層
8,17 電極(ソース電極、ドレイン電極)
9,21,39,48,50 有機半導体層
10,49,51 蒸着用マスク
11 チャネル領域
34,35 蒸発源
36 金属膜
52 n型有機薄膜トランジスタ
53 p型有機薄膜トランジスタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板上に、ゲート電極と、ゲート絶縁層と、ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体層とを備える有機薄膜トランジスタであり、
上記ソース電極と絶縁性基板若しくはゲート絶縁層との間、及び上記ドレイン電極と絶縁性基板若しくはゲート絶縁層との間に、金を主成分とした合金からなる密着層をそれぞれ備え、
上記ソース電極及びドレイン電極は金からなり、
上記密着層は、金の含有量が、67原子%以上97原子%以下の範囲内であることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【請求項2】
上記密着層が、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、及びモリブデン(Mo)からなる群から選択される少なくとも1種の金属と、金との合金から構成されることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項3】
上記密着層は、上記ソース電極及びドレイン電極から、上記ゲート絶縁層へ向かって金の含有率が変化していることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項4】
上記密着層の厚さは、1nm以上3nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項5】
ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極及びドレイン電極、有機半導体層をこの順で備え、
トランジスタの構造が、ボトムゲート構造であり、且つボトムコンタクト構造であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項6】
上記密着層は、上記ソース電極若しくはドレイン電極から、上記ゲート絶縁層へ向かって金の含有率が減少していることを特徴とする請求項3に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項1】
絶縁性基板上に、ゲート電極と、ゲート絶縁層と、ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体層とを備える有機薄膜トランジスタであり、
上記ソース電極と絶縁性基板若しくはゲート絶縁層との間、及び上記ドレイン電極と絶縁性基板若しくはゲート絶縁層との間に、金を主成分とした合金からなる密着層をそれぞれ備え、
上記ソース電極及びドレイン電極は金からなり、
上記密着層は、金の含有量が、67原子%以上97原子%以下の範囲内であることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【請求項2】
上記密着層が、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、及びモリブデン(Mo)からなる群から選択される少なくとも1種の金属と、金との合金から構成されることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項3】
上記密着層は、上記ソース電極及びドレイン電極から、上記ゲート絶縁層へ向かって金の含有率が変化していることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項4】
上記密着層の厚さは、1nm以上3nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項5】
ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極及びドレイン電極、有機半導体層をこの順で備え、
トランジスタの構造が、ボトムゲート構造であり、且つボトムコンタクト構造であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項6】
上記密着層は、上記ソース電極若しくはドレイン電極から、上記ゲート絶縁層へ向かって金の含有率が減少していることを特徴とする請求項3に記載の有機薄膜トランジスタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−135542(P2010−135542A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309618(P2008−309618)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度文部科学省科学技術総合研究委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度文部科学省科学技術総合研究委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]